第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年2月28日現在)において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社グループは、医薬品用製剤(錠剤・顆粒剤など)を作る工程で使用される機械装置と添加剤等の化成品を主力製品としております。この分野で機械装置と化成品の両方を同一企業体で手掛けているのは世界でも当社だけであり、造粒・コーティング技術をキーテクノロジーとして、独創的な機械装置(ハード)と製剤技術(ソフト)を一体化した技術開発力を駆使し、研究開発に注力しております。

その企業理念として『創造力で未来を拓く(登録商標)』のもと、つぎの“5つの創造”を掲げております。

① 独創性豊かな製品の創造

② 先見力で新しい市場ニーズの創造

③ 組織を活性化する経営基盤の創造

④ 困難に立ち向かうチャレンジ精神の創造

⑤ 潤いのある人間関係の創造

また、創立60周年を機に、グループ経営ビジョンを“「なくてはならない」技術に挑み、健やかで潤いのある生活を支える。”に改定いたしました。研究開発型企業として、製剤技術を基盤に開発した製剤機械、医薬品添加剤を医薬品・食品メーカーに提供することで、人々の健やかで潤いのある生活を支えてまいります。

 当社グループは創造力とチャレンジ精神をもって事業展開を図り、健全な成長と一層強固な経営基盤を構築し、社員、お客さまはじめ全てのステークホルダーとの円滑な関係を維持するとともに、社会への貢献を図ってまいります。

 

(2)経営環境

わが国経済は、雇用や所得環境の改善を背景として、景気は堅調に推移してきました。しかしながら、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、円安や労働力不足に伴う物価上昇、通商政策などアメリカの政策動向、ウクライナ及び中東地域をめぐる情勢なども、リスク要因として注視する必要があります。

当社グループの主要ユーザーであります医薬品業界においては、社会問題となっている医薬品供給不足を解消するべく、大手メーカーを中心に生産能力を増強する動きが続いています。また、世界市場においては先進国での高齢化進展と新興国での人口増加・医療水準の向上を背景に、今後も成長することが予想されております。

 

(3)経営戦略及び対処すべき課題

当連結会計年度は、第9次中期経営計画(第61~63期)の初年度となりました。

第9次中期経営計画については、2024年4月12日に公表いたしましたが、当社の経営理念である『創造力で未来を拓く(登録商標)』のもと、持続的成長と経営基盤強化に取り組んでまいります。

(ご参考)第9次中期経営計画

https://www.freund.co.jp/news/news_file/file/doc_plan9th_20240412.pdf

 

医薬品業界をはじめとする医療健康産業の果たすべき役割への期待は、世界人口の増加や各国における高齢化の進展により、着実に高まっております。

当社は、こうした社会のニーズに応えるべく、開発・販売のグローバル展開を積極的に推進しており、日本、アメリカに加え2019年にインド、2020年にイタリア、2023年には中国での拠点活動を開始し、グローバル5極体制が本格的にスタートいたしました。今後より一層グループ間の連携を強化、シナジーを創出しグローバル市場における「FREUND」ブランドのプレゼンス向上を目指します。

かかる成長戦略の着実な実行、そしてグローバル展開やグループ連携を加速化させることで、各事業の持続的な成長を目指すとともに、引続き企業価値向上に努めてまいります。

 

(4)目標とする経営指標

国内医薬品市場の成長余地が限られるなか、効率性の追求と同時に、より積極的に業容を拡大しながら新たな製品、新たな事業領域を求めて積極的に投資をして、売上と利益の拡大を同時に追求していくことが不可欠です。

このため、これまで取組んできた社員一人ひとりが自ら考え行動する風土改革をさらに促進し、効率性、生産性の向上を図るとともに、社員、投資家などのステークホルダーにわかりやすい、連結売上高、連結営業利益を成長戦略の成果としての経営指標としております。

 

・連結およびグループ各社の売上高:各社の対象市場での市場占有率の上昇と各社の事業規模の拡大を通じて、連結ベースの売上高の増加を目指します。

 

・連結およびグループ各社の営業利益:各社の本業から得られる利益の増加を通じて連結ベースの営業利益、ひいては経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の増加を図り、すべてのステークホルダーに貢献することを目指します。

 

第9次中期経営計画における3つの基本方針をグループ一丸となって推進し、第63期(2027年2月期)には以下の業績目標の達成を目指します。

基本方針

■基盤事業の強化と拡大

■新製品・新事業開発

■経営基盤の強化

 

 

経営指標

 

