第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ」という教育理念のもと、一人ひとりに寄り添う教育サービスを提供することで、子ども達一人ひとりの目標達成に向けて、自走サイクルの醸成を提供価値のコアに据えて、将来と今をつなぐ最も信頼された存在となることを目指して事業を行ってきております。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、マーケティング改革を推進し、受験学年からの問合せの増加による入会者数の増加に加え、当社の強みである、熱心な講師の一人ひとりに寄り添う学習サポートと、コミュニケーション精度の向上により退会者数が低下したことで、総在籍者数が伸長し、業績が好転しております。

当社グループは、継続的な成長を目指しており、収益性の観点から翌期の予想連結売上高及び連結営業利益を客観的な経営指標として位置付けております。現時点における2026年2月期の当社グループの予想連結売上高及び連結営業利益は、次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

経営指標

2026年2月期(予想)

売上高

24,050

営業利益

1,635

 

 

(3) 経営環境

当社グループを取り巻く環境は、少子高齢化による学齢人口の減少はあるものの、首都圏を中心として中学受験マーケットの拡大、私立高校無償化の流れ、大学入試における総合型・学校推薦型選抜の増加など、教育への期待とニーズが高まっております。一方で、学習塾業界は、異業種からの新規参入、M&Aによる事業拡大などが、当社の経営環境に大きな影響を与えるものであり、迅速な対応が求められていると認識しております。

 

 

(4) 経営戦略等、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(3)のような経営環境の中、主力とする個別指導事業の課題は以下のとおりです。

 

1.教務・サービス開発の推進

教育・入試制度の変化による個別指導に対してのお客様のニーズの多様化により対応していくため、私立生への対応強化、大学年内入試対策の強化を推進するとともに、難関校合格を狙う新たなコーチングプログラム『志望校ターゲットコース』を改良し、スピーディーに展開していくことで、これまで当社にお通いいただいていたお客様に加え、難関校を志望する受験層からもお選びいただけるよう、教務力強化とサービス開発を進めてまいります。

 

2.マーケティングの深化

自社サイトへの流入チャネル別にマーケティング活動を進化させ、効果検証と検証結果に基づいたスピーディーな対策を実行することで、問合せは回復傾向にあります。今後は、地域のニーズや小学生、中学生、高校生、それぞれの特性の分析をもとに、より一層深化させてまいります。

 

3.人財育成の強化

お客様に価値を提供している大学生講師と教室社員は、当社事業を支える重要な人的資本です。したがって、そのサービス提供者である人財を育成していくことが、重要な差別化要素であると認識しております。ホスピタリティを基軸とし、お客様に教育理念を届ける人財育成を強化していくとともに人事制度の変革も推進してまいります。

 

4.教室運営の生産性向上

顧客価値を提供する人財の活力を向上させるために、継続的に労働環境や業務プロセスを改善し効率化していくことが必須です。教室DX化による付加価値を高めつつ、生産性向上を実現することによって、働く人財の活力向上とともにお客様の体験価値向上を図ります。

 

これらの課題に取組み、中受・高受・大受の各領域で、難関校を志望する受験層からもより選択される塾への変革を推進してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

1.サステナビリティ全般

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。当社は、サステナビリティを巡る課題への対応について、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。当社のサステナビリティに関する取組みについては、当社IRサイト等に開示しております。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、社会に信頼される企業であり続けるため、法令遵守に基づく企業倫理の重要性を認識し、コーポレートガバナンスを経営上の重要課題と位置付けております。また、変動する社会、経営環境に対応した迅速な意思決定と経営の健全性の向上を通じ、長期的な安定と持続的な成長を実現するため、すべてのステークホルダーへの価値を高めることで、企業価値向上に努めます。

なお、詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(2) リスク管理

当社グループの事業活動がステークホルダーに対して悪影響を与えていないか、社会課題の悪化を助長していないかを確認し、そうした事態の発生を防ぐことが企業経営における社会に対する責任と捉え、リスクマネジメントを行っております。2024年度は危機事案発生防止及び危機事案発生時対応・再発防止に係る機関としての危機管理委員会を定期的に開催し、適宜、代表取締役への報告や定期的に取締役会及び監査役会に審議の結果を報告するとともに、内部監査室等と連携することにより、重要な問題の対応を図りました。更に、代表取締役による従業員への危機管理意識向上のための発信や、従業員対象のコンプライアンス研修、注意喚起を含む情報共有を行い、事案の予防、再発防止に努めました。

