文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年5月29日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける」との経営理念に基づき、当社グループの収益の源泉である「地域」および「お客さま」への貢献を果たすことを通じて「社員」が誇りと喜びを感じつつ働くことができることこそ、あらゆるステークホルダーの皆さまのご期待に応える最短の道と考えています。マーケットの成熟化と競合激化という環境下にありますが、お客さまニーズの変化へ適切に対応できる組織・人材の養成と、競争優位な分野への経営資源の選択的投入により、独自の付加価値を創造し、企業価値の着実な増大を図ってまいります。さらに、地域に密着した企業として、経済、雇用、環境、文化への貢献を果たしてまいります。
当社グループは、2021年4月13日付で第61期(2022年2月期)から第65期(2026年2月期)までの5ヵ年における第二次中期経営計画を策定いたしました。
なお、2023年4月11日付にて、第二次中期経営計画の見直しについて公表しました。しかしながら、2024年2月にランサムウェア被害により発注・仕入等を含む全てのサーバーを停止させるなど一部混乱が発生しました。システム復旧後は客数回復に最優先に取り組んだことにより、長期化するインフレへの対応が遅れました。また、実質賃金のマイナスが続き消費者の節約志向は更に強まっています。このような環境の下、2026年2月期は第二次中期経営計画の最終年度であるとともに、2030年長期ビジョン達成に向けた体制を強化していくことを踏まえ、改めて計画数値の見直しを行いました。見直し後の第二次中期経営計画最終年度である2026年2月期連結業績計画は、営業収益5,901億円、営業利益307億円を経営目標としています。
当社グループは、お客さま満足の獲得と企業価値の向上のために、以下の経営施策を推進してまいります。
・三世代の幅広いニーズを満たす品揃え及びテナントを導入するとともに、ご家族が共に過ごすための快適な空間を実現することで、さらに魅力ある商業施設を構築してまいります。
・地域のお客さまにとって、品質、鮮度が高く安全・安心な商品を低価格でご提供する“いいものを安く”を各商品分野で実現させるべく、商品開発とともに原価低減、ロス削減を進めてまいります。
・店舗を起点とした風通しの良い組織で、従業員の自律的な行動や能力開発をサポートし、明確な目標に対する成果を評価する体制を構築することで、さらに働き甲斐のある職場を実現してまいります。
・2030年までの目標「you me MIRAI 宣言」として数値目標を策定するとともに、取り組み項目として下記5項目を掲げています。
取り組み項目
・広域型ショッピングセンター「ゆめタウン」、近隣型ショッピングセンター「ゆめモール」及び食品スーパーマーケット「ゆめマート」の今後の積極出店を展望し、キャッシュ・フロー創出能力の向上を目指し体質強化を図るとともに、既存店への活性化投資ならびにスクラップ&ビルドを継続的に行うことで店舗の若返りを図り、地域シェアの拡大による企業成長に繋げてまいります。
・M&A戦略の積極展開による地域ドミナント基盤をより強固にし、商品調達面などにおける競争優位を実現するとともに、地域経済の発展並びに雇用の維持・拡大に貢献してまいります。
・店舗作業の効率化と人員多能工化により人時生産性を抜本的に改善させていく活動に取り組み、その成果を全店に展開することで生産性を高めてまいります。また、業務のデジタル化を推し進めることで省力化を図り、従業員の労働環境の整備を図るとともに、生み出された余剰時間をサービス向上へ転換しお客さまの満足につなげてまいります。
・中長期的な企業価値の向上に努めるべく、株主さま・投資家さまとの対話を通じたコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。
・これらのことから、創出するキャッシュ・フローを成長投資及び株主還元に振り向け、有効に活用してまいります。高水準の資本効率の維持と更なる向上とともに最適資本構成の実現を通じて、企業価値及び株主価値の増加に努めてまいります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年5月29日)現在において当社グループが判断したものです。
イズミは創業以来、地域に寄り添い、共に歩み続けてまいりました。イズミグループ経営理念である「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける」ことを実践することがイズミにとってのサステナビリティそのものです。経営理念に基づき、持続的な社会を実現するために地域とお客さまの生活に貢献するという考えが基本にあります。新しい価値を創造し、社会や地域の持続的発展を追求するサステナビリティ経営と地域・社会課題の対応に取り組んでまいります。
(1) ガバナンス
当社はサステナビリティを推進する体制として、代表取締役社長を委員長とした全社横断的な組織である「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は年4回開催(2024年実績)され、サステナビリティに関する課題解決に向けての取り組みについて審議しています。取締役会は、サステナビリティ委員会で審議した内容については報告を受け、監督と意思決定を行っています。
<サステナビリティ委員会の役割>
① グループ全体を通じたサステナビリティ戦略及び取組に関する目標設定・企画の立案・提言を行い、取締役会に上程・報告をする
② 目標を達成するための施策の立案、目標年度までのロードマップの作成、目標に対する進捗状況の確認を行う
③ サステナビリティに関わる経営の基本方針、事業活動の方針、マテリアリティの特定、年度計画の策定と進捗管理等の審議を行う
④ サステナビリティ委員会内に分科会を設置し、分科会内における重要課題の解決に向けて取り組みを実行する
<サステナビリティを推進する体制>
(2) 戦略
希望あふれる「持続可能な未来」の実現に向けて、私たちが2050年までに目指す姿として、「youme MIRAI Action」を掲げています。
当社では、社会における課題と事業活動における課題から重要度を踏まえてマテリアリティを特定し、KPIを設定しています。具体的には、地域やお客さまの豊かな暮らしづくりへの貢献、気候変動等の環境問題への対応、安全・安心な商品とサービスの提供、人権問題や多様な人材が活躍できる環境の整備などをマテリアリティとして設定しています。
<マテリアリティ>
当社では、マテリアリティに関わる経営に大きな影響を与えるリスクと機会を把握し、気候変動や人権問題・ダイバーシティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会の分科会でもリスクの課題を解決するために目標を設定して取り組んでいます。安全な商品の提供や衛生管理の徹底、健康に配慮した商品、アレルギー成分表示など食の安全性に関する関心は高まり、品質管理体制の強化に取り組んでいます。
コンプライアンスとリスクマネジメント推進のためにコンプライアンス・リスク委員会を設置しています。委員会は、企業グループ全体のコンプライアンス状況を把握し、啓蒙活動を行っています。
リスクマネジメントとして、リスクの識別及び分析、リスクに対応するためのマニュアルおよびルール等の策定をし、企業グループのリスク管理についての活動評価、指導および改善を行っています。