実績

第61期

(2025年2月期)

予想

第62期

(2026年2月期)

目標

第63期

(2027年2月期)

連結売上高

233億円

245億円

250億円

連結営業利益

12億円

15億円

16億円

 

(注)2027年2月期の為替レートは1米ドル=130円、1ユーロ140円で想定しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループにとってのサステナビリティとは、『創造力で未来を拓く(登録商標)』というフロイントグループ企業理念に基づき、ステークホルダーと当社グループと社会の持続的な成長を目指すことです。異常気象、資源枯渇、森林破壊、人権問題等に配慮しつつ、企業活動の中で、お客様へ提供する価値を通じて貢献してまいります。また、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に配慮し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から長期的視野で持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社は、中長期的な当社グループの持続的な成長を支え、企業活動を通じ実践すべきテーマとしてサステナビリティにおける重要課題を設定し、常勤取締役及び執行役員等から代表取締役社長が指名したメンバーで構成され、原則として月1回開催される経営会議で進捗状況や重要施策を審議し、それら活動を定期的に取締役会に報告しております。

 

(2)戦略、指標及び目標

当社グループのサステナビリティにおける重要課題は以下のとおりです。特に人的資本に関わるテーマは重要課題であると認識しております。

テーマ

重要課題

①人財育成

グローバル人財、後継者育成

②ダイバーシティ推進

女性活躍推進、仕事と家庭の両立支援

③エンゲージメント向上

従業員の働きがい向上

④自然環境保護

事業を通じた地球資源の有効活用、地球環境改善への取り組み

 

 

① 人財育成

当社グループでは、安定成長期から次なる成長・変革のステージへの起点として、ビジネスモデルの成長、そして変革を下支えする人財マネジメントの改革が必要な局面にあると考えております。組織風土や人財ポリシーを明確化し、「社員一人ひとりの成長が会社の発展につながる」という信念のもと、サクセッションプランの策定、次世代経営人財の育成、グローバル展開を支える人財の育成、マルチタスク化に向けたジョブローテーションの推進に取り組んでおります。

私たち一人ひとりが生み出す仕事の価値をさらに高めることで、国内外問わず高品質で革新的な製品・サービスを提供していく責任を果たしてまいります。

 

② ダイバーシティ推進

 

目標

実績(当事業年度末)

女性管理職比率(注)

2027年度まで20以上

14.9

男性社員の育児休業取得率(注)

2027年度まで50以上

66.7

 

(注)連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載

 

イ.女性管理職比率

当事業年度における女性管理職比率は14.9%に対し、2027年度までに20%以上とすることを目標に、意欲と能力のある人財が、性別を問わず管理職として活躍できる環境を整えてまいります。

そのため、以下の取り組みを強化してまいります。

・現女性管理職をロールモデルとして紹介し、キャリア形成に前向きな意識を醸成

・各部門において、管理職候補となる社員の育成計画を作成し、長期的なキャリア支援を実施

・男女を問わず、管理職を目指す社員に対して、リーダーシップやマネジメントスキル向上研修を実施

 

 

ロ.男性社員の育児休業取得率

当事業年度における男性社員の育児休業取得率は66.7%と、厚生労働省調査結果(令和5年度雇用均等基本調査)の30.1%及び当社目標(2027年度までに50%以上)を上回る結果となりました。育児休業は「取得を義務付けるもの」ではなく、「社員が希望するタイミングで安心して取得できるもの」と考え、今後も、周囲が気持ちよく送り出せる風土を醸成し、必要な時に育児休業を活用しやすい環境を整えてまいります。

具体的には以下の取り組みを強化してまいります。

・社内ポータルを活用し、関連制度の情報発信や取得事例を定期的に紹介、社員への意識醸成を図る

・育児休業に関する相談窓口を設置し、取得に向けた不安を軽減

・対象となる社員に対し、人事課及び部門長が制度を案内し、取得しやすい環境づくりをサポート

・部門長主導で社員の業務分担を見直し、柔軟な働き方が可能な体制を整備

また、育児休業に限らず、在宅勤務制度や育児・介護休暇の要件緩和など、より柔軟な働き方を実現するための仕組みを検討してまいります。

 

③ エンゲージメント向上

社員一人ひとりが主体的に仕事に取り組み、自身の能力を最大限に発揮できる環境をつくるためには、企業理念やビジョン、事業活動への理解を深め、共感力を高めることが必要だと考え、以下の取り組みを推進しております。

