第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「世界に冠たる投資グループへ」をビジョンに、「ファンドの力で日本の今を変える」をミッションに掲げ、4つの経営理念「幸せの総量を最大化する」、「クロスボーダー(国の壁、心の壁、世代の壁を超えて)」、「全ては事業のために」、「5年後の常識」の下、経営に取り組んでおります。

 「世界に冠たる投資グループへ」では、オルタナティブ(代替)投資でのアルファ(超過利得)の獲得を追求し、投資資金が有効に使われて循環することで、ファンドの投資家のみならず、投資先並びに当社グループの株主をはじめ様々なステークホルダーの皆様にリターンを分配する、世界に冠たる投資グループを目指します。

 「ファンドの力で、日本の今を変える」では、日本に「今」存在する事業には大きな潜在価値があります。それを引き出し、日本を活気溢れる国にすることが私たちのミッションです。グローバリゼーションに伴って世界がつながるからこそ、日本の持つユニークな良さが注目されて高く評価されています。

 一方で、伝統的な企業経営の在り方にも変革が求められています。わが国経済が国境や世代を超えて発展するためには、長期資本の力が不可欠です。当社グループでは、日本の上場企業として傘下にオルタナティブファンドマネージャーを擁し、流動性の低い国内事業や資産に長期の投資資金を呼び込み、その変革を促進することで、日本が持つ潜在的な価値を引き出し、日本を活気溢れる国にすることをミッションとしています。

 

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(2)中長期的な経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、東京証券取引所への上場時及び市場変更時の新株発行により調達した自己投資資金を活用し、新たにバイアウト投資戦略及びキャッシュ・フロー投資戦略を策定するとともに、当該戦略に基づく新規ファンドを組成することで、マルチストラテジーのファンド運用会社の基盤を確立してまいりました。

 当該実績を踏まえ、2021年12月期から2025年12月期までの5年間は、①上場前後に組成した基幹ファンドからの成功報酬の最大化を図るとともに、②新ファンド組成による管理報酬の底上げを図り、③運営ファンドへの自己投資(セイムボート投資)に係る収益の更なる拡大を図る期間と位置付け、5年後の最終連結会計年度において、成長性の観点から5年平均当期純利益を、安定性の観点から自己資本をそれぞれ目標経営指標と掲げております。

 具体的には当社グループの基幹ファンド(コアファンド)であるバイアウトファンドにおけるファンドレイズ、Spring REITにおける新規資産の組入、資産投資分野におけるエネクス・インフラ投資法人やインフラ・ウェアハウジングファンド等の新たな基幹ファンド(コアファンド)の組成及びファンドレイズに注力します。加えて、外部パートナーとの連携による、その他のアセットクラスを含めた取り組みとして、事業法人の戦略投資に対応したソリューション事業(BizTechファンド事業やタイを含むASEAN地域への投資管理サポート事業)、航空機リースファンド事業(事業会社に航空機投資の機会を提供)、太陽光開発ファンド事業(海外インフラ事業への展開)、インバウンド不動産投資ファンド事業、債権ファンドやバリュー投資ファンド事業等の新規企画事業(既存プロダクトからの横展開を含む)も推進することにより、成功報酬の最大化、管理報酬の底上げ及び自己投資収益の拡大を図っていく方針です。

(単位:億円)

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

5年平均当期純利益

11.2

11.0

11.9

12.1

11.4

自己資本

121.7

119.1

151.1

166.3

170.9

 

(注)1.5年平均当期純利益は、5年平均の親会社株主に帰属する当期純利益であり、当社の事業サイクル及び成功報酬等が損益へ与える影響を考慮した結果、単年度損益よりも5年間の平準化された損益が、当社業績の実態を把握する指標として有用と考えております。

2.自己資本は、株主資本及びその他の包括利益累計額の合計額であり、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げであることから、ファンド運用会社としての安定性を把握する指標として有用と考えております。

3.当社は、2021年7月1日に単独株式移転により株式会社マーキュリアインベストメントの完全親会社として設立されたため、2020年12月期以前につきましては、株式会社マーキュリアインベストメントの連結財務諸表をもとに算定しております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

 当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し、行動制限の緩和やインバウンド需要の回復などにより、経済活動及び社会活動の正常化が進み、国内経済は回復基調にあります。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による資源価格の高騰や円安進行、これらを背景とした物価の上昇、さらにはインフレリスクに対応した欧米諸国での政策金利の引き上げといった世界的な金融引き締めが続くなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような環境を踏まえ、当社グループでは中長期的な成長を目指し、既存ファンドにおいては投資リターンの向上による成功報酬の最大化を図るべく、引き続き投資先企業の支援やモニタリングの強化に努めていくとともに、新規ファンドにおいては、管理報酬の底上げを行うべく、マクロ環境に沿った投資戦略に基づく事業企画を行い、投資家層を拡大することで基幹ファンド化を進めることが必要であると考えております。併せて、今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、上場会社及び金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理、投資家とのコミュニケーションを図るための経営管理体制の充実が必要であると考えております。

 

①運用管理資産の増加と運用パフォーマンスの向上

 当社グループは2016年の東京証券取引所への上場以降は、上場時及び一部指定時の公募増資により調達した約48億円の資金を用いて、バイアウトファンド、航空機ファンド、エネクス・インフラ投資法人等の新ファンドを順調に組成してきた他、上場前に組成したグロースファンドや金融危機時に組成したバリュー投資ファンドからの約65億円の成功報酬を実現することで安定した業績を展開してきました。

 2021年には持株体制へ移行するとともに、公募増資を行うことで更なる成長へ向けた体制整備及び資金調達を行い、2022年には公募増資により調達した約20億円の資金を用いて、バイアウトファンド、航空機ファンドの後継ファンドの組成を開始しました。

