文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、ステークホルダーの皆様との対話をより一層深め、技術で未来を支えていく決意を込め、新たな企業理念として「KOKUSAI ELECTRIC Way」を制定いたしました。この企業理念の実現に向け、半導体製造装置専業メーカーとして社会的責任を強く自覚し、事業活動とESGの取り組み(環境・社会課題の解決、ガバナンスの強化)の両側面から経済価値及び環境・社会価値を追求することにより、SDGsの達成に寄与するとともに、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展の両立をめざしてまいります。
(2)経営戦略
当社グループは、半導体製造プロセスの前工程における「成膜」工程に注力しており、バッチ成膜装置、トリートメント装置で世界トップクラスのシェアを有しております。近年、半導体デバイス構造の複雑化、三次元化によってウェーハの表面が複雑な形状になり、高品質な薄膜等を形成するにはより高度な技術が必要とされております。これに対して当社グループは、難易度の高い成膜と高い生産性を両立するバッチ成膜技術や、高い生産性を維持しつつ形成された薄膜の膜質を改善するトリートメント技術を生かした高付加価値製品の販売拡大や研究開発に注力し、事業拡大を図ってまいります。また、装置のライフサイクル全体にわたって、メンテナンスや修理、部品供給、移設・改造などお客様のニーズに合わせたサービスの拡充を図ってまいります。加えて、今後の需要拡大に対応するための生産体制及び開発体制の拡充、DXを活用した生産効率向上、グループ全体でのESGの取り組みにも注力してまいります。
(3)経営環境
当社グループの事業を含む半導体製造装置市場は、電子機器への搭載が拡大している半導体の需要の影響を大きく受けます。前提となる半導体デバイス市場の規模は、2010年の約3,000億ドルに対し、12年後の2022年には約6,100億ドルと2倍以上へ拡大しており、2023年から2027年まで年平均成長率9.7%で成長することが予想されております(出所:TechInsights Inc. Semiconductor Forecast (December 2023))。拡大の背景には、パソコンやスマートフォンといった電子機器の拡大やAI、IoT、DXの拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等の産業向けへの需要拡大、主要国による産業支援策があります。また、世界経済が、新型コロナウイルス感染症の感染蔓延による影響を受けている中で、コロナ禍に伴うテレワークの導入拡大、高速通信規格「5G」の拡大によって、2020年以降半導体デバイス市場は大幅な拡大を続けてきました。その環境の中、2022年にはロシア・ウクライナ問題、上海ロックダウンなどから急速に世界経済停滞(エネルギー高騰、インフレ、金利上昇など)が始まり、好調だったパソコン、スマートフォンの需要が減退して、メモリーデバイス(DRAM、NAND)中心に半導体市況に減速感が生じ、一転して下方調整局面に向かいました。2023年に入り、不透明な経済環境を受けてスマートフォンやパソコン等の電子機器の需要が引き続き低調に推移しているものの、半導体デバイスの在庫調整が進んでおり、メモリーデバイス単価の上昇も見られ始めたことから、市況が底を打ったとの見方をしております。本書提出日現在、2024年後半から2025年にかけてメモリーデバイスの需要が本格回復する予測も見られ、中長期的には、技術革新の継続・加速により、2027年に向けて再び成長基調へ進んでいくものと期待されております(出所:TechInsights Inc. IC MANUFACTURING EQUIPMENT MARKET HISTORY AND FORECAST (2018 - 2028) (December 2023))。
半導体デバイスのグローバル市場規模・予想(単位:十億ドル)
2010年 |
2022年 |
2023年(予想) |
2027年(予想) |
296.7 |
613.9 |
550.0 |
797.2 |
出所:TechInsights Inc. Semiconductor Forecast (December 2023)
半導体製造装置市場も半導体デバイス市場同様に2020年から2021年にかけて大幅な拡大を続けてきました。2022年夏以降半導体の需要減速を受けて、半導体装置市場も旺盛だった投資計画にメモリーの見直し修正が先行し、先端ロジック、ファンダリーの投資計画も見直しが生じております。また、米国輸出管理規則の改正に伴い、対中国特定顧客への米国製装置の納入禁止及び日本の輸出規則の省令改正(2023年5月26日公布)の影響懸念などの環境も加わり、2023年の半導体製造装置市場は、2019年以来のマイナス成長になる予測となっております。しかしながら、一時的に調整期間には入るものの、引き続きIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新は続き半導体デバイス市場の需要は回復して、半導体の微細化や複雑化が進む中で高品質・高性能な半導体製造装置が要求されるようになることへの予測には変更はないと考えております。半導体製造装置市場は2010年の約300億ドルに対し、12年後の2022年には約980億ドルと3倍以上へ拡大しており、2023年から2027年まで年平均成長率7.1%で成長することが予想されております(出所:TechInsights Inc. IC MANUFACTURING EQUIPMENT MARKET HISTORY AND FORECAST (2018 - 2028) (December 2023))。
半導体製造装置のグローバル市場規模・予想(単位:十億ドル)
2010年 |
2022年 |
2023年(予想) |
2027年(予想) |
30.4 |
97.7 |
98.0 |
128.8 |
出所:TechInsights Inc. IC MANUFACTURING EQUIPMENT MARKET HISTORY AND FORECAST (2018 - 2028) (December 2023)
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要低下を受けて、メモリーを中心に半導体デバイスの需要が停滞しており、また、米国政府による先端半導体関連製品の対中国輸出規制強化の影響もあり、半導体デバイスメーカーでは投資計画の先送りや抑制の動きが見られます。一方、自動車EV化等の加速により成熟品に対する半導体デバイスメーカーの投資は活発化しており、メモリーを中心とした半導体デバイスの在庫調整が進んでおります。また、AI、IoT、DXの拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は中長期的に大きな成長が見込まれます。
こうした状況をふまえ、2024年3月期における当社グループは、前述の経営戦略に基づき、今後の需要拡大に対応するための生産体制及び開発体制の拡充、DXを活用した生産効率向上、グループ全体でのESGの取り組みとして、下記の重点施策を推進しております。
① 新技術・新製品の研究開発、新ドメインの確立
半導体デバイスの進化とお客様のニーズに応えるため、新技術・新製品の開発を推進いたします。半導体デバイスの複雑化・三次元化への対応に加え、新技術の開発についてもスピード感を持って推進いたします。
② 装置ビジネスにおける付加価値の最大化
NAND分野で評価されている製品・技術をLogic、DRAM分野へと展開し、より付加価値の高い製品を提供することにより、事業の拡大と高収益化を推進いたします。
③ 生産・開発体制の拡充、生産効率の向上
中長期的な需要増加を見据え、富山県砺波市に2024年秋までの竣工をめざして砺波事業所を新設しております。この砺波事業所では、SX(Smart Transformation)を最大限活用することにより、生産効率が高く環境に優しい事業所をめざしております。この生産能力の拡充に合わせて、富山事業所の開発能力を拡充するとともに、韓国拠点のデモ評価エリアを拡張することにより、開発体制の拡充を図ってまいります。
④ サービスビジネスのさらなる拡大
部品販売・メンテナンスをはじめ、製品のライフサイクル全体でお客様のニーズに対応するサービスを提供するため、グループ全体でのサービスビジネス運営の強化を推進し、さらなる事業拡大をめざしてまいります。
⑤ グループガバナンスの定着・推進
グループ会社社長の現地人化を推進し、2023年6月末までに全てのグループ会社で現地人社長が就任しており、グループ全体でコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスの取り組みを継続的に強化してまいります。
⑥ 新たなスコープでのDX化の推進
業務基幹システムの刷新を含むDX化に関して、開発のスコープを絞りつつ、早期グローバル展開も視野に入れ、より現実的で事業運営に寄与できるDXプロジェクトを推進してまいります。
⑦ グループ全体でのサステナビリティ経営の実現
新しい企業理念である“KOKUSAI ELECTRIC Way”のもと、グループ全体でサステナビリティ経営レベルを高度化していくフェーズに移行し、より一層、企業の社会的責任を自覚しながら事業とESGの両側面での取り組みを強化してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、永続的な経営の確立に必要な企業の成長性、収益性を測定するため、売上収益、市場シェア、営業利益率、調整後営業利益、調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期(四半期)利益を重要な経営指標として位置付けております。当該指標を重視する理由について、売上収益は事業成長の目安となること、市場シェアは市場動向と当社ポジショニングを把握した上で戦略を立案すること、営業利益率は売上の増加割合に対して収益性が悪化していないかを確認する目安となるためであります。また、調整後営業利益、調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期(四半期)利益につきましては、経営成績の推移を把握するために以下の算式により算出しております。
① 調整後営業利益 = 営業利益(IFRS)- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く)
② 調整後EBITDA = 調整後営業利益 + 企業結合により識別した無形資産等の償却を除く減価償却費及び償却費
③ 調整後当期(四半期)利益 = 当期(四半期)利益- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) - 持分法で処理されている投資の売却益 + ファイナンシング関連費用 + その他の金融費用 + 調整項目に対する税金調整額 - 税率変更に伴う一時的な税金費用の調整額
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業活動を通じて社会の信頼・期待に応えていくことが企業の社会的責任であると考えております。
当社グループのサステナビリティ経営は、この社会的責任を強く自覚した上で、事業活動とESGの取り組み(環境・社会課題の解決、ガバナンスの強化)の両側面から経済価値及び環境・社会価値を追求することにより、SDGsの達成に寄与するとともに、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展の両立をめざすものです。
当社グループでは、サステナビリティ経営の推進にあたり、企業理念の見直し、マテリアリティ(重要取り組み課題)の特定、専門会議体の設置、国際的イニシアティブへの参画などにより、活動基盤を強化しております。
(1)ガバナンス
当社はサステナビリティ活動を牽引する専門の会議体として、社長執行役員を委員長としたサステナビリティ委員会を取締役会の下部組織として設置しております。サステナビリティ委員会は、さまざまな社会課題、事業課題に対応するために必要な専門性をもった委員で構成しております。委員会の審議事項は、マテリアリティ、外部の要求事項、外部コンサルタント等の意見等を考慮しながら決定しております。委員会を中心としたサステナビリティ活動の状況は、社内に周知するとともに、四半期に1回、取締役会に報告しております。
