第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)グループ企業理念

 当社グループは創業精神「CMIC’S CREED」を定めております。多様化している医療・ヘルスケア分野のニーズに応えるためには、変革を恐れず自らを柔軟に変化させていかなければなりません。しかし、その一方で変えてはいけないものがあります。それが、シミックのDNAとも呼べる「CMIC’S CREED」です。私たちは、この決して変わらない志を胸に、自己を変革していきます。

 

 この「CMIC’S CREED」を踏まえて、グループの方向性を示す3つの軸「ミッション・ビジョン・バリュー」を制定しております。当社グループの企業としての使命、社会に対してどう貢献していくのか、企業としての理想の姿を示し、そのためにどのような価値観に基づいて行動すべきかを役職員が共有し、グループ総合力を高めることで、広く人々の健康や医療の進歩に寄与する社会価値の創出を追求していきます。社会価値の創出は経済価値の向上を伴うものと考えられるため、ステークホルダーの皆様に理解と信頼を得ながら、グループの持続的な成長を目指します。

 

ミッション:シミックは、画期的なソリューションを通してヘルスケアに新たな価値を創造し、必要とされる医療やケアシステムを1日でも早く届けます

ビジョン  :世界中の誰もがより健康でその人らしい生活を送るため、ヘルスケアの革新に貢献します

バリュー  :W&3C

      WELLBEING   その瞬間を生ききる

      Change     常識に安住せず変革する

      Challenge   新たな視点で可能性を切り拓く

      Communication 人や社会へ積極的に働きかける

 

(2)経営環境

 当社グループの主要事業となる医薬品業界においては、“患者により適した医療”の提供に向けて、技術革新や産官学連携による革新的医薬品の創出が期待されています。医薬品の種類やタイプ、治療手段といった創薬技術のカテゴリーを指すモダリティがより多様化・複雑化するとともに、医療の個別化が進み、開発の難易度はより高まっています。また、2021年度から毎年薬価改定が実施され薬価の引下げ圧力が強まっていることから、日本のドラッグラグ・ドラッグロスが政策課題とされ、製薬企業の医薬品開発における日本の優先順位低下が懸念されております。このような環境下で、製薬企業はM&Aを活用した開発パイプラインの拡充、新規の創薬基盤技術を活用した医薬品開発、予防から診断、治療、予後に至る疾患のトータルケアへの取組み等を進める傾向にあります。

 人工知能(AI)や様々な「モノ」がインターネットに接続され、相互に情報交換することにより自動認識や自動制御、遠隔操作などを可能にする仕組みであるIoT(Internet of Things)などの新たなテクノロジーは社会全体に大きな変革をもたらしており、ヘルスケア分野においても、デジタル治療やオンライン診療が導入されるなど、医療のあり方や健康に対する個人の価値観が変化する中で、産官学民が連携して少子高齢化社会に対するイノベーションへの取組みが加速しております。

 また、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、社会経済から個人の価値観まで広範囲にわたり多大な影響を及ぼし、ヘルスケア分野においてデジタル化の進展とイノベーションを加速させる契機となり、新型コロナウイルス感染症拡大が沈静化した現在においても、企業活動の正常化とさらなる技術革新により、当社グループを取り巻く環境の変化は加速しています。

 

(3)対処すべき課題等

①中期計画

 当社グループは、創業30年の節目にあたる2022年9月期を第三創業元年と位置付け、新規の創薬基盤技術による医薬品開発やデジタル化への対応を強化するとともに、ヘルスケア分野へ事業領域を広げております。予防から診断、治療、予後に至る疾患のトータルケアへの取組みへの支援等を通じて、持続的成長に向けたグループ経営基盤の強化と飛躍を図っていく方針です。CROを中心として最先端のサイエンスによる疾病の治療に貢献するとともに、健康という概念を大きくとらえIKIGAIを追求します。

 

<製薬ソリューション>

 本セグメントは、製薬企業の付加価値向上に貢献する独自の事業モデルPVC(Pharmaceutical Value Creator)を展開するうえで横断的な連携を行う、CRO(医薬品開発支援)事業、CDMO(医薬品製剤開発・製造支援)事業、Market Solutions(医薬品営業支援、オーファンドラッグ等の開発・製造販売・流通)事業で構成します。

 創薬においては、モダリティがより多様化・複雑化するとともに、医療の個別化が進み、開発の難易度がより高まっています。これに対し、多業種連携やリアルワールドデータの利活用、デジタルトランスフォーメーションを通じて、医薬品開発のスピード化・効率化を促進し、疾患予防・治療の研究開発・販売を総合的に支援します。

 

<ヘルスケアソリューション>

 本セグメントは、医療関連施設及び医療従事者を総合的に支援するSite Support Solutions事業と、個人及び自治体等にヘルスケアの新たなエコシステムを用いたソリューションを提供するHealthcare Revolution事業で構成します。

 医薬品産業の知見やネットワーク、疾病予防・健康情報やIT技術を融合し、ヘルスケアの新たなエコシステムを用いたソリューションを提供することで、個人のヘルスバリューを支援してまいります。

 

これらを踏まえ、2021年11月発表の「中期計画(FY2022-2025)」を策定し、各課題への施策に取り組んでおります。

 

[基本方針]

 ■ Pharmaceutical Value Creator から Personal Health Value Creator へ

 製薬企業のバリューチェーンを全面的に支援する独自の事業モデルPVC(Pharmaceutical Value Creator)を持続的成長の基盤として、“個々人の健康価値を最大化”する事業モデルPHVC(Personal Health Value Creator)への展開を目指します。

 

[重点取組事項]

 ■ ヘルスケアビジネスの進展

・多様な“個々人の健康価値”に応える新規ヘルスケア事業の創出

・予防から診断、治療、予後に至る疾患のトータルケアへの取組み

・harmoをはじめデータやテクノロジーと人財とを融合した支援

 

 ■ 疾患予防・治療の研究開発から販売まで総合的な支援の強化

・マーケットアクセスのスピード最大化

・新規の創薬基盤技術による医薬品開発やデジタル化の推進

・日本に基盤をもたない創薬ベンチャー等への提案力強化

 