 今後においては、2022年に組成したバイアウトファンド及び航空機ファンド等に加えて、マクロ環境を捉えた新ファンドを企画、組成することにより、運用管理資産を増加させること、より多くの成功報酬を実現すべく、上場後に組成したファンドの運用パフォーマンスを高めることが、それぞれ重要な経営課題であると考えております。

 これらの課題に対処するためには、運用管理資産の増加については、従前は銀行が中心であったファンド投資家層を、保険会社等の銀行以外の金融機関、年金基金、大学、財団、更には個人まで拡大すべく、営業基盤と顧客管理の強化を、また、運用パフォーマンスの向上については、投資プロフェッショナルが個人ではなく、組織として活躍できる環境を醸成すべく、経営資源の機動的配分とノウハウの共通化を、それぞれ持株会社体制プラットフォームにおいて確立、整備することが必要不可欠であると考えております。

 

②オルタナティブ投資に対する理解の促進

 当社グループはマルチストラテジーのファンド運用会社ですが、ファンドにおける主たる投資対象はプライベート・エクイティ、インフラストラクチャー、不動産等のオルタナティブ資産になります。オルタナティブ資産は、国内外の株式、債券という伝統的な市場金融商品に対して、長期の投資期間を必要とし、流動性は劣りますが、投資対象を適切に管理することにより高いリターンが見込まれます。

 欧米を中心とする海外では、オルタナティブ投資に対する理解が進み、投資家のポートフォリオにおけるオルタナティブ資産の割合が高まっておりますが、日本では海外と比較して、オルタナティブ投資に対する理解が進んでおらず、社会的には、事業承継などのオルタナティブ投資資金へのニーズが高まっているにも関わらず、機関投資家に対するオルタナティブ投資の浸透は依然として低い水準にあります。今後の当社グループが事業拡大を図り、投資家層を拡大する上においては、日本の構造変化に対して当社グループのようなオルタナティブファンドマネージャーが果たしている役割に対する社会や市場からの理解を高めることが重要な経営課題であると考えております。

 これらの課題に対処するために、当社グループはオルタナティブ投資における国内のリーディングカンパニーとして、IR/PR活動において、ニュースリリース、セミナー等を通じてオルタナティブ投資に対する理解を促進するための積極的な情報発信を行うとともに、Spring REITやエネクス・インフラ投資法人に続く投資戦略を投資機会として提供し続けるべく、「ファンドの力で日本の今を変える」という当社グループのミッションの達成のために、当社グループの活動に対する社会的認知を促進していくことが必要不可欠と考えております。

 

③プライム市場の上場維持基準適合へ向けて

 当社グループは東京証券取引所の市場再編において、プライム市場を選択しましたが、現在においてはプライム市場の上場維持基準である流通株式時価総額100億円以上の基準を充たしていない状況にあります。今後、当社が中長期的な企業価値の向上を図る上においては、その前提として当社がプライム市場の上場維持基準を充足することが重要な経営課題になるものと考えております。

 これらの課題に対処するために、プライム市場の上場維持基準の適合に向けた計画書に記載の通り、①成功報酬の最大化、管理報酬の積み上げ、自己投資収益の拡充による中期利益計画の達成、②ビジョン、ミッション及び経営理念を基礎としたIR/PRの充実による市場評価の浸透、③持株会社をプラットフォームとした機動的な資本政策による成長基盤の確立を図ることが必要不可欠であると考えております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループは、「世界に冠たる投資グループへ」というビジョンの下、「ファンドの力で、日本の今を変える」というミッションを掲げ、そのビジョンとミッションを支える4つの経営理念、「幸せの総量を最大化する」、「クロスボーダー(国の壁、心の壁、世代の壁を超えて)」、「全ては事業のために」、「5年後の常識」を策定しています。

 当社グループのビジョン、ミッション、経営理念の実現のためには、様々な形態の投資活動による資金の有効な活用と循環を促進させるとともに、幅広いステークホルダーと信頼関係を構築し、ESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティを踏まえた中長期的視点に立って投資先企業の事業に寄り添い、事業の成長に貢献していくことが重要と考えています。

 そのため、当社及びその中核子会社株式会社マーキュリアインベストメント(以下、「MIC」という。)は、「企業行動規範」において、環境・社会・ガバナンスの課題解決と持続可能な社会の実現が重要な責務であるとの認識に立ち、関係法令及び各種規制を遵守するとともに、ESGやサステナビリティに配慮した経営の推進と社会的責任への取組を進めることを定めています。また、2021年9月に「ESG・サステナビリティポリシー」を策定し、運用を開始しています。

 

(2)ガバナンス

 当社及びMICは、ESGやサステナビリティへの対応について、事業企画部を中心とする社内タスクフォースにて管理しています。全社的な取組状況については、年1回以上、経営会議での討議を経たうえで、取締役会に報告を行っています。取締役会は、ESGやサステナビリティに関する具体的な活動の方向性や取組内容について審議及び監督を実施しています。

 なお、自己投資及びファンド運用事業の個別の投資先企業やプロジェクトについて、投資決定前に「ESG・サステナビリティチェックリスト」を用いた確認を行っており、それらの結果についても、年1回、経営会議でモニタリングを行うとともに、取締役会に報告を行っています。

 

(3)リスク管理

 当社及びMICは、ESGやサステナビリティに関するリスクとオポチュニティに関し、自己投資やファンド運用事業から生じるものが重要と考えております。

 そのため、これらの投資実行前に投資担当部署が前述のチェックリストを作成し、個別の投資案件を決定する機関(自己投資については経営会議、ファンドの投資先については投資運用委員会など)において、投資先におけるリスクと機会の両方を検討したうえで、最終的な投資の可否を決定しています。また、投資決定後も上記機関において、定期的なモニタリングを実施しています。

 なお、経営会議や投資運用委員会は、代表取締役CEOを含む常勤取締役や執行役員、主要部長で構成され、定時開催のほか、個別案件ごとに随時開催されています。

 

