文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営理念「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」を掲げ、人々の健康と快適な生活の実現に真摯に向き合い、高品質な商品を提供し続けることで、社会と共に着実な成長を遂げております。また、経営理念の実現に向け、以下の行動様式(アースポリシー)及び価値観(アースバリュー)を定めております。
(アースポリシー)
・ お客様目線による市場創造
・ 熱意・創意・誠意
・ すぐやる・必ずやる・最後までやる
(アースバリュ-)
・ 全員参画
・ コミュニケーション
・ 人がすべて
当社グループを取り巻く経営環境を以下のように認識しております。
国内においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行による行動制限の緩和などにより、社会・経済活動の正常化が進む一方、急速な為替変動、地政学リスクの高まりに起因する資源価格の高騰等は、2023年度も当社グループの事業に大きな影響を与えました。一部の資源価格は落ち着きの様相を見せているものの、当社グループの製品への影響は依然として継続するものと考えています。また、急激な物価高騰に対して消費者の節約志向は高い状態が続いており、当社グループへの影響を注視する必要があります。
海外においては、中国ではゼロコロナ政策解除後の経済回復に弱さが見られ、先行きは不透明な状況が続くものと考えています。一方、東南アジアでは域内各国によってバラつきはあるものの、底堅い内需を下支えに経済成長が続くものと考え、当社グループの取り組みがマッチし、高い成長が期待されると推察しています。
主要な顧客層である食品関連業界をはじめ、医薬品関連業界、包材関連業界において異物混入対策などの衛生管理対策ニーズは高水準であり、全体的な事業環境は好調を持続すると考えています。しかし、労働人口の低下や物流の「2024年問題」、ウクライナの情勢不安の長期化などに起因するコストの高騰に伴い、これまで締結している契約内容の縮小もしくは解約を要望する顧客側の動きなど、事業成長を一時的に抑圧する要因も抱えています。
当社グループは経営理念「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」のもと、社会課題の解決と事業収益拡大の両立を中核に据えた2021年~2023年(3ヵ年)の中期経営計画「Act For SMILE - COMPASS 2023 -」を2021年2月に公表しております。事業環境の変化に対応すべく、当社グループは一丸となって取り組んでまいりましたが、当初掲げた利益目標には届かず、依然として収益性に課題を残しております。
こうした状況の中、「グループの総力、アースの明日へ」をスローガンに掲げ、2026年度までの中期経営計画「Act For SMILE - COMPASS 2026 -」を策定し、2024年度よりスタートいたします。この3ヵ年は、グループ再編を中心とした抜本的な構造改革を行う期間と位置付け、変化の激しい事業環境の中でも持続的な成長を続けていくための変革を確実に実行してまいります。
コロナ禍における巣ごもり需要を背景に、虫ケア用品や入浴剤などの市場が拡大し、2020年12月期の業績は営業利益・フリーキャッシュフローともに2019年に比べて大幅に増加しました。こうした財務面での追い風を背景に当社グループにおいては、消費者の行動変容に対応するため、住居関連(住居用洗剤、除菌関連製品など)、介護用品などのカテゴリ拡張を進めてまいりました。
一方で、急激な円安と相次ぐ原材料の高騰を受け、2023年は当社グループにおいても製品の販売価格改定を余儀なくされました。虫ケア用品については高い市場シェアを背景に当初見込んだとおりの結果となった反面、日用品の主要カテゴリである入浴剤・洗口液では、市場規模の縮小に伴い競争環境が激しくなる中、当社の市場シェアが低下傾向となり、価格改定施策の効果が想定どおりにはならなかったため、方針を見直しました。今後、注力カテゴリの選択と集中を行い、入浴剤・洗口液などへマーケティングの資源配分を高めブランド力・WTP(Willingness to Pay:支払意思額)向上による収益力強化を図ります。
また、これまでも課題となっていた虫ケア用品の返品について、廃棄ロスの低減を目的として、2028年には返品をゼロとする方針を打ち出し、営業部門・SCM(サプライチェーンマネジメント)部門を中心に積極的に推進します。こうした取り組みにより環境負荷の低減はもちろん、廃棄費用の削減による利益率の改善を見込んでおります。
このような収益構造改革の背景には、前中期経営計画期間中に構築した基幹システムが大きく貢献することが期待されます。生産管理から販売管理までを一元的にデータ連携したシステムにより需給調整機能を進化させ、欠品の防止と在庫の抑制を行い、スループットを拡大させ、キャッシュ・フローの改善を目指してまいります。さらに、前中期経営計画期間に整備した管理会計システムにより、月次ベースでの収益性の可視化を実現しており、目標に対するモニタリング体制を整え、早期の課題発見と軌道修正を行ってまいります。
前中期経営計画においても、「アジア収益基盤の拡大」を掲げ、ASEANを中心に積極的に事業を展開してまいりました。2023年度末において当社管理会計ベースでの海外売上高は175億円となっており、全体の売上の約1割を占める割合となっております。売上規模拡大に伴い、全体最適の視点で製品の供給を整えていく体制の整備が急務となっております。そのために、エリアごとの販売戦略を定め、中長期の販売計画を立案するとともに、M&A等を通して生産体制の構築を行ってまいります。
海外事業においては、現地法人による積極展開と輸出ビジネスの2軸で展開してまいります。現地法人による積極展開について、タイでは2025年の目標としている虫ケア用品の市場シェアNo.1奪取を起点に消臭芳香剤・洗口液の市場浸透を進めてまいります。ベトナムでは市場の成長を背景に、虫ケア用品の新商品の投入や家庭用洗剤を軸にした納入店舗の拡充、市場シェアの拡大を目指します。一方で、前中期経営計画期間中に新たに進出したフィリピン・マレーシアについては販売ルートの開拓と事業基盤の構築を進めています。加えて、中国では市場減速の影響を受け、事業戦略の見直しが必要になっています。
輸出については、現在の主要展開国・エリアである中東や台湾向けに加えて、北米での展開拡大を進めてまいります。
