文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)業績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス(以下「COVID-19」という。)感染症に関する行動制限の解除や渡航制限が撤廃された事に伴うインバウンドにより、経済活動は持ち直しし始めましたが、中国における政策転換に伴う感染の拡大やウクライナ情勢及び急激な円安に起因する資源価格の高騰等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く古物売買業界の事業環境は、COVID-19下のリベンジ消費、物価高や急激な円安に伴い高級ブランド品価格がウクライナ危機前まで上昇しましたが、その後米国の金利引き上げもあり、IT関連銘柄の下落、金融市場の混乱、景気動向の不透明感から、円安進行による円建での価格上昇により、堅調に推移し始め、昨年10月11日より渡航制限が撤廃された事に伴うインバウンド復活により、売上高はコロナ前の水準に向かって戻りつつあるものの、中国人渡航者制限が未だ続いておりますが、昨今の世界情勢を踏まえますと、中国でのインバウンドの解禁及びG7サミット開催を背景とした更なる渡航者の拡大や国内コロナ施策解除に基づく、買取・販売の増加がまもなく起きる事が期待されます。
当社グループでは、かかる現況下、コロナ禍による中国大陸からの渡航者のインバウンドや国内店舗での買取・販売の伸びが期待されず、リスクを回避したオペレーションを行っていました。今後、これらが改善し需要回復に向かう事に伴い、買取・販売が増加する事が見込まれ、今後の新たな需要機会に備えた体制を整え、攻めの経営に転じて参ります。加えて、ブランド品の買取に際して、大黒屋を中心とした永年に亘る顧客基盤、KYC判断能力、商品中心とした真贋鑑定及び査定力、そして在庫回転期間の一層の短縮化を強化し、更なる飛躍をしていきたいと考えます。
このような状況下、当社グループの当第3四半期連結累計期間の売上高及び利益は上記不安定な相場環境に対応する為、上期に引続き高額品の在庫の圧縮に努めた結果及び中国におけるCOVID-19政策の転換に伴う感染の急拡大による渡航制限もあり、売上は減収するも利益は大幅に改善となりました。
(売上高)
当社グループの当第3四半期連結累計期間の売上高は、9,978百万円(前年同期比2,920百万円減、同22.6%減)となりました。その主な要因は以下の通りであります。
まず、当社グループの根幹会社である株式会社大黒屋(以下「大黒屋」という。)において、当第3四半期連結累計期間の売上高は9,767百万円(前年同期比2,914百万円減、同22.9%減)となりました。
この減少要因は、先に事業環境で記載した通り、大黒屋では高級品相場の混乱から被る潜在的コスト負担を緩和すべく、上期に引続き一歩引いて効率的在庫管理を行い、更に一部店舗を買取専門店に特化し商品構成を変更した事によるものです。その結果、リアル店舗全体での売上高(リアル店舗のよる販売の事:以下「リアル」という。)が減少し、リアル4,514百万円(前年同期比3,666百万円減、同44.8%減)となりました。
また、ネット店舗商品売上高(インターネットによる店舗販売の事:以下「ネット」という。)においても広告効率の改善などの継続的なEC販売の強化活動を展開したものの中国でのコロナ施策の逆風を受け1,514百万円(前年同期比104百万円減、同6.4%減)となりました。
一方、本部商品売上高(古物業者市場等への販売のこと)については、コロナ禍の影響が緩和され市場が活況を呈してきた事もあり2,981百万円(前年同期比787百万円増、同35.8%増)となりました。
併営する質料収入においては、コロナ禍の影響化大口が減り小口顧客が増えた事から質料(貸付金利息)は644百万円(前年同期比57百万円増、同9.8%増)となりました。なお、質草預りに伴う営業貸付金残高(2,017百万円)は前年同期比325百万円増加しており第4四半期以降の質料アップが期待出来、更に質屋業はコロナ禍の影響下でも顧客の逼迫した金繰り要請に応える事が出来る事から今後も強化して参ります。
