第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、“コトをITで変えていく。”を使命(Mission)として掲げ、あらゆる人に新たな価値体験を、インターネットサービスを通じて提供しております。現在は多くのイノベーションが生まれ、最先端の技術で世界は急速に進化、効率化しております。当社グループは、インターネットセキュリティサービスやクラウドインフラサービスで培ったノウハウを生かし、電子認証・印鑑事業へ経営資源を集中することで成長を最大限加速させ、売上規模拡大を目指してまいります。さらに中長期的な事業規模拡大を推進するために、IoTなどデバイスIDの認証から資産のデジタル化に伴う資産の認証に至るまで、大切な情報を確かにつなげる世界を実現すべく、より実用的なサービスの投下に向けて投資を継続し、市場開拓を進めております。
 また、当社グループは認証局事業を中心に、事業を通じて社会課題解決への貢献を目指しております。電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」や「電子印鑑ソリューションDSS byGMO」をはじめとした電子署名サービスにおいては、その普及による業務効率化やペーパーレス化を実現することができます。電子証明書による暗号化技術は、文書の改ざんリスクを低減させ、情報セキュリティの向上に寄与いたします。さらに、郵送作業等を無くすことで、作業のための時間や場所の制限が無くなり多様な働き方が選択できるようになるため、様々な面で持続的な社会の実現に貢献しております。なお、「電子印鑑GMOサイン」および「電子印鑑ソリューションDSS byGMO」の累計署名数は1億6,295万件を超えており、これまでに約990tのCO2削減※に相当する効果が得られております。今後も、同サービスに経営資源を集中することで事業拡大による企業価値向上と社会課題解決の両立を目指してまいります。

※:平成23年3月18日日本製紙連合会・LCA 小委員会発行「紙・板紙のライフサイクルにおける CO2排出量」の
   PPCのCO2排出量から算出

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、①売上高、②売上高経常利益率、③ROE(自己資本利益率)を重要な経営指標としております。

(3) 経営環境

電子認証・印鑑事業については、SSLサーバ証明書が、中国を中心としたアジア地域および中東等、新興市場における需要拡大に伴い好調に伸長しております。また、デジタル化の進展や働き方の多様化およびクラウドサービスの利用拡大等を背景にID管理サービス「トラスト・ログイン byGMO」や個人や組織を認証する「クライアント証明書」等のサービスが大手顧客を中心に販売を伸ばしております。「電子印鑑GMOサイン」においても、DX実現を目的として民間企業から自治体まで、幅広い分野・業界で導入の拡大が続いております。

クラウドインフラ事業については、マネージドクラウドサービス「CloudCREW byGMO」がクラウド導入から生産性向上、ビジネスの効率化を目的とした利活用等により需要が拡大するなか、新たにセキュリティ支援サービスを展開することで競合他社との差別化を図り、さらなる事業拡大を図っております。一方で既存サービスにおいては、競合他社との厳しい競争環境により売上の減少傾向が続いており、商材の統廃合および業務合理化等のコスト削減による利益向上施策を推進することで安定的な収益化を目指してまいります。

DX事業については、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、クラウドサービスの利活用が進展するなかで、O2OサービスおよびIoTソリューションサービス等の事業領域もさらなる拡大が見込まれており、引き続き事業開発を進めてまいります。

以上の結果、2024年12月期の通期連結業績につきましては、売上高19,250百万円(前期比10.0%増)、営業利益1,450百万円(前期比12.5%増)、経常利益1,387百万円(前期比5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益840百万円(前期比13.6%増)を見込んでおります。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

① 目指す姿

当社グループは、「コトをITで変えていく。」というミッションのもと、全社一丸となりシナジーを生み出し、日本初・世界初の「はじめて」を追い求めてまいりました。
  当社グループの事業分野であるインターネットサービス市場は、今日においても日々多くのイノベーションが生まれております。今後も、デジタルIDの浸透や働き方の変化、通信環境の変化、法規制のデジタル化など、取り巻く環境は大きく変化してまいります。
  展開する事業においても、創業時からのWebや認証を主軸とした、企業に紐づくビジネスから、デバイスやドキュメントなど、仕事に使われる「モノ」もしくは「モノの置き換え」へとビジネスが拡大しております。さらに、近い将来には、マインナンバーカードの普及、ブロックチェーン、NFTなどの浸透により「ヒト」に紐づくサービスへとさらに進化していくと考えております。
 私たちは、加速する社会の変化を捉え、対応できるサービスの提供や体制基盤の強化を図ることで、持続的な成長を実現いたします。そして、会社、仕事、暮らしのすべてにおいて、大切な情報を確かにつなげる、なくてはならない企業を目指してまいります。

② 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2022年12月期から2026年12月期までの5カ年を長期的な企業価値向上のための土台構築期といたしました。当社グループの事業領域である「電子認証・印鑑事業」「クラウドインフラ事業」「DX事業」をそれぞれ「重点成長分野」「持続成長分野」「次期成長分野」と位置付け、提供サービスと体制基盤の強化を図ってまいります。
 本期間においては、まず当社の重点成長分野である電子認証・印鑑事業において、圧倒的No.1のストックサービスへの基盤固めとグローバル拠点の継続的な成長実現を目指すべく、経営資源を集中し成長循環の活性化に取り組んでまいります。
 持続成長分野であるクラウドインフラ事業においては、重要な安定収益源としてマネージドサービスによる売上拡大と既存顧客との関係強化による利益拡大および業務効率化により、収益体質の強化を通じた着実な利益創出を図ってまいります。
 次期成長分野であるDX事業においては、次世代の取り巻く環境へ対応するための技術研究と開発活動および未知なる領域に向けての様々な取り組みにより、新たな事業領域への展開を目指してまいります。
 また、持続的な成長を生み出すのは組織を支える人財であるという考えに基づき、自律型人財が育つ風土を醸成すべく、働き方改革推進やシステム刷新によるコミュニケーション強化を行い、制度と環境の整備を実行してまいります。
 さらに、今後、長期的な企業価値向上を図るためには、環境や社会問題への対応をはじめとした持続可能な社会の実現に対する取り組みが不可欠です。当社グループは、働く環境の強化やセキュリティリスクへの対応強化に加え、クラウドインフラやSSLなどのセキュリティ、そして、DX化を支援する様々な提供サービスを通じて、さらなる社会課題の解決に貢献してまいります。
 これらの戦略を通じ、結果として、経常利益率およびROEの向上とグローバル比率を増大させることで、売上規模の拡大を図ってまいります。
 