こうした海外事業を推進していくために、ガバナンス強化が急務であり、マネジメント機能の充実と収益管理体制を構築してまいります。このような積極的な事業拡大を支えるためにグローバル人財の育成・採用に積極的に投資してまいります。
当社は積極的なM&Aを進めて、事業及び製品領域を拡大させてまいりました。一方で、グループ、国内外を跨いだコスト改革、シナジーについてはこれまでも取り組んでまいりましたが、十分な成果を創出することができませんでした。こうした状況を打破するため、全社最適の観点で変革をリードする「経営戦略本部」を設置いたしました。この体制のもと、機能強化と効率化の観点から抜本的な組織体制の見直しを行い、グループ全体でのガバナンス強化、成長分野へのリソースの再配分、撤退を視野に入れた不採算事業・資産の見直しを行ってまいります。
食品や医薬品、医療についての安全基準に対する国際的な調和の流れや、国内における法改正などを背景に、自社における衛生管理が強く求められております。こうした中、主要なお客様である食品関連業界や医薬品関連業界、包材関連業界においては、当社グループが専門的な知識や技術、ノウハウを提供する高品質な衛生管理サービスへのニーズは依然として高い状況です。
こうした状況のもと、より高品質なサービスを提供するための体制づくりを行うとともに、今後の業容拡大に向けて、教育訓練用細胞培養加工施設の活用など彩都総合研究所(大阪府茨木市)を拠点とした研究・開発や人財育成、およびIoT・AIなどのデジタル技術を活用したサービスなど、お客様へのサービス向上、業務効率改善を目的とした投資を進めてまいります。また、農業分野への参入など、新事業開発に向けたプロジェクトを立ち上げ、事業計画の立案、検討を行ってまいります。
以上の取り組みを進めることにより、新中期経営計画の最終年度である2026年は構造改革の成果の一部が顕在化し始めるものの、あくまで通過点であると認識しています。2024年~2026年の3ヵ年は準備期間と捉え、2027年以降の飛躍的な成長を目指してまいります。
2026年12月期の定量目標を以下のとおりに定めました。
なお、当該定量目標の各数値については、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(注)海外売上高は、当社管理会計ベースの数値であり、内部相殺取引などの連結調整は含みません。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、2021年にサステナビリティ基本方針を策定しました。
策定にあたっては、事業を推進する各部署の代表メンバーが集まり、サステナビリティを浸透させるために必要な要素や、言葉、当社グループらしさを尊重しながら議論を重ねました。この方針をもとに、持続可能な事業の実現に向けた取り組みを推進していくことを社内外に示していきます。
当社は、サステナビリティ基本方針のもと、ESGの3分野を俯瞰し、サステナビリティ活動を効果的かつ円滑に推進していくため、グループ経営統括本部内に「CSRサステナビリティ推進部」を設置しました。また、社長が委員長を務め、現場でサステナビリティ活動を推進する常設組織「CSRサステナビリティ推進委員会」を設置し、CSRサステナビリティ推進部とともに、活動計画や目標・KPIの設定、目標・KPIの全社的な共有、目標達成に向けた取り組みの推進、進捗状況のモニタリング、活動内容の社内共有やサステナビリティレポート、ESGデータブック等の作成を行い、ステークホルダーの期待を踏まえた適切な情報発信に取り組んでいます。CSRサステナビリティ推進委員会で協議された内容や活動状況は定期的に経営層へ報告され、経営層による検討・意思決定が必要な重要事項については取締役会にて報告・検討される体制をとっています。
当社グループが長期にわたり発展し続けるためには、様々な社会課題の企業活動への影響を認識、評価し、経営上の重要課題を明確にする必要があると考え、重要課題とそれらに対する目標・KPIを定めました。各課題に対して重点テーマを定め、当社グループの事業特性や経営資源を活かした取り組みを進めてまいります。
アース製薬のマテリアリティ(重要課題)
サステナビリティ経営において、ESGの視点で事業を取り巻く様々なリスクを認識しています。リスクに対する未然防止やクライシス発生に対する適切な対応、リスクから見いだされる事業機会の創出の観点からリスクマネジメントの必要性を認識し、さらなる経営基盤の強化を図ります。
上記のガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社における重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・気候変動
・人的資本
それぞれの項目に係る当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識するとともに、気候変動関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言への賛同を表明しています。気候変動の取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上に繋がるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、当社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、当社は SDGs やパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。
取締役会は、当社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等の見直し・指示にあたり、コーポレートガバナンス推進委員会への諮問を経て、気候変動関連事項を考慮しています。また、気候変動関連事項に対処するための指標と目標に対する進捗状況については、代表取締役社長CEO が、取締役会へ報告することで、取締役会による適切な監督が行えるよう体制を整えております。
代表取締役社長CEO は、気候変動関連事項における当社の経営責任を負っています。この責任には、気候変動関連事項の評価やマネジメントが含まれています。
グループ経営統括本部内に設置された脱炭素経営推進ワーキンググループが、気候変動関連に関する事項を所管し、社内関係部署と協働で気候変動関連リスクと機会の状況を把握します。代表取締役社長CEO は、グループ経営統括本部から重要リスク・機会の報告を受け、取締役会に上程し、取締役会の諮問機関であるコーポレートガバナンス推進委員会にて審議された後、取締役会が最終的に当社の重要な気候変動関連リスク・機会を決定します。特定した気候変動関連リスク・機会への対応方法および優先順位の策定にあたって、脱炭素経営推進ワーキンググループが社内関係部署と協働で、それぞれ軽減・移転・受入・制御といった対応を検討します。
