第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)主要な経営課題

 当社グループのサービス提供先となる医療・健康産業において、eマーケティングの分野は他業界に比してその浸透は遅れており、インターネット技術の進化とともに、今後の成長が期待されている領域であります。このような市場環境に身をおく当社グループが安定成長を持続するためには、運営サイト「MedPeer」会員の満足度を高め、医師の臨床上の課題を解決するために必須のインターネットサービスとしての地位を確固たるものとし、顧客からの信頼を向上させ、リピート顧客の増加を図ることにより収益基盤を強化する必要があると認識しております。

 これらを具現化するため、当社グループは以下の7点を主な経営の課題と認識しております。

 

① 運営サイト「MedPeer」の継続的成長

② 知名度の向上

③ サービスの安全性強化

④ 収益基盤の強化

⑤ 競合他社への対応

⑥ 優秀な人材の採用

⑦ 経営管理体制の強化

 

① 運営サイト「MedPeer」の継続的成長

 当社グループの事業は、運営サイトである「MedPeer」会員の満足度によって支えられていると考えております。会員の満足度を維持・向上させるためにも、「MedPeer」会員に対し、日常臨床を行っていくうえでの疑問に答えを提示できるようなサービスを提供し続けることが課題と認識しております。また、「MedPeer」が提供するサービスは医療にかかるものであることから社会的信頼を確保するためにも、個人情報の保護に関する法律、薬機法、製薬協コード・オブ・プラクティス(※)等の順守も重要課題であると認識しております。この課題に対処するためにも、サービスの利便性向上とともに、コンプライアンスの徹底を継続的に図ることにより、会員向けサービスを強化し続け、「MedPeer」会員の満足度の維持・向上、さらには会員基盤の拡大を進め、「MedPeer」プラットフォームとしての価値向上を図ってまいります。

※ 製薬協コード・オブ・プラクティスについて

製薬企業が薬機法・独占禁止法等の関係法規と公正競争規約等の自主規制を順守し、医薬情報を適正な手段で提供・収集・伝達するために定めている製薬業界の自主ルール

 

② 知名度の向上

 当社グループの運営するサービスの飛躍的な成長にとって、当社グループが運営する「MedPeer」をはじめとした各サービスの知名度の向上を図ることが必要であります。また、知名度の向上は、大手企業との提携等も含めた事業展開をより有利に進めることや、サービスを支える優秀な人材を採用・確保することに寄与すると考えております。

 当社グループでは、今後も当社グループ及び各運営サービスの知名度向上を目指し、それぞれに適した広報活動を推進してまいります。

 

③ サービスの安全性強化

 インターネット技術の進化に伴い、インターネット上の情報共有の重要性は認識されてきておりますが、一方で、サービスの安全性維持に対する社会的要請も一層高まりを見せております。当社グループは、医師の情報や、患者、病気の情報など、取扱う情報が通常のインターネットサービスに比して、より社会的に大きな影響を与え得る重要情報であることを深く自覚しております。

 このため、サービスの信頼性・安全性強化を経営上の最重要課題として、今後も個人情報の保護に関する法律、薬機法、製薬協コード・オブ・プラクティス等各種関連法規の順守を徹底してまいります。

 

④ 収益基盤の強化

 当社グループは、製薬企業を顧客としたマーケティング支援サービスを主な収益源としております。一方で、当社グループが安定した成長を続けていくためには、医療のみならず、健康・予防を含めた医療・健康産業全般を対象とした事業展開を模索していく必要があります。

 この課題を解決するために当社グループでは、グループ各社がそれぞれ事業を成長させることはもとより、最新技術の活用やグループシナジーの創出を通じて新サービスを開発し、その成長を図ることなどにより収益基盤の強化を進めてまいります。

 また、当社グループではM&Aを新規事業への進出や事業拡大のための重要な手段の一つとして位置付けており、既存事業とのシナジーが見込まれる場合には積極的に実施する方針です。

 

⑤ 競合他社への対応

 医療・健康産業においては、同業他社も取り組みを強化しているとともに、新しい技術が生まれることによる新規参入企業が出現すること等により、競争が一層激しくなっていくことが予想されます。一方で、健康に対する認知理解が深まれば、当社グループにとってもメリットは大きいものと思われます。当社グループでは、ユーザーにとって使い勝手の良いサービス構築を進めるとともに、進化する各種技術を活用することで、更なる成長に取り組んでまいります。

 

⑥ 優秀な人材の採用

 当社グループは、「MedPeer」をはじめとしたオンラインプラットフォームによるサービスを事業基盤としており、それらの利便性及び機能の維持向上のためにも、サービス構築を担当する技術者の安定的な採用が当社グループの事業成長にとっての課題であると認識しております。専門性が高い人材は適時に採用することが困難な場合があり、近年採用コストは増加傾向にあります。

 これらの課題に対処するため、従業員が高いモチベーションを持って働ける環境や人事制度の整備を行い、必要な人材を適時に採用できるような組織体制の整備を進めてまいります。

 

⑦ 経営管理体制の強化

 当社グループが継続的に医師や顧客に対して安定的なサービスを提供し、企業価値を継続的に向上させるためには、経営管理体制の更なる強化が必要と認識しております。当社グループは、組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように内部統制の整備、強化、見直しを行うとともに、法令順守の徹底に努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

