第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度現在において当社グループが判断したものであります。

 

(Ⅰ)経営の基本方針

 アシックスグループは、「ASICS SPIRIT」に掲げた創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし- "Anima Sana In Corpore Sano"」を基本に、ビジョン「Create Quality Lifestyle through Intelligent Sport Technology-スポーツでつちかった知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」の実現に向けて、「アシックスの理念」をもって事業運営を行っております。

 

(Ⅱ)長期ビジョン「VISION2030」策定

 当社は、「健全な身体に健全な精神があれかし」を創業哲学とし、主に「パフォーマンス・アスリート」のための「プロダクト」を中心にビジネスを展開してきました。しかし、世界の60歳以上の人口が今後非常に速いペースで伸びていくことが予測され、より長く健康でいることが注目されています。また「健康」の定義も、昨今は身体の健康だけでなく、心の健康まで含めるようになっています。このように急激に変化していく社会環境の中で創業哲学を実現するため、誰もが一生涯「ライフタイム・アスリート」として、スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造していくことを目指し、そのために当社が2030年にあるべき姿としてVISION2030を策定しております。

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 2030年に向けて、当社は「プロダクト」「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス」これら3つの事業ドメインを通じて、人々の心と身体の健康を実現していきます。

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 すべての事業ドメインに共通して、この3つのテーマを掲げています。進化を続けるデジタル技術を活用し、各個人に合わせてパーソナライズされた製品・サービスを、環境に配慮したサステナブルな手法で開発・提供していきます。これら3つのテーマを通じて、各事業ドメインを単独で成長させつつ、それぞれの事業ドメインが交わることで相乗効果を生み出し、価値の最大化を図ります。

 

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(Ⅲ)経営環境

●市場環境

2023年は、コロナの影響もほぼ終息し、多くのランニング大会やスポーツイベントは通常開催となりました。それによりスポーツ用品市場は好調に推移しています。コロナ禍から続く先進国での健康意識の高まりや高成長地域でのスポーツ市場の拡大、ランニング大会の増加などもあり、引き続き市場の拡大が予想されます。

また、気軽に楽しめるスポーツの需要も高まり、パデルやピックルボールなど競技レベルに関係なく誰もが楽しめるスポーツの普及が期待されます。

スポーツを取り巻く環境としては、あらゆる場面でデジタルとリアルを結び付けようとする様々な取り組みが社会全体で進んでおり、今後もその傾向はますます加速していくほか、脱炭素社会に向けた地球規模での取組みや企業活動における責任については今後より一層求められていくと考えています。

 

●競合他社の状況

スポーツイベントの開催状況がほぼコロナ前の様相に回復し、コロナ禍で高まった健康志向が継続するなど、スポーツ業界にとっての追い風もありながら、為替の変動や輸送費の高騰などの問題にスポーツメーカー各社は対応を迫られており、粗利益率や営業利益率に影響が生じているケースもあります。

コロナ禍で急速に拡大したEコマース市場においては、各社ともオンラインとオフラインを連携させたオムニチャネル化を推進し、顧客体験価値の最大化をはかっており、引き続き各社ともにデジタル分野や顧客体験強化への投資に注力していくことが予想されます。

サステナビリティという観点では、あらゆる企業活動において環境に配慮することが求められており、スポーツメーカー各社もCO2排出量やサステナブルな素材調達などに関する具体的な目標を設定し、様々な取り組みを通じてその達成を目指しています。

 

●顧客動向

生活者の購買動向は、コロナ禍で普及したEコマースがさらに進みデジタルを活用したツールやサービスが拡大しましたが、リアルでの購買や体験に対するニーズも戻ってきており、今後はデジタルとリアルを掛け合わせたサービス需要がますます加速することが予想されます。

また、自分に合った製品やサービスを求める傾向が高まり、パーソナライズされた情報や顧客体験の提供は急務となっています。

また、より持続的な社会を実現するための消費に対する価値観の変化やニーズはさらに大きくなることが予測されています。

 

(Ⅳ)中期経営計画2023について

中期経営計画2023の財務目標は、昨年の報告の通り一年前倒して達成しました。

2023年は中期経営計画2023の最終年でありましたが、当初計画を大幅に上回る結果となりました。

最終結果としては、2023年の営業利益は542億円、営業利益率9.5%となりました。

非財務目標についても当社会員プログラムのOneASICS会員数や女性管理職比率などの目標を達成し、当社はこの3年間で成長軌道に乗り、今後も更なる成長を続ける基盤を作ることができました。

 

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定性評価としては、2019年から進めてきたカテゴリー経営が定着し、主力のパフォーマンスランニングフットウエアをはじめ、コアパフォーマンススポーツフットウエア、スポーツスタイル、オニツカタイガーなどが目標を大幅に達成することができました。

地域では、欧州と中華圏が全社利益を牽引したほか、日本では収益が改善、インドや東南アジア各国の高成長地域では市場でのアシックスブランドの浸透が進み、成長を加速させました。

また、戦略目標の一つであった「デジタルを軸にした経営への転換」では、レース登録会社を買収し顧客接点を拡大したほか、OneASICS会員が2019年比4.7倍の945万人へと増加、EC売上高も2019年比3.8倍と伸長しました。特に、2023年にはオーストラリアのシドニーマラソンでレースエントリーから完走後に至るまでのランナーの活動に沿った新たな顧客体験を提供するなど、ランニングエコシステムのモデルケースとして、成果をあげました。

もう一つの戦略目標である「事業活動を通したサステナブルな社会の実現」では、2050年までに事業における「温室効果ガス排出量実質ゼロ」の実現に向けた新たな取組みとして、温室効果ガス排出量を最も低く抑えたスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」を9月に発売しました。今後も機能性と環境配慮の両立を実現するイノベーションを通じて、世界の人々の心身の健康とスポーツができる環境を守ることに貢献していきます。

重点戦略であるパフォーマンスランニングでは、2023年には当社を代表する高機能モデル「GEL-NIMBUS 25」「GEL-KAYANO 30」を発売し、市場で高い評価を得ました。これらは当社独自の設計思想「アシックス・デザイン・フィロソフィー」に沿って身体と心の両方にとって優れた構造設計を目指しており、こういった取り組み姿勢や製品開発力が改めて市場から評価されていると捉えています。また、Cプロジェクト(※)の効果もあり、パフォーマンスランニングフットウエアNo.1ブランドに向けたイメージの定着も進んでいます。

中期経営計画2023で築いた基盤を元に、中期経営計画2026では、VISION2030の実現の達成に向けさらに成長を加速させていきます。

(※) 「頂上」の頭文字を取った、トップアスリートと連携した商品開発を行うCEO直轄プロジェクト

 

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(Ⅴ)中期経営計画2026策定

1.中期経営計画2026の位置づけ

2023年11月28日に中期経営計画2026を策定しました。中期経営計画2023で成長軌道に乗った勢いをそのままに、中期経営計画2026では「グローバル×デジタル」を推進し、継続的な成長を目指します。

 

2.数値計画

業界No.1の収益性の実現を目指し、グローバルでの売上成長、販管費コントロールを強化することで、営業利益率12%前後、営業利益800億円以上を計画しています。売上高年平均成長率は7~10%を見込んでいます。

 

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3.方針と重点戦略

中期経営計画2026の方針は、「Global Integrated Enterpriseへの変革」です。

Global Integrated Enterpriseとは、本社と地域事業会社の連携強化により、グループ一体でより有機的なカテゴリー経営体制を構築することです。具体的には、地域CEOを社長COO直下に配置するほか、主要地域のCEOが重要会議への参加やグローバル経営に関わることで本社と地域間の連携をさらに強化していきます。

