第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、「まるくて大きな時代をつくろう」という企業理念のもと、クリエイターエンパワーメント事業を推進しています。日本及び中国語圏に展開するグローバルハンドメイドマーケットプレイス「Creema(クリーマ)」に加え、同サービスと連携可能な唯一のネットショップ開設サービス「InFRAME」の運営、クリエイター・企業・地方公共団体のマーケティング支援を行うプラットフォームサービス、日本最大級のクリエイターの祭典「HandMade In Japan Fes’(東京ビッグサイト)」の開催、さらに、クリエイター支援に特化したクラウドファンディング「Creema SPRINGS」、レッスン動画プラットフォーム「FANTIST」など、多角的にクリエイターの活動を支援するサービスを展開しています。

 これらの取り組みを通じ、クリーマ経済圏の確立とクラフトカルチャーの発展に注力しています。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、マーケットプレイスサービスを基盤とし、クリエイター数やユーザー数(アプリDL数・訪問数など)を安定的に拡大しながら、広告サービスやイベントサービス、クラウドファンディングサービスなどの周辺領域でも収益を拡大するモデルを構築しています。今後も、事業の基盤であるマーケットプレイスサービスの品質向上を最優先とし、ストック収益とプラットフォーム基盤の強化に注力します。さらに、そこで蓄積した有形・無形の資産を活用し、新サービス群にもリソースを投下することで、シナジーを生かした事業の多角化を推進していきます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの事業においては、中心的なサービスである「Creema」のプラットフォーム価値を高めることが重要です。そのため、経営目標の達成状況を判断する客観的な指標として、登録作品数、アプリダウンロード数、流通総額を重視しています。

 

(4)当社グループの経営成績に影響を与える経営環境

日本のハンドメイドマーケット市場は、2010年に当社が日本初のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」をリリースしたことを契機に誕生した比較的新しい市場です。現在の国内市場では、当社グループが運営する「Creema」と、GMOペパボ株式会社が運営する「minne」の二大サービスが市場を牽引しています。

近年では、スマートフォンの普及に伴い、個人間の電子商取引(CtoC)市場が拡大し、個人のECサイト開設や企業のECサイト提供が増加する傾向にあります。この流れと相まって、オンラインでのハンドメイド製品の流通も一般化し、市場は今後も一定の高成長率で拡大すると見込まれます。

また、当社グループのマーケットプレイスはプラットフォームとしての特性を持ち、流通規模が拡大するにつれ、クリエイター数、会員数、登録作品数などが増加し、それに伴いプラットフォームの価値も向上する構造となっています。このプラットフォーム価値の向上が、広告サービスやクリエイター・会員向け支援サービスの収益を押し上げ、当社グループが関わる市場規模をさらに拡大させます。そのため、当社グループが提供するサービスの潜在市場規模は、単なるハンドメイドマーケット市場の枠を超え、大きな成長ポテンシャルを有しています。

当社は「Creema」の立ち上げ以来、業界の先駆者として市場の成長を牽引してきました。2025年2月期には「Creema」の流通総額が154億円を突破し、日本最大のハンドメイドマーケットプレイスとしての地位をさらに強固なものとしています。加えて、クリエイター支援の多様なサービスも順調に成長しています。

今後も市場の動向やトレンド、ニーズを的確に捉えながら、「クリーマ経済圏」のさらなる拡大に取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2025年2月期において、当社の主力事業であるマーケットプレイスサービスは、2024年2月期に実施したTVCM効果の反動、世界的なWeb広告単価の高騰による広告効率の悪化、さらには当社ドメイン名を悪用したフィッシング詐欺目的の「なりすましメール」の横行といった外部環境の影響を受け、かつてない規模で成長上の下方圧力に直面し、当該サービスの流通総額は前期比93%の154.5億円へと減少いたしました。しかしながら、競合サービスとの流通総額の差は拡大を続けており、当社の国内ハンドメイドマーケットプレイス市場におけるNo.1のポジションがより一層強固なものとなる結果となりました。

