第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の基本経営方針及び経営戦略

当社は『私たちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します。』という経営理念及び「あさひVISION2025」の実現を目指した行動計画に基づき、以下の方針を掲げております。

 

①全国各地への出店を進めるとともに、地域特性を活かした品揃えや、自転車をご利用されるシーンに合わせたライフスタイル提案型の展示を行なうなど、お客様のニーズに合わせた店舗展開をしてまいります。

 

②インターネット通信販売では、自社の「公式オンラインストア」に加え、「Yahoo!店」「楽天市場店」を展開し、未出店地域のお客様への対応に力を入れております。また、地域密着型のリアル店舗との融合による「ネットで注文・お店で受取り」サービスを展開し、より身近に、より便利に自転車を提供できることを目指し、OMO(注)戦略の強化に取り組んでいます。

 

③自社ブランド商品や当社が日本総販売代理権を有する「ルイガノ」などの海外スポーツサイクルブランドを中心に国内販売店に対して商品卸事業を行なっています。

 

④商品戦略では、お客様のニーズをつねに汲み取り「確かな品質で値ごろ感のある商品」を目指し、企画・開発に取り組んでおります。また、品質管理につきましては、商品のさらなる安全性の強化・向上を実現してまいります。

  これらに基づき、今後も自転車専門販売店チェーンとして、世界の人々の自転車ライフの向上に努めてまいります。

 

(注) Online Merges with Offlineの略。ECと店舗が融合して、情報入手から購入、利用までをお客様の体験価値としてご提供する仕組み。

 

(2) 目標とする経営指標

   ①年間出店数

 マーケティング機能の充実を図りながら、毎期15から20店舗を目処とした新規出店のペースを維持し、お客様のさらなる利便性の向上に努めてまいります。

 

 ②自社ブランド商品構成比率

 お客様にとって最適な品揃えをコンセプトに、店舗におきましては自社ブランド商品と他社ブランド商品の品揃え構成比率を各50%前後に保っています。

 

  ③対売上高営業利益率

 当社は自転車及び自転車関連商品販売が事業の大半を占めるため、本業の収益性が明確に表れる対売上高営業利益率を重視しており、8%を当面の目標とし、一層の効率的な運営による営業利益率の向上に努めてまいります。

 

 

(3) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

今後のわが国経済の見通しは、原材料価格の高止まりや円安に伴う物価高などにより、依然として景気の先行きが不透明な状況が続くと想定しております。

自転車業界では、少子高齢化による利用者の減少傾向は続くものの、過年度までの大幅な新車販売台数の減少傾向から下げ止まりの局面を迎えています。また、2024年11月に改正道路交通法が施行され、自転車走行中の「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」の厳罰化が大きな話題となるとともに、利用者の安全意識の更なる向上が求められています。

このような経営環境の中、当社では、お客様お一人おひとりのより充実した自転車ライフをサポートし、誰もが安全・安心に自転車を利用できる環境づくりを推進します。そして、自転車の新しい価値創造企業として「持続可能な社会の実現」と「当社の持続的な成長」の両立を目指してまいります。この基本方針のもと、中期経営計画「あさひVISION2025」における以下の4つの重点戦略を着実に推進します。

・「お客様との関係性強化(CRM(注)強化)」

お客様お一人おひとりの自転車ライフのパートナーとなり、自転車の社会的価値やその可能性に共感してくださる仲間づくりを推進します。具体的には、あさひ公式アプリと連動したプッシュ通知・配信の強化により、継続的な関係性構築を目指すとともに、サイクルメイト改定とアプリ連携サービスの充実を通じ、サイクルメイト加入者に対して公式アプリへの加入を促進し、より多くのお客様とのより良い関係性を築いてまいります。また、自転車ライフの楽しさを提案する自転車の総合情報サイト「ちりりん」の充実を通じて、モノ・コト・トキに関する様々な価値の提供に努めてまいります。