経営に重要な影響を与えるリスクについては、
当社では、マテリアリティ「地域・お客さま」「環境」「安全・安心」「ダイバーシティ」の4つをベースに目標を設定し、事業活動を通じてサステナビリティ課題の解決に向けて、具体的に取り組みを進めています。
当社は、気候変動による事業活動や地域・社会の持続性に与える影響の重要性を認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。TCFD提言に基づき、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの項目について気候変動への対応への取り組みを開示しています。
(1) ガバナンス
事業活動を通じて社会への新しい価値を創造し、社会と地域、当社相互の持続可能性を追求するサステナビリティ経営を推進するため、取締役会の諮問機関の一つとしてサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティに関する重要課題について協議することで、より本格的に持続可能な経営及び成長戦略の実現を目指しております。
また、気候変動に関する戦略・取組は、気候変動対応方針を定め、サステナビリティ委員会に属する「CO2削減・省エネ分科会」で企画・立案・提言を行い、サステナビリティ委員会に報告をしています。
サステナビリティ委員会の内容は、取締役会に上程・報告し、監視体制をとっています。
<気候変動への対応を推進する体制>
(2) 戦略
当社では、サステナビリティ委員会により気候変動の問題解決の取り組みとして、省エネ機器の導入および再生可能エネルギーの計画・実行を行っています。また、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、それらが及ぼす具体的な財務的影響額の評価を行っています。また、将来の気候変動がもたらす「リスク」および「機会」を特定し、「リスク」を低減し、「機会」を拡大するための事業戦略立案に向けてシナリオ分析を行っています。
シナリオ分析として、4℃シナリオ・1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオを併用)の2つのシナリオを用い、2030年時点での影響を考察しています。
気候変動リスクとして、移行リスクと物理的リスクを認識しており、シナリオ分析を進めることで、定性的な評価のみならず、気候変動により財務的にどの程度の影響があるのかを把握するため、定量的なインパクト評価を行い、リスクの重要度を評価しています。
1.5℃シナリオの分析による事業への財務的影響については項目別に想定される収益への影響を試算しています。物理的リスクとして、洪水被害・高潮被害・営業停止等の損害(1,636百万円)を算定しています。移行リスクとしては、炭素税および排出権取引の導入コスト(2,270百万円)を算定しています。今後についても社会情勢の変化や動向を踏まえ、定期的に見直しをしてまいります。
<気候変動によるリスク・機会>
※時間軸の考え方(発現・実現時期)は以下のように定めています。
・短期:0~3年 ・中期:4~10年 ・長期:11~30年
当社は、リスクを管理する指標として温室効果ガス削減の目標を設定しています。2030年までに2013年比でScope1・2を50%削減、2050年までにCO2排出量実質ゼロとし、店舗への太陽光パネルの設置拡大を進めています。また、使用する使用電力の全量を再生可能エネルギーでまかなう店舗も拡大しています。長期目標の達成に向けて、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギーの比率を高めてまいります。
<CO2排出量削減に関する目標>
参照URL:
(当社の考える人的資本経営)
当社では「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける。」という理念のもと、目指す将来像を「街の核」という言葉で表現しています。街に暮らす人々が集い憩う場所の創設、そして地元の行政や産業と連携しながら街の魅力アップに取り組むことで、地域社会の活性化を牽引する中心的存在になることを目指しています。事業活動を通じた地域と企業の価値向上に向けて各資本の強化を行い、価値創造モデルのサイクルを繰り返すことで将来像実現を目指します。
人的資本の価値を高めるためには会社全体にビジョンが浸透し社員一人ひとりが自分らしく力を発揮しながら人間的な成長を果たしていくことが重要と考えています。それに向け計画的に投資を行い、人材の価値を最大限に引き出せる環境づくりに取り組みます。
経営理念、当社の目指す将来像、第二次中期経営計画と現状とのギャップを把握し取り組むべき課題を抽出しました。そしてその課題を整理し人的資本の主要課題を定め、解決に向け取り組みます。
(1) 戦略
[主要課題の特定]
当社の目指す将来像や長期ビジョン、中期経営計画を実現するための課題を整理しました。数ある課題の中から重要度に応じて優先順位をつけ、6つの主要課題を特定しています。
① イズミが大切にしていること
② イズミの目指す将来像を実現するための課題整理
当社の導き出した人的資本の主要課題は6つです。
1. 人材育成
当社が取り組むべき課題をクリアし持続的な成長を果たしていくためには、社員の能力を最大限に引き出すことが必要となります。それぞれの課題解決に向け計画的に社員の育成を行うことは重要な課題のひとつと考え主要課題に選定しました。
2. 従業員エンゲージメントの向上
仕事に対し自発的な貢献意欲を持ち、誇りと喜びを感じながら主体的に取り組むマインドは個々の能力を最大限に引き出す重要な項目です。エンゲージメント向上は生産性向上、そして会社の成長に直結するため主要課題として取り組みます。
3. 採用と定着
当社の更なる成長を実現するためには現状の小売スキルに加えМ&AやDXを行うためのITやファイナンス、マーケティングなど専門スキルが必要です。新たな専門人材の確保、そして小売業をより成長させる優秀な社員の採用は当社の重要な課題です。また、社員が他社へ流出せず当社で結果を出し続けられるよう、働き続けたいと思える会社づくりにも注力します。
4. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
「街の核」となることを念頭に変革を目指す当社は、多様な価値観をもつ社員が個性や専門性を発揮することが競争力の源泉であると考えています。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンはイノベーション創出や労働力確保につながる課題であると考え取り組んでいきます。
5. 健康経営の推進
地域・お客さまの暮らしを豊かにするという目的の基礎となるものは「健康」であると考えています。社員の健康を守ることは地域の健康を守ること、という考えのもと主要課題に選定しました。
6. コンプライアンス
小売業は直接お客さまと接し生活に密接している業種です。安全・安心が確保された店舗運営や顧客情報の保護などの法令遵守は当社の社会的信頼、存続にかかわる重要な項目のため、重点的に取り組みます。
[求める役割・スキル]
当社の目指すビジョン実現に必要な人材・組織・スキルは、創業以来積み上げてきたものに加え、自ら新たな分野にチャレンジする人材や多様な価値観を持った組織、縦割りでなく横とのつながり、多様なスキルの獲得と深耕だと考えています。
