文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年2月28日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、国や地域を超えた世界中の人々のために企業活動を行い、すべては人々のために『For the People』を経営理念としています。理念を具現化するための事業活動指針である6つの価値観「うまい、やすい、はやい」「客数増加」「オリジナリティ」「健全性」「人材重視」「挑戦と革新」を共有・実践していくことで、株主、お客様および従業員などステークホルダーの満足度向上や信頼構築に努めることを基軸として経営展開を図っています。
当社グループは、現在のビジネスモデルに代えて長期的に運用できる「新しいビジネスモデル」の構築を課題としています。既存の外食産業の範疇を超えるような市場創造・価値提供を行うモデル創りは、すでに素材開発や商品の提供方法の改善など、従来とは一線を画した踏み込みを開始しています。今後はその踏み込みを一層強めていくと同時に、さらに突出した「革新」による飛躍を図っていきます。
「飲食業の再定義」を実現していくため、よりスピーディーな意思決定が可能となるグループ経営体制への見直しを行っていきます。グループ本部の機能発揮を最大化し経営効率を高めて、海外を含めたグループ全事業への能動的な貢献・関与・統制を強化していきます。また、グループ間での人事交流の活発化およびグループ商品本部による仕入れの共通化も引き続き行っています。海外における既存エリアにおいては、一層強固な経営体制を確立し、今後のグローバル展開を一層加速していきます。
また、「飲食業の再定義」の実現のため、国内ではダイバーシティ(人材構成の多様化)の推進も引き続き行っていきます。
当社グループでは、「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードとし、これまでの飲食業になかった新しい価値創造にチャレンジしています。
「ひと」に関わる取組みでは、「ひと」を活かすことで生まれる価値を追求し、その価値をお客様に提供していきます。また、「ひと」に関わる取組みを加速していくにあたり、25年度より役割、機能、教育環境を充実させグループ会社間で横断した人事マネジメントを行う仕組みを整備するために、グループ人事本部を設立し、その中に人事推進部、人材戦略部、採用戦略部を配置しました。「健康」に関しては、従業員の心と体の健康を経営の柱とする「ウェルネス経営」の一環として、BLS(ベーシックライフサポート)研修・命のバトンプロジェクトを推進し、また素材開発部とグループ人事本部で企画をした健康イベントを開催しました。今後のメニュー開発は、「健康的」から「健康」そのものの追求へ取組みを深化させていきます。
最後に「テクノロジー」に関わる取組みでは、複雑なオペレーションを簡便化・効率化する設備や機器を導入し、職場環境の改善を図ることで、労働力の確保と生産性の向上につなげていきます。経営環境の激しい変化に機動的かつ能動的に対処しつつ、今後も継続してデジタル技術の効果的な活用を推進することでデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現し、既存のビジネスモデルの変革につなげていきます。
④ グループ中期経営計画
当社グループを取り巻く環境は、急激なインフレの進行に伴う原材料価格の高騰、地政学的リスクの顕在化、地球温暖化による気候変動など、以前にも増して大きく変容しています。かかる中、生活インフラとして世の中に「食」の楽しさと豊かさをお届けしているという考えのもと、2026年2月期から2030年2月期までの5年間を期間とした中期経営計画(新中期経営計画)を策定しました。
2023年2月期から2025年2月期までの3年間を期間とした中期経営計画(前中期経営計画)期間において収益性が回復してきたことを受け、新中期経営計画期間では、さらなる成長に投資を振り向けていきます。既存事業の維持だけでなく、新規出店およびDXを推し進めます。国内事業は「業態進化と新たな付加価値創造」、海外事業は「既存エリア最適化と新規マーケット進出」に取り組んでいきます。ラーメン事業は「第3の事業ドメインへ」に向けて積極的にM&Aを行っていきます。
新中期経営計画の中では「成長を伴う事業収益向上」と「資本効率の向上」を特に重要な課題として位置付けています。財務規律の堅持と投資効率改善を前提に、既存ブランドの進化に向け成長投資を推進、加えて、事業ポートフォリオの拡充に向けて積極的なインオーガニック投資により、企業価値の向上を図ります。
