第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社は、「ものづくりの世界の発展に貢献する」という会社の使命のもと、企業価値の向上に努めることを最重要課題と考えております。そして、長期ビジョンとして、「成長企業への挑戦、夢をかなえるものづくり企業へ」を掲げ、業績目標 売上高4,000億円、営業利益600億円の実現に向けて経営基盤の強化にとり組んでおります。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、長期ビジョンの実現を目指し、そのマイルストーンとして、海外事業の拡大により、海外売

上高比率60%、営業利益率10%を掲げ、海外売上高比率と営業利益率を経営指標としております。

 

(3) 経営環境および対処すべき課題

 当社グループをとり巻く事業環境は、カーボンニュートラルに向けて、当社の主要な事業領域である自動車分野においては、本格的なEV化に向けたとり組みや事業再編が加速しております。さらに、産業機械分野を含め、ものづくりのDX・AIによる商品開発や生産性向上、SDGsをはじめとした社会・環境問題への対応の要求などが高まっております。

 当社グループといたしましては、このような産業構造の大変革に対し、ロボットをはじめ多彩な事業・技術・生産ノウハウを有する独自性を活かし、EV・産業機械分野を中心とする事業構造への転換に向けて、新しいビジネスチャンスを創出してまいります。そして、とくに海外市場に向けて、営業・サービス、製造・調達、研究開発の各面で体質を強化して、市場の動き・ニーズを捉え、全部門の技術を連携・結集した競争力のある商品・サービスを拡販し、また、自動化・合理化により生産性を向上させていくことで、業績の一層の向上に努めてまいります。そして、事業活動を通して、環境・社会・ガバナンスなどの課題にとり組み、持続的な企業成長を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 当社は、会社の使命として「ものづくりの世界の発展に貢献する」を掲げており、グローバルで事業を展開する中、環境負荷の削減、社会的課題の解決、経済活動を通じた社会貢献等、サステナビリティに関するとり組みを重要な経営課題と位置付けております。

 このとり組みの推進・進捗に向けて、当社は、代表取締役社長執行役員(以下、社長)を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティに関する課題や重要施策などを審議し、活動を定期的に取締役会へ報告しております。

 

[気候変動およびTCFDへの対応]

 当社にとって気候変動問題は、環境・社会および企業活動に重大な影響を及ぼす経営上の重要課題の一つとして捉えております。

 これを踏まえ、当社では気候変動へのとり組みを推進するため、TCFDフレームワークに従い、情報開示を行います。当社事業活動への影響(リスク・機会)を特定・評価したうえで、経営戦略に反映するとともに、その内容を対外的に発信・開示することで、今後のとり組みのさらなる向上を図ります。

 

<TCFDフレームワークに基づく情報開示>

(1) ガバナンス

 当社では、気候変動を含むサステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)課題について、具体的な対応と充実した情報開示を進めるため、2023年11月に「サステナビリティ委員会」を発足いたしました。同委員会は、社長が委員長を、経営企画部が事務局を務めており、原則年に2回開催しております。また、とり組みをより効果的に全社で進めるために、TQC・TPM推進本部、財務部等が参加しております。

 同委員会で審議・検討したとり組み内容やその進捗は、定期的に取締役会へ報告し、その対応方針の最終的な意思決定が行われます。承認された方針・とり組みの実行にあたっては、サステナビリティ委員会が各部門および関係会社の進捗状況を把握したうえで、監督する体制となっております。

 

■サステナビリティ推進体制図

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(2) 戦略

 気候変動対策の立案においては、事業活動全体における気候変動関連のリスク・機会の把握が重要であると認識しております。そのため当社では、異常気象などによって生じる物理リスクと脱炭素社会への移行リスクの2つの側面に沿って、当社のバリューチェーン全体におけるリスク・機会の特定および財務的影響の評価を行いました。具体的なプロセスでは、産業革命時から比較し、2100年時点に気温上昇が1.5℃以下に抑えられる「1.5℃シナリオ」と成り行きで平均気温が4℃上昇する「4℃シナリオ」の複数のシナリオを用いて、当社グループ会社(全事業)を対象に想定されるリスク・機会の分析を行っています。また、リスク・機会が生じる範囲によっては、製造段階、資材調達や製品輸送段階に注目しています。リスク・機会の分析では、短期~長期の時間軸を考慮し、各項目における影響度合いを評価しております。

 今回は、国内外の全事業を対象とし、定性的に気候変動関連リスク・機会の影響を分析しました。今後は、定量的な分析およびリスク緩和や機会の実現に向けた対応策の検討も行う予定です。

■シナリオ群の定義

項目

1.5℃(2℃以下)シナリオ

4℃シナリオ

参照シナリオ

(1.5℃シナリオ)

IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario

(2℃シナリオ)

IEA Sustainable Development Scenario、

IPCC RCP2.6

(4℃シナリオ)

IEA Stated Policies Scenario、IPCC RCP8.5

想定される

世界観

2100年時において、産業革命時期と比較して1.5℃未満の平均気温上昇が想定されるシナリオ。これに対応するため、カーボンニュートラルの実現を目指し、現行以上に厳格な政策や法規制等が導入される。

2100年時において、産業革命時期と比較して、3.2℃~5.4℃(約4℃)の平均気温上昇が想定されるシナリオ。気候変動を緩和する政策や法規制の整備が進まない成り行きの世界観。平均気温の上昇に伴い、異常気象が激甚化する。

