第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来、①お客様への最適な物流方法を提案する「提案力」、②中国を中心とした海外拠点の確かな「ネットワーク」、③物流情報をタイムリーに提供できる「オペレーティング」の3つをキーワードに、お客様の多様な物流ニーズにお応えしてまいりました。

そして、社会や競争環境が大きく変化を遂げる中で、当社では、2023年8月に基本理念を現代に即し未来を見据えた尖りのあるものへと刷新し、あわせて経営方針も刷新いたしました。

基本理念及び経営方針は、以下となります。

[基本理念]

創発

[経営方針]

1.創発により、変化の激しい環境に適応し、お客様と共に持続的に成長します。

2.お客様のニーズに基づいた拠点網を拡充し、組織全体が創発により有機的に結びつき創造性あふれる活発な組織を構築します。

3.一人ひとりの想像力を高め、創発が生まれる企業文化を作ります。

4.世界に挑戦できる主体的・自律的な人材を育成し、創発による変革を実現します。

この理念に基づいた考え方や行動を企業文化としてグループの隅々まで浸透させていくことで、更なる成長と飛躍を目指してまいります。また、企業倫理を尊重しながら、顧客・株主・従業員にとって存在価値のある企業グループとして、社会や経済の発展に貢献するとともに企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、経営方針に基づき安定的かつ持続的な成長と利益の確保を経営目標としており、営業収益、営業利益及び経常利益においては、成長率を重要な経営指標と捉え、これらの向上を重視した経営に取り組んでまいります。また、ROE(自己資本利益率)並びにROA(総資産経常利益率)においても、現在の水準から更なる向上を図るべく努力してまいる所存であります。

 

(3)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、国際物流事業において、より良い貨物輸送サービスを展開し、お客様に密着したサービスを提供できるワールドワイドな総合物流企業を目指しております。

物流業界は、現在、少子高齢化の進行に加え、物流の「2024年問題」などにより、慢性的な人手不足の状況が継続しており、今後ますます労働力確保が困難なると予想されます。労働力不足は、輸送できる貨物量の減少だけに留まらず、物流コストの上昇、そして商品価格への転嫁といった物流業界のみならず、日本経済全体が抱える大きな課題でもあります。日本経済が抱える課題は、当社グループの業績にも影響を与えうるものと捉えております。

また、近年は、市場環境も急速に変化し、多様な消費者ニーズに対応すべく、顧客の物流に対するニーズも多様化・高度化しております。そして、社会全体のデジタル化が進む中で、物流のデジタル化は、業界に革新をもたらす重要な要素であり、決して欠かすことのできない要素として、各社が取り組みを加速させています。

これらを背景に、フォワーダー間においても、価格面、物流・デジタル双方のサービス面で厳しい競争が続いております。

価格面では、需給バランスの正常化に伴って下落した海上運賃も、紅海情勢に起因する需給の逼迫や世界の主要港での混雑、海上輸送の需要の高まりなど複数の要因により、一部の航路で再び上昇基調に転じており、安定的に利益を確保するうえで、今後も厳しい経営環境が続くことが予想されます。

当社グループでは、サービスメニューの拡充やデジタルを活用し、顧客の利便性向上を図り、価格転嫁を進める中で高い付加価値の提供に努めるとともに、DXによる省人化、多くの業務効率化、営業活動の可視化を実現してまいりました。当社グループは、今後もデジタルを活用して競争優位性をさらに高め、顧客の利便性向上に繋がる取り組みを行うとともに、DX推進による新たな価値創出により、顧客価値の創造を目指します。

 

当社グループは、これらの取り組みをもとに、主力である国際貨物輸送を始め、通関や配送、海外倉庫でのアソートを含めた流通加工業務といった輸出入の付帯業務の受注を増加させ、収益拡大を図り、また当社グループがワールドワイドな総合物流企業へと成長するため、国内外の子会社や世界各国の代理店と連携を強めるとともに、三国間輸送の獲得にも継続して注力することで、グローバル物流体制と収益基盤の更なる強化を図ってまいります。

そして、輸出貨物輸送、航空貨物輸送、通関、保管業務、配送業務等それぞれに得意分野を持つ企業との提携も視野に入れながら、これらの事業提携を通じて、総合的な物流サービスの展開を推進していくことも中長期的な戦略として掲げ、持続的成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 

(4)優先的に対処すべき課題

グローバル化した今日の企業活動の中で、当社グループの主な事業である国際貨物輸送事業は、社会的、経済的に重要であり、大きな役割と責任を負っていると考えております。

人々の生活や産業活動に必要不可欠な国際物流、日本の物流において、当社グループでは幅広い物流手段を用いて安定的なサービスの提供に努め、日々変化する状況に対応しながら、持続可能な物流と社会の実現に向け、事業活動を展開しております。また、当社グループがお客様の支持を得て事業を伸展することは、当社グループの企業価値の増大に結びつくだけではなく、物流企業としての社会的使命と責任を果たすことにつながるものであると認識し、特に以下の項目を優先的に対処すべき課題として掲げて、積極的に取り組んでおります。

 

