第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「われわれはつねに最高の品質をめざし社会に貢献する」の社是のもと、世界最高の技術と品質を究めたモノづくりと、公正な企業活動を通じて産業の発展に寄与し、安全で豊かな市民生活と持続可能な世界の実現に寄与することを経営の基本方針としている。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2021年~2023年の3カ年をターゲットにして、連結売上高560億円、営業利益率10%の達成を目標とした「中期経営計画2023」に取り組んだ。新製品を市場投入して売上・シェアの拡大、徹底した生産の効率化とコストダウンを図り、投資家の皆さまへの利益還元を実現する企業体質への転換を図っていく。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

(事業構造)

当社グループの事業構造は、超高速ジェットルーム及びその周辺準備機械等を中心とする繊維機械事業と、NC円テーブルやマシンバイス等を中心とする工作機械関連事業を主力事業としている。また、新規の事業開拓として、炭素繊維複合素材の自動加工装置を開発販売するコンポジット機械事業、ロボットインテグレーションシステムの開発・提供を行うTRI(ツダコマ・ロボティック・インテグレーション)事業、航空機部品加工事業等を展開している。

(市場の状況)

繊維機械事業では、中国やインドを中心とした新興国市場が大きな比率を占めている。こうした市場に対し、使いやすく、生産性と環境性能が優れた機械の提供を行うとともに、市場特性に合わせたきめ細かな製品仕様の展開とサービスの提供を強みとしている。

工作機械関連事業では、工作機械業界、自動車業界、電子機器・通信等のEMS業界を主力市場として、加工特性に最適な3つの駆動方式をラインアップした唯一のメーカーとして高精度NC円テーブルを提供している。

コンポジット機械事業は、航空機業界向けに革新的な加工装置を開発し参入したが、昨今の航空機業界の不振等により大きな拡大には至っていない。一方、自動車・一般機械分野でも炭素繊維複合素材の利用拡大の動きが出はじめており、国内研究機関とともに共同研究・製品開発を進めている。

(経営戦略等)

新型コロナウイルス感染症の影響縮小に伴い、設備投資や個人消費の回復等によって好転し、景気は緩やかに回復が見られた。一方、欧米や中国を中心とした海外の景気後退、原油価格の高止まり等に伴う燃料や原材料価格の高騰、地政学リスクの高まりにより、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いている。

当社グループは、後述の「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、2021年から2023年の3カ年をターゲットとした「中期経営計画2023」を策定し、取り組んだ。ただ新型コロナウイルスの市場への影響は大きく、原材料価格の高騰や半導体・電装部品を中心とする部品不足の影響を強く受け、数値目標の達成には至らなかった。詳細は後述の「(4)中期的な会社の経営戦略」に記載のとおりである。

 

(4)中期的な会社の経営戦略

当社グループは、2021年度から2023年度をターゲットにして、連結売上高560億円、営業利益率10%の達成を目標とした「中期経営計画2023」に取り組んだ。長引く景気停滞の影響から目標との乖離はあるものの、基本的な方向性は変更せず、計画進捗の管理を徹底して、繊維機械事業の黒字化と継続的な利益確保ができる事業体質の構築に注力してきた。また、工作機械関連事業をはじめ、コンポジット機械事業など非繊維機械の事業分野の拡大を図ってきた。ただ新型コロナウイルスの市場への影響は大きく、原材料価格の高騰や半導体・電装部品を中心とする部品不足等の影響を強く受けた。2023年度は、「第5 経理の状況 注記事項 継続企業の前提に関する事項」で記載のとおり、重点施策を実行してきた。

一方計画に掲げた活動では、繊維機械事業で新型エアジェットルームの開発・市場への浸透、組織横断的な原価低減活動、原価を的確に把握し販売価格の改善につなげる活動を行った。工作機械関連事業ではEV市場に対応した製品や新製品の開発、コンポジット機械事業ではTRI事業(ツダコマ・ロボティック・インテグレーション)の導入実績積み上げなど一定の成果をあげ、2023年度下期は黒字化を達成し、当社グループの業績回復に向けた足掛かりはできたと判断している。