 

■想定されたリスク・機会一覧

分類

項目

内容詳細

時間軸

影響度

4℃

1.5℃

平均気温の
上昇

リスク

▪ オフィスや工場での冷房コストが上昇する。

▪ 労働環境が悪化し、熱中症となる従業員が増え、作業に障害が発生する。

短期

~長期

機会

▪ 製造現場における自動化のニーズが高まり、人力の代替である産業用ロボットの需要が増加する。

異常気象の

激甚化

(台風、豪雨、

土砂、高潮等)

リスク

▪ 気象災害の激甚化による拠点の被災や、サプライチェーンの寸断による損害や営業停止による損失が発生する。また、災害対策・復旧費用が発生する。

短期

~長期

低炭素技術・
次世代技術の

進展

リスク

▪ EVや再エネ技術の普及に対して、低炭素技術に適応できる高性能な材料や部品の開発・供給が必要となる。また、ガソリン車の需要が減少することに伴い、既存事業が縮小する可能性が高くなる。上記の状況への対応が不足した場合、売上が減少する。

▪ 次世代技術(ITなど、副次的に気候変動に対応するもの)に対応できる高性能な材料や部品の供給が遅れてしまう場合には、売上が減少する。

短期

~長期

機会

▪ 低炭素技術の急速な発展に適応できる材料・部品・加工設備等の開発、またEVの普及に向けてのAI・自動化による電気・電子部品の組付け増加で、ロボットや省エネ型商品へのニーズが一層高まり、売上が増加する。

原材料コストの

変化

リスク

▪ 製造方法の転換により、製造の原材料となる鉄鋼・鋳物の原価が高まり、製造コストが増加する。

中期

~長期

重要商品の

需要変化

リスク

▪ ガソリン車からEV車への変換や省エネ・再エネの製造機器への切り替えなどの市場傾向に対応するためには、従来の化石燃料に依存する製品の需要が減少し、適応できる材料や部品、設備の開発が必要となる。これらへの対応不足や遅れが生じると、既存事業の縮小により売上が減少する。

短期

~長期

機会

▪ 低炭素技術に適応するため、電力や燃料使用量を削減できる材料、部品および加工設備の開発に注力している。またEV製造向けやAI・自動化に伴う電気・電子部品の組付け増加に伴うロボットや省エネ型商品へのニーズが一層高まり、売上が増加する。

エネルギー
コストの変化

リスク

▪ 脱炭素化が進むことにより、再生可能エネルギーの需要が増加、発電所における設備投資等のコストが電力価格に転嫁され、操業コストが増加する。

短期

~長期

顧客行動変化

リスク

▪ 顧客の環境に配慮した商品へのニーズに応えられなかった場合、売上が減少する。

中期

~長期

機会

▪ 顧客のニーズに合わせた、環境に配慮した製品の開発によって売上が増加する。

投資家の

評判変化

リスク

▪ 環境配慮・環境情報開示が不十分な場合、調達資金の減少および資金調達コストが増加する。

中期

~長期

機会

▪ 環境に配慮したとり組みや環境レポート等環境情報開示を積極的に行うことで投資家からの評価がさらに向上し、資金調達等が円滑に進む。

炭素税の導入

リスク

▪ 事業活動に伴うGHG排出量に対して炭素税が課され、操業コストが増加する。

中期

~長期

(注)時間軸 短期:0~3年、中期:4~10年、長期:11年~

■リスク・機会の定性分析結果

 物理リスクについては、4℃シナリオおよび1.5℃シナリオのどちらにおいても、異常気象の激甚化による営業停止とサプライチェーンの寸断が重大な財務損失となる可能性があると分析しました。一方で、平均気温の上昇による労働環境の悪化から、製造現場における省人化・自動化ニーズが高まり、当社の産業用ロボットの需要が増加すると判断しております。さらに、1.5℃シナリオでは、省エネ政策に対応するために省エネ油圧ユニットをはじめとした当社の省エネ商品の需要拡大が見込まれます。

 炭素税の導入が想定される1.5℃シナリオにおいて、当社のGHG排出量(Scope1+2)の排出量によっては重大な操業コストが発生する可能性があります。また、当社の事業は鉄鋼や鋳物に大きく依存しているため、脱炭素社会への移行に伴う、再生可能エネルギー電力への切り替えや金属の精錬方法の転換などにより、鉄鋼価格が大きく変わると判断しております。

 また、脱炭素社会を目指した日進月歩の技術革新が進む中、EV車やAIをはじめとする次世代技術の進展が特に注目を浴びております。現状と将来の傾向を考慮したうえで、当社の大きな顧客群である自動車企業に対し、適応できる材料・部品・設備の開発は喫緊の課題であると認識しております。

 当社では、気候変動課題への対策として、自動化や省エネに対応する商品開発や再生可能エネルギー電力の利用など、積極的にとり組んでおります。また、サステナビリティ課題についてステークホルダーと誠実に対話できるように、環境レポートと合わせ、TCFDの情報開示を通じて、とり組みの実施状況および排出量の実績をさらに透明化していきます。

 

(3) リスク管理

 当社では、サステナビリティ委員会において気候変動関連リスクを識別・評価・管理しています。リスクの評価・分析にあたっては、シナリオ分析を通じて各部署の気候変動関連のリスクを抽出・特定し、財務的な影響度を「大」「中」「小」の3段階で評価するとともに、重要事項を定期的に取締役会に報告することとしております。