また、地域販売会社を地域事業会社に変更し、商品販売および担当地域以外の収益拡大にも責任を負う体制にするほか、人財、ITプラットフォーム、データのグローバル化によりグローバルでダイナミックな経営を実現します。

重点戦略は「グローバル成長」「ブランド体験価値向上」「オペレーショナルエクセレンス」の3つです。

1点目のグローバル成長では、各カテゴリー、地域が更なる連携を図り、それぞれの成長を加速させます。カテゴリーでは収益基盤であるパフォーマンスランニングフットウエアのさらなる成長に加え、次の収益の柱として、オニツカタイガー、スポーツスタイル、コアパフォーマンススポーツフットウエアの成長を拡大させます。

地域については、既存の収益基盤である地域は営業利益の持続的な成長、インドや東南アジアの各国など高成長を見込む地域では、売上と営業利益率の向上を見込み、成長を加速させます。

2点目のブランド体験価値向上については、当社独自の会員プログラムOneASICSを通じてお客様との直接的な接点を増やし、繋がりを深め付加価値の高いプロダクト、サービスを提供していきます。これらの取組みを「OneASICS経営」とし、全社的に推進することで、会員の増加、プログラムの価値向上、パーソナライズされたマーケティングコミュニケーションや製品サービスの向上に向けたデータの活用を実現します。

具体的には、OneASICS会員をリテール、ECだけではなく、施設、OneASICS債、その他サービスで拡大し、イベント参加、リワードなどを活用してプログラム全体の価値を向上させるほか、データ分析をしっかりと行い、お客様一人ひとりに応じたマーケティング、製品、サービスの向上に取り組みます。

3つ目のオペレーショナルエクセレンスについては、既存のグローバルシステムを活用して、サプライチェーンの改革を行います。需要と供給、在庫の計画精度の向上やサプライチェーン全体の高度化、効率化を図ることで収益性向上につなげます。

 

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4.経営指標

中期経営計画2026では、以下の財務、非財務指標を設定しています。

Global Integrated Enterpriseへの変革を実現し、これらの指標を達成していくことで、さらなる収益拡大を図るとともにVISION2030の実現に向け取り組んでいきます。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1949年の創業より、アシックスの使命は人々の心と体を健康にすることです。そのためには、快適に走れる健やかな地球環境が不可欠です。健全な心身、健やかな環境が将来世代まで続くよう、「People(人と社会への貢献)」と「Planet(環境への配慮)」の2つの柱を軸に、事業活動を通じて社会・環境課題の解決に取り組んでいます。

 

(Ⅰ)サステナビリティ

2019年6月、アシックスは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を、スポーツメーカーとして世界で初めて表明しました。 気候変動関連のリスクと機会に関する情報について、TCFD提言に沿って開示を行っています。

 

(1)ガバナンス

アシックスでは、サステナビリティは経営に不可欠と考え、コーポレートガバナンスに反映されています。

サステナビリティのガバナンス体制については、取締役会が気候変動に関するリスクと機会を監督し、リスクマネジメント委員会が気候変動に関するリスクを、サステナビリティ委員会がCO削減目標の進捗評価・管理を含む気候変動に関する機会を管理しています。両委員会のメンバーは、執行役員と統括部長で構成されており、代表取締役会長CEOがサステナビリティ委員会の議長を、代表取締役社長COOがリスクマネジメント委員会の議長を務め、両委員会は取締役会に報告を行います。サステナビリティ委員会は、全社のサステナビリティ戦略・目標・ロードマップ・アクションプランとその進捗の評価に加え、マテリアリティ評価とサステナビリティのビジネス戦略への統合に関する責任を負っています。サステナビリティ部は、マテリアリティ評価に基づいた中長期のサステナビリティ戦略設定と管理を担っており、「気候変動への対応」は優先度が高い重要テーマの一つです。委員会のメンバーは議論に参加し、情報・意見の提供、目標に対する進捗と、ロードマップとアクションプランの報告に関する責任を負っています。サステナビリティ部管掌役員は直接代表取締役会長CEO・代表取締役社長COOに報告を行います。各統括部での「気候変動への対応」に関連した目標に対する年間実績は、関連する執行役員・統括部長の報酬を決定する要素の一つです。

また、欧州を中心とした、非財務情報開示をはじめとしたサステナビリティに関する法規制について、アシックスヨーロッパとも連携し、社内でタスクフォースを設立のうえ、法規制内容の把握・対応・開示への準備を行っています。

 

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(2)戦略

経営企画部・経理部・財務部・生産統括部・サステナビリティ部が連携し、シナリオ分析を実施し、原材料価格の変動・製品表示規制の導入といった移行リスク及び気温上昇によるスポーツ時間の減少、台風、洪水の激甚化によるサプライチェーンの操業停止といった物理的リスクを特定しました。また、低炭素製品・サービスの開発・拡大を通じたイノベーション創出や顧客基盤の拡大といった機会も特定しました。リスクと機会の分析に当たっては、2030年・2050年を時間軸として設定し、1.5℃・2℃・4℃シナリオにおけるインパクトを試算し、対応策を策定しました。

この分析結果は代表取締役会長CEO・代表取締役社長COO、執行役員を含む経営層に報告され、事業戦略に統合されます。

 

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2023年は、温室効果ガス排出量が市販スニーカーの中で最も低い(※)「GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95」の発売、製品のCO排出量可視化などの取組みを行いました。この取組みで得た知見を今後の製品・サービスに活用していきます。

※2023年9月時点、製品ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量が開示されている市販シューズを対象としたデータに基づく

 

<温室効果ガス排出量最少スニーカー GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95>

当社は、約10年前にシューズ業界で初めてマサチューセッツ工科大学と製品ライフサイクルから排出される温室効果ガス排出量の測定、削減方法に関する分析と改善策に関する共同研究を実施しました。この結果は、業界におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)算出方法のスタンダードとなっています。

その知見を活かし、更に算出方法の精度を高めて、2022年9月に温室効果ガス排出量が最も低い1.95kgCOeのスニーカー「GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95」を開発、2023年9月に発売しました。カーボン・ネガティブ・フォームの開発や、製造工程での再生可能エネルギーの調達など、バリューチェーン全体で16通りもの削減施策を行い、この数値を実現することができました。

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この取組みや、この知見を活用したCO排出量可視化の取組みが評価され、2023年11月に「気候変動アクション環境大臣表彰」2024年2月に「日本オープンイノベーション大賞 スポーツ庁長官賞」を受賞いたしました。また、COP28ジャパンパビリオンでは、日本企業の先進的な事例として、環境省主催セミナーに登壇し、これらの取組みについて発表いたしました。

 

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                             (COP28ジャパンパビリオンセミナー登壇の様子)

 

(3)リスク管理

リスクマネジメント委員会は、危機発生の回避及び危機発生時の損失を最小化するために、ビジネス戦略に伴う優先して対応すべきリスクの特定と担当部門を決定し、リスクを総括的に管理しており、その活動を取締役会に年2回報告します。各部門から選出されたリスクオーナーは、担当するリスクに対する低減アクションをリードし、進捗管理を行います。リスクマネジメントチームは、内部監査部と連携し、リスクマネジメント全体が有効かつ適切に行われるようモニタリングします。気候関連のリスクは、このリスク管理プロセスに統合されており、サプライチェーンの事業継続計画(BCP)リスクについて特定しました。