当社グループは「Supporting Doctors, Helping Patients.」をミッションに掲げ、当社サービスを通じて蓄積される「集合知」により、医療分野の変革を行うことを目的に事業を展開してまいりました。

当社グループは、医療従事者の支援のみならず、国民の健康を支えるヘルスケアバリューチェーンを確立すべく事業拡大を推進しておりますが、これこそが、ヘルスケアに関する社会課題の解決に繋がるとともに、当社グループに課せられた大きな使命であると捉えており、国民のヘルスケアに真に貢献する企業として、社員一同全力で事業推進に邁進することで、持続可能な社会づくりに寄与することができると考えております。

 

(2)サステナビリティに関する取組

① ガバナンス

当社グループは、社会の持続可能性が当社グループの存続のために重要であることを認識しており、サステナビリティの観点を踏まえた経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。本委員会では、気候変動対応などサステナビリティに関するテーマを重要課題として議論し、決定した内容は必要に応じて取締役会に付議・報告され、グループ全体の経営に反映されます。

 

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② 戦略

a.マテリアリティの特定

 当社グループは、ステークホルダーの期待や要請に応えていくため、優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しております。これらの重要課題に取り組むことで、社会に対する継続的な貢献と自社の企業価値向上の両立を目指していきます。マテリアリティやそれに関連した取り組みについては、外部環境の変化やステークホルダーとの対話等を踏まえ、定期的に見直しを行っております。

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b.環境

 当社グループは、2022年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。ガバナンスを強化するとともに、グループ事業における気候変動が及ぼすリスクと機会を分析することで、情報開示の質と量の充実化を図ります。

 

(気候変動シナリオ分析)

 当社グループでは、気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。

・シナリオ分析方法

 2030年において気候変動が及ぼす事業環境への影響を把握するため、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオで分析しました。シナリオは気候変動による物理的なリスクの分析にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、脱炭素への移行に伴うリスクの分析にIEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオを参考にしました。

・シナリオ分析結果

「1.5℃シナリオ」

 1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や再エネと省エネに関する政策の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量取引制度)の導入や再エネ導入により操業コストが増加することが挙げられました。しかし、当社の業態を踏まえると、それらリスクの影響は限定的であると認識しています。一方で、機会としては、環境への取り組みを推進していくことで、環境面での対外的な評価が向上し、投資先として選定されやすくなることが想定されます。そのため、今後は再エネ導入やGHG削減目標の設定やCDPの回答など積極的な環境への取り組みを検討していきます。

「4℃シナリオ」

 4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されます。リスクとしては、当社事業所の被災による事業活動の停止が想定されます。当社としては、リモートワーク制度の導入をはじめとして事業継続性の向上に努めており、異常気象による事業へのリスク低減を進めております。一方で、機会としては、気温上昇や災害増加に伴う外出機会の減少から医療DX化のニーズが増加することや、気温上昇による疾患増加に伴い、当社の事業活動を通じて、医療従事者のみならず生活者にも当該情報の提供が可能となります。今後、気候変動に対する医療の動向を踏まえながら、サービスの展開を検討していきます。

 

気候関連問題による影響(リスク・機会)

想定される事象

重要度評価

当社の取組

1.5℃

シナリオ

4℃

シナリオ

脱炭素経済への移行に伴う影響

リスク

炭素税・排出権取引の導入

・炭素税が導入され、電力使用など事業活動から発生するCO2に応じコストが発生する。

・排出権取引制度が整備され、排出量削減が不十分な場合、クレジット(排出枠)購入など対応コストが発生する。

・リモートワークの導入によるサプライチェーン排出量の削減

 

・社内外手続きのペーパーレス化推進による廃棄物削減

 

・再生可能エネルギーを電源とするクラウドサービスの活用

 

・夜間の空調制限の実施

再エネ・省エネ政策

・再生可能エネルギーの導入を進めるにあたり、電力コストが増加する。

・オフィスビルのZEB化をはじめとした省エネ導入に伴い、賃料が増加する。(ZEB:Net Zero Energy Building)

機会

顧客・投資家から評判

・環境への取組が同業他社と比較して先進的である場合、ブランドイメージが向上し、収益機会が増加する。

・気候変動など環境への対応が優良であると判断された場合、投資先に選定されやすくなる。

・TCFD提言に基づいた情報開示

気候変動による物理的な影響

リスク

平均気温上昇

異常気象の

激甚化

・気温上昇により、事業所における空調コストが増加する。

・台風や洪水などの異常気象の激甚化で事業所などが被災した場合、事業活動の停止や対応コストの増加が起きる。

・リモートワークをはじめとした事業継続性の向上

機会

平均気温上昇

異常気象の

激甚化

・気温上昇や異常気象の激甚化に伴う外出機会の減少により、医療DX化のニーズが増加する。

・医療機関のDX支援サービスの展開

・オンラインを活用した医療相談サービスの展開

平均気温上昇

感染症の増加

・当社情報プラットフォームで、熱中症増加や新たな感染症の発生などの気候変動に関連した疾病に関する情報を提供することができる。

・疾患に関する情報共有が可能となるサービスの展開

 

 c.人材育成方針・社内環境整備

 当社グループは、”医療ど真ん中”IT企業として、私たちに関わるあらゆる人々が、心身ともに健康で心豊かな生活を送ることを目指します。従業員の健康と「その人らしく働く」ことができる環境の提供を第一に考え、ひとりひとりが最大限のパフォーマンスを発揮することで「Supporting Doctors, Helping Patients.」を実現します。