 なお、全社のリスクを統括しているリスク管理委員会はサステナビリティ委員会と連携し、気候変動を含むサステナビリティ関連リスクを把握したうえで、リスク管理委員会にて全社のリスクの重要度を総合的に評価し、優先的なとり組み方針を策定することとしております。また、リスク管理委員会から優先的にとり組む内容や進捗状況を取締役会に都度報告することとしております。取締役会は報告された内容に基づき、サステナビリティ委員会、リスク管理委員会および各部門・関係会社の業務を監督し、効率性・適正性を加味して、とり組みの見直しを適宜指示することとしております。

 

■リスク管理体制図

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(4) 指標と目標

 日本政府が掲げた「2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する」目標を受け、経済産業省は「産業部門」において「2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で38%削減する」目標を設定しております。

 当社では、GHGプロトコルに基づき、当社事業活動によるGHG排出量を算定し、把握したうえで、経済産業省の削減方針に準拠して、気候変動を緩和・適応するとり組みを実施し始めております。

 なお当社では、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001認証を取得しております。また、グローバルな事業展開をさらに加速していくため、積極的な情報開示を含め、低炭素技術への対応および、再生可能エネルギーへの切り替えが必要と考えております。

[人的資本]

(1) 戦略

① 人的資本への考え方

 当社グループは、企業理念である「人材 企業は人なり」のもと、「企業と人は一体、人材は価値を生み出す源泉」であると考えております。

 人材育成の考え方として、社員一人ひとりが意欲をもち、各階層に求められる役割を発揮して人材価値を向上することを目指しております。

 そのため、社員が働きがいのある環境のもとで役割を発揮して、会社の成長を牽引する人材育成のとり組みを展開しております。

 

② 人材育成(採用を含む)の方針およびとり組み

 人材育成は、(a) 人材教育(座学:知識)と(b) ローテーション(実学:経験)の2本柱で行うことを基本とし、必要な知識と経験を備え、各階層に求められる役割を発揮するよう全員のレベルアップを図っております。

(a) 人材教育(座学)

 人材教育は「階層別教育」と「専門教育」を基本に体系的な教育を実施しております。基礎教育を徹底するとともに、外部の専門家等の知見を活用した応用・実践教育を展開しております。

(ⅰ) 階層別教育

 基礎教育と職場教育の連携により、①若手基礎研修(実践力のベース、ものの見方、考え方の修得)、②係長研修(指導・実践力)、③課長研修(管理・マネジメント力)、④ジェネラルマネージャー(以下、GM)育成研修(経営視点・戦略立案力)を実施しております。

 若手社員は、海外事業の拡大を見据えて、グローバルマインドの醸成、英語力の向上を目的に、2012年から大卒新入社員全員を対象に入社後2か月間の海外語学留学を行っております。

 あわせて、製造現場の幹部候補生を早期に育成するため、2014年から入社5年目以降の社員を対象に北陸職業能力開発大学校へ2年間派遣し、現場での管理・改善技術を習得し、職場での実践に活かしております。

(ⅱ) 専門教育

 DX基礎教育をはじめ、商品開発、生産技術、生産管理などメーカーの基幹分野で様々な実践的研修を行い、応用・実践力の向上を図っております。

 DX人材の育成については、2018年から高卒社員を選抜して、入社後すぐにソフト・情報系の専門学校への社会人留学を通じて、情報系の資格取得を進め、卒業後は各部門でのシステム系業務の中核人材として活躍しております。

 また、営業員の商品知識、技術的な知識、スキル向上のため、事業部ごとに社内の販売員資格制度を整備し、営業員のサポートと自立的な戦力化を進めております。

 また、自己啓発や知識、スキルの向上の支援として、公的資格取得者への報奨金、通信教育の提供・費用の補助を行っております。

 

(b) ローテーション(実学)

 当社は、経営幹部であるGMの役割を、「自ら目標を立て、考え、行動し、成果を刈り取る」、「あらゆる課題を解決する」と定義し、とくにローテーションによりGMに必須の職種を経験させることで、GM候補者の育成を目指しております。

 各部門において技術系・事務系それぞれの基本ローテーションパターンを策定し、一人ひとりに適した成長機会を提供し、レベルアップを図ることで次世代のGM候補者の輩出を目指しております。

 ローテーションを進めるにあたっては、人事情報システムを構築し、現場の情報とともに、一人ひとりの経験値や適性などを客観的・公正にデータ化し、若手の登用をはじめ適材適所による人材投入に活用しております。

 

(c) 採用

 新卒採用は、安定的・継続的に全国から多様な人材を採用することを基本としております。通年採用は、専門性とキャリアをベースに、即戦力となる人材を必要な分野や職種へ投入しております。

 事業分野別では、海外事業の拡大を図るため、海外で活躍できる素養を持った人材を採用するとともに、新卒採用の技術系の選考においては、応募者の専攻や志望を活かし、ミスマッチのない選考を行うため、全社一括採用を見直し事業部別の採用を実施しております。

 あわせて、女性社員の計画的な採用、社会的責務に応える障害者雇用にとり組んでおります。

 

③ 働きがいのある環境づくりに関する方針およびとり組み

(a) 働きがいのある環境づくり

 人材育成の効果をあげるため、「やりがい」として、目標達成、成果の発揮に向けたモチベーションや人事処遇向上に努めております。

 あわせて、「働きやすさ」として、コミュニケーションを中心に職場環境の改善にとり組み、労働時間の短縮、ワークライフバランスの推進などライフスタイルにあわせた労働環境の整備を進めております。

