第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループの企業理念である、「夢を持ち一生懸命を楽しもう」、「総力で一歩先行くものづくり」、「感謝と誠意をかたちで社会へ」を基本に置き、行動指針や行動規範のもと、グループをあげて事業活動に邁進し、適正な収益を確保しつつ、株主・投資家、顧客や取引先、従業員、地域社会等のあらゆるステークホルダーの皆様に対して、企業としての社会的責任を全うできるよう努力を継続してまいります。

また、社会から信任される企業たることを目指し、内部統制システムの効果的・効率的運用に引き続き務め、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化、コンプライアンスの徹底、リスク管理体制の充実、環境活動への積極的取り組み等を継続してまいる方針であります。

 

(2)事業ポートフォリオに関する基本的な方針

当社グループは、産業用機能フィルター・コンベア事業、電子部材・フォトマスク事業、環境・水処理関連事業、不動産賃貸事業と、多方面で事業を展開しております。当社グループでは、「グループ長期ビジョンと整合性ある事業」、「自社としてガバナンスできる事業」、「特定の領域でリーダーの地位を得られる事業」、「中長期的に資本コストを上回るリターンを継続できる事業」という観点から原則として中期経営計画策定時に事業ポートフォリオの見直しを実施いたします。

 

(3)グループ長期ビジョン、経営重点課題(対処すべき課題)

当社グループは2023年度~2025年度中期経営計画において策定したとおり、以下の長期ビジョンのもと経営重点課題に取り組んでまいります。

グループ長期ビジョン

「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」

 

経営重点課題

長期ビジョンの達成に向け、次期中期経営計画の期間で取り組むべき課題(対処すべき課題)は以下のとおりであります。

①収益力の回復

厳しい経営環境下でも事業を成長させるべく、時代のニーズに即した環境配慮型製品の開発やM&Aなどに積極的に取り組んでまいります。また、AI・RPAツールの活用による業務効率化・自動化を推進してまいります。

 

②ESG経営への取組と積極的な開示

当社のサステナビリティ方針の策定や、マテリアリティの特定を通じて価値創造ストーリーの構築を目指し、その内容を統合報告書などの媒体で開示することに取り組んでまいります。

 

③個人の自律意識の向上

組織および個人が自らの使命・役割を認識し、今何をすべきか、将来に向かって何をすべきかを自ら考え、行動することでその責任を果たしてまいります。そのために教育プログラム拡充など人的投資にも注力いたします。

 

 

また、東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を受け、当社は現状PBRが過去5年間0.4~0.6倍の間で推移している現状を認識し、その改善に向けて以下の取り組みに注力してまいります。

(1)収益力の回復

各事業にて以下の取り組みを行うことにより収益力の回復を図ります。

また、社内での業績管理において事業ごとの資本収益性を分析しております。今後、収益性向上のための取り組みを検討し、実践してまいります。

 

産業用機能フィルター・コンベア事業

製紙製品分野は今後も需要増加が期待できる海外市場の開拓に注力してまいります。とりわけ近年研究開発に取り組んできた不織布用製品の拡販に注力いたします。国内市場につきましては、得意先の電力使用量削減に寄与する駆動負荷低減網など、ニーズに合った製品の開発を加速させ、シェアを伸ばしてまいります。

その他産業用機能フィルター・コンベア分野は多様な業界向けの製品を揃えており、特定の市場環境の変化による影響を受け難く、安定した収益を獲得できる構造であり、今後もニーズを捉え着実に成長してまいります。

 

電子部材・フォトマスク事業

エッチング加工製品分野は競合が多く価格競争が激しい状況のなか、収益性に課題がございます。得意先からのニーズである試作認定品の短納期対応とタイムリーな量産化体制の整備のために、数年前から積極的に設備投資を実施しており、従来対応できなかった得意先からの依頼に応えられる体制を構築してまいりました。今後は受注獲得に邁進してまいります。

フォトマスク製品分野は、現在得意先からの需要が旺盛な高周波デバイス、各種センサー、パワー半導体向けフォトマスクの販売活動を強化してまいります。老朽化設備の更新を実施しており、減価償却費負担がこの先数年間発生する見込みでありますが、着実に成長してまいります。

 