一方で、マーケットプレイスサービス以外の事業は順調に成長いたしました。プラットフォームサービスは、マーケットプレイスサービスの増減と連動するサービス構造でありながら、外部広告及び内部広告サービスの地力が向上し、前期比101%で着地いたしました。また、イベントサービスは、「Creema YAMABIKO FES」の開催に加え、「HandMade In Japan Fes’」が計画を上回る成長を遂げるなどした結果、売上高は前期比128%と大幅な成長を記録しました。さらに、新サービス群においては、「FANTIST」及び「Creema SPRINGS」が力強い成長を遂げ、前期比177%を達成。今後さらなる拡大が期待される分野となっております。

その結果、全社売上高は前期比100%の2,507,008千円で着地し、厳しい市場環境の中でも堅調な推移を維持いたしました。また、費用適正化や生産性向上に向けた各種施策も奏功し、「Creema YAMABIKO FES」の追加開催があったにもかかわらず、原価・販管費の合計は前期比97%に抑制されました。その結果、営業利益は前期比249%となる103,126千円を確保し、事業の効率化と利益率の改善を達成しました。加えて、経常利益は104,701千円(前期比152%)、繰延税金資産の計上を踏まえた親会社株主に帰属する当期純利益は103,017千円(前期比130%)となり、前年同期と比較して大幅な増益を実現いたしました。

2026年2月期に向けては、前期に発生した外部環境の影響を踏まえ、マーケットプレイスサービスの再成長を最優先課題として取り組んでまいります。その一環で、「オーダーメイド」や「希少性」といったクリエイター作品の特性と親和性が高く、市場規模も拡大傾向にある「ギフト市場」への参入を推進いたします。加えて、「Creema」の取扱カテゴリーの拡張や、ユーザービリティを高める大型機能の開発等、新たな顧客層の獲得を推進します。また、Web広告の急激な単価高騰への課題解決を最優先施策の一つとして位置づけ、一時的に広告投資額を増額し、新しい最適なマーケティング手法の確立を目指します。これらの取り組みにより、流通総額の拡大を推進してまいります。

加えて、成長が著しい新興サービスである「Creema SPRINGS」、「FANTIST」、「InFRAME」については、引き続き積極的な投資を継続してまいります。「Creema SPRINGS」については、組織拡大を行い提案力・編集力を強化し、起案プロジェクトの質・量を拡大することで購入者の方々により魅力的な選択肢を提供すると同時に、「Creema」との連携施策を強化することでさらなる成長を目指します。「FANTIST」についても組織の拡大を行い、学習者からの反響が大きい公式コースレッスンをはじめ、受講可能なレッスン動画の質・量を最大化することで、日本最大級のレッスン動画プラットフォームとしての地位をさらに強固なものとしてまいります。「InFRAME」については、重要機能の開発と営業強化を推進し、「Creema」との連携を深めながら、より競争力のあるサービスへと進化させてまいります。

また、日本最大のハンドメイドマーケットプレイスである「Creema」が蓄積・保有する有形・無形の戦略資産を活用し、シナジーのある新サービスをリリースすることで、サービスの複層化による収益力の向上を一層進めてまいります。その一環で、ギフト関連サービスのリリース、プラットフォームサービスの拡充、配送サービスの拡充など、流通総額の拡大と収益基盤の強化を並行的に進める施策を中心に積極展開してまいります。

さらに、中長期的な非連続的成長の実現に向け、既存の経営資源を活用した新たな収益基盤の確立を推進するとともに、その手段の一つとしてM&Aの有効活用を進めてまいります。今後2年以内に総額7〜8億円規模のM&Aを実行する計画であり、クリエイターエンパワーメント事業のさらなる拡張、「Creema」とのシナジーが見込める新領域への進出を視野に入れながら、新たな成長機会を創出してまいります。

当社は、これらの成長戦略を通じて、「Creema」の再成長を確実なものとし、新規サービスの拡大とM&Aによる事業ポートフォリオの強化を図ることで、持続可能かつ非連続的な成長基盤の構築を目指してまいります。2026年2月期においても、経営資源の最適配分と市場環境の変化に柔軟に対応しながら、さらなる事業成長に向けた施策を推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに対する考え方と具体的な取り組みは、以下のとおりです。なお、本書に記載する将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断した内容となります。

 

当社は、「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアな世界をつくろう」というコンセプトのもと、ハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を中心に、クリエイターエンパワーメント事業を展開しています。クリエイティブの世界では、才能があり努力を重ねても、それが必ずしも公正に評価されるとは限りません。そうした社会構造を、事業を通じて是正し、才能や努力が正当に機会や評価につながるフェアな世界を構築することを目指し、日々邁進しています。

