第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
  なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものとなります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは創業以来「社員全員が世界に誇れる物(組織・製品・サービス)を創造し、より多くの人々(同僚・家族・取引先・株主・社会)に対してより多くの「幸せ・喜び」を提供する企業となる。そのための努力を通じて社員全員の自己実現を達成する。」を経営理念としております。その実現のために「Technology×Creative」をスローガンに、最新の技術分野に挑戦し続け、テクノロジー・オリエンテッド・カンパニー(技術志向の企業)として世界を舞台に活躍する世界企業を目指してまいります。また、企業の経営効率化を支援する「クラウドソリューション事業」、デジタルを基軸に企業のマーケティングを支援する「デジタルトランスフォーメーション事業」の二つの事業を通じて、顧客企業の発展を支え続けていくことで企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、企業価値を継続的に拡大することが重要であると考え、成長投資やリスク許容が可能な株主資本水準の維持を基本とします。その実現のため、売上収益、営業利益及び親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を重要な経営指標とし、これらについて目標値を設定し公表いたします。高収益事業の開発及びビジネスモデルの確立により、これらの指標の向上を図り、目標値の達成を目指してまいります。

 

(3) 中長期の成長に向けた取り組み

(全社戦略)

当社グループの持続的な成長と、持続可能な社会の実現の両方を追求する必要があると考えております。そのため当社グループが取り組むべき重要課題を「事業」「人材」「環境」の3点と設定し、事業を通じた社会課題の解決、企業成長の源泉である人材の採用・育成・定着および多様性の確保、事業活動における温室効果ガス排出量の削減に取り組んでまいります。

(クラウドソリューション事業 中長期戦略)

2023年1月1日より、主力製品であるクラウドERP「ZAC」のライセンス販売形態を「SaaS型契約」に一本化し、「買取型契約」を廃止いたしました。買取型契約はソフトウェアライセンス料を契約当初に一括して収受する契約形態で、会計上は収受した金額を30か月にわたって配分し収益として認識しております。SaaS型契約への移行に伴い、顧客のZAC利用期間が31か月を超えた場合に買取型契約では得られなかった収益が継続的に計上されるようになるため、中長期での収益力強化が実現されると見込んでおります。

また現時点で国内約44,000社と見込んでいるマーケットを拡大すべく、「従業員数1万人規模の大企業」および「海外の中堅中小企業」にも提案活動を行えるよう、研究開発および企画・調査を進めております。特に2024年12月期では、海外での販売戦略の検討を具体的に進めるにあたり、進出先の決定や、進出候補地における展示会への出展などを予定しております。

(デジタルトランスフォーメーション事業 中長期戦略)

2023年12月期では、執行役員をはじめとするトップマネジメント層の採用や営業職の採用が順調に進み、2024年12月期以降の成長に向けて組織体制を強化できました。引き続き、「クライアントのマーケティング戦略を具体的な施策に落とし込み、着実に実行する体制・仕組みを構築できること」を強みとして、新規顧客および既存顧客に対する提案を行ってまいります。このことを通じて、2024年12月期以降はマーケティング・プロモーションセグメントのみならず、システム・Webインテグレーション他セグメント及び運用サポート・運用事務局セグメントも成長させてまいります。

海外拠点の営業体制については、海外売上比率を高めることを目指して、引き続き強化しております。

また、アジア圏にはまだ流通していない海外のマーケティングツールの、国内やアジア圏を中心とした販売・コンサルティングの代理店事業も行っており、既存のツールの拡販とあわせて取り扱う海外製ツールの拡充にも取り組んでおります。

 

(4) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループが展開するクラウドソリューション事業及びデジタルトランスフォーメーション事業は、ともに情報サービス産業に属しております。この事業領域では、技術の進化、顧客ニーズの変化、人材の獲得競争が続いています。

こうした環境の中、当社グループの発展においては、優秀な人材を継続的に雇用し、定着させることが重要です。

クラウドソリューション事業においては、国内の成長産業におけるシェア拡大に向けて、製品・サービス及び営業体制の強化が必要と考えております。また、ERP市場では主要企業がグローバルに活動を行っており、当社グループが中長期で更なる成長を遂げるためには、グローバルな事業運営が必要です。