・「既存店の活性化」

お客様の購買行動の多様化に対応するため、店舗とECの特性を活かした利便性や顧客体験価値の向上を目指すことで、OMO戦略を着実に遂行し、更なるEC化率の拡大を推進してまいります。また、お客様のお困りごとに対応すべくサービスメニューの拡充に取組むことにより、今の時代に求められる「お客様とのリアルなつながり」を深化させます。

・「新しい店舗スタイルの開発」

持続的な事業成長戦略として、従来の郊外型店舗に加え、新しい店舗スタイルの開発と出店を推進し、より多くのお客様に当社のサービスや商品を提供できる体制を整備します。EC利用率が高く、修理需要の受け皿ともなり得る都市部での出店や初期投資を抑制した小型店舗の開発を通して、比較的小規模な商圏でも成立する「都市型店舗」フォーマットを活用したビジネスモデルの強化を進めてまいります。

・「事業領域の拡大」

自転車業界全体の活性化や仲間づくりを目指し、卸売事業や企業・団体向けの外商事業を拡大してまいります。卸売事業では、自転車業界最大のSPA企業として、当社の強みである物流網を最大限に活用しながら高品質で安全性の高いあさひブランド商品を全国の自転車販売店へお届けします。店舗・ECでのリユース事業についても更なる拡大を目指し、買取対象店舗数を増加させるとともに、買取・商品化・再販売の一貫体制の強化、物流の効率化、在庫の確保や商品供給の安定化を図り、低炭素社会・循環型経済の実現に貢献します。

 

(注) Customer Relationship Managementの略。当社では、「サイクルベースあさひ公式アプリ」を通じてお客様の自転車ライフがより便利で快適なものになるよう情報提供を行なうなど、お客様との関係性強化を進めるための取組みを指す。

 

(4) 企業価値向上に向けた取組み

 東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を受け、株価純資産倍率(PBR)改善に向けた取組みを進めてまいります。

 成長投資では、新規出店を中心とした店舗数の増加に加え、デジタル・ITや物流基盤の強化、SPAビジネスモデルの深化など、将来の成長を支える基盤づくりへの投資を促進してまいります。株主価値向上に向けた取組みとしては、財務の健全性を維持しながら、配当性向35%を目安とした株主還元を行なうことで継続的な増配を目指し、投資先として魅力あるものにしていきたいと考えております。

 なお、2025年2月期の自己資本利益率(ROE)は、資本コスト(約5~6%程度)を上回る9.3%となりました。引き続き資本効率向上を図り、PBRの改善につなげてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ基本方針

 「私たちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての

 人々が、豊かな人生を送れることを目指します。」という経営理念のもと、自転車で楽しむ文化を創造し、すべての

 人が生涯を通じてより良く生きるために、以下の基本的な取組み方針を定め、自転車を通じて「持続可能な社会の実

 現」と「当社の持続的な成長」の両立を目指します。

 

   ①未来の低炭素社会、自然共生社会、循環型社会に不可欠なモビリティーである自転車のさらなる活用推進を

    図ります。

   ②企業活動によって生じる環境への負荷の低減に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきま

       す。

   ③安全・安心に自転車をご利用いただける環境づくりや、ルール、マナーの啓発活動に貢献していきます。

   ④性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観、キャリアや経験、働き方などに関

    係なく、多様な人材が活躍できる環境を整え、一人ひとりが能力を最大限に発揮できるようサポートし、当社

    に関わる全ての人々と当社がともに成長することを目指します。

   ⑤各ステークホルダーとの円滑な関係を構築するとともに、健全な経営に対する社会からの信頼を得るため、経

    営情報の適時適切な開示を行ない、積極的に説明責任を果たしていきます。

 

(2)全般としての取組み

 ①ガバナンス

 サステナビリティに関する諸課題への取組みは、当社の中長期的な企業価値向上のための重要な経営課題であることから、取締役会が適切に監督を行なうための体制を構築しています。

 2022年7月にサステナビリティ基本方針を制定するとともに、2022年11月には推進体制を整備するため代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役、執行役員及び全部門長を委員とするサステナビリティ委員会を取締役会の下部組織として設置しました。サステナビリティ委員会では気候変動への対応を含む、サステナビリティに関する取組みについての審議・検討を原則3か月に一度以上実施し、その結果を取締役会へ報告しています。取締役会は、サステナビリティ委員会からの報告や外部環境の認識に基づき、サステナビリティに関する戦略・方向性の検討及び取組みの監督・指示を行なっています。