また、フェアな世界の実現に向けた社会的責任を果たすため、私たち自身が多様な人材を受け入れ、従業員一人ひとりがその才能を最大限に発揮できる環境を整えています。努力や成果が適切に評価される組織づくりを推進し、すべての従業員に公平な機会と成長の場を提供することで、高いモチベーションと創造力が当社の組織全体に浸透しています。

今後も当社は、社会的責任を重視し、透明性の高い経営を徹底するとともに、すべてのステークホルダーとの建設的な関係を維持しながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

(1)ガバナンス

当社では、サステナビリティを含むすべての企業活動において、透明性と責任を確保するため、強固なガバナンス体制を整備しています。具体的には、取締役会を月1回以上定期的に開催し、経営全体を把握しながら戦略的な意思決定を行っています。また、経営会議も月1回以上開催し、日々の業務運営における具体的な課題を議論し、迅速な対応策を検討しています。さらに、リスク管理とコンプライアンスの強化を目的としたリスクコンプライアンス委員会を四半期ごとに開催し、経営リスクの評価や対策の実施状況を確認しています。この委員会では、サステナビリティに関連するリスクも重点的に監視し、必要に応じて戦略的な調整を行っています。加えて、内部監査体制を整え、企業活動が法令を遵守しつつ、効果的かつ効率的に運営されているかを継続的に評価しています。これにより、ガバナンス上の課題を早期に発見し、迅速な改善を図ることが可能です。

これらの取り組みにより、当社はサステナビリティの実現に向けた強固な基盤を築き、ステークホルダーの信頼を獲得しながら持続可能な成長を支えています。

 

(2)戦略

当社の持続可能性戦略の核となるのは、人的資本の管理です。社内コミュニケーションを活性化し、組織の結束を強化するため、年1回の戦略発表会と毎月の社員総会を定期的に開催しています。これらの場では、経営層が最新の戦略的方向性を共有し、社員全員が会社の目指す未来像とその実現に向けた具体的なステップを理解する機会を提供しています。また、クリエイティブな刺激と社員間の交流を促進するため、外部クリエイターを招いたワークショップを定期的に開催する「一丸プロジェクト」を実施し、新たなアイデアの創出やチームワークの向上を図っています。

勤務体系においては柔軟性を重視し、出社とオンラインを組み合わせたハイブリッドワークモデルを採用しています。対面でのコミュニケーションを大切にしながら、リモートワークでも効率的に業務を遂行できる環境を整えています。そのために業務のデジタル化を推進し、書類の電子化を含む業務プロセスの最適化を進めることで、より柔軟な働き方を支える基盤を構築しています。

従業員の成長支援にも力を入れており、社員が自身のキャリアを主体的に設計できる「Creema Career(ジョブチェンジ制度)」や、資格取得や専門講座への参加を促し、資金補助制度を提供する「クリーマレベルアップサポート(能力開発補助制度)」等をはじめとする各種制度を用意し、自己実現とプロフェッショナルスキルの向上を支援しています。これらの取り組みを通じ、すべての社員が才能を最大限に発揮し、ともに成長できる職場環境を目指しています。

加えて、事業活動を通じてクリエイターの活躍を支援し、個々が自分らしく輝ける社会の実現を推進しています。また、伝統工芸を含むクラフト文化の保全にも努め、クラフト・ハンドメイドを軸とした地方創生にも貢献しています。これらの活動は、持続可能で多様性に富んだ社会の実現に寄与するだけでなく、新たな価値創造の機会を提供するものです。当社はこれらの基盤の上にさらなる革新を重ね、未来に向けて持続可能で包摂的な社会の実現を目指してまいります。

 

(3)リスク管理

当社では、サステナビリティの推進と持続可能な成長の確保に向け、包括的なリスク管理体制を整備しています。その中核となるのが、四半期ごとに開催されるリスクコンプライアンス委員会です。当委員会では、企業活動を取り巻く重要リスクの特定、発生状況のモニタリング、問題発生時の迅速な報告と対応策の検討を行い、リスクに対するプロアクティブなアプローチを確立することで、事業の持続可能性を高めています。

