第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、プランニング力、デザイン力、演出技術力等を駆使することにより、集客と感動の環境を創り出し、顧客のビジネスの繁栄と成功に貢献していくことを基本方針としております。この実現のため、グループ各社の専門性を高め、その総力を結集して企画段階から運営までの幅広い領域で顧客のニーズに適合したサービスの提供をおこなってまいります。それにより、企業ブランドをさらに向上させることでグループの企業価値を高め、継続的に成長してまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

ミッション : 空間創造によって人々に「歓びと感動」を届ける

 

ビジョン(ミッションを実現するために、乃村工藝社グループとしてのありたい姿を規定したもの)

      : 一人ひとりの「クリエイティビティ」を起点に、空間のあらゆる可能性を切り拓く

 事業価値と社会的価値の向上を通じて「企業価値」の向上を成し遂げます。

(事業価値向上)

既存事業を高度に洗練させる

市場別の専門性を高度化し、それぞれの専門性を他市場のニーズに積極的に活用する連携体制を充実させ乃村工藝社グループの圧倒的な総合力を発揮する。

(事業価値向上)

新たな事業領域に挑戦し新しい事業を全社員で興す

時代や社会環境の変化に対応した新しい空間の価値を創造し、空間を活用した新しいビジネスや事業のプロデュースによって、乃村工藝社グループ事業領域の無限の可能性に挑戦する。

(社会価値向上)

社会が必要とする価値を提供する

乃村工藝社グループの掲げる“サステナビリティ方針”のもと、企業の社会的責任・持続可能性に取り組むとともに空間創造を通じた社会課題解決にむけたソーシャルグッド活動を推進する。

そのために=起点となるクリエイティビティの醸成

(働き方改革)

個の力を発揮する働き方に挑戦する

自律した自由な働き方により社員一人ひとりの「個の力=専門性」が遺憾なく発揮され、社内外と積極的に連携・協創できる“働きがい”のある会社にむけた制度改革を行う。

(業務改善)

クリエイティビティに費やす時間的余力を創出する

会議体・報告プロセスの削減やワークフローとシステムの見直しによる効率化で、それぞれの仕事に旺盛なクリエイティビティを発揮するための余力を創出する。

(人財育成)

創造力と実行力を発揮する人財を育成する

多様性を推奨する環境下にあって、創造力と実行力を発揮できる人財を育成することで、不確実と言われる時代においても柔軟に対応できる強靭な組織をつくりあげる。

(R&D)

新たな提供価値創造のための研究開発を実行する

社員の新しい発想やアイディアによって、まだない空間や事業を「創り出す」ための研究開発を実行する。

成長投資

将来の継続的な成長を目指し、3年で70億円以上の投資を行う

 

(3)目標とする経営指標

<2025年度 財務目標>

(事業収益)

連結売上高      : 1,550億円

連結営業利益     :   95億円

連結売上高営業利益率 :     6.1%

成長投資 3カ年合計 :    70億円以上

 

(資本効率)

自己資本利益率(ROE) :   10.0%以上

自己資本比率      :   50.0%以上

 

(株主還元)

純資産配当率(DOE)   :    6.0%以上

 

(4)経営環境ならびに優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

当社グループを取り巻く事業環境は、資材価格や労務費の上昇、価格競争による採算面への影響があるものの、リアルな空間への人流増加や好調なインバウンド需要、モノからコト・体験の消費へのニーズの変化などを背景に、都市再開発による複合商業施設や富裕層向け店舗の増加、あるいはホテルの新設・改装ラッシュ、企業のPR施設による発信拡大など、市場全体として改善傾向にあります。ただし、世界経済全体の不確実性が高まっており、その動向には十分に注視する必要があります。

このような状況のなか、当社グループは、プロジェクトの川上参入による優位なポジション形成を目指すとともに、収益性の改善や人財育成・DX推進による業務効率化など、数々の施策を着実に推し進め、業績の向上に努めてまいります。