当社の使用人から直接報告等を行うことができる内部通報窓口「企業倫理ホットライン」及び「監査役直通ホットライン」は、内部通報制度運用規程に基づいて適切に運営いたしました。更に、ベネッセグループと連携し、災害発生時の従業員の安否確認及び建屋被害報告の体制について、被害状況把握の即時性向上を目指して一部の見直しを行うとともに、その運用を開始いたしました。

各種感染症対策については、基本的な予防対策を中心に、状況に応じた対策を継続的に実行し、感染症に伴う顧客や従業員の身体の安全を確保するとともに損害の発生防止に努めました。

 

2.気候変動への対応

当社グループは、気候変動は「人の未来」に深刻な影響を及ぼす地球規模の課題であるという認識のもと、気候変動への対応を、企業理念を実践するうえでの重要な取組みの一つと捉えております。当社は、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終報告書(TCFD提言)への賛同を表明し、2021年10月から、TCFD提言に沿って、株式会社東京個別指導学院単体の事業を対象に、複数のシナリオを用いた気候変動リスク及び機会の特定と、定性的・定量的な事業インパクト評価を実施しました。当社は今後も2050年を見据えた長期的な視点で予測される環境変化を考慮した拠点開発や、教育事業を通じて持続可能な未来をリードする人財を輩出することに尽力してまいります。

 

 

3.人的資本への対応

教育事業を営む企業としての事業の根幹である人財について、人の成長が事業成長の軸であるとともに、人の成長が社会の未来をつくると捉え、お客様や講師をはじめとするステークホルダーの成長を支援しております。

 

(1) 戦略

成長戦略として、独自の人財育成施策や従業員ロイヤリティ向上の取組みを強化するとともに、当社グループのサービスプロフィットチェーンの基幹である人財の採用・育成戦略が経営戦略上の重点課題であるという認識のもと、持続的な事業成長に向けた人的資本への投資に注力してまいります。

 

≪人財育成方針≫

当社グループは、企業理念に基づき、講師・全従業員が働きがいを実感して成長できるよう支援しております。加えて、社員一人ひとりが自ら考え、学び、行動する「自走サイクル」の醸成を通じて、顧客から信頼される自律型人財の採用・育成・把握・管理を推進しております。エンゲージメントの最大化と能力発揮のための環境整備を重視し、事業と個人の持続的な成長、そして組織全体の生産性と幸福度の向上を目指しております。

 

≪2024年度 人財育成に関する当社グループの取組み≫

① 講師に対する人財育成の取組み

当社グループで働く講師は1万人を超えており、その約85%が大学生です。当社では、大学生の成長こそが社会の未来をつくると捉え、講師が教室での指導を通じて得た経験が、卒業後の社会生活にも活きるよう、多様な学びと挑戦の機会を提供しております。

講師一人ひとりが、自ら考え、仲間と協働しながら行動する力を身につけられるよう、教室運営に関する計画立案や改善活動を通じた実践的な成長の場や、リーダーシップや対話力を高めるプログラムを展開しております。また、将来のキャリアを見据えた就職活動支援や教職志望者への支援、特定分野における専門性を高める研修など、進路や志向に応じた学びの機会も整備しております。

こうした多面的な人財育成の取組みを通じて、講師がチャレンジして夢を実現する力、自ら未来を切り拓く力、仲間とともに大きな夢を描き実現する力を育むことを目指しております。

 

② 社員に対する人財育成の取組み

当社グループでは、社員一人ひとりが自律的に学び、専門性やマネジメント力を高めながら、キャリアを主体的に築いていけるよう、多様な人財育成の仕組みを整えております。

全社員を対象としたオンライン学習環境を整備し、スキル向上とキャリア形成を支援しております。また、組織運営を担うマネージャー層に対しては、リーダーシップやマネジメントに関する研修を継続的に実施し、現場の健全なマネジメント力の強化を図っております。更に、社員が現場での課題意識やアイデアを提案し、自らの手で改善に取組む風土を育むため、提案活動に対する表彰制度を導入するとともに、優れた業績や貢献を多面的に評価し、社内で称える機会も設けております。