⑤ 人的資本価値の最大化に向けた取組み
当社グループは、「サステナビリティ基本方針」を策定するにあたり、5項目のマテリアリティ(重要課題)の内容を明確化する上で何を大切にすべきか、取締役会でも議論を重ね、当社グループは「For the People」を経営理念に掲げる企業であり、「ひと」に関するテーマを最も重視すべきであると捉えています。
おいしく豊かな食事を支えるサービスは、「ひと」にしかできない価値提供であり、また「ひと」が持つ多様性や個性を尊重し、その活躍と成長を促すことは、企業の社会的責任であると考えます。当社グループにとって「ひと」による価値づくりこそが競争優位性の源泉であり、社会に存続していくための条件なのです。
今後は、この「ひと」に関するテーマを中心に、サステナビリティ基本方針およびマテリアリティが示す方向性と考え方を全社で共有し、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進していきます。
定量情報
※1 吉野家ホールディングス、国内吉野家、はなまるの3社実績
※2 男性賃金を100としたときの女性賃金の割合
2025年2月期においては、様々なコスト上昇の影響を受け、売上高の伸長に伴う粗利益高の増加やコスト低減の取組みを行いましたが、本業の儲けを示す営業利益は73億6百万円と、前期を6億67百万円下回りました。コスト上昇の主な要因は、原材料価格の高騰および人件費の上昇です。当社グループは、コロナ禍を機会に収益の構造変化を実現していますが、継続して経費コントロールの強化に取り組むとともに、財務の健全性の回復に向けた借入金の返済や効率的な資金管理を行いました。一方、これらの自社努力だけではコスト上昇分の全てを吸収することはできず、グループの各事業において商品の価格改定を行うなど、状況に柔軟かつ適切に対応しました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方は、次の通りです。
尚、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
当社グループは持続可能な社会に向け、取締役会による監督のもと、意思決定機関として2024年3月にサステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、代表取締役社長を委員長、取締役を副委員長、全執行役員をメンバーとし、マテリアリティおよびKPIは取締役会の監督のもとサステナビリティ委員会で決定されました。サステナビリティに関わる全社方針や目標の策定、KPIの定期的な見直し、サステナビリティ推進体制の構築や整備など、継続的に実施しています。なお、グループ全体におけるサステナビリティ推進状況およびKPIの進捗状況を定期的に取締役会へ報告を行っています。
当社グループは、吉野家ホールディングスサステナビリティの考え方に基づき、近年、気候変動や国家間の紛争、感染症などの影響を大きく受けている農畜水産物生産を起点とする「食」のサプライチェーンにおいて、安定供給をいかに実現するか、そして、気候変動の緩和や環境保全等の社会全体の課題解決に取り組むことは重要な責務であると認識しています。重点的に取り組むマテリアリティとして「お取引先様との共創による持続可能なサプライチェーンの構築」や「環境に配慮した事業活動による気候変動対応」を特定し、お取引先様とともに、環境負荷の低減や不法労働・人権侵害など社会問題に対応し、環境・社会に配慮した責任ある調達を行っています。また、フードロス削減や環境保全活動など環境負荷を低減する各種取組みを実行しています。
気候変動に伴い、当社グループが直面するリスクと機会についても検討を行いました。気候変動に伴うリスクと機会には、温室効果ガス排出に関する法規制の強化等の低炭素経済社会への「移行」に起因するものと気象災害の激甚化等による「物理的」変化に起因するものが考えられます。当社グループの事業領域における取り組むべき「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を下記に特定しています。
また、当社グループは、「ダイバーシティ& インクルージョンを実現し『ひと』の成長と活躍を推進」を5つのマテリティの最初に掲げています。日常食を提供する当社グループにとって、従業員が仕事を通じて感じる喜びややりがいは、お客様のおいしく豊かな食事を支えるサービスの源泉であり、「ひと」にしか成し得ない価値があります。「ひと」の多様性や個性を尊重し従業員の活躍と成長を促すことは、拡がり変わりゆく顧客ニーズを捉えた価値を生み出し続けることにつながり、企業としての持続的成長と社会への価値還元をもたらしていきます。