当社は、脱炭素社会への移行に伴い、不確実性の高い将来を見据えどのような気候変動関連リスクと機会が顕在化しうるかについて、TCFD提言に基づき、脱炭素への取り組みが進んだ1.5℃のシナリオと現状のまま社会が進んだ場合の現行(4℃)のシナリオをそれぞれ分析し、2030年における事業インパクト評価を行いました。
(当社事業に与える影響度が「大」となる主な要因と対応)
〈シナリオ分析の前提条件〉
分析対象:アース製薬単体
分析範囲:原料調達を含めたサプライチェーン全体
時間軸:短期=1年(単年度計画と同期間)中期=3年(中期経営計画と同一期間)
長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間)
・当社(アース製薬単体)のGHG排出量は以下のとおりです。
(単位:t-Co2)
・当社は、以上の排出量実績をもとに指標と目標を次のとおりに設定いたしました。
なお、2023年時点で概ね計画どおりに進捗しています。
(目標と目標に対する指標)
(注)1.2024年2月上旬現在。
2.2023年度の数値は算出完了次第、
https://corp.earth.jp/jp/sustainability/esg-databook/index.html
当社グループは、経営理念や経営目標を実現するための人財に対する施策を明文化するために、人権方針・労働慣行方針のもと、「アース人財理念」および「アース人財マネジメント方針」を策定し、人財を中心に考えています。長期取り組みの方向性としては、『アースポリシー・バリューに共感する多様な人財の活躍を支える職場環境の整備』を目指すとともに、短中期取り組みの方向性である『中期経営計画に基づく人財課題の解決』に資する取り組みの二つの視点から、人財マテリアリティ(重要課題)を以下の4つと捉え、人財マネジメントの柱として人事戦略を策定・推進していきます。
[人財マテリアリティ]
1.グループ経営強化によるコストシナジーの創出
2.Well-beingを実感できる職場環境の整備・社内文化醸成
3.経営・事業戦略に必要な人財の確保・育成
4.多様な人財の自律したキャリア形成支援と仕組の整備
当社では、持続的な事業成長を実現するためには個々の継続した成長が不可欠と捉え、国籍や年齢などに関わらず、すべての従業員が、当社グループのアースポリシー・バリューに共感しながら自律的にキャリア形成する事を支援し、変化する事業環境下での挑戦を可能とする育成機会の提供に努めます。
自律した人財育成を目的として、従業員のモチベーションやキャリアアップ、知識と能力の向上を目指して、計画的に階層別研修や目的別研修を実施します。多様性こそ当社グループの成長の力であると認識し、2030年に女性管理職比率30%の達成を目指して女性活躍推進施策を継続、今後はグローバル人財の受け入れ、育成にもさらに力を入れ、事業貢献だけではなく、働く個々の継続成長への寄与、働く場として、選ばれる企業を目指していきます。また、2024年度からスタートしている中期経営計画では、「海外の売上拡大」を重点方針の1つに掲げています。展開国ごとの取り組みの推進に加え、事業展開を加速するための体制整備が急務となっています。そのため、計画的な人財の採用と育成、要員計画の精緻化などを行い、海外事業の拡大に向けた人財のプール化も進めていきます。
当社では、社員一人ひとりがもつ独自の強みを十分に発揮し、活躍するためには、心身ともに健康であることが重要であると認識し、エンゲージメント高くwell-beingを実感しながら活躍できる職場環境の整備に積極的に取り組みます。
従業員の健康管理を重要な経営課題と捉え、2019年にトップメッセージとして「アース健康宣言」を制定、責任者に上席執行役員を置く部門横断チーム「従業員と家族の健康を推進する委員会」を組織、専任の産業保健師を採用し、2022年には人財マネジメント部内に「ウェルビーイング推進課」を設置しました。健康保険組合やグループ企業とも連携体制をとりながら、従業員と家族の健康管理のフォローやヘルスリテラシーの向上施策の実施、安心して働けるオフィスの整備、柔軟な働き方ができる制度の導入などに取り組んだ結果、経済産業省と日本健康会議が共同で選ぶ「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2021年から3年連続で認定されています。長時間労働対策として、産業医や医療職からの面談の実施や、休暇取得推進施策も併せて実施し、今後も全ての社員にとって働きやすい職場環境づくりを目指して取り組みを継続します。
<人財戦略における各種取り組み>
④ 指標と目標
当社は以下の目標を設定しました。
(注) 男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクについては以下のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
家庭用品事業の主力である虫ケア用品の需要期は主として毎年4月~8月の約5ヵ月であり、例年、年間の市場販売額のおよそ8割がこの期間に集中するため、家庭用品事業の売上高もこの期間に占める割合が高くなります。虫ケア用品は、需要期を控えた3月から製品の出荷が始まり7月頃にはそのピークを迎え、その後12月にかけて取引先からの返品が生じます。このため、当社グループの業績については、第3四半期(1月~9月)までに収益が集中する一方、第4四半期(10月~12月)の収益は低下します。また、虫ケア用品は季節性が高く、当該期の天候等の影響で市場規模が収縮した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(連結) (単位:百万円)
当社グループは、海外展開の強化を最優先課題に掲げ、タイ・ベトナム・マレーシア・フィリピン・中国の現地法人を中心にアジア地域での積極的な展開を進めておりますが、外国政府による規制や海外情勢、経済環境の変化など、想定しなかった事態が起きた場合、計画に対しての進捗が遅れる可能性があります。また、在外子会社の売上高、費用、資産及び負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算しますが、換算時の為替レートにより円換算後の数値が大幅に変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原材料価格の変動