 

 ②戦略

 当社が直面している事業環境や機会とリスクを含む課題、将来想定される社会や環境課題及び主なステークホルダーを考慮に入れ、マテリアリティ(重要課題)を特定しました。なお、マテリアリティの重要度については、“当社にとって重要な課題”と“ステークホルダーにとって関心度の高い課題”の二つの評価軸で評価しました。

 特定したマテリアリティは当社が実現したい未来に向け重点的に取組む10のテーマとし、それぞれのテーマは、社会課題の解決を通じ「創出を目指す価値」、「価値を生み出す資本(強み)」、「企業価値の創出を支える基盤」の3つの機能を担い、未来の実現に貢献します。

 マテリアリティに関する詳細は下記URLをご参照ください。

 https://corporate.cb-asahi.co.jp/sustainability/materiality/

 

  当社のマテリアリティ


 

③リスク管理

 当社では、各部門でリスク管理を行なうとともに、取締役、執行役員及び関連部門長職が経営上重要な事項(品質・知的財産・外国為替取引・契約等)に関して横断的に状況を把握し、必要に応じ常勤取締役、執行役員及び関連部門長等で構成するリスクマネジメント委員会において報告検討しています。リスクマネジメント委員会は原則四半期に1回開催され、リスクを網羅的に把握、評価し、その対策について審議のうえ、取締役会へ上程しています。また、法律上の判断を必要とする案件に対応するため弁護士事務所と顧問契約を結び、適宜アドバイスを受けています。

 

(3)気候変動に関する取組み(TCFD提言に基づく情報開示)

 ①ガバナンス

 上記「(2) 全般としての取組み」の「①ガバナンス」に記載のとおりです。

 

②戦略

  ■採用シナリオ

  当社のTCFD提言に基づくシナリオ分析においては、以下のシナリオを想定しました。

気温上昇予測値

採用シナリオ

想定した環境

2℃未満

「移行」IEA SDS(持続可能な開発シナリオ)

パリ協定の「2℃を十分下回る」という目標に適合するシナリオ。先進国は2050年までに、その他の国は遅くとも2070年までにネットゼロに達すると想定し、世界の気温上昇は1.7℃をピークに、50%の確率で1.65℃に抑制される。

「物理」IPCC SSP1-2.6

持続可能な発展を志向する社会経済の下で、工業化前を基準とする昇温(中央値)を2℃未満に抑える気候政策を導入。21世紀後半にCO2排出正味ゼロの見込み。

4℃

「移行」IEA STEPS(既存政策シナリオ)

現在の政策状況を現実的に検討し、新たな政策が無い場合のエネルギーシステムの方向性を示すシナリオ。温度上昇が2℃を超え、2.5℃程度の上昇を見込む。

「物理」IPCC SSP5-8.5

化石燃料依存型の発展を進める社会経済の下で、気候政策を導入しない高位参照シナリオ。

 

※IPCCのシナリオは、RCP(放射強制力)に基づく気温上昇の程度ごとのシナリオ(RCP2.6やRCP8.5等に、社会経済の状 

 況についての想定シナリオ(SSP)を組み合わせたもの

※時間軸:2025年~2050年

 

■リスク・機会の評価・対応策

該当シナリオ

リスク・機会の分類

要因

内容

影響

重要度

主な対応策

2℃未満

移行リスク

炭素税

炭素税導入による(原材料、製造、物流)コストの上昇

原材料、製造、物流コスト

・省エネルギーの推進や再生可能エネルギーを導入する。

 

・トラックEV化や物流センターの効率的配置転換等を物流業者に働きかけ、協力・協調する。

 

・「乗る人の健康維持・増進に寄与し、地球にやさしい」という自転車の魅力を積極的に発信し、販売機会を拡大する。

 

