当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
近鉄百貨店グループは、
1.創造と革新の姿勢をもって、積極果敢に目標と取組む
2.顧客第一の精神に徹し、まごころと感謝の念をもって奉仕する
3.よりよき生活の提案者を目指し、魅力ある店づくりに努める
4.相互信頼を基盤として、取引先との共存共栄をはかる
5.理解と協調にもとづく人間関係を樹立し、働きがいのある職場環境をつくる
ことを経営方針としております。そして、お客様の生活のさまざまな場面で、より素敵な暮らしづくりを応援し、幅広い品揃えときめ細かなサービスの提供を通じて、すべてのステークホルダーの皆様の期待に応えるとともに、地域の発展に貢献する企業であり続けることを目指しております。
(2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題並びに目標とする経営指標
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末に当社グループが判断したものであります。
経営者が認識している今後の見通しにつきましては、持続的な賃上げや雇用情勢の改善を背景に景気の緩やかな回復が続くものと期待される一方、海外における経済政策の不確実性に加え、国内での物価高騰などの影響により、景気の先行きは依然として予断を許さない状況が続くものと思われます。また、環境問題をはじめとする社会問題がより拡大、複雑化するなかで、地域とそこに暮らす人々に対する企業の社会的責任はますます大きくなり、「地域社会の発展」と「持続可能な社会の実現」に対する取組みを推進していくことは、企業として目指すべき姿であります。
このような状況の下、当社グループは本年4月に策定しました新しい中期経営計画(2025~2028年度)に基づき、「新たな価値創造事業会社」である「百“価”店」へと生まれ変わるべく、あべのハルカス近鉄本店及び外商を核として既存事業をより強固にするとともに、事業環境の変化に対応するための基盤強化に向けた諸施策を遂行します。また、2021年4月に策定したESG方針に基づき、経営戦略の柱としてESG推進に取り組み、社会課題の解決と地域社会及び企業の持続的成長を目指します。
なお、「中期経営計画(2025~2028年度)」は以下の内容を骨子としております。
・長期ビジョン ~2036年 創業100周年に向けて~
1.環境認識
今後、当社が直面するのは、非連続で不確実性の高い事業環境です。日本全体が生産年齢人口の減少と超高齢化のフェーズに入り、労働市場・消費市場の減少が進行、加えてインフレや金利上昇、消費の二極化、デジタル化を含めた技術の進化など外部環境は急激に変化しております。当社では課題への対応を行いながら、この変化を事業機会と捉え、当社の持つ資産や地域で培ってきた信頼をベースに、企業としてのさらなる成長を目指します。
2.長期ビジョン
当社が常に立ち戻る原点であるミッションは、経営理念である「市民生活の向上と地域社会の発展に貢献し続ける」ことです。このミッションの基、前・中期経営計画で定めた長期に目指す姿「くらしを豊かにするプラットフォーマー」へとさらなる進化を図るため、今回の中期経営計画では「新たな価値創造事業会社=百“価”店へと生まれ変わる」ことを掲げています。
くらしのプラットフォームとは、近鉄商圏に「暮らす」「働く」「訪れる」人々に向けて、多種多様な「価値」を提供する“場”を意味します。これまでの百貨店事業で培った「店頭での接客力」「外商というお客さまに寄り添う人的サービス」「デジタル対応」といった様々な顧客接点を活かし、百貨店内の事業のみならず近鉄グループ力も活かした様々なモノ・コト・サービスを提供する企業を目指します。
2036年に大軌百貨店開業から数えて創業 100 周年を迎える当社は、これまでも様々なチャレンジをし続け、常に進化してまいりました。近鉄グループを代表する小売業として今後もこの進化への歩みを止めず、「豊かなくらしと価値ある生活文化」を創造・提供し、商圏顧客のLTV(顧客生涯価値)最大化を目指します。
3.サステナビリティ
当社は鉄道沿線を主要商圏として事業を展開しており、地域とともに成長・発展する地域共創型百貨店として、地域への社会貢献を推進しております。「地域に寄り添い、地域と活きる」を方針に、「地域共創の実現」、地球環境への貢献」、「個人と企業の相互の絆と成長」を重点取組みと掲げ、ESG経営を推進します。
当社の強みである「地域共創の実現」に向けては、地域産品を紹介・販売する「路(みち)シリーズ」の展開、自社農場での近鉄いちご「はるかすまいる」の生産・販売、2024 年から新たにマンゴーの生産、市民活動団体や個人ボランティアとの連携によるあべのハルカス近鉄本店での「縁活(エンカツ)」プロジェクトなどを実施してまいりました。
また、「地球環境への貢献」に向けては店舗を横断したプロジェクト活動を実施、「個人と企業の相互の絆と成長」に向けては柔軟な働き方への環境整備に加え、2025年3月にはカスタマーハラスメントに対する基本方針を策定するなど、安心して働ける職場環境づくりにも力を入れております。
・「中期経営計画(2025~2028年度)」の概要
「中期経営計画」の最終年度である2028年度の連結経営目標数値は以下のとおりです。
①連結営業利益 65億円
②ROE 9.0%以上
※新リース会計基準適用前
中期ビジョン
新たな価値創造事業会社 = 百“価”店へと生まれ変わる
あべのハルカス近鉄本店・外商を核に、既存事業をより強固にしながら、事業環境の変化に対応した基盤強化により、さらなる成長へ