(4)戦略

  当社グループのサステナビリティへの戦略は、

 ① 当社グループ自身のESG強化、

 ② 投資先(当社の自己勘定による投資先やMICが運用するファンド事業の投資先を含む。)のESG強化や投資先を通じたESGへの貢献

の2種類に分けられます。

 

① 当社グループ自身のESG強化

 

〔E(環境)〕

 当社グループは、環境への取組を重要な責務として捉え、取締役会や経営会議など社内会議体資料をペーパーレス化するとともに、オフィスへのフリーアドレス制の導入やリモートワークの推進など当社グループ自身が環境に与える負荷の低減を推進しています。

 

〔S(社会)〕

 当社グループは、投資事業やファンド運用事業を行うため、社内に専門性の高い多様な人的資本を構築することが不可欠です。このため、当社は、従来から、性別、国籍に関係なく能力や実績を重視した中途採用を軸に、経験・技能・キャリアが異なる人材を積極的に採用してまいりました。

 入社後も、役職員一人一人の自律的なキャリア開発を土台にし、戦略的な人財配置を行うとともに、外部リソースも活用した教育研修制度の充実を図るなど、人材教育・育成を重要な経営課題として取組んできました。

 また多様な人材が活躍できる職場環境を整備すべく、平時より週の一定日数を在宅勤務とする制度やフレックスタイム制を導入するとともに、構成メンバーの過半数が女性からなる各部横断的なウェルネス推進室を組織し、社員の心理的安全性を高めるとともに、様々な施策の企画・実行を通じ、社員全体が幸福かつモチベーション高く働ける環境作りに努めています。

 

〔G(ガバナンス)〕

 投資事業やファンド事業を行う当社グループにとって、機動的で、透明性が高く、公正なガバナンスを構築することが重要です。取締役会の運営に関しては、毎年アンケート調査等を通じた評価を行うとともに実効性の強化に努めているほか、女性取締役の選任、独立社外取締役や外部専門家が過半数を占める指名・報酬委員会等の設置など、実効性の高いガバナンス強化のための施策を実践しています。

 

② 投資先のESG強化や投資先を通じたESGへの貢献

 

〔投資先のESG強化〕

 当社グループの投資担当者は、投資後も、ESG・サステナビリティの観点を含めて投資先のモニタリングを行っています。特に前述のチェックリストで把握されたリスクやオポチュニティについて、投資先とのエンゲージメントやバリューアップの中で、企業価値向上に向けた対応策を取るよう努めており、投資先の事業成長を通じ、持続可能性の高い社会の実現を目指しています。

 

〔投資先を通じたESGへの貢献〕

 当社グループは、国内インフラ投資法人の運用会社への出資、国内・台湾の太陽光開発事業への参画、太陽光発電施設などを投資対象とする再生可能エネルギーファンドの運用等を通じ、再生可能エネルギーの普及を推進するとともに、東南アジア2位の資産規模を誇る金融サービスグループOCBCとの間で、ASEANサステナビリティをテーマとするクレジットファンド創設に向けたパートナーシップを締結するなど、我が国も含めたアジア地域全体のサステナビリティ向上に取り組んでいます。

 環境以外の面でも、バイアウトファンドの運用を通じ、事業承継に課題を抱える中堅・中小企業へ様々な形態の投資資金を活用したソリューション提供を行うなど、社会課題の解決に向けて業務を推進しています。

 

(5)指標及び目標

 当社の気候変動に関する指標に関しては、Scope1・2のGHG排出量の実績について、当社ホームページにて開示を行っております。それ以外の指標及び目標については、開示の重要性や事業への影響も含め、引き続き検討を進めて参ります。

 当社の人的資本(人材多様性を含む)に関する指標及び目標に関しては、当社は、グループ全体での女性比率及び外国人比率を指標として採用し、その目標をそれぞれ30%と定めています。

現状、グループ全体の女性比率は51%、外国人比率は48%と、ともに目標を上回っていますが(2023年12月時点)、継続してこの目標を達成するよう、今後も、性別・国籍等の属性にとらわれない採用活動と能力・成果に応じた人事評価を継続するとともに、海外子会社では当該地域に根付いた事業展開を図るため、原則、経営層を含めローカルの外国人を採用する方針です。

 なお、当社は、高度な専門性に基づくプロフェッショナルファームであり、前述のとおり、経験や能力をベースとした中途採用を主軸としているほか、管理職への登用にあたっても、性別や国籍、中途採用などを要因に昇進・昇格に差を付けたことはないと考えております。よって、性別・国籍などの属性ごとに管理職比率の目標を定めることは、現時点において行っておりません。これらの比率を形式的に達成することを目標とするのではなく、多様性に富んだ人的資本の構築と多様性ある人材が活躍できる環境作りを進めて参ります。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、事業の性質上様々なリスクにさらされており、これらのリスクは将来の当社グループの財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。以下に、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しておりますが、当社グループの事業遂行上発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項の記述は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。

 

■事業環境に関するリスク

(1)経済環境及び投資環境に係るリスク

① 株式環境

 当社グループは、自己資金及び当社グループが管理運営するファンドの資金により投資を行い、投資先企業の株式上場による株式市場での売却や第三者等への売却によるキャピタルゲイン、並びに管理運営するファンドからの管理報酬及び成功報酬を得ることを基幹業務としております。

 このため、当社グループの経営成績及び財政状態は世界各国の株式市場及び投資対象地域の経済環境の影響を受けることとなります。世界経済が不況に陥った場合、投資先企業の業績の不振が当社グループの投資資産価値の減価につながる可能性がある他、投資資金を回収する局面において株式市場が活況でなく新規株式上場市場も低調である場合や、地震、火災、テロ、戦争等の災害の発生により経済環境が低迷し、売却交渉に悪影響を与える場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 不動産環境

