第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとしております。「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略に基づき、すべて直営店での店舗展開をしながら営業活動を行っており、また3つの生産拠点で製造するパスタソース・ドレッシング・珈琲豆・ケーキ・焼き菓子など自社製品のインターネット販売、催事販売も行っております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題等

 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を受け、経済と消費活動の正常化が進んだことで、インバウンドを含め人流が回復し、客数・売上高は回復しております。一方、不安定な国際情勢や円安の進行により、原材料価格の高騰をはじめ、物流費、人件費、エネルギーコストの上昇への対応も必要となっております。このような環境下におきまして、私たちの提供するサービスがさらに付加価値を作り出し、お客様が体験価値として実感できるものになるよう、以下のような課題を設定しております。

 

① インフレ・食材高騰への対応

 我が国経済は長く続いたデフレ経済を脱却し、インフレ経済への転換点を迎えています。円安、労働力不足によるコストプッシュ型の物価上昇においては、価格転嫁の余地は少なく、安定収益の確保には、より一層のコスト管理とメニューの高付加価値化による価格の適正化が課題です。当社においては、食材高騰の対応として、「原価管理の精度向上」、「持続可能な食材調達」、「セントラルキッチンの生産性向上」を通じて、食材の品質を損なわずに食材原価率の上昇を抑制できるよう努めてまいります。

 

 「原価管理の精度向上」においては、仕入れ食材のマスタデータと売上データを紐づけ、リアルタイムの理論原価率の確度を高めることで、レシピの見直しや、オーバーポーション、オーダーミス、在庫管理による食品ロスの見える化により、食材原価の適正化に努めます。また当社では、仕入れ購買とメニュー開発をひとつの部署で一元的に管理しています。気候変動等による食材価格の急騰においては、迅速にメニューラインアップやレシピの改訂を行い、対応してまいります。

 

 「持続可能な食材調達」においては、より安定的に安全で高品質な食材を確保することが課題です。自社で焙煎する年間90トンの珈琲豆は、“From seed to cup”をコンセプトに、生産から抽出まで一貫した品質基準をクリアした「スペシャルティコーヒー」を使用しています。フェアトレードによる生産農家への現地買い付けを行い、栽培から収穫、生産処理まで農家との関係性を深めることによって、より安全で安心な持続性の高い高品質な珈琲豆の調達を実現します。昨年開催された日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)主催のサイフォニスト大会においては、椿屋珈琲所属の従業員が日本一の栄誉に浴し、スペシャルティコーヒーの普及に貢献いたしました。

 

 当社では、メニューで使用する食材の約半分をセントラルキッチンで集中的に加工製造し、店舗の調理負担を軽減しています。前期末には戸塚工場に急速冷凍設備を導入し、製造過程の滞留時間を圧縮したほか、省エネルギー性能の向上により今夏は電気使用量の低減が見込まれます。

 

 また物流においては配送委託先の休配に対応すべく、出荷時の入り数や容量の見直しによる配送個数の最適化を行うと同時に、製造管理の見直しにより、品質を維持した上で賞味期限を延長し、物流コストの上昇を抑制してまいります。またサステナビリティの取り組みとして、製造過程で排出される約1トンの廃油を航空機用再利用燃料(SAF)としてリサイクルしているほか、製造過程の食品ロスを低減するために、仕入れ先で下処理されたカット野菜を加工用食材として使用しています。仕入れ先の廃棄食材は堆肥や飼料として利用されており、サプライチェーン全体での対応を一義とした食品ロスへの取り組みを推進しております。

 

② 労働力不足への対応

 生産年齢人口の減少により、労働集約型のサービス業は未曽有の労働力不足の対応に追われています。労働力確保の競争は激化し、募集・採用コストは増加傾向です。また戦力化のための教育研修費、時給や給与だけでなく、福利厚生や労務環境の改善も喫緊の課題です。

当社はこの労働力不足の対応として、以下の3つをテーマに課題解決の優先順位を高めています。

  ①労務環境の改善 ②賃上げ・福利厚生の拡充 ③やりがい・成長実感の向上

 