デジタルトランスフォーメーション事業においては、事業機会を捉えるために、技術面・サービス面での一層の差別化が求められます。また、顧客の海外展開に対応し、当社グループのグローバルな営業体制を強化することは、海外市場の開拓による大きな成長機会を期待するためにも重要と考えております。

 

当社グループは、このような課題認識に基づき、経営理念及び中長期にわたる持続的な成長に向けて、以下の経営戦略を実行してまいります。

 

当社グループにおいては、継続的な成長の原資である人材が最も重要な経営資源であり、持続的な成長を実現するための重要課題(マテリアリティ)と認識しています。人的基盤の強化に向けて、ダイバーシティの推進、多様なキャリアパス・働き方を受け容れる環境の整備、採用・教育・育成の強化、就業環境の向上等の各種施策を進めてまいります。

 

クラウドソリューション事業においては、主力製品であるクラウドERP「ZAC」の特徴であるSaaS型モデルの強みを活かすために、技術的な領域における研究を今まで以上に進めてまいります。営業面では成長産業へのシェアを増加させるべく、営業・マーケティング活動の幅を広げながら、並行してパートナー企業との連携を強化し、新規契約獲得社数の増加を目指してまいります。加えて、既存顧客に対する支援体制を強化することで、既存顧客の製品利活用度を高め、製品の利用範囲拡大を促進いたします。

中長期での成長の実現に向けては、2026年の海外進出に向けた研究開発体制の強化に努め、多言語・多通貨対応等を推進いたします。さらに、大企業での利用に向けたシステム構成の見直しや新たな機能の提供に取り組んでまいります。

 

デジタルトランスフォーメーション事業においては、クライアント企業のマーケティング戦略を具体的な施策に落とし込み、着実に実行できる仕組みと体制を構築する「エグゼキューションカンパニー」として業界で認知されることを目指し、営業・マーケティング戦略の強化を通じて、案件数の向上を図ります。また、引き続き大手広告代理店や協業会社との連携を強化し、案件の受注増加を目指してまいります。

技術的優位性の強化に向けては、技術及び法規制の最新動向をキャッチアップし、効果的に事業へ反映してまいります。

加えて、海外市場における機会を取り込むべく、海外連結子会社の営業体制及びガバナンスの強化、グローバルパートナーの開拓等を通じて、リスクを低減しながらも海外への展開を積極的に進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものとなります。

 

(1)サステナビリティ共通

(サステナビリティ方針)

当社は、世界に誇れる物を創造し、より多くの人々により多くの「幸せ・喜び」を提供する企業となることを経営理念に掲げています。この理念を実現するには、持続可能な社会の実現と持続的な当社グループの成長の両方を追求することが重要と考えています。テクノロジーとクリエイティビティの融合によって新しい価値を世の中に提供し、企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

(概念図)

経営理念を実現するには、当社自身の持続的な成長が不可欠です。ただし当社の成長は、あくまでも同僚・家族・取引先・株主・社会に対してより多くの「幸せ・喜び」を提供してはじめて成立するものだと捉えております。そのため当社は、下記のプロセスに従って「事業」「人材」「環境」をマテリアリティとして特定し、それらの取り組みについて「サステナビリティ」の観点でベクトルを合わせ、取り組み状況をモニタリングしながら、経営理念の実現に向けて企業活動を展開してまいります。

 


 

(マテリアリティ特定のプロセス)

国際基準であるSASB・GRIスタンダード・ISO26000に示されている項目それぞれについて、「オログループに与える影響度」「ステークホルダーに与える影響度」の2軸で評価しました。そのうち、オログループおよびステークホルダーの両者に対する影響度が高い項目において、各項目で語られているテーマを抽出し、「事業」「人材」「環境」のマテリアリティを特定しました。

 

(事業)

当社は、経営理念を実現すべく、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを志しています。現在展開しているクラウドソリューション事業は「ホワイトカラーの生産性向上」をミッションに掲げており、日本の非製造業の労働生産性が低い状況を改善すべく、クラウドERPをはじめとするITソリューションの提供を通じた「経営の見える化」「業務効率化」を支援しております。

