文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、グローバルな「粉体技術連峰」の形成により、「粉体技術」の分野において常に世界のナンバーワン企業であり続けることを志向しております。既存のプロセス機械装置及びシステムエンジニアリングに加え、新素材などのマテリアルビジネス関連事業を新たに展開し、先端的「粉体技術」の一層の進展を図ります。また、粉体技術関連事業のみならず、プラスチック薄膜技術の分野においても、強力なブランド力と卓越した技術開発力を背景に高付加価値製品を提供し続けることにより競争力の強化を図ってまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、資産規模の適正化と収益力の向上をバランスよく推し進め、企業価値を高めていくことを目指しており、総還元性向30%以上と連結ROE(株主資本利益率)10%以上の達成を目指しております。
(3) 経営環境並びに優先的に対処すべき課題
足元の経営環境につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。当社グループは、2021年10月1日より「Challenge to be Global Standard ~ホソカワミクロングループの最先端技術を業界世界標準へ~」を基本方針とし、新たに第17次中期3カ年経営計画をスタートさせました。
引き続き、当社グループは、ナノパーティクルテクノロジーを含む革新的な粉体技術を提供する世界トップ企業であり続け、常に新しい技術と新しい市場の創造に挑むとともに、新素材の開発、製造、販売などのマテリアルビジネスを実現することにより、超優良企業を目指します。
当中期3カ年経営計画期間中における基本施策は以下のとおりであります。
① グローバル販売網拡大に向けたグループ連携の強化
未だに新型コロナウイルス完全収束には至っていないものの、世界的にワクチン接種が進んだことなどから、新型コロナウイルスと共存する社会を目指しながら経済活動が本格的に再開されるようになってきました。経済活動の再開に伴い、引き続き成長期待の大きい東アジア、東南アジア諸国、今後の成長が期待される中南米及びアフリカ諸国において、グループ各社との連携を深めながら、各国・地域に合った製品や販売戦略、販売網の見直しを進め、販売の拡大を図ってまいります。
② デジタル革命(DX : Digital Transformation)による情報一元化・共有での事業促進
デジタル化の流れは、コロナ禍を契機としてさらに加速しております。当社におきましても、粉体技術を通して社会に貢献するという理念の下、DXの推進により、あらゆる情報の一元化及び共有を図り、全従業員及び全部門の業務効率を最大化するとともに、仕事・社会の変革による持続成長可能な企業活動を目指すためのICTグランドデザインの再構築を図ってまいります。また、IIoT(Industrial Internet of Things)と当社システムとの融合によって、顧客に付加価値の高いサービスを提供することにより、顧客満足の向上、競合他社との差別化を図り、収益基盤の強化を推進してまいります。
③ 産業分野別マーケティングと製品開発の推進
顧客ニーズは、産業や市場、用途毎にますます多様化・高度化しております。このような顧客ニーズや市場動向に応じたマーケティングの推進を通じて、それぞれの原料加工において、最善の性能を発揮する新製品・新技術の開発や既存製品の改良を推進してまいります。また、研究開発のスピードアップを図るべく、グループの研究開発体制の見直しも進めてまいります。
④ 働き方改革と人材育成
当社経営の基本方針の一つである「人材集団の形成」を推し進めるため、時代に合った働き方や職場環境の整備を目指してまいります。また、チャレンジ精神を支援する風土作りや制度改革、さらには、グローバルな活動を担えるような、グローバル、かつ、オープンマインドな人材の育成に向けて、グループ内コミュニケーションをさらに活性化してまいります。
⑤ ESG/SDGsへの取組みと社会と環境保全への更なる貢献
当社グループではかねてより「粉体技術の開発を通して社会に貢献する」を企業理念とし、さらには「自然環境の保護に努め、次世代のための環境保全に取り組む」ことを当社グループの使命のひとつとして掲げてまいりました。この企業理念や使命をさらに追求し、企業価値の向上に努めてまいります。また、その一環として、当社Webページにおいて、まずは日本国内におけるサステナビリティの取組みについて開示内容の充実を図りました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、従前より、『経済的かつ優れた技術をもって顧客の多様なニーズに的確に対応してその満足を得るとともに、社会に貢献し、倫理的指針に基づく活動を通じ、自然環境の保護に努め、次世代のための環境保全に取り組む。また、従業員の積極的なチャレンジを可能にする充実した職場作りを推進し、株主への適切な利益還元を行うことを使命とする。』をミッションステートメントに定め、粉体技術の開発を通して社会に貢献することを経営理念として活動しております。今後も持続可能な社会の実現と事業の成長のために、重要な課題に取り組むとともに、SDGsの達成に貢献してまいります。