(2)戦略
当社グループでは、SDGs達成への貢献と当社グループの持続的な発展の両立をめざすため、重点的に取り組む課題としてマテリアリティを特定しております。国際的に要求されている事項や、当社グループのサステナビリティ経営課題から、マテリアリティ候補を抽出・整理し、ステークホルダーの皆様と当社グループのそれぞれにとって重要度の高い項目をマトリクス評価により絞り込んでおります。これらの重要項目は、取締役会において自社の取り組みや戦略との整合性を確認の上、特定しております。
特定した5つのマテリアリティから、重点テーマ、さらには活動アイテムへと具体化し、KPIを定めて進捗管理しており、その状況はサステナビリティ委員会や取締役会でフォローアップしております。
マテリアリティの特定プロセスや、社内推進活動の状況は、積極的に社内外に公表し、ステークホルダーの皆様との対話を促進していきたいと考えております。
(3)リスク管理
当社では、抽出したリスクごとに事業継続への影響度や対策の実効性をレビューする他、社会情勢や事業環境の変化に伴い発生する新たなリスクを抽出していくため、全部門で定期的なリスクアセスメントを実施しております。リスクアセスメントの結果は、サステナビリティ委員会で審議し、その状況について取締役会に報告する体制としており、リスク対策と事業継続計画を万全なものとするため、継続して強化に努めております。
(主なリスクと対策)
No. |
リスク分類 |
想定する内容 |
リスクに対する取り組み |
1 |
政治・経済 |
各国・地域の経済、産業、安全保障等の政策影響による事業活動への制約発生 |
・各国・地域の政策に関する情報の注視 ・各種制約を想定した販売、生産、輸出入、サービス等に関する代替策・分業の事前検討 |
2 |
感染症の 世界的流行 |
社内クラスターの発生や他の国・地域への渡航 制限等による事業活動の停滞 |
・社長を議長とする対策会議の運営 ・各事業所における感染予防対策の徹底 ・事業活動への制限を想定した代替策検討 |
3 |
市場ニーズ |
市況の長期的な低迷、又は需要の急変動(増減)に追随できないことにより業績が低迷 |
・市場・お客様動向の把握 ・役員会議等での定期レビュー、対策検討 |
4 |
製品・品質 |
製品欠陥に起因したお客様製品不良、安全・環境事故の発生による信頼の低下 |
・不具合の原因究明、再発防止活動徹底 ・製品安全設計や製品品質向上策の推進 |
5 |
知的財産 |
・第三者による当社グループ知的財産権侵害 ・第三者の知的財産権侵害 |
知的財産戦略部門を中心とした各部門や外部専門家との連携・対応 |
6 |
環境対応 |
・環境汚染事故発生による社会的信用低下 ・各国・地域の環境法令対応不備による停滞 |
・ISO14001による管理・点検等の徹底 ・各国・地域における法規制・条例の把握 |
7 |
調達・生産 |
調達部品の供給遅延や停止による生産活動や 納期の遅延、受注取り消し等 |
お客様やビジネスパートナーとの日常的な連携強化による代替策の準備、マルチベンダー化 |
8 |
研究開発 |
技術開発競争において先導・追随できないことによる製品競争力の低下、業績の低迷 |
・積極的かつ効果的な研究開発投資 ・外部研究機関との共同研究推進 |
9 |
コンプライ アンス |
各国・地域の法規制への抵触による行政処分、 損害賠償の発生、社会的評価・信用の低下 |
コンプライアンス委員会や内部監査等による定期モニタリング、外部専門家との相談窓口設置 |
10 |
人材 |
人材の確保・育成の低迷、優秀人材の社外流出 (退職)による競争力の低下 |
・安全で働きがいのある職場づくり、健康経営の推進 ・社内教育プログラムの拡充 |
11 |
大規模災害 |
当社グループの生産拠点やビジネスパートナーの被災による生産・部品供給の停滞 |
・生産BCP、大規模災害対策マニュアル策定 ・代替生産体制整備、サプライヤー連携強化 |
12 |
情報 セキュリティ |
サイバー攻撃、不正アクセスでのシステム停止や情報漏洩による業務の停滞、社会的信用低下 |
情報セキュリティ委員会を中心とした従業員啓発とシステム対策両面からの継続的改善 |
(4)指標及び目標
本書提出日現在において、指標及び目標については公表をしておりません。今後、精査を踏まえ、開示内容を拡充していく予定です。なお、当社グループの各種実績データについては算定を行っており、当社ウェブサイト(URL:https://www.kokusai-electric.com/csr/)にて公開しております。
≪TCFDの提言に沿った取り組み≫
当社グループは、2021年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しました。
「持続可能な社会の創造・地球環境の保全」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして設定し、「環境負荷の低減」を重点テーマとして掲げており、その活動アイテムとして「温室効果ガスの排出削減」を進めております。
また、気候変動におけるリスクと機会を特定するとともに、それらが事業や財務に与える影響を分析の上、対応策を設けており、気温上昇を1.5℃に抑える温室効果ガス排出削減目標を設定して取り組んでおります。
なお、TCFDの提言に沿ったガバナンス、戦略、リスク管理及び指標と目標の4つの基礎項目による情報は、当社ウェブサイト(URL: https://www.kokusai-electric.com/csr/environment/tcfd)にて公開しております。
≪人的資本に関する戦略、指標及び目標≫
当社グループの事業活動の源泉は人であると認識しており、人材や価値観の多様化と生産性向上が両立できる働き方改革、企業の中長期的な成長戦略と個人のキャリアプランを尊重したOJT(On the Job Training)とOff-JT(Off the Job Training)による企業の成長と個人のキャリア実現の両立、心理的安全性のある企業風土、健康と安全の維持・向上は、企業の持続的な発展に必要不可欠です。
当社グループは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)への取り組みをはじめ、事業のグローバル化の急進に対応できる人材の確保・育成や、組織風土改革、健康経営を推進し、イノベーション創出の基盤を強固なものとしていきます。なお、本項目については2023年4月以降の体制及び運用についても記載しております。
(1)戦略
① ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)の推進
a ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの考え方
急激な少子高齢化の進行、予測不可能な事業環境等により企業を取り巻く環境が大きく変化し続けており、当社が持続的に成長・発展していくためには、従業員一人ひとりの多様性を活かした新たな価値の創出やリーダーシップの発揮、チームとしての協働が必要となります。世界各国をフィールドとして当社が飛躍するためにも、性別、年齢、人種や国籍を問わずに、背景・視点・価値観の異なる従業員の多様性を尊重し、それを最大限に生かすこと、また異なる視点を持つ従業員同士が学び合うことで企業の成長につなげ、意欲のある従業員が世界を舞台にチャレンジを楽しみ益々活躍できる環境を形成していきます。
b 多様な人材の雇用促進
当社は、予測不可能な事業環境の変化を先取りできるよう、性別、年齢、人種や国籍を問わず高い専門性を有する経験者採用を積極的に推進しております。経験者採用者がすぐに活躍できるように入社時の研修を強化するとともに、当社の企業文化の理解促進や経験者採用者のネットワーク構築のため、入社後一定期間経過した経験者採用者を対象とした振り返り研修を実施しております。
c 女性活躍推進の取り組み
当社は、性別の偏りなく人材の活躍を推進することを基本方針としており、背景・視点・価値観の異なる社員を偏りなく確保し、多様性を最大限に生かすことで企業の成長につなげていきます。女性活躍については、アファーマティブ・アクション(積極的な格差是正措置)の一環として、自社としての行動計画を策定し、女性活躍推進の取り組みを行っております。
d 障がい者雇用の取り組み
当社は、誰もが職業を通して社会参加できる「共生社会」をつくっていくため、障がい者の雇用にも積極的に取り組み、当社全体の職場環境の改善や生産性向上につなげていきます。障がい者の雇用の促進等に関する法律(改正障害者雇用促進法)及びその後の一部改正を踏まえ、障がい者や職場を支援する体制を整備するとともに、相談に対する適切な対応の促進を図るため、「障がい者相談窓口」を設置しております。相談窓口では、本人や職場からの各種相談対応、職場への合理的な配慮に関する助言を行っております。
e 労働組合との対話
健全かつ安定的な労使関係の維持は、当社の発展の基礎となるものです。当社は、「KOKUSAI ELECTRIC 労働組合」と労働協約を締結し、定期的に労使協議の機会を設け、労働条件や人事制度について協議し、従業員の活性化に向けての意見交換を行うなど、職場規律の確立、職場環境の維持・改善に労使一体となって取り組んでおります。少子・高齢化社会の急速な到来、経済のグローバル化、規制緩和の進展等、労使を取り巻く環境が大きく変化しつつある中で、相互理解と協力の精神を基調として、広い視野かつ自主的な対話によって、問題の合理的、平和的解決を図っております。
② 働き方改革
a ワークライフバランスの考え方
社会の少子高齢化に伴い、育児や介護との両立など働き方のニーズが多様化する中、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を整備し、生産性を向上させワークライフバランスを実現することが当社の企業としての重要な課題になっております。当社は、育児や介護などのライフイベントに対応した施策を充実させるとともに、在宅勤務の推進による通勤時間の削減など、さまざまな施策により仕事と生活の両立支援を行っております。
b 仕事と生活の両立支援
当社は、「やりがいのある充実した仕事」と「健康で豊かな生活」の両立の観点から、仕事と育児・介護等のライフイベントとの両立を支援する制度の整備・拡充を推進しております。2021年度は、次世代法に対する当社の取り組みに対するトップメッセージの発信を行い、男性の育休取得事例を社内報やイントラネットへ掲載して情報共有を図っております。2022年度は、育児・介護休業法の改正に伴う管理職向けのe-learningを実施し、男性の育休取得を促進しております。
c 「育児・仕事両立支援金」制度
当社は、子育てをしながら働く従業員が、さらに能力を発揮することができる環境を実現するため、2017年4月1日から「育児・仕事両立支援金」制度を導入しました。本制度では、共働き又はひとり親で、小学校3年生修了前の子を養育する従業員に、保育施設や学童施設の利用料など、子育てをしながら働くために要した費用を「育児・仕事両立支援金」として支給します。
d 在宅勤務制度
当社は、従業員のライフイベントとの両立支援として、また通勤時間の削減による「健康で豊かな生活」支援の施策として、2023年4月より在宅勤務制度を導入しました。在宅勤務が可能な業務に従事する従業員は、個人の選択により、業務に支障のない範囲で在宅勤務することができます。
③ 「自ら学び、自ら考え、自ら実行する」人材育成
a 次世代人材育成の考え方
当社の人材開発理念は、「自ら学び、自ら考え、自ら実行する人材の育成」です。当社の人材育成プログラムは、当社の中長期的な成長戦略と個人のキャリアプランのマッチングを図り、OJT(On the Job Training)によるチャレンジングな課題、人材育成を主眼としたフィードバック、育成箇所をサポートするOff-JT(Off the Job Training)で構成されております。