 現在、年間の休日取得、時間外労働に目標を設定し、人材の確保と育成、応援体制の整備を進めています。当25期は椿屋珈琲グループでの取り組みが先行し、年間取得休日は平均123日間(公休・有給を含む)、月間の時間外労働時間は平均で約17時間となりました。この成果を会社全体の取り組みとなるよう要員計画を整え、制度設計に活かしてまいります。

 インフレ経済への転換期を迎え、定期昇給等の賃上げは人材確保の前提条件ととらえています。福利厚生制度においても見直しを行い、従業員とその家族に対する家族手当や奨学金返済の支援制度などを中心に拡充を行いました。

 またスキルアップを通じたキャリアパスを明確化し、「やりがい・成長実感」の醸成を図るため、入社した全従業員を対象とする研修制度を整備し、専任のトレーナーによるオペレーションと接客技術の向上を図る研修を実施しています。研修センターでは、キッチン、レジ、オーダーシステムなど店舗同等の設備を配備し、接客および業務スキルの基準の統一を図りながら、スキルアップによる「やりがい・成長実感」の醸成につなげてまいります。

 

 

③ マーケット競争の激化への対応

 競争が激化する外食企業が直面する課題のひとつは、競合他社との差別化とブランド価値の向上です。またポストコロナにおける「職住近接」や「リモートワークの普及」、付加価値の高い商品・サービスを欲求する「こだわり消費」など、消費者のライフスタイルや価値観は変容しています。店舗開発においては、店舗の8割が出店する商業施設では、更新のない定期借家賃貸借契約が基本となり、「収益店の退店リスク」は常態化しています。労働力不足を背景にストアオペレーションを十分に見直し、「省人力設備を活用したQSC(クオリティ・サービス・クリンリネス)の維持・向上」も重要な課題に挙げられ、店舗開発と業態開発の強化に取り組みます。

 

 更新のない定期借家契約の期限を「業態ブラッシュアップ」のチャンスととらえ、デベロッパーへの大規模改装や新業態の提案により長期契約の獲得に努めます。定期借家契約の期限を迎えた「こてがえし 浦和パルコ店」では、これまでの閉鎖的な内装から、より広い客層が入りやすいオープンな雰囲気への改装の提案を行い、長期の契約締結につながりました。テーブルオーダーシステムやキッチンディスプレイを新たに導入してオーダー処理効率を高めると同時に、主力メニューの「お好み焼き・もんじゃ焼き」を客席で調理するサービスを展開し、客数増に結びついています。あわせて、普通借家契約を条件とした路面ビルへの出店も強化してまいります。

当社は労働力不足によるQSCの低下を防ぐため、省人力化を推進する「生産性向上パッケージ」を作成し、業態や店舗の運営状況に応じた生産性向上設備の導入を随時実施しております。既に自動釣銭機の全店配備や予約管理システム(EPARK)、QRコードによるモバイルオーダーシステム(インバウンド対応)、インカム、キッチンディスプレイなどを配備し、オーダー処理の効率化を進めているほか、今期は店舗スタッフの業務プロセスや事務作業の低減を課題に掲げ、シフト作成等の管理業務負担の低減に努めてまいります。

 

 昨年4月より開始したポイントアプリの展開においては、登録者数が13万人を超えました。同時に展開するLINEの有効会員は22万人を有しています。全業態およびECサイトで利用できるポイントサービスの充実や定期的に配信されるクーポンの活用、新メニューの紹介等により、優良顧客の囲い込み、来店頻度の向上につなげてまいります。今後も実店舗とポイントアプリ、SNS等との「ネットとリアルの連携」を深め、デジタルマーケティングの推進を通じたカスタマーリレーションシップの向上による、顧客体験価値のさらなる向上を目指してまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出時において当社が判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティを意識した経営を推進することで、ブランド価値の向上、業績向上や事業の拡大、従業員満足度の向上などが図られ、持続可能な事業展開を実現できるものと認識しております。