 ■ 社会的有益性の高い事業を通じたサステナブルな社会への貢献

・医療・ケアシステムの維持に貢献する「ヘルスケアプロフェッショナル」の育成

・環境の保全と従業員の健康・安全を確保した企業活動の促進

 

②重点取組事項の進捗

 ■ ヘルスケアビジネスの進展

・新型コロナワクチン接種支援業務を機に広がった地方自治体等との連携を拡大

・ノックオンザドア株式会社及び株式会社オケイオスのグループ会社化やヘルステック企業とのアライアンスを通して、電子お薬手帳やスマートフォンアプリ等の医療・ヘルスケア分野におけるデジタル関連サービスを発展

 

 ■ 疾患予防・治療の研究開発から販売まで総合的な支援の強化

・海外バイオベンチャーの日本市場参入や異業種のヘルスケア参入を支援する総合コンサルティングの強化

・Decentralized Clinical Trial(DCT)の促進やリアルワールドデータの利活用、デジタルトランスフォーメーションを通じて、医薬品開発のスピード化、効率化を促進

・大日本印刷グループ(DNP)との戦略的事業提携により、パッケージ技術と製剤開発技術の掛け合わせによる付加価値型医薬品の開発や、医薬原薬のプロセス開発・製造から製剤開発・製造に至る一貫体制を確立

・次世代バイオ医薬品や遺伝子治療薬など、モダリティの多様化が進む先端領域の有効性・安全性評価・分析

・iPSC (人工多能性幹細胞)専門バイオ企業との事業提携等により創薬支援サービスを強化

 

 ■ 社会的有益性の高い事業を通じたサステナブルな社会への貢献

・サステナビリティ委員会の設置や気候関連リスクシナリオ分析の実施

・従業員の健康管理、疾病予防、ヘルスリテラシー向上に向けたアクションプランの実施

・医療・ケアシステムの維持に貢献する「ヘルスケアプロフェッショナル」認定が2,000件を超過

 

③今後の取組み

 主要事業であるCRO事業の成長には、日本はもとよりアジア・米国を含むグローバル市場での展開が必要であり、グローバル展開を加速するための事業パートナーとの提携が必要と考えております。また、革新的医薬品の創出には非臨床試験等の創薬基盤が欠かせないことから、創薬支援サービスを拡充し、シミックグループの創薬プラットフォーム強化を図ってまいります。

 ヘルスケア分野においては、電子お薬手帳harmoやてんかん支援プラットフォームnanacara及びブロックチェーン技術等の基盤技術を活用し、PHR(パーソナルヘルスレコード)の蓄積及び疾患プラットフォームの構築を行ってまいります。

 併せて、事業の中長期的な成長や競争力の源となる優秀で多様な人財の早期育成・獲得を行い、事業環境の変化にスピーディに対応できる経営基盤を構築してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<基本的な考え方>

 当社グループの企業理念である「CMIC’S CREED」は、サステナビリティに対する基本的考え方を示しています。

 当社グループ全役職員は、「シミックグループ行動規範」において、一人ひとりが「CMIC’S CREED」と、それに結びついた「ミッション・ビジョン・バリュー」に基づき企業活動を展開すること、法令の遵守はもとより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上及び社会的課題の解決に向けて積極的に行動することが求められています。

 当社グループでは、サステナビリティ経営実現のために、注力すべきサステナビリティ重要課題を特定し、中長期戦略の中に組み込んで具体的な取組みと目標を設定し、事業を通じて実行することで、社会の持続的な発展と当社グループの持続的な成長を目指してまいります。

 

<当社における人的資本>

 当社グループはこれまで、製薬企業の付加価値向上に貢献する独自の事業モデル PVC(Pharmaceutical Value Creator)を展開しており、既存事業をさらに伸ばしていくとともに、次のステージとして掲げている「個々人の健康価値を最大化する」PHVC(Personal Health Value Creator)モデルへの展開を推進していく段階に入っております。

 その中で当社が生み出す収益・価値の源泉は、医薬品関連ビジネスやヘルスケアビジネスに精通した人財 × クリエイティブ・エクセレンス(創造力)、ビジネス・ディベロップメント・エクセレンス(事業開拓力)、オペレーショナル・エクセレンス(実行力)、マネジメント・エクセレンス(マネジメント力)の4つの要素といえます。

 予測が困難な経営環境の中で、CMIC’S CREED に掲げるヘルスケアの革新の実現に向けて、当社の従来の事業の延長線上ではない新たな価値を生み出し続けるために、非連続な変化を見据え、自己変革を繰り返すことができる人財、蓄積された知識やノウハウをベースに、新たに獲得した高度な専門性や先進的な技術を掛け合わせ、リスクを恐れず未知の領域に挑み、信念と情熱をもってやりきることができる人財。こうした、次世代のシミックグループを担い、未来への希望となるすべての社員に対して、自らの価値を最大限に発揮できる環境を整え、その成長を後押ししていきたいと考えております。

 

<HR Strategy IKIGAI 1.0>

 シミックグループでは、人財が様々なキャリアを通じて社会に貢献できる組織を実現することを継続的な目標としております。人員不足による機会損失や世代間格差、後継者育成までも含めた人的資本の充実は大きなテーマであると認識している一方で、こうした人的資本に、経験も含めた知的資本を組み合わせ、拡大の続くヘルスケアマーケットで活用、新たな価値を生み出すことにより、長期的に大きな成長機会につなげたいと考えております。これらを実現するためにも、高度な専門性を有する外部人財の採用や、新規事業を通じたイノベーションをリードできる次世代人財の育成・登用を推進しております。

 また、これらの目標を達成するためグループ全体の人財戦略として、「HR Strategy IKIGAI 1.0」を定めております。

 

HR Strategy IKIGAI 1.0

 

Personal Business Value

 CMICS CREED実現につながる、各人の役割やミッションを通じて、社員一人ひとりが自律的に発揮する価値を表しています。各自がライフスタイルに応じた役割と働き方を選択し、持続的なPersonal Business Valueの発揮を通じて、主体的に社会と関わり、「IKIGAI」を実感しながら永く働くことを目指しています。