Off-JTでは、社内外の講師による業務上必要な技術・知識を習得する研修、オープンイノベーションを獲得するための技術講演会、グローバルでの対話促進を目的とした語学教育、効果的なプレゼンのポイントを掴み実践に強くなるためのプレゼン研修など、新卒・経験者採用問わず、入社時から個人の知識・スキルアップやキャリアアップのための社員研修を展開しております。今後は、事業環境の変化に主体的に対応できるようなリーダーシップ開発や、求められるスキルの変化に対応したアップスキルのトレーニングを拡充していきます。
b e-learningの展開
当社は、従業員の知識や意識向上のため、さまざまなe-learningを推進しております。2023年度からグローバルでのコンプライアンス文化の徹底のため、グローバルで同じ内容でのコンプライアンスのオンライントレーニングを各拠点の言語で展開しております。
また、エンジニア教育をはじめとした職種別、階層別教育も実施しております。
c 組織文化 エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメントレベルを向上し、働きがいのある会社を志向するため、毎年、エンゲージメントサーベイをグローバルで実施しております。エンゲージメントサーベイの結果については、従業員にも公開を行い、職場全員で改善策を話し合い、エンゲージメントレベルの向上への対応を実行しております。
④ 従業員の健康と安全の維持・向上
a 健康経営
(a) 健康経営の推進
当社は、健康経営宣言をもとに法令遵守・一般的なヘルスケアのみのレベルから、健康の維持・増進を将来に向けた人的投資として戦略的に実践するレベルにステップアップすることを目標に取り組んでおります。
2021年度の取り組みに対して、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2022」の認定を受けました。さらに、2022年度からは健康管理システムを導入し、健診結果などの健康データを一元化することで、健康課題の傾向分析・検証を行い、経営戦略に紐づいた健康経営を進めております。感染症リスク対策新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症に対して、従業員が安心して働けるよう職場環境を整備し、対策を講じております。
(b) 感染症リスク対策
新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症に対して、従業員が安心して働けるよう職場環境を整備し、対策を講じております。
(c) フィジカルヘルス
健康診断結果により、再検査が必要な方への受診勧奨や面談等のフォローアップを実施し、早期発見・疾病予防に向けて取り組んでおります。
(d) メンタルヘルス
ラインケア・セルフケア研修の実施とストレスチェック集団分析結果による職場環境改善に向けた取り組みを行っております。
また、産業医(精神科医)による相談・面談を定期的に実施し、不調者に対する支援に取り組んでおります。
(e) メンタル疾病に伴う休職者数(国内当社グループの社員)
(人)
休職者数 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
国内当社グループ合計 |
11 |
11 |
8 |
14 |
17 |
(注)1か月のうち7日以上休職した者
同一社員が年度内に複数回休職した場合は1人とする。
(2)指標及び目標
人的資本・多様性に関する取り組みのうち多様性については、性別、経験者(通年)採用及び国籍の3つの観点から注力しており、当社の主な指標及び目標と実績につきましては、以下のとおりです。
指標 |
目標 |
2022年度実績 |
管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1) |
2029年までに8.0% |
3.2 |
男性労働者の育児休業取得率(%)(注2) |
2029年までに30.0% |
57.1 |
経験者採用者の割合(%) |
前年比増 |
11.8 |
外国籍社員の割合(%) |
前年比増 |
2.4 |
年間死亡災害件数(件) |
0 |
0 |
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスク、リスク顕在化の可能性、顕在化の時期、連結業績への影響度及びリスクへの対応は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)マクロ経済環境
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの業績は国内外の景気、経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等に影響されます。例えば、半導体デバイスの急激な需要の増減や需給バランスの悪化によって、半導体デバイスメーカーの設備投資計画に大きな変更が生じれば、当社グループの調達、製造コスト、販売の計画に影響が生じる可能性があります。また、国際的な貿易紛争や製品の国産化施策に伴う関税、貿易障壁、国産メーカー支援強化等の政策により、当社グループにおける製造コストの上昇、国を跨いだ輸送の遅延、販売機会の変化等が生じる可能性があります。また、ロシア・ウクライナ問題の長期化、世界的なインフレの長期化、インフレ抑制のための金利上昇、新興国の成長鈍化、中台関係の悪化、中東及び北朝鮮での地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも影響を及ぼす可能性があります。加えて、「(9)感染症の世界的流行」に記載のとおり、感染症の世界的な感染拡大等が再度発生した場合、消費者行動及び事業活動を含む世界全体の経済活動に影響が生じる可能性があります。
当社グループは、マクロ経済環境について注視しながら事業運営を進めていく方針ですが、上記のような影響が生じた場合、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
2023年3月期には、2022年10月7日付米国輸出管理規則(EAR)(注1)の改正公布により、米国製半導体製造装置について中国の特定の先端半導体メーカーへの輸出が禁止され、さらに2022年12月16日付で複数の中国の半導体メーカーが米国政府の発行する制裁リスト(Entity List)に掲載されました。また、日本においても、全世界向けを対象とした先端半導体製造装置の輸出規制に関する改正法令が2023年5月23日に公布され、7月23日に施行されました。このような米中貿易紛争は日本や他国にも波及し、中国の半導体デバイスメーカーのみならず他の大手半導体デバイスメーカーの投資計画に影響を及ぼすなど、今後の半導体業界にとっての大きなリスクであると懸念されます。
(注1):EAR=Export Administration Regulations(輸出管理規則)
(リスクへの対応)
当社グループは、事業等のリスクについて、社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会において総合的に管理・検討する体制のもと、各部門が必要な対応を行い、定期的に、また必要に応じて取締役会へ報告、審議する管理体制を整備しております。
また、当該リスクを軽減するため、市場動向や競合状況の調査・分析を行い、お客様との対話を通じてニーズを把握し、そのニーズに応えることのできる付加価値の高い製品・サービスを提供し続けるべく研究開発をはじめとする事業活動を推進しております。加えて、半導体デバイス別および地域別の売上構成バランスをより適正化すべく努めてまいります。
(2)市場ニーズ
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は技術革新が激しく、技術の変化により市場が大幅に成長する反面、需要と供給のギャップが急激に広がり供給過剰となり、半導体製品の値崩れ及び設備投資の抑制が発生することがあります。
半導体デバイス市場は事業構造上、不安定な性質を有しているため、将来においても市況が低迷する可能性があります。半導体デバイス市場と連動する半導体製造装置市場もこの不安定な市況を避けることは難しく、半導体市況に連動し当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、幅広い用途で半導体の利用が進んでおり、半導体を利用した新しい製品や技術の導入時期、消費者の嗜好の変化、業界の動向等が、半導体の需要や半導体メーカーの設備投資、研究開発計画に与える影響は大きくなっていることから、半導体の市場動向の予測は複雑化しております。3か月に1回程度更新される民間調査機関(Gartner、Techinsights)にて、WFE(Wafer Fab Equipment:半導体製造装置市場)CY年度予測が発表されます。市場動向から下方修正、又はマイナス成長予測に転じる場合があり、その予測どおりに主要顧客投資計画の見直しからの後ろ倒しや縮小・中止などが発生した場合には、当社業績に影響を与える可能性が生じます。また、主要顧客における予測していない事故や事態、半導体デバイス市場の想定を超える需要の悪化により当社グループの事業が影響を受ける可能性があるだけではなく、予測を上回る半導体の需要増に応じた半導体製造装置の需要の増加に対応できず、当社グループが市場の好況の恩恵を十分に享受できず、主要顧客との取引関係にも影響を与える可能性があります。
また、半導体製造装置メーカーの変更は、一般的にコストが高く、顧客である半導体メーカーが一度特定の半導体製造装置メーカーの装置を選択すると、当該半導体メーカーは同じ半導体製造装置メーカーの製品を利用し続ける傾向にあります。他の半導体製造装置メーカーの製品を利用している顧客が当社グループ製品に乗り換えることは必ずしも容易ではないため、他の半導体製造装置メーカーの製品を使用している潜在的な顧客に当社グループ製品を販売することができない場合、当社グループの売上及び市場シェアの拡大に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(3)他社との競合等
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
他社との競合の観点では、当社の主力製品であるバッチ成膜装置は、他社の枚葉装置と部分的に競合し、また、同じバッチ成膜装置の競合メーカーと激しい競争が続いております。トリートメント(膜質改善)装置についても、複数の競合メーカーとの競争があります。当社グループでは、新製品の高品質成膜・高性能半導体製造装置(25~50枚少数枚数バッチ処理)で、枚葉装置よりも生産性における優位性を維持するとともに、当社のALD成膜技術、プリカーサ(成膜に使用するガス)開発や、排気技術の開発など、技術開発における優位性の維持に努めておりますが、技術革新、生産能力の拡充や生産性の改善等の実現が他社に遅れ、販売価格の前提となるコスト、性能、生産量が競合他社に劣る場合や、新たな競合メーカーが台頭した場合、受注高の減少及びシェアの低下により売上及び収益が悪化することにより、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(4)主要顧客への依存
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は、近年の激しい景気変動や技術競争から再編が進んでおり、プレイヤーが集約された市場環境となっております。当社グループにおいても、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおり、主要顧客に対する売上収益が連結売上収益の相当程度を占めております。当社グループは、リスクを軽減するため、主たる経営数値は当然のこととして、各種の経営指標についても継続的に管理するとともに、リスクをふまえた一定の目標に基づき適切な改善を行ってまいります。また、取引先に対し定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額を設定するなど、信用リスクの管理のための施策を講じておりますが、主要顧客各社の事業方針の変更、取引条件の変更、技術革新、業界動向、地政学的影響などの理由により取引量が縮小した場合や販売価格低下の圧力が強まった等の場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが売掛債権を有する主要顧客の財政状態が悪化し、期限どおりの支払いを得られない場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(5)中期経営計画
