第2 【事業の状況】
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) トップメッセージ
<競争力と持続性を兼ね備えたバリューチェーンへの進化に向けて>
創業から培ったバリューチェーンと、農業が直面する新たな課題
カゴメトマトジュースは、2023年に発売90周年を迎えました。
長きにわたりご愛顧いただいているトマトジュースですが、2023年の出荷量は記録が残る2007年以降で最高になりました。その要因を調べてみると、美容に関心の高いお客様がトマトジュースの新しいユーザーになっていただいていることが分かりました。
発売から90年を経てもトマトジュースが新しいお客様にご支持いただいていることを大変うれしく思います。原材料となるトマトの品種開発を続け、栽培方法を工夫し、製造工程を改善してきた一つひとつの取り組みが報われた気持ちになります。このように、カゴメは畑から食卓までのバリューチェーンを創業から地道に進化させ、農から価値を生み出しお客様にお届けする力を磨き続けてきました。その歩みは、「自然をおいしく楽しく」というブランドステートメントや「畑は第一の工場」というものづくりの考えに集約されています。
一方で、カゴメの強みである農から価値を形成するバリューチェーンが、近年、原材料の調達リスクに直面しています。気候変動の加速が熱波や干ばつの発生頻度を高め、農業生産に大きな影響を及ぼすようになったからです。実際に、カゴメ商品の主な原材料であるトマト・にんじん・リンゴなども、収穫量や品質の面で様々な影響を受けています。 このように農産原料の安定調達が困難になる時代の中で、カゴメが持続的な成長を実現していくためには、気候変動に起因する農業の課題としっかり向き合っていかなければなりません。そして、自らの手でそれらの課題を一つひとつ解決し、カゴメのバリューチェーンを競争力と持続性を兼ね備えたさらに強いものに進化させていく必要があります。
農業研究の強化とIngomarの連結子会社化
2023年から、強いバリューチェーンへの進化に向けた具体的なアクションがスタートしています。
一つは品種開発・栽培技術開発など、バリューチェーンの最も川上に位置する農業研究の強化です。2023年10月に、これまで国内外に分散していた品種・栽培技術の開発部門を一つに集約した組織「グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター」を新設しました。このセンターに、カゴメ総合研究所傘下の農資源研究部や種子の開発・販売会社であるUnited Geneticsグループ(以下、UGグループ)、AIを活用した営農支援を手掛けるDXAS Agricultural Technology Lda.(以下、DXAS)などを集め、ラボレベルの研究開発から実際の畑での試験栽培までが一つの組織で可能となる体制としました。さらに、2024年4月には、農業の最先端技術が集まるカリフォルニア州に、グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターの米国法人を設立します。今後は、この組織に研究資源を集中的に投下し、それぞれの機能の連携を深め、農業技術の開発スピードを上げていきます。
もう一つが、米国Ingomar Packing Company, LLC(以下、Ingomar)の連結子会社化です。これについても、2023年から本格的な検討を進め、2024年1月26日に対外発表を行いました。
Ingomarはカリフォルニア州に拠点を持つトマト一次加工会社で、トマトの加工量では、 米国第2位、世界第4位のポジションにあります。トマト生産農家が出資して設立された企業であることから、畑との結びつきが強いところが特徴です。私たちはこれから、Ingomarの持つトマト原料の調達基盤に、グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターが研究開発した新しい品種や栽培技術をインストールし、実用化のための大規模な検証を行うシステムを作り上げていきます。そして、そこから得られた多くの知見を世界に展開し、農業が直面する課題の解決につなげていく考えです。
グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターの新設やIngomar連結子会社化の検討を行った2023年は、競争力と持続性を兼ね備えた強いバリューチェーンへの進化に向けたターニングポイントの年になったと思います。
<第3次中期経営計画進捗と、総仕上げに向けた取り組み>
難局を乗り越え、変化対応力を磨いた前半2年
2023年は、現在進めている第3次中期経営計画においても、ターニングポイントの年になりました。
第3次中期経営計画は、2022年から2025年までの4年間を対象期間としています。その前半の2年には、約3年間続いたコロナ禍が収束に向かうという明るいニュースがありましたが、その一方で、ウクライナ情勢や自然災害の多発など経営に大きく影響を及ぼす出来事が発生しました。
カゴメもそれらの影響を受け、トマトをはじめとする様々な農産原料において、これまでに経験したことのない価格高騰に直面しました。特に2023年においては、主原料であるトマトペーストの市況が大幅に上昇し、それに伴う収益の悪化を食い止めるべく、グループ一丸となって対応を進めました。BtoBビジネスが中心の国際事業においては、全ての得意先との価格改定商談を計画的に実行しました。国内事業においては家庭用食品・飲料、業務用のほぼ全商品の価格改定を2023年2月に行うとともに、価格改定に伴い一時的に落ち込む需要を回復する活動に注力しました。さらに、メーカーの責務として、原価低減や生産性の向上に取り組みました。
一つひとつの施策について危機感を持って遂行した結果、2023年の業績はグループ全体で増収増益となり、この難局を乗り越えることができました。組織全体が急激な環境変化に対して、連携を取りつつ自律的に行動する“変化対応力”を発揮できたことが、この業績につながったいちばんの理由だと考えています。第3次中期経営計画の前半2年の経験を通して、厳しい環境を乗り越えることができる組織力が着実に高まっていると感じています。
国際事業は成長を加速
国際事業は、2023年において収益を大きく拡大し、事業利益がグループ全体の半分以上を占めるまでになりました。この国際事業の躍進は、トマトペーストの在庫逼迫による市況の上昇を機動的な価格改定によって乗り越えられたことと、外食需要の回復によりグローバルフードサービス企業への取り組みが進んだことによりもたらされました。
但し、今回の収益拡大は、前中期経営計画期間から進めてきた収益構造改革の取り組みがなければ実現しなかったと思っています。米国の子会社KAGOME INC.(以下、KIUS)では顧客や商品の選択と集中を進め、ポルトガルの子会社Holding da Industria Transformadora do Tomate,SGPS S.A.(以下、HIT)においては、トマト1次加工規模の適正化により収益性の改善を図ってきました。それらの活動により、収益構造改革の目途が立ちつつあったところに、外食需要の回復という環境変化があり、その追い風を最大限に活かすことができました。
この状況を踏まえて、2024年から始まった第3次中期経営計画の後半2年においても、国際事業の成長をさらに加速していきたいと考えています。そのための施策の一つとして、2023年10月に国際事業本部を社内カンパニー体制(カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー)に移行しました。移行に併せ、カンパニープレジデントに権限を移譲し、カンパニー内の連携を深めるため海外子会社のCEOをメンバーとする経営会議を設置しました。これにより、市場の変化に迅速に対応すべく意思決定のスピードを上げ、グローバルフードサービス企業への対応力を強化していきます。
また、今回のIngomarの連結子会社化も、国際事業の成長を加速する非常にポジティブな要素になります。Ingomarの連結子会社化により、米国においては「種子開発・販売(UGグループ)」「一次加工(Ingomar)」「二次加工(KIUS)」と同一地域内で完全なバリューチェーンを保有することになります。このことにより、米国トマト加工事業の成長力をもう一段階引き上げることができるのではないかと考えています。
国内事業は利益回復に注力
2023年の国内事業は、農産原料の価格高騰に伴う原価上昇を跳ね返すための価格改定の完遂と、一時的に減少する需要の回復に注力した1年となりました。その結果、売上収益は増収となりましたが、事業利益については原価上昇を全てカバーするまでには至らず減益となりました。 カテゴリー別では、外食需要やインバウンド需要
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を取り込んだ業務用商品は順調に伸長しました。また、価格改定の影響を大きく受けた野菜飲料についても2023年第4四半期(10月~12月)には販売金額が前年を超え、年間を通して実施した需要喚起策の手応えが感じられました。
しかしながら、国内事業の原材料価格は2024年においても、大幅に上昇する見込みです。この状況に対応するため、第3次中期経営計画の後半2年においては、引き続き「利益の回復」に徹底して取り組みます。2024年2月には、2年連続となる全主力商品の価格改定を行いました。それとともに、需要喚起に向けた野菜や植物性の価値をお客様に伝える活動を広範に展開していきます。特に野菜飲料については、カテゴリーリーダーとして市場規模縮小トレンドからの反転を果たすべく、朝の食シーンにフォーカスしたプロモーションを展開します。また、トマトのリコピンだけでなくにんじんの機能性成分βーカロテンに関する情報発信を強化します。
2020年に開始した「野菜をとろうキャンペーン」は、2024年で5年目を迎えます。小売店の店頭や自治体のイベントなどでベジチェック®の体験機会を増やしたことにより、測定回数は累計700万回(24年1月末時点)まで増加しました。測定により自身の野菜摂取量を認識することで、野菜飲料の購入につながる事例も多く出てきています。野菜飲料のトップライン拡大につながる活動として、今後も継続していきます。
また、さらなる原価低減に向けて、サプライチェーンの基盤整備を進めます。国内事業で使用する農産原料は、90%以上を海外から調達しています。そのため、様々な変動要素がある中、タイムリーに調整を重ねて安定的に調達することが重要になります。この課題に対応すべく2023年から数年かけて、社内の調達部門・SCM部門・営業部門に加え、取引先を含め一気通貫でデータを管理できるように、サプライチェーン全体のシステムを刷新していきます。これにより、原料材調達量、商品の生産量・在庫量などを最適化することでロスを大幅に削減し、利益の回復につなげます。
2025年の目標達成に向けて
2024年2月の決算発表に併せて、第3次中期経営計画最終年度である2025年度の定量目標を更新しました。「利益獲得力はついたものの持続的な成長が果たせなかった」前中期経営計画の総括から、成長に力点を置いた第3次中期経営計画の総仕上げとして、連結売上収益3,000億円、連結事業利益240億円を新たな目標としました。カゴメがこのスケールの収益を目指すのは初めてとなりますが、グループの力を結集して達成を目指します。
そのためには、国際事業の成長加速・国内事業の利益回復に向けた活動に加えて、「新しい成長の種を探索し、事業に育てていく」一連のプロセスの強化が必要です。このプロセスを動かす起点として2020年10月に事業開発室を設置し、オープンイノベーションによる新事業の可能性を追求してきました。そしてその活動の中から、プラントベースフードのスタートアップ㈱TWOやインナービューティー領域に事業展開する㈱資生堂などとの協業が生まれました。
今後は、それらの協業の育成活動に注力するとともに、グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターの米国法人なども活用しながら、オープンイノベーションのスコープを広げていきたいと考えています。
また、これらの成長に向けた活動と並行して、「ROIC管理」を社内に浸透させ、事業ポートフォリオや生産拠点、商品構成などを大胆かつ柔軟に見直すことで、資本効率性を高めてまいります。2025年の目標として、「ROE 9%以上」を達成したいと考えています。
<「カゴメの人」の力で、中長期の持続的成長を実現する>
一人ひとりがポテンシャルを発揮できる環境を整える
これまで述べてきた国際事業の成長加速、国内事業の利益回復、新事業の探索・育成の仕事を担い、前に進めていくのは「カゴメの人」に他なりません。一人ひとりに「農や食の課題を解決する」という強い想いや、それを実現していく熱量がなければ、カゴメの持続的成長は成し遂げられません。それゆえに、全ての「カゴメの人」が、その人の持つポテンシャルを存分に発揮できる環境を整えていくことが会社としての責務だと考えています。
最も優先すべきことは「カゴメの人」の健康に対するサポートです。心身の健康は、豊かな人生を送っていくための前提条件であり、組織のアクティビティもそのことにより高まります。さらに、私たちが健康であることは、お客様の健康づくりに資する商品やサービスを展開する当社の事業内容に説得力を持たせることにもつながります。
これらのことから「健康経営の強化」を重点課題とし、ベジチェック®を活用したカゴメならではのプログラムなど、ハイリスクアプローチ・ポピュレーションアプローチの双方向から従業員の健康な毎日をサポートしています。2023年には、きめ細かい活動が評価され、健康経営優良法人2023(大規模法人部門 ホワイト500)にも選定されました。
もう一つは、「心理的安全性」が保たれた組織風土づくりです。「心理的安全性」は、率直な意見や素朴な疑問を誰もが気兼ねなく言える状態が保たれている時に感じるものです。そういった組織やチームにおいては、所属するメンバーのエンゲージメントやパフォーマンスが高いことが、様々な研究で明らかにされています。
私は「カゴメの人」がそれぞれのポテンシャルを存分に発揮できる環境として、「心理的安全性」が保たれた組織風土が必要不可欠なものと考えています。「率直な意見を気兼ねなく言える状態」の実現は容易なことのように思えますが、実際には、全てのメンバーの理解や努力が必要でなかなか簡単ではありません。
2020年の社長就任以降、社内報などで「心理的安全性」についてのメッセージを機会あるごとに発信し、ダイバーシティ活動の中で研修を行い、社内浸透度を毎年モニタリングして次の施策につなげていくというサイクル繰り返してきました。その結果、多くの「カゴメの人」の行動が変わってきているように感じます。また、2021年に導入したエンゲージメントサーベイのスコアも着実に向上してきています。
また近年、「心理的安全性」は、リスクマネジメントの面からもその重要性が注目されています。引き続き、経営の重点課題として「心理的安全性」が保たれた組織風土づくりへの取り組みを進めていきます。
次の10年の成長を見据えた戦略策定の始動
2023年11月より、次の中長期に向けた経営戦略「2035プラン」の策定を開始しました。「2035プラン」は、2035年のありたい社会の実現のために、カゴメが貢献すべきこと、カゴメが目指す企業像を明らかにし、そのための経営戦略と取り組むべき重点テーマを定めるものです。カゴメはこれまで、「2025年のありたい姿」を目指して歩みを進めてきましたが、「2035プラン」は、2026年から先の10年にわたる私たちの道標となる指針です。現在、次代の経営を担う執行役員を中心メンバーとし、多くの従業員の想いも反映しながら策定を進めています。
この「2035プラン」に盛り込まれる重点テーマのひとつは、「中長期人材戦略の策定と実行」になると考えています。2035年に向けた社会の変化は、これまでとは比べものにならないほど大きく、それに対応するためにカゴメの事業ポートフォリオや事業展開エリアは劇的に変わる可能性があります。この激しい変化の中で、カゴメグループの成長を支える人材にはどのような要件が必要になるのか、そしてそれをどのように手当てしていくかを示すことが大変重要だと考えるからです。
<ステークホルダーの皆様へ>
2023年は、カゴメグループが一丸となって活動することにより、過去に類を見ない原材料価格の上昇を乗り越えることができました。この急激な環境変化に対応できたことは、目指してきた「強い企業」としての組織力がついてきたことの証左です。この組織力をさらに強化しながら、一つひとつの課題に誠実に向き合うことで、2025年度を最終年度とする第3次中期経営計画の目標の達成と、その先の10年を見据えた経営戦略の策定を進めていきます。そのために、カゴメの強みである農から価値を形成するバリューチェーンをさらに進化させ、全てのステークホルダーの皆様のご期待に応え企業価値を向上させます。引き続きのご支援をお願いします。
(2) 会社の経営の基本方針
カゴメグループは、「感謝」「自然」「開かれた企業」を企業理念としております。これは、創業100周年にあたる1999年を機に、カゴメグループの更なる発展を目指して、創業者や歴代経営者の信条を受け継ぎ、カゴメの商品と提供価値の源泉、人や社会に対し公正でオープンな企業を目指す決意を込めて、2000年1月に制定したものです。
また、カゴメグループは今後も「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をお客様と約束するブランドステートメントとして商品をお届けしてまいります。
当社の企業理念、ブランドステートメントから長期ビジョンまでの関係は以下のとおりです。
(3) カゴメの価値創造プロセス
当社は、「企業理念」をゆるぎないカゴメの価値観、「ブランドステートメント」を社会やお客様への約束として経営の根底に置くことで、組織が一貫した行動をとっています。環境変化を予測し、成長を支える経営資本を活用することで、農から価値を形成するバリューチェーンを、多様なパートナーと協業しながら進化させています。
現在は、国内加工食品事業、国内農事業、国際事業の3つのセグメントと、それを支える価値創造活動により、農と健康と暮らしをつなぐ商品とサービスを提供しています。事業を通じて「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つの社会課題解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業となることで、社会価値と経済価値を創出します。
(4) 農から価値を形成するグローバルバリューチェーン
1 品種開発・栽培
創業時から「畑は第一の工場」として、新品種や栽培技術開発など農業資源開発に携わってきました。近年、農業を取り巻く環境は、世界的に大きく変化しています。気候変動に伴う異常気象の発生や農家の高齢化に伴う栽培面積の縮小、欧州を中心とした環境に関する規制強化など、多くの課題を抱えています。カゴメは、環境変化に対応した品種開発や、環境負荷の低い栽培方法などを開発することで持続的な農業を実現するとともに、新たな事業の柱を育てます。
① 世界に広がる、品種開発の拠点
当社は約7,500種のトマトの種子をはじめとする豊富な遺伝資源を保管し、データベース化しています。これらを活用し、遺伝子組み換え技術を用いず交配によりトマトの品種開発をしています。品種開発には5年以上の年数がかかるため、数年先の市場ニーズを予測し、それに合致する味や形質、病害虫などへの耐性を見極め、交配によって開発を進めています。 新品種開発、栽培技術の開発を強化するため、2023
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United Genetics Holdings LLC 米国本社
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年10月にグローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターを新設しました。この組織の傘下にはこれまで日本の研究所で行ってきた農資源開発や、ポルトガルのアグリビジネス研究開発センター、世界6ヶ国で種子の開発・生産・販売を行うUGグループを配置しました。育種、新たな品種開発、栽培技術の開発を、グローバルで一体となって進めます。
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TOPICS 生鮮トマトと加工用トマトの違い トマトには、サラダなどの生で食べるトマトと、トマトジュースやトマトケチャップなどに使われる加工用トマトがあります。生食用と加工用では、栽培方法や品種などが異なります。
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生鮮トマト 日本では生食に向く果肉がピンク色のトマトが明治時代から栽培され、改良により多くの品種が生み出されてきました。現在では大きさや味だけでなく、リコピンやGABAなどの栄養成分を多く含むなど、多様な特徴を持ったトマトが販売され、果肉が赤い品種も生鮮トマトとして販売されています。通常、露地や温室に支柱を立てて栽培されます。
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加工用トマト 加工用トマトの最大の特徴は、真っ赤な色であり、カロテノイドの一つであるリコピンの量が多いことです。また、コンテナ詰めの輸送に耐えられるように、皮が硬く、果肉は密度が高くつぶれにくい特徴を持ちます。日差しを多く浴びるように、支柱を使わず地面をはわせるように育てるので、生産者の手間が省けて大規模な作付けが可能です。
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② 農作物の生産者をサポートする、農業のプロフェッショナル「フィールドパーソン」
「よい原材料はよい畑から生まれる」という想いから、安心・安全な農作物を調達するために、「契約栽培」に取り組んでいます。「契約栽培」は、まず作付け前に農家の方々と品質基準を満たす農作物について全量を買い入れる契約を結びます。その後、農業のプロであるフィールドパーソンが契約農家の畑を巡回し、独自のきめ細かい栽培指導をはじめ、農作物の生育状況に合わせて的確なアドバイスを行っています。「契約栽培」を行うことで、農家の方にとっては廃棄の無駄や価格変動といった不安がなくなり、高品質な原材料を作ることに専念できます。
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③ 環境負荷の低い栽培技術の開発
近年、世界各地で発生している干ばつは、農作物の栽培に大きな影響を与えており、持続可能な農業を実現していく上で、水不足への対応は喫緊の課題となっています。 AIを活用して加工用トマトの営農支援を行う、NECとの合弁会社「DXAS」では、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」の少量多頻度灌漑に対応したAI営農アドバイスと自動灌漑制御機能を組み合わせたサービスを提供することにより、通常よりも少ない水の量で、加工用トマトの収穫量を増やす取り組みを進めています。2023年4月~8月に、これまで「CropScope」が導入されていなかった北イタリアで実施した実証試験では、「CropScope」を活用していない区画と比較して、約19%少ない灌漑量でトマトの収穫量を約23%増加させることができました。これにより、今まで「CropScope」を導入していた地域とは気候や土質などが異なる北イタリアのような栽培環境でも、良好な成果が得られることを確認しました。
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北イタリアの圃場(AI少量多頻度灌漑区)
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畑の環境に合わせてAIが水やりの判断をする
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担当者メッセージ
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オーストラリアで競争力のある農業を実現 Kagome Australia Pty Ltd.(以下、KAU)はオーストラリア国内で大規模にトマト加工を行っている唯一の会社であり、トマト以外にもにんじん、にんにく、小麦などを栽培しています。我々フィールドチームはオーストラリア産の安心・安全で高品質な商品を顧客へ供給するという重要な責務に誇りを持っています。オーストラリアで農業を行う上では、農業人材の確保や先進農業の推進、天候リスクへの対処が重要な課題になります。KAUでは人手のかかる定植作業の自動化や、衛星を活用した生育状況の確認など、効率的な農業を進めています。天候リスクはKAUにとって最もチャレンジングな課題です。過去に幾度も天候の影響を受けていますが、カゴメグループのサポートを得ながら改善を積み重ねていくことで安定かつ競争力のある農業を実現することができると信じています。
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Kagome Australia Pty Ltd. GENERAL MANAGER FIELD OPERATIONS Chris Taylor
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2 生産(一次加工・二次加工)
畑で収穫した農作物を原材料として、製品を生産する工程には、主に一次加工と二次加工があります。一次加工は、生の農作物を扱いやすい形に加工する工程であり、野菜のペーストやピューレーなどが主な製品です。二次加工は、一次加工した農作物に調味料や野菜などの他の素材を加えて加工する工程であり、トマトケチャップやピザソース、野菜飲料など様々な製品を製造しています。
カゴメの製造工場は世界に17拠点あります。一次加工品の工場は農作物の産地近くに位置します。収穫後は極力時間をかけずに工場まで運び加工しています。二次加工品は、日本、米国、ポルトガル、オーストラリア、台湾、インドなどで製造し、現地や近隣国で販売しています。安心・安全な製品を安定的に生産するため、海外グループ会社で共通の品質管理基準(KBMP※)を導入し、グループ全体の品質保証レベルや生産性の向上を推進しています。
※KBMP:Kagome Best Manufacturing Practice 海外グループ会社共通の品質管理基準
① 世界17拠点で安心・安全な製品を生産
製品の生産拠点は、世界に17ヶ所(海外11工場、日本6工場)あります。トマト、にんじん、パプリカなどの野菜の一次加工の生産拠点と、トマトソースやピザソース、野菜飲料などの二次加工の生産拠点の2つに分類することができます。なかでも、トマトの一次加工については、カゴメの生産能力は世界で第3位です。
二次加工品であるピザソースなどは、主に現地や近隣諸国のフードサービス企業に販売しています。原材料の調達においては、各国で安心・安全な製品を安定してお届けするため、グループ内調達はもちろんのこと、国内外に幅広い調達ネットワークを構築しています。
② 産地×加工技術×容器形態の組み合わせによる、
ユーザーのニーズに合わせた製品の提供(一次加工)
農作物の味は、産地や品種によって甘み・酸味・うま味などが異なります。産地それぞれの特徴を活かして、用途にふさわしい製法を選択して加工しています。製法についても、濃縮する際の温度などの違いによって、粘度、性状、明るさ、香味などが変わります。当社では、加熱を最小限に抑えることで、トマトの新鮮な香りや明るく鮮やかな赤色を保持することができる特許技術(RO濃縮技術)を活用した製法や、にんじんに熱をかけずに優しくゆっくりすりつぶしながらしぼる「フレッシュスクイーズ製法」など、素材の良さを活かす加工技術を開発しています。容器形態については、大容量のドラム缶からバックインボックス※のような小容量のものまで、ユーザーのニーズに合わせた形態で提供しています。
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トマトの一次加工
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※ バックインボックス:プラスチック製の内装容器と、段ボールケースを主体とする外装容器の組み合わせ容器。
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③ 野菜の価値を最大限に引き出した、バリエーション豊かな製品の提供(二次加工)
一次加工で生産されたペーストなどに、調味料や野菜などの素材を加えて製品を生産する工程を二次加工と言います。例えば、トマトケチャップはトマトペーストに糖類、醸造酢、食塩、たまねぎ、香辛料などを加えて調味しています。野菜ジュースは、複数種類の濃縮された野菜をミックスして仕上げています。 販売する国の食文化や、多様な食シーンに合わせて、野菜の味わいを活かす幅広い製品を製造しています。
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二次加工
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担当者メッセージ
