文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、人が生きていくうえで欠かすことのできない食の分野を受け持つ企業グループとして、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって、世界の食と健康に貢献することをめざしています。
事業活動と社会活動をともに推進することで、サラダとタマゴのおいしさと魅力を世界にお届けし、健康的な食生活の実現と豊かな食文化の創出をめざします。また、私たちの活動は自然の恵みによって支えられています。持続可能な社会の実現に貢献するとともに、資源の有効活用と環境保全に真摯に取り組むことで、持続可能な地球環境を次世代につなぎます。
当社グループは、内食・中食・外食に幅広く深く展開しているとともに、赤ちゃんからお年寄りまで、人の一生のさまざまな食の場面に深く関わっています。これからもグループの理念を大切にし、“キユーピーグループならでは”のこだわりある商品とサービスを、心を込めてお届けすることをすべての役員ならびに従業員が常に意識し、実践していきます。
(2) 中長期的な経営戦略、経営環境および対処すべき課題等
当社グループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって世界の食と健康に貢献するグループをめざし、長期ビジョン「キユーピーグループ 2030ビジョン」を掲げています。
近年、少子高齢化、共働きや単身世帯の増加などにより世帯構成が変わり、家庭での調理において時短や簡便性などが求められています。また、食品を購入する場面ではECやドラッグストアなどが広がりをみせています。新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は当社グループの業績へ大きな影響を及ぼすとともに、これらの流れをさらに加速させ、新たな生活様式を生みました。家で過ごす時間が増えたことで家庭での調理が見直されるようになり、買い物の回数・時間の減少による容量や日持ち、予防や免疫などの衛生・健康面のニーズでも変化がみられており、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束した後も当面続いていくと想定しています。
2021-2024年度 中期経営計画では、お客様や市場の多様化に対応し、「持続的成長を実現する体質への転換」をテーマとし、「利益体質の強化と新たな食生活創造」「社会・地球環境への取り組みを強化」「多様な人材が活躍できる仕組みづくり」の3つの方針に基づいて、事業活動を進めています。これを支える仕組みとして、これまでの事業担当制から市場担当制へ移行することで各市場に求められる対応を迅速に実現していきます。
[経営方針と主な取り組み]
◇利益体質の強化と新たな食生活創造
海外を成長ドライバーとして展開の拡大を進めていきます。中国と東南アジアを中心に人材、商品開発、マーケティング、ガバナンスなどの経営基盤の強化を行うために経営資源を集中的に投下し、さらに北米での需要開拓を積極化していきます。従来の店舗での販促活動とデジタルマーケティングの活用を融合することにより、ブランド認知率と商品使用率の向上に取り組み、当社の顧客層である富裕層から上位中間層へ開拓を進めます。また、海外の主力市場である中国においては、2021年1月に中国国内で4つ目の生産拠点となる広州工場が稼働しました。広州工場は最新鋭の設備と考え方を取り入れた工場で、生産性の大幅な向上が見込まれており、これらを足掛かりとして地域と需要の拡大を促進します。
国内では、市場担当制へ移行し、モノ(商品)視点から市場を軸としたお客様視点に転換することにより、お客様の食生活における悩みの解決や新たな食シーンの創造につながるような商品やサービスをスピーディーに提案していきます。重点領域として、マヨネーズやドレッシングを中心としたサラダとタマゴに特化していきます。さらに、デジタル活用を進めることで、お客様とのつながりをさまざまな角度から構築し、新しい可能性を広げていきます。
市販用においては生活様式が変化している中でも、生活必需品となる商品を育成します。マヨネーズはサラダにかける以外にもさまざまな調理シーンで利用される万能調味料としての使い方を提案してきました。その他の主力商品においても、幅広い調理シーンへの提案を強化することで、マヨネーズのような汎用性のある商品への育成をめざしていきます。また、お客様の課題解決につながる商品をお届けし、ブランドや商品の認知拡大を進めていきます。
業務用においては、グループが持つ販路を活用し、内・中食向け業態へ経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの再構築により収益性と効率性を向上させます。おいしさと技術で新たな価値を創出し、顧客ニーズの創造を提案することで、業務用市場の活性化に貢献していきます。
◇社会・地球環境への取り組みを強化
当社グループでは、自然の恵みに感謝し、限りある資源を大切にするという想いで、環境活動に長年取り組んできました。気候変動リスクや食品ロス、海洋プラスチック問題など地球規模での問題が次々に顕在化している中、持続可能な社会の実現への貢献とグループの持続的な成長の実現をめざして、「キユーピーグループ サステナビリティ基本方針」を定めています。あわせて、「持続可能な開発目標(SDGs)」を参考に特定した重点課題への取り組みを進めています。
社会・地球環境に対する企業の責任に向き合い、複雑化する社会課題に対し、バリューチェーン全体で連携し取り組みを進めていくことで、企業価値向上に努めていきます。
なお、サステナビリティ基本方針については、当社ウェブサイトに詳細を掲載しています。
https://www.kewpie.com/sustainability/management/materiality/
<サステナビリティ目標>
◇多様な人材が活躍できる仕組みづくり
持続的成長を実現する人材を育成していくために、多様な人材が活躍できる仕組みを構築していきます。
海外展開および市場担当制への移行においては、多様な視点で物事や現象を捉え、それをチャンスに変えることが必要となります。市場で起こる変化点を俯瞰して捉えるためには、市場に精通し、複数の経験やスキルを持った人材の育成が重要です。グループ内での人材の流動性を高めることで、多様なスキルを持つ人材の育成を進めていきます。