 期初に掲げられる経営方針の中で部門ごとの課題が共有され、各部門ごとに取組みを推進します。取組みに関するモニタリング内容は、各部門長が出席する月に一度の本部定例会で内容を共有し、実効性を高めております。また年に一度実施する従業員アンケートの内容をもとに、社員で形成されるワーキンググループで現状の課題をまとめ、経営会議や取締役会に報告しています。その上で、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要度の高いものとして議論を進めています。

 

(2)リスク管理

 当社では期初に代表取締役社長が掲げる経営方針の中で、国内外の情勢を背景とした課題やリスクについて部門長に共有・周知しており、その内容は部門長から部門内への落とし込みを行います。

 今期は円安、労働力不足によるコストプッシュ型の物価上昇において、価格転嫁の余地は少なく、より一層のコスト管理とメニューの高付加価値化による価格の適正化が必要です。食材高騰の対応として、「原価管理の精度向上」、「持続可能な食材調達」、「セントラルキッチンの生産性向上」を通じて、食材の品質を損なわずに食材原価率の上昇を抑制することが必要不可欠と認識しております。

 その他、労働力不足への対応に関しては、従業員アンケートによってポジティブ・ネガティブ双方の意見から課題を抽出し、より働きやすい環境に近づけるための環境整備に優先順位をつけ、定着率向上につながるよう取り組んでおります。環境整備としてのDX化推進と採用・トレーニング活動の本部一元化、昇進昇格・賃金制度の見える化も進めております。管理職登用に向けた採用活動についても積極性や能力、向上心などの強みや会社の方向性への理解ある人材が当社の成長を支える重要な存在であると考えており、多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境の醸成に取り組んでおります。このような考えのもとに、年齢、性別、人種、障害の有無などに関わらず、多様な人材の活用を進めております。

 また、各会議体から各部門にいたるまで、品質管理体制の中でさらに機能を発揮できるようプロジェクトを組んで体制づくりに着手しております。

 

(3)戦略

 当社は「味覚とサービスを通して、都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念を掲げ、お客様や従業員、株主や投資家から取引先、地域社会まで、様々なステークホルダーとの繋がりの中で、自らの社会的責任を果たし、社会・環境の持続的な発展に向けて積極的に取り組んでおります。

 当期は食品リサイクルの分野において戸塚カミサリーで取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は7.1トンとなりました。引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減に繋げております。

 あらたに持続可能な取り組みとして始めたこととしては、深川コンフェクショナリーで発生する動植物性残渣の有効活用です。対応可能な業者を選定し、5.4トンを飼料原材料と、454Kwの発電リサイクルに活用しております。その他、売上の一部を小児がん治療のために寄付する社会貢献活動、環境に配慮した副資材の使用も全店で徹底し、当25期からは新たに工場で発生する廃油をSAF(持続可能な航空機用再利用燃料)として活用し、大気中のCO2削減に貢献できるよう取り組みも始めております。

 安定的に高品質な食材を確保するために、栽培されている現地の視察と直接買い付けを行うことで、スペシャルティコーヒーの品質と生産農家のおかれる環境などもチェックしています。このような行動を続けていくことは、当社が経営理念に掲げている「安全で楽しい食の場」や高付加価値の提供機会と捉えております。

 

(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

 当社はおよそ200名の正社員、300名の契約社員およびフルタイムキャスト、2,700名のキャストで構成されており、全従業員が会社の経営理念に理解共鳴し、日々の営業活動において付加価値の提供が出来るよう教育を進めていく方針です。

 正社員に関しては、入社時のスキルにあわせて集合研修を実施。他に業態別で開催しているキッチンカレッジ、衛生管理セミナーなど、役割に応じた個別研修を社内で行います。

 また外部研修では、主に新入社員が参加するトレーニングセミナー、キャスト指導にあたる人材を中心としたトレーナーズトレーニングセミナー、食中毒対策セミナー等に積極的に参加することで、外部環境の変化を把握しながら自身のスキルアップにつなげております。

 

