第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは「誠実・信用・貢献」を基本的理念として「お取引先様を最優先に思う心を常に忘れない会社」を目指し、提供する商品・サービスを通じてお取引先様と共存共栄することで株主様の利益拡大に寄与するとともに、社会その他すべてのステークホルダーへの責任を果たし続けることを経営の基本方針としております。

 

(2)経営環境

 当連結会計年度の経営環境は、経済活動のコロナ禍からの正常化が進み、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあって、回復の兆しを見せ始めている一方、原材料価格やエネルギーコストの高騰、長期的な円安傾向が加わり、物価上昇が止まらないなど、先行き不透明な状況となっております。

 

(ファインケミカル事業)

 医薬品市場は、新薬市場におきましては、モダリティの多様化ならびに外部業務委託への動きがより進むものと予想されます。また、ジェネリック医薬品市場におきましては、引き続き製剤の安定供給が求められる一方、継続的な薬価改定により、厳しい市場環境に加え、既存製剤の中止や新規品目の開発への慎重な判断が行われると予想されます。このような状況のもと、医薬品原料部門におきましては、新薬市場に対しては、開発新薬の中間体等のプロモーション、さらにJITSUBO株式会社との協業によりペプチド基幹原料であるTagの製造に取り組んでまいります。また、ジェネリック医薬品市場に対しては、スペラネクサス株式会社の高活性原薬製造機能を活かした自社製品の製造販売、競争力の高い輸入原薬の販売に取り組んでまいります。CDMO部門におきましては、スペラファーマ株式会社の製剤、原薬の開発力を、岩城製薬佐倉工場株式会社の高活性注射剤設備・スペラネクサス株式会社の高活性原薬製造設備を用いたバイオ医薬品・高薬理活性医薬品のサービス拡充に繋げ、JITSUBO株式会社を中心とした中分子領域における開発業務の推進も加え、アステナグループ全体でのサービスポートフォリオの強化に努めてまいります。

 

(HBC・食品事業)

 食品原料・機能性食品原料市場は、国内市場の成熟化、原材料価格の高止まり、消費者の節約志向による低価格帯へのシフトなど、厳しい市場環境が続くと予想されます。一方で、健康志向の高まりにより機能性食品原料の需要は増加すると予想されます。このような状況のもと、食品原料部門におきましては、一般加工食品向け機能性食品原料拡販の取り組みとして、食品原料検索プラットフォームである「i-Platto(アイプラット)」の提供などにより、多様化する顧客ニーズに迅速かつ的確に対応ができる体制を構築してまいります。また、プラットフォーマーとして顧客の業務効率化に寄与する取り組みを進めてまいります。化粧品原料市場は、新型コロナウイルス感染症の影響がなくなり、社会活動の正常化が進むことから、国内市場は緩やかに回復すると予想されます。一方で、中華人民共和国における福島第一原子力発電所による処理水の海洋放出に対する批判の高まりや、原材料調達の不安定化など、依然として不透明な状況が続くと予想されます。このような状況のもと、化粧品原料部門におきましては、引き続き自社品及び付加価値提案型ビジネスの展開と企画開発・インサイドセールスの機能強化により、新規案件の獲得に取り組んでまいります。化粧品通販市場は、新型コロナウイルス感染症の影響がなくなり、外出機会の増加による既存顧客のレスポンスが回復すると予想されます。このような状況のもと、化粧品通販部門におきましては、自社品の更なる需要掘り起こし、新製品開発及び海外化粧品ブランドなどの新規取り扱いによる成長を目指します。

 

(医薬事業)

 ジェネリック医療用医薬品市場は、薬価改定が毎年実施されることに加え、相次ぐGMP違反による品質への不信感、大手メーカーの販売中止などに起因する需給不均衡、各種コスト上昇による収益性の低下が喫緊の課題であり、厳しい市場環境が継続すると予想されます。このような状況のもと、医療用医薬品部門におきましては、引き続き品質最優先、法令遵守の下、コストダウン推進と共に、製品の安定供給に努めてまいります。また、新製品の研究開発、長期収載品の承継等の事業開発を引き続き推進していく一方、学会での展示やウェビナーを通じて岩城製薬ブランドの認知度を強化し、患者様、お得意先様からの一層の信頼向上に努めてまいります。美容医療部門におきましては、医療機関専売化粧品であるNAVISION DRブランドの拡販に注力し、岩城製薬株式会社での新製品開発及び発売に取り組んでまいります。

 

(化学品事業)

 表面処理薬品市場は、半導体分野におきましては、国策でもあるパワー半導体の大幅な回復と拡大が予想されます。また、自動車業界におきましては、自動運転技術の実用化が進み、電子制御化による車載基板需要増、受動部品点数の拡大が予想されます。このような状況のもと、表面処理薬品部門におきましては、技術革新に貢献する信頼されるパートナーを目指し、更なる経営体質の強化と事業の継続性を高め、日々進歩する各種電子部品、半導体製造技術に貢献するだけでなく、新たな技術創生によりお客様からの信頼を高めてまいります。表面処理設備市場は、前年同様、次世代通信規格の出現や自動車に対する各国の環境規制強化や安全運転志向の高まりによって、半導体や電子部品の需要は確実に伸びると予想されます。このような状況のもと、表面処理設備部門におきましては、前年の生産キャパシティ増加により引き続き市場の需要に応じていけるよう活動を進めてまいります。また、納期短縮等の施策を推し進め、業務改善活動を継続し、技術継承研修、メーカーにとって最重要課題である新商品開発に注力してまいります。

 

(その他事業)

 その他事業では、新規事業の企画を行うアステナミネルヴァ株式会社を中心とし、地域資源を生かした商品の販売を行うAMトレーディング株式会社、人材事業を発起点として石川県内企業との連携を進めるイシカワズカン株式会社、大学と連携し循環型農業・畜産業を推進する株式会社PIXTURE(非連結子会社)、投資事業としてアステナミネルヴァ株式会社の事業を加速させる奥能登SDGs投資事業有限責任組合、TUAT1号投資事業有限責任組合と、当社グループの新規事業を進めてまいります。特に2024年11月期におきましては、奥能登の天然資源や伝統技術から生まれる素材を使ったナチュラルスキンケア商品の販売を中心に取り組んでまいります。

