第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券届出書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、写真・CG・映像・イラストレーションなど視覚から訴求するものを「ビジュアル」と総称し、これらビジュアルを活用して伝達することを「ビジュアルコミュニケーション」と定義し、ビジュアルを活用・消費するマーケットにおいて事業を営んでおります。

 ビジュアルコミュニケーション事業は、その事業領域を狭義の企業の広告マーケットのみに限定せず、より広義の企業のコミュニケーションマーケットと設定するなかで、コミュニケーション領域における戦略・企画立案、ブランドの構築、インナーコミュニケーション、コミュニティ形成、マーケティング活動など多岐にわたっております。

 当社グループは、創業以来変わらず “人が中心” と考え、人の「感性・集合・進化」こそが創造の源であると捉えるなかで、当社グループに属する一人ひとりの表現力を結集し、企業や社会の本質的な価値や課題を見出し、ビジュアライズ(具現化)することで、「届けたい想いが伝わり、行動を促す」コミュニケーションをお客様と共に創造する「Co-Creation Partner」を標榜し、事業活動を展開しております。

 当社グループでは、新たに「世界にノイズと美意識を」という理念を掲げ、課題提起を促す「ノイズ」と、期待を超えて課題解決を行う「美意識」にこだわり、コミュニケーションの本質は「伝える」のではなく「伝わる」こと、さらに「動かす」ことであるとの価値観のもと、これまでに培ったクリエイティブ手法の経験と知恵を活かし、コミュニケーションをお客様と共創することで、社会のビジュアルコミュニケーション活動に貢献してまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社グループが事業を展開するビジュアルコミュニケーションマーケットは、デジタル技術の進化やメディアの多様化によって常に変化しております。当社グループが影響を受ける広告業界においては、4マス広告からインターネット広告へという潮流は続くとともに、企業においては、オウンドメディアなどを通じて自ら情報を発信するコミュニケーション活動が活発化しております。

 当社グループでは、このようなテクノロジーの進化やメディアの変化に柔軟に対応し、コンテンツマーケティングの時代において持続的な成長を実現するために、中長期的な観点から経営計画の策定に取り組んでおります。

 2021年を初年度とする中期経営計画期においては、「新ワークフローの確立」「Co-Creation Partnerの実現」を基本方針に掲げ、「One amana!」のコンセプトのもと、“トップライン再成長”“原価削減”“ DX推進” を基本戦略に据え、あらためて内部統制強化に向けた継続的な取り組みを実施するとともに、利益創出に努め、収益構造の改善及び財務基盤の安定化を図っていくことで、お客様の「Co-Creation Partner」を標榜するビジネスモデルを支える経営基盤の再構築を推し進めております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、成長性と収益性を追求する観点から「事業付加価値額(売上高-外注原価)」を重要指標として採用しております。損益計算書における売上総利益(売上高-売上原価)の売上原価部分について、当社グループのマネジメントモデルでは、売上高に直接紐づく変動原価、売上高には必ずしも直接紐づかない固定原価に分類のうえ、指標管理を実施しております。変動原価とは、案件毎の制作費用であり、外注費・ロケ出張費・制作材料費などが該当し、当社グループでは「外注原価」と称して扱っております。固定原価とは、主に制作領域に係る人材や設備などの固定的費用であり、クリエイター人件費・スタジオ家賃・制作機材の減価償却費などが該当し、固定原価については、販売費及び一般管理費と合わせて「固定費」と称して扱っております。

 提供するクリエイティブサービスが多岐にわたり、案件特性に応じて案件毎の利益率に幅があることや、営業と制作がオーバーラップするなかで事業展開しているビジネスモデルにおいて、「事業付加価値」と「固定費」の組み合わせに基づく適切な損益マネジメントの実行を意図しております。

 

(4)経営環境

 当社グループが事業を展開するビジュアルコミュニケーションマーケットにおいては、テクノロジーの進化やメディアの多様化に伴い、企業自らが情報発信を行い消費者と直接コミュニケーションを図るコンテンツマーケティングの時代へと事業環境は大きく変化しております。また、新型コロナウイルス感染拡大とともに訪れたニューノーマルの時代においては、あらゆる人々の常識や価値観の大きな変容が求められると同時に、DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速度的に進むなかで、企業のコミュニケーションの在り様にも大きな影響を及ぼしております。さらに、5Gの標準化が進むアフターコロナを見据えたなかでは、アナログからデジタル、リアルからバーチャルといった転換に留まらず、よりパーソナライズされた体験の提供がコミュニケーションの質を高めていくと考えられており、コミュニケーションを支える価値あるコンテンツが大量に求められることを想定しておりました。

 しかしながら、デジタル技術の進化やメディアの多様化により常に変化する中で、特に当社グループへの影響が大きい広告業界においては、4マス広告からインターネット広告という潮流の変化が生じております。また、広告代理店においても内制強化といった動きもみられております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、1979年の創立以来、広告業界を中心としてビジュアルコミュニケーション事業で順調に業績を拡大し、2019年12月期連結会計年度で売上高22,901百万円となるまでに成長してまいりました。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新商品発売の遅延や中止、イベント等のプロモーション活動の制限など、企業の広告宣伝費・販売促進費の削減による影響が生じました。この結果として、2020年12月期連結会計年度において、売上高が17,198百万円(前期比24.9%減)と著しく減少し、営業損失1,526百万円を計上したうえ、不適切会計事案の調査に関する費用等の特別損失の計上などで親会社株主に帰属する当期純損失2,486百万円を計上した結果、983百万円の債務超過となりました。さらに一部の長期借入金について財務制限条項に抵触したことで、短期的な資金繰りへの懸念が生じました。これらの状況を受けて、債務超過の早期解消に向けた計画を策定しましたが、さらなる財務体質の抜本的な改善を目指して、2021年8月に第三者割当増資による普通株式及びA種優先株式の発行により総額約11億円の資金調達を行いました。

 しかしながら、デジタル技術の進化やメディアの多様化により常に経営環境が変化する中で、特に当社グループへの影響が大きい広告業界においては、4マス広告からインターネット広告という潮流の変化が生じております。また、広告代理店においても内制強化といった動きもみられ、さらに、当社グループにおいては業績低迷が継続したことで従業員のモチベーションの低下が続き、営業及び制作進行を担う人材を中心に人材流出が継続しました。このため、中長期的な成長マーケットであるコミュニケーション・コンテンツの企画制作の事業領域の成長を上回るスピードで、当社の収益の柱であったビジュアル・コンテンツの企画制作の事業が大きく縮小することとなりました。この結果として、2022年12月期連結会計年度では売上高が14,165百万円(前期比19.2%減)まで減少しました。また、2022年12月期連結会計年度末において、当社が株式会社りそな銀行をアレンジャーとする取引金融機関8行と締結しているシンジケート方式によるコミットメントライン契約及びタームローン契約に定める財務制限条項に抵触しており、同時に、RKDファンドと締結している株式投資契約に定める財務制限条項に抵触していることから、短期的な資金繰りへの懸念が生じております。これらの状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。

 このような厳しい経営環境のもと、さらに当社従業員による不適切な取引の疑義が2022年11月下旬に生じたことで、当社は、同年12月に特別調査委員会の設置を行い、2023年5月にその調査結果を公表することとなりました。これらの不適切な取引を調査するために調査費用656百万円を計上するなど、2023年第2四半期連結累計期間においても親会社株主に帰属する四半期純損失1,084百万円を計上し、3,611百万円の債務超過となりました。これに加えて、当社は、厳しい外部環境のもとでさらに追加の損失が計上されることも予想されており、借入金合計7,114百万円については取引金融機関から返済猶予をいただいております。そのため、財務体質を抜本的に改善するための資本増強施策がなければ法的整理に至る可能性が極めて高い状態に陥っております。

 厳しい経営環境の中で当社グループの損失計上が続き、また、不適切な会計処理の調査にかかる費用が多額に発生する見込みとなり、2023年4月頃には、2023年12月期連結会計年度において大幅な債務超過となることが見込まれ、さらに、借入金の返済に支障を来たすこととなったことから、増資の引き受けに関してスポンサー候補へのコンタクトを本格的に開始することとし、スポンサー探索の結果、当社は、当社の資金面及び事業面の双方の支援の観点から、本第三者割当及び本株式併合を内容とするYMCapitalによるスポンサー支援に係る提案が、当社の企業価値の向上のためには最善の選択肢であり、かつ、当社の現状に鑑みると、当社の少数株主の皆様にとっても最善の選択肢である、と判断し、YMCapitalを最終的なスポンサーとして選定いたしました。

 これらの厳しい経営状況を踏まえ、当社は、今後の再成長に向けた強固な収益構造の確立と財務体質の抜本的な改善を目指すため、2023年9月20日開催の当社取締役会において、本事業再生ADR手続の申込を決議し、事業再生実務家協会に対し、本事業再生ADR手続についての正式な申請を行い、同日付で受理され、事業再生実務家協会と連名にて、本対象債権者に対して、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則第20条に基づく一時停止通知を送付いたしました。

 その後、当社は、2023年9月29日に、本事業再生ADR手続に基づく事業再生計画案の概要の説明のための債権者会議(第1回債権者会議)を開催し、本対象債権者から一時停止通知について同意を得るとともに、一時停止の期間を事業再生計画案の決議のための債権者会議の終了時までとさせていただくことにつき、ご承認をいただきました。また、当社は、主要な取引金融機関から極度額5億円のプレDIPファイナンスによる資金支援をいただくこと及び当該資金支援に係る債権について優先弁済権を付与することについても、本対象債権者からご承認をいただきました。