・原材料や包材における再生素材の利用等について、設計段階から検討を進める。

物流の脱炭素化

海上輸送・国内物流業者の脱炭素に伴う費用の増加

物流コスト

新たなモビリティ

気候変動等環境を意識したテクノロジーの進化により新たなモビリティが開発され、自転車と競合することによる自転車需要の減少

需要の減少

サステナブル製品需要

サステナブルな製品(原材料や包材への再生素材の利用、薄肉化による廃棄物削減、リユース等)の開発のためのコスト増加

原材料、包材、廃棄物コスト

機会

消費者意識の変化

消費者意識の変化による自転車利用の拡大

需要の増加

・消費者嗜好の変化を敏感にとらえたマーケティングを進める。

 

・リユースの認知度を向上させ、取扱い店舗を拡大する。

 

・自動車活用推進法等に沿った取組みを進める自治体と協働する。

 

・モビリティ関連の規制の動向をモニターし、適時適切に対処する。

リユース普及

自転車のリユース市場の拡大

売上の増加

車利用のエリア規制

自転車利用の機会増加(都心部への車の乗り入れ禁止措置等)

利用機会の増加

4℃

物理リスク

自然災害

製造・物流等のサプライチェーンの寸断などで生産停止・販売機会の損失が拡大

業務の停止、被災

・被災時においては代替調達を行なう。

 

・物流センターの配置再編等により、効率的な販売網を構築する。

 

・店舗ネットワークを最大限に活用し、製品の過不足調整・需給調整、相互支援などを行なう。

 

自然災害

自然災害の発生頻度や強度が強まり、自然災害による店舗被害や商品損害、休業による売上損失、復旧費の発生等で損害額が増加

業務の停止、被災

自然災害

平均気温上昇による生産工場の稼働低下(納期不安定、コスト増加)

サプライチェーンの混乱

 

 

③リスク管理

 気候変動に関するリスクと機会については、バリューチェーン全体を対象に、業務執行取締役、執行役員及び全部門長が参画するサステナビリティ委員会にて特定・評価を行なっています。評価方法は、全社的なリスク管理と同様に、「影響度」と「発生可能性」の2つの側面の組み合わせによって分類したうえで重要性を判定しています。

 リスク管理は、リスクの評価体制の整備、潜在的要因の顕在化、認識されたリスクを適切に評価し、かつ効果的な対応・予防・回避することであり、それらの管理による経済的被害の最小化及び不測事態への適切な対応を行なうことを目的としています。

 

④指標と目標

2030年 GHG排出量(Scope12)を2021年2月期比で50%削減する

2050年 GHG排出量(Scope12)のカーボンニュートラルを実現する

※上記目標のScope2はマーケット基準

 当社では、2014年2月から消費電力の削減を目的に、LED照明の導入を開始しており、2025年2月時点で全店舗の99%で導入が完了しています。目標達成に向け、更なるエネルギー使用の効率化に努めていきます。

 

(4)人的資本に関する取組み

①戦略

 当社では従業員個人の成長が企業の持続的発展につながるとの認識に基づき、従業員の声に耳を傾けながら、適材適所で持てる能力を最大限に発揮できる制度の整備や自律型人材育成の風土醸成に取り組んでいます。自転車を通じて世界の人々に貢献するという経営理念とお客様お一人おひとりの自転車ライフを豊かにするという経営VISIONの実現のため、当社では、以下のような人事基本方針、目指す組織文化、求める人材像(6つの価値)、人材育成方針、社内環境整備方針を掲げています。

 

(a) 人事基本方針


 

(b) 目指す組織文化


 

(c) 求める人材像


 

(d) 人材育成方針/社内環境整備方針について

 イ.人材育成方針

組織ごとに役職、等級に期待される人物像を明示し、それぞれの上位等級、役職を見据えた成長につながるよう 学習や教育の機会を提供します。また、従業員個々人が、「求められること」「やりたいこと」「できること」を考え伸ばし、自律型人材として活躍できる場を提供します。そして、従業員一人ひとりの個性を尊重しつつ、創業から受け継がれた「お客様の立場に立って考える」という価値観と共に個人と会社が成長し続けることを目指します。VISIONの実現に向け自分の強みを活かし、あさひと共に未来を創造する人材を育成します