 当社従業員の約9割を占めるキャストの採用・育成・定着は付加価値を提供する上で特に重要なプロセスと認識しております。採用後のオリエンテーションを本社一括で行うことにより、会社に所属する意識の醸成と価値観の共有が可能となりました。あわせて店舗では初期導入時の負担も累計で8,000時間軽減でき、指導にあたる人材の働く環境としてもプラスに影響しています。また、キャスト定着率を毎月算出し、立地や営業時間などの影響から人手不足に陥りやすい店舗を見える化して全店共有することで、近隣店からの応援体制の構築や重点的に採用強化する地域を特定し、店舗、従業員が過度に負担がかかる労働環境に置かれることのないよう配慮し、毎月開催する本部定例会議で確認し、対策を講じております。

 

参考 キャスト3ヶ月定着率(%)

 

7月末

10月末

1月末

4月末

2022年4月期

82.0

78.9

79.6

82.3

2023年4月期

73.7

80.2

79.6

82.0

2024年4月期

79.5

81.0

79.7

80.2

 

 定着率を向上させるための取り組みとしては、年間を通して業績や企業価値向上に貢献した人材や店舗・事業所を表彰する東和ジェイズアワードの実施や永年勤続表彰制度、お客様から日々頂いているお褒めや御意見の中から顧客確保に向け優れたサービス提供した人材を表彰するホスピタリティ賞を創設し、毎月表彰しております。

 また、資格取得助成金制度を設けており、業務推進に必要な資格取得に関しては取得にかかる費用を補助しております。さらに2024年4月には福利厚生制度を対象をアルバイトまで拡大し、内容も拡充しました。家族手当の拡充や奨学金返済支援制度の創設、社宅費用の会社負担率アップや入居対象者の拡充など、ガイドブックを作成し、全従業員に周知しています。

 

(4)指標及び目標

 当社では、コストプッシュ型の物価上昇に対応するため、原価管理の精度向上が優先課題であると認識しており、原価管理の精度向上に繋げるためのプロジェクトチームを立ち上げ、対応を進めてまいります。

 また、年に一度無記名方式での従業員アンケートを実施し、ポジティブ、ネガティブ双方の意見から従業員が自らの意思で長く貢献する会社づくりを進めております。従業員の多くは、結婚や出産という人生のステージにおいて、自らの意思で安定的に休暇が取得でき、ワークライフバランスを充実させることを望んでおります。長く働ける環境を多くの従業員に与えるべく福利厚生制度の拡充を行っております。

指標1 管理職に占める女性従業員の割合について(当社における管理職は、店舗責任者および部門責任者です)目標 2025年4月期 15%(2024年4月実績13.8%)

新規採用の女性比率と定着率を高めることで達成に向かいます。

指標2

目標年間休日 2025年4月期 120日(2024年4月期実績115日)

地域ごとのシフト状況を把握し、応援体制を強めるため、シフト管理システムを導入します。その上で相互フォローを行います。

指標3

目標月間平均時間外勤務 2025年4月期 20時間(2024年4月期実績24.5時間)

システムでの把握と応援体制強化、月に一度の本部定例会での情報共有にて、課題を共有したうえでフォローを実施し、特定の店舗へ集中する負担を分散します。

 

 

3【事業等のリスク】

 当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中にある将来に関する事項は、当事業年度末(2024年4月30日)現在において当社が判断したものです。

 

① 食材の調達と安全性に係るリスク

 当社は、安全で安心な食材を提供するため、信頼性の高い仕入先から継続して食材を調達し、また通関時の検査結果の確認に加え、定期的に自主検査も実施して安全性を確認しております。

 しかし、鳥インフルエンザ問題に代表されるような疫病の発生、天候不順、自然災害の発生等により、食材の調達不安や食材価格の高騰などが起こり、一部のメニューの変更を余儀なくされるケースも想定されます。また想定外の法的規制強化や新たな規制の発生、異物混入及び品質・表示不良品の流通による回収費用や訴訟・損害賠償、商品の品質や安全性を確保するためのトレーサビリティーの強化・システム構築などの費用が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② セントラルキッチンおよび店舗での衛生管理に係るリスク