さらに、中期経営方針の最終年度となる2025年度は、新規分野の開拓、新しい価値の創出に一段と注力いたします。例えば、スクラップ・アンド・ビルド型から、いいものを長く使う社会へという変化に対応し、再生コンセプト・デザインや独自技術の高い総合力を発揮したサステナブルな商品提供を強化します。また、企業の広報・販売促進分野では、情報発信だけでなく、来場者と企業が社会課題を共有し、社会に提供する価値を体感できる場に進化させます。自治体などの公共空間では、地域の課題を複合的に解決し、交流の歓びや誇りある街づくりを提案するなど、次の時代に向けた多彩な挑戦をすでに始めています。

いつの時代にも、私たち乃村工藝社グループは、豊かな社会にとって欠かすことのできない会社であり続けることで、株主・投資家の皆さまのご期待にそえるよう全力を尽くしてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。)

 

 当社グループでは、経営理念「人間尊重に立脚し 新しい価値の創造によって 豊かな人間環境づくりに貢献する」に根差し、ミッション「空間創造によって 人々に『歓びと感動』を届ける」を追求した事業活動を行っております。

 事業的価値および社会的価値の向上に向けては「サステナビリティ方針」を制定したうえで、この方針に沿う形で「マテリアリティ(重要課題)」を特定し「中期経営方針(2023-2025)」と相互的に連動させることによって、サステナビリティ上の課題解決を事業活動に落とし込んでおります。

 

サステナビリティ方針

 

マテリアリティ(重要課題)

1.企業統治(ガバナンス・リスクマネジメント・コンプライアンス)

・法令および社会規範を遵守し、事業活動を取り巻くリスクの適切な管理に取り組み、環境や社会に配慮した公正で健全な企業活動のためガバナンスを構築します。

 

・コンプライアンスを徹底し、変化に対応できる柔軟でスピーディーな経営の実現

・ステークホルダーとの対話、協働の実践

2.人権尊重、働き方・多様性の受容・人財育成

・事業活動にかかわる人権課題についての理解を深め、人権尊重の責任を果たしていきます。

・社員の健康的な働き方を追求するとともに、年齢、性別、障がいの有無、国籍、人種、価値観など、幅広い多様性を受け入れます。また、人が持つ能力を資本としてとらえ、個々の能力を発揮できる人財の育成に努めます。

 

・多様な人財の活用・育成による創造力の発揮

・働きがいのあるライフワークバランスの推進

・ハラスメントのない安心して働ける環境の実現

3.品質・環境・安全

・提供する商品・サービスの品質や安全水準の向上・改善に取り組みます。

・事業活動における環境負荷を低減し、環境に配慮した調達や新しい技術の導入・開発に取り組みます。

・働く人びとの安全と健康の確保、災害や事故の防止に取り組みます。

 

・サプライチェーンマネジメントによる商品・サービスの信頼性向上

・地球・自然・人間環境を豊かにするモノづくり・コトづくり

・安全・安心な労働環境の実現

4.社会貢献活動

・事業活動等を通じて、文化の発展や地域社会への貢献、また文化や地域を超えた相互理解の促進や次代の創生に資することに取り組みます。

 

・地域資産の継承とコミュニティー形成による地域の活性化

・誰にでも使いやすい空間づくりの実現

・文化的活動との共創・支援による豊かな感性づくり

・スポーツやウェルネス事業の空間づくりによる健康社会の実現

・豊かな人間環境を実現するクリエイティブ人財とエンジニアリング人財の輩出

・クリエイティブな発想と技術革新による空間価値の向上

(注)各マテリアリティに関する取り組みの詳細については、統合報告書に開示をしております。

 統合報告書 : https://www.nomurakougei.co.jp/ir/library/

 

(1)ガバナンス

  当社は、空間創造を通してお客様の事業価値だけでなく社会価値の創出にも貢献し、社会が未来に続く成長を実現するための「よりよい循環」を作りだしていくことを目指しています。この取り組みを着実に推進するためサステナビリティ方針を規定し、その実現に向け取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役 社長執行役員)は、取締役会と各部門、子会社と連携することで課題解決や施策を迅速に実行に移すことを可能としております。サステナビリティ委員会では、特定したマテリアリティを中心に、サステナビリティ経営推進や持続的成長に関する取り組みについて審議・評価し取締役会に報告を行っております。