・ONE FREUND PROJECTの発足

創立60周年を迎えるにあたり、当社グループが目指す姿を描いた新たな経営ビジョン“「なくてはならない」技術に挑み、健やかで潤いのある生活を支える。”を策定いたしました。この新経営ビジョンのグループ全体への浸透を目的とした『ONE FREUND PROJECT』を発足、プロジェクトメンバーが中心となって浸透施策を立案・実行し、社員全員が一丸となって未来を創る取り組みを進めております。

・譲渡制限付株式(RS)の付与

社員のモチベーション向上を図るとともに、社員一人ひとりが経営参画意識を持ち、業績・株価上昇への意識を高めることにより、中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

・One Freund Meetingの開催

毎月初めに各拠点をオンラインでつなぎ、会社の業績や最新のトピックス、経営者の考えを共有する「One Freund Meeting」を開催。社員の声を反映しながら、より風通しの良い組織づくりを目指しております。

・健康経営への取り組み

社員の健康保持増進が組織パフォーマンスの向上、組織の活性化、業績の向上につながるとの考えから、活動を進めています。具体的には、定期健康診断の受診(受診率100%達成)と再検査の受診推奨、特定保健指導の実施、婦人科検診の年齢制限の撤廃、健康に関する情報提供などに取り組み、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2024」(中小規模法人部門)に2年連続で認定されました。今後は定期健康診断に大腸内視鏡検査を無償追加するなど、引き続き従業員が活き活きと働ける環境づくり、取り組みを推進してまいります。

 

その他、業務を円滑に遂行するためには、社員同士の相互理解やコミュニケーションの活性化が必要であると考え、社内ポータルを活用した情報発信や各事業拠点でのイベント開催など、多様な交流の機会を設けております。時代の変化や社員の意向を踏まえた形で、より働きがいのある職場環境作りに取り組んでおります。

 

④ 自然環境保護

 当社は、環境負荷の軽減を重要な経営課題として認識し、製品およびサービスを通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しております。昨年度は以下の活動を継続的に実施し、環境負荷軽減に向けた取り組みを推進いたしました。

・機械製品における環境配慮

 当社は、エネルギー効率および生産性の向上を目指した機械製品の開発・販売を継続して行っており、これらの製品は、生産現場での自動化や省力化にも寄与しております。特に、当社の主力製品である「ハイコーターHV」においては、従来機と同等の品質を維持しながらコーティング時間を約40%短縮することを実現いたしました。

 この短縮により、電気の使用量を削減し、1台あたり年間約82トン(※)のCO2排出量を抑制しております。この削減量は、約9,300本の杉の成木が吸収するCO2量に相当いたします。また、吸排気機構の最適化により、パン洗浄時間は約50%、使用水量は約42%の削減を実現いたしました。

(※)当社試算による参考値であり、実際の数値は諸条件により異なる場合があります。

・化成品事業における取り組み

 化成品事業では、環境負荷に配慮した製品の開発や、物流および製造過程における環境負荷の低減に取り組んでおります。

 医薬品添加剤の輸送においては、従来トラックで行っていた一部品目の輸送を鉄道へ切り替えるモーダルシフトを継続しております。この取り組みにより、2024年には温室効果ガス排出量を従来比で約70%削減する見込みでしたが、実際に年間排出量を約8トンから2.4トンへ削減することが出来、70%の削減率を達成いたしました。また、製造過程で発生する廃棄原料につきましては、堆肥および飼料化することで、廃棄物削減に取り組んでおります。

 食品品質保持剤製品の保管および輸送に関しては、倉庫拠点を適正化することで環境負荷の軽減を図っております。加えて、食品の劣化やカビの発生を抑える当社の品質保持剤は、食品の賞味期限延長や廃棄の削減を支援しており、フードロスの抑制にも寄与しております。今後も、製品の拡販や機能性を高めることで、社会課題の解決に貢献してまいります。

 また、本社社屋での使用電力を再生可能エネルギーへ切り替えたことにより、2024年においては約140トンのCO2排出量削減をいたしました。

 今後も環境負荷軽減に向けた製品開発および活動を一層推進し、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループでは、サステナビリティへの対応を重要課題と認識しており、取締役会が監視・監督を行うこととしております。サステナビリティ関連のリスク及び機会の評価、関連する目標や取り組みの進捗状況は、原則として月1回開催される経営会議で審議され定期的に取締役会へ報告されることにより、取締役会による実効性のある監督を可能としております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える定量的な影響については、合理的に予見することが困難であると考えており記載しておりませんが、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能なかぎり発生の防止に努め、また、発生した場合は迅速・的確に対処する方針です。