(ⅰ) 人事処遇

 管理職は、組織における役割・職責を踏まえ、上司と業績目標をすりあわせ、その達成度合いとプロセスを客観的・数値的に評価しております。この実績の積み重ねを通じて職場として各人の能力を評価し、資格格付けと役職位への任用を行っております。成果主義の考えに立ち、上位資格への昇格による昇給を基本としております。

 一般社員は、職務遂行能力にもとづく資格格付けをベースとした処遇体系により、各人の能力発揮を促しております。

 2014年以降、従業員の生活面への配慮と人材への投資を基本的な考え方としてベースアップを行い、各階層の役割・職責に応じた賃金体系の構築を進めております。

(ⅱ) コミュニケーション

 大卒新入社員については、各職場で個人別の育成計画と年度ごとの到達目標を設定し、日常の仕事のなかで上司から部下へのOJT教育を行っています。あわせて、入社3年目まで毎年人事部が個人面談を行い、また、5年目まで毎年、人事部と職場のグループ単位で昼食会を行うことで、一人ひとりの会社生活の充実と働く意欲の向上を図っております。

(ⅲ) 労働時間

 職場の状況に応じ、フレックスタイム制度の適用職場を順次拡大し、時差勤務、勤務間インターバル制度を導入しております。

 とくに、管理職にはコアタイムのない「フリータイム制度」を適用し、業務の繁閑に応じて就業時間を調整し、効率的な時間活用ができるようにしております。

(ⅳ) 就業・生活環境整備(福利厚生面)

 仕事と家庭を両立し、職場で十分能力を発揮できるよう、会社として富山市の認可を受けた「あじさい保育園」を運営しております。地域貢献の一環として地元の児童も受け入れており、英語教育にも力を入れております。

 

(b) 労働安全衛生

 「安全と健康は全てに優先する」を基本理念に、すべての人が安全・安心で明るく活気のある職場づくりに努めております。

 全社の安全衛生方針および計画は、中央安全衛生委員会で毎年策定し、毎月事業所単位で、安全衛生委員会を開催しております。

 また、全社員を対象に心と身体の健康についての情報提供、メンタルヘルス対策にとり組んでおります。

(ⅰ) 労働災害防止対策

 事故のない安全な職場を目指し、グループをあげて設備の安全対策、リスクアセスメント、KY活動など自主的な安全活動により、一人ひとりの危険に対する感受性を高めて労働災害防止にとり組んでおります。

 また、安全道場を開設し、安全の基本や危険を疑似体感するVR教育を行い、体験を通じた対策を強化しております。

(ⅱ) 健康保持促進

 企業内病院として不二越病院を運営し、社員や地域住民に対して医療サービスを提供しております。病院内の健診センターには相談窓口を設置し、産業医や保健師が社員の心身の健康相談に対応しております。

(ⅲ) メンタルヘルス対策

 ラインケア・セルフケアの充実により、社員の心の健康の維持・向上にとり組んでおります。

 ラインケアでは、管理者に対してメンタルヘルス教育を実施し、セルフケアでは、メンタルヘルスのセルフチェック項目や外部相談窓口の情報を社員全員に提供し、ストレスへの気付き、予防・対処を促しております。

 職場ごとのメンタルヘルス推進者の設置に加え、休職者の復帰をサポートし、復帰後も定期的に産業医と人事担当者によるフォロー面談を行い、再発防止に努めております。

 

(2) 指標と目標

 上記方針およびとり組みに関する主な指標と目標は以下のとおりであります。

 

■人材育成

 

2021年11月期実績

2022年11月期実績

2023年11月期実績

社員一人あたりの研修費用

(過年度および2023年度実績)

23,833円/年

25,819円/年

29,180円/年

 

 

2023年11月期実績

目標

海外留学カバー率

(学卒新入社員の海外語学留学)

100%(68名)

100%(全員)

 

■働きがいのある環境づくり

 

2023年11月実績

目標

女性管理職比率

4.8%

5.0%(2025年11月迄)

男性育児休業取得率

31.3%

30.0%以上を継続(2024年11月迄)

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当社は、「リスク管理委員会」において、「リスク管理規程」などに基づき、環境、安全、災害、情報、セキュリティなどのリスクについて、定期的あるいは随時把握し、報告される体制を整備し、全社横断的にリスクを回避・軽減するための措置を講じております。

 

(1) 経済情勢・需要変動について

 当社グループは、自動車・自動車関連、一般産業機械、電機・電子等の分野において事業を展開しており、また、国内のほか、米州、欧州、アジア市場で事業活動を行っております。このため、当社グループの経営成績、財政状態およびキャッシュ・フローは、各製品を製造・販売している特定の国、地域の経済状況の変動や取引先が属する産業の景気変動の影響を受ける可能性があります。

とくに、自動車・自動車関連産業向けの売上高が約5割を占めており、その需要動向やEV化の進展が当社グループの業績および財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、顧客の自動車生産計画や、中長期的なEV化の進展見通しなどに基づき、経営資源の効率的な投入を行い、また、需要の裾野が広い産業機械分野、電機・電子分野への新商品開発・販売拡大などを進めております。また、生産体制の整備、サプライチェーンの確保、手元流動性の確保などを進めております。

 