取締役会

 ↕ 諮問・答申

サステナビリティ委員会

  委員長:代表取締役 社長執行役員

(主要構成員:上席執行役員 他/事務局:経営管理部)

報告↑↓確認・評価

各部門・子会社

 

・当社グループのサステナビリティに関する主な取り組み

2021年5月

取締役に対する株式報酬制度を導入

      6月

健康経営宣言を制定

      10月

サステナビリティ協議会およびサステナビリティ作業部会を設置

2022年4月

サステナビリティ方針を制定

      4月

サステナビリティ委員会を設置

      5月

監査等委員会設置会社へ移行

2023年8月

マテリアリティの特定およびKPIを設定

      11月

取締役会においてサステナビリティ課題に関するディスカッションを実施

2024年3月

人権方針の制定、乃村工藝社グループ行動規範の改訂

人財育成方針および社内環境整備方針を制定

      4月

人権デュー・ディリジェンスに関する取り組みを開始

      5月

取締役に対する報酬を業績や中期経営方針などを指標とした株主目線の制度に改定

 

(2)戦略

 ①人的資本関連

  当社グループでは、中期経営方針に掲げる「事業価値の向上」および「社会的価値の向上」の実現のためには、従業員一人ひとりのクリエイティビティを起点とすることを重要視しています。このため、マテリアリティには「多様な人財の活用・育成」、「ライフワークバランスの推進」、「安心して働ける環境の実現」を掲げ、唯一の財産である人財の育成や、人財を活用するための環境整備に努めております。

人財育成方針

乃村工藝社グループの最大の財産は「人財」であり、企業の成長の源であるという認識のもと、乃村工藝社グループで働くすべての人財が共有する価値観である『ノムラマインド』の浸透をベースに成長ステージに応じた教育プログラムを策定し、OJTを効果的に組み合わせながら事業の推進と拡大に欠かせないプロフェッショナル人財の育成に取り組みます。

 また、社員が自分自身のキャリアに向き合い積極的に自ら学び成長することを奨励し、これを後押しすることで、社員一人ひとりが自律したキャリアを形成できるよう支援します。

 

(取り組みの概要)

・教育体系として「ノムラ育成プログラム」を導入。

営業や制作管理、企画、デザインなど、従業員一人ひとりが担当する業務に応じた「職種別スキル」に加え、全職種に共通の「マネジメント」や「ビジネススキル」、「マインド・スタンス」の4つのカテゴリーで構成された育成プログラムを提供。オンラインを活用しながら、新入社員から中堅社員まで従業員のキャリア形成を企図した内容となっています。また、ラーニングマネジメントシステム(LMS)の導入によって、受講者の学習履歴、テスト結果、理解度などの情報を一元管理することで、教育の質の向上を図っています。

 

社内環境整備方針

乃村工藝社グループは、性別・国籍・思想信条に関係なく、能力や経験を重視した採用を実施します。また、多様で優れた人財が健康的な働き方のもとでやりがいをもってさまざまな環境の変化に挑戦し、新たな価値の創造を実現し続けるため、働き方改革をはじめとする社内環境を整備します。

 働き方改革については、柔軟で多様な働き方の実現や適切な評価・処遇の実現等に取り組みます。

また、人財(社員)が最良のパフォーマンスを発揮するためには、人財の身体的・精神的・社会的に良好な状態(Well-being)の実現が基本であると考え、乃村工藝社の「健康経営宣言」のもと、上記の働き方改革と連動した健康経営の推進に取り組みます。

 

(取り組みの概要)

・健康経営推進の環境整備

社員が活き活きと働くことができる職場環境の整備と健康保持・増進を担う機関として健康管理室を設置。また、社員間のコミュニケーション醸成、食を通して健康意識を向上する場としてRE/SP(リセットスペース)を設置。健康サポート相談窓口、なんでも相談窓口(外部機関)にて社員の悩みや不安を受け止める場を提供。