 

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(4)指標及び目標

当社は、スコープ1,2,3における温室効果ガス排出量を2030年までに63%削減(2015年比)、2050年までにネットゼロを実現することにコミットしており、この削減目標はScience Based Targets initiative (SBTi)によって承認されています。

 

 

温室効果ガス排出削減目標

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※対象範囲は「購入した製品・サービス」と「販売した製品の廃棄」

 

 

2022年度

スコープ1+2 CO₂排出量(t-CO₂)

24,066

スコープ3 CO₂排出量(t-CO₂)

818,549

事業所でのCO₂排出量削減率(%)(2015年比)

22.0

サプライチェーンでのCO₂排出量削減率(%)(2015年比)

3.1

事業所での再生可能エネルギー由来の電力比率(%)

26.7

シューズとウエアのポリエステル材のリサイクル材比率(%)

30以上

 

 

(Ⅱ)人的資本

当社では、働く従業員一人ひとりが、創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし」から導かれたブランド・スローガン 「Sound Mind, Sound Body」を体現する存在であることを重視しています。

また、グローバルな競争が激化する中、市場の多様なニーズに的確に対応し、新規ビジネスや付加価値創造を継続的に行っていくために「組織の多様性」も重視しています。中期経営計画2026ではGlobal Integrated Enterprise(GIE)への変革を目指し、「多様なバックグラウンドを持つ優秀な人財が思う存分力を発揮できる環境の整備」のため、3つの観点から取組みを実施し、経営基盤を強化していきます。

 

1.従業員によるSound Mind, Sound Bodyの体現

・従業員への還元の実現

・従業員のWell-being推進により、エンゲージメントの高い職場を実現

・デジタルを活用した多様な働き方と成長機会の提供

2.グローバルでダイナミックな人財活用

・全世界からグローバルで活躍できる人財

・オペレーショナルエクセレンスを踏まえた最適人員数の実現

・適材適所に人財を配置し、人件費率13%を実現

3.ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

・女性管理職比率の向上

・障がい者雇用の促進と環境の整備

・多国籍な役員構成の実現

 

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(1)ガバナンス

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・人事委員会の役割

人財育成のための教育投資も積極的に行っています。喫緊の課題は、次世代後継者の育成です。2021年7月に設立した人事委員会では、人財育成の仕組みに加え、グローバルに選抜した後継者候補人財の配置なども議論しています。

 

・人財開発の基本方針

アシックスは従業員の意欲を高め、個人の成長とともに会社が成長できる企業文化の醸成を目指しています。このために、様々なプログラムを通して、多様性を受け入れ、従業員一人ひとりが互いを尊重し、個性と創造性が発揮できる環境を整えていきます。

 

 

(2)戦略

1.従業員によるSound Mind, Sound Bodyの体現

1-1.エンゲージメント

a.目的・方針

Sound Mind, Sound Bodyの実現に向け社員一人ひとりが仕事を通して働きがいを感じている状態が、イノベーションを促し、生産性を向上させ、お客様により良い製品やサービスを提供できると考えています。ASICSでは、Sound mind, Sound Bodyの実現には従業員のエンゲージメントは欠かせないものととらえ、以下のように重点的な活動をしています。

 

b.重点的な活動内容

グローバル全体の従業員を対象に、年に2回のグローバルエンゲージメントサーベイを実施しています。このサーベイを通して、社員一人ひとりが働きがいを感じているか/組織改善の進捗などを確認するとともに、会社全体としてのアクションの検討をしております。

 

c.推進体制

グローバルエンゲージメントサーベイの結果を基に、人財開発や組織開発、事業の成長に向けた取組みを進めています。サーベイの実行・会社全体の組織状態の分析はエンゲージメント事務局が行い、各組織単位ではその組織長とメンバーがサーベイの結果を基にした対話を重ねることによりエンゲージメントの推進を図っています。

 

1-2.従業員への還元を目指した取組み

報酬制度の充実により、従業員への還元を高め、更なる企業価値の向上を目指しています。2024年度の取組みの一部が以下の通りです。

 

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1-3.Well-being

a.目的・方針

アシックスは、従業員によるSound Mind, Sound Bodyの実現のため、従業員とその家族のWell-being(身体的・精神的・社会的に良好である状態)を目指し、以下の5つの健康推進活動を行っております。

 

①健康管理・増進体制の拡充

②ヘルスリテラシーの向上支援

③生活習慣の改善支援

④メンタルヘルス対応の強化

⑤多様な人財が活躍できる職場環境

 

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b.重点的な活動内容

2023年度の取組みとして「従業員1人ひとりのヘルスリテラシーの向上と定着」という方針のもと、戦略マップに基づき上記5つを重点項目とした施策を実施、効果検証を行っております。

 

①健康管理・増進体制の拡充

・健康診断項目、人間ドック補助の検討

・健康管理システムの導入

②ヘルスリテラシーの向上支援

・ポータルサイトの整備、興味関心に合わせた情報発信

・従業員の参加の動画コンテンツを配信

③生活習慣の改善支援

・アプリなどを利用した参加型運動イベントの開催

・卒煙モチベーションに合わせた卒煙サポートプログラムの実施

・VDT※症候群に関する情報発信 ※PC/スマートフォン/タブレット等を扱う作業

④メンタルヘルス対応の強化

・メンタルヘルス4つのケア確立

・出社と在宅勤務を組み合わせた自律的な働き方についてのeラーニング実施

⑤多様な人財が活躍できる職場環境

・両立支援ガイドブック作成(出産育児関連)

 

 

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c.推進体制

アシックスの健康推進活動は、CWO(Chief Well-being Officer)を中心とするWell-being committeeで承認された年度方針と計画に基づいて実行されており、進捗状況やその内容についてはオーナーである社長が監督を行っています。

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2.グローバルでダイナミックな人財活用

a.目的・方針

タレントマネジメントでは、グローバル経営幹部候補者の育成、及び社員一人ひとりの自律的な成長・キャリア形成を目指し、採用・育成・配置・評価・能力開発に関する仕組みをグローバル横断的に整えています。なお、ここにはサクセッションプラン(後継者育成計画)の推進も含まれます。

具体的には、2021年に立ち上げた人事委員会を中心に選抜された社員を対象としたASICS Academy(次世代リーダー育成選抜型プログラム)の実施や計画的なジョブローテーションによる潜在能力開発、働きやすい環境の整備(ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営の推進)、従業員へのグローバルエンゲージメントサーベイの実施・結果分析・施策実施等に取組みなどを実施しています。

今後更に人財育成を加速させるために、サクセッションプランに基づく育成計画を作成し、国内外のチャレンジポストへの登用を実施しています。また上司部間でのキャリア開発プランに関する対話とアクションを通じ、会社全体での「育成・成長カルチャー」の醸成につなげます。

中期経営計画2026では、GIEへの変革を目指し、より一層のグローバル成長やオペレーショナルエクセレンス実現が求められる事から、グローバルコミュニケーション能力やデジタル人財育成施策を強化してまいります。

 

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b.重点的な活動内容

次世代リーダー育成

・ASICS Academy

グローバルでビジネスをリードできる人財を、戦略的かつ早期に育成することを目的とし、2016年に「ASICS Academy」を立ち上げました。次世代リーダーとして選抜された社員を対象に、経営知識やDX活用を含む戦略思考を学ぶプログラムを実施しています。管理職以上を対象としたプログラムはグローバル全社から選抜されたタレントが参加し英語を共通言語としています。また、習得した知識を業務の中で活用できるようにキャリア面談を通してキャリアパスの実現につなげています。