また、内部監査チームを設置し、組織全体のガバナンス、リスク管理、コントロールプロセスの有効性を継続的に評価しています。内部監査は年間を通じて実施され、選定された監査項目について詳細な検証を行い、その結果や改善措置の実施状況を適宜、リスクコンプライアンス委員会、取締役会、経営会議に報告しています。これにより、組織全体のリスク対応能力を強化し、経営の透明性向上を図っています。

特に重要度の高いリスクや問題については、取締役会や経営会議で速やかに議論を行い、全社的な迅速な意思決定と対応を可能にしています。このプロセスを通じて、当社は不確実性の高いビジネス環境においても柔軟に対応し、サステナビリティの目標達成に向けた企業基盤を強化しています。さらに、リスク管理体制の継続的な改善を図り、全社員が一丸となってリスクに対応する企業文化の醸成を目指しています。

 

(4)指標及び目標

当社は、サステナビリティへのコミットメントを具体的な行動に反映し、持続可能な成長に貢献するさまざまな取り組みを推進しています。リスクコンプライアンス委員会では、企業活動を取り巻く重要なリスクを継続的に監視し、それらが当社に与える影響を評価しながら、定期的に戦略を見直しています。

また、組織の生産性向上を目的に、業務効率の改善と社員のパフォーマンス向上にも取り組んでいます。定期的な研修の実施、業務プロセスの最適化、先進的なテクノロジーの導入による作業環境の改善を通じて、これらの目標の達成を図っています。

当社の女性管理職比率は現在35.7%に達しており、これは多様な人材が公平に評価される環境を提供している証しです。なお、性別に基づく数値目標は特に設定せず、個々の能力と貢献に基づいて公平なキャリア機会を提供することで、結果として多様性と包摂を実現しています。

 今後も人的資本経営のさらなる強化を目指し、重要なテーマや指標の検討・策定を継続してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)インターネット関連市場について

 当社グループはオンラインマーケットプレイス「Creema」の運営を主力サービスとし、同サイト上からの販売手数料収入と広告収入を主な収益源としています。同サービスの持続的な成長のためには、インターネットにおける技術の改善、環境の整備、そして利用の拡充が今後とも継続することが重要な要因と考えております。しかしながら、革新的な新技術や大幅な規制変更により、インターネット関連市場の利便性が損なわれ、今後のインターネットショッピングサイトの運営の遂行が困難になった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)ビジネスモデルや消費者の嗜好の変化について

 当社グループが主力サービスを運営するインターネット業界は、技術革新のスピードが速く、新技術の開発、新しいビジネスモデルによる新規参入者、顧客のニーズの変化等のリスクが存在します。そのため当社グループの事業の成長及び成功は、このような経営環境の変化に対して、迅速かつ柔軟に対応する経営執行能力及び技術開発力に依存しています。しかしながら、当社グループが、このような事業環境の変化に機敏に対応できず、消費者のニーズを取り込むことができない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)システムトラブルについて

 当社グループはオンラインマーケットプレイスの運営が主力サービスであり、その安定的な運用のためのシステム強化及びセキュリティ対策に注力しています。しかしながら、システムへの一時的な過負荷、ソフトウエアの不具合、外部からの不正なアクセスによるシステムへの侵入、地震や火事等の災害、予期せぬ電力供給の停止、事故等によって、当社グループのシステムがダウンした場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)情報セキュリティについて

 当社グループは、第三者からのサーバー等への侵入に対して、ネットワーク監視システム等で常時モニタリングを行い、データの送受信にあたっては暗号化を行う等のセキュリティ対策を講じております。

 しかしながら、ハッカー等の悪意をもった第三者の攻撃等により、顧客情報及び顧客の有する重要な情報を不正に入手される可能性や、顧客が利用するデータが改竄される可能性、又は各サービスへの急激なアクセス増加に伴う負荷や自然災害等に起因するデータセンターへの電力供給の停止等、予測不可能な要因によってシステムが停止する可能性は否定できません。

 このような事態が生じた場合には、当社グループに対する法的責任の追及、企業イメージの悪化等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)個人情報の管理について

 当社グループは、オンラインマーケットプレイスの運営が主力サービスであり、そこで扱っている会員等の個人情報につきまして、システムを設計するうえでの配慮は当然ながら、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定や外部のデータセンターでの厳重な情報管理等、サーバー、管理画面及び物理的な側面からもその取り扱いに注意を払っております。