デジタルトランスフォーメーション事業は「優れた商品・サービスを、本当に必要な人に届ける。」をミッションとして、デジタルの力でクライアントとより多くの利用者の関係性を築き、社会的に受容される商品・サービスを普及させることでの社会貢献を目指しております。

 

 

(人材)

当社の中長期的な成長を生み出すのは人材です。高度で多様な人材が集まり創発することで、サービスの高付加価値化を実現していきます。また、新規事業開発、新技術への対応、経営継承を見据えた次世代育成なども、人材への投資により成し遂げられるものと考え、積極的に行っていきます。

 

(環境)

当社が、より多くの人々により多くの「幸せ・喜び」を提供する企業を目指すうえでは、同僚・家族・取引先・株主だけでなく、社会に対する責任も観点としては欠かせない要素です。昨今の情勢から、社会的要請のうち環境問題に対する社会の関心がより高まっている中で、社会の公器としてより多くの人々により多くの「幸せ・喜び」を提供するうえでは、当社としても優先度高く取り組むべき課題だと認識しております。

 

(ガバナンス)

当社は、サステナビリティ課題への取り組みを推進するため、取締役専務執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を2021年より設置しております。当委員会では、当社グループの重要課題(マテリアリティ)の特定と、それに関連した目標の設定、具体的な施策の立案、各種KPIの設定・測定などを検討し、順次具体的な施策の実行をしております。また、当委員会は、定期的に取締役会にて取り組み状況の報告・共有をしております。

 


 

(リスク管理)

「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(2)事業

(戦略・リスク管理)

「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

(3)人材

(戦略)

現在、次の取り組みを重点的に展開しております。

 

①中核人材の登用における多様性の確保(女性管理職比率の向上)

多様な個性を持つ人々が自己実現を図り、結果として事業の成長性および、組織の多様性を確保・強化できるよう、多様なキャリアパス・働き方を受け容れる環境を整備します。具体的な目標としては、2021年に5%であった女性の管理職比率を、2027年までに15%へ上げることを掲げています。そのために、下記のような取り組みを実施しています。

 a.女性社員向けアンケート実施

 b.女性社員座談会実施

 

②中核人材の育成における取り組み

事業を推進する中核となりうる、優秀な人材を輩出する採用・育成の仕組みを充実させます。そのために、下記のような取り組みを実施しています。

 a.U35未来会議の実施

  若手の幹部候補を対象とした研修の実施をしています。外部から経営者を講師として招聘し、当社の次世代

を担う35歳以下の管理職向けの勉強会を年6回程開催しております。

 b.書籍に基づく幹部研修の実施

  当社の経営管理に関するノウハウを体系的に集約した書籍『ナレッジワーカー・マネジメント』をテキスト

として、管理職を対象としたマネジメント研修を実施しております。

 

③多様性の確保に向けた人材方針

当社はグループ人材方針にもとづき、多様性の確保を目指しています。採用、評価、人員配置、昇給・昇進などあらゆる企業活動を通じて、本人の適正・能力と関係のない非合理的な事項に基づく判断を除外し、適正に処遇します。

 (グループ人材方針)

  目的:私たちは、創造力豊かな自律した人材を継続的に育成し、より多くの人々に対してより多くの「幸

せ・喜び」を提供できるよう、組織・製品・サービスを創造します。

  1 人種、信条、性別、社会的身分、国籍、障がい、雇用形態、年齢、宗教等による差別を行いません。

  2 働く人々を公正に評価し、適正に処遇します。

  3 多様性を尊重し、一人ひとりが自ら考え、その能力と創造性を発揮して、自己実現を図ることができる風

 土を作ります。

  4 本人及び家族の物心両面の幸福を追求し、キャリア形成、健康、プライベートの充実などについて支援し

 ます。

 

④人材の活躍に向けての様々な投資と取り組み

 当社の従業員がいきいきと活躍できるよう、様々な支援や制度に取り組んでいます。

 a.女性活躍の促進

 ・子育てサポート企業「くるみん」認定を取得

 ・子育て支援勤務制度(コアライフ)の実施

コアライフは、オロの子育て支援勤務制度です。10時〜16時を出社して勤務する時間とし、それ以

外の時間は働く場所(オフィスor自宅)と時間を柔軟に選択できるようにすることで、家庭や子育

てとの両立を支援します。

   ・対象拠点:株式会社オロ、株式会社オロ宮崎で小学生以下の子供がいる社員・契約社員(リモートワー

ク可能な職種に限る)