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インドでトマト加工品の市場を開拓 インドではカレー料理に多くの生トマトが使用されている一方、トマトの二次加工品があまり使用されていません。カゴメのトマト加工品のメリット(調理時間・手間の削減、スキルの低いシェフでも安定した品質の料理をいつでも提供できるなど)をホテル・レストラン・ケータリングのお客様にご理解いただき、徐々にですが市場を拡大させています。営業面では商談力の向上が課題です。商品の価値を伝えるために、営業担当者とともにシェフの資格を持つ従業員がお客様のキッチンを訪問して実演する機会を増やしています。継続的に新規顧客を獲得していけるよう、組織全体の営業スキルを底上げしていきます。インドでは計画通りに物事が進むことはほぼなく、常に複数のシナリオを想定して業務を進めています。多くの困難に直面しながらもダイナミックに事業規模を拡大できることが、インドでの仕事の魅力です。
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Kagome Foods India Pvt.Ltd. 布川 浩一
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3 商品開発・需要創造
創業以来、野菜や果実が持つ本来の味や栄養素を大切にし、自然素材を活かした商品づくりをしてきました。これまでの商品開発で蓄積した加工技術、配合などの知見を磨いて新たな商品開発に活かしています。
国際事業や日本国内のBtoBビジネスにおいては、顧客が抱える様々な悩みや要望に対して、商品やメニュー開発などのソリューションの提案に注力しています。BtoCビジネスでは、野菜の提供形態の多様化と、提供市場を多点化することにより、日本やアジアでの野菜の需要を喚起し、野菜不足を解消する商品やサービスを提供しています。
① 自然の素材を活かす商品開発力
野菜や果実が持つ本来の味や栄養素を大切にし、なるべく無添加で加工することにこだわった商品を開発しています。野菜や果実の最適な組み合わせや、トマトやにんじんから独自に開発した野菜素材を用いて、狙った味や性状を生み出します。産地によって微妙に味が異なる野菜や果実ですが、常に同じ味になるように配合を調整する仕組みを構築しています。
<事例1>野菜一日これ一本 トリプルケア
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<事例2>にんじんパウダー
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2023年9月に販売を開始した血糖値・血圧・中性脂肪の3つをケアする機能性表示食品です。野菜の成分だけで、3つの機能を実現していることが特徴です。加えて、30品目の野菜を350g使用しており、野菜を手軽においしく補うことができます。
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KAUでは、にんじん加工時の副産物(廃棄品)をパウダー状に加工し、販売しています。廃棄を減らすことにより、収益性の向上や、食品ロスの低減を目指しています。
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② グループ各社の連携により、BtoBビジネスのソリューション提案力を強化
カゴメグループの主な顧客の一つに、グローバルフードサービス企業があります。世界の各エリアに展開しており、今後はインドなどでも店舗数が増加する見込みです。当社はトマトソースやピザソースなどの二次加工の生産拠点を米国、ポルトガル、オーストラリア、台湾、インドなどに保有していることから、グローバルで安定して高い品質の商品を供給できることが強みです。商品開発の知見やノウハウの共有など、グループ間の連携をさらに強化することで、グローバルフードサービス企業向けの売上収益の拡大を目指しています。 また、日本の外食業界などにおいては人手不足が深刻な問題となっています。生の野菜から調理をする手間を省くピューレー状の野菜や、冷凍グリル野菜、オニオンソテーなどの加工度の高い野菜の活用などのソリューションを提案することによって、顧客の困りごとの解決につなげています。
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KIUS製造ライン
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調理の手間を省くことができる冷凍野菜の商品
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③ 野菜や植物性食品の価値をお客様に伝え、需要を創造するBtoCビジネス
BtoCビジネスは主に日本、アジアで展開しています。野菜不足を解消し健康寿命の延伸に貢献することを目指し、野菜摂取に貢献できる野菜スープや野菜飲料などの商品や、「野菜をとろうキャンペーン」などのプロモーション、「健康セミナー」や「ベジチェック®」などのコトサービスを通じて、需要創造活動を行っています。日本国内においては、これまで築いてきたブランド力によって、高いシェアを獲得しています。
●トマトケチャップ 58.3% ●トマトジュース 63.4% ●野菜ミックスジュース 47.1% ●野菜果実ミックスジュース 67.9%
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出典:株式会社インテージSRI+ 期間:2023年1~12月 単位:金額シェア 対象エリア:全国 対象業態: スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンター
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「ベジチェック®」 センサーに手の平を押し当てて約30秒で簡単に推定野菜摂取量を見える化できる機器
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アジア地域の取り組み
現在、アジアの7地域に対して、野菜飲料の輸出販売や、需要創造活動と販売チャネルの構築を進めています。地域によって野菜飲料の市場環境は大きく異なるため、それぞれに合わせたマーケティングを行い、現地ディストリビューターや越境ECチャネルを活用して、売上拡大に向けた基盤を構築しています。アジアにおいても「ベジチェック®」を設置した店舗で売上が向上する販促効果が確認されており、今後も店頭での体験を提供することで野菜飲料の購入につなげる施策を実施していきます。
TOPICS 野菜摂取の行動変容を研究する「食健康研究所」の新設 日本のみならず、世界中の人々のWell-Beingを実現するため、野菜や植物性食品の持つ可能性を様々な角度から検証する「食健康研究所」を2023年10月に設立しました。主な研究領域は以下の3点です。
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① 行動変容研究:健康寿命の延伸や野菜摂取の行動変容につながる仕組みづくり・創出の研究、社外研究機関と連携した野菜摂取に関する行動変容研究 など ② 機能性研究:国内外の商品やサービス、素材の栄養・機能価値に関するエビデンスの取得、食における野菜摂取が健康寿命の延伸に寄与することを示すエビデンスの取得 など ③ 事業貢献:一般社団法人ナトカリ普及協会との当社事業の支援、機能性表示食品の商品化に向けたエビデンス強化、行動変容コンテンツによる国内外における事業支援、野菜に関する情報の発信・普及と海外研究機関との共同研究 など
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担当者メッセージ
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アジアにおける野菜飲料の習慣飲用化で、お客様のQOL向上への貢献を目指す アジア市場は、国・地域によって多少異なりますが、野菜飲料を飲むことが日本ほど定着していません。この状況の中、野菜をジュースでとる習慣の浸透を通じてお客様の健康やQOL向上に貢献するのが私たちのミッションです。 私が勤務する香港では、現地で知らない人はいない「出前一丁」ブランドを擁する日清食品(香港)有限公司との協業で事業を展開しています。これまでの協力により、カゴメ野菜飲料の認知率・購入経験率は高く、ブランドとしてはかなり浸透してきたと言えます。しかし、飲用者1人当たりの飲用量拡大にはまだ余地があります。このために、カゴメが持つ野菜の栄養に関する様々なエビデンスやベジチェック®など、あらゆる資産を活用して、お客様にカゴメ商品の健康的な価値をご理解いただくことで、さらなる事業拡大を目指していきます。
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グローバルコンシューマー 事業部 下妻 洋
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(5)企業価値向上に向けた取り組み
当社は、企業理念(「感謝」「自然」「開かれた企業」)のもと、事業を通じて社会価値と経済価値を創出することにより企業価値を最大化していきます。また、中長期において「ROEの向上」と「資本コストの低減」に重点的に取り組むことで、持続的な企業価値向上を目指していきます。
ROEの向上
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企業価値向上
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資本コストの低減
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●収益力の向上 ●財務健全性、資本効率性の両立
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●非財務(ガバナンス、リスクマネジメント、環境、人権、人的資本など)の取り組み ●情報開示の拡充、株主・投資家との対話など
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●ROEの向上(2025年度目標 9%以上)
当社は、企業価値向上の最重点指標にROEを掲げています。
収益力の向上、財務健全性と資本効率性の両立を柱として、第3次中期経営計画期間の最終年度である2025年度はROE9%以上の達成を目標としています。今後もROEを高め、安定的な株主還元を行うことで企業価値を向上していきます。
効率的な成長投資の実行
設備や事業への投資においては、経営企画、法務、財務経理などの専門部署のメンバーから構成される投資委員会により、各部署から起案された投資について採算性やリスク評価を踏まえた審査を経た上で、経営会議及び取締役会で決定します。
また、投資後も、同委員会が継続的にモニタリングを実施し、その効果を確認しています。
投資判断基準
対象
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指標
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基本要求水準
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事業投資
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IRR(内部収益率)※1
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10%+α※2
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設備投資
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PBP(回収期間)※3
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4年
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※1 Internal Rate of Return:事業計画から得られるフリー・キャッシュ・フローの現在価値から初期投資額を差引いた金額がゼロとなる割引率
※2 αは国や地域に応じたカントリーリスク
※3 Payback Period:投資金額が回収されるのに要する期間
投資のモニタリング体制 ●執行後5年間を対象 ●年1回の取締役会・経営会議にて報告
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第3次中期経営計画期間 投資額(累計)計画
売上総利益率の維持・向上の取り組み
当社は、持続的に収益力の向上を実現する上で、売上の拡大に加えて、売上総利益率の維持・向上に取り組んでいます。 具体的には、各事業の特性に応じて、原材料費の削減や労働生産性の向上、製造ラインの自動化など、生産現場における恒常的な原価低減のほか、コスト上昇時の機動的な価格改定により売上総利益率を維持・向上しています。
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※ 企業結合会計適用によりIngomarの在庫の時価評価で原価が上昇することに伴い、一時的に低水準となる
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また、「畑は第一の工場」としてものづくりを営む当社グループにとって、中長期的にも安定した売上総利益率を確保する事業構造に変革していくために、高品質の農産原料の調達ネットワークの拡大や、水不足や気候変動に適応した品種開発、栽培技術の確立など、グローバルバリューチェーン全体のコスト構造を変革する取り組みを進めています。
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継続的な利益拡大の取り組み
当社は、2025年度の利益目標の達成に向けて、将来予測に基づく引当マネジメントプロセスを採用しています。 また、毎月開催する取締役会、執行役員会のモニタリングを通じて、経営と現場が一体となって継続的な利益拡大に取り組んでいます。 利益目標達成においては、実績確定前の年間引当予測に基づき、利益目標との乖離状況を早期に把握することで、機動的な戦略修正を行う引当マネジメントプロセスを採用しています。このプロセスにより、各事業の売上拡大、コスト削減の活動につなげることで目標とする利益の達成を実現しています。
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全社ROIC管理による資本効率の向上
当社は、利益を獲得するだけではなく、投下した資本の適切性や効率性を測定するため、2021年度よりカゴメROIC※による管理を導入しています。カゴメROICは、獲得したEBITDAに対して投下した資本の効率性を測定し、貸借対照表項目を各要素に分解することで、改善すべき課題を明確にすることを目的としています。
※ カゴメROIC :EBITDA÷投下資本
2023年度は、国際事業のEBITDAが大幅に増加したことにより、ROICは目標を5.7point上回り、13.2%となりました。
2024年度は、ROICは4.6point悪化し、8.6%を見込んでいます。各事業の状況は以下の通りです。
●国内加工食品事業:EBITDAの減少と投下資本の増加により4.7point悪化
●国内農事業:EBITDAの減少により6.1point悪化
●国際事業:主にIngomarの連結子会社化に伴う投下資本の増加により5.5point悪化
(ROICツリー展開)
当社においては、ROICツリーを資本効率向上のためのコントロールドライバーとして活用しています。ROICツリーの展開により、ROICからブレイクダウンしたBS指標を各部門のKPIに落とし込むことで、これに基づくアクションプランを各社・各部門にて設定し、自律的にPDCAを回すことで指標の改善を図っています。その上で、各社・各部門にて効率を意識した改善活動を行い、最適なサプライチェーン体制の構築をはじめとした取り組みを進めています。
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2022年度実績
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2023年度目標
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2023年度実績
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2024年度目標
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ROIC(%)
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11.5
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7.5
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13.2
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8.6
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EBITDAマージン(%)
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10.3
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7.0
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12.3
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9.0
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EBITDA (百万円)
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21,092
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14,900
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27,726
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26,100
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売上収益 (百万円)
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205,618
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213,000
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224,730
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289,000
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投下資本回転日数 (日)
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327
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338
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341
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385
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国内加工食品事業
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2023年度:13.7%→2024年度:9.0%
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国内農事業
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2023年度:22.4%→2024年度:16.3%
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国際事業
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2023年度:15.3%→2024年度:9.8%
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主なKPIと担当部門 ●売上債権回転日数 (営業本部) ●原材料在庫高 (調達部) ●社内加工材在庫高 (生産部) ●製品在庫日数 (SCM本部) ●海外子会社の各社別ROIC (カゴメ・フード・インターナショナル・カンパニー)
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自己資本比率・信用格付の維持
自己資本比率
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当社は財務基盤の安定を前提に、ROEの向上を進めます。 自己資本比率50%以上を維持するとともに信用格付においてシングルA以上を目指します。
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2021年度
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2022年度
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2023年度
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2024年度
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連結
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54.6%
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52.8%
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49.8%
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50%以上
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格付
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A
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A
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A
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-
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(6) 第3次中期経営計画の進捗
2016年に、2025年のありたい姿、ビジョンを定め、その達成に向けて3期にわたる中期経営計画に基づき経営を進めてきました。2022年から2025年までの第3次中期経営計画は、10年間の総仕上げと、次の10年の成長を見据えた重要な4年間となります。
第3次中期経営計画の基本戦略は「4つのアクションの有機的連携による持続的成長の実現」です。
第3次中期経営計画の前半となる2022~2023年の2年間は、ウクライナ情勢などの地政学リスクの高まり、円安の進行、 気候変動の影響による農産原料の収量低下などにより、原材料価格が高騰し、当社の経営環境は大きく変化しました。国内事業は、ほぼ全商品にわたる価格改定を行うとともに需要喚起策に取り組んだことで、販売数量を回復軌道に乗せることができました。国際事業は、これまでの収益構造改革の成果に加え、トマト加工品の市況高に合わせた価格改定と、外食需要の回復により売上収益、事業利益ともに大きく拡大することができました。後半となる2024~2025年においては、さらなる原材料価格の上昇が見込まれる環境において、国内事業の収益の回復と、国際事業の成長の加速に取り組みます。
第3次中期経営計画 基本戦略
第3次中期経営計画の定量推移(実績・計画)
() その他/調整(各事業別実績は調整前値)
第3次中期経営計画 前半(2022年~2023年)
経営環境変化への迅速な対応
前半の取り組み
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●原材料価格の高騰に対応し、国内・国際事業ともに、機動的な価格改定と需要喚起策を実施 ●加工用トマトの市況変化に対応した国際事業の売上収益、事業利益の成長 ●トマトを中心とした、原材料調達戦略の見直し ●植物性領域への挑戦、AIを活用し持続可能な農業を目指したDXASの設立とサービス開始 ●サステナビリティやリスクマネジメント推進体制の整備
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機会とリスク(機会〇、リスク△)
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●世界的な環境問題の深刻化(〇△) ●世界人口の増加と国内人口の減少(〇△) ●アフターコロナの「食と健康」に関するマーケットの変化(〇△) ●デジタル化による顧客接点の多様化(〇) ●農産原料など食糧、水、天然資源などの価格上昇(△) ●労働力の不足(〇△) ●サプライチェーン課題への対応(△)
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今後の課題
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●さらなる原材料価格上昇への迅速な対応 ●価格改定による需要減退を防ぐ、需要喚起策の実施 ●国際事業のさらなる成長の加速 ●人口増加が見込まれる地域における事業展開の加速 ●環境負荷を低減するサステナブル農業への資源投下 ●中長期的な成長を見据えた人的資本の強化と、サプライチェーンの整備
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第3次中期経営計画 後半(2024年~2025年)
収益回復と成長の加速
2024年にかけても原材料価格は高い水準が続く見通しです。引き続き、収益獲得に向けた活動に注力するとともに、基本戦略である「4つのアクションの有機的連携」を進めます。
加えて、2026年以降を見据え、ビジネスモデルの特徴の一つである農業が抱える課題への中長期的な対応を進めていきます。
具体的な取り組み
国内事業:利益回復に向けた取り組み
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国際事業:成長の加速
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経営基盤の強化
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●原材料価格のさらなる上昇に対応する、原価低減、コスト削減、価格改定と需要喚起策の実施 ●ベジチェック®や「野菜をとろうキャンペーン」を通じた野菜摂取に貢献できるカテゴリーのマーケティング施策の強化 ●植物性領域の拡大
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●カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー設立による意思決定の迅速化と、グループ企業間の連携強化 ●原材料価格高騰を受けた、価格改定の実施 ●トマト加工品の安定供給とコスト競争力の強化 ●開発、営業力を軸としたフードサービス企業の売上拡大 ●米国やインドなど、人口増加が見込まれる地域での事業展開の加速
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●調達基盤の強化 ・グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターによる、環境負荷の低い品種や栽培技術の開発強化 ●サプライチェーン ・サプライネットワーク構想の具現化 ※人的資本の強化→人材ページ参照
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中長期的な課題
