文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、リサイクル事業を通して、多様化する環境問題に対し、解決案(ソリューション)を提供しております。異常気象などの環境問題は年々深刻化しており、当社グループがソリューション提供により、リサイクル事業を伸ばしていけばいくほど、顧客に喜ばれる上、地球環境の負荷を減らすことになります。当社グループは土壌汚染処理事業や資源リサイクル事業を通じて、限りある地球の資源を有効活用することにより地球と人類の未来に貢献していきます。
当社グループは、土壌汚染対策をメイン事業とする数少ない東証上場企業として、土壌汚染のコンサル・調査・分析・工事・処理まですべてを自社で行うワンストップソリューションカンパニーとして、土壌汚染対策にかかわるステークホルダー全員(売主・買主・行政・地域住民等)が満足できるソリューションの提供を行っていきます。2000年6月より当社グループは「土壌汚染対策法」に基づき、土壌汚染調査・処理事業を開始し、様々な土壌汚染問題を解決いたしました。今後も、高い技術力、迅速な対応力、価格の優位性、万全な情報漏洩対策、全国対応のネットワークなどを生かし、土壌汚染問題に取り組んでまいります。また、社会問題となっているPFAS(有機フッ素化合物)汚染土壌対策にも注力していきます。
当社グループにおいては、資源リサイクル事業も手掛けております。廃石膏ボードや古紙・ペットボトルのリサイクルのみならず、2027年3月に処理期限を迎えるPCB(ポリ塩化ビフェニル)処理や廃食油のバイオ燃料化事業などを行っております。リサイクル推進のため、積極的な技術開発や設備投資を実行し、環境問題の解決に貢献するとともに、当社グループの事業の拡大を図っていく所存です。
今後の経営環境の見通しにつきましては、国内では雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により穏やかに回復していますが、米国の通商政策の転換や米中間の貿易摩擦、世界各地での紛争等の影響を受け、依然として先行きが不透明な状況が続くものと想定しております。
当社の土壌汚染調査・処理事業に関しましては、大規模不動産の売買時を契機として顧客が土壌汚染対策を検討することが多いことから、国内企業の不動産売買件数や工場・ショッピングセンター・マンション等の建設設備投資の影響を強く受けることになります。米国のトランプ政権による関税値上げ政策により、国内製造業の輸出額減少に伴う設備投資の抑制が考えられ、当社の業績に一定の影響を与える可能性があると考えておりますが、これはトランプ政権時の一過性のものとみております。当社グループは、いかなる経営環境であろうとも、地球と人類の未来のために、土壌処理やリサイクル事業の実績を着実に積み上げていく所存です。
当社グループの主たる業務は、「土壌汚染対策法」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」等の法的規制を受けております。従って、コンプライアンス及び専門的知識に基づいた適切な対策を顧客に提言することが当社グループの使命であり、また、それに対して管理体制を強化していくことが当社グループが成長するための重要な要素であると認識しております。
そのような認識のもとで、社内勉強会、社外講習会の受講及び各種資格取得の奨励等により、法令遵守及び専門知識の習得に重点を置いた人材育成を積極的に進めるとともに、人材の確保を進めてまいります。
当社グループの土壌汚染調査・処理事業におきましては、全国の営業エリア3拠点(本社、東京本社及び関西支社)と、汚染土壌処理施設6拠点(名古屋リサイクルセンター、弥富リサイクルセンター、横浜生麦リサイクルセンター、横浜恵比須リサイクルセンター、大阪リサイクルセンター、岐阜リサイクルセンター)を主たる拠点としております。
土壌汚染調査・処理事業の営業エリアとして、東海地区、関東地区、関西地区にて事業展開する一方で、中国・九州地区などでも営業強化のための人員、設備の充実を順次積極的に進めていきます。
当社グループの資源リサイクル事業におきましては、廃石膏ボードリサイクル事業をグループ会社のグリーンアローズ中部とグリーンアローズ九州にて行い、古紙・ペットボトル・廃プラスチックの再資源化を滋賀を拠点とするグループ会社の杉本商事・杉本紙業にて行っております。PCB処理事業や廃食油の再資源化は、当社の東海地区を中心に行っております。
2025年12月には、リサイクル石膏の需要拡大を見越し、静岡にてグリーンアローズ中部が廃石膏ボードリサイクルの工場稼働の予定です。今後、段階的に資源リサイクル事業のエリアを広げ、資源リサイクル事業の拡大に力をいれてまいります。
環境問題に関する規制は、今後も強化される傾向にあり、新たな環境問題が顕在化する可能性も否定できません。今後発生する環境問題であっても、「現状認識のための調査・分析」と「リサイクル技術の応用」は、問題解決のための重要な要素になると考えております。従って、当社グループは、自社の保有する調査・分析機能及びリサイクル処理のノウハウを駆使し、多様化する環境問題に対する的確なソリューションを提供することにより、事業分野の多角化を図ってまいります。
当社グループは、環境貢献とともに、上場企業としての成長性と利益率の向上を目指し、株主資本利益率(ROE)を経営指標として企業価値の最大化を図ってまいります。