・海外派遣プログラム(EBT)

海外派遣プログラムでは、語学、異文化体験、社会課題の理解、海外事業所メンバーとの交流等の
“自分の目で見る経験”を通じて、視野の拡大とリーダーとしての成長を促す機会を提供しています。

 

・経営基礎研修

育成の機会を通じ、学習意欲や成長意欲を向上し、経営戦略・アカウンティング・データ活用/分析の基礎知識について理解します。

キャリア開発サポート

・キャリアデザイン

階層別プログラム内や、キャリアの節目にあたるタイミングで、自身のキャリアを改めて考える機会を提供しています。

・キャリア面談

アシックスでは社員一人ひとりが自身のキャリアを意識し、成長の速度を上げていく事を目指した「キャリア面談」を導入しています。自身のありたい姿(キャリアビジョン)を描き、上司と共にその実現に必要な知識やスキル・経験を話し合い、今後実施すべきアクションを計画する機会となっています。

・各種ビジネススキル

上司の勧めや本人の希望で受講できる、eラーニングの学習コンテンツを用意しています。自分自身のキャリアを考え、成長に向けてこれらプログラム受講、業務の中で活用していくことで、ありたい姿に一歩ずつ近づいていきます。

 

階層別

・新入社員研修

新入社員時には、社会人としての基本的なマナーやビジネススキル、アシックスの社員として働くための必要な知識を習得するためのプログラムを実施しています。

また、アシックスがサポートしている各種スポーツイベントなどに派遣するスポーツマーケティング研修や自社工場、店舗での現場研修も実施しています。

・昇格時研修

昇格後の役職に必要なスキルのインプットと、新しく昇格した社員同士のネットワークづくりの場として、昇格時研修を実施しています。

 

c.推進体制

月に1回開催の人事委員会では、副社長及び常務執行役員による組織・人財開発に関する活発な議論を行っています。また、グローバルサミットにおいてはグローバルでのタレントマネジメントについて議論を行います。

人事委員会で議論された人財開発方針や、グローバルで選抜した後継者候補人財の育成等については、取締役会/経営会議の決議を経た上で、人事部門(組織・人財開発機能)が推進・実行に移します。

 

3.ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

a.目的・方針

「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下DE&I)」推進のビジョンとして「One Team Stronger Together」を掲げ、社員同士がお互いの違いを認め活かし合うことを目指しています。

ニーズが多様化するお客様へより良い製品やサービスを提供するだけでなく、多様なバックグラウンドを持つ社員ひとりひとりが思う存分力を発揮できる環境の整備に取組み、多様性を持続的な成長に繋げるとともに、創業理念である「Sound Mind, Sound Body」の実現に向けて取り組んでいます。

 

 

b.重点的な活動内容

2026年までの重点施策として「ダイバーシティ」、「エクイティ」、「DE&I 認知向上」の3つを中心に取組みます。

 

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c.推進体制

様々な地域の経営陣より構成された毎月のグローバルDE&Iステアリングコミッティを中心として戦略が着実に実行されているか管理しながら活動を進めると同時にグローバル目標と各地域課題にアプローチする体制を整備し、グループ全体でDE&Iに取り組んでいます。

 

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(3)リスク管理

当社グループにとって人財は経営の基盤であり、特にグローバルな事業活動を一層進める中で、それらの環境で活躍できる人財の育成・確保が急務であり、国内外での積極的な採用活動、研修・教育の充実、コア人財の流出の防止などの施策を講じています。これらの施策にも拘わらず、当社グループの人財育成・確保、適材適所の配置が計画通り進まなかった場合、長期的視点から当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4)指標及び目標

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3【事業等のリスク】

 当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。記載内容のうち将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 なお、当社は、リスクマネジメント委員会を設け、これらの中から定期的に経営戦略に伴うリスクの分析・評価を行い、リスク対応策を講じることで全社的なリスクを低減し、危機の発生を回避、もしくは危機発生時の損失を最小化しています。もし、危機を認知した場合は、クライシスマネジメント規程に定められた方針に則り、速やかに対応いたします。

(1)グローバルでの事業拡大に伴う、バリューチェーンにおけるリスク

当社グループは、グローバルな事業展開をしており、更なる市場拡大を目指しています。生産につきましても、OEM生産を手掛ける多くの海外工場と協力して、東南アジア及び中国など各地域での生産を進めています。

グローバルでの事業拡大には、バリューチェーンである調達、生産、販売において、以下に掲げるリスクが内在しており、経営戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

① サステナビリティ(人権・環境)に関するリスク

a.当社グループは、生産委託先工場に対し、各国及び国際的な労働基準を遵守し労働者に公正で安全な労働環境を提供するよう厳しく要求しています。しかし、当社の生産委託先工場が、人権NGOから労働基準の非遵守を指摘された場合、事実関係に関わらず、当社グループの企業イメージを損なうリスクがあります。

 

b.温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーへの転換などの気候変動への対応が遅れた場合や、廃棄物排出量の削減、資源循環の取り組みなどが適切に行われなかった場合、当社グループの企業イメージに対する社会的な信用低下を招く可能性があります。また、自然災害・気候変動により、スポーツ時間の減少や生産委託先工場の操業停止、原材料価格の変動など、当社事業・財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

c.当社グループは、製品及び製造工程の有害・制限化学物質管理を進めていますが、生産委託先工場や原材料サプライヤーで有害・制限化学物質の非遵守使用があった場合、業績や企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② サプライチェーンに関するリスク

当社グループは、東南アジアを中心とした委託工場での生産から各販売地域を結ぶサプライチェーンにおいて、自然災害や事故等があった場合の物損に備えて、物流保険に加入しております。一方で、サプライチェーンが寸断され、商品の到着遅延による売上減があった場合は、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 信用リスク

当社グループはグローバルで販売チャネルの管理を強化していますが、代理店や小売店の経営破たんや債務不履行があった場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)季節的変動に係るリスク

当社グループが取扱う製品には、季節性の高いものが含まれており、季節により業績に偏りが生じる場合があります。そのような製品については、需要見通しの上で仕入・販売計画を策定しておりますが、気候条件による季節的な影響を正確に予測することは困難であり、実際の気候が予測と異なることにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)外部への生産委託に関するリスク

 当社グループは、製品の生産の一部を外部の協力工場に委託しております。これらの外注先の選定にあたっては、技術力や供給能力などについて、あらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる取引先を選定しておりますが、納入の遅延や製品の不具合をはじめとした、生産面でのリスクが生じる可能性を否定できず、外注先の生産能力不足や自然災害による外注先の操業停止などにより、当社グループが十分な製品供給を行えない可能性があります。

 

(4)原材料の仕入価格の変動に関するリスク

当社グループが生産委託先工場に生産を委託しているフットウエア製品の原材料の仕入値は国際的な原油価格と関係があるため、原油価格の大幅な価格変動が数ヶ月後の原材料価格動向に影響を及ぼす傾向があります。フットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際原油価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)製品の物流価格の変動に関するリスク

当社グループが生産委託先工場から販売子会社の市場に製品を輸送する場合の費用は、国際的な物流価格と関係があるため、物流価格の大幅な価格変動が製品仕入価格動向に影響を及ぼす傾向があります。

主に東南アジアに生産委託工場を有するフットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際物流価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、リスクマネジメント委員会の下部組織として、情報セキュリティ委員会を設け、セキュリティ専任チームが情報セキュリティの強化を進め、個人情報や営業秘密等の情報管理に努めています。しかし、高度化したサイバー攻撃により、これらの情報が万一漏洩・流出した場合、又は、販売オペレーションが停止した場合には、お客様などからの損害賠償請求、売上の機会損失、及び信用の失墜等により、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)システム障害に関するリスク