また、他部門とのプロジェクトや会議への積極的な参画、社内やグループ内へのインターンシップなどを通じて、多様性を認め合い、関わり合いを持つことができる風土を醸成していきます。
さらに、外部資源を活用しながら学びの場を提供していくことで、新たな経験や知識を習得し、一人ひとりが能力を発揮できる環境を構築していきます。
なお、人材の活躍の重要な指標である女性管理職比率(対象:キユーピー株式会社)は、2024年11月期18%、2030年11月期30%をめざします。
[キャッシュ・フローの配分と経営指標について]
◇キャッシュ・フローの配分
持続的な成長を実現するために、適正な投資の実行や株主還元を行いながら、健全な経営基盤を確立します。
キャッシュ・フローの配分については、4年間の累積営業キャッシュ・フローを1,400億円とし、その範囲内でのコントロールを基本とします。設備投資は約700億円の計画とし、資産や投資の効率性を重視します。内部留保については、自己資本比率60%以上を目安とし、将来の成長のため、新規展開の資金を確保したうえで株主還元を拡充します。
◇経営指標
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2024年11月期目標 |
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ROE |
8%以上 |
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営業利益率 |
7.5% |
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海外売上高伸長率(現地通貨ベース) |
(年率)10%以上 |
(3) 新型コロナウイルス感染症の影響について
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナウイルス)の拡大により、当社グループにおいても食生活に関わる変化が業績に影響を及ぼしています。当社グループでは、3つの方針のもと、対策・対応に取り組んでいます。
〈方針1〉国や自治体の対策に協力し、感染リスクを抑制する
当社グループでは、従業員と家族、お客様・お取引先をはじめとするステークホルダーの皆様の感染リスクの抑制を考慮した対応に努めることを目的に新型コロナウイルス対策本部を設置し、感染防止策を徹底しています。
基本的な感染対策の徹底、在宅勤務やフレックス勤務、時差出勤の活用で感染リスク抑制に取り組み、在宅などで業務遂行できるようにオンライン・モバイル環境の整備拡充など、従来から取り組んできた新しい働き方の定着と拡大を図りました。併せて、従業員のストレス軽減やメンタルヘルス不調の予防(従業員相談窓口の設置や動画によるエクササイズ推奨)にも取り組んでいます。なお、これらの働き方は感染リスクが低下した後も定着に努め、生産性の向上につなげていきます。
〈方針2〉食品メーカーとしての使命を果たす
お客様へ安全・安心な商品を継続して供給し続けることが当社の使命です。原資材の調達状況など事業継続に対する影響を注視しつつ、需要の変化に柔軟に対応できる体制を整えるとともに、外出制限などでストレスがたまるお客様の「おうち時間」を楽しく過ごしていただけるよう、料理レシピなどのコンテンツを発信しています。
〈方針3〉当社グループならではの社会的な貢献を行う
社会的な貢献として、子どもを中心とした地域社会に商品を提供するなど、当社グループならではの食を通じた支援活動を行っています。
また、「子ども食堂」が行う子どもや生活困窮家庭への持ち帰りの食事提供などを支援するため、キユーピーみらいたまご財団を通じて寄付を行っています。
この有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるものには、以下の表内のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識したうえで、発生の抑制・回避に努めています。そのためにリスクマネジメント基本規程において当社のリスク管理を体系的に定め、個々のリスクを各担当部門が継続的に監視しています。直近の業績への影響が大きなリスクについては経営会議、全社的なリスクについてはリスクマネジメント委員会、気候変動を含む社会・環境に関するリスクについてはサステナビリティ委員会でそれぞれ情報を共有し、リスクの評価、優先順位および対応策などを管理しています。また、リスクマネジメント担当取締役は、全社的リスクの評価や対応の方針・状況などを定期的に取締役会へ報告しています。
しかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの信用、業績および財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、以下の表内の内容は、当社グループに係るすべてのリスクを網羅したものではありません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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市場の動向 |
長期にわたり漸次的にその影響が大きくなる可能性がある主なリスクは次のとおりです。
・国内人口減少による長期的な市場縮小 ・野菜価格変動によるマヨネーズ・ドレッシングの販売影響 |
国内では「市販用」と「業務用」の2体制でフレキシブルな市場対応を図り持続的成長につなげています。当社グループの内食・中食・外食への展開力を活かしサラダとタマゴの可能性を広げ、健康寿命延伸に貢献することで事業機会の創出をめざします。また、お客様の食生活における悩みの解決や新たな食シーンの創造につながるような商品・サービスをスピーディーに提案し、市場と需要の開拓を推進しています。特に成長が見込まれるドラッグストアなど未開拓販路の開拓に加え、デジタルマーケティングを強化しD2C(Direct to Consumer/消費者直販サイト)市場での取り組みを進めています。 海外では、中国、東南アジアと北米を重点エリアとし、当社グループのこれまでの顧客層である富裕層から中間層へ開拓を進めます。またデジタルコミュニケーションとマーケティング機能を強化し、「キユーピーブランド(丘比、KEWPIE)」の認知率と商品使用率の向上に取り組んでいきます。人材や商品開発、マーケティング、ガバナンスなどに経営資源を集中的に投下し、持続的な成長を図っています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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原材料(主原料やエネルギー・一般原資材)の調達 |