地球温暖化に伴う異常気象の発生や、海外の人口増加を受け、世界的な農産原料の安定生産が中長期的な重要課題です。特に、トマトにおいては近年世界的に需給が逼迫しており、長期的にも気候変動の影響を受ける可能性が高いことが想定されます。そのため、中長期的な原材料の確保と、持続的な農業の確立を目指し、川上の新品種の開発と育種、アグリテックなどの栽培技術の開発に、人材等の資源を集中的に投下するため、2023年10月に、農業関連事業と農業関連技術探索・開発を一元的に担う「グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター」を新設しました。
担当者メッセージ
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Don’t waste a good crisis! 人口増加や気候変動による食糧・農地・農業人口の不足、それに伴う生活者意識の変化により、「サステナブルな農の実現」の価値は増大し、農業イノベーションが求められています。また、AI、ビッグデータや分子生物学などの最先端技術の実用が進みつつあり、同時に気候変動対応技術への投資も増加しています。この環境変化を「good crisis(機会)」と捉え、創業から続けてきた「品種開発」「栽培技術」とその「組み合わせ」による価値開発を、自前だけでなく社外からの技術獲得によりさらに発展させます。そして米国を中心にグループ内子会社の農家との共創により、グローバルで通用する技術開発と新事業創造を進め、野菜を作り、技術も売る「低環境負荷トマト・野菜のプラットフォーマー」を目指します。
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グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター 所長 上田 宏幸
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Special Feature
持続可能なトマト加工事業の構築により国際事業のさらなる成長を目指す
~世界第4位のトマト一次加工会社※Ingomar(米国)を連結子会社化~
1 Ingomarについて
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Ingomarは1983年の設立以降、約40年にわたり、世界最大の加工用トマト産地である米国カリフォルニア州において、トマトペースト・ダイストマトなどのトマト一次加工品を製造・販売しています。 当社は、2008年よりIngomarからトマト一次加工品の調達を開始しました。それ以来、同社を主力調達先の一つとして位置付け、日本、米国、台湾、オーストラリアなどにおいて製造するトマトソースやピザソース、トマトケチャップなどの原材料に、同社のトマト一次加工品を使用しています。2016年には、トマト一次加工品の調達及び顧客への安定供給を目的に、当社子会社であるKIUSを通じて、Ingomarの出資持分20%を取得し、当社の持分法適用会社とするとともに、業務資本提携契約を締結して関係強化を図ってきました。 2024年1月26日に、出資持分の50%を追加取得し、連結子会社化としました。取得価額は約360億円となり、当社にとって過去最大の投資となりました。
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Ingomar 加工トマト製造工場
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Ingomarの強み ●出資者が加工用トマト農家であることから、安定的かつ盤石な加工用トマトの調達基盤 ●産地の中に加工拠点があるという効率の良さ ●グローバル市場におけるコスト競争力 ●当社が長い取引で確認してきた品質と、供給の安定性
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2 連結化によって達成すること
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① 米国トマト加工事業のバリューチェーンの強化により米国事業をさらに成長させます
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従来の米国トマト事業の「種子開発・販売」「二次加工」に、「一次加工」の機能を取り込むとともに、Ingomarの特徴であり強みでもある加工トマト栽培への関与を強めます。同一地域内で完全なバリューチェーンを保有することにより、事業の安定性と持続性を高め、米国トマト加工事業のさらなる成長を図ります。
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カゴメグループ グローバルトマト事業拠点
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② トマト加工事業のグローバルネットワーク強化によって国際事業全体の成長を加速します
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世界最大の加工用トマト産地における「一次加工」機能の保有は、グローバルに展開するフードサービス企業・食品製造業との取引拡大を支えるグローバルネットワークの強化につながります。Ingomarは、当社が2023年10月に新設した社内組織「カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー」に加わり、カゴメグループ各社との連携を図ります。
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工場に到着した加工用生トマト
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③ 農業領域の取り組み強化による、競争優位性が高めて、持続可能なトマト加工事業の構築します
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Ingomar及び同社出資農家と協働で、特に栽培技術の開発に取り組み、環境負荷の低減や収穫量の安定化、栽培効率の向上などを目指します。技術開発の際は、世界最大の加工用トマト産地であり、農業の最先端技術が集まる米国カリフォルニア州の利点を活かして、現地の研究機関や農業関連企業などとのオープンイノベーションも積極的に進めていきます。 開発した技術はIngomarの加工用トマト調達先に展開するほか、米国以外のグループ会社への展開も目指します。これにより各地域のトマト加工事業の強化を図り、ひいてはグローバルな視点で、トマト加工事業の競争優位性と持続可能性を高めていきます。
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加工用トマトを収穫する様子
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3 今後の見通し
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今回の投資が当社の売上収益、事業利益に与える効果は、右図の通りです。売上収益、事業利益はそれぞれ、2024年度が515億円と31億円、2025年度が510億円と73億円を見込んでいます。これに、シナジー効果を追加していきます。 短期的には、生産効率の向上や原価低減、他グループ子会社との連携による商品バリエーションの増加など、カゴメグループが保有するネットワークやノウハウを投下し、シナジー効果を創出していきます。そして、中長期においてこの投資の最大の目的である競争優位性のあるトマト加工事業を構築することにより、売上収益、事業利益ともに成長を実現します。
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2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
カゴメのサステナビリティに対する考え方
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サステナビリティ基本方針 カゴメグループは創業以来、 「畑は第一の工場」というものづくりの思想のもと、 自然の恵みを活かした新しい食やサービスを提案してまいりました。 この営みを未来につなぐために、 企業理念である『感謝・自然・開かれた企業』の実践と、 ステークホルダーの皆さまとの協働により社会課題の解決に取り組み、 持続的なグループの成長と持続可能な社会の実現を図ります。
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サステナビリティ推進体制
当社では、関連部門で進めてきたサステナビリティへの取り組みを全社での活動として強力に推進するため、2022年10月にサステナビリティ委員会を設けました。委員会は、各分科会での協議に基づいてサステナビリティ課題に対する長期への備えや打ち手について議論し、経営会議や取締役会に報告・付議を行うことで、経営戦略への反映を図っています。
2023年度のサステナビリティ委員会における議題
2023年度においては、計3回のサステナビリティ委員会を開催しました。長期的視点での「持続可能な社会の実現(社会課題の解決)」及び「企業の持続的な成長」に向けて検討を行っています。
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討議内容
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第1回 (4/6)
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● 当社のサステナビリティへの考え方と推進体制について ● 人権方針の策定と今後の対応について ● 2050年ビジョン策定の企画内容について
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第2回 (6/29)
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● 環境分科会の概要、及び、Scope1、2のGHG排出量削減策の更新について ● 人権方針案の修正について
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第3回 (12/13)
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● 2050年ビジョン策定プロジェクト 中間報告 ● 「 ビジネスと人権」の理解(有識者による講義) ● 「 人権デューデリジェンスの実施計画」及び「人権ページの開設」について ● 環境分科会の概要、及び内外環境変化への対応案について ● TCFD/TNFDへの対応について
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サステナビリティ委員会(分科会)の活動ハイライト
① 「2050年ビジョン策定プロジェクト」のスタート
10年を超える長期の取り組みの指針として「2050年はどのような社会でありたいか(=社会像)」「その社会の実現に向け当社は何に取り組んでいくのか(=企業像)」を明示するため、「2050年ビジョン策定プロジェクト」をサステナビリティ委員会傘下の分科会として発足させました。20~40代の社員を対象に社内公募によるプロジェクトメンバーで活動を行っています。ワークショップを開催し、シナリオプランニングや自社の強みの把握などを行いながら、策定を進めています。サステナビリティ委員会では、事前に本プロジェクトの枠組みについて議論し、また2023年12月には策定メンバーとの中間セッションを行いました。
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参加メンバーによるワークショップの様子
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② 人権課題の推進
調達部門・法務部門・サステナビリティ部門からなる「サプライチェーンCSR分科会」を中心に、人権への取り組みを進めました。サステナビリティ委員会では、主に「カゴメグループ人権方針」の内容や、取り組むべき人権課題について議論しています。
SUSTAINABILITY TOPICS
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1 サステナビリティサイトの開設 2023年7月、企業情報サイト内に「サステナビリティ」サイトを新たに開設しました。本サイトではサステナビリティの実現に向けたカゴメグループの活動について、持続的成長と企業価値向上を実現するための7つの重要課題(マテリアリティ)と食育・共助の取り組みなどを掲載しています。今後、ステークホルダーの皆様のカゴメグループへの理解がさらに深まるように、本サイトを通じて、サステナビリティ活動を積極的に発信していきます。
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2 「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に初選定 当社は「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に初めて選定されました。「FTSE Blossom Japan Index」は、グローバルインデックスプロバイダーであるFTSE Russellにより、ESGについて優れた対応を行っている企業のパフォーマンスを測定するために設計されたものであり、サステナブル投資のファンドや他の金融商品の作成・評価に広く利用されて います。FTSE Russellの評価はコーポレ
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サステナビリティサイト https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/
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ート・ガバナンス、健康と安全性、腐敗防止、気候変動といった分野について行われており、「FTSE BlossomJapan Index」の構成銘柄である企業は、ESGに関してFTSE Russellが定める様々な基準を満たしています。なお今回の選定により、当社は、世界最大規模の公的年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する、日本株を対象とした全てのESG指数の構成銘柄に選定されました。
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当社のマテリアリティに対する考え方
当社では、マテリアリティを持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、ビジネスモデルを持続させる上で対処すべき課題と位置付けています。これらは、中期重点課題やサステナビリティ課題、また、時間軸によらない課題も包含しています。特定した7つのマテリアリティのうち、3つは当社が事業を通して解決を目指す社会課題、残りの4つは当社の価値創造活動を強化していく上での課題です。これらのマテリアリティを推進していくことで、持続的に成長できる強い企業を目指していきます。
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マテリアリティ特定プロセス
当社では、2019年にマテリアリティを特定して、経営に反映してきました。しかしながら、経営を取り巻く環境は日々変化しており、第3次中期経営計画の検討に際し、外部環境の変化などを考慮した上で、社外ステークホルダーや取締役会での評価も踏まえて、2021年にマテリアリティの見直しを行いました。見直したマテリアリティに関わる課題については、サステナビリティ委員会を通じて推進し、具体的な経営戦略へと反映させています。
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2018年
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社会課題の抽出・整理
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2019年
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社外ステークホルダーからの第三者評価を実施し、マテリアリティを特定
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2021年
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マテリアリティの見直し (マテリアリティを17項目から7項目に整理) • 社外ステークホルダーへのヒアリング • 取締役会での妥当性評価
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2023年~
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サステナビリティ委員会による課題推進
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~2025年
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次期中期経営計画に向けたマテリアリティの見直し検討
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また、現中期経営2026年以降についても、サステナビリティ委員会の分科会を中心に検討し、必要に応じて見直しを実施していきます。
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知財活動 TOPICS
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1 ブランドを守る知財活動 創業より築いてきたブランドを守り、発展させていくために、経営企画・法務・広告・広報部門からなるブランド審議会において、コーポレートブランドの適正利用についての方針・規程・マニュアルを策定し、それらをもとに適正利用を図っています。 2023年は、空間デザインによるコーポレートブランディングの象徴として手掛けた「カゴメビル」がグッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。当ビルの建物低層部の外観や1階のキッチン空間「カゴメ キッチンファーム®名古屋」の内装は、社名「カゴメ」の由来であるトマトを収穫する際の「籠(かご)の目」をモチーフとしており、キッチンの内
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2 技術を守り、活用する知財活動 農業、健康、加工飲食品分野において、各事業部門の戦略とも連携した知財活動を行っています。 2023年は、ナトカリマップ®、SGS(スルフォラファングルコシノレート)含有野菜、野菜だしなどに関連する特許権を取得しました。 ナトカリマップ®は、食品中のナトリウムとカリウムの含量を一目で示すマップです。このマップに関する特許権など※のライセンスを通じ、バランスのとれた食事を推奨しています。当社の技術力の向上を通して、企業価値の向上と持続的成長、さらには食分野の発展に貢献していきます。 ※東北大学との共有の権利
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装は意匠権※の取得をしています。 ※竹中工務店との共有の意匠権
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7つのマテリアリティと主な取り組み
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マテリアリティ
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目指す姿(KPIなど)
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主な取り組み
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貢献できるSDGs
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3つの社会課題
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健康寿命の延伸
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様々な商品や情報により野菜摂取を促進し、人々の健康的な食生活や生活習慣に野菜で貢献する。
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野菜をとる食生活への行動変容に つながる価値開発・情報発信
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野菜摂取に貢献できる商品の 開発・普及
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貢献できる健康期待領域の拡張
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農業振興・ 地方創生
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農事業や品種開発・技術開発などを通して、持続的な農業の確立を目指す。
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野菜の産地形成と加工による 地域農業ビジネスの振興
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農業の生産性・持続性の向上する 技術・サービス
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事業活動を通じた国内農産物の 魅力発信
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持続可能な地球環境
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調達から製品に至るまでの事業活動の環境負荷を低減する。2050年までにカーボンゼロを実現する。
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2050年カーボンゼロに 向けた取り組み
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食品ロスの低減の取り組み
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水・生物多様性の保全
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環境負荷が低い原料・資材調達と 商品展開
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価値創造活動の強化
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安心・安全な商品の提供
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品質第一・利益第二※を実現する。 ※ お客様に安心・安全な 品質を提供することと、利益の創出を、どちらも大事にするというカゴメの考え方
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ブランドへの信頼につながる 品質向上・お客様との対話
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持続可能な サプライチェーンの構築
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環境変化に対応できる安定的な調達基盤と物流体制を構築する。
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環境・社会的に持続可能な 責任ある調達
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お客様に商品を届け続けられる 物流体制の構築
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多様性の尊重・ 人的資本の拡充
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多様性をイノベーション創出、持続的な成長につなげる。
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ダイバーシティ&インクルージョン 推進によるイノベーションを 創出しやすい環境づくり
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健康経営の推進
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コーポレート・ ガバナンスの強化
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「自律」のさらなる強化と「他律」による補完で、自らの意志で時代に適応するコーポレート・ガバナンスを構築する。
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コーポレートガバナンス体制の強化
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適切な情報開示と透明性の確保
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知的財産戦略の 策定・リスクマネジメント
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<持続可能な地球環境>
カゴメグループは、自然の恵みを享受し、お客様に新しい食やサービスをお届けする企業の責任として、「地球温暖化防止」「資源の有効活用」「水の保全」「持続可能な農業」等、持続可能な地球環境への取り組みを進めています。
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1 品質・環境方針
自然の恵みを活かして人々の健康に貢献してきたカゴメのものづくりは、「畑は第一の工場」という考えのもと、野菜の種子や土づくりから取り組み、安全で高品質な原材料づくりを基本としてきました。その自然の恵みを享受し続けるためには、豊かな自然環境のもとでの持続的な農業の営みが欠かせません。地球環境の保全と自然を活かしたものづくりを両立させていくことは、カゴメグループの事業活動が将来にわたり成長し続けるために不可欠なことです。 このような品質(ものづくり)と環境に関する理念の共通性や活動上の関連性から、従来それぞれに「品質方針」「環境方針」として掲げられてきたものを統合し、「品質・環境方針」として2017年10月に制定しました。カゴメが情熱を込めて取り組んできたものづくりと同じ想いで環境保全活動にも注力することで、持続可能な社会の実現を目指す、という経営の意思が込められています。
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1. 野菜による美味しさと健康価値で、大切な人の健康長寿に貢献します。 2. 国内外のパートナーと種子・畑から一貫した安全な農産原料づくりに取り組みます。 3. 野菜を育む水・土・大気を守り、豊かな自然をつくる農業を未来につなげ、得られた恵みを有効に活用します。 4. 法令や自主基準を順守し、しくみや行動をレベルアップし続けることで、安全で環境に配慮した商品をお客様にお届けします。 5. お客様へ商品やサービスの確かさをお届けしつつ、お客様の声を企業活動へ反映します。
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2 カゴメ環境マネジメントシステム
国内カゴメグループでは、「品質・環境方針」に基づき、社長以下全部門・全事業所の役割を明確化したカゴメ環境マネジメントシステム(KEMS)を構築し運用しています。具体的には、「品質・環境方針」に沿って環境マネジメント計画を定め、年度ごとの目標を設定しています。各部門・事業所は、年度目標に沿って環境保全活動を推進し、チェック・アンド・レビューすることで、中長期の取り組み方針・目標の更新、及び次年度の目標設定をしています。