 その後、本事業再生ADR手続の中で、本対象債権者と協議を進めながら、公平中立な立場から事業再生実務家協会より調査・指導・助言をいただき、事業再生計画案を策定いたしました。同計画案については、2023年12月18日、本事業再生ADR手続において本対象債権者の全員の同意により成立いたしました。

 

・不適切な会計処理及び再発防止策の徹底

 当社は、2023年7月4日付開示「特設注意市場銘柄の指定および上場契約違約金の徴求に関するお知らせ」に記載のとおり、当社において、当社従業員が売上の水増しや架空売上を行うとともに、架空発注によって資金を不正に流出させていたことに加え、特定顧客に出向していた当社従業員によって同様の不正行為が行われていたことが判明し、また、当社が2022年8月22日付で行った過年度決算内容の訂正(以下「前回訂正」といいます。)について、前回訂正前に設置された特別調査委員会による調査が、結果として不適切な会計処理の全容を解明しないまま終了し、前回訂正が不正確かつ不十分なものであったことも判明した結果、当社は、2018年12月期から2022年12月期第3四半期までの決算短信等において上場規則に違反して虚偽と認められる開示を行い、これに伴う決算内容の訂正により、2019年12月期の経常利益、2021年12月期の経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が黒字から赤字へ転落すること、また、2021年12月期における純資産の額が負となることなどが判明したことなどから、株式会社東京証券取引所より、投資者の投資判断に重要な影響を与える虚偽と認められる開示が行われたものとして、当社の内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められたことから、同日付で特設注意市場銘柄に指定

されました。

 当社は、2023年6月13日付開示「再発防止策に関するお知らせ」に記載のとおり、特別調査委員会による調査報告書において指摘された事項及び再発防止のための提言を真摯に受け止め、有効性・実効性の高い再発防止策を策定すべく、取締役会において徹底的に協議を行い、再発防止策を策定し、実施しておりましたが、特設注意市場銘柄に指定されたことから、2023年7月19日付開示「改善計画書の策定方針に関するお知らせ」に記載のとおり、上記の再発防止策の各事項が十分であるか再検討するとともに、ガバナンス・内部管理体制の整備と強化にむけたさらなる施策を含めて、外部専門家の支援も受けながら改善計画を策定し、内部管理体制の再構築に取り組むこととし、改善計画を2023年9月下旬に適時開示することとしておりました。

 しかしながら、2023年9月29日付開示「(開示事項の変更)改善計画書の策定方針に関するお知らせ」に記載のとおり、今回の不適切な会計処理を招いた原因の分析およびそれに基づいた再発防止に向けた改善計画の検討をより詳細に行う必要があることから、2023年9月下旬までに改善計画の適時開示を行うことができないこととなり、改善計画の適時開示を2023年10月初旬に行うことに変更いたしました。

 当社は、2023年10月10日付開示「改善計画・状況報告書の公表に関するお知らせ」にて公表いたしましたように内部管理体制等の問題を抜本的に改善し、ガバナンス・内部管理体制を整備・強化するための改善計画を以下のとおり策定しており、当社は、当社グループの役職員一丸となってこの改善計画を実行してまいります。

 

1.第1線における統制の強化

(1)一人制の案件を生じさせない案件管理の徹底

 一人で案件を担当させないために案件毎にセールスサイド(稼ぐ側)とコストサイド(使う側)にそれぞれ別々の責任者を配置することで相互牽制を効かせ案件を管理いたします。加えて当社の全ての案件について、各案件の受注承認時に二人以上の者が責任者として販売管理システムに登録されることを2023年7月26日に販売管理規程に明記し、同年8月1日より運用を開始しております。

 また、営業部門のレポ-トラインにおいて承認された見積に基づいて案件を受注するにあたり営業部門のレポ-トラインだけではなく、第1.5線として組織横断的に販売プロセスのチェック機能を果たす組織による承認を要するものといたします。

(2)顧客担当者のローテーション制の導入

 当社商品・サ-ビスのうち、契約内容や価格体系が一律に定められていない受託案件においては、各案件の受注、売上の計上、および外注先への発注・支払を行う際に、その都度価格および条件が設定されているケースが多く、担当者の恣意的な操作が可能な場合があることから、特定の顧客を長期にわたり同一の者が単独で担当することがないよう、商談責任者が単独で同一顧客を担当する継続期間に上限を設けるローテーション制を導入し、運用いたします。

(3)売上確定と請求書の発行の権限の分離

 売上確定する案件責任者と、その確定情報に基づき請求書を作成・発行する別部門である業務管理デパートメントの担当者を分離することにより、虚偽の売上確定、請求情報の登録を牽制いたします。業務管理デパートメントは、案件の業務プロセスの中の受注・売上の確定・請求書作成/発行・発注・支払の最終承認を行っている部門になり、請求書の作成・発行を行う際はクライアントと合意した最終的な見積書と請求書の内容に矛盾がないかを確認し作成・発行を行っており、分割請求書、合算請求書、前受請求書の作成・発行も担っております。また、請求書発行に関するル-ルの例外措置を要する場合にはその審査を厳格に行うこととし、虚偽の売上確定、請求情報が生じないことを確認するプロセスを設けます。上記のプロセスは2023年1月より既に運用を開始しております。

(4)新たな外注先審査の基準の策定と運用

 当社が新規に外注取引を開始する際の審査基準を見直し、当社が多く取引を行う小規模事業者、個人事業主についても審査の有効性が高まるものを策定し、2023年8月1日より運用しております。2023年7月31日以前は、外注業者との初回の取引にあたって、案件責任者または制作責任者が新規外注先の登録申請を行い、管理部門が外注先のホームページや法人番号等により外注先の実在性を確認しておりました。2023年8月1日以降は、上記に加え、申請者が、委託する業務の実績資料等を提供し、発注内容の適切化を図る役割を担う部門(コーディネーションデパートメント)が外注先の業種・業態や規模と当社が委託しようとする業務の内容や規模との整合性を確認することといたします。それにあたり、具体的には、実際に制作に関わる外注先等の場合には、①ポートフォリオやWEBサイトURLなどの制作実態がわかるもの、②名刺のコピー、または③企画書、香盤表、スタッフリスト等の提出を義務付けております。上記と同時に、コーディネーションデパートメントが新規外注先の反社チェックを実施いたします。

(5)外注先への支払に関する承認プロセスの厳格化

 外注先に対する支払を申請するプロセスにおいて、支払申請者が支払の申請時に当社が納品を受けた成果物も同時に提出することと、支払申請の最終承認者である業務管理デパートメントの担当者がその成果物の確認を行うことを義務付け、支払の内容と成果物との関係の妥当性の確認手続きを強化いたします。なお、支払申請者は主に案件責任者、制作責任者の指示のもとで案件の制作進行、実際の制作を行う者を指しております。

 妥当性の確認にあたっては、業務管理デパートメントの担当者が支払申請の内容と外注先より提示された請求書との突合に加え、成果物と案件との関連性、成果物の実在性、金額の妥当性を確認した上で承認がなされることを2023年9月末日までに社内規程等に明記し、同年10月1日から運用いたしました。

(6)外注先に応じた取引上限額の設定

 当社外注先には小規模事業者も少なくないことから、新たな外注先審査時の外注先の規模と発注内容の整合性のチェックに加え、既存の外注先に関してもその規模に応じた取引内容であることを担保する仕組みとして、購買取引における支払額と外注先の規模の整合性を月次で確認いたします。これにあたり、2023年7月1日から、発注内容の適切化を図る役割を担う部門(コーディネーションデパートメント)が、月次で外注先毎の支払回数、支払額をとりまとめ、各外注先の規模に対して過大な支払が行われている可能性の有無を検証しております。

(7)第1.5線として業務プロセスの統制を行う組織の設置

 各部門の上長による統制に加え、第1.5線としてより横断的かつ強い権限をもつ業務プロセスのチェック機能を果たす組織を設置し、業務の適切性を担保する機能を強化いたします。なお、この、組織横断的にチェック機能を果たす組織については、2023年1月にマネジメント推進室という名称で設置をしており、販売および購買のプロセスにおけるチェック機能の強化を担い、活動を開始していますが、2023年8月からはマネジメント推進室は業務管理デパートメントという組織に名称が変更となり、より強い権限で営業部門を牽制する機能を担っております。

(8)出向者の責任および出向者管理の明確化

 他社に出向する社員が出向先において当社社員として遵守すべき行動指針やルールを「出向者の利益相反に関する行動規範」(以下「行動規範」といいます。)とし、2023年8月末日に作成を終えております。さらに、出向者への利益相反取引に関する定期的な確認を実施することによりモニタリング機能の強化をいたします。

 加えて、当社社員が出向した後に、当該社員の出向先と当社との取引を、業務監査の対象と位置付けることとし、継続的にモニタリングすることといたします。具体的には、出向時の行動規範についての研修の実施、行動規範についての誓約の取得をモニタリング対象とし、当社の従業員が出向している際の不正取引を牽制いたします。

