当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
『文化の発展に貢献する万年筆をつくる』 創業者・阪田久五郎の経営理念
ものづくり思想(コーポレート・アイデンティティ)
あまたある筆記具の中から、セーラー万年筆を選んでくださるお客さまがいます。
“お客さまに喜んでいただきたい”という私たちの思いは、ときに型破りな発想や、遊び心を引き出し、さらなる機能の追求へと駆り立ててきました。
“手書き文化を支える先駆者であり続けながら、自らも厳しい目を持つ書き手であれ”
創業以来、私たちの中に息づくこだわりは、精緻をきわめた細部の技術にまで至り、本物の美しさを浮かび上がらせます。セーラーの製品を手にしたお客さまは、機能に裏打ちされた美しさを感じ、表現する喜びにあふれることでしょう。
人びとの感性をゆさぶるブランドになること。私たちのものづくりへの思いと挑戦する魂は続きます。果敢に進む力こそ、未来を切りひらくと信じて。
ブランドロゴ(ビジュアル・アイデンティティ)
信頼と希望の象徴である「錨」は「Anchor」の語源となる古代ギリシャ語で「曲がった腕」を意味し、船を力強く繋ぎ止める錨に、古代の人々は目に見えない神秘的なエネルギーや神の加護を感じてきました。これまでも、これからも、セーラー万年筆の象徴として。希望・信頼の象徴である「錨」のモチーフはそのままに、技術力の高さと繊細で日本的な美意識をロゴマークに込めることで創業初期の精神を伴ったまま現代に昇華させ、そして未来へつなげていきます。
ロゴタイプはセーラー万年筆の創業当時の魂が宿る初期の美しいグラフィックを元に、簡素化することで本物を見出す日本の美意識を込めました。
また、コーポレートカラーとして、「SAILOR BLUE - 黎明」を設定しました。
長く大陸文化を受け入れてきた港町・呉において、創業者・阪田久五郎の見たであろう原風景をイメージしています。「黎明」は夜明けの意味と共に、新しいことが始まる時を指します。夜明け前の瀬戸内の海に見た、創業者の希望を我々も見続けることが大切であると、思いを色に表現しました。原点に思いを馳せながら日本の手仕事による確かな技術と美意識を以ってその海の先に広がる世界へ向けて出航します。
(2) 経営戦略
当社は2018年にプラス株式会社グループに加わって以降、同社をはじめとして、グループ内のぺんてる株式会社、日本ノート株式会社などの文具メーカー各社、ならびに同グループの文具販売会社であるコーラス株式会社との、開発・製造・販売の各分野における協業を加速させ、相乗効果や新たな付加価値の創造を追求してまいりました。2022年には、プラス株式会社を引受先として発行済みの転換社債型新株予約権付社債の株式への転換を実行し、プラス株式会社が当社発行株式の58%を保有する支配株主となり、同時に当社は同社の連結子会社となりました。また、一連の財務政策による追加調達資金をもとに、当社文具事業の中核工場である広島工場に新棟を竣工し、従来の課題であった万年筆の供給面で生産能力増強を実現しております。
しかしながら、国内文具事業では、全体的な物価高の広がりを背景とした市場の動きの鈍化、高価格帯製品の売上低迷、海外文具事業では、北米や中国での中価格帯万年筆の売上低迷、更には国内外とも金地金を中心とした原材料価格の高騰などが継続しております。またロボット機器事業においても、物価上昇や設備投資の手控えなどが長引いていることなどにより、当社グループは、2022年12月期より3期連続で営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。
こうした経営環境下で業績回復を図るべく、以下の施策を推し進めていくことで、文具・ロボット機器両事業の独自競争力に磨きをかけると同時に、プラスグループ各社との連携を強化してまいります。
① 収益に関する方針
(文具事業)
▪ 万年筆のリブランディング
Special Nib(オリジナル特殊ペン先)を含めSAILORにしかない21金の技術を世界に発信します。
併せて、ミドルエンド、エントリークラスの製品群も充実させ、万年筆ユーザーの裾野拡大を図ります。そのひとつとして、2024年4月に新型のステンレスペン先万年筆であるTUZUアジャスト万年筆を投入いたしました。書く人それぞれの「書きやすい」に合わせてペン先とグリップの位置を変えられる「ペン先回転機能」を搭載しており、日本文具大賞2024の機能部門優秀賞を受賞いたしました。TUZUボールペンについては、プラスグループのぺんてる株式会社のエナージェルインキを使用しており、グループでのコラボレーションを実現しております。これらはこれまでより幅広い顧客への訴求を行っている途上であり、2025年以降もプラスグループの販路を最大限活用して市場への浸透を図ってまいります。
▪ 新開発インク
プラスグループの未来創造開発センター合同会社において新しく開発した、描いて剥がせるインクについて様々な筆記具への搭載を挑戦してまいります。2024年秋よりクリエイティブマーカーをテスト販売してまいりましたので、この結果を踏まえて2025年以降順次市場へ新商品を投入します。当社の保有する多色の万年筆インクやカラーマーカー、市販のアートツール等と組み合わせることで「書く」領域から「描く」領域へ拡がる多彩な表現の実現を目指します。
▪ マーケティングを強化しブランドシェア拡大
国内は重点得意先店のフォロー強化、海外は欧州でのブランド発信を強化します。