環境・水処理関連事業

プール製品につきまして、現在シェアトップの会社が事業撤退を表明しており(2024年3月末をもって営業活動を停止し、2027年までに最終工事完了)、当社グループのシェア・業績を大きく伸ばすことに期待できる状況です。

そのためには当社グループにて人員増強と協力会社を含めた生産体制の強化が必要であり、早急に着手してまいります。

 

不動産賃貸事業

不動産賃貸事業は、当社の工場や社宅の跡地の有効活用を目的として運営しております。都心部に複数の物件を有し、商業施設やマンションなどとして賃貸しております。物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施し、賃料維持に努めてまいります。

 

(2)資本政策の再検討と株主還元強化

当社は、2023年度~2025年度中期経営計画の期間につきまして、連結配当性向30%以上かつ総還元性向3年平均 50%以上を目安に株主還元を強化しております。

当社では、資本収益性を高めるという観点から、自己資本比率の水準を中長期的には45~55%とすることが望ましいと考えており、この範囲内で収益力向上に資する設備投資とのバランスを見ながらも積極的に株主還元するために、配当の最低水準をDOE2.4%以上といたします。

この水準は、中長期的に目指すROE8%と配当性向30%以上という両指標から算出したものであります。

 

(3)IR活動の充実

今後、統合報告書の作成やホームページのサステナビリティ活動の内容更新など、IR関連情報の発信に積極的に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社グループは、「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」を長期ビジョンとし、中期経営計画(2023年~2025年)ではESG経営への取組と積極的な開示を進めることを経営重点課題に掲げております。 サステナビリティに関する取組については、取締役会で施策や改善策を議論しており、 公正かつ透明性の高いガバナンスを実現しております。

(2)戦略

当社グループは、現在、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の特定に向けて取り組んでおります。今後は、これから特定するマテリアリティを踏まえ、個々の項目について対策を検討し、施策を推進していく予定であります。

 また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

<人材育成>

当社グループは、中長期的な企業価値の向上には人的資本が重要と考え、中期経営計画(2023年~2025年)において個人の自律意識の向上を経営重点課題に掲げております。当社では、従業員の主体的な取組に頼るだけでなく、「階層別研修」「年代別研修」「キャリア別研修」「テーマ別研修」等の教育プログラムを通じて人材の育成に努めております。

 

<社内環境の整備>

当社は、従業員全員が働きやすい環境を作り、全従業員が持っている能力を十二分に発揮できるようにするため、また、女性が管理職として活躍できる雇用環境の整備を行うため、様々な取り組みを行っております。具体的な取組は以下の通りであります。

①次世代育成支援

(ⅰ)より一層の長時間労働抑制への取り組みとして、年の総所定労働時間数を1,900時間未満としております。

(ⅱ)育児をする社員が働きやすい環境をつくるため、男性が育児休業制度をより活用できるよう働きかけるほか、子の看護休暇を有給休暇としその適用範囲に予防接種時を含めるなど、法定基準を上回る制度を整備しております。

(ⅲ)介護を行う従業員の実態にあわせた制度の整備を目指し、制度利用者からのヒアリング等を踏まえ、より実態に即した取得しやすい制度へと改善を図ってまいります。

②女性活躍推進

(ⅰ)従業員個々人および組織の能力向上を図り、生産性の向上を目指すキャリア別研修を実施して管理職育成支援研修を継続実施しております。

(ⅱ)従来、女性総合職の配置が少なかった部署に女性を配置するにあたっての課題点を分析し、女性が働く上での障害を取り除く取組みを行い、女性総合職を配置しております。

(ⅲ)高い女性採用比率を維持してまいります。

(3)リスク管理

当社グループは、サステナビリティ課題に関するリスクを含めた全社的なリスク管理を行うため、定期的に当社グループにおけるリスクの識別・評価を行い、リスクマネジメント計画を策定しております。リスクへの対応状況は、取締役会においてモニタリングされており、取締役会は、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、今後、マテリアリティを特定したうえで、個々の項目について具体的な指標と目標を検討してまいります。

また、当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、上記「(2)戦略」に記載したとおり、全従業員が活躍できる働きやすい組織を目指しておりますが、現在のところ具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、企業価値向上に向けたサステナビリティに関する指標及び目標について検討を進めてまいります。

