当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、人が生きていくうえで欠かすことのできない食の分野を受け持つ企業グループとして、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって、世界の食と健康に貢献することをめざしています。
事業活動と社会活動をともに推進することで、サラダとタマゴのおいしさと魅力を世界にお届けし、健康的な食生活の実現と豊かな食文化の創出をめざします。また、私たちの活動は自然の恵みによって支えられています。持続可能な社会の実現に貢献するとともに、資源の有効活用と環境保全に真摯に取り組むことで、持続可能な地球環境を次世代につなぎます。
当社グループは、内食・中食・外食に幅広く深く展開しているとともに、赤ちゃんからお年寄りまで、人の一生のさまざまな食の場面に深く関わっています。これからもグループの理念を大切にし、“キユーピーグループならでは”のこだわりある商品とサービスを、心を込めてお届けすることをすべての役員ならびに従業員が常に意識し、実践していきます。
(2) 中長期的な経営戦略、経営環境および対処すべき課題等
当社グループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって世界の食と健康に貢献するグループをめざし、長期ビジョン「キユーピーグループ 2030ビジョン」を掲げています。
近年、少子高齢化、共働きや単身世帯の増加などにより世帯構成が変わり、家庭での調理において時短や簡便性などが求められています。また、食品を購入する場面ではECやドラッグストアなどが広がりをみせています。新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は当社グループの業績へ大きな影響を及ぼすとともに、これらの流れをさらに加速させ、新たな生活様式を生みました。買い物の回数・時間の減少による容量や日持ち、食生活、予防や免疫などの衛生・健康面の多様なニーズは今後も続いていくと想定しています。
2021-2024年度 中期経営計画では、お客様や市場の多様化に対応し、「持続的成長を実現する体質への転換」をテーマとし、「利益体質の強化と新たな食生活創造」「社会・地球環境への取り組みを強化」「多様な人材が活躍できる仕組みづくり」の3つの方針に基づいて、事業活動を進めています。これを支える仕組みとして、これまでの事業担当制から市場担当制へ移行することで各市場に求められる対応を迅速に実現していきます。
[経営方針と主な取り組み]
◇利益体質の強化と新たな食生活創造
海外を成長ドライバーとして中国・東南アジア・北米を中心に拡大を進めています。2025年度の稼働に向け、北米で新工場、タイ・インドネシアでは工場増設を予定しており、成長を加速していきます。また、成長を支えるために人材、商品開発、マーケティング、ガバナンスなどの経営基盤の強化などに経営資源を集中的に投下しています。さらに、従来の店舗での販促活動とデジタルマーケティングの活用を融合することにより、ブランド認知率と商品使用率の向上に取り組んでいます。
国内では、市場担当制へ移行し、モノ(商品)視点から市場を軸としたお客様視点に転換することにより、お客様の食生活における悩みの解決や新たな食シーンの創造につながるような商品やサービスをスピーディーに提案していきます。重点領域として、マヨネーズやドレッシングを中心としたサラダとタマゴに特化していきます。さらに、D2C(Direct to Consumer/消費者直販サイト)の新サービス「Qummy®」を展開し、デジタルを活用しながらお客様とのつながりをさまざまな角度から構築し、新しい可能性を広げています。
市販用においては生活様式が変化している中でも、生活必需品となる商品を育成します。マヨネーズはサラダにかける以外にもさまざまな調理シーンで利用される万能調味料としての使い方を提案してきました。その他の主力商品においても、幅広い調理シーンへの提案を強化することで、マヨネーズのような汎用性のある商品への育成をめざしていきます。また、お客様の課題解決につながる商品をお届けし、ブランドや商品の認知拡大を進めていきます。
業務用においては、グループが持つ販路を活用し、内・中食向け業態へ経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの再構築により収益性と効率性を向上させます。おいしさと技術で新たな価値を創出し、顧客ニーズの創造を提案することで、業務用市場の活性化に貢献していきます。
◇社会・地球環境への取り組みを強化
当社グループでは、自然の恵みに感謝し、限りある資源を大切にするという想いで、環境活動に長年取り組んできました。気候変動リスクや食品ロス、海洋プラスチック問題など地球規模での問題が次々に顕在化している中、持続可能な社会の実現への貢献とグループの持続的な成長の実現をめざして、「キユーピーグループ サステナビリティ基本方針」を定めています。あわせて、「持続可能な開発目標(SDGs)」を参考に特定した重点課題への取り組みを進めています。
社会・地球環境に対する企業の責任に向き合い、複雑化する社会課題に対し、バリューチェーン全体で連携し取り組みを進めていくことで、企業価値向上に努めていきます。
なお、サステナビリティ基本方針については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
<サステナビリティ目標>
◇多様な人材が活躍できる仕組みづくり
持続的成長を実現する人材を育成していくために、多様な人材が活躍できる仕組みを構築していきます。
海外展開および市場担当制への移行においては、多様な視点で物事や現象を捉え、それをチャンスに変えることが必要となります。市場で起こる変化点を俯瞰して捉えるためには、市場に精通し、複数の経験やスキルを持った人材の育成が重要です。グループ内での人材の流動性を高めることで、多様なスキルを持つ人材の育成を進めていきます。
また、他部門とのプロジェクトや会議への積極的な参画、社内インターンなどを通じて、多様性を認め合い、関わり合いを持つことができる風土を醸成していきます。
さらに、外部資源を活用しながら学びの場を提供していくことで、新たな経験や知識を習得し、一人ひとりが能力を発揮できる環境を構築していきます。
なお、人材の活躍の重要な指標である女性管理職比率(対象:キユーピー株式会社)は、2024年11月期18%、2030年11月期30%をめざします。
[キャッシュ・フローの配分と経営指標について]
◇キャッシュ・フローの配分
持続的な成長を実現するために、適正な投資の実行や株主還元を行いながら、健全な経営基盤を確立します。
キャッシュ・フローの配分については、4年間の累積営業キャッシュ・フローを1,400億円とし、その範囲内でのコントロールを基本とします。設備投資は約700億円の計画とし、資産や投資の効率性を重視します。内部留保については、自己資本比率60%以上を目安とし、将来の成長のため、新規展開の資金を確保したうえで株主還元を拡充します。
◇経営指標
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2024年11月期目標 |
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ROE |
8%以上 |
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営業利益率 |
7.5% |
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海外売上高伸長率(現地通貨ベース) |
(年率)10%以上 |
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社グループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって世界の食と健康に貢献することで、社会に貢献し続ける企業でありたいと考えています。サステナビリティ活動を重要な活動と位置づけ、グループ理念と規範の実践を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、グループの持続的な成長の基盤として、「キユーピーグループ サステナビリティ基本方針」を定め活動を推進します。
サステナビリティ基本方針
1) ガバナンス