 

  (ⅰ) 「お客様の安全、安心を追求するプロフェッショナル人材を育成します」

お客様の安全と安心を追求し自転車の楽しみ方を伝える社内マイスター制度を推進するとともに、店舗を支える各部門においても専門性の高い人材を育成します。

 

  「あさひ自転車マイスター制度」

あさひ自転車マイスターは自転車のプロフェッショナルを育成するための制度です。技術(整備)・接客・ガイド(お客様参加型イベントの引率)の3つのカテゴリーそれぞれのあさひ自転車マイスターが、お客様の自転車ライフの向上を目指しています。技術(整備)、接客、ガイド(お客様参加型イベントの引率)の3分野において、一定基準を満たし、かつ社内試験を通じてあさひ自転車マイスターの資格を得ることができます。また、あさひ自転車マイスターの中からさらに上位の認定資格を得た者は、「トレーナー」「リーダー(トレーナーをまとめる役割)」として店舗従業員の育成を担い、あさひ全体の技術力やサービス向上を目指しています。お客様の自転車ライフの向上を目指し、あさひ自転車マイスター制度を通じ自転車のプロを育成しています。

 

  「上級専門職」

従業員の専門性向上及びキャリアの充実を目的に「上級専門職」を設置、間接部門の専門性を高めることで店舗のサポートを充実させ、お客様満足の向上に繋げます。

 

  (ⅱ) 「社員一人ひとりの成長とキャリア自律を支援します」

キャリア開発支援制度を通じて、従業員個々人のキャリア自律を推進します。「求められること」「やりたいこと」「できること」を自ら考え、成果を出せる人材を育成します。

 

  「キャリア開発支援制度」

あさひで働く従業員一人一人が、それぞれの専門性を高め、自身の将来を輝くものにしていくためにキャリア開発に関する研修、勉強会を拡充。また、社内公募や自己申告、資格取得支援など人事制度のハード面を通じ、社内で自分の強みを活かせる場を提供することと合わせて、自律型人材の育成に注力しています。


 

   [キャリア開発支援制度(全体像)]


 

  (ⅲ) 「あさひの将来を担う経営幹部人材を育成します」

経営幹部育成プログラムにて多様なメンバーが公平に挑戦できる機会を増加させ、将来の経営を担う人材を持続的に育成します。 

 

  「Asahi Challenge Executive Program (略称)ACEP / エースプログラム」

従来の経営幹部育成に加え、将来経営幹部を目指す社員が自ら手を挙げ経営に参画しながら成長できるプログラム「ACEP」を設定。経営幹部による人材育成委員会を設置し将来経営人材を育成しています。

 

   主な教育研修(抜粋) 

項目

代表的な研修

店舗研修

新入社員研修

フォローアップ研修(入社1年目、2年目、3年目)

ステップアップ研修(入社1年目)

副店長研修

店長研修

マイスター育成研修(技術、接客、ガイド)

店舗技術研修

新入社員技術研修(基礎)

店舗社員向け技術研修

自転車安全整備士、自転車技士研修、社内技術認定試験

間接部門研修

階層別研修(昇格者研修)

リーダー育成研修

多面観察フィードバック研修

選択型研修(自己学習支援:e-ラーニング、派遣セミナー)

全社教育

コンプライアンス研修(毎期テーマ設定)

ハラスメント研修(毎期テーマ設定)

キャリア開発支援

キャリア研修(キャリアデザイン、キャリアマネジメント、勉強会)

 

 

 ロ.社内環境整備方針

当社では経営理念である「私たちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します。」の実現の為に、「多様な経験・スキルをもつ人財が、安心して安全に働くことができ、その個性を自律的に発揮できる職場づくり」を社内環境整備方針とし、各施策を実行しています。 

 

 

  (ⅰ) ダイバーシティ&インクルージョンの取組み

当社は、性別、年齢、人種や国籍、障害の有無、性的指向、宗教・信条、価値観、キャリアや経験、働き方などに関係なく、多様な人材が活躍できる環境を整え、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整備することを目指します。