カゴメ環境マネジメント体制・計画については、 WEBサイトをご覧ください。 https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/global-environment/
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3 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応
当社は、これまで気候変動への対応として、2019年にTCFD提言に基づいたシナリオ分析を実施し、事業におけるリスクや機会の特定、「指標と目標」の見直しなどに着手してきました。2022年にはTCFD提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに参画しました。
ガバナンス
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カゴメグループは事業の最大のリスクを原材料調達の途絶と考えています。地球温暖化による異常気象は、原材料産地に大きな被害を及ぼします。このリスクを回避すべく、温室効果ガスの排出量の削減を加速するため、2018年に策定したCO2の中長期排出削減目標を2021年に見直しました。 代表取締役社長は、ISO14001に則ったカゴメ環境マネジメントシステムにおいて、気候変動を含む当社の全ての環境活動を統括しています。また、環境に関する方針を掲げ、年2回のマネジメントレビューを通して環境マネジメントシステムの有効性を評価し、その改善を指示する責任と権限を有しています。
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戦略
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気候変動の顕在化は農作物を原材料とする当社にとって大きなリスクになるとともに、長年蓄積された技術を活用することで機会にもなります。 カゴメグループのリスク対応策及び機会の一例
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リスク項目
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対応策や機会
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短期・中期的
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■ 異常気象、気象パターンの変化 ■ 水ストレスによる生産量減少
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■ 気候変動に対応できる野菜品種の獲得・販売 ■ 最小の水で生産できるトマト栽培システムの開発と利用
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長期的
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■ 炭素価格上昇 ■ 生活者の行動変化 ■ 生物多様性の損失
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■ CO2排出削減目標に向けた取り組み ■ 環境配慮商品や認証品の積極的な開発 ■ 生きものと共生する農業の提案と普及
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※ 詳細については、Webサイトをご覧ください。 https://www.kagome.co.jp/company/csr/environment/activity/globalwarming/ これらの気候変動のリスクと機会は、事業活動そのもののリスクや機会であるため、その他のリスクとともに事業計画に組み込まれています。
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リスク管理
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リスク管理の統括機関として「リスクマネジメント統括委員会」を設置し、代表取締役社長を議長として、リスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っています。特定した気候変動に関するリスク及び機会は環境マネジメント計画の中で課題化し、全社で取り組んでいます。
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指標と目標
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2050年までに当社グループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、SBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の認証を取得しました。 ※ 企業の温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が定める水準と整合していることを認定する国際的イニシアチブ
項目
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目標(2020年対比)
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2020年度 実績(t)
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Scope1及びScope2
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2030年度までに温室効果ガスの排出量を42%削減
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143,524
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Scope3
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2030年度までに温室効果ガスの排出量を13%削減
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1,315,239
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Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス) Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) 当社は温室効果ガス排出量に対して信頼性の高いデータの情報開示が必須と考え、温室効果ガス排出量(Scope1、2、3)について、第三者検証を受け、検証報告書を取得しています。2022年(1月1日~12月31日)の温室効果ガス排出量について、国内外のカゴメグループ工場(Scope1、2)及び国内のカゴメグループ(Scope3)から排出された温室効果ガスの算定方法の妥当性及びデータの検証がISO14064-3:2019に準拠して行われ、検証機関である一般社団法人日本能率協会による検証報告書を取得しました。 (2023年度実績は、第三者検証後にCSRサイトにて公開) 詳細については、Webサイトをご覧ください。 https://www.kagome.co.jp/library/pdf/company/sustainability/data/02.pdf
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4 地球温暖化防止
カゴメグループは安全な原材料を調達し、自然の恵みを活かしたものづくりに取り組んでいます。このため、事業の最大のリスクを原材料調達の途絶と考えています。地球温暖化による大型台風や暴風雨などの異常気象は、原材料産地に大きな被害を及ぼします。このリスクを回避し、将来にわたり事業活動を継続するために、パリ協定※を率先して遂行し、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでいます。 ※パリ協定:2015年12月12日、COP21で採択された気候変動抑制に関する国際協定
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カゴメグループのCO2排出量構成比 (2023年度)
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再生可能エネルギーの利用
カゴメグループでは、温室効果ガス排出量の削減に向けて、太陽光発電の導入やバイオマスエネルギー利用の取り組みを進めています。
●太陽光の利用 国内:小坂井工場(2021年)、茨城工場(2021年)、富士見工場(2021年) 海外:KIUS(米国)(2017年)、KAU(2019年) HIT(ポルトガル)(2023年) ※()は導入した年
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小坂井工場(愛知県)
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●再生可能エネルギー電源に由来する電力を購入して利用 国内:小坂井工場(2022年)、上野工場(2023年)、富士見工場(2023年)、響灘菜園(2013年) 海外:HIT(2021年) ※()は導入した年
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富士見工場(長野県)
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TOPICS バイオマスエネルギーの利用 「カゴメトマトジュース」や「野菜生活100」などの飲料製品の生産や飲料の原材料向けに生野菜を加工している富士見工場(長野県)において、2023年1月から、同工場で発生する野菜の残渣や同工場の隣にある八ヶ岳みらい菜園の出荷できないトマトなどを、再生可能エネルギーとして利用しています。化石燃料の使用量低減により、CO2排出量の削減を実現します。
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5 資源の有効活用
当社はSDGsの目標12の「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」に賛同し、これを目標とした、生産量の精度向上や品質不良品発生の撲滅、賞味期間の長い商品の開発、賞味期限の年月表示化、フードバンクの活用などを行い、食品ロスの削減に努めています。また、環境負荷低減の取り組みとして、プラスチックの使用量削減なども進めています。
プラスチックの使用による環境負荷の低減を目指して、2020年に「カゴメ プラスチック方針」を制定しました。具体的な目標として、2030年までに、紙容器飲料に添付している石油由来素材のストローの使用をなくし、資源循環可能な素材(植物由来素材や紙素材)へ置き換えることとしています。また、飲料PETボトルにおいて、2030年までに、樹脂使用量全体の50%以上をリサイクル素材または植物由来素材とします。このほか、工場でのリサイクルの推進や全国事業所の環境美化活動に継続して取り組んでいます。
カゴメプラスチック方針
プラスチック方針(要約)
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1
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過剰なプラスチックの使用をなくし、使用量の削減を推進する
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2
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リサイクル素材や植物由来素材への置き換えを進める
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紙容器:2030年までに、石油由来素材ストローの使用をゼロに
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PETボトル:2030年までに、50%以上をリサイクル/植物由来素材に
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3
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工場のゼロエミッションを継続
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4
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全国事業所の環境美化活動を継続して実施
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「植物性乳酸菌 ラブレ」全4品のストローの貼付を廃止
カゴメグループは、プラスチック使用量削減を目的に、「植物性乳酸菌ラブレ」(全4品)に貼付しているストローを2023年5月下旬より順次廃止しています。当社は環境負荷の低減を目的に、2020年に「カゴメ プラスチック方針」を制定して、環境に配慮したプラスチックの利用に取り組んでいます。自然の恵みを活かした事業を展開する企業として、今後も石油から新たに作られるプラスチックの使用量の削減など、環境に配慮した活動を進めていきます。
担当者メッセージ
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人にも地球にもやさしい商品を目指して 愛飲していただいている方の約半数の方がストローを使っていないという事実を受け、「カゴメ プラスチック方針」の目標達成に向けてもストロー廃止への検討を進めてきました。その際、単にストローをなくすだけではなくできる限り開けやすいフタにしたいと考えました。主なご利用者層である40~60代の女性の方が最も開けやすい形にするために、フタのタブを女性の親指の大きさに合わせるなどの試行錯誤を重ねましたが、関連部門の協力もあり実現しました。「ゴミの削減にもつながり良いことですね」というお客様からのお声も頂いています。今後も人にやさしいだけでなく地球にもやさしい商品へ進化することで、より多くの皆様にご愛顧いただきたいです。
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飲料企画部 伴 諭
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6 水の保全
カゴメグループは商品の原材料となる作物の栽培に水を使い、加工段階でも多くの水を使用しています。日本は水が比較的豊かと言われていますが、世界では水不足が深刻な地域が存在しています。カゴメグループは活動する地域の水資源を守るため、それぞれの地域に合ったサステナブルな対応を進めていきます。
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<カゴメグループ 水の方針>
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1. カゴメグループおよび主要サプライヤーでの水リスクを把握します
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2. 地域の水資源を守るため、取水量の削減に努め、水を大切に使用します
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3. 使用した水は、きれいにして地域に還します
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4. 水リスクの高い事業所においては、その地域に合った水の対策を推進します
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高リスク拠点への対応 当社は、商品の原材料となる作物の栽培に水を使い、加工段階でも多くの水を使用しているため、その使用量を削減することや環境への負荷などを小さくすることが必要であり、国内6工場と海外7工場を対象に水リスク評価を行っています。水リスク評価は、流域リスクと操業リスクをそれぞれ5段階(1~5)で評価して
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2次元マトリクス化し、優先拠点を特定しています。なお、国内6工場については、AqueductのBaseline Water Stress※による評価では水関連リスクが高くないことから、海外工場に注力しリスク評価を行いました。
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当社は、国際的影響力のある環境非営利団体CDPの水資源管理に関する企業調査「CDP水セキュリティ」において、最高評価の「Aリスト企業」に選定されました。
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※ Baseline Water Stress : WRI (World Resources Institute、世界資源研究所)が開発した水リスク評価のグローバルツール。
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●流域リスク 「水資源リスク」「水量に関する評判リスク」「水量に関する規制リスク」「渇水リスク」「水害リスク」「水質リスク」「水質に関する評判リスク」を、世界各地の拠点に対して同一の基準で水リスクが評価できるAqueduct及びWater Risk Filter※の該当する指標を用いて調査しました。 ※Water Risk Filter:WWF(世界自然保護基金)とDEG(ドイツ投資開発会社)が開発した水リスク評価のグローバルツール。
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●オペレーショナルリスク 「水源別の年間取水量」や「放流先別の年間排水量」「年間売上」などの情報を収集し、相対的に評価し、その妥当性について社外コンサルタントを用いて確認しています。
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●優先拠点の特定 ポルトガルのHITは、地域の水資源や水質などに関するリスクが高く、カゴメの中で取水量・排水量が多いこと、オーストラリアのKAUは、渇水や水害による調達への悪影響があったことから、水リスクが高い拠点と特定しました。
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水リスクへの対策 ①
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水リスクへの対策 ②
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ポルトガルのHIT
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オーストラリアのKAU
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カゴメの工場で最も取水量が多く、水使用量の削減が特に重要です。2022年にタンクと回収ラインを設置し、濃縮機や殺菌機などで使用後の蒸気由来の温水を回収、タンクに貯湯しボイラー水として再利用するほか、2023年5月にはクーリングタワーを設置し冷却水の再利用を開始しており、今後さらに増設することで、取水量の削減を目指します。
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大雨リスクの高い時期を避けてトマト栽培を行うなどのリスク回避を図っています。また降水量が多い場合、粘土質土壌では収穫機が畑に入れなくなるため、排水の良い砂地の畑を使い栽培する試験を2022年に行いました。干ばつのリスクもあるため、冬に工場で使用した水をダムに貯水し、春に近隣農家に提供することで、水の再利用にも努めています。
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7 持続可能な農業
当社は創業以来、農業によってもたらされる「自然の恵み」を活かした事業活動を行っています。この事業活動を将来にわたって行っていくために、事業における様々な場面で生物多様性の保全に努めていくことを「カゴメグループ 生物多様性方針」で定め、活動を行っています。
カゴメグループ 生物多様性方針
サプライチェーンでの保全
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社内外パートナーとの協働
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1.遺伝資源の維持と利用
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8.社内外への浸透
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2.農業の環境負荷低減
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9.社外との対話
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3.農地と周辺の生態系保全
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10.情報公開
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4.調達品の環境負荷低減
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11.社会貢献
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5.輸送時の配慮
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12.根本原因への対応
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6.工場の環境負荷低減
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7.製品・サービスへの配慮
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少量多頻度灌漑に対応したAI営農アドバイスと自動灌漑制御の開発
水の使用量を削減する栽培手法として少量多頻度灌漑※が一般的に知られていますが、生産者にとっては管理が複雑で作業負荷が大きいことから普及が進んでいません。カゴメと日本電気株式会社(NEC)が設立した合弁会社「DXAS」では、2023年4月より、少量多頻度灌漑に対応したAI営農アドバイスと、作業負荷の軽減につながる自動灌漑制御機能を加えたサービスを開始し、加工用トマト市場に普及させていくことで、持
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灌漑設備と連携し、水や肥料をリモート・自動で制御
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続可能な農業に貢献していきます。 ※ 作物が必要とする量の水や肥料を多数回に分けて少しずつ与え、作物にとって最適な土壌水分量を保つ栽培手法のこと。
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野菜栽培での生物多様性保全
カゴメ野菜生活ファーム富士見に隣接する 1.2ヘクタールの畑に「生きものと共生する農場」を設置し2020年7月に公開しました。この農場は、様々な生きものが畑の周りで生活しやすい環境にする仕掛けや、害虫の天敵など、農業に役立つ生きものを畑に呼び込み、生きものの力を活かした農業を行う仕掛けを設置しています。農場では、生物多様性のモニタリング調査を行い、その結果から各仕掛けの改善や追加を行い、生きものと共生する農業を確立していきます。
生きものが畑の周りで生活しやすい環境を整備(石づみハウス、竹筒マンション)
<安心・安全な商品の提供>
「畑は第一の工場」という考え方のもと、野菜の種子や土づくりから取り組み、安全で高品質な商品の提供に努めています。これを保証する品質保証体制を確立し、海外グループ会社への展開も行っています。
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1 カゴメ品質マネジメントシステム(KQMS)
当社では、「品質第一・利益第二」という考え方があります。これは、お客様に安心・安全な品質を提供することと、利益の創出をどちらも大事にするという考え方であり、品質の向上に全社を挙げて取り組んでいます。品質を保証する体制として、国際規格ISO9001に準拠した独自の品質マネジメントシステム(Kagome Quality Management System:KQMS)を構築し、設計開発から調達・生産・物流・販売にわたる品質活動に取り組んでいます。
2 畑から商品までの安全管理
●フードディフェンスへの取り組み
国内での「意図的な異物や薬品混入」に対する備えとして、フードディフェンスに関するリスク評価を行い、評価結果に基づいて管理しています。自社工場における安心・安全カメラの設置や施錠システムの刷新、工場従業員同士のコミュニケーションの活性化のほか、委託先の工場に対しても当社の管理ガイドラインの準拠を依頼しています。
●放射性物質に対する取り組み
使用する国産の原材料については、行政による放射性物質のモニタリング状況などを確認し、必要に応じて自主検査を行い、安全性を確認しています。
●残留農薬に対する取り組み
使用する原材料は残留農薬を分析し、安全性を確認しています。試験・分析機関としての実力を判定する国際規格ISO17025の認定を取得し、分析精度のさらなる向上に取り組んでいます。
●食品安全文化醸成への取り組み
KQMSで定められたルールに対して、一人ひとりが正しい行動を取れるように、食品安全文化の醸成に取り組んでいます。製造工場では、アセスメントを実施、レビューを行うことで課題形成を進めています。
3 海外グループ会社の品質管理・品質保証体制
2016年に国際事業本部内に設定されたグローバル品質保証部門(東京)は、海外グループ会社で守るべきグループ共通の品質管理基準(Kagome Best Manufacturing Practice:KBMP)を定め、海外グループ会社に展開する活動を継続的に行っています。また、品質保証のみならず、各社で取り組んでいる環境課題や原価低減などの技術課題の成果を把握し、横断的に共有・活用することで、グループ全体の品質保証レベルや生産性の向上を推進するとともに、海外事業におけるCO2排出量の削減や水資源の保全などへも積極的に取り組んでいます。
4 海外グループ共通の品質管理基準(KBMP)の展開と監査による検証・改善
KBMPの展開では、日本の考え方をただ現地に押し付けるのではなく、グローバル品質保証会議などを通して、海外グループ会社の改善事例などを共有し合い、お互いに品質を高める意識を醸成していくことに主眼を置いています。KBMPの導入初期では、異物混入に関する考え方や技術を海外グループ会社に展開し、品質管理レベルの向上に取り組みました。続いて、商品設計由来の品質事故の未然防止活動や、品質事故が起きた場合を想定した対応マニュアルの共通ルール化を行いました。KBMPの定着によって、設計から販売に至るまでの各プロセスにおけるカゴメグループ全体の品質向上につながっています。
KBMPは既存の製造設備のみならず、新工場や新しく導入する製造設備にも設計段階から反映させています。
海外グループ会社共通の品質管理基準(KBMP)のカバーする範囲
5 具体的なグローバル品質保証活動
当社では各グループ会社の成功事例の横展開により、品質保証基盤のさらなる強化を進めています。グループ全体での品質保証会議を2年に一度開催し、2022年11月より、対面での会議を3年ぶりに再開しました。各グループ会社の経営陣や品質保証・製造責任者が集まり、品質、生産、5S、安全、サステナビリティの取り組みなどについて、事例の共有や意見交換を行っています。各グループ会社で切
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グローバル品質保証会議(未然防止トレーニング)の様子 (2022年11月、東京)
