第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであり、米国の関税政策による影響を見込んでおりません。

 

 当社グループは、世界最高品質の小型建設機械の開発・製造・販売を強みとしており、事業を通して「全世界の人々の幸福で豊かな暮らしに貢献」していきたいと考えております。これからも、ユーザーエクスペリエンスの徹底追求、0102010_001.png ファン創出のため、次に掲げる内容に取り組み、持続的な成長を目指してまいります。

 

(1)経営方針

当社グループは、以下の「社是」及び「企業理念」を経営の基本方針としております。

 

社是

創造・・・豊かな感性をもって、ニーズに応えた商品開発をする。

挑戦・・・夢と若さをもって、より高い目標に向かって果敢に行動する。

協調・・・和と思いやりの心をもって、調和の取れた社会との共生を図る。

 

企業理念

世界初から世界の 0102010_002.png

・私たちは、創造、挑戦、協調の精神で切磋琢磨し 0102010_003.png のものづくりを追求します。

・グローバルな視野と感覚をもって、お客さまに信頼される商品とサービスを提供します。

・一人ひとりがもつ力を活かし、地球にやさしく、豊かな社会の実現に貢献します。

 

(2)経営環境

 当社グループが提供する小型建設機械は、住宅建築の基礎工事、水道管、ガス管及び道路等の生活インフラ整備、工場、商業施設及び公共施設などの官民の建設投資をはじめ、衣食住の「住」に深く関わる製品で、人々の毎日の暮らしを支え続けております。

① 企業構造、主要品目、販売形態

 当社グループは、当社及び連結子会社4社の計5社により構成され、建設機械の開発・製造・販売を主たる業務とした事業を営んでおり、主要品目はミニショベル、油圧ショベル、クローラーローダーであります。主要品目及び販売形態に関する内容の詳細につきましては、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3事業の内容」に記載しております。

② 事業を行う市場の状況

 当社グループの主力販売市場は米国及び欧州であり、当連結会計年度の業績は、売上高、営業利益、経常利益は過去最高となりました。

 欧米各国の水道管、ガス管及び道路等の生活インフラは老朽化が進んでおり、景気動向や社会情勢に関係なく、継続的に工事を行う必要があります。住宅関連工事は、金利の上昇により調整局面にありますが、新築住宅の需要は底堅く継続すると見込んでおり、当社の製品需要は引き続き堅調に推移すると考えております。

 中長期的には、グリーントランスフォーメーション(GX)関連の建設投資の拡大が見込まれ、脱炭素に向けて化石燃料から電力等へのエネルギーシフトの際に発電・送電・充電インフラなど新たな建設需要の創出が期待されております。建設機械におきましても、自動車と同様、電動機など温室効果ガスの排出量が少ない製品へと需要がシフトしていくと予想されます。また、各国の工事現場では人手不足が進んでおり、建設機械のオペレーター不足、技量不足が深刻化すると予想しております。

③ 競合他社との競争優位性

 これまで当社は、世界の建設現場から寄せられるニーズに寄り添い、耐久性、操作性、快適性、そしてパワフルであることにこだわり抜いて製品を開発し、お客様の信認を得てまいりました。この強みを発展させつつ、今後は電動化や自動化といった環境面や性能面でのプラスアルファに磨きをかけ、お客様に選ばれ続ける製品開発を推し進め、事業のさらなる拡大を果たすことにより、当社グループの企業価値の向上につなげてまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは3年間(2026年2月期~2028年2月期)の第四次中期経営計画を策定し、以下の課題に取り組んでまいります。

① 販売網の拡充とアフターパーツの販売拡大

イ)北米

ディーラー網を現在の280拠点から3年後には360拠点へ拡大し、主力製品であるクローラーローダー及びショベルの積極的な販売活動に取り組みます。

ロ)欧州

2025年下半期からの欧州経済の回復を前提に、主力製品であるショベルの販売回復、クローラーローダーの段階的拡販に取り組みます。

ハ)オセアニア

オーストラリアにディストリビューターを追加し、既存ディストリビューターとの相乗効果により、ショベルとローダーの販売拡大を目指します。また、地域別売上高の開示区分をこれまでの「アジア」から「アジア・オセアニア」に変更し、四半期ごとに実績を開示いたします。

ニ)アフターパーツ

純正部品によるメリット(高品質・安心)を訴求するとともに、純正部品を使用することを条件としたメーカー保証期間の延長を顧客に提案すること等により、アフターパーツ売上を拡大いたします。また、アフターパーツ売上の実績を四半期ごとに開示いたします。

② 生産機種の再編成とローダー新工場の建設

イ)本社工場と青木工場の生産機種を再編成し、ショベルの生産能力をクローラーローダーに振り向けるとともに、増員による生産台数の底上げ、トレーニングによる生産効率の向上等により、2028年2月期には、クローラーローダーの生産台数を2025年2月期と比べて2倍に引き上げます。

ロ)2029年2月期以降の事業拡大を見据え、青木工場の隣接地にクローラーローダー新工場を建設します。新工場がフル稼働に至ると、ショベルとクローラーローダーを合わせた生産能力は、1.3倍となる見込みです。詳細は、2025年3月27日に公表した「固定資産の取得(工場用地の取得及び新工場の建設)に関するお知らせ」をご参照ください。

③ 電池式ミニショベルのラインナップ拡充

パワフル、耐久性、操作性、快適性といった当社製品の強みを発展させつつ、電池式ミニショベルのラインナップを拡充いたします。なお、販売中の2トン級に続き、1.5トン級と3.5トン級のプロトタイプを市場でテストしております。

④ 人的資本への投資

「人財こそが企業力の源泉」「人への分配は未来への投資」との基本方針のもと、社員のウェルビーイング向上のための施策を強力に推し進めます。当社グループが目指す姿の共有、学ぶ機会の提供、健康経営の実践、ワークライフバランスの向上、DE&Iの推進等の取り組みを通じて、社員がいきいきと働ける職場環境の実現を目指します。

⑤ サステナビリティ経営の推進

イ)環境(GHG排出量の削減)

製品からのGHG 環境に優しい製品開発

工場からのGHG 省エネ活動の推進、太陽光パネルの設置、グリーン電力の使用

ロ)社会(ステークホルダーエンゲージメントの強化)

株主  社長・取締役との十分な対話機会の確保、ご意見・ご要望を経営に反映

社員  ウェルビーイングの向上、エンゲージメントサーベイの実施

販売先 お客様の現場・現物・現実を確認、製品開発とサービス向上に活かす

調達先 CSR調達方針への賛同要請、パートナーシップ構築宣言への賛同

ハ)企業統治(ガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントの強化)

グローバル経営の基盤強化 企業法務の強化、管理部門の陣容強化、IT投資

リスクマネジメント    サイバーセキュリティの強化

取締役の報酬制度改定   固定報酬と業績連動報酬の割合見直し

 

 

 なお、第四次中期経営計画の最終年度(2028年2月期)の数値目標を以下のとおり定めています。

 *将来に関する事項は、米国の関税政策による影響を見込んでおりません。

 

2025年2月期

実績

2028年2月期

目標

北米 売上高

1,200億円

1,784億円

 └販売台数 増加率

 

+60%

欧州 売上高

875億円

1,087億円

 └販売台数 増加率

 

+30%

アジア・オセアニア 売上高

28億円

100億円

日本・その他地域 売上高

27億円

29億円

連結売上高

2,132億円

3,000億円

└このうちアフターパーツ売上

173億円

208億円

営業利益

371億円

520億円

└営業利益率

17.4%

17.3%

1株当たり当期純利益

 552円

800円

自己資本利益率(ROE)