①安定した収益基盤の確立とグループの持続的成長の実現

当社グループでは、持続的な成長を実現するため、競争優位性をさらに高めるとともに、営業収益の拡大はもとより、安定的に利益を確保できる経営体質を確立することが重要であると認識しております。当社グループの収益の多くを占める国際貨物輸送の事業環境として、需給バランスの正常化に伴い下落していた海上運賃が、紅海情勢に起因する需給の逼迫や世界の主要港での混雑、海上輸送の需要の高まりなど複数の要因により、一部の航路で再び上昇基調に転じております。それに合わせて、当社グループでもお客様のご理解を得ながら価格の見直しを進め、一定の利益は確保できているものの、競争環境が厳しさを増す中で、安定的に利益が確保できているとは言い難い状況であります。

このような環境下において、当社グループは、安定的に利益を確保するため、時代の変化や顧客のニーズを的確に捉えながら、単純な価格転嫁に留まらず、新たな物流サービスの開発やデジタル等を活用して、より高い付加価値の提供に努めるとともに、DXによる自社グループ内の業務の省力化や効率化を継続して推進するなどし、コスト削減にも取り組んでまいります。

また、当社グループの持続的な成長に向けて収益拡大を図るため、営業人材の育成強化に取り組み、主力である国際貨物輸送を始め、通関や配送、海外倉庫でのアソートを含めた流通加工業務といった輸出入の付帯業務の受注増加を目指してまいります。さらには、三国間輸送の獲得強化にも継続して取り組むとともに、国内外での3PL(サードパーティー・ロジスティクス)案件の受注増加に向け、営業活動を展開してまいります。

そして、これらに加え、海外現地法人や各国の代理店との連携をさらに強め、グローバル物流体制の基盤強化を図るとともに、今後当社グループが注力すべき分野に精通した企業との提携等も視野に入れ、事業規模のさらなる拡大を図ってまいります。

 

②人材確保と育成、人的資本経営の推進

日本国内では、構造的な人口減少による社会全体の人手不足が深刻化し、様々な業界で人材確保の課題に直面しています。現在、物流業界においても、労働人口の減少や物流の「2024年問題」などにより、慢性的な人手不足の状況が継続しており、採用競争は激しさを増し、人材の確保が困難な状況となっております。特に国際貨物輸送サービスでは、世界各国と日本国内の物流事情に精通した知識と経験を持つ人材が必要不可欠であります。当社グループが永続的に事業を継続し、持続的に成長を遂げるために、人材の確保と定着率の向上、そして育成強化が重要な経営課題であると認識しております。

これら課題に対し、人材確保では、専門性やキャリアを持つ即戦力の人材確保を目的とした中途採用及び将来を担う社員の育成と組織の活性化、中長期的な視点での人的基盤の整備を目的とした新卒採用を行いながら、エンゲージメントサーベイなどを活用し、働きがいや働きやすさを感じる職場環境整備を進め、従業員の定着率向上に努めております。

 

人材育成については、当社では、「創発」の基本理念もと、「創発人材の育成」を人材の育成方針とし、「挑戦」「多様性とヒラメキ」「好奇心と感性」「主体性と自律性」を柱に、当社の掲げる理念に共感し、かつ実践できる人材を数多く育成し、また、この新しい理念に基づいた考え方や行動を企業文化としてグループの隅々まで浸透させていくことで、更なる成長と飛躍を目指しております。2025年2月期では、創発人材の育成を目的とした研修を実施するとともに、階層別やテーマ別の研修の充実も図りながら、当社グループの成長に繋げるための取り組みを行っております。

社内環境整備については、従業員の積極的な創意工夫を奨励するとともに、労働生産性の向上を図るために、当社では2023年6月より所定労働時間を短縮し、その他には有給休暇の取得の推進や時差出勤の活用、時短勤務の対象範囲を拡大するなどして、従業員のワークライフバランスの充実を図り、さらには継続して賃金のベースアップを実施するなどし、人的資本経営の推進に取り組んでおります。

当社グループでは、これらの職場環境、社内環境の整備や様々な施策を通じて、従業員のエンゲージメントをより高めることがグループの企業価値向上に繋がるものと考えております。安定した人材確保や創発人材の育成をはじめ、従業員の給与水準の向上、より働きやすい環境の整備、自己成長の機会の提供、組織の活性化等に取り組み、今後の環境変化に柔軟に対応し、持続的な成長を遂げるため、人的資本の充実に向けた取組みを推進してまいります。

 

③内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実

当社グループでは、持続的な成長を遂げ、企業価値のさらなる向上を図るためには、成長を支える組織体制と内部管理体制の強化、そして内部統制の実効性を高めるための環境を整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させることが非常に重要であると認識しております。

当社グループは、事業拡大に伴う組織体制の見直しと整備を逐次実施するとともに、監査役と内部監査室の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対するコンプライアンス研修の実施等を通じてコンプライアンス意識の醸成に努めることで、コーポレート・ガバナンス機能の充実と内部管理体制の強化に取り組んでおります。

今後も内部管理体制を有効に機能させることが企業価値をさらに高め、効率的かつ健全な企業経営を実現するものと認識し、より透明性・公平性の高い企業経営を目指し、相互牽制の効いた内部管理体制の強化に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