こうした成果を踏まえ、新たに2024年度から2026年度をターゲットにして、「中期経営計画2026」をスタートした。

利益の追求とキャッシュ・フローの改善による財務基盤の立て直しを最重要課題とし、継続的に利益確保ができる事業体質の構築に注力する。そのため、これまでの企業風土を変えていくとともに、組織体制を見直し活性化を進める。また人的資本の充実を目指した人事制度改革、育成プログラムの再構築を図る。

各事業部の活動として、繊維機械事業では将来の成長領域と位置付けている産業資材向け製品の販売を強化、新型エアジェットルームのラインナップ拡充および新型サイジングマシンの投入、エアジェットルームとウォータジェットルームのプラットフォーム化によるコストダウンを図る。

工作機械関連事業ではNC円テーブルを中心とした既存製品の新興市場への販促展開、プラットフォーム化を活用し更なるリードタイムの短縮の実現、子会社、他部門との協業を加速させ、お客様の需要に応えた新たな製品の市場投入を図る。

コンポジット機械事業では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)等との宇宙・輸送関連の燃料タンクや製造設備の共同開発を進め、TRI事業では、親和性のある工作機械関連事業との連携を強化し、更なる拡販を図る。インフラ用FRP材料については、ICC(革新複合材料研究開発センター)との共同開発を進める。

全事業部門で原価の予実管理を徹底し、原価低減を推し進めるとともに、適正価格への改善に継続的に取り組む。また、各部門における課題の解決や生産・業務効率の向上を進めるため、全社的にDXに取り組み、収益性の向上を図る。また、中長期的な活動として、SDGsへ向けて全社共有化を図り、活動を加速させていく。

当社グループは、モノづくりを通して、持続可能な社会の形成と産業の発展に貢献しながら、業績の拡大と株主価値の向上を図っていく。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社は、サステナビリティに関するトップコミットメントを策定するとともに、SDGs推進委員会を設置し、諸課題の洗い出しと対応に、継続的に取り組む体制を整えている。また「ISO14001」、「ISO9001」の認証を取得し、法令・規制等を遵守した経営に努めている。また、それらの内容はホームページで開示している。

リスク管理において、当社では、取締役会で内部統制基本方針を定め、内部統制の整備を行い、取締役会において継続的にグループ全体を含めた経営上の新たなリスクの対応策について検討している。経営会議を通して経営に関する重要な事項の審議と決定を行い、部長会議を通して進捗状況と課題の報告、情報共有を行っている。また法務・コンプライアンス室を設置し、当社グループの活動に関わる法令の遵守と適正な管理・運用体制の強化を図るとともに、定期的に内部監査を実施し、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行なっている。当社グループの損失の危険に関して、監査役監査を実施し、損害を及ぼす恐れのあるリスクの早期発見と、その発現への対応に努めている。

 

(2)戦略

当社は、サステナビリティを巡る課題への対応が収益機会につながる経営課題であるとの認識に立ち、SDGs推進委員会を設置し、諸課題の洗い出しと対応に、継続的に取り組む体制を整えている。特に製造業として、事業活動における環境負荷の低減と省エネルギー・環境性能に優れた製品の設計・製造・販売に注力している。

また従来から「ISO14001」、「ISO9001」の認証を取得し、「環境方針」、「品質方針」に基づき、様々な施策を計画・実施し、その結果を定期的に評価のうえ、経営者に報告している。さらに、労使協調のもと、健康経営として、従来から従業員の心身の安全・安心、健康管理の取り組みを進めた結果、2021年度には外部の健康経営格付融資を受けるなど高い評価を受けた。

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、管理職への登用にあたっては、性別、国籍、年齢を問わず、スキル・経験等を総合的に判断し、公平性を重視して行なうことを基本方針としている。

また、サステナビリティに関するトップコミットメントの方針を基に、多様性の確保に向けた人材育成、社内環境整備を進めている。女性採用では、新卒採用における女性割合を25%以上にする数値目標を立て、継続的に採用している。教育では女性管理職を対象とした、女性のための専門教育(マネジメントセミナー)を行っている。一方外国人・中途採用者については適時採用している。社内環境整備では、労働安全衛生管理方針、健康経営方針等に基づく活動を進め、当社ホームページで公開している。

 

(4)指標及び目標

当社では、性別、国籍、年齢を問わず、スキル・経験等を総合的に判断し、公平性を重視して、優秀な人材の採用及び管理職登用を行っている。能力と意欲のある人材を適材適所に配置しているため、具体的な指標及び目標は定めていない。

なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異」に記載のとおりである。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、輸出比率が高く、米中間の政治・経済対立や欧米経済のインフレ懸念、為替相場の変動などの国際経済の影響に加え、取引相手国の政治状況・経済政策の影響も受けざるを得ない。また、主要市場である中国の景気低迷に加え、部材の長納期化や世界的な物流の混乱なども重大なリスクとなっている。このような状況から、主に次の要因が当社グループの経営成績に影響を及ぼすリスクと考えている。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

①米中間の政治・経済対立

特に繊維機械事業における主力市場の中国では、米国が重要な繊維製品の輸出相手国となっており、米中間での政治的な対立や、米中貿易摩擦・追加関税引き上げにより、繊維製品輸出が減少すると設備投資に影響が及ぶ。一方、こうした環境の中で、中国から隣国等への生産拠点の移動現象も見られ、新たな商機と捉えていく。

 

②欧米経済のインフレ懸念、為替変動や金利上昇リスク

欧米経済のインフレの進展やそれに伴う金利上昇により、世界各国・地域の経済成長が減速し、顧客の設備投資に対する判断が慎重になるなどの影響を受ける懸念がある。当社は輸出にあたっては、為替リスクを回避する手段として、円建て契約を基本としているが、急激な円高は相手側の円調達リスクとなる。また、当社客先とその最終仕向国の間の為替変動による資金調達リスクが、当社顧客の設備投資に影響する。

 

③中国経済の景気低迷リスク

主力市場の中国で、景気の停滞は、客先の設備投資計画に影響を与え、計画の延期等が発生する可能性がある。この場合に当社グループの業績に悪影響を与える可能性がある。

 

④半導体等、基幹部品の長納期化及び価格の高騰リスク

当社製品の主要素材である半導体をはじめとする原材料の供給不足やサプライチェーンの混乱により、生産の減速、納期の遅延が生ずるリスクがある。また、主要素材である金属類、半導体等の価格高騰に加え、災害によるサプライチェーンの寸断や国際的な需給バランスの変動も調達コストの上昇リスクとなる。サプライチェーンの多様化により、リスクの解消を図っている。また、原材料価格の高騰を反映した販売価格を顧客に提案することで、採算性の改善を図っていく。

 

⑤海上輸送運賃やエネルギー価格の高騰リスク

当社は、主に船便によるコンテナ輸送で当社製品を顧客へ引渡しを行っている。コンテナ不足による物流停滞は、海上輸送運賃の高騰を引き起こし、輸出契約時に見込んでいた海上輸送運賃を上回る費用が発生するリスクとなる。原油・電力等のエネルギー価格の高騰は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える。エネルギー価格の高騰等に対し、販売価格への転換をすすめ、採算性の改善を図っていく。

 

⑥継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、令和元年11月期以降継続して営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなった。当期においても、下期には黒字転換を果たしたものの、通期では営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上している状況であること等から、当社グループには、引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在している。

当社グループは、2021年度から2023年度をターゲットとする「中期経営計画2023」を策定しているが、このような状況を解消し、健全な企業活動を継続するために、特に2023年度においては、以下の点を重点項目として取り組んだ。

 

繊維機械事業の受注・売上拡大

インド市場では、ITMA Milan 2023で高い評価を頂いた新型エアジェットルームの高稼働評価が広く浸透してきており、販売も順調に伸びている。客先の要望の把握に努めるべく、設計者の派遣も継続している。また現地在庫部品の拡充、電装品修理体制の整備などアフターサービスの強化も推進中である。

中国市場では、大手企業を中心にウォータジェットルームやサイジングマシンの販売を伸ばしている。一方でウォータジェットルームからエアジェットルームへの転換の動きも出てきている。その他トルコ、インドネシア等の市場での販促を継続しており、受注につなげている。また産業資材分野においても製品PRを強化し、シェア拡大を図っている。

a. 新型エアジェットルーム ZAX001neoの販売促進

主要市場および織物分野別にモデル工場が本格的に稼働する中で、それぞれの市場で客先に、高生産性・省エネ性能を実感いただいている。6月のITMA Milan 2023に引き続き、11月にはITMA ASIA+CITME2022へ出展し、客先より高い評価をいただいた。その結果、引合いが増え受注に結び付いている。また織物の仕様拡大や機能性向上のための開発も引き続き進めていく。

b. ウォータジェットルームの販売強化と中国内需向けボリュームゾーンの市場確保

中国ではフィラメント織物の主要産地である呉江地区から他地区への新たな投資や、エアジェットルームへの切り替え需要の動きは継続しており、販売員を集中させて販売促進を引き続き実施中である。