   ・開始時期:2023年1月1日

 

 b.多様な働き方の促進

 ・選択的週休3日制(サンライフ)の実施

   サンライフは、8時間勤務タイプか10時間勤務タイプを選択して週休3日の働き方を取り入れられる

制度です。対象者は、火・水・木のいずれかの曜日を休日として選択することが可能です。

   ・対象:株式会社オロの社員(希望者のみ)

   ・開始時期:2023年1月1日

 

 c.健康経営の促進

 ・健康経営優良認定を取得(当社 及び 株式会社オロ宮崎 並びに 株式会社oRo code MOC)

 ・健康促進手当の実施

  1か月の1日平均歩数が一定数を越えた社員に毎月手当を支給する制度を導入しています。

 ・喫煙率低下に向けた取り組み

  非喫煙者手当の導入、禁煙外来費用の一部補助等を行い、禁煙の促進に努めています。

 

(指標及び目標)

戦略に基づく主要な定量目標としては、女性管理職比率を現時点で定めております。詳細は「(3)人材 (戦略) 1)中核人材の登用における多様性の確保(女性管理職比率の向上)」及び「第一部 企業情報 第1 企業の概況 5 従業員の状況」をご確認ください。

 

(4)環境

(リスク管理)

当社は、TCFDの提言に従い、気候変動リスクの分析を実施いたしました。持続可能な発展の下で世界の平均気温上昇が2100年までに2℃以下に抑えられる「2℃以下シナリオ」および追加緩和策を導入せず平均気温が2100年までに4℃上昇する「4℃シナリオ」の2パターンを想定し、リスク・機会の抽出とオログループへの影響を定性的に分析しております。

今後は財務インパクトについても評価を進め、影響度の高いものから対策を講じてリスクの低減に努めるとともに、気候変動によるビジネス機会を活かすことで、持続可能な社会の実現への貢献と、持続的な企業成長を目指します。

具体的な気候変動シナリオ分析の結果については、下記リンクの当社Webサイトをご参照ください。

https://www.oro.com/ja/ir/sustainability/environment/

 

 

(指標及び目標)

当社グループでは2021年を基準年とし、温室効果ガス排出量(Scope1,2)を2030年までに50%削減、中期目標として2028年までに30%削減、を目標として設定いたしました。

Scope3に属する排出量のほとんどが、デジタルトランスフォーメーション事業において顧客から受託して運用するWeb広告に伴うものであり、事業の成長と共に温室効果ガス排出量が増える見込みです。そのため排出量の削減目標はScope1・2のみとしております。

 


 

温室効果ガス排出量の実績については、下記リンクの当社Webサイトをご参照ください。

https://www.oro.com/ja/ir/sustainability/environment/

 

3 【事業等のリスク】

リスク管理体制について

当社は、リスクマネジメント委員会を設置し、当社グループの事業におけるリスクを的確に把握し対応するためのリスク管理体制を構築しています。リスクマネジメント委員会は、リスクの評価、重要リスクの選定、重要リスクの所管部門のリスク対応の監督を行い、その内容を定期的に取締役会へ報告しております。当社グループの事業活動における事業リスクは、取締役会や経営戦略会議等の会議体で検討しております。


 

リスク管理のプロセスについて

リスクマネジメント委員会が、当社グループの各部門から網羅的に抽出されたリスクの中から、発生可能性及び影響度を基準としてリスクを評価し、リスクマップを作成して重要リスクを選定しております。各重要リスクを主管する部門は、リスク対応策を策定し、その進捗をリスクマネジメント委員会に報告し、リスクマネジメント委員会での審議を受けて、リスク対応策の改善や見直しを行うプロセスを進めております。


 