近年、様々な社会課題の顕在化やステークホルダーの価値観の変容に伴い、経済価値と社会価値の双方を創出するサステナビリティ経営がより一層求められています。当社グループも持続的な社会の創造について、責任をもって取り組んでいくべきであると考えております。

当社グループは、自ら輸送手段(船舶・航空機・自動車等)を所有・運行せず、顧客(荷主)の需要に応じて、船会社等の実運送業者のサービスを利用し、国際貨物輸送を行っております。特に国際貨物輸送サービスでは、世界各国と日本国内の物流事情に精通した知識と経験を持つ人材が必要不可欠であります。当社グループでは、社会インフラである物流を通じて、人々の暮らしの安定とグループの価値創造、グループの持続的な成長を実現するための源泉は「人材」であると考えております。

社会や競争環境が大きく変化を遂げる中、当社では、2023年8月、基本理念を現代に即し未来を見据えた尖りのあるものにすべく「創発」へと刷新し、あわせて経営方針も刷新いたしました。詳細につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりでありますが、「創発」とは、個々人の能力や発想を組み合わせて創造的な成果に結びつける取り組みであり、革新や進化の源泉とも言える重要なプロセスを指します。それは異なる視点を掛け合わせて、次々と新しいアイデアを生み出していくことでもあります。

新しい基本理念と経営方針では、今まで以上に創意工夫などに代表される発想を重視することを明確化しただけでなく、そこからさらに前進してあらゆる場面で革新や進化を起こせる企業体でありたいという願いを込めて制定したものです。

この経営理念に基づいた考え方や行動を、企業文化としてグループの隅々まで浸透させていくことで更なる成長と飛躍を目指すとともに、経営理念、経営方針の実践及び実現により社会に貢献し、企業価値を向上させることが、ステークホルダーへの経済価値の創造、また社会貢献へつながるものと考えております。

 

(1) ガバナンス

当社グループのサステナビリティ関連のリスク及び機会を把握・管理するためのガバナンス体制は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンスの体制と同様となります。

様々な環境が急速に変化を遂げる中で当社グループを取り巻く環境も変化しております。当社グループが持続的な成長を実現するうえで必要となる課題も変化しております。グループ全体での戦略的方向性のすり合わせや取り組むべき課題の共有、および課題に向けた業務遂行の指示・監督のために、取締役会が主体となり、各部室や子会社からの定例的な業務報告を通じて、業務や計画の進捗状況を確認し、実効的な監督を行っております。

 

(2)リスク管理

当社は、リスク管理を経営上の重要な活動と認識しており、事業全般について想定される各種リスクについて、リスク管理規程を制定するとともに、その適正な運用に努めております。また、サステナビリティに関連するリスクにつきましても、その他経営上のリスクと一体的に監視及び管理しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

当社では、担当取締役が子会社各社の連携のもと、当社グループ全体のリスク管理を行っており、重要な内容や問題点などは取締役会等に報告され、顕在化するリスク等に対して、早期に適正な対応を取る体制を整えております。

 

 

(3)人的資本に関する戦略

当社グループでは、持続可能な成長による企業価値向上のためには、「人材」が重要な経営資源であると考えております。「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)優先的に対処すべき課題」に記載のとおり、当社グループは永続的に事業を継続し、持続的に成長を遂げるため、人材の確保と定着率の向上、そして育成強化が必要不可欠であり、重要な経営課題であると認識しております。

当社では、新卒採用、中途採用の双方により人材を確保しながら、エンゲージメントサーベイなどを活用し、働きがいや働きやすさを感じる職場環境整備を進め、従業員の定着率向上に努めております。また、人材育成についても、研修体系を整備し、従業員一人ひとりの成長を後押しするなどし、人的資本の価値向上を図っております。

<研修体系図>


(注)当社では、ステージを最大8まで設けております。ステージ6、7、8については、全従業員を対象とした社内研修に加え、必要に応じて各ステージ別に研修を実施しております。

 

一部の子会社においても、従業員の能力向上を目的とした研修を実施するととともにスキル開発を支援するなどし、より良い職場環境の構築に努めております。

当社グループでは、人々や社会の考え方、価値観も多様化する中で、経営基盤の強化や持続的成長・企業価値向上のための戦略の推進には、一人ひとりの成長・働きがいがその原動力になると考えています。人的資本の多様性を維持するためには、社員が働きやすいよう社内環境を整備する必要があり、当社グループでは、DX推進による業務効率化などで、残業時間の削減や有給休暇の取得促進など労務環境の改善を継続的に行っております。

また、当社では基本理念と経営方針の刷新に併せて、「創発人材の育成」を人材の育成方針とし、「挑戦」「多様性とヒラメキ」「好奇心と感性」「主体性と自律性」を柱に、当社の掲げる理念に共感し、かつ実践できる人材を数多く育成することを目指しております。2025年2月期には、創発人材を育成することを目的に第1回目の公募型研修を実施し、一定期間に亘って、経営戦略やマーケティングを学び、その後、新たなサービスや新たな事業を立案する機会を設けるなどし、実践的な育成と成長促進に向けた取り組みを行っております。