なお、当社の管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。当社の管理職に占める女性労働者の割合については、24年11月末までに5%を目標としておりましたが、23年11月時点で8.4%となりました。今後は、実態を踏まえて24年11月以降の目標を見直し、引き続き女性管理職比率の引き上げに向け取組を継続してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社におけるリスクマネジメント活動は主にリスクマップの作成・リスクの優先順位付け・リスクオーナーの決定・対策の進捗確認であります。実際にリスク管理を行う部署は、事業計画の策定時に取締役会に対してリスク管理状況の報告を行います。また、各部署からの報告をもとに経営企画室で当社グループ全体のリスクの洗い出しと対応策を検討し、取締役会に報告いたします。これを受けて取締役会では、毎年リスクマネジメント活動のモニタリングおよびリスク管理体制の見直しを実施しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)市場リスク

当社グループは世界各地で事業を展開しておりますが、全売上高に占める国内売上高は依然として高い水準にあり、業績は国内の各種需要に大きく左右されます。今後、国内では人口減少が続くと予想されております。人口減少は消費需要を中心とする国内市場の縮小要因となり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが取り扱う製品に係る技術の進化や変化への対応の遅れ、競合先による競争力のある新製品の発売、価格競争の激化、低価格品などへの需要シフト、競合先同士の提携による規模拡大などの事象は当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度も新型コロナウイルス感染症拡大時から継続して、産業用機能フィルター・コンベア事業におきましては、国内の紙の需要は回復しておりません。また、環境・水処理関連事業におきましては、学校でのプール利用廃止・民間プールの利用の動きが加速しております。

このような状況下、産業用機能フィルター・コンベア事業では、底堅い需要が見込める板紙・不織布向けの新製品開発や得意先の電力削減に寄与する環境配慮型製品開発など、付加価値の高い製品の拡販により縮小する市場でも成長に向け取り組んでまいります。

また、環境・水処理関連事業では、プール業界シェア1位の競合が事業撤退を表明したため、業界のリーダーとなるべく体制強化を図り、受注増加に努めてまいります。

 

(2)為替の変動に関するリスク

当社グループは、製品販売、原材料調達等の事業活動において、様々な通貨を用いて取引を行っており、為替レートの変動は、当社グループの財政状態および経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは外国為替取引について、必要に応じて為替レートの変動リスクを回避し、将来の費用、収益、キャッシュ・フローを固定化することをヘッジ方針としております。

当連結会計年度は、環境・水処理関連事業で海外から資材を調達している大型案件において、円安の進行によって仕入価格が高騰し、採算が悪化いたしました。今後は案件受注時に円建での取引や為替予約を検討するなど、適切なリスクヘッジに努めてまいります。

 

(3)資源・エネルギーの高騰リスク

ウクライナ情勢や世界的なインフレなど様々な要因により資源・エネルギーの高騰および物流の混乱・運賃の高騰が発生しており、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは原材料メーカーや設備購入先との日常的なコンタクトにより信頼関係を築いており、早期に在庫を確保しております。また、物流の混乱に備え、得意先とも協議して緊急の出荷を減少させ、運送の効率化も実施しております。

当連結会計年度は、電気料金の高騰の影響を大きく受けましたが、社内で立ち上げた省エネ委員会の活動により電気の使用量を前期より抑えることができました。今後は省エネ活動を推進するとともに、販売価格を適宜見直してまいります。また、物流については他社との混載による運送の効率化などに取り組んでまいります。

 

 

(4)災害・事故リスク

当社グループは、生産拠点および販売拠点を国内外に展開しており、大規模地震・洪水等予測不能の自然災害等により甚大な被害を受けた場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの工場で火災・爆発事故等により従業員や周辺地域に被害が発生した場合、経営成績に影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。

当社グループでは、工場の操業にあたっては安全第一を掲げ、定期的に職場のパトロールを実施して事故防止を図っております。また、災害対応基準やBCPを制定しており、自然災害や火災を想定した定期訓練を毎年実施することなどにより緊急事態に備えております。

当連結会計年度は、当社工場の老朽化設備の更新を実施いたしました。また、製紙製品分野においては、日本よりも相対的に災害リスクの低いタイでの生産能力向上のための設備投資も実施しております。

