第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、「先端テクノロジーで日本の明日に新たな価値を提供する」を経営理念に掲げ、AI・IoT・クラウドをはじめとした先端テクノロジーが新しい時代を切り開く中で、変化に順応するだけでなく新たな可能性を追求し、より付加価値の高いサービスを提供できる、選ばれる会社を目指して事業を行ってまいります。

当社は、経営理念の実現に向け、以下を経営方針としております。

 

① 就業者に選ばれる会社になる

 高めあえる仲間と共に能力を最大限に発揮できる、働きがいのある環境を提供し、社員とその家族が誇りを持てる会社になります。

 

② お客様に選ばれる会社になる

 確かな技術と誠実な対応でお客様の変革と価値創造に貢献し、常に信頼される会社になります。

 

③ コミットメント(必達目標)をやりとげる

 高い目標に挑戦しやり遂げることで企業価値を向上させ、全てのステークホルダーの期待に応えられる会社になります。

 

(2) 経営環境

当社は、エンジニアの約9割が顧客企業先へ常駐して設計・開発プロジェクトに参画していることから、オンサイト型開発支援に対する需要に大きく依存しております。また、当社のエンジニアの8割はITエンジニアとなっており、IT人材の需要に依存しております。

経済産業省の取りまとめた「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(2019年3月)」によれば、IT需要の拡大にもかかわらず国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高いといわれており、2030年にはIT人材が約16万人から約79万人不足すると推計されております。

 


 

 

「高位シナリオ」(グラフ上段の矢印)

 IPA(情報処理推進機構)企業アンケート調査の回答(約3~9%)に基づいてIT需要が拡大すると想定した場

 合

「中位シナリオ」(グラフ中段の矢印)

 「高位シナリオ」と「低位シナリオ」の中間の成長率(約2~5%)でIT需要が拡大すると想定した場合

「低位シナリオ」(グラフ下段の矢印)

 各種調査会社等の市場成長予測や国内の実質GDP伸び率を参考にした成長率(1%)に応じてIT需要が拡大す

 ると想定した場合

 

そのため、IT人材の獲得競争が激化しており、流動性が高まっていることは機会でもあり脅威でもあると考えております。

このような環境の下でも、エンジニア数を毎年増加することにより、サービス提供力を維持・拡大しており、国内の8つのエリアに11の拠点を設置し、エリア毎のニーズに応じたサービスを提供することで、第24期には売上高の7割以上(6,999百万円)を上場企業及び上場グループ企業が占めており(上場グループ企業32%、東証プライム上場企業35%、東証スタンダード上場企業4%、未上場企業29%)、また、売上高の約7割(6,919百万円)を取引年数5年以上の顧客が占めており(10年以上36%、5年以上34%、5年未満30%)、上場企業を中心に継続的な取引を行っております。

 

(3) 経営戦略

オンサイト型開発支援を中心に事業を展開し、多様化かつ高度化する顧客のニーズに対して柔軟にサービスを提供できるよう、更なるエンジニアの増強に力点を置くことを中期経営計画の柱に据えております。

先端エンジニアリング事業を推進していくために、事業領域を下表の通り既存領域と新規領域に分類した上で、拠点ごとに中心とする事業領域を定めることで、より高度な案件に対するサービスの提供を可能としております。

 

事業領域

分類

首都圏第一事業所、首都圏第二事業所、首都圏第三事業所

首都圏第四事業所、首都圏第五事業所

その他拠点

ソフトウエア

既存領域

インフラ

既存領域

 

機械・電気

既存領域

 

CRM

新規領域

 

クラウド

新規領域

 

その他

新規領域

 

 

※〇:中心とする事業領域(〇のない事業領域についても全拠点でサービスを提供しております)

 