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 中期の事業戦略達成に必要な人材が自律的に成長する"仕掛けのある組織"づくりの一環として、事業部目標を踏まえてグループに参画する人材が個性を活かし相互に事業成長を促進する”人的環境の構築”としてのタレントマネジメント(発掘/育成)を行っており、以下を基本方針として掲げております。

 

・組織規模にあわせた経営人材やマネジメント人材の創出

・多様な背景を持つ人材のマネジメントまたは育成手法の確立

・構造化およびルール化による“仕掛け”の標準化

 

(多様な働き方の推進)

・リモートワーク制度

 当社では、COVID-19以前から週1日リモートワークによる生産性向上のトライアルを開始してまいりました。

現在はリモートワークを活用したハイブリッドワークを基本方針とし、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方の実現を推進しています。

 

・ロケーションセレクト制度

 働く場所を”非日常の空間”に設定し“刺激”を得ることで、クリエイティブかつ生産性の高い働き方を実現すること、及び育児・介護、育児等を目的にオフィスや自宅以外の3rdプレイスでの勤務が可能となる、ロケーションセレクト制度を導入しております。

 

・スタイルセレクト制度

 ライフステージの変化に伴い、通勤圏内から離れて生活することとなった場合においても、メドピアグループの一員として活躍できる環境を整備するため、オフィス出社を前提としない職務を担う、スタイルセレクト制度を導入しております。

 

・サブトラック制度

 メドピアでの活動=メイントラック/メドピア外での活動=サブトラックをそれぞれ拡張することで、キャリア形成の促進やライフイベントへの時間投資を実現することを目的に、 自己研鑽・ライフイベント対応支援のための「時間」を付与する制度を導入しております。

 

(従業員エンゲージメント)

・従業員持株会制度

 直接雇用の全従業員を対象とし、自社の株式を取得できる持株会を組織しております。従業員による株式取得の促進、持株会制度の効果的な運用を行うため、各従業員の拠出金に対して10%の奨励金を当社が支給しています。

 

・リモートワーク手当

 全従業員を対象とし、リモートワークでの勤務を前提に所定労働時間に応じたリモートワーク手当を導入しています。

 

・テックサポート制度

 エンジニアの開発力の底上げを行い、メドピアの事業開発を加速させることを目的に、開発効率・スキル向上に関わるサポートを行っています。

 

・評価制度

 半年に1度、上司とフィードバック面談を行い、目標の設定と評価結果についてフィードバックを実施する機会を設けています。ジョブグレードごとに要件を定め、社員一人ひとりの成長ステップを明確に示し、Mission・Visionに基づく「会社が目指す姿」に近づくための評価「Credo」に即した行動とスキルに関する個人の成長を評価し、成果と成長をそれぞれ報酬へ反映しています。

 

(健康と安全)

・医療相談サービス「first call」の導入

 全従業員とその家族を対象に、健康管理のツールとして、医師によるオンライン健康相談サービス「first call」を導入しています。

 

・ストレスチェック

 心のセルフケアと働きやすい職場環境の形成を目的とし、年に1回ストレスチェックを実施しています。

 

(ヘルステック企業としての取り組み)

・Healthtech/SUM

 日本のヘルステック領域におけるエコシステムの循環を目的に、国内最大級のヘルステック・カンファレンスを、日本経済新聞社と共同開催しています。

 

・一般社団法人遠隔健康医療相談適正推進機構(TELEQ)

 当社をはじめ遠隔医療相談事業を展開する複数の事業者とともに、一般社団法人遠隔健康医療相談適正推進機構(TELEQ)を設立しました。遠隔健康医療相談の環境整備や発展などを目的とし、社会全体が安全に利用できる遠隔医療相談の環境整備を行ってまいります。

 

・データ・セキュリティへの対応

 「情報セキュリティポリシー」及び「個人情報保護のための行動指針(プライバシーポリシー)」を遵守し、高度な情報セキュリティ管理体制を維持していくことに努めております。

 

・社内研修制度

 全社または各階層を対象とした教育研修の確実な実施を目標に掲げており、従業員一人ひとりがいきいきと仕事に取り組むことが出来るよう様々な各教育研修を実施していきます。

 

 

 

全社向け研修・教育の実施内容

実施内容

概要

情報セキュリティ関連研修(IT主催)

PC利用上の留意点(ソフトウェアのインストール、外部持ち出し、トラブル対応)

情報セキュリティ関連研修(人事主催)

情報セキュリティ基礎(パスワードの設定、無線LAN接続、暗号化)、Googleドライブの運用ルール(利用範囲、制限、グループ会社間での共有方法)

コンプライアンス研修

ハラスメントの種類と解説、予防、対処方法

レピュテーションリスク研修

定義、発生要因と影響、防止策

メンタルヘルス_セルフケア研修

メンタル不調を未然に防ぐための対策

テックサポート制度

エンジニアの開発力を底上げて事業開発を加速させることを目的とした制度

BEP制度

業務上のパフォーマンス向上を目的とした、業務に関連する知識・ノウハウの自主学習を支援する制度

経理・会計研修

決算に関する基礎

グループ会社とビジネスモデル研修

事業ドメイン、競合比較、ビジネスモデル

ITツール基礎研修

slack、Google Work Spaceの使い方

プレゼンテーション基礎研修

プレゼンテーション資料の作成方法

組織マネジメント入門研修

チームを作り、それを運営して成果を出す方法

ハラスメント研修

ハラスメントの定義と事例、予防・対処

 