(5) 会社の対処すべき課題

当社グループが属するインターネット業界での国内外の競争が激化する中にあって、安定した収益を確保し続けるために、次のような課題に重点をおいて企業価値の増大を図る所存であります。

① サービスの拡充

当社グループは、私たちの目指す姿(Vision)として“One & 1st” を掲げ、GMOグローバルサイン株式会社の「電子認証・印鑑事業」、当社が行う「クラウドインフラ事業」、そしてGMOデジタルラボ株式会社の「DX事業」の3つの領域のシナジーを活かし、グループ横断的にプロジェクトを推進しております。そのなかで全社が1つ(One)となり、新たな事業のアイデアを創出し、日本初、世界初(1st)を追い求めてまいります。
 また、事業を創るのは人であるという考えのもと、当社グループの価値観(Value)を“ワクワク” という言葉で表現しました。人が主役となり、ワクワクしながら事業をする環境を醸成することで、組織を活性化させ、新しいサービス、新しい価値観を提供してまいります。

② 新規事業、技術開発に対する投資

当社グループが属するインターネット業界は、未だ成長著しく、IoTやAI技術等の分野においても技術革新が急速に進んでおります。当社グループは電子認証・印鑑サービス、クラウドインフラサービスを核に事業を展開しておりますが、これらの既存事業で培ったノウハウを生かし、IoTやAI技術等の新規事業の研究・開発のための投資を積極的に行い、企業価値の拡大に努めてまいります。
 当社グループでは、自社内での新規事業の研究・開発を行っておりますが、それに加え、新規事業開発のスピードおよび効率性を重視するため、付加価値の高い企業との提携やM&Aを通して、企業価値の増大につとめてまいります。

③ 人材の育成及び確保

電子認証・印鑑事業、クラウドインフラ事業及びDX事業は、技術革新とマーケットの拡大が同時進行しており、優秀な人材の確保と人材の継続的な育成が、重要な課題であると考えております。当社グループでは、引き続き優秀な人材の確保に努めるとともに、生産性向上や組織活性化のための環境づくり、人材育成のための教育支援制度の拡充に、なお一層取り組んでまいります。

④ 管理体制の充実

当社グループは、既存事業の急激な成長及び新規事業への積極的な投資を行う一方で、リスク管理体制・法令遵守体制を充実させ、会社の成長と経営管理のバランスの取れた組織運営体制の一層の確立が、重要な課題と考えております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する基本的な考え方

当社は、「コトをITで変えていく。」というミッションのもと、すべての人に革新的なインターネットサービスを提供する事業活動を継続していくことで、当社の企業価値を高めるとともに、環境・社会の課題解決に取り組み、持続的な社会の実現に向けて貢献していくことを基本方針としております。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンスおよびリスク管理

 ① ガバナンス

 当社は、サステナビリティに関する事項を含む重要な経営課題について、当社経営会議及び執行役員会において検討し、必要に応じて取締役会に報告を行うこととしております。なお、当社グループのガバナンスに関する詳細は、「4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

 ② リスク管理

 当社は、サステナビリティに関するリスクを含め、当社グループを取り巻く業務や取引における潜在的なリスクを認識すべく、社内規程に基づきリスク管理を実施し、必要に応じてその運用状況の評価を行っております。また、コンプライアンス、情報セキュリティ管理などにおいても継続的に改善を行い、社内で研修を実施しております。重要なリスクおよび機会に関しては、経営会議及び執行役員会において検討し、必要に応じて取締役会に報告を行うこととしております。なお、当社グループのリスクに関する詳細は、「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(3) 戦略

 ① 情報セキュリティに関する取り組み

 当社は、インターネットサービスを提供する企業として、情報セキュリティ強化を重要なサステナビリティ項目と認識しております。

 そのため、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、情報管理体制を整備しております。また、外部専門業者による脆弱性診断の受診や、情報管理に関する社内規程などの整備、定期的な社内研修の実施などの対策を講じております。

 

 

② 人材育成に関する取り組み

当社は、革新的なインターネットサービスを持続的に提供するために、多様で優秀な人材の登用と育成が重要な課題であると認識しております。

そのため、GMOインターネットグループが大切にしている「GMOイズム※1」と私たちの企業理念である「One GlobalSign Way※2」を軸に、自律分散型組織である「One GlobalSign Way流ホラクラシー型組織※3」を通じて、パートナー(従業員)自身がキャリアオーナーとして一人ひとりの専門性を最大限に活かし、成長する機会を増やす組織構造の構築と支援体制の強化に取り組んでおります。

この取り組みにより、すべてのパートナーが事業の成長と社会への貢献に直接つながるタレント(実力)を発揮できる組織体制を実現いたします。また、GMOインターネットグループ創業の精神である「スピリットベンチャー宣言」に掲げられている、「人種・国籍・性別・学歴・言葉・宗教、すべての差別を排除する。実力本位。」の原則に則り、多様性の尊重と機会均等の実現に努めております。