当社では、2021年11月にホソカワサステナビリティ委員会を立ち上げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点を踏まえ、マテリアリティ(重要性)を特定するとともに、CO2排出量の算定作業を進めてまいりました(いずれも日本国内が対象)。また、2022年11月にはTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)シナリオ分析チームを組織し、TCFDの提言に沿った取組みと情報開示を進めてまいりました。2023年10月にこれらの委員会/チームを発展的に解消し、取締役副社長を委員長とする「ホソカワサステナビリティ経営委員会」及びその下部組織として「ホソカワサステナビリティワーキンググループ」を発足いたしました。今後はこれらが中心となり、グループ全体にわたるサステナビリティ及び気候変動を含めた環境に関する方針や施策の立案や実行を審議・決定してまいります。また、ホソカワサステナビリティ経営委員会における検討内容は取締役会に報告し、助言や審議を受けております。

マテリアリティの特定
①気候変動
当社グループでは、2050年のカーボンニュートラル実現という社会目標の実現に向け、TCFDの提言に沿い、2100年における世界の気温上昇が1.5℃上昇、2℃上昇、4℃上昇の世界観を想定し、2030年及び2050年におけるシナリオ分析を実施、9つのリスクと4つの機会を抽出し、売上や利益などに関する影響等を評価いたしました。
初年度は対象をホソカワミクロン株式会社(国内のみ)、ホソカワミクロン化粧品株式会社、ホソカワ受託加工株式会社に絞り、シナリオ分析を進めました。今後順次、海外連結子会社にも展開していきます。
なお、以下に示す政府機関及び研究機関で開示されているシナリオなどを参照して、重要度の評価及び財務影響の分析を実施しています。
国際エネルギー機関(IEA):「World Energy Outlook 2022」NZE2050/APS/STEPS
気候変動に関する政府間パネル(IPCC):「AR6」SSP1-1.9(1.5℃シナリオ)/SSP1-2.6(2℃シナリオ)/SSP5-8.5(4℃シナリオ)
9つのリスク
4つの機会
カーボンニュートラルに向けて需要が拡大しているBEVなどに欠かせない産業や業界へ二次電池やモータといった原材料の微細化や高機能化技術を提供していくとともに、代替食料や医薬品など成長の見込まれる分野への展開、さらには食品廃棄ロスの削減につながる製品・システムの開発、販売に努めてまいります。
特定したリスク、機会に対しましては、次のような中長期での対応策を継続的に実施し、効果評価を行い、事業活動のレジリエンスを高めてまいります。
・事業活動におけるGHG排出量削減推進
・サプライチェーンの強靭化
・経営理念「粉体技術の開発を通して社会に貢献する」に基づいた製品・サービスの拡充
・低・脱炭素移行に伴う新たなマーケットニーズの探索
・積極的な情報開示と新たなサステナビリティ活動への取り組み展開
・レジリエンスの向上
その他の詳細につきましては、当社ウェブサイトURL
https://www.hosokawamicron.co.jp/jp/sustainability-new/tcfd/
からご覧いただくことができます。
②人的資本・多様性
a) 人材育成の方針
当社グループでは、「和と誠意と積極性」、「創造の精神」、「来たらざるを頼むなかれ我に備えあるを頼む」を3つの社是とし、「人材集団の形成」を経営の基本方針の一つにするなど、企業の競争力の源泉は「人」であり、従業員の積極的なチャレンジを可能にする充実した職場づくりを推進してまいりました。
b) 社内環境整備
上述のような考えのもと、当社グループ発展の中核を担う技術・技能及び知識において優れた人材を見出し、それにふさわしい称号と待遇を与える当社独自の自己研鑽のための制度として「特別専門職制度」を設け、社会的にも高く評価される専門家として育成し、併せて当社の技術・技能及び知識水準の向上をはかるための支援を行っております。また、2022年度には、従業員向けインセンティブプランとして当社国内に勤める全従業員を対象に信託スキームを利用した「RS信託」を導入いたしました。さらには、実際に機械や粉体を取り扱うテストセンター室において、実践的な経験を積ませるなど、OJTによる業務経験の蓄積を育成の中心とし、階層別研修やHosokawa English Program、e-ラーニングなどの座学も取り入れ、より良い社会の実現に寄与できる人材の育成に取り組んでおります。