また、越境関連としましては、越境EC、ライブショッピング等の売上が731百万円(前年同期比82百万円増)と順調に増加していますが、一方で中国におけるゼロコロナ政策の転換による感染拡大で同国内における買取販売業の成長が鈍化しました。更に一昨年7月より開始したChrono24も462百万円と順調に推移しております。
(利益)
当社グループの営業利益は136百万円(前年同期比140百万円の改善)となりましたが、その主な要因は以下の通りであります。
まず、大黒屋において売上総利益は2,624百万円(前年同期比23百万円増、同0.9%増)となりました。この要因は店舗商品売上総利益(リアル)が売上高の減少に伴い993百万円(前年同期比354百万円の減少、同26.3%減)となった一方、店舗商品売上総利益(ネット)は326百万円(前年同期比58百万円の増加、同21.7%増)となり、本部商品売上高の売上総利益は635百万円(前年同期比182百万円の増加、同40.4%増)となりました。また質料(貸付金利息)は644百万円(前年同期比57百万円の増加、同9.8%増)となりました。なお、質料収入はそのすべてが売上総利益となります。
大黒屋の販売費及び一般管理費につきましては、ポスト・コロナを見据え費用対効果の観点から広告宣伝効率を改善しながら広告投資を積極的に行った結果、2,183百万円(前年同期比166百万円減、同7.0%減)と改善しました。なお、大黒屋では、のれんを計上しているため、第3四半期の償却費406百万円を販売費及び一般管理費に含めておりますが、連結決算においては、のれん償却費を消去するため、当該金額を控除した金額で記載しております。
以上の結果、大黒屋の営業利益は441百万円(前年同期比189百万円の増加)となりました。
一方連結累計では上記の通り大黒屋ののれん償却費が相殺される事により営業利益は136百万円(前年同期比140百万円の改善)となりました。当社グループの経常利益は、5百万円(前年同期比152百万円の改善)となりました。これは上記営業利益の改善と支払利息/手数料の改善によるものです。
以上の結果、当社グループの税金等調整前四半期純利益につきましては23百万円の損失(前年同期比128百万円の改善)となりました。
また、親会社株主に帰属する四半期期純利益は、197百万円の損失(前年同期比63百万円の改善)となりました。
なお、大黒屋において企業評価指標の一つであるEBITDAは483百万円(前年同期比188百万円の増加)となりました。
以上の通り当第3四半期連結累計期間において売上は減収するも利益は大幅に改善となりました。昨年10月11日以降の渡航制限の撤廃により大黒屋では中国人渡航者を除くコロナ禍以前の新たなインバウンド需要が再現しており、かかる動向を踏まえ下期において当該業績を十分挽回できると思料しております。
セグメント別の業績の状況につきましては以下の通りであります。
イ.質屋、古物売買業
当第3四半期連結累計期間における質屋、古物売買業の売上高及び営業利益は、それぞれ9,772百万円(前年同期比2,909百万円の減少、同22.9%減)、398百万円(前年同期比183百万円の改善、同85.15%増)となりました。
その主な要因につきましては、業績の概況にて記載しましたように、大黒屋において市場業者への売上は増加したものの店舗全体の売上高の落ち込みによるものです。
ロ.電機事業
当第3四半期連結累計期間における電機事業の売上高及び営業利益は、それぞれ205百万円(前年同期比10百万円の減少、同5.0%減)、45百万円(前年同期比5百万円の減少、同10.5%減)となりました。
電機事業においては、今もなお電機業界全体において設備投資の抑制が続いている事もあり、最終ユーザーによる設備の新設工事や点検工事などは年々減少しているのが実情であります。また、資材(原材料)価格の上昇や後継者不足による小規模下請け業者の廃業など、より一層厳しい環境が続いており、当社の電機事業にも大きな影響を与えています。