 

   ダイバーシティ&インクルージョンの具体的な施策

項目

代表的な施策

働き方支援

総合職―地域限定職のコース転換制度

育児休業制度及び復職時の支援制度

小学6年生までの子を対象とした短時間勤務制度

要支援から利用できる介護休業制度

要支援から利用できる介護短時間勤務制度

時間単位年次有給休暇制度

65歳定年制及び65歳以上の嘱託社員制度

風土

ダイバーシティ方針の策定

ダイバーシティ推進会議

ダイバーシティ研修

大阪市女性活躍推進リーディングカンパニーに認定

福利厚生

認可外保育園利用支援制度

ベビーシッター費用補助

福利厚生ハンドブック

LGBTQの従業員を対象としたパートナー登録制度

借上げ社宅制度

転勤に関する支援制度

採用

障がい者の積極的雇用

外国人採用時における在留資格更新支援

正社員転換制度

再入社制度

 

 

 

  (ⅱ) 安全衛生に関する取組み

当社は、安全・衛生が全てにおいて優先する絶対的価値であることを全従業員で認識し、全ての職場で誇りを持てる安全・衛生環境の実現を目指すことを「安全衛生基本方針」としています。又、従業員自らが健康意識を高め、心と体の健康保持増進に努めていく事を目指し、働きやすい職場環境の整備及び教育を行っています。 

 

  安全衛生に関する具体的な施策 

項目

代表的な施策

健康

エール休暇制度(重篤な疾病時のサポート休暇)

本人疾病時の短時間勤務制度

長期障害所得補償制度(GLTD)

社外ハラスメント相談窓口の設置

健康相談窓口の設置

風土

コンプライアンス基本方針の策定

ハラスメント防止ガイドラインの周知

カスタマーハラスメント基本方針の策定

 

 

②指標と目標

人材育成方針に関する指標

項目

2025年2月期実績()

2026年2月期目標(名)

あさひ自転車マイスター 技術マイスター

409

450

 

あさひ自転車マイスター 接客マイスター

260

330

 

あさひ自転車マイスター ガイドマイスター 

92

100

 

 

 

社内環境整備方針に関する指標

項目

2025年2月期実績()

2026年2月期目標(%)

女性管理職比率  (注)1

2.1

4.2

 

男性育児休業取得率

61.0

65.0

 

男女賃金格差

54.2

55.0

 

離職率  (注)2

6.4

5.3

 

 

(注)1.詳細は「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。

      2.離職率には定年退職者は含めずに算出しております

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 出店政策について

   ①直営店による店舗展開について

   直営店による店舗展開は、以下のようなメリットがあります。

  ・会社の経営方針、施策等を迅速かつ適切に実施できます。

  ・店舗管理が容易かつ機動的に実施できます。

  ・出退店、移転等が臨機応変に実施できます。

   このようなメリットがある反面、以下のようなリスクがあります。

    ・出店費用、人件費等のコスト負担が大きくなるリスクがあります。

  ・予定通りの出店ができないことにより財政状態及び経営成績に影響を与えるリスクがあります。

・直営店においては、賃借による出店を基本としており、店舗用物件の契約時に賃貸人に対し保証金及び建設協力金を差入れています。差入保証金の残高は、当事業年度末現在5,252,535千円(総資産に対する割合9.6%)、建設協力金の残高は、当事業年度末現在654,859千円(同1.2%)であります。当該保証金は、期間満了等による賃貸借契約解約時に契約に従い返還されます。

これらの保証金及び建設協力金は、貸主側の経済的破綻等不測事態の発生により、その一部又は全額が回収できなくなるリスクがあります。

・賃借物件で契約に定められた期間満了前に中途解約した場合は、契約内容に従って違約金の支払いが必要となるリスクがあります。

当社では、新規出店後の中途解約等リスクを極力抑えるために、物件毎に商圏、競合状況、投資効果等を総合的に勘案し、厳選した物件での出店を心掛けています。そのために、店舗開発専任人材の確保及び育成に注力するとともに、物件紹介業者や他テナントとの関係を強化し、より多くの物件情報を収集し、既存店データに基づいた売上予測システムを活用し、新規出店が商圏でのシェア向上につながるように展開を進めています。また、出店スケジュールは無理のない日程を設定し、出店の遅れ等のリスク回避に努めています。