 また、社内での個人情報保護に関する研修を行なっており、個人情報を漏洩した際のリスクを含め個人情報保護の重要性の認識の周知徹底を行なっております。

 しかしながら、外部からの不正アクセスや、故意又は過失による情報漏洩、またそれら以外の想定していない事態は完全には排除できないことから、個人情報の外部流出等が発生する可能性があります。

 このような事態が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)知的財産権について

 当社グループは、運営するサイト及びイベントの名称について商標登録を行っており、当社グループが使用する知的財産権の保護を図っています。しかしながら、当社グループの知的財産権が第三者に侵害された場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、第三者の知的財産権の侵害を行わないよう監視を行っていますが、知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起された場合、またその紛争解決のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)第三者への依存について

 当社グループは、ユーザーにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle LLCが運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが現段階の当社グループの事業にとって重要な前提条件となっております。また、当社グループは、ユーザーの決済手段として、クレジットカード決済、コンビニ決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しています。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及び当社グループとの関係等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは商品の配送についてヤマト運輸株式会社や日本郵便株式会社等の配送業者に依存していることから、今後これらの配送業者について取引条件の変更、事業方針等の見直し及び配送状況の変化等があった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人材の確保と育成について

 当社グループは、継続的な成長を達成するためには、優秀で熱意のある人材を確保し育成することが重要な課題の一つであると認識しており、優秀な人材の確保、育成及び活用に努めております。しかしながら、当社グループが求める優秀な人材を計画どおりに確保できなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)組織体制と内部管理体制について

 当社グループの組織体制は小規模であり、内部管理体制もそれに準じたものとなっていますが、今後の事業の成長とともに人員増強及び人材育成を図り、内部管理体制の一層の強化に努める方針であります。しかしながら、内部管理体制強化のための施策が十分に執行できず、内部統制管理に重大な不備が発生した場合や財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)新規事業について

 当社グループは、今後のさらなる事業拡大及び非連続的な成長を目指し、新サービスや新規事業に取り組んでいく方針であります。新規投資においては、将来性を考慮し慎重な判断を行う考えではありますが、人材、システム開発、固定資産や広告宣伝費等の追加投資が発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、新サービスや新規事業の属する市場の拡大スピードや成長規模によっては、当初想定していた成果を挙げることができない可能性があり、事業の停止、撤退等を余儀なくされ、当該事業用資産の処分や減損により損失が生じる可能性があり、そのような場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)自然災害等について

 大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、システム開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、配送網の分断、混乱等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)新型コロナウイルス等の感染症の影響について

 新型コロナウイルスに代表される感染症・伝染病の流行等によって、拡散脅威や外出禁止令による経済活動の停滞や、国内消費量が減退する可能性があります。感染症の再流行・長期化が起きることで、イベントの開催自粛の継続や、直接顧客訪問ができないことで新規営業活動が想定通りに進まなくなる等のリスクがあると考えております。これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)関連法規制について

 当社では、「Creema」上で発生した取引の代金を当社にて一時的にお預かりし、作品到着後にクリエイターに代金をお支払いする「あんしん決済システム」や、作品プロモーションサービスにおいて、クリエイターから広告費用としてデポジット金額を受領の上、作品プロモーションの利用料金をそのデポジット金額から充当する等、決済領域での会員への価値も提供しておりますが、いずれも資金決済に関する法律に定める資金移動業や前払い式支払い手段の発行には該当せず、資金決済に関する法律の適用を受けておりません。当社グループでは事業運営にあたり、上記の資金決済に関する法律のほか、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法、特定商取引に関する法律、著作権法、意匠法、商標法、個人情報の保護に関する法律、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、電気通信事業法といった法令に抵触することが無いよう、顧問弁護士等の外部専門家と協議し、法改正等の情報収集を行い、従業員教育等を徹底するとともに、法令遵守体制の構築と強化を図っております。

 しかしながら、これらの法令の改正や新たな法令の制定、監督官庁の見解の変更、社会構造の変化等想定外の事態の発生等により当社グループの展開する事業が法令に抵触した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)新株予約権について

 当連結会計年度末における新株予約権による潜在株式は、304,000株であり、発行済株式総数6,740,100株の4.5%に相当します。当社の株価が行使価格を上回り、かつ権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(15)ベンチャーキャピタル等の株式保有割合について