当社グループは、複数の国・地域から原材料を購入しております。気候変動、為替変動、国際的な需要拡大等による需給動向の変化、また地政学的リスクなどに伴い、原材料の購入価格が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループの取り扱う製品の原材料は石油化学製品の占める比率が高く、原油価格の動向には注視が必要です。
このようなリスクを認識した上で、当社グループでは処方の変更、複数社購買、グローバル調達などによる継続的なコストダウンに取り組むなど、リスク回避に努めています。
虫ケア用品は殺虫原体という化学品を主成分とし、多くの虫ケア用品もこれを基幹原料として生産されております。殺虫原体は主要なユーザーが限定されており、毎年の需要と供給並びに市場価格は安定して推移しております。
殺虫原体の多くは国内外のメーカーから購入しておりますが、一部についてメーカーが限定されており、当該メーカーとの取引が継続困難となった場合や、仕入価格に大きな変動が起こった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) M&A等の実施による影響
当社グループは、将来に向けて持続的な成長を図るため、M&A等を通じた事業領域及び展開エリアの拡大を推進しております。これらについて、事後に発生した想定外の事象や環境変化によって、想定した成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが中長期的に成長していくためには、多様な価値観や専門性を持ち、自立した人財が必要不可欠です。しかしながら、少子高齢化による労働人口の減少や雇用情勢の変化等により、事業活動に必要な専門性を持った人財を計画通りに確保できなかった場合、もしくは育成・定着が進まなかった場合には、中長期的な成長を達成できなくなる可能性があります。また、価値観の多様性を尊重し、組織での関係性が向上する風土が醸成できない場合には、事業における機会損失だけでなく、人財の流出が起こり、事業活動が停滞する可能性があります。
そこで当社は4つの人財マテリアリティを掲げ、「事業が求める人財育成・活躍できる仕組み作り」実現のための組織・機能の構造改革を進めてまいります。
(7) 事業に関する法的規制
家庭用品事業では、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器に該当する製品を取り扱っており「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の規制を受けております。また、農薬に該当する製品については農薬取締法の規制、肥料に該当する製品については肥料取締法の規制をそれぞれ受けております。事業を行うにあたっては、薬事品目に係わる製造販売業許可、各工場での製造業許可、各支店での医薬品卸売販売業許可の取得の他、各支店での農薬販売届を行っております。また、製品毎に製造販売承認や農薬登録を受けております。
総合環境衛生事業では、防虫・防鼠施工業務や建築物清掃業務などについては建築物における衛生的環境の確保に関する法律の適用を、また医薬品や劇物等の取り扱いについては薬機法及び毒物及び劇物取締法などの適用を受けます。こうした法規制により各支店において建築物ねずみ昆虫等防除業、建築物清掃業及び毒物劇物一般販売業などの許可を取得して事業を行っております。
これらの法的規制については、現在のところ問題なく対応しておりますが、今後改正や規制強化が行われた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、特に家庭用品事業において許可の取り消しや業務停止等の処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に支障をきたすとともに業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 品質に関するリスク
当社の製品には、医薬品、医薬部外品等があり、品質管理の高い水準を確保することが求められます。しかし、製造工程に起因する製品不良や想定外の製品事故等によりお客様に被害を与えるようなことが発生した場合には、被害の状況によっては当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社のモノづくりにとって、お客様目線に立った高品質で安心・安全な製品・サービスを提供し続けることが最も重要な社会的責任です。研究開発、品質保証、お客様とのコミュニケーションにおいて基本方針を定め、安心で快適な暮らしに貢献する製品・サービスを提供するために、「お客様の満足と信頼を損ねる品質重大事故をゼロにするため、自社工場、製造委託先工場の定期品質監査実施率を向上」、「関連法令を遵守し、違反につながる重大事故をゼロにするため、教育訓練年間計画の実施率を向上」させてまいります。
当社グループは、地震等の自然災害に対してBCP(事業継続計画)のもと、BCM体制を構築しております。しかしながら、万が一大きな災害が発生した場合、生産設備の損壊、原材料調達や物流の停滞などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、感染症につきまして、当社グループでは時差勤務やテレワークの推奨、ウェブ会議等を利用した社内外のコミュニケーションの実施、事務所での消毒液の設置など対策を実施し、社員の健康管理を徹底した上で事業を継続しております。しかしながら、収束までの期間が長期化した場合、社員・取引先への感染やサプライチェーンの混乱などにより、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) レピュテーションによるリスク
スマートフォンの普及が進んだことやソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)を活用する人の増加により、時間と場所を選ばず、誰でもが情報を受発信できる環境になっています。SNSは、生活者同士又は生活者と企業との相互コミュニケーションを可能としています。SNS等を通じた情報発信の中には企業に対する批判的な評価や評判も含まれており、それらが拡散することにより、ブランド価値や企業の信用が低下につながる可能性があります。当社においても、SNSを活用した様々な情報発信やブランドのマーケティング活動が年々増加しています。それらの活動で使用された不適切、又は不用意な表現に対する批判的な評価等がSNSを通じて拡散された場合、当社グループのブランド価値や企業の信用を著しく低下させる可能性があります。