<人材育成方針>
当社グループでは、全ての社員を幹部候補とみなし、公平な教育機会を提供しています。成長のための挑戦機会の提供や専門教育、配置転換を行い、成長と学びに必要な投資と環境整備を行っています。
<社内環境整備方針>
当社グループでは、全ての従業員が心身ともに健康で、安全な環境で働くことができるように、ダイバーシティ&インクルージョンの実践、ライフワークバランスの推進、ウェルネス経営の推進に努めています。
<人的資本の最大化に向けた3つの取組み方針>
① ダイバーシティ&インクルージョンの実践
「ひと」の多様性や個性を尊重し、「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、すべての従業員が互いに信頼関係を育みつつ持てる力を発揮し、いきいきと活躍できる会社を目指します。「個」から生まれる知の多様性をかけ合わせることで、変化への対応力=レジリエンスを高め、新たな価値=イノベーションを創出し、お客様と社会の課題を解決し続けます。
② ライフワークバランスの推進
仕事以外の生活の充実を促す休暇制度、従業員同士のつながりや関係性を良好にするためのコミュニケーション施策を導入、実施するとともに、社員の心と体の健康を経営の柱の一つに位置付ける「ウェルネス経営」を推進しています。
③ 人材育成・キャリア支援
従業員一人ひとりの十分な能力発揮と、長期的な成長促進に主眼を置き、人材教育・キャリア支援への積極投資による「ひと」の育成を継続しています。
<知的財産>
知的財産については、継続的な事業戦略を推進していく上で、当社グループのブランドの商標管理は重要であると認識し専任部署が管理をしており、知的財産の価値向上を図っています。
サステナビリティ委員会において、取締役会で特定した「マテリアリティ」に沿う取組活動および事業を持続していく上での「リスク」と「機会」の取組事項の進捗の確認、評価を行い、適宜取締役会へ報告を行っています。
さらに、マテリアリティに関するリスクと機会については、サステナビリティ推進委員会において識別・評価を行い、各委員を通じて主管担当部門が戦略的に取組みを推進していきます。
当社グループは、2022年2月に5つのマテリアリティを特定した後、取締役およびグループ役員・部門長を交え、継続的にマテリアリティに関する議論・検討を行っています。2025年3月に「グローバルビジネスの展開による地域社会の発展への貢献」を「食を中心とした事業の展開による地域社会への貢献」にマテリアリティを変更しました。合わせて目標を「全国都道府県にネットワークを構築」から「提供食数」に変更しました。
<5つのマテリアリティの指標及び目標>
当社グループの経営成績、財務状況および株価等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、下記事項は当社グループが事業を継続する上で、必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要度が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。
(1)原材料の調達および価格高騰に伴うリスク
当社グループ各社が使用する食材は多岐にわたるため、新たな原料産地の開拓や分散調達等へのリスクヘッジに継続的に努めていきますが、疾病の発生や、天候不順、自然災害の発生、紛争による輸出入の停止、新型コロナウイルス感染症等の感染症の影響により、必要量の原材料の安定供給が困難な状況が生じる可能性があります。また、飼料価格や市場価格、為替相場の変動等により仕入価格が高騰し、売上原価が上昇することにより当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
(2)人材確保および労務関連
当社グループでは、多くの正社員、嘱託社員、パートタイムおよびアルバイトの従業員を雇用しています。その多くが店舗、工場等での業務に従事しています。今後において、賃金の上昇、求人費用の増加、日本国内の労働力需要の増加に伴い当社グループの従業員の確保が困難となった場合、必要な従業員数の確保のための人件費の増加、または出店計画の見直し、一部店舗の一時的な営業休止等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、店舗におけるパートタイムおよびアルバイトの一部は外国人労働者に依存しています。今後の人口態様の変化により、適正な労働力を確保できない可能性があるほか、各種労働法令や入管法の改正等、あるいは厚生年金保険等、パートタイムおよびアルバイト従業員の処遇に関連した法改正が行われた場合、人件費負担が増加する可能性があるため、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