 

(5)事業投資リスク

当社グループは、事業成長のために積極的な設備投資やM&Aを進めております。しかしながら、投資判断時に想定していなかった市場環境や技術の変化により、期待されるキャッシュ・フローを生み出せない場合は、設備投資により計上した固定資産やM&Aにより計上したのれんなどの減損処理により、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、重要な投資の際には内部収益率(IRR)が社内で算出した加重平均資本コスト(WACC)を上回っているかを重要な基準とし、その他のシナジー効果を含めた総合的な観点から可否を判断しております。投資後は経営会議などにおいて業績の進捗や設備の使用状況報告を実施しております。

当連結会計年度も、個別案件ごとに投資リスクについて検討しております。

 

(6)人材確保関連リスク

当社グループは、継続的な事業運営のために人材の確保が重要であると認識しておりますが、国内における少子高齢化や働き方の価値観が変化しつつあり、社員の高齢化や離職、新規採用の困難化などの状況により、事業活動が停滞し経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは人材の多様性確保に努めるとともに、従業員自らが考え、行動することで成長を促すことを人事制度の基本方針としております。また、人権の尊重や従業員の健康管理、教育制度の充実による人材の確保に努めてまいります。

具体的な課題に対する取り組みとして、①従業員の高齢化については、当連結会計年度より当社で定年延長を実施し、人員配置転換・シニア社員活用・リカレント教育に取り組んでおります。また、②新卒採用の困難化については、通年採用・中途採用の拡大に取り組んでまいります。さらに、③勤務経験の浅い離職者対策として、従業員アンケート調査を実施し、コミュニケーションやチャレンジ機会創出に向けた取り組みを行ってまいります。最後に、④情報セキュリティ人材、DX推進人材不足については、中途採用、現行社員のリカレント教育に取り組んでまいります。

 

(7)環境関連リスク

当社グループは、事業活動により発生する廃棄物や有害物質等について、環境関連法令の適用を受け、これらの規制を順守するとともに、ISO14001の認証を取得する等して環境に配慮した事業活動を展開しております。しかしながら、過去、現在および将来の当社グループの事業活動に関して、環境に関する法的、社会的責任を負う事態が生じた場合には、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、環境関連法令を順守しており、適宜社内においても監視・検査体制を構築しております。

また、当期に社内で省エネ委員会を立ち上げており、今後もその活動を通じてエネルギー、電力の省力化に取り組んでまいります。

 

(8)コンプライアンスリスク

当社グループは、事業活動を行う上で様々な法規制の適用を受けており、その遵守に努めておりますが、価値観の変化に伴うハラスメントのリスクや不正の機会も増加しつつあります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合には、社会的信用の失墜や経営成績へ影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、日本フイルコングループコンプライアンス推進委員会を設置し、従業員の判断・行動の拠り所である「日本フイルコングループ行動規範」の実践に向けて、階層別の集合研修やe-learningによる教育・啓発を継続的に実施しております。

当連結会計年度においては、コンプライアンス意識調査を実施した結果、内部通報窓口に対する信頼醸成や管理職のマネジメント力強化などの課題を抽出いたしました。今後はこの課題への対応として各種適切な研修や教育を実施してまいります。

 

(9)情報セキュリティリスク

当社グループは、業務効率向上のため、受注・生産・販売や人事・会計等の情報システムを有しており、これらの情報システムと機密情報の運用管理について、情報セキュリティに関する基本方針を制定し、その順守とセキュリティレベルの確保に継続的に取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みにもかかわらず予期せぬ外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染その他の不測の事態により、機密情報の滅失、社外漏洩ならびに情報システムの一定期間停止等のリスクを完全に排除できるものではありません。そのような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、近年脅威を増している標的型攻撃メール対策として、定期的に従業員に訓練を実施するなど、リスクの低減に注力しております。

今後は、ネットワーク障害やインフラ系ハードウェアの故障に備え、社外からのVPN接続の速度アップを検討しております。また、サイバー攻撃やウイルス感染によるデータ消滅・遺失・改ざん等に備え、メールサーバへDMARC(送信ドメイン認証技術でメール詐欺などへの防御対策)導入を計画しております。