(11) 気候変動によるリスク
世界的に最も深刻な環境問題である気候変動及びこれらの緩和とその適応は、中長期的に当社の事業の継続や拡大に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動による平均気温の上昇、降水パターンの変化をはじめとした異常気象の激甚化などが、当社事業のバリューチェーン全般に影響を与える可能性もあります。こうした気候変動への対応は、中長期的な企業価値に関わる経営課題であると認識しています。全ての事業において課題解決に向け、脱炭素社会への移行に貢献するために、「CO2排出量の削減」、「電力の再生可能エネルギー化の推進」に取り組んでまいります。また、当社は気候変動関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言への賛同を表明しており、提言に即した情報開示を行ってまいります。
当連結会計年度の当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a. 事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済について、新型コロナウイルス感染症の5類移行による行動制限の緩和や海外旅行客の入国制限の解除に伴うインバウンド需要の増加などにより、社会・経済活動が正常化に向かって動き出しました。しかし、急速な為替変動、地政学リスクの高まりを背景とした資源価格の高騰、物価上昇に伴う消費マインドの低下などにより、先行きは不透明な状況が続きました。
当社グループが展開に注力するアジア地域においては、中国ではゼロコロナ政策が解除されたものの不動産市況の停滞を背景として経済回復に弱さが見られました。ASEANでは欧米や中国経済の影響を受けて景気減速懸念がありましたが、域内各国でバラつきはあるものの底堅い内需を下支えに、堅調な推移となりました。
このような経済状況の中、経営理念「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」のもと、2021年2月に2023年12月期を最終年度とする中期経営計画「Act For SMILE - COMPASS 2023 -」を公表し、「モノサシ・インフラの刷新」、「アジア収益基盤の拡大」、「ESG・オープンイノベーション」、「コストシナジーの創出」を基本方針とし、経営を進めてまいりました。外部環境の著しい変化による影響から、期間の途中で本計画の数値目標を見直しましたが、方針に沿って進めた取り組みに対する成果は着実に出始めていることから、掲げる方向性や戦略は変更せず、本計画最終年度も施策の遂行に取り組んでまいりました。
当連結会計年度における当社グループの業績については、家庭用品事業では市場環境の変化による入浴剤やマスクの売上減少、中国での販売不振などがありましたが、国内では一年を通して全国的に気温が高めに推移したことにより虫ケア用品の売上の増加や返品数の減少につながりました。また、ASEANでの売上が伸長した他、衛生管理サービスへのニーズの高まりを背景とした年間契約数の増加による総合環境衛生事業の売上成長もあり、売上高は1,583億44百万円(前期比3.9%増)となりました。利益については、原材料価格の高騰や為替変動、製品の売上構成の変化により売上原価率が前期を上回ったこと、販管費の増加などが影響し、営業利益63億70百万円(前期比14.3%減)、経常利益67億91百万円(前期比16.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益41億2百万円(前期比22.6%減)となりました。
b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況 ※セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益ベース
(家庭用品事業)
家庭用品事業におきましては、既存製品のリニューアルなどによる製品価値の向上、高付加価値製品の投入、SNSを利用した効果的なプロモーションなどを実施しました。また、原材料価格高騰の影響に伴う販売価格の改定、製品コストや販売にかかるコストの低減を図り、収益性の改善に努めました。海外においては、タイ・ベトナムなどのASEANを中心に経営資源を積極的かつ有効に投入し、規模を拡大する取り組みなどを実施しました。
当連結会計年度における当事業の業績については、価格改定施策の効果の顕在化や残暑が長引いたことに伴う虫ケア用品の需要の長期化などによる虫ケア用品部門の伸長、プレミアムフードなどが好調に推移したことによるペット用品・その他部門の売上増加があった一方、市場環境の変化に伴い入浴剤やマスクの販売が前年を下回り、売上高は1,390億7百万円(前期比1.8%増)となりました。利益面では、原材料価格の高騰や為替変動に伴う影響に加え、製品の売上構成の変化による売上原価率の前期を上回る上昇、物流コストの増加や人財投資に伴う人件費の増加などがあり、セグメント利益(営業利益)は44億20百万円(前期比25.2%減)となりました。
(注) 売上高にはセグメント間及びセグメント内の内部売上高又は振替高が含まれており、金額は前連結会計年度では11,957百万円、当連結会計年度では9,577百万円です。
部門別の主な売上高の状況は次のとおりであります。
虫ケア用品部門
国内においては、前年に比べて残暑が長引いたことにより市場の需要がシーズン後半にかけて長期化しました。こうした中、従来より経営課題として取り組んでいる返品削減施策に加え、天候の後押しもあり返品額が低減し、業績に寄与しました。また、当社の主力カテゴリーのゴキブリ用や不快害虫用の製品の売上が伸長した他、予防をコンセプトに展開しているマモルームブランドより、秋冬シーズンにおける新たな需要の掘り起こしにつなげる新製品『マモルームゴキブリ用』を発売し、売上に貢献しました。さらに、価格改定効果の顕在化などもあり、市場シェアは56.9%(自社推計、2022年比0.6ポイント増)となりました。
海外においては、中国は経済回復の弱さから売上が低迷しましたが、タイ・ベトナムを中心に売上の成長が継続しました。
以上の結果、当部門の売上高は620億31百万円(前期比4.5%増)となりました。
日用品部門
