文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
今後の見通しにつきましては、ホテル業界は常態化する人手不足の対応に苦慮しながらも、需要回復によりしばらくは好業績が期待できるものと推察します。一方で、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の不安等、世界経済の不確実性による景気の下振れリスクが懸念され、当社を取巻く環境は、予断を許さない状況が続くものと予想されます。
このように刻々と変化する社会情勢と経営環境下で、当社は3年後の2027年に迎える開業100周年を見据え、さらなる事業の拡大と持続的な企業価値の向上を目指し、サステナビリティ経営の加速と人的資本経営の推進により、課題解決に向けた取組みを行ってまいります。
設備面では、本館正面玄関から歩道に張り出したアーケードは、本館を象徴する重要なファザードでありますが柱脚部に腐食が見られるため、安全で耐久性を担保した新築建替えによる復元工事を進めるとともに、完成後は横浜市歴史的建造物認定の申請を行い、景観維持とクラシックホテルの付加価値向上に努めてまいります。
管理面では、人的資本経営を重視し、優秀な人財獲得と既存従業員への還元策として給与水準の整備を進めるとともに、働きやすい環境整備を目的に、本館隣接地に老朽化が進んでいる従業員棟(休憩・仮眠室、ロッカー室等)の建替えが間もなく完成予定で、3月初旬をめどに新従業員棟への移設を計画しております。
さらには、同建物の1階部分に新規事業となるホテルショップを、4月下旬に開業予定で計画を進めております。変化の激しい時代の中で、社会情勢や消費トレンドを見極める重要性が一段と高まっておりますが、不易流行の精神をもって新分野への進出で多柱経営に取組み、変化に強い会社を目指してまいります。
このほか、脱炭素による環境配慮とデジタル化による業務の効率化にも注力するとともに、社会から信頼される企業であり続けるために、人権尊重の取組みやコンプライアンス推進活動の充実と浸透に努めてまいります。
株主の皆様におかれましては、今後ともなお一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
当社は、企業理念に「培ったおもてなしの心と、最高のサービスと商品の提供により、国際社会の発展と文化の向上、お客様の満足と幸福に貢献」を主文に掲げ、当社が果たすべき社会的役割は、歴史的建造物を維持・保存しながら持続的成長を実現し、国際都市横浜の一翼を担っていくことであると、認識しております。また、当社にとってSDGsへの取組みは、社会課題解決への貢献であるとともに、まさしく企業理念の実践であり、事業拡大と持続的な企業価値向上への道筋と考え、その遂行に努めてまいります。
当社は、SDGsの課題解決は重要な経営課題と強く認識し、社長直轄の全社レベルでの意思決定組織となる「サステナビリティ推進室」を設け、経営トップの強いコミットメントの下、サステナビリティ経営推進体制を構築し、事業を通じた社会課題の解決とSDGsの目標達成を目指しております。
サービス業界においては、常態化する人員不足の対応に苦戦している中、限られた人員で最大限の能力を発揮するため、人員自身の成長が感じられる環境を整えることが求められております。更にこの状況において、お客様の期待を超える接客をするためには、年齢・性別・国籍等を問わず、多様な人材がそれぞれの強みを発揮する必要性がございます。
以上により、当社はこの社会情勢に対応するため、以下の取組を行っております。
・キャリア・スキルアップ研修(管理職研修・グループホテル研修・料理コンテスト参加・クロストレーニング研修・フォローアップ研修・英語研修等・自衛消防操法大会参加)
・サービス向上委員会
来るべき100周年に向け、ホテルニューグランドが設立の原点である横浜を代表する高級グランドホテルとしての地位を確立することを目指し、各部門よりメンバーを人選し、プロジェクトチームでテーマを提案し実行していく。
・ニューグランドマイスター制度
横浜唯一のクラシックホテルとして歴史や伝統を受け継ぐ取り組みとして、ホテルの歴史やエピソード、近代化産業遺産である本館の建築としての様々な魅力、発祥メニューについてなど豊富な知識と接遇力を持つスタッフを認定する。
・他社視察制度
他社のサービス、料理、商品を学ぶ機会を促進することで現在の改善点や新サービスのアイディアに活かす。
・資格取得補助金制度
専門的資格の必要な業務に対し、実施期間中に資格を取得した場合、特別報奨金を支給する。また、資格保有者に対しても、若手の指導、育成が出来る経験及びサービス技術を伝承するため、対象職場に在職中は各協会の登録料を会社で負担する。
現状では具体的な目標設定はしておりませんが、従業員の満足度を上げるだけでなく、従業員が会社に貢献したい気持ちを高められる、企業価値の向上に向けた持続性のある人的資本に関する指標及び目標設定を含めた、社内環境整備を推進してまいります。
当社では、ホテルマネジメントに伴うリスクについての基本事項を、リスク管理規程により定め、その運用と全社的なリスクの抽出、対応については、社長直轄の「リスク管理委員会」にて行っております。当該委員会では、必要に応じてサステナビリティ全般に関するリスクを含む総合的なリスク管理体制に関する事項、全社的なリスクの把握およびその対応に関する事項等について検討・報告を行っており、重要なリスクに関する事項については当社取締役会に報告される体制を構築しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)自然災害や感染症の発生
大規模地震や台風などの自然災害の発生は、当社の所有する建物、設備等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生する可能性があります。また、新型インフルエンザなどの感染症の発生や蔓延は、遠距離移動や団体行動の制限が予想され、当社の業績に影響する可能性があります。
(2)食の安全に関わる問題
当社は、平素より食に対する安全確保を使命とした「食品安全衛生対策会議」を毎月開催するなど、食品衛生管理には磐石な体制を構築しておりますが、ノロウイルスによる食中毒やBSEの発生等、食品衛生や食の安全、安心に関する問題が発生した場合、当社の業績に影響する可能性があります。
(3)個人情報の漏洩