前・中期経営計画より使用している「百“価”店」には、モノを表す「貨」ではなく、多様な価値提供を表す「価」を使うことで、従来の百貨店業にとらわれず、お客さまの変化に合わせたサービスや事業へのチャレンジも含め、会社自体が生まれ変わり、新たな価値を提供していきたい想いを込めています。
基本的な考え方
価値創造と成長
2025~2028年度の4年間を、事業環境の変化に対応し、事業・体制を進化・深耕させる期間と位置づけます。既存事業をより強固にしながら、事業ポートフォリオの拡大に向け、新たな核となる事業の種まき・育成を行うとともに、社会構造変化に対応した将来への基盤整備により、持続的な成長を図り「くらしを豊かにするプラットフォーマー」を目指します。
基本方針1.「百“価”店事業」への進化
●旗艦店 あべのハルカス近鉄本店「リモデル」
あべのハルカス近鉄本店では、開業直後から課題に対してスピード感を持って対応し、コロナ禍においても積極的に施策を強化してまいりました。10周年を経たあべのハルカス近鉄本店では今回の中期経営計画期間においてリモデルを実施し、常に期待される「価値創造百貨店」へと進化させます。4年間で全館10万㎡の約3割をリモデルし、顧客層の拡大、次世代顧客獲得を図ります。
●あべの・天王寺エリアの魅力最大化
旗艦店「あべのハルカス近鉄本店」を有する「あべの・天王寺エリア」を最重要拠点とし、あべのハルカス近鉄本店を中心にエリア全体で、4年間で100億円の投資を計画します。あべの・天王寺エリアは、ターミナルでありながらも緑や文化を有する大阪市内でも有数の文教地区であり、足元商圏には大規模居住地が広がり、新幹線・関西国際空港・大阪国際空港にもダイレクトアクセスのできる好立地にあります。
今回の中期経営計画期間において、あべのハルカス近鉄本店のみならず、当社所有の商業施設である「Hoop」「and」についてもリモデルを実施、また2025年7月には近隣住民の「ウェルビーイング」な生活をサポートする地上4階建の医療モール「あべのウェルビーイングテラス」開業などを計画しております。
加えて、近鉄グループや周辺商業施設、地元企業と連携し、交流人口も定住人口も1日を過ごすことのできるエリアへ、キタ・ミナミとは違う「個性」を確立し、魅力アップを図ります。
●全社顧客戦略
全社顧客の再定義により新たな顧客政策を推進し、近鉄商圏の顧客LTV(顧客生涯価値)最大化につなげます。具体的には百貨店の組織別顧客(外商、KIPS、友の会)に加え、近鉄グループ顧客ID統合を活用し、近鉄グループ各社の顧客を当社の顧客(候補)として再定義します。また、保有カード・組織別ではない「顧客層別」政策を、特に上位層については外商組織を中心に推進し、優良顧客へのランクアップ、VIP化を進めます。
あわせて、富裕層への取組みを強化します。特にあべのハルカス近鉄本店に新設する「プレミアムサロン(仮称)」や、アテンドサービス、ライフコンシェルジュサービスの提供など、接遇やサービス面を強化し、外商売上高を2024年度から約2割増まで伸ばす計画です。
●地域店の進化
地域店は「近鉄百貨店」として地域の価値向上に貢献し、駅前立地にある地域のインフラ機能として、必要なモノ・コト・サービスを提供し、「なくてはならない」存在であり続けます。地域店についてはコロナ禍を経ての構造改革により、前・中期経営計画期間に全店黒字化を達成いたしました。今回の中期経営計画期間においては、今後も利益を安定継続させるため、収益構造改革、コスト構造改革、働き方改革、3つの改革を徹底し、もう一段階の店舗構造改革を進めます。館としては低層階に百貨店機能を集約し、デパ地下や上質なライフスタイルを提供、一方で中層階から上層階には大型専門店や地域コミュニティ・サービス機能を導入するなど、地域に必要なモノ・コト・サービスを提供する「価値提供型」店舗への進化を目指します。また地域店各店にあべのハルカス近鉄本店で取扱う商材の窓口機能を構築し、地域商圏のお客さまにサービスの最大化を図ります。
●自主事業の進化
当社事業における柱のひとつへと成長した自主事業は、次のステップへと進化させます。業種・店舗数を拡大してきたフランチャイズ形態については、「量」から、事業の生産性向上をも目指す「質」への転換を図ります。またフランチャイズ事業で培ったノウハウを百貨店事業の深耕や新たな事業ポートフォリオの構築など他事業に活かし、全社でのさらなる成長を図ります。
2023年から参入した農業事業では、いちごの生産に加え、2024年度よりマンゴーの生産へと拡大しています。生産から販売まで自社社員が一気通貫した事業運営をおこない、自社ブランド化することで、高収益化を図ります。
●大阪・関西万博の取組み
関西拠点の百貨店として、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の取組みを推進し、大阪・関西万博会場内にオフィシャルストアを出店しております。百貨店のノウハウを活かし、大阪・関西の人気企業とのコラボ商品や、地元企業とのオリジナル商品を開発・販売し、世界に向けて大阪・関西、日本の魅力を発信しております。
またあべのハルカス近鉄本店の店内でも、「2025大阪・関西万博 オフィシャルストア」の拡大、大使館や自治体、近鉄グループ、取引先との協力による万博関連イベントなど、数々の大阪・関西万博の取組みを強化します。
基本方針2.新たな事業ポートフォリオへの種まき
グループの強みや資産を活用し、ポートフォリオの多角化を推進し、将来を見据えた新たな「成長の柱」を生み出してまいります。具体的には、グループ会社を核とした食品製造・小売事業への参入、グループ会社である建装事業の強化拡大、法人外商の商事事業への取組み強化、フランチャイズ事業をベースとした「自主事業」での当社以外の外部施設進出などに取り組みます。
また近鉄グループの強みを活かし、流通セグメントを始めとした有機的なグループ連携、地域との共創により、既存事業や新たな事業においての協業推進やシナジー創出にも取り組んでまいります。
