第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとしております。「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略に基づき、すべて直営店での店舗展開をしながら営業活動を行っており、また3つの生産拠点で製造するパスタソース・ドレッシング・珈琲豆・ケーキ・焼き菓子など自社製品のインターネット販売、催事販売も行っております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題等

 3年半に及ぶ新型コロナウイルス感染拡大の影響により厳しい経営環境が続きましたが、同感染症への行動制限の緩和に伴い、経済活動は正常化に向けた動きが見られており、当社業績におきましては今期すべての月で売上高、客数、客単価ともに前年を上回ることができております。

 しかしながら世界的インフレによる物価上昇や労働力不足に起因する人件費高騰は続いており、外食産業の主要コストとなるFLコスト(食材原価と人件費の合計)低減に向け、業務効率化による生産性向上を図ったうえで、さらなる付加価値の提供が必要と認識しております。また企業の社会的責任を果たすべく消費者の安全・安心やSDGsに対する関心の高まりを把握した上で、具体的な課題を設定し対応してまいります。

 

① エネルギーや食材の資源不足の対応

ロシアのウクライナ侵攻や世界的なインフレ、労働力不足、コロナ収束後の急速な経済回復等の影響は、外食業界における「食材調達」と「コスト管理」に課題をもたらしています。持続可能な調達ルートの確保、セントラルキッチンへの省エネルギー設備の導入、食品ロス対策、店舗での省エネ対策、物流の最適化など、資源の効率的な活用と持続可能な経営に取り組みます。現在では鳥インフルエンザの流行による卵不足が深刻化し、主に業務用として使用される液卵や卵白の使用可能量が半減するなど、ケーキ、焼き菓子等の製造に影響が出ています。当社ではケーキ工場に割卵機を導入し、卵は長野県、山梨県の農家より放牧・平飼いの鶏卵に仕入れを切替え、卵の持続可能な調達ルートを確保するほか、味や品質面での向上、アニマルウェルフェア(SDGs)への対応を行っております。商品においても、平飼い鶏卵を100%使用した「平飼いたまごのコク旨プリン」を開発し、一部の物販専門店限定で販売をしております。また自社で焙煎している年間90トンの珈琲豆は、“From seed to cup”をコンセプトに、生産から抽出まで一貫した品質管理を徹底した「スペシャルティコーヒー」を使用しています。フェアトレードを前提とした生産農家への買い付けを行い、栽培から収穫、生産処理まで生産農家との関係性を深めることによって、より安全で安心な持続性の高い高品質の珈琲豆の調達・提供を実現してまいります。

 コスト管理面においては、購買をメニュー開発部にて一元管理し、仕入れルートの開拓やレシピ改定を迅速かつ柔軟に実施できる体制を構築します。また年次で実施するメニュー改定によって適時価格の適正化を図るほか、自社製加工食材の構成比を高めるなどして、総合的なコスト対策を実施します。

 

② 従業員のスキルアップと人材確保

 労働力市場の競争が激化し、「人材確保」と「スキルアップ」の重要性が高まっています。多様化する人材の採用、従業員教育・研修プログラムの強化、キャリア開発支援の充実、給与制度、働きやすい環境づくりと福利厚生の改善、外部リソースの活用など、人材のスキルアップと定着を図るための取り組みを強化します。

 椿屋珈琲グループでは入社した全従業員を対象とする研修チームを発足し、専任のトレーナーによる基本的な店舗のオペレーションと接客のスキルアップを図る研修を実施しております。今後は研修センターの本格始動に向け、厨房設備、レジ、オーダーシステムなど店舗同等の設備を研修用に配備し、接客および業務スキルの基準の統一を図るほか、店舗の業務負担の低減、ならびに教育・育成による定着率の向上につなげてまいります。また本部では店舗への応援チームも発足し、店舗社員の時間外労働の抑制や公休及び有給休暇取得の推進を図り、労働環境の改善に努めてまいります。

 こてがえし・ぱすたかんグループでは、アルバイトの募集・採用・オリエンテーションを本部にて実施し、労働力不足が顕著な都心部への効率的な人員配置を通じて労働力の確保に努めています。またキッチンディスプレイやタブレット端末によるクラウド化されたレシピのデジタル化、テーブルオーダーシステムなどの省人力設備も積極的に導入し、業務負担の軽減とQSCの基準維持・向上へとつなげてまいります。