研究体系と平均研修時間
※Hosokawa English Programについては、時間測定が難しいためデータ未記載
リスク管理全般については「リスク管理規程」を定め、リスクが顕在化する具体的恐れがあるとき及び危機が発生した際の会社の対応について定め、会社損失の最小化を図ることを企図しております。気候変動に対してはシナリオ分析にもとづき、気候関連リスクの洗い出しを行っております。特定された気候変動に関するリスクは、定期的に下記のプロセスにより管理し、ホソカワサステナビリティ経営委員会において、その回避や低減、コントロールを図り、機会への着手を早期に行うための方針策定や対応策の立案を行っていきます。同経営委員会は原則として四半期に1 回開催し、定期的に取締役会への報告や答申を行い、監督、指示を受けてまいります。

①気候変動
2022年9月期比において、2030年度のScope-1及び2のCO2排出量24%削減を目指します(日本国内事業のみが対象)。グループ全体については、現在、当社グループとしての全CO2排出量の算定を急いでおりますので、その結果が出次第、2024年9月期中には開示できるよう取り組んでおります。
②人的資本・多様性(日本国内の事業所のみを対象)
次世代育成対策推進法及び女性活躍推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定しております。また、これ以外にも働きやすい職場環境を目指した取り組みを行っております。
a) 次世代育成対策推進法にもとづく行動計画(計画期間:2024年3月31日までの2年間)
目標1. 育児休業の取得に関する社内規則など仕事と生活の両立に関する諸制度の周知や育児休業中のフォローを行う。
目標2. 年次有給休暇の取得促進(有給休暇取得率70%以上)
b) 女性活躍推進法に基づく行動計画(計画期間:2024年3月31日までの2年間)
目標1. 新規採用者の女性比率20%以上を目指す。
目標2. 育児休業取得率女性は100%を継続、男性は30%以上を目指す
c) その他働きやすい職場環境を目指した取り組み
・毎週水曜日の早帰りデー
・時間有給制度の導入
・在宅勤務制度の導入
・三六協定の遵守(1ヶ月の残業上限35 時間、1年間の残業上限360時間。特別条項として1ヶ月の残業条件80時間及び1年間の残業上限680時間)
また、多様性の確保に向けては、人種、国籍、性別、性的指向、宗教、障がい等に基づく差別をすることなく、公正・公平な採用活動を行うことを基本方針としております。また、従業員一人ひとりの人間性・多様性を尊重しており、全役員・全従業員への人権に対する教育強化を推進しております。
当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を与える可能性のある事項は下記のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの製品の需要は、世界各国に及んでおり製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けております。当社グループの販売先における政治・外交情勢の不安定化、貿易摩擦・貿易戦争、景気後退及びこれに伴う需要変動や天候不順、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の蔓延などで予測を超えた変動があるときは、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループの業績は主として日本円、米ドル、ユーロ並びに英国ポンド等の外国為替相場の変動による影響を受けております。当社グループの連結財務諸表は日本円で表示されているため換算リスクと取引リスクという形で為替変動の影響を受けます。為替相場の変動は外国通貨で販売する製品及び調達する材料の価格に影響を与える可能性があります。
当社グループの海外での生産及び販売活動は、米州、欧州、アジア、中近東、アフリカ等にて展開されています。これらの活動については下記のリスク要因を十分考慮していますが、予測しないリスクが発生する場合があります。また、当社グループが事業展開する各国において、より厳格な法規制の導入や当局の法令解釈・運用指針の変更により、当社グループの活動が制限されることがあります。このようなリスクの顕在化により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
・政治又は経済要因
・法律又は規則の変更
・潜在的に不利な税の影響
・労働争議
・テロ行為又は戦闘行為