・健康管理

健康診断受診の必要性の周知・受診促進、人間ドック、婦人科検診の費用補助。

・健康増進対策

健康関連セミナー、感染症対策の社内情報配信・費用補助などを通じた健康増進、コミュニケーション促進。

・健康課題の分析、改善

社員の健康診断データの分析を通じて健康課題を特定し、改善のための施策により中長期的に社員の健康増進をサポート。

 

 ②気候変動への取り組み

(移行リスク)

ディスプレイ事業は、合板や鋼材等の建築資材製造時に温室効果ガス排出を伴う材料を使用いたします。また、気候変動対応の進む海外トップブランドや環境配慮型のオフィス・イベント等の受注といった特性があることを踏まえ、「カーボンプライシング(炭素税や排出量取引制度等の拡大)による運用コストの増加」、「気候変動対応への遅れによる機会喪失」、「持続可能施工需要の拡大」等を関連性の高い移行リスク/機会として特定しています。

 

(物理リスク)

当社グループ事業の特性として、人的資源の持つスキルや能力の発揮が経営に与える影響が大きいことから、「気温上昇による労働条件への影響」のほか、現場施工や資材調達等において自然災害の影響を受ける場合があることに鑑み、「自然災害の甚大化・頻発化」、「災害危険エリアの拡大」などを物理的リスク/機会として特定しています。

 

リスクおよび機会に関する事業に与える影響の評価は次頁のとおりです。

 

 

 

事業に与える影響の評価

リスク

リスク・

機会

リスク・機会要因項目

事業に与える影響

(注)1

時間軸

(注)2

移行リスク

政策・法規制

カーボンプライシング(炭素税や排出量取引制度等の拡大)による運用コストの増加

資材等の製造時CO2排出や施工時のCO2排出に対する炭素税の負担、排出量取引制度等が生じた場合に建設コストが増加する恐れがある

中期~

長期

技術

再エネの調達による追加的コストの発生

再生可能エネルギーの調達により追加的なコストが発生する。

短期

市場

気候変動対応への遅れによる機会喪失

気候変動対応への遅れにより気候変動対応の進む海外トップブランドからの受注や環境配慮型のオフィス・博覧会・イベント等の受注機会が減少・喪失する。

短期

省エネ対応機器の拡大

空調、ガス設備、電化製品等の省エネ機器対応の遅れによる機会喪失

短期

再生材使用の拡大

再生材使用促進により原材料コストが増加する

短期~

中期

評判

気候変動対応への遅れ

気候変動対応への遅れによるステークホルダーからの懸念増加

短期~

中期

物理リスク

急性

リスク

自然災害の甚大化・頻発化

施工現場の被災による作業停止、工程遅延、人件費や資材コストが増加する恐れがある

短期

慢性

リスク

気温上昇による労働条件への影響

従業員や施工現場における就業者の労働生産性が低下する恐れがある

短期~

中期

機会

資源の効率性

気温上昇による労働条件への影響

既存施設のエネルギー効率向上に向けたリニューアル需要が増加する

短期~

中期

持続可能木材による施工需要拡大

持続可能な材料の使用による施工需要の増加

短期~

中期

市場

災害危険エリアの拡大

海抜の低い地域からの移転需要、災害に備えたリニューアル需要の増加

短期~

中期

(注)1.「事業に与える影響」について

大:全社的に大きな影響(10億円規模)/中:全社的な影響(1~9億円規模)/小:全社レベルに至らない(1億円未満)

2.「時間軸」について

リスクおよび機会の影響を受ける時間軸は以下のとおり位置付けております。

短期:0~3年には影響を受ける/中期:3~10年には影響を受ける/長期:10年超に影響を受ける

 

 

(3)リスク管理

  全社的なリスクについては、本社担当役員が委員長を務める「リスク管理委員会」において評価しております。また、災害時の事業継続計画(BCP)にもとづく大規模な震災等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力のさらなる向上に取り組んでおります。