 なお、本年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」は、アステナミネルヴァ株式会社の本社がある珠洲市を含め、能登地方全域に甚大な被害をもたらしました。当社グループの被害状況につきましては調査中でございます。今後、グループ一体となって、事業の復旧、地域の復興に全力を尽くしてまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としましては、当社は「誠実・信用・貢献」を基本的理念として「お取引先様を最優先に思う心を常に忘れない会社」を目指し、提供する商品・サービスを通じてお取引先様と共存共栄することで株主様の利益拡大に寄与するとともに、社会その他すべてのステークホルダーへの責任を果たし続けることを経営の基本方針としており、中期的な経営戦略の実行及び実現に向け、これまで長きにわたって培われてきた良き企業文化はそのままに、成熟企業的な行動慣習を改め、経営品質を改革・向上させることが、非常に重要な課題であると認識しております。

 この課題に対処するため、当社グループは2021年6月に持株会社体制へ移行し、5事業をビジネスの主軸にするとともに、経営体制刷新による事業戦略の再構築を行いました。事業戦略再構築の基本方針として、「産業」「技術」「社会」のサステナビリティを高めることを目的とした3つのサステナビリティ戦略のもと、6つのビジネスモデルを定義し、グループ中長期ビジョン(Astena 2030“Diversify for Tomorrow.”)を推進してまいります。

 なお、当社グループを取り巻く事業環境は、コロナ禍からの正常化が進み、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあって、回復の兆しを見せ始めている一方、ウクライナ情勢の長期化やイスラエル・ガザ地区問題などに伴い地政学的リスクの高い状況が継続し、金利、為替、エネルギーや資源コストの高騰などによる経済減速のリスクが懸念されるなど、不透明な状況が続くと予想されます。

 さらに加えて、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」は、当社の珠洲本社がある珠洲市を含め、能登地方全域に甚大な被害をもたらしました。当社グループの被害状況及び今後の事業に与える影響につきましては調査中でございます。

 このような状況のもと、当社グループでは、グループ中長期ビジョン達成に向け、目標値に対する進捗状況等を鑑みて、ローリング方式にて中期経営計画ローリング(2024-2026)の見直しも行っております。

 

(4)経営戦略

 当社グループは2021年1月発表の「Astena 2030“Diversify for Tomorrow.”」の実現へ向けて、プラットフォーム事業への転換・ニッチトップ事業の磨き上げ・新規事業への投資と育成の3つの基本戦略に基づいた経営を推進し、各種施策に取り組んでおります。

 

① プラットフォーム事業への転換

 当社グループにおけるファインケミカル事業及びHBC・食品事業は、商流や技術の中核に位置しており、今後、競争力の高い周辺領域に積極投資し、その繋ぎ合わせにより価値連鎖を実現させ、新たな価値提案を行う。

(ファインケミカル事業)

・CMC/CDMO事業と調達プラットフォーム事業を2本柱とし、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

・グローバル要求水準に対応し、高活性注射剤CDMOのトップを目指す。

(HBC・食品事業)

・原料ビジネスのDX化により、顧客の開発・調達プロセスにおける課題解決のプラットフォームを提供する。

同時に独自性を高めた商品・サービスの提供で市場価値を増大させる。

・ダイレクトマーケティング領域への投資を行い、領域特化型のネットワークを構築する。

 

② ニッチトップ事業の磨き上げ

 当社グループにおける医薬事業及び化学品事業は、グローバル展開やカテゴリ選択により引き続き高い成長が見込めるため、これまでの戦略を継続し確実な成果を上げる。

(医薬事業)

・皮膚科領域をベースに、外皮用剤品目数及び生産キャパシティにおいてトップを目指す。

・外皮用剤、新薬共同開発、国内外の事業提携、M&A等により事業基盤の強化・拡大を目指す。

(化学品事業)

・エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉え、ニッチトップ商品を継続的に開発する。

・ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の実績で台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の更なる差別化を図る。

・環境負荷低減を追求し、グローバル企業との共同開発による更なる成長を進める。

 

③ 新規事業への投資と育成

 上記2つの基本戦略に加えて、将来の持続的ニーズを捉え、社会と共に成長していける製品(モノ)・サービス(コト)を創出し、現状の主力4事業に次ぐ、第5の主力事業を立ち上げる。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等

 2030年11月期を最終年度とした新たな中長期ビジョン「Astena 2030“Diversify for Tomorrow.”」においては、売上高と自己資本当期純利益率(ROE)を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標と位置付け、目標の達成に向けて各種施策に取り組んでまいりました。

 

重要経営指標及び事業遂行上の重点指標の目標値(最終年度:2030年11月期)

売上高=1,300億円以上

自己資本当期純利益率(ROE) =13.0%以上

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「誠実・信用・貢献」を基本理念とし、「お取引先様を最優先に思う心を常に忘れない会社」を目指しております。提供する商品・サービスを通じてお取引先様との共存共栄を図り、株主・投資家、社員をはじめとするステークホルダーの皆様への責任を果たし続けることを経営の基本方針としております。

 2021年6月には、事業戦略の再構築の基本方針として、「産業」「技術」「社会」のサステナビリティを高めることを目的とした3つのサステナビリティ戦略を掲げました。「クスリのイワキ」から「サステナビリティのアステナ」への進化を目指し、アステナグループの将来像は、SDGsの実現を担うイノベーターとなることをビジョンに掲げました。

 以下3つのサステナビリティ方針を定めております。

■私たちはお取引先様の事業課題を「策揃え」で解決し、参入市場のエコシステム化を通して、産業のサステナビリティを高めます。

■私たちは技術をコンピテンシーとして高い市場シェアを獲得し、相対的競争力を高め続けることにより、技術のサステナビリティを高めます。

■私たちは豊かな社会の実現のため、社会課題を解決する新規事業を次々と世に送り出し、社会のサステナビリティを高めます。

 

(1)サステナビリティ

① ガバナンス

 当社グループでは、気候変動関連を含むサステナビリティ課題の取組みを推進し、その取組みを管理監督するサステナビリティ推進委員会を設置し、年4-5回開催しております。サステナビリティ推進委員会は、当社グループとして果たすべきサステナビリティへの取組み、各事業のサステナビリティに関する課題を共有するとともに、その解決策について討議を行い、課題に対する目標の進捗管理、評価、施策の審議を行っております。取締役会が果たすべき監督機能及びモニタリング機能が十分に発揮されるために、委員長は当社取締役が務め、メンバーは当社執行役員、各事業の代表取締役・取締役で構成し、取締役会で決議する方針、戦略に関する事前審議を行っております。また各事業は、月に1度当社取締役メンバーと気候関連を含む経営課題を共有し、事業成長に向けた討議を実施しております。

 

② 戦略

 当社グループは、2021年6月に持株会社体制への移行を機に、「産業のサステナビリティ」を高めるプラットフォーム戦略、「技術のサステナビリティ」を高めるニッチトップ戦略、そして「社会のサステナビリティ」を高めるソーシャルインパクト戦略という3つの戦略を基本に据えました。