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社グループが策定した中期経営計画では、新規顧客開拓、新製品投入及び市場シェア拡大等による成長を通じた収益の拡大と収益性の向上をめざすとともに業務効率の向上等の追求をめざしております。
市場環境が、中期経営計画の前提と異なる場合、目標の達成が困難となる可能性があります。また、当社が認識又は評価できなかった要因により、計画を見直す必要が生じた場合、当社の競争力に影響を及ぼす可能性があります。さらに、想定以上の競争激化、新型コロナウイルス感染症の影響の期間及び程度、人材採用、当社製品の製造又は販売市場に関連する法律、規制又は税制の不利益な変更、技術や顧客の嗜好の変化への対応等の潜在的なリスクに対応できない場合、また、これらのリスクに関連する費用が想定を超えて発生した場合等、当社グループが定めた目標を達成できず、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(6)研究開発
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:大)
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、従来の携帯電話やパソコンなどのコンシューマー向けからデータセンターや5G、AIなどの高成長産業向けへと需要がシフトしながら急速に拡大しております。これに伴い、半導体デバイスは複雑な構造へのシフトが進んでおり、半導体製造装置はより難易度の高い技術と高い生産性の両立が求められ、半導体の世代ごとの開発に追従する厳しい技術開発競争下にあります。
当社グループにとって研究開発は重要課題の一つであり、積極的な投資によって顧客ニーズに応えうる付加価値の高い技術及び製品を提供し続けることを基本としておりますが、市場環境の変化に対応できない場合や製品競争力を維持できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(7)海外事業
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、海外の各国において以下のようなリスクがあります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの売上収益の比率が高い国においては、「(1)マクロ経済環境」に記載のとおり、今後、地政学的問題や貿易摩擦などによって各国の国産メーカーへの支援強化等が実施される可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。地域別の売上収益については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 21.売上収益」及び「要約四半期連結財務諸表注記 6.売上収益」をご参照ください。
・投資、輸出入、関税、公正競争、腐敗防止、環境、労働、租税その他事業活動に係る法令その他の公的規制及びその変更
・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動上の制約
・政治的要因、社会的要因及び経済情勢の変動
・テロ、戦争、自然災害、各種感染症等の発生による社会的混乱等
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、技術的、取引上の契約事項の明確な記載と相互確認を行うとともに、海外事業に係る取引先、輸出先政庁との情報共有、輸出管理運用基準の遵守、輸出管理教育の受講、輸出管理部門、法務部門と担当部門の連携強化を図っております。
(8)大規模災害等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:中)
災害や人為的な原因等により電力、通信、交通等の社会的共通資本に関して重大な障害が発生した場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、主要生産拠点である当社富山事業所において長期にわたり稼働が困難となった場合には、より重大な影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループの事業拠点は、国内及び海外に展開しており、生産及び販売活動に大きな影響を与える地震、津波、洪水、火災等の災害に備え、下記の対応を行っております。
・富山事業所における大規模災害発生を想定した、初期安全確保から生産稼働復旧に至る方針マニュアルの策定と運用
・安全衛生リスク評価による予防安全装置の拡充継続・適切配分、ビジネスリスクアセスメントの見直し
・社員の安全が確保できない場合は緊急対応として屋外避難の実施
・安全運転講習、ISO4500に基づく安全衛生管理、海外出張用安全衛生マニュアル等による継続的リスク指導
(9)感染症の世界的流行
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:小)
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、都市封鎖や外出の禁止、自粛による移動の制限、事業拠点の閉鎖、生産活動の制約、個人消費や設備投資等の減少、サプライチェーンの混乱、世界的な資本市場の散発的な乱高下や資金調達環境の悪化等を生じさせ、世界経済の悪化を招き、当社グループ及び当社グループの顧客やサプライヤーの業務等にも影響を生じさせました。
新型コロナウイルス感染症の世界的な再流行、又は同様の感染症の世界的な流行及びそれに伴う各国政府等の対応策は、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、感染症流行時には感染防止対策を徹底するとともに、サプライチェーンの動向を注視し、支障が生じた際には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
(10)調達・生産
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループの使用する購入品資材等は、マルチベンダー化や継続的な仕入供給先への先行情報提供等により安定的な供給の確保に努めておりますが、供給の遅延・中断、急激な需要の増加、経済環境の悪化等により、必要不可欠な購入品資材等の供給不足や市場価格の上昇が生じる可能性があります。また、グループ製品に使用する資材等の仕入先を変更する際には、顧客の事前承認が必要な場合がありますが、顧客からの要求仕様を満たすために必要な特定の仕入品は、顧客承認を得るまで特定の仕入先からしか入手できず、必要な購入品資材等が不足する可能性があります。また、特定の仕入先の被災、事故、倒産等による急な供給遅延・中断が発生し、顧客の事前承認を取得するまでの間に代替品に切替えることができない場合、当社グループの生産活動に影響が生じ、顧客への納期遅延や受注取り消し等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを回避するために下記の対応を行っており、例えば、仕入先から生産中止による供給停止を要望された場合でも、仕入先には通常1年前の申請を義務付けているため、仕入先からの供給を確保しつつ、代替品を選定するなど切り替えの準備を進め、顧客承認を取得した上で代替品に切替えております。
2023年3月期においては、「(1)マクロ経済環境」に記載のとおり、海外の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等の影響により、必要不可欠な購入品資材等の仕入価格が上昇しました。当社グループでは、商品の高付加価値化や製品への価格転嫁等により仕入価格上昇の影響を吸収していく方針です。
・ビジネスパートナーとの日常連携と信用調査の強化
・ビジネスパートナーミーティングの定例・臨時開催による情報共有と業績ウォッチ
・QCDE(Quality Cost Delivery Environment)定期評価の実施
・重点ビジネスパートナーの経営監視の実施
・取引先緊急対応MAPの作成(二次、三次取引先の把握)
・マルチベンダー化の推進
(11)製造物・品質
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:大)
大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の欠陥が発生し多額の追加費用が発生することになった場合や、品質に問題が生じたことにより受注取り消しが発生した場合、当社グループの製品・サービスに対する顧客からの信頼が低下した場合、その他当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合(災害等により事業継続に支障が生じた場合、及びサプライヤーからの供給に問題が生じた場合等を含みます。)には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国際標準規格である品質マネジメントシステム(ISO9001)及び環境マネジメントシステム(ISO14001)により製品を製造しており、重大な品質問題を防ぐため以下の取り組みを行っております。また、当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
・製品安全設計の推進
・継続的な製品品質向上策の推進
・不具合発生時の是正・予防処理基準に準拠した原因追及、対策、再発防止策等の是正処置
(12)為替
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループにおける海外売上収益は高い水準で推移しております。また、当社グループの外貨建ての資産及び負債の評価は為替相場の変動により影響を受けております。為替相場の急激な変動によっては、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、海外での製品販売を円建としており、また、為替予約等の措置を講じることで、為替変動によるリスクを一定程度軽減させるよう努めております。
(13)訴訟等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:小)
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めておりますが、事業活動を進めていく上で取引先等から訴訟を受ける可能性や、訴訟に至らないまでも紛争に発展して請求等を受ける可能性があります。それらの訴訟等で当社グループが勝訴するという保証はなく、それらの訴訟等が当社グループの将来的な事業活動に影響を与える可能性があることは否定できません。また、さまざまな事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があり、これにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当社グループの事業活動に関する法令等の遵守はもとより、社会規範と企業倫理に則った透明性の高い経営を行うための行動を実践することを目的として、コンプライアンスの基本方針や体制などを定める会社規則を制定し、国内外の主要拠点における事業活動状況について、主にコンプライアンスの観点から把握するための体制として、コンプライアンス担当役員のもと本社の経営サポート部門を中心に構成するコンプライアンス委員会を設置しております。また、法令や企業倫理上疑義のある事項等を早期に発見し、速やかな対策を講じるための仕組みとして、当社グループ統一のコンプライアンス通報制度を設けております。
(14)知的財産