基本方針3.将来への基盤整備
事業環境の変化に対応し、今後の成長を支えるため、今回の中期経営計画期間において人的資本経営、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を積極的に推進します。
●人的資本経営
事業の成長・拡大の根源となる人への投資を積極的に進めます。多様な事業や職域の特性に対応するため、2027年度に人事制度を抜本的に改革いたします。また、従業員が「働きたい」と思える環境整備も整え、2025年度より新規事業提案制度「近鉄イノベーションラボ」を実施するなど、一人ひとりが持つ“価”を見出し・育て・最大限の発揮・次世代へ繋いでいくための人的資本経営を目指します。これらの処遇改善や人事制度改革を含め、4年間で約40億円の人的資本投資を計画しています。
●DX戦略
すべての事業と実務領域において、全社一体となってDXを加速させます。特に「顧客とのつながりの強化」「リアル店舗DX」「ワークスタイル変革」をDX戦略の3本の柱として注力し、4年間で約20億円の投資を計画しています。あわせて事業部門とDX推進担当部門が協同する推進体制を整え、DX推進人財の育成に取り組みます。長期的な観点で「システムのシンプル化・スピード化・全体最適化」を進めます。
基本方針4.「資本コストや株価を意識した経営」の実現
全体戦略においての投資と還元のバランスを取りながら、さらなる企業成長を図ります。あべの・天王寺を中心に成長投資をおこなう一方、事業環境の変化に対応した基盤強化への投資も実施します。
今後は収益性向上と株主還元方針の見直しにより、連結ROE9.0%以上を目指します。
●収益性向上
中期経営計画の着実な実行を通じて、特にあべの・天王寺エリアへの集中投資や自主事業を中心とした商品力強化、顧客戦略強化などにより、連結売上高営業利益率を高め、収益性の向上を図ります。
●株主還元方針の見直し
自己資本が着実に蓄積されている状況を踏まえ、将来の事業展開に備え財務体質の強化を図る一方で、安定的な配当を継続するこれまでの方針から2025年度(2026年2月期)より、財務健全性を維持しつつ、業績に応じた株主還元を強化する方針にシフトします。また、2025年度(2026年2月期)より、30%を目安に連結配当性向目標を新設します。
業績に応じた配当をおこなうとともに、株主・投資家との関係性をより深めるため、市場との積極的な対話の推進、株主優待の利便性向上等に取り組み、PBR向上を目指します。
当社グループの中核となる百貨店業では、業界の売上高が減少する中、他の競合に打ち勝つため、財務体質の強化を図るとともに、売場改装などの設備投資並びに新業態開発に向けた先行投資が必要不可欠であります。
これらを踏まえ、中期経営計画の4年間で総額350億円の設備投資を効率的に行うとともに業績に応じた配当を行うことができるよう、最終年度の連結ROE目標を9.0%以上としております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
当社グループは、コーポレート・ガバナンスの充実を重要な経営課題の一つと捉え、ステークホルダーとの間に良好な関係を築くとともに、経営の透明性と公正性を高め、経営監督機能の強化、コンプライアンスの推進を柱とするコーポレート・ガバナンスの充実を図ります。その一環で、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを強化し、持続可能な社会の実現を目指した企業経営を行うための諸施策の策定及び推進を図ることを目的として、ESG推進委員会を設置しております。同委員会は、当社社長執行役員を委員長として、当社専務執行役員及び常務執行役員により構成し、定期的に開催、サステナビリティを巡る諸課題について検討しております。取締役会では、サステナビリティの視点を含め、事業リスクや機会に対応する重要案件について確認しております。
②戦略
環境問題をはじめとする社会問題がより拡大、複雑化するなかで、地域とそこに暮らす人々に対する企業の社会的責任はますます大きくなり、「地域社会の発展」と「持続可能な社会の実現」に向けて、ESGを推進していくことは、企業として目指すべき姿であります。当社は、ESGに関する当社の取組みを議論し、2021年4月策定の「ESG方針」と取り組むべき3つの重要課題について公表いたしました。ESGの推進は、「誰ひとり取り残さない」、「持続可能な社会の実現」を目指すSDGsの目標とも結びついており、経営戦略の柱として取り組むことにより、SDGsの目標達成に貢献し、社会課題の解決と地域社会及び企業の持続的成長を目指してまいります。「ESG方針」と3つの重要課題、主な取組み内容は以下のとおりです。
重要課題の「地域共創の実現」については、地域とともに成長・発展する地域共創型の百貨店として、地域の皆さまとの交流、地域産業の発展、活性化に寄与する取組みを実施しています。今後も地域の持続的な発展を目指し、地域への社会貢献を推進してまいります。「地球環境への貢献」については、環境にやさしい設備の導入など店舗環境面での取組みに加え、お客様やお取引先とともにできる活動を通じて地球環境の保全に貢献してまいります。なお、
③リスク管理
当社グループは、ESG経営を推進しておりますが、取り組みの遅れにより、ステークホルダーからの信用失墜、気候変動リスクの対応の遅れ、炭素税規制による増税等のリスクを有しております。当社グループでは、これらのリスクへの対応として、ESG推進委員会で諸リスクについて検討しております。また、ESGの推進及び取り組み状況の開示等を実施しております。
④指標及び目標
重要課題ごとに、指標(KPI)や目標を設定し、進捗を把握しながら取り組んでおります。
