当第3四半期連結累計期間において、事業等のリスクについて重要な変更はありません。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防を目的とした行動規制が緩和されるなど、徐々に経済活動は持ち直しを始めてまいりましたが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による物価上昇に加え、世界的な金融引き締めを背景とした円安進行などもあり、国内外における経済の見通しは依然として先行きの不透明な状況が続いております。
このような環境のもと、当社の属する情報サービス産業におきましては、ビッグデータ、IoT、人工知能(AI)等のIT技術革新が加速度的に発展し、市場の拡大が引き続き見込まれる一方で、国内でこれらの開発を担う人材の不足が懸念されております。
このような状況の中、グローバル事業においては、主にフィリピンを拠点とする効率の高いオフショアリソースを活用したITアウトソーシング及びソリューション開発事業を展開しており、「ソフトウェアテスト等の実行・管理の自動化(Automation)」「ビッグデータと分析(Analytics)」「人工知能(AI)」等のコア技術を活かし、医療、金融/公共、自動車、製造業及び流通/小売・サービス業等に向け、数々のソリューションを継続して提案しております。さらに旺盛な引き合いを背景に、予想される大型開発需要や既存の主要顧客や成長市場での新たなソリューションに係る受注に対応すべく、これまでの積極的な新規採用や即戦力としての中途採用に加え、高難度のプロジェクトマネジメントを担う人材や成長市場にて必須となる技術分野に特化した高度人材の獲得・育成を実施しております。
メディカル事業においては、医療機関向けレセプト点検ソフトウェア『Mighty』シリーズのシェア拡大に向けた取り組みを継続しております。2023年5月、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い医療機関におけるアフターコロナへの対応が開始され、働き方改革関連法が、2024年4月から医師にも適用されることと相まって医療機関におけるDX化が加速しており、働き方改革に寄与するメディカル事業ソリューション「MightyChecker®」シリーズ、及び「Mighty QUBE®」シリーズの引き合いが増加しております。「レセプト点検×AI」を実現した次世代型レセプトチェックシステム「MightyChecker® EX」の引き合い及び販売も大手医療機関を中心に好調に推移し、レセプト点検ソフト「MightyChecker®」シリーズ、さらにはオーダリングチェックソフトの「Mighty QUBE® Hybrid」に代表されるストック型ビジネスを、盤石な収益基盤として確立しております。さらにはクラウドコンピューティングを活用したレセプト点検の推進や、学会や健保組合等へのデータ分析事業の取り組みの実施など、事業ポートフォリオの構成を変革したことにより、前倒しにて実施した高収益モデルの確立による効果が継続発現しております。
また、当社事業戦略のスローガンの1つである、「当社知財等を活用した新規事業の育成」においては、2020年9月より提供を開始した保険業界向け業務効率化ソリューション「保険ナレッジプラットフォーム」の横展開を推進し、複数の生命保険会社との実証実験を含めた具体的な商談を経て、受注を獲得しております。同時に、同プラットフォームにおける新たなDXメニューの開発にも着手しており、来期以降の磐石なSaaS収益の発現に向けた取り組みを行っております。
この結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高4,397,927千円(前年同四半期比12.5%増)、営業利益773,211千円(前年同四半期比5.3%増)、経常利益716,655千円(前年同四半期比4.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益461,437千円(前年同四半期比11.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示しますと、次のとおりであります。
a.グローバル事業
2022年5月成立の経済安全保障推進法を背景に、大手企業・大手SIerが調達先の見直しを行なっておりました。
その結果、安全な業務委託先として、フィリピンをベースとする当社に対する需要が当年度に大幅拡大する見込みであり、資本・業務提携を含む引き合いも増加しております。この需要拡大に迅速に対応するため、グローバルIT技術者の大量採用と教育を実施しています。
・グローバル部門