社内環境整備としても、従業員の積極的な創意工夫を奨励するとともに労働生産性の向上を図るため、2023年6月から所定労働時間を短縮し、その他には時差出勤の活用や時短勤務の対象範囲を拡大するなどし、従業員のワークライフバランスの充実を図り、さらには継続して賃金のベースアップを実施するなどして、働き甲斐のある職場環境の整備に努めております。また、月1回開催される「衛生委員会」において、従業員の健康・職場環境・労働衛生などのテーマを毎月取り上げ、従業員と産業医と共に意見交換等を行い、従業員が健康で安心に働ける職場環境にするための取組みを積極的に推進しております。

当社グループでは、年齢や性別に関係なく、安定した人材確保や創発人材の育成をはじめ、従業員の給与水準の向上、働きやすい環境の整備、自己成長の機会の提供、組織の活性化等に取り組み、今後の環境変化に柔軟に対応し、持続的な成長を遂げるため、人的資本の充実を図ってまいります。

 

 

(4)人的資本に関する指標及び目標

上記「(3)人的資本に関する戦略」に記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成方針及び社内環境整備について次の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。これらの指標項目については、今後も人的資本・多様性に対する取り組みを深化させる中で必要に応じて見直しを行ってまいります。なお、当社グループに属する全ての会社では指標及び目標の設定が行われていないため、当社グループにおける記載が困難であることから、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

指標

実績

(2024年2月期)

実績

(2025年2月期)

目標

2027年2月期

挑戦を推奨する風土に対するエンゲージメントスコア

49

49

54

資格取得支援の累積利用人数

38人

93

200

女性管理職候補(課長補佐、課長代理)登用率

11.1%

41.7

35.0%以上を維持

 

当社では、前事業年度に「女性管理職候補(課長補佐、課長代理)登用率」の2027年2月期目標値を25.0%としました。そして、2025年2月期には、労働環境の整備を進めるとともに、性別に関わらず活躍できる組織風土づくりに取り組んでまいりました。2025年2月期の実績値では、「女性管理職候補(課長補佐、課長代理)登用率」が41.7%となり、前期比で大幅に上昇し、当初の目標値を前倒しで達成するに至りました。今後も当指標の一定の維持と向上を目指すために、改めて2027年2月期の目標を上記に設定いたしました。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当社グループは、これらのリスク要因を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に全力で努めてまいる所存でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

また、これらの記載のうち将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したもので、不確実性を内包しており、当社株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではなく、実際の結果とは異なる場合があります。

 

(1)燃油価格及び船舶需要の変動等による仕入価格の変動について

当社グループは、船舶・自動車等を持たず、取引先から受託した貨物の輸送を実運送業者(船会社・自動車運送業者等)に委託しております。このため、燃油価格の変動や船腹・車両不足等により実運送業者の輸送運賃が変動した場合、当社グループの仕入コストも変動いたします。当社グループは、不安定な価格変動の影響を回避するため、一部の実運送業者との間で輸送運賃に関する契約を締結し、一定期間、運賃の固定化を図るよう努めております。また、市場環境の急激な変化等により輸送運賃の仕入価格が変動した場合は、競合他社の動向等も踏まえ、通常、仕入価格が上昇した際には販売価格に転嫁し、仕入価格が下落した際には販売価格の引下げや調整を行います。

しかしながら、何らかの事由により、仕入価格が上昇した際に販売価格へ転嫁できなかった場合、或いは仕入価格が急激に下落し販売価格を引き下げた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、外部環境に左右されないより強固な収益基盤を構築することが重要課題であると認識しており、より強固な収益基盤を構築すべく、現在、競争力を向上させるためにデジタル戦略を推進し、顧客の利便性向上へと繋げるため、DXによるサービスメニューの拡充等の施策に取り組んでおります。

 

(2)一般的な景気動向と特定業種への依存について

当社グループが展開する国際貨物輸送事業は、国際間の物流量の影響を受けるため、国内外の景気動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの売上高は、繊維・雑貨関連の企業への依存が相対的に高くなっております。当社グループでは、未だ取扱いの少ない他の業種への営業活動も強化し、収益獲得機会の拡大を図っており、現在、幅広い業種、多くの企業と取引を行っております。よって、特定した企業への依存度は低いものの、これら特定する業種への景気の悪化等で、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制について

当社グループの行う国際貨物輸送事業は、輸送手段(船舶・自動車等)を所有、運行せず、取引先の要望に応じて、船会社等の実運送業者のサービスを活用して貨物輸送を行い、取引先(荷主)に対して輸送責任を負う貨物利用運送事業者として、「貨物利用運送事業法」の規制を受けております。当社グループでは「貨物利用運送事業法」に基づき、国土交通大臣より「第一種貨物利用運送事業」の登録及び「第二種貨物利用運送事業」の許可を受けております。当該登録及び許可には期限の定めはありませんが、貨物利用運送事業に関し不正な行為を行った場合などの事由により、期間を定めた事業の全部もしくは一部の停止、あるいは、登録・許可が取り消される可能性があります。

さらに、当社グループでは貨物輸送に附帯する業務として通関業を行っており、所轄地税関長より「通関業法」に基づく通関業の許可を受けております。当該許可についても期限の定めはありませんが、関税法や通関業法などに違反した場合は、許可が取り消される可能性があります。