こうした仕組みを通じて、社員の挑戦と成長を後押しし、組織全体の活性化につなげております。

 

≪社内環境整備方針≫

当社グループは創業以来、一人ひとりのお客様と向き合う、対話を通じた教育サービスを提供してまいりました。お客様と関わる人そのものが価値となる事業であり、働く人の活力が事業成長の源泉と捉え、「人を大切にすること」を基本とし、多様な人財が十分に個性や能力を発揮できる組織風土・文化づくりに尽力しております。人財の多様性の確保は当社の事業の基盤を成すものであり、多様な人財の能力や見識、アイデアを最大限に活かし協働することが、お客様への提供価値向上に不可欠であると認識しております。人財の登用・処遇においても、年齢、性別などに依らず、従業員一人ひとりの当社グループでの経験や特性、能力、意欲等を判断の軸とした公正な評価を実施しており、多様な個性や能力をもつ人財が、中核人財として活躍できるよう環境の整備をおこなってまいります。

 

 

≪社内環境整備に関する当社グループの取組み≫

(ア) 多様性(ダイバーシティ)の活用

■新卒採用者の登用及び活躍に向けた環境整備

当社グループでは、新卒社員が早期に成長し活躍できる環境づくりに注力しております。入社後は、事業全体の理解を深める導入研修に加え、教室運営や指導スキルを段階的に習得できる実践的な研修を用意しております。配属後も、定期的なフォローアップを通じて、個々の成長を丁寧に支援しております。また、学生時代に当社グループでアルバイト講師として勤務していた人財が、新卒社員として入社するケースも多くあります。2024年度の新卒入社者のうち、約6割がアルバイト講師出身者であり、当社の理念や教育方針への共感を持って高いロイヤリティと実行力を発揮しております。こうした育成環境と内部リクルートの仕組みにより、新卒社員が自らの強みを活かし、教室運営の中核として活躍できる体制を整えております。

 

■女性の従業員比率、及び管理職への登用及びその状況

当社グループ内の正規雇用女性従業員比率は、34.2%であります。主力の個別指導教室においては全267教室中約18%が女性教室長であります。人財の登用については、性別に依らず、当社グループでの経験や特性、能力、意欲等を判断の軸としておりますが、女性も含めた多様な視点を集めることが重要と捉えております。女性活躍については、出産・男性も含めた育児休暇や時短勤務制度、育児・介護・私傷病での通院入院に利用できるように年次有給休暇を最大60日まで積み立てる制度などの仕組みを整備すること等を通じて、ライフイベントとキャリアを両立し、長く働き続けていただきたいと考えており、各種施策を拡充してきた結果、女性社員の平均勤続年数は年々改善傾向にあります。今後も更に意欲のある人財が長く安心して働き続け活躍できるよう、環境整備や人財育成に注力してまいります。

 

■中途採用者の管理職への登用及びその状況

即戦力としての期待等から中途採用を進めております。また、多様な知見を集結させ今後の事業戦略立案を推進しております。アルバイト講師経験者が当社グループ以外での社会人経験を経て中途入社した後、中核人財として活躍している実績も多くあります。管理職における中途採用者の割合は2021年度から2024年度の4年連続で半数以上となっております。

なお、学生時代に当社グループアルバイトを経験し当社グループを卒業した講師OBOG(アルムナイ)とのネットワークを構築しております。業界や年代を超えた交流機会の提供等を通じ、退職した講師との良好な関係性を保ち続けることができるよう取組んでおります。

 

■高齢者の就業機会確保

当社グループは定年を60歳としておりますが、健康で変わらぬパフォーマンスを発揮していただけることが十分に期待できる場合には、60歳以降も希望者を再雇用し、健康に配慮しつつ、変わらぬパフォーマンスを発揮できる体制を整備しております。

 

 