グローバル部門においては、ソフトウェアテストやその実行・管理の自動化、製品開発支援及びアプリケーション開発分野での、日本における既存のピラー顧客からの受注が堅調に推移しております。AI先進分野の領域においては、グローバル大手製薬企業などの医療領域をはじめとする新規受注を順調に拡大するなど、業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化に向けた積極的な取り組みを継続強化しております。一方で、当年度第2四半期以降のPC機器市場状況が、新OSの発売前の買い控えの影響も一部見られたこともあって、コロナ禍での在宅勤務特需水準からコロナ禍前水準に戻る結果となり、伸長が期待される他分野へのリソース転換を実施しています。
ピラー顧客を持つオートモーティブ分野においては、EV化にともなったIT技術者の需要が大幅に見込まれるため、昨年度から国内Tier-1/Tier-2メーカーに対して継続的な提案を続け、第1四半期から新たな顧客との協業が継続しています。今後も国内を始め、フィリピンが持つ英語でのコミュニケーション力を活かしてグローバルの他のメーカーへの横展開を積極的に推進し、事業の拡大を目指します。
AIソリューションの一つであるIVA(インテリジェントビデオ解析)技術を活用したEdge IoT/AIoT/AR領域に関しては、引き続き製品外観検査等の工場DXに資するスマートファクトリーの分野において、協業が継続しており、今後は同領域におけるさらなる横展開が期待され、協業提案を推進しています。
AIによるデータ・アナリティクス領域においてもグローバル大手製薬企業との協業が進み、当社のGenerative AI技術を活用したPoCを経て、今後グローバルへの展開が期待されます。
また、コロナ禍においてDXへの投資を大幅に控えていた顧客分野においても投資再開が始まっており、これをコロナ禍後の大きなチャンスと捉え、さらには来年にかけて見込まれる旺盛な需要に対応すべく、戦略的投資を実施いたしております。
これら投資の内訳といたしましては、先端IT技術及びプロジェクトマネジメントスキルを中心とした人材に係る再教育に加え、中途採用の増加や案件増加に伴う拠点拡充などが挙げられ、今後は既存のコア技術と併せて、ソリューションの横串的展開を推進してまいります。中国の拠点においては、継続的な法人向けPC需要を基盤としつつも、当年度第2四半期以降にPC機器市場状況が新OSの発売前の買い控えの影響も一部見られたこともあって、コロナ禍前水準に戻ったため、リソース適正化を実施し、中国拠点の強みであるIT機器テスト技術領域を他の分野へ展開する準備を進めています。また、当社が出資を行っているシリコンバレーのベンチャーキャピタル「GoAhead Ventures」のオフィスにて、当社サテライトオフィスを開設している米国での調査や、テクノロジー企業との協業に向けた取り組みを推進し、グローバルAI市場の拡大を見据えた、先進技術に係る取り組みの継続強化を図ってまいります。
・エンタープライズソリューション部門
エンタープライズソリューション部門においては、これまで中心であった金融セクター、公共セクターに加え、製造・流通セクターやその他サービスセクターの新規案件の立ち上げを推進しております。来期にかけて見込まれる当社始まって以来の大型案件の拡大を見据え、また、経済安全保障推進法を背景としたオフショア推進の多国化の潮流を受けて今後予想される人材リソースの不足に対応すべく、人材の再教育及び中途を含めた積極的な人材投資を実施しており、当社グループの成長戦略に沿った取り組みを継続しております。
引き続きグローバル事業の両部門において、盤石な既存事業のキャッシュを、新たなソリューションの開発、さらには優秀な先端IT人材への積極的な採用・投資に振り向けることにより、今後さらなる成長を見据えた戦略の実現を目指してまいります。さらには、人材を育成するための独自研修プログラム「ACTION」での採用及び研修を再開し、優秀な人材の獲得・育成を強化しております。また、価格政策に加え、為替を含めた外部環境の変化に向けた対応についての施策を推進いたします。
既存の主要顧客の売上高の伸長及び高度な新ソリューションに係る受注は順調に拡大しており、さらなる需要見通しの拡大を受け、第2成長フェーズに向けた積極的な人材投資を行っております。
この結果、グローバル事業の売上高は3,182,546千円(前年同四半期比14.4%増)、セグメント利益は290,199千円(前年同四半期比7.0%減)となりました。
b.メディカル事業
2024年4月から働き方改革関連法が医師にも適用されることを背景に、子会社である株式会社エーアイエスの主力製品であるレセプト点検ソフト「MightyChecker®」及びオーダリングチェックソフト「Mighty QUBE®」の引き合いは、引き続き順調に拡大しております。戦略的商品である、次世代レセプトチェックシステム「MightyChecker® EX」についても、直販を中心に導入数は堅調に推移いたしました。これら大手医療グループ内における横展開に加え、新型コロナウイルス感染症対策としてWEBを活用した営業・サポートへの移行により、さらなるダイレクトアカウント(直接販売)獲得、ソリューションの重ね売り(顧客単価アップ)の推進を行っており、今後は当社ソリューション導入による経済効果を見据えた新価格政策の取り組みを強化してまいります。それに加え、当第3四半期より、「MightyChecker®」の既存取引先電子カルテメーカーとの提携で、中小病院をターゲットとした「Mighty QUBE® Hybrid」のクロスセル施策を本格的に開始し、複数の引き合いの中から、1社と業務提携を締結いたしました。電子カルテの導入済及び未導入の施設を合わせると、「Mighty QUBE® Hybrid」のマーケットサイズは約62億円を見込んでおり、さらなる受注拡大を図ってまいります。