中期経営計画では、エンジニア数の増加及びエンジニアの技術力向上によりサービス提供力を強化することで取引の拡大を図る方針としております。

既存領域においては、多様な人材を採用し、エンジニアのスキルに応じたプロジェクトへの参画や、技術研修による技術力向上により、既存顧客を中心にサービスを提供することで取引の維持・拡大を図っております。新規領域においては専門知識を持った人材の採用に加え、既存領域に属するエンジニアの技術転換及び資格取得により、専門性の高いサービスを提供することで、新規市場への進出を含めた取引の拡大を図っております。

 

 

 

エンジニアの保有資格一覧(2023年11月現在) 

情報処理技術者試験

(306人)

・応用情報技術者 ・基本情報技術者 ・データベーススペシャリスト 

・ネットワークスペシャリスト ・エンベデッドシステムスペシャリスト 

・情報セキュリティマネジメント ・情報処理安全確保支援士

ベンダー認定資格

(540人)

・AWS認定資格 ・Cisco認定資格 

・JSTQB認定テスト技術者資格 ※ISTQB Platinum Partner認定

・Oracle認定資格 ・Microsoft認定資格 

・Salesforce認定資格 ※Salesforceコンサルティングパートナー認定

その他の資格等

(445人)

・LinuC(旧:LPIC) ・Python3エンジニア認定基礎試験

・Python3エンジニア認定データ分析試験 ・G検定 ・E資格

・統計検定 ・情報処理検定 ・3次元CAD利用技術者試験 

・電気主任技術者 ・デジタル技術検定 その他

 

 

また、企業として内部管理体制をより高いレベルに引き上げ、内部統制の有効性の向上に努めております。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、サービスの競争力を維持し、財務活動を含めた全事業の業績を向上させていくことが重要であると認識していることから、売上高成長率及び経常利益成長率を経営指標としております。また、当社の売上高は概ねエンジニア数×稼働率×一人当たり売上高で算出できること、及びエンジニア数の増加に直結する採用紹介料が販売費及び一般管理費の10%以上を占めること、並びに稼働率と一人当たり売上高が売上総利益率に連動していることから、エンジニア数、稼働率、一人当たり売上高を経営指標の目標達成状況を計るためのKPIとしております。

エンジニア数については、第21期より新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い一時的に採用を抑制したものの、毎期、純増しております。

稼働率については、第21期より新型コロナウイルス感染症の影響が拡大したことに伴い、オンサイト型開発支援の需要が停滞したことから一時的に低下しましたが、顧客企業先によるテレワークの推進に伴いITインフラ整備の需要が拡大したことから、第22期以降は回復しました。

一人当たり売上高については、第20期より育成人材を積極的に採用していること及び新型コロナウイルス感染症の影響が拡大したことに伴い、稼働率が低下したことにより一時的に下がりましたが、第22期以降は稼働率の回復に伴い上がりました。

 

(エンジニア数、稼働率、及び一人当たり売上高)

回次

第20期

第21期

第22期

第23期

第24期

決算年月

2019年11月

2020年11月

2021年11月

2022年11月

2023年11月

エンジニア数    (人)

1,026

1,088

1,146

1,320

1,552

稼働率       (%)

94.9

92.1

95.4

95.9

95.4

一人当たり売上高(千円/月)

541

538

563

571

 583

 

※エンジニア数:期末時点のエンジニア在籍数

※稼働率:(月ごとのエンジニア稼働数の合計)÷(月ごとのエンジニア在籍数の合計)×100

※一人当たり売上高:年間の売上高÷(月ごとのエンジニア稼働数+ビジネスパートナーの稼働数の合計)

※エンジニア数、エンジニア在籍数、エンジニア稼働数には臨時従業員を含む

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業領域の拡大

これまでソフトウエア、インフラ、機械・電気関連の既存領域において顧客に当社のエンジニアを派遣契約あるいは請負契約等により事業を進めてまいりましたが、これに加え、新規領域においても顧客から選ばれるよう、以下のような分野へ進出する必要があると認識し、その提供を開始し、また拡大を進めております。

 

 