差入保証金等の預託金管理については、回収不能リスクを低減する対策として、定期的な貸主与信状況把握や、預託金額の見直し・預託金の一部回収等に取り組んでいます。

 

    ②フランチャイズ(FC)展開について

当社では、“サイクルベースあさひ”ブランドの拡大と効率化を目的として、一部FCによる店舗展開を行なっています。FCによる店舗展開は、直営店による出店と比較し、低コストによる店舗展開が可能で、ブランドの浸透と当社商品の市場占有率の向上に貢献します。また当社はFC加盟店に対してFC契約に基づき、店舗運営に係る指導を実施しています。

一方で、FC加盟店は独立した経営主体であるため、下記のような潜在的なリスクも抱えています。

  ・統一的な店舗運営ノウハウ及び当社の経営方針、施策等を浸透させることが困難な場合があります。

  ・当社の出店政策に基づく出退店、移転等が臨機応変に実施できない場合があります。

  ・FC加盟店の経営状態等により店舗運営に支障が生じる場合があります。

・FC加盟店において重大なクレーム等が発生した場合、当社のブランド全体に対する信用失墜につながるおそれがあります。

・当社とFC加盟店との間にトラブル等が発生した場合、FC契約の解消、訴訟の発生等、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

このため、当社の経営方針を十分にご理解、賛同いただいたうえで、FC加盟店を選定しています。

 

 

(2) 業績の季節変動について

当社は事業の性質上、業績に次のとおり季節的変動があります。

主要販売商品である自転車及び自転車関連商品は、春の入学・入社シーズンが最需要期となるため、上半期の売上高は下半期に比べ多くなる傾向があります。一方で、固定費部分の上半期・下半期の割合はほぼ一定であるため、営業利益の割合は上半期に偏る傾向があります。

なお、当社の最近2事業年度における上半期・下半期別の業績及び通期に対する比率は以下のとおりです。

科目

前事業年度(2024年2月期)

当事業年度(2025年2月期)

上半期

下半期

通期

上半期

下半期

通期

金額
(千円)
(%)

金額
(千円)
(%)

金額
(千円)
(%)

金額
(千円)
(%)

金額
(千円)
(%)

金額
(千円)
(%)

売上高

43,763,626

56.1

34,312,789

43.9

78,076,416

100.0

46,420,805

56.9

35,172,648

43.1

81,593,454

100.0

売上総利益

20,706,039

55.5

16,599,225

44.5

37,305,264

100.0

21,709,697

56.0

17,029,870

44.0

38,739,567

100.0

営業利益

4,218,701

85.9

693,376

14.1

4,912,078

100.0

4,763,891

86.8

722,080

13.2

5,485,972

100.0

 

(注) 比率は、通期に対する割合です。

 

(3) 自社ブランド商品について

当社では、「新しい発見」「驚き」「楽しさ」といったお客様の期待を超える商品づくりを目的に、自社ブランド商品の企画・開発に注力しています。

自社ブランド商品は、当社にて企画・開発を行ない、主に海外の自転車メーカーに生産を委託しています。当期における当該生産委託品の仕入高は18,834,896千円(総仕入高に占める割合42.9%)で、その大半は中国において生産を行なっています。このため、現地における今後の政治・社会情勢、経済的環境によっては、生産に支障が生じたり、生産コストが上昇したりすること等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
  また、当社では、当社の努力だけでは吸収しきれないような仕入価格の変動に対しては販売価格を柔軟に変更するように努めています。しかし、仕入と販売の時期の差によって十分な調整ができない期間が生じる場合や仕入価格が予想を上回って変動した場合には、当社の売上総利益率が影響を受ける可能性があります。