当社グループは「環境リバリューストラクチャー」創造企業として、社会的に不要になり、負の環境負荷を与えるものに対し、工夫を凝らし、再び価値を付ける仕組みを創造して様々な環境問題の解決を図っていくことを通じて、持続可能な社会の実現を目指しております。
その目的を達成し、今後の発展を続けるための重要課題として「環境」「人」「安全」「地域・社会」「ガバナンス」をマテリアリティとして設定し、以下のような考えのもと改善に取り組んでおります。
・環境については、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献するべく土壌リサイクル量の拡大やリサイクル率の向上に取り組み続けます。
・人については、最大の経営資源であると考え、社員が働く幸せを感じながら能力を最大限に発揮できるよう、福利厚生・働き方改革・教育制度を拡充してまいります。また多様な価値観を職場に取り入れることでイノベーションを実現するため、ダイバーシティ経営を推進しています。
・安全については、「安全は全てにおいて優先する」を安全基本方針に掲げ、全員で事故0を目指し安全文化の醸成に努めています。
・地域・社会については、当社を支えてくださる地域・社会の皆さまに貢献するため、ボランティア活動や寄附などの足元の取り組みに加え、産業廃棄物を扱う企業だからこそできる災害廃棄物対応にも精力的に取り組んでおります。
・ガバナンスについては、執行役員制度を導入し、「経営意思決定・監督機能」と「執行機能」の分離を行い、より実効性のあるガバナンス体制としています。
当社グループは、事業活動そのものが環境問題を解決するもので、サステナビリティの取組みと大きく係ることと考え、ガバナンスの強化を図っております。
そのため当社では執行役員制度を導入して、「経営意思決定・監督機能」の独立性を高めつつ、業務遂行の機動性を促進したガバナンス体制を整備しております。
また、当社グループでは社会からの信頼を確保するため「コンプライアンス基本規程」を定め、代表取締役社長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置し、コンプライアンス違反があった場合の調査や再発防止に取り組んでおります。
① 気候変動対策に関する方針、戦略
気候変動によって自社が被るリスクと機会の特定及び評価と対応策の検討にあたり、当社グループではIPCCやIEAが公表するシナリオを用いて、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに4℃上昇する4℃シナリオと、パリ協定並びにCOP26での世界的合意を踏まえた1.5℃目標の達成を前提として、気温上昇が抑制される1.5℃シナリオの2つのシナリオを設定し、当社への影響について分析を実施しております。
〇 4℃シナリオ
温室効果ガス排出規制も現状通り強化がされず、対策が大きく進みません。そのため、エネルギーコストも現状のままで、事業活動からの温室効果ガスの削減意識も高まらず、事業内容も変わりなく継続されます。化石燃料も使用され続けるため、環境意識の高い企業からのBDF(バイオディーゼル燃料)のニーズに大きな変化はなく、BDF事業は当社の成長に合わせて、緩やかに拡大されていきます。台風などの自然災害の増加や激甚化が顕著になり、当社グループでも罹災に備えた対策を行うことと、災害復旧支援事業の体制の増強を促進します。気温の上昇によって工場や現場などでの労働環境の悪化が深刻化し、当社グループへの就職希望者の減少や熱中症などの労働災害が増加するため、労働環境の改善や採用活動の強化などが必要になります。
〇 1.5℃シナリオ
カーボンプライシング制度や炭素税などの温室効果ガス排出規制が導入されてエネルギーコストが増大するため、再エネ電力や温室効果ガス排出量の少ない設備を導入していきます。温室効果ガス排出量の削減活動では、CO2排出量の少ない浄化処理等のニーズが高まる一方で、セメント処理などのニーズが減少するため、LCCO2の低い処理方法の開発を進めます。
また、化石燃料から水素など別のクリーンエネルギーへ移行することで、カーボンニュートラルとして脚光を浴びたBDFのニーズも衰退するため、マテリアルリサイクル事業への転換を行います。気温の上昇が1.5℃以内に抑えられることで、自然災害や海面上昇、労働環境も現状通りで特に対策が必要とはなりません。
(リスク)
(機会)
② 人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループの人的資本への方針は、『私たちは、日本を代表する「環境リバリューストラクチャー」創造企業を目指します。』とのミッションを果たすため、ビジョンのひとつである「価値観を共有し、社員一丸で動ける組織の構築」を達成しつつ、「社員一人ひとりが働きがいをもって働き、成長し、会社を通して社会貢献できる職場環境を実現する」ことです。
○ 人財育成
当社グループでは、現在の事業に留まらず新たな事業を展開し、企業価値を高めていくためには、持続的成長を支える人財の育成が重要と考えており、研修制度の拡充や個人の希望を尊重したキャリア形成を推進しています。
a. 階層別研修の実施
当社グループでは、すべての社員が自ら学び、プロフェッショナルとして成長し続ける機会を創造するため、スキルマトリックスによるスキルの見える化や階層とスキルに応じた研修の実施を推進しています。
b. 社会の状況に応じた研修プログラム