 当社は、セントラルキッチンを所有し、スパゲッティの生麺とパスタソース、ドレッシングおよびフレッシュケーキ・焼き菓子を製造し、店舗へチルド配送しております。

 セントラルキッチンおよび店舗においては、厳しい品質管理と衛生検査を実施しておりますが、万一当社店舗において食中毒が発生した場合には、営業停止処分などにより当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、安全・安心な製品の提供を確保するため、食品安全マネジメントシステム規格の「ISO22000」の認証を取得し、品質管理の徹底と品質向上に向けた取組みを実施しております。

 

③ 自然災害のリスク

 近年発生が増加傾向にある異常気象のうち、台風や暴風雨などの影響や自然災害の中でも地震、大雨、洪水により生産現場や生産設備に被害が生じた場合、その復旧まで生産や出荷が長期間にわたって停止する可能性があります。当社では災害対策マニュアルやBCP(事業継続計画)の策定、安否確認体制による社員・アルバイト・全事業所のライフラインの確認、防災訓練などの対策を講じていますが、自然災害での被害を完全には排除できるものではなく、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 気候変動のリスク

 環境問題に対する取組みは近年ますます重要となっております。気候変動問題などの環境・社会課題の顕在化に伴い、持続可能な社会の構築を目指し、企業におけるSDGsへの取組みへの期待が一層高まっています。当社では環境への負荷低減に向けて食品リサイクルの分野を中心に着手しております。当社工場で発生する生麺の端材などを飼料として提供することによる廃棄物削減と廃棄物処理時に発生するCO2排出削減に繋げております。しかしながら環境関連の規制強化やステークホルダーからの評価、消費者意識の高まりなどによっては当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 店舗の賃借物件への依存に係るリスク

 当社の大部分の店舗は、賃借しております。賃貸借契約のうち、特に、定期賃貸借契約は、契約終了後再契約されない可能性があります。このような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 財政状態に係るリスク

 当社は主に賃借による出店を基本としているため、賃貸人が破綻等の状態に陥り継続的使用や債券の回収が困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 減損会計に係るリスク

 当社において、今後経営環境の変化により、店舗の収益性が悪化し、固定資産の減損会計に基づき減損損失を計上することになった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 感染症拡大に係るリスク

 様々な感染症の世界的拡大により、外出自粛などによる来店客数の減少等のリスクが懸念されます。国や自治体のガイドラインに従い徹底的な衛生管理を行ってまいりますが、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社では、新型コロナウイルス同様の感染症が拡大した場合には、代表取締役社長を対策本部長とする対策本部を設置し、雇用と健康を守ることを第一に、全事業所の感染症対策を講じ、営業再開ガイドラインや感染者予防および感染発生時のマニュアルに則った運営、テレワーク、オンライン会議システムの活用を現在もすすめております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度の経営成績

 2024年4月期の業績は、売上高123億82百万円(前年同期比114.2%)、営業利益は9億97百万円(前年同期比162.3%)、経常利益は10億49百万円(前年同期比159.7%)となり、当期純利益は7億4百万円(前年同期比165.4%)となりました。

 

 当事業年度は国内の人流回復と海外観光客の流入増加によってイートイン需要が一気に高まり、客数では活況を取り戻した一年となりました。一方で不安定な国際情勢や天候不順を背景に原材料とエネルギー価格の高騰を受け、価格改定の実施も余儀なくされました。長期化する物価高騰は国内の消費意欲を減退させており、客数確保とコスト抑制は引き続き重要な経営課題となっております。

 このような経営環境下、当社は生産性向上につながるDX化を推進し、自動釣銭機やキッチンディスプレイ、インカムの導入などにより労働時間を削減するとともに接客サービスの向上に努めました。一方、日々増加するお客様に、より快適に過ごしていただくため、アルバイト採用と教育の強化を図っております。前期末より推進している採用と教育研修の合理化・高質化を進めるため、トレーナー陣による本社集合研修を一年間継続してまいりました。これまで店長自身が行っていた店舗でのオリエンテーション業務や事務手続きなどの業務負担を軽減することで店舗営業に専念できる仕組みとなり、年間の研修参加者は約2,000名、店舗の業務負担軽減は8,000時間となりました。今期は研修・トレーニング施設を本社ビル内に設置し、社員を含めた従業員教育や基準づくりにさらに力を注ぐとともに、労務環境の改善を進めてまいります。