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磋琢磨しながら品質マインドを向上させるだけでなく、生産や環境などの課題や目標達成に向けた視点を揃えていくことにもつながっています。 2023年10月には、分科会の活動として、イタリアの Vegitalia S.p.A.に、ポルトガルのHITの品質・製造の責任者・担当者を招き、現場を視察しながら、意見交換を実施しました。工程管理の理解や双方からの改善提案にとどまらず、従業員の品質マインド向上のための施策について、議論を深めることができました。
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製造現場での品質交流会の様子 (2023年10月イタリア)
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<多様性の尊重・人的資本の拡充>
持続的な成長を実現するためには、多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造が不可欠です。働きがいを向上させる3つの施策と風土づくりに注力し、イノベーションの創出につなげます。
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1 「働きがい」を高め、イノベーションを創出する
持続的な成長を実現するためには、多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造が不可欠です。そのためにはカゴメで働く一人ひとりの自律的な成長が欠かせません。そして自律的な成長を促すエネルギーとなるのが「働きがい」です。
当社では、働く一人ひとりの「働きがい」向上に向けて3つの人事施策と挑戦する風土づくりに注力し、イノベーションの創出につなげていきます。
「働きがい」のモニタリング
2021年から「働きがい」をモニタリングする指標としてエンゲージメントサーベイ(「Wevox」:株式会社アトラエが提供する従業員エンゲージメント測定・支援ツール)を全従業員対象に実施しています。 エンゲージメントサーベイスコアは、2025年
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エンゲージメントサーベイスコア推移
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2021年実績
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2022年実績
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2023年実績
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2025年目標
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総合スコア
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70※1
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70
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72
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76※2
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※1:目標設定時点(2021年)での「Wevox」利用同規模企業平均スコア「69」 ※2:目標設定時点(2021年)での「Wevox」利用同規模企業上位20%スコア
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までに、同規模企業の上位20%以内の水準を達成することを目標としています。 毎年の調査結果は項目別・部門別に分析し、「働きがい」向上に向けた課題抽出と対応策を進めています。現状、部門間で総合スコアにばらつきがあり(最大差異:12point/2022年調査時点)、差異縮小に向けて部門特性や実態に沿った対応策を展開しています。
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心理的安全性の浸透
2023年は、心理的安全性を浸透させる施策として、ダイバーシティ委員会が主導した「半径5メートルを変えた事例から学ぶ~心理的に安全なチームづくり~」をテーマとした外部ゲストを招いての講演とトークセッション、日頃のちょっとした感謝の気持ちを伝えるための「サンクスバッジキャンペーン」、対話を通じたチ
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ームビルディングをサポートする「よりよいチームづくりのための対話実践プログラム」、また社長と専務が交代で参加者と率直に意見交換を行う「サークルタイム」などを実施しました。
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「心理的安全性」浸透度スコア推移
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2021年実績
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2022年実績
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2023年実績
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2025年目標
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心理的安全性
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67
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71
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72
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72
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※心理的安全性に関する社内調査スコア
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心理的安全性向上策
対象
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2023年活動
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内容
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組織向け
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よりよいチームづくりのための 対話実践プログラム
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「対話」を通じ職場やチーム内に心理的安全性浸透を図る組織開発プログラム
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役員向け
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役員向け研修
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心理的安全性に関する勉強会
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管理職向け
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選択型マネジメント研修
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管理職自身の組織づくり・人材育成課題に沿って自律的に学ぶ選択型講座を開設
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360°フィードバック
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全管理職を対象にマネジメント行動に関するフィードバックを上長・同僚・部下が毎年実施
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全従業員向け
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ダイバーシティDAY2023
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心理的に安全なチームづくりをテーマに外部ゲストを招き講演とトークセッションを開催
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サークルタイム
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経営トップと従業員とのフラットな対話の場として、社長・専務が交代でホスト役を務める
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サンクスバッジキャンペーン
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社内SNSを通じて組織内外に感謝のメッセージを伝え合う全従業員参画型キャンペーン
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3つの施策 ① 人材開発
当社が人材育成を通じて目指す姿は、「個人の多様な強みを伸ばし、チームで活かし合うことで、イノベーションを起こし、社会課題の解決に資する人材集団」となることです。人材育成を通じて「キャリア・能力の面で多様な人材集団」と「チームで成果を出す組織風土」を実現し、変化の激しい環境の中でもスピーディーに価値を生み出し続け、多くの領域でイノベーションを起こす強いカゴメを創っていきたいと考えています。
「社会課題の解決に資する人材集団」となるため、各自に期待する役割・職務行動を、役割等級の等級要件や職務行動の評価項目として明示し、それぞれの上位等級を見据えた成長につながるよう、チャレンジングな業務課題や教育機会を提供しています。個人がそれぞれの多様な強みを発見して伸ばし、一人ひとりが自律度を高めて仕事に取り組めるように、様々な気づきの場や教育機会を3つの観点(「キャリア開発」「能力開発」「組織風土開発」)から用意しています。最近では特に、個人の多様な強みをチームで活かし合い、働きがいや心理的安全性の向上に役立て、チームとして成果を出せる組織づくりに力を入れています。
また、ビジョンである「トマトの会社から、野菜の会社に」の実現に向けて「野菜マエストロ検定」や「野菜の先生」などのユニークな取り組みを実施し、従業員自らが伝道師として野菜の魅力を伝えられるように育成しています。
加えて、デジタル人材の育成にも引き続き取り組んでいます。研修や、公募型のITによる課題解決の体験などを通じ、デジタルスキルを向上させるとともに、そのスキルを業務やビジネスに適用できる人材を、2025年までに全従業員の20%まで増やす計画です。
このように、一人ひとりが会社からの要請を踏まえた成長と、自分らしさ(アイデンティティ)に基づく成長の両面を実現する状態を目指しています。
TOPICS リスキリング ~実践的なコーポレートガバナンスを学ぶ~
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従業員が自ら企画運営を担う自発型学習プログラムが、4ヶ月間全14回にわたり開催されました。これは、自身のコーポレート・ガバナンスに関する知識不足に危機感を持った一人の従業員が全社に働きかけ、企画実行したものです。社外講師1名に加え、専門領域を担当する社員講師6名が統合報告書を参考書として説明する講義と、参加者のグループワークを組み合わせ、実践的な学びが得られる設計となっています。参加費は有料でしたが、リスキリングの必要性に共感した幅広い層の従業員約270名が参加しました。事後のアンケートでは「初めて経営や財務のことを我がこととして捉えることができた」「目の前の仕事だけでなく、全社視点で物事を考えるようになった」などのコメントが寄せられました。
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最終発表会最優秀グループの皆さんと、 発案者である経営企画室 渋井寛之 (前列中央)
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3つの施策 ② 多様な人材集団
カゴメグループは、国籍・民族・人種・信条・思想・宗教・性別・性自認・性的指向・障がい・年齢・社会的身分などによって差別されることなく、従業員同士が多様な価値観を認め合い、個々の従業員が持てる能力を最大限発揮できることが大切であると考えています。
その上で、持続的に成長できる強い企業になるための経営戦略の一つとして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。組織における心理的安全性の確保を重視し、従業員一人ひとりの多様な考えや経験を活かすことで、イノベーションの創出を図ります。
女性活躍の推進においては、2040年頃までに、「社員から役員まで各職位の女性比率を50%に」することを長期ビジョンに掲げて取り組んでいます。
採用においては、多様な採用手法と配置部門の組み合わせにより、多様な人材を確保します。キャリア採用においても広く門戸を開き、当社が目指す「野菜の会社」に向けた人材基盤の強化を図ります。そして、総採用数の2~3割を確保し、中核人材へと育成していきます。
また、多様な経験や知識に応じて、能力を発揮できる機会を創出しています。シニアの活躍の場の創出として、2023年4月から、再雇用制度における契約形態を改定し、最長で70歳まで契約延長を可能としました。65歳以上のシニアの方々も様々な職場で活躍しています。
女性の総合職採用比率・従業員比率・ 管理職比率の推移(カゴメ単体)
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キャリア採用人数と、採用に占める人数の推移 (カゴメ単体+カゴメアグリフレッシュ(株)(以下、KAF))
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補足:2023年の従業員に占める女性比率は32%です。総合職新卒採用比率60%を目標として取り組みを進めていることから、若年層の女性比率は高くなっています。一方、年代が上がるにつれ採用時点の女性比率が低かったことから、年齢構成はピラミッド型の構造となっています。そのため、現状40代・50代が中心層である当社管理職に占める女性の割合は低い水準となっています。
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3つの施策 ③ 働き方の進化
働きやすい仕組みの整備 多様化する働き方の価値観(育児・介護・共働きなど)に応じた働く場所や時間の制約を緩和し、さらに多様な働き方を実現する仕組みを整備します。 働き方の選択肢の拡大 多様な経験機会を得ることでイノベーションにつなげていくために、副業制度や越境学習※など、所属組織の枠を超えた働く場の提供を進めています。現業にとらわれないキャリア開発接点を拡充していきます。
※ 越境学習: 普段勤務している会社や職場を離れ、全く異なる環境に身を置き働く体験をすることで新たな視点を得ること。
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働き方の進化に関連する環境整備
導入年度
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制度
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2019
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フレックスタイム制度
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テレワーク勤務制度
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副業制度
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2020
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フレックスタイム制度のコアタイム撤廃
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2021
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看護休暇・介護休暇の時間単位取得
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在宅勤務手当
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2023
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転居転勤支援の拡充
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リスク管理
当社は、社長を委員長としたリスクマネジメント統括委員会が、グループ全体でのリスクマネジメント活動の
統括をしており、最高人事責任者(CHO)が委員として参画しています。経営戦略に影響する人材リスクは、当
社の重点リスクとして管理し、リスクの顕在化の予防、及び顕在時の対応を行っています。
ガバナンス体制
人的資本に関わる経営陣による審議及び意思決定を伴う専門の会議体として、社内経営陣による人材開発委員会、社外取締役も委員とする報酬・指名諮問委員会を設け、多様な人材が活躍できる人材育成や社内環境、経営人材への適正な処遇を実現できるよう精査・検証しています。 人材開発委員会は、代表取締役社長を委員長とする人事・組織に関わる社内経営陣による審議・意思決定機関で、担当職から役員までの幅広い異動・配置、昇格、キャリア採用、組織改編などに関わる審議を月1回以上という高頻度で実施しています。 報酬・指名諮問委員会は、取締役及び執行役員の報酬、及び取締役の指名に関わる取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するための取締役
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会の諮問機関であり、役員人材・処遇に関わる審議を定期的に実施しています。また、当社の持続的な経営と成長をリードする次世代経営幹部の育成と輩出にも、経営主導の重要課題として計画的に取り組んでいます。 人材開発委員会による人材戦略や人事・組織の幅広い領域に関わる審議を起点として、人材開発委員会が意思決定を行うもの、経営会議でさらに審議・意思決定を行うもの、報酬・指名諮問委員会での審議を経て取締役会で意思決定を行うものと、内容の重要性や社内外への影響度合いによって、段階的に審議を重ね、適正なガバナンスを図っています。 最高人事責任者(CHO)は、人材開発委員会、報酬・指名諮問委員会の委員であり、主管として提言しています。
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指標及び目標
戦略
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指標
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2021年実績
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2022年実績
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2023年実績
|
目標
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働きがい
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エンゲージメントサーベイスコア
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70
|
70
|
72
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76 2025年までに同規模企業 上位20%スコア
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「心理的安全性」浸透度スコア※1
|
67
|
71
|
72
|
-
|
人材開発
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キャリア面談人数(人)
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610
|
645
|
561
|
-
|
成長機会スコア※2
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67
|
67
|
68
|
-
|
多様な 人材集団
|
総合職新卒採用における 女性割合
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58.0%
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71.0%
|
54.5%
|
60%以上
|
女性管理職比率
|
7.4%
|
8.4%
|
9.6%
|
2026年までに12%
|
入社10年以内女性の継続就業状況 (男性比)
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1.0
|
1.0
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1.0(見込)
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男性比1.0以上
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キャリア採用構成比
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30.8%
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27.9%
|
29.8%
|
-
|
男性育休取得率 総合職/技能職
|
総合職
|
62.0%
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75.6%
|
65.6%
|
42%以上 (2019~2021年の平均)
|
技能職
|
64.3%
|
84.6%
|
81.8%
|
-
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男女間賃金差※3 (男性の賃金に対する女性の賃金割合)
|
全労働者
|
66.2%
|
65.4%
|
68.3%
|
-
|
正社員
|
68.6%
|
67.3%
|
70.5%
|
-
|
パート・ 有期社員
|
87.8%
|
87.6%
|
86.6%
|
-
|
働き方の 進化
|
有休取得率
|
84.7%
|
86.4%
|
81.7%
|
-
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総労働時間(時間/年)
|
1,867
|
1,896
|
1,895
|
-
|
※1 心理的安全性に関する社内調査スコア
※2 エンゲージメントサーベイ内の「成長機会」に関する設問のスコア
※3 付記事項及び差異に関する補足説明については、Webサイトをご覧ください。https://www.kagome.co.jp/library/pdf/company/sustainability/data/2310esg_data_book.pdf
Special Feature
人材強化への取り組み
ブランド価値を高めるカゴメの健康経営
カゴメは食を通じた健康寿命の延伸を解決すべき社会課題の一つに掲げ、お客様の健康に貢献する商品やサービスを事業展開しています。そのため従業員が健康であることは、カゴメの事業が説得力を持つことにつながり、カゴメの「ブランド価値」を高めることにもつながります。
●健康経営推進におけるカゴメ独自の取り組み
健康経営推進にあたり、野菜飲料などの商品、食健康研究所や健康事業部、「野菜をとろうキャンペーン」などとの連携を最大限に活用できることが、他社にはない大きな強みです。また当社には「人を大切にする会社」という文化があり、健康経営はカゴメの社風そのものです。
当社は、従業員が、「明らかに」心身ともに健康であると言える状態を目指しています。それにより会社のパフォーマンス向上につながり、お客様の健康増進に貢献する商品・サービスが広がります。同時にカゴメで働く全従業員が、心身ともに健康であることが、働きがいの向上につながると考えています。
●健康経営推進体制
当社では、右記の体制図のように、経営が定める健康経営宣言を土台として、カゴメアクシス株式会社健康経営推進室・カゴメ健康保険組合・各事業所が三位一体となり活動を行っています。 カゴメ健康会議・コラボヘルス推進会議・健康推進委員会の3つの会議体を柱とし、産業保健スタッフとともに、健康課題の抽出や、健康施策の検討・実施を行っています。
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●健康経営優良法人2023(大規模法人部門 ホワイト500)に認定
2017年に「カゴメ健康7ケ条」を制定し、「カゴメ健康経営宣言」を行いました。2023年3月には、 経済産業省及び日本健康会議主催の「健康経営優良法人2023(大規模法人部門 ホワイト 500)」に認定されました。2023年12月には、株式会社日本政策投資銀行が行う「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」において、最高ランクを取得しました。これからも「健康経営優良法人認定制度」の趣旨に則り、健康経営施策を推進することで、従業員の健康と働きがいのさらなる向上を実現し、お客様の健康に貢献します。
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●目標値について
健康診断、ストレスチェック、喫煙率のそれぞれの目標値と各年度の状況は以下の数値となります。目標の達成に向けて各施策に取り組み、健康経営を推進していきます。
健康診断に関する状況 (%)
年度
|
2018
|
2019
|
2020
|
2021
|
2022
|
2023
|
2025 (目標)
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受診率
|
100
|
100
|
100
|
100
|
100
|
100
|
100
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特定保健 指導実施率
|
58.2
|
72.0
|
84.8
|
88.7
|
86.9
|
85.7
|
100
|
ストレスチェックに関する状況 (%)
年度
|
2018
|
2019
|
2020
|
2021
|
2022
|
2023
|
2025 (目標)
|
受検率
|
92.0
|
95.7
|
93.3
|
92.0
|
93.7
|
94.1
|
-
|
高ストレス者比率
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6.3
|
7.4
|
7.6
|
8.3
|
7.9
|
7.0
|
安定的に8.0
|
喫煙率
年度
|
2018
|
2019
|
2020
|
2021
|
2022
|
2023
|
2025 (目標)
|
喫煙率
|
23.1
|
20.8
|
19.5
|
16.1
|
15.1
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14.3
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12.0
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野菜をとろう、カゴメ社員も!