(2)人的資本
■全体方針
当社は百貨店の枠を超えた事業の多角化を加速しています。そのような中、それぞれの事業運営を担える資質・能力を備えた人財を育成し、合わせて従業員の多様な働き方に対応できる労働環境整備に取り組みます。
新しい人事戦略としては、人財コンセプト『自律した百“価”店人の創出』に基づき、人財の活性化に取り組みます。
また、人事理念である「社員の自主・自律を尊重し、新たな価値創造に挑戦する企業風土を創る」に基づき、自律した百“価”店人を創出するため、6つの分野(①個人の成長、②報酬・評価、③学び、④コミュニケーション、⑤ワークスタイル、⑥健康管理・増進)を設定し、取り組みを進めています。
<具体的取り組み>
〇以下6つの分野の考え方に基づき、人事制度における改善項目を設定し、取り組みを進めます。
①個人の成長…多様な価値観が尊重され、自分の成長のために自らが選択
②報酬・評価…メリハリのある評価、仕事の価値に見合う適正賃金
③学び…自ら学びたいものを自由に選択、学びたい意欲を支援
④コミュニケーション…知りたいこと、困ったこと、会社のことを知るコミュニケーション
⑤ワークスタイル…働き方の多様性と、みんなで助け合う企業文化
⑥健康管理・増進…心とカラダの健康の充足、仕事もプライベートも活き活きと
■人財の多様性確保を含む人財育成の方針
百貨店の枠を超えた事業開発を進めていく中で、従業員の多様性を尊重し人財価値を高めることで、持続的な企業価値向上を目指します。
①採用
・様々な事業展開に貢献できる、柔軟な発想の人財を採用します。
・情報開示を強化し、入社後のミスマッチを軽減することで離職率の低下に努めます。
・新たな事業開発を推進するための専門人財のキャリア採用を積極的に進めます。
・新卒一括採用に限定せずに、多様な人財の採用に取り組みます。
②人財育成
・選択式の教育メニューを導入することで自ら学ぶ意欲を醸成すると同時に社員が望むキャリア形成を支援します。
・入社から10年間は、ジョブローテーションを通じ、現場力を身に付けます。また、管理・監督職を目指すうえで基盤となるヒューマンスキルを身に付ける機会を創出します。
・管理・監督職は、会社の方向性や注力する事業を理解し実現するために、部下育成と業務変革を担う人財として育成しています。
・管理職昇格後は、経営層を目指すマネジメント人財と、専門性を高めて業績を上げるプロフェッショナル人財の育成に取り組みます。
指標 |
2023年度 |
2024年度 |
目標 |
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15人 |
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88.0% |
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10.0% |
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40.0% |
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■社内環境整備方針
従業員にとって働きやすく、働きがいをもって能力を如何なく発揮し活躍できる環境整備を目指します。
〇働きやすい環境づくりについて
・福利厚生、諸制度の充実に努めています。(短日数・短時間勤務制度、休職制度、評価の透明性等)
・フレックスタイム制の導入、副業の解禁を実施しております。
・管理・監督職を対象とした人事考課者研修及び部下育成・指導研修等の実施、また、全従業員を対象としたハラスメント研修の実施により、従業員の個が活きる職場環境創出に取り組みます。
・公正かつ適正な評価と配置、優秀かつ意欲ある人財の積極的な管理職登用により、従業員一人ひとりが如何なく能力を発揮できる環境を整備します。
・健康経営の推進の取り組みとして、健康経営優良法人(大規模法人部門)に3年連続で認定されています。
指標 |
2023年度 |
2024年度 |
目標 |
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22.8年 |
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2.59% |
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法定雇用率以上を維持 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境上のリスク
当社グループの主力セグメントである百貨店業は、主に一般消費者を対象とするため、地方・郊外の人口減少等の社会情勢や景気動向、消費動向等の経済情勢に大きく影響を受けるほか、流通業界における競争激化も予想されます。さらに、消費行動・生活様式の変容、デジタル化の進行、衣料品・アパレルの低迷、インバウンド需要等、今まで以上に変化のスピードが加速しており、これらの環境変化が当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このような環境変化に対応するため、店舗構造改革、コスト構造改革を推し進め、事業モデルの抜本的な改革に取り組んでおります。また、今後持続的な成長を続けるため、本年4月に策定した中期経営計画に基づき、新たなビジネスモデルの構築に邁進いたします。同計画については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題並びに目標とする経営指標」に記載しております。
(2)商品取引に関するリスク