(2) 海外事業展開について

 当社グループは、国内のほか、米州、欧州、アジア地域など、グローバルな事業展開を行っており、世界各地に販売会社と生産会社を設立しております。連結売上高に占める海外売上高の割合は約5割となっており、世界市場での事業拡大に向けた営業・生産体制の拡充を進めております。各国および地域の経済環境の動向や法規制等の予期せぬ変化が、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 これらに対し、特定の地域に偏重することなく、バランスのとれた事業展開に努め、また、各地との緊密な連携をとることで、遅滞なく危険情報を取得し対処しております。

 

(3) 外的要因が財務状況に与える影響について

 海外子会社の現地通貨建ての経営成績及び財務状態は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、現地通貨における価値が変わらなくとも、当社グループの連結財務諸表は為替レートの変動による影響を受けます。また、外貨建ての商取引により、為替レートの変動が当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、金利の上昇により支払利息が増加する可能性があります。

当社グループは、為替変動や金利変動の影響を軽減するため、為替予約、現地生産・調達等の施策を含めてリスクヘッジを進め、また、有利子負債の削減を中心に財務体質の強化に努めております。

 

(4) 価格競争について

 当社グループの主力需要先である自動車・自動車関連産業は競争が激しく、同業界からの価格引き下げ要請への相応の対応が不可避であります。また、中国をはじめとする新興国製品の台頭により、一部商品では市場価格の下落が生じております。一方で、原材料の一部に価格の上昇がみられ、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、当社は、VA・VE活動の強化や基幹部品の内製化などにとり組むとともに、原材料の購入量ならびに在庫量の最適化や、設計・部品の標準化による調達コストの低減、生産性の向上など、原価低減活動に加え、取引先への価格還流を継続的に実施しております。

 

(5) 原材料や部品の調達について

 当社グループは、原材料および部品を複数の供給元から調達し、取引基本契約に基づき安定的な取引を行っております。しかしながら、市況の変化による原材料および部品の価格高騰や品不足、供給元の生産能力不足や品質不良、または火災や地震等の自然災害、あるいは倒産その他の理由により、原材料および部品の調達が困難となり、取引先への製品供給に支障をきたすリスクがあります。かかる場合には、当社グループの業績および財務状況は影響を受ける可能性があります。
 これらに対し、グローバルで新規調達先の開拓・育成、最適な調達先の選定、調達先の分散化などを継続的に実施し、サプライチェーンの強化に努めております。

 

(6)研究開発について

当社グループは、事業基盤の一層の拡充を目的として、新商品開発に向けた研究開発活動を進めております。これらの研究開発は、多額の費用と期間を要するため、研究開発が計画どおり進まず商品化の機会を喪失したり、市場ニーズとのアンマッチから市場投入に至らなかったり、商品化しても十分な成果が得られなかったりした場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、多様な市場分野において、顧客との緊密な関係性の構築によるニーズの発掘やシーズ技術を活かした独自の商品開発による差別化、大学・研究機関などとの積極的な連携によりリスクの低減に努めております。

 

(7) 品質問題について

当社グループは、世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造しております。しかしながら当社グループの製品が予期せぬ不具合を起こした場合には、多額の費用発生や社会的な信用低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、品質保証を最重要課題の一つとして位置付け、商品開発から設計・製造・サービスに至るまでの品質向上を目指したプロセス管理の強化など、グループをあげて品質管理の徹底を図っております。

 

(8) 環境・安全対策について

 当社グループでは、環境負荷の低減に努めており、これまで重大な環境問題が発生したことはありません。しかしながら、将来において気候変動に起因する災害など環境問題が発生した場合には、多額の対策費用が発生し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会に向けた環境問題への対応については、その課題解決への取り組みが成果につながれば、当社グループの業績に好影響を及ぼす可能性がある一方、対応を誤れば将来にわたり悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらに対し、カーボンニュートラルに向けて、環境に配慮した新商品の市場投入を進めるとともに、生産工程において、温室効果ガス、廃棄物、環境負荷物質などの発生を極力抑えるよう、設計・生産の各段階で対策を講じております。なお、製造設備等の主要施設については、火災等により生産活動や製品供給に支障をきたすことがないよう、災害発生防止対策に努め、また、ハードおよびソフト面で安全対策の基本方針を定め、労働災害の発生防止も進めております。

 しかしながら、完全なリスク回避は困難であり、重大な災害等が発生した場合や、カーボンニュートラルへの対応が不十分と評価された場合には取引の継続にも関わる可能性があり、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)災害・テロについて

当社グループおよび当社グループ取引先の事業拠点が、地震、洪水などの天災、火災や、疾病発生などの災害、またはテロ攻撃や政情悪化に伴う物的・人的被害が生じる可能性があります。当社グループではリスク管理体制を構築し、被害を最小化するための事前対策・初動措置および事業継続に向けた対策を実施しておりますが、完全なリスク回避は困難であり、結果として、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染症は収束に向かっておりますが、一方で、ウクライナ情勢の長期化や中東紛争などにより地政学的リスクが高まった場合には、今後、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報セキュリティについて

当社グループは、業務を通じて入手した取引先の機密情報や個人情報等を多数保有しております。これらの情報を保護するため、管理体制の整備や教育、情報セキュリティシステムの構築などを行い、情報漏えいの防止に努めております。しかしながら、コンピュータウィルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により機密情報が消失、もしくは社外に漏洩した場合には、当社グループの業績や信用・評判などに影響を及ぼす可能性があります。