 当社グループは、現在、中国にて不動産を対象としたファンドの管理運営を行っております。このため、中国での不動産市況の影響を受けることとなります。

 今後、経済のファンダメンタルズの急速な悪化や税制・金融政策の大幅な変更が行われた場合、地震、火災、テロ、戦争等(新型コロナウイルスのような感染症拡大の影響を含む)の災害が発生した場合には、不動産投資市場も中期的に悪影響を受け、投資環境が悪化し、国内外の投資家の投資マインドの低迷等が生ずる可能性があります。そのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、不動産には土壌汚染や建物の構造上の欠陥など、不動産固有の瑕疵が存在している可能性があります。当社グループは、投資不動産の瑕疵等による損害を排除するため、投資前には専門業者によるエンジニアリングレポート(対象不動産の施設設備等の詳細情報や建物の修繕履歴、地震リスクや地盤調査の結果等を記したもの)等を取得するなど十分なデューデリジェンス(投資対象の調査)を実施しておりますが、投資不動産取得後に瑕疵が判明し、それを治癒するために追加の費用負担が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 感染症の影響

 ①株式環境及び②不動産環境におけるリスクの一つとして、新型コロナウイルスのような感染症の影響が挙げられます。

 感染症の影響については、当社グループが主にファンドへのセイムボート投資として保有する営業投資有価証券及び営業貸付金について、投資先の業績の悪化や株式価値の低下を通じた、評価損失を計上する可能性があります。

 また、感染症の影響が想定よりも長期化した際には、営業投資有価証券及び営業貸付金に係る追加の評価損失計上の可能性、ファンド投資家の投資意欲の低下による新規ファンド組成の遅れによる将来の管理報酬への影響、既存ファンドにおける投資先の業績悪化、株式価値下落や投資先売却時期の遅れ等による将来の成功報酬への影響等により、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)業績変動リスク

 当社グループは、投資先企業の株式上場による株式市場での売却や第三者等への株式等売却によるキャピタルゲインを主たる収益の1つとしております。売却時における売却価額は、収益計上される会計年度の株式市況や個々の投資先企業の特性、その他様々な要因の影響を受けて想定外に変動する可能性があります。また、当社グループがファンドから受け取る成功報酬は、ファンドごとに受け取る時期が異なり、ファンドの満期が十分に分散していない現状においては、その年により受け取る成功報酬の額が大きく変動する可能性があります。その結果、会計年度によって得られるキャピタルゲインの金額が大きく変動し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3)未上場株式等への投資に係るリスク

 当社グループは、未上場株式等を投資対象としており、未上場株式等への投資については以下のようなリスクがあります。

① 当社グループが投資対象とする未上場企業は、成長過程にある企業であるため、収益基盤や財務基盤が不安定であったり、経営資源も限られるといったリスク要因を内包しております。そのため、投資後に企業価値が低下したり、倒産するなどして損失が発生する可能性があります。

② 当社グループによる未上場株式等への投資から株式上場もしくは第三者等への売却に至るまでには通常長期間を要するため、途中で業績悪化等により当該投資先の企業価値が当初の見込みと異なって変動する可能性がある他、経済環境や株式市場動向等外部要因の影響を受けて投資採算が当初の見込みと大幅に異なり、キャピタルゲインの減少、もしくはキャピタルロスや評価損が発生する可能性があります。

③ 当社グループが投資対象とする未上場株式等は、上場企業の株式等に比較して流動性が著しく低いため、投資回収において、その取引参加者の意向により取引条件が大きく変動し、当社グループの希望する価額・タイミングで売却できる保証はなく、キャピタルロスが発生したり、長期間売却ができない可能性があります。

 

(4)株価下落等のリスク

 当社グループは、投資先企業の株式上場等により、市場性のある株式を保有しております。株式市場において株価が下落した場合、保有有価証券に評価損が発生する恐れがあるとともに、株式売却によって得られるキャピタルゲインが減少するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 また、新規上場銘柄のうち一部の銘柄につきましては、各証券取引所の関連規則又は投資先企業との契約によって上場後一定期間売却が制限されることがあります。当該期間中に株価が上昇した場合には、売却機会を逃すことによる機会損失が発生する可能性があります。

 

(5)為替リスク

 当社グループは、Spring Asset Management Limitedで計上するSpring REITからの営業収益が連結営業収益に占める割合は、当連結会計年度において24.4%になります。Spring REITからの営業収益は香港ドルでの取引となりますので、香港ドルの為替の変動によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、海外での地域分散投融資を行っているため、保有する外貨建資産につきましては、外国為替の変動の影響を受けます。

 

(6)他社との競合に係るリスク

 投資運用業、特に投資助言業は、金融業界の他業種に比べると参入障壁が比較的低い業種であり、常に国内外からの新規参入者との競合を覚悟する必要があります。また、グローバルレベルでの資産運用ニーズの高まりは資産運用業界全体にとっての追い風ではありますが、これにより新規参入が将来にわたってさらに促進される可能性があると共に、国内外の大手金融機関が資産運用サービスを経営戦略上重要なビジネスと位置づけ、積極的に経営資源を投入してくるケースも想定されます。また、業界内での統廃合によって、当社グループの競合他社の規模や体力が増強されることがあります。さらに、競合他社が当社グループのファンドマネージャーやその他の従業員の移籍・採用を図る可能性もあります。

 この様に他社との競合は激化していくことが予想され、その場合には、顧客の獲得や維持に困難が生じるだけでなく、管理報酬料率や成功報酬料率の水準にも影響を及ぼし、当社グループの業績に影響が及ぼす可能性があります。

 

(7)ファンド運用に係る訴訟リスク

 当社グループが無限責任組合員又はゼネラルパートナーとしての善管注意義務違反により、訴訟等を受ける可能性があり、損害賠償義務を負った場合は、損害賠償に加えて社会的信用が低下し、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)投資先企業への役員派遣に係る訴訟リスク

 当社グループは投資先企業の価値向上のため、役職員を投資先企業の役員として派遣することがあります。その役職員個人に対し役員損害賠償請求等があった場合、当社グループがその個人に生じた経済的損失の全部又は一部を負担する可能性があるほか、当社グループに使用者責任が発生する可能性があります。