プラスグループ各社との協業もさらに積極的に進めてまいります。当社が国内営業業務を委託しておりますコーラス株式会社が、プラス株式会社に2025年5月1日を効力発生日として吸収合併されることとなり、営業代行機能はプラス株式会社のステーショナリーカンパニー内に設置されるコーラス営業本部に承継されます。この組織再編により、プラスグループとこれまで以上に連携を強化することで、より効果的かつ効率的な営業活動を推進できる体制が構築されます。
▪ 製造の効率化によるコストダウン
引き続き固定費及び変動費率の削減に取り組みます。組織としてはプラスグループとの連携をより密接に深めていき需給調整機能を強化することで、需要即応して柔軟に生産計画を変更できる生産体制を構築し、在庫削減に繋げます。
(ロボット機器事業)
▪ 海外市場の強化
米国市場はトランプ政権の発足による製造業の米国国内回帰で製造ライン自動化需要の高まりが予測され、設備投資意欲の高まりが期待されることから、現地駐在の営業部員の増員、人材育成を強化し、顧客への提案及びフォロー体制を充実させます。
▪ 設計効率化と製造能力強化
新型取出ロボットの開発及び取出ロボット周辺機器の標準化を図り、順次市場に投入していきます。
併せて、製造、業務フローを改善し、リードタイムの短縮を含む製造能力の強化を図ります。
新型取出ロボットの開発については、IT技術を用いたロボット技術に着目しており、特にIoT技術に力を入れております。IPF2023などの展示会において、取出機の状態モニタリング、成形機IoTシステムやその他センサーとのデータ連携デモを行い、お客様より好評を得ました。これらのIoT技術の製品への搭載の提案を進めていくとともに、収集データの分析によるロボットの性能向上や新たなサービスの開発を行ってまいります。今後、機械学習やAIなどを用いて更に発展させ、生産や実勢の管理、ロボットの予知保全など、お客様の生産性・付加価値の向上に努めてまいります。
② 「働きがい」と社内の意識改革に関する方針
▪ 事業計画を全社員で共有し、一度決めた目標を不屈の精神と創意工夫を持って最後まで粘り強くやり遂げる「執着心」を醸成します。
▪ 社員ひとりひとりが自らに枠を設けず、勇気をもって新たなことに挑戦し続けるチャレンジ精神を大切にします。
▪ プラスグループの一員となり、社内に新しい感覚や風土を取り入れ、セーラー万年筆社員の内なる意識変革を促します。
(3) 経営数値目標
2025年度は売上高5,336百万円、営業利益10百万円、親会社株主に帰属する当期純利益0百万円と予想しています。早急に経営計画を見直し、後日、中期経営計画として発表いたします。
(4) 経営環境及び対処すべき課題等
次期におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しや設備投資の増加など、景気は内需を中心に引き続き緩やかな回復が期待される一方で、地域紛争の長期化や米国新政権による経済・外交政策が世界経済に与える影響に加え、国内では今後も原材料価格や電力・エネルギー価格の上昇、物価上昇の継続に対する懸念など、先行き警戒感が拭えない状態で推移するものと思われます。このような景気変動の可能性を認識しつつ、当社では社会状況の変化に適応し、抜本的な経営改革を実行することで、業績の回復に取り組んでまいります。
(文具事業)
文具事業の中核を担う万年筆のリブランディングによるブランド強化とマーケティングの強化によるブランドシェア拡大を図ってまいります。国内においては、SAILOR独自の21金万年筆を中心とした主力ブランドの強化に加え、SNSを活用した積極的な市場調査を行い、顧客ニーズに合った製品開発に努めてまいります。また、グループ連携を生かした幅広い販路を活用し、プラス株式会社のグループ会社(以下「プラスグループ」)である未来創造開発センター合同会社で開発した、描いて剥がせるインクを搭載した筆記具シリーズを展開してまいります。国内販売体制については、プラスグループの文具販売に係る組織再編による販売力強化により、また主要専門店と連携し魅力溢れる製品展開と万年筆ユーザー拡大に繋がる施策を実施し、売上拡大に努めます。海外においては、中国はこれまで以上に厳しい状況になる見込みですが、欧州については引き続き好調を維持する見通しで、強い需要のある伝統工芸品のハイエンド商材の拡販に注力します。さらに、これまで十分な販売活動ができていなかったステンレスペン先万年筆等の低価格帯の商材について、グループ会社の販路を活用して拡販を図り、新規顧客の開拓に努め業績の回復を目指します。
万年筆の製造面では、需要に応じて柔軟に生産計画を変更できる生産体制を構築し、在庫削減に繋げます。また、金地金の急激な値上がりへの対策として、一部部品の仕様変更によるコストダウンを進め利益率向上を図るとともに、現有社内設備を有効活用し、製品ラインアップを拡充することで市場拡大を図ります。
(ロボット機器事業)
引き続き、動作精度や耐久性で高い評価を得てきた取出ロボットの製品競争力強化に努めるとともに、既存取引先へのアプローチ強化、コーポレートサイトの内容拡充や顧客フォロー体制の強化などの顧客サービスの充実に取り組んでまいります。ロボットにIoTセンサーを搭載したスマートファクトリー化の提案等、顧客企業における関連工程の機器ソリューションに包括的に対応する体制の構築や営業ツールの活用により特注自動化装置の販売拡大に注力します。海外販売については、米国における現地駐在の営業部員を増やし、取出ロボットの受注拡大、顧客フォロー体制強化を図ります。製造面においては、製品設計の効率化と業務フローの改善により製造能力の向上に努め、国内外ともに、製品と販売体制の両面で顧客の生産性と品質の安定性向上に尽力してまいります。