[目指す姿と現状のギャップ]
人的資本経営の実践においては経営戦略と人材戦略を連動させることが重要と考えています。目指す姿と現状を正しく把握し、ギャップを無くすために必要な人材や組織、スキルを整理したうえで対策を講じていきます。
[人材育成方針]
イズミグループは地域社会の一員として地域活性化やお客さまの生活の質向上に携わることに誇りや喜びを感じ、地域貢献できる社員の育成を目指しています。また、リアル店舗は人の価値がすべてという考えのもと、お客さまのニーズや社会環境の激しい変化に対応するため、創業から継承しているイズミDNA「革新」「挑戦」「スピード」を大切にしており、常に好奇心を持ち自らが一段上の仕事にチャレンジする自立した人材の育成を目指します。
[環境整備方針]
働く目的や求める働き方、キャリアに対する価値観が多様化する中、多様なバックグラウンドを持った従業員が個々の考え方や事情に応じて柔軟な働き方を選択でき、性別・年齢・学歴等によらず意欲や能力に応じて自分らしく活躍できる環境づくりを目指しています。
なお、2025年4月より新しい人事制度を開始しました。社員の心身・経済的負担を軽減するため、転居転勤や単身赴任数が減少となるようライフプランに合わせて選択できる転勤範囲の再定義や手当額の見直しを行いました。
イズミの目指す将来像から特定した6つの主要課題において、解決に向けた取り組みや考え方、具体的施策は以下の通りです。
(2) ガバナンス
人的資本経営・開示は取締役会の諮問機関の一つである「サステナビリティ委員会」にて企画・立案・提言を行い、取締役会に上程、報告しています。また、サステナビリティ委員会内に分科会「人権・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)分科会」(以下「人権・DE&I分科会」)を設置し、人的資本経営についてのリスク管理や委員会が指示した業務について検討・遂行を行う体制を整えています。「人権・DE&I分科会」は責任者を人材戦略担当役員である管理本部長が担当しており、経営戦略と人材戦略が連動した人的資本経営の実現を目指しています。サステナビリティ委員会は年に4回、人権・DE&I分科会は年6回開催しています。
また、2014年より当時の人材戦略担当取締役をトップとした「ゆめCanプロジェクト」(ダイバーシティ推進プロジェクト)を設置しており、月度ミーティングに加え定期的な社長報告・提言や人事部との連携により多様な人材が自分らしく活躍できる環境づくりを目指しています。なお、2025年5月からは代表取締役社長をプロジェクトオーナー、女性の執行役員をプロジェクトリーダーとした新体制へ移行し、より力強く推進していく体制となります。
<サステナビリティ委員会組織図>
(3) リスク管理
主要課題への取り組みが不十分であった場合、企業の成長・存続に悪影響を及ぼす可能性があります。イズミの目指す将来像に向け計画的な人的資本投資を行い、環境の変化へ迅速に対応できる体制を構築します。
[当社の考えるリスク]
当社では人的資本の主要課題解決に向け、2022年に内閣官房より公表された「人的資本可視化指針」の「開示事項の階層」に沿って項目や目標を定め取り組んでいます。
なお、上記「戦略」において記載した人的資本の主要課題に係る指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難です。このため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しています。
[人材育成]
私たちの目指すビジョンの実現には社員の成長が必要です。経営理念やイズミの目指す将来像を実現するために当社では階層別研修に加え、経営人材育成を目的とした選抜研修を行っています。
階層別研修においては当社の強みである生鮮食品・惣菜の更なる強化を目指し、「生鮮技能ライセンス」の取得促進、「食品安全ライセンス認定試験」の実施を行っています。選抜研修においては部課長から将来の経営幹部候補を選抜し、社外研修を含むプログラムで育成に取り組んでいます。
今後さらなる取組みとして、スキルの棚卸しを行い、どんなスキルを持った人材がどこに何人必要なのか、必要数から不足している場合どのように育成あるいは採用していくのか、といった具体的な施策を考え抜く必要があります。そのために社員一人ひとりの能力や資格、ポテンシャル、キャリアビジョンなど様々な情報を網羅した人材データベースシステムの刷新を検討しています。
① イズミ大学参加人数
イズミ大学とは将来の経営幹部を育成するための選抜プログラムです。2年間の研修を通して組織変革に必要なスキルを習得するとともに、経営に求められる視野・視座を身に付けます。また、2年間の研修修了者を対象に「卒業生カレッジ」を開校し、経営人材を増やす取り組みからさらに高いレベルに引き上げるフェーズに移行しています。
② 生鮮技能ライセンス
当社では鮮魚・精肉・惣菜・青果それぞれに技能資格基準を設けており、基準に達した社員は技能ライセンス手当を支給しています。食品加工技術を向上させ、常にお客さまに安全で高品質な商品を提供できるよう取り組んでいます。
③ 食品安全ライセンス
当社では継続的に「食品安全研修」にて教育を行い安全・安心の商品管理が行える体制を整えています。また、この食品安全研修の習熟度を確認するため2023年度より定期的に更新検定を行う制度を導入しました。2024年2月に発生したランサムウェア被害の影響で2023年度の検定が中止となり、2024年度はシステム環境の整備により検定が遅れたため432名の合格者となりました。2025年度は対象範囲を広げ2,000名の合格者を目指します。
④ 人的資本のROI
当社では人的資本に関わる投資が会社の価値向上に連動しているか確認する管理指標として人的資本ROIを活用しています。2024年度の実績は42.0%となり、前年度と比較して5.9ポイント低下しました。人的資本のROIは「利益額/人件費-1」(利益額の内訳は営業利益+人件費)で算出しており、年次で評価しています。人的資本ROIの向上に向け、優先的に投資すべき領域を特定し長期視点での戦略を立てていきます。
[エンゲージメント]
社員が経営理念に沿って地域とお客さまの生活に貢献することにやりがいを感じ、仕事を通じて自己成長を果たすことが、社員と会社双方にとってベストな関係だと考えています。2022年度よりエンゲージメントサーベイを実施し、会社のビジョン実現のために特に重要と考える4項目について2022年度のスコアを基準に推移をモニタリングしています。エンゲージメントが低下している部署への対策として定期的に管掌役員が管理職と面談を実施し、スコア向上施策を考えております。この結果4項目のスコアが昨年より上昇しました。2024年度からは定期的にパートナー社員(パートタイムで働く社員)まで対象者を拡大し、詳細に組織状態を可視化できるよう取り組んでいます。下記の表はサーベイ開始からの推移を確認できるよう正社員のスコアを掲載しています。
[採用と定着]
人材確保の観点から若年層の離職防止に取り組んでいます。ワークインライフ意識の浸透や安心して働くことができる環境づくりが重要と考え、帰省旅費補助や家賃補助、奨学金返済支援を行っています。管理指標として入社後3年時の離職率を確認し、年次で評価しています。
① キャリア採用人数