(9)法的規制に係るリスク

①全般

 当社グループは、本邦、香港、ケイマン諸島などのオフショアと呼ばれる地域各国において、ファンド運用事業及び自己投資事業等を行っているため、これらの地域における法的規制(会社法、金融商品取引法、独占禁止法、租税法、投資事業有限責任組合契約に関する法律、外国為替管理法、財務会計関連法規等)の適用による影響を受けるほか、これらの規制との関係で費用が増加する場合があり、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

②金融商品取引法

・金融商品取引業登録

 当社グループは、ファンドの私募の取扱い又はファンド運用事業につき金融商品取引法第29条に基づき第二種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業を行うための登録を行っております(有効期限:なし)。当社グループは、金融商品取引法に基づく規制に服しており、現時点において当該事業の業務遂行に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、金融商品取引法第52条第1項(金融商品取引業者に対する監督上の処分)の各号の一つに該当する場合には、金融商品取引業登録を取消されるため、将来的に法令違反その他何らかの理由により、同法第52条第1項に基づき上記の登録について取消等の処分を受けた場合、ファンド運用事業の業務遂行に支障をきたすと共に、当社グループの社会的信用力が低下し、事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・適格機関投資家等特例業務及び特例投資運用業務

 当社グループは、ファンド運用事業につき金融商品取引法第63条に基づく適格機関投資家等特例業務及び同法附則第48条第1項に基づく特例投資運用業務を営むに当たり、届出を行っております。この届出により当社グループが運用するファンドは、法律上求められる一定の要件を満たす必要があります。現時点において当該事業の業務遂行に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、将来的にこれらの要件を満たせなくなった場合又は適用法令の解釈の変更その他何らかの理由により適格機関投資家等特例業務又は特例投資運用業務に該当しなくなった場合、当該事業の業務遂行に支障をきたす可能性があり、その場合には当社グループの社会的信用力が低下し、事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③不動産投資顧問業登録規程

 当社グループは、ファンド運用事業において、不動産投資についての投資助言業務及び不動産投資についての投資一任契約に基づく不動産取引等を行うために、不動産投資顧問業登録規程第3条第1項に基づき不動産投資顧問業の登録を行っています(有効期限:2025年10月)。現時点において当該事業の業務遂行に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、将来的に法令違反その他何らかの理由により、同規程第30条に基づき上記の登録の取消等の処分を受けた場合又は登録の更新を行わないまま登録の有効期限を徒過した場合、ファンド運用事業の業務遂行に支障をきたすと共に、当社グループの社会的信用力が低下し、事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④宅地建物取引業法

 当社グループは、不動産投資顧問業の登録の前提となる、宅地建物取引業第3条第1項に基づき宅地建物取引業の免許を取得しています(有効期限:2025年8月)。現時点において上記の免許の維持に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、将来的に法令違反その他何らかの理由により、同法第66条に基づき上記の免許の取消等の処分を受けた場合又は免許の更新を行わないまま免許の有効期限を徒過した場合、宅地建物取引業の免許を失うことにより、不動産投資顧問業の登録が取り消されることになり、ファンド運用事業の業務の遂行に支障を来すと共に、当社グループの社会的信用力が低下し、事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤香港証券先物条例(Securities And Futures Ordinance,Cap.571)

 当社の子会社であるSpring Asset Management Limitedは、香港市場において上場しているSpring Real Estate Investment Trustの管理業務を行うに当たり、香港証券先物委員会よりType9(アセットマネジメント)のライセンスを受けております(有効期限:なし)。また、Spring Real Estate Investment Trustは、同条例に基づき、上場の認可を得ています。現時点において当該事業の業務遂行に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、Spring Real Estate Investment Trustの認可が取消された場合、Spring Real Estate Investment Trustの運用会社でなくなった場合には、ライセンスを取消されるため、ライセンスの取消等がなされた場合、当該事業の業務遂行に支障をきたすと共に、当社グループの社会的信用力が低下し、事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(10)資金調達に係るリスク

 当社グループは、無限責任組合員又はゼネラルパートナーとして、ファンドの収益を直接享受する目的で自ら管理運営するファンドに自己資金による投資を行っておりますが、今後、資金調達が想定通りにいかない場合には、ファンドの運用に支障をきたす恐れがあります。また、自己資金による投資資金の調達を多額の借入金により調達する場合には、有利子負債が増加する可能性があり、当社グループの財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

■事業体制及び業績に関するリスク

(1)小規模組織であることについて

 当社は、当連結会計年度末現在において、取締役8名、監査役3名(うち非常勤監査役2名)、グループ全体で従業員数115名と小規模組織であり、内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社グループでは、今後の事業拡大に対応すべく人員増強等によりさらなる組織力の充実を図っていく所存でありますが、人材の確保及び内部管理体制の充実が円滑に進展しない場合、既存の人材が社外に流出した場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定人物への依存について

 当社の代表取締役である豊島俊弘は、最高経営責任者として経営方針や事業戦略の決定に加え、投資案件の発掘等、当社グループの事業推進上、重要な役割を果たしております。

 このため当社では、代表取締役へ過度に依存しない経営体制を目指し、人材採用、育成による経営体制の強化を図り、経営リスクの軽減に努めておりますが、不測の事態により、同氏が当社の経営者として業務を遂行することが困難になった場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)有能な人材の確保、育成について

 当社グループの営む事業は、金融及び不動産の分野において高い専門性と豊富な経験を有する人材により成り立っており、今後の事業展開において有能な人材を確保・育成し、成長への基盤を確固たるものとする方針であります。しかし、必要とする人材の確保・育成が計画どおりに実現できなかった場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 また、人材の確保・育成が順調に行われた場合でも、採用・研修に係るコスト、人件費等の固定費が増加することが想定され、当該コスト増に見合う収益の成長がない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)個人情報の取扱いについて