当社グループの主力セグメントである百貨店業は、消費者向け取引を行っております。当社グループが製造・販売する商品の品質や食品の安全性に対して信用毀損が生じた場合、売上高の減少等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは百貨店業の外商部門をはじめとして、法人向け等の掛売取引を行っております。取引先の倒産による売掛金の回収不能等による損失の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
商品の品質や食品の安全性については、関係法令の遵守状況の確認や品質・衛生管理のチェックなどを定期的に実施し十分留意しております。また、法人向け等の掛売取引については与信管理を十分に行っております。
(3)法律の規制、制度の変更に関するリスク
当社グループは事業展開するにあたり、出店等については大規模小売店舗立地法、商品仕入面においては独占禁止法・下請法等、商品販売面においては景品表示法・JAS法・食品衛生法・製造物責任法(PL法)等、その他、環境・リサイクル関連法規など様々な法律による規制を受けております。万一これに違反する事態が生じた場合は、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、関係法令・規則の制定、改正等の動向について常にモニタリングしており、必要に応じて顧問弁護士への相談や意見聴取を行うとともに、社員教育等を通じて法令遵守の重要性を社内に周知徹底しております。
(4)新規事業への取組みに関するリスク
当社グループでは、企業の成長、競争力を高めるため従来の枠組みにとらわれることなく新規事業への取組みをおこなってまいります。新規事業においては不確実な要素が多く、事業環境や市場ニーズの変化等により新規事業の確立が困難となり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすほか、法律や規制に対する事前確認の不足により、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、新規事業において想定されるあらゆるリスクを事前に洗い出し、評価し、対策を講じるための体制を強化するため、コンプライアンス推進本部が主体となって、様々なリスクに対する検証を行っております。
(5)災害等のリスク
当社グループの主要な店舗・事業所の所在地は、東南海・南海地震の対策強化地域に含まれており、地震発生の可能性が比較的高い地域であります。想定を超える大規模な地震が発生した場合は、店舗等の事業所が甚大な被害を受け、復旧に多額の費用と時間を要するなどの直接的な影響があります。さらに、仕入先の被災による商品調達の停滞、さらには日本経済全体の消費マインドが冷え込むなど間接的な影響を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な火災が発生した場合、被害者への損害賠償責任、商品・建物への被害が考えられ、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、これら災害等の影響により、電気・水道・ガスの使用制限、道路・空港・港湾施設の閉鎖、通信機能の不具合等社会インフラ機能の低下が生じた場合、当社、協力会社及び取引先の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、緊急地震速報の受信装置を主要店舗に設置しているほか、危機管理マニュアルを作成・配布し、地震発生時の対応の周知徹底を図っております。火災については、消防法に基づき定期的に検査・訓練等を実施し、万一の火災に備え、予防又は被害を最小限にとどめる努力をしております。
さらに、当社グループは、災害等の発生に備えた危機管理体制の整備に取り組んでおり、平時から、老朽化したインフラへの投資、施設の定期的な点検、損害保険の付保等の対策を講じているほか、店舗等が被災した場合でも、お客様・従業員の安全確保を前提として、早期の営業再開、営業の継続による商品供給を通じて、社会インフラとしての役割、社会的責任を果たすことを目的とした事業継続計画(BCP)を策定しております。
(6)情報管理に関するリスク
①情報システムの機能不全
当社グループは、POSシステム、経理システム、商品受発注システム、顧客情報管理システム等多くの情報システムを有しております。想定した以上の自然災害の発生、従業員の過誤によるシステム障害やコンピュータウィルスの感染等が起こった場合、営業活動に大きな支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらの情報システムの機能不全を防ぐため、電源の二重化、バックアップシステム構築、不正侵入防止プログラム等の対策を講じております。
②個人情報の漏洩
当社グループは、外商顧客、ギフト顧客、友の会会員など多数の個人情報を保有しております。万一、情報が外部に漏洩した場合は、当社グループの社会的信用が失墜するなどして、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、個人情報保護法その他の関係法令等を遵守し、お客様からお預かりしている個人情報の保護に万全を期すため個人情報保護方針を定めるとともに、個人情報管理規程などの社内規程等の整備や情報システムのセキュリティ向上、従業員教育の充実などにより万全を期しております。また保険を付保することにより業績への影響に備えております。
(7)資金調達・金利変動のリスク