 16.6%

※2 17.0%以上

為替レート

米ドル

英ポンド

ユーロ

人民元

※1 152.65円

194.85円

163.74円

21.13円

140.00円

177.00円

147.00円

 19.30円

※1 2025年2月期の為替レートは、12ヶ月間の期中平均レートを表示しております。

※2 当社は以下を参考に、株主資本コストを10%と認識しており、株主資本コストを上回るROEを堅持したいと考えております。

■アンケート法

機関投資家の皆様へのヒアリングしたところ、10%程度とする方が多い。

■CAPM法

リスクフリーレート(1.1%)+β値(1.33)×市場リスクプレミアム(6%)≒ 9%

■益利回り法(PERの逆数)

当社株式のPERは8倍から9倍で推移 → ゆえに1/8 = 12.5%、1/9 = 11.1%

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

1.サステナビリティ全体に関する考え方及び取組

(1)ガバナンス

 当社グループはサステナビリティ経営の推進を重要課題と認識し、取締役会による監督とサステナビリティ推進委員会による管理を中心とするガバナンス体制を構築しています。このガバナンス体制は、「サステナビリティ推進委員会規程」に定めています。

 

① 取締役会

 取締役会は、サステナビリティに関する事項について、原則として年に2回または必要に応じてサステナビリティ推進委員会より報告を受け、取り組みの進捗状況や、目標や実績をモニタリングしています。また、経営戦略、中期経営計画、年度予算、事業計画などの重要事項については、必要に応じて気候関連リスクと機会を検討したうえで、取締役会で意思決定がなされています。

 

② サステナビリティ推進委員会

 サステナビリティ推進委員会は、当社の代表取締役社長を委員長とし、委員は当社の取締役や執行役員、子会社の最高執行責任者など、担当職務に基づき適正と認められるメンバーにより構成しております。サステナビリティ経営の方針策定、重要課題(マテリアリティ)の特定、目標とすべき指標の設定等について審議し、決定した事項、目標に対する実績、及び実行計画の進捗等について、取締役会に報告・提言を行っています。サステナビリティ推進委員会の主な機能・役割・審議事項は以下のとおりです。

・サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の特定、目標の設定、実績の確認

・サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)や設定目標の変更要否の確認

・サステナビリティに関する法規制への対応策の検討、実施

・気候関連リスクと機会の特定、及びシナリオ分析に関する審議

・温室効果ガス排出の実態把握及び削減目標の設定

・特定したリスクの最小化と機会の獲得に向けた方針・戦略・施策の策定及び推進

・前各号を実行するために必要な予算の検討及び予算管理

・各部門、子会社の個別の事業計画への落とし込み、進捗状況の確認

・取締役会への報告・提言

 

(事務局)

 経営管理部は、サステナビリティ推進委員会の事務局として、委員会での審議内容について具体的な企画立案を行い、各部署及び関係会社の事業計画への落とし込みを主導し、委員会の指示に基づく業務を推進しております。

 

③ ガバナンス体制図

0102010_004.png

 

(2)戦略

 当社は、目指すべき持続可能な社会の実現に向け、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を定めました。当社の主力製品である小型建設機械の開発、調達、製造、販売、当社製品が稼働する土木工事の現場、そして製品廃棄に至るまで、サプライチェーン全体で当社が取り組むべき重要課題が何なのかの議論を重ねました。

 国際社会の動向やステークホルダーからの期待と、経営にとっての重要性の両輪で重要課題を特定するため、SDGsやGRI、ISO26000といったグローバルな要請事項やガイドラインと照らし合わせ、かつ外部有識者のご意見も取り入れました。このような議論と検討を経て、今できていること、できていないこと、これから注力すべき新たな取り組みを認識し、当社グループとして現在及び中長期で取り組むべき重要課題の候補を抽出しました。

 抽出した重要課題の候補に対して、当社グループの中長期的な事業にとっての経営視点での重要度を横軸に、ステークホルダー視点での重要度を縦軸に、外部有識者のご意見を取り入れつつ、2軸で優先順位を設定し、プロジェクトチームで協議を重ねて、重要課題として特定しました。なお、ステークホルダー視点での重要度は、エンドユーザー、調達先、販売先、従業員、環境、地域社会・コミュニティ、自治体、投資家などからの要請、当社への期待を考慮しました。

0102010_005.png

 

[重要課題(マテリアリティ)一覧表]

当社ウェブサイト(https://www.takeuchi-mfg.co.jp/sustainability/sdgs/#anc_1)にて、「重要課題(マテリアリティ)一覧表」の詳細をご覧いただけます。

No

ESG項目

社会課題

取組テーマ

ISO26000

(7つの中核課題)

SDGs

主なゴール

E

S

G

 

 

気候変動の抑制

電池式ミニショベルの開発・製造・販売

 

 

 

 

 

 

0102010_006.png

 

 

工場のGHG排出の削減

 

 

 

 

 

 

0102010_007.png

 

 

工場のエネルギー効率化向上、再生可能エネルギー利用拡大

 

 

 

 

 

 

0102010_008.png0102010_009.png

 

 

循環型経済の実現

工場の3Rの取り組み

 

 

 

 

 

 

0102010_010.png

 

 

環境負荷の削減

環境汚染の防止

化学物質管理

環境負荷を抑えた建設機械の開発・

製造・販売

 

 

 

 

 

 

0102010_011.png0102010_012.png

 

 

工場の化学物質排出、排水の削減

 

 

 

 

 

 

0102010_013.png0102010_014.png

 

 

SDS、Reach規制、RoHS指令対応

 

 

 

 

 

 

0102010_015.png

 

 

持続可能な街づくり

市場ニーズに細かく応えた製品開発

 

 

 

 

 

 

0102010_016.png

 

 

より安全・効率的・クリーンな建設機械の開発・製造・販売

 

 

 

 

 

 

0102010_017.png

10

 

 

お客様への責任ある

行動

製品・サービスの情報拡充によるユーザーとのつながり強化

 

 

 

 

 

 

0102010_018.png

11

 

 

人権尊重

適正な労働慣行

雇用の差別撤廃

 

 

 

 

 

0102010_019.png0102010_020.png

12

 

 

ハラスメントの防止

 

 

 

 

 

0102010_021.png0102010_022.png

13

 

 

労働安全衛生

従業員の健康

竹内製作所(単体)での健康経営、労働安全衛生

 

 

 

 

 

 

0102010_023.png

14

 

 

人財開発

教育・研修制度の拡充

 

 

 

 

 

 

0102010_024.png

15

 

 

ワークライフバランスの推進

育児・介護休業、時短勤務等の制度活用推奨

 

 

 

 

 

 

0102010_025.png0102010_026.png

16

 

女性活躍推進の強化

女性取締役の選任、女性管理職の候補育成

 

 

 

 

 

0102010_027.png0102010_028.png

17

 

 

地域の次世代育成

竹内製作所(単体)での工場見学、講師派遣、自立支援学校との連携

 

 

 

 

 

 

0102010_029.png0102010_030.png

18

 

環境・社会に配慮したサプライチェーンの構築

CSR調達方針の策定、実行

 

 

 

 

 

 

0102010_031.png0102010_032.png

19

 

サプライヤーにCSR調達方針の同意書を依頼

 

 

 

 

 

 

0102010_033.png0102010_034.png

20

 

 

製品廃棄時の解体・回収・リサイクル

 

 

 

 

 

 

0102010_035.png

21

 

 

コンプライアンス

法令・規制の遵守

反社会的勢力の排除

 

 

 

 

 

 

0102010_036.png

22

 

 

コーポレート

ガバナンス

グローバルガバナンスの強化

 

 

 

 

 

 

0102010_037.png

23

 

 

リスクマネジメント

危機管理体制、BCP、情報セキュリティ

 

 

 

 

 

 

0102010_038.png

ISO26000、7つの中核課題

1 組織統治(ガバナンス)

2 人権

3 労働慣行

4 環境

5 公正な事業慣行

6 消費者問題

7 コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

 