 プラットフォーム戦略では、ファインケミカル事業とHBC・食品事業を推進し、参入市場におけるあらゆる事業ニーズに応え、産業全体の効率性を高めることを目的とした業界プラットフォーマーになることを目指します。ファインケミカル事業の領域では、持続的成長のために高品質の製品・サービスを安定的に提供するとともに、社会の変化に応じたより高いレベルでの「策揃え」を行い、お取引先様、消費者の皆様の問題を解決することで、創薬エコシステムの更なる進化に貢献していきます。また、HBC・食品事業の領域では、循環型社会への変化に対応する健康・環境・社会に配慮したサービスの機会を捉え、顧客の課題解決の訴求が可能で最適な「プラットフォーム=取引の場」を提供します。

 ニッチトップ戦略では、医薬事業と化学品事業を推進し、参入市場を小さく定義し、各社固有の技術や事業体制によって差別化を図り、高い市場シェアの獲得を目指すことで競争力の持続性を高めます。コンプライアンス経営方針を堅持し、品質と安全性を最も重要な課題と認識し、高品質な製品を安定供給する努力を重ねてまいります。また持続的な成長のため研究開発投資を行い、高付加価値製品を生み出してまいります。

 ソーシャルインパクト戦略では、多岐にわたる社会課題をビジネスで解決するため、事業創出を続けていきます。日本が抱える課題と向き合い、地域社会の皆様と密接に連携し、私たち企業のお取引先様、お客様、社員が安心・安全に暮らせる社会作りに貢献します。また地域課題との向き合いを通じて当社がこれまで培った知見を活かした新規事業の創出も目指します。

 グループ全体を通じては、グループ共通の基本理念の浸透と更なる進化を目指し、高い企業理念の維持に努めております。これらは、創業以来「誠実・信用・貢献」を基本理念としている当社グループが、社会に対して果たす企業としての責任と考えております。

 さらに戦略を推進する経営人材、新しい価値創造に向けた新規事業を創出する人材、高い品質と安全性を担保する専門人材の育成と創出に継続して取り組みます。また社員が自律的に会社の成長のための能力を高め、互いを尊重し、新しい価値を協創する会社基盤を構築します。一方、各製造拠点では、再生可能エネルギーの導入や循環型経済を目指した商品・サービス開発を行い、持続的な社会に向けて取り組んでおります。

 当社グループは、医薬・化学品を中心とした異なる事業が属しますが、グループ共通の基本理念を中心に据え、持続的な企業価値の向上を目指すため、グループ全体のマテリアリティを定めました。

 

◆サステナビリティに関する当社グループ重点取組事項(気候変動関連を含む)

トピック

重点取組項目

具体的な取組

自然資本

事業活動による二酸化炭素排出量の削減

●製造拠点における再生可能エネルギーの導入による温室効果ガスの削減

●物流を通じて発生する温室効果ガスの測定と削減

サーキュラーエコノミーの推進

●環境に配慮した商品、サービスの拡充

●サプライチェーン全体におけるサーキュラーエコノミーの推進

社会資本

提供する商品・サービスの品質、安全性の担保・維持

●医薬品の品質保持、安定供給

●特定市場の技術磨き上げ

●コンプライアンスの堅持

●法令遵守、その社内教育・プロセスの徹底

地域社会との共生

●社会課題を解決する新規事業の創出

●若者教育への支援活動

人的資本

不確実な時代に事業を牽引する次世代リーダー育成

●次世代リーダーの育成

●豊富な教育の機会の提供

課題解決に挑戦する事業創造人材の育成

●新規事業人材の育成

●サステナビリティ経営の推進

従業員エンゲージメント

●経営陣と従業員の1on1の実施

●グループ全体で横断的なMVV推進活動

●社員の自己実現やスキルアップの機会を応援

●リモートワークとオフィス勤務の柔軟な組み合わせ

健康経営の推進

●グループ一体の健康経営推進

●安全衛生委員会の有効活用

●製造拠点における安全施策の徹底

ダイバーシティ

●女性管理職の登用

●多様な働き方の推進

ガバナンス

倫理と誠実性

●創業の基本理念「誠実・信用・貢献」の浸透と共有

●グループ全体で横断的なMVV推進活動

リスクマネジメント

●コンプライアンスの堅持

●経営管理の仕組みづくり

 

③ リスク管理

 当社グループでは、事業全般に関わる気候変動に関するリスクと機会は、当社のESGグループを中心としたサステナビリティ推進チームが各事業の担当者と協力して抽出した内容を、経営の影響度、発生可能性などを踏まえて重要性の識別を行い、サステナビリティ推進委員会に上程しております。サステナビリティ推進委員会では、経営目線でその重要性や経営への影響について討議を行い、特に重要な事項は取締役会へ適宜報告を行い、速やかな対応を行っております。また当社は月に1回、事業の状況、予実差異、各事業の中期経営計画の実施状況についても、事業経営者から当社取締役が報告をうける場として経営会議を開催しております。経営会議に各事業経営者から当社取締役メンバーに報告し、対応施策等について協議を行っております。

 

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④ 指標及び目標

a.気候変動

 本件については、詳細は「(2)個別項目、① 気候変動、d.指標及び目標」をご参照ください。

 

b.人的資本

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく指標・数値に関しては、「5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率」に記載しております。なお、当社は各指標の向上を目標としております。

 

(2)個別項目

① 気候変動

a.ガバナンス

 本件については「2 サステナビリティに対する考え方及び取組、(1)サステナビリティ、① ガバナンス」をご参照ください。

 

b.戦略

 当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、パリ協定及び世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から2℃未満に抑える国際的な取組みを支持しております。気候変動の影響は、地球環境とそこに暮らす人々にとって大きな脅威となっております。当社グループは、社会全体のサステナブルな成長なくして当社グループの成長はないと考えております。事業活動における環境対応は私たちの重要な経営課題と位置付けて取り組んでおります。

 

c.リスク管理

 本件については「2 サステナビリティに対する考え方及び取組、(1)サステナビリティ、③ リスク管理」をご参照ください。

 

d.指標及び目標

 政府方針である2050年カーボンニュートラルに向けたマイルストーンとして、当社が持株会社化した2021年を基準年とし、2030年までの当社グループのCO排出量の削減と再生可能エネルギーへの切り替えに関する定量目標を設定いたしました。これらはパリ協定に整合したシナリオを採用しております。今後、設定した目標の早期達成を実現すべく施策を実行してまいります。

