第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「会社存立の原点は社会の役に立つことである」「経営は創造である」「社員の幸福は会社の発展と共にある」との経営理念を掲げております。また、当社グループ社員の行動指針は、「未来に向かう」「最良に挑む」「独創を貫く」「率直を好む」を謳っております。今後も、これらを普遍的な価値観として尊重しつつ、2018年12月に迎えた創立70周年を機に、2030年までに目指す姿を示す新たな経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION“NAVI NEXT 2030”」を策定しました。

当社グループは、2030年までの目指す姿を「事業ビジョン」と「人財・企業風土ビジョン」で構成する新たな経営ビジョンとして明示し、その実現に向けた諸活動を展開することを通じて、顧客提供価値と企業価値の両面を持続的かつ発展的に高める方針です。

 

「FURUNO GLOBAL VISION“NAVI NEXT 2030”」の概要は、次のとおりです。

 

① 事業ビジョン「安全安心・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」

この事業ビジョンは、「当社グループのすべての事業は、海でも陸でも、安全安心かつ快適であることを前提に、人と環境に優しい社会や航海の実現を目指す」という、“わたしたちが最も優先する価値”を表現しています。これまで当社グループが事業活動で重視してきた「安全安心」「環境」という提供価値を、「安全安心」と「快適」、「環境」と「人」の視点へ拡大することで、既存事業での顧客提供価値の拡充や周辺領域での新規事業育成を推進するための新たな道しるべとします。

当社グループは、世界初の魚群探知機実用化を成し遂げた1948年の創立当時から現在に至るまで、「事業を通じた社会的課題の解決」を果たすべき使命としてまいりました。一方で、国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が国際社会の共通認識となる中、企業が事業活動を通じてその実現に貢献することが求められております。当社グループは今後も、創立当初からの価値観を大切に受け継ぎながら、企業運営並びに事業活動の基本方針の中にSDGsを積極的に取り入れることにします。

 

② 人財・企業風土ビジョン「VALUE through GLOBALIZATION and SPEED」

企業運営における重要な経営資源である人財と企業風土については、経営理念並びに行動指針を普遍的な価値観として尊重した上で、事業ビジョンの実現に向けて重点的に強化・評価する基軸として「VALUE through GLOBALIZATION and SPEED」を謳い、3つのポイントを定めました。

 

(VALUE)さらなる価値共創への挑戦

わたしたちはビジョンを深く理解し、高い自律性を持って行動していくことで、社会へのさらなる価値を、当社グループに関わるすべてのステークホルダーと「共に」創り上げていきます。

 

(GLOBALIZATION)グローバリゼーションの浸透

わたしたちはグローバルマインドセットを醸成し、ビジョン実現に向けて、社内外の資源を所属、地域、国等の属性に依らず最適かつ最大限に活用いたします。

※グローバルマインドセット:異なる文化・習慣・価値観を持つ人たちやグループに対して影響を与えることを可能とする思考を意味しています。

 

(SPEED)迅速かつ柔軟な判断と行動

 わたしたちは変化することに躊躇せず、新しい時代を創り続けることを目指します。

 

 

当社グループは、創立から間もない1955年に「世界のフルノ」を宣言し、海外展開を加速してまいりました。現在では連結売上高のうち海外売上比率が6割を超え、世界80カ国以上に開発・生産・販売・サービス拠点を有するようになりました。今後は、顧客提供価値と企業価値の最大化を目標に、事業と市場の特性に応じて当社グループの人財と組織機能をグローバリゼーションの観点からより有機的に活用するとともに、顧客や取引先との連携を積極的に推進することで「名実ともに世界のフルノ」となることを目指します。

 

「FURUNO GLOBAL VISION “NAVI NEXT 2030”」の実現は、次の3つのフェーズに分けて段階的かつ速やかに挑む方針です。

  フェーズ1・・・変える

 事業の体質改善による資源の捻出・体力強化のフェーズ(2021年2月期~2023年2月期)

  フェーズ2・・・つなぐ

 技術と事業の柱・収益構造の構築に向けた行動のフェーズ(2024年2月期~2026年2月期)

  フェーズ3・・・変わる

 あるべき企業規模・収益性・事業構造を実現するフェーズ(2027年2月期~2031年2月期)

 

(2)中期経営計画及び目標とする経営指標

当社グループは、2023年2月に、2024年2月期から2026年2月期までの3年間を対象期間として、フェーズ2となる中期経営計画(以下中計)を策定しました。体質改善・体力強化による利益水準の向上と、売上規模拡大による利益の確保、また、将来成長に向けた投資も同時に推し進め、企業価値向上に努めています。経営指標としては利益の確保に加え、資本効率の観点から、最終年度にあたる2026年2月期には、自己資本経常利益率10%以上を計上し、配当性向30%以上を安定的に実現できる経営基盤の構築を目指しています。

 

このような中計及び目標とする経営指標の中、当社グループは当連結会計年度における業績において、「FURUNOGLOBAL VISION "NAVI NEXT 2030"」で掲げた2031年2月期の成長目標である連結売上高1,200億円、営業利益率10%を6年前倒しで達成しました。これを受け、2026年2月期については、2024年2月期から2026年2月期までの3年間を対象期間とする「フェーズ2中計」の最終年度であることから、各施策を継続しつつ、"NAVI NEXT 2030"で掲げた売上・利益目標の水準を安定継続させることを目指します。

尚、前倒しでの目標達成を踏まえ、2027年2月期からスタートする「フェーズ3中計」の策定を進めています。新中計では、投下資本を意識した収益性向上を図り、ROIC(投下資本利益率)経営の導入や、今後の成長投資や株主還元含めたキャッシュアロケーションの開示等、新たに当社がありたい姿を示す予定です。開示は2026年1月下旬から2月頃を予定しています。

 

※2010年2月期から2018年2月期の平均自己資本経常利益率は6%

 

フェーズ2中計の2年目である当連結会計年度は、自己資本経常利益率21.3%、配当性向は30.3%となりました。

 

主な基本施策

① 利益水準の向上

体質改善・体力強化による収益性改善に焦点をあてたフェーズ1の取り組み(品質水準向上、在庫適正化、商品開発機能・総合モノづくり機能の最適化)の継続及び強化(水平展開による対象範囲拡大)によるコストダウンを目指します。

 

② 売上規模の拡大

将来成長への投資を進めていく更なる原資獲得に向け、リモート管理による高品質なサービスの提供、舶用Digitalization等を中心とした舶用DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、成長期待事業へのリソース投下等を推し進め、売上規模の拡大を目指します。

 

 

③ サステナブル経営の実行

未来に向けた将来事業の道標となる長期方針を表明し、戦略的な投資枠を活用した事業創出の強化、新規事業・領域拡大事業の早期事業化、人財投資、ダイバーシティ等を推し進め、サステナブル経営の実現を目指します。

 

個別事業戦略

(舶用事業)

新造船竣工時から保守メンテナンス、機器換装に至るまで、船のライフサイクルを通して顧客に寄り添う「ライフサイクルサポート」を舶用事業の共通理念とし、市場及び地域別の戦略・戦術によるグローバルな販売・サービスを推し進めます。また新規取り組み分野における売上の拡大と舶用DXの推進を加速させます。

 

① グローバルに展開する販売体制を最適化しつつ、市場に近い現場での製品・ソリューション開発を強化することで新たなグローバル戦略の進化を図ります。

 

② サービス品質の更なる向上とともに、予兆サービス及びリモートメンテナンスを促進し、顧客の満足度と収益力向上を目指します。

 