当社グループでは、客先との合意に基づく最適な納入仕様の決定を行うとともに、各工場での厳格な品質管理の上、客先の検収をいただいております。製造物にかかる賠償責任につきましては製造物賠償保険に加入していますが、保険でカバーされない製造物責任リスクにより多額のコストが発生する場合やブランドイメージの棄損などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、将来の客先のニーズを予測し、新技術の開発を継続的に実施してきましたが、予測を超えた社会環境の変化や客先のニーズの変化により、最終的に客先にその新技術が受け入れられない可能性があります。
また、新技術の一部には許認可が必要なものもあるうえ、許認可申請をしても承認される保証はありません。
このような場合、新製品・サービスの投入が遅れ、競合他社や新規参入企業に対する優位性が低下し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、「ホソカワミクロングループコンプライアンス憲章」を定めるとともに、「コンプライアンス規程」(国内)及び「Hosokawa Micron Group Compliance Charter」(海外グループ)を規定し、全役職員のコンプライアンス意識を高めるよう努めております。しかしながら、法令違反が生じた場合には業務停止や課徴金等の行政処分を受ける可能性があります。
また、個別に想定される当社グループを相手とした製品保証等の訴訟については、妥当と思われる引当額を計上しておりますが、当社側の主張・予測と相違する結果、多額の賠償等コストが発生する場合があります。このようなリスクの顕在化により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、他社製品と差別化できる高度な技術及びノウハウを保持しており、またこれらの保護について最善の努力を傾注していますが、特定の地域では知的財産権による完全な保護が困難であるおそれがあり、そのため第三者が当社グループの知的財産を使用して類似した製品を製造することを防止できない可能性があります。一方、当社が使用する技術及びノウハウ等が不可避的に他社の知的財産権に抵触し係争に発展する可能性があります。
当社グループでは取引先の財務情報を参考に与信管理を行い、取引先の信用リスクに備えています。しかし、倒産のような予期せぬ事態により債権回収に支障が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
インターネット等を通じて当社グループに対する悪評・誹謗・中傷等の風説が流布する可能性があります。これらは、たとえ事実と異なる内容であったとしても、当社グループへの信頼及び企業イメージを低下させ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、世界中に製造販売・サービス・研究開発の拠点を有しております。地震や台風、豪雨による風水害等の自然災害に対して損害の発生及び発生時の損害の拡大を最小限におさえるべく、耐震化を進めるほか、点検・訓練の実施、連絡体制の整備に努めております。
さらに当社グループは、新型コロナウイルス感染症のような未知の感染症の世界的拡大(パンデミック)に備え、従業員の健康と安全の確保を最優先に感染防止対策を徹底しております。しかしながら、甚大な自然災害により、当社グループの従業員、生産設備、システムやサプライチェーン等に被害が発生し、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、社内において感染症の拡大が認められた場合、一時的に業務停止等の措置を講じることにより、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
11 情報セキュリティ
当社グループでは、業務上必要となる個人情報を含む各種情報を情報システム上で管理しております。これらの情報システムやネットワークの管理においては、安定稼働やセキュリティ対策に力を入れ、適切なサーバの管理や情報のバックアップ等の必要な措置を講じております。しかしながら、予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入等により、万一、これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
12 人材確保
当社グループでは、製造・開発・販売・技術・管理、その他専門分野に携わる優秀な人材を幅広く採用・育成することで、グローバルな事業活動の推進と競争力の維持向上を図っております。しかしながら、人材採用競争の激化、労働市場の状況変化等により、優秀な人材を十分に確保できなかった場合、社内人材の育成が奏功しなかった場合、あるいは社員の退職等によって十分な人材確保ができなかった場合、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
13 調達・生産等