Scope1・2に対する目標値

2030年までに基準年2021年比でのCO排出量を30%削減いたします

再生可能エネルギー比率に対する目標値

2030年までに自社拠点における総電力量に占める再生可能エネルギー利用率60%を達成いたします

 

② 人的資本

 当社は1914年7月10日、創業者岩城市太郎が東京都日本橋本石町4丁目に薬種問屋を開店したことが始まりです。創業者は「誠実一路」を信念とし、取引先の皆様に支えられ、創業から今に至るまで経営者・社員にその精神を引き継いでおります。仕入先・お客様との信頼を構築し、「品揃え」の拡大を行うことで、医薬・化学の領域を中心に事業を拡大してきた当社グループは、次の100年に向けて「誠実・信用・貢献」の精神そのままに、新たな価値創造人材、品質と安全性を担保する専門人材の育成に取り組みます。

 また、グループ各社の経営者・人事担当者が一体となり、企業理念に基づいた人材育成を推進しております。次世代を担う社員のサステナビリティ理解を深め、課題解決スキルの育成とともに、将来の経営陣や戦略人材を育成しております。

 

◆不確実な時代に事業を牽引する次世代リーダー育成

 当社グループ全体では、次世代の経営幹部候補生を自薦・選考により丁寧に選りすぐり、トップマネジメントポジションに必要なスキルとリーダーシップを養成するための研修プログラムを展開しております。このプログラムは、将来の組織の指導者としての役割を担うことが期待される個人に焦点を当てております。選ばれた候補生は、戦略的思考、リーダーシップスキル、意思決定能力、コミュニケーション力など、トップマネジメントに必要な能力を高めるためのトレーニングを受けます。このトレーニングは、3年という期限を設け、この研修プログラムを通じて次世代のリーダーを育成します。各候補生の進歩は、この期間にわたって定期的に評価され、その成長と変革の度合いを明確に測定します。

 

◆課題解決に挑戦する事業創造人材の育成

 ソーシャルインパクト戦略の拠点がある石川県珠洲市のESGオフィスでは、社会課題をビジネスで解決するための事業を展開しております。この事業では、事業としての成長のみならず、当社グループの事業創造人材を育成する取組みでもあります。当社グループの既存事業とは異なる領域で、困難な状況下において持続的な社会を創るための人材を育成しております。社内からの人材登用だけでなく、異業種から、特に若者世代の採用と育成を推進しております。またグループ内に潜在する当社ケイパビリティに新たな付加価値をつけて新規事業を創出するため、ESGオフィスにはグループ企業の企画人材を研修の形で参加させ、さらなる成長につなげる取組みを行っております。

 

◆従業員エンゲージメント

 当社グループは、企業理念を理解し共感するとともに、それを体現すべく自己を高め、取引先・顧客のために自らの意思で行動を起こせる人材育成に取組んでおります。グループ全体のMVV(Mission, Vision, Value, Spirit)を推進する活動を事業横断で進め、専門のチームを構成しております。企業理念に共感し、それを実践する機会を提供しております。事業横断のチームを通じて、異なる部門や専門分野の社員が協力し、共通の目標を達成する機会を持っております。年次表彰では、この活動に参加した社員の貢献とその成果を称えます。また、社内環境の整備にも力を入れており、社員がより良い働きやすい環境でスキル向上と幅広い能力の育成に取組むことができるようにしております。さらに経営者との1on1ミーティング等社員との対話に経営者が時間を使うことで、成果や課題を社員の直接の声から経営者が拾うようにしております。このような総合的な取組みを通じて、当社グループは組織全体で共有されるビジョンに向かって前進しております。私たちは、社員がより意欲的に働き、成果を上げるための環境を整え、持続的な成功に向けて努力し続けております。

 従業員エンゲージメントサーベイは、2021年より開始、今後は経年での変化を確認していき、社員の仕事へのやりがい、組織への満足度などを数値化した結果から業務指針の見直しと改善を行ってまいります。

 

◆健康経営の推進

 当社グループでは、グループ横断で健康経営推進チームを組成し、産業医や健康組合と連携しております。健康経営上の課題や取組みの進捗状況を経営会議等で定期的に経営層へ共有し、積極的に課題に取り組んでおります。

 2023年3月8日、当社は経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定されました。また、グループ会社のスペラファーマ株式会社、アプロス株式会社、メルテックス株式会社、東海メルテックス株式会社、東京化工機株式会社も、「健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)」に認定されました。

 さらに、グループ全体では毎年ウォーキングイベントを開催しており、参加率は2022年に41%、2023年には45%に達しました。このイベントは、当社グループ会社であるアステナミネルヴァ株式会社が提供するウォーキングイベントサービス「ふふる」を使用し、スマートフォンアプリ上でグループ会社の社員が任意で参加し、会社・個人のランキングが表示されるなど、エンターテイメント性に富んだものとなっております。このイベントにより、歩くことを習慣化した社員の声も多く聞かれます。当社グループは、社員の健やかな生活を支援するため、引き続き工夫を凝らしてまいります。

 

◆ダイバーシティ

 当社グループでは、ダイバーシティの推進と新たな価値創造を目指し、多様な社員が自律的に活躍できる環境の整備を進めております。特に女性の活躍は重要な課題として位置づけられており、女性従業員の比率向上と女性経営陣・管理職の育成に注力しております。

 女性従業員の比率は、グループ全体で2022年11月期に36.1%、2023年11月期に37.4%と順調に伸びております。この結果は一定の成果を示しておりますが、さらなる比率向上を目指し、女性が活躍できる制度・仕組みの構築と社内環境の整備に引き続き努めております。

 女性管理職の比率に関してはグループ全体で12.1%となっております。管理部門では女性管理職の登用が進み、当社では25%、化粧品・食品を扱うイワキ株式会社では15%となっております。一方で、女性従業員比率が低い業界では女性管理職比率も低くなる傾向にあります。当社グループは、適材適所を進めつつ、日本政府の「2030年までに女性役員比率30%」達成に向け、女性管理職比率のさらなる向上と女性リーダーの育成に尽力しております。

 また、当社グループでは、社員の育児・介護などの支援にも力を入れており、仕事との両立が可能な環境と風土を育成しております。育児休業を取得する男性社員の割合も増加し、2023年11月期には50%に達しております。2022年の58%からは減少しておりますが、原因調査の結果、この変動は個別の事情に起因するものであり、根本的な課題は見当たらないと判断しております。

 

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3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 法的規制リスク

① 当社グループの取り扱っている医薬品については、薬事関連規則等に服し、また、医薬用外毒物劇物は、毒物及び劇物取締法に服しており、厳重な管理のもと、その保管・販売を行っております。当社グループはそれらに適切に対応できる仕組み、体制を構築して事業を行っておりますが、万一、対応を誤る事態が生じた場合には、事業活動に制限を受ける可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 法規制へ十分に対応できるような体制やシステム上の仕組みを構築しております。また薬剤師等の専門家による従業員への教育も適宜行っております。