階層別研修の実施/教育制度の設計

実施内容

概要

オリエンテーションプログラム

早期のオンボーディングを実現するためのプログラム

Peer Talk CREDO

Credo体現をイメージするためのワークショップ

1on1キャラバン

スムーズに会社を理解するために、既存社員と交流の機会を持つプログラム

入社1か月後面談

入社後の不安や不明点解消、改善点や入社後ギャップのヒアリング

新任管理職向けガイダンス

労務、採用など管理職が知っておくべき知識

労務ガイドライン研修

労務管理と法律に絞った、管理職が知っておくべき知識

メンタルヘルス_ラインケア研修

メンバーのメンタル不調の予兆発見、適切な対処に関する模擬実践を通した理解

コンピテンシー研修

コンピテンシー策定の狙いを理解・共感する

 

職種・事業部別研修の実施

・事業部や職種に応じて、各担当が立案・実施

 

③ リスク管理

 当社では、当社代表取締役社長を委員長とするリスク・マネジメント委員会にて、リスク管理を行っています。

リスク・マネジメント委員会は各部署との定期的な会合を通じて、リスクに関する情報収集を行い、全社のリスクを集約します。集約されたリスクは、当社のリスク評価方法にて、発生頻度と影響額から評価され、重要度の大きなリスクに対しては、リスク・マネジメント委員会が中心となって対策を立案し、取締役会に報告された後に、対応を実行します。気候変動関連リスクについては、リスク・マネジメント委員会とサステナビリティ委員会が連携し、全社のリスク管理プロセスに統合して管理しています。

④ 指標及び目標:測定可能な指標、目標及び進捗状況

 a.環境における指標及び目標

 当社は、気候変動によるリスクを評価・管理する指標として、温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を算定しております。今後、持続可能な社会の実現のため、パリ協定の目標を参考に、中長期的な目標を検討していきます。

表:温室効果ガス排出量(t-CO2)

項目

カテゴリ名

排出量

(t-CO2)

割合

(%)

Scope1

自社での燃料の使用等における直接的な排出

0

0

Scope2

購入した電気等のエネルギーに伴う間接的な排出

137.1

2.5

Scope3

Scope1,2以外の間接的な排出

5,334.3

97.5

Scope1+2+3

 

5,471.5

100.0

算定期間:2021年10月~2022年9月

算定範囲:メドピア株式会社、連結子会社7社

 

b.人材の育成に関する方針及び社内環境整備の方針に関する指標及び目標

 従業員一人ひとりの成長に必要なマインドとスキルを身に付ける教育研修体制を整備するとともに、ダイバーシティに関する現状の課題と対応を検討し、多様な考え方やバックグラウンドを持つ人材を活かす環境づくりに取り組んでおります。また、女性管理職比率及び男性の育児休業取得率については、厚生労働省による直近の雇用均等基本調査結果における全国平均を大幅に上回っており、引き続き当該指標を超える社内環境づくりを推進してまいります。

 取組における指標及び実績は、「第1 企業の概況5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異」」を参照ください。

 

 また、当社連結子会社でありますMIフォース株式会社では、2022年4月1日~2027年3月31日までの5年間を計画期間としまして、職業生活に関する機会の提供に関する目標として、MR・MSL職の新規採用において女性の採用比率20%以上を目指しており、当事業年度末時点で26.7%となり4年前倒しで達成するに至りました。引き続き安定的に20%以上の水準を維持出来るよう努めてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

① 事業内容について

イ.インターネットについて

 当社グループは、ヘルスケア領域においてインターネットを利用した事業を展開しており、同領域におけるインターネットの活用シーンの多様化、利用可能な端末の増加等が成長のために不可欠な条件と考えております。しかしながら、同領域におけるインターネット普及の障壁、利用に関する新たな規制やインターネットビジネス関連事業者を対象とする法的規制等の導入、その他予期せぬ要因によって、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、各法令順守体制の整備・強化とともに、社員教育の徹底により、新たな法的規制の導入等が生じた場合に速やかに対応できるよう努めております。

 

ロ.特定事業への依存について

 当社グループの主たる収益は、製薬企業のマーケティング予算を中心とした集合知プラットフォーム事業による収入であります。2023年9月期における売上高(14,540,835千円)に占める同事業の売上高の比率は81.2%(11,802,115千円)であり、その依存度は高い状況にあります。従って、製薬企業における広告費の支出動向や他の媒体との競合の激化及び「MedPeer」サイトの健全性が損なわれること等により、「MedPeer」のブランド力が低下し、当社グループのマーケティング支援の売上高が減少した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、同事業には、一部顧客と会員の間でのメッセージのやりとりを伴うものが含まれます。メッセージの内容に関する責任は基本的に発信者自身が負いますが、当社グループのサービスを使った顧客、会員等による発信情報が当事者若しくは第三者に損害を与えた場合、それに関連して当社グループの責任が問われる可能性があります。