  人的資本および気候変動など、サステナビリティ全般に関するリスクの評価、優先的に対応すべきリスクの識別については、サステナビリティ委員会の中で詳細な検討を行い、重要な内容は取締役会において確認することとしております。優先的に対応すべきリスクの識別は、当社に与える財務的影響、当社の活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われております。

 

(4)指標及び目標

 ①人的資本関連

(重視する指標)

(単位:%)

項 目

目標とする指標

2023

2024

「ノムラ育成プログラム」の利用状況

利用率30以上(3カ年で90%)

37.4

84.0

女性管理職比率

2026年度 15以上

10.7

11.1

障がい者雇用率

法定雇用率以上()

2.47

2.53

育児休暇取得率(男性)

2026年度  60

54.2

63.4

育児休暇取得率(女性)

2026年度 100

100.0

100.0

有給休暇取得率

前期実績(59.6)以上

59.6

57.6

ハラスメント研修の開催

受講率:100

100.0

100.0

ハラスメント研修の開催

理解度:90以上

99.3

99.1

(注)上記の指標および結果は、当社の取り組み状況を記載しております。

 

この他、当社における健康経営推進の経年変化を数値化し、各項目の現状把握をおこなっています。

項 目

2023

2024

定期健康診断受診率

100.0

100.0

喫煙率

28.1

27.2

1カ月当たり平均時間外労働時間時間

31.6

27.5

平均勤続年数

11.7

10.9

 

 取り組みの結果、当社は経済産業省と日本健康会議より「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されております。

 

②気候変動への取り組み

 当社グループは、サステナビリティ方針の1つに「事業活動における環境負荷を低減し、環境に配慮した調達や新しい技術の導入・開発に取り組む」旨を掲げ、CO2排出量削減に向けた取組みを推進しております。現在、Scope1・2の各測定に努めており、その数値結果を踏まえてCO2排出量削減に関する指標の開示をしております。

(単位:t-CO2)

 

2023年度

2024年度

増減率

Scope1

  940

1,003

6.8%増

Scope2

4,334

4,124

4.8%減

(注)1.Scope1およびScope2は、当社および第1 企業の概況「4 関係会社の状況」に記載の全ての連結子会社を対象に、その排出量を集計しております。

   Scope1:燃料(ガソリン、軽油等)の使用による直接排出量

   Scope2:購入した電気等の使用による間接排出量

2.算定データの精緻化を目的として算定方法を見直し、過年度データを遡及して修正しております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業などを遂行するうえで、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

①景気変動

特定の取引先に依存することなく、幅広い顧客からの受注を確保しており、安定した取引基盤を有しております。しかし、景気の動向によっては、設備投資や広告宣伝費の抑制が進み、計画されていたプロジェクトが延期・中止となるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

・市場動向を見据えた要員計画の立案

・営業力、生産性の向上

・事業領域の拡大を通じた収益源の多様化

・盤石な財務体質の構築

②法的規制

事業活動をおこなううえで、建設業法や建築士法など様々な法規制の適用を受けております。

今後、これらの法規制が改廃された場合のほか、何らかの事情により法律に抵触する事態が生じた場合には、業務遂行に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

・関係法令等の動向への情報収集およびその影響分析

・関連部署による対応方法の事前検討

③品質管理・環境保全・安全衛生

(品質管理)

現場工事の技術上の管理を主任技術者や監理技術者が担当し技術水準を確保するなど徹底した品質・工程管理につとめておりますが、万一、制作物に品質上の欠陥などが生じた場合には社会的信用が低下するほか、損害賠償責任などの発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(環境保全)

店舗の改装や展示会等の撤去にともない発生する残材等を処分する際には、産業廃棄物処理法をはじめとする法令を遵守し、適正な処理をおこなうよう委託処理業者の管理の徹底につとめておりますが、委託処理業者による不法投棄がおこなわれた場合には、処理業者のみならず、当社グループの社会的信用が低下することにより、受注に影響を及ぼす可能性があります。

(安全衛生)

制作・施工現場における事故を防止するため、危険や有害要因の除去等、適切な管理につとめておりますが、事故等が発生した場合には、社会的信用が低下することにより、受注に影響を及ぼす可能性があります。