2.第2線・第3線における統制の強化

(1)入金、未請求、長期仕掛品の管理方法の改善

 経理部門による現在の未入金、未請求、長期仕掛品の管理方法を、不正リスクの観点からより有効な手続きへ2023年8月1日より改善いたしました。具体的には、従来から、未入金、未請求については、月次で対象案件のリストを作成し、各案件の営業担当者およびその上長に、未入金、未請求となっている理由および、この状態を解消できる時期について確認を行っております。2023年8月1日より、これに加え、未入金、未請求の状態が長く解消されない案件(2か月続けて対象案件となった場合)については、未入金については経理担当者、未請求については業務管理デパートメントが顧客に直接ヒアリングを行うという手続きを明確化し、実施しております。長期の仕掛品については、従来より仕掛期間が受注当初の予定よりも長期化する場合においては、経理担当者がその理由を案件責任者に確認することとしておりますが、2023年8月1日より、受注時の売上確定予定日から、四半期を2回以上跨ぐ日付に売上確定予定日の変更が行われた場合には、業務管理デパートメントが顧客に直接ヒアリングを行うという手続きを明確化し、実施しております。上記により、経理部門の業務プロセスを、性善説を前提としたものから、不正リスクを考慮した業務プロセスへ変更いたします。上記プロセスについて明記された再発防止策の全社説明会資料が当社ポータルサイトに格納されております。

(2)経理部門の組織および人員体制の検証と強化

 経理部門の担当業務について、その範囲と効率性を検証し、2023年10月末日までに必要な人員の増強を図ります。具体的には、経理部門における業務プロセスを点検し、不足する点、非効率な点を洗い出し、整理を行った上で、他の管理部門スタッフの兼務や、経理部門内での配置転換など、適正な人員配置をいたします。

(3)発見統制の検証と強化

 当社の業務プロセスを、不正リスクを勘案した視点で再検証し、強化してまいります。とりわけ、内部統制報告制度(J-SOX)で評価対象とした、販売プロセスおよび購買プロセスについては、すべてのサブプロセスについて不正リスクの識別が十分になされているか、および十分な発見統制が構築されているかを2023年8月1日までに点検し、その結果に基づきプロセスの改善・強化をいたしました。具体的には、内部統制の不備として認識している「一人制案件等において案件担当者しか取引の詳細内容や実態を把握しておらず、売上の承認において上長の承認が形骸化していた」とされている内容、および「一人制案件等において、支払承認を行う上長が売上取引の内容や売上原価の構成や内容について十分理解・把握ができておらず外注費の支払承認において、上長の承認が形骸化していた」とされている内容を検証し、販売プロセスおよび購買プロセスを改善・強化いたしました。販売プロセスにおいては、一人制の案件を生じさせないために案件に関わる担当者を必ず2名以上設定すること、また、販売プロセスおよび購買プロセスともに発見統制と牽制を強化するために、営業部門のレポートラインではない組織横断的にチェック機能を果たす組織(業務管理デパートメント)が承認を行うことを業務記述書に記載しております。

(4)内部監査(業務監査および内部統制報告制度(J-SOX)評価)の充実

 内部監査における業務監査について、各期の内部監査計画の立案にあたり、2023年7月1日より監査対象の範囲の決定とリスク評価の方法を再検証した結果、今回の不正事案の発生原因を高リスク、再発防止策を重点監査事項と位置付け、その他、規程等ルールへの準拠性についても監査事項に取り入れることにいたしました。また、各期におけるフォローアップ監査も含めた監査範囲の拡充を図ります。その上で、業務監査、内部統制報告制度(J-SOX)評価の適正な頻度と要員の再検討を行い、発見統制としての内部監査体制の充実化と組織の見直しを図ります。内部統制報告制度(J-SOX)評価については2023年7月1日付でJ-Sox推進室が設置され、2名の人員にて稼働しております。

(5)定期的な社内アンケートの実施

 不正についてのエスカレーションの仕組みとして、従来から、上長への報告、内部通報による報告という方法がありました。今回の不正事案につきましては、上長が不自然な事象を発見しながらも、それについてのエスカレーションが行われず、不正事案の発見が遅れた経緯があり、エスカレーションすべき事象を正しく理解できておりませんでした。それを解決するために、今後は定期的に不正事案について研修を行い、不正を感知した場合のみではなく、不正の兆候を感じたときにも活用すべき制度であることを周知いたします。また、不正の兆候を収集するため、新たに不正に関するアンケ-トを定期的に実施し、日頃の業務の中で、疑問に思うこと、不思議に感じること等、社員の小さな気づきについて、より積極的な情報収集を行います。

3.全従業員の意識改革

(1)対話型コミュニケーションによる経営層からのメッセージの浸透およびコンプライアンス違反に対する厳正な対処

 今回の不正事案を踏まえ、コンプライアンス違反の処分について、取締役会および経営会議において徹底的な議論を実施いたしました。今後は当社のコンプライアンス統括委員会、懲戒委員会、経営会議において、不正事案についてより厳しい処分を科すことといたします。また、不正事案については内部監査においてフォローアップ監査を実施いたします。

 当社において、内部統制強化やコンプライアンスを重視する当社の会社方針、行動規範は内部統制システムの構築に関する基本方針、内部統制基本方針書、コンプライアンス基本規程、アマナグループの企業行動規範に定められております。従来はこれらについて、月次のオンライン研修を行っていましたが、その伝え方が十分ではありませんでした。今後はその理解や浸透度を高めるため、新たな改善策として、各部門において少人数単位の場を設けて、経営会議メンバーが、マネージャといった現場に近い役職層、および従業員と直接対話をし、個別の不正事案についての内容、処分、再発防止策についての共有をすることにより、過去の不正事案についての共通の理解を深め、全従業員の意識の改善を行います。それにより、全従業員のより深い意識レベルに働きかけ、自らが不正を行わないこと、他のメンバーによる不正を見逃さないことの重要性を、自分の事としてとらえる風土を醸成いたします。さらに、他の人の不正を発見するための策として、受注業務に携わっているメンバーおよびその上長が受注業務を十分理解し、各業務プロセスを申請および承認することの重要性を繰り返し周知するプログラムを実施いたします。また、その場での質問事項や社員の受け止めを、経営会議メンバーが経営会議に報告し、全社レベルでの意識の浸透度について、経営会議が把握するとともに、全従業員とのコミュニケーションの向上を図ります。

 また、当社が企業文化として掲げる「白線のマネジメント」および「クリエイティビティと多様性の尊重」についてのポリシーを明文化し、それらの本来の考え方を対話型コミュニケーションによって周知・説明するとともに、改めてコンプライアンス、内部統制の強化と、上記の企業文化を両立させることの重要性を繰り返し教育いたします。さらに行動指針としての経理関連のルールを明文化し、日常の反復業務を徹底することがコンプライアンス、内部統制を強化し、ひいては不正防止の有効な施策となることを周知・徹底いたします。

 さらに、コンプライアンス、内部統制の強化の施策として実施される業務フロー、システム変更についての十分な周知・説明を行い、対話型コミュニケーションによってそれらの背景にある理由を従業員に認識させることにより、形式的な業務プロセスの強化のみならず、従業員の意識レベルに働きかけ、従業員のコンプライアンス意識の根本的な改善を図ります。

4.経営陣・取締役会の意識改善と取締役会によるガバナンスの強化

(1)再発防止策の確実な実施と結果の検証

 当社の役員に対しては、従来から過去の不正事案の振り返りや、不正リスクに関する知識を向上させるために外部の専門家による研修を実施してまいりました。今回の不正事案を受け、過去より複数回にわたり不適切会計処理が発生した原因について、取締役会において時間をかけて徹底的な議論を行い、再発防止策を立案し、2023年6月13日に開示いたしました。また、取締役会では、不適切な会計処理の再発防止のため、不正リスク(不正が故意に行われるリスク)を重視した議論を重ね、同再発防止策を策定いたしました。今後は、取締役会が責任をもって、再発防止策の確実な実施と、その実効性の検証を行い、内部統制およびガバナンスを強化するとともに、その継続的な向上を図ってまいります。さらに個々の施策の具体的内容の精緻化にあたり、不正リスクを十分に考慮して議論を行い、決定してまいります。取締役会による再発防止策の実行管理においては、施策の実施状況にとどまらず、その実効性の評価を実施いたします。また、再発防止策の進捗状況は、適宜、経過を開示いたします。

 上記のとおり、役員に対する不正の研修は今後も継続したうえで、改善策として取締役会における不正リスクについての議論を行うことにより、役員レベルにおける不正についてのリスク感度を改善し、再発防止策を継続的に推進いたします。

(2)役員責任の明確化

 当社の役員の責任明確化につきましては、社外役員全員により構成される役員責任問題検討委員会を設置の上、同委員会に役員の責任に関する評価を諮問し、その結果をうけ、取締役会にて決定の後、2023年6月20日付「経営責任の明確化に関するお知らせ」として公表いたしました。当社は今回の役員の責任明確化の内容を真摯に受け止め、これからの改善に邁進する所存でございます。

(3)会議進行におけるガバナンス機能の強化

 当社は、取締役会の会議運営において代表取締役が議長を務めることとしておりますが、新たに、2023年6月13日より司会役を設置し、代表取締役と会議の進行役を分離することにいたしました。さらに、代表取締役以外の取締役が議長を務めることができるように、2023年12月期の定時株主総会にて定款を変更し、代表取締役の意向に傾斜した会議進行を防止し、ガバナンス機能を確保いたします。