(CRM(Salesforce(※1)等)

・システム導入/移行支援

・機能追加/カスタマイズ

・他システム連携作業

・システム運用/保守

 

(クラウド)

・AWS(※2)環境の設計/構築

・Azure(※3)環境の設計/構築

・GCP(※4)環境の設計/構築

・クラウド移行支援

 

(その他)

・化学の検査/分析/測定など

・バイオの細胞実験/遺伝子実験など

・自然言語処理による研究/分析

・画像処理による点検/分析

 

② 人材の確保

既存領域においては、戦略的な採用体制と募集基準及び教育体制の充実等により継続的に多くの人材を確保することができております。新規領域においては、人材獲得競争が激化を極め採用難易度がますますたかまっております。

経営方針の確実な達成のために、新規領域における採用強化を行い、専門性の高い技術を有した人材の確保に取り組んでまいります。

 

③ 働き方改革による管理部門の生産性最大化

社員が安心して働くことのできる環境を提供すべく、全社的に在宅勤務手当を導入するなどの取り組みにより在宅勤務を推奨してまいります。

また、同時に生産性を高めるためにデータの可視化、事務作業の自動化、契約/申請の電子化などのDX(※5)を推進することが重要であると考え、それらの実現を目指してまいります。

 

④ 財務基盤の安定

当社は、本書提出日現在において、必要になった資金につきましては内部留保及び営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、借入金等の負債もないことから、財務上の課題はないものと判断しております。

 

⑤ 持続的な成長の実現

当社は、サステナビリティ経営として事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。SDGs(※6)をはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認し、以下の通り整理しました。これらの課題に取り組むことにより、社会とともに持続的に成長し信頼される企業を目指してまいります。

 

1. 事業活動に伴う環境負荷の低減

帳票の電子化によるペーパーレスの推進や、リモートワークによるCO2排出量の削減を通した環境改善により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。

(7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに)

(12. つくる責任つかう責任)

(13. 気候変動に具体的な対策を)

 

. 事業活動を通じた社会貢献

インフラ、クラウド技術の提供によるICT教育の支援や、AI技術の提供による先端テクノロジー普及の支援を通した社会貢献により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。

(4. 質の高い教育をみんなに)

(8. 働きがいも経済成長も)

(9. 産業と技術革新の基盤をつくろう)

3. 上場企業としてのガバナンス体制の強化

コンプライアンスの徹底や、積極的な情報開示を通した企業統治により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。

(17. パートナーシップで目標を達成しよう)

 

[用語解説]

※1.Salesforce

Salesforce.com社により提供されている顧客管理システムや営業支援システムを中心としたクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。

※2.AWS

Amazon Web Servicesの略称。Amazon.com社が提供しているクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。

※3.Azure

Microsoft Azureの略称。Microsoft社が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。

※4.GCP

Google Cloud Platformの略称。Google社が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。

※5.DX

Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することを指します。

※6.SDGs

世界(地球)には、紛争や貧困、不平等や環境など、様々な社会課題がありますが、その中でも2030年までに解決すべき重要な問題について、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」として17個の目標(テーマ)を国連が定めたもので、英語の頭文字をとって、SDGs(えすでぃーじーず)と呼んでおります。世界中の人々が協力して、目標の達成に取り組むことで、社会課題を解決し、世界中の人々が、誰一人取り残されることのない社会を目指すものです。「自分の幸福のためだけに頑張る」のではなく、「社会全体、世界全体の幸福に向かって協力する」ための目印となるものです。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

ガバナンス

当社は、先端テクノロジーが必要とされる市場に対して、「オンサイト型開発支援」や「受託開発」という形態で専門的な技術を提供する先端エンジニアリング事業を展開しており、当社の持続的な成長が、社会の持続的な発展につながるものであると考えております。企業価値を維持・向上させ、当社に関係するステークホルダーとの信頼関係を構築し継続的に成長していくためには、法令を遵守し、経営監視機能を充実させ、経営の透明性を維持していくことが重要と考えており、これを実現するためにコーポレート・ガバナンス体制の強化に努めております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