◆個別のリスクについて

当社グループの事業においてリスクの要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 

(1) 事業環境について

① 競合について

当社グループのクラウドソリューション事業及びデジタルトランスフォーメーション事業の分野においては既に数多くの競合企業が存在しております。また、当該事業分野が成長市場であること及び大きな参入障壁がないことから、今後、他社の新規参入により競合が激化する可能性があります。

当社グループでは、引き続き顧客のニーズを汲んだ製品・サービスの提供を進める方針でありますが、競合企業の営業方針、価格設定及び提供する製品・サービス等は、当社グループが属する市場に影響を与える可能性があります。また、AI等の新技術により、当社の製品・サービス及びビジネスモデルが陳腐化する可能性があります。現在、サービスの機能強化や開発体制の強化、優秀な人材の確保に努めておりますが、これらの競合企業に対して効果的な差別化を行うことができず、当社グループが想定している事業展開が図れない場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定の取引先への依存について

当社グループのデジタルトランスフォーメーション事業においては、博報堂グループ向け売上収益(当期における㈱TBWA HAKUHODOに対する売上収益574,852千円、総売上収益に対する割合8.2%等)ならびにイオングループ向け売上収益(当期におけるイオンリテール㈱に対する売上収益477,300千円、総売上収益に対する割合6.8%等)の割合が高い水準にあります。

当社グループは、博報堂グループ各社ならびにイオングループ各社とそれぞれ個別の業務契約を締結しており、個々の取引は独立したものとなっておりますが、今後博報堂グループならびにイオングループの業績、方針転換等によってこれらの業務契約が解消となった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の製品への依存について

当社グループのクラウドソリューション事業は特定の製品「ZAC」に依存した事業となっております。今後も取引の拡大に努めると同時に販売依存度を下げるため、新規の製品開発を図ってまいりますが、競合会社の新規参入や既存の会社との競合激化等が、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容について

① 製品開発・販売を核にした事業モデルについて

当社グループの事業のうち、クラウドソリューション事業はソフトウェアの自社開発・販売とともに導入にかかるコンサルティングやカスタマイズ等を通じて、最適なソリューションをワンストップで提供できる点を売りにしているものの、その核となるのは自社製品の開発・販売になります。

市場の変化にいち早く対応できるよう最新の技術動向に対応し、開発・コンサルティング体制の強化に努めておりますが、競争環境、顧客ニーズの変化等に対応できず、当社製品が市場競争力を喪失した場合、コンサルティングやカスタマイズ等他のサービスの競争力も同様に失われ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② プログラム等のバグ(不良箇所)について

当社グループが提供する製品に誤作動・バグ等が生じた場合、当社グループによる導入サポートや導入後の技術サポート等において当社グループに責任のある原因で支障が生じた場合、又は当社グループの製品が機能不足と認識された場合、損害賠償責任の発生や顧客の当社グループに対する信頼喪失により、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

③ 知的財産権について

当社グループは、事業競争力確保の観点から、知的財産を重要な経営資源と捉え、知的財産権の取得及び保持に取り組んでおります。同時に、当社グループは事業を遂行する上で、第三者の知的財産権の侵害を防止すべく調査を行うなど、細心の注意を払っております。

しかしながら、当社グループが事業活動に関連して意図せず第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者からの損害賠償請求や使用差止請求等により、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

④ 顧客から預かる情報の管理について

当社グループは、事業の性格上、顧客企業の秘密情報、個人情報を取り扱う場合があり、個人情報保護、情報セキュリティ確保が重要となります。また、情報を保有しサービス提供をするサーバーが格納されるデータセンターやネットワーク設備は事業活動を継続するうえで重要となります。情報資産を保護するため、情報セキュリティ方針、個人情報保護方針を定め、情報セキュリティの国際規格、プライバシーマークの認証の取得・維持を通じた情報管理体制・プロセスの整備・改善、研修等を通じた全役職員への情報管理の徹底、ITインフラのセキュリティ強化、データセンターの分散配置等により、情報保護・管理の強化・徹底とサービス提供の維持に努めております。

しかしながら、情報の授受、運搬時における紛失や盗難、データセンターやネットワーク設備等に被害を及ぼす災害、事故、サーバー攻撃等により、顧客企業の秘密情報、個人情報が漏洩又は消失、サービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当該顧客からの損害賠償請求による費用発生や、顧客の当社グループに対する信頼喪失により、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 組織体制について