 

(2) 取引先の債務不履行リスク

① 当社グループの取引先では、企業間競争がますます激化しており、また昨今の厳しい経済情勢のなかで淘汰される企業が今後増えてくるものと思われます。当社グループは債権管理を強化して債権の貸倒リスク等を低減しておりますが、万一、取引先の破産、民事再生等による債務不履行が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 貸倒リスク顕在化の影響を一定限度にとどめるべく、外部機関による信用情報を複数取得するなど定期的に評価を行っております。

 

(3) 主要取引先の再編

① 当社グループの主要取引先において、今後、合併・統合といった再編が加速した場合、その動向如何によっては、当社の販売額に影響を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 特定の取引先への取引が集中しないように取引先、及び取引内容の管理を行っております。

 

(4) 製造物責任

① 当社グループは、各種製品を輸入及び生産しております。現在、社内で確立した基準のもとに、厳しい検査体制を整えるなど、品質と信頼性の維持確保に努めております。しかしながら、万一、製品が予期せぬ不具合を起こした場合、製造物責任に関する対処あるいはその他の義務に直面する可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 万一、責任が生じた際に当社グループへの業績及び財政状況への影響を最小限にとどめるようグループ全体で製造物賠償責任保険(PL保険)に加入しております。

 

(5) システムトラブル

① 当社グループの事業活動は、コンピュータシステムに大きく依存しております。システムトラブルの発生や大規模な災害や事故の発生、コンピュータウイルスの侵入等によっては物流及び販売等の事業活動に支障を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性がありますが、発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 外部からの不正手段による侵入等に対するセキュリティ機能の充実やバックアップ機能の確保に努めております。

 

(6) 敵対的買収のリスク

① 企業価値・株主の共同利益を損なう恐れのある第三者による株の大量買付行為の可能性は常に存在します。この場合、当社グループでは客観性・合理性を担保のうえ対抗措置を発動することとなりますが、事業遂行のうえで多大な悪影響が発生する可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当該リスク発生の内容・規模により異なることから、見積もりは困難であると認識しております。

③ リスクへの対応策

 当社グループでは、当該リスク発生の内容・規模に対し、客観性・合理性を担保のうえ対抗措置を発動します。

 

(7) 訴訟について

① 当社グループの事業活動において、賠償等の訴訟その他差し止めを提起される可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当該リスク発生の動向ないし結果によっては、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性がありますが、発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、影響額の見積もりは出来ません。

③ リスクへの対応策

 訴訟が想定される取り組みについては事前に十分な調査を行い、必要に応じて顧問弁護士と連携をとるなどリスクの低減に努めています。

 

(8) 海外事業活動におけるリスク

① 当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしております。しかしながら、海外では為替リスクに加え、政情不安、経済動向の不確実性、法規制、商慣習等の障害により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当該リスク発生の内容・規模により異なることから、見積もりは困難であると認識しております。

③ リスクへの対応策

 輸出入取引における、為替の変動リスクを軽減するため先物為替予約等の通貨関連デリバティブ取引を行うこと、また海外市場への展開にあたっては経済動向や法規制、商慣習等の十分な調査を行うことによりリスクの低減に努めています。

 

(9) 自然災害、事故、感染症のリスク

① 当社グループは、国内外に複数の製造・販売拠点を有しており、地震や津波等の大規模な自然災害や事故、テロ、感染症などの影響を受ける可能性があります。発生を想定した施策を講じておりますが、被災し事業活動ができなくなった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当該リスク発生の内容・規模により異なることから、具体的な影響度は測定できません。

③ リスクへの対応策

 BCPに関する規程を策定しており、大地震マニュアルや安否確認システムの配備等、災害時に適応すべく備えております。

また新型コロナウイルス感染症に対しては、国内外への出張の自粛や販売・管理部門を中心としたテレワークへの切り替え、またテレワークで通常の事業運営が可能な各種システム環境構築への投資を行っております。

 

(10) 減損会計リスク

① 当社グループでは、企業買収の際に生じたのれん及び無形資産、製造設備をはじめとした事業の用に供する各種資産を保有しております。今後の業績計画との乖離や市場の変化等によって、期待されるキャッシュ・フローが生み出せない場合、それらの時価が著しく下落した場合、又は事業資産の収益性が悪化し回復の可能性が見込めない場合には、減損会計の適用によりそれらの固定資産の減損損失を計上することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスクが顕在化した場合の影響度

 当該リスク発生の内容・規模により異なることから、見積もりは困難であると認識しております。

③ リスクへの対応策

 当社グループでは、効率性を重視した経営を行っており保有する資産を最小限にとどめると共に、投資後も、事業の執行、管理する体制の整備に努め、収益性の低下が起こらないような管理を行っております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 本年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」は、当社の珠洲本社がある珠洲市を含め、能登地方全域に甚大な被害をもたらしました。当社グループの被害状況につきましては調査中でございますが、グループ一体となって、事業の復旧、地域の復興に全力を尽くしてまいります。

 

 当連結会計年度(2022年12月1日~2023年11月30日)における我が国経済は、経済活動のコロナ禍からの正常化が進み、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあって、回復の兆しを見せ始めている一方、原材料価格やエネルギーコストの高騰、長期的な円安傾向が加わり、物価上昇が止まらないなど、先行き不透明な状況となっております。

 このような状況のもと、当社グループでは、2030年11月期に向けた中長期ビジョン及び2025年11月期に向けた中期経営計画を推進し、更なる成長と企業価値の向上を目指す事業の運営を行ってまいりました。

 当連結会計年度では、スペラネクサス株式会社(ファインケミカル事業)において医薬品原料の販売や新薬メーカー向け新規案件が好調であったこと、イワキ株式会社(HBC・食品事業)において機能性食品等の原料需要増に加え、新規受注の獲得により販売が好調だったこと、また、岩城製薬株式会社(医薬事業)において新製品の市場シェアが拡大したことなどにより、売上高・営業利益ともに伸長いたしました。

 以上により、当連結会計年度の売上高は、519億8千4百万円(前年同期比4.7%増)、営業利益は11億2千7百万円(同37.6%増)、経常利益は13億6千3百万円(同53.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億6千2百万円(同100.6%増)となりました。

 

 次にセグメントの概況につきご報告申し上げます。

 