(イ) モチベーションサーベイの実施

社員のエンゲージメント向上と組織課題の可視化を目的として、モチベーションサーベイを実施しております。2024年度の回答率は97.8%(2025年1月)と高水準であり、社員の声を反映した職場環境の改善や人財マネジメントの強化に取組んでおります。なお、こうした取組みが評価され、東京個別指導学院の販売管理部は外部機関が実施するモチベーション向上に関する表彰制度において2024年度優秀賞を受賞いたしました。

 

(ウ) 全社員を対象とした情報共有の場の定期開催

全国の社員を対象に、経営方針や事業戦略の共有、社員間の一体感醸成を目的とし、対面及びオンラインを活用した情報共有の場を設けております。

 

(エ) 労働時間の適正な管理、年次有給休暇の取得促進

労働生産性の向上を一層進めて過重労働や業務量の偏りをなくし、休暇をとりやすい環境を維持することで人財の定着率を高め、企業の持続的な発展を目指しております。

 

(オ) 働き方改革の推進

従業員一人ひとりが仕事とプライベートのバランスを取りながら、充実した仕事生活を送ることができるよう、「フレックスタイム制」「時短勤務」「在宅勤務」「副業認可」など、柔軟な働き方の実現による働き方改革を推進しております。

 

(2) 指標及び目標

当社グループは、持続的な企業価値向上のため、「(1) 戦略」の記載事項をはじめとする各種取組みを行っております。なお、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての具体的な指標及び目標等は検討中であります。必要かつ有用な指標につきましては、当社グループを取り巻く環境を踏まえ今後も検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項、及び経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。

なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 業績の季節性による変動について

当社グループは、主に、夏、冬、春の講習会及び2月、3月、4月に生徒募集活動を通常よりも活発に行っております。その結果、生徒数、各種売上高は増加する傾向にあります。また、経費面でも生徒募集の広告宣伝費、その他経費も集中して発生する可能性があります。

 

(2) 少子化と当社の今後の方針について

当社グループの属する学習塾業界は、長期にわたる出生率低下に伴う少子化により、学齢人口の減少という大きな問題に直面しております。また、大学入試改革などの目まぐるしい環境変化の中で、入試選抜方法の多様化・複雑化により、入試を目的とした生徒・保護者の教育環境の変化及び将来の進路選択に対する不安が高まる可能性があり、当業界内での生徒数確保の競争激化もこれまで以上となるものと想定されます。このような状況の下、人財育成事業などを中心とした事業の複線化を推進し、長期にわたり安定的・持続的に成長するために、より一層他社との差別化に努めます。今後、少子化が急速に進展した場合、及び同業間でコモディティ化する現状に特色が打ち出せない場合、又は事業の複線化が計画どおりに進まない場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人財確保及び育成について

当社グループは、事業展開上約1万人を超えるアルバイト講師を雇用しております。もし、優秀な講師の継続的採用及び育成が困難になった場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

人財確保の対策としては、当社の募集と応募者のニーズの接点を逃さないために、エリアごとに拠点を設けて集中的で効率的な採用を行っております。

人財育成の対策としては、当社オリジナルの人財育成プログラムを実現しております。

講師が実践を通じて学び、社員とともに成長する共創のプログラム・TEACHERS' SUMMITの継続的な推進と、各教室の主要講師を対象としたリーダーシッププログラムの開催を通して、講師が主体的に学べる場を提供しております。

 

(4) 個人情報の取扱いについて

当社グループは、効率的な学習指導を行うため、3万人を超える生徒・保護者の個人情報をデータベース化し管理しております。万一、当社グループの過失や第三者による不法行為等によってお客様の個人情報や機密情報等が漏洩等した場合、当社グループに対する損害賠償責任や社会的な信用低下等により、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自然災害のリスクについて

当社グループは、9都府県に出店し、主に生徒へ学習指導を行っております。もし、地震や台風などの大規模な自然災害等により、教室における直接の被害の発生や、各種規制などによって通常の営業活動の継続に支障をきたす場合、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなウイルスによるパンデミックが発生し通常の営業活動の継続に支障をきたした場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 有形固定資産、のれん及び無形固定資産の減損について