 

(10)訴訟等のリスク

当社グループは、国内外に事業活動を展開しており、それらが訴訟その他法的手続きの対象となる可能性があります。また、新製品の開発にあたり、事前に調査は実施するものの、他社特許権・商標権を侵害する可能性があります。これらの事態が発生した場合には、その結果により当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業活動にあたっては各種法令を遵守するとともに、他社特許の侵害回避のために、特許調査や知財に係る教育を今後も充実させてまいります。

 

(11)海外展開に伴うリスク

当社グループは、日本国内にとどまらず、アジア、オセアニア、北米、ヨーロッパ等海外に生産・販売活動を展開しております。グローバルな事業活動を展開するうえで、現地の法的規制、政情不安や事業環境等の変動は、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、各国の状況については、適宜現地より必要な情報を収集し対応を行っております。

当連結会計年度に日本フイルコングループ人権方針を策定しており、今後は人権方針に則った取り組みを進めてまいります。また、グループへのコンプライアンス研修の展開、現地会計基準と国際会計基準の差異分析などに取り組んでまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、エネルギーや物価の高騰、供給面での制約、金融資本市場の変動などの影響により厳しい状況が継続しております。海外経済も金融引締めや物価高騰を背景として景気が下振れしており、先行き不透明な状況が継続しております。

このような状況下、当社グループの経済活動にもエネルギーや物価、工事費などの高騰の影響が顕在化しております。当連結会計年度における業績は、売上高は27,986百万円(前期比7.8%増)、営業利益は631百万円(前期比40.4%減)、経常利益は1,019百万円(前期比39.5%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益や退職給付信託返還益、固定資産売却益などにより1,270百万円(前期比17.9%増)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

①産業用機能フィルター・コンベア事業

産業用機能フィルター・コンベア事業は以下の分野で構成されます。

製紙製品分野

紙を抄くために使われる網(ワイヤー)の製造・販売

その他産業用フィルター・コンベア分野

「ふるい分け」・「ろ過」・「搬送」用の工業用金網の製造・販売

 

 

製紙製品分野では、国内の紙の需要の回復が鈍く、海外においても欧米での景気後退など厳しい状況が継続しております。このような状況下、国内の売上高は前期と比べ減少いたしました。海外の売上高は円安の影響もあり前期と比べ増加いたしました。

その他産業用フィルター・コンベア分野では、苛性ソーダ生成用金網販売などが増加した一方で、海外向け原材料販売が減少したことにより売上高は前期と比べ減少いたしました。

結果、当セグメントの外部顧客への売上高は18,497百万円(前期比1.5%減)、営業利益は769百万円(前期比26.0%減)となりました

 

②電子部材・フォトマスク事業

電子部材・フォトマスク事業は以下の分野で構成されます。

エッチング加工製品分野

金属材料・複合フィルム材料をエッチング加工した製品の製造・販売

フォトマスク製品分野

半導体・ディスプレイ・プリント基板・MEMSなどを製造するときに使用されるツールで、パターニングの原版となるフォトマスクの製造・販売

 

 

電子部品業界は、世界経済の減速を受けて完成品(携帯電話・PC・タブレットなど)の需要が急激に減少している一方で、自動車業界や通信デバイス業界向けの需要は堅調に推移するなど、近年著しい成長を続けてきた市場に変化が起きております。

エッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野ともに、自動車業界や通信デバイス業界の需要が堅調であるため、売上高は前期と比べ増加いたしました。

結果、当セグメントの外部顧客への売上高は4,162百万円(前期比6.0%増)、営業利益は電力料高騰の影響や、フォトマスク製品分野において描画装置を新設して減価償却費負担が発生したことなど製造経費の増加により369百万円(前期比17.7%減)となりました。

 

 

③環境・水処理関連事業

環境・水処理関連事業は、プール並びにろ過装置の設計・販売、天然ガスパイプラインの腐食・ガス漏れを防ぐ絶縁継手の販売などを行っております。なお、2022年12月末をもちまして、高比重コンクリート(Gコン)事業からは撤退しております。