また、当社グループでは中国においても、「無船承運(NVOCC)業務営業許可」を受けており、不正な行為を行った場合には、許可が取り消される可能性があります。

 

本書提出日現在、当社グループにはこれらの登録・許可の取消し事由に該当する事実はありませんが、将来何らかの理由により、登録・許可の取消し等の事態が発生した場合、当社グループの経営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

許認可等の名称

所轄官庁等

許認可等の内容

有効期限

第一種貨物利用運送事業

国土交通大臣

事業経営の登録

期限の定め無し

第二種貨物利用運送事業

国土交通大臣

事業経営の許可

期限の定め無し

通関業

所轄地税関長

事業経営の許可

期限の定め無し

AEO認定通関業者

大阪税関長

AEO認定通関業

期限の定め無し

無船承運(NVOCC)業務営業許可

中華人民共和国

上海市市場監督管理局

事業経営の許可

期限の定め無し

 

それらのリスクに対して当社グループは、関係法令の制定、改廃に関する情報収集を行い、事前の対策を図るとともに、法令等に定められた有資格者の配置や社員へ関係法令の周知徹底に努めるとともに、役職員を対象に定期的なコンプライアンス研修を実施し、法令遵守の徹底を図り、各種許認可等の取消事由の発生を未然に防止することにより、当該リスクの低減に努めております。

 

(4)中国情勢の変化について

当社グループが展開する国際貨物輸送事業における主要な業務は、日中間の海上コンテナ輸送の取扱いであります。そのため、中国における政治的・経済的な混乱の発生、中国政府の政策変更、人民元の為替動向、反日運動の発生等の影響により、日中間の国際物流環境に大きな変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

それらのリスクに対して、当社グループでは、中国に2社連結対象子会社を有し、中国の主要となる沿岸部に拠点を設置して、これら拠点から中国国内の経済・社会・政治的状況や法規制等の動向について、適宜情報を収集しております。また、毎月開催される取締役会においても、中国子会社の事業環境及び経営状況に関する報告がなされており、対応が必要な事象が生じた際には、取締役会での検討及び所管の取締役が中国子会社と連携して適宜対応を行います。

 

(5)グローバルな事業展開に伴うリスクについて

当社グループは、中国以外の地域とのコンテナ輸送等も展開しており、中国情勢の変化だけではなく、グローバル化に伴う次のようなリスクが存在しております。これらのリスクが顕在化した場合或いは予期せぬカントリーリスクが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

1. 事業や投資に係る許認可、税制、通商制限等

2. 戦争、暴動、テロ、ストライキ、その他の要因による社会的混乱

3. 移転価格税制等の国際税務リスク

4. 急激な為替レートの変動

それらのリスクに対して当社グループは、新たに海外進出する際には、現地の政情や経済情勢、並びに当社グループの取引先が当該国と潜在的に持つ貨物量を勘案するほか、考えられる限りのリスクを把握し、対処するよう努めております。また、当社グループでは、中国以外に台湾、ベトナム、ミャンマーに連結対象子会社を有し、それぞれにおいて、中国子会社と同様の対応を行っております。

 

(6)外貨建て債権債務及び連結財務諸表に与える為替変動リスク

当社グループの行う国際貨物輸送事業において、その運賃収入及び運賃仕入の一部は米ドル建てであるため、為替レートの変動により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、外貨建の債権債務については、為替予約の実施等によりリスクヘッジをおこなっておりますが、全てのリスクを回避するものではなく、経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、海外連結子会社における営業収益、費用及び資産等の現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算しております。従って、円換算時の為替レートにより、これらの項目の円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、為替レートの変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7)人材の確保について

当社グループが展開する国際貨物輸送事業においては、国内外の物流事業に精通した人材の確保、育成が必要不可欠であります。一方で、現在、日本国内では少子高齢化が進む中で、慢性的な人手不足の状況が継続しており、採用競争は激しさを増し、適正な人材の確保が困難な状況となっております。当社グループが永続的に事業を継続し、持続的に成長を遂げるために、人材の確保と定着率の向上、そして育成強化がますます重要になってまいります。当社グループにとって、人材は重要な経営資源であり、経営計画に基づいた事業拡大を図るために、新卒採用並びに企業の成長に応じた人材の中途採用を現在も継続しており、人材紹介会社を活用すると共に、教育研修制度も充実させ、人材の育成に取り組んでおります。

しかしながら、このような物流事業に精通した人材の確保や予定どおりの研修育成が実施出来なかった場合には、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)戦略的事業提携について

当社グループは、より高度な付加価値サービスの提供や事業基盤の拡大及び補強のために、事業戦略の一環として他企業との戦略的事業提携を行う可能性があります。戦略的事業提携につきましては、事前の十分な検討や対象企業の詳細なデューデリジェンスを行いますが、提携後の事業計画が当初の計画どおりに進捗しない場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)売上債権及び立替金の貸倒について