 

③ DXによる生産性および体験価値の向上

 当社では労働力不足によるQSCの低下を防ぐため、省人力化を推進する「生産性向上パッケージ」を作成し、業態や店舗の運営状況に応じた生産性向上設備の導入を随時実施しております。既に自動釣銭機の全店配備や予約管理システム(EPARK)、QRコードによるモバイルオーダーシステム、インカム、キッチンディスプレイなどの配備に着手しているほか、配膳ロボットやセルフレジの導入検討も進め、当社のカフェ業態のコンセプトである「ゆとりとくつろぎの60分」の実現に努めてまいります。

 そして従業員教育においては、継続的な学習とスキルアップを促進するためのオンライン教育プラットフォームの導入やクラウドベースのデジタルツールの活用、ビデオ会議等により、効率的な学習やコミュニケーションの充実を図り、QSCの基準向上に努めます。

 デジタル化の急速な進展によって、オンライン予約やモバイルオーダリングなど、よりスマートなサービスを求める顧客層も増えています。特に円安の影響によりコロナ前を凌ぐ勢いで伸びる海外からの観光客(インバウンド)においては、QRコードによるメニューの多言語化、キャッシュレス決済、翻訳アプリの活用を通じ、需要の取り込みに努めています。

 本年4月より開始したポイントアプリの展開においては、既に登録者数も5万人を超え、全業態およびECサイトで利用できるポイントサービスの充実や定期的に配信されるクーポンの活用により、優良顧客の囲い込み、来店頻度の向上につなげてまいります。同年4月に刷新したホームページと全社で20万人を超えるLINE会員を軸に、ポイントアプリ、SNSとの連携を深め、デジタルマーケティングの推進を通じてカスタマーリレーションシップを深め、顧客の体験価値のさらなる向上を目指します。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出時において当社が判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティを意識した経営を推進することで、ブランド価値の向上、業績向上や事業の拡大、従業員満足度の向上などが図られ、持続可能な事業展開を実現できるものと認識しております。

 サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要度の高いものとして経営会議および取締役会の場で議論しています。また各本部定例会においては常勤取締役が常に参加して情報収集を行ったうえで課題を洗い出し、経営会議や取締役会に付議する体制を整えております。

 

 当社工場で発生する廃棄物最終処分量の削減に関する検証や店舗で発生するロス率の検証、作業時間の見直しによる省エネルギーの推進等を議論し、課題解決に向けた対応を図っております。そして有給休暇取得や産休・育休の活用、地球温暖化防止運動として、クールビズやオフィス照明のLED化などに取り組んでおります。今後も近年高まる環境への配慮についてもいち早い情報収集を心がけ、取締役会や経営会議において議論し実行するよう努めております。

 

(2)戦略

 当社は「味覚とサービスを通して、都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念を掲げ、お客様や従業員、株主や投資家から取引先、地域社会まで、様々なステークホルダーとの繋がりの中で、自らの社会的責任を果たし、社会・環境の持続的な発展に向けて積極的に取り組んでおります。

 かねてより食品リサイクルの分野において取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は7.1トンとなりました。企業努力により昨年よりも15%削減することが出来ましたが、処分が必要な部分につきましては、引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減に繋げており、この取り組みは日本SDGs協会からの事業認定を受けております。また一部の店舗メニューにおいては売上金の一部を小児ガン治療に役立てるために寄付する社会貢献活動を実施、テイクアウト用の容器は環境に配慮したものを使用するなど各種取組みを推進しております。

 

(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

 当社はおよそ200名の正社員、300名の契約社員およびフルタイムキャスト、2,000名のキャストで構成されており、全従業員が会社の経営理念に理解共鳴し、日々の営業活動において付加価値の提供が出来るよう教育を進めていく方針です。

 正社員に関しては、入社4年目以降に店舗管理・製造管理といった管理業務を担えるよう、階層ごと、入社年次ごとの集合研修を実施。他に業態別で開催しているキッチンカレッジ、衛生管理セミナーなど、役割に応じた個別研修を社内で行います。

 また外部研修では、主に新入社員が参加するトレーニングセミナー、キャスト指導にあたる人材を中心としたトレーナーズトレーニングセミナー、食中毒対策セミナー等に積極的に参加することで、外部環境の変化を把握しながら自身のスキルアップにつなげております。

 