当社グループの連結財務諸表に計上されている有形固定資産、のれん及び無形固定資産又は提出会社の財務諸表に計上されている関係会社株式について、今後、収益性の低下等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損損失が発生する可能性があり、当社グループ又は提出会社の業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における我が国の経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の伸長により、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、ウクライナ紛争の長期化や中東地域を巡る情勢、原材料や燃料価格を含む国内の物価上昇、為替相場の変動に加え、米国新政権の政策動向、中国経済の停滞など、先行きは不透明な状況が続いています。

教育環境といたしましては、少子化は依然として進行しており、大学入試における総合型・学校推薦型選抜の増加、GIGAスクールの進展等のDX化、通信制高校の生徒数が過去最高の29万人を超えるなど、学び方は大きく変化しております。

学習塾業界におきましても環境変化へ迅速な対応が求められるとともに、異業種からの新規参入、M&Aによる事業拡大など、企業間競争は一段と激化しております。

このような状況のもと、当社は、「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ」という教育理念のもと、一人ひとりに寄り添う教育サービスを提供することで、子ども達一人ひとりの目標達成に向けて、自走サイクルの醸成を提供価値のコアに据えて、将来と今をつなぐ最も信頼された存在となることを目指して事業を行ってきております。

これまで強化してきたマーケティング改革に加え、当社をお選びいただいたお客様のご期待を信頼につなげるべく、継続的にお通いいただくことを重視してきました。教室での丁寧なコミュニケーションと、一人ひとりの目標達成のためのオリジナル学習カリキュラムに基づいた講師の指導、サポートにより、地域評判・外部評価が向上しており、結果的に問合せ数も回復する回路になってきております。その結果、入会者の増加、更には、退会率の低下が見られ、2024年度の期中平均在籍生徒数は31,348名(前年同期比102.0%)となりました。

その他の主力である個別指導事業での主な取組みとして、4つを行っております。

 

① 教務コンテンツ開発の推進

お客様のニーズ変化に対応するための新プログラムとして、公立高校受験・定期テスト対策を目的とする『理社サポート講座』を9月よりサービスリリースいたしました。また、『年内入試対策講座』についても、指導成果をもとに内容の改良を行いました。

昨年より開始した校内塾事業は、引続きベネッセグループのアセットを活用した当社独自の競争優位性を築きながら、サービス範囲と対象の拡大を推進しております。

② 組織基盤の向上

9月より執行役員体制を敷き、事業領域ごとの意思決定のスピードを高めるとともに、実行力の強化を図ってきております。また、㈱ベネッセコーポレーションの『進研ゼミ個別指導教室事業』を会社分割により2025年4月1日より当社に統合し、首都圏を中心に教室規模の増強とサービスラインナップの拡充に取組んでおります。

③ 教室DX化を推進

教室にお通いいただくお客様とのコミュニケーションを改善するために、新たに導入した顧客コミュニケーションツールの利用範囲を拡大させながら、デジタル化による更なる生産性向上のポイントを見極めるために教室DX化の推進テストを継続しております。

④ 新規出店・教室統廃合

2024年3月に『東京個別指導学院 勝どき教室(東京都)』『東京個別指導学院 小岩教室(東京都)』を新規開校いたしました。今後もお客様に選んでいただける最適なエリアへの新規開校を行ってまいります。一方で、同時期に『東京個別指導学院 町田ターミナル口教室(東京都)』を『東京個別指導学院 町田教室(東京都)』に統合いたしました。今後も商圏が重複するエリアの教室を統合し、効率的な教室運営を推進することで拠点収益の改善に取組んでまいります。

 

 

費用面につきましては、システム保守費用・外注費の削減、講師の適正配置の推進などコスト削減に取組む一方で、教室設備増強の費用、積極的なマーケティング投資、優秀な講師人財獲得に向けた求人費、人財投資など、教室現場への投資を積極的に行いました。

その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は22,182百万円と前年同期と比べ521百万円2.4%)の増収となりました。営業利益は1,598百万円と前年同期と比べ10百万円0.6%)の減益となりました。経常利益は1,605百万円と前年同期と比べ9百万円0.6%)の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は賃上げ促進税制の適用により1,039百万円と前年同期と比べ79百万円8.3%)の増益となりました。

なお、当社グループの主たる事業は個別指導塾事業であり、その他の事業の売上高、セグメント利益等の金額は合計額に占める割合が僅少であるため、記載を省略しております。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産及び受注の状況