2024年度の若年層採用者については体系的に教育ができるよう第二新卒として入社していることから、キャリア採用人数は16名と前年度より少ない実績となりました。2025年度も同じ方針のため、目標人数を70名から50名に見直しています。
② ふるさと帰省旅費制度利用率
当社は若年層の定着を目的に、親元等に帰省する往復の旅費を10万円を上限に補助する制度を導入しています。2024年度の利用率は26%、2025年度は50%を目標に制度利用を促していきます。
③ 離職率(入社3年時)
若年層社員の定着を図る指標として入社3年時の離職率を確認しており、2024年度の実績は21.7%と前年度の25.2%より減少しました。2025年度に入社3年目を迎える世代は2024年度時点で離職率が20%を超えているため、2025年度目標を30%に見直しています。この世代は新型コロナウイルス感染症の影響で合宿研修を実施しておらず同期のつながりが希薄となっていました。若年層教育には同期との交流も目的に年次ごとの合同研修を行っています。
[ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン]
当社は「街の核」となることを念頭に変革を目指しており、多様な価値観をもつ社員が個性や専門性を発揮することが競争力の源泉であると考えています。多様な社員の能力が最大限発揮できる環境はイノベーションを生み出し、企業の価値創造につながることから主要課題の一つとして取り組んでいます。
① 管理職に占めるキャリア採用社員の割合
当社に不足しているスキルや視点を取り入れ、組織活性化や業務改善につなげるため管理職に占めるキャリア採用人数の割合を確認しています。2024年はシステムと建築の分野でキャリア採用を行い18.9%と1.2%増加しました。
② 障害者雇用率
当社では特別支援学校の卒業生が新卒として入社し現場で活躍しています。就職を視野に入れている生徒さんの職場体験実習受け入れを積極的に行っており、雇用率は法定を上回っています。2024年10月には特別支援学校の職業教育や卒業生の就業について協力、貢献している企業として島根県の知事表彰を受けました。なお、2025年は特別支援学校を卒業した生徒が12名入社しています。法定の雇用率を目標数値として設定しておりますが、単に法定雇用率を上回ることを目的とするのではなく、障がいのある方が個性や能力を発揮できる環境の整備に取り組んでいきます。
③ LGBTQ研修受講人数
当社は「イズミ行動基準」の中で、基本的人権を尊重し差別がない会社にすることを定めています。多様性の理解を深め、すべてのお客さまが安心してお買い物できるお店にすること、そして社員がお互い尊重しながら個性を発揮し活躍できる環境をつくるためLGBTQ研修を実施しました。2023年度はランサムウェア被害により延期となっていましたが、2024年度は351名が参加。今後も理解推進のため対象者を増やして実施していきます。
④ 女性管理職比率
イズミの目指すジェンダーギャップ解消の姿は「会社や組織のあらゆる意思決定の場に女性が当たり前に参画している状態」です。それを確認する指標として「女性管理職比率」の目標を設定し年次で評価しています。女性の管理職比率を高めるだけでなく、更なる上位職への登用を戦略的に行い、2025年4月1日付でプロパー社員から新たに女性執行役員が2名誕生しました。
⑤ 性別役割分担意識見直し度数
当社では女性の活躍推進の課題の最も大きなひとつに「性別役割分担意識(性別による無意識の思い込み)」があると考え、アンケートにより意識変化の推移を確認しています。アンケートでは「夫は外で働き妻は家庭を守るべきである」といった考えについてどう思うかという問いに対し「やや反対」・「反対」と回答した社員の割合を把握。2023年度はランサムウェア被害によるシステム障害の影響でアンケートが実施できず、2024年度のスコアは46%の結果でした。今年度はアンコンシャスバイアス研修を行い、意識の見直しを推進していきます。
⑥ 男性の育児休業等取得率
男性も安心して育児に参加できるよう、育児を目的とした特別休暇の付与や育児休業による不在ポストに本社からフォロー人員を派遣しています。2024年度の取得率は106.5%と前年に比べ16.1%増加し、育児休業の平均取得日数は53日と長期化しています。
[健康経営の推進]
当社で働く社員の95%以上が地元の方であるため、社員の健康を守ることは地域の健康を守ることにつながるという考えのもと、社員の健康づくりを支援し、地域の健康寿命延伸に貢献できるよう取り組みを行っています。以下を含む様々な取り組みにより、健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定されました。
① 健康診断自社基準超過者受診率
当社では健康診断の結果を分析し、産業医と協議のうえ決定した自社基準超過者に受診勧奨を行っています。取り組みを徹底し健康課題を放置せずすぐ治療できたことで、重症レベルの有所見者数に改善が見られると産業医の方から評価いただきました。
② 特定保健指導
当社は健康診断の結果から生活習慣病発症のリスクが高い「未病」の社員に対して実施する「特定保健指導」に力を入れており、2024年度の実施率が90%と全国平均を大きく上回っています。保健師の方からの指導が受けやすいよう就業時間内での実施など、イズミグループ健康保険組合と連携し会社全体で取り組んでいます。
③ 健康相談しやすい環境づくり
当社は2022年にヘルスケアアプリHELPOをグループ会社も含め約11,000名に導入しました。このアプリはチャットによる健康相談やオンライン診療が利用でき、通院に比べ気軽に相談・診療できるため、放置しがちな小さな健康課題の解決に役立っています。また、コラムや万歩計など健康意識向上に役立つコンテンツも充実しており、アプリの利用率(アクティブ利用率)をモニタリングすることで社員の健康意識の推移を確認しています。社員本人だけでなくご家族の健康についても相談ができるので、当社が目指す「地域の健康推進」につながっていると考えています。今後も社員の健康維持における中心的プラットフォームとして活用していきます。
④ 総実労働時間の削減
総実労働時間の削減は健康経営、エンゲージメント向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの実現につながる重要な取り組みです。削減を進めるため荒利生産性目標の設定や電話自動応答システムの導入、IT活用による作業改善などの取り組みを進めています。年度ごとに削減は進んでおりますが2025年度の目標については見直しています。
⑤ 労働災害率(強度率)
労働災害を削減するために再発防止対策書提出の徹底、発生事案を分析し全社への注意喚起を行っています。特に「転倒」が発生した際、高年齢の社員は重症化し労働損失日数が多くなる傾向があるため、転倒を防ぐ具体策を月次発行の「労災ニュース」で発信しています。2024年度の労働災害率(強度率)は0.11%と前年度より低下しました。これからも誰もが安全に働ける職場づくりの推進に力を入れていきます。
⑥ 労使協議会開催率
店舗の職場環境課題にスピードを持って対応できるよう、すべての店舗で月に1度労使協議会を開催するルールにしています。2024年度は2024年2月に発生したランサムウェア被害によるシステム障害の影響で実施率が下がり90.5%となりました。2025年度は労使で協議する場づくりを徹底し、職場環境改善に取り組んでまいります。
[コンプライアンス]
法令等の遵守は当社の社会的信頼、存続に関わる重要な項目のため、重点的に取り組んでいます。