・食油調達においては、大豆や菜種の相場、為替相場および需給などの変動により短期、長期的な価格変動リスクがあります。 ・鶏卵調達においては、突発的な鳥インフルエンザの発生、産卵鶏の羽数変動、長期的な鶏卵の消費動向などによる価格変動および調達困難リスクがあります。 ・その他当社グループで使用している原材料調達は、国際的な景気動向や需給バランス、為替の変動、地政学リスクなどによる価格変動リスクがあります。
また、社会的な配慮のもとでの持続可能な調達への取り組みが不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、原材料価格の上昇の影響を低減するため、商品の価格改定や付加価値化、生産効率化、グループ連携による調達体制の構築などの取り組みを進めています。また、主原料の相場影響を受けにくい事業構造への転換を進めています。 鶏卵調達においては、大手生産者を中心に各地の生産者との年間数量計画、一定価格契約、相場でのスポット契約の組み合わせ、また一部地域で鳥インフルエンザが発生して卵の移動が制限されたとしても他の地域の工場でカバーできる全国調達・割卵工場体制整備などを実施しています。2022年10月以来の鳥インフルエンザの猛威による原価上昇と減産による利益の減少については、商品の価格改定や付加価値化により収益性向上に努めています。 中長期的な持続可能性の観点では、採卵鶏のアニマルウェルフェアの課題に関係する業界や行政と連携しながら取り組んでいます。 社会的な配慮のもとでの持続可能な調達に向けて、「キユーピーグループの持続可能な調達のための基本方針」を定め、原料の品質だけでなく、サプライチェーン上での環境や人権に与える影響の確認を進めています。本基本方針の実現に向けて「キユーピーグループ サプライヤーガイドライン」を定め、サプライヤーとの相互理解のもとサプライチェーンにおけるさまざまな課題解決を行い、持続可能な調達およびサプライヤーとの共存共栄をめざして取り組んでいます。 |
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製造物責任 |
異物混入や誤表示など、消費者に健康被害を及ぼす恐れのある製品事故は、重篤なリスクとして常に認識しています。 |
当社グループ創業以来の品質第一主義を基本として、食品安全マネジメントシステム(FSSC22000)の認証、グループを横断した品質監査の実施、FA(ファクトリー・オートメーション)を活用した製品保証やトレーサビリティ、また自社モニタリングや調達原料の品質規格書管理システムの構築など、制度・システム面から品質保証の充実を推進しています。 加えて、従業員の品質に対する意識と理解が最も重要なことから、OJTや勉強会などさまざまな機会を通じた知識・技術の習得はもちろん、品質第一主義の浸透にも努めており、永続的な企業発展の基盤となる「安全・安心で高品質な食品の提供」を担保するため、万全な体制で取り組んでいます。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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自然災害などの不測の事態 |
巨大台風、豪雨・長雨による洪水や大規模地震などの自然災害の影響が大きくなる可能性があります。それらにより次のようなリスクを想定しています。
・製造や物流施設・設備などの破損 ・原資材やエネルギーの調達困難 ・操業に必要な人員の不足 |
過去の災害の経験を活かし、当社グループ横断で危機発生時の事業継続計画(BCP)を整備し、対策に取り組んでいます。 東京にある本社の代替機能を関西に設置する体制の整備、非常時の通信ネットワークの整備や物資の備蓄、生産設備や物流設備の補強、不測の事態において生産可能状況を確認するシステムの整備、主要商品に関する生産や原資材調達機能および受注機能を2拠点化することなどにより危機発生時に備えており、災害の種類毎にマニュアルを整備しています。 さらにそれらを確実に運用できるようにするために大規模災害対応訓練(初動対応訓練や商品供給訓練、安否確認訓練)も行っています。 |
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システム障害 |
近年、ランサムウェアなど高度化した外部からのサイバー攻撃によりシステムが停止することで事業活動に大きな影響が出る可能性があります。 |
当社グループでは、サイバー攻撃を受けた場合の備えとして「防御システムの多層化」を実施し、迷惑メールや不正アクセスを防ぐ対策に加えて、24時間監視し不審なプログラムの挙動を判定し実行防止するEDRシステムなどによる対策を行っています。 並行して従業員の「リテラシー向上」に向けた対策として、攻撃メールへの対応模擬訓練、情報セキュリティ教育など定期的に実施し、さらに従業員の情報セキュリティ意識を高く保てるよう情報推進委員会が適宜情報を発信しています。 |
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新型コロナウイルス感染症 |
感染の拡大、外出自粛などによる生活スタイルの変化により、事業活動に影響を及ぼしています。 従業員の感染、事業所でのクラスター発生により事業活動に影響が出る可能性もあります。 |