 当社従業員の約9割を占めるキャストの応募・育成・定着は付加価値を提供する上で特に重要なプロセスと認識しております。コロナ禍の影響を大きく受けた過去の定着率から、2023年より応募、面接、初期導入に関しては本部一括採用を基本としており、オンライン面接の導入、採用できたキャストの受け入れと初期導入研修(OFF-JT)は本社トレーニングセンターで実施します。業態ごとに接客指導を担当しているトレーナーが主担当となり、基本的な心構えやルールの教育を実施することにより、店舗責任者は店舗での現場指導(OJT)に専念できる環境を整えております。

 また、キャスト定着率を毎月算出し、立地や営業時間などの影響から人手不足に陥りやすい店舗を見える化して全店共有することで、近隣店からの応援体制の構築や重点的に採用強化する地域を特定し、店舗、従業員が過度に負担がかかる労働環境に置かれることのないよう配慮しております。

 

参考 キャスト3ヶ月定着率(%)

 

7月末

10月末

1月末

4月末

2022年4月期

82.0

78.9

79.6

82.3

2023年4月期

73.7

80.2

79.6

82.0

 

 定着にむけた取り組みに関しては、年間を通して業績や企業価値向上に貢献した人材や店舗・事業所を表彰する東和ジェイズアワードの実施や永年勤続表彰制度、お客様から日々頂いているお褒めや御意見の中から顧客確保に向け優れたサービス提供した人材を表彰するホスピタリティ賞を創設し、毎月表彰しております。

 また、資格取得助成金制度を設けており、業務推進に必要な資格取得に関しては取得にかかる費用を補助しております。(2023年7月時点 対象資格21種類)

 

 

(3)リスク管理

 ロシアのウクライナ侵攻や世界的なインフレ、労働力不足、コロナ収束後の急速な経済回復等の影響は、外食業界における「食材調達」と「コスト管理」に課題をもたらしています。持続可能な調達ルートの確保、セントラルキッチンへの省エネルギー設備の導入、食品ロス対策、店舗での省エネ対策、物流の最適化など、資源の効率的な活用と持続可能な経営に取り組む必要があります。

 現在では鳥インフルエンザの流行による卵不足が深刻化し、主に業務用として使用される液卵や卵白の使用可能量が半減するなど、当社ではケーキ、焼き菓子等の製造に大きく影響が出ています。ISO22000認証工場であるケーキ工場では割卵機を導入し、卵は長野県、山梨県の農家より放牧・平飼いの鶏卵に仕入れを切替え、卵の持続可能な調達ルートを確保するほか、味や品質面での向上、アニマルウェルフェア(SDGs)への対応を行っております。商品においても、平飼い鶏卵を100%使用した「平飼いたまごのコク旨プリン」を開発し、一部の物販専門店限定で販売をしております。また自社で焙煎している年間90トンの珈琲豆は、“From seed to cup”をコンセプトに、生産から抽出まで一貫した品質管理を徹底した「スペシャルティコーヒー」を使用しています。フェアトレードを前提とした生産農家への買い付けを行い、栽培から収穫、生産処理まで生産農家との関係性を深めることによって、より安全で安心な持続性の高い高品質の珈琲豆の調達・提供を実現してまいります。

 

 労働力不足への対応に関しては、24期より従業員アンケートによってポジティブ・ネガティブ双方の意見から課題を抽出し、より働きやすい環境に近づけるための環境整備に優先順位をつけ、定着率向上につながるよう取り組んでおります。今期は主に店舗営業の環境整備としてのDX化推進と採用・トレーニング活動の本部一元化、昇進昇格・賃金制度の見える化に着手しております。管理職登用に向けた採用活動についても積極性や能力、向上心などの強みや会社の方向性への理解ある人材が当社の成長を支える重要な存在であると考えており、多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境の醸成に取り組んでおります。このような考えのもとに、年齢、性別、人種、障害の有無などに関わらず、多様な人材の活用を進めております。

 

(4)指標及び目標

第1 企業の概況 5 従業員の状況(3)(4)に記載のとおりです。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中にある将来に関する事項は、当事業年度末(2023年4月30日)現在において当社が判断したものです。

 

① 食材の調達と安全性に係るリスク

 当社は、安全で安心な食材を提供するため、信頼性の高い仕入先から継続して食材を調達し、また通関時の検査結果の確認に加え、定期的に自主検査も実施して安全性を確認しております。