なお、本項に含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。

 

(1) 経済環境および市場動向に関わるリスク

当社グループの業績と財政状況は、製品を販売している国または地域の経済の動向、景気変動、原材料価格、調達動向、外交情勢、金利、為替、関連法規制等により、大きく影響を受ける可能性があります。

機械事業については製薬企業の設備投資の増減の影響を大きく受ける傾向にあり、設備投資需要が落ち込んだ場合には、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 業界動向に関わるリスク

当社グループの顧客企業の多くは製薬企業であり、業績は比較的安定しております。しかしながら、医療費削減に向けた政策、他産業の新規市場参入、新製品の開発の難易度の高まりなどで顧客企業の業績が悪化した場合、さらには国内外での再編により、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料等の調達に関わるリスク

当社グループでは、高品質で低廉な原材料等の安定調達に努めておりますが、調達先の業績悪化、大規模災害や世界的な感染症の拡大、国際紛争等によるサプライチェーンの混乱による物価上昇や調達制約があった場合、納期遅延等にも繋がり、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 業務提携先との関係等に関わるリスク

国内の機械事業については、製品生産を特定の業務提携先に大きく依存しております。また、化成品事業の一部製品について委託生産を行っており、業務提携先の生産能力や技術力、経営状態や主要販売先の需要動向の著しい変化により、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外における事業活動に潜在するリスク

当社グループは、着実な事業成長を目指して米国をはじめ欧州やアジアなどグローバル5極体制で事業を展開しております。これらの海外市場での事業展開においては、政府の規制や経済情勢の変化、戦争・暴動・テロ・災害・伝染病等の偶発的要因による社会的混乱、保護主義的な貿易政策、当該地域の予期せぬ法規制の変更、事業環境や競合状況の変化等のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 価格競争に関わるリスク

機械事業については、競合企業の低価格攻勢やエンジニアリング会社の参入、中国・東南アジア製の安価な製品との競合などから厳しい価格競争に晒されるリスクが増大、また化成品事業においても、新規参入の影響から、価格競争が激化しております。当社グループは利益率の低下に対処すべく、原価低減などに取り組んでおりますが、予想外の価格競争になった場合は、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 人材の確保に関わるリスク

当社グループの事業成長のために、経営、技術、営業、製造、管理等各分野における優秀な人材を確保し、育成を図り、競争力の向上を目指しております。しかしながら、採用競争の激化により、優秀な人材の確保が難しい場合、育成が進まなかった場合、また退職等によって確保ができなかった場合、当社グループの業績と財政状況に影響を与える可能性があります。

 

(8) 自然災害等に関わるリスク

当社グループでは、主要な生産拠点を静岡県に設けており、同地域では東海・東南海・南海地震発生のリスクが予測され、損害を被る可能性があります。これに加え、大雨、洪水などの自然災害が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

地震・自然災害発生時には、操業の中断、生産および出荷が遅延することによる売上高の減少や製造拠点等の修復に巨額の費用を要することも想定され、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、業務提携先における事故や災害の発生により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。

 

(9) 為替変動に関わるリスク

当社グループは、為替リスクを軽減し、または回避するために様々な対策を講じておりますが、事業のグローバル展開にともない海外売上高は年々増加しており、急激な為替レートの変動は当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、海外連結子会社の現地通貨建ての損益及び資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、為替相場の変動による影響を受けることになります。換算に使用する為替レートの変動にともない円換算後の価値が変動するため、為替レートの変動が当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 知的財産権に関わるリスク

研究開発型企業を標榜する当社グループは、知的財産管理の専門部署を設置し、特許権を含む知的財産権を厳しく管理しておりますが、国内外で事業を展開するため、事業上の競合者等から知的財産権に関わる侵害を被る可能性があり、万一、侵害を受けた場合は、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社グループの自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合、係争に発展し、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 製造物責任に関わるリスク

当社グループが提供する製品およびサービスには高い信頼性が求められておりますが、欠陥が生じるリスクがあります。製品保証部門を強化するとともに、製造物にかかる賠償責任については製造物賠償責任保険に加入しておりますが、保険でカバーされないリスクや社会的評価の低下により、当社グループへの信頼が損なわれ、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 公的規制等に関わるリスク