 

New Work Style & Space

 社員一人ひとりが組織や立場を超えて自ら複数の役割を担い、時間・場所に囚われずプロジェクトベースでアジャイルに働き、会社はすべての社員がその人らしく、いつでも、どこでも、「IKIGAI」を持ってずっと働ける環境と組織や立場を超えた共創や新たな働き方に対応した場・ツール・リソースを提供することを目指しています。

 

Respect Each Other (Diversity & Inclusion)

 お互いの個性やライフスタイルの違いを尊重し、心理的安全性が保たれることで組織やプロジェクトにおいて本音の議論とアジャイルな試行・学習を繰り返して進化し続けることを目指しています。

 

 この「HR Strategy IKIGAI 1.0」の進捗状況や成果を測るため、従業員のエンゲージメントを指標の一つとして設けております。このため、2023年度はエンゲージメントサーベイを全面的にリニューアルしてグループ横断的に展開いたしました。中長期的な戦略及びKPIへの反映を通じて、継続的な組織改善を自律的に推進するための基盤の一つとして、さらなる活用を進めていきます。

 

(1)Personal Business Value

 シミックグループが社会と共に持続的な成長を果たす上では、CMIC’S CREED実現に向けて、社員一人ひとりが自身の役割やミッションを通じて自律的に発揮する価値、Personal Business Value(以下「PBV」という。)を高めていくことを大切にしています。

 

 人財育成においては、シミックグループ横断で展開するリーダー層の育成プログラム「中村塾」、グループ各社で行われる新人研修から始まる階層別の育成プログラム、各社特有の技術基盤やノウハウに関する専門別の育成プログラムなどを社員一人ひとりのクリエイティブ・エクセレンス(創造力)、ビジネス・ディベロップメント・エクセレンス(事業開拓力)、オペレーショナル・エクセレンス(実行力)、マネジメント・エクセレンス(マネジメント力)を強化するために提供しております。なお、当連結会計年度における当社グループの教育研修費の総額は262百万円となります。

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・ヘルスケアプロフェッショナル認定制度
 当社グループでは多くの社員が、ヘルスケア領域において多方面での活躍を推進するためのスキルを有する人財として「ヘルスケアプロフェッショナル」という社内資格を取得しています。部門を超えて新たな事業領域に挑戦するきっかけとなるだけでなく、人財育成における「シミックらしいリスキリング」の一つとして、個々人の「PBVの発見と再定義」につながる取組みとなっており、さらなる資格取得者と専門トレーニングの受講者の増加を目指しております。

 

(2)New Work Style & Space

 ジョブポスティング制度や、グループ横断のメンバーが集まりアジャイルに検討・推進するプロジェクトを立ち上げるなど日々の業務の範囲に留まらない経験をする機会を創出することにより、一人ひとりが自律的なキャリアを切りひらき、経験の幅を広げる「キャリアチャレンジ」施策を推進しています。

 

(3)Respect Each Other (Diversity & Inclusion)

 シミックグループはかねてより幅広い国籍、性別、年齢層の人財が活躍しており、互いを尊重しあう文化があります。臨床事業を中心とする医薬品関連ビジネスやヘルスケアビジネスにかかわる資格をもつ人財は、シミックグループでの経験を含めて知的資本の源泉となっています。従来からの互いを尊重しあう文化の下、様々な専門性を持つ人財がシミックグループと共に成長できる環境を作り、お互いが刺激しあい、高めあえる関係性の向上を目指しています。

 

<指標及び目標>

(1)女性活躍における目標

 国内グループ全体の役員比率は、2030年までに30%以上を目指します。

 また、女性管理職比率の目標としては、女性活躍推進法に基づき策定した行動計画において、国内グループ各社20%~60%の範囲で定めております。

 

(2)主な行動計画

 以下の施策等を通じてキャリアアップへの意識・関心を高め、意志・能力のある人がチャレンジできる風土を醸成します。

・タレントマネジメントプロジェクト

・新人事制度の導入と適切な運用による評価納得度の向上

・女性管理職のロールモデルの紹介

・女性管理職同士のネットワークづくり

 

(3)当社及び国内子会社各種参考指標(注1)

男女比率

連結会計年度

2021

2022

2023

女性比率

55.3%

56.0%

58.8%

男性比率

44.7%

44.0%

41.2%

 

女性管理職比率

連結会計年度

2021

2022

2023

女性管理職比率

24.5%

24.6%

28.3%

 

女性役員比率(注2)

連結会計年度

2021

2022

2023

女性役員比率

8.3%

15.4%

18.5%

 

年齢別従業員構成

連結会計年度

2021

2022

2023

0 - 14

-

-

-

15 - 19

1.0%

0.9%

0.1%

20 - 29

20.4%

19.6%

18.1%

30 - 39

28.7%

28.0%

29.1%

40 - 49

28.3%

28.1%

28.6%

50 - 59

16.2%

18.1%

18.3%

60 - 65

4.2%

4.2%

4.7%

66 -

1.1%

1.0%

1.2%

 

外国籍管理職比率

連結会計年度

2021

2022

2023

外国籍管理職比率

8.3%

7.2%

4.5%

 

(注)1.各連結会計年度9月30日時点での国内連結グループ会社を対象としております。なお、外国籍管理職比率のみ、海外連結グループ会社も対象としております。

2.女性役員比率は、当社のエグゼクティブマネジメント、社外取締役及び監査役における女性比率を表しております。

 

 

<気候変動への取組み>

 気候変動への取組みについては、社会の持続的な発展と企業の持続的な成長を目指し、TCFD提言における、「ガバナンス」・「戦略」・「リスク管理」・「指標と目標」に基づき、気候変動への対応、情報開示の質と量の充実を図るべく、取組みを進めております。

 

(1)ガバナンス

 「ガバナンス」については、シミックグループの代表取締役を議長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ推進活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行います。また、これらの結果は定期的に取締役会に報告され、取締役会において同委員会によるサステナビリティ推進活動の管理・監督を行います。

 