 

※1:「GMOイズム」とは、GMOインターネットグループにおける「不変の目標」(「スピリットベンチャー宣
    言」、「55ヵ年計画」)、「幹部の心得」及び「勝利の法則」からなる社是・社訓。

※2:「One GlobalSign Way」とは、当社が世の中になくてはならない会社となるために掲げた創業の精神であ
    り、当社のミッションである「コトをITで変えていく。」、目指すビジョンである「One&1st」、そして
    バリューを表現した「ワクワク」「GMOイズム」の総称。

※3:「One GlobalSign Way流ホラクラシー型組織」とは、従来のヒエラルキー型・ピラミッド型組織とは異な
    り、目的を階層化して役割に権限を分散し、迅速に意思決定を行える自律分散のホラクラシー型を当社組
    織に適応させたもの。 

 

③ 社内環境整備に関する取り組み

当社は、多様で高い専門性を有した人材を迎え入れ、活躍できる職場環境を整備することが、技術革新と市場拡大が同時進行しているインターネット業界において、持続的な成長のために不可欠であると認識しています。

そのため、多様で柔軟な働き方を支援すべく、配偶者の出産前後に取得できる特別有給休暇制度、時間単位の年次有給休暇制度、積立休暇制度、フレックスタイム制度、リモートワーク制度等の整備を進めてまいりました。また、家族の介護に直面した際等、一時的に遠隔地で業務を継続することができるようにリモートワーク制度の見直しを進める等、より柔軟な働き方の実現に努めております。

 

(4) 指標及び目標

 当社は、「(3) 戦略」において記載した人材育成および社内環境整備に関する取り組みを実現するため、以下に挙げる指標の定期的なモニタリングを通じて課題を把握し、適切な対策を講じてまいります。当社は、多様で優秀な人材こそが企業価値の向上につながると考え、継続的な人材登用と育成に注力しております。今後も各指標の改善を継続し、人的資本を充実させ、持続的な企業価値向上と社会貢献を目指してまいります。

 

指標

2023年12月期実績(%)

女性管理職比率

5.3

男性育児休業取得率

50.0

男女賃金差異

60.1

 

 (注) 1. 提出会社(単体)の指標を掲載しております。

    2. 男性育児休業取得率及び男女賃金差異は、全労働者の数値であります。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。

以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業等のリスクに該当しない事項についても、投資判断上、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスク及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 親会社との関係について

① GMOインターネットグループ株式会社グループにおける位置付け

当社グループは、親会社であるGMOインターネットグループ株式会社を中核とした企業グループ(以下GMOインターネットグループ)に属しており、同社は、2023年12月末日時点で、当社発行済株式の51.8%を所有しております。GMOインターネットグループは、同社を中核として、「すべての人にインターネット」というコーポレートキャッチの下、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産事業、インキュベーション事業を行っております。当社グループは、GMOインターネットグループのうち、インターネットインフラ事業に区分される電子認証・印鑑サービス及びクラウドインフラサービスを担う会社として位置付けられており、2001年5月にGMOインターネットグループに属して以来、当社グループの位置付けは基本的に変わっておりません。なお、当社グループはクラウドインフラサービスの技術的中核を担っており、当社グループのクラウドインフラサービスは、独自のブランドで販売する他、GMOインターネットグループで行う他の主なホスティングサービスについても、当社グループからのOEM提供を行っております。しかしながら、同社の当社グループに対する基本方針等に変更が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② GMOインターネットグループ株式会社との取引について

当社グループのGMOインターネットグループ株式会社に対する連結ベースでの販売実績は、2022年12月期437,668千円(総販売実績に対する割合は2.74%)、2023年12月期224,552千円(総販売実績に対する割合は1.28%)となっております。同社の事業戦略、経営方針、経営成績及び財政状態により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社はデータセンターを自社保有せず、複数のインターネットデータセンター(IDC)事業者からハウジングサービスとインターネット接続サービスの提供を受け、クラウドインフラサービスに供するサーバーを運用しております。データセンター利用料の合計額は、2023年12月期において633,095千円に上っておりますが、その0.8%に当る5,337千円を同社に支払っております。

ハウジングサービスとは、インターネット回線設備の整った施設(いわゆるラックスペース)の提供を指します。インターネット接続サービスとは、IDC保有のネットワーク接続装置(バックボーンルーターから上位の接続装置)と当社の運用するL2スイッチ(※)とを結ぶことを指し、これにより当社保有のサーバーはインターネット上で利用できるようになります。

この二つのサービスはクラウドインフラ事業を運営するために必須のサービスであり、同社の事業戦略、経営方針の変更などの理由により同社の運営するデータセンターを利用できなくなった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(※) L2(レイヤ2)スイッチとは、データリンク層(第2層=レイヤ2)のデータを解読し、パケットの行き先を判断して、下位のサーバーや上位のバックボーンルーターに転送を行うネットワークの中継機器

 

なお、当社グループの2023年12月期における同社グループとの資金移動を伴う取引内容については、[第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 関連当事者情報]に記載のとおりであります。

 

 

③ GMOインターネットグループ株式会社との役員の兼務関係について

当社の役員8名のうち、GMOインターネットグループ株式会社の役員を兼ねているものは2名であり、当社における役職、氏名及び同社における役職は次のとおりであります。

氏名

当社における役職

GMOインターネットグループ㈱における役職

熊谷 正寿

取締役会長(非常勤)

代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEO

安田 昌史

取締役(非常勤)

取締役グループ副社長執行役員・CFO グループ代表補佐 グループ管理部門統括

 

 

取締役(非常勤)2名については、当社事業に関する助言を得ることを目的として招聘したものであります。

 