① 人材の確保や育成について

当社グループにおいて優秀な社内の人材の確保、育成及び定着は最重要課題と認識しております。また、国内においては労働人口の減少が進行していることを踏まえ、中長期の持続的な成長に向けて女性活躍推進を含む多様性(ダイバーシティ)を有する人材の確保が必要となります。

これら将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の整備や研修の実施等の施策を通じ、社内リーダー層への幹部教育、新入社員及び中途入社社員の育成、定着に取り組んでおります。同時に、多様性を有する人材の積極採用や多様なキャリアパス・働き方を受け容れる環境の整備、就業環境の向上等の施策に努めてまいります。

しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、また、必要な人材を確保できない可能性があります。また、必ずしも採用し育成した役職員が、当社グループの事業に寄与し続けるとは限りません。このような場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

② コンプライアンス体制について

当社グループは、コンプライアンスの徹底が不可欠であると認識しております。

そのため、コンプライアンス方針、企業倫理規程を定め、全役員及び全従業員が高い倫理観を保持し法令等を遵守することを徹底しております。また、全役職員を対象としてコンプライアンスに関する研修を実施し、法令等の違反等を早期に発見し是正するために内部通報制度を整備する等、コンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。

しかしながら、当社グループの事業活動に関連して法令等に抵触する事態が発生した場合、第三者からの損害賠償請求による費用発生や、顧客の当社グループに対する信頼喪失により、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績等の状況

a.経営成績の状況

当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に引き下げられた前後から経済活動の正常化が進み、サービス需要やインバウンド需要が高まるなど、緩やかな景気回復がみられました。一方、地政学的リスクの長期化に伴う物価上昇、供給面での制約や金融市場の変動など、先行き不透明な状況が続いております。

国内の情報サービス業においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にリモートワークを前提とした新しい働き方への移行が進んだことで、企業向けのシステムにおけるクラウドサービスの需要が継続的に高まっております。また、企業のデジタル化(DX)の流れに伴い、生産性向上、及び業務効率化に対して高いコストパフォーマンスと利便性を備えた情報システムが求められております。

インターネット業界においては、大手企業を中心として既存のビジネスモデルや業界構造を変化させてきたDXの流れが根強くありながら、広告市場ではメディアのデジタルシフトだけでなく、従来のレガシーメディアを取り入れた複合的な顧客へのアプローチがみられております。

このような市場環境の中、当社グループは製販一体体制を継続し、クラウドサービス・デジタルソリューションの提供を行ってきました。クラウドソリューション事業の主力製品であるクラウドERP「ZAC」及び「Reforma PSA」は、プロジェクト管理を必要としている企業を軸とした業界・業種に幅広く求められ安定的に伸長し、業績に寄与いたしました。デジタルトランスフォーメーション事業においてはデータ分析に基づくウェブ広告の戦略策定・運用・効果検証、ウェブサイトやデジタルコンテンツの制作、アプリケーションの企画・制作、SNS活用の戦略立案・運用支援など、デジタルを基軸に顧客のビジネスを全方位から支援するさまざまなソリューションを提供してまいりました。そして持続的な企業価値の向上を実現すべく、各事業において新規顧客の開拓、重点顧客の深掘活動、マーケティング活動への投資、採用強化にも取り組みました。

以上の結果、当連結会計年度の連結業績は、売上収益7,033,155千円(前年同期比13.2%増)、営業利益2,547,337千円(同11.4%増)、税引前利益2,602,772千円(同10.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,836,415千円(同13.1%増)となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

(a)クラウドソリューション事業

 クラウドソリューション事業から得られる収入は、下表のとおりに大別されます。

売上種別

サービス内容

ZACライセンス料・保守料・SaaSその他月額サービス料

「ZAC」に関するソフトウェアライセンス販売、システム保守、クラウド環境提供及びSaaS型契約の月額サービス

ZAC導入支援・カスタマイズ

「ZAC」に関する導入支援業務、及び導入時に必要な追加開発

Reforma PSA

「Reforma PSA」の月額ライセンスの提供

他社製品 他

他社製ソフトウェアの代理人としての販売

 