当社グループのサービスの多くは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて提供されています。当社グループは、適用できうる限りの最新の技術と対応を行い通信ネットワークが正常に機能し、サービスの提供に支障がないよう努めています。しかしながら、かかる対応策によっても通信ネットワーク若しくはコンピュータシステム上のハードウエア又はソフトウエアの不具合、欠陥といった当社グループの情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、当社サービスの不正な利用、重要なデータの消失、機密情報の不正取得などが発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)個人情報の取扱いに関するリスク

当社グループは、グローバルレベルで顧客や従業員の個人情報を保有しています。欧州及び各国における個人情報保護法の施行に対応するため、社内体制とプロセスを整え、当該部署への教育を強化するなどしてリスクを低減しています。特に欧州に関しては、EU一般データ保護規則違反により万一制裁金が課された場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある為、当社グループ共通ルールを定めた拘束的企業準則(Binding Corporate Rules)をEU当局に申請しています。

 

(9)知的財産権に関するリスク

当社は、国内外において、多くの特許権・商標権等の知的財産権を所有しております。知的財産権に関する侵害事件の発生など、商品開発への悪影響やブランドイメージの低下等を招く可能性があります。

知的財産権に関する侵害訴訟は解決までに相当な時間と費用を要し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)マーケティング活動に関するリスク

当社グループはブランド価値向上のため、積極的なマーケティング活動を実施しております。

当社グループの発信内容や、当社グループが起用した方々の言動に対する社会的批判がその真偽に関わらず拡散し、当社グループのブランド価値や企業の信用が低下し、財務的、又は非財務的な損失を被る可能性があります。

 

(11)人財育成及び確保に関するリスク

当社グループにとって人財は経営の基盤であり、特にグローバルな事業活動を一層進める中で、それらの環境で活躍できる人財の育成・確保が急務であり、国内外での積極的な採用活動、研修・教育の充実、コア人財の流出の防止などの施策を講じています。これらの施策にも拘わらず、当社グループの人財育成・確保、適材適所の配置が計画通り進まなかった場合、長期的視点から当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)競合と技術革新に関するリスク

当社グループの事業に関連する製品は、国内外の市場で競合他社との激しい競争にさらされております。当社グループの競合先には、研究開発や製造、販売面で有力な企業が存在しております。現在、当社グループのブランド力及び製品は、こうした競合先との競争力を十分に有しておりますが、このことが、将来においても競合他社に対し有利に競争し続け得ることを保証するものではありません。また、取引先における技術革新によって当社製品の販路が縮小され、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)新規事業に係るリスク

当社グループが新規事業に取り組む場合には、事前に十分な検討を行った上で事業計画が策定され、取締役会における承認の上で行われます。新規事業の展開には先行投資が必要となるケースが多く、当該事業が安定して収益を計上するまでには一定の時間を要することが予想されるため、一時的に当社グループの利益率が低下する可能性があります。

 

(14)M&Aに関するリスク

当社グループは新規市場への展開を行う中で、M&Aをその有効な手段のひとつとして位置付けており、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針でありますが、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明する場合や、M&A実施後の事業展開が計画通りに進まない可能性があり、その場合は当社グループが当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることも考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)経済環境・消費動向の変化のリスク

当社グループが事業活動を展開している各国における経済環境や消費動向の変化により、売上の減少や過剰在庫が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)海外拠点での事業活動に係るリスク

当社は、事業活動の相当部分を米国、欧州及び中国を含むその他地域で行っております。こうした海外市場で事業を行うにあたって、以下のような特有のリスクがあります。

・ゼネスト等の労働紛争

・アジア等における労働力不足と賃金水準の上昇

・政治不安

・貿易規制や関税の変更

・一般的に長期の債権回収期間

・法律や規制の予想し得ない制定又は改正

・文化、商慣習の相違

・関税、輸送費用、その他の価格競争力を低下させる負担費用

・投資効果の実現までに要する長い期間と多額の資金

 

(17)減損に係るリスク

当社は、今後買収を通じてさらにのれん等を保有する可能性があり、これらの資産につき収益性の低下が発生した場合、当社は減損を認識しなければならず、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)見積り前提条件の変動リスク

当社グループは連結財務諸表を作成するに際して、売上債権の回収可能性、棚卸資産の評価、投資有価証券の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度などに関して見積りを行っております。これらの見積りは将来に関する一定の前提に基づいており、その前提が実際の結果と相違する場合には、予期せぬ追加的な費用計上が必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)為替レートの変動に伴うリスク

当社グループは、グローバルで製品の製造販売を行っております。各地域における現地通貨建の財務諸表を円換算して連結財務諸表を作成しており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値に影響が出る可能性があります。製品仕入につきましては大部分を米ドル建で行っており、米ドルに対する他通貨の為替レートの変動などに伴う製造原価の上昇などにより、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、実需の範囲内で短期及び長期の為替予約取引により、為替変動リスクを低減していますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではありません。

 

(20)税務に関するリスク

当社グループを構成する事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。なお、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

(21)株価下落のリスク

当社の発行済株式は、東京証券取引所にて売買可能であり、大株主による当社株式大量の市場売却や、そのような売却の可能性は、当社株式の市価を低下させる可能性があります。また、当社は当社株式に転換可能な有価証券を発行する可能性もあり、これらの事態が発生した場合、株式価値が希薄化し、株価に悪影響を与える可能性があります。

 

(22)製造物責任に関するリスク

当社グループは、厳密な品質基準を設けて生産及び仕入れを行っております。製造物責任賠償保険に加入しておりますが、すべての賠償額を保険でカバーできるという保証はありません。製造物責任問題発生による社会的評価、企業イメージの低下は、当社製品に対する消費者の購買意欲を減少させる可能性があります。これらの事象は財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(23)法令違反リスク

当社グループは、「アシックスグローバル行動規範」を定め、内部統制の体制を整え、グループ一丸となって法令順守及び倫理行動規範の徹底に努めております。それにもかかわらず、当社グループの役員又は従業員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、財政状態及び経営成績が悪化する可能性があります。

 

(24)紛争・訴訟リスク

当社グループと、取引先、顧客等との間に紛争や訴訟が発生した場合、当該紛争解決に多額の費用がかかり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(25)大規模自然災害等に関するリスク

想定外の自然災害、政治経済状況の変化、感染症・伝染病等の流行、法律・規制の変更、テロ・戦争・その他社会情勢の混乱などが、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

特に、グループ全体の経営管理機能を集約している本社が所在する兵庫県神戸市で大規模自然災害が発生した場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、大規模自然災害が本社地域及び主要オフィスに発生した場合に適用する「事業継続計画(BCP)」を策定しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 財政状態及び経営成績等の状況

 

当連結会計年度の振り返り

 

2024年1月1日に能登半島地震が発生しました。被災された方々に対して心よりお見舞い申し上げます。

 

さて、当連結会計年度である2023年は、前年までの世界的なコロナ禍がほぼ終焉しつつあり、正常な経済活動への本格的な回帰が見え始めたところで幕を開けました。アシックスにとっては、コロナ禍で世界的に見られた人々の健康意識の高まりに加え、年初からスポーツイベントの本格的な開催再開が見込まれる中で、中期経営計画2023(以下、「中計2023」)の最終年度を迎えました。

 