(2) 当社グループの事業内容に関するリスク

① 競合について
ⅰ) 電子認証・印鑑事業

当社グループが事業を展開する電子認証市場は成長市場でありますが、先行する上位会社にシェアが集中しております。当社グループは、電子認証事業に2003年5月に参入後、低価格・発行スピード等の差別化を図ることによりサーバ証明書に関してシェアの拡大を図っております。また、2006年10月に認証局を買収し、自社ブランドの販売を開始しております。しかしながら、今後の競争の激化により、当社グループ市場シェアが低下した場合や、価格競争により販売価格が下落した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、2015年より電子印鑑事業に参入し、認証局を持つ強みを生かすことで、高いセキュリティや低価格等の差別化を図ることによりシェアの拡大を図っております。しかしながら、今後の競争の激化により、当社グループ市場シェアが低下した場合や、価格競争により販売価格が下落した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅱ) クラウドインフラ事業

当社グループが行うクラウドインフラサービスについては、大きな参入障壁がないため、多数の同業他社が存在しており、激しい競合の状況にあります。当社グループは、高品質なサービスをリーズナブルな価格で安定的に提供することで、多くの契約を獲得しております。しかしながら、今後の技術開発競争及び価格競争等により競争が更に激化した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 海外での事業活動について

当社グループは、日本のほか、北米、欧州、ロシア、アジアを含む世界各国において、各国の法律、規制等に従って、各種事業を展開しておりますが、輸出入に関する規制、関税等の租税に関する制度の制定又は改定、製造物責任に関する規制、その他予期しない法律の制定又は改定等が行われたり、集団訴訟の提起、多額の損害賠償命令、関連法令等に基づく勧告や手続の執行を受ける可能性があります。

また、戦争、テロリズム、紛争又はその他の要因による政治的混乱等の発生や、文化や慣習の違いから生ずる労務問題や疾病といった地政学的なリスクが、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 為替の変動について

当社グループは、営業取引の一部及び海外連結子会社への投融資等について、外貨建取引を行っており、為替の変動リスクをヘッジすることを目的として外貨運用を行っております。しかし、世界経済情勢の変動等により、為替が変動した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 法的規制について

当社グループは、会社法等の一般法令のほか、その事業に関し、主として以下の法的規制を受けております。今後インターネットの利用者や関連するサービス及び事業者を規制対象とする法令等が制定もしくは改定された場合、既存の法令等の適用が明確になった場合、または、何らかの自主的な業界ルールの制定が行われた場合には、当社グループの事業が制限される可能性があります。

 

ⅰ) 電気通信事業法について

同法は、電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もって電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする法律です。

当社は、同法に基づく届け出を行った電気通信事業者であり、検閲の禁止、通信の秘密の保護等について規制を受けております。また、一定の事由に該当する場合、同法に基づいて、総務大臣から業務改善等の命令を受け、場合により罰則の適用を受ける可能性があります。かかる場合は、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅱ) 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律について

同法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定める法律です。

当社は、特定電気通信役務提供者として同法の適用を受けており、送信防止措置や発信者情報の開示請求等に対しては、適切な判断となるよう慎重に対応をしております。しかし、訴訟等において当該対応が適切でなかったと認定された場合は、利用者もしくはその他の関係者、行政機関等から、行政指導、クレーム、損害賠償請求、勧告等を受ける可能性があり、かかる場合は当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅲ) 特定商取引に関する法律について

同法は、特定商取引(訪問販売、通信販売等)を公正にし、購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。

当社グループは、同法により、特定商取引において事業者名の表示、不当な勧誘行為の禁止や虚偽、誇大な広告の規制等の行政規制を受けています。

 

ⅳ) 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律について

同法は、一時に多数の者に対してなされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。

当社グループは、同法により、広告宣伝に関する電子メール(特定電子メール)内に送信者の連絡先等を記載する等の規制を受けています。

 

ⅴ) 個人情報の保護に関する法律について

同法は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする法律です。

当社グループは、同法により、個人情報の利用目的の明示、取得の適正性の確保、安全管理措置の確保等の規制を受けています。また、当社グループは、同法のほか、電気通信事業者として、総務省が定める電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを遵守することが求められています。

なお、当社グループは、個人情報の取扱いに関して制定されている欧州の「EU一般データ保護規則(GDPR)」等の世界各国の関係法令及び「個人情報の保護に関する法律に係るEU及び英国域内から十分性認定により移転を受けた個人データの取扱いに関する補完的ルール」に従い、個人情報を取り扱うことを求められる場合があります。GDPRの違反時に高額な制裁金が課される可能性があり、かかる場合は、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅵ) 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律について

同法は、インターネットにおいて青少年有害情報が多く流通している状況にかんがみ、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に必要な措置を講ずるとともに、青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上及び利用の普及その他の青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための措置等を講ずることにより、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにして、青少年の権利の擁護に資することを目的とする法律です。

同法により、当社はクラウドインフラサービスにおいて、青少年有害情報の閲覧制限措置を講じる等の努力義務を負うことになります。なお、同法に基づく情報の閲覧制限においては、その適切性についての判断が困難な場合があり、この判断が適切でない場合は、利用者もしくはその他の関係者、行政機関等から、行政指導、クレーム、損害賠償請求、勧告等を受ける可能性があり、かかる場合は、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅶ) 不当景品類及び不当表示防止法について

同法は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とするものです。

当社グループは、法令に適合したキャンペーン実施時の景品類の提供、ウェブサイト等におけるサービスの内容や価格等の適正な表示に努めております。

しかしながら、利用者や行政・司法機関等により景品類や表示が不適切であると判断される場合には、行政指導、課徴金の納付命令、クレーム、損害賠償請求等を受ける可能性があり、かかる場合は、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ⅷ) 製造物責任法について