③ 舶用事業で培った強みを活かし、養殖や洋上風力等、新たな取り組み分野での事業展開を加速させます。

 

④ データを活用した製品・サービスを市場投入し、新たな顧客価値の創造を目指します。また既に獲得した自律航行支援技術の普及によって、「安全安心・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」に貢献していきます。

 

(産業用事業)

事業ポートフォリオを見直し、防衛装備品事業やモバイル基地局向けに製品展開する時刻同期事業等、今後市場の成長が見込まれる成長期待事業にリソースを集中させ、収益の向上を図ります。

 

(無線LAN・ハンディターミナル事業)

顧客の求めるDXの実現に貢献する新たなシステムソリューションを展開し、無線LANアクセスポイントの文教市場での更なるシェア拡大とともに、新たな市場を開拓し事業領域の拡大を目指します。

 

フェーズ2 主な基本施策の取り組み結果について

① 利益水準の向上

生産リードタイム短縮を図る合理化策の水平展開等のスマート化推進により工場の生産効率を向上させるとともに、販売価格の適正水準への調整や収益性による取り組み案件選別を実施しました。また、信頼性評価展開による故障の未然防止強化及び品質の安定性向上やロスコスト率低位安定を図るとともに、サイバーセキュリティ対応や製品安全に対する体制強化に取り組みました。在庫については、最近の好調な市場環境の中、長納期部材の確保により評価損等の会計処理が依然発生しておりますが、当費用の抑制に向け適正な在庫水準を見極めてまいります。

3年目となる当連結会計年度は、導入を進めているPLMを運用し、製品の企画設計から製造販売までのデータの一元管理による業務効率と生産性の向上を図り、コスト削減につなげてまいります。

 

② 売上規模の拡大

舶用事業においては、サービス及び機器拡販機会の創出や将来の売上規模拡大に寄与する新たな取り組みを推進しました。特に、当社の強みであるグローバルネットワークを活用した保守サービスにリモートサービスを加えた攻めのサービスの推進や、サービス品質及び作業効率の向上に向けた当社グループ独自のサービスノウハウを集約したデータベースの構築を図っています。またプレジャーボート向け事業において戦略商品を上市し、米州を中心に販売拡大を推進しています。加えて、自律航行支援システムや漁業データ活用クラウドサービスの開発継続や実践投入を進めました。産業用事業においては、成長期待事業と位置付けるGNSS時刻同期製品の海外顧客向け販売拡大を推進しました。また、防衛装備品事業においては、高まる需要に応じて生産体制を強化し、売上が増加しました。

3年目となる当連結会計年度は、船のライフサイクルサポートの強化に向けて保守サービスへの投資を継続します。また、新たに設置した「DX推進部」を中心に、データやデジタル技術を活用し顧客との接点を拡大することで、新たな顧客価値を創出し、ビジネス機会の拡大を図ります。

 

③ サステナブル経営の実行

社長を委員長とする「サステナブル委員会」を新たに開催し、サステナビリティに関する取り組みへのガバナンス体制や、気候変動に伴うリスクと機会、人的資本経営への取り組み等の報告及び議論を実施しました。気候変動への取り組みについては、TCFD提言に準拠したシナリオ分析に基づき、リスクと機会の把握から影響項目に対する対応状況を整理しました。人的資本への取り組みについては、社会情勢や会社を取り巻く環境の変化に対応するため、新たな人事ビジョンを策定し、人財戦略にもとづく施策を実施しました。

3年目となる当連結会計年度は、各施策を推進していくことに加え、本年度に策定予定の新中計と連動したマテリアリティに見直しを行う予定です。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

世界経済は政策金利の上昇や地政学リスクの高まりにより、不安定で不確実性の高い状況にあります。このような中、当社グループは「グローバルビジョンNAVI NEXT 2030」で掲げた売上高1,200億円、営業利益率10%の目標を6年前倒しで達成しました。フェーズ2中計最終年度である2026年2月期には、この売上・利益水準を安定継続させることを目指し、引き続き利益率向上の取り組みを推進し、持続的成長を可能とする基盤強化に努めます。また、以下の施策に取り組むことでグループ全体の企業価値を高めてまいります。

 
① 新たな価値の創造

商船向け事業における「ライフサイクルサポート」戦略や、漁業向け事業における「勘と経験の見える化」ソリューションのグローバル展開により、収益性は向上しましたが、依然改善の余地があります。主力の舶用事業は中期的に安定した売上収益が見込まれますが、海運や水産業における人手不足や水産資源減少などの社会課題が多様化し、顕在化しています。このような背景から、自律航行による運航支援の取り組みや資源管理型漁業推進の流れが加速しており、当社グループは舶用電子機器のグローバルトップメーカーとして関連技術の研究開発や船舶DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した新たな顧客価値の創出をリードしていく必要があります。

産業用分野でも、防衛予算の増加に伴い市場規模が拡大する防衛装備品事業や、無線通信技術を応用したGNSS時刻同期事業において、顧客や社会の要請に応える価値を創出し、更なる成長を目指します。

 

② 働き方改革の推進

2019年4月より働き方改革関連法が順次施行され、2020年4月には派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行されました。また、70歳までの雇用延長の法令化が検討されるなど、従来の雇用や勤務のあり方を見直す動きが広がっています。当社は経営理念のもと、従業員が心身ともに健康で、明るく活き活きと働けるよう、健康意識向上と安心して働き続けられる職場環境の整備に取り組んでいます。その結果、経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営有料法人(ホワイト500)」に2019年度から7年連続で認定され、女性の活躍支援に取り組む企業として厚生労働大臣が認定する「えるぼし(2つ星)」を取得しました。また、ワーク・ライフ・バランスを推進する一環として、休日対応の見直しを含む長時間労働の削減、有給休暇取得の奨励、在宅勤務対応やフレックスタイム制度の拡充などを進めています。

 

 

③ 人財の育成、確保

当社グループは、従業員を「人財」として重要な経営資源と認識しています。現状では中核人財に占める中途採用者が多く、海外現地法人も多数有するため、中途採用者・外国人の割合は比較的良好な水準にありますが、持続的な成長には優秀な人財の育成と確保が不可欠です。特に「NAVI NEXT 2030」の新規領域を実現するためには、イノベーションや新しい価値創造の源泉である人財の多様性確保が重要です。多様なスキルや個性を持つ全ての人財が成長・活躍できる環境の整備に取り組みます。また、失敗を恐れない価値の共創、自主性・自律性の高い人財を増やすことを目的に、各事業部門及びグループ会社毎の表彰に加え、グループ全体の最優秀賞を選出する社員表彰制度を設けています。ダイバーシティを推進し、性別、国籍、年齢に関係なく採用・評価を行い、先進的かつ独創性のある人財発掘に努めます。

 

④ コーポレート・ガバナンスの取り組み

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでいます。経営の健全性や透明性を高めるため、任意の指名・報酬諮問委員会及びコンプライアンス委員会を設置し、ガバナンスが機能する組織体制を構築することでリスク回避や不祥事防止に努めています。また、執行役員制度により、経営と執行を分離し、取締役会の意思決定・監督機能と経営方針・戦略立案機能に重点を置いた体制強化を図るとともに、業務執行機能を強化し、事業環境の変化に迅速適切に対応してまいります。
 

 ⑤ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み

当社グループは、継続的な市場評価とPBR(株価純資産倍率)の向上を目指し、株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)の達成を目標としています。株主資本コストは約8%と認識しており、ROEを10%以上に維持することで企業価値の向上を図ります。また、投下資本を意識した収益性向上のため、2027年2月期からROIC(投下資本利益率)経営の導入準備を進めています。