(4)取締役会における経営体制に関するオ-プンな協議の実施

 当社は、毎期の経営体制について、経営会議において議案の作成に関する事前の協議を行い、取締役会に諮り決定してきましたが、今後は、当社の経営体制等、ガバナンス上の課題について社外役員の意見聴取の機会を増やすため、取締役会における協議の機会を増やすことといたします。具体的には、従来は経営会議において作成していた毎期の経営体制についての議案を、取締役会においても事前に協議することにより、社外役員の経営体制についての意見聴取の機会を増やします。また、2023年6月30日の臨時取締役会において、社外取締役を委員とした任意の指名報酬諮問委員会を設置することを決議し、取締役の指名および報酬につき、当委員会への諮問、答申を経て決定する体制といたしました。指名報酬諮問委員会は社外取締役(現時点で3名)で構成されます。

(5)社外役員の監督機能の強化

 社外役員の知見に基づく客観的な意見をこれまで以上に多く取り入れるため、取締役会の準備の段階での情報提供の充実を図ります。従来から取締役会の決議事項については事前に全役員に説明をしていましたが、2023年7月1日より事前説明の情報を充実させ、その内容に関する理解の深度を増すとともに、議案についての取締役間での協議の機会を増やしております。従来は、決議事項に関する事前の資料配布と事前の説明は各取締役に委ねられていましたが、今後は取締役会事務局が決議についての議案を確認し、事前の資料配布と事前の説明を各取締役に依頼し、その実行を徹底させることにより、取締役会からの事前の質問および問題点の指摘を受け、それに対する回答および解決策を提示した後に取締役会で決議をするという運用をさらに強化しております。

 また、上記とは他に、取締役会以外にも社内外の役員相互の交流や意見交換の機会を増やすことにより、取締役会の場においても、より率直な意見交換が可能になる土壌をつくります。

(6)取締役会の実効性評価の実施

 取締役会の実効性評価の実施およびその結果の公表を2023年10末日までに取締役会規程に明記の上、2023年12月期の取締役会の実効性評価を2024年12月期第1四半期に実施いたします。以降、年に1回実施することにより取締役会のガバナンス機能の向上に努めます。取締役および監査役のアンケート、インタビュー等の実効性評価の方法は2023年12月末までに決定いたします。毎年の実効性評価の決定に基づき、実効性の向上に取り組みます。

(7)最高財務責任者の任命と、サポート体制の充実

 当社は2023年7月27日付で伊賀智洋氏を最高財務責任者に選任いたしました。伊賀氏はこれまで、銀行、事業再生投資会社、経営支援会社において支援先企業の代表取締役等を務め、また外国人材採用支援会社における管理担当取締役として管理体制の構築等の経歴を持ち、2021年4月より当社の管理部門の統括室長として経営戦略、経理、財務、人事、総務の責務を担ってまいりました。この度、伊賀氏を最高財務責任者に選任することより、早期に内部管理体制の再構築を図ってまいります。

 当社は2018年6月より最高財務責任者が不在となっており、それ以降管理部門担当役員が内部管理体制の責任を担っておりました。その後、伊賀氏が当社へ入社し、管理部門の統括室長として当社の内部管理体制を把握した後に、2023年6月30日の当社株主総会継続会をもって取締役に就任し、同年7月27日に最高財務責任者に選任されました。伊賀氏を最高財務責任者に選任した理由は、上記のとおり数多くの事業において執行側の取締役を務め、かつ管理担当取締役としての実績があり、最高財務責任者として必要な知識と能力を持つと判断したことによります。今後引き続き最高財務責任者が職務を遂行するために必要な社内外の補助体制を確保するとともに、体制の有効性を定期的に評価いたします。社内外の補助体制としては、社内については会計士資格を有するスタッフの配置と会計知識を有するマネージャの確保、社外についてはコンサルタントとの契約をすることにより、現時点で確保しております。また、選任後も年1回、最高財務責任者としてのスキルの維持・向上のため、継続的に教育機会を設けてまいります。具体的には、最高財務責任者に対する、ガバナンス構築等の支援企業による内部統制等についてのアドバイス、当社の経理部門で会計士資格を持っている人員からの会計処理におけるサポート、外部の教育機関による最高財務責任者の実務についての講義を受講させる予定です。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループとして必ずしも事業上のリスクに該当しないと考えられる事項についても、投資者の投資判断上、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。なお、当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、本項に記載した将来に関する事項は、本有価証券届出書提出日現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありませんので、この点をご留意ください。

(1) 当社グループの事業戦略及び事業展開上内包するリスクについて

① 新型コロナウイルス感染拡大に関するリスクについて

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中長期、影響度:中)

 当社グループが事業を展開するビジュアルコミュニケーションマーケットは新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動や企業収益の変動による影響を少なからず受けておりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業の広告費削減による業績への影響を和らげるために、従来より、事業領域を広告コンテンツ企画制作に限定せず、より広義のコミュニケーションコンテンツ企画制作へと拡大するとともに、商流についても広告代理店や広告制作会社経由のみならず一般企業の多数の部門との直接取引を増やすなど顧客層の拡大に努めております。さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)推進によるワークフローのオンライン化、新たな商材・サービスの開発に取り組むと同時に、実際の制作現場においてもニューノーマルに対応した制作進行を徹底しております。新型コロナウイルスについてはその流行拡大は落ち着きを見せつつありますが、再拡大や新型感染症の発生時などによる経済活動や企業収益の変動、当社グループの営業及び制作活動が一部制限を余儀なくされる場合などにおいて、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

② 景気変動リスクについて

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループの属する広告業界は景気の変動による影響を少なからず受けております。そのため当社グループは、従来より顧客の分散化に取り組み、特定取引先への依存による売上への影響を最小限にとどめる努力を行ってまいりました。また、景気の変動に伴う企業の広告費削減による業績への影響を和らげるため、広告代理店、広告制作会社のみならず、一般企業に向けた商材・サービスやシステム提供等のビジネスを展開し、顧客層を拡大していく努力を続けております。さらに、販売チャネルを従来の営業プロデューサーや代理店に加え、ウェブサイトによる販売へと間口拡大を図ることによって顧客基盤拡大に努めております。しかしながら今後も景気変動によって当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

③ ビジネス環境変化への対応について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、一般企業、広告代理店、広告制作会社や出版社等の顧客に対して、撮影、CG、動画、デザインなどのビジュアル全般の提供を受託しております。当社グループは、顧客が求めるビジュアルを追求し、同時に、常に時代のトレンドを先取りして、これらビジュアルの価値を最終的に判断する消費者の嗜好やニーズを把握するための努力を続けております。しかしながら、顧客の要望を満たすビジュアルソリューションの提案や作品の提供ができなかった場合や消費者の嗜好・ニーズを先取りできなかった場合には、業界内での競争力が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、ITを中心とした最先端技術や基盤技術等の多様な技術動向の調査・研究開発に努めておりますが、予想を超える革新的な技術の進展への対応が遅れた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 競合について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 コンテンツの企画制作及びビジュアルの企画制作においては、同様の広告制作を営む企業や個人経営の写真スタジオ等、TVCM及びウェブ等の企画制作企業や個人のクリエイターと競合する関係にあります。このため、競合他社に対し優位性を維持できなくなる場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、販売チャネル、顧客サービス、価格設定等に加え、当社グループに対する顧客からの信頼度が重要であると考えており、これらの向上に努めております。しかしながら、競合他社に対し優位性を維持できなくなる場合や他社との競争上、販売促進費や広告宣伝費の増加を余儀なくされる場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

⑤ マーケットの拡大について

(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、広告業界中心から一般企業へとマーケットの拡大に努めております。メディアの多様化、デバイスの進化に伴い、ITを活用したビジュアルコンテンツの需要は一般企業においても高まっております。広告業界に隣接する業界から他の業界へと、産業別業界の事前調査を行い、最適なソリューションサービス開発と営業組織開発を行いマーケットの拡大に努めております。

 これらマーケットの拡大については、事前調査に基づく予想の範囲を超える事象が発生した場合や外部環境が急激に変化した場合には、期待した収益が確保できなくなり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

⑥ 著作権等について

(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの事業は、ビジュアルの著作権が市場において厳正に守られ、法令遵守が全うされているという状況が前提となっております。米国や欧州に比して、今一歩遅れていた日本においても著作権に対する理解が浸透しつつあり、遵守される環境が整いつつあります。

 コンテンツの企画制作及びビジュアルの企画制作においては、当社のプロデューサーが顧客から依頼を受けた制作に関する著作権や肖像権について問題が発生しないよう責任を持って管理しております。しかしながら、取り扱うビジュアルが著作権者の権利を侵害し、不正に使用された場合などに、写真及び映像の著作権者や肖像権者、顧客等が損害を被り、当社グループに対し損害賠償等の訴訟を起こす可能性があります。結果として、これらの損害賠償等の訴訟を起こされた場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

⑦ 情報セキュリティについて

(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループが運営するウェブサイトに登録された個人情報及び顧客情報等を含めた機密情報の資産管理については、セキュリティシステムや運用面から十分に配慮しております。また、当社グループでは、デジタル化に対応したビジネスモデルの確立を推進しておりますが、デジタル社会において、情報の漏洩・破壊・改竄等の脅威に対し情報資産を適切に取り扱うことが社会的責任であると認識しております。