(3)リスク管理

 当社は、事業活動において発生しうるリスクの発生防止に係る管理体制の整備、及び顕在化したリスクへの対応等に関して「リスク管理規程」を定めています。事業環境の変化、気候変動、自然災害、事件・事故、情報システム障害等の全社的リスクについては、当社グループの事業の持続可能性に大いに影響を及ぼすため、サステナビリティ推進委員会にて一体的に管理しております。

 具体的には、当社グループに与える影響度と発生頻度の高いリスク項目をリスクマップで可視化し、その結果を取締役会に報告し、その中から優先度が高いリスク項目ごとに対応策を検討し、実施しております。

0102010_039.png

 

[リスクマップの作成]

・分野別に抽出した当社のリスク項目

リスク分野

リスク項目

ハザードリスク

自然災害、労働災害、火災、事故

オペレーショナルリスク

事業リスク(開発・調達・製造・販売・品質・情報システム)

ESGリスク(環境・社会・ガバナンス)

戦略リスク

経営戦略、人事戦略、開発戦略、販売戦略、不動産戦略

経済リスク

為替変動、景気変動、金利変動、地政学リスク

・上記リスク項目に基づき、当社の常勤取締役、執行役員、全部門長に対してリスク調査(外部コンサルティングを活用)を行い、定量的かつ定性的な評価を実施

・リスク調査の結果から、各リスク項目の影響度と発生頻度を軸にリスクマップを作成し、対策を行うべき優先リスクを特定

 

(4)指標と目標

当社では、「あるべき姿」として以下に目標を定め、取り組みを進めております。

No

社会課題

何を

いつまでに

どうするか

 

2024年度

(実績)

気候変動

製品からのCO2排出量

2030年度

(2010年度比)

30%削減

(原単位)

 

6.3%削減

工場からのCO2排出量(日本国内)

2030年度

(2015年度比)

50%削減

(原単位)

 

80.4%削減

労働安全衛生

1日以上の休業を伴う労働災害

毎年度

ゼロ件

 

3件

人財育成

1人当たりの研修時間

毎年度

開示

 

32.6時間

ワークライフバランス

育児休業の取得率(男女別)

毎年度

開示

 

男性45.0%

女性100.0%

児童労働

CSR調達方針の同意書回収率

毎年度

95%以上

 

97.9%

DE&I

女性管理職比率

2030年度

男女同率

 

1.1%

障がい者雇用率

毎年度

開示

2.4%

子会社の管理職のローカル比率

毎年度

開示

 

93.0%

※1 製品からのCO2排出量は、Scope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)に基づき算定しております。

※2 工場からのCO2排出量は、提出会社のScope1とScope2の合算により算定しております。

※3 製品及び工場からのCO2排出量の削減目標は、連結売上高ベースの原単位目標としております。

※4 ⑨を除き、提出会社のみの数値です。

(気候変動)

① 製品からのCO2排出量:2030年度(2010年度比)までに30%削減

 気候変動対策、すなわちCO2排出削減に取り組むことは最も優先的に取り組むべき課題の一つと認識しています。今回掲げた目標は、従来のディーゼルエンジン式建設機械の性能向上、燃費改善だけでは達成不可能であり、電池式の建設機械の普及が大前提となります。当社は、2021年7月に2トン級のリチウムイオン電池式ミニショベルを市場投入しましたが、建設機械市場における電動化は、当初の想定を大きく下回るペースで推移しております。

 一方、環境意識の高まりにより、お客様の意識が変化したり、公的な補助あるいは規制が強化されたりすることにより、普及が加速することも考えられます。この「移行リスク」を事業発展のチャンスと捉え、電池式の建設機械のラインナップ拡充に向けて、製品開発に取り組んでおり、販売中の2トン級に続き、1.5トン級と3.5トン級のプロトタイプを市場でテストしております。なお、製品からのCO2排出量は、Scope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)に基づき算定します。

② 工場からのCO2排出量:2030年度(2015年度比)までに50%削減

 製品からのCO2排出量の削減に並び、工場からのCO2排出量を削減することも、製造業として当然の責務と考えています。当社工場においては、電気使用によるCO2排出が圧倒的に多く、以下の3本柱で取り組んでまいります。

・省エネ 2010年に設置した省エネルギー推進委員会による活動など、電力使用効率の向上

・創エネ 工場屋上に設置した太陽光パネルによる発電

・再エネ 工場で使用する電力100%を再生可能エネルギーに切り替え

 ※本社工場は2021年11月から、青木工場は2023年6月(建物引き渡し時)から再生可能エネルギー100%で電力を調達しております。

 

(労働安全衛生)

③ 1日以上の休業を伴う労働災害:毎年度ゼロ件

 当社は、行動規範の中で「安全は全てに優先する」と掲げており、これまでも安全衛生委員会と従業員が連携して労働災害、事故の防止に取り組むなど、安全で健康的な職場環境の維持、向上に努めてまいりました。今回、グローバルなESG課題の一つとして認識を新たにし、労働災害ゼロを目標として掲げました。従業員一人ひとりが安心して活躍できる職場環境をつくることは、企業の持続的な成長に欠かせないと考えています。

 

(人財育成)

④ 1人当たりの研修時間:毎年度開示

 当社は行動規範に「人間尊重」を掲げ、人財を最大の経営資源、人的資本と認識しています。事業は人を中心として発展していくものであり、従業員の成長は企業の成長に直結します。今回、人財開発の重要性を再認識し、従業員の教育・訓練にかかる指標として研修時間をピックアップしました。研修テーマには、重要課題12番に掲げた「ハラスメント防止」と21番に掲げた「コンプライアンス」も含まれます。当社は今後も、質の高い学びの機会を従業員に提供し、人的資本への投資を積極的に行ってまいります。

 

(ワークライフバランス)

⑤ 育児休業の取得率(男女別):毎年度開示

 育児休業は、大切なライフイベントである育児を企業がサポートする制度で、男女を問わず育児休業を取得しやすい職場環境の整備が社会的に求められています。育児休業の取得は、家庭での親子のつながりを確かめ合い、自身のワークライフバランスを見つめ直す機会となることからも、女性だけでなく、男性も育児休業を取得する必要性が注目されています。同時に、職場ではジョブローテーションなどマネジメント力の強化にもつながります。当社はワークライフバランスの推進を通じて、従業員の多様な働き方を支援してまいります。

 

(児童労働)

⑥ CSR調達方針の同意書回収率:毎年度95%以上

 サステナビリティへの取り組みにおいて、最大の効果を上げるためには、当社のみならず、当社の生産活動において重要なステークホルダーとなるサプライヤーの皆様とのパートナーシップが欠かせません。サプライチェーン全体で当社が環境と社会に与えるインパクト・責任を考え、取り組んでいくことの必要性を強く認識し、CSR調達方針を掲げました。サプライヤーの皆様と一体となってグローバルなESG課題の解決に貢献したいと考えています。

(DE&I)

⑦女性管理職比率:2030年度までに男性管理職比率と同率

⑧障がい者雇用率:毎年度開示

⑨子会社の管理職のローカル比率:毎年度開示

 当社にとって、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)は気候変動と並ぶ重要な課題と考えており、経営と事業の現場の双方において、同質化・硬直化を防ぎ、多様な価値観と発展性を取り入れる必要性を強く認識しています。女性や外国にルーツを持つ従業員、障がいのある従業員など、多様なバックグラウンドを持つ従業員が働きやすい職場作りを目指し、多様な声を反映する取り組みとして、まずは従業員の女性社員比率の向上と女性管理職の育成を推進しております。「建設機械業界では女性の入社希望者数が非常に少なく、結果的に男性中心の会社となった」とのこれまでの実情・反省を踏まえて、入口としての女性採用を拡大するため、誰もが働きやすく、より安全で効率的な工場の実現に向けて、省力化設備や自動化設備を生産現場に取り入れたり、生産工程を改善したり、取り組みを推し進めております。新卒採用や中途採用で入社した女性が将来的に管理職に登用されるよう、人財育成に着実に取り組み、中長期でバランスを是正していく考えです。なお、取締役会のジェンダーダイバーシティ推進として、2023年5月開催及び2024年5月開催の株主総会において女性取締役を選任し、当社の取締役は男性9名、女性2名となりました。