当社グループは、主に金融機関からの借入れによって資金調達を行っておりますが、消費環境の悪化及び競争の激化などによって当社グループの中長期的な経営計画に不安が生じた場合や、急激な金利変動が生じた場合、当社グループの業績、財政状態及び資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、金利変動による影響を軽減するため、状況に応じて一定程度の金額を長期固定金利で調達しているほか、取引金融機関との間で情報交換を密にし、相互の信頼関係を築くとともに、銀行取引以外の資金調達方法についても研究しております。また、金融環境変化について状況把握に努め、安定的・効率的な資金繰りの実践に取り組んでおります。
(8) ESG経営への取組みに関するリスク
当社グループは2030年に向けての長期戦略において「地域に寄り添い、地域と活きる」というESG方針を掲げESG経営を推進しておりますが、取組みの遅れにより、ステークホルダーからの信用失墜、気候変動リスクへの対応の遅れ、炭素税規制による増税等のリスクを有しております。
当社グループでは、これらのリスクへの対応として、ESGの推進及び取組み状況の開示等を実施しております。
(9)人的資本に関するリスク
当社グループの事業活動は人財に大きく依存しており、百貨店業をはじめとした各分野において、優秀な人財の確保・育成が必要であると認識しております。当社グループは、百貨店の枠を超えた事業開発を進めていくなかで、従業員の多様性を尊重し、人財価値を高めることで持続的な企業価値向上を目指し、人財の多様性確保を含む人材育成の方針に基づいた採用及び育成の取り組みを行っております。
しかしながら、労働力人口の減少による働き手の不足及び人財の流動性の高まりにより人財獲得競争が激化するなかで、計画通りに事業活動に必要なスキルを有する人財の確保が図れなかった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、人的資本に対する当社の考え方の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)人的資本」をご参照ください。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当期のわが国経済は、世界的な金利の見直しや中国経済の減速など、海外における経済政策の不確実性や地政学的リスクの影響があるものの、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調をたどりました。百貨店業界におきましては、大都市を中心に円安効果などによる訪日外国人旅行者の増加に伴い免税売上高が過去最高を更新したほか、特選洋品を中心に高額商品が好調に推移いたしました。
このような状況の下、当社グループは、最終年度を迎える「中期経営計画(2021~2024年度)」において長期ビジョンとして掲げた「くらしを豊かにするプラットフォーマー」を目指し、あべの・天王寺エリアの魅力最大化など4つの基本方針に基づく諸施策を強力に推進するとともに、各事業における収益力向上に懸命の努力を払いました。
この結果、当社グループの業績につきましては、売上高は115,107百万円(前期比1.4%増)、営業利益は5,353百万円(同37.2%増)となり、経常利益は5,148百万円(同33.2%増)となりました。
これに投資有価証券売却益を特別利益に計上し、支払補償費や店舗改装に伴う除却損等を特別損失に計上し、法人税等を差引した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,484百万円(同25.4%増)となりました。
事業のセグメント別業績は、次のとおりであります。
<百貨店業>
百貨店業におきましては、収益力及び集客力の強化に注力するとともに、企業価値向上にも努めてまいりました。まず、あべの・天王寺エリアの魅力最大化の取組みとして、2024年3月に開業10周年を迎えた、あべのハルカス近鉄本店においては、全館で10周年を記念した限定商品の展開やイベントを開催したほか、国内外問わず広域から多くのお客様にご来店いただける都市型総合百貨店を目指し、特選ブランドの強化を図るため、タワー館1階「ボッテガ・ヴェネタ」のリニューアルを実施するとともに、新たに「サンローラン」を導入いたしました。また、収益力向上策の一つとして強化しているフランチャイズ事業においては、新業態としてウイング館2階にベーカリーカフェ&ショップ「KAFFE OTTE(カフェ オッテ)」を、タワー館12階に全国的にも知名度の高い人気ラーメン店と共同開発した新ブランド「24世紀ラーメン」をそれぞれ導入したほか、and1階及び2階に大阪市内初出店となるホームセンター「カインズ」を導入しました。これらの諸施策を実施することにより売場を活性化させ、店舗の魅力向上を図りました。
次に、地域中核店・郊外店においては、地域生活に「なくてはならない存在」を目指し、生活機能、商業機能、コミュニティ機能を融合した「タウンセンター化」への変革をより一層加速させるための改装を実施いたしました。草津店5階には本店で好評の「ベビーフェイス スカイテラス」の第二号店として「ロビーガーデンbyスカイテラス」を、和歌山店地下食料品売場には和歌山県初出店の「成城石井」を、奈良店1階にはフランチャイズ事業の27業種目として奈良県初出店となる「マリメッコ」をそれぞれ導入するなど、フランチャイズ運営売場を積極的に拡充し収益力を向上させるとともに、店舗運営のローコスト化の徹底により、各店とも確実に利益を上げることができる体制へと変革を図りました。
これらの諸施策を推進したことに加え、免税売上や外商売上が好調に推移した結果、売上高は93,046百万円(前期比0.6%増)、営業利益は3,921百万円(同54.2%増)となりました。
<卸・小売業>
卸・小売業におきましては、株式会社シュテルン近鉄において、輸入車販売が好調に推移したため、売上高は14,878百万円(前期比9.9%増)、営業利益は375百万円(同14.5%増)となりました。