 当社グループでは、保有する全ての重要な情報資産をあらゆる脅威から保護するために、機密性・完全性・可用性の観点から必要な管理策を講じ、法令等の遵守を含めた教育・訓練を実施するなど、情報セキュリティ活動の推進に取り組み、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO/IEC27001:2005」の認証を継続して取得しております。しかしながら、万が一これらの情報資産に漏洩・破壊・改竄等が発生した場合、当社グループの信用が失墜し、結果として、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 人材の確保について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、今後の成長と競争力の維持・拡大を図るためには、人材の確保・育成が重要であると考えております。そのため、当社グループは新卒者及び社外から才能あるキャリアの採用をしております。その上で、このような人材に対し、当社グループに蓄積されたノウハウをもとに育成する研修プログラムを設定しており、これら研修プログラムを一層充実させることで営業戦力を拡充することができると考えております。しかしながら、今後計画通りに人材を維持・拡充、または育成できない場合には、業務に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、第53期連結会計年度以降、業績低迷が継続したことで従業員のモチベーションの低下が続いたこと等の影響もあり、退職による従業員数の減少が生じており、かかる傾向が続いた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がございます。当社グループでは、リソースの適正配分などによる効率化により生産性を高めることによって、従業員数減少に備えております。

 さらに、本第三者割当後に割当予定先が実施する施策により、事業構造改革及びリストラクチャリングが行われた場合には、従業員数の減少が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がございます。当社グループにおいては、中長期的な事業継続及び今後の企業価値の向上に向けた適切な事業構造改革及びリストラクチャリングを検討してまいります。

⑨ 取引慣行について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

 当社グループのコンテンツの企画制作及びビジュアルの企画制作においては、制作段階での内容変更や予算金額の変動があり、こうした実情を踏まえ柔軟性や機動性を重視するため、契約書の取り交わしや注文書の発行が受注段階で行われないことが少なくありません。当社グループにおいては、プロデューサーが業務に係る一切の責任を負って、案件毎に発注主との制作の内容、見積り、納期の確認を緊密にしつつ予算管理を行っております。しかしながら、上記のような取引慣行上の理由から不測の事態が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 海外における事業展開について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

 海外での事業の展開にあたっては、現地の政情や経済、文化や習慣など調査・検討を行っておりますが、これらの国及び地域において、その地域特有の法律又は規制や政治又は経済要因などにより、予期せぬ損害等が発生した場合には、当社グループの事業活動等に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 労務管理について

(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 社員の勤怠管理や時間外勤務につきましては、労働基準法の規制が適用されます。当社グループでは、撮影、ロケなどによる時間外勤務や長時間労働を起因とした健康問題や生産性低下に対処するため、個人別に就業時間管理・指導を行うほか、長時間の時間外勤務を必要としないワークスタイル作りに努めております。しかしながら、クライアントとの関係や予期せぬトラブルの発生等により、時間外勤務の増加や納期遅延等が発生し、社員の健康管理や当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)その他、経営成績に影響を及ぼす可能性のある事項について

① 有利子負債に関するリスクについて

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:大)

 当社グループの有利子負債は、銀行等金融機関からの借入金及びリース債務であります(第54期第2四半期連結会計期間末における連結有利子負債残高は7,139百万円(内リース債務25百万円))。また、第54期第2四半期連結会計期間末における連結総資産に対する有利子負債依存度は121.3%となっています。

 今後、本事業再生ADR手続における金融支援を受け、割当予定先の支援の下、事業構造改革を実施し、中長期的な収益の改善を行うことで、有利子負債の返済を行っていく方針であります。

 しかしながら、本事業再生ADR手続が不調に終わった場合や、事業構造改革が成功しなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 為替の変動について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、海外との取引を主として外貨建で行っておりますが、為替リスクヘッジは特段実施しておりません。そのため、外国為替相場の変動により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 固定資産の減損損失について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループが保有している資産の時価が著しく下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

④ 事業投資について

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループでは、将来的な事業との相乗効果や関係強化を目的として株式等の有価証券を保有しております。当社グループは、投資先の経営や事業状況を注視し、適切な投資管理を行っております。

 しかしながら、投資先の事業の展開が計画どおりに進まず、実質価額が著しく下落し、かつ、回復可能性が認められないと判断した場合には、評価損の計上が必要となるため、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす場合があります。

⑤ 財務制限条項について

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:大)

 当社グループの短期借入金及び一部の長期借入金には一定の財務制限条項が付されており、当社がこれらに抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括返済を求められる等、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、第53期連結会計年度末において上記の財務制限条項に抵触しております。詳細は「⑥ 重要事象等」に記載しております。

⑥ 重要事象等

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:大)

 当社グループは、第53期連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の断続的な再拡大に伴う影響等の外部要因、さらに、営業及び制作進行を担う人材の減少に伴うリソース不足やワークフロー(組織・ルール・システム等)の大幅な変更の過渡期におけるリソース配分不備等の内部要因が重なり、売上高が大きく減少し、重要な営業損失1,146百万円、経常損失1,311百万円、親会社株主に帰属する当期純損失2,501百万円を計上し、2,460百万円の債務超過となりました。また、当該経営成績及び財政状態により、第53期連結会計年度末において、当社が株式会社りそな銀行をアレンジャーとする取引金融機関8行と締結しているシンジケート方式によるコミットメントライン契約及びタームローン契約における財務制限条項に抵触しており、同時に、RKDファンドと締結している株式投資契約における財務制限条項に抵触していることから、短期的な資金繰りへの懸念が生じております。なお、第54期第3四半期連結累計期間においては親会社株主に帰属する四半期純損失1,249百万円を計上しており、引き続き、債務超過は解消されない状態となっております。これらの状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。

 このような事象又は状況の解消を図るべく、当社グループは、以下の諸施策を推進することにより、収益構造の改善及び財務基盤の安定化にむけて取り組んでおります。

A.財務基盤の安定化

 当社グループは、資金調達や資金繰りの安定化を図るため、従来から取引金融機関及びRKDファンドなどのステークホルダーに対し、適時に当社グループの経営成績及び財政状態、経営課題や経営改革に向けての取組などを報告するとともに、理解を得ることによって良好な関係を築けるよう取り組んでまいりました。

 第53期連結会計年度末以降、各種の財務制限条項への抵触状態が継続しておりますが、全取引金融機関を対象として2023年9月29日に開催された事業再生ADR手続における第1回債権者会議において、金融債務弁済の一時停止について同意を得るとともに、一時停止の期間を事業再生計画案の決議のための債権者会議(同会議は2023年12月18日に開催することが決議されています。)の終了時までとさせていただくこと、及び主要取引金融機関から極度額5億円のプレDIPファイナンスによる資金支援をいただくこと等について、全取引金融機関から承認を得ております。RKDファンドを含む取引金融機関に対しては引き続き当社取組に対し理解を得られるよう真摯に取り組んでまいります。

B.収益構造の改善

・売上高の維持・再成長について、受注獲得にむけた商談活動の増加を推進するために、あらためて“制販一体”の方針に立ち返り、やや画一的な営業・制作体制が敷かれクライアント企業との接点や接触頻度が減少している状況から脱却し、営業と制作がオーバーラップするなかでマーケットに接していくモデルへのシフトを推し進めております。また、2022年12月期から社内カンパニー制を採用したVisual領域のファンクションを中核に、あらためて撮影・CG制作等に代表される“Visual solution領域の強化”を掲げ、Communication領域とVisual領域の双方向からのアプローチでの案件受注の強化を推し進めております。

これらの方針・戦略を実現するための体制構築として、商流・クライアント企業マーケット(直接商流/協業商流)と、商材・サービス領域(Communication領域/Visual領域)を掛け合わせた緩やかなマトリクス視点で、主に担う戦略・ターゲット別に大きく区分した営業体制を再編成し、同時に、営業と制作が有機的に連携していくための機能の整備を進めております。さらに、受託案件における責任体制の明確化を図ることで、営業のリソースを案件を進行するフェーズから案件を創出するフェーズへとさらに集中・再配分していくことを可能とする、全社視点での最適化を図るモデルへのリデザインを推し進めております。

・事業付加価値額(売上高-外注原価)について、売上高の維持・再成長にむけた施策と並行し、原価削減にむけた外注費コントロール施策の枠組みとして、モニタリングを担う機能を設置し、受託案件の全案件を対象に、各案件の利益設計フェーズを中心にワークフロー全体にわたり、各案件の担当者にフォーカスする個人を特定したモニタリングをおこない、成果につながるフィードバックを含めたPDCAのサイクルを構築のうえ施策を推し進めております。また、この枠組みを発展させ、外注原価の抑制に限らず、適切な外注差益の獲得や当社グループ内における制作リソースの活用促進等、利益設計強化に関する体系的なモニタリングに基づく課題発見と改善指導を実施していくことで、各案件の特性に応じた事業付加価値額の最大化の実現を支援しております。

さらに、案件の稼働に係る内部コスト(人件費を中心とした当社グループ内のコスト)の可視化を図り、案件の見積り段階における内部コストを踏まえた利益設計に注力することで、案件に係る内部コストの売上高への適切な価格転嫁や、案件予算に適さない過剰な人員アサインの抑制等を推進し、生産性の観点から重視している指標である、当社グループ稼働人員1人あたり事業付加価値額の改善につなげてまいります。