当連結会計年度においては、複数の大型案件の工事が進捗したため、当セグメントの外部顧客への売上高は4,291百万円(前期比93.8%増)となりました。売上が大幅に増加した一方で、プール大型案件の資材や運搬費、工事費などが高騰している影響が大きく、営業利益は26百万円(前期比58.3%減)となりました。

 

④不動産賃貸事業

不動産賃貸事業は、当社が保有する不動産を店舗・マンション・駐車場等として賃貸しております。

既存の賃貸物件が順調に稼働した結果、当セグメントの外部顧客への売上高は1,034百万円(前期比0.0%増)、営業利益は787百万円(前期比1.0%増)となりました。

 

(注)各セグメントの営業利益の合計額と連結業績における営業利益との差異1,321百万円(前期比3.9%増)は、主として各セグメントに配分していない全社費用であります。

 

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ728百万円増加し、21,161百万円となりました。これは主として受取手形、売掛金及び契約資産が513百万円、商品及び製品が254百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少し、21,661百万円となりました。これは主として、建設仮勘定が414百万円、機械装置及び運搬具が349百万円それぞれ増加した一方で、退職給付に係る資産が969百万円、投資有価証券が723百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べ655百万円減少し、42,823百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ595百万円減少し、13,685百万円となりました。これは主として、1年内返済予定の長期借入金が1,246百万円増加した一方で、短期借入金が1,415百万円、流動負債その他が281百万円、支払手形及び買掛金が152百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ492百万円減少し、5,981百万円となりました。これは主として、長期借入金が329百万円、繰延税金負債が154百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,087百万円減少し、19,667百万円となりました。

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ432百万円増加し、23,156百万円となりました。これは主として、利益剰余金が814百万円増加した一方で、自己株式も470百万円増加したことによるものであります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ288百万円減少し、4,375百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,907百万円、減価償却費1,544百万円、退職給付に係る資産の減少額997百万円などにより、1,785百万円の収入(前連結会計年度に比べ985百万円の収入増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入1,167百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出2,225百万円などにより513百万円の支出(前連結会計年度に比べ596百万円の支出減)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入1,750百万円があった一方、短期借入金の純減額1,420百万円、長期借入金の返済による支出868百万円などにより、1,639百万円の支出(前連結会計年度は380百万円の収入)となりました。

 

 

(3) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

産業用機能フィルター・コンベア事業

10,788,237

5.6

電子部材・フォトマスク事業

3,183,392

4.9

合計

13,971,630

5.4

 

(注)  金額は製造原価によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

産業用機能フィルター・
コンベア事業

18,699,892

△3.8

6,740,224

1.6

電子部材・フォトマスク事業

4,079,755

1.6

343,467

△19.5

環境・水処理関連事業

2,748,064

△22.5

2,230,958

△40.9

合計

25,527,712

△5.5

9,314,650

△14.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、電子部材・フォトマスク事業の受注残高が減少しております。これは主に、前期末受注残高に大口顧客の受注残高が含まれていたためであります。

3 当連結会計年度において、環境・水処理関連事業の受注高および受注残高が減少しております。これは主に、前期に受注したプールの大型案件の工事が進捗したことなどによります。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

産業用機能フィルター・コンベア事業

18,497,272

△1.5

電子部材・フォトマスク事業

4,162,905

6.0

環境・水処理関連事業

4,291,760

93.8

不動産賃貸事業

1,034,385

0.0

合計

27,986,324

7.8

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、環境・水処理関連事業の販売高が増加しております。これは主に、前期に受注したプールの大型案件の工事が進捗したことによります。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、2023年度~2025年度中期経営計画を策定しております。その初年度にあたる当連結会計年度の実績と目標の達成度は下記のとおりとなりました。

(百万円)

 

2025年度目標

2023年度実績

目標への進捗

売上高

29,290

27,986

△1,304

営業利益

1,275

631

△644

ROE

5%以上

5.6%

+0.6%

配当性向

30%以上

43.2%

達成

 

 

当連結会計年度は、産業用機能フィルター・コンベア事業の製紙製品分野における紙の国内需要減少の影響や、環境・水処理関連事業の複数のプール大型案件において、海外から輸入している資材の円安進行に伴うコスト増や、運搬費、工事費などの高騰の影響を受け、特に営業利益の目標への進捗が低い状況であります。現中期経営計画の経営重点課題にも挙げております「収益力の回復」に向け、特に製紙製品分野における具体的な施策の検討や、環境・水処理関連事業においてはプール市場のシェア拡大に向けた体制整備に重点的に取り組んでまいります。