また、中国子会社 津田駒機械製造(常熟)有限公司での新型ウォータジェットルームZW8001も既に客先の工場で高稼働しており、中国内需向けのシェア拡大を図っている。

c. 準備機械の販売体制見直しによる販売促進

当社の強みであるサイジングマシン(準備機械)については、11月に中国呉江地区にてセミナーを開催し客先との交流を深めた。客先からの要望を製品に反映し、新たな提案を持って販売拡大を図っている。他国の客先においてはITMA ASIA+CITME2022への来場を機に稼働工場の見学を実施し、受注に結び付けるべく販売促進中である。

d. 産業資材分野への販促

中国において、躍進著しい自動車業界向けにエアバッグ用織機の受注を積み重ねることができ、継続して販促活動中である。その他オーニングやガラスなど、様々な産業資材への取り組みを強化している。

 

繊維機械事業における採算性の改善

原材料や輸送費など、全ての製造コストをタイムリーに把握し、原価管理を徹底させるよう改善を進めている。その上で、詳細な製造コスト、納期の情報を全社的に共有し、組織横断的な原価低減活動に落とし込み、利益改善及び在庫適正化を進めている。また適正な販売価格への改定も進めていく。

 

工作機械関連事業の受注・売上の拡大、採算性向上

工作機械関連事業の取り巻く市場環境は不透明な中、今後成長が見込まれる自動車業界のEV関連や航空宇宙産業、クリーンエネルギー発電や医療業界等の顧客要望に応える製品の投入を進めている。直近ではEV部品加工関連設備向けの販売促進活動に注力し、加えて工作機械メーカ向けOEM製品の受注獲得に向けた営業を展開し、実績も上げている。

a. 自動車業界のEVシフトに対応した製品の販売促進

当社の主要な納入先の自動車業界では、エンジン車の生産は当面継続すると予想されるが、EVへの市場トレンドの移行に伴い、生産設備も両方に対応したスペックでの導入が進んでいる。今後はより汎用性を持たせたマシニングセンターでの加工が主流となるため、汎用NC円テーブルのラインアップを拡充している。また、プラットフォーム手法を活用し、迅速に製品供給ができる効率的な生産管理体制を構築している。

新型NC傾斜円テーブルは、ワンチャッキングで旋削と切削を可能にし、生産性の向上に大きく寄与する。加工物の大型化・軽量化に対応した製品も開発した。昨秋のメカトロテックジャパン MECT2023では、更に付加価値を高めたNC傾斜円テーブルを展示し、来場者の注目を集めた。いずれの機種もEV用部品に対応した機種ではあるが、他産業・他分野向けの加工でも利用ができ、今後販売促進を進めていく。

b.新しい産業分野・加工技術・省人化に対応する新製品の迅速な開発と市場投入

航空宇宙産業やクリーンエネルギー発電などで、当社が得意とする大型NC円テーブルの需要が期待される。客先の要望に沿った大型部品の高精度加工に対応すべく、新機種の開発を行い、需要の取り込みを図る。

また新しい加工技術・省人化に対応し、工程集約、自動化対応のNC傾斜円テーブルや5軸加工用の新型マシンバイスの販売を開始している。

さらに、新しい市場への展開として開発を行った3Dプリンタ後の仕上げ用小型加工機は1号機を出荷している。手動式パレットチェンジャーは既に市場投入している。またNC円テーブルを駆動要素に使用したギアのバリ取り機の開発に着手し、市販化に向けて準備している。既に稼働中のギア加工機の拡販も継続して行っていく。今後も様々な新製品の開発・市場投入を行い、工作機械関連事業の第3の柱にすべく取り組んでいく。

 