戦略

当社のビジネスは、当社従業員やビジネスパートナーのエンジニアに支えられており、持続的成長と企業価値向上にあたり、人材が最も重要な経営資源と捉えております。そのため、当社はサステナビリティ関連の項目の中で、特に人的資本を重視しております。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、経営方針に「就業者に選ばれる会社になる」を掲げており、高めあえる仲間と共に能力を最大限に発揮できる、働きがいのある環境を提供するため、社員の経験年数・テクニカルスキル・ヒューマンスキルからグレードを割り出して適切な研修を行う「グレードキューブ制度」や、様々な角度から社員のモチベーションを支える「360°フォロー体制」といった独自の教育体制を置き、社員の成長をサポートしております。さらに、エンジニアに対する教育体制を拡充することを目的として研修センター「J-college」を開設し、未経験者への教育や既存エンジニアの技術コンバートを行い、付加価値の高い人材を輩出しております。

 

リスク管理

当社は、経営上起こり得る種々のリスクに対処するため、「リスク管理規程」を制定し、全社的なリスク管理を行っております。「リスク管理規程」に基づき、リスク・コンプライアンス委員会を原則として月に1回開催し、リスク管理を推進しており、その活動状況を四半期ごとに取締役会に報告することとしています。また、必要に応じて弁護士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整えており、リスクの未然の防止と問題点の早期把握・解決に努めております。

 

指標及び目標

当社では、「戦略」において記載した、多様な人材の維持及び育成並びに社内環境整備に係る指標について、具体的な取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。

今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がある主要なリスクは以下のとおりであります。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に最大限の努力をしてまいります。また、当社として必ずしも重要な事業上のリスクに該当しないと考える事項につきましても、投資者の判断上、あるいは当社の事業活動を理解するうえで重要であると考えられるものについては、投資者に対する積極開示の観点から記載しております。当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

① 法的規制について

(顕在化可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社は、主力である先端エンジニアリング事業では労働者派遣法など、様々な法令の規制を受けております。社会情勢の変化に応じてこれらの法制度の改正、強化、解釈の変更などが想定されます。当社は、諸法令に対し、遵法を旨として経営にあたっておりますが、その対応により新たな負担の発生や事業展開の変更を求められることも予測され、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。先端エンジニアリング事業は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)に基づき、厚生労働大臣より労働者派遣事業の許可を取得しております。

労働者派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、当社が一般労働者派遣事業主としての欠格事由(労働者派遣法第6条)、及び、当該事業許可の取消事由(同法第14条)に該当した場合には、厚生労働大臣が事業許可の取消、業務の停止を命じることができる旨を定めております。現時点において認識している限りでは、当社においてはこれらの法令に定める欠格事由及び取消事由に該当する事実はありません。しかしながら将来、何らかの理由により許可の取消等が発生した場合には、当社の主要な事業活動に支障をきたすとともに、事業遂行に支障が生じ、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

また、当社は関係法規の遵守に努めておりますが、何らかの事情で、取引先や協力会社において適格要件を欠くなどの労働者派遣法違反や偽装請負問題などが発生した場合には、当社の社会的信用の失墜を招くとともに、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策として当社管理本部にて顧問弁護士と連携し、法的規制の動向については常に注視し、臨機応変に対応できる体制を取っております。

当社は前述の労働者派遣法の他、職業安定法、労働基準法等の労働関連法令等により、規制を受けております。法令の変更、新法令の制定、又は解釈の変更等が生じた場合、当社の事業が制約されることが考えられます。そのような事象が生じた場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(許認可等の状況)

許認可等の名称

有効期限

許認可等

の番号

規制法令

所轄官庁等

取消事由等

ジャパニアス株式会社

労働者派遣事業許可

2004年4月1日~

2027年3月31日

派14-300005

労働者派遣法

厚生労働省

労働者派遣法第6条に定められている条項に抵触した場合

 