また、中長期的には、主力の取出ロボットに関して、より利便性の高い新製品開発を行うとともに、射出成形付帯装置の標準化、独自技術を活かした新分野への製品開発、他社との協業によるOEM製品の開発などに取り組み、売上の拡大と収益性の向上を目指します。
株主の皆様には大変ご心配をおかけしておりますが、当社グループは、更なる業績向上及び企業価値の増大を達成し、早期の復配を目指してまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申しあげます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社のサステナビリティに対する取組については、管理本部長を推進委員長とするサステナビリティ委員会において、各種方針や課題の解決に向けた詳細な目標設定、それらを実践するための体制及び具体的な施策を決定しております。また、サステナビリティ委員会における重要な検討・決定事項は、必要に応じて経営会議で事前に審議した上で、取締役会に付議・報告し、経営における意思決定や取り組み状況に関する監督が適切に行われる体制を整備しております。
2024年の開催回数は1回で、気候変動を踏まえた「プラスグループ『GHG(温室効果ガス)排出量算定・削減に向けた取り組み』」の共有が行われました。委員会後、外部の算定支援業者の選定などを経て、2024年度の算定準備に取り掛かっており、2025年5月には2024年度のGHG排出量算定完了の見込みでございます。
(2) 戦略
① SDGs課題への取組
使い捨て部品が少なく本体にインクのみを補充して使用する万年筆は、適切なお手入れによって長きに渡ってお使いいただけるサステナブルな筆記具です。当社の文具事業においては、この万年筆の更なる普及を目指してまいります。
また、これまでに引き続き、当社の事業活動と社会問題の関連性が高い下記4項目をマテリアリティ(重要課題)として掲げ、課題解決に向けた取り組みを通じてSDGsの達成に貢献してまいります。
・SDGs7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
クリーンエネルギーを積極活用する方策を具体的に検討し、地球環境にやさしい工場を実現します。
・SDGs12:つくる責任 つかう責任
万年筆のサステナブル性を世の中にアピールすると共に修理やメンテナンスを充実させ、長く愛用してもらえる企業活動を推進します。また2024年度よりGHG排出量算定を開始しましたので、事業活動・商品・サービスによる環境影響を把握することで、循環型社会への取り組みを積極的に行ってまいります。
・SDGs14:海の豊かさを守ろう
広島県が進める「瀬戸内海の海洋プラごみをゼロに」の活動に協力し、海と共に生き続けるセーラー万年筆の姿勢を具体的な行動として表します。
・SDGs15:陸の豊かさも守ろう
従来から取り組んできているフォレステーショナリー活動を拡大します。ロボット機器事業においてもGreen Projectを通じて森林保全への協力を行います。
② 人材育成方針
当社は、人材を重要な経営資源と位置付けており、変化を求められる経営環境の中、この変化に柔軟に対応できる多様性のある人材を育成する必要があると考えております。
従業員一人ひとりが勇気をもって新たなことに挑戦し続けるチャレンジ精神を培う一環として、プラスグループの資格取得支援制度に参加し、業務とは直接関係が薄い資格についても会社が支援することで、従業員の意欲向上に努めております。併せて、プラスグループのeラーニングシステムを利用して様々なコンテンツを継続的に受講できる環境を整え、時勢変化に対応できるスキルを身に付けられるよう人材育成に取り組んでおります。
これらの取り組みについて引き続き当社として積極的に推進してまいります。
③ 社内環境整備方針
・職場環境の整備・改善
文具事業の広島工場の工場棟は、竣工から70年以上経過した建物もあり老朽化が進んでおりましたが、2022年10月に新棟を建設することで、製造現場の職場環境改善が実現できました。また2024年度においては、広島工場・青梅工場共に一部を除き照明LED化も実現いたしました。従業員がいつまでも安心・安全に働ける職場を目指し、継続的な整備を実施することで、業務効率化、従業員満足の向上を推進します。
・従業員の定着率向上
従業員一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる仕組みづくりに努めてまいります。
具体的には、健康診断やストレスチェック等の活用で従業員の健康状態を把握し、産業医と連携したフォローを実施することで、休職等のリスクを最小限に抑えます。また、育児休業制度の活用や時短勤務、時差勤務、リモートワーク等、多様な働き方ができる体制づくりに引き続き取り組んでまいります。
(3) リスク管理
当社は、サステナビリティに関するリスク及び機会の管理について、サステナビリティ委員会で状況調査を行い、社内取締役が全員参加するリスクコンプライアンス委員会にて対応策を検討しております。原則として、各部門所管業務に付随するリスク管理は各担当部署が行うこととしておりますが、重要なリスクについては取締役会へ付議・報告をすることで情報を共有、企業リスクの低減に努めております。
(4) 指標及び目標
人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、指標及び目標を下記のとおり設定し、実現に向けて取り組んでまいります。
なお、海外連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
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指標 |