当社グループが事業展開している世界各地において、事業に関わる許認可、輸出入に関する制限や規制など様々な公的規制を受けております。また、通商、公正取引、特許、消費者保護、租税、為替管理、環境関連などの法規制の適用も受けており、これらは専門家を活用する等により随時見直されております。各種規制の動向には十分注視しておりますが、遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限されたり、制裁金などが課される可能性があるなど、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) コンプライアンスに関わるリスク

当社グループでは、行動規範の徹底により従業員の意識醸成を図り、法令遵守に取り組んでおります。しかしながら、国内外における法令違反等の摘発等、社会的な信用を失墜されるような企業不祥事が発生した場合は、課徴金・罰金等の制裁、顧客からの信頼喪失や株価下落となり、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(14) 情報漏洩によるリスク

当社グループは、事業活動を通じて顧客情報や当社グループの営業秘密等、多くの情報資産を保有しております。それらの情報管理については、社員への情報セキュリティ教育の実施、サイバー攻撃に対応するソフトやメール誤送信防止システムの導入等の対策を講じておりますが、不測の事態により、万が一情報漏洩が発生した場合には、当社グループの信用失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 固定資産の減損リスク

当社グループが保有する固定資産については着実な事業展開により収益をもたらしていますが、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、保有する固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用や所得環境の改善を背景として、景気は緩やかな回復基調で推移しました。

当社グループの主要ユーザーであります医薬品業界においては、社会問題となっている医薬品供給不足を解消するべく、大手メーカーを中心に新工場建設や老朽化設備の更新など生産能力を増強する動きが続いています。また、世界市場においては先進国での高齢化進展と新興国での人口増加・医療水準の向上を背景に、今後も成長することが予想されております。

当社グループにおいては、医薬品製造プロセスで使用される機械装置の受注・販売を強化するとともに、当社顧客で使用されている機械装置のメンテナンス・サービスを通じて、医薬品の安定供給に貢献してまいりました。また、医薬品添加剤の需要拡大および安定供給に対応するため、既存工場内における生産ラインの増設などの検討を継続しております。一方、海外ではアメリカ、イタリア、インド、中国に日本を加えたグローバル5極体制の連携強化、シナジー創出によりグローバル市場における「FREUND」ブランドのプレゼンス向上を目指し、一定の成果を上げることができました。

 

当連結会計年度の業績は、売上高は233億97百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は12億1百万円(同5.4%減)、経常利益は12億19百万円(同5.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6億37百万円(同16.7%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

・機械部門

国内では、上述の設備投資需要を背景とした受注に対し、協力会社とともに早期出荷に努め、また、既存設備のメンテナンス・サービスおよび新技術導入を通じて、医薬品の安定生産に貢献するなど、前年同期比で増収となりました。海外については、米国子会社において、期末に向けて着実な出荷を行い、大型案件の受注を獲得できた一方、イタリア子会社においては、新興国での政情不安や顧客における工場建設遅延の影響もあり、売上は前年同期比で減収となりました。なお、国内の基幹システムの更新に伴う一時的な費用を第1四半期連結会計期間に計上したこと等の影響もあり、販売費及び一般管理費は前年同期比で増加いたしました。

この結果、売上高は167億55百万円(同3.7%増)、セグメント利益は12億41百万円(同34.2%増)となりました。

 

・化成品部門

医薬品の経口剤に使用される医薬品添加剤は、一部の国内大口ユーザーにおいて医薬品供給不足対応のため、生産能力の振替を行った影響を受けて、当社製医薬品添加剤の出荷が一時的に制約を受け、国内は減収となりましたが、海外売上が復調し、海外売上高は前年同期比で若干の増加にとどまりました。

食品品質保持剤は、大口顧客の一部において事業継続の観点で複数社からの調達に切り替えたことによる影響等を受け、売上高は前年同期を下回りました。

また、化成品部門でも基幹システムにかかる一時的な費用を第1四半期連結会計期間に計上したこと等により、販売費及び一般管理費は増加いたしました。

この結果、売上高は66億41百万円(同1.5%減)、セグメント利益は8億9百万円(同22.4%減)となりました。

 

 

② 財政状態の分析

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7億69百万円増加し、265億59百万円となりました。この主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産が8億5百万円減少したものの、仕掛品が9億99百万円、原材料及び貯蔵品が7億47百万円増加したことによるものであります。

また、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3億56百万円増加し、111億22百万円となりました。この主な要因は、電子記録債務が5億22百万円、短期借入金が4億6百万円減少したものの、契約負債が13億9百万円増加したことによるものであります。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4億13百万円増加し、154億37百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べ4億15百万円増加(前年同期は8億19百万円の増加)し、51億52百万円となりました。