さらに、将来事業の適正化や不確実性の解消、成長期待の拡大を図るため、株主や機関投資家と積極的かつ建設的な対話を行い、資本コストの低減を目指します。経営方針や成長戦略の理解促進に加え、対話から得られた意見を経営層と共有し、持続的な成長と企業価値向上に役立てます。また、ホームページ等を通じて株主総会や決算内容等の情報提供を行い、ご要望やご質問に迅速かつ適切に対応してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りです。

 

サステナビリティに対する基本的な考え方

当社グループは、経営理念である「会社存立の原点は社会の役に立つことである」「経営は創造である」「社員の幸福は会社の発展と共にある」を実現することで様々な価値を提供してきました。「社会の役に立つ」ことはFURUNOの存在意義そのものであり、今までも、そしてこれからも社会の役に立ち続けるため、事業を通じた持続可能な地球環境・社会への貢献と、持続的な企業価値向上に取り組んでおります。

また、新たにサステナビリティ基本方針を定め、持続可能な環境・社会の実現に貢献することで収益も成長も獲得し、更なる貢献への挑戦が可能になる好循環を回し続けることが、当社グループの考えるサステナブル経営の姿であることを示しました。今後もサステナブルな経営の実践に向け、取り組みを進めてまいります。

 

(ガバナンス)

当社グループでは、サステナビリティに関する取り組みや重要事項は、社長を委員長とする役員会「サステナブル委員会」において審議・決定するとともに、取締役会に報告する体制を整えています。

「サステナブル委員会」は「リスク管理委員会」と適宜連携し、サステナビリティに関する各取り組みの進捗や課題が報告される他、とりまく状況を踏まえ、取り組みの方向性や優先度についても審議を行います。また、必要事項については取り組みの具体化に向け、各主管部門・執行機関に指示・提言を行い、社会課題解決への取り組みを促進させています。

 

(リスク管理)

当社グループは、経営に重大な影響を与えるリスクに対して、子会社を含めた当社グループ全体におけるリスクを洗い出し、その低減を図るとともに、緊急事態が発生した場合に被害を最小限に抑える体制を整備・維持しています。また、各リスクを適切に管理するため、社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設け、講じている対応策の効果も踏まえ、リスクが顕在化する可能性と業績に与える影響度を整理し、全社的リスクの評価や重要性の判断、各リスク対策の主管部門及び各対策機関を定め、リスク低減を図っています。

サステナビリティに関しては、リスク管理委員会とサステナブル委員会が連携・協議のうえ、必要に応じて全社リスクに統合し、「リスク管理委員会」に報告しています。

 

(戦略)

当社グループは、サステナビリティの推進を「経営理念に基づいた経営の実践」と定義し、その実践を通じて企業価値の向上に取り組むこととしております。経済価値と社会価値を持続的に創出していくため、経営として取り組む重要課題(マテリアリティ)をSDGsの169のターゲットと当社主力事業である舶用事業と関係の深い水産業、海運業における社会課題の抽出を通じて特定し、これらの重要課題への取り組みを進めるべく、さまざまな施策を遂行しております。

なお、マテリアリティに対する取り組みにつきましては、弊社HPに掲載しておりますのでご参照ください。

https://www.furuno.co.jp/csr/furuno_csr/materiality.html

 

マテリアリティ

構成要素

取り組み

海洋・地球環境の

保全

海難事故、海洋汚染の防止

・船の自律航行による海難衝突事故回避の実現

・海難事故に起因した重油漏れ、物資流出等による環境汚染 

 の防止

水産資源保護と

食料需要増加への対応

・漁労機器データの漁獲情報を活用した管理型漁業の支援

・養殖業支援による養殖魚の生産高増加の支援

環境に優しい製品づくり

・「地球環境の保全」「循環型社会の形成」「生物多様性の

 維持」の3つを重要な軸としたCO2削減、廃棄物リサイク

 ル、省エネ設計等の環境負荷の少ない製品づくり

地域社会の発展と

人財の育成

船員・漁業者の高齢化・人手不足の解消

・無人運航船の実現、陸上からの操船支援、リモート管理に

 よる業務負荷の低減

・勘と経験に頼らない、海況予測、漁場予測等のデータを用

 いたスマート漁業実現の支援

地域社会との共存共栄

・持続可能な漁業の実現を通じた漁業者支援

・文化振興、環境保全等の分野で地域に根ざした社会貢献

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・多様な人財の採用、人財の育成、生産性を高める働き方に

 よる企業競争力の強化

事業推進のための

経営基盤の

保全と活用

DXの活用

・舶用DXをはじめとした新たな事業創出に向けたDXの推進

知的資産の活用

・知的財産の取得、活用による企業競争力の強化

コーポレート・ガバナンス

・適法性、適正性、効率性及びリスクマネジメントを追求

 すると同時に、ステークホルダーへの説明責任を果たし、

 透明性の高い経営を実践するガバナンスの実施

持続可能な調達の推進

・取引先さまとの定期的な戦略や方針等の共有による相互理

 解の深化

・サプライチェーン全体のCSR活動の推進

安全保障輸出管理の徹底

・関連法令や国際的経済制裁等に基づいた厳格な該非判定、

 取引先審査の実施

 

 

(指標と目標)

サステナビリティに関する指標と目標は、「気候変動への取り組み」「人的資本経営の取り組み」の中で記載しています。

 

気候変動への取り組み

当社グループでは、環境への配慮を重要な経営課題の一つと認識し、「地球環境の保全」「循環型社会の形成」「生物多様性の維持」の3つを重要な軸として、環境負荷の少ない製品づくりを進めるとともに、事業活動における環境負荷の低減に取り組むことで、持続可能な社会の実現を目指しています。

※古野電気環境方針は以下をご参照ください。

https://www.furuno.co.jp/csr/environmental/policy.html

 

(ガバナンス)

気候変動に関する当社グループの取り組み全般は、「ISO14001 環境事務局」が統括しており、「サステナブル委員会」と連携し、関連する取り組みを推進しております。

 

 

(戦略)

気候変動による当社グループへの影響については、TCFD(気候関連財務情報タスクフォース)に準拠した枠組みに基づき、主要事業である舶用事業を対象にIPCCやIEA、関連する業界の外部文献を調査し、情報を整理したうえで、1.5℃及び4℃シナリオによる「リスクと機会」の重要度や影響度を整理し、抽出しました。抽出した「リスクと機会」に対する定性・定量分析の結果を基に対応策を検討し、その総括として移行リスク、物理リスク、機会、影響、対応策を一覧化しました。

シナリオ分析の結果、舶用事業における商船向け事業や漁船向け事業においてマイナスの影響を与えると想定される一方、これらへの対応は新たな事業創出の機会にもなるものが想定され、当社グループは気候変動に対して一定のレジリエンスを有していると認識しています。これらの認識に基づき、気候変動への対応を通じて、企業価値の向上と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 


 

(リスク管理)

特定したリスクに対しては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 サステナビリティに対する基本的な考え方 (リスク管理)」で記載した体制で管理しております。

 

(指標と目標)

当社グループのGHGプロトコルガイダンスに準拠した2022年度のおおよそのCO2排出量はScope1で約1,500t-CO、Scope2で 約4,500t-COと認識しております。2050年カーボンニュートラルの達成に向け、「フルノカーボンニュートラルプログラム」と題した取り組みから、Scope1、Scope2については2030年度に2013年度比50%削減の達成に向けた取り組みを進めています。2024年度は社有車のEV導入に向けた充電設備の設置を行ったほか、再生可能エネルギーを基にした電気調達へ変更を行いました。Scope3については、取引先企業との勉強会を開催し、サプライチェーンにおける供給者への協力、理解の呼びかけを行いました。今後も削減に対する啓発活動の継続等、自社で実現できる取り組みを継続してまいります。