当社では、従業員の心身の健康のため1日350gの野菜摂取を推奨しています。そのための指標として、従業員自身のベジチェック値※の測定を習慣化させることで、野菜摂取に対する行動変容を促しています。測定された従業員のベジチェック値は、専用アプリを使って社内データベースに集約、自動集計され、組織別の測定の割合やベジチェック値の推移などを確認できるサイトを2023年に社内に公開しました。併せて、従業員が自身の野菜摂取について意識し、摂取量を向上させるために「チーム対抗!ベジ選手権®」を毎年実施しています。期間中は、毎日の野菜量を専用アプリに入力し、 チームで野菜摂取量を競い合っています。 ※ 野菜摂取量の推定値を30秒で測れる「ベジチェック®」を使った測定値
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「チーム対抗!ベジ選手権」アプリ
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「野菜をとろう、私たちも」見える化サイト
担当者メッセージ
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カゴメの特徴を活かした施策で健康経営に貢献します カゴメの従業員は、オフィスで自社商品である野菜飲料を毎日飲むことができます。従業員が自身の野菜摂取について意識し、摂取量を増加させるための社内キャンペーンも定期的に開催しています。対象従業員の約9割がこのキャンペーンに参加し、野菜摂取量も確実に増えています。当社が健康経営の推進を宣言してから5年が経ち、取り組みも年々進化してきました。健康診断結果におけるハイリスク者への事後対応の徹底、就業時間内禁煙・全社敷地内喫煙所廃止、適正体重の維持を目的としたウォーキングキャンペーンの実施など、健康経営に積極的に取り組んでいます。今後もカゴメの特徴を活かした様々な施策により健康経営に貢献していきたいと思います。
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カゴメアクシス株式会社 健康経営推進室 秋山 恭子
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<人権の尊重>
カゴメグループは、人権に関する国際規範に基づいた、 「カゴメグループ人権方針」を策定し、その考え方や活動の社内浸透に努めるとともに、事業における人権リスクへの対応を進めています。
人権に対する考え方
事業活動に関わる人々や、事業を展開する国や地域の人々の基本的人権を尊重することは、企業理念を実践するカゴメグループの責務と考えます。当社では、人権尊重の責任を果たしていくための指針として「カゴメグループ人権方針」を制定し、本方針に基づき活動を推進していきます。本方針は、経営会議で承認され、取締役会でも報告されています。
カゴメグループ人権方針
基本的な考え方
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私たちは、本方針をカゴメ行動規範を補完する方針として位置づけ、併せて以下の国際規範を支持・尊重します。 ●「 国際人権章典」 ●「 労働における基本的原則および権利に関するILO 宣言」「ILO 多国籍企業宣言」 ●「 OECD 多国籍企業行動指針」 ●「 子どもの権利とビジネス原則」 私たちは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を人権デューデリジェンスの実行の枠組みとして、事業活動を行うすべての国や地域で適用される法令を遵守します。万一、国際的に認められた人権と各国の地域の法令との間に矛盾がある場合は、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求します。
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適用範囲
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本方針は、カゴメグループのすべての役員および従業員に適用します。また、私たちは、事業活動における人権尊重の責任を果たすにあたり、カゴメグループの製品・サービスに関係するすべてのビジネスパートナーに対しても、本方針を理解・支持いただくとともに、人権を尊重するように働きかけ、協働して人権尊重を推進します。
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ステークホルダーの人権尊重
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私たちは、事業活動全体において、直接または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識し、カゴメグループの事業活動に関わるステークホルダーの人権を尊重します。 ●職場環境の整備 安全で衛生的かつ健康的に働き続けられる職場環境を整備します。 ●適正な賃金支払いおよび労働時間の管理 法令に従い、適正な賃金の支払いと労働時間の管理を行います。 ●労働基本権の尊重 結社の自由と団体交渉をはじめとする労働基本権を尊重します。 ●強制労働・児童労働の禁止 強制労働や児童労働、人身取引を含むあらゆる形態の現代奴隷を行いません。 ●差別・ハラスメントの禁止 国籍・民族・人種・信条・思想・宗教・性別・性自認・性的指向・障がい・年齢・社会的身分等を根拠とする、あらゆる差別を排除し、個人の尊厳を傷つけるハラスメント行為を行いません。 ●個人情報の適切な取り扱いとプライバシーの尊重 個人情報の保護に関する法令を遵守し、個人情報の適切な取り扱いに努めるとともに、プライバシーを尊重します。
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人権デューデリジェンス
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人権デューデリジェンスの実施を通じて、自らが社会に与える人権に対する負の影響を特定し、その防止、または軽減に取り組みます。
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救済
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コンプライアンス連絡・通報窓口の運用により、人権に対する負の影響の早期発見および未然防止に努めます。自らの事業活動が人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはそれを助長したことが明らかとなった場合、適切な手続きを通じて、その救済に取り組みます。
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対話・協議
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本方針を実行する過程において、独立した外部からの人権に関する専門知識を活用し、ステークホルダーとの対話と協議を真摯に行います。
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教育・研修
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本方針がすべての事業活動に組み込まれ、効果的に実施されるように、役員および従業員に対して適切な教育と研修を行います。
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情報開示
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人権尊重の取り組み、および人権デューデリジェンスの実施状況について、ウェブサイトや統合報告書等のコミュニケーション手段を通じて、定期的に報告します。
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人権デューデリジェンスの実施
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を実行の枠組みと捉え、「カゴメグループ人権方針」に基づき、事業活動における人権への負の影響の特定・評価を行い、評価結果に基づく適切な対応策、モニタリング、並びに情報開示に取り組んでいます。 また、人権を尊重した持続的な事業活動の実現に向けて、社内外のステークホルダーとの対話・協議を通じて、これらの一連のプロセスを継続的に推進できる体制を構築していきます。
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2 カゴメ CSR調達方針
安心・安全な原材料の調達はもとより、ビジネスパートナーである調達先とともに持続可能な社会の実現に貢献するために、「カゴメ CSR調達方針」を制定しています。本方針では、公正・公平・透明な取引を実践し、法令・倫理の遵守や人権・労働、環境へ配慮した調達活動の推進を定めています。
「カゴメ CSR調達指針」の詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/sustainable-supply-chain/01/
3 カゴメ サプライヤーCSR行動指針
「カゴメ CSR調達方針」を推進していく上で、調達先と協働していくことが重要と考え、国内外の調達先に対して具体的事項である「カゴメ サプライヤーCSR行動指針」を制定しています。本行動指針は、人権の尊重、適切な労働環境の確保、環境への配慮など、国際的重要性が認められている項目で構成されています。「カゴメ サプライヤーCSR行動指針」の遵守に向けて、説明会などを通した調達先への周知や、セルフチェックシートを活用した調達先の自己チェックや現地訪問を行い、理解・浸透に努め、CSR調達活動の実効性をより一層高めています。
「カゴメ サプライヤーCSR行動指針」の詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/library/company/csr/supplier/pdf/supplier_csr_guidelines.pdf
4 社内の啓発活動
「カゴメグループ人権方針」や人権尊重に対する理解を深めるため、従業員を対象とした「ビジネスと人権」をテーマとする公開講座、役員やサステナビリティ委員会メンバーを対象とした社外の人権有識者による勉強会の開催などをその施策としています。これらの施策を継続的に実施することで、「カゴメグループ人権方針」の浸透や人権リスク低減のための取り組みを進めており、直近においては、右記を実施しています。
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2023年度 ●「カゴメグループ人権方針」の役員、従業員への周知 ●「 ビジネスと人権」、「カゴメグループ人権方針」をテーマとした社内公開講座実施(2回) ●サステナビリティ委員会での社外の人権有識者による勉強会実施(1回)
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担当者メッセージ
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継続的に人権リスクの評価・対応を進めていきます これまで当社では行動規範の中で人権の尊重を掲げていましたが、国際的な人権の潮流に対応していくべく、今回、新たに人権方針を策定しました。 企業の人権尊重の責任は、人権に関する法令、ガイドラインの動きを背景として、その重要性が増しています。幅広いバリューチェーンを持つカゴメにとって、事業活動に関わるあらゆるステークホルダーの人権を尊重することは、事業継続や企業価値を高めていく上では不可欠な要素であると言えます。 今後は、社内外のネットワークを活用して、継続的にカゴメの事業における人権リスクの評価・対応を進め、環境の取り組みと併せて、広くバリューチェーン全体の最適化を図っていきたいと考えます。
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経営企画室 サステナビリティグループ 石井 僚一
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<持続可能なサプライチェーンの構築>
持続的にお客様に商品を届け続けるために、気候変動、水不足、労働力不足、原材料高騰などのリスクに対し、サプライチェーン全体の最適化に取り組んでいます。
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1 サプライチェーンを途切れさせない、カゴメ特有の物流環境
自然の恵みを原材料とした商品をお届けするカゴメにとって、世界中の畑からの原材料輸送に始まり、お客様の食卓に至るまで、モノの流れを止めないことは、事業継続に必要不可欠です。カゴメのサプライチェーンの特徴を図解します。
調達拠点
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工場
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物流センター
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得意先
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世界中から農作物を 集める
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生産地に近く、 消費地から遠い
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1,000を超える商品 複数の温度帯
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多様な販売チャネル
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カゴメグループは世界中に調達拠点を持っています。海外の調達拠点から送り出された原材料は、長い道のりを経て日本に到着し、国内工場に運ばれます。そして、工場で生産された商品は、工場から出荷された後、物流倉庫、卸先、小売店と、たくさんの人の手を経て、お客様に届けられます。このサプライチェーンの長さは、大きな特徴です。
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国内の工場は、加工用トマトの産地の近くに建設されてきました。この立地は「畑は第一の工場」というものづくりの思想を持つ、カゴメの考え方が背景にあります。物流においては高速道路のICや主要幹線道路まで距離があることで、工場から消費地までの輸送距離が、他の食品メーカーに比べて長くなっています。
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カゴメには1,000を超える商品があり、温度帯は調味料やPETボトル飲料などの常温、ホームパック飲料や乳酸菌飲料などの冷蔵、業務用商品などの冷凍と、3つにわたります。温度帯ごとに保管場所や輸送方法、そこに携わる人員が必要になり、マネジメントも複雑です。幅広いアイテムを展開することは、カゴメの強みであると同時に、物流においては管理が広範囲となっています。
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多様化した販売チャネルも、大きな特徴の一つです。DtoCと呼ばれる通販においては、卸や小売店を経由せずに流通しております。お届け先に合わせた最適な物流ルートをSCM本部が企画し、常にアップデートしてF‐LINE株式会社※を通じて配送しています。 ※ F-LINE(株): 2019年4月に食品メーカー5社共同による効率的で安定的な物流体制の実現を目的に設立した共同物流会社です。食品物流の諸課題の解決に向けて、食品メーカー協働での取り組みを進めています。
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<CASE>サプライネットワーク構想の具現化
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調達・生産・荷造り・輸配送の効率化、最適化 コスト上昇が見込まれる物流の効率化は、大きな経営課題となっています。工場から得意先までの輸配送に加えて、原材料の調達先も含めて物流の川上から川下まで一元的に在庫を把握し、輸配送の効率化、最適化を進める「サプライネットワーク構想」の具現化に取り組んでいきます。
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「2024年問題」※への対応について
※ 2024年4月から働き方改革関連法施行により自動車運転業務の時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制等が適用され、ドライバー不足などにより、これまでと同じように物を運ぶことが難しくなるおそれがあります。
1 工場との連携 現場の声を聞き、細かく見直し
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当社の物流企画部は、工場とF-LINE株式会社の協力を得て、コスト増やドライバー不足、待機時間削減などの問題解決に取り組んでいます。例えば、上野工場では、作業導線や保管ロケーションの見直し、ネステナー(パレットに載せたまま収納できる棚)の追加導入によって、場内保管物量を拡大しました。外部倉庫での保管費用削減に加え、工場から外部倉庫までのトラック使用台数の平準化も進めることができ、安定的な輸送網の確保につながっています。工場敷地内の物理的な制約がある中でも、現場の創意・工夫によって改善を続け、「選ばれる荷主」を目指して前進しています。
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2 営業との連携 納品先の理解と協力を求めて
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ドライバーの働き方の適正化に向けて取り組むべき課題の一つに、「納品時の長時間待機と付帯作業の撤廃」があります。これには、納品先である得意先の理解と協力が必要です。これに対して、需要対応部ではF-LINE株式会社からの改善要望をもとに、課題のある納品先をリスト化しました。その情報を営業部門と共有し、対象の得意先に対して、改善に向けた協力をお願いしています。特に、2024年以降も安定して商品を運ぶ体制を維持していくためには、ドライバーの労働時間の短縮が必須であり、法令遵守に向けて協働して課題解決する必要があることを、営業担当者から丁寧に説明しています。
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3 F-LINEの取り組み 北海道地区の共同配送を再構築
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北海道は、消費地が広範囲にわたり分散しており、かつ物流センターから各地への配送距離が長いことから、他の地区以上に物流効率化が求められます。それに対応するために、当社を含む食品メーカーで協働し、2016年から共同配送を行っています。2023年10月、さらなる改善を目指し、2ヶ所あった物流センターを1ヶ所に集約しました。物流拠点が1ヶ所になることで、配送車両1台当たりの積載効率が高まり、配送件数を約21%減らすことができます。それによってCO2排出量も約16%削減できると見込まれ、環境面においてもメリットが生まれます。
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担当者メッセージ
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持続可能な物流を目指し、選ばれる荷主へ 物流企画部では、サプライチェーンの川上から川下に商品を安定的にお届けするための物流基盤を設計しています。生産部門と連携した取り組みは4年目となり、全ての工場に展開され、作業性の向上・保管スペースの創出、BCP体制の構築など新たな業務改善を生み出しています。 2024年は働き方改革関連法によりドライバー労働時間に上限が課され、今まで通りにモノが運べなくなるなど、物流面で大きな転機を迎えます(2024年問題)。これまでもモーダルシフトをはじめとした輸送の複線化や食品メーカーとの共同配送など、持続可能な体制づくりに取り組んできました。しかし、物流部門だけでは解決できない課題も多く、全社一丸となって物流危機に立ち向かい、運送会社から「選ばれる荷主」を目指します。また、「2024年問題」を過去からの課題を解決するチャンスと捉え、さらなる効率化・止まらない物流の実現への足掛かりとしたいと考えています。
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物流企画部 水野 律
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3 【事業等のリスク】
(1) リスクマネジメントの基本方針
私たちは、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」として、あらゆるステークホルダーの期待にお応えできる企業になることを目指しています。そのためには、当社で働く従業員一人ひとりが法令の遵守はもちろんのこと、高い倫理観を持って社会的責任を果たすことが大切であると考えています。また、企業理念・行動規範に基づき倫理観ある行動を果たすことはもちろん、企業を取り巻く様々なリスクに対して、企業理念・行動規範に基づき適切に対応することが重要です。
具体的には、戦略リスク、社会・環境リスク、重要な業務執行におけるオペレーショナルリスクについて、経営会議や取締役会などの経営機関でこれを評価・検討します。また、その他の業務執行におけるオペレーショナルリスクについては「カゴメグループリスクマネジメント方針」に従い、各組織によって課題化しています。さらには、職務権限規程にて、全ての階層の管理職が、それぞれの所轄する業務範囲において、リスクマネジメントの実行と監督を行うことを定めています。なお、当社のリスクマネジメントにおいて、リスクとは「当社の事業に対して不利な影響を与える不確実性」と定義しています。
カゴメグループリスクマネジメント方針 私たちは「トマトの会社から、野菜の会社に」のビジョンのもと、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」になることで、社会的責任を果たしていきたいと考えています。そのために、常に変化する外的環境及び事業上発生しうる様々なリスクを的確に把握・評価し、適切な対応をとってまいります。 また、重大事案が発生した場合に備え、被害の拡大防止と損害・損失の極小化を可能とする体制を確立するなどリスクに対する対応力を高めてまいります。
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(2) リスクマネジメント体制
当社では、3ラインモデルの考え方に基づくリスクマネジメント体制を整備しています。
① リスクマネジメント統括委員会
リスクマネジメント統括委員会は社長を委員長とし、CROを委員会事務局長とするグループ全体でのリスクマネジメント活動の統括組織です。経営戦略を踏まえた統合的視点から、第1のラインと第2のラインを統括し、全社でのリスクマネジメント活動のPDCAサイクルの実現に向けて、各ラインの取り組みをモニタリングします。
② 第1のラインと第2のライン
第1のラインは、自らが担当する業務についてのリスクの抽出・評価を行い、その対応のためのアクションプランを作成し取り組みます。工場、支店、国内外の子会社、これら部門などで個別具体的な業務に従事する担当者一人ひとりが位置付けられます。 第2のラインは、担当するリスク領域におけるリスクマネジメント活動の基本方針・手続きを定めます。また、第1のラインに対するモニタリングや助言などを通じて、第1のラインにおいてリスクマネジメント活動が適切になされていることを確認します。第2のラインは、営業推進部や生産部などの営業や生産の統括部門、財務経理部などの本社間接部門です。また、CROは、これらの第2のライン全体を統括します。
第1のラインで抽出・評価されたリスクは、第2のラインで集約及びグループ全体の経営の視点からの統合を行い、取締役会をはじめとする経営機関に報告されます。
第1のラインと第2のラインは協働して、リスクの抽出・評価を行い、全社レベルでのリスクマネジメント活動のPDCAサイクルを実現します。
③ 第3のライン
第1のラインと第2のラインにおけるリスクマネジメント活動に対して、第3のラインを担う内部監査室は、独立した立場から、客観的な保証を提供します。内部監査室は、独立性を確保しつつも、主にリスクマネジメント統括委員会と連携し、経営戦略やこれに基づく第1のラインと第2のラインにおけるリスクマネジメント活動の基本方針などを共有することによって、実効的かつ効率的に監査を実施します。
また、内部監査室による監査指摘事項は、監査対象部署とともに、リスクマネジメント統括委員会にも共有されます。リスクマネジメント統括委員会は、共有された監査指摘事項のグループ全体のリスクマネジメント活動における課題としての位置付けを整理します。その上で、グループ全体での統合的なリスクの追加または評価の修正を行うとともに、対象部署における改善活動に対する助言提供などを行います。
詳細については、Webサイトをご覧ください。 https://www.kagome.co.jp/company/ir/data/statutory/
(3) リスクマネジメント活動
当社におけるリスクマネジメント活動は、リスクの顕在化の予防及び顕在化したリスクへの対応のための活動を主な内容とします。リスクの顕在化の予防と、顕在化したリスクへの対応のための取り組みいずれについても、具体的な活動は、経営計画や事業目標を踏まえたリスクマネジメント活動のPDCAサイクルに基づき実施されます。
① リスクの顕在化の予防
ア. 基本枠組み
当社は、リスクの性質・内容を踏まえた適切な管理を実現するため、企業活動に関するリスクを次の3つに分類しています。
●戦略リスク
中長期的な経営戦略を踏まえ、重大な影響が認められるものとして当社が指定するリスク
●社会・環境リスク
社会・経済環境や自然災害などの外部要因によるリスクのうち、特に顕在化した場合には不可抗力であると一般的に認識されるもの
●オペレーショナルリスク
戦略リスク、社会・環境リスクを除く全てのリスク
以上3つのリスクの分類を基礎として、リスクの企業経営への影響度に鑑み、個別に認識されたリスクを次の2つのリスクに区別します。
●「会社の重点リスク課題」の対象となるリスク
戦略リスク、社会・環境リスク、オペレーショナルリスクのうち、企業経営への影響が大きいと評価されるものです。経営会議やリスクマネジメント統括委員会がリスクマネジメント活動のPDCAサイクルを管理します。さらに、取締役会へも報告がなされます。
●「各組織のリスク課題」の対象となるリスク
「会社の重点リスク課題」以外のリスクです。各組織がリスクオーナーとなり、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを実施します。
イ. 2024年度の「会社の重点リスク課題」
当社は、次のリスクを「会社の重点リスク課題」の対象となるリスクと認識し、重点的な管理活動の対象としています。リスクの性質・内容を踏まえた適切な管理を実現するため、戦略リスク、社会・環境リスク、オペレーショナルリスクの3つに分類し開示しています。
リスク 分類
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重点リスク課題
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主管組織、報告会議体 等
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主管組織
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報告会議体(頻度)
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備考(報告内容等)
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戦 略
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①経営戦略 ・予実乖離の発生による利益の悪化 ・新規事業、M&Aの失敗や遅れによる業績悪化や収益機会の喪失 ・保有資産の価値下落による収益性の悪化や財政状態への影響
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■予実:経営企画室、財務経理部 ■新規事業:投資委員会 ■保有資産:財務経理部
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取締役会(毎月) 経営会議(年1回) 取締役会、経営会議(年1回、適宜)
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・事業戦略の成長に当たっての進捗管理等 ・投資委員会での定期的モニタリング内容等 ・政策保有株式の状況、減損検討対象となる固定資産の報告等
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②人材戦略 ・成長分野、新規事業、海外事業領域拡大に対する人材不足 ・特定の専門領域(DX、財務経理等)の人材不足 ・ダイバシティ&インクルージョンに関する目標未達
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■人材開発委員会 ■CHO、人事部
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人材開発委員会(適宜) 経営会議(適宜)
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・中期経営計画実現に向けて必要な人材の質(スキル)と量(人数) ・人材不足の業務領域を改善するための採用、育成、キャリア形成などの人事施策 ・人材育成とダイバシティに関するKPIについて現状と今後の課題
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③適正なガバナンス体制の構築 ・取締役会および監査等委員会の実効性の不備 ・経営者による内部統制の無効化
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■取締役会 ■監査等委員会
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取締役会(年1回) 監査等委員会(適宜)
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・第3者によるアセスメント等
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社 会 ・ 環 境
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④消費者・広報 ・不適切な広告や顧客対応の失敗による訴訟や不買運動、ブランドイメージの棄損
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■客相、経営企画室(広報グループ)
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リスクマネジメント委員会(隔月)
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・不満、苦情件数、ネガティブ報道のモニタリング内容等
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⑤社会情勢・顧客ニーズ ・日本国内における景気の後退や需要の減少または消費者ニーズの対応の遅れによる売上の減少