同法は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものです。

当社グループが加工・販売する製造物について欠陥が理由で事故が生じた場合、同法により損害賠償責任を負う可能性があり、かかる場合は、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 訴訟の可能性について

当社グループの事業を展開する上で、当社グループの責任の有無にかかわらず、第三者の権利・利益を侵害した場合、損害賠償を求める訴訟等を提起される可能性があります。このような場合に備えて、当社グループの大半のサービスについては、その利用約款に免責条項を設ける等の対策を講じておりますが、当社グループに対して損害の賠償を求める訴訟等が提起された場合や補償問題等が発生した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性や当社グループの社会的信用を毀損する可能性があります。

 

⑥ 知的財産権について

当社グループは、自社考案の技術やビジネスモデルに関して、特許法等による保護を受ける必要があるものについては、随時出願を行っています。現在までのところ、GMOグローバルサイン株式会社において2件の特許登録(日本2件)の実績があります。

また、当社グループのサービス名称等のうち、商標法による保護を受ける必要があるものについても、随時商標登録出願を行っております。当社グループでは他社の知的財産権を侵害しているような事実はないものと認識しておりますが、当社グループの事業分野における他社の知的財産権の現況を完全に把握することは困難であり、当社グループが把握できていないところで他社保有の知的財産権との抵触が生じている可能性は否めません。また、当社グループの事業分野において新たに知的財産権を取得した第三者から損害賠償又は使用差止等の請求を受けた場合は、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑦ 情報管理と情報漏洩について

当社グループは、お客さまの個人情報を取得して利用するため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を負います。当社グループは、個人情報を取り扱う役職員を限定し、個人情報へのアクセスに当たってはパスワード管理を行い、アクセスした場合のログ管理を徹底する等、ソフト・ハードの両面から社内での厳格な情報管理を継続的に行う等個人情報の保護体制を構築しております。また、高度のセキュリティ技術の活用、業務マニュアル・ガイドラインを整備し、全社員を対象として社内教育を徹底する等個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。また、当社東京本社は、2006年11月に「ISO/IEC 27001」、2018年10月にはクラウドサービス専用の「ISO/IEC 27017」認証を取得しております。加えて、GMOグローバルサイン株式会社は、2019年10月に「ISO 27001(情報セキュリティマネジメント)」及び「ISO 22301(事業継続マネジメント)」、2022年11月には同社が提供する企業向けシングルサインオンサービスを対象に「ISO/IEC 27017」の認証を取得しております。今後も体制の維持・向上に尽力する所存ですが、情報システムの停止、顧客情報・個人情報等の流出が万一発生した場合には、当社グループの信頼喪失及び当社グループの企業イメージの悪化や、当社グループに対する損害の賠償を求める訴訟等の提起及び補償問題等の発生につながり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ システムトラブルについて
ⅰ) 電子認証・印鑑事業

-システムトラブル

当社グループが提供する電子認証・印鑑サービスは、GMOグローバルサイン株式会社のシステムに依存しておりますが、システムに予期し得ない何らかの欠陥を有している可能性があります。当社グループは、継続的にシステムの検査・修正を行っておりますが、それが完全である保証はなく、サービスの誤作動・不具合等が生じた場合には、損害賠償の発生や当社グループの信頼喪失につながる可能性があります。また、当社グループが提供する電子認証・印鑑サービスは、24時間365日年中無休で安定したサービスを提供する必要がありますが、通信ネットワークに依存しており、災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合、急激なアクセスの集中により当社グループ又はインターネット・サービス・プロバイダーのサーバーが一時的に作動不能に陥った場合、コンピューターウィルスによる被害にあった場合等には、当社グループが提供するサービスに支障が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、サービスの保証等については、認証局運用管理規程(Certification Practice Statement)・利用約款(Subscriber Agreement)により、運用責任範囲の規定、免責事項の規定等一定の制限を設けておりますが、そのような制限が裁判上または裁判外においてそのまま適用を認められ、または実際に利用できる保証はなく、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

-認証局の運用について

認証局システム運用の一部については、複数の業者に委託しており、これらの受託業者との間の契約に基づき役務提供を受けております。当社グループは、受託業者と密接な連携と定期的な打合せを行いながら委託業務の管理監督を行っておりますが、受託業者の事業方針の変更等何らかの理由により、受託業者との間の契約が期間満了前に解除その他の理由で終了した場合、同契約の維持に問題が生じた場合、役務提供のサービスレベル又は受託業者の技術水準に問題が生じた場合、受託業者の経営状況に問題が発生した場合、悪意の第三者からの妨害行為により認証局システムに問題が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

-認証局の秘密鍵の危殆化について

当社グループは、認証局のルートCA証明書の秘密鍵の管理を、ハードウェアセキュリティモジュール(※)を用いるなど、管理に不備が起きない厳格な基準の下に運用しております。しかしながら、当該ルートCA証明書の秘密鍵が何らかの理由により危殆化した場合は、グローバルサインブランドの証明書への信頼が損なわれ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(※) ハードウェアセキュリティモジュールとは、電子署名や暗号化に使う秘密鍵をハードウェア内部で安全に生成・保管し、電子署名を行うことを可能にする耐タンパ性(物理的な攻撃があった場合、秘密鍵を自動消去するなど秘密鍵を取出し難くする性能)の装置です。

 

 

 