なお、ROEにつきましては2025年度目標に近い水準ではありましたが、中長期的にはROE8%を目指して収益性を高めてまいります。そのために、自己資本比率の水準を中長期的には45~55%とすることが望ましいと考えており、この範囲内で収益力向上に資する設備投資とのバランスを見ながらも積極的に株主還元するために、配当方針を見直し、連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上を新たな指標といたしました。

 

(2) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき継続的にこれを行っております。

個々の項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。

 

(3) 資本の源泉及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金需要の主なものは、原材料等の仕入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用や設備投資等によるものであり、営業活動により獲得した資金及び金融機関からの借入によりまかなわれております。

資金の配分方針については、当社グループでは常に生産設備に係る設備投資が必要であり、その資金需要に備えた手許現金及び現金同等物を確保しております。設備投資につきまして2023年度は2,278百万円、2024年度は1,704百万円を見込んでおります。設備投資計画における重要な設備の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

株主還元につきましては、経営における重要課題の一つと考えており連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上を目標としております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。

資金の流動性につきましては、予測不能な事態が生じない限り、安定的な資金運用が可能であると認識しております。なお、資金の流動性保持の観点から主要取引銀行と特定融資枠契約等を締結しております。特定融資枠等の総額は13,407百万円であり、当連結会計年度末の借入実行残高は5,186百万円であります。

 

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費の総額は、422,468千円であり、研究の目的、主要課題、研究成果等は下記の通りであります。

(1) 産業用機能フィルター・コンベア事業

製紙製品分野では、顧客の付加価値増大をキーワードとして開発されたN-CRAFTシリーズ、N-LEAPシリーズ、およびSPUNPROシリーズが業績向上に大きく貢献しております。これらの結果を基に、今後も更なる高次元の新製品開発を推進してまいります。また、「環境配慮型製品」として駆動負荷低減ワイヤー及びリサイクル糸を使用したワイヤーの開発を進めており、一部の開発品が市場で評価され更なる改良を進めております。その他産業用フィルター・コンベア分野では、PFAS規制対策としてフッ素樹脂コーティングに代わる新たな表面処理技術を開発し、製麺用コンベヤーベルト等への適用を図っております。また、装置からの脱着を容易にすることで、迅速かつ効果的に洗浄できるコンベヤーベルトも開発しました(いずれも特許登録済み)。

当セグメントにおける研究開発費の金額は260,778千円であります。

(2) 電子部材・フォトマスク事業

フォトマスク事業分野では、半導体・MEMS他向けフォトマスクの高精細化を目的とした製造プロセス開発・販売を継続しております。また、これらの生産技術を応用した新規商材の開発も行っております。エッチング加工製品分野では、各種面状発熱体関連部材、銅細線メッシュおよび透明導電部材を用いた5Gアンテナ・車載用センサー関連部材等の加工技術を高め、幅広い用途への部材供給を行い、多様化する情報化社会への適応を目指しております。また、各種個別半導体や電子部品の前工程・後工程を支援する製品開発を進め、トータルソリューションの提供による顧客満足度向上を目指した活動を行っております。

当セグメントにおける研究開発費の金額は55,573千円であります。

(3) 環境・水処理関連事業

環境・水処理関連事業では、プール運営管理における使いやすさとコストを追求した次世代プールシステム「スマートアクア」の手動型の開発に取り組んでおり、自動型と合わせて、顧客の選択肢を増やすと共に、イニシャル・ランニングコストの低減を目指してまいります。

当セグメントにおける研究開発費の金額は283千円であります。

(4) 全社(共通)

総合研究開発室は、再生可能エネルギーを活用して水素を生成・貯蔵し、災害時にも利用可能な電源や飲料水を供給する自立型水素発電・飲料水供給システムHydroX®シリーズの開発・販売活動に注力しております。また、各事業の事業領域の拡大および新規市場開拓を行うべく、既存技術を応用した製品の研究開発を推進しております。

当セグメントにおける研究開発費の金額は105,833千円であります。