当社グループでは、取引先は特定した先に集中することなく、多数の取引先に分散されており、且つ当社の中心的な業務である国際貨物輸送の基本的な取引はキャッシュオンデリバリーで、相対的に売上債権の回収リスクは低いものの、最近では一貫輸送の営業強化の関係から通関業務の受託が増加し、必然的に売上債権が増加しております。さらに通関業の商習慣として、輸入する取引先が負担する商品の輸入関税等の立替も発生することが多く、立替金も増加傾向にあります。当社グループでは、輸入する取引先が負担する商品の輸入関税等について、当社グループが立替えることなく、取引先にて直接納付頂くよう求め、リスク軽減に取り組んでおります。

当社グループは、増加傾向にあるこれら売上債権や立替金に対し、細心の注意を払った与信管理を行い、取引先によっては、ファクタリングを活用して、リスクヘッジを行っております。ただし、これらヘッジを行ったとしても、信用リスクが顕在化し、ファクタリング等で補填が出来ず、貸倒が発生することも考えられます。これら貸倒が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)競争激化について

物流業界におきましては、近年、人手不足が顕著となり、物流コストも上昇しております。そして、さまざまな環境が急速に変化する中で、お客様の物流に対するニーズもより多様化・高度化しております。当社グループを取り巻く環境としては、常に同業他社との競争、競合状態にあります。当社グループでは、顧客企業への納品までの輸送期間の短縮や船舶と鉄道を組み合わせた輸送サービス、デジタルを活用したサービス等、独自のサービスの開発を進め、競合他社との差別化を図り、また価格競争力の強化にも努めております。しかしながら、新規参入業者の増加等で価格競争は激化の傾向にあり、独自の優位性を確保出来なかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)輸送事故について

当社グループは、国際貨物輸送事業者として培ったノウハウを持って、取引先の貨物が安全かつ確実に輸送されるよう細心の注意を払っていると共に、輸送事故等の発生に備え、利用運送業務に加え、通関業務等に関連する事故も保険の対象となる包括賠償責任保険等に加入しております。ただし、発生する特殊な事故のケースでは、保険等で補償されない場合もあり、このような場合には、社会的信用の低下や補償費用等が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)システムリスクについて

当社グループでは経理業務・国際貨物輸送業務等に関して、情報システムを活用しております。当社グループでは、業容の拡大に伴い、情報システムの強化を行っており、システム障害に備えてデータの定期的なバックアップを行っております。また、自然災害、事故等が発生した場合に備え、外部のデータセンターを活用しております。しかしながら、何らかのトラブルにより、これらの情報システムに障害が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13)自然災害、感染症等のリスクについて

当社グループは、船舶等による日中間の国際貨物輸送を主な業務としております。このため、これらの地域で起こる大地震・台風等の自然災害によっては、事業活動の停止及び社会インフラの大規模な損壊や機能低下により、当社グループが委託する実運送業者の貨物輸送に支障を来たすことがあります。このような場合、取引先への輸送サービスが停止し、売上高の減少等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な地震・風水害等に備え、災害対策マニュアル等を整備し、安否確認システムの導入や防災訓練の実施など行い、また災害発生時には、必要に応じて緊急対策本部を設置するなど様々な対策を行っておりますが、自然災害による被害を完全に排除できるものではなく、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループの売上高は、「(2)一般的な景気動向と特定業種への依存について」にも記載のとおり、繊維・雑貨関連の企業への依存が相対的に高まっております。新たな感染症の発生や感染症の拡大等により、これら企業の業績が悪化し、国際貨物の物流量が減少した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな感染症の発生や感染症の拡大等により、中国をはじめとする各国の生産活動の停止や物流に長期的な停滞等が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)取引先・個人情報の管理について

当社グループでは、取引先・個人等の情報を取扱っており、コンプライアンスや取引先・個人情報管理の徹底など、社内教育を通じて情報管理体制の強化に努めております。また、個人情報の取扱いについては、個人情報保護規程を策定の上、細心の注意を払っております。しかしながら、情報の外部漏洩やデータ喪失等が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などにより緩やかな回復基調で推移しました。一方、長引く円安や原材料費・エネルギー価格の高止まりを背景とした生活必需品の相次ぐ値上げにより、個人消費は力強さを欠き、加えて不安定な国際情勢における地政学的リスクの高まりなど懸念材料も多く、依然として先行き不透明な状況が続いております。

また、当社グループの取扱いの多くは、中国や東南アジアから日本への輸入貨物ですが、当連結会計年度では、為替相場が一時1ドル160円を超え、円安相場が定着する中で、輸入者にとってもコストが増加するなどし、苦しい環境が続きました。それに加え、海上輸送では、紅海情勢に起因する需給の逼迫や世界の主要港での混雑、海上輸送の需要の高まりなど複数の要因により、複数の航路で海上運賃が上昇しました。

当連結会計年度は、さまざまなコストが上昇する環境下でありましたが、当社グループは、安定した輸送サービスの提供に努めながら、前々期、前期と減少が続いていたコンテナ取扱量、通関受注件数をグループが一丸となり回復させ、収益拡大を図るべく、国際貨物輸送を始め、通関や配送の受注獲得に向けた営業活動を推進してまいりました。また、検品・検針、海外倉庫でのアソートを含めた流通加工業務といった輸出入の付帯業務や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)案件の受注増加にも努め、さらには、デジタル戦略として、オンラインでのフォワーディング・通関サービス「Cargo Information Service」の機能拡充や子会社においても当社同様のデジタルサービスを提供するなどして、競争優位性をさらに高めるための施策を実施してまいりました。