サステナビリティ関連の重点課題については、経営会議(代表取締役社長執行役員の諮問機関)から権限を委譲されたサステナビリティ委員会が目標達成に向けた方針・計画の策定を行うとともに、重要事項の決定、重点課題の取り組みを推進しています。サステナビリティ委員会で検討した内容は取締役会でも適宜審議または報告がなされるなど、取締役会による適切な監督体制を整えています。
コーポレート・ガバナンス体制については、「
サステナビリティ推進体制
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会議体・他体制 |
役割・担当 |
2023年度 開催数 |
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取締役会 |
グループの全体方針および最重要事項の選定および気候変動を含めたサステナビリティ関連(全般)の監督 |
2回/ 全12回 |
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サステナビリティ委員会 |
気候変動対応を含めたサステナビリティ関連の方針・計画の策定、重要事項の決定、重点課題の取り組みの推進 |
全4回 |
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サステナビリティ委員会委員長 |
取締役 上席執行役員コーポレート担当 |
- |
2) 戦略
キユーピーグループ サステナビリティ基本方針に基づく重点課題を指標化したサステナビリティ目標を設定し、取り組みを進めています。サステナビリティ目標については、「
① 食と健康への貢献
世界の食と健康に貢献するため、「健康寿命延伸への貢献」および「子どもの心と体の健康支援」に取り組んでいます。
生涯を通じて健康な食生活を送るためには「栄養」「運動」「社会参加」の3つをバランスよく取り入れることが大切です。当社グループは特に「栄養」に関して、サラダとタマゴで健康課題解決のためのおいしくバランスの良い食生活をサポートしています。
また、講演会やマヨネーズ教室、オープンキッチン、SDGs教室などのさまざまな食育活動を行っています。さらには、子どもたちが食生活に関して主体的に学び・考え・判断する力を育むためのサイト「食生活アカデミー」を立ち上げています。
② 資源の有効活用・循環
限りある食資源を無駄なく有効活用することは、食品メーカーの重要な責任であると考え、「食品ロスの削減・有効活用」「プラスチックの削減・再利用」「水資源の持続的利用」などに取り組んでいます。
食品ロスの削減・有効活用では、卵においては、卵黄、卵白は商品や食品原料として使用しているのはもちろんのこと、卵殻においても土壌改良材やカルシウム強化商品として活用、卵殻膜も化粧品として活用することで、卵の100%有効活用を実現しています。
また、野菜の未利用部(キャベツ・レタスなど葉物野菜の残さ)を、乳牛用飼料として再生利用することに成功しました。東京農工大学と当社の共同研究で、この飼料を与えた乳牛は乳量が増加することが報告されています。さらに、パッケージサラダを製造・販売する子会社である株式会社サラダクラブでもパッケージサラダを製造する直営7工場で発生する野菜の外葉や芯などの未利用部を、堆肥や飼料として契約農家などで活用いただくことですべて再資源化しています。
プラスチックの削減・再利用の取り組みの1つである製品で使用するプラスチックについても、石油由来のプラスチックの削減に向け、プラスチックの軽量化や再生プラスチックを使用する取り組みを進めています。当社のキユーピー「テイスティドレッシング」シリーズ全7品と、機能性表示食品のドレッシング全5品に、国内調味料として初めて、100%再生プラスチック(PET樹脂)を使用したリサイクルボトルを2023年8月より採用しました。
また、水資源の持続的利用においては、事業継続のために水は限りある貴重な資源と認識し、効率的な利用と取水・排水における環境負荷の低減に取り組んでいます。
③ 気候変動への対応
気候変動の原因となるCO2排出量削減に向けて、原料調達から消費までのバリューチェーン全体で、省エネルギーや再生エネルギーへの転換を積極的に行うことが重要と考えています。当社グループでは国内外で再生可能エネルギーの導入を順次進めています。キユーピー神戸工場においては、屋上に太陽光発電のスペースを設け、関西電力株式会社が設置と管理を行う「オンサイトPPAモデル」で運用を開始しています。 2022年12月からは関西電力株式会社による再生可能エネルギーメニューでの電力供給と、三井物産株式会社からの供給燃料(蒸気)で発生するCO2相当のJ-クレジットの購入により、実質再生可能エネルギー由来100%へ切り替えることができました。この取り組みにより、当社グループで初のネットゼロ工場が実現し、年間約3,680トンのCO2排出量が削減できる見通しです。
また、2022年8月には、株式会社キタカミデリカが太陽光発電のスペースを提供し、株式会社Looopが設置と管理を行う「オンサイトPPAモデル」で運用を開始し、同工場での総電力使用量の5.3%を発電することで、年間約85トンのCO2排出量削減を見込んでいます。
④ 生物多様性の保全
当社グループの事業活動は、豊かな自然環境と密接な関わりを持っています。「良い商品は良い原料からしか生まれない」という考えを大切に、「生物多様性方針」のもと、原料を生み出す自然の恵みに感謝し、豊かな自然と生物多様性の保全に努めていきます。
⑤ 持続可能な調達
調達にあたっては品質だけではなく、環境や人権に与える影響にも配慮する必要があると考えています。当社グループでは「キユーピーグループの持続可能な調達のための基本方針」を2018年に策定し、環境や人権に配慮した調達を推進しています。さらにサプライヤーガイドラインを定め、本ガイドラインをもって相互理解のもと、サプライチェーンにおけるさまざまな課題解決を行い、安全性はもとより、環境や人権への影響に配慮した安定調達をお取引先と協働して進めます。
⑥ 人権の尊重
事業活動のすべての過程で、直接または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識し、ビジネスに関わるすべての人の人権を尊重することをめざしています。バリューチェーンに関わる幅広い人権リスクに向き合うための実行プロセスとして、人権デューデリジェンスの枠組みに沿って取り組んでいます。また、当社グループではさまざまな国籍の方が働いていることから、従業員一人ひとりが人権を尊重し、差別やハラスメント行為のない職場環境を実現するために従業員への啓発活動や研修などを実施しています。
3) リスク管理
社内外の経営環境の変化を広く見据え今後リスクとなりうることを洗い出し、それらの評価を行うことで重要なリスクを見極めています。リスクの評価と選定については、「
4) 指標および目標
当社グループではサステナビリティに向けた重点課題に紐づけ、キユーピーグループとして取り組むテーマごとにサステナビリティ目標を設定しています。従業員一人ひとりが、サステナビリティの意識と視点を持ち、キユーピーグループの理念と規範の実践により、目標達成に向けて取り組んでいます。
サステナビリティ目標については、「
(2)気候変動に対する考え方
当社グループは「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」へ賛同し、これに賛同する企業や金融機関等が連携する場としての「TCFDコンソーシアム」に参画しました。
そして当社グループ内で「TCFDプロジェクト」を発足し、2021年からTCFDに取り組んでいます。
① ガバナンス
気候変動に対するガバナンスについては (1)ガバナンスに準じます。追記事項として2023年度はサステナビリティに関する方針や気候変動に対する対応策に関して取締役会への報告がなされました。さらに四半期ごとにサステナビリティの取り組み状況について取締役会に共有をしました。また、設備投資の判断の際にはICP(インターナルカーボンプライス)の考えを導入しています。
② 戦略
当社グループでは気候変動に伴うさまざまなリスクと機会について、その重要性に応じて短期・中期・長期にわたっての特定を行い、また外部環境の変化も踏まえ、定期的に分析・評価の見直しを行っています。リスクと機会の特定においてはIPCC※1や IEA※2などが発表しているシナリオを用いて、2つのシナリオを描いております。1つ目のシナリオは2100年時点において産業革命以前より1.5~2℃気温上昇し、環境政策が進展するシナリオ(以下「環境政策進展シナリオ」と表記)、2つ目のシナリオは2.7~4℃気温上昇し、気候変動に対し必要な施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ(以下「成り行きシナリオ」と表記)とし、2030年の事業におけるインパクトを算出しました。特定されたリスクと機会について対応策を検討し、単年度計画および中期経営計画に組み込み、推進します。