・品質・環境・安全衛生方針の策定

・担当役員による品質・環境・安全の総括の実施

・品質マネジメントシステム(ISO9001)、環境マネジメントシステム(ISO14001)および建設業労働災害防止マネジメントシステム(COHSMS)の運用

・統合マネジメントマニュアルにもとづくマネジメントシステムの構築

・協力会社を含めた安全教育の実施

・全社単位での危険予知活動の定着化や事故リスクの高いグループ会社における安全管理活動の強化

 

 

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

④災害等関連

自然災害や新型ウイルスパンデミックの発生に備え、人的被害の回避を最優先としつつ事業継続をはかるため、各種設備の導入、訓練の実施および規程・マニュアル等によりリスク回避と被害最小化につとめております。

しかしながら、大規模災害等の発生およびそれに伴うライフラインの停止や燃料・資材・人員の不足による工事の中断・遅延、事業所の建物・資機材への損害等の不調の事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、災害等によって、地域経済の停止にともなう当該地域における得意先の出店およびイベント計画の延期・中止や受注規模の縮小など、営業活動に影響を及ぼす可能性があります。

・グループ間の相互補完体制を組み込んだBCPの策定

・危機発生時の対応マニュアルの整備、保険によるリスク移転

・災害対策用備蓄品の確保

・災害時の行動マニュアルをイントラネット掲載により社内周知

 

(重要なリスク)

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

①資材価格・労務単価の変動

市場価格の動向を注視し、コスト削減に向け管理を強化しておりますが、資材価格や労務単価等が請負契約締結後著しく上昇し、これを請負金額に反映できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

・主要協力社選定による発注の調整

・生産性の向上

 

②保有資産の価格変動

事業運営上の必要性から、固定資産や有価証券等を保有しておりますが、著しい時価の変動等があった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・政策保有株式のうち上場株式については毎期保有意義を検証

・非上場株式については総会出席等を通して財務状況を確認

・事業用資産については、路線価等の情報を毎期収集し減損の兆候を検証

③新規事業の開拓

事業領域の拡大を目指し、新規事業開拓を進める場合がありますが、新規事業においては不確定要因が多く、予定外のコスト増大が否定できないことから、当初想定していた事業収益を獲得出来なかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・投資評価委員会において、投資案件の費用対効果や想定されるリスクと対応策を確認

④海外事業開拓

東南アジアを中心とした諸外国で事業を展開しており、政治・経済情勢の急激な変化、為替レートの大きな変動、法的規制の予期せぬ変更等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・海外危険情報対応ガイドラインの策定によるリスク管理の周知徹底

・労働安全衛生体制の整備

 

 

 

 

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

⑤情報システム

当社グループにおける情報システムは、データの消失に備え、データのバックアップを行い、データの暗号化、アクセス権限の設定、パスワード管理により、機密漏洩の防止に努めておりますが、万一、システムダウンや不正アクセス等が発生した場合には、事業の効率性や社会的信用が低下することにより、業績に影響を与える可能性があります。

・情報管理規程の策定による情報管理の徹底

・情報セキュリティに関する基本方針の策定

・情報セキュリティ担当役員の設置

・情報資産へのアクセス管理の徹底

・私物情報端末の利用制限

・情報管理に関する教育活動 等

⑥個人情報の保護

当社グループ各社において、お客様、従業員ならびに株主の皆様に関する個人情報につきましては、適正に管理し、個人情報の漏洩防止に努めておりますが、万一、個人情報が漏洩した場合、社会的信用が低下するほか、損害賠償金の支払い等により、業績に影響を与える可能性があります。

・個人情報保護規程策定による個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の確立、運用実施

・個人情報保護方針の策定

・JIS Q 15001が要求する事項の内部規程の策定、運用実施

・個人情報保護責任者の設置

⑦M&Aの実施による減損損失の可能性

事業拡大や新規事業への参入を目的として、M&Aを実施する場合があります。M&Aの実施にあたっては、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行ってまいりますが、想定した事業展開ができない場合、減損損失が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・投資評価委員会において、投資案件の費用対効果や想定されるリスクと対応策を確認