当社グループでは、社会の価値観の変化や情勢に柔軟に対応できるよう、管理職に対する「ハラスメント研修」、ジェンダー差別をなくすため全社員に対する「ジェンダー研修」、40代・50代に対する「キャリアデザイン研修」を実施しています。
c. 機動的な人事戦略
当社グループでは、個人の能力を最大限に発揮するためには社員のキャリア形成に対する希望を尊重することが重要と考えており、役員や上司、人事部門に自身の希望を伝える機会を制度としても設けています。年1回実施している「キャリアサーベイ」において、今後の希望職種や希望勤務地を伝えることが可能となっているだけでなく、希望者は役員と面談する機会も設けています。また、将来のキャリア形成の一助となることも目的に、短期間で他部署の仕事を経験できる「社内インターンシップ制度」も導入しています。
○ Well-being推進&ダイバーシティの実現
当社グループでは、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、個人の幸せを会社の成長、ひいては社会への貢献に繋げるため、すべての社員が、健康・安心・安全に働ける、平等で多様性を活かせる職場環境づくりを推進しています。
a. 健康経営の推進
当社グループでは、社員の心身が健康であることが第一と考えており、健康診断の追加健診補助制度や配偶者健康補助制度、メンタルヘルス研修、ストレスチェックにおけるアクションプランの作成とフォローを実施しております。また、「健康経営優良法人2025」に認定され、今後も社員の健康増進を経営戦略としてとらえ、社員及び社員の家族が健康保持・増進を実現するための各種施策を推進してまいります。
b. 女性の活躍推進
当社グループでは、女性のキャリアに対する志向の多様化に対応するため、「グレード制度のステージ拡充」や「コース転換制度」を導入しています。
また、2023年には、女性の活躍促進に向けた採用拡大や職域拡大、ワークライフバランス推進等の取組みを行っている企業が認定される「あいち女性輝きカンパニー」に認定されました。今後、このような認定取得も含め、女性が活躍できる体制を拡充していきます。
c. 育児・介護との両立支援
当社グループでは、育児では男女問わず「育児時短勤務制度」の利用を、また、介護支援では「介護休業」「介護休暇」の利用に加えて、状況によっては雇用形態の選択も可能とするなど、社員一人ひとりが仕事と子育てや介護を両立できる制度を整備しています。
d. 働きがいの向上
当社グループでは、年に一回、社員が今後取り組みたい仕事の他、希望する職種や勤務地、会社・所属部署への要望などを経営層へ伝えることが可能となっております。申告された希望職種などについては、社員のキャリア実現を支援するため、人事異動を検討する際の参考にされています。またキャリア以外の職場環境の改善などについても、必要と思われる場合には積極的に対応するようにしています。
当社グループでは、気候変動や地震などの自然災害、労働災害、情報漏洩など、サステナビリティを含めた様々なリスクに対応するため、2006年に「リスク管理規程」を制定し、リスク分類に基づく評価をしています。また、リスクマップを作成し、リスク分類ごとに責任部門を定めて対応する体制を整えています。
リスクマネジメントを円滑に進めるため「リスク管理委員会」を置き、代表取締役社長を委員長とし、当社グループのリスクを網羅的・総括的に管理しています。重要度の高いリスクについては対応策を決定し、リスクコントロールに努めるとともに、リスクマップを定期的に見直し、新たに発生したリスクについても、速やかに担当部門を定めて対応します。部門ごとのリスク管理状況は内部監査室が監査し、その結果を定期的にリスク管理委員会と取締役会に報告し、改善策を審議・決定しています。
① 気候変動
当社グループでは環境方針を定めて環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、環境負荷低減に取り組んでいます。また当社親会社である㈱ダイセキによるグループ全体における温室効果ガス排出量の削減及びエネルギー使用量の削減については、①SOCPE1+SCOPE2を2027年度までに34%削減(2021年度比)、②SCOPE3を2027年度までに20%削減(2021年度比)、③2030年度までに再生可能エネルギー由来電力100%に切替の3つの方針を定めており、当社グループにおいてもその方針に沿った活動を進めてまいります。
CO2排出量(SCOPE1・2・3)
②人財の育成及び社内環境整備
当社では下表のとおり、人的資本・多様性に関する目標を設定し、進捗管理を行っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループの事業に係る主要な法的規制は以下のとおりであります。当社グループでは、コンプライアンス勉強会を定期的に実施するなど、法的規制の遵守を徹底しておりますが、これらの規制に抵触することがあった場合には、営業の停止命令や許可取消し等の行政処分を受ける可能性があります。
当社グループの土壌汚染処理事業は、原位置での処理の場合と、土壌を掘削し、掘削除去した土壌を処理する場合があり、原位置での処理と土壌の掘削については、土木工事に該当するため、「建設業法」の規制を受けます。