口腔衛生用品分野においては、消費者ニーズの変化を背景に競争環境が厳しい中、汎用品の『モンダミン ペパーミント』などの売上が前年を下回りました。一方で、オールインワンの洗口液『モンダミン プレミアムケア』が売上を伸ばしたことに加えて、歯科医院の開拓が進んだことに伴う歯科医院専売の洗口液『モンダミン ハビットプロ』の売上が伸長し、売上高は83億64百万円(前期比2.1%増)となりました。
入浴剤分野においては、入浴剤の使用の定着化は進んだものの、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことによる外出機会の増加、猛暑や暖冬といった天候などの影響を受け、市場規模は前年を下回りました。当社グループも市場の動向に比例して低調な推移となり、売上高は260億41百万円(前期比3.4%減)となりました。
その他日用品分野においては、夏場の熱中症対策などとして保冷剤や冷却剤の売上が前年を上回りました。また、消臭芳香剤『スッキーリ!』シリーズや掃除用品『らくハピ』シリーズなども売上に寄与しましたが、家庭用マスクや衣類用防虫剤の売上が前年を下回り、売上高は327億93百万円(前期比1.0%減)となりました。
以上の結果、当部門の売上高は671億99百万円(前期比1.6%減)となりました。
ペット用品・その他部門
ペット用品分野においては、市場環境は新型コロナウイルス感染症を背景に拡大していたペットブームは落ち着きを見せているものの、飼い主のペットに対する健康意識が高まり、ペット関連市場は好調さを維持しています。こうした状況の下、プレミアムフードや猫砂などのケア用品が売上を伸ばしたことにより、当部門の売上高は97億76百万円(前期比10.6%増)となりました。
(総合環境衛生事業)
総合環境衛生事業におきましては、食品や医薬品、医療についての安全基準に対する国際的な調和の流れや、国内における法改正などを背景に、自社における衛生管理が強く求められる中、主要な顧客層である食品関連工場や医薬品関連工場、包材関連工場においては、当社グループの専門的な知識や技術、ノウハウをもって提供する高品質の衛生管理サービスへのニーズが依然として高い状況にありました。一方で、ウクライナの情勢不安の長期化などにより、人件費の上昇や資機材の価格高騰が加速しました。
このような状況の中、人財育成、業務効率の改善を目的としたシステムの開発・導入など、お客様のニーズに対応できる社内体制構築に向けた投資を積極化するとともに、産学官連携の共同研究も含め、技術開発力の強化により差別化された衛生管理サービスを提供することで、契約の維持・拡大と適正な利益の確保を図りました。その中でも、医薬品業界・再生医療業界へ向けた種々の取り組み、食品安全マネジメントに関する監査・コンサルタント業務の強化を継続してまいりました。また、より豊かな未来へつながる「環境」形成に貢献するために、農業など多様な分野の「環境」の課題解決に取り組むべく、業容拡大、新規事業の検討を行ってまいりました。
当連結会計年度における当事業の業績については、原価率の上昇や人財への積極投資に伴う人件費の増加などがあったものの、年間契約件数が伸長した結果、売上高は290億73百万円(前期比3.9%増)、セグメント利益(営業利益)は14億51百万円(前期比1.5%増)となりました。
(注) 売上高にはセグメント間及びセグメント内の内部売上高又は振替高が含まれており、金額は前連結会計年度では163百万円、当連結会計年度では158百万円です。
c. 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、2021年2月に公表した中期経営計画「Act For SMILE - COMPASS 2023 -」の最終年度である2023年度において、連結売上高1,570億円、営業利益140~160億円、当期純利益100億円、ROE13.0%以上の達成を主要な目標指標として経営を進めておりました。売上高については、1,583億44百万円と目標値を上回りましたが、昨今の資源・エネルギー価格の上昇に伴う原材料価格高騰や為替影響などもあり、収益性に課題を残した結果、営業利益は63億70百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は41億2百万円、ROEは6.3%と計画未達で終わりました。
前中期経営計画で明確となった課題を認識し、中長期的な成長を目指すために、当社グループは、2026年度までの中期経営計画「Act For SMILE - COMPASS 2026 -」を策定し、2024年2月に公表しております。当該中期経営計画にて目標とする経営指標につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき課題 ③ 2026年定量目標」に記載のとおりとしています。
② 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、販売実績に基づいた価格によっております。
2. 総合環境衛生事業はサービス事業であるため、生産実績はありません。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 金額は、仕入実績に基づいた価格によっております。
c. 受注状況
当社グループは、見込生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2) 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末より79億17百万円増加し1,324億7百万円となりました。
流動資産の残高は、前連結会計年度末より2億8百万円増加し741億70百万円となりました。これは主に、増加した製品在庫を適正な水準へ見直す取り組みを進めた結果、棚卸資産が39億86百万円減少した一方、現金及び預金が27億32百万円や売上債権が14億76百万円増加したことなどによるものです。
固定資産の残高は、前連結会計年度末より77億9百万円増加し582億37百万円となりました。これは主に、退職給付に係る資産が25億8百万円、事業譲受に伴う商標権11億77百万円やのれんが11億55百万円増加した他、設備投資に伴い建設仮勘定が11億88百万円減少した一方、建物及び構築物が16億55百万円、機械装置及び運搬具が11億96百万円増加したことなどによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末より39億35百万円増加し、604億6百万円となりました。
流動負債の残高は、前連結会計年度末より41億52百万円増加し574億93百万円となりました。これは主に、借入金が90億円、未払法人税等11億82百万円、返金負債が2億16百万円増加したものの、仕入債務が55億20百万円、未払金が8億68百万円減少したことなどによるものです。