 また、当社グループ会社のMIフォース株式会社において、各製薬企業の生産性向上のアプローチとして製薬企業に代わり営業やマーケティング業務を受託・代行するアウトソーシング事業(CSO事業)に対する需要が拡大傾向にありますが、今後の業界動向によっては当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、医師・薬剤師向けコミュニティサービス及びCSO事業を中心とした「集合知プラットフォーム事業」、医療機関・医療現場の業務効率化をサポートする「医療機関支援プラットフォーム事業」、主に企業の人事部門や健康保険組合をクライアントに持つ「予防医療プラットフォーム事業」の3つを事業の柱とすべく、それぞれの事業に対して投資を推進しております。

 

ハ.当社グループの事業領域特有の各種規制について

 「MedPeer」サイトに掲載している医療用医薬品に関する記載については、薬機法による規制を受けております。薬機法による規制については、厚生労働省が管轄官庁でありますが、当社グループは、医療用医薬品に関する「MedPeer」サイト上の記載が薬機法に準拠していることの確認を行っております。

 また法的規制以外では、日本製薬工業協会が定める「製薬協コード・オブ・プラクティス」が存在します。製薬協コード・オブ・プラクティスとは、製薬企業が薬機法・独占禁止法等の関係法規と公正競争規約等の自主規制を順守し、医薬情報を適正な手段で提供・収集・伝達するために定めている製薬業界の自主ルールであり、当社グループでは当該コードの順守に努めております。

 しかしながら、業界では各種規制の見直しが進んでおり、関連法令や業界団体による規制等の改廃、新設が行われた際に、当社グループが何らかの対応を余儀なくされた場合や、これらに対応できない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループでは、主にMIフォース株式会社において人材派遣事業を行っており、有料職業紹介事業許可及び労働者派遣事業許可を受けております。有料職業紹介事業許可につきましては、有料職業紹介事業者が許可の欠格事由に該当する等、職業安定法に定められた事由のいずれかに該当する場合には、事業停止又は許可が取り消しとなります。また、労働者派遣事業許可につきましても、派遣元事業主が許可の欠格事由に該当する等、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に定められた事由のいずれかに該当する場合には、事業停止又は許可が取り消しとなります。当社グループでは、こうした事業の停止又は許可の取り消し事由はこれまで発生しておらず、今後におきましても、法令違反等により事業の停止又は許可の取り消しとなることのないよう努めてまいりますが、万一、事業の停止又は許可が取り消しとなった場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、各種法的規制に関して、法令順守体制の整備・強化、社員教育を行っており、新たな各種規制の導入等が生じた場合に速やかに対応できるよう努めております。

 

ニ.サイトの健全性の維持について

 当社グループが運営するサービス内では、不特定多数の会員同士が独自にコミュニケーションを図っております。こうしたコミュニケーションにおいては、他人の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利等の侵害が生じる危険性が存在しており、サイト内において発生したトラブルが起因となり、当社グループが法的責任を問われる可能性があります。また、当社グループの法的責任が問われない場合においても、トラブルの発生自体がサイトのブランドイメージ悪化を招き、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、サービスにおける禁止事項を利用規約に明記するとともに、利用規約に基づいた利用がなされていることを確認するために、社内で独自のガイドラインを整備した上で監視を行っております。また、利用規約等に違反した会員に対しては担当者から改善要請等を行うことにより、一定の健全性は維持されているものと認識しております。

 

ホ.当社グループが運営するサービスの利用者の投稿コンテンツの利用について

 当社グループが運営しているサービスの中には、会員が投稿したコンテンツを、投稿者への利用確認、個人情報の排除等の処理を行った上で、顧客へ提供、顧客の販促物に掲載、雑誌や新聞に掲載する場合があります。しかしながら、当該コンテンツの利用における権利処理に関連した風評問題が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、掲載するコンテンツについて弁護士その他の専門家の意見をふまえて、必要な場合には投稿者への個別の意思確認を行う等、法的には十分と考えられる権利処理手続きを行っており、また、法改正等に備えて十分な法的対応を取る体制を整えております。

 

へ.サイト内に掲載される広告について

 当社グループが運営するサイト及び当社グループが配信するメールマガジン等に掲載される広告において、法令や公序良俗に反するインターネット広告が掲載される等の瑕疵があった場合、状況によっては広告掲載申込者や会員等からのクレームや損害賠償請求がなされる可能性は完全には否定できず、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、サイトのシステム障害等を理由として広告掲載が行われなかった場合には、広告掲載申込者からのクレームや損害賠償請求がなされ、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループは、当社グループ独自の広告掲載基準と当該基準を順守するための業務フローを定め、関連部門に対して周知徹底する等法令や公序良俗に反するインターネット広告の排除に努めております。

 

ト.競合について

 資本力、マーケティング力、幅広い顧客基盤、高い知名度を有する先行同業他社による模倣や、資本力、マーケティング力、専門性を有する企業等の参入によって、当社グループの競争優位性が低下または競争が激化することにより、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 しかしながら、当社グループ運営サイト「MedPeer」は、会員である医師が臨床に有用な情報を効果的に得られるよう、医師目線を念頭に構成しており、医師間の情報共有に特化したサイトとして、様々な医師向けウェブサイトの中で特徴を有しているものと認識しております。

 また、「MedPeer」会員数は約17万人となっており(本書提出日現在)、薬剤評価掲示板への投稿累計数も67万件(本書提出日現在)を超えていることから、「MedPeer」会員のサイトへの参画度合は相当に高いと認識しております。このような会員層と会員数を獲得することは容易ではないものと考えられることから、新規の参入障壁は比較的高いものと認識しています。