当社グループは、土木工事業等について「特定建設業」の許可を取得しておりますが、万一、「建設業法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループは、産業廃棄物の中間処理を主たる業としており、当該事業は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、「廃掃法」という。)及びその関連法令等の規制を受けます。基本法である「廃掃法」では、廃棄物の適正処理のための様々な規制があります。当該事業を実施するには、基本的に、各都道府県知事又は政令市長の許可が必要とされ、また、産業廃棄物の処理施設の新設・増設に関しても各都道府県知事又は政令市長の許可が必要となります。
当社グループは、「廃掃法」に基づいて、産業廃棄物の中間処理を行うために必要な許可を取得しておりますが、万一、「廃掃法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループの土壌汚染調査事業は、工場跡地等の不動産の売買時や、同土地の再開発時等に汚染の有無を確認するための調査ですが、「土壌汚染対策法」で土壌汚染状況調査を義務付けられた区域の調査は、環境大臣による指定を受けた「指定調査機関」が調査を行うこととされております。
当社グループは、「指定調査機関」の指定を受けております。当社グループは過去において行政処分を受けた事実はありませんが、万一、「土壌汚染対策法」に抵触し、「指定調査機関」の指定を取り消された場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの土壌汚染処理事業は、「土壌汚染対策法」で許可を受けた「処理業許可施設」で処理を行っております。当社グループは過去において行政処分を受けた事実はありませんが、万一「土壌汚染対策法」に抵触し、「処理業の許可」を取り消された場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループの計量証明事業は、土壌中の有害物質の分析や、廃棄物の成分分析を主に行っており、当該事業は「計量法」の規制を受けます。当社グループは、「計量証明事業」の認定を受けております。当社グループは過去において行政処分を受けた事実はありませんが、万一、「計量法」に抵触し、「計量証明事業」の認定を取り消された場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループのPCB事業は、微量PCB廃棄物の撤去処分に係る一連の業務を行っておりますが、当該事業は主として「PCB特別措置法」及び「廃掃法」の規制を受けます。万一、「PCB特別措置法」及び「廃掃法」に抵触し、当該事業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループのBDF事業は、主にBDFの製造販売を行っておりますが、当該事業は主として「消防法」及び「廃掃法」の規制を受けます。当社グループは、「消防法」及び「廃掃法」に基づいて、BDFの製造販売を行うために必要な許可を取得しておりますが、万一、「消防法」及び「廃掃法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループの営業収入のうち、重要な部分を占める土壌汚染調査・処理の需要は、企業の環境投資や「土壌汚染対策法」及び各地方自治体により施行される条例等の影響を受けます。
例えば、土壌汚染調査が必要な場合とは、有害物質使用特定施設の使用が廃止された場合や、3,000㎡以上の土地の形質変更を届け出て都道府県知事等に汚染の恐れがあると判断された場合(土壌汚染対策法)等、法令や条例等により具体的に決められており、その際の調査方法、浄化対策等もそれぞれ法令や条例等で基準が設定されております。
今後、法令や条例等が新設又は改正される場合、その内容によっては、調査、処理の機会が増加し、調査方法、浄化対策等の基準もさらに厳しくなると考えられます。その結果、土壌汚染調査・処理の需要が拡大する可能性がありますが、法規制の強化に当社グループが対応できない場合は、拡大する需要を受注に結びつけられず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
土壌汚染調査・処理事業に参入している業者は増加しており、競争は激化しております。これは土壌汚染調査・処理事業の市場が、2003年2月に施行された「土壌汚染対策法」を契機に拡大した新しい市場であり、多くの業種からの新規参入者があったためです。当該事業には、地質調査会社(現地ボーリング調査)、計量証明事業者(土壌の有害物質分析)、建設業者(原位置浄化、掘削除去)、産業廃棄物処理業者(土壌処理)等の多くの業種が、それぞれの得意分野(( )内は各社の得意分野を示す。)を活かして参入しております。当社グループは、ある特定の得意分野だけではなく、調査計画を立案するコンサルティング業務から、現地調査、サンプリングした土壌の分析、汚染土壌の処理まで、幅広く自社で対応できる「土壌汚染対策のトータルソリューション企業」として、他社との差別化を図っておりますが、競合他社との受注競争が激化する中で、厳しい条件で受注する傾向が進みますと、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