(2)戦略

 異なるシナリオ(1.5℃、4℃)における財務影響を評価するとともに、気候関連リスク・機会がもたらす事業への影響度を評価すべく、シナリオ分析を実施しており、内容については下表のとおりです。当社グループ事業に影響を及ぼす重大なリスクは特定されませんでした。なお、シナリオ分析に際しては、2030年及び2050年時点の当社への影響として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)及び国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の情報を参照いたしました。

 

 

大分類

小分類

内容

リスク

移行リスク

政策及び規制

炭素税導入に伴うコストの増加

環境規制の強化に伴うコストの増加

技術

再エネ設備導入等エネルギー転換への投資等に伴うコストの増加

市場

エネルギー価格の上昇等によるコストの増加

評判

気候変動対策の遅れによる企業価値の低下

物理的リスク

急性

自然災害への備えのためのオフィスや物流センターの移転コストの増加

慢性

気温上昇による空調負荷増加に伴うエネルギーコストの増加

機会

製品及びサービス

気候変動に起因する感染症及び疾病のリスク増加等による受注機会の増加

 

 

大分類

小分類

当社の対応方針

リスク

移行リスク

政策及び規制

脱炭素・低炭素エネルギーの利用促進

環境規制の動向に適切に対応

技術

脱化石燃料化に関するあらゆる選択肢を検討

市場

社外環境の動向に適切に対応

評判

CO2削減目標を設定し、事業戦略として取り組んでいく

物理的リスク

急性

事業継続計画の強化

慢性

脱炭素・低炭素エネルギーの利用促進について継続して検討

 

(3)リスク管理

 シミックグループは、グループの事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオ分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスク・機会を検討し、サステナビリティ委員会とリスク管理委員会が連携し、取締役会に報告いたします。

 

(4)指標及び目標

 経時的な状況把握と要改善点の特定を行いながらCO2削減目標を検討し、目標達成に向けた施策の策定と効果測定を進めてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、リスクを「シミックグループリスク管理規程」において「会社に物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を生じさせるすべての可能性」と定義し、グループリスク・危機管理責任者を中心にグループ横断的にリスクの存在とその影響度を事前に把握の上、適切に管理する方法を策定、実行しております。また、事業機会に関連する戦略上のリスクについては、CEOを中心とする経営執行上の会議体でリスクと機会の観点から十分に検討を行っており、その検討結果は、取締役会へ報告の上、議論されております。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある主要なリスクは、以下のようなものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点において予見できない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)顧客の動向に関するリスク

当社グループは、PVCモデルを展開する「製薬ソリューション」と、医療機関・自治体等を通じて個人の健康に寄与する「ヘルスケアソリューション」を事業として展開しております。「製薬ソリューション」においては、製薬業界の経済環境及び製薬企業の経営方針の影響を強く受ける特性があります。したがって、製薬企業が有効性や安全性の観点から新薬候補品の開発を中止する、あるいは新薬の承認が得られず製造及び販売ができなくなる等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。「ヘルスケアソリューション」においては、疾病動向やヘルスケア関連企業・団体、行政の方針の影響を受ける可能性があります。

当社グループは、製薬企業の開発、製造、営業・マーケティングのバリューチェーンを広範に支援する事業を展開するとともに、海外からの日本市場参入や国内異業種からのヘルスケア事業参入及び国・地方自治体への支援を通じて、顧客の多様化を図ることによりリスクの低減に努めております。

 

(2)法規則、行政動向に関するリスク

当社グループの事業は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:医薬品医療機器等法)及び同法に関連する法規則等により規制を受けているため、行政施策の変更が、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、業界団体等への参画を通じて、薬事規制やグローバル規制に関する最新の情報収集に努めるとともに、これらの情報を基に役職員へ教育・トレーニングを実施することでリスクの低減に努めております。

 

(3)競合に関するリスク

当社グループの属する業界においては、異業種及び海外同業他社の新規参入による競争の激化や、M&Aや資本提携を通じた寡占化の影響を受けることが考えられます。この結果、当社グループが顧客を失う可能性、もしくは当社グループの提供するサービスの価格が、顧客の維持・確保のため低下を余儀なくされ、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、製薬企業の開発、製造、営業・マーケティングのバリューチェーンを広範に支援するPVC事業モデル、さらに製造販売業等の許認可を組み合わせることで、顧客の幅広いニーズに対応することで差別化を図り、競争力の維持向上に努めております。

 

(4)海外展開に関するリスク

当社グループは、米国、アジアを中心に海外展開をしておりますが、各国の政情、薬事行政等の動向及び人財確保が順調に進まない場合、当初想定した事業利益を確保できず、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、各国の政情や法令及び諸規則について、業界団体や現地の法律事務所をはじめとする専門家からの情報収集・情報交換を行っております。人財確保においてもグループ内人事部門間で情報共有を行っております。また、各地で問題が発生した場合には、現地子会社と連携し、迅速な課題解決を図る体制を構築しております。

 

(5)自然災害等に関するリスク

当社グループが事業展開している地域や拠点において、災害(地震、台風、火災等)・疫病等が発生し、人的・物的被害の発生、業務停止及び遅延が生じた場合、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「シミックグループ事業継続規程」に基づき、役職員の安全確保と事業の継続を基本方針とした事業継続計画(BCP)を整備し、定期訓練の実施等を通じて、災害発生時の事業への影響を最小限とするための取組みを行っております。

 

(6)気候変動対策に関するリスク

当社グループでは、各拠点における購入電力のみならず医薬品の製造施設等一部の拠点で化石燃料に由来するCO2を排出しております。脱炭素への取組みに対する社会的要請が高まる中、炭素税の賦課やCO2排出規制の強化が行われた場合には、エネルギー価格の上昇や省エネルギー設備への転換に係る追加的な投資等の影響により、事業コストが増加する可能性があります。また、気候変動対策に関する法規制や顧客からの要請に対し、所要の水準を満たせない場合には、行政罰や入札からの排除、取引停止による事業機会の逸失や取引条件悪化の生じる可能性があります。さらに、当社グループの気候変動対策や関連情報の開示を含む取組み姿勢がステークホルダーに評価されない場合には、顧客との関係悪化はもとより人財の採用難や資金調達難等を通じて、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、法規制や顧客からの要請される基準を満たすため、製造施設では、CO2排出量削減に資する燃料の切り替えや再生可能エネルギー由来電気を進めております。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき、気候変動に関連する課題について「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から検討を深め、取組みを強化してまいります。