ファインケミカル事業

 医薬品原料部門のスペラネクサス株式会社では、商社機能においてジェネリック医薬品向けの原料や新薬メーカー向け中間体の販売、製造機能では稼働開始した高薬理活性原薬製造設備の更なる開発・受託案件の獲得に、それぞれ注力いたしました。その結果、ジェネリック医薬品の新規開発品目への原料販売や新薬メーカー向け新規案件が伸長したことにより、売上高は好調に推移いたしました。

 CDMO部門のスペラファーマ株式会社では、第3四半期に引き続き、大手新薬メーカーやベンチャー企業への営業活動を強化し、新規顧客の獲得に注力いたしました。また、受託案件の利益率向上を推進したほか、治験薬製造オペレーションの更なる効率化と専門的研究人材の人員増による受託キャパシティの拡大を行ってまいりました。また、JITSUBO株式会社では、海外のグローバルメガファーマなどを含むペプチド・核酸領域に存在感を持つ医薬品メーカーに対する中分子医薬品の開発支援サービスの営業活動に注力したほか、スペラネクサス株式会社との共同でペプチド基幹原料であるTagの製造・販売体制の構築を推進いたしました。その結果、CDMO部門全体では新規受注の獲得と既存顧客の受注額の増額を果たし、売上高は前年を上回りました。

 以上により、当事業全体の売上高は160億5千5百万円(前年同期比9.7%増)、営業利益は1億5千9百万円(同35.6%減)となりました。

 

HBC・食品事業

 イワキ株式会社の食品原料部門では、消費者の健康意識の高まりによる機能性食品の需要増に伴い、一般加工食品向け機能性食品原料の取引が拡大し、売上高は堅調に推移いたしました。また、加工食品・機能性食品の原料検索プラットフォームである「i-Platto(アイプラット)」の提供を下期より開始し、多様化する顧客ニーズに迅速かつ的確に対応する機能を強化いたしました。

 化粧品原料部門においては、国内市場の回復に伴う需要増加に加えて、企画・インサイドセールスの機能強化による新規案件の獲得もあり、売上高は堅調に推移いたしました。

 ファルマネット部門においては、一般用医薬品等の卸売事業の撤退を進める一方で、アフターコロナでのインバウンド需要の回復により、売上高・営業利益とも当初計画を上回って推移いたしました。

 化粧品通販部門のアプロス株式会社においては、既存顧客のレスポンスの改善の兆しが見えましたが、引き続き売上高は低調に推移いたしました。しかしながら、ターゲットを絞った効果的な販売促進施策により、今後の売上高の回復と収益改善が見込まれました。また、マルマンH&B株式会社では、自社企画の健康食品や化粧品、輸入化粧品の販売が堅調に推移いたしました。自社企画の化粧品「ピュレア」については新商品の投入時の販促展開の反響もあり、好調に推移いたしました。12月にグループ会社となった株式会社アインズラボでは、主要顧客の集まる東京地区での営業を強化した結果、受注が前年を上回り堅調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は140億5千9百万円(前年同期比0.6%増)、営業利益は3億2千4百万円(同129.4%増)となりました。

 

医薬事業

 医療用医薬品部門では、岩城製薬株式会社が昨年12月に新製品として販売を開始した抗真菌薬であるルリコナゾール軟膏・クリームが引き続き市場シェアを拡大し好調に推移いたしました。また、同業他社の一部製品が販売中止になったことによる代替需要の発生から、ゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長いたしました。また、7月1日に帝人ファーマ株式会社より製造販売承認の承継を受けたボンアルファ・ボンアルファハイの販売も引き続き好調に推移しております。

 岩城製薬佐倉工場株式会社では、既存製造受託品の販売が計画を上回ったこと、一部製剤の価格改定の合意により、好調に推移いたしました。引き続き製造受託品の安定供給に注力するとともに、小集団活動などを通した製品品質及びオペレーション効率の継続的改善に取り組んでおります。また、同社では高活性注射剤製造棟の改修を行い、11月から稼動を開始しております。このほか、固形製剤ライン改修工事を開始し、製造受託キャパシティの拡大に向けた設備投資を進めております。

 美容医療部門におきましては、医療機関専売化粧品である岩城製薬株式会社のNAVISION DRブランドの拡大に注力し、売上高10億円を突破するなど好調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は132億5千9百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益は5億7千3百万円(同46.1%増)となりました。

 

化学品事業

 メルテックス株式会社の表面処理薬品部門では、主力の半導体電極形成用薬品、微細配線形成用薬品、受動部品向けめっき薬品の販売促進に注力いたしました。プリント基板、電子部品関連市場が世界的な需給の不均衡により低迷する中、微細配線形成用薬品、受動部品向けめっき薬品の販売が低調に推移いたしました。しかしながら長年活動してきたスマートフォン向けのコネクター用薬品の日本企業への採用が決まり、2023年7月より量産を開始しております。また、共同開発中のめっき液管理装置につきましても開発がほぼ終了し、今後のめっき薬品の拡販に期待が持てる状況となっております。なお、今期は原材料価格やエネルギーコストの上昇分の価格転嫁を進め、人件費も含めた製造原価・販売費及び一般管理費の見直しの取り組みに努め、損益分岐点売上高を大きく引き下げることに成功いたしました。今後、市場の回復に伴い、表面処理薬品の需要が増加することで、従前よりも高い収益性を実現することが期待されます。

 表面処理設備部門においては、東京化工機株式会社における工場拡張に伴う受注キャパシティ及び受注件数増加により、業績は好調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は85億9千3百万円(前年同期比7.4%減)、営業利益は7千4百万円(前年同期は1億5千6百万円の営業損失)となりました。

 

その他事業

 その他事業では、石川県奥能登地域における社会課題解決を目的とした新規事業を企画運営するとともに、奥能登SDGs投資事業有限責任組合、TUAT1号投資事業有限責任組合を通じて投資した企業と協業して事業を推進しております。新規事業の企画を行うアステナミネルヴァ株式会社を中心とし、地域資源を生かした商品の販売を行うAMトレーディング株式会社、人材事業を発起点として石川県内企業との連携を進めるイシカワズカン株式会社、大学と連携し循環型農業・畜産業を推進する株式会社PIXTURE(非連結子会社)、投資事業としてアステナミネルヴァ株式会社の事業を加速させる奥能登SDGs投資事業有限責任組合、TUAT1号投資事業有限責任組合と、当社グループの新規事業を進める体制づくりを進めております。