 

人的資本経営の取り組み

 ①人事基本方針

1)基本的人権の尊重について

当社グループは、フルノグループ行動規範の中で「私たちは、人種・民族・国籍・宗教・信条・出生・性別・年齢・社会的身分・心身の障害等による差別を行わず、基本的人権を尊重します。」と定めております。人財戦略の策定・実行においてはこの行動規範を前提とし、すべての従業員が安心して業務に精励できる環境と相互に共存し得る豊かな社会の実現に取り組んでまいります。

 

2)人的資本経営について

当社グループは、経営理念である「会社存立の原点は社会の役に立つことである」「経営は創造である」「社員の幸福は会社の発展と共にある」を実現することで様々な価値を提供してまいりました。これからも社会の役に立ち続けるためには社会課題の解決や新しい価値創出の担い手である「人財」の活躍が不可欠であります。そのため、当社グループでは「人財」を最も重要な経営資本と位置付けており、2030年までに達成したい当社グループの人財や企業風土の在り方を「人財・企業風土ビジョン」として定めております。このビジョンに基づき、「人財」の価値を最大化する人財戦略を策定・実行してまいります。

 

 ②人財育成方針

当社グループでは、「人財・企業風土ビジョン」に基づき、人財育成方針を「高い目標を掲げ社会への貢献と幸福のためにグローバル視点で価値共創に挑戦する人財を育てる」としております。人的資本経営を推進し、人財育成方針を達成する上で、新たに「新人事ビジョン」を策定し、解決すべき3つの「重要課題」、当該課題のために取り組むべき7つの「人財戦略」とそれに紐付く具体的な9つの「施策」を設定いたしました。

これらを当社グループ内に展開・実行することで事業戦略を遂行し、当社が掲げる事業ビジョン、「安心安全・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」の達成に取り組んでまいります。


 

 ③社内環境整備方針

当社では社内環境整備方針を「多様な人財が能力を最大限発揮できる安心で快適な環境を提供する」と定め、従業員が働きやすい環境を整備することを重要な経営課題と考えております。健康経営の推進や事業所の就業環境改善などの働き方改革を実施し、多様な人財が働きやすい環境の整備・維持に継続して取り組んでまいります。

 

 ④人財戦略及び指標と目標

現在、当社グループは「FURUNO GLOBAL VISION “NAVI NEXT 2030”」(2021年2月期~2031年2月期)に取り組んでおり、主な基本施策として、「利益水準の向上」「売上規模の拡大」「サステナブル経営の実行」を掲げております。これらの基本施策と連動する形で、上記「人財育成方針」に基づいた人財戦略及び施策を策定しております。2026年度における人財戦略及び指標と目標は下表の通りです。

 2026年度の目標達成に向け、経営戦略と密接に連動した人財戦略を実行してまいります。

 

人財戦略

具体的施策

主要KPI(2026年度目標)

・人財、企業風土ビジョンの浸透

 

・チャレンジ意欲の向上

新ビジョン・人財育成方針の経営発信

・エンゲージメントサーベイ「バリューの実践」の

 ポジティブ回答:

 グループ全体 76%(国内全体 73% 海外全体 84%)

 (2024年度実績 グループ全体 75%(国内全体 72%

 海外全体 83%))

・CEOと現場のメンバーが対話するタウンホール

 ミーティングの実施:累計14回実施、120人参加

 (2024年度実績:6回、49人参加)

・エンゲージメントサーベイ「イノベーション」の

 ポジティブ回答:

 グループ全体 61%(国内全体 61% 海外全体 63%)

 (2024年度実績

 グループ全体 60%(国内全体 60% 海外全体 62%)

ビジョン浸透に向けた経営トップとの

対話の「場」づくり

マネジメント力強化による意識・行動変革

・社員一人ひとりの能力の最大化と能力・適性に応じた人財配置の最適化

個々人の成果や挑戦を促進する公平性・納得性の高い幹部社員人事制度の構築

・新幹部社員人事制度導入完了

・タレントマネジメントシステムの導入完了

・DX教育費用の投下:2024年度比 10%以上増加

・能力開発及び育成目的のジョブローテーション実績

 :60件 (2024年度実績:54件)

柔軟で効果的な意思決定支援ができる人財のデータ活用、見える化

DX人財の強化

人事ローテーションの推進

・経営人財の育成

新任執行役員向けトップマネジメント研修実施

・教育費用:2024年度比 10%以上増加

サクセッションプランの策定

選抜型育成研修制度の実施(一般層・幹部層)

グローバリゼーション浸透に向けた環境整備

 

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

経営理念・ビジョンのグローバル全社での共有、推進

・グローバル理念教育(歴史編・理念編)の実施完了

・多様な働き方の推進

 ・男性の育休取得率:5年平均50%以上

  (2024年度実績:46.7%)

 ・女性幹部社員比率:6%以上

 (2024年度実績:5.8%)

 ・新卒採用に占める女性採用割合:15%以上

   (2024年度実績:30%)

・店所事業所におけるスーパーフレックスの

 利用人数拡大

・海外インターン制度実施人数:累計5人

多様で柔軟かつ生産性向上に向けた働き方改革の推進

グローバルリーダー育成を見据えた教育プログラムと育成配置の実施
(国内人財⇔海外人財)

・健康経営の推進

健康経営優良方針認定制度における「健康経営優良法人」認定取得

・「健康経営優良法人」認定の継続取得

・ストレスチェックの受験率:90%以上

 (2024年度実績 98.3%)

中途入社者への本社管理スタッフとの定期面談実施

 

 

※1 主要KPIの目標値は、エンゲージメントサーベイ「バリューの実践」、「イノベーション」の項目及び

ストレスチェックの受験率を除き、当社単体の目標値としております。なお、ストレスチェックの

受験率は当社及び国内子会社の目標値であります。

※2 エンゲージメントサーベイにおける肯定的な回答(非常にそう思う、そう思う)を「ポジティブ回

答」としております。

 

 ⑤人財戦略の主な取り組み概要

1)社員一人ひとりの能力の最大化と能力・適性に応じた人財配置の最適化

社員一人ひとりの能力の最大化と能力・適性に応じた人財配置を実現するため、ジョブローテーションを通じて幅広い経験を持った人財の育成を積極推進しております。具体的には職能別に担当役員をリーダーとする人財育成委員会を定期開催し、対象層別に視野・経験の拡大につながる人財配置の検討・決定を行っております。中長期目線で社員一人ひとりのスキルや経験・適性などを考慮したローテーションを実施することで、社員一人ひとりの能力の最大化を図っております。

また、フェーズ2中期経営計画では競争力強化に向けたDXを推進しており、それをリード・実行するDX人財の育成に向けた取り組みを行っております。具体的には全社DXプロジェクトの推進に向けた生成AI実践活用ワークショップの開催、選抜型生成AIトレーニングの実施、業務をDX化するためのデータ活用力習得を目的としたDX基礎教育研修、全社員を対象にDXの理解を深めるためのEラーニング教育も実施しており、DX推進のための基礎能力向上と企業文化の変革に着手しております。

 