 

② 人材の確保及び育成について

(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社の事業活動は人材に大きく依存しており、優秀な人材の確保・定着及び育成が重要であると考えております。しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画どおりに進まない場合、優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 市場の景気動向及び顧客企業の景況感について

(顕在化可能性:中/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、顧客企業の要望に応えるサービスを提供し続けることで、創業以来赤字を一度も計上しておらず、第12期より増収を継続しております。しかしながら、金融危機や大規模な自然災害等の事象、経済環境の変化等により景気が悪化した場合、顧客企業における業績悪化に伴う経費の削減や人事方針の転換等により、顧客企業からの受注が減少し、当社の業績に影響を与える可能性があります。

④ 労務管理について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、月次での長時間労働の状況及び残業発生見込みの確認を行う等、長時間労働の発生を未然に防ぐ労務管理体制を整備しております。しかしながら、エンジニアの約9割が顧客企業先へ常駐して設計・開発プロジェクトに参画していることから、顧客企業先の受注案件の納期がひっ迫する等、やむを得ない事情により長時間労働が発生し、過重労働を起因とした健康問題や業務事故の発生及びそれに伴う訴訟、従業員の士気の低下等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑤ 技術革新への対応について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、先端テクノロジーを積極的に導入するため、優秀なエンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備により最新の技術動向や環境変化を把握できる体制を構築することで、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。しかしながら、技術革新等への対応が遅れた場合や、開発費等の予想を超える多額の費用が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑥ システム障害について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、人為的ミス、通信ネットワーク機器の故障、ソフトウエアの不具合、サイバー攻撃、自然災害等により、システム障害が発生する可能性があるため、社内システムの定期的なバックアップ等を講じておりますが、システム障害が発生した場合には、当社の事業運営に支障が生じ、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑦ 情報管理について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、業務に関連して多くの機密情報及び個人情報を取り扱っており、厳格な情報管理が求められていることから、ISMSの認証取得及びプライバシーマークを取得し、情報管理の徹底を図っております。しかしながら、人為的ミス、コンピュータウイルス、第三者による不正アクセス等により機密情報及び個人情報の外部への漏洩が生じた場合、当社の社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑧ 新規事業に係る投資について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、先端エンジニアリング事業の単一セグメントであり、今後のさらなる事業拡大に向けて新規事業を展開していくことが必要であると考えております。そのため、新規事業の開発や新サービスの提供などを企画・検討しております。しかしながら、予測不能な外部環境の変化により開発した新規事業や新サービスが期待どおりの成果をあげられない場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑨ 品質や納期について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、エンジニアによる業務遂行に際して、技術勉強会の開催によるスキルアップ機会の提供や、e-ラーニング環境の整備による資格取得や技術力の向上を図ることにより、顧客企業先の求めるサービスを提供しております。しかしながら、顧客企業先の求める品質の作業を提供できない場合や納期通りに作業できない場合に、顧客企業先との契約の解除や取引の停止等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

⑩ 競合他社による影響について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、提案力、人材力等の強化、付加価値の高いサービスの提供等により顧客との良好な取引関係の維持等に積極的に取り組み、競争優位性を確保し、品質及び価格の維持向上に努めております。しかしながら、競合他社のサービス力の向上や価格競争の激化により当社の競争力が相対的に低下した場合、収益性の低下等を招き、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑪ 訴訟について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社は、本書提出日現在において、第三者から訴訟を提起されている事実はありません。当社は、法令遵守に努めておりますが、事業活動を行う中で、訴訟、その他の法律的手続の対象となるリスクがあり、重要な訴訟等の提起を受けた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

⑫ 特定人物への依存について

(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)