2023年における業績面を総括すると、中計2023で掲げた定量的な経営指標を期中に前倒しで達成、さらには売上高及び全ての段階利益で過去最高を記録しました。アシックスは完全に成長軌道に乗り、また企業としてのステージが一つ上がったと自負しております。こうした点は、資本市場からも評価を頂いていると考えており、8月には株価が上場来高値を更新するとともに、時価総額も節目となる1兆円を初めて突破しました。定性面においても、アシックスはサステナビリティ、デジタル、IRといった重要な分野で複数の著名な賞を受賞。中計2023を締め括るに相応しい年であったと考えております。

 

もう少し長い目で振り返りたいと思います。2019年に、アシックスはそれまでの生産部門と販売部門が独立していた経営管理体制を改め、5つのカテゴリーのトップが製品の企画から生産、販売まで全ての責任を担うカテゴリー経営体制に移行しました。各カテゴリーのトップが収益や在庫の責任を持ち、本社と販売会社の役割を明確にすることで両者の距離が一気に縮まり、またカテゴリーごとに「垂直統合」されたバリューチェーン全体での収益性重視へとマインドセットが大きく変わりました。その他にも主に単年度の計画策定と進捗確認のためのグローバル共通の経営管理サイクル(アシックス社内で「マニフェストⅠ・Ⅱ」と呼んでいます」)、販管費コントロールのために費目ごとにグローバル共通で単独の執行役員を責任者として指名するコストオーナー制なども導入するとともに、それら経営管理の仕組を支える ITシステムの整備を進めました。2023年は、こうした2019年から着手した一連の経営改革が浸透・進捗し、定量面・定性面での大きな成果に繋がった節目の年であったとも捉えております。

 

アシックスは、日本発のコンシューマー関連のブランドとして類を見ない世界水準の企業体です。特にパフォーマンスランニングと呼んでいるランニングシューズでは、特に欧州やオセアニアで大きなプレゼンスを獲得してきました。中華圏においても「走る・運動するならアシックス」とのブランドイメージの浸透が進んでいます。他方で、北米や日本では相対的に欧州などにおけるほどのブランドポジションを確立できていないと見ております。2023年は、これを克服していくための打ち手を講じた年でもありました。例えば、北米においては多数の直営店の閉店を完了するとともに、低価格帯商品の大幅な削減に踏み切りました。同時に、比較的高価格帯の商品販売チャネルとなるランニング専門店への取組みを強化しており、当該チャネルでのシェアもしっかりと伸びてきております。日本においては、アシックスが長年取り組んできたものの低収益であったスクールビジネスからの撤退を決めました。一方で、直近の年末年始の著名な駅伝大会などでは、機能面で進化したMETASPEEDシリーズの躍進が見られました。日本におけるアシックスブランド復活へ着実に前進しているものと考えております。

 

また、2023年はパフォーマンスランニングのみならず、アシックスブランドのコアパフォーマンススポーツ(テニスやバスケットボールなどランニング以外の競技用シューズ)やスポーツスタイル(日常使い用のカジュアルシューズ)への波及効果が如実に表れた年でもありました。いずれのカテゴリーも前年比で大きく成長したことに加え、何といっても数年前まで赤字であったカテゴリー利益がそれぞれ初めて100億円を突破したことは一つの大きなマイルストーンを達成したものと捉えています。アシックスブランドを核として、パフォーマンスランニングのみならずコアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイルも一体となって成長していく構図は今後より一層明確になっていくものと考えております。

 

地域軸で見た際の今後の成長ドライバーである東南・南アジアや南米といった市場でもアシックスブランドがしっかりと浸透し始めております。全体の売上高に占める割合はまだまだ小さいですが、成長速度は目を見張るものがあります。今後が非常に楽しみな地域です。

 

オニツカタイガーも、稀有な日本発のラグジュアリーライフスタイルブランドとして躍進しております。既にブランドが確立している中華圏、東南・南アジアで着実に成長したうえ、2023年はコロナ禍直前の2019年以来となるインバウンド需要が完全回復を見たこともあり、日本では前年からは倍増となる成長となりました。オニツカタイガーも初めてカテゴリー利益が100億円を超過しました。

 

アシックスはランナーに向けてシューズ販売のみならず様々な関連サービスをシームレスに提供できるランニングエコシステムの構築を通じて、ランナーのためのプラットフォーマーになることを見据えています。2022年までに日本、北米、欧州、オセアニアにおいてそれぞれレース登録プラットフォーム運営会社を買収し、2023年には年間で延べ1,000万人以上のランナーとのタッチポイントを獲得できるようになりました。また、アシックス独自の会員サービスであるOneASICSのメンバーをグローバルで945万人(2023年末時点)有しておりますが、今後レース登録サービスとOneASICS を有機的に繋いでいくことでランニングエコシステムの基盤をさらに拡大できると考えています。なお、アシックスは2023年12月に初となる個人投資家向け社債である「OneASICS債」を150億円で起債しましたが、今後も事業活動のあらゆる側面でメンバーシップを拡大していきます。

 

2023年の振り返りの最後に株主還元について触れます。アシックスは、株主の皆様に対する利益還元を経営上の最重要課題のひとつと考えております。前述の通り、売上高や各段階利益で過去最高を更新し、また中計2023の各種目標を達成したことから、期末配当を従前予想の35円から40円に増配することにより、2023年の年間配当は65円となります。こちらも過去最高となる見通しです。加えて、アシックスのビジネスモデルに照らした資本水準の最適化に向けて総額150億円の自己株式取得枠を設定しました。これらにより、中計2023にて目標としていた「中期経営計画期間内の連結総還元性向50%以上」を達成する見通しです。

 

2024年以降に向けて

 

アシックスは2024年からの3年間を対象期間とした中期経営計画2026(以下、「中計2026」)を2023年11月に発表しました。2019年以来の経営改革の方向性と成果を踏まえ、2024年1月に社長COOに就任した富永満之のリーダシップのもと「グローバル×デジタル」をさらに推進し、より一体感のあるグループとして有機的なカテゴリー経営体制を持つ「Global Integrated Enterprise」へ変革し、成長の速度を引き上げていきます。詳細については、当社ホームページをご覧ください。

(https://assets.asics.com/system/media_libraries/6280/file.pdf?_ga=2.172443940.606011848.1707095790-539662461.1680839356)

 

アシックスは2020年に、10年後の2030年を見据えた長期ビジョンである「VISION2030」を掲げました。「誰もが一生涯、運動・スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造する」ことを目指す姿として掲げています。このビジョンの実現に向けて、従来からの事業の中心である①シューズなどのプロダクト(製品)に加えて、②スポーツをする場(ファシリティ)やコミュニティを創出しながら、③データを活用した分析(アナリシス)・診断(ダイアグノシス)をもとに、より安全に運動効果を高め人々の健康に資するプログラムやサービスの提供に力を入れていきます。これら3つの事業ドメインが有機的に結合し拡大していくことでアシックス自身が社会に価値を提供、その結果としてアシックスが成長していくというサイクルを実現していけると考えています。また、ツールとしてのデジタル、1人1人に合ったプロダクト・サービスを開発するパーソナル、人々がスポーツと関わり健康で居続けるために必要な社会環境課題解決に関するサステイナブルという3つのテーマに対する戦略的かつ継続的な取組みを、中計2026はもとより、日常的な経営管理や事業推進の中でも仕組化していきます。

 

本文の締め括りとして明るい話題を2つお伝えさせてください。1月に開催された大阪国際女子マラソンで、アシックスとアドバイザリー契約を締結している前田穂南選手がMETASPEEDシリーズを着用し19年ぶりに日本記録を更新しました。更に、同じく1月にチェコで開催された世界室内陸上ツアー2024ゴールド大会で、アシックスがアドバイザリー契約を締結している桐生祥秀選手がMETASPEEDシリーズを着用、男子60メートル走で日本新記録を樹立しました。前田選手、桐生選手、おめでとうございます!