(3)吉野家事業への依存
当社グループの当該連結会計年度における売上高に占める吉野家セグメントの売上高の割合は67.2%となっており、今後も吉野家を当社グループの主力セグメントとして出店・改装等を進めていきますが、吉野家セグメントに対する依存から脱却すべく中核事業の育成に注力していきます。しかしながら、当社グループが吉野家事業に引き続き依存する割合は高く、国内の吉野家の業績の低迷、消費者の嗜好の変化、原材料の価格高騰や調達状況の悪化等が生じた場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。
(4)食品の安全管理
当社グループの中心事業である飲食店および外販(通販)事業においては、商品の安全性確保が極めて重要となります。当社グループでは、専門部門としてグループ品質保証室を設置し、その指導のもとに安全な食品をお客様に提供するため、調達・製造から店舗調理まで一貫した衛生管理を徹底しています。また、商品の改廃に合わせてアレルゲン情報や原産地情報を更新する等、適切な情報開示が可能な状態を構築していますが、当社グループを原因とする集団食中毒等の衛生問題や表示ミス等による商品事故が発生した場合、お客様に多大なご迷惑をおかけするばかりか、ブランドイメージや社会的信用の失墜、また損害賠償金の支払い等によって、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
(5)消費者の嗜好の変化および競合リスク
当社グループの業績は、景気動向、特に個人の消費動向に大きく影響を受けます。外食産業全体のマーケット規模が停滞しているなか、コンビニエンスストアによる弁当、惣菜類の販売といった中食市場に加え、デリバリービジネスの飛躍的拡大等、新しい生活様式に即した消費者ニーズに対する販売チャネルの多様化により、主要顧客層にも変動がみられ、競争は一層熾烈化しています。当社グループでは、新業態の開発、商品設計の変更、テイクアウト需要への対応等、引き続きグループ各社の出店等による成長や海外展開等により、売上高を向上させる取組を推進していきますが、今後、更に競合が熾烈化した場合に、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6)自然災害
当社グループは、全国に店舗や工場等を配置しているため、大規模な地震、風水害、火災による事故等が発生し、店舗、工場等の施設や情報システムに損害が生じ、営業活動や仕入、物流に支障が生じた場合、あるいはお客様、従業員に人的被害があった場合等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは事業継続計画の策定、防災訓練の実施、社員安否確認システムの導入等、有事の対応マニュアルを整備していますが、これらの自然災害等が発生した場合には、正常な事業活動への復旧までの間、一定程度の時間を要する可能性があります。また感染症の感染拡大等による顧客や従業員の確保不足等の影響で営業活動の継続が困難となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7)法的規制
当社グループでは、会社法、金融商品取引法、法人税法等の一般的な法令に加え、食品衛生、店舗設備、労働、環境等店舗の営業に関わる各種法規制や制度の制限を受けています。当社はリスク管理規程に基づきリスク管理委員会を設置し、当社グループ内に影響のある法制度の制改定に対する対応策を共有・実施していますが、法制度の制改定に対して不備や違反が生じた場合には、当社グループの信用に影響を与えるとともに、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、当社グループは国内外を含め、フランチャイズ契約による事業活動も展開しており、フランチャイジーによるこれらの不備や違反が発生した場合についても、当社グループの信用棄損につながる恐れがあります。加えて、これらの法的規制が強化された場合、それに対応するための新たな費用が増加することになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8)減損会計の適用