2)経営人財育成

フェーズ2中期経営計画に掲げるサステナブル経営の実現のためには優秀な経営人財を継続的に育成することが重要であります。当社グループでは一般層から経営者候補層(執行役員)まで全ての人財層に対し、階層区分を設け成長ステージ毎の期待役割に沿って継続育成していく教育体制を構築しております。具体的には選抜型育成施策として、若手社員を対象に管理職候補の早期育成を目的とした若手選抜研修を実施し、幹部層には、経営視点の醸成を目的とした幹部選抜研修を実施しております。これらの研修は社内だけでなく、他社の優秀人財との交流を図りながら次世代経営候補者育成を積極的に展開しております。

また、部門長以上の各ポジションに対するサクセッションプランとして、各候補者別の育成計画に基づいて実務課題の解決経験による育成機会を付与しており、経営者候補である執行役員に対しては、執行役員就任時に次期取締役候補者として必要とされる視座とビジネススキルの付与を目的に、トップマネジメント研修を実施しております。

 

3)ダイバーシティ&インクルージョンの推進

フェーズ2中期経営計画では、サステナブル経営実現のための目標として「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を掲げており、多様な人財の確保と多様な人財が成長・活躍できる風土の醸成に向けて環境整備を進めております。これらを推進するための取り組みとして、D&I研修を管理職や全従業員に対して実施しております。

また、部門横断の女性メンバーによる社長直轄「スマイルプロジェクト」を起点とし、専任組織としてD&I推進課を新設しました。当事者の視点からキャリアアップや仕事と家庭の両立に関する課題抽出・社内への理解浸透活動を行っており、2024年度は女性活躍の支援策として女性リーダー育成研修や管理職向けダイバーシティマネジメント研修を実施しました。さらなるダイバーシティ&インクルージョンの推進を図るため、2025年3月よりD&I担当役員を選任し、2025年度は幹部社員を対象としたD&I研修やアンコンシャスバイアス研修、女性社員を対象としたキャリア形成研修の実施を予定しております。

 

4)健康経営の推進

当社グループは、社員一人ひとりが心身ともに健康で、イキイキと働き続けられる社内環境を目指しております。それを実現するため、2018年3月に「FURUNO健康宣言」を制定し、健康管理体制を強化するとともに従業員の健康意識向上に向けた取り組みを推進しております。また、2022年9月には、当社グループが実施する各種健康施策が健康経営における課題の解決につながるかを体系的に整理した「健康経営戦略マップ」を策定し、従業員の「健康」を強く意識した経営に取り組んでおります。運動支援、禁煙支援、メンタルヘルス対策、疾病予防対策、食事支援及び女性の健康支援などの取り組みを通じて、組織の活性化と生産性の向上、ウェルビーイングの実現を目指します。

なお、当社はこれまでの健康経営への取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2019年度から7年連続で認定されております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 国際情勢等の影響について

当社グループは、日本、アジア、欧州、米州等の様々な国・地域に商品を供給しております。これら国・地域の経済状況の変化や対象市場での当社商品に対する需要の変化、また、米中貿易摩擦やウクライナ情勢の長期化等による地政学リスクの高まりから、安全保障、人権関連を中心に国家の政策・法律の変更、関税の引き上げ、製品供給・技術提供の制限等が発生する事が懸念されております。それにより、生産・物流・営業活動が制限を受け、顧客への製品供給に支障をきたす場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として関係国の政治・経済情勢や法規制・関税の動向等を、関係部署・関係会社にてグローバルでモニタリングし、最新状況を踏まえた対策を講じております。また、海外子会社を含むグループ全体として適切な貿易管理を行うために、代表取締役社長を最高責任者とした安全保障貿易管理体制の整備や、輸出入に関する規制・新興技術等に対する取引制限等の政策に対して分析を行い、関係する従業員への教育や必要に応じた取引形態やサプライチェーンの見直し等を行うことにより、事業への影響の低減を図っております。

 

(2) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の秘密情報を保有しており、外部からの攻撃や、内部的過失や盗難等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざん又は情報システムの停止等が引き起こされる可能性があります。このような事態が生じた場合、信用低下、損害賠償等の費用の発生、又は業務の停止等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 

対応策として「情報セキュリティ基本方針」を定め、当該情報の盗難・紛失等を通じて第三者が不正流用することを防ぐため、情報の取り扱いに関する管理を強化するとともに、法規制強化への対応等も都度実施しています。また、情報セキュリティ認証基準であるISO27001の取得、高度化するサイバー攻撃に対する技術的対策、情報リテラシーを高めるための社員教育の実施、当社グループを装った不審メール・詐欺サイトに関する社内外への注意喚起等も行っております。インシデントが発生した場合や早期警戒対応時には、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)等の体制により、継続的な監視・情報収集、インシデント対応を行い被害拡大防止・早期鎮静化を図っております。

 

(3) 調達・生産について

当社グループは、商品を製造するにあたって高品質な原材料、部品等をタイムリー且つ必要数入手するため、信頼のおける仕入先を選定しています。しかし、予期できない自然災害や事故等によるサプライチェーンへの大きな影響、仕入先の経営状態悪化による部品の供給制限や製造中止、市場での需要増加による供給制限等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、環境への配慮等、サプライチェーンを通して、社会からESG観点での高度な対応を求められています。当社グループは仕入先に対してCSR調達の徹底を図っていますが、仕入先における対応不備により、調達に影響があった場合、商品の販売にも影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として仕入先の所在地情報を一元管理し、地震・水害や工場火災等の発生時に、影響を早期に把握する体制を整備するとともに、第三者機関を活用し、仕入先の財務情報をはじめとする経営リスクを定期的に評価し、リスクレベルに応じた対策を実施しております。また、当社グループのCSR活動をサプライチェーン全体で実践すべく、仕入先に対して積極的な人権対応やGHG排出削減等の啓蒙活動、協力要請及び、必要な支援に努めております。

 

また、急激な需給環境の変化等により、原材料、部品等の供給不足が続き、生産の遅延が避けられず商品の販売に影響がある場合、及び原材料や部品等の著しい価格変動が商品原価の上昇を招いた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 対応策として仕入先との関係強化・調整や関係各部門の連携による生産管理の強化等により影響を最小限に抑えることに努めております。

 

(4) 為替変動について

当社グループは、海外子会社及び代理店を経由して海外市場へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の割合は当連結会計年度において70.3%と高い状況にあります。このため、為替相場の変動は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、社内規程に基づき事業活動の中で発生する為替取引リスクを正確に把握・管理し、適切な為替リスクヘッジを行うことにより、為替差損を極小化する施策を実施しております。また、為替リスクヘッジ取引は、将来の市場変動による損失の回避、コストの確定等を目的とし、事業活動から生じる為替取引に限定し、実需に基づかない投機取引は行わないことを基本方針としております。

 

(5) 人財の確保について

当社グループの将来の成長・発展は、科学・技術、マネジメント分野等での優秀な人財の確保に大きく依存しています。当社グループは、事業の拡大やグローバル化の推進を図るため、積極的な採用活動を行っていますが、人財確保における競争は年々高まっており、それが困難となった場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として目標管理制度に基づいた公平な評価・充実した処遇制度等の仕組みを構築するとともに、自律型人財やグローバル人財を育成し、当社グループの価値観、知識及びモノづくりのDNAを伝える教育プログラムの拡充や転勤制度・勤務形態・諸手当等の見直しによる勤務体制や労働環境の整備を行い、在籍している従業員の流出防止や当社グループの求める人財の獲得に努めております。

 