当社グループにとっても、この一年、厳しい経営環境が続きましたが、前述の取り組みが奏功し、日本への輸入貨物の取扱数量が前年同期比で増加することとなりました。また、円安の環境下で、日本からの輸出貨物の集荷も精力的に行ってまいりました。

そして、下落していた海上運賃は、6月以降、当社グループの取扱う一部の航路でも上昇基調に転じ、さらには中国の春節前にも高騰するなどし、営業収益を押し上げる要因となりました。また、利益面では、海上運賃が上昇する中で価格転嫁を進めてきましたが、激しい競争環境下で売上総利益率が低下しました。さらに、給与のベースアップなどで人件費を中心に費用も膨らみましたが、一方では、継続して様々な費用の見直しや削減、抑制も行いながら、可能な限りの利益創出に努めてまいりました。

これらの結果、当連結会計年度の営業収益は55,638百万円(前年同期比8.2%増)、営業利益は4,073百万円(前年同期比5.9%減)となり、経常利益は、為替差益の計上などで4,532百万円(前年同期比0.1%減)と前年同期と同水準となり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,047百万円(前年同期比2.0%増)と前年同期を上回りました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

なお、報告セグメントの「中国」では、当連結会計年度において、香港の現地法人「愛特(香港)有限公司」の清算に伴い、同社を連結の範囲から除外しております。

 

(日本)

海上輸送では、6月以降、海上運賃が上昇基調に転じたものの、一方では競争が厳しさを増す状況となりました。さらには、為替相場も円安進行から一変して急激に円高に向かう局面もあり、事業環境が激しく変化する状況にありました。

このような状況下、当社グループは、収益拡大に向けて精力的に営業活動を展開し、様々な物流提案を行うとともに、タイムリーな価格改定及び情報提供も行い、さらには機能拡充した「Cargo Information Service」を武器に、新規顧客の獲得と既存顧客の取引深耕に注力してまいりました。

これらにより、海上輸送の取扱コンテナ本数は、輸入で231,070TEU(前年同期比1.1%増)と前年同期を上回り、また、円安の状況下で輸出貨物の集荷にも注力したことにより、米国や中国、台湾、インドなどに向けた貨物が増加し、輸出で17,829TEU(前年同期比19.2%増)と堅調な伸びとなりました。その結果、輸出入合計では248,899TEU(前年同期比2.2%増)となりました。また、通関受注件数も子会社での受注増加が寄与し、139,294件(前年同期比3.2%増)と前年同期を上回りました。

以上のことから、日本における営業収益は、47,143百万円(前年同期比7.5%増)となりました。一方でセグメント利益は、6月以降の海上運賃の上昇による売上総利益率の低下と人件費などの増加により、3,185百万円(前年同期比10.2%減)となりました。

 

(中国)

検品・検針の受注は、厳しい環境が継続しているものの、4月以降で日本向け貨物の取扱いが安定したことで、中国国内での輸送関連の収益も確保でき、さらには、円安に伴う円貨換算額の増加が収益をさらに押し上げる要因となりました。

その結果、中国における営業収益は6,869百万円(前年同期比6.8%増)となりました。また、セグメント利益は、売上総利益率の改善に加え、費用の削減や抑制にも取り組み、678百万円(前年同期比12.4%増)となりました。

(その他)

ベトナムの子会社では、日本向け貨物の取扱いが回復傾向にあり、台湾の子会社でも、日本からの輸入貨物の増加等により収益機会が増加しました。また、ミャンマーの子会社では、輸送関連の収益が安定的に確保できており、検品・検針の受注も堅調に推移しました。加えて、円安に伴う円貨換算額の増加も追い風となって、営業収益は1,624百万円(前年同期比43.7%増)、セグメント利益は209百万円(前年同期比18.6%増)となりました。

 

(注)TEU(Twenty-foot Equivalent Unit、20フィートコンテナ換算)とは、海上コンテナの数量を表す単位で、20フィートコンテナ1個分を1TEUと計算します。

 

財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,671百万円増加し25,538百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ384百万円増加し20,353百万円となりました。これは主に、売掛金が521百万円、立替金が281百万円増加した一方で、現金及び預金が424百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ1,286百万円増加し5,184百万円となりました。これは主に、投資有価証券が1,858百万円増加した一方で、顧客関連資産が263百万円、のれんが108百万円減少したことによるものであります。

(負債)