① コンプライアンス研修受講人数(延べ人数)
当社では、階層に応じたコンプライアンス研修を実施しています。2024年度は幹部層を中心に意識教育を行い、受講人数は6,157名と2023年度に比べ約1,864名増加しました。2025年度も引き続きコンプライアンス意識向上に取り組み、お客さまが安心してお買い物できる店舗づくり、安定した企業基盤の構築を行います。
② 内部通報件数
当社は、社員やお取引先様が通報できる内部通報窓口とは別に女性専用通報窓口も設置しております。2024年度の実績は前年度より8件少ない130件でした。通報への適切な対応により、より相談・通報しやすい通報窓口を目指し、2025年度の目標は2024年度より50件多い180件に設定しています。
経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年5月29日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、小売事業や小売周辺事業における商品・サービスの提供のため、お客さまやお取引先さまなどの個人情報や情報資産を取り扱っています。対象情報のセキュリティ対策に万全を期すものとし、紛失、破壊、改ざんおよび漏えい等のリスク未然防止を目的として「情報セキュリティ委員会」を設置し、情報セキュリティ責任者と各部門の管理者を置き、情報セキュリティ対策の実効性を確保できる体制を運用・構築しています。
しかしながら、こうした対策にもかかわらず、多様化・高度化するコンピューターウイルスやサイバー攻撃、従業員や委託先の管理ミス等の要因により、情報の漏えい等が発生したり、情報システムに障害が発生して適切に稼働できない等の事態が発生し、お客さまや各お取引先さまからの信用低下等を招く可能性があります。加えて、被害者への損害賠償義務などの損害及び日々高度化する外部からのサイバー攻撃への防御等の情報セキュリティ対応費用の発生により当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2024年2月のサイバー攻撃により、システム障害が発生したことを受けて、サイバーセキュリティ体制の強化のため、グループ会社全体のセキュリティとIT戦略を一元管理するとともに、セキュリティ関連の意思決定や全社的なセキュリティ強化を推進する役割であるCISO(情報セキュリティ責任者)の設置やセキュリティの多層防御の構築と監視体制の強化等の必要な再発防止策を迅速に実施しております。
当社グループは、生鮮食品から加工食品、日配食品など食品中心に広範囲にわたって商品を販売しております。食品の安全・衛生管理については、お客さまに安心してお買い物いただけるよう、品質管理及び商品の表示に関する担当組織の強化を図り、HACCPに準じた衛生管理、食品表示等を徹底し、店内調理品の定期的な微生物検査等を行うなどして、安全で衛生的な店づくりに取り組んでいます。
しかしながら、食中毒や異物混入等の食品事故または食品表示の誤りが発生した場合、お客さまの信頼を損ない、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
気候変動による豪雨や洪水、台風の大型化だけでなく、突発的な巨大地震等による自然災害へのリスクが高まっており、社会インフラの停止による事業活動への影響が生じる可能性があります。これらの対応を進めなければ、地域や社会的信用の失墜、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。当社グループでは、災害発生時に迅速かつ適切な判断・行動ができるように行動原則として、「生命の安全確保」「地域社会への安全確保の協力」「重要業務の継続」を定めています。また、災害時に従業員および家族の安否をいち早く確認するために安否確認システムを導入しており、災害発生時には災害対策本部を設置し各店舗が事業の継続が可能な体制を整えるようにしています。
社会が大きく変化する中、持続的に成長し続ける企業であるためには、イズミグループのDNA「革新」「挑戦」「スピード」を実践し、常に好奇心を持ち一段上の仕事にチャレンジする人材の確保や育成が重要と考えています。そのために様々なバックグラウンドを持った社員が個々の事情に応じて柔軟な働き方を選択でき、性別・年齢・学歴等によらず意欲や能力に応じて活躍できる環境整備や人材育成を行います。
しかしながら、人事・労務関連法令や制度、少子高齢化の進行による労働需給やその他の経営環境の変化などにより採用・育成計画が予定どおりに進まない場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、成長戦略の一環としてM&Aを実施してまいりました。買収に際しては、対象企業の財務内容や契約関係などについて、詳細なデューデリジェンスを実施することで極力リスクを回避するよう努めています。
しかしながら、買収によって新たにのれん及び認識した無形資産が発生し、その償却費用が増加する可能性があります。また、当初期待した利益や効果を上げられないこと等によるのれん及び認識した無形資産や株式取得価額の減損、及び当初予期していなかった偶発債務や未認識債務の発生、コンプライアンス上の問題等が判明する場合があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、有形固定資産やのれん等の多額の固定資産を保有しています。固定資産の減損に係る会計基準等の適用に当たっては、キャッシュ・フローを生み出す最小単位として店舗を基本単位としており、店舗別の収益管理を実施しています。しかしながら、意思決定時点の投資計画と実績の乖離ならびに店舗の収益性低下等、回収可能価額を著しく低下させる変化が顕在化し減損処理が必要となった場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、日本国内に本社および店舗等の事業拠点を多数有しており、特に中国、四国、九州地方を中心に事業拠点を展開しています。当該地域における大規模災害等の発生時における基本方針を定めるとともに、各事業拠点における事業継続計画(BCP)の策定ならびに事業継続マネジメント(BCM)体制を構築しています。
しかしながら、想定を上回る大規模自然災害等が生じた場合、店舗等の事業拠点の建屋・設備の被害、各種インフラの遮断、情報システムの停止、サプライチェーンの寸断、意思決定者の不在など、その影響は広域かつ多岐にわたり事業継続が困難となり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)市況変動リスク