当社設立の中心人物であり、創立以来当社の事業を牽引してきた代表取締役会長兼社長である西川三郎は、経営方針や事業戦略の立案・実施において、極めて重要な役割を果たしております。また、西川三郎及び西川三郎の資産管理会社である株式会社ウェストリバーは当社の大株主であり、親族の所有株式数を含めると、本書提出日現在で発行済株式総数の63.9%を所有しております

当社では、過度に西川三郎へ依存しないよう、経営幹部の拡充・育成・権限委譲による組織的業務執行体制の構築を行っておりますが、何らかの理由により西川三郎による当社の業務執行が困難となった場合、現状においては当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

西川三郎、その同族関係者及び株式会社ウェストリバーは、その議決権行使にあたって株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針を有しており、また、今後も当社の流通株式比率を高めるための一部売出しの要請に応えつつ中長期的に一定の当社株式を保有する方針と認識しておりますが、何らかの事情により、市場で当該株式の一定以上の売却が行われた場合や売却の可能性が生じた場合は、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の多くが解除されたことなどから、経済活動の正常化に向けた動きがみられました。一方で、ロシアのウクライナ侵攻に起因する物価の高騰やインフレ懸念、円安の継続等、依然として景気は不透明な状況が続いております。このような中、ITインフラ整備やDX等に対し、民需、官需とも積極的な投資もあり、慢性的なIT人材不足となっていることも相まって、当社の先端エンジニアリング事業においては、オンサイト型開発支援業務、受託開発業務とも売上高を増加させることができました。一方で、高いIT投資等の需要に応えるため、当社は積極的にエンジニアを採用したことに伴い、売上原価は増加しましたが、稼働率の改善や一人当たり売上高の向上に取り組んだことにより売上総利益率は良化しました。販売費及び一般管理費は、エンジニアの採用増に伴い増加しました。営業外収益は、業界未経験者へ実施した教育研修に対する人材開発支援助成金収入により増加しました。

これらの結果、売上高は9,885,472千円(前期比18.8%増)、営業利益は836,878千円(同36.9%増)、経常利益は873,485千円(同42.0%増)、当期純利益は616,113千円(同39.3%増)となりました。

なお、当社は先端エンジニアリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末の資産合計は4,585,462千円となり、前事業年度末に比べ643,750千円増加いたしました。主な要因は、流動資産において、現金及び預金が314,682千円増加し、売掛金及び契約資産が226,560千円増加し、電子記録債権が41,100千円増加したこと等によるものであります。また、固定資産合計は358,216千円となり、前事業年度末に比べ48,236千円増加いたしました。

 

(負債)
  当事業年度末の負債合計は1,727,855千円となり、前事業年度末に比べ233,870千円増加いたしました。主な要因は、流動負債において、未払費用が117,003千円増加し、未払法人税等が21,487千円増加し、賞与引当金が28,671千円増加したこと等によるものであります。また、固定負債合計は212,119千円となり、前事業年度末に比べ9,641千円減少いたしました。

 

 (純資産)
  当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比べ409,880千円増加し、2,857,606千円となりました。これは当期純利益616,113千円の計上、剰余金の配当217,800千円の支出等によるものであります。
  この結果、自己資本比率は62.3%(前事業年度末は62.1%)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末と比べ314,682千円増加し、2,676,239千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。

 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
  当事業年度における営業活動の結果、得られた資金は566,883千円(前事業年度は599,941千円の増加)となりました。これは主に税引前当期純利益を873,485千円計上したこと、法人税等の支出250,846千円、売上債権の増加267,661千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 当事業年度における投資活動の結果、使用した資金は45,527千円(前事業年度は6,766千円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出21,191千円、その他投資の増加による支出16,322千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 当事業年度における財務活動の結果、使用した資金は206,673千円(前事業年度は48,910千円の増加)となりました。これは主に配当金の支払による支出217,637千円によるものであります。 

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績

当社の提供する事業の性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。

 

b 受注実績

当社は、提供するサービスの大部分がオンサイト型開発支援であるため、受注実績については記載を省略しております。

 

c 販売実績

当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は先端エンジニアリング事業の単一セグメントであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