 加えて、海外売上高比率が95%を超える現状に鑑みて、海外現地の視点を経営に取り入れ、現地の雇用を拡大する狙いの下、海外子会社の管理職のローカル比率も指標として掲げることとしました。

 

2.気候変動

 当社は、サステナビリティ経営の強化を重要な経営課題として認識しており、SDGsを念頭に、地球に優しく豊かな社会の実現に貢献したいと考えています。経済的、社会的、環境的な価値創造に取り組み、持続可能な社会の実現を目指してまいります。SDGsの中でも13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」に関しましては、地球温暖化が当社グループの事業にもたらすリスクと機会を評価し、シナリオ分析を通じた長期的な経営戦略を策定・実行するとともに、TCFDが推奨する情報開示に取り組んでおります。

 

(1)ガバナンス

 ガバナンスにつきましては、「1 サステナビリティ全体に関する考え方及び取組、(1)ガバナンス」に記載しております。

 

(2)戦略

以下のステップでシナリオ分析を行いました。

0102010_040.png

 

① リスク重要度の評価

 気候変動に関するシナリオ群を選定する前工程として、TCFD提言における気候関連リスクの類型を参照し、当社グループの事業に影響する可能性のあるリスクと機会を抽出しました。

TCFDに

よる類型

分類

発現時期

リスク

重要度

機会

重要度

移行リスク

政策・法規制

炭素価格

 

炭素税導入による原材料価格の上昇(鉄鋼、ゴム、ガラス等)

省エネ設備の導入によるエネルギー使用料の低減

既存の製品、サービスに対する命令及び資料

 

GHG排出規制による既存製品の売上減少

GHG排出規制による低GHG製品の売上拡大

GHG排出規制に対応するための開発費増加

海運業における規制強化

 

低GHG船舶の新造コストや排出権取得コストの転嫁による海運コストの上昇

技術

既存の製品、サービスがGHG排出量の少ないものに置換

 

GHG排出規制による既存製品の売上減少

GHG排出規制による低GHG製品の売上拡大

低GHG排出への移行

GHG排出規制に対応するための開発費増加

市場

エネルギー価格の上昇

工場の操業コストの増加

変化する顧客行動

 

低GHG製品への需要シフトによる既存製品の売上減少

低GHG製品への需要シフトによる低GHG製品の売上拡大

評判

ステークホルダーからの評判

気候変動対策の遅れによる株価下落、資本コストの増加、人財確保の困難化

物理的リスク

急性

異常気象の重大性と頻度の上昇

 

自然災害の激甚化によるサプライチェーンの寸断、生産停止、販売機会の逸失

災害復旧工事、防災工事の増加による製品需要の拡大

慢性

平均気温の上昇、海面の上昇

 

気温上昇による建設工事現場での作業困難化

※発現時期は以下を示しています。

短期:3年以内

中期:3年超5年以内

長期:5年超

 

②シナリオ群の定義

 TCFD提言では、「2℃以下シナリオ分析を含む、様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて説明する」ことが求められています。当社のシナリオ分析においては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した第6次評価報告書等を参照し、持続可能性を重視した社会経済シナリオである「2℃シナリオ」、及び現行推移シナリオである「4℃シナリオ」を設定しました。また、分析対象とする時間軸は2030年としました。

0102010_041.png

※シナリオ群の定義で参照した外部情報

◇気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第6次評価報告書(AR6)のSSP1-2.6シナリオ、SSP3-7.0シナリオ」

◇国際エネルギー機関(IEA)「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)のAPSシナリオ、STEPSシナリオ」

2℃シナリオ

4℃シナリオ(現行推移)

政策移行の影響が大きいシナリオ

 ◇炭素税の導入・課税強化

 ◇排ガス規制、GHG排出規制等が大幅に強化

 ◇原材料、海上運賃が高騰

物理影響が大きいシナリオ

 ◇大幅な規制強化はない

 ◇台風・ハリケーン・洪水等の異常気象による被害拡大

 

③ 事業インパクト評価、④対応策の定義

 ロジックツリーを用いて、気候変動の影響が顕在化する流れと対応策をシナリオごとに整理しました。パリ協定により、世界の平均気温上昇を2℃以下に抑制することが国際社会のコンセンサスとなり、企業による気候変動への対応策に社会的関心、期待が高まっています。気候変動は中長期の時間軸で発生するため、予測の振れ幅が大きく不確実ではあるものの、不確実で幅を持つ未来を受け止め、気候変動が事業に与える影響と対応策を考察し、臨機応変に対応可能なレジリエンス(弾力性、強靭性)を経営に組み入れてまいります。

 なお、今回のシナリオ分析では事業影響・財務影響の定量的な算出は行っておりません。リスクが顕在化する可能性や時期、顕在化した場合の重要度等を定性的に評価し、影響度を大・中・小に分類しました。

 

(2℃シナリオ、2030年のロジックツリー)

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(4℃シナリオ、2030年のロジックツリー)

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(3)リスク管理

 リスク管理につきましては、「1 サステナビリティ全体に関する考え方及び取組、(3)リスク管理」に記載しております。

 

(4)指標と目標

指標

目標

 

2024年度

(実績)

製品からのCO2排出量

2030年度:30%削減

(2010年度比、原単位)

 

6.3%削減

工場からのCO2排出量(日本国内)

2030年度:50%削減

(2015年度比、原単位)

 

80.4%削減

工場で使用する再生可能エネルギー比率(日本国内)

100%

 

100%

※1 製品からのCO2排出量は、Scope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)に基づき算定しております。

※2 工場からのCO2排出量は、提出会社のScope1とScope2の合算により算定しております。

※3 製品及び工場からのCO2排出量の削減目標は、連結売上高ベースの原単位目標としております。

※4 提出会社のみの数値です。

 

 当社グループのサプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量は、Scope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)によるものが圧倒的な割合を占めます。当社グループでは、「製品からのCO2排出量を2030年度までに2010年度に比べて30%削減する」との目標を掲げていますが、従来のディーゼルエンジン式建設機械の性能向上、燃費改善だけでは達成不可能であり、電池式の建設機械の普及が大前提となります。当社は、2021年7月に2トン級のリチウムイオン電池式ミニショベルを市場投入しましたが、建設機械市場における電動化は、当初の想定を大きく下回るペースで推移しております。一方、当社製品の使用はお客様にとってのScope1またはScope2に直結し、2℃シナリオ下においては、環境意識の高まりによりお客様の意識が変化したり、公的な補助あるいは規制が強化されたりすることにより、電池式の建設機械の普及が加速することも考えられます。

 この「移行リスク・機会」を事業発展のチャンスと捉え、電池式の建設機械のラインナップ拡充に向けて、製品開発に取り組んでおり、販売中の2トン級に続き、1.5トン級と3.5トン級のプロトタイプを市場でテストしております。

 

3.人的資本

 当社グループでは、「人財こそが企業力の源泉」「人への分配はコストではなく未来への投資」との基本方針のもと、従業員のウェルビーイング向上のための施策を強力に推し進めます。当社グループが目指す姿の共有、学ぶ機会の提供、健康経営の実践、ワークライフバランスの向上、DE&I の推進等の取り組みを通じて、社員がいきいきと働ける職場環境の実現を目指します。これらの施策により、従業員のモチベーション向上、優秀な人財の獲得、さらには企業としての競争力の向上につなげてまいります。