当社グループは、生徒に対して授業を行うことを主たる業務としておりますので、生産、受注の実績はありません。

 

② 販売の状況

 

部門

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前年同期比

生徒数(人)

金額(千円)

構成比(%)

生徒数(%)

金額(%)

個別指導塾

 

 

 

 

 

 小学生

4,396

2,589,203

11.7

103.7

104.3

 中学生

11,481

7,764,397

35.0

102.4

103.1

 高校生

15,471

11,355,555

51.2

101.3

101.2

個別指導塾計

31,348

21,709,155

97.9

102.0

102.2

その他事業計

473,212

2.1

111.6

合計

22,182,368

100.0

102.4

 

(注) 1 生徒数は、期中平均の在籍人数を記載しております。

2 その他事業は、サイエンス教室・文章表現教室事業、校内塾事業及びHRBC株式会社の企業向け人財開発事業であります。

 

 

(2) 財政状態

〔資産〕

当連結会計年度末の資産合計は12,292百万円と、前連結会計年度末に比べ5.2%603百万円増加しました。

流動資産は8,559百万円と、前連結会計年度末に比べ12.7%964百万円増加しました。この増加は主に、現金及び預金が939百万円増加したことによるものであります。

有形固定資産は745百万円と、前連結会計年度末に比べ8.8%60百万円増加しました。この増加は主に、新規開校に係る設備投資、既存教室の設備の入れ替えによるものであります。

無形固定資産は998百万円と、前連結会計年度末に比べ29.0%408百万円減少しました。この減少は主に、生徒配置システムや請求基盤システムの減価償却によるものであります。

投資その他の資産は1,988百万円と、前連結会計年度末に比べ0.6%12百万円減少しました。この減少は主に、繰延税金資産が38百万円増加したものの、投資有価証券が24百万円、敷金及び保証金が19百万円減少したことによるものであります。

 

〔負債〕

当連結会計年度末の負債合計は3,570百万円と、前連結会計年度末に比べ9.9%322百万円増加しました。この増加は主に、未払法人税等が116百万円減少したものの、未払金が276百万円、契約負債が115百万円増加したことによるものであります。

 

〔純資産〕

当連結会計年度末の純資産は8,721百万円と、前連結会計年度末に比べ3.3%280百万円増加しました。この増加は、剰余金の配当支払いを760百万円行ったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を1,039百万円計上したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ939百万円増加し、7,747百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれぞれの主な要因は以下のとおりであります。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において営業活動により得られた資金は1,902百万円となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益1,511百万円、減価償却費547百万円、その他流動負債の増加233百万円、契約負債の増加115百万円、法人税等の支払額624百万円によるものであります。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において投資活動により使用した資金は203百万円となりました。

これは主に、新規開校等に係る有形固定資産の取得による支出167百万円、敷金及び保証金の差入による支出54百万円などによるものであります。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において財務活動により使用した資金は759百万円となりました。

これは、配当金の支払いによるものであります。

 

 

(4) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表及び当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表及び財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表及び財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第一部 第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第一部 第5 経理の状況 2財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要は、運転資金に加え、教室の新規開校への投資、ソフトウエア開発費用、成長分野への事業投資などがあります。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当していく方針でおります。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は7,747百万円となっており、当社グループの事業活動を推進していくうえで十分な流動性を確保していると考えております。なお、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載した新規教室の設備投資を予定しておりますが、自己資金により賄っていく予定であります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

資本業務提携契約

株式会社ベネッセホールディングスと、資本業務提携契約を締結しております。

資本業務提携契約の要旨は次のとおりであります。

 

内容

・顧客獲得及び教材開発・販売に関する相互協力

・データベース及びLMS(Learning Management System:ラーニング・マネージメント・システム)等個別指導サービス開発に関する相互協力など

提携先

株式会社ベネッセホールディングス(岡山県岡山市北区)

 

 

吸収分割の実施

2024年12月18日開催の取締役会において、株式会社ベネッセコーポレーションの進研ゼミ個別指導教室事業を吸収分割により承継する旨が決議され、2025年4月1日付で実施されました。

詳細は、「第一部 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。