 しかし、鳥インフルエンザ問題に代表されるような疫病の発生、天候不順、自然災害の発生等により、食材の調達不安や食材価格の高騰などが起こり、一部のメニューの変更を余儀なくされるケースも想定されます。また想定外の法的規制強化や新たな規制の発生、異物混入及び品質・表示不良品の流通による回収費用や訴訟・損害賠償、商品の品質や安全性を確保するためのトレーサビリティーの強化・システム構築などの費用が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② セントラルキッチンおよび店舗での衛生管理に係るリスク

 当社は、セントラルキッチンを所有し、スパゲッティの生麺とパスタソース、ドレッシングおよびフレッシュケーキ・焼き菓子を製造し、店舗へチルド配送しております。

 セントラルキッチンおよび店舗においては、厳しい品質管理と衛生検査を実施しておりますが、万一当社店舗において食中毒が発生した場合には、営業停止処分などにより当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、安全・安心な製品の提供を確保するため、食品安全マネジメントシステム規格の「ISO22000」の認証を取得し、品質管理の徹底と品質向上に向けた取組みを実施しております。

 

③ 自然災害のリスク

 近年発生が増加傾向にある異常気象のうち、台風や暴風雨などの影響や自然災害の中でも地震、大雨、洪水により生産現場や生産設備に被害が生じた場合、その復旧まで生産や出荷が長期間にわたって停止する可能性があります。当社では災害対策マニュアルやBCP(事業継続計画)の策定、安否確認体制による社員・アルバイト・全事業所のライフラインの確認、防災訓練などの対策を講じていますが、自然災害での被害を完全には排除できるものではなく、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 気候変動のリスク

 環境問題に対する取組みは近年ますます重要となっております。気候変動問題などの環境・社会課題の顕在化に伴い、持続可能な社会の構築を目指し、企業におけるSDGsへの取組みへの期待が一層高まっています。当社では環境への負荷低減に向けて食品リサイクルの分野を中心に着手しております。当社工場で発生する生麺の端材を飼料として提供することによる廃棄物削減と廃棄物処理時に発生するCO2排出削減に繋げております。しかしながら環境関連の規制強化やステークホルダーからの評価、消費者意識の高まりなどによっては当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 店舗の賃借物件への依存に係るリスク

 当社の大部分の店舗は、賃借しております。賃貸借契約のうち、特に、定期賃貸借契約は、契約終了後再契約されない可能性があります。このような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 財政状態に係るリスク

 当社は主に賃借による出店を基本としているため、賃貸人が破綻等の状態に陥り継続的使用や債券の回収が困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 減損会計に係るリスク

 当社において、今後経営環境の変化により、店舗の収益性が悪化し、固定資産の減損会計に基づき減損損失を計上することになった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 感染症拡大に係るリスク

 様々な感染症の世界的拡大により、外出自粛などによる来店客数の減少等のリスクが懸念されます。国や自治体のガイドラインに従い徹底的な衛生管理を行ってまいりますが、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社では、新型コロナウイルス同様の感染症が拡大した場合には、代表取締役社長を対策本部長とする対策本部を設置し、雇用と健康を守ることを第一に、全事業所の感染症対策を講じ、営業再開ガイドラインや感染者予防および感染発生時のマニュアルに則った運営、テレワーク、オンライン会議システムの活用を現在もすすめております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度の経営成績

 2023年4月期の業績は、売上高108億46百万円(前年同期比131.5%)、営業利益は6億14百万円(前期は営業損失7億51百万円)、経常利益は6億56百万円(前年同期比53.3%)となり、当期純利益は4億25百万円(前年同期比60.9%)となりました。

 

 24期は年初来の新型コロナウイルス感染拡大、世界的インフレによる物価の上昇や労働力不足に起因する人件費の高騰などの影響を受けたものの、感染対策の徹底や国外からの入国規制緩和などで経済活動を正常化する動きの中で、当社は業務効率化と営業施策の推進に努めた結果、すべての月で売上高、客数、客単価ともに前年を上回ることができました。

 

 中期経営計画のもとに新規事業としてスタートさせた食物販事業におきましては、催事運営チームを発足し、催事出店の決定から運営オペレーション、人材確保、検証までの仕組みを確立した上で、67ヶ所574日間の催事出店を展開いたしました。開催日数は前年と比べ21ヶ所176日増(前年比144.2%)となりました。