商品の研究開発段階でトップアスリートから頂けるフィードバックはアシックス独自の無形資産でもあります。脚をとめることなく不断の努力を通じてアシックスファミリーであるアスリートの方々を支えていきたいと思います。

 

今後の更なるアシックスの飛躍に是非ご期待ください。

以上

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

① 財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ39,049百万円増加し、464,116百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前期末に比べ4,978百万円増加し、257,315百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前期末に比べ34,071百万円増加し、206,801百万円となりました。

 

② 経営成績

 当連結会計年度における売上高は570,463百万円と前期比17.7%の増収、営業利益は54,215百万円と前期比59.4%の増益、経常利益は50,670百万円と前期比63.9%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は35,272百万円と前期比77.4%の大幅増益となりました。

 

 報告セグメント別の業績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

売上高

セグメント利益

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

日本地域

123,402

135,849

12,447

6,046

12,796

6,750

北米地域

105,331

114,617

9,286

26

1,440

1,414

欧州地域

130,099

147,982

17,882

11,254

14,189

2,934

中華圏地域

62,411

77,615

15,204

10,067

13,107

3,039

オセアニア地域

33,292

38,460

5,167

5,211

6,241

1,029

東南・南アジア地域

18,448

27,122

8,674

2,984

4,971

1,986

その他地域

43,630

49,843

6,212

3,646

4,400

753

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは90,095百万円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは4,640百万円の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは40,252百万円の支出となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて47,497百万円増加し、113,301百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

 当社グループは、生産実績の割合が僅少であるため記載を省略しております。また、受注状況につきましても、受注生産を行っている割合が僅少であるため記載を省略しております。なお、報告セグメント別の売上高につきましては、「第2 「事業の状況」 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、記載内容のうち将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態

 当連結会計年度末の財政状態といたしましては、総資産464,116百万円(前連結会計年度末比9.2%増)、負債合計257,315百万円(前連結会計年度末比2.0%増)、純資産合計206,801百万円(前連結会計年度末比19.7%増)でした。当連結会計年度末の現金及び預金は前年比で増加しておりますが、2024年3月の社債償還及び今後の自己株式の取得などに充当予定です。また、為替影響などにより総資産が前年比で増加したものの、好調な業績による商品販売や在庫水準適性化を中心とする棚卸資産圧縮などの運転資本の改善に加え、利益剰余金の増加もあり、自己資本比率は前連結会計年度と比べ44.1%と4.0ppt上昇いたしました。資本水準の最適化に向けて、総額150億円を上限とする自己株式の取得を実施するなど、株主の皆様に還元していきます。

a. 流動資産

 現金及び預金の増加などにより、323,522百万円(前連結会計年度末比9.3%増)となりました。

b. 固定資産

 ソフトウエアの増加などにより、140,593百万円(前連結会計年度末比9.0%増)となりました。

c. 流動負債

 短期借入金の減少などにより、143,648百万円(前連結会計年度末比4.6%減)となりました。

d. 固定負債

 社債発行による増加などにより、113,667百万円(前連結会計年度末比11.8%増)となりました。

e. 純資産

 利益剰余金の増加などにより、206,801百万円(前連結会計年度末比19.7%増)となりました。

 

② 経営成績

 当連結会計年度における売上高は570,463百万円と前期比17.7%の増収、営業利益は54,215百万円と前期比59.4%の増益、経常利益は50,670百万円と前期比63.9%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は35,272百万円と前期比77.4%の大幅増益となりました。この結果、売上高をはじめ各段階利益も過去最高を記録し、「中期経営計画2023」で掲げた目標を大幅達成いたしました。

a. 売上高

 為替影響に加え、全てのカテゴリーで好調に推移したこともあり、570,463百万円と前期比17.7%の増収となりました。

b. 売上総利益

 上記増収の影響により、296,896百万円と前期比23.3%の増益となりました。

c. 営業利益

 上記増収の影響により、54,215百万円と前期比59.4%の増益となりました。

d. 経常利益

 上記増収増益の影響により、50,670百万円と前期比63.9%の増益となりました。

e. 親会社株主に帰属する当期純利益

 上記増収増益の影響に加え、連結子会社であったHaglöfs AB株式の売却に伴う関係会社株式売却益の計上などにより、35,272百万円と前期比77.4%の増益となりました。

 

 

 カテゴリー別の業績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

(カテゴリー)

売上高

カテゴリー利益

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

(△は減)

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

(△は減)

パフォーマンスランニング

258,272

285,929

27,656

49,181

50,018

836

コアパフォーマンススポーツ

54,155

72,154

17,999

9,489

12,810

3,320

スポーツスタイル

43,466

59,257

15,790

6,425

12,047

5,622

アパレル・エクィップメント

35,278

36,185

906

△1,645

1,001

2,647

オニツカタイガー

43,011

60,304

17,293

7,399

15,360

7,961

 

a. パフォーマンスランニング

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、285,929百万円と前期比10.7%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、50,018百万円と前期比1.7%の増益となりました。

 世界的なスポーツイベントなどで勝てる製品を創出し、製品訴求力を強化することで、高付加価値製品の販売に注力いたします。加えて、ランニングエコシステムを活用し、あらゆる層のランナーとの接点を拡大することで、マーケットシェアNo.1を目指し、シェア拡大に向けた攻勢を継続してまいります。

b. コアパフォーマンススポーツ

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、72,154百万円と前期比33.2%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、12,810百万円と前期比35.0%の増益となりました。

 テニスをランニングに次ぐ収益の柱とするため、トップアスリートとの共創による製品開発やサービス提供通じ、更なる売上拡大を図ります。また、現在日本地域で好調なワーキング事業を、グローバルで展開することで成長を加速させてまいります。

c. スポーツスタイル

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、59,257百万円と前期比36.3%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、12,047百万円と前期比87.5%の増益となりました。

 スポーツスタイルの提供価値や独自性をより良く訴求するためのグローバルでのマーケティング活動により、ブランド認知力及び価値向上に努めます。また、ファッション感度の高いお客様に強い販売アカウントとの連携を強化し、高付加価値製品への販売訴求を実施することで、売上成長と営業利益率向上を図ってまいります。

d. アパレル・エクィップメント

 売上高は、中華圏地域やオセアニア地域での好調により、36,185百万円と前期比2.6%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、粗利益率の改善などにより、1,001百万円と黒字転換いたしました。

 引き続き、グローバルでランニング・トレーニングへ経営資源を集中させ、機能性を重視した独自性のある商品開発を行うことで、黒字の定着化を目指してまいります。

e. オニツカタイガー

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、60,304百万円と前期比40.2%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、15,360百万円と前期比107.6%の大幅増益となりました。

 2024年はオニツカタイガーブランド創立75周年を迎えることから、記念イベント開催によるブランド認知度や価値向上に努めます。また、プレミアムロケーションへの直営店舗出店や従来未展開であった地域へ対しグローバルEコマースを通じた製品販売を開始するなどDTCビジネス強化することで更なる事業拡大を目指します。

 

 