固定負債の残高は、前連結会計年度末より2億16百万円減少し29億12百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が2億65百万円減少したことなどによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末より39億82百万円増加し720億円となりました。これは主に、利益剰余金が14億87百万円、退職給付に係る調整累計額が10億29百万円、為替換算調整勘定が6億64百万円増加したことなどによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
① 現金及び現金同等物
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて27億32百万円増加し、175億5百万円となりました。
② 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果、増加した資金は75億24百万円(前期は39億1百万円の増加)となりました。この主な内容は、税金等調整前当期純利益65億63百万円(前期は80億57百万円)、減価償却費41億18百万円(前期は38億52百万円)、売上債権の増加13億57百万円(前期は13億38百万円の増加)、棚卸資産の減少46億48百万円(前期は42億66百万円の増加)、仕入債務の減少56億36百万円(前期は29億97百万円の増加)、法人税等の支払額11億8百万円(前期は28億30百万円)であります。
③ 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果、減少した資金は101億35百万円(前期は62億66百万円の減少)となりました。この主な内容は、有形固定資産の取得による支出44億39百万円(前期は48億93百万円)、無形固定資産の取得による支出16億4百万円(前期は9億99百万円)、事業譲受による支出37億18百万円(前期は該当なし)であります。
④ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果、増加した資金は48億93百万円(前期は44億64百万円の減少)となりました。この主な内容は、短期借入金の純増額90億円(前期は5億32百万円の減少)、長期借入金の返済による支出12億円(前期は10億21百万円)、配当金の支払額26億3百万円(前期は26億円)であります。
⑤ キャッシュ・フロー関連指標の推移
⑥ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、営業活動から得られる自己資金、金融機関からの借入などを資金の源泉としております。また、当社及び国内連結子会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、各社の余剰資金を当社へ集中して一元管理を行うことで、資金の流動性の確保と資金効率の最適化に努めております。
設備投資やM&Aなどに伴う長期的な資金需要については、資金需要が見込まれる時点で、内部留保に加え、金融機関からの長期借入及びエクイティ・ファイナンスなどを活用して対応しております。また、運転資金など短期の資金需要については、自己資金及び短期借入を充当しております。
今後に向けては、構造改革を断行する資金を投じつつ、中長期に持続的な成長を図るための投資として、IT・DX投資を含む設備投資を積極的に推進するとともに、国内外を問わず事業規模・領域の拡大、適切な収益の確保及びキャッシュ・フローの創出に貢献するM&Aの実施を検討します。これら投資の際には、資本コストや投資採算性を十分に考慮するものといたします。
⑦ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって重要となる会計方針及び会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しております。
なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いられた仮定が特に重要な影響を及ぼすと考えられる、固定資産の減損会計や繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りは、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき合理的に判断し実施しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
該当事項はありません。
当社グループは「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」を経営理念に、めまぐるしく変わる国内外の市場環境や消費者志向に対応すべく、常に「お客様目線」に立ってニーズを発掘する姿勢、提供のタイミングを逃さない開発スピードを念頭におき、クオリティの高い安全な高付加価値製品を創造しております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
報告セグメント別の研究開発活動は以下のとおりであります。
当事業では、お客様の生活空間の質向上を目的に、基礎的な研究を充実させ、お客様目線を第一に、独創的で高品質な製品を他社に先駆けて、提供することを目指しております。
この方針のもと、お客様や小売店様からの要望、国内外の市場動向、技術動向などに関する情報の入手・調査・分析を行い、スピーディに、新製品開発および既存製品の改良に取り組んでおります。
ハエ・蚊・ゴキブリ・ダニ・ノミ・マダニ・シラミなど健康被害を及ぼす衛生害虫や、アリ・ハチ・ムカデなどの不快害虫の駆除あるいは忌避を目的とした虫ケア用品の研究開発を行っております。近年の傾向として、特定害虫専用の駆除剤、忌避・予防製品、殺虫成分を含まない製品、さらには使用時の不快感を取り除くため、香りを重視した製品の需要が高まっており、これら特定製品のニーズの高まりにも応えるべく取り組んでおります。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
生活様式の変化に伴い、冬でも暖かな環境で害虫を見かけるということから「テネベナール®」を有効成分とした『ゼロノナイト』シリーズの展開としてくん煙タイプで部屋全体のゴキブリ・トコジラミを駆除できる『ゼロノナイトG』を発売、また、秋にはプッシュ式のダニ対策製品の『ゼロノナイトダニ用』を発売し、一年に一度という新たな虫ケア対策としてご提案しています。