このような状況の下、当社電機事業部門におきましては、適正な利益を確保するため常に販売価格の見直しを行うとともに、製造原価の上昇を抑えるべく仕入先の転換(新規仕入先の拡充等)、現行取引ユーザーとの協力体制の拡充等、さまざまな手法をとって利益率の確保を目指し改善を行っております。
(2)財政状態に関する説明
当第3四半期連結会計期間における、資産、負債及び純資産の状況は以下の通りであります。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は、5,403百万円となり、前連結会計年度末に比べ517百万円の減少となりました。これは主に現金及び預金が現金及び預金が99百万円増加、商品及び製品が817百万円減少、その他の流動資産が110百万円減少した一方で営業貸付金が214百万円増加した事によるものであります。固定資産は、1,345百万円となり、前連結会計年度末に比べ96百万円の減少となりました。
この結果、総資産は6,748百万円となり、前連結会計年度末に比べ614百万円減少いたしました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は5,520百万円となり、前連結会計年度末に比べ745百万円の増加となりました。固定負債は104百万円となり前連結会計年度末に比べ1,194百万円の減少となりました。これは主に長期借入金が1,200百万円減少した事によるものであります。
この結果、負債合計は、5,624百万円となり、前連結会計年度末に比べ449百万円減少いたしました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、1,124百万円となり、前連結会計年度末に比べ165百万円の減少となりました。
この結果、自己資本比率は7.3%(前連結会計年度末は9.3%)となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループの基本方針は粗利益率及び在庫回転率の最大化を目的とし、市場環境に応じて適正在庫を管理し、適正価格で販売する事により限界収益の極大化を図ることにあります。その中にあって、中古ブランド品の流通は越境ECを始め全世界的規模で拡大し、当社グループが展望していた通り、中古ブランド品事業の物品はその物流がグローバルに展開しております。
かかる状況下、当社グループのビジネスモデルはCtoBの商品買取を基本とし、更にBtoCの商品販売を展開する事により、一般顧客より高く買取り、その都度市場状況を判断し、在庫リスクを極小化しつつ、在庫回転率を最大化する事で商品リスクを回避して顧客に商品を提供してきております。更に不況期に強い安定的な収入が期待できる質屋業を併営しており、コロナ下で厳しい小売業界にあって古物売買のみでは店舗の損益分岐点が低いため、併設している質料収入及び上記適正在庫管理、収益管理により、コロナ下における影響を最小限に留めております。
一方、当第3四半期会計期間に転じますと、国内での急激な円安の進行が長期化する中、COVID-19拡大の影響が長期化し第8波による国内感染者数が急増する等、依然として厳しい状況が続いております。世界経済においては、ワクチン接種が進んでいる欧米諸国が牽引する形で各種経済政策が進められ一定の回復は見せつつも、ウクライナ情勢の緊迫化や中国における政策転換に伴う感染の急拡大等の影響から景気動向の先行きは極めて不透明な状況で推移しております。
コロナ下においては、当社グループの強みである外部環境に応じたマネジメントにより、在庫リスクを最小限に抑える対応を行ってきました。今後、コロナ禍経済からの回復が見られ始めており、当社グループではそれに呼応した形で前向きな経営を展開していきたいと考えます。
このような環境の中、今後の当社グループの連結収益の改善並びに経営基盤の強化を図るために対処すべき課題とその対処方針は以下のとおりであります。
① オンライン買取販売事業の強化