報告セグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

a. 日本地域

 売上高は、オニツカタイガーやコアパフォーマンススポーツが好調だったことにより、135,849百万円と前期比10.1%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、12,796百万円と前期比111.6%の大幅増益となりました。

 パフォーマンスランニングやテニス、ワーキングシューズ市場などの注力した製品カテゴリーでマーケットシェアNo.1に向けた取組みを実施することで、ブランド力向上を目指します。また、DTC比率の更なる拡大やデジタルを活用した業務改革や効率化により収益性を高めることで、健全な利益を持続的に創出するできるよう取り組んでまいります。

b. 北米地域

 売上高は、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツが好調だったことにより、114,617百万円と前期比8.8%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、1,440百万円の大幅増益となりました。

 当社の強みであるパフォーマンスランニングやテニスでのビジネス拡充に注力し、専門店でのシェアNo.1を目指します。また、OneASICSなどの活用により適切な販売チャネル戦略を実行することで収益性向上を目指してまいります。

c. 欧州地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、147,982百万円と前期比13.7%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、14,189百万円と前期比26.1%の増益となりました。

 スポーツイベントや国際大会などを活用したブランド訴求により、更なるブランド力向上に取組みます。また、OneASICSやレース登録会社のnjukoを軸にランナーとの接点を拡大し、ロイヤルカスタマーを増加することで、収益向上を目指してまいります。

d. 中華圏地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、77,615百万円と前期比24.4%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、13,107百万円と前期比30.2%の増益となりました。

 今後はパフォーマンスランニングを軸に、スポーツを推進する政府方針を受け、コアパフォーマンススポーツを更に強化していくとともに、中国版OneASICSの展開やオムニチャネル戦略の推進などのデジタルの活用による新規顧客獲得と更なる収益性向上を目指します。また、中国本部の機能を活用した、現地ニーズに適合した製品の企画や開発を継続的に強化してまいります。

e. オセアニア地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、38,460百万円と前期比15.5%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、6,241百万円と前期比19.8%の増益となりました。

 オセアニア地域におけるパフォーマンスランニング市場No.1の地位を圧倒的なものとするため、DTC比率の向上やレース登録サイトRegister Nowの活用により更なる収益性向上を図ります。また、サッカーなどの新規市場参入への取組みにより、持続的な成長を目指します。

f. 東南・南アジア地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、27,122百万円と前期比47.0%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、4,971百万円と前期比66.6%の増益となりました。

 これらの地域ではパフォーマンスランニングやオニツカタイガーに注力し、東南アジア地域においては直営店の拡大やオムニチャネルを推進し、更なる収益性向上を目指します。また、インドにおいては現地生産の推進やスタートアップとの協業などにより、DTC比率を上昇させることで、成長を加速させます。

 

g. その他地域

 売上高は、パフォーマンスランニングやオニツカタイガーが好調だったことにより、49,843百万円と前期比14.2%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、4,400百万円と前期比20.7%の増益となりました。

 南米ではブラジルでの継続的な成長に加え、他の南米諸国の成長を加速させ、事業規模を拡大してまいります。また、ECチャネルの拡大や現地生産を活用し、現地ニーズへの迅速な対応を実施することで売上成長と営業利益率の向上を目指します。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローにおきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、113,301百万円と前期比47,497百万円増加しました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は90,095百万円となり、前期比111,523百万円の収入増加となりました。

 収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益50,572百万円、棚卸資産の減少額17,372百万円、売上債権の減少額8,476百万円、減価償却費16,504百万円、支出の主な内訳は、法人税等の支払額12,717百万円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は4,640百万円となり、前期比9,841百万円の支出減少となりました。

 収入の主な内訳は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入7,956百万円、支出の主な内訳は、無形固定資産の取得による支出10,341百万円、有形固定資産の取得による支出5,185百万円です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は40,252百万円となり、前期比42,567百万円の支出増加となりました。

 収入の主な内訳は、社債の発行による収入24,872百万円であり、支出の主な内訳は、短期借入金の純減額22,000百万円、リース債務の返済による支出18,543百万円、社債の償還による支出15,000百万円、配当金の支払額8,963百万円です。

 

キャッシュ・フロー指標のトレンド

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

自己資本比率(%)

48.0

37.9

42.2

40.1

44.1

時価ベースの自己資本比率(%)

105.0

108.8

135.0

125.6

174.4

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

5.4

6.4

2.2

△6.5

1.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ

11.5

11.6

28.7

△8.6

18.9

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金運営は、営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。また、当社グループは、事業活動を行うための資金の調達に際し、低コストで安定的な資金の確保を重視しております。当連結会計年度末の有利子負債は132,118百万円であります。

資金効率の向上と金融費用の削減、並びに財務面のグループガバナンス強化を目的として、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(グローバルCMS)を2016年3月より金融機関と構築しており、グローバルCMS参加グループ会社を一体とみなして資金の預入及び借入を行っております。これに伴い、従来当社から行っておりました一部子会社への貸付けを解消いたしました。当該グローバルCMSにおいて、預入金及び借入金の相殺表示を行うためのすべての要件を満たしているため、相殺表示を行っております。なお、当連結会計年度末の相殺金額は45,084百万円であります。

 

(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

当社グループは2023年11月に策定した「中期経営計画2026」に基づき、「VISION2030」実現に向けて、「グローバル×デジタル」をさらに推進することで持続的成長を目指し、「連結営業利益800億円以上」「連結営業利益率12.0%前後」「ROA10.0%前後」を2026年12月期の数値目標に設定しております。

当連結会計年度は、パフォーマンスランニングの売上高が全地域で増収となったことや、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイル、オニツカタイガーの成長が著しく、全てのカテゴリーで増収増益となりました。また、販売価格適性化やDTC比率の良化などによる粗利益率改善により、売上高、各段階利益は過去最高額を記録しました。その結果、営業利益は54,215百万円(前期比59.4%増)、営業利益率は9.5%(前期比2.5ppt改善)、ROAは7.9%(前期比2.7ppt改善)と、売上高、営業利益率、ROAのいずれも「中期経営計画2023」で掲げた目標を大幅に達成いたしました。

「中期経営計画2026」ではグローバルでの収益を伴った売上成長を実現するために、収益基盤であるパフォーマンスランニングの更なる成長に加え、次なる収益の柱として、コアパフォーマンスやスポーツスタイル、オニツカタイガーの成長を加速させます。また、地域成長戦略としては、欧州地域や中華圏地域などの既存の収益基盤である地域において、営業利益の持続的な成長を目指すとともに、インドを含む東南・南アジア地域の高成長地域において、売上成長と営業利益率の向上を目指します。また、各コストにオーナー制を導入し、チェック並びにレビューを深化し、成長のための規律ある販管費コントロールを実行することで業界No.1の収益性実現に向け取り組んでまいります。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発は、経営の基本方針である機能性豊かで質の高いスポーツ用品を提供していくことを基礎とし、蓄積されたスポーツテクノロジーに基づき、パフォーマンスランニング、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイル、アパレル・エクイップメント及びオニツカタイガーの各分野において、各統括部門及び各関係会社が新製品の開発を担当し、スポーツ工学研究所が材料開発、機能設計、製品の機能評価などを通じて、各統括部門及び各関係会社の新製品開発の支援業務を行っております。さらには、研究所では、製品設計で得られた多くのデータ、知見をもとに、パフォーマンスの向上やウェルネスケアの分野において、価値あるサービスの提供を目指した研究開発も行っております。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は6,607百万円(前期比8.6%増)となっております。なお、当社グループの行っている研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連づけて記載しておりません。