 当社グループでは、事業活動を通じて取得した個人情報及び当社グループの役職員に関する個人情報を保有しております。当社グループでは、個人情報の取扱いについては個人情報保護規程を策定の上、細心の注意を払っております。

 しかしながら、万一、当社グループの保有する個人情報が外部に漏洩した場合あるいは不正使用された場合には、信用の失墜又は損害賠償等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)特別目的会社の連結に係る方針について

 当社グループがファンドの組成のために設立し、管理運営業務を受託している特別目的会社(SPC)については、当社グループの匿名組合出資比率や支配力等の影響度合いを勘案し、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)、及び「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第20号)等に基づき、個別に連結の要否を決定しております。

 当連結会計年度末現在において、当社グループが顧客の資産を運用するファンドに係るSPCについては、顧客との共同投資(セイムボート投資)の有無にかかわらず、当社グループが実質的な支配力を有していない、または連結の範囲に含めることで利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあるため、上記の会計基準をふまえ、連結の範囲に含めていないものがあります。

 今後、SPCの連結の範囲に関する会計基準が改正された場合には、当社グループの連結の範囲に変更が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、今後においては、連結の範囲にSPCが含まれることとなるようなセイムボート投資を行うことを想定しておりませんが、個別に連結の要否を判断した結果、セイムボート投資に係るSPCが連結の範囲に含まれることとなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)特定事業への依存について

 当社グループでは、当社子会社であるSpring Asset Management Limitedにおいて香港証券取引所へ上場しているSpring REITの管理運営を行っております。

 2023年12月期連結財務諸表において、当社グループ連結営業収益に対してSpring REITからの営業収益は24.4%を占めておりますので、Spring REITの業績の変動により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 Spring Asset Management LimitedはSpring REITからの管理報酬の一部をREIT投資口にて受け取っておりますので、香港ドルの為替の変動及びSpring REITの投資口価格の変動により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、Spring REITにおいて管理報酬体系の変更や管理運営会社の変更がなされた場合には、Spring Asset Management Limitedにおいて管理報酬の減額や管理報酬の喪失が生じますので、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自己勘定投資(自己資金による投資)が業績に与える影響について

 当社グループは、ファンド組成上の要請に応じて、顧客との共同投資(セイムボート投資)の形で、当社グループが管理運営を行うファンド等に対して投資を行っております。

 これらの自己勘定投資については、投資リスクの吟味のため、社内諸規程に従い経営会議、取締役会等により慎重な審議を経た上で行うこととしておりますが、外部環境の悪化等により投資収益が悪化し、あるいは投資対象の評価損が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)配当政策について

 当社は、株主への利益還元を経営の最重要課題として認識しており、内部留保を確保しつつ、財政状態及び経営成績並びに経営全般を総合的に判断し、業績に応じた株主への利益還元を継続的に行っていくことを基本方針としております。

 当期の配当金は、この基本方針の下で、1株当たり21円の配当を実施することを決定いたしました。

 なお、今後の配当実施の可能性及び実施額等については未定であります。

 

(9)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、企業価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲を高めることを目的として、役員及び従業員にストックオプション(新株予約権)を付与しております。当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は84,600株であり、同日現在の発行済株式総数21,500,100株の0.4%に相当しており、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化することになります。

 

(10)親会社等との関係について

 本書提出日現在において、当社の発行済株式は、㈱日本政策投資銀行に21.22%所有されており、当社は同社の関連会社となっております。同社に関する当社株式への出資は成長投資、バイアウト投資及び不動産投資等の分野において協業を行うための投資であります。当社グループとしては今後も同社との協業を継続していく方針です。

 また、同社グループに当社と同様の事業を営む会社はあるものの、事業領域が異なることから、現在競合となりうる状況は発生しておらず、今後発生する見込みも現時点ではありません。

 今後、同社の経営方針の変更により、出資比率等が変更になる可能性があります。その場合、当社の事業展開及び業績に何らかの影響を及ぼす可能性があります。

 

1)役員の招聘

 本書提出日現在において、以下の通り同社の役職員との兼任状況が継続しておりますが、業務・管理両面からの経営体制の強化を図る目的で、広い視野と経験に基づいた経営全般の助言を得ることを目的としているものであります。

当社グループにおける役職

氏名

各社における役職

取締役(非常勤)

島田 昂樹

㈱日本政策投資銀行

企業投資第2部調査役

 

2)従業員の受入れ

 当社グループは人事交流のため、同社から3名の出向者を受け入れております。なお、受入出向者は、当社グループの重要な意思決定に大きな影響を与える職位ではありません。

 

3)ファンドへの出資

 当社グループが運営するファンドに対して、同社から出資を受け入れております。

 

(11)資金使途について

 2021年12月期に実施した新株発行による調達資金の使途は、バイアウトファンドへの自己投資(セイムボート投資)資金及びインフラファンドへの自己投資(セイムボート投資)資金として充当する方針であります。

 当社グループは、これらの計画の実現に注力いたしますが、外部環境の変化等により、現時点における資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。また、当初想定通りの時期に投資できない場合や、投資が実現した場合でも、当初想定した収益の確保が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)プライム市場の上場維持基準について

 当社グループは東京証券取引所の市場再編において、プライム市場を選択しましたが、現在においてはプライム市場の上場維持基準である流通株式時価総額100億円以上の基準を満たしていない状況にあります。