当社グループでは、原材料や部品等が安定的、タイムリーかつ合理的な価格で供給されることを確保するため、調達先の複数化や自国/域内調達等の対応を進めております。しかしながら、調達先の倒産/廃業、大規模災害や世界的な感染症の拡大等により、短期的に対応が困難な場合があるほか、原材料や部品等の供給不足、物流網の混乱などにより納期遅延等が発生し、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、急激な需給環境の変化などにより、予期せぬ素材やエネルギー価格の急騰、供給逼迫の長期化等から、調達価格の高騰が避けられない場合があり、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
14 環境規制・気候変動への対応
地球環境問題及び気候変動への対応は社会課題の一つであり、当社グループでも、環境規制及び関連法規等の遵守、気候変動の緩和に向け、「粉体技術の開発を通して社会に貢献する」との経営理念にもとづき取組みを開始しておりますが、低炭素社会の実現に向けた規制への適合や取組みのため、必要なコストが増加する可能性があります。また、対応が困難であった場合や、不十分な場合、さらには遅れが生じた場合は、当社グループの活動や、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
このような経済環境の中、客先への納期は依然として長いままながら、前期からの豊富な繰越受注残高が安定的に売上に寄与してくるようになってきました。また、再び対ドル、ユーロで円安傾向が強まったことで、邦貨換算上も有利に働いたことから、当連結会計年度の受注高は788億8千2百万円(前期比5.1%の増加)、売上高は795億3千1百万円(前期比18.9%の増加)となりました。受注残高は527億3千2百万円(前期比5.5%の増加)となりました。
利益面におきましては、特に期後半以降、仕入価格急騰に見合った販売価格へと転嫁を進めてきた案件が徐々に売上に寄与し始めたことから、収益性にも改善がみられ、営業利益は79億6千1百万円(前期比44.4%の増加)、経常利益は83億4千9百万円(前期比44.6%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は59億6千8百万円(前期比48.9%の増加)となりました。
セグメントごとの業績は次のとおりであります。
当事業は、粉砕・分級装置、混合・乾燥装置及び日本市場においての大気汚染防止装置、製品捕集用集塵装置、精密空調制御装置等の製造販売、複合ナノ粒子を中心とした新素材開発とその商品化並びに微粉体受託加工サービスを提供するホソカワミクロングループの主力分野であります。
持続可能な社会の実現に向け二次電池電極材料用などの電子材料向けが引き続き拡大基調であったのをはじめ、植物由来肉の原料として需要が高まっている豆類の処理プロセス(プロテインシフト)などを中心に食品分野向けも好調に推移いたしました。また、裾野の広い化学業界向け、鉱産物関係向けなど幅広い分野で堅調であったほか、コロナ禍からの経済活動正常化に伴い、メンテナンスサービス活動も活発となりました。
これらの結果、当連結会計年度の受注高は656億6千4百万円(前期比14.9%の増加)、受注残高は422億2千4百万円(前期比18.1%の増加)となり、売上高は616億9千6百万円(前期比24.7%の増加)となりました。利益面では、増収に加え、値上げが徐々に浸透してきたことから、セグメント利益は80億9千7百万円(前期比62.4%の増加)となりました。
当事業は、単層から多層の各種プラスチック高機能フィルム製造装置の開発・製造・販売を行っております。
2010年度連結会計年度以降、おおむね右肩上がりの成長が続いてきましたが、成長をけん引してきた主力の米国向けに設備過剰感がでてきたことから、成約スピードが鈍化してきております。また、欧州向けも市況環境は冷え込んできております。この先、回復は見込まれるものの、本格的な回復までには若干の時間を要することが見込まれております。
これらの結果、当連結会計年度の受注高は132億1千8百万円(前期比26.2%の減少)、受注残高は105億7百万円(前期比26.1%の減少)となり、売上高は円安効果により、邦貨への為替換算上の上積みもあり、178億3千5百万円(前期比2.2%の増加)となりました。期後半以降、資材価格高騰を反映した案件の売上計上が進んできたことから利益率は回復してきましたが、期前半の低迷をカバーするまでには至らず、セグメント利益は14億2千7百万円(前期比25.6%の減少)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度の資産は、前連結会計年度に比べ、109億8千3百万円増加し、970億2千9百万円となりました。これは、主に受取手形、売掛金及び契約資産が59億4千4百万円、建物及び構築物が27億7千3百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度の負債は、前連結会計年度に比べ、58億3千7百万円増加し、381億2千5百万円となりました。