 

(7)金融情勢の変化に関するリスク

金融システム不安、信用収縮、流動性の低下などの金融情勢の変化により、当社グループが必要とする資金の調達が困難となり、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業資金の効率的かつ安定的な調達を図るため、経済・金融市場の状況に応じた手元資金の確保を行うとともに、金融機関との間でコミットメントライン契約を締結するなど資金調達枠の確保に努めております。

 

(8)安定供給に関するリスク

当社グループは、医薬品の製造支援事業や希少疾病用医薬品等を販売する事業を展開しております。医薬品は、安全で有効な製品を確実に製造し安定的に供給する必要があります。グループ内の製造施設やグループ外の製造もしくは物流施設等において、品質不良や事故・災害等の問題が発生することや、世界情勢変動により製品や原材料等の供給が休止もしくは著しく遅滞した場合、当社グループにおける製品の供給に影響が出ることにより、当社グループの信用が失墜するとともに、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、高品質な医薬品供給を実現するため、グローバル基準のGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)に準拠した製造及び品質管理を行うとともに、規制当局並びに製造販売業者から定期的なGMP査察並びにGMP監査を受け、製造委託先については当社グループによる定期的なGMP監査を実施しております。また、事業継続計画(BCP)を定め、安全在庫の確保、現サプライヤーとの情報共有体制の構築と新規サプライヤー探索、製造工程の見直し検討を行い、有事の際の速やかな業務復旧並びに医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。

 

(9)安全性に関するリスク

当社グループは、希少疾病用医薬品等を販売する事業を展開しております。患者様に予見できない重篤な副作用が発現した場合には、使用方法の制限、販売の停止、製品の回収等の措置を取る可能性があり、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を速やかに医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。また、役職員に対し安全管理情報についての研修を毎年実施し、患者様の安全性リスクの最小化に努めております。

 

 

(10)環境上の規制に関するリスク

当社グループが、万一不慮の環境問題を惹き起こし関係法令等の違反が生じた場合、関連費用等のため当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを低減すべく、当社グループでは、法令を遵守し、事業継続のために必要とされる環境関連の許可、認可、登録並びにこれらに伴う所定業務及び報告等を適切に実施しております。加えて、国内全工場がISO14001に基づきEMS(環境マネジメントシステム)を導入しており、有害物質の漏出防止や地球・地域の環境改善を推進し、ISO14001環境マネジメントシステム適合事業所の認定を受けております。また、『環境方針』に基づき、年度毎に環境に関する目標と活動計画を定めて役職員に周知するとともに必要な教育・トレーニングを実施しております。

 

(11)製品・サービスの品質に関するリスク

当社グループは、QMSを構築し、高い品質の製品・サービスを継続的に提供することを品質方針として掲げております。受託サービス業務において、被験者や患者様の安全性に影響する情報の不適切な取扱い、治験薬や医薬品の不適切な管理、実施計画書や手順書の不遵守、製造過程における異物混入等が当社グループの責任において発生した場合、当社グループの信用が失墜し、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、顧客から要求される基準を満たし、かつ関連法規制を遵守するため、厳格な品質管理と製造管理のもとで、高い品質の製品・サービスの継続的な提供とともに、製品の品質、有効性及び安全性の確保に努めております。また、情報の不適切な取扱い、製品の不適切な管理、実施計画書や手順書の不遵守など、製品・サービスの品質へ影響を及ぼすことが顕在化した場合、またはその可能性が予見される場合、是正処置/予防処置を講じ、リスクを最小化するためのシステムを構築した上で、役職員に対し教育・トレーニングを実施することで、再発防止に努めております。

 

(12)コンプライアンスに関するリスク

当社グループには、役職員の故意又は過失による法令違反が発生した場合、社会的信用が失墜し、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを低減すべく、当社グループは、法令を遵守し、社会倫理に従って企業活動を行うための基本的な指針「シミックグループ行動規範」を定めるとともに、シミックグループ方針・規程を整備し周知徹底しております。また、行動規範及び各グループ方針・規程に基づく考え方をより具体的に示したコンプライアンスハンドブック「CMIC WAY」を作成し、イントラネットに掲載しシミックグループの役職員に周知しています。さらに、定期研修を実施することで、役職員の意識が向上し、コンプライアンスに基づく業務遂行できるよう努めております。役職員のコンプライアンスに対する認識は、コンプライアンス意識調査を定期的に実施することで確認しております。コンプライアンス違反の発生または懸念がある場合に備え、「シミックグループ内部通報窓口」を設置し、懸念を相談しやすい職場環境を整備し、コンプライアンス上の問題の早期発見、対処、発生防止等に努めております。

 

(13)ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

当社グループは、顧客、個人情報及び受託業務に係る情報を厳格に管理しております。また、ITシステムの障害発生に備えて、パソコン及びサーバーの不正プログラム検出能力の強化と常時監視を行っております。しかしながら、想定できないサイバー攻撃やウイルス感染等によって業務に重大な影響を及ぼす可能性があり、また結果として、顧客、個人情報及び受託業務に係る情報が流出した場合、当社グループの信用が失墜し、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを低減すべく、当社グループでは、「防御力の強化、検知・駆除力の強化、ガバナンスの強化」を三本柱とした包括的なITセキュリティ対策を実施しております。ハードウェアやソフトウエアの対策に加えて、ITセキュリティや情報管理の重要性の周知徹底を目的とした教育・トレーニングを役職員に対して定期的に実施しております。サイバー攻撃によるインシデントが発生した場合には、CSIRT(Cybersecurity Incident Response Team)を中心に迅速な実態把握を行ったうえで、事業や業績への影響を最小化するための対応を行っております。また、サイバー攻撃に起因して発生する様々な損害に対応するため「サイバー保険」に加入しております。

 