当連結会計年度各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は17億50百万円(前年同期は23億68百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益の計上11億14百万円、売上債権の減少8億51百万円等の増加要因によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は4億59百万円(前年同期は7億39百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2億54百万円、投資有価証券の取得による支出1億60百万円等の減少要因によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、減少した資金は8億55百万円(前年同期は8億74百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額4億17百万円の減少、配当金の支払3億36百万円等によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2024年3月1日
  至 2025年2月28日)

前年同期比(%)

機械部門(千円)

17,082,707

107.4

化成品部門(千円)

6,691,945

112.9

合計(千円)

23,774,653

108.9

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b. 商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2024年3月1日
  至 2025年2月28日)

前年同期比(%)

化成品部門(千円)

790,453

106.8

合計(千円)

790,453

106.8

 

(注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

c. 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

機械部門

17,851,947

96.0

17,076,255

107.8

合計

17,851,947

96.0

17,076,255

107.8

 

(注) 1.化成品部門のうち医薬品添加剤と食品品質保持剤は、販売計画に基づいた見込生産によっておりますので記載を省略しております。

2.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。

 

d. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2024年3月1日
  至 2025年2月28日)

前年同期比(%)

機械部門(千円)

16,755,793

103.7

化成品部門(千円)

6,641,937

98.5

合計(千円)

23,397,731

102.2

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

東和薬品株式会社

3,082,179

13.2

 

(注)前連結会計年度における東和薬品株式会社への販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

また、連結財務諸表の作成にあたって、会計上の見積りを必要とする繰延税金資産、貸倒引当金、棚卸資産の評価、固定資産の減損、退職給付に係る会計処理などについては、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき見積りおよび判断をしております。ただし、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析につきましては「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

c. 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループは、健全な財政状態の維持と流動性確保および自己資本の充実を財務方針としております。事業成長に向けた投資資金需要に対しては、投資の内容、手許流動性の水準、資本コスト、資金調達環境、自己資本比率などを総合的に勘案し、長期的な企業価値向上に最も資する方法により対応しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社が締結している契約等は次のとおりであります。

(1) 技術供与契約

該当事項はありません。

 

(2) 技術導入契約

該当事項はありません。

 

(3) 販売の提携

 

提携先

契約年月日

提携内容

契約期間

㈱大川原製作所

1980年3月3日

1981年12月21日

(契約更改)

1985年7月29日

(契約更改)

当社機械装置及び関連機器の製造及び国内販売に関する事項(業務提携契約)

1980年3月3日から1990年3月2日まで(自動更新中)

 

 

(4) 製造委受託契約

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは医薬品・食品業界のニーズを先取りした技術開発型企業として研究開発を進めています。とくに、造粒およびコーティング技術をキーテクノロジーとして、独創的な機械装置および医薬品添加剤の開発、そして双方の技術を融合した製剤技術の研究開発を通じ、人々の健やかで潤いのある生活に貢献しております。また、粉砕技術をキーテクノロジーとする機械装置は医薬・食品業界だけではなく、他の産業分野にも広く展開されています。

 

当連結会計年度における各部門別の研究開発の取り組み状況及び成果は次のとおりであります。なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、748百万円であり、セグメントの内訳は、機械部門に係るものが473百万円、化成品部門に係るものが274百万円であります。

 

(1)機械開発 対象セグメント:機械部門

① 省人化・無人化製造を可能にする製剤装置の開発(連続生産、錠剤自動サンプリング装置、AIの活用など)

② 製薬業界における制御技術の開発および規制対応(リモート監視システム、Data Integrityなど)

③ 新製品のシリーズ設計(錠剤コーティング装置)

④ オープンイノベーションによるソリューション商品開発

 

(2)添加剤開発 対象セグメント:化成品部門

① 新規添加剤の開発(新規核粒子など)

② 海外戦略用の機能性添加剤の開発

③ BCP対応の機能性添加剤の開発

④ 微粒子コーティング、小児用製剤、直打用賦形剤、Mini-tablet製剤、乾式造粒、連続生産への適用などに関するアプリケーションデータの取得

⑤ オープンイノベーションによる新製品・新技術の開発

 

(3)品質保持剤開発 対象セグメント:化成品部門

① 食の安全安心に貢献する品質保持剤・分析装置の開発

② 環境に配慮した品質保持剤の開発

③ オープンイノベーションによる品質保持技術の応用研究

 

また、研究開発の成果としまして当連結会計年度に登録になりました特許は国内4件であります。