 当連結会計年度末におけるベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下、「ベンチャーキャピタル等」という。)が所有している株式数は599,200株であり、発行済株式総数6,740,100株に占める割合は8.9%となっております。

 一般的にベンチャーキャピタル等が未上場会社の株式を取得する場合、株式公開後には保有する株式を売却し、キャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであります。当社におきましても、当社の株式公開後、既にベンチャーキャピタル等が保有する当社株式の一部が売却されていますが、今後もベンチャーキャピタル等の保有株式の売却によって当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価の形成に影響を及ぼす可能性があります。なお、上記ベンチャーキャピタル等が所有している株式数には、株式公開後に取得された株式数を含めておりません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は、3,366,740千円となり、前連結会計年度末に比べ221,386千円減少いたしました。主な増減要因は、繰延税金資産が15,308千円増加した一方で、現金及び預金が191,637千円、売掛金が37,688千円減少したことによるものであります。


(負債)
 当連結会計年度末における負債合計は、2,261,304千円となり、前連結会計年度末に比べ326,495千円減少いたしました。主な増減要因は、預り金が62,492千円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が192,276千円減少したことによるものであります。


(純資産)
 当連結会計年度末における純資産合計は、1,105,436千円となり、前連結会計年度末に比べ105,109千円増加いたしました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する当期純利益103,017千円の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当社グループは、「まるくて大きな時代をつくろう」という企業理念のもと、クリエイターエンパワーメント事業を展開しています。日本及び中国語圏で展開するグローバルハンドメイドマーケットプレイス「Creema」に加え、同サービスと連携可能な唯一のネットショップ開設サービス「InFRAME」の運営、「Creema」を活用した企業・地方公共団体向けのマーケティング支援、東京ビッグサイトで開催する「HandMade In Japan Fes’」や「Creema YAMABIKO FES」などの大型イベントの開催、さらに、クリエイター支援に特化したクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」、レッスン動画プラットフォーム「FANTIST」など、多方面からクリエイターの活動を支援し、クリーマ経済圏の確立とクラフトカルチャーの発展に取り組んでいます。

 マーケットプレイスサービスでは、クリスマスやバレンタインデーなど季節のトレンドを捉えたマーチャンダイジング施策を実施し、クリエイター作品の魅力を訴求しました。また、作品詳細画面や検索機能、カート画面のリニューアルを含むユーザーインターフェースの改善やインフラ基盤の強化も推進しました。加えて、「HandMade In Japan Fes’」と連動したキャンペーンを展開するなど、多様なキャンペーン施策を実施することで、新規顧客層の獲得を進めました。一方で、2024年2月期の3月に実施したTVCMの効果の反動に加え、市場全体のWeb広告単価の高騰による広告効率の悪化、さらに当社ドメイン名を悪用したフィッシング詐欺目的の「なりすましメール」の横行、付随してその問題への対応リソースの投入等、サービス成長の下方圧力がこれまでにない規模で発生する厳しい環境下での事業推進となりました。その結果、マーケットプレイスサービスの流通総額は154.5億円(前期比93%)、売上高は1,491,235千円(前期比93%)となり、前期実績を下回る結果となりました。なお、当連結会計年度末におけるクリエイター数は約29万人、登録作品数は約1,972万点、スマートフォンアプリのダウンロード数は約1,548万回を突破しており、主要KPIは順調に推移しています。

 プラットフォームサービスでは、「Creema」のプラットフォームとユーザー基盤を活用し、企業・地方公共団体向けのPR支援を展開する外部広告では、地方自治体と連携した伝統工芸品・地域産品の販路開拓支援プロジェクトや、大手商業施設とのコラボイベントなど、当社ならではのPR企画を提案・実施しました。また、クリエイターが「Creema」上で作品をプロモーションできる内部広告サービスでは、サービスの利用促進を目的としたプロダクト改善を進めました。その結果、プラットフォームサービスの売上高は690,680千円(前期比101%)となりました。

 イベントサービスでは、2024年3月16日・17日に「Creema YAMABIKO FES 2024」を、2024年7月20日・21日及び2025年1月18日・19日の4日間にわたり「HandMade In Japan Fes’」を開催し、多くの来場者にご参加いただきました。その結果、売上高は181,681千円(前期比128%)となりました。