当社グループは、一般消費者への物品・サービスの販売を事業の中核としており、そのため天候や景気・個人消費の動向、小売業他社との競合状況等の影響を受けています。これらの変動により、既存店舗や今後の新設店舗の収益低下、あるいは店舗閉鎖による損失計上が発生した場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、有利子負債の調達による設備投資を実施しています。また、販売商品において海外輸入品も扱っています。さらに、当社グループ外の有価証券も保有しています。したがって、金利、為替、株価などの想定を上回る変動の影響が、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、提供する商品・サービスの安全に万全の体制で取り組んでいますが、予期せぬ事由により問題のある商品の販売等の事態が発生し、公的規制、損害賠償責任等の損失、お客さまからの信用低下等があった場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、独占禁止法、消費者保護関連法、環境・リサイクル関連法、個人情報保護法等の各種法的規制の遵守に努めていますが、予期せぬ事由により、これら法的規制に抵触する事態が発生し、事業活動への規制、費用の増加、お客さまからの信用低下等を招いた場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制の改正等により、法令を遵守するための費用が増加する場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響をおよぼす可能性があります。
大規模商業施設の出店に際しては、「大規模小売店舗立地法」、「都市計画法」、「建築基準法」等の規制を受けますが、これらの法律の改正やこれらに関して都道府県等が定めた規制の変更により、新規出店や既存店舗の改装等が困難となった場合や、将来の出店候補案件が減少した場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年5月29日)現在において当社グループが判断したものです。
当期におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善などを背景に、景気は緩やかに回復してきました。一方、原材料高やエネルギー価格上昇、円安などに起因したインフレの長期化により、生活必需品に対する消費者の生活防衛意識が一段と高まっています。さらに、採用難や各種コストの上昇など、小売業界における経営環境は依然として見通しにくい状況が継続しています。
このような状況の下、当社グループは、経営理念「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける」に基づき、「暮らしやすく、人口が増えるまちづくり」に長期的視点で取り組むことを掲げ、第二次中期経営計画(2021年4月に策定、2023年4月に戦略および計画数値をアップデート)にて定めた戦略を推進してきました。
成長戦略では、出店計画を絞り込み、既存店活性化投資とM&A・アライアンスによる新たな事業領域の拡大へと振り向け、オーガニック成長+インオーガニック成長による長期ビジョン実現を目指していきます。これらにスピーディーに対応するため、5月にM&Aや新規事業を管轄する「投資推進事業部」を副社長直轄組織として配置するとともに、外部専門人材を登用するなど組織体制強化を図ることで、一段と推進力を高めました。
5月に、株式会社サンライフ(大分県大分市)を完全子会社化しました。同社は地域密着型の食品スーパーとして、長期にわたり小商圏における存在感を維持しています。既存店舗網の空白地帯である大分市内を中心に4店舗を運営しており、新たな市場への参入、市場占有率の向上等、エリア戦略の前進に寄与するものと考えています。
6月、株式会社マルヨシセンター(香川県高松市)との資本業務提携契約に基づき、四国エリアにおける商品仕入や物流及びシステム統合を開始しました。これにより、四国エリアにおける業務プロセスの効率化、コスト削減を実現するとともに、迅速かつ正確な物流・配送体制を整備することで、お客さまへのサービス品質を高めてまいります。
8月、連結子会社の株式会社ゆめマート熊本(熊本市東区)は、株式会社西友(東京都武蔵野市)が九州地域において展開する食品スーパー事業を会社分割(吸収分割)により承継しました。今後、福岡県を中心にこれまでよりもさらに強固なドミナンスを形成し、スケールメリットを生かした仕入の実現や販促、物流の効率化を図っていきます。また、承継対象事業の保有する効率的なオペレーション等のナレッジを活用し、当社グループの既存SM事業に取り入れ、収益力の高い「新規SM事業を創造」することにより、全体の収益性を高めてまいります。
また、「サステナビリティ基本方針」に基づき、環境KPI達成に向けた取り組みを着実に進めてきました。サステナビリティの状況等の詳細につきましては弊社サステナビリティサイトをご参照ください。
サステナビリティサイト
https://www.izumi.co.jp/sustainability/
なお、6月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表しました。資本コストや資本収益性に係る当社の現状を分析・評価するとともに、改善に向けた取組み方針を策定したものです。詳細につきましては、下記URLをご参照ください。
https://www.izumi.co.jp/corp/ir/pdf/2024/0704news.pdf
主力の小売事業においては、2024年2月15日に発生したランサムウェア感染によるシステム障害の影響により、複数の不具合が生じました。商品供給面では、発注システムに支障をきたし、一部商品の提供が困難になる不具合が生じました。販促・サービス面では、各店舗の折込みチラシ、「ゆめアプリ」のアプリクーポン、ECサイト「ゆめオンライン」及びネットスーパー「ゆめデリバリー」などのサービスを一時休止しました。これらへの対応を進め、5月1日にはシステムを復旧させ、一部を除きサービスを正常化させました。以降は、ランサムウェア感染被害の影響により減少した客数の回復を図るべく、対応を進めました。コスト面では、電力料金などの高騰に備え費用低減を図るべく、全社的取り組みとして電力使用量の削減を図る一方で、新規出店、既存店のリニューアル、M&Aへの成長投資を積極的に推進してきました。
また、ランサムウェア感染被害を契機とし、「創造的復興」をテーマとしてグループを挙げて業務プロセスを見直し、より高い生産性を追求する体制の整備を進めています。
これらの結果、当期の経営成績は以下のとおりとなりました。
経営成績の主な増減要因
営業収益は前期比52,976百万円(11.2%)増加し、524,142百万円となりました。これは、主に連結子会社の株式会社ゆめマート熊本にて、株式会社西友が九州地域において展開する食品スーパー事業を承継したこと等によるものです。
営業総利益は、207,602百万円(前期比12,238百万円増)となりました。営業収益対比では39.6%となり前期に比べて1.9ポイント低下しました。
販売費及び一般管理費については、主に当該事業承継に伴う人件費及びその他販売費の増加等により、前期比18,238百万円(11.1%)増加の182,177百万円となりました。営業収益対比では34.8%となり前期に比べて横ばいでした。
これらの結果、営業利益は前期比6,000百万円(19.1%)減少の25,425百万円となり、営業収益対比では4.9%と前期に比べて1.8ポイント低下しました。
営業外収益は、前期比79百万円(5.9%)減少の1,272百万円となりました。一方、営業外費用は、シンジケートローンの組成に伴う支払利息の増加等により、前期比533百万円(117.3%)増加の989百万円となりました。
これらの結果、経常利益は前期比6,613百万円(20.5%)減少の25,708百万円となりました。営業収益対比は4.9%と前期に比べて2.0ポイント低下しました。