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、当社の技術及び製品の競争力強化の観点から事業運営において知的財産に関する取り組みが重要であると認識しており、当社グループの技術やノウハウを保護するため、知的財産権の確保に努めておりますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する製品の販売等をすることにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、万が一、第三者が当社グループによって当該第三者の知的財産権を侵害しているとの見解を抱いた場合、当該第三者より、差止請求や損害賠償請求等の請求を受ける可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、当該リスクにより、当社の健全な事業活動の継続に支障をきたすことのないよう、研究開発部門、設計部門、法務・知財戦略部門など関係部署が相互に連携し、より適切な知的財産権のポートフォリオを構築するよう努めております。また、当社グループでは、研究開発部門、設計部門、法務・知財戦略部門など関係部署が相互に連携し、技術及び製品の開発を進めており、必要に応じて、外部の専門家等の助言を得ております。
(15)環境対応
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、法及び規制の遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や損害賠償が発生する可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、排水、排気、騒音、廃棄等における環境汚染に関するさまざまな環境法及び規制の適用を受けており、以下の対応を行っております。加えて、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿い、気候変動におけるリスクと機会を特定するとともに、それらが事業や財務に与える影響を分析し、対応策を設けております。
・ISO14001による環境管理、法規制・条例の把握
・排水・排気設備日常点検
・廃棄物委託業者の現地確認実施
・化学物質の適切な管理(許可、登録、使用量管理、廃棄時WDS(Waste Data Sheet)の提供)
・顧客への製品の化学物質情報の提供
(16)借入金
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、LBOスキームにより株式取得を実施した際、金融機関等を貸付人とする多額の借入れを行っております。また、必要な運転資金について、営業活動より稼得した現預金を充当するほか、設備投資や急激な経済状況の悪化などで資金調達が必要になった場合には、金融機関からの借入れ等を行うことがあります。金融市場の混乱や景気低迷、金融機関の融資姿勢の変化により資金調達環境が悪化した場合や、市場金利の急速な上昇等により支払利息が急激に増加した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。今後、当社の経営成績が著しく悪化するなどして財務制限条項に抵触した場合、借入先金融機関の請求により当該借入について期限の利益を喪失し、一括返済を求められるなどして、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.借入金」をご参照ください。
(リスクへの対応)
当社グループは、上記のLBOスキーム実施時の借入金について、金利負担の減少、財務制限条項の緩和や有利な返済計画とする観点から、2021年3月期に金利(配当)負担の重い優先株式の買戻しとメザニン借入の返済を含む1,250億円の借り換えを行っております。
(17)のれん及びその他の無形資産
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、2018年5月に当社が日立国際電気の全株式を取得した際にLBOを用いた出資を行っております。これにより、のれん及びその他の無形資産が2023年3月期においてそれぞれ59,065百万円、62,547百万円計上されており、合わせて連結資産合計の32.8%を占めております。当社が連結決算において採用する国際会計基準では、当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産については、償却を行わず、事業年度ごと又は減損の兆候が確認される場合において、減損テストを実施し、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計と異なり、前述のとおり、のれん及び耐用年数の確定ができない無形資産の償却を行わないため、当該のれん及びその他の無形資産について減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計での減損損失の計上に比して計上額が多額となる可能性があります。
2023年3月期においては、減損テストの結果、将来キャッシュ・フローによる使用価値(回収可能価額)は帳簿残高を上回っており、減損損失の計上は不要と判断しております。しかしながら、仮に税引前割引率が一定の場合、将来キャッシュ・フローの見積額が73.6%減少すると回収可能価額と事業価値の帳簿価額が等しくなる可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、上記リスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 顧客関係性の向上による、利益の最大化とシェアの拡大
顧客エンゲージメントの最適化を推進するとともに、差別化技術開発を加速し、高付加価値製品の展開によるシェアの拡大、収益力強化に注力してまいります。
② プロダクト・ライフサイクル・ビジネスの持続的成長
顧客へ納入した装置のアフターサービスは、装置販売の拡大とともに、重要な事業として強化に取り組み順調に拡大してきました。今後も、プロダクト・ライフサイクル・ビジネスをさらに高度化して、拡大展開を推進してまいります。
③ 製品・アプリケーション別戦略によるPOR(注)獲得強化と収益拡大
アプリケーションごとの装置プラットフォームの最適化とターゲットの明確化によりPORの獲得を推進してまいります。顧客の要求に合致した技術開発と提案により、高収益である次世代新製品、新アプリケーションの拡販に取り組み、新PORの獲得とともに収益の拡大をめざしてまいります。
(注)Process Of Recordの略であり、「顧客の半導体製造プロセスにおける製造装置認定」のことを指します。
(18)コンプライアンス等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けるため、コンプライアンス体制や内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。また、貿易紛争により輸出規制や関税等が強化される可能性もあります。これらの規制を遵守できなかった場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、業務停止等の行政処分、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、規制の強化によってそれを遵守するためのコストが大幅に上昇する可能性や、各国の競争法によって当社グループの事業の拡大が妨げられる可能性があります。
また、当社グループは、財務報告の適正性と信頼性を確保するための内部統制システムを構築しておりますが、さまざまな要因により内部統制システムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(13)訴訟等」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、コンプライアンス教育により法令、規則の周知徹底を行うとともに、澱み・癒着を防止するために、管理部門、担当ビジネスパートナーの定期ローテーションを強化するとともに、内部監査による定期的なモニタリングを実施しております。
(19)人材
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期~中期、影響度:中)
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、イノベーションを創出し成長を続けるためには、国内外で多様な人材を確保・育成すること、多様性を生かす組織文化が重要となります。
少子高齢化の加速に伴う人材不足に起因して、必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合や重要人材を喪失した場合には、人材不足による製品開発力の低下や顧客サポートの質の低下を招き、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国内外で必要な人材をタイムリーに確保するため、国内外で経験者採用を拡大するとともに、多様な人材が働きやすい職場づくりの推進、グループ・グローバル共通のラーニングマネジメントシステムの活用や社内教育プログラムの実践により戦略的に人材の確保・育成を図っております。
(20)情報セキュリティ
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、事業活動を通じて、機密情報、顧客情報、個人情報等を取得・保有、利用しており、それらが意図せず流出した場合、社会的信用の低下や、損害賠償の発生、製品競争力の低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、情報システム及び情報ネットワークを駆使しながら事業活動を行っており、サイバー攻撃、不正アクセス、自然災害、停電、機器類の故障、人為的ミスなどにより障害等が発生した場合には、業務の停滞や信用の低下が生じ、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクへの対応として、情報セキュリティマネジメントに関する社内規程を定め、情報セキュリティ統括責任者を中心とした情報セキュリティ委員会を運営し、従業員対策とシステム対策の両面から継続的に改善しております。また、個人情報保護法への対応として、当社保有の情報資産保護のため、情報セキュリティ方針に基づく「情報セキュリティ事故発生時の連絡体制図」を定め、事故並びに事故の疑い時に迅速に対応できる連絡通報体制を構築しております。さらに、保護対象となる情報について、社内IDを使用したアクセス制限のほか、パスワードの設定・変更を定期的に見直すことにより管理を厳格化しております。
(21)Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.グループとの関係
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社は、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.によって運営されているケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)から出資を受けており、2023年9月末時点で総株主の議決権の73.2%を所有する大株主であり親会社に該当しておりましたが、2023年10月25日付で当社普通株式の東京証券取引所プライム市場への新規上場に伴う当該親会社の所有株式の売出し及びオーバーアロットメントによる売出しにより、所有する議決権数の割合が43.8%に減少したことを受けて、当該親会社は当社に対して重要な影響力を有する企業に変更となりました。なお、本書提出日現在において、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピーは、当社発行済株式総数の43.6%を保有しております。
これに伴い、2021年7月より取締役会の諮問機関として設置しておりました「支配株主との取引等の適正に関する委員会」は廃止いたしました。
当社の監査等委員でない取締役である中村正樹及び平野博文の2名がKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.の日本法人である株式会社KKRジャパンから派遣されております。
ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)は、中長期的には売却等により所有比率を低下させることが同社の方針と認識しておりますが、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。
また、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)は、グローバル・オファリングに関連して、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、ロックアップに関する書面を差し入れておりますが、ロックアップの除外事由として、一定の借入れに関する担保権の設定及び当該担保権の実行に伴う処分等を行うことができる旨が定められております。かかる将来の借入れに係る借入金額、貸出人その他の条件は現時点において未定であることから、その条件によっては、ロックアップ期間中に、同社が当社普通株式への担保権の設定等を行い、当該担保権の実行等に伴い当社普通株式の処分が行われる結果として、当社普通株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、当該株主との取引等について、取引の合理性及び取引条件の妥当性を確認し、取締役会の承認を得ることとしております。
なお、当社は、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreementに基づき、同社より経営全般に関するコンサルティング、資金調達等に関する経営指導を受け、契約に基づくフィーを支払っておりましたが、2022年3月31日にMonitoring Agreementを解除いたしました。これにより、2023年3月期以降、当該契約に基づく対価の支払いは発生いたしません。
(22)当社株式の流動性
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:小)
東京証券取引所プライム市場の流通株式比率に係る上場維持基準は35%であるところ、当社の新規上場時における流通株式比率は41.6%程度となっております。上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、ケイケイアール・エイチケーイー・インベストメント・エルピー(KKR HKE Investment L.P.)との間における流通株式を増加させるための施策に関する対話、従業員の所有する新株予約権の行使やパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)及びリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)に基づく株式交付による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図ってまいります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
なお、当社グループは富山県内に富山事業所及びグループ会社拠点を有しておりますが、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震による甚大な被害はなく、1月9日より通常業務を順次開始しております。そのため、当社グループ業績への影響は軽微です。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第8期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
a.財政状態
第8期連結会計年度末の総資産は、3,702億63百万円となり、前期末と比べ137億31百万円増加しました。主な内容として、デバイスメーカーの設備投資計画見直し等による出荷延伸による棚卸資産の増加155億48百万円によるものであります。
負債合計は、2,093億82百万円となり、前期末に比べ276億31百万円減少しました。主な内容として、借入金の返済による減少245億円によるものであります。
資本は、1,608億81百万円となり、前期末に比べ413億62百万円増加しました。主な内容として、親会社の所有者に帰属する当期利益403億5百万円を計上したことによる増加によるものでありであり、親会社所有者帰属持分比率は10.0ポイント増加しました。
b.経営成績
第8期連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ問題の長期化や資源価格の上昇に加え、サプライチェーンの混乱や部材の不足、各国のインフレ抑制に向けた政策金利の引き上げなど、先行き不透明な状況が続きました。また、昨年10月以降、米国政府による半導体関連製品の対中輸出規制の強化などから、米中の対立が一段と高まり、地政学リスクを注視する状況も継続しております。
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、マクロ経済の不透明な状況もあり、コロナ禍でも需要が拡大した半導体市況に翳りが出ました。スマートフォンとパソコンの需要低下から、メモリーを中心に半導体需要の低下が見られ、デバイスメーカーの設備投資計画に見直しの動きが見られました。ただ、中長期的には、5G、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンター需要の拡大や、環境負荷低減への投資(GX)による自動車のEV化などによって、成長が見込まれております。
このような状況のもと、第8期連結会計年度における当社グループの売上収益は、装置の売上が減少したものの、サービスの売上が過去最高を更新し、全体では前期実績を上回る2,457億21百万円(前期比0.1%増)となりました。営業利益は、中長期的な成長に向けた研究開発費、人件費等の販売費及び一般管理費の増加などにより560億64百万円(同20.6%減)となり、税引前利益は558億95百万円(同19.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は403億5百万円(同21.5%減)となりました。
なお、当社グループは、半導体製造装置事業による単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
第9期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
a.財政状態
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、3,711億93百万円となり、前期末に比べ9億30百万円増加しました。将来に向けた部材確保により棚卸資産は196億23百万円増加、富山県砺波市の新工場建設等により有形固定資産が147億81百万円増加しました。一方で下記「② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、現金及び現金同等物が195億55百万円減少、顧客投資抑制・延伸による売上収益減少に伴い営業債権及びその他の債権は、102億58百万円減少、無形資産が減価償却等により44億93百万円減少しました。
負債合計は、1,908億39百万円となり、前期末に比べ185億43百万円減少しました。主な内容として、契約負債の減少44億91百万円、法人所得税の支払による未払法人所得税の減少43億38百万円、営業債務及びその他の債務の減少40億13百万円、借入金の減少30億円によるものであります。
資本は、1,803億54百万円となり、前期末に比べ194億73百万円増加しました。主な内容として、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上等による利益剰余金の増加170億25百万円及び為替相場の変動に伴う在外営業活動体の換算差額の増加等によるその他の資本の構成要素の増加21億13百万円によるものであります。
b.経営成績
当第3四半期連結累計期間における世界経済は、欧州における地政学リスクの長期化や欧米各国の政策金利の引き上げによる金融不安、為替相場の変動等の影響により、先行き不透明な状況が続きました。
当社グループを取り巻く半導体関連市場は、半導体デバイスの在庫調整が進んでおり、メモリデバイス単価の上昇が見られ始めたことから、市況が底を打ったとの見方をしております。
中長期的には、5G、AI、IoT、DXの拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は大きな成長が見込まれております。そのため、NANDに対する投資抑制が続いているものの、全体としては成熟ノードを含むDRAM、Logicに対する安定した投資とともに先端品開発に対する投資が継続されております。
こうした状況において、当第3四半期連結累計期間当社グループの売上収益は、NANDに対する投資抑制を受け、1,316億61百万円(前年同四半期比29.1%減)となりました。売上収益の減少に伴い、営業利益は240億62百万円(同46.4%減)、税引前四半期利益は236億14百万円(同47.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は167億27百万円(同47.7%減)と、前年同四半期と比べ減収減益となりました。なお、当社グループは中長期的な需要増加に対応するため、積極的な研究開発投資及び設備投資を継続しております。
一方、第1四半期連結会計期間を底に業績の回復傾向が顕著になってきており、当第3四半期連結会計期間における当社グループの業績は、第2四半期連結会計期間に比べてさらに改善し、売上収益は539億56百万円(前四半期比19.9%増)、営業利益は106億89百万円(同13.9%増)、税引前四半期利益は107億42百万円(同17.5%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は79億14百万円(同28.5%増)となりました。
なお、当社グループは、半導体製造装置事業による単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
第8期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
現金及び現金同等物の第8期連結会計年度末残高は、前期末に比べ23億46百万円減少し、1,060億53百万円となりました。第8期連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ436億22百万円減少の299億93百万円の収入となりました(前年同期736億15百万円の収入)。第8期連結会計年度における主なキャッシュ・フローの収入要因は、前期に比べ110億34百万円減少した当期利益403億5百万円、前期に比べ3億円増加した減価償却費及び償却費103億4百万円によるものであります。一方で主な支出要因としては将来に向けた部材確保による原材料及び貯蔵品等の棚卸資産の増加151億61百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期の33億48百万円の支出に対し、主として有形固定資産の取得による支出により78億25百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期の35億8百万円の支出に対し、主として長期借入金の返済による支出により251億13百万円の支出となりました。
第9期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
現金及び現金同等物の当第3四半期連結会計期間末残高は、前期末に比べ195億55百万円減少し、864億98百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同四半期に比べ237億71百万円減少し、69億52百万円の支出とな