 

(1)戦略

人的資本への投資については、以下の4つの柱で戦略を組み立てております。

増員

[事業拡大のための増員]

・開発部門 電動化や自動化など、新技術の研究開発に必要な増員

・製造部門 販売拡大に向けた増産に必要な増員

・販売部門 連結販売子会社(米英仏)での増員を含め、販売拡大に向けての増員

・管理部門 中期経営目標に掲げる連結売上高3,000億円規模の企業グループを支える管理部門の増員

[人的余力を持つための増員]

・人的余力があってはじめて、教育研修に参加したり、育児休業を取得したりできるようになる

賃上げ

・成果には報酬で応え、一人ひとりの従業員が目標と意欲を持って、イキイキと働く企業風土の醸成

教育育成

・若手から役員まで全従業員を対象とした階層別研修や専門研修、部門研修の実施

福利厚生

・ワークライフバランス(育児・介護休業、計画年休、過重労働対策)

・健康経営の実践(人間ドック補助、生活習慣病予防、メンタルヘルス)

 

① 人財育成

(当社グループのバリューへの共感)

 全社員が一体感を持って仕事をするために、当社グループがどのように世界や社会と結びつき、向かい合い、どのような会社になろうとしているかを社内外に示す「私たちの約束」の浸透に力を入れております。「私たちの約束」は、社是・企業理念・行動規範から構成されています。

 

● 社是(3つのC)

・創造(Creation)   … 豊かな感性をもって、ニーズに応えた商品開発をする。

・挑戦(Challenge)  … 夢と若さをもって、より高い目標に向かって果敢に行動する。

・協調(Cooperation) … 和と思いやりの心をもって、調和の取れた社会との共生を図る。

● 企業理念

世界初から世界の 0102010_044.png

・私たちは、創造、挑戦、協調の精神で 切磋琢磨し 0102010_045.png のものづくりを追求します。

・グローバルな視野と感覚をもって、お客さまに信頼される商品とサービスを提供します。

・一人ひとりがもつ力を活かし、地球にやさしく、豊かな社会の実現に貢献します。

● 行動規範

・企業倫理の遵守

法令およびその精神を遵守し、社会的倫理や良識に従った企業行動を行います。

・顧客ニーズ

不断の研究と独創的な発想力により、お客さまのニーズに適合した商品、サービスを開発、提供し、顧客満足度を高めます。

・安全性と品質

高度な技術や熟練技の伝承を図りながら、安全性を最優先にした最高の品質を確保し、顧客の信頼に応えます。

・情報開示

社会が真に必要としている企業情報を積極的かつ公正に開示し、経営の透明性を高めます。

・人間尊重

人財を最大の経営資源と認識し、多様な人格や個性を尊重し、積極的な育成・活用に努め、チャレンジ精神に満ちた、活気ある楽しい職場づくりに努めます。

・安全な職場作り

「安全は全てに優先する」を基本とし、安全で健康的な職場環境の維持、向上に努めます。

・共存共栄

共存共栄の精神で、顧客、取引先、株主、地域社会、社員等を含む幅広い社会と、健全で良好な関係を築きます。

・環境への配慮

かけがえのない地球を次世代に継承するため、環境保全に努めるとともに、環境に役立つ技術の研究開発に自主的、積極的に取り組みます。

・社会貢献

地域社会との密接な連携と協調を図り、良き企業市民として積極的に社会に貢献します。

・国際社会との共生

国際ルールや現地の法律の遵守はもとより、現地の文化や習慣を尊重し、その発展に貢献します。

 

(教育研修)

 当社では、「人財を最大の経営資源と認識し、多様な人格や個性を尊重し、積極的な育成・活用に努め、チャレンジ精神に満ちた、活気ある楽しい職場づくりに努めます」との行動規範のもと、若手から役員まで全従業員を対象とした階層別研修や専門研修、部門研修を行っています。役割に応じた必要な知識、スキルを習得し、従業員一人ひとりが能力を存分に発揮し、成長し続けることこそが、会社の持続的な成長に直結すると考えています。

 

[主な研修]

研修名

役員

部門長

次課長

係長

主任

班長

中堅

社員

新入

社員

新任役員、新任職位者研修

 

 

幹部研修

 

 

 

 

 

マネジメント研修

 

 

 

中堅社員研修

 

 

 

 

 

 

中途社員研修

 

 

新入社員研修

 

 

 

 

 

 

リーダー研修(選抜研修)

 

 

 

 

 

トレーナー研修(選抜研修)

 

 

 

 

 

 

キャリア研修

 

安全衛生研修

(労働安全衛生法、メンタルヘルス含む)

コンプライアンス

 

 その他、通信教育や英会話講座の助成、及び改善提案制度や表彰制度等により、社員が主体的に学び、気づき、発信する企業風土の醸成に努めております。

 

② 社内環境整備

(健康経営)

 当社は、行動規範にある「人間尊重」と「安全な職場づくり」を健康経営の基本理念とし、従業員一人ひとりが生き生きと活躍できる職場環境を構築します。その実現に向けた取り組みを進めるため「TAKEUCHI健康経営宣言」を策定しました。

 

[TAKEUCHI健康経営宣言]

・人財を最大の経営資源と認識し、企業を存続させるためには従業員の心身の健康こそが第一であると考え、従業員とその家族の健康保持・増進に積極的に取り組みます。

・会社・産業医・健康保険組合・従業員とその家族が相互連携しながら健康意識を高め、労働生産性の向上を図ることで、ワークライフバランスを実現します

・労働災害の撲滅を目指し、職場における環境管理・作業管理・健康管理を3本柱とする安全衛生対策に取り組み、安全で快適な職場づくりを追求します。

 

 

[健康経営推進体制]

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代表取締役社長

最高責任者

総務担当役員

実務担当者

総務部(健康相談室)

健康経営に関する企画・立案、従業員への情報発信

各部門長

健康経営施策の展開、健康診断等の受診推奨、受診に対する配慮

安全衛生委員会

従業員からの意見・提案吸収・意見交換

産業医

健康経営全般に関するアドバイス

健康保険組合

データ提供、情報交換、課題に関して協議、アドバイス

従業員親睦会

従業員の意見集約を行い、会社に提案・要望を進言

 

(労働安全衛生)

 当社は、行動規範の中で「安全は全てに優先する」と掲げており、従業員一人ひとりが安心して活躍できる職場環境をつくることは、企業の持続的な成長に欠かせないと考えております。あらゆる立場の従業員が労働安全衛生を「自分ごと」として受け止め、自ら考えて行動するように、ありたい姿や行動指針を「安全衛生方針」にまとめ、提示し、浸透に努めております。

 

[安全衛生方針]

 TAKEUCHIは、良好なコミュニケーションのもと、従業員全員が安全衛生活動に取り組み、安全で衛生的な働きやすい職場環境づくりと従業員の健康増進に努め、無災害企業を目指します。

・常に「安全ファースト」で考動します。

・関連法令及び社内ルールを遵守します。

・危険有害要因に目を配り、日常的な安全衛生活動はもとより、リスクアセスメントにより職場の安全衛生レベルを高めます。

・自らの心と体を健康に保つとともに、お互いに助け合いながら生き活きとした職場環境を整えます。

・あらゆる立場の従業員が、同じ意識と知識をもって働けるように、学び、教育します。

 

(DE&I、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 DE&I、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンにつきましては、「1 サステナビリティ全体に関する考え方及び取組、(4)指標と目標」に記載しております。

 

(ワークライフバランス)

 当社は、時間外労働や休日労働に関する協定を結ぶなど、経営層と従業員代表との間で、労働慣行に関する対話を毎年定期的に行っています。タイムカードやパソコンのログ管理により、報告と実態に乖離がないかを確認するなど、従業員の労働時間の把握、管理にも努めています。また、計画的な有給休暇の取得を奨励しています。