(6) 自然災害等について

当社グループは、地震、火災、台風、洪水等の災害や感染症の流行の発生時にも、事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行する義務がありますが、当社グループの本社・研究開発拠点・主要工場は兵庫県南部に集中しており、同地域において大規模な地震、その他事業の継続に支障をきたす災害、事故の影響、世界的な経済活動の停滞等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、定期的な防災訓練の実施及び社員の安否確認システムの構築を行うとともに、南海トラフ巨大地震や首都圏直下地震等の大規模地震に対する事業継続計画(BCP)を策定して災害時の体制整備や資機材の備蓄を行っております。また、感染症の流行に対し、事業運営を可能な限り維持するために必要な対応・措置を定める等の対策に取り組んでおります。加えて、事務所の高台・内陸部への移転等、中長期的な対策にも取り組んでおります。

 

(7) 舶用事業の市場環境変化について

当社グループの連結売上高に対する舶用事業の売上高比率は当連結会計年度において85.6%と、高い水準を維持しております。対象となる漁業向け市場は資源減少に伴い世界的に漁獲高・漁船数の管理が強化されており、商船向け市場はこれまで大きな景気変動を繰り返しています。プレジャーボート向け市場は欧米の景気及び個人消費動向に影響を受けます。漁業向け市場における管理漁業化の一層の進展や商船需給の悪化、欧米諸国の景気の悪化等に伴い、従来の舶用電子機器の需要は縮小する可能性があります。また、自律航行をはじめとする、業界における大きな転換に対応できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、予測される市場変化に対応できる体制構築のほか、サービス業務の収益向上、新規分野への取り組み、舶用DXの推進、産業用事業等の拡大を目指していく方針であります。

 

 

(8) 知的財産権について

当社グループは、自社が製造する製品に関連して、特許等の知的財産権を保有しておりますが、当社グループが保有する知的財産権に対し異議申立がなされたり、無効請求がなされる可能性があります。また、当社グループが知的財産権に関し訴訟を提起されたり、当社グループが自らの知的財産権を保全するために訴訟を提起しなければならない可能性があります。このような重大な係争問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、自社が保有している知的財産権の権利確保及び他社が保有している知的財産権の調査による係争発生のリスク低減を図っております。

 

(9) 価格競争について

当社グループの各製品の市場において、新たな競合先の台頭や競合他社の低価格商品の投入等により価格競争が激化した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、フェーズ1中計より取り組んでいる在庫・品質・生産・開発に係るコスト削減の継続や、IoTを活用した高付加価値商品の開発や拡販等に取り組んでおります。

 

(10) 品質について

当社グループは、ISO規格認定された品質システムを構築し、それに従った各種商品の開発や製造を行い、品質チェック体制の整備を図り、品質監査を行う等グループをあげてすべての商品の品質向上に継続的に努めております。しかしながら、品質上の欠陥(規制物質含有を含む)や、それに起因するリコールが発生する可能性があります。当社製品のリコールや製造物責任の追及がなされた場合、回収コストや損害賠償等の費用が発生し、また売上が減少するおそれがあります。さらに当社ブランドを冠した製品の品質上の欠陥によりブランドの信用が失墜し、企業としての存続を危うくする事態を招くことも想定されます。これらが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として国際規格ISO9001で認定された品質システムを構築し、それに従った開発・製造や、本社の品質関係部門による指導等により、品質管理体制の整備・強化に努めるとともに、製造物責任賠償保険に加入する等の対策を講じております。また、製品・システムに関するサイバーセキュリティ基本方針の制定や脆弱性の報告受付フォームを当社ホームページに開設する等、製品・システムのサイバーセキュリティ確保を進めております。

 

(11) 法規制・コンプライアンスについて

当社グループは、事業の展開において適用を受けている、国内外の各種法令・規制や行政による許認可等に違反した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として、法令・社会規範・契約・社内ルール等に則った活動を推進するために、社外の弁護士や監査役を含めた「コンプライアンス委員会」を設置するとともに、国内外の役員・従業員へ各種研修や教育を行い、周知・啓蒙に努めております。また、コンプライアンス違反の予防・把握のために、社内外に相談・通報窓口「フルノほっとライン」を設けた内部通報制度を整備しております。

 

(12) 環境・気候変動について

当社グループは、大気汚染、水質汚染、有害物質、廃棄物、商品リサイクル及び土壌・地下水の汚染、気候変動等に関する種々の環境関連法令及び規制等の適用を受けておりますが、自然災害、事故等により、環境汚染が発生する可能性があります。また、将来、環境規制への適応が極めて困難な事象や不測の事態が発生する可能性があります。このような事態が生じた場合、信用低下、損害賠償等の費用の発生、また環境対応に関する費用の増加や又は業務の停止等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策として環境関連法令及び規制等に従った商品の開発や製造を行い、チェック体制の整備を図り、監査を行う等、グループを挙げて環境保全の対応を実施しております。また、CSR活動をサプライチェーン全体で実践すべく、当社資材調達基本方針を取引先にも共有し、環境配慮の要請等を行うとともに、環境情報の適切な開示に取り組んでまいります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

2023年7月4日に行われたSARL ROBIN MARINEとの企業結合について前連結会計年度に暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、各国の金融政策を背景とした物価情勢や、ウクライナ紛争の長期化、中東情勢の緊迫化による地政学的リスクの高まり等、先行きが不透明な状況が続いたものの、緩やかな回復基調となりました。米国は、政策金利の引き下げがあったものの依然として高い水準で推移し、インフレ率も高止まっています。一方で、底堅い雇用や所得環境を背景とした個人消費の増加により景気は堅調に推移しました。欧州は、堅調な個人消費を背景に緩やかな回復基調となりましたが、長期化する製造業の不振等が影響し、足元では伸びが鈍化しました。中国は、2024年末にかけての景気刺激策や米国による対中制裁関税実施前の駆け込みとみられる輸出の増加により回復しましたが、不動産投資や個人消費の低迷等により低調に推移しました。わが国においては、堅調な個人消費やインバウンド需要等を背景に緩やかに回復しました。

このような経済環境の中、当社グループは、2030年までに目指す姿を経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION“NAVI NEXT 2030”」として定め、事業ビジョン「安全安心・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」及び人財・企業風土ビジョン「VALUE through GLOBALIZATION and SPEED」を目指した経営を推進しております。その中で、利益水準の向上、売上規模の拡大による成長投資の資源捻出、サステナブル経営の実行を主な基本施策とする中期経営計画フェーズ2(2024年2月期~2026年2月期)の2年目を終えました。

当社グループの関連する市場において、舶用事業のうち商船向け市場では、資材価格や人件費の上昇により船価は高位で推移しました。しかしながら、GHG(温室効果ガス)排出量削減のための代替燃料船の需要は高く、2024年1月から12月の年間の受注量は2000年代後半の造船ブーム以降の最高水準となりました。それに伴い、造船会社の手持ち工事量は高い水準を保ちました。漁業向け市場では、欧州や国内の需要が低調に推移しました。プレジャーボート向け市場では、ボート購入時のローン金利の影響や物価高を背景に北米の中小型艇を中心に需要の伸びが鈍化しました。

産業用事業では、ITS・GNSS市場における国内の自動車販売は、小型自動車の販売減少の影響等により低調に推移しました。5Gエリア拡大に伴う携帯電話向け基地局数は高水準を維持しました。ヘルスケア市場においては、IVD(体外診断用医療機器)等の機器設置需要は堅調でした。防衛装備品事業における国内の防衛関連市場は、防衛予算の増額に伴い拡大しました。