 プライム市場の上場維持基準適合に向けた計画書においては、①成功報酬の最大化、管理報酬の積み上げ、自己投資収益の拡充による中期利益計画の達成、②ビジョン、ミッション及び経営理念を基礎としたIR/PRの充実による市場評価の浸透、③持株会社をプラットフォームとした機動的な資本政策による成長基盤の確立を図ることを掲げ、上場維持基準を充足させるために取り組んでまいりますが、当該基準を充足することができなかった場合には、プライム市場において当社株式の上場を維持することができず、株価又は株式の流動性に悪影響を及ぼすとともに、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し、行動制限の緩和やインバウンド需要の回復などにより、経済活動及び社会活動の正常化が進み、国内経済は回復基調にあります。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による資源価格の高騰や円安進行、これらを背景とした物価の上昇、さらにはインフレリスクに対応した欧米諸国での政策金利の引き上げといった世界的な金融引き締めが続くなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような環境の下で、当社グループでは中長期的な成長を目指し、既存ファンドにおいて、子会社である株式会社マーキュリアインベストメントが管理運営を行う「あすかDBJ投資事業有限責任組合」にて保有株式の売却により投資回収を行うことにより、成功報酬を計上しました。また同じく管理運営を行い、昨年組成いたしました本邦中堅企業等の事業承継をテーマとした「マーキュリア日本産業成長支援2号投資事業有限責任組合(バイアウト2号ファンド)」については、生命保険会社や損害保険会社、年金基金、都市銀行、地方銀行、海外投資家など、様々な投資家層から新たに出資を受け、当初目標を上回る募集金額にて最終クローズを迎え、小型機を主な投資対象とする航空機ファンドの2号ファンドについては、クローズを迎え、3機の航空機の買い付けを行いました。

 新規ファンドにおいては、日本経済の持続的成長に不可欠なインフラ領域における投資戦略の一環として、三井住友信託銀行が組成したジャパン・インフラストラクチャー第一号投資事業有限責任組合につき、その投資助言を行うジャパン・エクステンシブ・インフラストラクチャー株式会社へ出資参加し、事業参画いたしました。

 一方で、自己投資事業において、リファイナンスに伴うリストラクチャリングの過程で、Spring REIT ユニットの譲渡取引を行ったことにより、当社グループが保有する営業投資有価証券に係る損失を計上することとなりました。

 この結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、営業収益5,842,006千円(前年同期比27.0%増)、経常利益1,520,356千円(前年同期比31.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,055,031千円(前年同期比32.5%減)となりました。対前年同期比では、営業収益については増加しておりますが、これは主に上述した自己投資事業におけるリストラクチャリングの過程で、Spring REIT ユニットの譲渡取引を行った結果、多額の営業収益を計上したことによるものであります。また、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益の減少については、上述したSpring REIT ユニットの譲渡取引により生じた損失に加え、前連結会計年度において発生した「マーキュリア日本産業成長支援投資事業有限責任組合(バイアウト1号ファンド)」が保有する株式の売却取引に伴うファンド投資持分利益の計上及びSpring REITにおける、物件の取得完了にかかる成功報酬の計上が当連結会計年度になかったことによるものであります。

 

 なお、当社グループは投資運用事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 

 

 

(単位:千円)

 

2022年12月期実績

2023年12月期実績

営業活動によるキャッシュ・フロー

△349,429

1,242,052

投資活動によるキャッシュ・フロー

△583,046

497,847

財務活動によるキャッシュ・フロー

△796,974

△1,740,465

換算差額他

68,161

60,242

現金及び現金同等物の期末残高

2,943,477

3,003,153

 

 当社グループでは2016年12月期の東京証券取引所への上場時、2017年12月期の東京証券取引所市場第一部への市場変更時及び2021年12月期に実施した新株発行による公募増資により調達した資金について、当社が運営するファンドへのセイムボート投資及び先行投資(タイミングブリッジ投資)に充当して参りました。

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末から59,676千円増加し、3,003,153千円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローについては、当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、1,242,052千円となりました(前期は349,429千円の使用)。主な要因としては、税金等調整前当期純利益1,500,856千円の計上に加え、営業投資有価証券が335,711千円減少したこと、及び法人税等の支払額が648,049千円あったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローについては、当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は、497,847千円となりました(前期は583,046千円の使用)。主な要因としては、関係会社(非連結子会社)に対する貸付金の回収(520,000千円)及び有形固定資産の取得による支出(51,330千円)があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローについては、当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、1,740,465千円となりました(前期は796,974千円の使用)。主な要因としては、配当基本方針に従い配当金の支払い(410,020千円)、自己株式の取得による支出(528,948千円)、短期借入金の返済による支出(100,000千円)及び長期借入金の返済による支出(743,500千円)があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループで行う事業につきましては、投資運用事業の単一セグメントであり、生産、受注、販売実績を定義することが困難であるため、これらに代わるものとして、投資残高、営業収益及び営業総利益を記載しております。

 

a. 投資業務の実績

投資残高

科目

当連結会計年度末

(2023年12月31日現在)

前年同期比(%)

運用資産残高      (千円)

329,666,160

11.0

 

b. 営業収益及び営業総利益

① 営業収益

科目

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

ファンド運用事業    (千円)

3,019,501

9.8

自己投資事業      (千円)

2,345,845

50.1

その他         (千円)

476,661

66.5

合計(千円)

5,842,006

27.0

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の営業収益及び当該営業収益の総営業収益に対する割合は次のとおりであります。

営業収益計上先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

SR Focus L.P.