 

(14)人財に関するリスク

当社グループの事業拡大にあたっては、ヘルスケア・医薬品関連の研究開発、製造、販売、経営管理等に関する専門的な知識・技能を有する優れた人財が必要とされております。こうした優れた人財の確保や教育研修が順調に進まない場合、または優れた人財の多数が流出した場合において、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、企業価値を創出する源泉は人財であるという認識のもと、優れた人財を採用し、育成することが企業の持続的成長に不可欠であると考えております。2023年9月期よりPBV(Personal Business Value)という「当社グループへの貢献度」を示す指標をもとに社員がPBVを向上するために何をすべきかを考える取組みを開始しました。あわせて人財のスキルアップやその能力を最大限発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。全従業員を対象に、研修やワークショップを通じてヘルスケアに関する知識と実務経験を認定する「ヘルスケアプロフェッショナル認定制度」を導入し、感染症の蔓延する環境下や地震・災害など有事の際において、ヘルスケア領域で活躍する人財の育成、強化を図っています。また、人種・性別・障がいの有無にとどまらず、多様な人財を採用し、一人ひとりの違いを尊重し価値を見つけることが、企業の成長に不可欠であると考え、ダイバーシティを経営の重要課題として取り組んでおります。

 

(15)固定資産の減損に関するリスク

当社グループでは、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っております。その結果、固定資産の減損損失を計上することも予測され、当社グループの経営成績や財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、重要な設備投資の実行に際して、精緻な採算性評価プロセスを経て意思決定を行うとともに、実行後のモニタリングを行うことで、減損に関するリスクの低減に努めております。

 

(16)デジタルテクノロジーに関するリスク

当社グループは、当社の強みである人財活用力とデジタルテクノロジーによる相乗価値の創出に取り組んでおり、デジタルテクノロジーは当社グループの新たな事業の創出、既存事業の変革など新たな価値を生み出すために重要な要素となっています。具体的には、医療機関に来院することなく患者の自宅など遠隔地で治験を実施する「分散型臨床試験Decentralized Clinical Trial(DCT)」、おくすり手帳、予防接種管理アプリや、服薬状況や疾病発作頻度などの記録共有管理アプリなどを提供する事業を展開しています。ただし、新しいテクノロジーの導入には、情報漏洩やサイバー攻撃など予期せぬリスクが伴う可能性があります。また、デジタルテクノロジーの進展は急速であり、その変化に迅速に対応できない場合、競争力を失い、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす恐れがあります。

当社グループでは、これらに対応するためサイバーセキュリティ対策等を強化するとともに、デジタルテクノロジーの活用を積極的に推進するために役職員のデジタルリテラシー向上の取組みを継続しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループは、製薬企業のバリューチェーンを全面的に支援する独自の事業モデルPVC(Pharmaceutical Value Creator)を持続的成長の基盤として、“個々人の健康価値を最大化”する事業モデルPHVC(Personal Health Value Creator)への展開を目指しております。新規の創薬基盤技術による医薬品開発やデジタル化への対応を強化するとともに、ヘルスケア分野へ事業領域を広げ、予防から診断、治療、予後に至る疾患のトータルケアの支援等を通じて、持続的成長に向けたグループ経営基盤の強化と飛躍を図っていく方針です。

2021年11月策定の中期計画(FY2022-2025)では、①ヘルスケアビジネスの進展、②疾患予防・治療の研究開発から販売まで総合的な支援の強化、③社会的有益性の高い事業を通じたサステナブルな社会への貢献、を重点課題に掲げております。中期計画2年目となる2023年9月期は、各課題への施策を着実に進めてまいりました。

 

[売上高及び営業利益]

当連結会計年度においては、中期計画の重点課題への取組みとして、医療・ヘルスケア分野におけるDX

Solutionの促進と、デジタル・人財の両面から地域社会を支える自治体向けビジネスソリューションの提供、製薬企業及びバイオベンチャーの新規案件獲得に注力しました。また、当社グループの企業理念である「CMIC’S CREED」の実現につながる社員一人ひとりのバリュー:PBV(Personal Business Value)向上を目指し、経営戦略と連動した人事施策に取り組みました。

2023年4月にCDMO(医薬品製剤開発・製造支援)事業における株式会社日本政策投資銀行との資本業務提携解消と、大日本印刷株式会社(DNP)との戦略的事業提携契約の締結、それに伴うシミックCMOグループの異動を決定し、第3四半期連結会計期間においてシミックCMO株式会社、CMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA

Corporation が連結子会社から持分法適用関連会社となりました。これによりCDMO事業の拡大成長とともに、シミックグループがPVCモデル展開の戦略方針を維持しつつ、ヘルスケアビジネス創出に経営資源を有効活用し、持続的な成長を図ってまいります。

ウクライナ情勢の長期化等により地政学的リスクが高まり、事業への影響が懸念される状況が続いております。当連結会計年度において当社グループへの直接的に大きな影響は発生しておりませんが、エネルギー・原材料等の価格や人件費が上昇していることから、価格動向や供給問題について引き続き注視し、事業への影響を最小限に留めるよう取り組んでおります。

当連結会計年度においては、製薬ソリューションセグメントのCRO事業やMarket Solutions事業が大幅に伸長しました。一方、前連結会計年度から継続していた自治体向け大規模ワクチン接種案件の一時的な需要が新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い減少したこと、シミックCMOグループが2023年6月30日をみなし譲渡日として連結除外となった影響により、売上高104,701百万円(前連結会計年度比3.5%減)、営業利益10,267百万円(前連結会計年度比13.3%減)、経常利益10,022百万円(前連結会計年度比25.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,152百万円(前連結会計年度比14.7%減)と、前連結会計年度を下回りました。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

(%)

売上高

 

108,461

104,701

△3,759

△3.5

 

製薬ソリューション

78,188

78,060

△128

△0.2

ヘルスケアソリューション

31,007

27,922

△3,085

△10.0

調整額

△735

△1,281

△546

営業利益

 

11,845

10,267

△1,578

△13.3

 