顧客の個人情報の管理は、社内の情報管理担当が中心となり、外部への流出防止を行っておりますが、情報の漏洩が発生した場合、当社全体への信用の失墜や損害賠償等の費用負担により、当社の業績に影響する可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当事業年度のわが国経済は、長期化するウクライナ情勢、中国の景気減速、中東情勢の緊迫化など不安定な国際情勢を背景に、エネルギー・資源価格の世界的な高騰と物価高、円安進行に直面し、景気に下押し圧力がかかりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症が5類に移行後は、行動制限撤廃等により社会経済活動の正常化が進み、個人消費の回復や企業収益の改善など、景気に持ち直しの動きが見られました。
ホテル業界においては、人流の回復に伴い、全国的にイベント等の復活や、国内外の旅行者急増で需要が回復し、概ねコロナ前と同等もしくは上回る水準まで回復基調となりました。一方で深刻な人手不足により、販売室数の制限や、料飲施設の短縮営業や休業設定など、営業面での調整や見直しを迫られる状況に陥り、ポストコロナを見据えた本格回復に繋げる経営対応が問われました。
このような状況下で当社は、収益面においては資材高騰による影響もありましたが、仕入コスト上昇分の価格転嫁を促進すると同時に、商品・サービスの付加価値向上に努め、収益基盤の安定とブランドの強化を図りました。また、深刻な人手不足の中で、客室清掃員不足等の影響もありましたが、客室売上を左右する単価設定については、レベニューマネジメントシステムの導入により、日々変動する市場で自社販売状況と競合他社の値動きを、人工知能技術を活用した需要予測から価格を弾力的に変化させ最適化し、稼働を抑えつつも収益性の最大化を図りました。こうした施策により、客室販売単価及び客室売上高は過去最高値を更新することができました。
管理面では、労働力不足への対応策として、時宜にかなった会議の効率化で時間の無駄を圧縮するとともに、報告書や日報作成等の既存業務を極力簡素化させ省力化を図り、限られたリソースを有効活用できる環境を整備し、社員各々の活動時間を最大化しました。また、組織改革として、レストランリザベーション課を新設し、各レストランの予約業務を集中管理するとともに、サービススタッフの負荷を軽減し、業務効率と生産性向上に繋げました。このほか、従業員への経済的支援不足が重大リスクに繋がる恐れがある点を踏まえ、人的資本経営の重要性を強く認識し、急激な物価上昇が従業員の生活に与える影響の緩和策として、役員を除く全従業員を対象とした生活支援一時金の支給や、従業員持株会制度の奨励金付与率の引上げなどを実施し、従業員の経済的自立と資産形成を支援いたしました。
以上のような取組みを行った結果、当事業年度の売上高は、5,372,600千円(前事業年度比25.5%増)、営業利益は283,653千円(前事業年度は385,375千円の営業損失)、経常利益は257,041千円(前事業年度は323,478千円の経常損失)、当期純利益は393,364千円(前事業年度は、349,201千円の当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(ホテル事業)
ホテル事業の当事業年度の業績は、売上高5,325,183千円(前事業年度比25.8%増)、営業利益247,857千円(前事業年度は421,515千円の営業損失)となりました。
なお、主な部門別の売上高は、宿泊部門1,630,942千円(前事業年度比41.9%増)、レストラン部門1,326,280千円(前事業年度比10.4%増)、宴会部門1,968,405千円(前事業年度比26.4%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
不動産賃貸事業の当事業年度の業績は、売上高47,416千円(前事業年度比0.6%減)、営業利益35,795千円(前事業年度比1.0%減)となりました。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当社の財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
資産合計は7,953,767千円(前事業年度末比215,880千円増)となりました。主な要因は現金及び預金218,963千円の増加や、売掛金71,065千円の増加、有形固定資産189,442千円の減少、投資その他の資産113,910千円の増加であります。
(負債)
負債合計は4,700,720千円(前事業年度末比184,506千円減)となりました。主な要因は未払金153,715千円の減少や、未払消費税等90,429千円の増加、未払費用46,762千円の増加、長期借入金245,000千円の減少であります。
(純資産)
純資産合計は3,253,046千円(前事業年度末比400,386千円増)となりました。主な要因は当期純利益393,364千円などであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ218,963千円増加し、2,422,572千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は609,280千円(前事業年度は2,769千円の増加)となりました。主な増加要因は、減価償却費289,883千円や、税引前当期純利益255,777千円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は141,247千円(前事業年度は294,336千円の減少)となりました。減少要因は、有形固定資産の取得による支出157,904千円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の減少は249,070千円(前事業年度は224,454千円の減少)となりました。主な減少要因は、長期借入金の返済による支出245,000千円などによるものであります。
当社の資金需要のうち主なものは、設備投資資金のほか、食材等の仕入や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
当社は、運転資金につきましては自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入金を基本としております。
なお、当事業年度末における借入金残高は2,338,000千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は2,422,572千円となっております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。