・販売費及び一般管理費について、稼働人員数の減少に伴う報酬・給与等の減少、業績進捗を勘案した賞与の抑制など人件費のコントロールが既に一定程度に図られておりますが、売上高の維持・再成長を阻害することのないように、新規採用及び既存人員の配置転換を含めて事業系人員の拡充を進めながら、グループ全体における人員構成の最適化を図ることで、人件費のコントロールを継続してまいります。加えて、非中核部門の見直しなど事業及び組織のスクラップアンドビルドによる人件費及び活動経費の抑制、業務委託費を中心とした活動経費の徹底的な見直しによる抑制を図るとともに、オフィス等の一部のファシリティの解約あるいは転貸等による地代家賃等の設備費の抑制をさらに検討しており、固定的な費用の大幅な削減施策を推し進めております。

C.債務超過解消のための対応策(追加的な新規資本政策の検討)

 継続企業の前提に関する重要な疑義の存在を早期に解消できるよう、外部コンサルタントを起用し、蓋然性の高い事業計画の作成及び資本政策の検討をおこなっておりますが、2023年9月20日付開示「事業再生ADR手続の正式申込及び受理に関するお知らせ」に記載のとおり、今後の再成長に向けた強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的な改善を図るため、事業再生ADR手続のもとで事業再生に取り組んでおります。

 その後、事業再生ADR手続の中で、全てのお取引金融機関様と協議を進めながら、公平中立な立場から事業再生実務家協会より調査・指導・助言をいただき、資本政策を含めた事業再生計画案を策定いたしました。なお、本事業再生計画案は、2023年12月18日、本事業再生ADR手続において本対象債権者の全員の同意により成立いたしました。

 また、10月26日付開示「第三者割当による新株式発行及び定款の一部変更、親会社、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動、資本金及び資本準備金の額の減少並びに株式併合及び単元株式数の定めの廃止についてのお知らせ」に記載のとおり、割当予定先との間で、第三者割当の方法により割当予定先に対して総額594,000千円の当社普通株式を発行すること等を内容とするスポンサー契約を締結いたしました。

 

 以上の施策を実施するとともに、今後も引き続き有効と考えられる施策につきましては、積極的に実施してまいります。しかしながら、収益構造の改善施策には新たな取り組みが含まれていることから不確実性が認められるとともに、当社グループにおける追加的な資金調達の状況等によっては、当社グループの資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があります。このため、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。

⑦ 本事業再生ADR手続及び本第三者割当に関するリスク

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:大)

 当社は、2023年9月20日付で本事業再生ADR手続の正式申込を行っており、また、本有価証券届出書提出日付の取締役会において、本第三者割当を行うことについて決議しております。当社は、これらにより当社の財務基盤を強化することを予定しておりますが、本第三者割当については、本前提条件の充足を条件としており、かかる条件が成立するまでは割当予定先は払込みを行う義務を負わず、また、本前提条件の成立時期を現時点で正確に予想することが困難であるため、会社法上の払込期間を2023年12月19日から2024年4月30日までとしております。仮に本前提条件を充足しないこと等により本第三者割当が行われない場合には、当社が想定した資金調達を行うことができず、財務体質を抜本的に改善できないことから法的整理に至る可能性があります。

⑧ 証券取引等監視委員会による開示検査について

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社は、証券取引等監視委員会より、金融商品取引法に基づく開示検査を受けております。当社は、この事実を真摯に受け止め、開示検査に協力しておりますが、今後、開示検査の結果によっては、当社は課徴金納付等の行政処分を受けることとなり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当該証券取引等監視委員会による金融商品取引法に基づく開示検査について、2023年12月15日付で、証券取引等監視委員会から内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、当社に対する3,800万円の課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った旨の公表がなされました。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

第53期連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)

(1)経営成績等の状況の概要

 第53期連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、第53期連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、写真・CG・映像・イラストレーションなど視覚から訴求するものをビジュアルと総称し、これらビジュアルを活用したコミュニケーション・コンテンツの提供等を通じて、お客様の商品やサービスの価値を可視化することで、「届けたい想いが伝わり、行動を促す」コミュニケーションをお客様と共に創造する、ビジュアルコミュニケーション事業を展開しております。

 

 当社グループでは、2021年を初年度とする中期経営計画において、「One amana!」を掲げる経営方針のもと、“トップライン再成長”“原価削減”“DX推進”を基本戦略に据え、あらためて内部統制強化に向けた継続的な取り組みを実施するとともに、利益創出に努め、収益構造の改善及び財務基盤の安定化を図っていくことで、お客様の「Co-Creation Partner」を標榜するビジネスモデルを支える経営基盤の再構築を推し進めております。

 2022年においては、「新しいワークフローの確立」を重点テーマに設定し、2021年から推進している「ADP(Account Design Program)」と称するクライアント企業毎の営業プログラムのPDCAをさらに展開し、注力クライアントの拡大・再設定、最適な人材・リソースの配置、有効な商材・サービスの提供など、選択と集中による営業戦略の更新を図るなかで、グループの総合力を発揮した効率的な売上高の再成長を目指してまいりました。同時に、ACP(amana creative platform:アマナグループ独自のITプラットフォーム)の中心となるcompass(販売管理システム)のリニューアルを契機に、デジタル化による生産性の向上、ナレッジ活用による競争力の向上を実現するDXを推進するとともに、十分なチェック・モニタリングが機能する仕組みを構築し、案件毎の利益管理の徹底や外部発注プロセスの最適化を図ることで、利益創出とさらなる内部統制の強化を推進してまいりました。

 

 第53期連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の進展や行動制限措置の緩和等による経済活動正常化に伴い、内需を中心に持ち直し傾向にあるものの、ロシア・ウクライナ情勢の悪化・長期化や、円安の急激な進行等の大幅な為替変動に伴う物価上昇圧力の強まりによる消費の下振れもあり、依然として先行き不透明な状況で推移いたしました。

 第53期連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の断続的な再拡大に伴う影響等の外部要因、また、営業及び制作進行を担う人材の減少に伴うリソース不足やワークフロー(組織・ルール・システム等)の大幅な変更の過渡期におけるリソース配分不備等の内部要因が重なり、14,165百万円(前期比19.2%減)となりました。商流別にみると、一般企業等から直接受託する取引(直接商流)と比較して、取引先のキーパーソンと当社グループ営業担当者との個別単位の関係値に一定程度に依拠してきた、広告代理店・制作会社等を経由して受託する取引(協業商流)における売上高の落ち込みが顕著となり、広告マーケット動向を踏まえた広告代理店等における内制強化等の外部環境変化、当社グループの営業及び制作進行を担う人材のリソース減少等の内部環境変化を、端的に反映したものとなりました。また、期間別にみると、第53期第3四半期連結累計期間が前年同期比14.6%減の推移であったことに対して、第53期第4四半期連結会計期間が前年同期比31.1%減と大幅な下落となり、第53期連結会計年度の売上高の減少を構成しました。

 売上高の減少に伴い、事業付加価値額(売上高-外注原価)は7,549百万円(前期比19.2%減)、売上総利益は5,956百万円(前期比22.5%減)、さらに、生産性の観点から重視している指標である、当社グループ稼働人員1人あたり事業付加価値額は(前期比10.8%減)となり、当該指標の低下が経営成績に関する大きな課題であると認識しております。

 販売費及び一般管理費については、稼働人員数の減少に伴う報酬・給与等の減少、業績進捗を勘案した賞与勘定の抑制など人件費のコントロール、さらに、活動諸費の見直しによる経費削減を徹底したことなどで、7,103百万円(前期比6.2%減)となりました。

 以上の結果、営業損失は1,146百万円(前期は119百万円の営業利益)となりました。さらに、為替差益などによる営業外収益69百万円、支払利息などによる営業外費用235百万円を計上し、経常損失は1,311百万円(前期は60百万円の経常損失)となりました。また、特定子会社の異動(株式譲渡)に伴う関係会社株式売却益502百万円などを特別利益に計上した一方で、事業供与資産について将来のキャッシュ・フローを見積り回収可能性を検討したなかで減損損失1,374百万円、過年度の有価証券報告書等の訂正報告に係る過年度決算訂正関連費用40百万円(及び課徴金16百万円)などを特別損失に計上し、税金等調整前当期純損失は2,271百万円(前期は36百万円の税金等調整前当期純利益)となりました。加えて、税金費用として、法人税等調整額124百万円などを計上した結果、最終的な親会社株主に帰属する当期純損失は2,501百万円(前期は22百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 第53期連結会計年度末の資産は、第52期連結会計年度末に比べ3,134百万円減少し7,565百万円となりました。負債は、第52期連結会計年度末に比べ583百万円減少し10,025百万円となりました。純資産は、第52期連結会計年度末に比べ2,550百万円減少し△2,460百万円となりました。

 

 なお、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

 当社グループはビジュアルコミュニケーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 第53期連結会計年度末における現金及び現金同等物は、第52期連結会計年度末の期末残高に比べ285百万円増加し、2,380百万円となりました。

 第53期連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりです。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 第53期連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは144百万円の支出超過(第52期連結会計年度は520百万円の収入超過)となりました。これは主として、税金等調整前当期純損失2,271百万円に減価償却費556百万円、減損損失1,374百万円、売上債権の減少額1,318百万円による増加があったものの、関係会社株式売却益の計上502百万円、仕入債務の減少448百万円、利息の支払額162百万円等による減少があったことによるものです。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 第53期連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは467百万円の収入超過(第52期連結会計年度は545百万円の支出超過)となりました。これは主として、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入617百万円、ACP(amana creative platform:当社グループ独自のITプラットフォーム)の中心となる新販売管理システムの開発及び改修等による無形固定資産の取得による支出200百万円等があったことによるものです。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 第53期連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは54百万円の支出超過(第52期連結会計年度は82百万円の収入超過)となりました。これは主として、短期借入れによる収入1,000百万円、長期借入れによる収入200百万円、長期借入金の返済による支出1,173百万円等があったことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