<内装業>
内装業におきましては、株式会社近創で工事受注が順調に推移し、売上高は4,037百万円(前期比5.1%増)となったものの、前年度には高益率の大口受注があったため、営業利益は873百万円(同2.2%減)となりました。
<不動産業>
不動産業におきましては、賃貸収入により、売上高は291百万円(前期比1.2%減)、営業利益は216百万円(同3.4%減)となりました。
<その他事業>
その他事業におきましては、連結子会社であった株式会社Kサポートが、2024年10月1日付で株式会社ツーリストエキスパーツに吸収合併され連結範囲から外れたことにより、売上高は2,853百万円(前期比14.9%減)、営業利益は66百万円(同39.0%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、売上高の増加に伴う受取手形、売掛金及び契約資産の増加があったものの、減価償却による建物及び構築物の減少などにより、前期末に比べ975百万円減少し114,388百万円となりました。
負債は、借入金の減少などにより、前期末に比べ2,234百万円減少し75,812百万円となりました。
純資産は、自己株式が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前期末に比べ1,258百万円増加し38,576百万円となりました。この結果、自己資本比率は33.7%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ1,139百万円減少し2,588百万円となりました。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、売上債権や退職給付に係る資産の増加はありますが、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上により、6,730百万円の収入(前期 10,170百万円の収入)となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、3,900百万円の支出(前期 2,194百万円の支出)となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、借入金の返済や自己株式の取得による支出などにより3,970百万円の支出(前期 7,490百万円の支出)となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年3月1日 至 2025年2月28日) |
||
品名 |
売上高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
百貨店業 |
衣料品 |
14,796 |
98.2 |
身回品 |
6,850 |
100.4 |
|
家庭用品 |
1,864 |
103.5 |
|
食料品 |
30,521 |
100.1 |
|
食堂・喫茶 |
1,388 |
187.8 |
|
雑貨 |
27,055 |
100.3 |
|
サービス |
1,281 |
102.0 |
|
その他 |
9,346 |
99.5 |
|
消去 |
△58 |
74.9 |
|
計 |
93,046 |
100.6 |
|
卸・小売業 |
食料品 |
3,361 |
92.5 |
自動車関連 |
12,261 |
114.9 |
|
消去 |
△744 |
97.3 |
|
計 |
14,878 |
109.9 |
|
内装業 |
内装 |
6,362 |
99.3 |
消去 |
△2,325 |
90.7 |
|
計 |
4,037 |
105.1 |
|
不動産業 |
賃貸 |
349 |
99.0 |
消去 |
△57 |
100.0 |
|
計 |
291 |
98.8 |
|
その他事業 |
運送 |
4,014 |
95.9 |
その他 |
1,266 |
46.8 |
|
消去 |
△2,427 |
68.6 |
|
計 |
2,853 |
85.1 |
|
合計 |
115,107 |
101.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この作成にあたり、当連結会計年度末の資産及び負債並びに当連結会計年度に係る収益及び費用の報告金額に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況等に応じた合理的な判断に基づき見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載しております。
このうち、当連結会計年度において特に留意すべき要因については次のとおりであります。
・経営環境上のリスク
b.経営成績の分析・検討内容
経営成績に重要な影響を与える要因を踏まえた当連結会計年度の経営成績の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
海外における経済政策の不確実性や地政学リスクはあるものの、雇用・所得環境の改善を背景に、景気が緩やかに回復し、当社グループの売上高は115,107百万円(前期比1.4%増)、営業利益は5,353百万円(同37.2%増)となりました。
百貨店業では、円安を背景とする訪日外国人旅行者の増加に伴い、免税売上が好調に推移したほか、外商売上も好調に推移し、さらに、収益構造及びコスト構造改革を継続的に推し進め、安定した利益を獲得できる体制づくりに注力したことにより、百貨店業全体の売上高は93,046百万円(前期比0.6%増)となり、営業利益は3,921百万円(同54.2%増)となりました。