 アステナミネルヴァ株式会社が取り組んでいる事業の1つ、ふるさと納税事業の現地決済型ふるさと納税サービス「ふるさとNOW」は、当期において、目標件数を上回る自治体との契約・導入が決定しており、今後の収益化を進めております。また、AMトレーディング株式会社では、能登の地域資源を活用した通販サイト「Noto regionale+」をオープンし、人々の健やかな生活を支援するヘルスケア商品の販売を開始いたしました。当サイトでは、当社が珠洲市で栽培している中国原産のハーブである国産「ラフマ」茶をコアに、今後ヘルスケア商品のラインアップを増やしてまいります。さらに今期は、奥能登の天然資源や伝統技術から生まれる素材を使ったナチュラルスキンケア商品の開発を行い、来期の販売に向けて準備いたしました。環境や地域と共生し、事業成長とサステナブルな社会の実現に貢献していきます。また、珠洲市が石川県で初めて認定を受けた「みどりの食料 システム戦略」を推進するオーガニックビレッジ構想の枠組みのもと、AMトレーディング株式会社は有機米・特別栽培米の販路づくりを進めております。珠洲市オーガニックビレッジ協議会に参画する農家では、奥能登SDGs投資事業有限責任組合が投資する投資先の技術を採用した有機米・特別栽培米耕作を行っております。

 投資事業として奥能登SDGs投資事業有限責任組合から2件の投資を行い、投資先は13銘柄となりました。また、TUAT1号投資事業有限責任組合からは1号案件の投資を行いました。

 以上により、当事業全体の売上高は1千6百万円(前年同期比687.2%増)、営業損失は1億3百万円(前年同期は4千2百万円の営業損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローは増加、投資活動によるキャッシュ・フローは減少、財務活動によるキャッシュ・フローは増加、これに現金及び現金同等物に係る換算差額を加えた全体で4千5百万円の減少となり、当連結会計年度末における資金残高は67億5千8百万円(前年同期比0.7%減)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動により増加した資金は16億4千3百万円(前年同期比23億8千6百万円増)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益15億6千万円、減価償却費22億1千6百万円、固定資産売却損益7億8千7百万円、棚卸資産の増加額12億8千6百万円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動により減少した資金は28億3千5百万円(前年同期比6億1千3百万円減)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出38億2千万円、無形固定資産の取得による支出3億4千4百万円、有形固定資産の売却による収入16億4千9百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動により増加した資金は10億7千7百万円(前年同期比21億7千1百万円増)となりました。これは、主に短期借入金の純増減額19億8千9百万円、長期借入れによる収入10億円、長期借入金の返済による支出11億9千7百万円、配当金の支払額7億1千9百万円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは見込み生産を行っているため受注実績の記載は省略しております。

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

前年同期比(%)

ファインケミカル事業(千円)

7,977,665

103.7

HBC・食品事業(千円)

4,649

104.4

医薬事業(千円)

9,105,548

111.2

化学品事業(千円)

5,581,987

102.9

報告セグメント計(千円)

22,669,851

106.4

その他(千円)

合計(千円)

22,669,851

106.4

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

前年同期比(%)

ファインケミカル事業(千円)

5,734,859

125.9

HBC・食品事業(千円)

7,953,779

102.4

医薬事業(千円)

1,139,035

112.8

化学品事業(千円)

918,494

74.6

報告セグメント計(千円)

15,746,168

108.1

その他(千円)

4,698

合計(千円)

15,750,867

108.2

(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

前年同期比(%)

ファインケミカル事業(千円)

16,055,000

109.7

HBC・食品事業(千円)

14,059,355

100.6

医薬事業(千円)

13,259,952

112.8

化学品事業(千円)

8,593,160

92.6

報告セグメント計(千円)

51,967,468

104.7

その他(千円)

16,957

787.2

合計(千円)

51,984,426

104.7

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度における「主な相手先別販売実績」については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありませんので記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。

 なお、重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産672億5千4百万円(前期末比37億2百万円増)、負債386億5千3百万円(同21億7千万円増)、純資産286億1百万円(同15億3千2百万円増)となりました。

 総資産の増加の主な理由は、仕掛品の増加6億7千5百万円、建設仮勘定の増加24億2千3百万円、投資有価証券の増加10億2千8百万円等によるものです。

 負債の増加の主な理由は、短期借入金の増加22億3千1百万円、未払法人税等の減少3億4千7百万円等によるものです。

 純資産の増加の主な理由は、利益剰余金の増加4億3千万円、その他有価証券評価差額金の増加6億9千6百万円等によるものです。

 

b.経営成績

(売上高)

ファインケミカル事業におきましては、医薬品原料部門では、ジェネリック医薬品の新規開発品目への原料販売や新薬メーカー向け新規案件が伸長したことにより、売上高は好調に推移いたしました。CDMO部門では、全体で新規受注の獲得と既存顧客の受注額の増額を果たし、売上高は前年を上回りました。

 以上により、当事業全体の売上高は160億5千5百万円(前年同期比9.7%増)となりました。

 HBC・食品事業におきましては、食品原料部門では、消費者の健康意識の高まりによる機能性食品の需要増に伴い、一般加工食品向け機能性食品原料の取引が拡大し、売上高は堅調に推移いたしました。化粧品原料部門では、国内市場の回復に伴う需要増加に加えて、企画・インサイドセールスの機能強化による新規案件の獲得もあり、売上高は堅調に推移いたしました。ファルマネット部門では、一般用医薬品等の卸売事業の撤退を進める一方で、アフターコロナでのインバウンド需要の回復により、売上高・営業利益とも当初計画を上回って推移いたしました。化粧品通販部門では、既存顧客のレスポンスの改善の兆しが見えましたが、引き続き売上高は低調に推移いたしました。マルマンH&B株式会社では、自社企画の健康食品や化粧品、輸入化粧品の販売が堅調に推移いたしました。株式会社アインズラボでは、主要顧客の集まる東京地区での営業を強化した結果、受注が前年を上回り堅調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は140億5千9百万円(前年同期比0.6%増)となりました。

 医薬事業におきましては、医療用医薬品部門では、岩城製薬株式会社が昨年12月に新製品として販売を開始した抗真菌薬であるルリコナゾール軟膏・クリームが引き続き市場シェアを拡大し好調に推移いたしました。岩城製薬佐倉工場株式会社では、既存製造受託品の販売が計画を上回ったこと、一部製剤の価格改定の合意により、好調に推移いたしました。美容医療部門におきましては、医療機関専売化粧品である岩城製薬株式会社のNAVISION DRブランドの拡大に注力し、売上高10億円を突破するなど好調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は132億5千9百万円(前年同期比12.8%増)となりました。

 化学品事業におきましては、表面処理薬品部門では、プリント基板、電子部品関連市場が世界的な需給の不均衡により低迷するなか、微細配線形成用薬品、受動部品向けめっき薬品の販売が低調に推移いたしました。表面処理設備部門では、東京化工機株式会社における工場拡張に伴う受注キャパシティ及び受注件数増加により、業績は好調に推移いたしました。