当社グループは、現時点で合理的と考えられる業績回復の想定等に基づき店舗資産の評価を実施していますが、回復に要する期間や業績の見通し等の想定に大きな影響を与える事象が発生した場合には、追加の店舗資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当連結会計年度におきましては、10億36百万円の減損損失を計上しています。
(9)不動産の賃借
当社グループは、事務所や大部分の店舗の土地建物を賃借しています。賃借期間は賃貸人との合意により更新可能ですが、定期建物賃貸借契約の場合には、期間満了をもって再契約を拒否される可能性があるほか、普通賃貸借契約であっても賃貸人側の事情により賃貸借契約を解約される可能性や賃料増額請求を申入れされる可能性があります。また、当社グループが賃借している建物の経年劣化や土地収用等により、明け渡しをせざるを得ない物件が生じる可能性もあり、業績に影響を与える可能性があります。なお、賃貸人に対して当該事業年度末時点で総額113億31百万円の保証金を差し入れていますが、このうちの一部が倒産その他の賃貸人に生じた事由により回収できなくなるリスクがあります。
(10)情報管理
当社グループは、サプライチェーンの管理業務、店舗からの発注、店舗での注文や決裁等において情報通信システムに大きく依存しています。当社グループの情報システムにおいては、プログラムの不具合等やコンピューターウィルス・サイバー攻撃などに対して、適切に防止策を実施しておりリスク低減に努めていますが、情報通信システムが悪意ある攻撃などにより障害が発生した場合には、効率的な運営や消費者に対する商品の適時の提供が阻害され可能性や社会的信用の失墜により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(11)個人情報の漏洩
当社グループ各社において、お客様、従業員ならびに株主の皆様に関する個人情報につきましては、プライバシーポリシーを開示の上、主管部門にて適正に管理し、個人情報の漏洩防止に努めていますが、不正アクセス等による情報の外部への漏洩や悪用等の可能性を完全に排除することは困難であり、これらの個人情報が漏洩した場合、当社グループのブランドイメージおよび社会的信用に影響を及ぼす可能性や、対応費用の発生、損害賠償金の支払い等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(12)インターネット等による風評被害
インターネット等における当社グループおよびその関係者に関連する不適切な書き込みや画像等の公開によって風評被害や食の安全を毀損するような不安を生じさせることとなった場合、その内容の真偽にかかわらず、当社グループの事業、業績、ブランドイメージ及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの競合他社等に対する風評被害等であっても、外食市場全体の社会的評価や食の安全に対する信用が下落するものであれば、当社グループの事業、業績、ブランドイメージおよび社会的信用にも影響を与える可能性があります。
(13)気候変動
世界的規模でエネルギー使用の合理化や地球温暖化対策のための法規制等、気候変動抑制のための動きが強まっています。当社グループにおいても、気候変動の重要性を認識しており、気候変動の移行リスク(地球温暖化対策の環境規制等によって調達やエネルギーコストが上昇するリスク、当社グループが環境に配慮していないとみなされて当社グループの社会的信用が低下するリスク等)および物理的リスク(台風による工場や物流の稼働停止、店舗休業等の急性的リスクや、平均気温の上昇や気象パターンの変化による食材の品質低下や価格高騰等の慢性的リスク)は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(14)海外展開におけるカントリーリスク