当社グループでは新たな成長戦略の一環として、オンライン事業拡大方針の下、EC事業を強化して参りました。コロナ禍にあって外出自粛やリモートワーク等の影響でEC利用の需要が拡大している中で、当社がグループをあげて継続的且つ積極的に取り組んでおります、(a)顧客にわかりやすいECサイトの開発、(b)EC掲載商品点数の向上、(c)EC広告の効率改善活動を一層進めて参ります。当社グループでは、ECにおける買取販売事業を更に強化するため、システムにより情報を一元管理する事により店舗及びEC上の顧客を一元管理する事により顧客ニーズにあった商品やサービスの提供及び業務効率化のシステムを再構築するため令和2年11月にECサイトを一新しました。今後は同社のシステムをベースとした、グローバル化の一環として英語及び中国語による買取販売を更に強化して参ります。
また、買取販売事業の業務効率化及び顧客利便性向上のため、AIを駆使したデータベース分析に基づき、オンラインによる(a)グローバルでの中古ブランド品価格の適正化、(b)商品区分の整理の自動化による消費者の当社サイトへの商品掲載の容易化、(c)真贋鑑定の強化を推し進めて参ります。
② 新たな事業の展開強化
令和3年5月14日に公表しました大黒屋における新たな事業(a)オンラインオークション事業(b)ブランドバッグ・時計等のシェアリング事業の開始に向けては、コロナロスにより遅れてはいますが当社グループの多様な人材を再配置しシステム構築を図って参ります。
③ 質屋事業の強化
令和2年4月に発せられた第1回目の緊急事態宣言時に庶民金融である質屋業が個人の逼迫した資金ニーズを賄うものとして改めて再認識されました。かかる状況下大黒屋では創業以来75年で培った「質の大黒屋」としてのノウハウを活用して、顧客ニーズに応えるべく値付・真贋のできる店舗スタッフを育成・強化するとともに、来店出来ない顧客には訪問質預りで対応する等顧客の要望に応えて参りました。質屋業界最大手として今後も更に一層庶民金融の一翼を担って参ります。
④ 相場変動への適時対応、適正価格での在庫保有
当社グループを取り巻く古物売買業界の事業環境は、COVID-19下のリベンジ消費、物価高や急激な円安に伴い高級ブランド品価格がウクライナ危機前まで上昇しましたが、その後米国の金利引き上げもあり、IT関連銘柄の下落、金融市場の混乱、景気動向の不透明感から、円安進行による円建での価格上昇にも関わらず、高級ブランド品の価格が大幅に下落しており、古物市場での流動性が落ち、価格相場の混乱を招いています。かかる状況下、大黒屋では、CtoBの商品買取を基本とし、更にBtoCの商品販売を展開する際に、相場変動への適時対応やシステム内に構築された価格データを駆使して一般顧客より高く買取り、他の顧客に安く販売するというビジネスモデルを展開しております。特にバックにおいては在庫回転期間が30日以内で推移しています。かかる状況を踏まえ、引き続き、相場の状況を注視しながら余剰在庫を削減し、適正価格による在庫の確保を進めて参ります。
⑤ 電機事業の事業構造改革の実施
電機事業については、生産体制の更なる効率化や製品の統廃合や在庫管理の強化により製造原価の逓減を進め、結果として利益率が向上して参りました。今後も引き続きお取引先に理解を得ながら不採算製品の削減や在庫圧縮を徹底するとともに製造間接費の更なる削減を実施して参ります。
⑥ キャッシュ・フロー重視の経営と経営基盤の拡充
質屋、古物売買業の強化、電機事業の抜本的な事業構造改革及び本社経費の削減等により、営業利益拡大を図るとともに事業リスクを逓減させ投資の回収を図り、キャッシュ・フローを重視した経営を進めて参ります。
⑦ 異業種との業務提携
大黒屋が1947年の創業以来75年で培った正確な真贋鑑定能力、過去の知見に起因するデータの蓄積及びそのDX化の結果として、当社グループが構築した真贋鑑定システム、買取システム、Dynamic Pricing システム及びキュレーションシステム等の展開を更に推し進め当社グループと異業種との業務提携等を含め国内外のプラットフォーマーやブランド品関連企業へ提供していきます。その第1弾として大黒屋では作年4月20日に株式会社JTBと業務提携を開始し、更に新たな異業種との展開を推し進めて参ります。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動に重要なものはございません。