これは、主に支払手形及び買掛金が16億1千6百万円、電子記録債務が12億2千8百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度の純資産は、前連結会計年度に比べ、51億4千5百万円増加し、589億3百万円となりました。これは、主に為替換算調整勘定が35億9百万円増加したこと、利益剰余金が27億3千5百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ、7億9千1百万円減少し、256億8千9百万円となりました。各キャッシュ・フローの概要は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、59億4千6百万円の資金の増加(前連結会計年度比21億8千8百万円の減少)となりました。主に税金等調整前当期純利益の計上によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、35億1千2百万円の資金の減少(前連結会計年度比9億1千3百万円の減少)となりました。主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、47億1千3百万円の資金の減少(前連結会計年度比32億9千7百万円の減少)となりました。主に自己株式の取得による支出によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の財政状態につきましては「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度は、2021年10月よりスタートした第17次中期3カ年経営計画「Challenge To Be Global Standard ~ホソカワミクロングループの最先端技術を業界世界標準へ~」の2年度目となります。初年度となる前連結会計年度は 新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株の拡大やロシアによるウクライナへの軍事侵攻など、世界経済は不透明感を増す一年となりましたが、当社グループにおいては、過年度からの旺盛な受注とそれに伴う高水準な受注残高を背景に、さらにはドル、ユーロなど主要通貨に対して円安が進んだこともあり、売上高は過去最高を更新し、新中期3カ年経営計画初年度から、売上面では当初設定した目標を上回る好調なスタートとなりました。
このような状況を踏まえ、当社グループでは、新中期3カ年計画の最終年度となる2024年9月期の連結財務目標について、売上高710億円(従来目標は670億円)、営業利益71億円(同67億円)、経常利益71億円(同67億円)、当期純利益49億円(同47億円)に修正し、当連結会計年度は、新しい目標達成に向けた基盤固めの年と位置付けてまいりました。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスのパンデミックについては、世界保健機構(WHO)から、もはや「世界的な公衆衛生上の緊急事態」ではないと発表されるなど、ウィズコロナからポストコロナへと移行した一方、ロシアによるウクライナ進行は解決への糸口が見えず、長期化の様相を呈しました。また、2018年から顕在化した米中対立は、5年が経過しましたが、特に先端半導体をめぐり、米中のハイテク覇権争いは激化しており、米中間貿易は縮小する動きもみられてきております。さらには、これら新型コロナウイルス、ウクライナ紛争、米中対立や過去の金融緩和政策などに端を発したインフレに対応するため、各国の中央銀行は政策金利を継続的に引き上げ、インフレの抑え込みを図りましたが、インフレ率は高止まりしており、政策金利の引き上げが経済活動の重しとなってきております。
このような経済環境の中、当社グループ製品の納期の短縮化は図られてはいないものの、さらなる長期化の傾向はみられず、長いままながら、納期も安定化してきたことから、コロナ禍以降顕著となった受注先行、売上遅延の傾向も解消に向かっております。また、当連結会計年度前半は、物価急騰の影響を受け客先への価格転嫁ができなかった案件の売上が残っておりましたが、期後半以降は、仕入価格上昇を販売価格に転嫁した案件の売上が徐々に進んだことから、利益率にも改善がみられました。
コア事業と位置付ける粉体関連事業におきましては、BEV化に向け、二次電池の電極材料製造に使われるシステムに対する需要は旺盛で、引合い/納入先に地域的な広がりを見せております。また、代替肉への利用を企図した豆類の処理システム(プロテインシフト)も欧米を中心に増加してきているなど、引き続きサステナブルな社会の実現を目指した投資が注目されております。医薬業界向けは好調だった前連結会計年度からの反動減とはなりましたが、培養培地製造システムなどを中心に高水準の受注となりました。その他、裾野の広い化学業界向けや、メンテナンスサービス事業など、全般的に堅調に推移いたしました。