当社グループでは、選択と集中で重点領域、商品展開領域の適正化を図り、分散している機能や潜在価値を集約することで効率性を改善します。また、主要商品に関する生産や原資材調達および受注機能を2拠点化することなど備えを進めています。 新型コロナウイルス感染症発生の初期段階より国・自治体の指針に沿って対応しつつ、従業員とその家族の安全確保を最優先とし、事業活動を継続させるために職場での感染リスク抑制・感染防止策の取り組みを継続しています。 主にスタッフ・営業部門は、新型コロナウイルス感染症予防に対応した働き方で経験し、学んできたことや得られた成果をさらに発展させるよう、最適なアフターコロナの働き方を追求しています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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人材、労務関連 |
人材、労務に関しては、主に次のようなリスクを常に想定しています。
・製造や物流現場の活動を担う人材が不足すること ・不適切な労働時間管理、過重労働 ・ハラスメント |
当社グループでは、継続的な採用、教育の充実、労働環境の最適化などにより人材の確保、定着に取り組んでいます。具体的には、作業の効率化、省力化を推進し、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や各種ロボット、AIの活用に取り組んでいます。加えて外国籍の方が就労し易い環境整備も進め、雇用を拡大していきます。 すべての職場の従業員一人ひとりが安心して働くことができ、仕事と家庭生活の両立が実現できる雇用環境の整備を進め、テレワークの積極的な活用、労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント予防に関する従業員教育の徹底、内部通報制度(ヘルプライン)の設置などにより労務関連リスクの低減に取り組んでいます。 これらに加え、持続的成長を実現する人材を育成していくために、多様な人材が活躍できる仕組みづくりを実施し、併せて専門性の高い外部人材の採用や登用を推進しています。 |
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海外展開 |
海外展開においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・脆弱な経営基盤によるトラブル ・情報管理の不備による漏洩 ・模倣品の流通による競争力の侵害およびブランドイメージ毀損 ・地政学リスク |
海外子会社においても当社グループの理念を浸透させるための現場教育、各種研修などを行っています。また、内部統制システム整備を進めており、具体的には決裁権限の明確化、契約書・規程管理や経理・財務規程、反贈収賄規程、人事評価制度など各種規程や制度の整備・運用、内部通報制度の導入、事業継続計画(BCP)および危機管理訓練などにより経営基盤の強化に取り組んでいます。 さらに会社情報や重要技術情報の取り扱い・セキュリティに関する規程の導入および盤石なICTネットワークの構築に取り組んでいます。 模倣品対策では、市場に出回る当社商標権の侵害品や紛らわしい他社品を排除するとともに、悪意ある商標出願を権利化させないように取り組んでいます。 生産拠点のある地域の政治・経済情勢や法規制の動向を確認し、エリア毎に必要な対応を検討、実施しています。また、国際情勢によって生じるカントリーリスクについては、有形・無形資産の対応、原料調達リスクの分散、知的財産の保護、従業員の退避などの観点で備えています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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地球環境問題、気候変動 |
地球環境問題、気候変動においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・原資材調達難、価格高騰 ・CO2排出規制強化 ・エネルギーコスト増 ・大雨、洪水による生産設備被災
これらサステナビリティへの取り組み、対応が不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、サステナビリティにむけての重点課題として環境面では「資源の有効活用・循環」、「気候変動への対応」および「生物多様性の保全」を特定し、グループ全体で取り組んでいます。資源の有効活用・循環では、卵殻や野菜(キャベツなど)の芯・外葉など野菜未利用部の肥料化、飼料化などの有効活用に取り組んでいます。また、賞味期限・消費期限延長や需要と供給のマッチングを一層推進し、食品ロスの削減(商品廃棄量の削減)を進めています。プラスチックの削減と再利用に関しては、容器包装の軽量化、薄肉化および生産活動で使用するプラスチックの使用量・排出量削減を進めています。さらに環境負荷の少ない素材に置き換える研究に取り組み、プラスチック使用量のさらなる削減と資源循環型社会の実現に貢献しています。 気候変動への対応では、製造工程における効率改善、省エネ設備の導入などの展開に加えて、太陽光発電設備の新設による再生可能エネルギーの活用を進めています。物流では長距離トラック輸送から鉄道・船舶輸送へのモーダルシフト、異業種メーカーとの共同輸送、積載効率の向上を積極的に推進しています。オフィスではエネルギー使用の最適化に取り組んでいます。これらによりCO2排出量の削減を進めています。さらに、生物多様性の保全については、例えば段ボール・紙器メーカーとの協働で、適切に管理された森林木材を使用したFSC認証材の導入を進めています。 当社グループの事業は、自然の恵みに強く依存しているため、原材料の収量の減少や品質の低下、価格高騰など、気候変動によるさまざまな影響を受ける可能性があります。機動的な価格適正化や原料相場に強い体質へ転換するため、ポートフォリオの最適化やグループ連携による調達体制の構築を進めています。気候変動に関連する事象を経営リスクとして捉えて対応すると同時に、新たな機会を見出し企業戦略へ活かします。TCFDへ賛同し、TCFDが提言するフレームワーク「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目に基づいた情報を掲載しています。 https://www.kewpie.com/sustainability/eco/warming/ |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度は、国際的な穀物・エネルギー相場の上昇や急速な円安進行など事業を取り巻く環境が大きく変化しました。このような状況の中、国内では市場担当制を活かしお客様の多様化するニーズに対応するとともに原料相場に左右されない強い体質への転換に取り組んできました。海外では、中国・東南アジア・北米を中心に、それぞれの地域の食文化への浸透を加速させ、成長ドライバーとして拡大を進めました。