目標 |
2024年12月期実績 |
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① 女性管理職比率の向上
管理職への登用については、性別による制約は一切設けておりませんが、現在正社員の平均勤続年数や平均年齢に男女の差が生じており、管理職比率に影響を及ぼしていると考えられるため、女性の勤続年数が伸ばしやすい環境作りを進めてまいります。
② 男性育児休業取得率の向上
今年度の男性労働者の育児休業取得率は100%となり、目標を達成いたしました。
本制度については、今後も該当者が現れた際には必ず本制度の告知を行い、育児休業取得を推奨することで、引き続き子育て社員の働きやすい職場を整えてまいります。
③ 男女間賃金格差の是正
賃金制度において、性別による制約は一切設けておりませんが、正社員では前述の女性管理職比率の項目と同様に、勤続年数(※)や年齢の差があることや、正規社員の男女の構成差と非正規社員の男女の構成差が、賃金格差に影響を及ぼしていると考えられるため、こちらの件についても、引き続き女性の勤続年数が伸ばしやすい環境作りを進めてまいります。
※(参考)2024年12月期 平均勤続年数 正規 :男性24.92年 女性7.21年
非正規:男性14.24年 女性14.62年
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場環境の変化に関するリスク
当社グループの文具事業では、万年筆及び万年筆インクを中核に据え、選択的な集中を進めていることから、国内・海外各市場における万年筆ユーザーの規模が想定を超えて急速に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して当社では、従来の筆記具としての機能や価値を超えた魅力をもつ製品を提案することに専心しつつ、エントリークラスの製品群の強化と、販促活動を通じて市場のユーザーベースの維持ならびに新たな万年筆ユーザー育成に努めております。
(2) 新製品の開発
文具事業におきましては、少子化が進行しつつある中、筆記具業界は競争が激化しております。このような状況の下、新製品が市場から支持を獲得できるか否かが売上に直結します。市場ニーズは多様化しており、実際に製品のサイクルは年々短くなってきております。また、既存の万年筆及び万年筆インクの機能を代替、あるいは陳腐化する新技術が登場する等、競合品の状況が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社では既に確立された技術の活用のみならず、次世代製品を想定した研究開発に取り組みを進めています。
(3) 受注額の変動
ロボット機器事業におきましては、国内外の設備投資状況に連動して受注額が大きく変動します。当社では安定した需要のある食品容器関連や医療機器関連業界への自動機の受注に注力してまいります。
(4) 原材料等の調達
当社グループは、樹脂材、金属材などを原材料として使用しております。これらの原材料が予期せぬ経済的あるいは政治的事情により、予定していた単価で安定的に調達できなくなった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。現在の原油価格や金地金価格、物流費の高騰が更に長期化する場合は、当社グループの総利益や営業利益に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として、原材料の複数社購買、代替品対応、生産の効率化による原価低減等の施策を実施し、リスク低減に取り組んでおります。
(5) 海外拠点のリスク
当社グループでは、海外市場での事業拡大を重点戦略の1つとしており、海外では為替リスクに加え、不安定な政情、金融不安、文化や商習慣の違い、特有の法制度や予想しがたい投資規制・税制変更、労働力不足や労務費上昇、知的財産権保護制度の未整備等、国際的活動の展開に伴うリスクがあります。
当社グループでは、EU、東南アジアに海外販売拠点を構築し、海外リスクに留意したグローバル事業展開を進めてまいりますが、各国の政治・経済・法制度等の急激な変化は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 海外市場での売掛債権管理
文具事業及びロボット機器事業においては、海外市場へ積極的に販売促進を行いますが、それにより売掛サイトも長期化しやすく、カントリーリスク、為替リスクを含めた総合的な債権管理の強化がより一層必要となります。
(7) 棚卸資産の緩動化
文具事業では製品サイクルの短縮化、ロボット機器事業では技術革新による仕様変更が今後も続くことが想定されることから、製品のみならず原材料についても緩動化の可能性があり、今後一層の在庫管理が必要となります。
(8) 有利子負債と利子負担
運転資金につきましては、銀行及び親会社からの借入れによっております。銀行からの有利子負債は長期的には減少傾向にありますが、2024年12月末の銀行及び親会社からの長短合わせた借入金残高は18億7千4百万円であり、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 情報システム
当社グループは、重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、情報システムに対して適切なセキュリティを実施しておりますが、停電、災害、サイバー攻撃、ソフトウェアや情報機器の欠陥、停止、一時的な混乱、内部情報の紛失、改ざんなどのリスクにより営業活動に支障をきたした場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 人材の確保