※1 IPCC
IPCCとは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)のことで、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)により 1988年に設立された政府間組織です。各国政府の気候変動に関する政策に必要な科学的情報を提供しています。
※2 IEA
IEAとは、国際エネルギー機関(International Energy Agency)のことで、OECD(経済協力開発機構)の枠内における自律的な機関として第1次石油危機後の1974年に設立された組織です。エネルギー政策に必要な中長期の需給見通しなどの情報を提供しています。
・シナリオ分析の適用
2021年から2024年にわたる中期経営計画において、段階的に分析範囲を拡張していきます。 2021年度は国内および海外市場におけるマヨネーズ、ドレッシング(特に深煎りごまドレッシング)、2022年度はタマゴ、そして2023年度はパッケージサラダ(キャベツ、レタス)に対する気候変動リスクと機会の分析を手掛けました。特に主原料の食油・卵・食酢においての穀物を主体とした農作物に加えキャベツ、レタスなどの農作物も気候変動が影響することを認識しました。これに対し、特定の農作物への依存度合いを中長期的に引き下げていく戦略を検討しています。
・主な気候変動リスクと機会
<環境政策進展シナリオ>
厳しい環境規制・高い炭素税が導入され、世界ではカーボンニュートラルが達成されます。農林水産部門ではCO₂ゼロエミッション化を実現する一方で、サプライヤーの環境対応コストが高まります。健康意識が高い消費者が増加し、サラダなど野菜の摂取量が増加します。また、環境意識の高まりから持続可能性が高い商品の需要も増加します。環境政策進展シナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
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リスク項目 |
リスク |
機会 |
時期※3 |
インパクト |
||
|
大分類 |
中分類 |
小分類 |
||||
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移行リスク |
政策・規制 |
炭素税の導入 |
○ |
|
中期 |
中 |
|
プラスチック・包装材への規制 |
○ |
|
中期 |
小 |
||
|
未利用資源の価値化 |
|
○ |
中期 |
中 |
||
|
市場 |
持続可能性が高い商品の需要増加 |
|
○ |
中期 |
大 |
|
|
環境に配慮した原資材の調達コスト増加 |
○ |
|
中期 |
小 |
||
|
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
||||||
<成り行きシナリオ>
低炭素化は進展するものの、2050年カーボンニュートラルは達成せず、気温が上昇する影響により、自然災害は激甚化・頻発化し、サプライヤー・自社の生産拠点で浸水被害発生頻度が上昇します。熱ストレスによる農作物の収量低下により、原材料調達コストが増加します。一方で気温上昇に伴い免疫事業などの需要が増加します。成り行きシナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
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リスク項目 |
リスク |
機会 |
時期※3 |
インパクト |
||
|
大分類 |
中分類 |
小分類 |
||||
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物理リスク |
慢性 |
熱ストレスによる収量減少に伴う農作物の調達コストの増加 |
○ |
|
中期 |
中 |
|
急性 |
洪水による生産設備の被災・停電、操業の停滞・停止 |
○ |
|
短~ 長期 |
小~大 |
|
|
商品・ サービス |
気温の上昇に伴う、新製品・新規事業の需要増加 |
|
○ |
中期 |
大 |
|
|
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
||||||
・気候変動リスクと機会に対する対応策(●リスクに備えた対応 ○機会を生かした取り組み)
シナリオ分析により特定されたリスクと機会に対し、次のテーマを推進し、持続的成長に活かしていきます。
○環境政策の進展した市場への対応
・環境配慮型商品の需要増加への対応
・農作物(食油)などを使いこなす技術革新
・原料相場に強い体質への転換
・容器包装プラスチック軽量化
・使用したプラスチックの再利用
・再生プラスチックやバイオマスプラスチックの積極導入
・商品の使い方提案による環境負荷低減
○食品ロスの削減と有効活用
・野菜未利用部の有効活用(飼料・肥料化)
○温暖化による感染症への関心拡大
・酢酸菌ビジネスの展開
●CO2排出量の削減
・CO2排出量の削減を指標とした設備投資(電化の推進、インターナルカーボンプライシングの導入など)
・製造工程中の加熱や殺菌工程の見直し
・再生可能エネルギーの活用・導入・サプライヤーとの協働
●洪水への備え
・洪水リスク評価に応じ重点的な対策
・主力製品のBCP(被災時に備えた事業継続計画)
上記の対応策に関連して2023年度に実施した内容は主に下記のとおりです。
|
対応策 |
○環境政策の進展した市場への対応 ・再生プラスチックやバイオマスプラスチックの積極導入 |
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取り組み |
国内調味料初、100%再生PET樹脂ボトルをキユーピー テイスティドレッシングと機能性表示食品ドレッシングの全品に採用 |
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概要(当社ウェブサイト参照) |
https://www.kewpie.com/newsrelease/2023/3022/ |
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対応策 |
●CO2排出量の削減 ・再生可能エネルギーの活用・導入 |
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取り組み |
KEWPIE MALAYSIA SDN.BHD.など国内外の事業所内で太陽光発電を開始 |
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概要 |
国内: キユーピータマゴ株式会社 三田工場 尾張工場 株式会社サラダクラブ 遠州工場 コープ食品株式会社 東北工場 海外: KEWPIE MALAYSIA SDN.BHD. 南通丘比食品有限公司 広州丘比食品有限公司 これにより2024年度以降は2,200トンCO2/年の排出削減を実現できる見込みです。 |
③ リスク管理
気候変動に対するリスク管理については
④ 指標と目標
気候変動によるリスクと機会を測定・管理するために用いている指標については
(3) 人的資本
①人材育成方針
当社グループは、国内・海外において幅広い領域に事業を展開しており、これからの市場環境の変化や成長領域の拡大に向けて、より一層、さまざまなスキルや経験を持った多様な人材の活躍が必要になります。持続的成長を実現する人材を育成していくために、中期経営計画のテーマの1つとして、「多様な人材が活躍できる仕組みづくり」を掲げています。ダイバーシティ&インクルージョンの理解につながる機会づくり、多様な従業員の活躍につながる場づくり、成長を実感できるキャリアや学びへの仕組みづくりなどを通して、世界で働く従業員一人ひとりの個性や成長する意欲と、個々の能力を最大限に発揮できる企業風土づくりに取り組んでいます。
② 環境整備・取り組み
◇ダイバーシティ&インクルージョンへの理解につながる機会づくり
・活発な「対話」と「機会の提供」
経営会議など、重要会議の参加者の20%を多様な人材(年代・性別・スキル・キャリア)から構成する「KEEP20」の取り組みをグループ内で展開しています。異なる視点から意見を引き出しあうことで、議論の活性化と新たなイノベーションを生み出すことを狙いとしており、従来の参加メンバーと新たな参加メンバーの相互において、気づきや学びが得られる機会となっています。