・事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を実施

・買収後のシナジー実現に向けたフォローアップや定期的なモニタリング

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態およびキャッシュ・フローの状況について、その概要ならびに経営者の視点による認識および分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

売上高

134,138

150,256

16,118

12.0

営業利益

5,213

8,897

3,684

70.7

経常利益

5,373

9,059

3,685

68.6

親会社株主に帰属する

当期純利益

3,862

6,757

2,895

75.0

 

当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)におきまして、日本国内の景気は一部に足踏みが残るものの、緩やかな回復傾向にありました。

このような経済状況を背景に、当社グループが事業を展開するディスプレイ業界では、リアルな空間への人流の回復やインバウンド需要の増加などの影響により、集客施設への設備投資に持ち直しの動きがみられることから、市況環境は堅調に推移いたしました。しかしながら、物価上昇にともなう資材価格の高騰や、人手不足に端を発する人件費の高騰などについては、引き続きその動向に注視が必要な状況でありました。

以上のような事業環境において当社グループは、中期経営方針(2023年度~2025年度)において掲げた「企業価値の向上」と、その起点となる「クリエイティビティの醸成」を図る取り組みを進め、持続的な企業成長を実現するための組織パフォーマンスを向上させることを目指しております。中期経営方針の2年目となる2024年度においては、事業上の課題として特に重要だと捉えている「生産性の向上・利益構造の改善」や「競争力のある人財育成・確保」などを重点方針として掲げて注力してまいりました。

事業活動といたしましては、海外ブランドの店舗を多く手掛ける専門店市場や、都市再開発に関連する大型プロジェクトを進める複合商業施設市場、大阪・関西万博関連のプロジェクトに携わる博覧会・イベント市場等において、売上が堅調に推移いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期に比べ12.0%増加し、1,502億56百万円となりました。利益面におきましては、採算性を重視した受注活動へシフトしたことで原価率の改善が見られ、営業利益は88億97百万円(前期比70.7%増)、経常利益は90億59百万円(前期比68.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は67億57百万円(前期比75.0%増)となりました。

 

なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

市場分野別の売上高は次のとおりです。

(単位:百万円)

市場分野名

売 上 高

増減額

増減率(%)

前連結会計年度

当連結会計年度

専門店市場

(物販店、飲食店、サービス業態店等)

29,043

34,889

5,845

20.1

百貨店・量販店市場

(百貨店・量販店等)

6,120

4,523

△1,597

△26.1

複合商業施設市場

(ショッピングセンター等)

17,727

20,430

2,702

15.2

広報・販売促進市場

(企業PR施設、ショールーム、セールスプロモーション、CI等)

12,949

11,882

△1,066

△8.2

博物館・美術館市場

(博物館、文化施設、美術館等)

10,618

10,014

△603

△5.7

余暇施設市場

(テーマパーク、ホテル・リゾート施設、アミューズメント施設、エンターテインメント施設、動物園、水族館等)

24,177

24,267

90

0.4

博覧会・イベント市場

(博覧会、見本市、文化イベント等)

6,625

18,871

12,246

184.9

その他市場

(オフィス、ブライダル施設、サイン、モニュメント、飲食・物販事業等)

26,877

25,376

△1,500

△5.6

合 計

134,138

150,256

16,118

12.0

 

(2)財政状態

(資産の部)

資産合計は、前期末から158億2百万円増加し、1,025億円となりました。

流動資産は、前期末から163億30百万円増加し、883億56百万円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産の増加によるものです。

固定資産は、前期末から5億28百万円減少し、141億43百万円となりました。これは主に、無形固定資産の減少、投資有価証券の減少によるものです。

 

(負債の部)

負債合計は、前期末から118億27百万円増加し、482億18百万円となりました。

流動負債は、前期末から119億4百万円増加し、432億28百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金、未払法人税等の増加によるものです。