当社グループの中長期的な成長は従業員個々人の力量に大きく依存するため、適切な時期に優秀な人材を確保し雇用を維持することが必須であると認識しております。当社グループでは継続的に人材の確保と育成に注力しておりますが、人材の確保が計画通り進まなかった場合や既存の人材が社外に流出した場合には、当社グループの将来の成長、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 自然災害によるリスク
当社グループの生産、販売拠点において地震、台風等の大規模災害が発生した場合には、生産設備の破損、原材料部品の調達停止により、生産拠点の一時的な操業停止や物流網の混乱が生じ、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、2022年12月期より3期連続で営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、営業キャッシュ・フローも3期連続でマイナスなため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しております。
当社グループでは当該事象又は状況を解消すべく、以下の施策を推し進め、業績回復に努めてまいります。
(文具事業)
①万年筆のリブランディング
Special Nib(オリジナル特殊ペン先)を含めSAILORにしかない21金の技術を世界に発信します。
併せて、ミドルエンド、エントリークラスの製品群も充実させ、万年筆ユーザーの裾野拡大を図ります。そのひとつとして、2024年4月に新型のステンレスペン先万年筆であるTUZUアジャスト万年筆を投入いたしました。書く人それぞれの「書きやすい」に合わせてペン先とグリップの位置を変えられる「ペン先回転機能」を搭載しており、日本文具大賞2024の機能部門優秀賞を受賞いたしました。TUZUボールペンについては、プラスグループのぺんてる株式会社のエナージェルインキを使用しており、グループでのコラボレーションを実現しております。これらはこれまでより幅広い顧客への訴求を行っている途上であり、2025年以降もプラスグループの販路を最大限活用して市場への浸透を図ってまいります。
②新開発インク
プラスグループの未来創造開発センター合同会社において新しく開発した、描いて剥がせるインクについて様々な筆記具への搭載を挑戦してまいります。2024年秋よりクリエイティブマーカーをテスト販売してまいりましたので、この結果を踏まえて2025年以降順次市場へ新商品を投入します。当社の保有する多色の万年筆インクやカラーマーカー、市販のアートツール等と組み合わせることで「書く」領域から「描く」領域へ拡がる多彩な表現の実現を目指します。
③マーケティングを強化しブランドシェア拡大
国内は重点得意先店のフォロー強化、海外は欧州でのブランド発信を強化します。
プラスグループ各社との協業もさらに積極的に進めてまいります。当社が国内営業業務を委託しておりますコーラス株式会社が、プラス株式会社に2025年5月1日を効力発生日として吸収合併されることとなり、営業代行機能はプラス株式会社のステーショナリーカンパニー内に設置されるコーラス営業本部に承継されます。この組織再編により、プラスグループとこれまで以上に連携を強化することで、より効果的かつ効率的な営業活動を推進できる体制が構築されます。
④製造の効率化によるコストダウン
引き続き固定費及び変動費率の削減に取り組みます。組織としてはプラスグループとの連携をより密接に深めていき需給調整機能を強化することで、需要即応して柔軟に生産計画を変更できる生産体制を構築し、在庫削減に繋げます。
(ロボット機器事業)
①海外市場の強化
米国市場はトランプ政権の発足による製造業の米国国内回帰で製造ライン自動化需要の高まりが予測され、設備投資意欲の高まりが期待されることから、現地駐在の営業部員の増員、人材育成を強化し、顧客への提案及びフォロー体制を充実させます。
②設計効率化と製造能力強化
新型取出ロボットの開発及び取出ロボット周辺機器の標準化を図り、順次市場に投入していきます。
併せて、製造、業務フローを改善し、リードタイムの短縮を含む製造能力の強化を図ります。
新型取出ロボットの開発については、IT技術を用いたロボット技術に着目しており、特にIoT技術に力を入れております。IPF2023などの展示会において、取出機の状態モニタリング、成形機IoTシステムやその他センサーとのデータ連携デモを行い、お客様より好評を得ました。これらのIoT技術の製品への搭載の提案を進めていくとともに、収集データの分析によるロボットの性能向上や新たなサービスの開発を行ってまいります。今後、機械学習やAIなどを用いて更に発展させ、生産や実勢の管理、ロボットの予知保全など、お客様の生産性・付加価値の向上に努めてまいります。
また、当社は親会社プラス株式会社からの資金調達も含め、当連結会計年度末現在、現金及び預金5億7千9百万円を保有しており、財務面における安定性については確保されていると考えております。さらに同社とは、人事面及び営業面を通じてより強固な関係を維持できていると考えており、各改善施策の効果も徐々に表れてきております。
以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