 さらに、出産・育児、介護といったライフイベントと仕事を両立するために、育児・介護休業制度、計画年休をはじめとした多様な働き方を選択できる制度を提供しています。なお、竹内製作所(単体)において、育児休業を取得した従業員の復帰率は100%となっています。

 

(改善提案制度)

 業務改善や安全衛生、生産効率の向上のための提案を従業員から募集し、改善提案制度をより一層活性化させるため、全ての提案に対して参加賞を支給し、優れた提案内容と認められれば、より多くの報奨金を受け取ることができます。従業員一人ひとりが当事者意識を持ち、どんな小さな提案でも従業員の声に耳を傾け、改善していくことで職場環境が良くなり、製品の品質も良くなると考えています。

 

(2)指標と目標

指標

2025年度目標

2024年度実績

1人当たりの研修時間(※1)

33.6時間

32.6時間

男性の育児休業取得率(※1)

57.0

45.0

 

指標

中長期目標

2024年度実績

女性管理職比率(※1、2)

2030年度までに男女同率

男性:9.2% 女性:1.1

※1 提出会社のみの数値です。

※2 管理職とは課長クラス以上をいい、女性管理職比率とは全女性従業員に対する女性管理職の割合をいいます。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスク管理

 リスク管理については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組、1 サステナビリティ全体に関する考え方及び取組、(3)リスク管理」に記載しております。

 

(2)事業等のリスク

① 為替相場の変動

 当社グループの連結売上高に占める海外売上高は95%を超え、そのほとんどが欧米の市場で占めており、米ドル・英ポンド・ユーロの為替影響を受けております。また、決算期末における債権債務の為替換算に係る為替差損益等が発生する場合もあります。その対応策として、為替予約及び外貨建仕入の増加策等によるリスクヘッジを行なっておりますが、当社グループの想定を超えた為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります

 

② 原材料価格、物流コスト、関税率の変動

 当社グループが製造する製品の主要な原材料は、鉄板等の鋼材であり、鋼材価格は市況により変動します。鋼材価格が高騰し、製造原価が増加した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは建設機械を海上輸送によって欧米をはじめとした海外に輸出しており、海上運賃等の物流コストが高騰した場合や関税率に変動があった場合に、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、生産ラインの合理化等のコスト削減策の推進及び販売価格の見直しなどを行っております。

 

③ 部品調達

 当社グループの製品は、エンジン、油圧機器、電子部品、製缶加工品、ゴム製品等の部品から構成されております。これら部品の調達にあたって、何らかの理由でサプライヤーからの調達が困難になり、当社グループの生産活動が制限された場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、購買部門と開発部門を中心とした部門横断的な取り組みにより、機動的に調達先を見直し、複数のサプライヤーから部品を確保するなどリスク分散を進めております。

 

④ 自然災害等

 大規模地震や自然災害、火災等の事故、感染症の流行、その他の要因による社会的混乱等により、当社グループやサプライヤー、販売先の事業活動が停止または事業継続に支障をきたす事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、各種損害保険への加入、本社工場の耐震強化のほか、自然災害などの緊急事態が発生した際にいち早く事業を復旧させるため、BCP(事業継続計画)を策定しました。

 

⑤ 経済、市場の状況

 当社グループの製品は、居住区域での小規模な土木工事(都市型土木工事)で多く使用されております。具体的には、住宅建築の基礎工事、水道管やガス管、道路等の生活インフラ工事、工場や商業施設、公共施設などの官民の建設投資であり、これらの市場環境や市場ニーズの変化は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、在庫不足や過剰生産に陥ることのないように市場環境をモニタリングし、市場ニーズを見誤ることのないよう顧客密着度を高め、新製品開発に反映しております。

 

 

⑥ 競合

 建設機械業界は、競合他社の数が多く、世界各国での競争は大変厳しいものとなっております。品質、性能、価格面等で当社製品を凌ぐ製品を競合他社が開発・市場投入し、当社グループのマーケットシェアが低下した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、当社製品の品質、性能面等での優位性を訴求して競合他社との差別化を図るとともに、販売網の拡充によるマーケットシェア拡大に努めております。

 

⑦ 債権管理

 販売先の財政状態が悪化し不良債権等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、金融機関等を利用したリスクヘッジのほか、販売先の財務情報等を入手し、経営状況に応じた与信枠を設定し、与信管理を行っております。

 

⑧ 人材の確保

 当社グループのさらなる成長のためには、市場に新製品を継続的に投入していく必要があります。そのため、研究開発の充実、特に開発スキルの高い人材の確保が重要となっております。また、販売・管理体制の強化もこれと並んで重要であり、優秀な人材の確保が必要となります。しかし、このような人材を十分に確保できなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組、3.人的資本」に係る戦略に基づき、従業員が意欲的に活躍するための人事・給与制度の構築、教育研修の強化、健康経営の実践、ワークライフバランスの向上等に取り組むことにより、従業員のモチベーション向上、優秀な人材の確保につなげてまいります。

 

⑨ 環境規制、気候関連規制及びその他公的規制等

 当社グループは、様々な環境規制及びその他公的規制、税制の適用を受けております。また、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが全世界的に強化されており、予期しない規制等が設けられ、対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、これら規制の情報収集を図るとともに、「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組、2.気候変動」に係る戦略に基づき、地球温暖化が事業にもたらすリスクと機会を評価し、シナリオ分析を通じた長期的な経営戦略を策定・実行するとともに、TCFDが推奨する情報開示に取り組んでおります。

 

⑩ 生産拠点の集中

 当社グループは、主力となる生産拠点が長野県の北部に集積しております。地震等の自然災害あるいは火災などの事故によって、当社グループの生産設備が被害を受け、操業が中断し、生産及び出荷が遅延した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、国内外を含めた生産拠点の分散を中長期で検討しており、2022年9月に米国サウスカロライナ州で工場が稼働を開始しました。

 

⑪ 製品の品質

 当社グループは、品質と安全に十分留意して、製品を提供しておりますが、これら製品について品質上、安全上の不具合が発生した場合には、賠償責任のリスクが生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、さらなる品質向上を図るとともに、リスクヘッジとして製造物賠償責任保険に加入しております。

 

 

⑫ 情報セキュリティ

 外部からのサイバー攻撃のほか、機器の不具合や人為的な過失や内部不正、システム障害等の不測の事態により、当社グループの事業活動の停滞・遅延、機密情報の漏えい、重要データの喪失・破壊・改ざん等が発生する可能性があります。これにより、生産・販売の縮小を余儀なくされたり、損害賠償責任を負ったり、ブランド価値や社会的信用の低下を招いたりした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、外部からのサイバー攻撃に対しては、ネットワークのセキュリティ設定、侵入に対する監視、メールの監視等、複数の対策を講じております。また、社内ネットワークに接続可能なデバイスを限定するとともに、従業員のセキュリティ意識やリテラシーを高めることを目的とした情報発信、教育を定期的に行い、組織として情報セキュリティの維持管理に努めております。

 

⑬ 知的財産

 当社グループが知的財産権を侵害されたり、当社グループが第三者により知的財産権の侵害を訴追されたりした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、知的財産部門を設置し、外部の専門機関と連携を取りながら対応しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当社グループは第三次中期経営計画(2023年2月期から2025年2月期まで)において、①人的資本への投資、②製品開発のスピードアップ、③生産能力の増強、④販売網の拡充とアフターパーツの拡販、⑤サステナビリティ経営の推進を重点施策として取り組みました。2022年9月からセミノックダウン方式によりクローラーローダーの生産を開始した米国サウスカロライナ州の工場に続き、2023年9月に長野県小県郡青木村の青木工場におきまして、4トンから9トンのミドルクラスのショベルの生産を開始しました。当中期経営計画での生産能力目標を2024年8月末に達成し、既存の本社工場と合わせた生産能力は概ね1.5倍となりました。また、2024年7月にはホイール式油圧ショベル「TB370W」を市場投入し、新製品を加えた豊富な製品ラインナップで、市場シェアの拡大に取り組みました。