固定負債は、前期末から76百万円減少し、49億90百万円となりました。これは主に、退職給付に係る負債の減少によるものです。

 

(純資産の部)

純資産合計は、前期末から39億74百万円増加し、542億81百万円となりました。これは主に、配当金の支払いがありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。

この結果、自己資本比率は前期末の58.0%から53.0%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

現金及び現金同等物は、前期末から12億91百万円減少し、313億22百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権及び契約資産の増加等がありましたが、税金等調整前当期純利益を計上したことに加え、減価償却費の計上、仕入債務、未払金の増加等により、16億75百万円の収入(前期は61億24百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出がありましたが、投資有価証券の売却及び償還により、45百万円の収入(前期は2億41百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、30億89百万円の支出(前期は28億63百万円の支出)となりました。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、案件を推進するための労務費、外注費の支払い、ならびに、販売費及び一般管理費等の営業費用の支払いであります。なお、当社グループの事業は通常は多額の設備投資等を必要とするものではありませんが、将来の継続的な成長を目指した投資は積極的におこなっていく方針です。

また、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、キャッシュマネジメントシステムを導入し、国内子会社の資金を一元管理しております。

運転資金および設備資金につきましては、自己資金を活用しておりますが、必要に応じて、金融機関からの借入による資金調達をおこなう場合があります。

 

(5)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等」に記載のとおりであります。

 

(6)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、連結財務諸表の作成にあたって、損益または資産の状況に影響を与える見積りは、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる可能性があります。

 

 

(7) 生産、受注および販売の実績

①市場分野別の生産高の実績

市場分野名

前連結会計年度

当連結会計年度

生産高

(百万円)

構成比

(%)

生産高

(百万円)

構成比

(%)

専門店市場

29,003

21.6

34,935

23.2

百貨店・量販店市場

6,099

4.6

4,531

3.0

複合商業施設市場

17,740

13.2

20,421

13.6

広報・販売促進市場

12,912

9.6

11,928

7.9

博物館・美術館市場

10,591

7.9

10,015

6.7

余暇施設市場

24,091

18.0

24,269

16.1

博覧会・イベント市場

6,628

4.9

18,845

12.5

その他市場

26,898

20.2

25,442

17.0

合計

133,966

100.0

150,390

100.0

(注)生産高の金額は販売価格によっております。

 

②市場分野別の受注高および受注残高の実績

市場分野名

前連結会計年度

当連結会計年度

受注高

(百万円)

受注残高

(百万円)

受注高

(百万円)

受注残高

(百万円)

専門店市場

30,874

8,610

40,639

14,360

百貨店・量販店市場

5,890

953

4,565

995

複合商業施設市場

23,876

15,009

16,804

11,383

広報・販売促進市場

10,380

2,719

15,334

6,170

博物館・美術館市場

13,145

5,833

8,606

4,426

余暇施設市場

23,266

19,104

20,522

15,358

博覧会・イベント市場

10,911

5,041

21,337

7,507

その他市場

27,118

9,760

24,265

8,648

合計

145,463

67,032

152,076

68,851

 

③売上高の実績

市場分野別の売上高の実績については、「(1)経営成績等」に記載しております。

5【経営上の重要な契約等】

特記すべき重要な事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、「人間尊重に立脚し 新しい価値の創造によって 豊かな人間環境づくりに貢献する」という経営理念のもと、さまざまな社会的課題や技術的課題に絶えず挑戦し、空間の力により解決していくことを目指し、研究開発に取り組んでおります。

 

当社の主な研究開発活動の内容については、以下の通りです。

・新たな技術・デザイン手法を活用した空間演出の開発

・BIM(Building Information Modeling)による設計・施工の生産性向上、品質向上および環境負荷低減

・ソーシャルグッド(持続可能な社会の実現を目指し、さまざまな社会課題について、クリエイティブな視点から解決策を模索する取り組み)

・実践知の社会還元(大学・公官庁における講師、学会活動、学術誌・専門誌への寄稿等を通じた成果や技術力の情報発信)

 

当連結会計年度における研究開発費は148百万円となりました。なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。