 以上により、当事業全体の売上高は85億9千3百万円(前年同期比7.4%減)となりました。

 その他事業におきましては、売上高は1千6百万円(前年同期比687.2%増)となりました。

 この結果、全体の売上高は519億8千4百万円(前年同期比4.7%増)となりました。

 

(営業利益)

 売上高の増加による売上総利益が877百万円増加したことに加え、報酬及び給料手当の増加1億3千7百万円、旅費及び交通費の増加9千8百万円、減価償却費の増加6千6百万円等により、販売費及び一般管理費は151億8千9百万円(前年同期比3.9%増)となりました

 この結果、営業利益は11億2千7百万円(前年同期比37.6%増)となりました。

 

(経常利益)

 営業利益が増加したことに加え、営業外収益の為替差益の減少5千4百万円、保険解約返戻金の増加4千4百万円、営業外費用の持分法による投資損失の減少5千4百万円、商品評価損の減少6千2百万円等により、経常利益は13億6千3百万円(前年同期比53.7%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 経常利益が増加したことに加え、特別利益に固定資産売却益7億9千1百万円、特別損失に減損損失4億1千8百万円、投資有価証券評価損2億2千2百万円、税金費用4億6百万円等を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は11億6千2百万円(前年同期比100.6%増)となりました。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

ⅰ.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

ⅱ.契約債務

 2023年11月30日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(千円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

11,069,000

11,069,000

-

-

-

長期借入金

5,691,316

1,197,984

1,991,448

1,535,984

965,900

リース債務

231,372

85,088

105,075

34,756

6,452

 上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

ⅲ.財政政策

 当社グループは、運転資金、設備資金及びM&A等の投資資金につきましては、自己資金を充当するほか、金融機関からの借入れ、売掛債権の流動化など多角的な資金調達を検討、実施しております。このうち、運転資金は自己資金、金融機関からの短期借入を基本としており、大型設備やM&A投資資金等は金融機関からの長期借入を基本としております。

 2023年11月30日現在、長期借入金の残高は44億9千3百万円であります。また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計130億円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高0円、借入未実行残高130億円)。

 

d.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標の当期達成状況

 当社グループでは、2030年11月期を最終年度とする新たな中長期ビジョンにおいては、売上高1,300億円、自己資本当期純利益率(ROE)13.0%以上を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標と位置付けております。

 当連結会計年度においては、売上高は519億円、前連結会計年度比4.7%増加となりました。増加の主な理由としましては、医薬事業において、岩城製薬佐倉工場株式会社での一部製剤の価格改定、既存製造受託品の販売が計画を上回ったこと、また、HBC・食品事業において、マルマンH&B株式会社での自社企画の化粧品、健康食品の販売が伸長したことに起因するものであります。

 自己資本当期純利益率(ROE)は、4.2%と前連結会計年度に比べ2.1pt増加いたしました。増加の主な理由としましては、主に親会社株主に帰属する当期純利益が増益となったことに起因するものであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

 当社は、2023年3月29日開催の取締役会において、固定資産の譲渡を決議し、当該決議に基づき同日付で不動産売買契約を締結いたしました。

 

1.譲渡の理由

 中長期ビジョン実行に向け、資本効率の向上、財務体質の強化、成長投資資金確保、またリモートワークが浸透したことによる拠点の見直しを図る観点から、以下の固定資産を譲渡することといたしました。

 

2.譲渡資産の内容

(1)対象資産の名称  ノーススクエア

(2)所在地      東京都北区豊島七丁目14番8、14番9、14番10、14番11、14番12、14番14

※里道部分も含む

(3)資産の概要    土地:2,413.12㎡

建物:2,091.45㎡(延床面積)

※譲渡価額及び帳簿価額につきましては、譲渡先の意向により開示は控えさせていただきますが、複数の不動産関係会社等、第三者の助言を得て不動産の価値を精査した市場価格を反映した適正な譲渡価額となっております。

 

3.譲渡先の概要

 譲渡先は、国内法人でありますが、譲渡先の意向より開示は控えさせていただきます。なお、当社と譲渡先の間に特記すべき資本関係、人的関係、取引関係はありません。

 

4.譲渡の日程

(1)取締役会決議日  2023年3月29日

(2)売買契約締結日  2023年3月29日

(3)譲渡資産引渡日  2023年11月30日

 

5.当該事象の連結損益及び損益に与える影響

 当該固定資産の譲渡に伴い発生した譲渡益は、当連結会計年度において、特別利益(固定資産売却益)として779,098千円を計上いたしました。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発活動は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は895百万円であります。

 

(1) ファインケミカル事業

 医薬品原料市場向けに、収益強化を目的に、新薬(治験薬)およびジェネリック医薬の原料・中間体について、自社得意技術を活かした自社製造品および受託品の研究開発を推進しております。また、食品添加物、化粧品原料等のライフサイエンス分野にも同様に力を入れております。

 医薬品CDMO市場向けには、受託領域の拡充と顧客サービスの質の向上を目的に、バイオ医薬品関連技術・中分子原薬製造技術等の研究開発に取り組んでおります。加えて、グループ内の製造販売品・共同開発品に関わる共同研究も行っております。

 ファインケミカル事業に係る研究開発費は162百万円であります。

 

(2) 医薬事業

 医薬事業では、外皮用剤(半固形剤や液剤)を中心とした研究開発を行っております。長年の経験と蓄積された技術を活かし、自社製造販売品のみならず、新薬(治験薬)に関わる共同開発や受託研究開発なども行っております。また、海外製薬企業との共同開発や導入・導出も積極的に検討しております。

 医薬事業に係る研究開発費は342百万円であります。

 

(3) 化学品事業

 表面処理薬品分野では、エレクトロニクス関連の表面処理技術を中心とした研究開発を行っております。プリント配線基板市場向けには、次世代高速通信デバイスに要求される高機能ビアフィル用銅めっき薬品や高精度シード層エッチング液などをトータルソリューションとして開発・提案しております。半導体市場向けには、次世代パワーモジュールに適応した新しいめっきプロセス、電子部品市場向けには、多様なチップ部品に対応可能なめっき薬品など、車載用途を含めた最先端のニーズにお応えすべく研究開発を推進しております。

 表面処理設備分野では、プリント配線基板市場向けの水平搬送製造装置を中心に、微細回路形成や軽薄短小化に対応した高付加価値装置の開発に注力しております。

 化学品事業に係る研究開発費は387百万円であります。