A.生産実績

a.生産実績

 生産実績については、制作物の内容、金額及び制作プロセスの多様化により、実質的な生産実績の表示が困難であります。このため、生産実績の記載はしておりません。

 

b.仕入実績

 当社グループはビジュアルコミュニケーション事業の単一セグメントであり、第53期連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

第53期連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ビジュアルコミュニケーション事業

240,457

57.7

合計

240,457

57.7

 (注)1 仕入実績の金額は、写真使用料及び商品仕入額等によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

B.受注状況

当社グループはビジュアルコミュニケーション事業の単一セグメントであり、第53期連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ビジュアルコミュニケーション事業

14,486,772

89.8

2,353,197

115.8

合計

14,486,772

89.8

2,353,197

115.8

 (注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

C.販売実績

当社グループはビジュアルコミュニケーション事業の単一セグメントであり、第53期連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

第53期連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ビジュアルコミュニケーション事業

14,165,720

80.8

合計

14,165,720

80.8

(注)1 数量につきましては、取扱品目が多岐にわたり表示が困難なため、その記載を省略しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、第53期連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

A.第53期連結会計年度の経営成績の分析

a.売上高及び売上総利益

 第53期連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の断続的な再拡大に伴う影響等の外部要因、また、営業及び制作進行を担う人材の減少に伴うリソース不足やワークフロー(組織・ルール・システム等)の大幅な変更の過渡期におけるリソース配分不備等の内部要因が重なり、14,165百万円(前期比19.2%減)となりました。商流別にみると、一般企業等から直接受託する取引(直接商流)と比較して、取引先のキーパーソンと当社グループ営業担当者との個別単位の関係値に一定程度に依拠してきた、広告代理店・制作会社等を経由して受託する取引(協業商流)における売上高の落ち込みが顕著となり、広告マーケット動向を踏まえた広告代理店等における内制強化等の外部環境変化、当社グループの営業及び制作進行を担う人材のリソース減少等の内部環境変化を、端的に反映したものとなりました。また、期間別にみると、第53期第3四半期連結累計期間が前年同期比14.6%減の推移であったことに対して、第53期第4四半期連結会計期間が前年同期比31.1%減と大幅な下落となり、第53期連結会計年度の売上高の減少を構成しました。一方では、第53期連結会計年度末における国内のアサイメント(受託)ビジネスの受注残高が前期末比で増加していることを勘案すると、商流等のシフトに伴い、四半期毎の売上高変動(シーズナリティ)について過年度の傾向から変化が生じているとともに、受注から売上確定に至るリードタイムが長期化する傾向が読み取れ、短期収益の獲得に関する課題がさらに顕在化しました。なお、協業商流から直接商流への一定のシフトは当社グループとして前提としてきたものであることに鑑みると、広告代理店等への新たなアプローチ施策や、コンサルティングファーム等の協業商流における新たな注力クライアントの拡大施策等により、協業商流における受注減少の抑止を図りながら、あらためて「ADP(Account Design Program)」を適切に活用し、クライアント企業単位での営業戦略を展開し、直接商流における尚一層の受注増大を図っていくことが必要であると捉えております。

 売上高の減少に伴い、事業付加価値額(売上高-外注原価)は7,549百万円(前期比19.2%減)、売上総利益は5,956百万円(前期比22.5%減)、さらに、生産性の観点から重視している指標である、当社グループ稼働人員1人あたり事業付加価値額は(前期比10.8%減)となり、当該指標の低下が経営成績に関する大きな課題であると認識しております。当該指標の低下要因として、ワークフロー(組織・ルール・システム等)の大幅な変更における反作用として、やや画一的な営業・制作体制が敷かれ、クライアント企業との接点や接触頻度の減少が生じていること、また、案件受注に至るアプローチがCommunication領域※からのソリューションに偏重したことで、商談から受注、受注から売上確定に至るリードタイムが長期化する傾向にあることなどが影響していると捉えております。課題解決にむけて、あらためて、営業・制作が一体となりマーケットやクライアント企業へ接していく体制へのシフトを図るとともに、撮影・CG制作等のビジュアルの企画・制作に強みを有するファンクションを中核に、Visual領域※からのアプローチでの案件受注の強化を推し進めております。

 

Communication領域:

主に、クライアント企業のコミュニケーション活動における課題発見から寄り添い、多様なクリエイティブサービスを複合的に組み合わせた企画・制作・運用にわたる価値提供をおこなう、継続的な安定収益の獲得を支える戦略領域

 

Visual領域:

主に、クライアント企業のコミュニケーション活動に用いられるビジュアルコンテンツに関して、撮影・CG制作等に代表される単独的なクリエイティブサービスの企画・制作によって価値提供をおこなう、短期収益の獲得を支える戦略領域

 

b.営業損益

 販売費及び一般管理費については、稼働人員数の減少に伴う報酬・給与等の減少、業績進捗を勘案した賞与勘定の抑制など人件費のコントロール、さらに、活動諸費の見直しによる経費削減を徹底したことなどで、7,103百万円(前期比6.2%減)となり、営業損失は1,146百万円(第52期は119百万円の営業利益)となりました。

c.営業外損益及び経常損益

 為替差益などによる営業外収益69百万円、支払利息などによる営業外費用235百万円を計上し、経常損失は1,311百万円(第52期は60百万円の経常損失)となりました。

d.特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益

 特定子会社の異動(株式譲渡)に伴う関係会社株式売却益502百万円などを特別利益に計上した一方で、過年度の有価証券報告書等の訂正報告に係る過年度決算訂正関連費用40百万円(及び課徴金16百万円)、固定資産除却損31百万円及び減損損失1,374百万円などを特別損失に計上し、税金等調整前当期純損失は2,271百万円(第52期は36百万円の税金等調整前当期純利益)となりました。加えて、税金費用として、法人税等調整額124百万円などを計上した結果、最終的な親会社株主に帰属する当期純損失は2,501百万円(第52期は22百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

B.第53期連結会計年度の財政状態の分析

(資産)

 第53期連結会計年度末における流動資産は6,097百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ1,055百万円減少しました。これは主として、現金及び預金の増加285百万円、受取手形及び売掛金(合算)の減少1,270百万円等によるものです。

 固定資産は1,462百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ2,075百万円減少しました。これは主として、建物及び構築物の減少771百万円、工具、器具及び備品の減少207百万円、ソフトウエアの減少121百万円、のれんの減少207百万円、無形固定資産のその他に含まれるソフトウエア仮勘定の減少565百万円、長期貸付金の減少42百万円、繰延税金資産の減少69百万円等によるものです。

 繰延資産は5百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ3百万円減少しました。これは、株式交付費の減少3百万円によるものです。

 この結果、総資産は7,565百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ3,134百万円減少しました。

(負債)

 第53期連結会計年度末における流動負債は3,818百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ198百万円減少しました。これは主として、支払手形及び買掛金の減少511百万円、短期借入金の増加1,000百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少540百万円、その他に含まれる未払消費税等の減少135百万円等によるものです。

 固定負債は6,206百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ384百万円減少しました。これは主として、長期借入金の減少418百万円等によるものです。

 この結果、総負債は10,025百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ583百万円減少しました。

(純資産)

 第53期連結会計年度末における純資産は△2,460百万円となり、第52期連結会計年度末に比べ2,550百万円減少しました。これは主として、第53期連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失の計上2,501百万円等によるものです。

 

C.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

D.経営者の問題認識と今後の方針について

 今後の成長に向けた問題認識、課題、今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 当社グループの運転資金需要のうち、主なものは、制作原価及び販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資

を目的とした資金需要は、設備投資、差入保証金の差入等によるものです。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入での資金調達を基本としております。将来の計画を含めた損益の状況や投資の状況の見直しを月次で行い資金需要を予測したうえで、必要に応じた金融機関等との協議を通じて、事業運営に必要な流動性を確保することとしております。

 なお、第53期連結会計年度末における有利子負債(リース債務を除く)の残高は7,260百万円となっております。また、第53期連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,380百万円となっております。

 

③経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等に対する経営者としての今後の方針・対策等

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「事業付加価値額(売上高-外注原価)」を重要指標として採用しております。当該指標の推移は以下のとおりです。当社グループは、毎期事業付加価値額の目標を設定しておりますが、第52期及び第53期につき達成しておりません。今後は効率的なリソース配分や十分な利益確保を前提とした価格設定ルールの制定及び運用を通じ、事業付加価値目標の達成を目指してまいります。

 

第51期

第52期

第53期

事業付加価値額(売上高-外注原価)(百万円)

9,422

9,347

7,549

事業付加価値率(%)

54.8

53.3

53.3

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、会計方針の選択・適用、決算日における財政状態や経営成績に影響を与える見積りを必要といたします。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えております。

A.貸倒引当金

 当社グループは、売上債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、取引先の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

B.資産の評価

 当社グループは、棚卸資産については、主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しておりますが、商品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上しております。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。