りました(前年同四半期168億19百万円の収入)。主なキャッシュ・フローの減少要因としては、棚卸資産の増加187億38百万円、営業債務及びその他の債務の減少144億73百万円、法人所得税の支払額106億28百万円によるものであります。一方で主な増加要因は、四半期利益の計上167億27百万円、営業債権及びその他の債権の減少107億38百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出により、106億36百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として長期借入金の返済による支出により、32億68百万円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度及び第9期第3四半期連結累計期間の生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
第8期連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
第9期第3四半期連結累計期間 (自 2023年4月1日 至 2023年12月31日) |
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
金額(百万円) |
|
半導体製造装置事業 |
211,896 |
97.1 |
136,624 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度及び第9期第3四半期連結累計期間の受注実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
第8期連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
第9期第3四半期連結累計期間 (自 2023年4月1日 至 2023年12月31日) |
||||
受注高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注高 (百万円) |
受注残高 (百万円) |
|
半導体製造装置事業 |
270,883 |
82.0 |
182,397 |
116.0 |
112,941 |
163,677 |
c.販売実績
当連結会計年度及び第9期第3四半期連結累計期間の販売実績は次のとおりであります。なお、当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであるため、製品・サービス別の販売実績を示しております。
区分 |
第8期連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
第9期第3四半期連結累計期間 (自 2023年4月1日 至 2023年12月31日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
販売高(百万円) |
|
製品 |
169,537 |
93.3 |
82,226 |
サービス |
76,184 |
119.7 |
49,435 |
合計 |
245,721 |
100.1 |
131,661 |
(注)1.最近2連結会計年度及び第9期第3四半期連結累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
第7期連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
第8期連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
第9期第3四半期連結累計期間 (自 2023年4月1日 至 2023年12月31日) |
|||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
Samsung Electronics Co., Ltd. |
50,111 |
20.4 |
53,950 |
22.0 |
26,852 |
20.4 |
CXMT Corporation |
- (注2) |
- (注2) |
- (注2) |
- (注2) |
15,472 |
11.8 |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd. |
35,865 |
14.6 |
30,478 |
12.4 |
- (注2) |
- (注2) |
Micron Technology,Inc. |
29,397 |
12.0 |
24,973 |
10.2 |
- (注2) |
- (注2) |
2.該当連結会計年度及び四半期連結累計期間において連結売上収益の10%未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積もり
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられるさまざまな要因を考慮した上で、見積もり及び判断を行っておりますが、見積もり特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積もりと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積もり及び判断」をご参照ください。
② 経営成績等の状況に関する分析・検討内容
第8期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(売上収益)
半導体デバイス市場は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要低下を受けて、メモリーを中心に半導体デバイスの需要が停滞しており、また、米国政府による先端半導体関連製品の対中国輸出規制強化の影響もあり、韓国、台湾、米国等の大手半導体メーカーで設備投資が先送りされました。当社の装置売上収益はその影響により、1,695億37百万円(前期比93.3%)となりしたが、一方、部品やレガシー装置等のサービス売上収益は761億84百万円(前期比119.7%)と大きく伸張し、売上収益全体では、2,457億21百万円(前期比100.1%)となりました。
(営業利益)
売上収益の減少、特に高採算の売上収益の減少などにより売上総利益が減少しました。また、中長期的な成長に向けた研究開発費、人件費等の販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は560億64百万円(対売上収益比率22.8%)となりました。
(税引前利益)
長期借入金の利息支払い等金融費用の発生(10億78百万円)等により、第8期連結会計年度の税引前利益は558億95百万円(対売上収益比率22.7%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
法人所得税費用が155億90百万円計上となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は403億5百万円(対売上収益比率16.4%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
第9期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
(売上収益)
世界経済の停滞を受けて半導体デバイス需要も停滞しました。また、米国による対中国輸出規制の影響もあり、半導体デバイスメーカーは投資を延伸・抑制しました。その影響により、装置の売上収益は822億26百万円(前年同期比64.6%)、部品やレガシー装置等のサービス売上収益は494億35百万円(前年同期比84.7%)となり、売上収益全体では、1,316億61百万円(前年同期比70.9%)となりました。
(営業利益)
売上収益の減少に伴い、営業利益は240億62百万円(対売上収益比率18.3%)となりました。
(税引前四半期利益)
支払利息他により、税引前四半期利益は236億14百万円(対売上収益比率17.9%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する四半期利益)
法人所得税費用が68億87百万円計上となり、親会社の所有者に帰属する四半期利益は167億27百万円(対売上収益比率12.7%)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループでは、運転資金については、内部留保により調達することを基本としております。設備資金については、案件の都度、手持ち資金でまかなえるか、又は長期借入金にて調達するかを検討しており、必要に応じて外部からの資金調達を行っております。2024年3月期及び2025年3月期に新生産棟建設に向けて資金需要の予定がありますが、手持ち資金でまかなう計画となっております。
なお、子会社の資金調達については、グループ資金の効率性確保の観点から原則として当社が実施し、当社から当社グループ子会社に貸付を実施します。当社グループでは、グループ資金を当社が集中して管理し、グループ全体としての資金の効率的な調達・運用を実現しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
第8期連結会計年度の売上収益は2,457億21百万円、営業利益は560億64百万円であり、営業利益率は22.8%となりました。調整後営業利益は642億51百万円、調整後EBITDAは681億85百万円、調整後当期利益は459億85百万円となりました。半導体デバイス市場は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要低下を受けて、メモリーを中心に半導体デバイスの需要が停滞しましたが、中長期的には、データセンターや5Gの拡大、IoT、AIなどの展開加速などにより半導体の需要が増加し、半導体構造の複雑化や三次元化に伴ってより高度な成膜技術が必要とされるものと見込んでおり、当社グループでは今後の需要に対応するための研究・開発投資や設備投資を継続してまいります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(参考情報)
当社グループは、経営成績の推移を適切に把握するために、調整後営業利益、調整後EBITDA及び調整後当期(四半期)利益を算出しております。これらは国際会計基準(IFRS)により規定された指標ではなく、当社の業績を評価する上で、通常の営業活動の結果として投資家が有用と考える財務指標であり、上場準備のために発生する上場関連費用、上場後には発生しないと見込まれるマネジメントフィー等の非経常的なものについて除外しております。
(1)調整後営業利益、調整後EBITDA
(単位:百万円)
|
参考 |
第5期 |
第6期 |
第7期 |
第8期 |
第9期 第3四半期 連結累計期間 |
自2019年4月1日 至2020年3月31日 |
自2019年10月1日至2020年3月31日 |
自2020年4月1日 至2021年3月31日 |
自2021年4月1日 至2022年3月31日 |
自2022年4月1日 至2023年3月31日 |
自2023年4月1日 至2023年12月31日 |
|
営業利益 |
8,306 |
13,293 |
60,037 |
70,652 |
56,064 |
24,062 |
-その他の収益 (注4) |
△205 |
△106 |
△16,571 |
△231 |
△270 |
△425 |
+その他の費用 (注5) |
19,287 |
83 |
87 |
1,235 |
1,562 |
97 |
(調整額) |
|
|
|
|
|
|
+企業結合により識別した無形資産等の償却 |
6,391 |
3,195 |
6,391 |
6,368 |
6,369 |
4,777 |
+スタンドアローン関連費用 (注6) |
651 |
166 |
423 |
1,024 |
353 |
214 |
+マネジメントフィー(注7) |
278 |
136 |
275 |
308 |
- |
- |
+売却関連費用(注8) |
- |
- |
1,771 |
9 |
- |
- |
+株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) |