株主の皆様には大変ご心配をおかけしておりますが、当社グループは、更なる業績向上及び企業価値の増大を達成し、早期の復配を目指してまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申しあげます。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次の通りであります。
① 財政状態及び経営成績
当連結会計年度(2024年1月1日~2024年12月31日)におけるわが国経済は、円安を背景としたインバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善などにより景気は緩やかな回復の動きがみられました。一方、原材料・エネルギー価格の高騰や、物価上昇に伴う節約志向、消費マインドの冷え込みの懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社グループは前期に引き続き文具・ロボット機器両事業で抜本的な経営改革を目指しつつ、国内物流の見直しや積極的な販売活動に取り組んでまいりましたが、当連結会計年度は、売上高46億7千7百万円(前期比2.6%増)、営業損失2億7千万円(前期営業損失3億4千1百万円)、経常損失2億1千6百万円(前期経常損失3億2千9百万円)という結果になりました。また、固定資産除却損1千7百万円及び減損損失8億9千4百万円の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失は11億4千5百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失15億9百万円)となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。
(文具事業)
国内においては、上半期には機能面に特長のある万年筆の大型新製品(TUZU)を上市し、拡販に努めてまいりましたが、店頭への配荷について一定の成果が見られましたが、広く市場に浸透するまでには至らず、当初予算には届かない結果となりました。また、全体的な物価高の広がりを背景として、市場の動きの鈍化も長期化しており、高価格帯製品の売上も低迷しました。一方で、インバウンドの高い購買意欲にマッチした商材及びインターネット通販の売上は好調に推移し、前期を大きく上回る実績となりました。海外においては、引き続き欧州を中心に高価格帯万年筆の売上が堅調に推移しましたが、インフレの影響が大きい北米と景気低迷が長期化している中国の市場においては、中間所得層の購買力の低下から、中価格帯の万年筆売上が低迷しました。この結果、売上高33億8千8百万円(前期比0.9%減)、利益面では国内外とも金地金を中心とした原材料価格の高騰、労務費・製造経費の高騰による売上原価の上昇が影響し、セグメント損失9千万円(前期セグメント損失1億6千2百万円)となりました。
(ロボット機器事業)
国内射出成形市場につきましては、物価上昇やサステナビリティ対策などにより食品容器の需要が減少するなど、全般に盛り上がりに欠ける状況で推移しました。海外におきましても、景気減退の影響による設備投資の手控えが長引いており、中国や東南アジアを中心に大変厳しい状況が続いております。そのような状況下、国内では、取出ロボットの更新需要の掘り起こしや当社の強みである特注自動化装置の積極的な提案に取り組み、国内ロボット装置の売上は前年を上回る実績となりました。この結果、売上高12億8千9百万円(前期比13.3%増)、利益面では各種コスト削減施策を推し進めたことによりセグメント損失1億7千9百万円(前期セグメント損失1億7千9百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べて7千6百万円減少し、5億7千9百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、4億5百万円の減少(前期は4億3千5百万円の減少)となりました。
主な増加要因としては、減損損失8億9千4百万円、減価償却費1億5千9百万円などで、主な減少要因としては、税金等調整前当期純損失11億2千8百万円、売上債権の増加額1億9千5百万円、棚卸資産の増加額1億3千2百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出7千4百万円などにより、6千8百万円の減少(前期は3億8千5百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、短期借入金の純増加額5億円、長期借入金の返済による支出1億円などにより、3億8千7百万円の増加(前期は2億9千1百万円の増加)となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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文具事業(千円) |
3,265,391 |
104.6 |
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ロボット機器事業(千円) |
1,201,298 |
105.1 |
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合計(千円) |
4,466,689 |
104.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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文具事業(千円) |
186,937 |
97.6 |