 

 

2023年第2四半期からデータセンター利用料の値上げ、及び「ZAC Enterprise」の既存顧客に向けたインボイス制度対応が増収幅を押し上げました。これらの計画を上回る増収に加え、新規顧客の大型化に伴う「ZAC」新規契約の単価向上、及び広告宣伝費の効率化が増益を後押ししました。その結果、前年同期比では売上収益、セグメント利益はともに増加し、売上収益は4,299,876千円(前年同期比21.4%増)、セグメント利益は1,981,120千円(同22.6%増)となりました。

 

(b)デジタルトランスフォーメーション事業

   デジタルトランスフォーメーション事業から得られる収入は、下表のとおりに大別されます。

売上種別

サービス内容

マーケティング・プロモーション

顧客のマーケティング及びプロモーションのプランニング、広告出稿、調査(広告運用、代理店としての販売を含む)

システム・WEBインテグレーション 他

WEBサイト構築・リニューアル・システムインテグレーターとしての受託開発等及びシステム保守等

運用サポート・運用事務局

WEBサイトの運用、更新作業等

 

 

2023年は自動車業界に対する広告案件が回復し、マーケティング/プロモーションセグメントでの収益増に寄与しました。一方、新規顧客の獲得に苦戦し、その結果、売上収益は2,733,279千円(前年同期比2.4%増)となりました。また、好調な採用活動に起因する人件費・採用費の増加により、セグメント利益は566,364千円(同11.7%減)となりました。

 

b.財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ1,327,766千円増加し、12,373,522千円となりました。主な要因は、現金及び現金同等物が1,875,541千円増加し、営業債権及びその他の債権が407,712千円、繰延税金資産が107,804千円減少したことによります。

 

 (負債)

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ219,077千円減少し、3,489,241千円となりました。主な要因は、営業債務及びその他の債務が51,800千円増加し、未払法人所得税等が245,674千円、リース負債が63,625千円減少したことによります。

 

 (資本)

 当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末と比べ1,546,844千円増加し、8,884,280千円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益1,836,415千円の計上による増加、配当金の支払い322,343千円による減少によります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は8,707,486千円となり、前連結会計年度末と比べ1,875,541千円の増加(前年同期比27.5%増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は2,515,291千円(前連結会計年度は1,603,240千円の獲得)となりました。これは主に、法人所得税の支払による減少910,754千円等があったものの、税引前利益2,602,772千円等が生じたことによります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は129,762千円(前連結会計年度は278,493千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出52,474千円、無形資産の取得による支出40,399千円が生じたことによります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は517,736千円(前連結会計年度は436,094千円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払による減少322,050千円及びリース負債の返済による支出195,686千円によるものであります。

 

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

クラウドソリューション事業

1,234,838

123.7

デジタルトランスフォーメーション事業

1,123,629

91.8

合計

2,358,468

106.1

 

(注) 金額は、売上原価によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

クラウドソリューション事業

4,235,209

117.3

1,830,023

96.6

デジタルトランスフォーメーション事業

2,849,902

116.1

353,005

149.3

合計

7,085,111

116.8

2,183,028

102.4

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

クラウドソリューション事業

4,299,876

121.4

デジタルトランスフォーメーション事業

2,733,279

102.4

合計

7,033,155

113.2

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社TBWA HAKUHODO

620,837

9.9

574,852

8.2

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表  連結財務諸表注記  4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 ⅰ)経営成績等の分析

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況」をご参照ください。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
 

 ⅱ)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

当社グループは、積極的な最新技術の導入やサービスの高機能化、生産性の最適化や販売市場の拡大に取り組むため、研究開発等の事業投資や人材育成投資を継続的に実施していく考えであります。

これらの資金需要は手元資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、クラウドソリューション事業において、ZACの製品力強化を目的に機能開発を進めております。

研究開発の内容としては、海外進出に向けた多言語・多通貨対応技術の開発、従業員数1万人規模の大企業に対する安定的なサービス提供に向けたシステム構成の見直し等を行っております。

上記の結果、当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は45,925千円であり、主にクラウドソリューション事業において発生したものであります。