これらの結果、受注高は656億6千4百万円(前連結会計年度比14.9%増)となりました。売上面では、好調な受注及び積みあがった受注残高からの売上により、前連結会計年度に比べ24.7%増の616億9千6百万円となりました。
もう一つの柱であるプラスチック薄膜関連事業におきましては、西欧諸国向け、中南米向けなど堅調な地域もありましたが、主力市場のひとつである米国向けは過年度から長期にわたり大型投資が続いた影響により、設備過剰感がでてきたことから、減速傾向が顕著となってきました。需給ギャップの解消から新規設備投資が本格的に再開されるまでには、少し時間がかかるものと見込んでおります。このような中ではありますが、ラミネーションフィルム用途に多層フィルム製造ラインなど、いくつかの大型案件も散見されました。
これらの結果、受注高は132億1千8百万円(前連結会計年度比26.2%減)となりました。期首の繰越受注残高が高かったことなどから、売上高は前連結会計年度と比べ、2.2%増の178億3千5百万円となりました。
当社グループでは一品一葉の受注生産体制を取っており、受注から設計、資材発注、製造、出荷/売上計上に至るまで、案件の規模により1年超のタイムラグがあります。そのため、客先からの受注後、資材発注や出荷までに購入部材等の高騰があった場合、当該高騰分を客先への販売価格に転嫁できず、受注時に想定した利益を確保できない案件も発生しておりました。現在の標準的な納期は、コロナ禍前に比べ2倍程度となっており、納期長期化の影響により、当連結会計年度前半まで、このような仕入価格急騰の影響を受けた案件の売上が残っておりました。しかしながら、期後半以降は、仕入価格急騰を反映した値上げ後の案件も徐々に売上に計上されてきたことから、利益率は改善に向かい、通期での売上総利益率は、前連結会計年度比0.4%ポイント改善いたしました。営業活動再開による販売費の増加、人件費の増加などにより販売費及び一般管理費の増加はありましたが、増収効果及び売上総利益率の改善により、営業利益は前連結会計年度と比べ44.4%増加の79億6千1百万円となり、過去最高益となりました。
経常利益も営業利益と同様、前連結会計年度と比べ44.6%増の83億4千9百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、同48.9%増の59億6千8百万円となり、いずれも過去最高益を更新いたしました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては 「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、継続的な新製品開発に向けた研究開発費用、さらには株主各位への配当金支払や株主還元の一環としての自己株式の取得等であります。また、長期性の資金需要は、粉体関連機器及びプラスチック薄膜製造装置の製造に係る工作機械等の製造設備や顧客テストに供するテストセンター機器、DX推進などのデジタル化投資、老朽化施設の更新、受託加工事業の増強のための設備投資等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、平時においては、現預金等の流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢の長期化などを要因として、全般的に顧客への納期が2.0倍前後になってきたこと、今年3月米国において銀行破綻が立て続けに発生したことをきっかけに世界的な金融不安が広まる恐れが高まったことなどから、通常より厚めの流動性を確保するよう努めております。
資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入による調達を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入等による調達を基本としております。
当連結会計年度末における借入金の有利子負債の残高は17億7千1百万円、現金及び預金の残高は259億2千8百万円となっております。
なお、当連結会計年度末における当社グループの流動比率は205.6%と流動性は十分な水準にあります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
既述のように、2021年10月1日より新たな第17次中期3カ年経営計画をスタートさせました。昨今の円安傾向を踏まえ、この中期3カ年計画の最終年度となる2024年9月期の目標を売上高710億円、営業利益71億円の達成に修正しております。