ⅱ) クラウドインフラ事業

当社グループが提供するインフラサービスは、24時間365日年中無休で安定したサービスを提供する必要があり、特に当社グループは一部サービスについてサービス品質保証(SLA:Service Level Agreement)を導入しております。そのため、当社グループは日本国内の信頼の置けるデータセンターにサーバーを設置し、24時間のサーバー監視体制を整えております。しかしながら、当社グループのサービスは、通信ネットワークに依存しているため、災害や事故等による通信ネットワークの切断、急激なアクセス集中によるサーバーの一時的な作動不能、コンピューターウィルスによる被害、サーバー・ソフトウェアの不具合等、または人為的な過失による滅失・毀損による接続障害等が生じた場合には、当社のサーバーに接続することが出来ない事態が生じることがあります。これらのサーバー接続障害が当社の責めに帰すべき事由により発生した場合には、返金等の直接的な損害が生じる可能性がある他、当社グループが提供するサービスへの信頼喪失を招き、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 技術革新について

当社グループの属するインターネット業界は、ハードウェア、ソフトウェア両面において技術の進歩の速度と程度の変化は著しく、新技術、新サービスが常に生み出されております。当社グループは新技術の独自開発を行うとともにアライアンスパートナーと緊密な連携を保ち、サービスの開発、改良等を継続的に行っております。しかし、当社グループが想定しない新技術、新サービスの普及等により、当社グループが提供するサービスが陳腐化した場合には、競合他社に対する競争力が低下する可能性があります。また、新技術、新サービスに対応するために、費用の支出が必要になる場合があります。仮に、このような事態が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ リース契約について

DX事業の一部においては、リース会社へ販売を行っております。販売先のリース会社とエンドユーザーとの間でリース契約を締結するうえで、リース料率の引き上げやリース会社の与信審査の厳格化、リース取引に関する法令等の改廃や会計基準の変更等によりリース契約の成約率が低下した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 当社グループの事業体制に関するリスク

① 人材の確保、育成及び特定経営者への依存について

当社グループの事業拡大においては、日々進化する急速な技術革新への対応や、新規事業の開発への対応が不可欠であり、これらに対応する優秀な人材を適時に確保し、育成していくことが重要であると考えております。しかし、インターネット業界においては、当社グループの事業に必要な専門知識、技術、ビジネスキャリア等を有する人材に対する需要は高く、当社グループにおいて必要な人員拡充が計画どおり進まない、または想定以上のコストが生じる等の可能性があります。このような状況が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、代表取締役を含む役員、幹部社員等の専門的な知識、技術、経験を有している役職員が、各グループの経営、業務執行について重要な役割を果たしており、当該役職員の継続勤務による経験値は、当社グループにおける重要なノウハウと考えられます。しかし、これら役職員が何らかの理由によって退任、退職し、後任者の採用が困難となった場合、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

 

② 事業の拡大に伴う経営管理体制の確立について

当社グループは、2023年12月末日時点で、役員8名(監査等委員である取締役を除く取締役5名、監査等委員である取締役3名)、連結ベースでの従業員999名(臨時従業員を除く)と成長途上であり、内部管理体制もこのような規模に応じたものとなっております。当社グループでは、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も内部管理体制の一層の充実を図る予定ですが、従業員数の増加に対して、組織体制の構築が順調に進まなかった場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) その他

① ストックオプション等の発行および行使による株式の希薄化について

当社は、役員及び従業員の士気を高めると同時に人材を獲得するために、今後ストックオプションとして新株予約権の付与を行う可能性があります。これらの新株予約権が権利行使された場合には、新株式が発行され当社1株当たりの株式価値は希薄化します。

 

② 企業買収・戦略的提携について

当社グループでは、今後も新サービス及び新規事業に取り組んでいく考えであり、事業拡大を加速する有効な手段のひとつとして、企業買収(M&A)や資本提携を含む戦略的提携を積極的に活用していく方針です。

企業買収(M&A)や資本提携を含む戦略的提携にあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等について詳細な事前審査を行い、十分にリスクを吟味しますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合、また企業買収(M&A)や戦略的提携後の組織・制度・営業・運用面での統合作業の遅れ、主要な人員の流出、想定されていた相乗効果を期待できないこと等の理由により、事業計画が当初計画通りに進捗しない場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 今後の事業展開について

当社グループは、電子認証・印鑑事業及びクラウドインフラ事業を中心に、IoTサービス及び電子契約サービスなど新たな事業展開を積極的に行ってまいります。事業展開にあたり、設備投資・技術開発投資に加えて子会社及び関連会社の設立、新たな投融資、事業提携等が予定されます。この事業展開には人的資源・物的資源の投入、その他の支出増加が見込まれます。事業展開が予定通りに進まなかった場合には、時間とコストだけが費やされ収益確保にいたらない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当社グループは、インターネットサービス市場において、電子認証や電子印鑑を中心とした、認証技術を活用したトラストサービスをグローバルに提供する「電子認証・印鑑事業」、27年を超える運用実績とノウハウを生かしたホスティングサービスおよびマネージドクラウドサービスを提供する「クラウドインフラ事業」、DX化により業務効率化・高付加価値化を図り、様々な課題解決を支援する「DX事業」を展開しております。また、これらの事業を通じて、利便性と安心・信頼を兼ね備えたインターネットサービスを提供し、多くの企業のインターネットビジネスを支えるべく事業を展開しております。

当社グループの成長・収益基盤の柱である、自社運営の認証局で認証する「GlobalSign」ブランドの電子証明書発行サービスがアジア地域を中心に堅調に伸長いたしました。また、注力商材として位置づけている電子契約サービス※1「電子印鑑GMOサイン」の導入企業数及び契約送信数は順調に拡大しており、引き続き中長期的な成長を図るべく戦略的投資を実施してまいりました。さらにDXの進展や多様な働き方の広まりに伴いクラウド利用が拡大したことにより、シングルサインオンサービス「GMOトラスト・ログイン」やマネージドクラウドサービスの販売も好調に伸長いたしました。

当連結会計年度は、さらなる市場拡大を見込む電子契約をはじめとした電子署名サービスへの戦略的投資及びクラウドサービスやO2Oサービス、IDaaS※2等の成長市場へ経営資源を集中し一層の事業拡大を推進してまいりました。