  (11) 知的財産権について

 当社グループはこれまでの製品開発において蓄積してきた技術を知的財産権として、権利保護の徹底と経営資源としての活用をはかっております。しかし、特定の国および地域においては、知的財産権の保護が必ずしも十分でないため、当社グループの知的財産権を侵害して類似した製品を製造する行為を効果的に排除できない場合など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性を完全に排除できるものではありません。

また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することのないよう、細心の注意を払っておりますが、当

社グループが第三者から知的財産権の侵害を主張された場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (12) 業務・事業提携について

 当社グループは、海外企業を含めた複数の会社との業務提携や、合弁事業またはM&A等の資本提携を行い、相互の経営資源の有効活用をはかるとともに、技術開発、生産活動、営業活動等において提携効果の創出にとり組んでいます。しかしながら、提携先の経営方針・戦略の変更、財務状況の悪化等により期待した効果を実現できない場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 人材確保について

 当社グループは、競争力を維持するため、国内外の優秀で多様な人材を継続的に確保・採用し、その教育と

ローテーションによりリーダーの育成に努めておりますが、少子高齢化を背景として有能な人材確保に向けた競争は高まっており、当社グループが人材を確保・育成できない場合には、当社グループの中長期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) コンプライアンスについて

当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、各地域の法令、規制の適用を受けておりますので、コンプライアンス体制の強化が求められています。このため、「不二越企業市民ルール」をグループの行動規範として位置づけて社内教育を実施するなど、コンプライアンス意識の向上をはかっております。また、内部通報制度を整備し、コンプライアンスリスクの未然防止に努めております。しかしながら、コンプライアンスリスクを完全に回避することは困難であり、重大な法令違反等が生じた場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループをとり巻く環境は、自動車生産の回復などを受けて経済活動の正常化が進み、日本・米州をはじめとする先進国経済の持ち直しが続くなど、総じて緩やかな回復が継続しました。一方で、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料・エネルギー価格の高止まりに加え、不動産市場の低迷を受けた中国経済の減速や、中東情勢の緊迫化、欧米での金融引き締めに伴う影響など、先行き不透明な状況が継続しております。

このような状況のもと、当社グループは、中長期的な脱炭素・EV化をはじめとする産業構造の大変革を見据え、工具、工作機械、ロボット、ベアリング、油圧機器、そして特殊鋼事業をあわせ持つ総合機械メーカーとしての特長を活かし、ユーザーのものづくりに寄与する新商品の開発や技術提案などにより、受注・売上の拡大にとり組んでおります。また、利益の改善に向けて、需要の変化に対応する世界の工場再編、合理化、内製拡大など、事業全般の構造改革を推進しております。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、建設機械分野の一部で生産調整の影響などがありましたが、自動車の生産回復、産業機械・市販分野の堅調な需要と、設備需要の回復を受け、2,654億64百万円(前期比2.9%増)、このうち、国内売上高は1,253億92百万円(同3.1%増)、海外売上高は1,400億71百万円(同2.7%増)となりました。

利益面につきましては、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や、生産ラインの自動化・合理化、調達コストダウンにとり組み、為替も円安で推移しましたが、前期から継続する原材料・エネルギー価格の高騰、固定費の増加などが大きく影響し、営業利益は118億73百万円(同30.3%減)、経常利益は110億28百万円(同35.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は64億69百万円(同47.1%減)となりました。

 

セグメントの経営成績につきましては、次のとおりであります。

機械工具事業では、工作機械需要の戻りなどにより、売上高は854億53百万円(前期比3.4%増)となりました。一方、営業利益は、原材料・電力価格の高騰や固定費の増加により、64億2百万円(同19.7%減)となりました。

部品事業では、建設機械分野の生産調整の影響で中国・欧州で油圧機器の需要が減少しましたが、自動車の生産回復に加え、産業機械・市販分野でベアリングの需要が堅調に推移し、売上高は1,635億8百万円(同2.8%増)となりました。一方、営業利益は、原材料・電力価格の高騰や固定費の増加により、45億2百万円(同41.2%減)となりました。

その他の事業では、中国向け特殊鋼の需要鈍化がありましたが、販売価格の引き上げなどにより、売上高は165億1百万円(同0.5%増)となりました。一方、営業利益は、一部レアメタルやエネルギー価格の高騰などにより、9億72百万円(同30.4%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資活動による支出が営業活動および財務活動による収入を上回った結果、前連結会計年度末に比べ19億29百万円減少し、328億24百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度に比べ8億18百万円増加し、120億30百万円となりました。これは、主として、税金等調整前当期純利益109億99百万円、減価償却費194億73百万円などにより資金が増加した一方で、仕入債務の減少111億59百万円、法人税等の支払額71億59百万円などにより資金が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ30億56百万円減少し、177億74百万円となりました。これは、主として、海外における工具、ベアリングの生産体制の構築、日本における工具、ベアリング、油圧機器の生産能力増強に伴う有形固定資産の取得ならびに合理化投資に伴う有形固定資産の取得による支出163億87百万円、無形固定資産の取得による支出12億94百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動により取得した資金は、前連結会計年度に比べ10億11百万円増加し、31億25百万円となりました。これは、主として、借入金の純増額31億34百万円、コマーシャル・ペーパーの純増額50億円などにより資金が増加した一方で、配当金の支払額29億95百万円などにより資金が減少したことによるものであります。