一部仕入部材において納期の問題解消にまだ時間がかかるものと思われるものも残っておりますが、仕入部材価格高騰の影響については、客先販売価格への転嫁も進んできており、この先、さらに想定を超えるような物価の高騰がなければ、徐々に値上げ後の案件が売上計上され、利益率は改善に向かうものと考えております。また、当社グループにおいて比較的汎用性の高いものについては、在庫を積み増すなど、納期の短縮にも努めております。
(注) 1 上記については、ロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。
2 (※)は契約更新年月日を記載しております。
(注) 1 上記については、ロイヤリティとして売上高の一定率を受取っております。
2 (※)は契約更新年月日を記載しております。
(注) (※)は契約更新年月日を記載しております。
(注) (※)は契約更新年月日を記載しております。
(注) (※)は契約更新年月日を記載しております。
当社グループは、高度化する多種多様のニーズに的確かつ迅速に応えていくため、また、地球上の各地域特有の独自性に対応するために、研究開発拠点を持つ日本並びに欧米の連結子会社が長年積み上げてきた固有技術のノウハウ交換によるシナジー効果を発揮しながら、グローバルかつ斬新な新製品・新技術の創成、生産システムの最適化、主力機種の改良など、幅広い研究開発活動を行っております。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
当事業に係わる研究開発費は
多くの産業の生産プロセスにおいて、固体の集合体である粉体の状態で粉砕・乾燥・混合などの処理工程が存在しており、その粒子の大きさや形状などにより化学的、光学的、機械的などの物理特性が変わるため、それらをコントロールする粉体処理技術が非常に重要になっております。新素材を創生し、製品の高機能化を生み出し、付加価値向上に寄与できる粉体処理装置・測定機器並びに省エネルギー・省力化を実現できる最先端のシステムを目指して、さらにはSDGsを考慮して、研究開発を続けております。
当連結会計年度では、次世代を担う超微粒子粉砕機、高性能分級機、省エネルギー乾燥機などの粉体処理プロセスや粒子形状測定機器を継続的に開発するとともに、予測されている人手不足の深刻化や海外企業との競争に備えるためのIIoTの実用化を図っており、既に具体的なサービスとして、設備から得られる情報を一元管理し、リアルタイムに運転状況を把握できるGEN4RM(Remote Monitoring)を販売しております。このGEN4RMからのデータを解析することにより設備の故障を予知できる技術の確立や、現実世界から収集した情報を使い仮想空間上に設備を再現し、先を予測するデジタルツイン技術も視野に入れて開発を進めております。
当社は、大型国家プロジェクトにおいて開発した独自の機能性ナノ粒子に薬物を封入する医薬製剤技術、並びに薬物送達技術(DDS)を駆使し、機能性化粧品や育毛剤(医薬部外品)などの自社ブランド製品を編み出し、継続的に機能UPのための改良を加えております。これらの製品は、日本国内ではホソカワミクロン化粧品株式会社を通じてB2Cモデルで提供し、海外市場では中国を中心にB2Bモデルとして当社から販売しております。
さらに、この優れた機能性ナノ粒子技術を駆使したODM製品の開発にも注力し、スキンケアやヘアケア分野での本技術の採用が年を追うごとに拡大しております。そして、2023年度には本ナノ粒子技術と再生医療技術の融合を成し遂げ、「ナノ×バイオ」テック機能性美容・育毛技術を完成させました。これは再生医療クリニックと共同開発した、エイジングケア効果に優れた“ヒト幹細胞培養上清液”を機能性ナノ粒子に封入したもので、それを配合した自社製品(製品名:PLGAns、アイラッシュセラムなど)やODM製品の美容・育毛機能は格段に高まりました。現在、PLGAnsは特定の再生医療クリニックとエステサロンと連携し、販売を開始しております。これらの開発活動に加えて、当連結会計年度も医科系大学との医療デバイスの共同開発やAMED(日本医療研究開発機構)での産官学連携プロジェクトなどにも積極的に参画し、機能性ナノ粒子技術の医薬品応用に向けた研究活動に邁進しております。
当事業に係わる研究開発費は
当社グループのプラスチック薄膜製造装置は、溶解された種類の異なるプラスチックをノズルからの噴出・冷却・延伸により、最大11層までのフィルムを連続的に製造することができ、ネット通販用包装材のような単層フィルムから、酸素・水蒸気などのガス浸透防止や内容物の匂いや香りを保護する多層フィルムまで幅広い用途に使用されております。
耐候性と強度に優れた高機能フィルムの需要は根強く、剛性、収縮率、透明度などの機械特性・光学特性をさらに強化できる一軸フィルム延伸ユニットの開発や、コンピュータモデリングによる溶解熱均一性を実現できる金型の設計など、プラスチック薄膜製造装置のリーディングカンパニーとして、世界最高水準の技術を追求し続けております。