土壌汚染調査・処理は多くの場合、工場閉鎖、土壌調査、工場解体、土壌処理、新しい建築物(マンション等)の建設という一連の工程の中で実施されます。したがって、何らかの事情で工場閉鎖時期が遅れる、又は解体工事の着工が遅れる等、当社グループに起因しない事情により、土壌汚染調査・処理の実施時期が遅れる場合があります。また、汚染の状況によっては、追加調査が必要な場合があります。このような場合は、調査期間が長引く若しくは土壌汚染処理の実施時期が遅れることもあるため、結果として売上計上時期が計画から遅れる可能性があります。
汚染土壌の処理費用は、事前に土壌のサンプルをもとに積算し、処理価格を決定しますが、実際の処理土壌が土壌のサンプルと状況が違う場合は、処理費用が変動する可能性があります。その場合は、顧客へ説明し、処理価格の変更を行いますが、例えばリサイクル処理か、それ以外の処理かによって利益率が異なるため、利益率の低い処理方法を選択せざるを得ない場合は、予定の利益を確保できない可能性があります。
国内のセメント工場は、当社が汚染土壌を加工して生産したリサイクル原料を継続的に受入れる態勢をとっております。しかしながら、各工場では、設備の定期修理等で、半月から1ヶ月程度、セメント生産を全部又は一部停止する場合があります。その期間中は、原料の受入を中断、又は受入量を減らすため、汚染土壌の受入態勢に変化があります。停止時期は、各工場でまちまちであるため、当社グループは、全国規模で、受入先の工場を確保することでリスクを回避しており、他社との差別化を図っておりますが、万一、セメント工場の受入態勢の変化に対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) コストの不安定化
当社グループの主要コストは外注費や運賃であり、原油価格、需給バランス、為替、地政学リスク等の影響により、これらの価格が急激に変動することによって、高騰した原価を販売価格に十分に転嫁できない場合や、高騰した原価の販売価格への転嫁により当社グループのサービスに対する需要が減少する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 信用供与
受注案件の中には、当社グループが顧客へ長期の信用供与を行うものもあります。信用供与を行う受注に際しては、顧客の信用力を評価した上で、必要に応じた保全強化(債務保証、取引信用保険の付保等)を実施しています。しかしながら、実際に債権回収が滞った場合には、貸倒発生等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) M&A等の実施による影響
当社グループは、将来に向けて持続的な成長を図るため、M&A(企業買収や資本提携)を通じた事業領域及び展開エリアの拡大を推進し、企業価値の向上を目指しております。しかしながら、M&A後における想定外の事象の発生や、市場動向の大きな変動等が原因で事業計画が当初計画通りに進捗しない場合、のれんの減損処理を行う必要が生じた場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ダイセキグループ内における当社の位置付けは「第1 企業の概況 3 事業の内容 [事業系統図]」に記載しておりますが、このダイセキグループの経営方針等に変更が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が発生する可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、米国の政権交代に伴う政策転換や世界各地での紛争など混沌とした世界情勢が続くものの、国内における企業業績や雇用・所得環境の改善などにより、穏やかな回復基調で推移しました。
当社グループの業績に大きな影響を及ぼす国内の不動産取引については、2024年土地取引件数は前年同期比3%増加し、2025年年初の公示地価も上昇傾向にあるなど、日銀の利上げ後にもかかわらず底堅い状況で推移しました。その一方で、国内建設市場において、公共投資や民間設備投資は回復傾向にあるものの、人手不足の深刻化や建設資材の高騰が懸念されております。
このような状況において、当社グループは土壌汚染調査・処理事業を中心にリサイクルや環境分野への展開も積極的に進めてまいりました。その結果、当連結会計年度の売上高は、19,944百万円(前年同期比17.4%減)、営業利益2,253百万円(同19.3%減)、経常利益2,256百万円(同19.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,234百万円(同30.7%減)となりました。
前年業績を牽引した大規模工場地中埋設廃棄物・汚染土壌撤去工事案件が収束し、当連結会計年度では減収減益となりました。しかしながら、関東での大規模汚染土壌処理・工事案件など、翌期も継続が見込まれる高付加価値案件の受注獲得があり、当連結会計年度の業績に寄与しました。これにより、売上高と営業利益ともに計画を上回り、順調に推移しております。その結果、土壌汚染調査・処理事業におきましては、売上高14,348百万円(前年同期比26.1%減)、営業利益1,990百万円(同27.1%減)となりました。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)事業は、2027年3月末までの処理期限に向けた駆け込み需要があり、売上及び利益は好調な結果となりました。連結子会社であるグリーンアローズ中部及びグリーンアローズ九州においては、廃石膏ボードの入荷量は底堅く推移し、売上・利益ともに安定的な業績となりました。また前中間連結会計期間から連結子会社となった杉本商事は、夏場の廃ペットボトルの処理数量増加等により連結業績に貢献いたしました。その結果、資源リサイクル事業におきましては、売上高5,851百万円(前年同期比17.9%増)、営業利益1,081百万円(同7.4%増)となりました。なお、BDF(バイオディーゼル燃料)事業は、将来キャッシュ・フローの回収可能性を鑑み、当連結会計年度において減損損失83百万円を計上しました。