製薬ソリューション

4,752

5,184

+432

+9.1

ヘルスケアソリューション

8,660

7,029

△1,630

△18.8

調整額

△1,566

△1,946

△379

経常利益

13,450

10,022

△3,427

△25.5

親会社株主に帰属する当期純利益

8,387

7,152

△1,234

△14.7

 

セグメント別の業績は以下のとおりです。

 

<製薬ソリューション>

製薬企業のバリューチェーンに対し、CRO(医薬品開発支援)事業、CDMO(医薬品製剤開発・製造支援)事業、Market Solutions(医薬品営業支援、オーファンドラッグ等の開発・製造販売・流通)事業を通じてソリューションを提供するPVC(Pharmaceutical Value Creator)事業モデルを展開しています。

 

売上高につきましては、シミックCMOグループが2023年6月30日をみなし譲渡日として連結除外となった影響により78,060百万円(前連結会計年度比0.2%減)となりましたが、営業利益につきましては、主にCRO事業の伸長により5,184百万円(前連結会計年度比9.1%増)となり、減収増益になりました。

 

CRO事業

・売上高は前期を上回る

・海外バイオベンチャーの日本進出や異業種のヘルスケア領域参入等の総合コンサルティング強化

・DX(Digital Transformation)推進やDTx(Digital Therapeutics)参入支援の増加

‐国立がん研究センター中央病院初の希少がんオンライン治験(フルリモートDecentralized ClinicalTrials)を支援

・次世代抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療薬、バイオマーカーなど、モダリティの多様化が進む先端領域の有効性・安全性評価・分析案件増加

 

CDMO事業

・売上高はシミックCMOグループの連結除外による影響により、前期を下回る

・DNPグループとの事業連携

‐DNPの包装技術とシミックの製剤開発技術の掛け合わせによる付加価値型医薬品開発

‐DNPの医薬原薬のプロセス開発・製造から、シミックの製剤開発・製造に至る一貫体制の確立

・新型コロナウイルス感染症拡大やジェネリック品質問題の影響に対し、安定供給の確保に向けたニーズが拡大

・エネルギー、原料、包装資材などの価格上昇による製造原価増加

・足利注射剤棟は順調に大型案件の生産・販売を開始

・米国の包装ライン稼働、新規案件獲得に注力

 

Market Solutions事業

・売上高は前期を上回る

・人員調整を進める製薬企業がアウトソーシングを加速し、MR派遣市場が拡大

・MR派遣業務の引き合いが順調で採用強化

・尿素サイクル異常症治療薬グリセロールフェニル酪酸(海外販売名Ravicti®)の日本国内第Ⅲ相臨床試験開始とこれに伴う研究開発費の増加

 

<ヘルスケアソリューション>

医療関連施設及び医療従事者等を総合的に支援するSite Support Solutions事業と、個人及び自治体等にヘルスケアの新たなエコシステムを用いたソリューションを提供するHealthcare Revolution事業で構成しております。

 

売上高につきましては、前期から継続していた新型コロナウイルス感染症のワクチン開発及び接種支援業務に加え、陽性者フォローアップや抗原検査キット販売等の自治体向け支援業務が、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い減少したことにより27,922百万円(前連結会計年度比10.0%減)、営業利益につきましても7,029百万円(前連結会計年度比18.8%減)と、減収減益になりました。

 

Site Support Solutions事業

・大型の新型コロナウイルス感染症ワクチン開発案件の減少により、売上高は前期を下回る

・堅調な受注獲得

・医療機関の治験事務局支援が拡大

・アカデミアとの連携拡充

 

Healthcare Revolution事業

・売上高は自治体向け大規模ワクチン接種案件の需要減少により前期を下回る

・新型コロナウイルス感染症関連案件の継続と自治体向け人財支援業務の拡大

・疾病予防・健康情報やIT技術を融合したビジネスの拡大に取り組む

‐てんかん患者・家族向け支援プラットフォーム「nanacara」の導入医療機関の増加と、「nanacara」を基盤としたサービスの対象疾患拡大

‐てんかん患者支援の薬局開設

‐デジタル田園都市国家構想に沿った地方自治体の事業支援開始

・「harmoワクチンケア」がマイナポータルと連携開始

 

[経常利益]

当連結会計年度の経常利益は10,022百万円(前連結会計年度比25.5%減)となりました。

なお、営業外収益として為替差益等253百万円、営業外費用として持分法による投資損失等497百万円を計上しております。

 

[親会社株主に帰属する当期純利益]

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は7,152百万円(前連結会計年度比14.7%減)となりました。

なお、特別利益として投資有価証券売却益等3,388百万円、特別損失として減損損失及び固定資産除却損等1,535百万円、法人税、住民税及び事業税として4,163百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益として137百万円を計上しております。

 

[財政状態]

当連結会計年度において、シミックCMO株式会社、CMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA Corporationが連結子会社から持分法適用関連会社に移行したことにより、資産、負債、純資産は前連結会計年度末と比べ、著しく変動しております。

資産合計は、前連結会計年度末比で37,374百万円減少し、70,215百万円となりました。これは主に、有形固定資産、売掛金及び契約資産、棚卸資産等の減少と、現金及び預金、投資有価証券等の増加によるものであります。

負債合計は、前連結会計年度末比で33,938百万円減少し、32,382百万円となりました。これは主に、借入金、リース債務、未払法人税等などの減少によるものであります。

純資産合計は、前連結会計年度末比で3,436百万円減少し、37,833百万円となりました。これは主に、非支配株主持分の減少と利益剰余金、自己株式等の増加によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比で7,328百万円増加し、19,032百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、10,449百万円の収入(前連結会計年度11,213百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益、減価償却費及び売上債権の回収等による資金の増加と法人税等の支払いによる支出等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、2,136百万円の収入(前連結会計年度8,045百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入、長期貸付金の回収による収入等による資金の増加と有形・無形固定資産の取得による支出等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,606百万円の支出(前連結会計年度1,230百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出、配当金の支払等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

1) 生産実績

当連結会計年度のセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2022年10月1日

  至 2023年9月30日)

前連結会計年度比(%)