 

チ.当社グループサービスの陳腐化又は代替サービスの参入について

 当社グループの主な事業である製薬企業の医療用医薬品販売を対象とするマーケティング支援は、「MedPeer」会員である医師が医療用医薬品の処方権を持ち、患者に対し処方行動を行うことを前提としております。そのため、医薬品の処方を医師ではなく薬剤師や患者が直接行うようになる、また、従来の医療システムが抜本的に変わった場合、当社グループの提供するサービスが陳腐化する可能性があります。

 その他、薬機法に定められた医薬品の広告に関する規制が撤廃・改変され、製薬企業による特定の医薬品の広告に関して、医療従事者であることの確認が不要とされた場合、一般向けの広告代理店等による代替サービスの参入の可能性があり、その場合当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 今後、市場規模の拡大にともない、当社グループサービスの代替となる他のマーケティングツール等が普及する可能性及び当社グループの顧客が業務を自ら手がけて顧客内でマーケティング活動が完結する可能性等があり、その場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、業界環境や法規制の変化、市場動向を常に把握し、医師会員や顧客のニーズに合わせた新規事業の開発やサービス改善に努めております。

 

② 事業運営について

イ.個人情報、顧客情報の保護について

 当社グループは、「MedPeer」サイト上で登録された医師会員の個人情報や特定保健指導や医療相談等により要配慮個人情報等を取得しているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。

 個人情報の流出等の重大なトラブルが当社グループ、当社グループの業務提携先又は当社グループの顧客で発生した場合には、個人情報保護法への抵触、損害賠償の請求や信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、顧客より事業に関する機密情報を受け取る場合がありますが、当社グループの主な顧客は互いに競合する製薬企業であり、顧客情報の取り扱いに細心の注意を払う必要があります。しかしながら、機密情報の流出等の重大なトラブルが当社で発生した場合、損害賠償の請求や信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループは、個人情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、保護管理体制の確立に努めております。個人情報取扱規程を制定し、個人情報の取り扱いに関する業務フローを定めて厳格に管理するとともに、全従業員を対象として社内教育を徹底する等、個人情報の保護に関する法律及び関連法令並びに当社グループに適用される関連ガイドラインの順守に努めるとともに、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。顧客情報の取り扱いについても、顧客情報に関する業務フローを定め、厳格に管理するとともに社内教育の徹底を図っております。

 

ロ.知的財産権について

 当社グループによる第三者の特許権、商標権等の知的財産権侵害の事実はないものと認識しております。しかしながら、当社グループの事業分野で当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性又は新たに当社グループの事業分野で第三者により知的財産権が成立する可能性は否定できません。かかる場合においては、当社グループが第三者の知的財産権を侵害することによる損害賠償請求や差止請求等、又は当社グループに対するロイヤリティの支払い要求等を受けることにより、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループの持つ知的財産権に対する第三者による侵害があったときにこれを把握できない、又は侵害に対して適切な対応ができない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、弁護士、弁理士その他の専門家の意見をふまえて、調査可能な範囲で対応を行い、第三者の知的財産権侵害の回避を図るとともに、当社グループの知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っております。

 

 

ハ.技術革新について

 当社グループが事業を展開するインターネット業界においては、事業に関連する技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が速く、それに基づく新機能の導入が相次いで行われております。この変化に対する適切な対応に支障が生じた場合、当社グループの業界における競争力が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 これらの変化に対応するため、当社グループでは、技術者の確保に注力するとともに、スキル向上のための投資を積極的に行い開発環境の整備を進めております。

 

ニ.システム面について

 当社グループの運営するサイトへのアクセスの急増等の一時的な過負荷や電力供給の停止、当社グループが利用するソフトウエアの不具合、コンピューターウイルスや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な様々な要因によってコンピューターシステムがダウンした場合、当社グループの事業活動に支障を生ずる可能性があります。現在、多くのサーバーに関してクラウドサービスへの移行をしておりますが、クラウドサービス自体に障害が発生した場合は、当社グループサービスの提供に支障をきたす可能性があります。また、サーバーの作動不能や欠陥に起因して、当社グループの信頼が失墜し取引停止等に至る場合や、当社グループに対する損害賠償請求が発生する場合も想定され、このような場合には当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループは、利用するソフトウエア等の更新管理やアンチウイルスソフトの導入、パスワード管理、アクセスコントロールの徹底、ネットワーク内の多層防御の構築等の対策を講じるとともに、BCP対策を進めております。

 

ホ.ポイントシステムについて

 当社グループは、一部サービスにおいて、寄付金やギフト券等に交換可能なポイントを会員に対して付与しております。このポイントが不正な操作等により、当社グループが正式に発行した以上に集められ、交換を求められた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、ポイントシステムに関連するシステムに対する脆弱性診断等を定期的に実施しております。また、付与・利用状況のモニタリングを行う等、必要な内部統制を構築し、運用しております。

 

③ その他

イ.新規事業展開に伴うリスクについて

 当社グループでは、「MedPeer」サイトによるサービスを中心として、新規事業を展開する可能性があります。また、M&Aを新規事業への進出や事業拡大のための重要な手段の一つとして位置付けており、今後も既存事業とのシナジーが見込まれる場合には積極的に実施する方針です。これらの新規事業の展開にあたってはその性質上、計画どおりに事業が展開できず投資を回収できなくなる可能性や、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 上記リスクに対しては、グループの企業価値向上に資するM&Aを実施すべく、事前に対象となる企業の経営状況を確認するほか、財務・法務面でのリスクの有無等、当該企業の風土や実態、価値を十分見極めた上で実施を決定しております。また、M&Aの実行後は、グループ会社間の連携を図り、シナジーを高めることにより、更なる業容拡大に努めます。