 新サービス群では、クリエイターやものづくり事業者の創造的活動を支援する「Creema SPRINGS」において、多様なプロジェクトが引き続き起案され、その多くが目標支援金額を達成しました。また、「FANTIST」では、クリエイターが制作・販売するレッスン動画に加え、公式コースレッスンの拡充も順調に進み、レッスン動画数は同領域において国内最大級の規模に拡大しました。その結果、新サービス群の売上高は143,366千円(前期比177%)と大幅な成長を記録しました。これらのサービスを相互に連携させることで、ユーザー価値の最大化、認知度向上、市場拡大、そしてクリーマ経済圏の確立を進めています。

 結果として、当連結会計年度における売上高は前期比100%の2,507,008千円で着地しました。成長投資を継続・拡大しながらも、営業利益は103,126千円(前期比249%)、経常利益は104,701千円(前期比152%)、繰延税金資産の計上を踏まえた親会社株主に帰属する当期純利益は103,017千円(前期比130%)となり、前期との比較で大幅な増益を達成しました。

 なお、当社グループはクリエイターエンパワーメント事業の単一セグメントで事業を展開しているため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、191,637千円減少し、当連結会計年度末には2,440,590千円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動により獲得した資金は、22,925千円(前連結会計年度は113,394千円の獲得)となりました。これは主に、預り金の減少61,487千円の一方で、税金等調整前当期純利益の計上による増加104,701千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動により使用した資金は、23,149千円(前連結会計年度は4,303千円の獲得)となりました。これは主に、敷金及び保証金の差入による支出22,438千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動により使用した資金は、190,400千円(前連結会計年度は137,538千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出192,276千円によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはクリエイターエンパワーメント事業の単一セグメントであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

クリエイターエンパワーメント事業

2,507,008

99.9

合計

2,507,008

99.9

 (注)主要な相手先別の販売実績及び当該総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針、見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える判断・仮定・見積りを必要としております。経営者は、貸倒引当金とポイント引当金等に関する判断・仮定・及び見積りについては過去の実績等に基づき、固定資産の減損処理については過去の実績等に基づいて将来キャッシュ・フローを予測し、また、繰延税金資産の回収可能性については過去の実績等に基づいて将来の課税所得を予測し、これらにつき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度の経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」をご参照ください。

 

b.当連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度の財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。

 

c.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の安定確保を基本方針としています。主な資金需要は、サービスの認知度向上及び会員獲得を目的とした広告宣伝費、事業拡大に伴う開発の人件費及び外注費に加え、M&Aを含む投資の実施を予定しています。

 これらの資金は、自己資金、金融機関からの借入、新株発行などを活用して調達する方針ですが、財務状況を踏まえ、資金使途や需要額に応じて柔軟に検討を進めていきます。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社は常に市場動向、政府の政策に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保と育成等に力を入れ、当社の経営成績に重要な影響を与えるリスクに対し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、登録作品数、アプリダウンロード数、流通総額を重要な経営指標と位置付けています。当連結会計年度末の登録作品数は前年度比111%、アプリダウンロード数は105%、流通総額は93%となりました。

 2024年2月期の3月に実施したTVCM効果の反動や、市場全体のWeb広告単価の大幅高騰による広告効率の悪化に加え、当社のドメイン名を無断使用したフィッシング詐欺目的の「なりすましメール」の横行に伴い、一時的な流通棄損が発生した影響で、流通総額は前年を下回りました。しかし、登録作品数やアプリダウンロード数といった流通総額の伸長に寄与する先行指標は順調に推移していると認識しています。

 

    <マーケットプレイスサービスの重要指標推移表>

 

2022年

2月期末

実績

2023年2月期末

2024年2月期末

2025年2月期末

実績

前期比

実績

前期比

実績

前期比

登録作品数(万点)

1,348

1,549

115%

1,769

114%

1,972

111%

アプリダウンロード数

(万回)

1,253

1,391

111%

1,481

107%

1,548

105%

流通総額

(百万円)

16,067

16,834

105%

16,584

99%

15,456

93%

   ※登録作品数はサービス開始時点から当該期末までの累積数、アプリダウンロード数はアプリリリース時点から当該期末までの累積数、流通総額は期末時点の各期の合計

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。