 

 また、椿屋オンラインショップと実店舗の両方でご利用金額に応じてポイントを貯めて利用ができる「椿屋珈琲グループアプリ」の開発に着手し、2023年4月に稼働をスタートさせました。このアプリでは、各業態のフェアメニューのご紹介や椿屋オンラインショップでのお得な情報や近隣店の検索などに加え、アプリ会員限定の特別クーポンの配布なども行っており、利便性を高めるツールとしてご活用いただいております。

 

 新規創店につきましては「ケーキ・焙煎珈琲 椿屋珈琲」を東急ストアアトレ大森店、五反田東急スクエア店と物販専門店を2店舗出店いたしました。五反田東急スクエア店におきましては、シュークリーム生地の焼成設備を導入して新たに販売した「焼きたてシュークリーム」が大変好評であり、物販事業拡充のための新たな柱として育成を進めてまいります。

 

 営業施策面では店舗での生産性向上を図るため、自動釣銭機能つきのレジ導入と入店待ちのお客様に対応するための自動順番受付機の導入やインバウンド需要に対応するためのメニューの多言語対応が概ね完了しております。現在はキッチン業務の効率化に向けたキッチンディスプレイ導入やデジタルメニューによるセルフオーダーシステムなどの試験導入も行い、生産年齢人口の減少に伴う人手不足に対する生産性向上策を引き続き進めてまいります。

 

 部門別の概況につきましては、以下のとおりです。

 

『椿屋珈琲グループ』(期末店舗数52店舗 2店舗増加)

 椿屋珈琲グループの売上高は45億50百万円(前期比133.1%)となりました。

 主に都心部でのビジネスマンとインバウンド需要取り込みにより、大幅に回復しております。「ゆとりとくつろぎの60分」をコンセプトとして、ブランド力をさらに高められるようサービスの向上に努めました。

 昨年4月に増床リニューアルを実施した「椿屋珈琲新宿茶寮」、抹茶をテーマとし新たなモデルで改装オープンした「茶寮SIKI TSUBAKIYA コレットマーレ店」がオープンから1年が経過し収益モデルも確立出来ました。

 

『ダッキーダックグループ』(期末店舗数20店舗 増減なし)

 ダッキーダックグループの売上高は21億61百万円(前期比117.5%)となりました。

 CheeseEggGarden調布店および松戸店において、店内にケーキ製造設備を設置、改装を行いました。ケーキの製造設備を併設する店舗は計10店舗となり、作り立て・スタジオ限定という付加価値の提供を行うと同時に、物販専門店への出荷も可能とする体制構築を進めております。

 定番のストロベリーショートケーキをはじめとするケーキ、ズコット、ゼリー等、旬のフルーツを使用したスイーツ開発に力を入れ、テイクアウト販売も伸ばしております。

 

 

 

『イタリアンダイニングドナグループ』(期末店舗数22店舗 増減なし)

 イタリアンダイニングドナグループの売上高は18億31百万円(前期比131.7%)となりました。

 自社製にこだわった生麺、パスタソース、ドレッシングを使用し、前菜にピッツァ、ディナータイムではお酒と共に一品料理をお楽しみいただけます。セントラルキッチンで調理された本格的なグラタンやシチューなど、内製化比率が高い事も特徴です。

 

『こてがえし・ぱすたかんグループ』(期末店舗数13店舗 増減なし)

 こてがえし・ぱすたかんグループの売上高は12億6百万円(前期比150.7%)となりました。

 2022年11月より「築地もんじゃ」を看板商品として打ち出し、店舗で仕込んだ自家製明太子もんじゃをメニューの中心に据え、店舗外装におきましてももんじゃ焼きを前面に打ち出した外観へ変更したことにより、新たな客層の掘り起しとリピーターの獲得によって業績が大幅に回復しております。人で行うべき調理・サービスが多いこともあり、DX化による生産性向上にも積極的に取り組んでおります。

 

『プロント』(期末店舗数5店舗 増減なし)

 プロントの売上高は5億39百万円(前期比138.1%)となりました。

 弊社がフランチャイジーとして運営するプロントでは、朝から昼はカフェとしてコーヒー・トースト・マフィンやランチパスタを、夜は一人からグループ客までお酒の需要回復にあわせて、「キッサカバ」として気軽にお酒を楽しめるシーンを提供しております。