製薬ソリューション

74,047

△4.1

ヘルスケアソリューション

27,433

△8.7

合計

101,481

△5.4

(注)1. 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 第3四半期連結会計期間において製薬ソリューションに属していたシミックCMO株式会社、CMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA Corporationは、連結子会社から持分法適用関連会社へ移行いたしました。同社の第3四半期連結会計期間末までの生産実績を含めております。

 

2) 受注実績

当連結会計年度のセグメントごとの受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結

会計年度比

(%)

受注残高

(百万円)

前連結

会計年度比

(%)

製薬ソリューション

65,653

△18.9

68,374

△8.5

ヘルスケアソリューション

25,669

△14.4

14,426

△10.6

合計

91,322

△17.6

82,800

△8.9

(注)1. 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 第3四半期連結会計期間において製薬ソリューションに属していたシミックCMO株式会社、CMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA Corporationは、連結子会社から持分法適用関連会社へ移行いたしました。同社の第3四半期連結会計期間末までに販売した受注については受注高に含めており、受注残高には含めておりません。

 

3) 販売実績

当連結会計年度のセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2022年10月1日

  至 2023年9月30日)

前連結会計年度比

(%)

製薬ソリューション

77,196

△0.9

ヘルスケアソリューション

27,471

△10.0

調整額

32

-

合計

104,701

△3.5

(注)1. セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 連結売上高の10%以上を占める相手先がないため、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しております。

3. 調整額は、各報告セグメントに配分していない当社(持株会社)に係る売上高であります。

4. 第3四半期連結会計期間において製薬ソリューションに属していたシミックCMO株式会社、CMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA Corporationは、連結子会社から持分法適用関連会社へ移行いたしました。同社の第3四半期連結会計期間末までの販売実績を含めております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。ただし、将来に関する事項には不確実性があるため、実際の結果は、これら見積りと異なる可能性があります。

なお、現時点において、新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループの業績に与える影響は限定的であると仮定して、重要な会計上の見積りを行っております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況、②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

なお、2023年11月7日付プレスリリース「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」において公表いたしましたとおり、株式会社北杜マネージメントによる当社の発行済普通株式に対する公開買付け及びその後の一連の手続きを実施することにより当社株式が上場廃止となる予定です。

 

③ 当社グループの資本の財源及び資金の流動性の状況

1) 資金の流動性について

 資金の流動性につきましては、当社及び一部の連結子会社の資金を集中管理することにより、余剰資金の効率化を図っております。また、手許流動性確保のために、コマーシャル・ペーパー発行枠、当座貸越枠及びコミットメントライン契約等の調達手段を備えております。

2) 資金の調達

 当連結会計年度の資金調達は、調達コストとリスク分散の観点による長期と短期のバランスを勘案し、コマーシャル・ペーパー発行と金融機関等から短期借入と長期借入により、資金調達を行いました。

3) 資金の使途

 当連結会計年度の資金の使途は、主として、事業活動の維持拡大に必要な事業資金及び設備投資資金です。主な設備投資につきましては、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」の記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、契約解消の合意により終了した経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

契約会社名

相手方の名称

契約

締結日

契約期間

契約内容

シミック

ホールディングス

株式会社

株式会社

日本政策投資

銀行

2018年

3月30日

2018年3月30日から

2023年9月期の決算確定から3ヵ月以内

資本提携

 当社連結子会社 シミックCMO㈱株式の保有

業務提携

 CDMO事業の設備投資を中心とした事業成長の推進

 また、当社は2023年4月17日開催の取締役会において、当社連結子会社のシミックCMO株式会社による大日本印刷株式会社に対する自己株式処分及び第三者割当増資の実施に関する契約並びに当社と大日本印刷株式会社との戦略的事業提携について決議し、同日付で大日本印刷株式会社と締結いたしました。

 当該取引によりシミックCMO株式会社並びに同社傘下にあるCMIC CMO Korea Co., Ltd.及びCMIC CMO USA Corporation は当社の連結子会社から持分法適用関連会社となりました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

6【研究開発活動】

当社グループは、オーファンドラッグなどの共同・自社開発や製剤技術開発を通じて、知的財産の蓄積と新たな収益モデルの構築を目指すとともに、人々の健康維持や健康増進に貢献するヘルスケアビジネスを創出し、事業を通じた社会貢献を目指しております。

当連結会計年度において当社グループにおける研究開発費の総額は369百万円となっており、各報告セグメントにおける主な研究開発活動の状況及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1) 製薬ソリューション

当セグメントにかかる研究開発費は、233百万円であります。

 

CRO事業においては、非臨床業務における分析及び試験法の開発を行っております。

国内及び米国においてバイオ医薬品の分析手法の開発や、先端医療分野における薬効評価モデルの技術研究等を行っております。当連結会計年度においては、バイオマーカー及び高分子医薬品の分析技術開発など、開発コンサルティングや生物学的安全性試験支援等の事業活動を通じて、再生・細胞医療を含む先端医療分野における研究開発活動を行っております。

 

CDMO事業においては、製剤技術水準の高度化及び製剤開発力の強化を図っております。

国内及び海外子会社において、医療用及び一般用医薬品等の製剤及び包装技術開発を行っております。当連結会計年度においては、製薬会社をはじめバイオベンチャーやアカデミアへの製剤開発支援等の事業活動を通じて、製剤技術に係る研究開発活動を行っております。

 

Market Solutions事業においては、主にオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発を行っております。

オーファンドラッグの開発では、オーファンドラッグ製剤の製造プロセス検討や、既存品のポートフォリオ拡大に向けた新たな剤形の開発等を行っております。

 

(2) ヘルスケアソリューション

当セグメントにかかる研究開発費は136百万円であります。

 

Site Support Solutions事業においては、アカデミア等との協同により新たな医療サービス創出のための研究開発を行っております。

 

Healthcare Revolution事業においては、デジタルテクノロジーを活用した健康支援ビジネスの開発に取り組んでおります。

電子お薬手帳harmo(ハルモ)の基盤となる情報管理システムを活用し、ワクチン予防接種データの電子的管理による適切で安全な予防接種の推進を目的とした研究開発を行っております。