当連結会計年度の売上高は、海外での売上伸長に加え、業務用での外食需要減少影響が前連結会計年度より回復したことにより増収となりました。営業利益は、売上増加や価格改定効果があったものの主原料およびエネルギー・一般原資材の高騰影響や販売費及び一般管理費の増加により減益となりました。経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は営業利益の減少により減益となりました。
当連結会計年度の連結業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
|
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前連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
売上高 |
407,039 |
430,304 |
23,265 |
5.7% |
|
営業利益 |
27,972 |
25,433 |
△2,539 |
△9.1% |
|
経常利益 |
29,698 |
27,249 |
△2,449 |
△8.2% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
18,014 |
16,033 |
△1,981 |
△11.0% |
◇ セグメント別の状況
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[売上高の内訳] |
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
172,678 |
173,392 |
714 |
0.4% |
|
業務用 |
149,792 |
158,832 |
9,040 |
6.0% |
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海外 |
53,383 |
66,267 |
12,884 |
24.1% |
|
フルーツ ソリューション |
16,878 |
16,461 |
△417 |
△2.5% |
|
ファインケミカル |
8,770 |
10,013 |
1,243 |
14.2% |
|
共通 |
5,536 |
5,335 |
△201 |
△3.6% |
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合 計 |
407,039 |
430,304 |
23,265 |
5.7% |
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[営業利益の内訳] |
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
17,195 |
13,433 |
△3,762 |
△21.9% |
|
業務用 |
6,292 |
6,923 |
631 |
10.0% |
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海外 |
7,229 |
8,471 |
1,242 |
17.2% |
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フルーツ ソリューション |
719 |
315 |
△404 |
△56.2% |
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ファインケミカル |
1,075 |
1,267 |
192 |
17.9% |
|
共通 |
1,328 |
1,209 |
△119 |
△9.0% |
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全社費用 |
△5,868 |
△6,187 |
△319 |
- |
|
合 計 |
27,972 |
25,433 |
△2,539 |
△9.1% |
<市販用>
・調味料の価格改定効果や惣菜が堅調に推移し増収
・主原料高騰等による影響を受け減益
<業務用>
・新型コロナウイルス感染症による外食需要の減少影響が前連結会計年度より回復し増収
・主原料高騰等による影響を受けたものの、価格改定効果や付加価値品の伸長により増益
<海外>
・東南アジアや北米が好調に推移し増収
・中国(上海)でのロックダウンや主原料高騰による影響を受けたものの、売上増加により増益
<フルーツ ソリューション>
・家庭用ジャム・スプレッドの価格改定と需要喚起策を進めたものの、内食需要の反動もあり減収減益
<ファインケミカル>
・ヒアルロン酸の原料販売や通信販売が好調に推移し増収増益
<共通>
・食品メーカー向け製造機械の販売減少などにより減収減益
◇ 財政状態の状況
・総資産は、4,033億84百万円と前期末比223億81百万円増加
主に受取手形及び売掛金の増加25億39百万円、商品及び製品の増加25億90百万円、原材料及び貯蔵品の増加
31億32百万円、ソフトウエアの増加27億89百万円、退職給付に係る資産の増加75億28百万円によるものです。
・負債は、1,087億61百万円と前期末比29億41百万円減少
主に支払手形及び買掛金の増加50億36百万円、短期借入金の減少85億33百万円によるものです。
・純資産は、2,946億23百万円と前期末比253億22百万円増加
主に利益剰余金の増加95億円、為替換算調整勘定の増加68億73百万円、退職給付に係る調整累計額の増加
49億93百万円によるものです。
②キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の残高は、653億35百万円と前期末比13億67百万円減少となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が266億30百万円、減価償却費が160億62百万円、棚卸資産の増加が59億49百万円、法人税等の支払いが96億74百万円となったことなどから271億99百万円の