また、医療クラウドサービスSonaM(そなえむ)や、生損保向け新ソリューションの開発、その他データ分析(健保組合・学会等)マーケットへの本格参入の計画、遠隔サービスプラットフォームの準備の開始など、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げ、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスクリプション型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施し、さらなる収益率向上の実現に向けた施策に取り組んでまいります。これら新施策の一つである、医療データベースを活用した支払審査検索エンジン「保険ナレッジプラットフォーム」の本格的な横展開を推進し、複数の生命保険会社との実証実験を含めた具体的な商談を経て、受注を獲得しております。同時に、同プラットフォームにおける新たなDXメニューの開発にも着手しており、来期以降の磐石なSaaS収益の発現に向けた取り組みを強化、今後は新たなサブスクリプション型メニューとして、保険業界全体へ向けた本プラットフォームの浸透を図ってまいります。
このように、医療の効率化や病院の経営改善ニーズの高まりを背景に、レセプト点検ソフトウェア市場におけるリーディングカンパニーとして、サブスクリプションモデルによる盤石な収益基盤が構築されたことに伴う利益の増加が、開発や人員強化、さらには2024年の医師の働き方改革に向けた新ソリューションや知財戦略に係る戦略的投資に伴う支出の増加をこなし、セグメント利益は過去最高水準の高収益性を継続し、推移しております。
利益面につきましては、前倒しにて実現した高収益構造の確立と、プロジェクト毎の徹底した収益管理及び継続的なコスト削減等が奏功し、売上高セグメント利益率が61.0%と、引き続き高い収益性を達成いたしました。
この結果、メディカル事業の売上高は1,214,781千円(前年同四半期比7.6%増)、セグメント利益は740,563千円(前年同四半期比11.9%増)となりました。
② 財政状態の分析
(資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は5,246,357千円となり、前連結会計年度末に比べ408,209千円増加いたしました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が341,410千円、現金及び預金が173,869千円増加したことによるものであります。固定資産は1,139,175千円となり、前連結会計年度末に比べ180,104千円増加いたしました。これは、有形固定資産が88,426千円、投資その他の資産が109,026千円増加したことによるものであります。
(負債の部)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は1,522,706千円となり、前連結会計年度末に比べ186,151千円増加いたしました。これは主に、賞与引当金が43,106千円減少したものの、買掛金が66,310千円、未払法人税等が27,291千円、契約負債が24,242千円増加したことによるものであります。固定負債は477,955千円となり、前連結会計年度末に比べ107,702千円増加いたしました。これは主に、リース債務が24,912千円減少したものの、退職給付に係る負債が122,926千円増加したことによるものであります。
(純資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は4,384,870千円となり、前連結会計年度末に比べ294,460千円増加いたしました。これは主に、退職給付に係る調整累計額が101,337千円減少したものの、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上と配当金の支払により利益剰余金が332,218千円増加したことによるものであります。
(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(3) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額はありません。
(4)主要な設備の状況
新設について、当第3四半期累計期間に著しい変動があった設備は、次の通りであります。
当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。