・ダイバーシティとエンゲージメントの実感調査
グループ社員を対象として「ダイバーシティ&エンゲージメント・アンケート」を実施し、「多様性」「公正性」「受容」「エンゲージメント」の各項目に対する、社員の実感を調査しています。分析結果はグループ内でオープンに共有し、グループの多様な人材が活躍できる環境づくりへの活用を進めています。一人ひとりの能力を最大限に発揮できる企業風土づくりと人的資本への投資効果を測る重要な指標として、継続して調査を実施します。
◇多様な従業員の活躍につながる場づくり
・挑戦の機会の提供
グループとして優先的に進めるべき戦略と位置付けた領域への人材配置にあたり、グループ全社員に対する公募を実施し、高い意欲や、キャリア実現への強い想いを持った従業員を抜擢する取り組みを進めています。2023年は「グループDX公募」として、デジタルでグループを変革したいという強い想いを持った方を募集し、申請のあった数十名の中から6名を選出しました。
また、2012年より実施している、新規事業プラン社内公募「Kewpie Startup Program」も継続して進めており、事業化検討審査の他、定期的なセミナーやワークショップを開催しています。
・女性従業員の活躍支援
グループの約半数を占める女性従業員が十分に活躍できるよう、女性総合職の育成や、転居を伴う異動のない総合職制度の導入、地域職から総合職への転換、女性管理職勉強会で新任管理職の育成支援などを進めています。人事制度や労務制度に加えて、マネジメントや風土もあわせて変えていくことで、意欲ある女性や、共働きの従業員が安心して働き続けられる会社をめざしています。
女性管理職比率 目標および実績数値
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2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 目標 |
2030年度 目標 |
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女性管理職比率 (キユーピー単体) |
12.5% |
14.5% |
18% |
30% |
◇成長を実感できるキャリアや学びへの仕組みづくり
・従業員の自己実現の支援
当社では、従業員のキャリア自律を支援する仕組みとして、キャリア自己申告制度を導入しています。グループの事業領域の広さを活かして、従業員が仕事を通じて自己実現できる環境づくりを進めています。具体的には、各部署の役割や仕事を知る機会の創出、希望の職場への異動実現支援などにより、定量的にキャリア自己申告の実現率向上を推進しています。
キャリア自己申告実現率 目標および実績数値
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2021年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2025年度 目標 |
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自己申告実現率 (キユーピー単体) |
8% |
10% |
14% |
25% |
・学びの場の拡充(コーチングセッション、管理職の学び)
社内認定コーチの育成と、社内認定コーチによるコーチングセッションを進めています。会社組織での目標達成やチームビルディング、さらに、従業員一人ひとりのキャリア形成や自己実現を111人の社内認定コーチが支援。2023年度は650回を超えるセッションを実施しました。また、従業員が生涯に渡り学習を通じて成長することを後押しする為、2023年より、「管理職の学びサイト」をスタートしました。コラム配信など、定期的な学習情報を共有し、グループ人材の学びなおしと基盤強化を進めています。
この有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるものには、以下の表内のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識したうえで、発生の抑制・回避に努めています。そのためにリスクマネジメント基本規程において当社のリスク管理を体系的に定め、個々のリスクを各担当部門が継続的に監視しています。直近の業績への影響が大きなリスクについては経営会議、全社的なリスクについてはリスクマネジメント委員会、気候変動を含む社会・環境に関するリスクについてはサステナビリティ委員会でそれぞれ情報を共有し、リスクの評価、優先順位および対応策などを管理しています。また、リスクマネジメント担当執行役員は、全社的リスクの評価や対応の方針・状況などを定期的に取締役会へ報告しています。
リスクの評価と選定については、社内外の経営環境の変化を広く見据え今後リスクとなりうることを洗い出し、それらの評価を行うことで重要なリスクを見極めています。「各リスクの経営への影響の大きさ」と「そのリスクの管理の程度(マネジメントコントロール度)」の2軸で評価し、対策すべきリスクを選定し優先順位づけをしています。経営への影響度が大きいにも関わらずマネジメントコントロールが不十分なリスクは『全社主要リスク』として全社横断的なプロジェクトにより、最優先でリスク低減に努めています。活動を通じて対策が効果を上げ、マネジメントコントロール度が高まったとしても、依然として経営への影響度が大きい場合は、その後の状況を監査などにより確認しています。経営への影響度が小さく経営課題とならない場合においても、感度高く社外情報の収集、モニタリングに努めています。このように社内社外両面からモニタリングを行い状況変化に応じた重要性を適時評価し機敏にリスクに向き合うように努めています。
しかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの信用、業績および財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、以下の表内の内容は、当社グループに係るすべてのリスクを網羅したものではありません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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市場の動向 |
長期にわたり漸次的にその影響が大きくなる可能性がある主なリスクは次のとおりです。
・国内人口減少による長期的な市場縮小 ・野菜価格変動によるマヨネーズ・ドレッシングの販売影響 |
国内では「市販用」と「業務用」の2体制でフレキシブルな市場対応を図り持続的成長につなげています。当社グループの内食・中食・外食への展開力を活かしサラダとタマゴの可能性を広げ、健康寿命延伸に貢献することで事業機会の創出をめざします。また、お客様の食生活における悩みの解決や新たな食シーンの創造につながるような商品・サービスをスピーディーに提案し、市場と需要の開拓を推進しています。特に成長が見込まれるドラッグストアなど未開拓販路の開拓に加え、デジタルマーケティングを強化しD2C(Direct to Consumer/消費者直販サイト)市場での取り組みを進めています。 海外では、中国、東南アジアと北米を重点エリアとし、当社グループのこれまでの顧客層である富裕層から中間層へ開拓を進めます。またデジタルコミュニケーションとマーケティング機能を強化し、「キユーピーブランド(丘比、KEWPIE)」の認知率と商品使用率の向上に取り組んでいきます。人材や商品開発、マーケティング、ガバナンスなどに経営資源を集中的に投下し、持続的な成長を図っています。 |
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原材料(主原料やエネルギー・一般原資材)の調達 |
・食油調達においては、大豆や菜種の相場、為替相場および需給などの変動により短期、長期的な価格変動リスクがあります。 ・鶏卵調達においては、突発的な鳥インフルエンザの発生、産卵鶏の羽数変動、長期的な鶏卵の消費動向などによる価格変動および調達困難リスクがあります。 ・その他当社グループで使用している原材料調達は、国際的な景気動向や需給バランス、為替の変動、地政学リスクなどによる価格変動リスクがあります。