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■マーケティング本部、営業本部
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商品企画会議(適宜)
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・競合環境や消費者動向の分析。支店別、カテゴリー別の売上動向等
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⑥金融市場 ・為替変動や金利変動による資金調達コストの増加や資金繰りの悪化
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■財務経理部
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取締役会(四半期毎)
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・リスクヘッジ取引とモニタリング内容等
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⑦天災・不可抗力 ・地震等の災害、感染症や紛争等による、工場操業やその他事業の停止(BCP) ・異常気象による、原材料の滞り
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■BCP:リスクマネジメント委員会事務局 ■異常気象:野菜事業部、調達部
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経営会議(年1回) 執行役員会(適宜)
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・BCP活動の進捗等 ・主要原材料のシーズン毎の調達進捗 ・その他原材料の調達戦略課題等
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リスク 分類
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重点リスク課題
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主管組織、報告会議体 等
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主管組織
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報告会議体(頻度)
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備考(報告内容等)
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オ ペ レ ❘ シ ョ ン
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⑧情報管理・サイバーセキュリティ ・サイバー攻撃等によるサーバーへの不正アクセスや、不適切な情報管理による個人情報や社外秘情報の漏洩
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■情報セキュリティ委員会
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リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・PCウイルス感染、IT機器紛失、外部攻撃件数のモニタリング内容等
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⑨安全・衛生 ・職場における労働災害、長時間労働、感染症等の発生による従業員の健康被害
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■安全衛生委員会
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リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・労災、感染症等発生状況のモニタリング内容等
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⑩製品・サービスの安全性 ・異物混入、表示の誤り、品質検査の不備、種子の異品種コンタミ、非食品に関する品質検査の不備等による、品質不良品の出荷や健康被害および賠償責任に係る費用の発生の可能性
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■品質保証部、野菜事業部(種子)
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品質保証委員会、リスクマネジメント統括委員会(毎月、隔月)
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・不適合/重大品質事故の発生件数、内容等
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⑪サプライチェーン (調達、生産、運輸物流) ・突発的な需要増や、種子・原料不足等による原材料の不足 ・自動倉庫、物流システムの障害等による生産や出荷の滞り ・物流業界の労務管理の厳格化等に起因する輸送能力低下による製品供給の不安定化
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■野菜事業部、生産調達本部、SCM本部
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執行役員会(隔月) 経営会議(隔月)
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・課題進捗等 ・突発的な事象の発生について
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⑫法令・規則違反、規制 ・重大な法令、規則違反(会社法、税法、金商法、東証ルール等) ・食品安全関連規制違反、個人の不正行為や関係会社の不祥事 ・環境問題(GHGガス排出量削減、水資源問題、プラスチック問題等)への対応の遅れによる、株主や投資家からの否定的な評価 ・当社およびサプライチェーン等の取引先における人権問題(強制労働、ハラスメント等)の発生による、社会的信頼の低下
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■会社法、金商法等:財務経理部 ■食品安全法関連:品質保証部 ■不正行為:コンプライアンス委員会 ■環境:品質保証部 ■人権:経営企画室(サステナビリティG)、法務部
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取締役会(四半期毎) 品質保証委員会、リスクマネジメント統括委員会(毎月、隔月) コンプライアンス委員会、リスクマネジメント統括委員会(隔月) 経営会議(年2回) サステナビリティ委員会(適宜) コンプライアンス委員会、リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・法令・規則違反のモニタリング内容等 ・法改正情報、対応等 ・不正行為のモニタリング内容等 ・環境マネジメントレビュー等 ・人権方針の策定、人権デュー・ディリジェンスの進捗等 ・ホットライン通報内容等
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② 顕在化したリスクへの対応
ア. 基本骨子
当社では、リスク顕在化事象に対して実効的かつ効率的に対応するため、その影響度の評価に基づきリスク顕在化事象を分類し、事業継続計画やその他のリスク顕在化に応じた対応計画の整備を進めています。
イ. 事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)
当社では、今後想定されるいくつかの個別的な緊急事態におけるシナリオを想定し、事業継続計画を作成しています。
事業継続計画は、事業を単位として作成されることが一般的です。しかし、当社においては、複数の事業間でバリューチェーンが重複または近似していることから、重要な商品及び機能を単位として事業継続計画を作成しています。
重要な商品とともにカゴメの事業継続計画において単位となっている重要な機能は、調達、サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)、財務経理及び広報の4機能です。調達及びサプライチェーンマネジメントは、食品メーカーとして生産活動を行うための不可欠な機能です。また、財務経理は、自社の企業としての存続、サプライチェーンの維持、従業員の生活の確保、その他の企業における事業としての生産活動を行うための基盤となる機能です。そして、広報は、当社の企業理念の一つである「開かれた企業」に照らして重要と考えている機能です。社内外のステークホルダーに対する説明責任を果たすことは、とりわけ緊急時において強く求められるところであり、広報はそのための不可欠な機能と考えられるためです。
こうした事業継続計画により、緊急時においてもカゴメの事業活動を継続し、または停止からの速やかな復旧を行い、企業価値の保全を図ります。
ウ. その他のリスク顕在化への対応のための取り組み
現在、当社では、事業継続計画を含む個別的なリスクの顕在化への対応計画の整備を行うとともに、内閣府より公表されている「事業継続ガイドライン」に準拠しつつ、これら個別的な対応計画の体系的整理を行い、統合的な対応計画の作成に取り組んでいます。こうした取り組みに際しては、その過程においてカゴメグループ内部での関係者の主体的関与を確保するとともに、適宜、外部専門家からの支援を受けています。また、机上訓練やシミュレーション(予行演習)などを通じた対応計画の定期的な見直しを行うなどのPDCAサイクルを確立し、リスク顕在化への対応力の向上を図ります。
<事例>リスク顕在化への対応のための取り組み
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当社では、万一リスク事象が顕在化した場合に備え、事業継続計画の整備を進めています。その際重要なことは、絵に描いた餅とならないよう立案した計画を効率的で実効性のあるものとすることです。そのためには、事業継続計画の整備→訓練の実施→実施結果に基づく検証→事業継続計画への反映のPDCAサイクルを確立することが大切だと考えています。この考えのもと、2023年は前年に整備した重要商品及び4機能(調達、サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply ChainManagement)、財務経理及び広報)の事業継続計画の有効性確認を目的に作成計画を用いた机上訓練を行いました。併せて、効果的な訓練のあり方についても検証しました。具体的には、発生確率が高くその影響が広範囲かつ長期にわたるとされる南海トラフ地震が発生した前提で訓練を行いました。訓練は災害発生時の初動対応のみとはせず、地震発生直後・地震発生3日後(初動対応が一定完了する時期)・地震発生7日後(社会インフラが復旧し始め、詳細な被害情報が集まり始める時期)の3局面における状況変化を想定し、各局面ごとに事業継続計画が機能するかについての検証を行いました。訓練を通して得られた結果は、今後各事業計画に反映し高度化を図るとともに今後の訓練計画自体にも活かし、リスク顕在化時の対応力向上を目指します。
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東京本社の訓練の様子
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小坂井工場の訓練の様子
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4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(重要な会計方針及び見積り)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」における「3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(1) CFO/CROメッセージ
<Q1> 2023年度の業績を振り返りをお願いします。
売上収益は、前年度比+9.3%となりました。全ての事業にて増収となりましたが、特に国際事業において、外食需要の高まりからトマト加工品を中心とした需要が好調であったこと、コスト上昇分の販売価格への転嫁が進められたこと、円安により邦貨への換算額が増加したことなどが要因となりました。
事業利益は、前年度比+52.1%となりました。国内加工食品事業において、原材料やエネルギーの価格高騰などの大幅なコスト上昇があったものの、価格改定に加え、原価低減に積極的に取り組んだことにより、当初見込んでいた前年度からの減益幅を縮めることができました。また、国際事業の事業利益が売上収益同様、大きく増加しました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度比+14.4%となりました。事業利益からの減少要因は、国内農事業において、固定資産の減損損失を計上したことによります。国内農事業は販売価格が市況の影響を大きく受ける構造です。今後のコスト上昇に対し、それを販売価格へ十分に反映できるかが不透明であると判断したことが主な理由です。
事業環境の急激な変化がありましたが、2023年度は増収増益となり、株主様への配当も当初の目標を上回る形で実施することができました。
また、こうした業績を背景に、ROIC※は13.2%と1.7point改善しました。これは、大幅な利益の増加が主因です。他方、投下資本においては、棚卸資産が前年度末比+176億円と大きく増加しました。これは、原材料価格の上昇などによるものです。原材料価格の上昇に対しては、販売価格への反映と原価低減努力により、投下資本と利益の循環が健全に保たれていると考えています。
※ROIC=カゴメROICのこと。EBITDA÷投下資本で算出。
<Q2> 財務戦略について第3次中期経営計画前半の振り返りをお願いします。
当社グループは、成長投資と株主還元を両立することを財務戦略の基本方針としています。持続的な成長を支え、大きな変化に耐えるためには、財務基盤の安定維持が重要だと考えています。
第3次中期経営計画の前半である2022~2023年度は、事業環境が大きく変化する中で、業績面では売上収益・事業利益とも当初の中期経営計画目標を上回ることができました。これは、国際事業が想定を上回るスピードで業績を伸ばしたことによるものです。他方、国内加工食品事業においては原材料などの急激なコスト上昇に対して販売価格の見直しを図りました。当初は販売数量の減少がありましたが、2023年第4四半期では概ね前年度水準まで販売数量が回復しています。
同期間におけるキャッシュ・フローは下記の通りです。
区分
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2022~2023年度
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営業キャッシュ・フロー
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92億円
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投資キャッシュ・フロー
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△155億円
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財務キャッシュ・フロー
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101億円
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●営業キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローは92億円の純収入となりました。利益は順調に推移したものの、棚卸資産の増加によるキャッシュの減少が2年間で223億円あったことが主な要因です。
●投資キャッシュ・フロー
投資キャッシュ・フローは155億円の純支出となりました。これは営業キャッシュ・フロー悪化への対応として、不要不急の設備投資を控えたことなどによります。
●財務キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フローは101億円の純収入となりました。これは主に2024年度以降の資金需要に対応するために、借入を行ったことによります。
財務指標は、自己資本比率は49.8%、信用格付はシングルAとなっています。自己資本比率は、第3次中期経営計画の方針を若干下回りましたが、引き続き財務基盤は安定していると考えています。資本効率はROEが8.3%となりました。これは国内農事業における固定資産の減損による一時的な損失が影響しており、それを除くと目標とする9%の水準を達成しています。また株主還元は、前年度より1株当たり3円の増配を行うことができました。
目的
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指標
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2022年度実績
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2023年度実績
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第3次中期経営計画方針
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財務基盤の安定
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自己資本比率
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52.8%
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49.8%
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50%以上
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信用格付
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シングルA
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シングルA
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シングルAの維持
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資本効率を重視した成長
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ROE
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7.7%
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8.3%
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9%以上
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安定的な利益還元
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総還元性向※
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-
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40%以上
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※ 1株当たり配当額実績:2022年度38円、2023年度41円
<Q3> 第3次中期経営計画期間後半における財務目標について教えてください。
第3次中期経営計画期間の後半となる2024~2025年度は、「国内事業の利益回復」「国際事業の成長加速」を基本方針とし、売上収益3,000億円、事業利益240億円を目標とします。これは2022年度に掲げた当初の目標を大きく上回るものとなります。
特に、インオーガニック成長については、2024年1月に持分法適用関連会社であるIngomarの出資持分を追加取得し、連結子会社化しました。これにより売上収益にて約500億円程度の増分を見込んでいます。なお、同社持分の追加取得約360億円は当社の事業投資として過去最大となります。本投資に必要となる資金は、一時的には借入金にて調達します。その結果、自己資本比率は50%を下回りますが、同社からの利益や自己株式の処分により第3次中期経営計画期間内に同借入金の返済を予定しており、50%を回復する見込みです。
これらを踏まえ 2025年度における財務指標は、基本方針を上回る見込みです。財務基盤の安定を維持するとともに資本効率を重視した成長を図ります。また、2024年度の配当は1株当たり10円の記念配当を加えた52円を見込むなど、中期経営計画期間における総還元性向40%以上を堅持しつつ、事業成長を反映した利益還元を実施していきます。
<Q4> ROIC管理に取り組む意義について教えて下さい。
当社は資本効率を高める取り組みとして、全社でのROIC管理を行っており、企業価値最大化を図る上でROEの向上を目指しています。
当社の財務構造において、ROE9%以上を達成するためには、ROIC11~12%を達成する必要があります。その観点から、事業別に、目指すべきROIC目標を設定し、KPIの設定と達成に向けたPDCAが図られるように仕組み化しています。
今後もこのPDCAを継続・進化させ、従業員一人ひとりの意識・行動につなげることで、資本効率の向上、企業価値の最大化を図っていきます。
<Q5> リスクマネジメントに対するアプローチについて教えてください。
第3次中期経営計画期間におけるアクションの一つとして、当社は「グループ経営基盤の強化と挑戦する風土の醸成」を掲げています。リスクマネジメントは、この経営基盤を支える柱になると考えています。
当社のリスクマネジメントに対する取り組みは、会社の重点リスク課題から各組織のリスク課題までを、経営層から従業員一人ひとりに至るまで、それぞれが我がこととして取り組めるよう仕組み化しています。
先に掲げた定量目標を達成するためには、環境変化により生じる多様なリスクを、それぞれの立場で的確に把握し、適切な対応を図ることが重要だと考えています。
(2) 経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次の通りであります。
① 売上収益
売上収益は、2,247億30百万円となり、前連結会計年度の2,056億18百万円に比べ、191億12百万円の増加(9.3%増)となりました。
国内加工食品事業は、主要原材料をはじめとする売上原価の大幅な上昇を受け、野菜飲料やトマト調味料など一部製品の出荷価格を改定しました。改定後、需要の落ち込みがあったものの、食品カテゴリーや業務用カテゴリーの販売が好調であったことにより増収となりました。国際事業においても、トマトペーストの販売価格の上昇、フードサービス企業向けの販売が好調であったことにより、増収となりました。
② 事業利益
事業利益は、194億76百万円となり、前連結会計年度の128億8百万円に比べ、66億67百万円の増加(52.1%増)となりました。
国内加工食品事業は、原材料価格の高騰などにより減益となりましたが、国際事業において増収による影響の他、持分法適用会社であるIngomarの利益が増加したことにより、増益となりました。
③ 営業利益
営業利益は、174億72百万円となり、前連結会計年度の127億57百万円に比べ、47億15百万円の増加(37.0%増)となりました。
国内農事業において、気象条件に伴う生鮮トマト市況の不確実性やエネルギー、肥料の価格高騰によるコスト上昇等を総合的に勘案した結果、固定資産の減損損失を計上したものの、事業利益の増益に伴い増益となりました。
④ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、104億32百万円となり、前連結会計年度の91億16百万円に比べ13億16百万円の増加(14.4%増)となりました。
世界的な金利上昇を受け、支払利息が増加したことなどにより、営業利益と比べて増益幅は縮小しました。
以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比9.3%増の2,247億30百万円、事業利益は前期比52.1%増の194億76百万円、営業利益は前期比37.0%増の174億72百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比14.4%増の104億32百万円となりました。
セグメント別の業績は、次の通りであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称
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売上収益
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事業利益(△は損失)
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前連結会計年度
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当連結会計年度
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増減
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前連結会計年度
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当連結会計年度
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増減
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飲料
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75,907
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75,446
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△461
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6,798
|
6,903
|
105
|
通販
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13,578
|
13,130
|
△448
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1,528
|
664
|
△863
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食品他
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48,481
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53,596
|
5,114
|
2,202
|
2,800
|
598
|
国内加工食品事業 計
|
137,968
|
142,173
|
4,204
|
10,528
|
10,369
|
△159
|
国内農事業
|
9,582
|
10,110
|
527
|
449
|
115
|
△333
|
国際事業
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67,830
|
85,208
|
17,377
|
3,608
|
11,130
|
7,521
|
その他
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2,221
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2,481
|
260
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△91
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△106
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△15
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調整額
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△11,984
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△15,242
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△3,258
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△1,686
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△2,032
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△346
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合計
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205,618
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224,730
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19,112
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12,808
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19,476
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6,667
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各セグメントの概要及び成果については以下の通りです。
<国内加工食品事業>
国内加工食品事業では、飲料や調味料等の製造・販売を手掛けております。
当事業における売上収益は、前期比3.0%増の1,421億73百万円、事業利益は、前期比1.5%減の103億69百万円となりました。
① 概要
トマト、にんじん、その他の多様な野菜を使用した野菜飲料や食品などの商品を展開しています。お子様からご高齢の方まで、幅広い世代の方々に、日常生活の様々な場面においてご利用いただくことで、野菜の摂取量を増やし、健康寿命の延伸に貢献します。
SWOT分析
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STRENGTH 強み