当社グループは、アメリカ、中国、東南アジア等の海外市場において、直営店の運営、フランチャイズの展開等を行っています。当社の海外子会社の展開国における政情、経済、法規制、自然災害等の予測できない変動リスクや、ビジネス慣習等の同国特有なカントリーリスクや同国の法改正による事業活動の制限により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、類似商標による権利侵害をされることにより、当社グループのブランドイメージを低下させる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、所得・雇用環境の改善が続き、企業収益が緩やかに改善する中、内需の柱である個人消費は物価上昇の影響を受けて一部に足踏みが残るものの、設備投資と共に持ち直しの動きがみられています。その一方で、ウクライナ情勢の長期化やアメリカの新政権移行などの世界情勢の動きに加え、円安によるエネルギー資源や原材料価格の高騰などにより、依然として景気の先行きは不透明な状況です。外食業界においては、経済活動の正常化による人流増加に加え、インバウンドの増加も追い風となり、回復基調が継続しています。しかし、米をはじめとする原材料価格高騰に加えて、最低賃金上昇やベースアップによる人件費増加など、厳しい経営環境に直面しています。
既存事業の業態進化の取組みとして、吉野家は既存店舗の積極的なクッキング&コンフォートへの改装を継続して行っており、はなまるは「つくりたて」を実現させるべくテーブルオーダーの検証を開始しています。また、「吉野家」「はなまる」におけるクレジットカード端末の導入など、店舗運営のシステム化を積極的に進めています。海外においては、アメリカ、中国ともに現地経済の影響を受けていますが、価格戦略、メニュー構成の見直しなどに継続して取り組んでいます。これらの施策の効果により全社既存店売上高は、前年同期比5.7%増となりました。内訳は吉野家7.4%増、はなまる8.1%増、海外4.6%減(現地通貨ベース)です。
成長事業の強化の取組みとして、今後の事業ポートフォリオ戦略においてラーメン事業を次なる柱と位置付けています。ラーメン店向けの麺、スープ、タレなどの商材の開発、製造、販売を行っている宝産業株式会社に加えて、風味と食感を追求するため北海道産小麦を使用したこだわりの「自家製麺」と高純度の鶏スープを使った「鶏白湯スープ」が幅広い顧客層から支持を得ているキラメキノ未来株式会社の株式を取得し子会社化しました。今後はラーメン事業においてシナジーを活かして、規模拡大に邁進していきます。
サステナビリティの取組みとして、10月に当社東京工場が「食材加工時に廃棄される規格外の玉ねぎ端材のアップサイクル、ならびに持続可能なスキーム構築」について、環境省および消費者庁が実施している「令和6年度食品ロス削減推進表彰」で「環境事務次官賞」を受賞しました。また、誰もが一生涯、食の楽しみを失うことがない社会の実現を目指して、咀嚼・嚥下機能が低下した方を対象とした「吉野家のやさしいごはん」を展開しており、これを取り入れたデイサービス施設などで開催する介護レクリエーション「吉野家牛丼レクリエーション」が、第54回食品産業技術功労賞マーケティング部門を受賞しました。さらに、生活習慣病を気にかける消費者の食の選択肢を広げることを目指し、「新規高機能牛丼」の産学連携共同研究を太陽化学株式会社、京都府立医科大学と行っています。12月には、吉野家が提供するスマートミール®認証取得商品「牛丼ON野菜」が、厚生労働省およびスポーツ庁が主催する「第13回健康寿命をのばそう!アワード」において生活習慣病予防分野「厚生労働省 健康・生活衛生局長優良賞」を受賞しました。2月には、吉野家公式通販ショップにおいて、防災意識の高まりに合わせて缶詰やレトルトなどの防災食をセール価格で販売しました。
店舗出店については、国内75店、海外97店を出店した結果、当社グループの店舗数は2,821店舗となりました。以上の結果により、売上高は2,049億83百万円(前年同期比9.3%増)、営業利益は73億6百万円(前年同期比8.4%減)、経常利益は79億95百万円(前年同期比7.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は38億3百万円(前年同期比32.1%減)となりました。
セグメント概況につきましては、次のとおりです。
[吉野家]
店舗数は、52店舗の出店、22店舗の閉店により1,259店舗となりました。当連結会計年度の主な商品施策として「親子丼」「牛皿麦とろ御膳、牛麦とろ丼」「牛たん・牛皿御膳」「オーストリッチ丼」「牛すき鍋膳、牛カレー鍋膳」「牛魯珈カレー、肉だく牛魯珈カレー」等を販売し、主な販売施策として「吉野家×星のカービィ」コラボキャンペーンに加え、「お子様割」「秋の牛丼祭(100円引き)」「牛すき祭」「から揚げ祭(10%引)」「あすトククーポン」「牛すき鍋膳テイクアウトキャンペーン」「超特盛祭(100円引)」等のキャンペーンを行いました。特に13年振りに実施した「秋の牛丼祭」は、幅広い層のお客様に好評でお客様の店舗体験の向上につながりました。また、原材料価格高騰および人件費増加の影響により7月に価格改定を行いました。