このような状況下、当連結会計年度の業績は、売上高17,499,962千円(前年同期比9.6%増)、営業利益1,289,099千円(同13.0%増)、経常利益1,316,237千円(同8.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は739,693千円(同12.6%減)となりました。

 

※1: 電子契約サービスとは、これまでの「紙+印鑑」の契約に代わり、「電子データ+電子署名」による契約形態のこと。印紙税課税対象外などのメリットがある。

※2: IDaaSとは、Identity as a Serviceの略称で、IDの管理をクラウド上で行うサービス。

 

セグメント別の概況は以下のとおりであります。

 

(電子認証・印鑑事業)

 電子認証・印鑑事業においては、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」を注力商材として位置づけ、人材投資およびマーケティング活動の強化による認知度向上を図ることで、中長期的な事業拡大を目指しております。  

 当連結会計年度においては、戦略的投資を継続している「電子印鑑GMOサイン」の販売が堅調に推移しており、契約社数および契約送信件数は引き続き順調に増加しております。地方自治体における業務のデジタル化を通じた行政サービスの利便性向上と職員の働き方改革を目的とした「さよなら印鑑~1億総デジタル化プロジェクト~」においては、代理店戦略の強化を推進しているほか、官公庁・自治体における処分通知等を電子化する『GMOサイン電子交付』の提供を強化するなど全国各地の自治体DXに努めております。最近では、北海道や、愛知県知多市、福岡県北九州市、岩手県北上市への導入が決定いたしました。『GMOサイン電子交付』においても、大阪府東大阪市をはじめ、関東2県で導入されるなど、72の公共団体への導入が決定しております。

 売上においては、SSLサーバ証明書をはじめとした電子証明書発行サービスが、中国をはじめアジア地域を中心にグローバルで伸長いたしました。また、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」では、有料化強化に向けた営業体制・カスタマーサクセスの強化に取り組み、有料顧客数および有料送信数の拡大に努めました。さらに、国内IDaaSソリューションのシングルサインオンサービス「GMOトラスト・ログイン」では、営業体制の強化により順調に事業拡大いたしました。一方で費用においては、「電子印鑑GMOサイン」への戦略的投資による広告宣伝費の増加、海外拠点における物価上昇および為替変動に伴う費用増加ならびに認証局の開発投資に伴う減価償却費の増加がありました。

 

以上の結果、当連結会計年度における電子認証・印鑑事業の売上高は10,849,041千円(前年同期比14.6%増)、セグメント利益は1,374,483千円(同0.7%増)となりました。

 

(クラウドインフラ事業)

クラウドインフラ事業においては、クラウドの導入支援及び設計・構築、監視・運用などを代行するマネージドクラウドサービス「CloudCREW byGMO」が、クラウドの安全性を高めるセキュリティ対策を特徴としたサービスと27年以上にわたるインフラ運用実績及びAWS認定資格等の高い技術力による強みを活かし順調に事業を拡大しております。当連結会計年度においては、企業のDX推進等による需要拡大やパブリッククラウド市場の成長により、良好な受注環境を維持しています。売上においては「CloudCREW byGMO」が、成長を続ける国内クラウド市場の需要を確実に捉えるべく組織体制の強化およびカスタマーサクセス強化等のサービス向上に努めたことで好調に進捗いたしました。一方で費用においては、ホスティングサービスのエネルギー等のコスト上昇によりデータセンター費用が増加するなか、価格転嫁にタイムラグが生じたことに加え、BCP対策を目的としたデータセンター移転(2024年度上期頃に完了予定)により費用が増加し営業利益に影響を与えました。

 

以上の結果、当連結会計年度におけるクラウドインフラ事業の売上高は、6,066,953千円(前年同期比1.8%増)、セグメント利益は986,256千円(同22.2%減)となりました。

 

 

(DX事業)

DX事業においては、電子認証・印鑑事業とクラウドインフラ事業で培ったノウハウを生かし、DX化による業務効率化・高付加価値化を図ることで、企業の様々な課題解決を支援しております。当連結会計年度においては、「GMOおみせアプリ」が大手顧客への導入が引き続き順調に伸長いたしました。

GMOデジタルラボ社が提供する企業・店舗専用の集客支援アプリ「GMOおみせアプリ」においては、企業のDX需要を促進すべく、協業によるプロダクト連携を展開することで業容拡大に努めております。GMOフィナンシャルゲート社との協業で展開している、決済端末搭載の会員証アプリ「おみせポケット」は、キャッシュレス化の進展により引き続き導入店舗数を順調に伸ばしており、導入店舗数は、前年同期に比べ79%増加の15,693店舗となりました。また、自治体や事業者が発行する紙の商品券をデジタル化するサービス「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」においても、引き続き全国の自治体および大手顧客への導入が好調に進捗いたしました。今後においては、グループシナジーのみならず、他業種とのシステム連携を推し進めることで新たなサービスを創出し業容の拡大に努めてまいります。

 

以上の結果、当連結会計年度におけるDX事業の売上高は1,148,809千円(前年同期比2.2%増)セグメント損失は51,446千円(前年同期は290,919千円のセグメント損失)となりました。

 

 

(2) 財政状態

 (資産の部)

当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,119,201千円増加し、15,693,505千円となりました。主な増加要因は、売掛金及び契約資産の増加205,412千円、前払費用の増加77,069千円、リース資産(純額)の増加142,122千円、ソフトウエアの増加864,778千円、長期前払費用の増加56,651千円によるものであります。主な減少要因は、投資有価証券の減少58,945千円、繰延税金資産の減少115,162千円によるものであります。

(負債の部)