また、予防として昨年から展開している『マモルーム』シリーズに新たに『マモルーム ゴキブリ用』を発売いたしました。秋季にリリースすることで、一年を通じた害虫対策の重要性を訴求しています。
人体用虫よけの『サラテクト』シリーズとして、ミスト化粧水のような使い心地を追求し、手で塗り広げずに成分がムラなくしっかりと肌に密着することで虫よけ効果を増大させた『サラテクトふわタッチミスト』を発売しました。消費者が虫よけ製品を使用する際のストレスを軽減し、より快適に過ごせるようにすることで、生活の質の向上に貢献しています。
お客様の健康や、居間・浴室・トイレ・キッチンなどの居住空間の質向上に役立つ製品の提供を目指し、口腔衛生用品、入浴剤、消臭芳香剤、防虫剤、住居関連用品、ネズミ用駆除剤、脱臭・消臭剤、育毛剤、ペット用品などの研究開発を行っております。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
住居用洗浄剤の事業においては、「毎日の暮らしを楽に、ハッピーにする」ことを目指した製品開発を行っています。家事のなかでも、お風呂掃除が面倒だと感じる方が多いという事実から、新たに『らくハピ くるくるバブルーン お風呂まるごと』を開発しました。本品に採用された360度回転する「くるくるノズル」により、浴槽にムラなく一気に泡を広げ、楽しく短時間でお風呂掃除を行うことができます。
㈱バスクリンは、開発者が温泉地を訪れて湯質を深く研究し、その情緒を表現した『日本の名湯』シリーズを販売しています。同シリーズの新たなラインナップとして、微細発泡でにごり湯を再現した『夢ごこち』を発売しました。包み込まれるような心地よい泡により、ゆったりした入浴時間を過ごすことができます。
白元アース㈱は、ホテル品質の消臭・除菌スプレー『清水香』シリーズから、『ノンスメル清水香 衣類のしわとりプラス』を発売しました。消臭・除菌・ウイルス除去に加え、しわ取りの機能が付与されており、これ一本で、気になる衣類のニオイだけでなく、しわとりの煩わしさも解消できます。
アース・ペット㈱は、家族の一員であるペットとの快適な暮らしを実現するため、さまざまなケア用品を開発しています。使いやすい指サック型ウェットシート製品の拡充を進め、歯垢の除去効果を高めた『エブリデント 指サック de 歯みがきプラス』、手軽にボディケアができる『JOYPET 指サック de 目のまわり キレイ』『JOYPET 指サック de 耳の中まで キレイ』を発売しました。
虫ケア用品で培ってきた技術やノウハウを活かし、“安全”、“優れた効果”、“使いやすい”、“わかりやすい”を基本理念に、園芸愛好家の方から初心者の方まで幅広くご使用いただける園芸用品の研究開発を行っております。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
我々は消費者の悩みを解消し、より手軽に家庭園芸を楽しめる製品の開発に取り組んでいます。農薬は特定の植物にしか使えない商品が多く、栽培している植物の種類によっては複数の商品を使い分ける必要がありました。そこで、約300種類の粒タイプ、約510種類のスプレータイプと、幅広い野菜・花・観葉植物に使用することができる『アースガーデン 植物つよし 粒タイプ』、『アースガーデン 植物つよし1000mℓ』を発売しました。
また、消費者の農薬や除草剤に対する不安を解消するため、これまでに天然成分を用いた『ロハピ』や『おうちの草コロリ』を展開し、多くのご支持をいただいております。これらの製品の利便性をさらに高めるため、詰め替え用の『アースガーデン ロハピ エコパック850 mℓ』を発売し、無駄なごみの発生を抑制しました。さらに、天然成分を用いた除草剤『おうちの草コロリ』シリーズに、持続力のある『アースガーデン おうちの草コロリ 粒タイプ900g』『アースガーデン おうちの草コロリ 粒タイプ3kg』を追加しました。これらの製品開発を通じて、我々は消費者の家庭園芸における快適さと環境への配慮を両立することを目指しています。
当連結会計年度における家庭用品事業の研究開発費は
当事業では、契約先からの各種検査・同定や異物検査要請に正確かつ迅速に対処するために、彩都総合研究所内の分析センター西日本ラボ(大阪府茨木市)と分析センター東日本ラボ(千葉県鎌ヶ谷市)、および晴海分室を設置しております。
それぞれの分析センターでは、契約先の製造環境(施設・設備、機械・器具、空調、使用水、作業員)や原料・製品などの微生物検査、混入異物(動・植物性異物、有機化合物、無機化合物)の目視検定、機器(FT-IR、蛍光X線分析装置)による化学的分析、比較検査を併用した同定、遺伝子を用いた昆虫・微生物の同定、昆虫の加熱履歴判別を行う凍結切片法(カタラーゼ代替)へのAI技術の導入、微生物検査報告をスピードアップするための迅速検査法の本格導入を行っております。また、契約先の品質管理担当者や検査員を対象とした教育訓練、お客様ごとにオリジナルプロトコールを作成した上での異物混入・微生物汚染に関する受託試験も行っております。
調査技術・調査機器・施工技術などの研究開発は、研究開発センター、分析センター(彩都総合研究所)、学術部、技術部が相互に連携を取りながら行っております。捕虫、殺虫、調査装置についての新技術の開発、ホルマリン代替法としての各種殺菌・消毒に関する技術構築、MA-Tを活用した除菌システムの確立に取り組んでおります。
また、社内のみならず、公的機関及び大学、民間企業など社外との共同研究開発にも積極的に取り組んでおります。
各企業では衛生管理への積極的な取り組みが行われているものの、依然として製品への異物混入や微生物による汚染は起こっており、検査や同定の依頼や対策のニーズも高い状態にあります。契約先の顧客満足度を向上させるためには、検査精度の充実及び危害物質による汚染や異物混入を防止するための技術開発が重要と考え、ISO17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項を規定した国際標準規格)の維持と更なる精度管理の強化、産官学との連携の強化及び分析機器や社内システムのレベルアップについて更なる推進を図ってまいります。
また、彩都総合研究所では既存技術の改良やニュービジネス及び新技術の確立、科学的根拠に繋がる基礎データの蓄積と解析評価の実現に加え、時代に合わせた教育支援のニーズにも応えられるよう、独自性の高い研修サービスを拡充してまいります。
当連結会計年度における総合環境衛生事業の研究開発費は