以上の結果により、当連結会計年度におけるセグメント売上高は1,378億4百万円(前年同期比9.0%増)となり、セグメント利益は人材の確保と定着を目的とした先行的な賃上げや店舗の時給改定など人件費を中心としたコスト上昇の影響により77億90百万円(前年同期比3.0%減)となりました。転換を進めている新サービスモデルの店舗数は当連結会計年度において412店舗から540店舗と128店舗増加し、テイクアウト・デリバリー専門店は同37店舗から44店舗と7店舗増加しました。
[はなまる]
店舗数は、12店舗の出店、15店舗の閉店により415店舗となりました。当連結会計年度の商品施策として「柴漬鬼おろしぶっかけ、柚子鬼おろしぶっかけ」「白ごま担々、サラダ担々、海老担々」「生姜鶏ねぎ塩うどん、ゆず生姜鶏ねぎ塩うどん」「ホタテ味噌バター、豚肉味噌バター」等を販売し、販売施策として毎年ご好評をいただいている春・秋の「天ぷら定期券」と初実施となった夏・冬の「あすトククーポン」などのキャンペーンを行いました。また、原材料価格高騰および人件費増加の影響により1月に価格改定を行い、付加価値を感じていただくため、ご要望の多かった青ネギのフリートッピングを同時に開始しました。
2025年1月1日に本社を高松市に移転し、同月に「おいでまい!さぬきプロジェクト」を始動しました。香川県での地産地消の促進をはじめ、県産品を使った商品開発や販売により、香川県の魅力を全国に発信する取組みに着手しています。
以上の結果により、当連結会計年度におけるセグメント売上高は308億52百万円(前年同期比5.5%増)となりました。セグメント利益は、人件費を中心としたコスト上昇はあるものの増収効果により20億5百万円(前年同期比16.3%増)となりました。
[海外]
店舗数は、97店舗の出店、93店舗の閉店により998店舗となりました。エリア別概況は次のとおりです。アメリカは既存店売上高前年同期比3.8%減、中国は同6.8%減、その他アセアン地区は同3.0%減、海外合計は同4.6%減(現地通貨ベース)となりました。米国(カリフォルニア州)の人件費上昇や中国における経済不況により外食産業で大きく影響を受けています。このような状況に対して米国、中国では価格戦略やメニュー構成の見直しに加え、販売施策を強化し打開を図っています。
以上の結果、当連結会計年度におけるセグメント売上高は為替などの影響により278億75百万円(前年同期比2.9%増)となりました。セグメント利益は、人件費を中心としたコスト上昇などの影響により12億14百万円(前年同期比47.0%減)となりました。なお、海外は暦年決算のため1月から12月の実績を取り込んでいます。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、次のとおりです。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ61億76百万円増加し1,191億13百万円となりました。主な内訳は、建物及び構築物(純額)の増加55億55百万円、土地の増加17億70百万円、原材料及び貯蔵品の減少6億38百万円、投資不動産(純額)の減少5億20百万円です。
負債総額は前連結会計年度末に比べ22億12百万円増加し542億99百万円となりました。主な内訳は、支払手形及び買掛金の増加16億99百万円、短期借入金の増加23億94百万円、資産除去債務(長期)の増加4億5百万円、長期借入金の減少25億20百万円です。
純資産は前連結会計年度末に比べ39億63百万円増加し648億13百万円となり、自己資本比率は0.5%増加し53.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、換算差額を加え、前連結会計年度末より67億50百万円減少して195億24百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、133億4百万円の収入(前年同期は200億71百万円の収入)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益63億64百万円、減価償却費68億30百万円等です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、143億98百万円の支出(前年同期は83億7百万円の支出)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出133億45百万円等です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、59億73百万円の支出(前年同期は89億57百万円の支出)となりました。主な内訳は、長期借入による収入30億円、長期借入金の返済による支出77億16百万円、配当金の支払額12億89百万円等です。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 海外は生産実績がないため、記載していません。