 当社グループは、長期的な取引関係維持のため一部の取引先等の株式を所有しております。この株式は、市場価格のない株式でありますが、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失、あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性があります。

 当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しておりますが、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要になる可能性があります。

C.繰延税金資産

 当社グループでは、合理的で実現可能な将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を十分に検討し、繰延税金資産を計上しております。将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の実際の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性があります。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の実際の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の親会社株主に帰属する当期純利益を増加させる可能性があります。

D.資産除去債務

 当社グループは、オフィス、スタジオ等の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務に関し、「資産除去債務に関する会計基準」に基づき過去の実績等から合理的な見積りを行い、資産除去債務を計上しております。しかしながら、新たな事実の発生等に伴い、資産除去債務の計上額が変動する可能性があります。

 

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

第54期第3四半期連結累計期間(自 2023年1月1日 至 2023年9月30日)

(1)財政状態及び経営成績の状況

①経営成績

 当社グループは、写真・CG・映像・イラストレーションなど視覚から訴求するものをビジュアルと総称し、これらビジュアルを活用したコミュニケーション・コンテンツの提供等を通じて、お客様の商品やサービスの価値を可視化することで、「届けたい想いが伝わり、行動を促す」コミュニケーションをお客様と共に創造する、ビジュアルコミュニケーション事業を展開しております。

 

 当社グループでは、2021年を初年度とする中期経営計画において、「One amana!」を掲げる経営方針のもと、“トップライン再成長”“原価削減”“DX推進”を基本戦略に据え、内部統制強化に向けた継続的な取り組みを実施するとともに、利益創出に努め、収益構造の改善及び財務基盤の安定化を図っていくことで、お客様の「Co-Creation Partner」を標榜するビジネスモデルを支える経営基盤の再構築を推し進めております。

 しかしながら、2022年(前連結会計年度)においては、新型コロナウイルス感染症の断続的な再拡大に伴う影響等の外部要因、また、営業及び制作進行を担う人材の減少に伴うリソース不足やワークフロー(組織・ルール・システム等)の大幅な変更の過渡期におけるリソース配分不備等の内部要因が重なり、売上高が大きく減少し、人件費のコントロールを中心とした固定費削減を図ったものの、大きな損失を計上し、債務超過に陥っております。加えて、当社従業員による不適切な取引の判明等による不適切な会計処理を受け、内部統制及びガバナンス体制に大きな課題を残しました。

 このような状況を踏まえて、2023年(当連結会計年度)においては、「利益創出」と「内部統制強化」を基本方針に据えた中期経営計画に立ち返り、2022年(前連結会計年度)において整備を進めたワークフローをさらに発展させながら活用し、あらためて内部統制の強化にむけた継続的な取り組みを徹底するとともに、事業の黒字化を早期に実現するために、利益体質化にむけて収益と費用の両側面から施策を実行し、収益構造の改善を図ることで財務基盤の安定化に努めております。収益構造の改善においては、受注獲得にむけた商談活動の増加を推進するために再編成した営業体制のもと、営業と制作が有機的に連携しながら、グループの総合力を発揮した売上高の再成長を目指し、同時に、受託案件毎における責任体制の明確化と利益設計の強化を図り、重要指標である1人あたり事業付加価値額(売上高-外注原価)の向上を推し進め、さらに、固定費の大幅な削減施策を検討のうえ適時に実施しております。

 

 第54期第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、ウィズコロナ期からアフターコロナ期へ移行するなか、経済活動の正常化を背景に内需を中心に持ち直し、緩やかな回復基調を維持しているものの、物価上昇圧力の強まりによる消費の下振れや、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等の地政学的リスクへの懸念等に鑑みても、依然として先行き不透明な状況で推移いたしました。

 第54期第3四半期連結累計期間の売上高は、前連結会計年度から営業及び制作進行を担う人材の減少が継続していることなどを受け、9,116百万円(前年同期比15.6%減)となりました。また、当社グループの財政状態等による与信観点での機会損失が重なったことなども加わり、第54期第3四半期連結会計期間の売上高は前年同期比25.4%減となり、第54期第2四半期連結累計期間における前年同期比の水準と比較して、さらに減少した進捗となりました。商流別にみると、直接商流(一般企業等から直接受託する取引)協業商流(広告代理店・制作会社等を経由して受託する取引)双方ともに前年同期比において下落しているものの、相対的には、取引先のキーパーソンと当社グループ営業担当者との個別単位の関係値に一定程度に依拠する協業商流における売上高の減少が顕著な傾向が継続しており、広告マーケット動向を踏まえた広告代理店等における内制強化等の外部環境変化、当社グループの営業及び制作進行を担う人材のリソース減少等の内部環境変化を反映したものとなりました。

 売上高の減少に伴い、事業付加価値額(売上高-外注原価)は4,889百万円(前年同期比14.8%減)、売上総利益は3,816百万円(前年同期比15.7%減)となりました。また、外注原価の抑制のみならず適切な外注差益の獲得や当社グループ内部リソースの有効活用など、案件毎の利益設計強化に関する体系的なモニタリングに基づく施策を推進しており、一部で成果をあげているものの、第54期第3四半期連結会計期間の売上高の大幅な減少が響いたことで、生産性の観点から重視している指標である、当社グループ稼働人員1人あたり事業付加価値額についても、前年同期比1.9%減と停滞しました。

 販売費及び一般管理費については、稼働人員数の減少に伴う報酬・給与等の減少、業績進捗を勘案した賞与勘定の抑制など人件費のコントロールを継続し、また、非中核部門の見直しにより事業及び組織の最適化を図ることなどで、固定的な費用の削減施策に努め、さらに、前連結会計年度において事業供与資産について減損損失を計上したことを受け、第54期連結会計年度からの償却費負担の軽減も加わり、4,472百万円(前年同期比15.6%減)となりました。

 以上の結果、営業損失は655百万円(前年同期は773百万円の営業損失)となりました。さらに、為替差益などによる営業外収益109百万円、支払利息などによる営業外費用157百万円を計上し、経常損失は703百万円(前年同期は837百万円の経常損失)となりました。また、特別利益において、オフィス閉鎖に伴う会計処理として、将来使用する見込みがなくなった資産除去債務について取崩を行ったことによる資産除去債務取崩益96百万円などを反映し、さらに、関係会社株式売却益16百万円などを計上した一方で、特別損失において、不適切な会計処理に係る特別調査費用等656百万円、オフィス閉鎖に伴う減損損失31百万円及び事務所移転費用17百万円などを計上し、税金等調整前四半期純損失は1,214百万円(前年同期は391百万円の税金等調整前四半期純損失)となり、最終的な親会社株主に帰属する四半期純損失は1,249百万円(前年同期は591百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。

 

 当社グループはビジュアルコミュニケーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

②財政状態

(資産)

 第54期第3四半期連結会計期間末における流動資産合計は4,828百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,268百万円減少しました。これは主として、現金及び預金の減少743百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が前連結会計年度末の受取手形及び売掛金と比べて302百万円減少したほか、その他に含まれる未収入金の減少53百万円及び未収消費税等の減少82百万円等によるものです。

 固定資産合計は1,252百万円となり、前連結会計年度末に比べ209百万円減少しました。これは、有形固定資産の減少115百万円、無形固定資産の増加66百万円、投資その他の資産の減少160百万円によるものです。

 この結果、総資産は6,084百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,480百万円減少しました。

(負債)

 第54期第3四半期連結会計期間末における流動負債合計は4,171百万円となり、前連結会計年度末に比べ353百万円増加しました。これは主として、支払手形及び買掛金の増加159百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加229百万円、未払法人税等の減少20百万円等によるものです。

 固定負債合計は5,700百万円となり、前連結会計年度末に比べ506百万円減少しました。これは主として、長期借入金の減少374百万円、資産除去債務の減少93百万円等によるものです。

 この結果、負債合計は9,872百万円となり、前連結会計年度末に比べ153百万円減少しました。

(純資産)

 第54期第3四半期連結会計期間末における純資産合計は△3,787百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,327百万円減少しました。これは主として、当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失の計上1,249百万円等によるものです。

 この結果、第54期第3四半期連結会計期間末の自己資本比率は△64.2%(前連結会計年度末は△34.3%)となりました。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 第54期第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

 第54期第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 第54期第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

 第54期第3四半期連結累計期間において、仕入の実績が著しく減少いたしました。これは、連結子会社であった株式会社アマナイメージズが第53期第2四半期連結累計期間に連結の範囲から除外されたことによるものであります。なお、販売(売上)の実績については、「(1)財政状態及び経営成績の状況 ①経営成績」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)株式会社アマナイメージズの株式譲渡

 当社は、2022年4月28日に開催された取締役会において、当社の連結子会社である株式会社アマナイメージズについて、当社保有の全株式を譲渡することを決議し、2022年5月31日に株式を譲渡いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。

(2)株式会社イエローコーナージャパンの株式譲渡

 当社は、2023年6月29日に開催された取締役会において、当社の連結子会社である株式会社イエローコーナージャパンについて、当社保有の全株式を譲渡することを決議し、2023年6月30日に株式を譲渡いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。

(3)コクヨ株式会社との資本業務提携の解消

 当社は、2023年8月31日に開催された取締役会において、当社とコクヨ株式会社との間で2021年6月30日付にて締結した資本業務提携を合意解約の形により解消することについて決議し、同契約に基づく資本業務提携を解消いたしました。

 

 

5【研究開発活動】

該当事項はありません。