キャッシュ・フロー確保に向けた対応策

資金計画については、令和6年度の通期予算を基礎に策定している。通期予算等は、最近の受注高及び受注見込額の推移、過去の売上の推移による趨勢を検討の上、収益予測を行っている。また、コスト・費用面においても通期予算を基に計算しているが、更にコストダウン計画の遂行、経費節減の徹底によって改善を図っていく。なお、資金計画には主要金融機関からの借入更新が含まれている。

取引金融機関とは、定期的に資金計画及び中期経営計画の進捗状況の説明を行うなど、緊密な関係を維持している。

また、売却の意思決定を行った政策保有株式について、相手企業との同意の内容や株式相場を勘案したうえで売却を実施している。

 

以上の対応策に取り組んでいるが、これら対応策の実現可能性は、国際情勢の動向、世界的な原材料価格、エネルギー価格の高騰、半導体等基幹部品の長納期化などの外部要因に影響を受け、業績回復による黒字転換が遅延し、当社グループの資金繰りに影響を及ぼす可能性があることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響の縮小に伴い、設備投資や個人消費の回復等によって好転し、景気は緩やかな回復が見られた。一方で、欧米や中国を中心とした海外の景気減退、原油価格の高止まり等に伴う燃料や原材料価格の高騰、及び地政学リスクの高まりにより、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いている。

こうした中、当社グループは、2021年度から2023年度をターゲットにした「中期経営計画2023」に基づき、引き続き受注・売上の拡大に向けて取り組んだ。また、燃料や原材料価格の高騰に対応するため、販売価格の改善、原価低減活動に注力した。

この結果、全体で受注高は41,036百万円(前期比9.6%増加)となり、売上高は、繊維機械事業が前年同期と比べ大幅に増加したことで、39,278百万円(前期比25.9%増加)となった。損益面では、第3四半期連結会計期間より、繊維機械事業で価格転嫁、操業度の向上、原価低減の効果が表れ、収益面は大幅に改善され,下期において黒字転換を果たすことができた。その結果、営業損失は1,216百万円(前期 営業損失2,497百万円)、経常損失は1,295百万円(前期 経常損失2,583百万円)となった。親会社株主に帰属する当期純損失は1,246百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失2,567百万円)となった。

セグメント別の状況は下記のとおりである。

 

(繊維機械事業)

繊維機械事業では、新型エアジェットルームの販売促進活動を展開した。一昨年の12月にINDIA ITME2022、昨年の6月は国際繊維機械見本市 ITMA Milan 2023、11月にITMA ASIA+CITME2022に当社のエアジェットルームを出展し、高い評価を得た。展示会の効果もあり、期を通じインド市場を中心に多くの引合いをいただき、受注も増加した。

ウォータジェットルームは、今後の経済の回復を睨んだ中国資本の投資案件が好調に推移し、大幅な受注の増加につなげた。

また産業資材分野への販促を強化し、エアバッグ用織機、炭素繊維用織機の受注につながった。

この結果、受注高は35,622百万円(前期比16.3%増加)となり、売上高は、33,544百万円(前期比37.5%増加)となった。損益面では、全市場において販売価格の改善、また原価低減活動を進め、第3四半期連結会計期間より大幅に収益を改善し、下期には黒字転換を果たしたが、第2四半期連結累計期間までの損失を埋めるには至らず、営業損失は810百万円(前期 営業損失2,179百万円)となった。

 

 

(工作機械関連事業)

工作機械関連事業では、取り巻く環境は年間を通じ、厳しい状況が続いた。国内では自動車業界関連の設備投資意欲が低調のまま推移した。また海外では当社主力市場の北米で、一時は自動車部品関連ユーザが投資を再開する動きがあったもののその決定に時間を費やしており、中国では小口の投資案件が散見されたが内外市場ともに様子見の状況が続いた。インドやアセアン、トルコなどでは販売促進活動を強化し着実に成果を上げたが、主力市場での落込みをカバーするまでには至らなかった。このような状況の中、北米、ヨーロッパ、日本での展示会にて、EVに対応した新型傾斜NC円テーブルを出展し、販売促進を図った。