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ロボット機器事業(千円) |
7,389 |
167.3 |
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合計(千円) |
194,326 |
99.1 |
③ 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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ロボット機器事業 |
1,019,263 |
93.5% |
274,967 |
50.5 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.文具事業においては、見込生産を行っております。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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文具事業(千円) |
3,388,503 |
99.1 |
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ロボット機器事業(千円) |
1,289,307 |
113.3 |
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合計(千円) |
4,677,810 |
102.6 |
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産・負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。
見積りについては過去の実績及び現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
(資産)
資産合計は、前連結会計年度末に比べて7億9千万円減少し、47億6千3百万円となりました。このうち、流動資産は、現金及び預金の減少7千6百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加1億9千5百万円、商品及び製品の増加8千6百万円、原材料及び貯蔵品の増加1億1千1百万円等により、前連結会計年度末から2億1千3百万円増加して38億8千6百万円となりました。固定資産につきましては、減損損失計上などによる建物及び構築物の減少7億3千万円、機械装置及び運搬具の減少1億2千2百万円等で、前連結会計年度末から10億4百万円減少して8億7千6百万円となりました。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末に比べて3億4千1百万円増加し、34億9千8百万円となりました。このうち、流動負債は、支払手形及び買掛金の減少6千4百万円、関係会社短期借入金の増加5億円などにより、前連結会計年度末より4億4千3百万円増加し、24億4千6百万円となりました。固定負債は、長期借入金の減少1億円などにより、前連結会計年度末より1億2百万円減少し、10億5千2百万円となりました。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末から11億3千1百万円減少して、12億6千4百万円となりました。
③ 当連結会計年度の経営成績の分析
(グループの経営成績に重要な影響を与える要因)
当社グループの経営に影響を与える要因としては、文具業界の市場動向及び万年筆を始めとする主力製品の原材料価格と供給体制、ロボット機器事業に影響を及ぼす国内外の設備投資動向、半導体や電気部品等原材料の価格動向、海外市場における為替動向等が挙げられます。
これらの要因を踏まえ当連結会計年度における経営成績の分析は以下の通りであります。
a.売上高
当社グループの売上高は46億7千7百万円(前期比2.6%増)となりました。このうち、文具事業の売上高は33億8千8百万円(前期比0.9%減)、ロボット機器事業の売上高は12億8千9百万円(前期比13.3%増)となりました。
文具事業につきましては、国内においては、上半期には機能面に特長のある万年筆の大型新製品(TUZU)を上市し、拡販に努めてまいりましたが、店頭への配荷については一定の成果があったものの、広く市場に浸透するまでには至らず、当初予算には届かない結果となりました。また、全体的な物価高の広がりを背景として、市場の動きの鈍化も長期化しており、高価格帯製品の売上も低迷しました。一方で、インバウンドの高い購買意欲にマッチした商材及びインターネット通販の売上は好調に推移し、前期を大きく上回る実績となりました。海外においては、引き続き欧州を中心に高価格帯万年筆の売上が堅調に推移しましたが、インフレの影響が大きい北米と景気低迷が長期化している中国の市場においては、中間所得層の購買力の低下から、中価格帯の万年筆売上が低迷しました。その結果、売上高は微減の結果となりました。ロボット機器事業につきましては、国内射出成形市場においては、物価上昇やサステナビリティ対策などにより食品容器の需要が減少するなど、全般に盛り上がりに欠ける状況で推移しました。海外におきましても、景気減退の影響による設備投資の手控えが長引いており、中国や東南アジアを中心に大変厳しい状況が続いております。そのような状況下、国内では、取出ロボットの更新需要の掘り起こしや当社の強みである特注自動化装置の積極的な提案に取り組み、売上高は前年を上回る実績となりました。
b.営業損益