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ409,828千円増加し、7,028,032千円となりました。主な増加要因は、1年内返済予定の長期借入金の増加240,000千円、契約負債の増加231,758千円、長期借入金の増加675,000千円、長期リース債務の増加100,990千円、繰延税金負債の増加145,587千円によるものであります。主な減少要因は、短期借入金の減少1,000,000千円、未払金の減少157,245千円によるものであります

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ709,372千円増加し、8,665,473千円となりました。主な増加要因は、利益剰余金の増加289,746千円及び為替換算調整勘定の増加440,038千円によるものであります。減少要因は、その他有価証券評価差額金の減少25,898千円によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、期首残高に比べ14,027千円減少し、当連結会計年度末には6,645,490千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は2,203,836千円となりました。これは主に売上債権の増加41,676千円、仕入債務の減少61,648千円、未払金の減少91,831千円、法人税等の支払額が329,271千円といった支出要因を、税金等調整前当期純利益1,340,815千円、減価償却費1,231,625千円、未払消費税等の増加77,274千円といった収入要因が上回ったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は1,799,859千円となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入24,578千円、投資事業組合からの分配による収入119,117千円といった収入要因を、有形固定資産の取得による支出370,105千円、無形固定資産の取得による支出1,566,548千円といった支出要因が上回ったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は645,925千円となりました。これは主に短期借入金の返済による支出1,000,000千円、長期借入金の返済による支出285,000千円、配当金の支払による支出449,671千円が、長期借入による収入1,200,000千円を上回ったことによるものであります。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当社グループは、電子認証・印鑑事業、クラウドインフラ事業及びDX事業を行っており、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

(2) 受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

電子認証・印鑑事業

(千円)

10,643,813

115.2

クラウドインフラ事業

(千円)

5,739,425

102.1

DX事業

(千円)

1,116,724

101.3

合計

(千円)

17,499,962

109.6

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

(1) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「売上高」、「売上高経常利益率」、「ROE(自己資本利益率)」を重要な経営指標と位置づけております。

2023年12月期の計画に対する達成状況においては、売上高は17,499,962千円となり、計画値を419,962千円上回りました。売上高経常利益率は7.5%となり計画値の8.8%を1.3ポイント下回りました。また、ROE(自己資本利益率)は8.9%となり、計画値の10.9%より2.0ポイント下回りました。

この要因は以下の通りであります。

売上高

電子認証・印鑑事業において、電子証明書発行サービスがグローバルで堅調な成長をしていること、クラウドインフラ事業において、マネージドクラウドサービス「CloudCREW byGMO」の売上が堅調に拡大したことによるものであります。

売上高経常利益率

クラウドインフラ事業において、BCP対策を目的としたデータセンター移転により費用が増加したこと、電子認証・印鑑事業における電子証明書の高速大量発行システムへの投資継続による減価償却費の増加、「電子印鑑GMOサイン」への積極的な投資による広告宣伝費等の増加によるものであります。

ROE(自己資本利益率)

上記の要因に伴い、計画値を下回った結果によるものであります。

 

経営指標(連結)

2023年12月

(計画)

2023年12月

(実績)

計画比

売上高(千円)

17,080,000千円

17,499,962千円

419,962千円(2.5%)

売上高経常利益率(%)

8.8%

7.5%

△1.3ポイント

ROE(自己資本利益率)(%)

10.9%

8.9%

△2.0ポイント

 

 

(2) 財政状態

財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2) 財政状態」に記載しております。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性

      当社グループの運転資金及び設備投資資金は、営業キャッシュフローより調達しております。

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

なお、当社グループは、運転資金及び設備投資資金の調達に際しては自己資金を基本としておりますが、安定的な資金確保のために、金融機関と当座貸越契約を締結し、財源及び流動性を確保しております。

 

 

(4) 重要な会計上の見積もり及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、財政状態及び経営成績に影響を与える会計上の見積りを行う必要があります。当社はこの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(5) 経営成績

(売上高)

当連結会計年度における売上高は、電子認証・印鑑事業において電子証明書発行サービス並びに、クラウドインフラ事業の「CloudCREW byGMO」の売上が順調に推移した結果、17,499,962千円(前年同期比9.6%増)となりました。

(売上原価)

当連結会計年度における売上原価は、6,562,675千円(前年同期比4.6%増)となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、減価償却費の増加、広告宣伝費等の増加により、9,648,188千円(前年同期比12.9%増)となりました。

(営業外収益)

当連結会計年度における営業外収益は、主として受取利息の計上17,519千円受取配当金の計上38,023千円及び投資事業組合運用益の計上96,343千円により、175,407千円(前年同期比82.6%増)となりました。

(営業外費用)

当連結会計年度における営業外費用は、主として支払利息の計上14,285千円投資事業組合運用損の計上10,020千円及び為替差損の計上121,974千円により、148,269千円(前年同期比582.5%増)となりました。

(特別利益)

当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益の計上24,578千円により、24,578千円(前年同期は217,181千円)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

以上の結果、税金等調整前当期純利益は1,340,815千円となり、法人税、住民税及び事業税352,687千円法人税等調整額230,744千円非支配株主に帰属する当期純利益17,690千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は739,693千円(前年同期比12.6%減)となりました。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) ライセンス契約

契約書名

ONAPP PRODUCT AGREEMENT

会社名

当社

相手方の名称

ONAPP LIMITED(英国)

契約締結日

2014年3月26日

契約内容

クラウドサービスを提供するために利用するソフトウェアのライセンス契約

契約期間

2014年3月30日より3年間。但し、いずれの当事者からも更新拒絶の意思表示がない場合には、1年間の自動更新

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費の総額は、91,934千円であります。これは、電子認証・印鑑事業及びDX事業に係るものであり、その主な内容は、IoT分野における研究開発活動であります。