特別利益は、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益2,343百万円等を計上し3,028百万円となりました(前期比1,608百万円の増加)。一方、特別損失は、減損損失7,755百万円等を計上し8,238百万円となりました(前期比3,983百万円の増加)。
法人税等は7,745百万円となりました(前期比1,111百万円の減少)。
非支配株主に帰属する当期純利益は、連結子会社における投資有価証券売却益の計上等により834百万円となりました(前期比689百万円の増加)。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比8,566百万円(41.8%)減少の11,919百万円となりました。営業収益対比は2.3%と前期に比べて2.0ポイント低下しました。
■営業利益
主力の小売事業においては、2024年2月15日に発生したランサムウェア感染によるシステム障害の影響により、複数の不具合が生じました。商品供給面では、発注システムに支障をきたし、一部商品の提供が困難になる不具合が生じました。販促・サービス面では、各店舗の折込みチラシ、「ゆめアプリ」のアプリクーポン、ECサイト「ゆめオンライン」及びネットスーパー「ゆめデリバリー」などのサービスが一時休止となりました。これらへの対応を迅速に進め、5月1日にはシステムが復旧し、一部を除きサービスを正常化させました。以降は、ランサムウェア感染被害の影響により減少した客数の回復を図るべく、対応を進めました。
商品面では、発注システムの不具合による品揃えへの影響に対し、お客さまのご不便を最小化すべく商品供給体制の確保に尽力するとともに、システムの復旧に努めました。5月1日には安定供給の体制を整え、以降は高まる消費二極化への対応力強化を図りました。
また、昨年2月に加盟したニチリウグループ(大阪市福島区)との商品調達面での取り組みを進めています。直営ライフスタイル部門では、価格競争力のある付加価値商品等の導入を進めており、来期以降も拡大していく計画です。9月には、同グループのプライベートブランドである「くらしモア」を株式会社ゆめマート熊本に導入しました。これらにより、インフレの長期化により高まる低価格ニーズへの対応力を一層高めてまいります。
店舗面では、4月に「ゆめマート新大村(長崎県大村市)」を開業しました。当店舗は、生活雑貨「無印良品」、カフェ「スターバックスコーヒー」、分譲マンション等で構成された複合施設「SAKURA MIRAI SHIN OMURA(サクラミライ新大村)」内に位置しており、日々の暮らしを支え、地域とのつながりを大切にする交流拠点として“毎日通う楽しみ”を提供します。また、当社は近隣型ショッピングセンター「ゆめモール」の出店を進めており、5月には「ゆめモール合志(熊本県合志市)」を、9月には「ゆめタウン五日市(広島市佐伯区)」を建て替え、「ゆめモール五日市(同上)」を開業しました。ゆめモールは、食品スーパー「ゆめマート」を中心に、アパレル、飲食店など多彩な専門店を一か所に集約したオープンモール型の商業施設です。「通う場所」「出会う場所」「憩う場所」をキーワードに、地域の生活拠点として、環境にやさしく、便利で快適、健康な暮らしを提供する地域密着型モールを目指しています。
さらに、既存店では大規模リニューアルを実施しました。3月に「ゆめタウン平島(岡山市東区)」に「サンドラッグ」、4月には「ゆめタウン学園店(広島県東広島市)」に「無印良品」をテナントとして導入するなど、中型GMS店舗への有力テナントを導入することで集客力向上を図りました。大型GMS店舗では、10月に「ゆめタウン高松(香川県高松市)」、11月に「ゆめタウン博多(福岡市東区)」において、「食」、「ビューティ・ドラッグ」の売場強化等による店舗付加価値向上を図りました。「食」については、直営食品売場を拡大し、地域のお客さまのニーズに合わせた品揃えを実現するとともに、新たな食物販テナントの導入により、食のゾーン全体での強化を行いました。「ビューティ・ドラッグ」については、美容・健康関連の売場を集約するとともに、新しいお客さまの取り込みに向けた売場・品揃え構築を図りました。
これらの取り組みに対して、販売動向は以下のとおりです。
春先には、3~4月は、発注システムの支障などから商品の品揃えの不具合、折込みチラシ及びアプリクーポンなどの各種サービス休止により営業活動が制限されました。これらにより、直営の食品・ライフスタイル売場では、客数が減少したことを主要因として販売が落ち込みましたが、システムが復旧し営業活動が正常化した5月には、客数の回復とともに販売状況も好転しました。一方、テナントでは、当該被害の影響は限定的であり、飲食・サービスを中心に堅調に推移しました。
夏場に入り、客数の回復並びにインフレの長期化により高まる低価格ニーズへの対応強化を念頭に、6月から食料品や日用品60品目を対象に従来価格から最大3割程度値下げした「全力応援値下げ」を開始しました。一方で、自社製造ブランド「zehi」や、社内審査で厳選した「これ旨」などの高付加価値商品の販売推進により、二極化する消費への対応を推し進めたこと等により客数の回復が一段と進みました。
秋口以降、気温低下が遅れたことにより残暑が長引いたことから、直営ライフスタイル売場では衣料品が伸び悩みました。直営食品売場では、低価格を中心に消費二極化への施策を進めた結果、客数の増加とともに販売も好調に推移しました。テナントでは、直営同様に衣料品が苦戦した一方で、飲食・アミューズメントなど、食関連や時間消費カテゴリーが大きく伸長しました。
冬場には、気温が低下するにつれ、直営ライフスタイル売場では肌着や婦人衣料が好調に推移したほか、医薬品も大きく伸長しました。直営食品売場では、加工食品の継続的な値上がりに加え、生鮮食品価格の高騰も加わり、既存店客数が前年を下回るなど、お客さまの節約意識の一層の高まりが見られました。一方で、客単価の上昇が寄与し、既存店売上高は前年を上回りました。
これらの結果、当期における当社の既存店売上高(テナント専門店を含む)は前年同期比で0.7%増(「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」等を適用前の数値)、同様にテナント専門店を除く直営ベースでは0.8%減(同)となりました。
コスト面では、当該システム障害の発生を契機とし、「創造的復興」をテーマとして全社的に業務プロセスを見直し、より高い生産性を追求する体制の整備を進めています。また、電力料金などの高騰に備え費用低減を図るべく、全社的取り組みとして電力使用量の削減を図る一方で、新規出店、既存店のリニューアル、M&Aへの成長投資を積極的に推進してきました。
これらの結果、営業収益は506,985百万円(前期比11.6%増)、営業利益は19,671百万円(前期比22.6%減)となりました。
小売周辺事業では、ランサムウェア感染によるシステム障害の影響により、金融事業や施設管理事業を中心に大きな影響を受けましたが、復旧の進行に伴い増収に転じました。
金融事業の株式会社ゆめカードにおいては、当該システム障害の影響により小売事業の販売が落ち込んだことや、電子マネー「ゆめか」の決済比率が低下したことによる手数料収入が減少したことなどで減収となりました。なお、「ゆめか」の累計発行枚数は前期末における1,023万枚から当期末では1,067万枚となりました。
施設管理事業の株式会社イズミテクノにおいては、当該システム障害の影響により、グループ各社のリニューアル工事の着工遅れ等が発生していたものの、下期以降、大きく回復し増収増益となりました。