この結果、受注高は5,413百万円(前期比20.7%減少)、売上高は5,734百万円(前期比15.6%減少)となった。損益面では価格改善、原価低減を進めた効果が表れ、営業利益657百万円(前期比20.3%減少)となった。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ2,244百万円減少し31,334百万円となった。主な増減は、現金及び預金の減少、納期遅れ部品の改善や船積みが進み、棚卸資産が減少したこと等によるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ1,195百万円減少し29,218百万円となった。主な増減は、仕入債務の減少等によるものである。純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失1,246百万円を計上したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,048百万円減少し2,115百万円となり、自己資本比率は6.34%となった。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ846百万円減少し2,544百万円になった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失1,092百万円の計上などによりマイナス1,285百万円となった。(前期 マイナス1,875百万円)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出242百万円があったものの、投資有価証券の売却による収入362百万円などにより314百万円となった。(前期 マイナス60百万円)

 

(財務活動によりキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動におけるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少778百万円、長期借入金の返済による支出896百万円があったものの、長期借入金の借入による収入1,800百万円などにより124百万円となった。(前期 352百万円)

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

27,289

119.3

工作機械関連事業

6,141

93.4

合計

33,430

113.6

 

 

b 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比(%)

受注残高
(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

35,622

116.3

14,695

116.5

工作機械関連事業

5,413

79.3

1,595

83.3

合計

41,036

109.6

16,290

112.1

 

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

33,544

137.5

工作機械関連事業

5,734

84.4

合計

39,278

125.9

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去している。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

江蘇蘇美達国際技術貿易有限公司

4,432

14.2

5,661

14.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

  経営成績

当社グループは、売上高に占める輸出比率が高く、また主力の繊維機械事業ではインドや中国など、持続的な成長を図るための様々な経済改革を進める市場が売上の中心となっており、世界経済や国際政治あるいは各国の経済・金融政策の動向に大きな影響を受けざるを得ない。
 こうした環境において、当社グループは、2021年から2023年度をターゲットとした「中期経営計画2023」に取り組んだ。

当連結会計年度の当社グループの経営成績は、(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおりであるが、令和5年上期は、工作機械関連事業では利益を確保したものの、繊維機械事業で生産・売上が低水準であったことに加え、原材料価格の高騰に対し、販売価格への転嫁やコストダウン活動が追いつかなかったこと等から、連結売上高は18,861百万円、営業損失1,250百万円であった。下期は、工作機械関連事業は引き続き利益を確保し、繊維機械事業は、生産はフル操業となり、価格転嫁、原価低減の効果が表われ、連結売上高は20,416百万円、営業利益33百万円となり、黒字転換を果たすことが出来たが、通期での連結売上高、営業利益率共に目標の達成には至らなかった。全体では、受注高は41,036百万円(前期 37,443百万円)、受注残高は16,290百万円(前期 14,532百万円)となった。売上高は39,278百万円(前期 31,189百万円)となった。損益面では、生産・売上は前期比増加し、売上原価率は前期比2.2%改善し87.4%となった。販売費及び一般管理費は売上が増加し販売手数料や荷造運送費等の増加により前連結会計年度に比べ403百万円増加し6,150百万円となった。その結果、営業損失1,216百万円(前期 営業損失2,497百万円)となった。

営業外収益では、受取配当金、為替差益、補助金収入の計上等により113百万円となった。一方、営業外費用は、支払利息等により192百万円となった。特別利益では、政策保有株式の売却を進め、投資有価証券売却益の計上等により206百万円となった。特別損失では、固定資産処分損で3百万円となった。セグメント別では、繊維機械事業では、受注高は35,622百万円(前期 30,617百万円)、売上高は33,544百万円(前期 24,395百万円)、営業損失810百万円(前期 営業損失2,179百万円)となった。工作機械関連事業では、受注高は5,413百万円(前期 6,825百万円)、売上高は5,734百万円(前期 6,793百万円)、営業利益657百万円(前期 営業利益825百万円)となった。

 

財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ2,244百万円減少し31,334百万円となった。主な増減は、現金及び預金の減少、納期遅れ部品の改善や船積みが進み、棚卸資産が減少したこと等によるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ1,195百万円減少し29,218百万円となった。主な増減は、仕入債務の減少等によるものである。純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失1,246百万円を計上したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,048百万円減少し2,115百万円となり、自己資本比率は6.34%となった。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、投資有価証券の売却及び長期借入金の借入による収入があったものの、税金等調整前当期純損失の計上、短期借入金の減少、長期借入金の返済、有形無形固定資産の取得による支出等により、前連結会計年度末に比べ846百万円減少し2,544百万円となった。詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りである。