 

ロ.配当政策について

 当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、引き続き成長投資を行うことを優先しつつ、各期の経営成績及び財政状態等を総合的に勘案しながら株主還元の充実を目指していく方針であります。しかしながら、当社グループの業績が計画どおりに進展しない場合には、配当を実施できない可能性があります。

 

ハ.新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 本書提出日における新株予約権の個数は7,844個であり、発行済株式総数21,953,590株の7.1%に相当しております。当社の株価が行使価額を上回り、かつ権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化することになります。

 

 

 

ニ.新型コロナウイルス感染症について

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済環境の悪化等が事業に与える影響について、今後も注視する必要があるものの、現時点では当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与えるものとは認識しておりません。しかしながら、コロナ禍の長期化や感染拡大が継続した場合、従業員の感染による営業活動の制限や、クライアントの事業活動の縮小等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記リスクに対して、当社グループでは、取引先、従業員及びその家族の安全及び健康の確保を最優先事項に掲げ、リモートワークへの対応やWeb会議の促進等の取り組みを実施しております。

 

ホ.事業の拡大に伴う経営管理体制の確立について

 当社グループは、2023年9月末日時点で、連結ベースでの従業員611名(臨時従業員を除く)と成長途上であり、内部管理体制もこのような規模に応じたものとなっております。当社グループでは、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も内部管理体制の一層の充実を図る予定ですが、従業員数の増加に対して、組織体制の構築が順調に進まなかった場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1)経営成績の状況

当社グループが属する医療・健康産業においては、団塊の世代が全員75歳以上に達し医療・介護費の急増が懸念される、いわゆる2025年問題、さらに、団塊ジュニア世代が全員65歳以上に達することで高齢者数がピークを迎え、医療・介護費の負担の増加が拡大する2040年問題を抱えております。かかる展望を踏まえ、日本政府は健康寿命の延伸や社会保障制度の持続可能性の確保という問題に対して国を挙げて取り組むべく、健康・医療・介護分野それぞれのデータの有機的な連結や、ICT等の技術革新の利活用を推進し、効果的・効率的な医療・介護サービスの提供を目指す方針を示しております。また、感染症危機においても迅速に対応できる体制構築のため、データ収集の迅速化、収集範囲の拡充、医療のデジタル化による業務効率化やデータ共有を通じた医療の「見える化」等を推進していくことを表明しております。

製薬企業においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、変化・多様化した医療従事者の働き方や情報入手のニーズに対応し、営業活動の生産性を向上させるため、ウェブサイトやアプリ、ソーシャルネットワーク等、デジタルツールを活用した取り組みをより一層強化しており、今後は、リアルでのコミュニケーションとデジタルツールの活用を組み合わせて最適な情報提供を行うことが求められております。

このような環境の中、当社グループは、ミッションである「Supporting Doctors, Helping Patients.(医師を支援すること。そして患者を救うこと。)」を実現すべく、医師・薬剤師向けコミュニティサービスを中心とした「集合知プラットフォーム事業」、医療機関・医療現場の業務効率化をサポートする「医療機関支援プラットフォーム事業」、主に企業の人事部門や健康保険組合をクライアントに持つ「予防医療プラットフォーム事業」を展開してまいりました。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高14,540,835千円(前期は8,452,113千円)、EBITDAは1,931,446千円(同1,249,501千円)、営業利益1,119,997千円(同1,063,716千円)、経常利益1,164,252千円(同1,113,716千円)、親会社株主に帰属する当期純利益617,678千円(同812,388千円)となりました。

※ EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」の「1. 報告セグメントの概要 (1) セグメント区分の変更」に記載のとおりです。前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較をしております。

 

① 集合知プラットフォーム事業

集合知プラットフォーム事業では、国内医師の約半数が利用する「MedPeer」上のコンテンツを充実させることにより、医師会員の活性度を向上する施策を展開してまいりました。また、コントラクトMR・MSL事業を中心とした製薬企業向けのサービスを展開する株式会社EPフォース(現 MIフォース株式会社)を連結子会社としたことに加え、小規模Web講演会の集客支援が可能となる「セルフ集客講演会サービス」をリリースする等、医師一人ひとりのニーズに応じた情報提供や、変化する製薬企業のニーズに対応するマーケティングサービスの提供が可能な体制を構築しました。

これらの結果、売上は11,802,115円(同5,956,395千円)、EBITDAは3,077,425千円(同2,289,982千円)、セグメント利益は2,403,148千円(同2,206,774千円)となりました。

 

② 医療機関支援プラットフォーム事業

医療機関支援プラットフォーム事業では、かかりつけ薬局化支援サービス「kakari」及び医療機関起点の薬局予約サービス「やくばと」の拡販に注力してまいりました。また、「やくばと」では、急性期病院向けに24時間365日初診予約申込の受付が可能となるWeb予約申込システム「やくばと病院予約」のサービスを提供開始する等、医療従事者と患者双方の課題解決に貢献するサービスの拡充を進めてまいりました。なお、前期にて株式会社クラウドクリニックを完全子会社化したことに加え、当期にて「kakari」の開発、「やくばと」事業の立ち上げ等により時代の先を見据えた先行開発投資を実施した影響でセグメント損失となっております。