飲食事業のイズミ・フード・サービス株式会社においては、社会・経済活動の正常化が一段と進展し、営業収益はコロナ前の2019年度を上回った前年度よりさらに増加しました。主力業態のミスタードーナツ及びサーティワンアイスクリーム等での販売が引き続き伸長したことにより、増益となりました。
これらの結果、営業収益は47,927百万円(前期比7.4%増)、営業利益は5,510百万円(前期比3.4%減)となりました。
卸売事業では、販売が低調に推移したことに加え、円安の影響等により売上原価が増加しました。また、不動産賃貸事業では安定的な賃料収入を計上しました。
これらの結果、営業収益は4,968百万円(前期比6.2%減)、営業利益は574百万円(前期比11.7%減)となりました。
当期末における総資産、負債及び純資産の残高、前期末対比の増減額及び主な増減理由は以下のとおりです。
総 資 産
・のれんは、株式会社西友が九州地域において展開する食品スーパー事業を承継したこと等により54,879百万円増加しました。なお、当該のれんは取得原価の配分が完了していないため、暫定的に算定された金額です。
・当期の設備投資額は14,976百万円であり、これは主に店舗新設に係る投資、既存店舗の活性化及びDX投資等によるものです。また、当該事業承継による増加等により、有形固定資産は、減価償却実施後で10,025百万円増加しました。
・受取手形、売掛金及び契約資産は、クレジット取扱高の増加等により7,256百万円増加しました。
・短期借入金及び長期借入金は、当該事業承継に係る資金調達等により61,726百万円増加しました。
・その他流動負債は、未払消費税等の増加及び専門店からの売上預り金の増加等により6,349百万円増加しました。
・利益剰余金は、内部留保の上積みにより5,446百万円増加しました。
・これらの結果、自己資本比率は50.1%となり、前期末の57.3%に比べて7.2ポイント低下しました。
当期におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フロー
・主な収入項目は、税金等調整前当期純利益20,499百万円、減価償却費18,109百万円及び減損損失7,755百万円です。
・主な支出項目は、法人税等の支払額9,929百万円及び売上債権及び契約資産の増加額7,200百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フロー
・主な支出項目は、吸収分割による支出77,676百万円及び有形固定資産の取得による支出17,745百万円です。有形固定資産の取得については、主に店舗新設に係る投資、既存店舗の活性化及びDX投資等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
・主な収入項目は、長期借入れによる収入79,500百万円です。これは主に事業承継に係るシンジケートローンの組成によるものです。
・主な支出項目は、長期借入金の返済による支出15,573百万円及び配当金の支払額6,438百万円です。
以上の結果、現金及び現金同等物の残高は、前期末対比3,719百万円増加し、15,717百万円となりました。
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
当期における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
「(1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
当社グループのキャッシュ・フローの状況は、「(1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりです。
(注)1.各指標の算出方法は以下のとおりです。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利息の支払額
2.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
3.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
4.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローから営業活動による債権債務の増減額を除いたものを使用しています。利息の支払額は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
当社グループの運転資金需要は、主に商品・原材料仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。また、投資資金需要は、企業買収に係る投資、店舗新設に係る投資、既存店舗の活性化及びDX投資等によるものです。これらに対しては、営業キャッシュ・フロー及び金融機関からの借入れ等により充当しており、当連結会計年度における有利子負債残高は139,456百万円です。
なお、当社グループは第二次中期経営計画(2022年2月期から2026年2月期まで、2023年4月11日付にて第二次中期経営計画の見直しについて公表)に基づき、経営環境の激変リスクに備えつつ、5年間の総投資1,570億円を予定しており、その投資資金には自己資金及び有利子負債を活用します。
また、当社は日本格付研究所(JCR)から信用格付を取得しています。本報告書提出時点において、「長期発行体格付:A+(見通し:安定的)」となっており、水準の維持を目安とします。
今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善が続き、景気は緩やかに回復していくことが期待される一方、持続的な物価上昇により、消費者の生活防衛意識が一層高まることが想定されます。また、企業活動においても、建設・物流・調達コスト等の上昇により、一層のコストマネジメントが必要になるなど厳しい経営環境が継続することが懸念されます。
このような状況の下、当社グループは2023年4月に「第二次中期経営計画(2022年2月期から2026年2月期)」の見直しを公表し、遂行してきました。同計画で成長戦略の柱として掲げている既存店活性化投資、M&A・アライアンスへの取組みを一層推進することにより地域での存在感を高めるとともに、事業活動を通じて社会課題の解決に取組み、経営理念「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける」を実践してまいります。また、当社グループの収益の柱であるGMS事業の一層の強化に加え、2024年8月に株式会社西友より承継したサニー事業の保有する効率的なオペレーション等のナレッジを既存SM事業に取り入れ、収益力の高い「新規SM事業を創造」することにより、全体の収益性を高めてまいります。
これらにより、お客さまの満足を実現するとともに、地域ドミナントの更なる拡大・深耕を図っていくことで、経営効率を高め、より一層の企業成長に繋げてまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたりまして、当社経営陣は決算日における資産・負債の数値、並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(1)業務提携契約
(2)吸収分割契約
(3)シンジケートローン契約
該当事項はありません。