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

機械工具

66,317

9.3

部品

145,333

△5.7

その他

18,685

2.7

合計

230,336

△1.1

 (注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

② 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

機械工具

81,437

△7.0

22,317

△19.9

部品

162,664

0.1

28,815

1.6

その他

15,908

△6.6

3,486

△12.5

合計

260,010

△2.7

54,619

△9.3

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

機械工具

85,453

3.4

部品

163,508

2.8

その他

16,501

0.5

合計

265,464

2.9

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主要な相手先別の販売実績および販売実績の総額に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

岡谷鋼機株式会社

30,431

11.8

30,007

11.3

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの財政状態および経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年2月27日)現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における当社グループの経営成績の分析は次のとおりであります。

1) 売上高

 当連結会計年度の売上高は、2,654億64百万円と前連結会計年度と比べ2.9%の増収となりました。このうち、国内売上高は、1,253億92百万円と同3.1%の増収となりました。これは、自動車の生産回復、産業機械・市販分野の堅調な需要と設備需要の回復を受け、ベアリング・油圧機器などの部品と工作機械を中心に売上高が増加したためであります。一方、海外売上高は、1,400億71百万円と同2.7%の増収となりました。これは、自動車・産業機械・市販分野向けを中心とした工具・工作機械・ベアリングの拡販に加え、特殊鋼の販売価格の引き上げなどにより、売上高が増加したためであります。

 

 なお、期初に公表した売上高の年度計画2,600億円に対しては、達成率102.1%となりました。これは、建設機械分野の一部で生産調整の影響がありましたが、自動車の生産回復、産業機械・市販分野の堅調な需要と設備需要の回復を受け、売上高が増加したことによります。一方、海外売上高比率は、中国での油圧機器・特殊鋼の需要鈍化を受け、期初計画の53.1%に比べ0.3ポイント下回り、52.8%となりました。

 

2) 売上総利益

 当連結会計年度の売上総利益は558億36百万円と、前期から継続する原材料・エネルギー価格高騰や人件費など固定費の増加により、前連結会計年度に比べ7.5%の減益となりました。

 

3) 販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、439億62百万円となり、前連結会計年度に比べ5億96百万円増加しました。これ

は、主に人件費が増加した結果であります。また、売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は16.6%と前連結会計年度に比べて0.2ポイント低下しました。

 

4) 営業損益

 当連結会計年度の営業利益は118億73百万円と前連結会計年度に比べ30.3%の減益となりました。また、売上高営業利益率は4.5%となり、前連結会計年度に比べて2.1ポイント低下しました。

 なお、期初に公表した営業利益の年度計画175億円に対しては、達成率67.8%と未達となりました。これは、原材料・エネルギー価格の高騰や人件費など固定費の増加によるものであります。今後は、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁に加え、より一層のコストダウンの推進と、合理化、生産性改善のとり組みを進めてまいります。

 

5) 営業外損益

 営業外損益(費用)は、8億44百万円の費用(純額)となり、前連結会計年度の75百万円の利益(純額)から9億20百万円費用が増加しました。これは、主として、為替差益が9億63百万円減少したことによるものであります。

 

6) 経常損益

 当連結会計年度の経常利益は110億28百万円と前連結会計年度に比べ35.5%の減益となりました。

 

7) 親会社株主に帰属する当期純損益

 特別利益は、固定資産売却益14百万円、投資有価証券売却益9百万円、関係会社株式売却益22百万円の計上で46百万円となり、前連結会計年度に比べて3億4百万円減少しました。特別損失は、固定資産売却損1百万円、固定資産除却損59百万円、投資有価証券評価損14百万円の計上で75百万円となり、前連結会計年度に比べ75百万円減少しました。

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、44億93百万円となり、前連結会計年度に比べ6億54百万円減少しました。

 これらの結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は64億69百万円となり、前連結会計年度に比べ57億68百万円の減益となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性についての分析

1) 財政状態の状況

 当連結会計年度末の資産合計は、3,703億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ128億66百万円増加しました。主として、棚卸資産が32億10百万円、有形固定資産が41億11百万円、投資有価証券が57億66百万円増加しております。

 負債合計は、2,008億4百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億86百万円減少しました。主として、支払手形及び買掛金が58億73百万円、電子記録債務が40億72百万円減少し、コマーシャル・ペーパーが50億円、借入金が49億41百万円増加しております。
 純資産合計は、1,695億20百万円となり、前連結会計年度末に比べ131億52百万円増加しました。主として、利益剰余金が38億35百万円、その他有価証券評価差額金が39億30百万円、為替換算調整勘定が65億16百万円増加しております。

 

2) キャッシュ・フローの状況

「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

3) 資金需要

 当社グループの資金需要は、仕入、生産及び販売活動に必要な運転資金、販売費及び一般管理費等の営業活動費用、研究開発費によるもののほか、投資活動において、機械保全、品質向上および生産能力の増強と生産ラインの合理化を目的とした設備投資などであります。これらの資金需要に対しては、安定した収益基盤を確立し一層の利益追求をはかると同時に、売上債権、棚卸資産、仕入債務の適切な管理に加えて、固定資産の効率的活用などにとり組んでおります。また、不足分の資金は、有利子負債による調達を基本にしており、取引金融機関との安定した調達体制の維持に努めるとともに、調達手段の多様化による財務基盤の安定に向けたとり組みを進めております。なお、当社および主要なグループ会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化に努めております。