また、社会的な配慮のもとでの持続可能な調達への取り組みが不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、原材料価格の上昇の影響を低減するため、商品の価格改定や付加価値化、生産効率化、グループ連携による調達体制の構築などの取り組みを進めています。また、主原料の相場影響を受けにくい事業構造への転換を進めています。 鶏卵調達においては、大手生産者を中心に各地の生産者との年間数量計画、一定価格契約、相場でのスポット契約の組み合わせ、また一部地域で鳥インフルエンザが発生して卵の移動が制限されたとしても他の地域の工場でカバーできる全国調達・割卵工場体制整備などを実施しています。鳥インフルエンザの猛威による原価上昇と減産による利益減少のリスクについては、発生時期を考慮した原料及び製品在庫を確保するとともに、商品の付加価値化を進め、収益性向上に努めています。 中長期的な持続可能性の観点では、採卵鶏のアニマルウェルフェアの課題に関係する業界や行政と連携しながら取り組んでいます。 社会的な配慮のもとでの持続可能な調達に向けて、「キユーピーグループの持続可能な調達のための基本方針」を定め、原料の品質だけでなく、サプライチェーン上での環境や人権に与える影響の確認を進めています。本基本方針の実現に向けて「キユーピーグループ サプライヤーガイドライン」を定め、サプライヤーとの相互理解のもとサプライチェーンにおけるさまざまな課題解決を行い、持続可能な調達およびサプライヤーとの共存共栄をめざして取り組んでいます。 |
|
事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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製造物責任 |
異物混入や誤表示など、消費者に健康被害を及ぼす恐れのある製品事故は、重篤なリスクとして常に認識しています。 |
当社グループ創業以来の品質第一主義を基本として、食品安全マネジメントシステム(FSSC22000)の認証、グループを横断した品質監査の実施、FA(ファクトリー・オートメーション)を活用した製品保証やトレーサビリティ、また自社モニタリングや調達原料の品質規格書管理システムの構築など、制度・システム面から品質保証の充実を推進しています。 加えて、従業員の品質に対する意識と理解が最も重要なことから、OJTや勉強会などさまざまな機会を通じた知識・技術の習得はもちろん、品質第一主義の浸透にも努めており、永続的な企業発展の基盤となる「安全・安心で高品質な食品の提供」を担保するため、万全な体制で取り組んでいます。 |
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自然災害などの不測の事態 |
巨大台風、豪雨・長雨による洪水や大規模地震などの自然災害の影響が大きくなる可能性があります。それらにより次のようなリスクを想定しています。
・製造や物流施設・設備などの破損 ・原資材やエネルギーの調達困難 ・操業に必要な人員の不足 |
過去の災害の経験を活かし、当社グループ横断で危機発生時の事業継続計画(BCP)を整備し、対策に取り組んでいます。 東京にある本社の代替機能を関西に設置する体制の整備、非常時の通信ネットワークの整備や物資の備蓄、生産設備や物流設備の補強、不測の事態において生産可能状況を確認するシステムの整備、主要商品に関する生産や原資材調達機能および受注機能を2拠点化することなどにより危機発生時に備えており、災害の種類毎にマニュアルを整備しています。 さらにそれらを確実に運用できるようにするために大規模災害対応訓練(初動対応訓練や商品供給訓練、安否確認訓練)も行っています。 |
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システム障害 |
近年、ランサムウェアなど高度化した外部からのサイバー攻撃によりシステムが停止することで事業活動に大きな影響が出る可能性があります。 |
当社グループでは、サイバー攻撃を受けた場合の備えとして「防御システムの多層化」を実施し、迷惑メールや不正アクセスを防ぐ対策に加えて、24時間監視し不審なプログラムの挙動を判定し実行防止するEDRシステムなどによる対策を行っています。 並行して従業員の「リテラシー向上」に向けた対策として、攻撃メールへの対応模擬訓練、情報セキュリティ教育など定期的に実施し、さらに従業員の情報セキュリティ意識を高く保てるよう情報推進委員会が適宜情報を発信しています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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人材、労務関連 |
人材、労務に関しては、主に次のようなリスクを常に想定しています。
・製造や物流現場の活動を担う人材が不足すること ・不適切な労働時間管理、過重労働 ・ハラスメント |
当社グループでは、継続的な採用、教育の充実、労働環境の最適化などにより人材の確保、定着に取り組んでいます。具体的には、作業の効率化、省力化を推進し、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や各種ロボット、AIの活用に取り組んでいます。加えて外国籍の方が就労し易い環境整備も進め、雇用を拡大していきます。 すべての職場の従業員一人ひとりが安心して働くことができ、仕事と家庭生活の両立が実現できる雇用環境の整備を進め、テレワークの積極的な活用、労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント予防に関する従業員教育の徹底、内部通報制度(ヘルプライン)の設置などにより労務関連リスクの低減に取り組んでいます。 これらに加え、持続的成長を実現する人材を育成していくために、多様な人材が活躍できる仕組みづくりを実施し、併せて専門性の高い外部人材の採用や登用を推進しています。 |
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海外展開 |
海外展開においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・脆弱な経営基盤によるトラブル ・情報管理の不備による漏洩 ・模倣品の流通による競争力の侵害およびブランドイメージ毀損 ・地政学リスク |
海外子会社においても当社グループの理念を浸透させるための現場教育、各種研修などを行っています。また、内部統制システム整備を進めており、具体的には決裁権限の明確化、契約書・規程管理や経理・財務規程、反贈収賄規程、人事評価制度など各種規程や制度の整備・運用、内部通報制度の導入、事業継続計画(BCP)および危機管理訓練などにより経営基盤の強化に取り組んでいます。 さらに会社情報や重要技術情報の取り扱い・セキュリティに関する規程の導入および盤石なICTネットワークの構築に取り組んでいます。 模倣品対策では、市場に出回る当社商標権の侵害品や紛らわしい他社品を排除するとともに、悪意ある商標出願を権利化させないように取り組んでいます。 生産拠点のある地域の政治・経済情勢や法規制の動向を確認し、エリア毎に必要な対応を検討、実施しています。また、国際情勢によって生じるカントリーリスクについては、有形・無形資産の対応、原料調達リスクの分散、知的財産の保護、従業員の退避などの観点で備えています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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地球環境問題、気候変動 |
地球環境問題、気候変動においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・原資材調達難、価格高騰 ・CO2排出規制強化 ・エネルギーコスト増 ・大雨、洪水による生産設備被災
これらサステナビリティへの取り組み、対応が不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、サステナビリティにむけての重点課題として環境面では「資源の有効活用・循環」、「気候変動への対応」および「生物多様性の保全」を特定し、グループ全体で取り組んでいます。 当社グループの事業は、自然の恵みに強く依存しているため、原材料の収量の減少や品質の低下、価格高騰など、気候変動によるさまざまな影響を受ける可能性があります。機動的な価格適正化や原料相場に強い体質へ転換するため、ポートフォリオの最適化やグループ連携による調達体制の構築を進めています。気候変動に関連する事象を経営リスクとして捉えて対応すると同時に、新たな機会を見出し企業戦略へ活かします。TCFDへ賛同し、TCFDが提言するフレームワーク「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目に基づいた情報を掲載しています。
詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの経営環境は、国際的な穀物・エネルギー相場の高止まりや高病原性鳥インフルエンザ感染拡大の影響など厳しい状況となりました。このような環境において、国内では市場担当制を活かし、お客様の多様化するニーズに対応するとともに、収益性の高い体質づくり、新たな価値提案の実現に向けて取り組みました。海外では、引き続き中国・東南アジア・北米を中心に、KEWPIEブランドの浸透を加速させ、成長ドライバーとして拡大を進めました。
当連結会計年度の売上高は、海外の安定成長や調味料、タマゴ商品の価格改定による単価上昇などにより増収となりました。営業利益は、主原料およびエネルギー・一般原資材の高騰影響を受けたことにより減益となりました。経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の減少により減益となりました。
当連結会計年度の連結業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
売上高 |
430,304 |
455,086 |
24,782 |
5.8% |
|
営業利益 |
25,433 |
19,694 |
△5,739 |
△22.6% |
|
経常利益 |
27,249 |
20,490 |
△6,759 |
△24.8% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
16,033 |
13,174 |
△2,859 |
△17.8% |
◇ セグメント別の状況
|
[売上高の内訳] |
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
173,392 |
177,395 |
4,003 |
2.3% |
|
業務用 |
158,832 |
165,336 |
6,504 |
4.1% |
|
海外 |
66,267 |
78,277 |
12,010 |
18.1% |
|
フルーツ ソリューション |
16,461 |
16,953 |
492 |
3.0% |
|
ファインケミカル |
10,013 |
11,170 |
1,157 |
11.6% |
|
共通 |
5,335 |
5,953 |
618 |
11.6% |
|
合 計 |
430,304 |
455,086 |
24,782 |
5.8% |
|
[営業利益の内訳] |
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
13,433 |
9,939 |
△3,494 |
△26.0% |
|
業務用 |
6,923 |
4,135 |
△2,788 |
△40.3% |
|
海外 |
8,471 |
10,308 |
1,837 |
21.7% |
|
フルーツ ソリューション |
315 |
320 |
5 |
1.6% |
|
ファインケミカル |
1,267 |
1,040 |
△227 |
△17.9% |
|
共通 |
1,209 |
1,209 |
△0 |
△0.0% |
|
全社費用 |
△6,187 |
△7,259 |
△1,072 |
- |
|
合 計 |
25,433 |
19,694 |
△5,739 |
△22.6% |
<市販用>
・調味料の価格改定による単価上昇等で増収
・主原料高騰等による影響を受け減益
<業務用>
・価格改定効果やタマゴ商品の販売価格が鶏卵相場高騰により上昇し増収
・主原料高騰等による影響を受け減益
<海外>
・中国・東南アジア・北米が堅調に推移し増収
・北米のブランド品拡大と主原料高騰による影響の緩和により増益
<フルーツ ソリューション>
・食品メーカー向けの販売増加や家庭用ジャム・スプレッドの価格改定効果等により増収増益
<ファインケミカル>
・通信販売・原料販売ともに好調に推移し増収となったものの、コスト増等により減益
<共通>
・食品メーカー向け製造機械の販売増加により増収となったものの、販管費等の増加により減益
◇ 財政状態の状況
・総資産は、4,260億6百万円と前期末比226億22百万円増加
主に現金及び預金の増加87億85百万円、受取手形及び売掛金の増加51億1百万円、有価証券の減少80億円、商品及び製品の増加70億72百万円、建設仮勘定の増加36億47百万円、退職給付に係る資産の増加69億74百万円によるものです。
・負債は、1,147億2百万円と前期末比59億41百万円増加
主に繰延税金負債の増加32億8百万円、固定負債のその他の増加21億54百万円によるものです。
・純資産は、3,113億3百万円と前期末比166億80百万円増加
主に利益剰余金の増加62億25百万円、その他有価証券評価差額金の増加25億91百万円、退職給付に係る調整累計額の増加42億84百万円、非支配株主持分の増加24億54百万円によるものです。
②キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の残高は、624億33百万円と前期末比29億2百万円減少となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が220億75百万円、減価償却費が169億35百万円、棚卸資産の増加が65億55百万円、法人税等の支払いが71億21百万円となったことなどから237億25百万円の
収入(前期は271億99百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が151億64百万円、定期預金の預入による支出が55億67百万円となったことなどから177億21百万円の支出(前期は159億47百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが69億50百万円、非支配株主への配当金の支払いが
14億11百万円となったことなどから95億14百万円の支出(前期は168億12百万円の支出)となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は、下記のとおりです。
|
|
2019年 11月期 |
2020年 11月期 |
2021年 11月期 |
2022年 11月期 |
2023年 11月期 |
|
自己資本比率(%) |
53.0 |
52.8 |
64.5 |
66.4 |
66.2 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
78.3 |
68.5 |
84.2 |
84.3 |
84.2 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.5 |
2.3 |
1.1 |
1.2 |
1.4 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
144.7 |
103.7 |
159.0 |
110.6 |
61.1 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としています。
※キャッシュ・フローおよび利払いは、それぞれ連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を使用しています。
※2021年11月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2020年11月期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させています。
③ 生産、受注および販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
119,562 |
106.0 |
|
業務用 |
107,372 |
109.2 |
|
海外 |
52,014 |
115.0 |
|
フルーツ ソリューション |
11,818 |
106.1 |
|
ファインケミカル |
5,022 |
101.6 |
|
共通 |
2,522 |
95.5 |
|
合計 |
298,312 |
108.5 |
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