 重要な客数確保策として導入した「椿屋珈琲グループアプリ」は1年目で13万人の登録会員の方にご利用いただいております。今後もお得なクーポンやおすすめのシーズンメニューのご案内などを発信してまいります。

 新規創店につきましては「茶寮SiKi椿屋珈琲 クイーンズ伊勢丹仙川店」「こてがえし そごう千葉店」「TSUBAKIYA Jiyugaoka」の3店舗を出店いたしました。

 2024年5月24日にはJR吉祥寺駅前に「椿屋珈琲吉祥寺茶寮」がオープンしております。スペシャルティコーヒーにこだわる椿屋珈琲の味を作り出す珈琲焙煎所も今期中の着工予定で現在進めておりますので、どうぞご期待ください。

 

部門別の概況につきましては、以下のとおりです。

 

『椿屋珈琲グループ』(期末店舗数52店舗 増減なし)

 椿屋珈琲グループの売上高は53億64百万円(前期比117.9%)となりました。

「ゆとりとくつろぎの60分」を店内で過ごしていただくため、高級感のある内装、落ち着いた雰囲気、接客サービスなど、ブランド化を推進してまいりました。

 また珈琲には国内総流通量の5%程度と言われる「スペシャルティコーヒー」と定義づけられた希少価値の高い豆のみを使用し、商品の品質や抽出スキルを高めることで満足度向上にも繋げております。26期中に新たな珈琲焙煎所の竣工、稼働に向けて進行中です。

 昨年4月にシュークリーム製造設備を設けオープンした物販専門店「ケーキ・洋菓子 椿屋珈琲 五反田店」は、イートイン需要が回復する中でも順調に推移し、収益モデルが確立できました。

 

『ダッキーダックグループ』(期末店舗数20店舗 増減なし)

 ダッキーダックグループの売上高は23億84百万円(前期比110.3%)となりました。

 旬の食材を使用したホームメイドケーキと手作り感のある食事を提供し、ハレの日や女子会需要が高い業態です。ケーキスタジオ併設店では、専属パティシエールが限定ケーキを製造する様子もお楽しみいただけるほか、ご希望のデザインにそったご予約限定バースデーケーキなどが好評です。

 

『イタリアンダイニング ドナグループ』(期末店舗数22店舗 増減なし)

 イタリアンダイニング ドナグループの売上高は20億83百万円(前期比113.8%)となりました。

 「本格イタリアンをカジュアルに楽しめる店」をコンセプトに、自社製にこだわった生麺、パスタソース、ドレッシングを使用し、大小パーティではご要望にあわせた特別メニュー、料理にあわせたお酒の提案など、付加価値の提供に努めております。

 

『こてがえし・ぱすたかんグループ』(期末店舗数13店舗 増減なし)

 こてがえし・ぱすたかんグループの売上高は13億92百万円(前期比115.4%)となりました。

 「もんじゃ革命」と題して看板商品「築地もんじゃ」を育成し、新たな客層の掘り起しに成功しております。特に訪日外国人の取り込みには早くから多言語化に取り組んだ成果も見られました。人で行うべき調理・サービスをより充実させるべく、DX化を推進したことで生産性も向上し成果に繋がっています。

 

『プロント』(期末店舗数4店舗 1店舗減少)

 プロントの売上高は6億29百万円(前期比116.6%)となりました。

 弊社がフランチャイジーとして運営するプロントでは、日中はカフェとしてコーヒー・トースト・マフィンやランチパスタを、夜間は一人からグループ客までお酒の需要回復にあわせて、「キッサカバ」として気軽にお酒を楽しめるシーンを提供しております。

 

『生産部門/EC事業/物販催事事業』

 生産部門の売上高は2億86百万円(前期比104.8%)となりました。

 外食需要の回復により、カミサリーで製造するパスタソース・ドレッシングの外部販売が堅調です。生産性向上策として、急速冷凍設備および省エネかつ環境に配慮した空調設備の導入も行いました。