 

『生産部門/EC事業/物販催事事業』

 生産部門の売上高は2億73百万円(前期比127.3%)となりました。

外食需要の回復により、カミサリーで製造するパスタソース・ドレッシングの外部販売が生産部門全体を押し上げております。

 EC事業の売上高は1億73百万円(前期比134.6%)となりました。

 自社サイト「椿屋オンラインショップ」ではアプリポイントとの連携を2023年4月よりスタートしております。今後も新商品の御案内やお得な商品の御案内を行ってまいります。

 物販催事事業の売上高は深川工場直販もあわせて1億10百万円(前期比177.3%)となりました。

 

『サステナビリティの取組み』SDGs ゴール3.12.14

 現在、鳥インフルエンザの流行により多くの鶏の殺処分が行われ、卵の入荷に関して不安定な状況が続いております。鳥インフルエンザに関しては毎年同様のリスクを伴うこともありますが、飼育環境に配慮され飼育密度の低い平飼い鶏が産卵した卵の入荷を試験的に開始いたしました。今後安定的な仕入れを目標としております。

 食品リサイクルの分野において取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は7.1トンとなりました。企業努力により昨年よりも15%削減が出来ましたが、処分が必要な部分につきましては、引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減とコスト削減にもつながっております。この取り組みは日本SDGs協会からの事業認定を受けております。

 その他、売上の一部を小児がん治療のために寄付する社会貢献活動、環境に配慮した副資材の使用も全店で徹底しております。今後もSDGsの取組みを推進してまいります。

 

 

 

(2)生産・仕入・販売実績・店舗数等の状況

① 生産実績

 当社は、フードサービス事業の単一セグメントであるため、生産実績は製品別、仕入実績は品目別、販売実績は部門別に記載しております。

 当事業年度における生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品名

当事業年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

生産金額(千円)

前年同期比(%)

自社製フレッシュケーキ

514,906

108.5

スパゲッティ生麺、ソース、ドレッシング

610,192

120.1

コーヒー豆

142,943

134.4

合計

1,268,042

116.4

(注)金額は、製造原価によっております。

 

② 仕入実績

 当事業年度における仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目

当事業年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

仕入金額(千円)

前年同期比(%)

飲料・食材類

2,326,347

124.9

その他

191,022

122.6

合計

2,517,370

124.7

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

 

③ 販売実績

 当事業年度における販売実績を部門別に示すと、次のとおりであります。

 

当事業年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

売上金額(千円)

前年同期比(%)

椿屋珈琲

東京都

3,208,291

138.4

 

神奈川県

762,921

126.6

 

埼玉県

207,561

113.0

 

千葉県

371,506

118.1

小計

 

4,550,279

133.1

ダッキーダック

東京都

885,408

122.7

 

神奈川県

612,637

111.7

 

埼玉県

218,723

116.2

 

千葉県

444,776

116.3

小計

 

2,161,545

117.5

ドナ

東京都

1,129,619

134.2

 

神奈川県

313,036

122.9

 

埼玉県

306,312

133.6

 

千葉県

82,683

127.7

小計

 

1,831,652

131.7

ぱすたかん・こてがえし

東京都

799,893

163.1

 

神奈川県

233,337

133.1

 

埼玉県

89,661

138.9

 

千葉県

83,716

118.8

小計

 

1,206,608

150.7

その他

東京都

991,742

141.7

 

神奈川県

104,757

137.7

 

埼玉県

 

千葉県

小計

 

1,096,500

137.7

合計

東京都

7,014,955

138.3

 

神奈川県

2,026,689

122.3

 

埼玉県

822,259

121.1

 

千葉県

982,681

117.1

総合計

 

10,846,585

131.5

(注)ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッチン

   およびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

④ 地域別店舗数及び客席数の状況

 

当事業年度

(2023年4月30日現在)

期末店舗数(店)

前期末比増減

客席数(席)

椿屋珈琲

東京都

35

2

2,332

 

神奈川県

9

752

 

埼玉県

3

212

 

千葉県

5

369

小計

 

52

2

3,665

ダッキーダック

東京都

9

564

 

神奈川県

5

452

 

埼玉県

2

177

 

千葉県

4

302

小計

 

20

1,495

ドナ

東京都

12

626

 

神奈川県

5

257

 

埼玉県

4

201

 