これらの結果、売上高は501,886千円(同472,179千円)、EBITDAは△45,639千円(同78,844千円)、セグメント損失は91,820千円(前年同期はセグメント利益64,419千円)となりました。

 

③ 予防医療プラットフォーム事業

 予防医療プラットフォーム事業では、子会社の株式会社Mediplatが運営するクラウド型健康管理サービス「first call」、子会社の株式会社フィッツプラスが展開する特定保健指導事業それぞれの収益基盤の強化に注力してまいりました。また、フィッツプラスでは、健康保険組合担当者・事業所担当者・産業保健スタッフが実施する特定保健指導関係の業務を効率的に行うことができるwebサービス「Tonoel(トノエル)」がサービス開始6か月で契約健康保険組合の過半数に導入される等、企業が進める「健康経営」に寄与するサービスの提供を推進しております。

 これらの結果、売上高は2,244,252千円(同2,041,934千円)、EBITDAは190,453千円(同147,514千円)、セグメント利益は171,666千円(同126,387千円)となりました。

 

(2)財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて5,811,155千円増加し、15,162,163千円となりました。これは売掛金2,109,659千円の増加及びMIフォース株式会社の連結子会社化に伴うのれん2,276,149千円、顧客関連資産2,459,000千円の増加を主要因とするものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて5,087,063千円増加し、6,574,867千円となりました。これは1年内返済長期借入金510,436千円及び長期借入金が3,119,724千円増加、また繰延税金負債が726,658千円増加したことを主要因とするものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて724,092千円増加し、8,587,296千円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加617,678千円、第三者割当による新株式の発行による増加306,900千円、及び市場買付による自己株式の取得による減少299,980千円を主要因とするものであります。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて745,590千円減少し、5,393,167千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度と比較して253,158千円の収入減となる600,073千円となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益1,046,606千円の計上、減価償却費501,962千円の計上、のれん償却費309,486千円の計上、売上債権及び契約資産の増加856,428千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動により使用した資金は、前連結会計年度と比較して4,589,094千円の支出増となる5,011,980千円となりました。この主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出4,648,102千円、投資有価証券の取得による支出121,024千円、敷金の差入による支出105,088千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動により獲得した資金は、前連結会計年度と比較して3,659,236千円の収入増となる3,666,316千円となりました。この主な要因は、長期借入れによる収入4,200,000千円、長期借入金の返済による支出569,840千円によるものであります。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年9月期

2023年9月期

自己資本比率

81.1%

54.7%

時価ベースの自己資本比率

298.97%

145.76%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

0.2年

6.3年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

852.7倍

44.2倍

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(注2)営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

(注3)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(生産、受注及び販売の実績)

(1)生産実績

 当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。

 

(2)受注実績

 当社グループは、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

集合知プラットフォーム事業

11,797,970

198.2

医療機関支援プラットフォーム事業

499,266

107.0

予防医療プラットフォーム事業

2,243,598

110.4

合計

14,540,835

172.0

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

2.最近2事業年度の主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ファイザー

株式会社

1,797,628

12.3

 

3.当連結会計年度において、販売実績に著しい増加がありました。この増加の内容は、(1)経営成績の状況①集合知プラットフォーム事業に記載のとおりであります。

 

(経営者の視点による経営成績等の分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択、適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を及ぼす見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態の状況」をご参照ください。

 

② 経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は14,540,835千円(前期は8,452,113千円)となりました。詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況」、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (生産、受注及び販売の実績)」に記載のとおりであります。

 

(営業利益)

 営業利益は1,119,997千円(同1,063,716千円)となりました。これは、売上高の増加により売上総利益が1,832,877千円増加したこと、MIフォース株式会社の連結子会社化によるのれん償却費の増加を主な要因として販売費及び一般管理費が前連結会計年度に比べ1,776,596千円増加したことによるものであります。

 

(経常利益)

 営業外収益は、持分法による投資利益57,562千円を計上したこと等により63,592千円となりました。また、営業外費用は、支払利息13,328千円を計上したこと等により19,337千円となりました。

 以上の結果、経常利益は1,164,252千円(同1,113,716千円)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 税金等調整前当期純利益は、特別損失として投資有価証券評価損117,645千円を計上した結果1,046,606千円(同1,113,763千円)となりました。

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は617,678千円(同812,388千円)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの資金状況とキャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 当社グループの主な資金需要は、各セグメントにおいてサービスを提供するための労務費、業務委託費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用となります。これらにつきましては、基本的に営業活動によるキャッシュ・フローや自己資金を充当し、投資が必要な場合には、状況に応じて金融機関からの借入や株式を利用した資金調達で対応していくことを想定しております。

 なお、当社グループの財務基盤は健全であり、現在の現金及び現金同等物の残高、営業活動によるキャッシュ・フローの水準については、事業を継続していくうえで十分な流動性を確保しているものと考えております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、法的規制、事業運営体制等、様々な要因の変化の影響を受ける可能性があります。このため、事業環境を注視するとともに、優秀な人材の採用と組織体制の整備、内部統制システムの強化等により、これらのリスク要因に対応するよう努めて参ります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。