当中期経営計画の最終年度となる2025年2月期の連結会計期間(2024年3月1日から2025年2月28日まで)における当社グループの販売台数は、主に欧州市場での建設機械の需要減速により、前連結会計年度を下回りました。

北米では、住宅ローン金利と住宅価格の高止まりにより、新築住宅の着工件数は調整局面が継続していることに加え、関税引き上げの影響が懸念されるなど先行き不透明感が強まりました。当第4四半期で主力製品の販売が落ち込んだ影響により、前連結会計年度比で販売台数は減少しました。欧州では、低調な経済環境が継続し、建設機械のみならず全般において投資意欲が減退しております。クローラーローダーの販売は順調に推移しましたが、国ごとに差はあるもののミニショベル及び油圧ショベルの販売が低調に推移したため、販売台数は前連結会計年度を大きく下回りました。

当連結会計年度の受注高は1,627億5千万円(前連結会計年度比7.9%増)となりました。受注高が前連結会計年度比で増加しておりますが、これは主に当第4四半期において、米国販売子会社のディーラーからの受注が増加したことによるものです。当連結会計年度末の受注残高は、前連結会計年度末に比べ504億7千9百万円減少し、784億1千7百万円となりました。

以上により、当連結会計年度の販売台数は前連結会計年度を下回りましたが、円安影響と製品価格の値上げ等により、売上高は過去最高の2,132億3千万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。利益面におきましては、部品調達価格の上昇や原材料棚卸資産の評価減、2023年9月に稼働開始した青木工場の減価償却費や労務費等の減益要因はあったものの、円安影響、製品価格の値上げ等の増益要因により、営業利益は371億4千2百万円(同5.2%増)となり、経常利益は356億8百万円(同0.4%増)となりました。なお、原材料棚卸資産の評価減につきましては、電池式ショベルの売れ行きが想定を大きく下回っており、販売拡大を見越して先行手配したバッテリー等の関連部品が滞留在庫となったため、簿価を26億5千9百万円切り下げたことによるものです。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用を94億9千5百万円計上したことにより、261億1千3百万円(同0.1%減)となりました。

 

 セグメント別の業績は次のとおりであります。

(日本)

 売上高は671億3千3百万円(前連結会計年度比11.0%減)となり、セグメント利益は343億5百万円(同11.7%増)となりました。

(米国)

 売上高は1,201億3百万円(前連結会計年度比4.3%増)となり、セグメント利益は109億1千1百万円(同0.4%増)となりました。

(英国)

 売上高は145億4千7百万円(前連結会計年度比19.9%増)となり、セグメント利益は4億9千9百万円(同45.2%減)となりました。

(フランス)

 売上高は113億2千5百万円(前連結会計年度比15.6%増)となり、セグメント利益は8億1千6百万円(同16.1%減)となりました。

(中国)

 売上高は1億2千万円(前連結会計年度比6.5%増)となり、セグメント利益は2億9千7百万円(同113.2%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ195億6千5百万円増加し、2,177億1千8百万円となりました。負債合計は前連結会計年度末に比べ1億9千万円増加し、507億1千8百万円となりました。純資産合計は前連結会計年度末に比べ193億7千4百万円増加し、1,670億円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ86億3千4百万円減少し、460億4千7百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は82億8千3百万円(前連結会計年度比163億5千7百万円の減少)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額171億7千1百万円、法人税等の支払額150億7千2百万円等の支出がありましたが、売上債権の減少額18億5千6百万円、税金等調整前当期純利益356億8百万円の収入があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は23億4千8百万円(前連結会計年度比54億2千3百万円の減少)となりました。これは主に、有価証券の償還による収入6億円、投資有価証券の償還による収入3億円がありましたが、有形固定資産の取得による支出32億6千9百万円があったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は145億8千3百万円(前連結会計年度比98億6千8百万円の増加)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出70億円、及び配当金の支払額75億3千9百万円等の支出があったことによるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年3月1日

  至 2025年2月28日)

 前年同期比(%)

日本(百万円)

166,615

△8.2

米国(百万円)

7,470

169.6

中国(百万円)

4,857

20.2

合計(百万円)

178,944

△4.9

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。

 

b. 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

62,546

△11.0

15,604

△22.7

米国

84,811

54.3

58,772

△37.5

英国

16,612

73.8

2,559

417.4

フランス

△1,340

1,481

△89.5

中国

120

6.5

合計

162,750

7.9

78,417

△39.2

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。

2.フランスセグメントでは、過年度受注高の取消しがあったため、受注高がマイナスとなりました。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年3月1日

  至 2025年2月28日)

 前年同期比(%)

日本(百万円)

67,133

△11.0

米国(百万円)

120,103

4.3

英国(百万円)

14,547

19.9

フランス(百万円)

11,325

15.6

中国(百万円)

120

6.5

合計(百万円)

213,230

0.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年3月1日

  至 2024年2月29日)

 当連結会計年度

(自 2024年3月1日

  至 2025年2月28日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

HUPPENKOTHEN GmbH & Co KG

29,865

14.0

27,694

13.0

United Rentals, Inc.

27,721

13.0

27,145

12.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

なお、資料中の将来に関する事項は、米国の関税政策による影響を見込んでおりません。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績の分析

 当社グループの主力市場は米国及び欧州であり、欧米各国における住宅関連工事、生活インフラ整備工事、官民の建設投資に当社製品は使用されております。

 当連結会計年度の販売台数は前連結会計年度を下回りましたが、円安影響と製品価格の値上げ等により、売上高は過去最高の2,132億3千万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。利益面におきましては、部品調達価格の上昇や原材料棚卸資産の評価減、2023年9月に稼働開始した青木工場の減価償却費や労務費等の減益要因はあったものの、円安影響、製品価格の値上げ等の増益要因により、営業利益は371億4千2百万円(同5.2%増)となり、経常利益は356億8百万円(同0.4%増)となりました。なお、原材料棚卸資産の評価減につきましては、電池式ショベルの売れ行きが想定を大きく下回っており、販売拡大を見越して先行手配したバッテリー等の関連部品が滞留在庫となったため、簿価を26億5千9百万円切り下げたことによるものです。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用を94億9千5百万円計上したことにより、261億1千3百万円(同0.1%減)となりました。

 なお、当連結会計年度の販売状況は、クローラーローダーは主力の北米市場で力強さを維持し、欧州でも着実に伸ばしており、販売台数が増加したのに対して、ショベル販売は主力の欧州市場で減速し、北米でも一服感が出ており、販売台数が減少しました。このため、前連結会計年度と比較した当社グループのトータル販売台数は、上期は11.0%、下期は12.6%、通期は11.8%の減少となりました。生産面では、ショベルの生産能力をローダーに振り向けるため、本社工場間の生産機種の再編成を行いました。

 当連結会計年度の受注高は1,627億5千万円(前連結会計年度比7.9%増)となりました。受注高が前連結会計年度比で増加しておりますが、これは主に当第4四半期において、米国販売子会社のディーラーからの受注が増加したことによるものです。当連結会計年度末の受注残高は、前連結会計年度末に比べ504億7千9百万円減少し、784億1千7百万円となりました。

 米国政府による関税・通商政策が世界経済に大きな影響を及ぼしつつあり、米国市場では投資に対して慎重な姿勢が強まっております。このような先行き不透明な状況にあっても、社会インフラを支える企業として、当社グループがなすべきことを着実に推し進め、持続的な成長発展を果たしてまいります。