 EC事業の売上高は1億67百万円(前期比96.8%)となりました。

 自社サイト「椿屋オンラインショップ」では、ハレの日需要にふさわしいギフト商品の開発に加え、店舗で受け取りが可能なネット注文、物価高騰を受けお得な商品開発など、お客様のニーズに合わせた対応を心掛けております。

 物販催事事業の売上高は73百万円(前期比78.6%)となりました。

 イートイン需要の回復にあわせて、出店基準を見直しながら、ホームメイドケーキを中心に出店しております。

 

『サステナビリティの取組み』SDGs ゴール3.12.14

 食品リサイクルの分野において取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は7.1トンとなりました。引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減とコスト削減にもつながっております。

 深川コンフェクショナリーで発生する動植物性残渣につきましても、5.4トンを飼料原材料と454㎾の発電リサイクルに活用しております。

 その他、売上の一部を小児がん治療のために寄付する社会貢献活動、環境に配慮した副資材使用の徹底、工場で発生する廃油をSAF(持続可能な航空機用再利用燃料)として活用し、大気中のCO2削減に貢献できるよう取り組みを始めております。

 

(2)生産・仕入・販売実績・店舗数等の状況

① 生産実績

 当社は、フードサービス事業の単一セグメントであるため、生産実績は製品別、仕入実績は品目別、販売実績は部門別に記載しております。

 当事業年度における生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品名

当事業年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

生産金額(千円)

前年同期比(%)

自社製フレッシュケーキ

592,672

115.1

スパゲッティ生麺、ソース、ドレッシング

636,742

104.4

コーヒー豆

163,255

114.2

合計

1,392,669

109.8

(注)金額は、製造原価によっております。

 

② 仕入実績

 当事業年度における仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目

当事業年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

仕入金額(千円)

前年同期比(%)

飲料・食材類

2,707,542

116.4

その他

194,846

102.0

合計

2,902,389

115.3

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

 

③ 販売実績

 当事業年度における販売実績を部門別に示すと、次のとおりであります。

 

当事業年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

売上金額(千円)

前年同期比(%)

椿屋珈琲

東京都

3,930,078

122.5

 

神奈川県

817,629

107.2

 

埼玉県

222,196

107.1

 

千葉県

394,315

106.1

小計

 

5,364,220

117.9

ダッキーダック

東京都

994,094

112.3

 

神奈川県

661,486

108.0

 

埼玉県

254,160

116.2

 

千葉県

474,634

106.7

小計

 

2,384,376

110.3

ドナ

東京都

1,273,287

112.7

 

神奈川県

357,321

114.1

 

埼玉県

352,788

115.2

 

千葉県

100,325

121.3

小計

 

2,083,722

113.8

ぱすたかん・こてがえし

東京都

889,943

111.3

 

神奈川県

253,894

108.8

 

埼玉県

88,852

99.1

 

千葉県

160,046

191.2

小計

 

1,392,736

115.4

その他

東京都

1,038,788

104.7

 

神奈川県

118,677

113.3

 

埼玉県

 

千葉県

小計

 

1,157,466

105.6

合計

東京都

8,126,191

115.8

 

神奈川県

2,209,010

109.0

 

埼玉県

917,998

111.6

 

千葉県

1,129,321

114.9

総合計

 

12,382,521

114.2

(注)ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッチン

   およびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

④ 地域別店舗数及び客席数の状況

 

当事業年度

(2024年4月30日現在)

期末店舗数(店)

前期末比増減

客席数(席)

椿屋珈琲

東京都

35

2,319

 

神奈川県

9

767

 

埼玉県

3

212

 

千葉県

5

369

小計

 

52

3,667

ダッキーダック

東京都

9

563

 

神奈川県

5

460

 

埼玉県

2

177

 

千葉県

4

302

小計

 

20

1,502

ドナ

東京都

12

638

 

神奈川県

5

257

 

埼玉県

4

205

 

千葉県

1

66

小計

 

22

1,166

ぱすたかん・こてがえし

東京都

8

477

 

神奈川県

3

118

 

埼玉県

1

52

 

千葉県

1

102

小計

 

13

749

その他

東京都

3

324

 

神奈川県

1

△1

小計

 

4

△1

324

合計

東京都

67

4,321

 