当連結会計年度末における負債総額は、前連結会計年度末に比べ35百万円増加し6,059百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ300百万円増加し4,409百万円となりました。これは主に、買掛金が395百万円増加した一方で、未払法人税等が84百万円減少したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ264百万円減少し1,650百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が73百万円、リース債務が71百万円、退職給付に係る負債が66百万円減少したことによるものです。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べ1,635百万円増加し19,478百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益3,047百万円を計上した一方で、剰余金の配当により1,879百万円が減少したことによるものであります。また、為替換算調整勘定が325百万円、非支配株主持分が99百万円増加したことによるものであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ432百万円減少し、14,016百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの内訳は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は3,228百万円(前年同期比54百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を4,585百万円計上したことのほか、減価償却費561百万円、仕入債務の増加326百万円、利息及び配当金の受取額269百万円、のれん償却額108百万円等の資金の増加要因に対し、法人税等の支払額1,545百万円、売上債権の増加452百万円、立替金の増加281百万円等の資金の減少要因によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、支出した資金は1,878百万円(前年同期比1,676百万円増)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出1,812百万円、定期預金の預入による支出1,061百万円等の資金の減少要因に対し、定期預金の払戻による収入1,057百万円等の資金の増加要因によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、支出した資金は2,108百万円(前年同期比1,956百万円減)となりました。これは主に、配当金の支払1,879百万円等の資金の減少要因によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当社グループは、国際貨物輸送サービスの提供をしております。従って、サービスの性格上、生産実績を定義することが困難であるため生産実績の記載は省略しております。

 

b.受注実績

生産実績と同様の理由により、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

47,143

+7.5

中国

6,869

+6.8

その他

1,624

+43.7

合計

55,638

+8.2

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.主な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありませんので、記載を省略しております。

3. 「中国」では、当連結会計年度において、香港の現地法人を清算に伴い、連結の範囲から除外しております。

4.「その他」には、台湾、ベトナム及びミャンマーの現地法人を含めております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、貸倒引当金、賞与引当金等の各引当金や退職給付に係る負債の計上、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用しております重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績

(営業収益)

当連結会計年度における営業収益の概況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。

(営業利益)

当連結会計年度は、円安での経営環境が続く中で、当社グループの主力となる海上貨物輸送では、需給バランスの正常化に伴って下落していた海上運賃が昨年6月以降に一部の航路で再び上昇基調に転じ、営業原価も大きく増加しました。その結果、当連結会計年度における営業原価は45,542百万円(前年同期比10.6%増)となりました。また、営業原価が増加する中で競争は激しさを増し、売上総利益率は1.8ポイント低下することとなりました。

販売費及び一般管理費では、DXの推進により実務の効率化を図るとともに、コストの見直しや削減、抑制に継続して取り組みましたが、給与のベースアップや昇給、円安等で人件費が増加したことなどで、販売費及び一般管理費は、6,021百万円(前年同期比2.2%増)と前年同期を上回りました。

営業収益は堅調であったものの、売上総利益率の低下と販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は4,073百万円(前年同期比5.9%減)と前年同期を下回る結果となりました。

(経常利益)

営業外収益では、為替差益137百万円(前年同期は為替差損98百万円)の計上に加え、前連結会計年度に比べ、主に受取利息が11百万円、持分法による投資利益が2百万円増加することとなりました。これらにより、営業外収益は、前連結会計年度に比べ150万円増加し476百万円となりました

その結果、経常利益は4,532百万円(前年同期比0.1%減)と前年同期と同水準となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益にて関係会社清算益84百万円、固定資産売却益4百万円を計上し、特別損失にて事業構造改革費用24百万円、固定資産除却損10百万円を計上しました。また、法人税、住民税及び事業税に法人税等調整額等を合わせた法人税等合計は1,428百万円となり、この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,047百万円(前年同期比2.0%増)と前年同期を上回る結果となりました。

b. 財政状態

当連結会計年度末の財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金を活用し、必要に応じて金融機関からの借入により資金調達を行っております。

主な資金需要につきましては、運転資金として、国際貨物輸送事業に係る営業原価、及び販売費及び一般管理費等であります。また、設備資金として、業務の効率化や顧客の利便性向上を目的としたシステム投資等があります。

これら資金需要及び事業規模と業容の拡大を図るためのM&Aに係る資金等につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達にて対応してまいります。

株主還元につきましては、各期の連結業績や連結配当性向、将来の国内外での事業展開及び経営基盤の強化を図るための内部留保を総合的に勘案しながら、安定的且つ継続的に配当を実施することを基本方針としております。この方針の下、株主の皆様のご期待にお応えするべく、配当による利益還元の充実を図っていきたいと考えております。配当政策に関する詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、組織体制、法的規制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

資本業務提携契約

当社は、ロジスティード株式会社との間で資本業務提携契約を締結しており、その内容は次のとおりです。

 契約締結先

契約締結日

 資本提携の内容

 業務提携の内容

ロジスティード

株式会社

2018年

10月10日

当社株式の保有

4,800,000株

 

 (被所有割合)

発行済株式総数(自己株式を除く)の20.4%

 当社及びロジスティード株式会社の取り組み

①3PL・フォワーディングのシームレスな連携による総合物流サービスの実現

②アパレル・雑貨物流のプラットフォーム化による収益基盤の強化

③非アパレル・非雑貨分野での協業による営業力強化

④LT*・ITを活用した最先端物流への取り組み強化

 * Logistics Technology の略。

 

(注)契約締結時における相手先の名称は「株式会社日立物流」でありましたが、同社グループの組織再編に伴い、「ロジスティード株式会社」に当該契約上の地位及び当該契約に基づく権利義務の全てが承継されております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。