当連結会計年度末における流動資産の残高は7,476百万円(前連結会計年度末は7,930百万円)となり、453百万円減少しました。主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したものの、現金及び預金が減少したことによるものであります。
固定資産の残高は21,554百万円(前連結会計年度末は19,421百万円)となり、2,133百万円増加しました。主な要因は、土地が増加したことによるものであります。
この結果、総資産は29,031百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,679百万円増加しました。
当連結会計年度末における流動負債の残高は5,318百万円(前連結会計年度末は5,737百万円)となり、419百万円減少しました。主な要因は、未払法人税等が減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における固定負債の残高は4,746百万円(前連結会計年度末は3,939百万円)となり、806百万円増加しました。主な要因は、長期借入金が増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は10,064百万円となり、前連結会計年度末に比べ387百万円増加しました。
当連結会計年度末における純資産は18,966百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,292百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、利益剰余金が増加したことによるものです。
キャッシュ・フローにつきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて1,038百万円減少し、1,410百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の増加額及び法人税等の支払額により、総額で1,851百万円の収入(前連結会計年度は3,225百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に静岡の土地取得や機械設備の更新等により、総額で3,393百万円の支出(前連結会計年度は3,184百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入れによる収入及び長期借入金の返済による支出により、総額で504百万円の収入(前連結会計年度は1,521百万円の収入)となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度における土壌汚染調査・処理事業の受注実績・受注残高の増加は、関東エリアでの大型の受注があったことによるものです。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
当連結会計年度末における財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要は、土壌汚染調査・処理に係る外注費や労務費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備投資資金需要は、リサイクルセンター新設及び改修等に係る投資資金によるものであります。
運転資金や設備資金は、自己資金により調達することを基本とし、必要に応じてグループ会社及び銀行等の金融機関からの借入により調達していく考えであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、財政状態及び経営成績に影響を与える会計上の見積りを行う必要があります。当社はこの見積りを行うに当たり、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
当社グループは、事業の成長及び収益力の向上、並びに資産の効率的な運用の観点から、自己資本利益率(ROE)を、重要な経営指標と位置付け、ROEの改善及び向上を行うことを目標としております。
ROEは目標を10%以上としており、当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度と比較して4.1ポイント減少の7.2%となっております。
今後も引き続き、更なる企業価値向上のために、財務基盤を強化し事業投資に対する適正な評価と最適な資本構成を実現し、徹底した経営効率の改善により、資本効率をさらに高め、経営の安定性及び株主還元を重視して参ります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。