当社グループの営業損益は、2億7千万円の営業損失(前期営業損失3億4千1百万円)となりました。そのうち、文具事業におきましては、セグメント損失9千万円(前期セグメント損失1億6千2百万円)となりました。ロボット機器事業におきましては、セグメント損失1億7千9百万円(前期セグメント損失1億7千9百万円)となりました。
文具事業におきましては、国内外とも金地金を中心とした原材料価格の高騰、労務費・製造経費の高騰による売上原価の上昇が影響し、国内の販売不振で工場稼働率が低下したことにより、製造原価率が上昇し収益性が低下し、営業損失を計上しました。ロボット機器事業につきましても各種コスト削減施策を推し進めたものの、営業損失を計上する結果となりました。
c.経常損益
支払利息の計上などにより、経常損失2億1千6百万円(前期経常損失3億2千9百万円)となりました。
d.親会社株主に帰属する当期純損益
減損損失の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純損失11億4千5百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失15億9百万円)となりました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、運転資金としては原材料及び商品仕入、製造費及び販売費・一般管理費等の営業費用、設備投資資金としては中長期的な成長に必要な設備投資であります。
運転資金及び設備投資資金については、内部資金、銀行等金融機関及び親会社からの借入によっております。
なお、当連結会計年度末における借入金残高は18億7千4百万円であり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5億7千9百万円となっております。
⑥ 経営上の達成状況について
当社グループは、2024年実績と最近の経済状況を踏まえ、よりリスク耐性が高く、収益性を高める経営が求められているとして、2024年3月5日に発表した中期経営計画(2024年から2026年まで)を見直す必要があると判断し、新たな中期経営計画(2025年から2027年まで)を策定することといたしております。内容につきましては現在精査中であり、後日発表させていただきます。
(1) 経営管理契約
① 契約の相手
プラス株式会社(当社の親会社)
② 契約の目的
当社の上場会社としての独立した意思決定を確保すること、並びにプラスグループ全体の内部統制システムの実効性確保・向上のため。
③ 契約の内容
当社の重要な経営事項であります株主総会決議事項、長短期の事業計画、重要な使用人(執行役員)の選解任、増減資、重要な財産の取得及び処分、銀行借入・社債発行などの事前協議事項や報告事項等を取り決めております。
(2) 業務委託契約
① 契約の相手
コーラス株式会社(当社の兄弟会社)
② 契約の目的
プラスグループの国内文具マーケティング・営業・販売機能を統合したプラットフォームカンパニーであるコーラス株式会社に国内文具営業の業務を委託することで、販売力の強化と物流機能の効率化によるコストダウン等を実現し、収益を安定的に確保するため。
③ 契約の内容
当社はコーラス株式会社に文具事業の国内営業業務を委託しており、限界利益に応じて一定率を営業業務委託手数料として支払っております。
④ 契約期間
2020年8月1日から2020年12月31日まで。以後、1年毎に料率等を協議の上、更新しております。
(3) 資金調達契約
① 契約の相手
プラス株式会社(当社の親会社)
② 契約の目的
当社の運転資金調達のため。
③ 契約の内容
運転資金として5億円を借入れ、期日一括返済。
利率はプラスグループ基準金利(市場金利の動向により毎年1月1日に見直し)。
④ 契約期間
借入日2024年8月30日。契約期間は契約締結日より1年間、ただし双方からの申し出が無い限り1年毎に自動延長となっております。
当社は「コーポレートアイデンティティ」をもとにした企業ビジョンの実現を図るため、積極的な研究開発活動に取り組んでいます。
当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動は以下の通りであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
(文具事業)
文具事業につきましては、新規性のある素材や加工技術を積極的に取り入れ、顧客の多様な要求にこたえる製品開発を目指してまいります。また、日本の伝統的な技術を生かした高級筆記具のラインアップをさらに充実させ、世界市場に向けた日本文化の発信の強化とともに、自社のブランド力の向上と認知拡大を図ってまいります。
次世代を見据えた新機構の筆記具と、依然として市場の拡大が続くインキの並行した開発に一層注力し、多彩なカラーを生かした「書く」から「描く」の領域に至る新たな手書き文化の創造と、それを楽しむコミュニティの場を提供すべく、グループ各社との協業を含めた研究開発活動に取り組んでまいります。
文具事業に係る研究開発費は
(ロボット機器事業)
ロボット機器事業につきましては、主力の射出成形用取出ロボットの新製品開発を最優先で進めてまいります。構造を見直して軽量化を実現するとともに負荷を軽減して耐久性と省エネ性能を向上させます。さらに、制御系を見直して操作性・拡張性を向上させ、また、IoTの活用により、生産のモニタリングやメンテナンス性能の向上に役立てます。一方、特注自動化装置の標準化、他社技術の活用やOEM製品の開発などに取り組み、ユーザーの幅広い需要に迅速に応えられる製品群・生産体制を整えてまいります。
ロボット機器事業に係る研究開発費は