千葉県

1

66

小計

 

22

1,150

ぱすたかん・こてがえし

東京都

8

481

 

神奈川県

3

163

 

埼玉県

1

52

 

千葉県

1

54

小計

 

13

750

その他

東京都

3

327

 

神奈川県

2

114

小計

 

5

441

合計

東京都

67

2

4,330

 

神奈川県

24

1,738

 

埼玉県

10

642

 

千葉県

11

791

総合計

 

112

2

7,501

(注)1 ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッ

     チンおよびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、16億21百万円で前事業年度末に比較して、2億78百万円減少しました。

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果、得られた資金は6億45百万円で、前事業年度と比較して12億17百万円減少しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果、使用した資金は8億32百万円で、前事業年度と比較して6億41百万円減少しました。これは主に定期預金の払戻による収入が13億円増加したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果、使用した資金は91百万円で、前事業年度と比較して25百万円増加しました。これは主に配当金等の支払額が28百万円増加したことによるものです。

 

(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。

 当社の財務諸表作成において、損益または資産の評価等に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行なっておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績について

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい食の場・手の届く贅沢」という脱日常と付加価値を提供することに注力しております。今期は「ゆとりとくつろぎの60分」を体験していただくための高付加価値の提供を掲げて、日々の営業施策を進めてまいりました。「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、24期は年初来の新型コロナウイルス感染拡大、その後の入国規制緩和やあらゆるコロナ制限の緩和など、経済を正常化させる動きもありました。世界的インフレによる物価の上昇や労働力不足に起因する人件費の高騰などのさまざまな影響を受けたものの、業務効率化と営業施策の推進に努めた結果、すべての月で売上高、客数、客単価ともに前年を上回ることができました

 売上高は108億46百万円(前期比131.5%)、営業利益は6億14百万円(前期は営業損失7億51百万円)、経常利益は6億56百万円(前年同期比53.3%)となり、当期純利益は4億25百万円(前年同期比60.9%)となりました。期末店舗数は2店舗増加し、計112店です。

 

③ 財政状態について

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ75百万円減少し84億43百万円となりました。流動資産は前事業年度末に比べ40百万円増加し47億円となりました。これは現金及び預金が1億21百万円増加したことが主な要因です。固定資産は前事業年度末に比べ1億16百万円減少し37億43百万円となりました。これは有形固定資産の建物(純額)が1億5百万円減少したことが主な要因です。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ4億16百万円減少し24億27百万円となりました。流動負債は前事業年度末に比べ1億12百万円増加し17億30百万円となりました。これは1年内返済予定の長期借入金が6億円増加したことが主な要因です。固定負債は前事業年度末に比べ5億28百万円減少し6億97百万円となりました。これは長期借入金が6億円減少したことが主な要因です。

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ3億40百万円増加し60億16百万円となりました。これは利益剰余金が3億37百万円増加したことが主な要因です。

 

 

(単位:千円)

 

勘定科目

前事業年度

2022年4月期

構成比

当事業年度

2023年4月期

構成比

増減額

現金及び預金

3,699,254

43.4%

3,821,193

45.3%

121,938

有形固定資産

1,570,659

18.4%

1,462,709

17.3%

△107,949

土地

530,000

 

530,000

 

投資その他の資産

2,269,730

26.6%

2,226,922

26.4%

△42,807

差入保証金

417,402

 

417,402

 

敷金

1,425,865

 

1,443,902

 

18,036

長期借入金

600,000

7.0%

600,000

7.1%

1年内

 

600,000

 

600,000

1年超

600,000

 

 

△600,000

資本金

50,000

0.6%

50,000

0.6%

資本剰余金

1,306,350

15.3%

1,306,350

15.5%

利益剰余金

4,411,327

51.8%

4,748,347

56.2%

337,019

 

④ 資金の財源及び資金の流動性についてと財政状態の改善に向けた取り組みについて

 当事業年度末におけるキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 従来、当社の資金需要はそのほとんどが新規出店と既存店改装のための設備投資資金であります。

 今後についても、通常ベースの新規出店と既存店改装は、営業活動によって得られる資金によって賄う方針に変更はございません。また、生産性向上のための製造設備の拡充や、計画外で大型出店を実施するとの判断に至った場合には、金融機関等からの借入または資本市場からの直接資金の調達によって、必要資金の確保を進めていきたいと考えております。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。