無線LAN・ハンディターミナル事業における国内の教育ICT市場では、ICT整備に関する通信インフラ機器の更新需要は低調に推移しました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高1,269億5千3百万円前年同期比10.5%増)、売上総利益529億6千9百万円前年同期比24.4%増)となりました。営業利益131億8千1百万円前年同期比102.1%増)、経常利益141億5千8百万円前年同期比73.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益114億5千7百万円前年同期比83.6%増)となりました。

なお、当連結会計年度に適用した米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ151円及び164円であり、前年同期に比べ米ドルは約7.3%、ユーロは約7.6%の円安水準で推移しました。

 

 

セグメント別の業績は、次のとおりであります。セグメント利益は、営業利益ベースの数値であり、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。

 

① 舶用事業

舶用事業では、商船市場でのGHG排出削減を目的とした新造船の需要が増えました。また、2000年代後半の造船ブーム期に建造された既存船が機器の換装期を迎えているほか、新造船納期の長期化により中古船の換装需要も高まりました。それに伴い、商船の新造船向け及び既存船向けの機器販売が大幅に増加し、保守サービスも好調に推移しました。米州では、大型艇を中心にプレジャーボート向け機器の販売が増加しましたが、漁業向け機器の販売は減少しました。欧州では、商船の既存船向け機器の販売は高い水準を維持し、保守サービスも好調に推移しました。アジアでは、商船の新造船向け機器の販売と保守サービスが増加しました。日本では漁業向け機器の販売が減少しましたが、商船向けの機器販売及び保守サービスが増加しました。

この結果、舶用事業の売上高は1,086億7千8百万円前年同期比10.7%増)となりました。セグメント利益は133億3千4百万円(前年同期比87.7%増)となりました。

 

② 産業用事業

産業用事業では、ヘルスケア事業における生化学分析装置の販売が減少しましたが、ITS・GNSS事業においては、OEM受託製品の販売や、時刻同期製品の販売が増加しました。また、防衛予算の増額を背景に防衛装備品事業の売上は増加しました。

この結果、産業用事業の売上高は142億1千4百万円前年同期比11.0%増)となりました。セグメント利益は4億9千6百万円(前年同期比103.6%増)となりました。

 

③ 無線LAN・ハンディターミナル事業

無線LAN・ハンディターミナル事業では、需要環境は低調に推移しましたが、無線LANアクセスポイントの販売は僅かに増加しました。

この結果、無線LAN・ハンディターミナル事業の売上高は36億9千4百万円前年同期比3.9%増)となりました。セグメント利益は1億9千7百万円(前年同期比49.0%増)となりました。

 

④ その他

その他の売上高は3億6千5百万円前年同期比13.1%増)、セグメント損失は1億2千5百万円(前年同期のセグメント損失は1億2千2百万円)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日 至 2025年2月28日

 

金額(百万円)

前年同期比(%)

舶用事業

57,694

△6.5

産業用事業

12,777

△0.8

無線LAN・ハンディターミナル事業

1,878

+18.2

その他

合計

72,351

△5.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

 

② 受注実績

当社グループの製品は、一部の受注生産を除き見込生産を行っております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日 至 2025年2月28日

 

金額(百万円)

前年同期比(%)

舶用事業

108,678

+10.7

産業用事業

14,214

+11.0

無線LAN・ハンディターミナル事業

3,694

+3.9

その他

365

+13.1

合計

126,953

+10.5

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析

1)資産、負債及び純資産の状況

 ①  資産

流動資産は前連結会計年度末と比較して53億2千万円増加し、916億5百万円となりました。これは主に、現金及び預金43億2千7百万円増加したことによるものであります。

固定資産は前連結会計年度末と比較して37億8千9百万円増加し、319億1千3百万円となりました。これは主に、その他有形固定資産が10億8百万円及びソフトウエア12億5千9百万円、それぞれ増加したことによるものであります。

以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末と比較して91億1千万円増加し、1,235億1千9百万円となりました。

 

 ②  負債

流動負債は前連結会計年度末と比較して36億9千4百万円減少し、356億9千万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金11億6百万円増加した一方で、電子記録債務40億8千6百万円減少したことによるものであります。

固定負債は前連結会計年度末と比較して16億2千1百万円増加し、152億9百万円となりました。これは主に、リース債務9億9千9百万円及び長期借入金4億9千4百万円、それぞれ増加したことによるものであります。

以上の結果、当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末と比較して20億7千3百万円減少して、508億9千9百万円となりました。

 

③ 純資産 

純資産は前連結会計年度末と比較して111億8千3百万円増加し、726億1千9百万円となりました。これは主に、利益剰余金90億8千8百万円及び為替換算調整勘定18億2千1百万円、それぞれ増加したことによるものであります。この結果、当連結会計年度の自己資本比率は前連結会計年度の53.4%から5.1ポイント上昇し、58.4%となりました。また、中期経営計画(2024年2月期~2026年2月期)で経営指標として設定した自己資本経常利益率については、前連結会計年度の14.4%から6.8ポイント上昇して21.3%となりました。

 

(当社グループの自己資本経常利益率の推移)

 

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

自己資本経常利益率(%)

11.0

8.0

5.2

14.4

21.3

 

(注) 自己資本経常利益率(%)の算出方法:経常利益/自己資本

 

2)キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フロー108億2千万円増加した一方で、投資活動によるキャッシュ・フロー45億8千8百万円財務活動によるキャッシュ・フロー26億9千6百万円それぞれ減少したことにより、前連結会計年度末と比較して42億5千5百万円増加154億1千3百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は108億2千万円となりました(前連結会計年度は27億1千3百万円の増加)。これは主に、税金等調整前当期純利益が増加したことによるものであります。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は45億8千8百万円となりました(前連結会計年度は35億8千9百万円の減少)。これは主に、有形固定資産の取得及び無形固定資産の取得によるものであります。

 

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において財務活動による資金の減少は26億9千6百万円となりました(前連結会計年度は35億5千7百万円の減少)。これは主に、配当金の支払によるものであります。

 

(当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移)

 

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

自己資本比率(%)

55.1

55.7

49.0

53.4

58.4

時価ベースの自己資本比率(%)

40.4

37.9

28.8

62.6

57.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.2

1.6

△3.0

6.4

1.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

86.8

67.4

△75.1

41.7

41.7

 

(注)1 各指標の算出方法は、次のとおりです。

自己資本比率(%) : 自己資本/ 総資産

時価ベースの自己資本比率(%)  : 株式時価総額/ 総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) : 有利子負債/ 営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) : 営業キャッシュ・フロー/ 利払い

2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。

4 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。

5 有利子負債は、連結貸借対照表上に計上している短期借入金1年内返済予定の長期借入金及び長期借入金を対象にしています。

6 利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

 

3)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、安定した収益を確保するための運転資金及び将来成長に向けた投資に必要な資金は、営業活動によるキャッシュ・フローを源泉としておりますが、資本コストや自己資本比率等を総合的に勘案し、必要に応じて金融機関からの借入により調達しております。

なお、当連結会計年度末における資金の残高は154億1千3百万円、有利子負債の残高は178億8百万円となっております。

また、金融・資本市場の混乱や緊急で資金が必要となる場合に備え、複数の金融機関とコミットメントライン契約及び当座借越契約を締結し、資金の流動性を確保しております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える会計上の見積りを行っております。これらの見積りは、過去の実績等を勘案し慎重に検討したうえで行い、継続して評価・判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性によって異なる場合があります。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、創業以来、漁業及び海運業の安全安心の向上に寄与すべく、舶用電子機器の研究開発を継続して行ってまいりました。