神奈川県

24

△1

1,602

 

埼玉県

10

646

 

千葉県

11

839

総合計

 

111

△1

7,408

(注)1 ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッ

     チンおよびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、18億17百万円で前事業年度末に比較して、1億95百万円増加しました。

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果、得られた資金は13億20百万円で、前事業年度と比較して6億74百万円増加しました。これは主に法人税等の支払額が6億79百万円減少、税引前四半期純利益が3億77百万円増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果、使用した資金は4億1百万円で、前事業年度と比較して4億31百万円減少しました。これは主に定期預金の払戻による収入が9億円増加したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果、使用した資金は7億23百万円で、前事業年度と比較して6億32百万円増加しました。これは主に長期借入金の返済による支出が6億円増加したことによるものです。

 

(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。

 当社の財務諸表作成において、損益または資産の評価等に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行なっておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績について

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい食の場・手の届く贅沢」という脱日常と付加価値を提供することに注力しております。今期は「ゆとりとくつろぎの60分」を体験していただくための高付加価値の提供を掲げて、日々の営業施策を進めてまいりました。「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、24期は年初来の新型コロナウイルス感染拡大、その後の入国規制緩和やあらゆるコロナ制限の緩和など、経済を正常化させる動きもありました。世界的インフレによる物価の上昇や労働力不足に起因する人件費の高騰などのさまざまな影響を受けたものの、業務効率化と営業施策の推進に努めた結果、すべての月で売上高、客数、客単価ともに前年を上回ることができました

 売上高は123億82百万円(前年同期比114.2%)、営業利益は9億97百万円(前年同期比162.3%)、経常利益は10億49百万円(前年同期比159.7%)となり、当期純利益は7億4百万円(前年同期比165.4%)となりました。期末店舗数は1店舗減少し、計111店です。

 

③ 財政状態について

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ2億77百万円増加し87億20百万円となりました。流動資産は前事業年度末に比べ1億91百万円増加し48億92百万円となりました。これは現金及び預金が1億95百万円増加したことが主な要因です。固定資産は前事業年度末に比べ85百万円増加し38億28百万円となりました。これは有形固定資産の建物(純額)が52百万円増加したことが主な要因です。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ3億23百万円減少し21億4百万円となりました。流動負債は前事業年度末に比べ3億54百万円減少し13億76百万円となりました。これは1年内返済予定の長期借入金が6億円減少したことが主な要因です。固定負債は前事業年度末に比べ31百万円増加し7億28百万円となりました。これは退職給付引当金が24百万円増加したことが主な要因です。

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ6億円増加し66億16百万円となりました。これは利益剰余金が5億83百万円増加したことが主な要因です。

 

 

 

(単位:千円)

 

勘定科目

前事業年度

2023年4月期

構成比

当事業年度

2024年4月期

構成比

増減額

現金及び預金

3,821,193

45.3%

4,017,113

46.1%

195,919

有形固定資産

1,462,709

17.3%

1,535,505

17.6%

72,795

土地

530,000

 

530,000

 

投資その他の資産

2,226,922

26.4%

2,249,801

25.8%

22,879

差入保証金

417,402

 

404,508

 

△12,893

敷金

1,443,902

 

1,442,675

 

△1,226

長期借入金

600,000

7.1%

-%

△600,000

1年内

600,000

 

 

△600,000

1年超

 

 

資本金

50,000

0.6%

50,000

0.6%

資本剰余金

1,306,350

15.5%

1,306,350

15.0%

利益剰余金

4,748,347

56.2%

5,331,706

61.1%

583,359

 

④ 資金の財源及び資金の流動性についてと財政状態の改善に向けた取り組みについて

 当事業年度末におけるキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 従来、当社の資金需要はそのほとんどが新規出店と既存店改装のための設備投資資金であります。

 今後についても、通常ベースの新規出店と既存店改装は、営業活動によって得られる資金によって賄う方針に変更はございません。また、生産性向上のための製造設備の拡充や、計画外で大型出店を実施するとの判断に至った場合には、金融機関等からの借入または資本市場からの直接資金の調達によって、必要資金の確保を進めていきたいと考えております。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。