- |
- |
- |
56 |
173 |
324 |
調整額 計 |
7,320 |
3,497 |
8,860 |
7,765 |
6,895 |
5,315 |
調整後営業利益 (注1) |
34,708 |
16,767 |
52,413 |
79,421 |
64,251 |
29,049 |
+減価償却費及び償却費 |
3,201 |
1,585 |
3,218 |
3,636 |
3,934 |
3,323 |
調整後EBITDA (注2) |
37,909 |
18,352 |
55,631 |
83,057 |
68,185 |
32,372 |
(2)調整後当期利益
(単位:百万円)
|
参考 |
第5期 |
第6期 |
第7期 |
第8期 |
第9期 第3四半期 連結累計期間 |
自2019年4月1日 至2020年3月31日 |
自2019年10月1日 至2020年3月31日 |
自2020年4月1日 至2021年3月31日 |
自2021年4月1日 至2022年3月31日 |
自2022年4月1日 至2023年3月31日 |
自2023年4月1日 至2023年12月31日 |
|
当期(四半期)利益 |
3,604 |
7,870 |
33,043 |
51,339 |
40,305 |
16,727 |
-その他の収益 (注4) |
△205 |
△106 |
△16,571 |
△231 |
△270 |
△425 |
+その他の費用 (注5) |
19,287 |
83 |
87 |
1,235 |
1,562 |
97 |
(調整額) |
|
|
|
|
|
|
+企業結合により識別した無形資産等の償却 |
6,391 |
3,195 |
6,391 |
6,368 |
6,369 |
4,777 |
+スタンドアローン関連費用 (注6) |
651 |
166 |
423 |
1,024 |
353 |
214 |
+マネジメントフィー(注7) |
278 |
136 |
275 |
308 |
- |
- |
+売却関連費用(注8) |
- |
- |
1,771 |
9 |
- |
- |
+株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) |
- |
- |
- |
56 |
173 |
324 |
-持分法で会計処理されている投資の売却益 |
△2,240 |
△2,240 |
- |
- |
- |
- |
+ファイナンシング 関連費用 |
- |
- |
4,270 |
- |
- |
- |
+その他の金融費用 |
996 |
505 |
1,054 |
- |
- |
- |
+調整項目に対する税金調整額 |
△8,358 |
△427 |
1,160 |
△2,685 |
△2,507 |
△1,527 |
-税率変更に伴う一時的な税金費用の調整額 |
- |
- |
- |
△1,857 |
- |
- |
調整後当期(四半期)利益(注3) |
20,404 |
9,182 |
31,903 |
55,566 |
45,985 |
20,187 |
(注)1.調整後営業利益は以下の算式により算出しております。
調整後営業利益 = 営業利益(IFRS)- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く)
2.調整後EBITDAは以下の算式により算出しております。
調整後EBITDA = 営業利益(IFRS)- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) + 企業結合により識別した無形資産等の償却を除く減価償却費及び償却費
3.調整後当期(四半期)利益は以下の算式により算出しております。
調整後当期(四半期)利益 = 当期(四半期)利益 - その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) - 持分法で会計処理されている投資の売却益 + ファイナンシング関連費用 + その他の金融費用 + 調整項目に対する税金調整額 - 税率変更に伴う一時的な税金費用の調整額
4.第6期のその他の収益には、契約解除料16,362百万円が含まれており、これは2021年3月にApplied Materials, Inc.との事業統合の契約解除が確定したことによるものとなります。
5.参考値のその他の費用には、特許侵害訴訟における和解金19,159百万円が含まれております。
6.スタンドアローン関連費用は、国際会計基準の導入、適時開示体制構築及び内部統制体制構築等の上場関連の一時的な費用であります。
7.マネジメントフィーはKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreementに基づく報酬であります。
8.売却関連費用は、Applied Materials, Inc.との事業統合に向けた準備費用及び事業再編等に関わる一時的な費用であります。
9.当社は第5期(自2019年10月1日至2020年3月31日)において、事業年度を9月末決算から3月末決算に変更し、6ヶ月間の決算となっております。当社の業績を評価するにあたり、他事業年度の決算と比較するため2019年4月1日から2020年3月31日までの12ヶ月間の数値を参考値として記載しており、当該期間における売上収益は132,610百万円、売上原価は△77,445百万円、売上総利益は55,165百万円、販売費及び一般管理費は△27,777百万円、その他の収益は205百万円、その他の費用は△19,287百万円であります。
10.調整後営業利益、調整後EBITDA及び調整後当期(四半期)利益につきましては、国際会計基準により規定された指標ではなく、当社の業績を評価する上で、通常の営業活動の結果として投資家が有用と考える財務指標であり、上場準備のために発生するスタンドアローン関連費用、上場後には発生しないと見込まれるマネジメントフィー等の非経常的なものについて除外しております。
(1)Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreement
契約会社名 |
国名 |
契約締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P. |
米国 |
2018年 6月1日 |
経営全般に関するコンサルティング、買収及び処分案件の特定及び分析の支援、資金調達の分析等の支援、財務計画の作成及び分析の支援、人事関連の支援、その他合意した業務等に関するアドバイスの提供 なお、新規株式公開等の場合は、Monitoring Agreement解除日から3年182日後の日又は2028年12月31日のいずれか早い日までの期間に支払われるはずだった手数料の正味現在価値を支払う義務を負っております。2022年3月31日にMonitoring Agreementを解除し約10億円を支払っております。 |
2018年6月1日から 両当事者の合意により2022年3月31日に終了 |
(2)株式会社三井住友銀行等との借入契約
当社は2021年3月24日付で、株式会社三井住友銀行をエージェントとする金銭消費貸借契約を締結しております。当該金銭消費貸借契約の主な契約内容は、以下のとおりであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.借入金」をご参照ください。
1 契約の相手先
株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、三井住友信託銀行株式会社及び株式会社日本政策投資銀行
2 借入金額
タームローンA 30,000百万円、タームローンB 95,000百万円
3 借入枠
コミットメントライン 10,000百万円
4 返済期限
タームローンA:2021年9月末より6ヶ月ごとに返済(最終返済日2026年3月29日)
タームローンB:最終返済日(2026年3月29日)に返済
5 金利
基準金利(全銀協 TIBOR 運営機関が公表する日本円TIBOR)+各スプレッド
各スプレッドはグロス・レバレッジ・レシオに応じたプライシンググリッドを適用
6 主な借入人の義務
① 当社グループの年次事業計画、決算書等の定期的な義務
② 財務制限条項の遵守
当社グループで行っている研究開発活動は、
・現世代品の改善に向けたコンポーネント技術の研究開発
・次世代のバッチ成膜装置における成膜の研究開発
・次世代の枚葉装置におけるトリートメント(膜質改善)技術の研究開発
・次々世代の要素技術及び新製品の研究開発
であります。
これらの活動は、原則として当社のみで行っておりますが、次々世代の研究開発の一部においては、大学や外部機関との協業にて推進しております。また、顧客との間では、当社評価機を貸し出してのデバイス開発も行っております。
また、成膜・トリートメント技術・ソフトウェアの研究開発は、ハード・ソフトウェア開発を担当するシステム開発本部とプロセス開発を担当するプロセス開発本部にて、対応しております。
第8期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、コロナ禍の影響が心配されましたが、巣ごもり需要、リモート業務といった新しい社会現象が生み出されたこともあり、NANDフラッシュを始めとするメモリーに加えファンドリー向けの設備投資も堅調で、当初計画を上回る推移となりました。今後もデータセンター向けの需要を下支えに、5Gの普及、自動車産業の回復及びAI活用が追い風になり、一層の成長が期待されますが、デバイスのさらなる高機能化、高集積化に加え、要素から製品開発までのサイクルタイムの短縮が要求されております。
これらの要求に対し、表面積が一段と増大する三次元積層デバイスに適応する高機能成膜技術やトリートメント・キュア技術の研究・開発を推進しております。
前者の高機能成膜技術は主力製品であるバッチ成膜装置で、より低コストを可能とするラージバッチ炉、また精密な制御でより高機能な成膜を実現できるミニバッチ炉の技術開発を推進しております。
一方、後者のトリートメント・キュア技術は、枚葉装置でプラズマ等の活性化技術を駆使し、各種アプリケーションの開発を推進しております。
上述のプロセス、プラットフォームの開発に加え、温度制御、供給系、排気系などの各種コンポーネントの要素開発では、外部(大学、各種研究機関、及び原料メーカーを始めとするパートナー各社)との協業を一層強化しております。
外部協業の推進により開発サイクルの短縮を図っておりますが、シミュレーション技術の駆使やデバイス測定環境の内製化によっても、効率的な開発を実現しております。
研究開発成果について、絶縁膜やメタルプロセスのバッチ装置において、さらなる膜品質向上と高生産性を実現し、メモリーデバイス向けを中心に、PORの維持拡大に貢献することができました。また、各種コンポーネント開発と合わせた次世代向けプラットフォームの開発も加速できており、来期以降の市場展開に向け引き続き開発を継続してまいります。その他、既存PORに関しても、研究開発成果を各種継続的改善に繋げることができております。
この結果、第8期連結会計年度における当社グループの研究開発費は12,425百万円となりました。
また、当社グループは半導体製造装置事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
第9期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
当第3四半期連結累計期間において、要素技術開発、及びトリートメント(膜質改善)開発に注力していることには変更はありませんが、成膜反応メカニズムの解明やプラズマトリートメント開発を一層強化しております。
また、プロセス開発をより的確、かつ効率よく行うために、分析・解析技術力の向上をテーマとして掲げ、取り組みを開始いたしました。
この結果、当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費は9,017百万円となりました。また、当社グループは半導体製造装置事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。