先端エンジニアリング事業

9,885,472

18.8

合計

9,885,472

18.8

 

 

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

(自 2021年12月1日

 至 2022年11月30日)

(自 2022年12月1日

 至 2023年11月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社アルファシステムズ

1,339,478

16.1

1,380,487

14.0

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、将来に関する事項は不確実性を重視しており、実際の結果と異なる可能性もありますのでご留意ください。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析

当社の当事業年度の経営成績について、売上高は9,885,472千円(前年同期比18.8%増)となりました。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の拡大等による行動規制緩和などにより、景気に持ち直しの動きが見られたものの、エネルギー資源や原材料価格の高騰によるインフレ懸念や急激な円安が進行するなど、変動の大きな状態が続きました。このような中、ITインフラ整備やDX等に対し、民需、官需とも積極的な投資もあり、慢性的なIT人材不足となっていることも相まって、当社の先端エンジニアリング事業においては、オンサイト型開発支援、受託開発業務とも売上高を増加させることができました。

売上原価は7,342,152千円(同16.7%増)となりました。顧客のエンジニアに対する高い需要に応えるため積極的にエンジニアを増員したことにより労務費は増加しましたが、旺盛な需要に支えられる形でエンジニアの待期期間が減少したことにより稼働率が向上し、売上高に対する構成比率は74.3%(同1.3%減)となりました。

販売費及び一般管理費は1,706,441千円(同20.0%増)となりました。顧客のエンジニアに対する高い需要に応えるためのエンジニア採用に伴い採用関連費が増加したことにより、売上高に対する構成比率は17.3%(同0.2%増)となりました。

営業利益及び経常利益は、売上高の増加により増益になりました。営業利益は836,878千円(同36.9%増)、経常利益は873,485千円(同42.0%増)となり、当期純利益は616,113千円(同39.3%増)となりました。

 

(b) 財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。

 

(c) 経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因としては、景気動向や市場環境の変化、法的規制、同業他社、人材等の様々なリスク要因があると認識しております。詳細については「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」をご参照ください。

 

(d) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社の資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりとなります。

資本政策につきましては、内部留保の充実を図るとともに、経営基盤の長期安定に向けた財務体制の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させることと、株主への利益還元を考慮し、実施していくこととしております。

また、株主還元の方針については「第4[提出会社の状況]3[配当政策]」に記載しております。

 

当社の資金需要の主なものは、主たる事業である先端エンジニアリング事業に係る人件費の他、販売費及び一般管理費の採用紹介料、人件費等の事業に係る運転資金であります。

当社は必要になった資金について、内部留保と営業活動によるキャッシュ・フローで賄っております。また、借入金等の負債はございません。

当事業年度末における有利子負債はございません。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は2,676,239千円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積もり及び当該見積もりに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、報告期間における収益・費用の報告値に影響を与える見積及び予測を行わなければなりません。見積特有の不確実性が存在するため、結果として見積と実績が異なる場合があります。

当社の財政状態及び経営成績にとって重要であり、かつ、相当程度の経営判断や見積を必要とする重要な会計方針について、以下のとおり説明いたします。

 

(a) 貸倒引当金(債権の回収可能性)

当社は、売上債権その他これに準ずる債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、又、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。相手先の財政状態が悪化しその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生することにより、当社の業績又は財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(b) 繰延税金資産

繰延税金資産の回収可能性に関しては、「第5[経理の状況]1[財務諸表等][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(c) 受注損失引当金

受注損失引当金に関しては、「第5[経理の状況]1[財務諸表等][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(d) 固定資産の減損損失

当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

④ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標等の分析

経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 [事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上高成長率及び経常利益成長率を経営指標として重視しております。また、エンジニア数、稼働率、一人当たり売上高を経営指標の目標達成状況を計るためのKPIとしております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。