15,796 |
104.9 |
|
業務用 |
19,014 |
115.6 |
|
海外 |
3,200 |
87.7 |
|
フルーツ ソリューション |
1,266 |
104.6 |
|
ファインケミカル |
117 |
109.6 |
|
共通 |
2,630 |
119.4 |
|
合計 |
42,026 |
108.6 |
c.受注実績
主要製品以外の一部の製品について受注生産を行うほかは、すべて見込み生産のため記載を省略しています。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
177,395 |
102.3 |
|
業務用 |
165,336 |
104.1 |
|
海外 |
78,277 |
118.1 |
|
フルーツ ソリューション |
16,953 |
103.0 |
|
ファインケミカル |
11,170 |
111.6 |
|
共通 |
5,953 |
111.6 |
|
合計 |
455,086 |
105.8 |
(注) 外部顧客に対する売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告金額および報告期間における収益・費用の報告金額に影響する見積り、判断および仮定を必要としています。過去の実績や状況を踏まえ合理的と考えられるさまざまな要因に基づき、継続的に見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
(1) 固定資産の減損処理
保有する固定資産について、原則として継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分(会社別、事業別かつ事業所別)を単位としてグルーピングを行い、当該資産グループ単位で減損の兆候を把握しています。減損損失を認識するかどうかの判定および使用価値の算定に際して用いられる将来キャッシュ・フローは、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報に基づき、合理的な仮定を置いて計算しています。将来の市場環境の変化などにより、見積り額と実態に乖離が生じた場合には、減損損失が発生する可能性があります。
なお、将来キャッシュ・フローの見積りの算定における主要な仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(2) 貸倒引当金の計上基準
貸倒引当金については、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過年度実績率を基礎とした将来の貸倒予測率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
(3) 投資有価証券の減損処理
投資有価証券の評価方法については、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しています。保有する有価証券につき、市場価格のない株式等以外のものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のない株式等は投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っています。
この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
(4) 繰延税金資産の回収可能性の評価
繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しています。しかし、繰延税金資産の回収可能見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益が変動する可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.財政状態および経営成績の分析
当連結会計年度における財政状態および経営成績の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
b.資金の財源および資金の流動性
(1) キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(2) 資金の需要
さらなる企業価値の向上を図るための設備投資、事業投資、債務の返済および運転資金などの資金需要に備え、資金調達および流動性の確保に努めています。
(3) 資金の調達
必要な資金は内部資金より充当し、不足が生じた場合は銀行借入および社債発行により調達しています。
(4) 資金の流動性
複数の金融機関との当座貸越契約を設定しています。また、当社および国内連結子会社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しています。
c.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、2021年度からの4年間を対象とする中期経営計画を策定し、最終年度である2024年11月期において、「ROE(自己資本利益率) 8%以上」「営業利益率 7.5%」「海外売上高伸長率(現地通貨ベース) (年率)10%以上」を目標として掲げています。
中期経営計画の3年目にあたる当連結会計年度におきましては、ROE(自己資本利益率)が4.8%、営業利益率が4.3%、海外売上高伸長率(現地通貨ベース)は前年比10%の増加となりました。
◇経営指標
|
|
2023年11月期 |
2024年11月期目標 |
|
ROE(自己資本利益率) |
4.8% |
8%以上 |
|
営業利益率 |
4.3% |
7.5% |
|
海外売上高伸長率(現地通貨ベース) |
(前年比)10% |
(年率)10%以上 |
該当事項はありません。
当社グループは、世界のお客様の楽しく健やかな食生活に貢献するために、「人の健康」「地球の健康」「未来の食生活の創造」を重点研究領域とし、研究開発に取り組んでいます。マヨネーズやドレッシングをはじめ、様々な分野で培ってきたコア技術を軸に、「キユーピーグループ 2030ビジョン」とその先を見据えた未来創造の実現をめざしています。
「人の健康」領域においては、評価・解析研究部を中心に、食品の3大機能(栄養機能、嗜好・感覚機能、健康機能)について評価・解析を行い、付加価値を提供しています。2023年度は、酢酸菌を使用した商品「ディアレプラス」について免疫訴求の機能性表示食品として届け出を行い受理されました。また、卵黄コリンの認知機能訴求のエビデンス開発を行い、論文2報が掲載されました。さらに、ご飯の前にポテトサラダを摂取すると食後の血糖値の急激な上昇を抑えるエビデンスを取得したほか、ドレッシングをサラダ以外の料理にも使用する「ドレテク」による風味・物性改善、適塩効果などについて、学会展示を通じ広く専門家や栄養士、約600名に提唱しました。
「地球の健康」領域においては、加工・包装研究部を中心に、おいしさ・安全性・利便性を維持しながら、地球の健康を守り負荷を軽減するための研究に取り組んでいます。まず、リサイクルペットボトルについては、これまで、食品4社で安全性評価に関する共同研究や論文発表を行い、さらに実用化に向けて当社独自の検証を重ねてきました。2023年8月出荷分から、「テイスティドレッシング」シリーズの全7品と、機能性表示食品ドレッシングの全5品に、国内調味料として初めて、再生PET樹脂を100%使用したボトルを採用しました。これにより、新たなプラスチック使用量を年間で約460トン削減できる見込みです(前年出荷実績に基づく当社試算)。また、「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」の所在地である埼玉県深谷市の小学校で「生活の中のユニバーサルデザイン講座」を開催し、実際の容器に触れ、楽しみながらユニバーサルデザインについて学ぶ機会をともにしました。
「未来の食生活の創造」領域においては、機能素材研究部を中心に、様々なパートナーとともに新たな価値を届けるための研究を進めています。2023年度は、広島大学との共同研究で作出した「アレルギー低減卵」に関して大きな進展がありました。まず、アレルギー低減卵の安全性を確認し、論文発表とリリース・記者発表を行い、大きな反響を得ました。その後の物性および調理・製菓適性評価を経て、通常卵とほぼ同等の機能を有することを確認し、8月には学会発表とリリースを行いました。さらに、相模原病院の協力により、卵アレルギー患者の血清を用いた試験を実施し、本鶏卵の有効性を確認したことに加えて、次年度の臨床試験実施体制が整いました。