 当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は、1,141億57百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は328億24百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは「成長企業への挑戦、夢をかなえるものづくり企業へ」という長期ビジョンのもと、材料から工具、機械設備、量産部品の生産までをカバーする総合機械メーカーとしての商品・技術の連環を深め、独自性と競争力のあるオンリーワン商品の開発で社会の発展に貢献し、顧客から選ばれる企業を目指しております。

 中期的にはロボット・ロボットシステムと、社内で培い進化してきた多彩な生産技術・ノウハウ、さらに、自動化・情報化・電動化に適した部品・加工技術を提供し、多様化する社会に向けたあらゆる産業分野のお客様の製品やその生産ラインの進化に貢献してまいります。

 開発にあたっては、オープンイノベーションを志向し、カスタマーやサプライヤー、産学との共同開発を推進することで、当社の技術シーズを補完しながら開発のスピードアップをはかっております。特に産学連携においては、多様な開発課題を達成すべく様々な分野の専門機関と包括的な共同研究を開始しており成果を出しつつあります。

 また、開発プロセスの中でAIの活用を取り入れ、開発効率の改善だけでなく、商品の付加価値向上にとり組んでおります。

 これらの活動に伴う当連結会計年度の研究開発費は、機械工具事業で3,089百万円、部品事業で1,794百万円、その他の事業で771百万円となり、5,656百万円となりました。

 

 当連結会計年度の主な活動状況および開発成果は、次のとおりであります。

(1)機械工具事業

 ロボットでは、主に電機・電子分野での人手不足の解消・省人化のニーズに応えるため、高速/高精度ロボット「MZ07F/MZ07LF」をベースとした、MZ型の協働ロボット「CMZ05」を新規投入しました。さらに、クラストップレベルの作業領域を有し、防塵防滴(IP67)、防錆対応も標準装備して、幅広い用途での使用を可能にした中可搬ロボット「MZ50Fシリーズ」も新規投入し、MZシリーズの機種を拡充しました。今後もロボットラインナップの拡充を図ると共に、AIなど新技術を活用することで、より使いやすいロボットシステムを提案し、幅広い分野の自動化ニーズに応えてまいります。

 工具では、これまで培ってきた技術を結集し、「切削加工でバリが出るのは当たり前」、「加工後のバリ取りは必要不可欠」といったこれまでの常識を覆し、バリ発生を極小化しバリ取り工程を不要とする「バリレスシリーズ」を開発。ドリル、タップ、エンドミルをラインナップし、2023年12月21日に世界同時発売しました。また、2022年10月に発売開始した「アクアREVOミル ステンレス用」が、モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催の2023年「"超"モノづくり部品大賞 奨励賞」を受賞するなど、ユーザーの品質向上や、コストダウンへの貢献が評価されております。今後も、当社のマテリアル、サーモテック部門と連携して工具材料やコーティングの開発を進め、顧客の要求に応える商品を市場に投入してまいります。

 工作機械では、機械・工具の双方を提供できる世界でも類のないメーカーである特徴を活かし、高能率・高精度な歯車複合加工機のシリーズ拡充、拡販にとり組んでいます。今後は、更なる高精度・高効率な歯車へのとり組みや、仕上分野においてもシーズ技術を生かし、ユーザの要望に応えた工作機械の開発を進めてまいります。

 

(2)部品事業

 ベアリングでは、産業機械分野では、多点接触玉軸受や薄肉軸受の展開により、機器の小型軽量化に貢献しています。自動車分野では、EV化ニーズの小型軽量化、低損失化、高速化、耐電食に対応した軸受の開発と市場投入を行っています。

 油圧では、機械のコンパクト化、大出力化のニーズに応えるため、高効率・低騒音の高圧ピストンポンプに最大容量の「PZH-4B」を追加、シリーズ化を完了し、6シリーズ目として市場投入しました。また、省エネ高精度な油圧システムであるパワーマイスター用コントローラとして、産業ネットワーク通信Ethernet/IP™に対応した新型コントローラ「EPX」を投入し、使いやすさを向上しました。今後は油圧ユニットのさらなる省エネ性向上にとり組むとともに、高圧化に対応したバルブのラインナップを強化し、お客様のニーズに応える商品開発を進めてまいります。

 カーハイドロリクスでは、自動車用のソレノイドバルブ、アクチュエータ、ポンプの技術を基盤としたEV、産機用商品の開発を進めています。得意とする小型化技術と、漏れ低減や消費電力低減などの高効率化技術により商品の機能を高め、用途拡大とラインナップ拡充に努めます。

 

(3)その他の事業

 マテリアルでは、材料の面から不二越全社の新商品開発を後押しすべく、切削工具向けの高性能な超硬合金や、ベアリング、アクチュエータ部品に使用される高機能材料の開発を進めています。また、基礎開発を続けてきた摩擦かくはん接合(FSW)技術を用い、異なる金属が接合された新しい部材の開発へ展開、今後の拡大が見込まれるEV市場に向けた商品化を進めるなど、市場のニーズに応える新素材開発を進めております。

 サーモテックでは、社内製造ラインで培った真空・熱処理・コーティング技術を基盤とした装置開発にとり組んでおります。2023年は当社の油圧・材料・熱制御の要素技術を融合したフッ素樹脂用小型射出成形機を開発しました。フッ素樹脂部品が使用される半導体製造装置の部品市場への展開を進めます。熱処理装置関連では、真空浸炭炉、真空脱脂洗浄装置の更なる省エネ化を進め、脱炭素社会に向け貢献できる商品開発を引き続き行ってまいります。