収入(前期は385億33百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が124億82百万円、無形固定資産の取得による支出が43億23百万円となったことなどから159億47百万円の支出(前期は202億77百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が103億1百万円、配当金の支払いが65億33百万円となったことなどから168億12百万円の支出(前期は187億1百万円の支出)となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は、下記のとおりです。
|
|
2018年 11月期 |
2019年 11月期 |
2020年 11月期 |
2021年 11月期 |
2022年 11月期 |
|
自己資本比率(%) |
53.9 |
53.0 |
52.8 |
64.5 |
66.4 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
93.9 |
78.3 |
68.5 |
84.2 |
84.3 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.5 |
1.5 |
2.3 |
1.1 |
1.2 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
122.5 |
144.7 |
103.7 |
159.0 |
110.6 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としています。
※キャッシュ・フローおよび利払いは、それぞれ連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を使用しています。
※2021年11月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2020年11月期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させています。
③ 生産、受注および販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
113,631 |
103.7 |
|
業務用 |
104,185 |
107.4 |
|
海外 |
45,219 |
129.9 |
|
フルーツ ソリューション |
11,147 |
96.4 |
|
ファインケミカル |
4,944 |
126.8 |
|
共通 |
2,641 |
139.3 |
|
合計 |
281,770 |
108.9 |
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
15,064 |
106.8 |
|
業務用 |
20,596 |
116.5 |
|
海外 |
3,648 |
148.7 |
|
フルーツ ソリューション |
1,226 |
93.0 |
|
ファインケミカル |
107 |
107.4 |
|
共通 |
3,536 |
107.4 |
|
合計 |
44,180 |
113.4 |
c.受注実績
主要製品以外の一部の製品について受注生産を行うほかは、すべて見込み生産のため記載を省略しています。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2021年12月1日 至 2022年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
173,392 |
100.4 |
|
業務用 |
158,832 |
106.0 |
|
海外 |
66,267 |
124.1 |
|
フルーツ ソリューション |
16,461 |
97.5 |
|
ファインケミカル |
10,013 |
114.2 |
|
共通 |
5,335 |
96.4 |
|
合計 |
430,304 |
105.7 |
(注) 外部顧客に対する売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告金額および報告期間における収益・費用の報告金額に影響する見積り、判断および仮定を必要としています。過去の実績や状況を踏まえ合理的と考えられるさまざまな要因に基づき、継続的に見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
(1) 固定資産の減損処理
保有する固定資産について、原則として継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分(会社別、事業別かつ事業所別)を単位としてグルーピングを行い、当該資産グループ単位で減損の兆候を把握しています。減損損失を認識するかどうかの判定および使用価値の算定に際して用いられる将来キャッシュ・フローは、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報に基づき、合理的な仮定を置いて計算しています。
将来の市場環境の変化などにより、見積り額と実態に乖離が生じた場合、減損損失が発生する可能性があります。
新型コロナウイルス感染症拡大による影響につきましては、「第5 経理の状況 1. 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(2) 貸倒引当金の計上基準
貸倒引当金については、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過年度実績率を基礎とした将来の貸倒予測率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
(3) 投資有価証券の減損処理