生産技術部門では、これまで築き上げてきた様々なコア技術を、国内はもとより海外の生産工場へ展開を進め、品質を守りながら効率よく生産するための設備開発を行っています。2023年度には、調理ロボット事業を展開するスタートアップ企業のTechMagic株式会社との資本業務提携を行い、社会課題である人手不足に対し、食品製造における自動化技術の早期実現をめざしています。また、手戻りの発生しない設計を実現するシミュレーション技術など、新技術の導入も積極的に検討し、グループの生産効率向上や品質保証体制を高める生産環境の実現を推進しています。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
また、報告セグメントにおける研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)市販用
市販用では、新商品の開発に加えて、既存品の改良を通じた更なるおいしさや機能性の追求と用途拡大に向けた提案を実施しています。マヨネーズカテゴリーにおいては、「キユーピー ゼロ ノンコレステロール」の改良を行い、おいしさを保ちながらカロリー70%カットを実現しました(改良前は50%)。ドレッシングカテゴリーでは、健康訴求商品として、BMI・血圧それぞれが高い方に向けた機能性表示食品や、多様化する価値観に応えるプラントベースフードの「GREEN KEWPIE」、すりおろした国産野菜の味わいを活かした「キユーピー DELI」を新たに発売しました。さらに、「キユーピー 野菜がうまい!たれ」を発売し、用途の拡大を図りました。既存品では、主力商品の品質改良や容量バラエティーの追加なども行い、一層の満足度向上を図っています。調理カテゴリーでは、主力アイテムである「あえるパスタソース」〈ソースタイプ〉の改良と新商品の投入、「Italiante バジルソース」の改良を行い、パスタカテゴリーの強化を図ったほか、素材カテゴリーでは、「レンズ豆」に着目し、新たな豆の提案を行っています。介護食カテゴリーでは、「舌でつぶせる」区分に人気の主食を追加することで、シリーズの更なる拡充を図りました。
パッケージサラダでは、株式会社サラダクラブが鮮度長持ち製法を新たに開発し、人気の3商品において消費期限を3日から4日に延長しました。鮮度保持の技術を磨くことで、おいしさと日持ちを両立し、食卓への彩りをお届けするとともにフードロス削減や野菜摂取量増加による健康維持の実現を進めます。
デリア食品株式会社が手掛ける惣菜では、ポテトサラダの健康価値の研究として、食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果を確認し、日本食品科学工学会・日本栄養改善学会で研究成果を発表しました。ポテトサラダが一般的なサラダと同様に、血糖値に関する健康価値が高いことを発信し、お客様の食と健康への貢献をめざします。
生鮮売場専用商品においては、青果売場におけるサラダ用の調味料・トッピング類のラインナップを整備し、主力の「千切りキャベツ」の副菜化を進めたほか、精肉売場向けに販売が好評の「FreshStock ナゲットソース」シリーズから、期間限定でチェダーチーズ風味を発売しカテゴリー強化を図りました。
最後に、市販用販路の開拓を進めているタマゴ商品については、2023年度は前年末から発生した鳥インフルエンザの影響で、卵価高騰・鶏卵不足となり、予定していた新商品の導入を見送る事態となりました。そのような逆風においても、既存品の改良を行い、賞味期間延長により食品ロスの削減につなげたほか、分かりやすいパッケージを採用し、お客様の利便性向上を図りました。
(2)業務用
業務用では、コロナ禍で大きく変化した業務用ユーザーの課題解決にむけて、独自性を起点においしさと機能性を提案する開発を実施しています。マヨネーズカテゴリーでは、生野菜からのドリップを抑える機能を備えた「デリフィットマヨ(コールスロー用)」、ベーカリー向けにほどよい焼成機能を付与した「ベーカリーマヨ(トッピング)」を発売しました。ドレッシングカテゴリーでは、定番サラダ向けとして好評の2品をリニューアルし、おいしさの磨き上げを図りました。また、伸長しているタルタルソース市場に向けては、常温でもおいしさと具沢山を実現した「キユーピー タルタルソース具沢山チューブ」を、惣菜やベーカリー向けには具沢山でおいしさと彩りを加える「キユーピー 具沢山フィリング アボカド(ワカモレ)」などを発売しました。病院・給食業態向けには、ごはんやおかゆと一緒に食べることでエネルギーが補給できる「ジャネフ ワンステップミール ごはんにあうソース 梅風味」を発売したほか、惣菜業態で好評の「プラントベースタルタルソース」など3品についておいしさの磨き上げを図り、リニューアルを実施しました。
タマゴでは、鳥インフルエンザによる卵価高騰・鶏卵不足の逆風下においても、お客様にたまごのおいしさを楽しんでいただけるよう、今までにない柔らかな食感が楽しめる、スノーマン「ふんわり厚焼きたまご」を発売しました。また、デリカ業態に向けては、おいしさと使いやすさに工夫を凝らし、野菜など食材と和えるだけで簡便に惣菜を提供できる商品「ふっくら炒りたまご500」を発売しました。
最後に、ビネガーでは、キユーピー醸造株式会社から、高濃度かつ安定量の酢酸菌体を含有する「にごり酢」を新たに発売しました。
(3)海外
海外では、世界各地の現地の嗜好やニーズに合った商品展開を進めるため、現地での開発を中心に進めています。2023年度は、世界戦略商品であるキユーピー マヨネーズ、深煎りごまドレッシングを中心に開発・改良を進め、各国の状況に沿った課題に取り組みました。
中国では、焙煎胡麻ドレッシングのECルートへ向けた商品開発や健康訴求アイテムの投入を進めました。ドレッシングの市場が活性化する中、現地での汎用性の高い調味料として「油酢汁」を開発・投入しました。「油酢汁」とは、醤油と酢をベースにしたノンオイルタイプの調味料のことで、野菜を始め、肉魚類、麺などによく合います。また、ピザ、ベーカリーなどの外食・中食業態では、ロングライフサラダの技術を用いてタマゴサラダの開発を進め、新規メニュー提案として中国市場での今後の展開が見込まれます。
米国では、日本食への注目からキユーピー マヨネーズの評価が上昇する中、環境に配慮した包材の採用に向け、一部商品をポリエチレンの軟質容器からPET容器に変更し、サプライチェーン全体の環境負荷低減に貢献しました。
(4)フルーツ ソリューション
フルーツ ソリューションでは、フルーツ摂取を通じた心と体の健康支援を掲げ、「香りと色彩」「食感」「栄養機能」「利便性」「環境」など、様々な角度から研究開発に取り組んできました。
今年度は、好きな時にすぐ食べられる“凍ったままでやわらかい”冷凍フルーツ「アヲハタくちどけフローズン」3品を発売しました。「日持ちがしない、皮をむくのが面倒」というフルーツ摂取の不満を解消し、毎日手軽に楽しんでいただける新たな価値提案に取り組みました。また、末梢の冷えが気になる方に向けて「果実たより ゆずジンジャー」を発売し、フルーツによる健康訴求を進めました。この商品は、フルーツ ソリューションとしては初の機能性表示食品にあたり、いつでも手軽に食べることができる簡便性を持ち合わせた、持ち歩きに便利な個包装タイプのフルーツ加工食品です。さらに、ジャム・スプレッドでは、スプーンを使わずさっと使えるボトル容器入りフルーツスプレッド「アヲハタ Spoon Free」から、「トロピカル」「りんご」「ぶどう」の3品を追加発売しました。2023年秋から容器を柔らかくし、より出しやすくするとともに、全6品のラインアップで料理からデザートまで幅広い用途で楽しんでいただく新たな用途提案を進めました。
(5)ファインケミカル
ファインケミカルでは、ヒアルロン酸、タマゴ成分、独自の機能性素材の可能性を最大限に引き出す研究と商品開発を進めています。
ヒアルロン酸の医薬分野では、海外顧客の要望に応え、新たに鶏冠由来のヒアルロン酸の供給を開始しました。また、独自素材の酢酸菌に関しては、独自に取得したエビデンスをもとに機能性表示食品の届け出を行い(商品名「ディアレプラス」)、「酢酸菌は、pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことと、花粉、ホコリ、ハウスダストなどによる鼻の不快感を軽減することが報告されています」との機能性で受理されました。さらに、通販専用スキンケア商品では、5つの高機能ヒアルロン酸を配合したオールインワンジェル「ヒアロワン」のお試し品を発売し、顧客数増加を進めました。
(6)共通
該当事項はありません。