 

b. 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ195億6千5百万円増加し、2,177億1千8百万円となりました。これは主に、自己株式の取得のための資金を70億円拠出したことにより、現金及び預金が86億9千3百万円減少しましたが、受取手形及び売掛金が10億1千4百万円、棚卸資産が222億3千4百万円、繰延税金資産が38億9千7百万円増加したこと等によるものです。棚卸資産のうち、商品及び製品は205億2千2百万円増加し503億4千3百万円となりました。これは主に、紅海を迂回する海上輸送により物流に要する在庫期間が長期化したこと、来期以降の販売拡大を見込んで米国販売子会社の製品在庫を積み上げたこと、及び円安影響等によるものです。また、原材料及び貯蔵品は、滞留在庫となったバッテリー等電池式ショベルの関連部品の簿価を26億5千9百万円切り下げたこと等により、17億4千8百万円減少し144億7千7百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ1億9千万円減少し、507億1千8百万円となりました。これは主に、製品保証引当金が8億4千6百万円増加しましたが、買掛金が3億5千8百万円、未払法人税等が6億9千1百万円減少したこと等によるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ193億7千4百万円増加し、1,670億円となりました。これは主に、配当金の支払により75億4千3百万円、自己株式の取得により70億円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益により261億1千3百万円増加したこと、及び為替換算調整勘定が76億9千8百万円増加したこと等によるものです。

 

c. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための材料の購入、人件費、製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用です。また、投資資金需要の主なものは、製品の生産能力拡大、製造拠点の生産性及び品質向上、販売拠点の倉庫等の拡充のための設備投資です。

 当社グループの運転資金及び設備投資資金は、自己資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入による資金調達を実施することとしております。

 なお、当連結会計年度は全て自己資金を充当しました。また、当連結会計年度末の借入金残高はございません。

 

d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、3年間(2026年2月期~2028年2月期)の第四次中期経営計画を策定しました。売上高、営業利益、1株当たり当期純利益、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、主に以下の施策に取り組んでおります。

○販売網の拡充とアフターパーツの販売拡大

○生産機種の再編成とクローラーローラー新工場の建設

○電池式ミニショベルのラインナップ拡充

○人的資本への投資

○サステナビリティ経営の推進

 なお、2025年4月に公表した第四次中期経営計画の最終年度(2028年2月期)の数値目標を以下のとおり定めています。

 *資料中の将来に関する事項は、米国の関税政策による影響を見込んでおりません。

 

 

2025年2月期

実績

2028年2月期

数値目標

 北米 売上高

1,200

億円

1,784

億円

  └販売台数増加率

 

 

 

+60

 欧州 売上高

875

億円

1,087

億円

  └販売台数増加率

 

 

 

+30

 アジア・オセアニア 売上高

28

億円

100

億円

 日本・その他地域 売上高

27

億円

29

億円

連結売上高

2,132

億円

3,000

億円

 └このうちアフターパーツ売上高

173

億円

208

億円

営業利益

371

億円

520

億円

 └営業利益率

17.4

17.3

1株当たり当期純利益

552

800

自己資本利益率(ROE)

16.6

※2  17%以上

為替レート

米ドル

※1  152.65

140.00

英ポンド

194.85

177.00

ユーロ

163.74

147.00

人民元

21.13

19.30

※1 2025年2月期の為替レートは、12ヶ月間の期中平均レートを表示しております。

※2 当社は以下を参考に、株主資本コストを10%と認識しており、株主資本コストを上回るROEを堅持したいと考えております。

■アンケート法

機関投資家の皆様へのヒアリングしたところ、10%程度とする方が多い。

■CAPM法

リスクフリーレート(1.1%)+β値(1.33)×市場リスクプレミアム(6%)≒ 9%

■益利回り法(PERの逆数)

当社株式のPERは8倍から9倍で推移 → ゆえに1/8 = 12.5%、1/9 = 11.1%

 

e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(日本)

 日本セグメントは、売上高のほとんどが欧州ディストリビューター向けの販売で占められております。欧州では、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰により住宅需要が低迷しており、建設投資などの非住宅関連の建設工事需要も軟化しております。このような環境下、欧州ディストリビューター向けの販売台数は前連結会計年度を大きく下回り、売上高は671億3千3百万円(前連結会計年度比11.0%減)となりました。セグメント利益は、製品価格の値上げ、及び円安影響等により343億5百万円(同11.7%増)となりました。セグメント資産は、売上高の増加に伴い売掛金が増加したこと、及びパーツセンター新設で固定資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から23億9千2百万円増加の995億1千9百万円となりました。

(米国)

 米国セグメントでは、住宅ローン金利と住宅価格の高止まりにより新築住宅の着工件数は調整局面が継続していることに加え、次期大統領による関税及び通商政策の見極め等により、投資に対して慎重な姿勢が強まりました。このような環境下、製品購入時期を見合わせる動きがあり、製品販売が当第4四半期で落ち込み、前連結会計年度比で販売台数が減少しましたが、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、売上高は1,201億3百万円(前連結会計年度比4.3%増)となり、セグメント利益は109億1千1百万円(同0.4%増)となりました。セグメント資産は、来期以降の販売拡大を見込んで製品在庫を積み上げたことで棚卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から244億6百万円増加の1,005億8百万円となりました。

(英国)

 英国セグメントでは、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰が住宅需要を押し下げておりましたが、インフレ率の低下にともない個人消費に回復の兆しがみられたことや、販売促進のための値下げを実施したことも奏功し、前連結会計年度比で販売台数が増加しました。このような環境下、円安影響等もあり、売上高は145億4千7百万円(前連結会計年度比19.9%増)となり、値下げを実施したこと等により、セグメント利益は4億9千9百万円(同45.2%減)となりました。セグメント資産は、売掛金が増加したこと等により、前連結会計年度末から6億6千万円増加の116億2千6百万円となりました。

(フランス)

 フランスセグメントでは、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰が住宅需要を押し下げていることに加え、低調な経済環境の継続により建設機械のみならず全般において投資意欲が減退しております。このような環境下、販売促進のための値引きにより製品の販売台数は前連結会計年度を上回ったことに加え、円安影響等もあり、売上高は113億2千5百万円(前連結会計年度比15.6%増)となり、本社からの仕切り価格の値上げにより、セグメント利益は8億1千6百万円(同16.1%減)となりました。セグメント資産は、棚卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から25億2千8百万円増加の108億9千5百万円となりました。

(中国)

 中国セグメントは、日本セグメントに向けた建設機械の部品の製造・販売が事業の大半であり、外部顧客への売上高は1億2千万円(前連結会計年度比6.5%増)となり、セグメント利益は2億9千7百万円(同113.2%増)となりました。セグメント資産は、売掛金が減少したものの、現金預金が増加したこと等により、前連結会計年度末から9千2百万円増加の35億6千9百万円となりました。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

① 販売店契約

会社名

相手方

契約品目

契約期間

名称

国名

当社

HUPPENKOTHEN GmbH & Co KG

オーストリア

建設機械

当事者の一方が契約解除の通知を行わない限り継続

 

 

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、ミニショベル、油圧ショベル、クローラーローダー等の建設機械について、新技術・新製品の開発と既存製品の改良等の研究開発活動を行っております。

当連結会計年度の主な研究開発活動としましては、建設機械の設計のほか、建設機械の電動化に関する研究や、当社電池式ミニショベルに遠隔操作機能を搭載する開発等に取り組みました。

成果については、2024年5月の国内展示会「CSPI-EXPO2024」に「TB35e」(ラジコン機能付きの電池式ミニショベル)を出展しました。2024年7月にホイール式油圧ショベル「TB370W」の生産・販売を開始しました。

これら当社グループの研究開発活動は、その全てを当社(日本セグメント)が行っており、当連結会計年度における研究開発費は、2,158百万円であります。