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WEAKNESS 弱み
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■ 原材料調達における、海外ネットワーク力と、品質保証力 ■ 120年を超える歴史で培われたブランド力 ■ 素材の力を活かした機能性研究、商品開発力 ■ 多様な販路と、顧客に応じた商品提案力
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■ 環境変化へ対応できるバリューチェーンの柔軟性 ■ 幅広いカテゴリー対応維持のための資源分散 ■ コモディティ市場における価格競争力 ■ 若年層への浸透
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OPPORTUNITY 機会
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THREAT 脅威
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■ 健康、安心・安全意識のさらなる向上 ■ 環境、社会貢献意識の向上を通じた購買行動の多様化 ■ 生活者との新たな情報、購買接点の拡大 ■ デジタル技術によるイノベーションの創出
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■ 為替、市況変動に伴う原材料価格の上昇 ■ 健康関連商品の多様化による相対的な既存領域でのポジション低下 ■ 機能性研究の進化による異業種からの競合参入 ■ 日本国内における人口減少、高齢化による市場の縮小
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② 2023年度の概要(成果・課題)
成果
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課題
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野菜飲料においては、市場が停滞する中、積極的な新商品の投入及び需要創造活動の展開により当社のシェアは過去最高値を更新しています。食品においても、日本一食べたくなるオムライスを決める全国大会「カゴメオムライススタジアム® 2023」の開催をはじめ、洋食・トマトメニューの需要喚起などを行った結果、トマトメニューの食卓出現率は過去最高値となりました。結果として、売上収益は、増収となりました。
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野菜飲料の市場活性化がカテゴリーリーダー企業としての最大の責務であると認識しています。新しい価格が受容されるよう、広告投資も含めた需要喚起策を積極的に展開します。また、ナトカリバランス※の訴求やベジチェック®を利用した生活者の野菜摂取の行動変容、食育活動の強化によるファン化促進を併せて進めていきます。 ※ ナトカリバランス:食事から摂るナトリウム・カリウムのバランス
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③ 2024年度に向けた戦略
野菜飲料の需要回復に向けて、ユーザー数の維持拡大に全力で取り組みます。特に、これまで野菜飲料の飲用経験がなかった新規顧客の獲得に再注力します。2023年度に実施した彩りあざやかな「野菜の色」を野菜飲料の独自価値と捉えたコミュニケーション「GoVivid(あざやかに、生きよう。)」により、野菜飲料の新たな飲用者の獲得と、習慣飲用化の兆しも見えてきました。2024年度はこの活動をさらに拡大・加速させていきます。 食品は、「カゴメトマトケチャップ」による、食卓をよりおいしく、より楽しくする新提案として、トマトケチャップを油で炒めるだけでより濃厚でコク深い味わいが楽しめる新感覚の調理法「焼きケチャップ」の訴求をさらに強化することで差別化を図るとともに、洋食・トマトメニューの出現機会の促進を図ります。 業務用は、不採算商品の見直しなどの構造改革と並行し、特に付加価値が高く、伸長の著しい各種野菜ピューレーやオニオンソテーなどの冷凍野菜素材の拡大に尽力します。 2024年度も主要原材料であるトマトをはじめとした農産原料価格の上昇は続きます。価格改定の影響による販売数量の減少を最小限に抑制し、新しい価格の定着に向けた需要喚起策を併せて行うことで、売上・利益の最大化に引き続き取り組んでいきます。
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マーケティング本部長メッセージ
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「Farm」からファンベースドマーケティングを進展 私は、「Farm」をとても大切なものと考えています。「畑は第一の工場」として、価値を創出する場であるとともに、体験型の野菜のテーマパーク「カゴメ野菜生活ファーム」や、各営業拠点に設置されている野菜と暮らす楽しさを提供する「カゴメキッチンファーム」といった、お客様と価値をともに作り、感動体験を共有する場として、「Farm」を捉えています。この「Farm」と「Table」をつなげるだけではなく、「Life」という領域まで価値をつなげることはできないだろうか、と考えています。まだ道半ばではありますが、この考え方を昇華させ、ファンベースドマーケティングを進展させる力にしたいと思います。また、企業の持続的成長に向けて、マーケティング人材並びに組織外との連携・新規事業への参画などの強化を進めます。これら一連の活動を通して、全社マーケティングの強化及び挑戦する組織風土の醸成を図っていきます。
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執行役員マーケティング本部長 兼 デジタルマーケティング部長 稲垣 慶一
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<国内農事業>
農事業では、主に生鮮トマト、ベビーリーフ等の生産・販売を手掛けております。
当事業の売上収益は、前期比5.5%増の101億10百万円、事業利益は前期比74.2%減の1億15百万円となりました。
① 概要
生鮮トマトやベビーリーフなどの生鮮野菜の生産・販売を中心に「野菜の会社」を体現すべく事業活動を進めています。生産から消費までのバリューチェーンの高度化を図り、安定的な収益を獲得するとともに、日本の「農業振興」と「健康寿命の延伸」などの社会課題解決に貢献します。
SWOT分析
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STRENGTH 強み
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WEAKNESS 弱み
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■ 生鮮トマトでのナショナルブランドの確立 ■ トマトの高度な品種開発力、生産調達力、マーケティング力 ■ 自社営業網・物流網による周年供給力と配荷力 ■ 農事業に関する専門スキル(知識・技術)を持った人材
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■ 生鮮トマト特有の市況影響による収益ボラティリティ ■ 生鮮トマトのコモディティ市場における価格競争力の低下 ■ 労働集約型の施設園芸分野における生産自動化の遅れ ■ トマト、ベビーリーフ以外の野菜の品種、産地、流通などの生産基盤の不足
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OPPORTUNITY 機会
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THREAT 脅威
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■ ロボット・AI・IoTを活用したスマート農業や環境制御機器にAIを搭載した技術開発が進展 ■ 生鮮野菜の販売チャネルの多点化と健康志向の高まり ■ 農業分野でのESG投資やSDGsなどへの関心の高まり ■ 園芸に関心のある潜在的な生活者・企業の存在
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■ 大型温室の増加による競争激化への対応 ■ 人件費、エネルギー費、資材費、物流費などのさらなる上昇への対応 ■ 気候変動による栽培適地の減少や新たな病害虫の発生への対応
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② 2023年度の概要(成果・課題)
成果
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課題
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売上収益は、生鮮トマトの取扱量の増加、積極的な需要喚起策の実行などにより、増収となりました。事業利益は、余剰期の需給バランス悪化による販売単価下落、エネルギー価格や肥料価格の上昇などにより、減益となりました。 主な取り組みとして、従来の健康訴求に加えて美容需要を喚起するプロモーションを積極的に展開しました。それにより、「高リコピントマト」「高GABAトマト」などの高付加価値商品の販売構成を順調に上げることができました。「高GABAトマト」は、冬春作と夏秋作の組み合わせによって、通年販売ができるようになりました。
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資材費・エネルギー費・人件費上昇による生産コスト圧迫、気象環境に伴う生鮮トマトの調達量の変動などの外部環境悪化に対し、収益力強化が課題です。商品容量変更や全国の生産拠点再編による需給バランス適正化などに取り組みます。また、コンビニエンスストアなどに対して、サンドイッチ・惣菜への「高リコピントマト」使用メニューの提案を強化します。
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③ 2024年度に向けた戦略
主力の生鮮トマトは、「健康付加価値型トマト」という独自ポジションの確立を目指します。美容需要の獲得によりお客様層が広がった「高リコピントマト」を中心に、ミニ系商品である「高β‐カロテントマト」と「ビタミンCトマト」の販売を拡大して、商品ラインナップを強化します。利益面では、急激な資材費上昇などの外部環境変化へ迅速に対応して持続的に利益を創出するため、生産から販売までサプライチェーン全体で原価低減と効率化を進めます。AI(人工知能による深層学習機能)の活用場面を、収量予測だけでなく、トマト温室の環境(温度・湿度・
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生鮮トマトを栽培する大型ガラス温室
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CO2濃度など)制御や販売施策などの領域にも拡大し、収益力強化に結びつけていきます。 洗浄済みベビーリーフは、健康・簡便食材としてのトライアル拡大と、生鮮トマトとの連動販売を積極的に進めます。新たに取り組んでいる生鮮野菜(紫たまねぎなど)も含めて、青果売場で「彩り」をテーマとした売場活性化を図り、毎日の食卓を豊かにする取り組みを進めます。 ホームセンターで一般家庭向けにトマト苗などを販売する家庭園芸では、人気が定着した「薄皮トマト苗」のシリーズ化や、トマト以外の野菜苗の拡充により、年間を通じた売場提案を行います。通販・企業向けの提案など、新たな商品・接点開発を進めるとともに、デジタルツールを活用した園芸需要のさらなる掘り起こしに取り組みます。 環境面では、省エネやCO2排出量削減など、地球環境に配慮した新技術の探索・実証に向けた取り組みを進めていきます。
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カゴメアグリフレッシュ㈱社長メッセージ
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「生鮮野菜の生産から消費までのバリューチェーン」の高度化を推進 「先進的で持続可能な農ビジネスモデルを構築し、日本の農業をアグレッシブにリフレッシュする!」ことを目指して価値創造を進めます。そして、生活者の多様化する健康ニーズとライフスタイルにお応えするとともに、生産・流通・消費の各段階で環境負荷低減にも取り組みます。そのためには、社内外の経営資源を最大限活用し、品種開発力・技術力・調達力・営業力の各領域の力をより高め、競争力の源泉である「生鮮野菜の生産から消費までのバリューチェーン」の高度化を推進します。 中長期的な価値創造のためには、「人材」が経営資源の中で最も重要と捉えています。農事業の高い専門性とともに、「長期的な時間軸で、時代の変化とともに自ら変革を続ける力」を有する人材の育成に注力します。専門性が高い人材の採用、教育体制の整備、ローテーションや協働機会の創出・活性化などの人材マネジメントに戦略的に取り組みます。これにより、経営資源の有効活用、なくてはならない農事業としての独自性の確立、付加価値の高い商品やサービス提供による顧客満足度の向上、将来を見据えた社会課題の解決につなげていきます。 景気変動や市場変化の予測が困難な経営環境ではありますが、事業を持続的に成長させることを通して、社会からの期待に応えていきます。
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カゴメアグリフレッシュ株式会社 代表取締役社長 羽布津 真典
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<国際事業>
国際事業では、種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売まで垂直統合型ビジネスを展開しております。
当事業における売上収益は、前期比25.6%増の852億8百万円、事業利益は、前期比208.4%増の111億30百万円となりました。
① 概要
国際事業は、農業生産、加工、販売事業などを展開しています。加工はトマトペーストなどを製造する一次加工と、トマトペーストを原材料としてトマトソース、ピザソースなどを製造する二次加工に大別されます。国際事業の主な顧客は調味料メーカーや外食企業などで、米国、欧州、オーストラリアなどでBtoBビジネスを展開しています。
SWOT分析
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STRENGTH 強み
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WEAKNESS 弱み
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■ フードサービス企業に向けたメニュー提案によるソリューション力 ■ グローバルに展開するグループ会社によるトマト原材料の安定した供給力 ■ グループ会社共通の品質管理基準の展開による品質力とESG課題の推進
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■ トマトペースト市況の変動に伴う収益ボラティリティ ■ 購入額の大きい特定顧客への依存度の高さ ■ BtoCにおけるブランド認知の不足
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OPPORTUNITY 機会
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THREAT 脅威
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■ 米国やインドなどを中心とした、フードサービス市場の成長ポテンシャル ■ 原材料となる加工用トマトの効率向上技術に対するニーズの高まり ■ 原価・運営コスト高騰に伴うフードサービス企業からのソリューションニーズの高まり
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■ トマトペースト市況下落による収益の悪化 ■ 異常気象などの天候リスクによる事業活動への影響 ■ サプライチェーンの分断による原材料・製品供給不足 ■ 各国拠点の従業員の確保難、労務費の高騰
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② 2023年度の概要(成果・課題)
成果
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課題
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米国を中心に展開するKIUSは、堅調な米国の外食需要を背景に、フードサービス企業向けの販売が好調に推移しました。また、ポルトガルのHITをはじめとしたトマト一次加工も、世界のトマトペーストの市況高の影響もあり、増収に大きく寄与しました。KAUは、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したものの、2022年10月に発生した洪水被害の影響によりトマトペーストの生産量が減少しました。事業利益は、原材料やエネルギー価格の高騰があったものの、各社で価格改定を実施したほか、円安の影響もあり、増益となりました。
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世界的なインフレに対しては、生産性向上や固定費削減を進めるほか、価格改定を実施して利益を確保していきます。一次加工、二次加工ともに原材料価格や人件費などが上昇しており、価格への転嫁を進めます。中長期的には気候変動の影響を受ける加工用トマトや一次加工品の確保が課題であり、サプライチェーンの強化が必要です。
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③ 2024年度に向けた戦略
国際事業は、主要顧客であるフードサービス企業のグローバル展開や、サプライチェーン上のリスクなどを鑑み、これまで以上に各グループ会社の連携を強めて事業の拡大を加速させるため、2023年10月から国際事業本部をカンパニー制(カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー)に移行しました。この体制により、主に3点の取り組みを進めていきます。1点目は、バリューチェーンにおける連携強化です。バリューチェーンの川上における生産調達や品質保証だけでなく、マーケティングやソリューション営業活動などの川下との連携も強化し、各国で市場が拡大しているグローバルフードサービス企業向けの提案力を高めていくことで、売上成長につなげていきます。2点目は、ガバナンスの再構築です。カンパニー経営会議のもと、意思決定の速度を上げるとともに、リスクマネジメントや業務生産性向上などの課題に取り組みます。3点目はグローバル人材の育成です。海外で活躍できる人材の獲得や育成は国際事業の成長における喫緊の課題です。カンパニー制となることで、組織や人員体制をカンパニー全体で最適化することや、育成プログラムを確立するなど、国際事業全体でのグローバル人材の育成を図ります。
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カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー CEOミーティングの様子
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世界トマト連携会議にて、グループ会社のトマト加工品を試食する様子
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カゴメ・フード・インターナショナルプレジデント メッセージ
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グローバル最適視点で成長を加速 カゴメ・フード・インターナショナルカンパニーは、海外現地法人のCEOも参加し、グローバル最適視点で機動的に意思決定を行い、迅速に執行するための新たな会議体を設置しました。第3次中期経営計画前半の個社収益構造改革で実現した安定基盤をてこに成長を加速させていくことが狙いです。成長ドライバーである二次加工領域においては、各市場における成長機会や顧客ニーズをタイムリーに掌握・共有し、新たな商品やソリューションを連携体制で開発し展開していきます。また、各市場における活動を支える農・原材料基盤や組織インフラの整備、効率的な生産を可能にするための投資も同時に進めます。カゴメの経営における海外事業の比重が高まる中で、グローバル経営の前進は必須ですが、それを可能にする最重要基盤は人材です。企業理念や行動指針を共有するグローバルチームの総力を結集し、持続的成長を実現する体制を構築します。
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執行役員カゴメ・フード・インターナショナルカンパニープレジデント 兼 グローバルトマト事業部長 江端 徳人
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なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末は、資産合計につきましては、前期末に比べ402億76百万円増加いたしました。
流動資産につきましては、前期末に比べ362億89百万円増加いたしました。
これは、主に原材料価格の高騰などにより「棚卸資産」が176億32百万円、有利子負債の増加などにより「現金及び現金同等物」が146億20百万円、好調な販売などにより「営業債権及びその他の債権」が29億39百万円、円安によるデリバティブ資産の時価増加などにより「その他の金融資産」が13億77百万円、それぞれ増加したことによります。
非流動資産につきましては、前期末に比べ39億87百万円増加いたしました。
これは、主に円安によるデリバティブ資産の時価増加などにより「その他の金融資産」が41億20百万円、当社子会社であるKIUSの持分法適用会社であるIngomarの利益が増加したことなどにより「持分法で会計処理されている投資」が21億58百万円、それぞれ増加したことによります。なお、「繰延税金資産」はデリバティブの時価評価により11億16百万円減少いたしました。
負債につきましては、前期末に比べ256億33百万円増加いたしました。
これは、主に運転資金の増加に伴い「借入金」が152億71百万円、また当社における資金調達等に伴い「長期借入金」が55億65百万円、それぞれ増加したことによります。
資本につきましては、前期末に比べ146億43百万円増加いたしました。これは、「利益剰余金」が配当により32億76百万円減少した一方で、「親会社の所有者に帰属する当期利益」により104億32百万円増加、「その他の資本の構成要素」が主に主要通貨に対する円安が進行したことにより純額で58億19百万円増加したことによります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は49.8%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,535円90銭となりました。
(4)連結キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、360億10百万円となり、前期末に比べ146億20百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、46億17百万円の純収入(前期は46億35百万円の純収入)となりました。この主要因は、税引前利益が164億89百万円となったこと、減価償却費及び償却費が82億49百万円となったこと(以上、キャッシュの純収入)、棚卸資産の増加により147億80百万円、法人所得税等の支払いにより42億71百万円支出したこと(以上、キャッシュの純支出)によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、60億56百万円の純支出(前期は94億57百万円の純支出)となりました。この主要因は、有形固定資産及び無形資産の取得(投資不動産含む)により64億26百万円支出(前期は98億78百万円支出)したことによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、156億26百万円の純収入(前期は55億12百万円の純支出)となりました。この主要因は、配当金の支払いにより32億77百万円支出があったものの、長期借入金による収入103億87百万円、短期借入金の純増減額92億9百万円の収入があったことによります。
(生産、受注及び販売の状況)
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
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金額(百万円)
|
前期比(%)
|
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飲料
|
38,690
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7.4
|
|
通販
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691
|
△4.6
|
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食品他
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19,439
|
7.1
|
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国内加工食品事業 計
|
58,820
|
7.1
|
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国内農事業
|
2,957
|
4.4
|
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国際事業
|
64,990
|
12.9
|
|
その他
|
173
|
△30.3
|
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合計
|
126,942
|
9.9
|
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(注) 1 金額は製造原価によっております。
2 金額は消費税等を含めておりません。
b. 受注状況
主要製品の受注生産は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
|
金額(百万円)
|
構成比(%)
|
前期比(%)
|
|
飲料
|
外部顧客に対するもの
|
75,446
|
|
△0.6
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
75,446
|
33.6
|
△0.6
|
通販
|
外部顧客に対するもの
|
13,130
|
|
△3.3
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
13,130
|
5.8
|
△3.3
|
食品他
|
外部顧客に対するもの
|
53,596
|
|
10.5
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
53,596
|
23.8
|
10.5
|
国内加工食品事業 計
|
外部顧客に対するもの
|
142,173
|
|
3.0
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
142,173
|
63.2
|
3.0
|
国内農事業
|
外部顧客に対するもの
|
10,106
|
|
5.6
|
セグメント間取引
|
3
|
|
△66.5
|
計
|
10,110
|
4.5
|
5.5
|
その他
|
外部顧客に対するもの
|
2,421
|
|
18.9
|
セグメント間取引
|
60
|
|
△67.6
|
計
|
2,481
|
1.1
|
11.7
|
国際事業
|
外部顧客に対するもの
|
70,029
|
|
25.0
|
セグメント間取引
|
15,178
|
|
28.8
|
計
|
85,208
|
37.9
|
25.6
|
調整額
|
△15,242
|
△6.7
|
27.2
|
連結売上収益
|
224,730
|
100.0
|
9.3
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(注) 1 各セグメント間のセグメント売上収益を消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
|
前連結会計年度
|
当連結会計年度
|
金額(百万円)
|
割合(%)
|
金額(百万円)
|
割合(%)
|
株式会社日本アクセス
|
32,375
|
15.7
|
32,020
|
14.2
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5 【経営上の重要な契約等】
(Ingomarの持分追加取得(連結子会社化)等)
当社は、2024年1月26日開催の取締役会において、全額出資子会社 KAGOME USA HOLDINGS INC. (以下、KUH)を通じて、当社グループの持分法適用関連会社である米国Ingomarの持分を追加取得することを決定し、同日付でIngomarを連結子会社化しました。
あわせて同日付で自己株式処分に係る発行登録をしております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(34.重要な後発事象)」をご参照ください。
6 【研究開発活動】
当連結会計年度の研究開発費の総額は、4,296百万円であります。なお、当社の研究開発費用は、報告セグメント別に区分することが困難であるため、総額で記載しております。
当社は2023年10月1日付の組織改定において、イノベーション本部を発展的に解消・再編成し、「食健康研究所」と「グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター」を新設しました。
食健康研究所は、日本のみならず、世界中の人々のWell-Beingを実現するため、野菜や植物性食品の持つ可能性を様々な角度から検証してまいります。
主な研究分野
・行動変容研究
健康寿命の延伸や野菜摂取の行動変容に繋がる仕組みづくり・創出の研究、社外研究機関と連携した野菜摂取に関する行動変容研究 など
・機能性研究
国内外の商品やサービス、素材の栄養・機能価値に関するエビデンスの取得、食における野菜摂取が健康寿命の延伸に寄与することを示すエビデンスの取得 など
・事業貢献
一般社団法人ナトカリ普及協会との当社事業の支援、機能性表示食品の商品化に向けたエビデンス強化、行動変容コンテンツによる国内外における事業支援、野菜に関する情報の発信・普及と海外研究機関との共同研究 など
地球温暖化に伴う異常気象の発生や、海外の人口増加を受け、世界的な農産原料の安定生産が中長期的な重要な課題です。特にトマトにおいては近年世界的に需給が逼迫しており、長期的にも気候変動の影響を受ける可能性が高いことが想定されます。
グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターは、中長期的な原材料の確保と、持続的な農業の確立を目指し、川上の新品種の開発と育種、アグリテックなど栽培技術の開発に、人材等の資源を集中的に投下してまいります。今後はグローバルで通用する技術開発と新規事業創造を進め、「低環境負荷トマト・野菜のプラットフォーマー」を目指します。