599,960

13.0

1,788,217

30.6

Spring Real Estate Investment Trust

1,516,393

33.0

1,428,058

24.4

マーキュリア日本産業成長支援2号投資事業有限責任組合

415,132

9.0

954,972

16.3

マーキュリア日本産業成長支援投資事業有限責任組合

873,852

19.0

201,529

3.4

 

② 営業総利益

科目

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

ファンド運用事業    (千円)

3,019,501

9.8

自己投資事業      (千円)

536,948

△60.5

その他         (千円)

476,661

66.5

合計(千円)

4,033,109

△8.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計上の見積り」に記載のとおりでありますが、営業投資有価証券及び営業貸付金に係る重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼす場合があります。

 

 当社グループでは、運営するファンドに対するセイムボート投資として、営業投資有価証券及び営業貸付金を保有しております。

 市場価格のない株式等以外のものについては、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。市場価格のない株式等については、投資先の財政状態の悪化による実質価額の著しい低下の有無等により減損処理の要否を、営業貸付金については、回収可能性の判断に基づき貸倒引当金の要否を検討しております。

 減損処理の要否を検討する際の投資先の実質価額の見積り、及び貸倒引当金の要否を検討する際の回収可能性の見積りについては、投資先の財政状態、損益の状況、投資時事業計画との乖離状況、将来キャッシュ・フローの状況等を勘案して、検討を行っております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)経営成績の分析

 

(単位:千円)

 

2022年12月期

実績

2023年12月期

実績

対前期比

2023年12月期

業績予想

対業績

予想比

ファンド運用事業

2,748,938

3,019,501

110%

 

 

 管理報酬

2,437,537

2,996,950

123%

 

 

 成功報酬

311,401

22,551

7%

 

 

自己投資事業

1,563,297

2,345,845

150%

 

 

その他

286,208

476,661

167%

 

 

営業収益

4,598,442

5,842,006

127%

5,800,000

101%

営業原価

203,557

1,808,897

889%

 

 

営業総利益

4,394,885

4,033,109

92%

3,600,000

112%

販売費及び一般管理費

2,340,031

2,689,279

115%

 

 

営業利益

2,054,854

1,343,830

65%

1,000,000

134%

経常利益

2,207,508

1,520,356

69%

1,200,000

127%

親会社株主に帰属する当期純利益

1,562,581

1,055,031

68%

800,000

132%

 

(営業収益)

 ファンド運用事業において、主にバイアウト2号ファンドの組成により管理報酬が増加したことにより、ファンド運用事業の営業収益は、3,019,501千円(前期比9.8%増)となりました。

 また、自己投資事業において、リファイナンスに伴うリストラクチャリングの過程で、Spring REIT ユニットの譲渡取引を行った結果、多額の営業収益を計上したことにより、自己投資事業の営業収益は、2,345,845千円(前期比50.1%増)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の営業収益は5,842,006千円(前期比27.0%増)となりました。

 

(営業原価)

 当連結会計年度は、前連結会計年度と比較して1,605,340千円増加し、1,808,897千円(前期比788.6%増)となりました。これは、主に上述した自己投資事業におけるリファイナンスに伴うリストラクチャリングの過程で、Spring REIT ユニットの譲渡取引を行った結果、当社グループが保有する営業投資有価証券に係る損失を計上したことによるものであります。

 この結果、営業総利益は前連結会計年度より361,776千円減少し4,033,109千円(前期比8.2%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度は、前連結会計年度と比較して349,248千円増加し、2,689,279千円(前期比14.9%増)となりました。

 この結果、営業利益は前連結会計年度より711,024千円減少し1,343,830千円(前期比34.6%減)となりました。

 

(営業外損益)

 当連結会計年度は、前連結会計年度と比較して営業外収益は30,600千円増加し201,120千円(前期比17.9%増)となりました。これは、主に為替差益74,468千円及び持分法による投資利益63,057千円の計上によるものであります。

 また、営業外費用は6,729千円増加し24,594千円(前期比37.7%増)となりました。これは主に、融資関連費用13,500千円の計上によるものであります。

 この結果、経常利益は前連結会計年度より687,152千円減少し、1,520,356千円(前期比31.1%減)となりました。

 

(特別損益)

 当連結会計年度における特別損益は、特別損失として投資有価証券評価損を19,500千円計上しました。

 税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ706,652千円減少し1,500,856千円(前期比32.0%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度より507,550千円減少し1,055,031千円(前期比32.5%減)となりました。

 

 

(b)財政状態の分析

(単位:千円)

資産

2022年12月末

残高

2023年12月末

残高

2023年12月末構成比

負債/純資産

2022年12月末

残高

2023年12月末

残高

2023年12月末構成比

現金及び預金

3,013,477

3,003,153

15%

借入金

843,500

-%

営業未収入金

603,901

713,190

4%

その他負債

1,597,481

1,414,522

7%

営業投資有価証券/営業貸付金

14,018,292

14,379,318

73%

負債合計

2,440,981

1,414,522

7%

投資有価証券

307,454

243,084

1%

自己資本

16,627,674

17,093,435

87%

その他資産

2,039,944

1,316,606

7%

その他純資産

914,412

1,147,394

6%

資産合計

19,983,067

19,655,351

100%

純資産合計

17,542,086

18,240,829

93%

 

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して327,717千円減少して19,655,351千円となりました

 これは主にバイアウト2号ファンド及び航空機2号ファンドの出資約束金額履行及び保有有価証券に係る時価評価の影響等により営業投資有価証券が275,742千円増加した一方で関係会社からの貸付金の回収により関係会社短期貸付金が520,000千円減少したことによるものです

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債総額は前連結会計年度末と比較して1,026,459千円減少して1,414,522千円となりましたこれは主に短期借入金が100,000千円未払法人税等が294,382千円減少したことさらに上述した自己投資事業におけるリファイナンスに伴い1年内返済予定の長期借入金が130,000千円及び長期借入金が613,500千円減少したことによるものです

 

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産額は前連結会計年度末と比較して698,743千円増加して18,240,829千円となりました

 これは主に自己株式が526,630千円増加(純資産は減少)した一方で利益剰余金が521,271千円その他有価証券評価差額金が315,014千円非支配株主持分が232,992千円増加したことによるものです

 

(c)キャッシュ・フローの状況

 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

 

(d)資本の財源及び資金の流動性の状況

 当社グループの資金需要のうち主なものは、投資対象への自己投資資金(間接投資やファンド経由の出資となる場合を含みます)及び人件費をはじめとした販売費及び一般管理費等であります。

 これらの資金需要に対応するための財源は、営業活動によるキャッシュ・フローで得られる自己資金、及び新株発行により調達した資金とすることを基本方針としておりますが、必要に応じて金融機関からの借入等により調達していく考えであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。