舶用電子機器の「漁業用の魚群探知機」に使用する超音波技術、同じく「漁業用の無線機」に使用する電波通信技術、「舶用レーダー」に使用するマイクロ波技術、「舶用位置測定装置」に使用する電波航法技術等を中心に始まったフルノの研究開発の分野は、現在では機器のデジタル化に伴う情報処理技術、画像処理技術及びメカトロニクス技術へと広がっております。

事業分野の視点では、舶用電子機器市場に留まらず、この技術を応用し他市場での社会課題解決を目指して、陸上産業機器、医療機器、無線LAN機器及び防衛装備品機器へと展開を広げてきました。これらの研究開発業務は、各要素研究を技術研究所、各事業分野の製品開発を各事業部開発部門にて行っております。

組織横断的な視点から各研究開発部門を統括し、全社開発部門に対し、機種開発の共通基盤となる設計技術の水平展開と開発支援を行うことで、開発効率向上による製品上市の加速と設計品質の向上をめざして技術統括部を設けております。また、グループの研究開発活動にかかわる知的財産権の拡充を図り、適切に管理・活用する専門の組織として知的財産部を設けております。R&D統括センターは廃止とし、保有していた機能については実務担当部署へ職務移管を行いました。これにより、業務の迅速化をすすめてまいります。

今までもそしてこれからも、安全安心の向上に寄与するとともに、新たな社会課題の解決に向けた研究開発を進めてまいります。

当連結会計年度における研究開発費の総額は6,303百万円であり、売上高に対する比率は5.0%であります。

セグメント別の主な研究開発活動及び今後の展開は次のとおりであります。

 

(1) 舶用事業

商船・漁業・プレジャーボート市場向け分野

当社グループの中核事業部門として、技術研究所の成果物を、しっかりとした品質と信頼性を確保しつつ、統一的なデザインをもって商品化することで、フルノブランドを確立してまいりました。

近年、航海の安全性向上及び船員の労務負担軽減を解決すべき重要な社会課題と位置づけ、自律航行の実現に向けた研究開発を進めています。AR(拡張現実)技術を用いて航行に必要な情報を重畳表示する「AR ナビゲーションシステム」、VR(仮想現実)技術を用いて見張り業務を支援する「VRナビゲーションシステム」に加えて、LiDARとカメラ等のセンサーを用いて船体と岸壁との距離・角度を高精度に計測して安全な離着岸を支援する「離着岸支援システム」も、日本海事協会の革新技術を対象とした新たな認証サービス「イノベーションエンドースメント」において、製品・ソリューション認証を取得し、安全運航を支援する新しいソリューションとして展開を進めています。また、日本財団が2020年2月より推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」に参画しており、その一環として陸上から複数船舶を航行支援する「陸上支援センター」を当社社屋内に設置しました。

一方、資源管理型漁業や漁業経営の効率化に資するスマート漁業に向けた取り組みにも注力しております。具体的には、魚群探知機等のセンサー情報を遠隔からモニタリングする定置網漁業向けシステムを上市したほか、漁船に装備されている各センサーからの情報を集め、過去の操業振り返りや操業計画立案に活用する研究開発を進めています。

また新規事業としてスタートした養殖支援事業は、養殖関連の機器製造・販売に加えデータ解析サービスの事業展開を進めてきました。魚体重推定システムでは養成魚の成長推移の把握を支援するため、養殖管理支援アプリAqua Scopeを活用し、養魚管理の高度化に向けた研究開発を進めています。

今後も、社会課題の解決に資する研究開発を推し進め、新たな顧客価値の創出に継続して取り組んでまいります。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は4,887百万円であります。
 

 

(2) 産業用事業

ITS事業、GNSS事業

社会インフラのOEM供給に始まったITS事業と、舶用機器事業の衛星測位システム技術を基礎としたGNSS事業は、無線通信技術を応用したETC車載器や、車載用GNSS受信機等の位置情報機器及びこれを応用したタイミング機器※等を加えることで事業拡大を進めてきました。

※衛星測位システムは測位原理により、位置だけでなく正確な時刻(タイミング)も知ることができ、この機能は日々進化する高速情報通信インフラに欠かせないものとなっています。

 

ETC車載器での無線通信による車両認識と、ナンバープレート読取装置での画像による車両認識の両方を組み合わせた車両入退管理サービスであるFLOWVIS(フロービス)では、ソリューション開発に注力し、顧客要望に合わせたカスタム対応を展開しました。また衛星測位システム技術では、GNSSチップに搭載するナビゲーション向け、時刻同期向けアプリケーションソフトウエアを拡充し、競合に対する技術優位性を高めました。今後も、無線技術と衛星測位システム技術を活用した製品開発を進めると同時に、これら技術を融合させた新たな価値創造に資する技術開発にも取り組んでまいります。

 

ヘルスケア事業

当社グループの持つ超音波技術の医療機器分野への展開から始まったヘルスケア事業の研究開発は、生化学自動分析装置のラインナップ拡大、超音波骨密度測定装置の機能向上を進めてまいりました。

 

当連結会計年度は、中型生化学分析装置の次機種開発を行いました。今後、お客様評価に向けて取り組みをすすめてまいります。また、中国子会社との連携により価格競争力の強化もすすめました。引き続き、品質の向上と効率的な開発を目指し、プロセス改善にも取り組んでまいります。

 

防衛装備品事業

航空機用電子機器の供給から始まった当社の防衛装備品事業は、舶用事業と同様に、顧客からの強い信頼を得ており、昨今の防衛力増強等も含め、防衛省のニーズに対応しております。信頼ある商品・サービスを通じて防衛装備品を持続的に提供することが、国民の安全・安心・平和の維持に貢献するという認識のもと、事業成長のためのニーズの先取りと衛星測位や水中音響分野における将来技術の先行開発に取り組んでおります。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は542百万円であります。

 

(3) 無線LAN・ハンディターミナル事業

舶用電子機器開発で培った無線通信技術、情報処理技術を陸上物流に応用することから始まった無線LAN・ハンディターミナル事業は、顧客ニーズにマッチした信頼性の高い商品と手厚いサポートをもとに、文教市場で高いシェアを持つに至っております。


 当連結会計年度は、Android OS 11を搭載し、二次元コードに対応したハンディターミナルfinpad Ag1を上市したほか、最新のWi-Fi規格であるIEEE802.11beに準拠したアクセスポイントを上市しました。文部科学省が推進するGIGAスクール構想の第2フェーズ(NEXT GIGA)に向けて、ネットワーク商品の強化のため、ラインナップの拡充やクラウド管理システムの機能向上を図ってまいります。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は386百万円であります。

 

 

(4) その他 

技術研究所では既存事業への貢献及び新規事業の創出に向けた要素研究に取り組んでおります。当連結会計年度では、建設現場向けWi-Fiシステム、マイクロ波技術を用いた水蒸気観測システム、カメラを用いた河川水位監視システム、AIによる海況予測モデル等の新規事業に関する機器・サービスの研究開発に注力いたしました。また、全社的な新規事業のアイデア創出、事業性の仮説検証及び事業化の実行・支援を目的としたビジネスラボを新設しました。今後も「技術のフルノ」を牽引すべく研究開発に取り組んでまいります。

 

新規事業創出への挑戦

 持続的な成長を実現するために通常の事業活動と切り離した「戦略投資枠」を導入し、新技術や新規事業の創出を推進しております。今後は、DXを活用した事業領域の拡大に注力していくほか、自社で生み出される技術やアイデアと、他社の持つ知見を活用した新規事業創出活動に取り組んでまいります。
 

当連結会計年度における事業セグメントに帰属しない研究所における研究開発費の金額は488百万円であります。