当社グループの運転資金需要は主に、原材料及び部品等の購入費用、製造費、販売及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備である。
 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。
 運転資金は自己資金及び金融機関等からの借入により調達しており、設備投資資金は自己資金を充当している。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成している。この連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載されているとおりである。

連結財務諸表の作成にあたり、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮した見積りが含まれているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はない。

 

 

6 【研究開発活動】

研究開発については、世界市場での優位性を確保するため、引き続き多様化、高度化するマーケットニーズに応え戦略製品の開発に取り組んでいる。当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は1,292百万円である。

当連結会計年度における主な事業の研究開発活動は次のとおりである。

 

(1) 繊維機械事業

 繊維機械全般の研究開発テーマとして、「SDGs、省エネルギー、省資源、高生産性」を掲げ特徴のある製品を開発、市場投入し、顧客利益に繋げる活動を進めている。

最新機種であるエアジェットルーム「ZAX001neo」のラインナップ展開と、「省エネルギー」をテーマとした装置開発を進めた。

ZAX001neoは、従来モデルに比べ回転数が10~20%多く、ラインナップの開発には、様々な仕様に搭載される装置にも高速回転性能が必要であり、これに対応するとともに、顧客要求に応じた付加価値を加え、市場投入した。

省エネルギーでは、ヨコ糸をジェットで飛ばす圧縮空気の使用量削減を更に追及し、ヨコ入れノズル等の装置の効率化を図り、制御ソフト面でも、これまでの経験から確立したデータを利用し、使用量削減に貢献した。また、顧客から高評価を得ている圧縮空気使用量削減を目的とした新開発の「オサ打ち」機構の適用織物範囲を拡大し、あらゆる織物においても「省エネルギー」を実現した。

経糸準備機械関連では、2021年に市場投入した新型スパンサイザー「TTS30S」にて高生産性・省資源を実現でき、顧客から高い評価を得ている。引き続きTTS30Sの製品ラインナップ拡充を進め、受注を伸ばしている。

また、フィラメント・ガラス用サイザーでは高付加価値を狙った高張力仕様を開発し、市場に投入した。生産品種の多様化に対応させた。

当連結会計年度における当事業に係る研究開発費は941百万円である。

 

(2) 工作機械関連事業

主力製品であるNCロータリテーブルの新機種として、傾斜円テーブルのワーク旋回可能径を拡大した「TWSシリーズ」の開発を行った。これは、今後需要が増すEV(電気自動車)関連部品の加工をターゲットとしたモデルで、従来機よりも大径のEV関連部品を小型マシニングセンタで加工することが可能となる。同シリーズは、φ130とφ160の2機種をラインナップした。

また、平置きの大型テーブル「RCH-1600」を開発した。同機種は最大φ2500の面板径までの対応が可能な設計となっており、同機種の開発伴い、大型のNCロータリテーブル市場要求へのラインナップが拡充した。

昨年、名古屋で開催されたMECT2023では前述の「TWSシリーズ」の展示を行った。また、一昨年開発を行った旋削、ミーリングの複合加工が可能である「TDB-200」を実際の小型マシニングセンタに搭載し、デモ加工展示を行い、多くの顧客に好評を得た。

海外では世界三大工作機械展示会の一つであるEMO2023にて前述の「TWSシリーズ」と「TDB-200」を展示し、当社の技術力をアピールした。

当社として事業価値の更なる向上と中期経営計画の目標達成に資するために、新しいマーケットに向けた新商材開発にも注力している。 前述のMECT2023では当社ブースとして初めて3Dプリンタ造形品の後加工向け「小型加工機」の出展を行い、様々な業種から注目された。「小型加工機」については既に販売実績もあり、更なる仕様追加の開発や3Dプリンタの造形品加工以外の異業種への参入も進めている。

昨年は機械加工において発生するバリの除去工程を自動で行う装置の開発を行い、検証を進めながら販促活動を行っている。また、今後迎える少子高齢化に伴う労働人口の縮小をから自動化、省人化への対応や高付加価値を資する設備装置などの研究・開発も進めている。

当連結会計年度における当事業に係る研究開発費は351百万円である。