投資有価証券の評価方法については、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しています。保有する有価証券につき、市場価格のない株式等以外のものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のない株式等は投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っています。
この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
(4) 繰延税金資産の回収可能性の評価
繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しています。しかし、繰延税金資産の回収可能見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益が変動する可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.財政状態および経営成績の分析
当連結会計年度における財政状態および経営成績の分析につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
b.資金の財源および資金の流動性
(1) キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(2) 資金の需要
さらなる企業価値の向上を図るための設備投資、事業投資、債務の返済および運転資金などの資金需要に備え、資金調達および流動性の確保に努めています。
(3) 資金の調達
必要な資金は内部資金より充当し、不足が生じた場合は銀行借入および社債発行により調達しています。
(4) 資金の流動性
複数の金融機関との当座貸越契約を設定しています。また、当社および国内連結子会社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しています。
c.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、2021年度からの4年間を対象とする中期経営計画を策定し、最終年度である2024年11月期において、「ROE(自己資本利益率) 8%以上」「営業利益率 7.5%」「海外売上高伸長率(現地通貨ベース) (年率)10%以上」を目標として掲げています。
中期経営計画の2年目にあたる当連結会計年度におきましては、ROE(自己資本利益率)が6.2%、営業利益率が5.9%、海外売上高伸長率(現地通貨ベース)は前年比10%の増加となりました。
◇経営指標
|
|
2022年11月期 |
2024年11月期目標 |
|
ROE(自己資本利益率) |
6.2% |
8%以上 |
|
営業利益率 |
5.9% |
7.5% |
|
海外売上高伸長率(現地通貨ベース) |
(前年比)10% |
(年率)10%以上 |
該当事項はありません。
当社グループは、世界のお客様の楽しく健やかな食生活に貢献するために、「人の健康」「地球の健康」「未来の食生活の創造」を重点研究領域とし、研究開発に取り組んでいます。マヨネーズやドレッシングをはじめ、様々な分野で培ってきたコア技術を軸に、「キユーピーグループ 2030ビジョン」とその先を見据えた未来創造の実現をめざしています。
サラダとタマゴを中心とした健康的な食生活を提案することにより、健康寿命を延伸することをめざしています。その活動の一環として、食事の際に炭水化物の前に野菜サラダを食べることで食後の血糖値の上昇を抑えられることを明らかにしました。当社グループでは、野菜をおいしく楽しく自然に食べたくなる料理であるサラダを第一に考え、「サラダファースト」として活動しています。前述の成果を活かして、「サラダファースト」の主要な活動としてサラダから食べる食生活を全社的に推進し、食と健康を結びつけることでサラダの価値向上につなげました。また、2013年より広島大学と共同研究を進めていたアレルギーを引き起こすたんぱく質を取り除いた「アレルギー低減卵」の研究がCOI-NEXT(JST科学技術振興機構)事業に採択されました。基礎研究から応用研究へと段階を進め、食の選択肢を広げることをめざして実用化に向けた研究に取り組んでいます。地球環境に向けては、食品4社(株式会社Mizkan、キッコーマン株式会社、日清オイリオグループ株式会社、キユーピー株式会社)で調味料・食用油用リサイクルペットボトルの安全性評価に関する共同研究を実施し、成果を論文として公表しました。この研究成果はほぼすべての液状調味料・食用油の容器にメカニカルリサイクルペットボトルを適用することができるため、調味料・食用油業界全体での資源の循環促進につなげていきます。
バラエティ豊かな野菜料理を楽しむための商品と情報をお届けするD2Cの新サービス「Qummy®」を立ち上げました。本サービスのオリジナル商品のドレッシングやスープ、独自の技術である「冷圧フレッシュ製法®」で製造した惣菜サラダなどを展開しました。また、健康志向の高まりや地球環境への配慮などから、植物由来の食品を選択する人が増えています。このようなニーズに応えるため、昨年度に業務用で発売したプラントベースフード「HOBOTAMA」を市販用でも発売しました。
生産技術の開発においては、これまで築き上げてきた様々なコア技術の活用展開とともに、商品を品質第一で効率よく生産することをめざして活動を進めています。また、新しい技術として手戻りの発生しない設計を実現するシミュレーション技術、そして人手のかかる工程の自働化に向けて、外部と協働しながら広くグループの生産効率向上や品質保証体制を高める生産環境の実現を推進しています。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
また、報告セグメントにおける研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)市販用
市販用では、新商品の開発に加えて、既存品の改良を通じた更なるおいしさや機能性の追求と用途拡大に向けた提案を実施しています。健康訴求マヨネーズタイプの中で30年間連続シェア1位と市場をけん引してきた「キユーピーハーフ」の改良を行いました。おいしさのポイントである卵のコクを向上させるとともに、野菜とあえても離水しにくい特性の訴求を行いました。ドレッシングにおいては、近年サラダ以外にも活用されることが増えている「キユーピー 深煎りごまドレシング」をさらに汎用調味料として幅広く使用していただくため、たっぷり使える新容量600mlを新たに発売しました。ベビーフードカテゴリーでは、袋ごと電子レンジ加熱でき、器にもなるパウチを使用した新シリーズ「レンジでチンするハッピーレシピ」を発売しました。準備・片付けが手早くできることで、赤ちゃんと食事を楽しむ時間や食後の触れ合う時間の創出につなげます。