卸・小売業では、株式会社ジャパンフーズクリエイトでは、主力商品であるノルウェーサーモンの価格高騰により商品価格が高止まりし、主力販売先の量販店への卸売りが減少しました。一方、株式会社シュテルン近鉄は、メルセデス・ベンツの継続的な新型車の販売に加え、車両単価の上昇により好調に推移しました。また、車点検等のアフターセールスに丁寧に取り組んだことで、部品売上や修理といったアフターサービスも堅調に推移したため、卸・小売業全体の売上高は14,878百万円(前期比9.9%増)、営業利益は375百万円(同14.5%増)となりました。
内装業では、株式会社近創で、得意分野であるホテル関連を中心に、学校や商業施設などの新規顧客開拓による事業拡大に向けた受注活動に注力したため、内装業全体の売上高は4,037百万円(前期比5.1%増)となりましたが、前年度には高益率の大口受注があったため、営業利益は873百万円(同2.2%減)となりました。
不動産業では、賃貸収入により、不動産業全体の売上高は291百万円(前期比1.2%減)、営業利益は216百万円(同3.4%減)となりました。
当社グループの経常利益は、上記の要因により5,148百万円(前期比33.2%増)となりました。これに政策保有株式の売却益を特別利益に計上し、賃借土地返還に伴う支払補償費及び店舗改装に伴う固定資産除却損等を特別損失に計上し、法人税等を差し引きした結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,484百万円(同25.4%増)となりました。
c.経営判断のために採用している経営指標とその達成状況及びその理由
当社グループは、「中期経営計画(2021-2024年度)」に基づき、百貨店事業の収益力を強化しつつ、さらなる成長に向けての新たな収益の柱になる事業モデルの強化期間と位置付けて、様々な施策を実行してきました。
「中期経営計画(2021-2024年度)」において、当社グループは、「営業利益」、「親会社株主に帰属する当期純利益」、「ROE」、「ROA(営業利益ベース)」を重要な指標と位置付けておりました。
経営数値目標の達成に向けて、あべのハルカス近鉄本店の改装・外商強化による増収、地域店の構造改革による全店黒字化の達成、フランチャイズ事業を中心とした自主事業拡大による利益率の向上等により、安定した利益を創出する経営体質へと転換いたしました。一方、コロナ禍の長期化に加えインバウンド顧客の購買行動の変化やEC事業の見直し等の要因により経営数値目標は未達となりました。
|
2023年2月期 |
2024年2月期 |
2025年2月期 |
経営数値目標 (2025年2月期) |
営業利益 |
15億円 |
39億円 |
53億円 |
65億円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
18億円 |
27億円 |
34億円 |
40億円 |
自己資本当期純利益率(ROE) |
5.6% |
7.7% |
9.2% |
10.0%以上 |
総資産営業利益率 (ROA) |
1.3% |
3.3% |
4.7% |
5.0%以上 |
なお、2025年度よりスタートする4年間の中期経営計画における連結経営指標につきましては、「1 経営方針、経営計画及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題並びに目標とする経営指標」に記載しております。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
主な内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、商品の仕入や営業費用などの運転資金に加え、店舗物件の改装や修繕などに伴う設備資金であります。
これらの資金需要に対応すべく、主に自己資金及び金融機関からの借入金により必要な資金を調達しております。
なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
|
2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
2024年2月期 |
2025年2月期 |
自己資本比率(%) |
27.3 |
27.9 |
29.2 |
32.3 |
33.7 |
時価ベースの自己資本比率 (%) |
108.0 |
85.4 |
80.3 |
82.3 |
74.5 |
キャッシュ・フロー対 借入金比率(年) |
4.0 |
6.7 |
1.7 |
0.6 |
0.7 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) |
41.9 |
27.0 |
93.6 |
150.1 |
96.5 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対借入金比率:借入金/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利息の支払額
※ 各指標の算出は、連結ベースの財務数値によっております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
なお、期末発行済株式数より控除する自己株式に、株式需給緩衝信託Ⓡが保有する当社株式1,412,200株が含まれております。
当社は、2024年10月11日開催の取締役会において、当社の流通株式比率向上を目的とする第3回目の株式需給緩衝信託Ⓡ(以下「本信託」という。)の設定を決議し、野村信託銀行株式会社と本信託に関する契約を締結いたしました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。