(ⅱ) 受注実績
該当事項はありません。
(ⅲ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しています。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高は前年同期に比べて175億10百万円増加し、2,049億83百万円(前年同期比9.3%増)となりました。主な要因は、既存店売上高が伸長したことおよび価格改定に加え、店舗数が増加したことです。
営業利益は前年同期に比べて6億67百万円減少し、73億6百万円(前年同期比8.4%減)となりました。主な要因は、原材料価格高騰に加えて最低賃金上昇やベースアップによる人件費が増加したことです。
経常利益は前年同期に比べて6億11百万円減少し、79億95百万円(前年同期比7.1%減)となりました。主な要因は、為替相場の急激な変動により外貨建て取引において為替差損を1億75百万円計上したことです。
特別利益は、主に前期に固定資産売却益4億8百万円および受取補償金5億18百万円計上したことの反動により、前年同期に比べて7億24百万円減少し2億2百万円となりました。
特別損失は、主に閉店決定や店舗資産の収益力の低下に伴う減損損失10億36百万円、中国組織再編に伴う評価損を含む契約解約損5億62百万円などを計上した結果、前年同期に比べて5億59百万円増加し18億32百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税24億88百万円、法人税等調整額△55百万円、非支配株主に帰属する当期純利益1億29百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は38億3百万円となりました(前年同期比32.1%減)。
当社グループの主な資金需要は、将来の事業展開や経営基盤強化のための新規出店や既存店舗の改装および生産設備の増強等です。設備投資資金は、自己資金および長期借入金により、短期運転資金については、自己資金および短期借入金により調達しています。
国内連結子会社における余剰資金を当社へ集中、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図り、現預金残高と有利子負債残高を一定範囲にコントロールし、経営環境の変化に対応するための資金の流動性を確保しながら資金管理を行っています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たりまして、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(国内子会社)
(1) 会社名 ㈱吉野家
吉野家フランチャイズ・チェーン加盟契約書
本部の許諾による牛丼チェーン経営のためのフランチャイズ契約関係を形成すること。
加盟者の店舗開店日より5年間
契約期間満了の際は自動的に契約が終了し、継続して契約を更新する場合は、新たに契約を締結する。
本部は、加盟者との契約が存続する間は、店舗において登録商標およびマークを使用することを許可する。また、加盟者に対し店舗のカラー、デザイン、レイアウト、看板並びに商品化方法およびサービス方法など、フランチャイズ・システムのノウハウを提供する。
(2) 会社名 ㈱はなまる
まんまるはなまるうどんフランチャイズチェーン加盟契約書
本部の承諾による、まんまるはなまるうどん経営のためのフランチャイズ契約関係を形成すること。
加盟契約締結の日より5年間
契約期間満了の3ヶ月前に双方協議の上決定する。継続して契約を更新する場合は、新たに契約を締結する。
本部は、加盟者との契約が存続する間は、店舗において登録商標およびマークを使用することを許可する。また、加盟者に対し店舗のカラー、デザイン、レイアウト、看板並びに商品化方法およびサービス方法など、フランチャイズ・システムのノウハウを提供する。
当連結会計年度の研究開発費の総額は181百万円であり、商品の価値向上、店舗生産性の向上に貢献する機器開発、健康的な食生活に貢献する商品開発等の費用を計上しています。