デリア食品株式会社では、日本食品科学工学会や日本調理科学会などでポテトサラダのおいしさや製造方法に関する学会発表を行いました。今後も積極的な技術広報を通じてポテトサラダの市場拡大と価値向上に向けた活動を続けていきます。
株式会社サラダクラブでは、キャベツの購買意欲と使用場面が増加傾向の中、サラダ以外でも様々な場面でキャベツの魅力を伝えていくために、加熱用カット野菜「炒めるキャベツ」を発売しました。本商品は千切りキャベツの鮮度保持技術を応用して消費期限7日間という業界最長クラスの日持ちを実現しました。調理の手間を解消することは勿論、フードロス削減や野菜摂取による健康維持というお客様のニーズにお応えしていきます。
これまで培った技術をさらに磨き、多様化するお客様の食生活に対して新しい価値をお届けできる商品やサービスを提供していきます。
(2)業務用
業務用では、独自性を起点においしさと機能性を提案する開発を実施しています。マヨネーズ類では、健康志向の高まりで需要が伸長している「キユーピーハーフ」のおいしさを磨き上げてリニューアル発売しました。また、油の配合量をおさえながら、しっかりとしたうま味と甘味を感じることができるように仕上げた「ニューテイストマヨ」を発売しました。ドレッシングでは、新しいサラダの提案として好評いただいている「キユーピー ペイザンヌサラダドレッシング」の新容量を追加し、より調理現場での使いやすさを追求しました。また、「キユーピー 具沢山フィリング トマトとたまねぎ」など惣菜やベーカリー向けに具沢山でおいしさと彩りを加えるラインナップの拡充や、手軽に本格的なアジアンメニューを楽しめる「アジアンテーブル ルーロー飯の具(台湾風豚肉の醤油煮込み)」を発売し、業態のニーズに応える商品を増やしています。タマゴでは、伸長するデリカ業態に対応した、素材が引き立つだし風味や売場に映える色調が特長の「スノーマン 丼用たまご(だし風味)」を発売しました。解凍してかけるだけで卵でとじた丼のような見た目になるため、お客様のオペレーションでの手間を省略できます。
キユーピー醸造株式会社では、一流レストランで選ばれることをめざしたプレミアム・ビネガーとして、主原料に日本ワインを使用したリッシュ・フェルメンテ(Riche Fermenter)赤ワインビネガーを発売しました。
お客様の潜在的な課題を探求し、おいしさと技術で課題解決を提案することを通じて、業務用から新しい食のトレンドを創出していきます。
(3)海外
海外では、世界戦略商品である深煎りごまドレッシングを中心に開発に取り組みました。世界戦略商品のローカル化とブランド品の売上拡大のため欧州のお客様の嗜好に合わせ、MSG不使用、グルテンフリー、動物性原料不使用等の付加価値を持たせた深煎りごまドレッシングを設計しMosso Kewpie Poland Sp. z o.o.で生産を開始しました。これまでアメリカ西海岸から欧州向けに輸送していた深煎りごまドレッシングとキユーピーマヨネーズを現地で生産することにより輸送エネルギーやCO2の排出抑制にもつながります。またベトナムでは、「深煎りごまドレッシング わさび&昆布風味」を開発し、深煎りごまドレッシングの使用用途を広げ現地のニーズを喚起するアイテムとして発売しました。中国では急速に発展するEC市場向け専用の深煎りごまドレッシングを開発し、中国でのドレッシング使用率の向上を図るため手に取りやすい価格と容量を考慮した開発を進めています。競合品、模倣品が多く出現する市場でおいしさを訴求し、健康への情報発信を行うことでブランド浸透の取り組みを進めました。
世界戦略商品を各エリアの食文化に合わせて磨き、サラダやタマゴのおいしさと魅力を世界のお客様に伝えることで、それぞれの国に合った健康的な食文化を創造していきます。
(4)フルーツ ソリューション
フルーツ ソリューションでは、「おいしさ」「楽しさ」「やさしさ」を大切に、フルーツで世界の人を幸せにするために、「香り」「色彩」「栄養機能」「テクスチャー」など様々な角度から研究開発に取り組み、ブランドの価値向上を進めています。発売10周年となる「アヲハタ まるごと果実」については、配合・製法を見直し、フルーツのおいしさをより高めるとともに、瓶の軽量化に取り組み、環境負荷の低減を実現しました。また、いつでもさっと使えるボトル容器入りフルーツスプレッドの新シリーズ「アヲハタ Spoon Free」を3品展開するなど、お客様の利便性向上や新たな食シーン拡大に向けた提案を進めています。ジャム・スプレッド類以外でも、リフレッシュしたい時に手軽にどこでも一口で食べられるフルーツ加工品「アヲハタ ひとくち」シリーズに新たにクランベリーを追加し、フルーツ摂取を通じた心と体の健康支援につなげています。
当社ならではのフルーツ加工品を創出するとともにフルーツの健康価値情報の提供を進めることで心と体の健康を支援し、世界の人の幸せに貢献していきます。
(5)ファインケミカル
ファインケミカルでは、ヒアルロン酸、タマゴ成分をはじめとした独自の機能性素材の可能性を最大限に引き出す研究と商品開発を進めています。
ヒアルロン酸の医薬分野では、医療機器用の高分子の発酵ヒアルロン酸の製造、販売体制を整え、供給を開始しました。独自素材の酢酸菌に関しては、ヒト経口摂取試験により、唾液中の分泌型免疫グロブリンA抗体(分泌型IgA)を増加させるとともに、鼻汁・せき・倦怠感といった風邪にみられる諸症状を減少させることを明らかにしました。
独自素材を活用した通販専用商品として、酢酸菌酵素を活用した飲酒ケアサプリメント「よいときOne」は小容量で手に取りやすい7日分を発売し、順調に売上げを伸ばしています。また、新たな機能性表示食品として、睡眠の質の向上に役立つラフマ葉抽出物を配合した「リラーレ」を発売しました。
今後も独自の機能性素材を活用してお客様の潜在的な課題の解決に取り組むことを通じて、世界の美と健康に貢献していきます。
(6)共通
該当事項はありません。