このため、当社では、パーツの性能、機能等と価格とのバランスを考慮しながら、適時にモデルチェンジを行ない、適正な価格を維持しています。

なお、自社ブランド商品の企画・開発に当たっては、他社メーカーの特許権、商標権、意匠権等の侵害について細心の注意を払っていますが、これら権利を侵害したとして裁判等の紛争に至った場合においては、その処理に多額の費用を要し、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 為替リスクについて

 当社は、中国を中心とした海外メーカーから商品を輸入しており、当事業年度の当社の輸入仕入高比率は45.3%です。

 輸入に関しましては、海外仕入先との仕入価格改定の交渉とともに国内販売先との販売価格改定の交渉等を併せて行なっていますが、為替の変動幅が予想以上に大きくなる、又は為替予約のタイミングが不適切であることなどにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社では、為替変動リスクを軽減するため、為替予約運用ガイドラインを設定のうえ 、適切なタイミングで為替予約取引を行なっています。

 

(5) 売掛金の回収について

当社は、商品供給をはじめとする、法人向け等の掛売取引を行なっています。予期せぬ得意先の経営破綻が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当社では、得意先に対する売掛金等の与信管理については、定期的に情報収集を行ない、また信販会社を利用するなど十分に留意しています。

 

 

(6) 固定資産の減損会計について

当社は、店舗等に係る有形固定資産及び無形固定資産などを保有しています。店舗等の収益性の低下により各店舗等の帳簿価額が回収できない場合、当該資産の帳簿価額にその価値の下落を反映させる手続きとして、減損処理を行なう必要があります。この結果、当該店舗等について減損損失が計上され、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

このため、当社は、店舗形態に応じた出店基準を定め、投資回収を検討したうえで出店を行なっています。

 

(7) 人材の確保、育成について

当社は直営店方式による自転車及び関連商品の小売業を事業の柱にしており、積極的な新規出店を行なっています。また、自転車は「乗り物」であり、何よりも安全性が重視されるため、店舗において組立・整備・修理等を適切かつ確実に行なう必要があります。

従って、店舗数の拡大ペースに対応した人材の確保・育成に支障をきたすといった場合には、出店ペースの減速、顧客に対するサービスの低下等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

このため、当社においては、年1回の新規卒業者だけではなく、年間を通じて補充・出店のための要員を機動的に採用しています。また、安全性を確保する技術的資格として、入社後2年以上経過の社員に対し、自転車技士、自転車安全整備士など公的資格の取得を支援しています。また、「マイスター制度」という社内資格を導入し、整備、接客、ガイド(自転車の「楽しみ方・安全」を提案)の3分野において、一定基準を満たし、かつ社内試験に合格すると「マイスター」の資格を得ることができ、社員の自発的なレベルアップを支援しています。

さらに、技能経験を考慮し十分な資質があると判断したアルバイトの社員登用を行なうなど、即戦力となる人材確保に関して成果を挙げてきています。このように技術的、能力的に高い専門性を持つ社員を配置し、専門店チェーンとしての独自性と有用性を向上させるとともに人材の確保・育成に対応しています。

その他、社内技術講習会、展示会及びメーカー技術講習会等、さまざまな機会を積極的にとらえ、技術・商品知識の修得をはじめとする人材の育成にも継続的に取り組んでいます。

 

(8) 品質管理について

店舗においては、顧客より注文のあった自転車を組立・整備のうえ、引渡しを行ないます。当該組立・整備上の瑕疵が原因で、販売した自転車による事故、負傷等が発生した場合、その損害の賠償、又は補償を求められる可能性があります。

また、自社ブランド商品及び国内販売権利取得ブランド(ルイガノ) 商品においては、当社仕様による商品をメーカーに製造委託し、自社ブランド商品及びルイガノブランドとして販売しているため、製造物責任法(PL法)の適用を受けます。それらの企画発注に関しては、国内・海外のいずれにおいても日本工業規格(JIS規格)適合を最低条件とし、当社独自の品質基準を設定して、部品調達、メーカーの選定を行なっています。

製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、損害賠償額以外に、製品の回収、交換・補修、設計変更等のコスト発生や、当社の社会的評価の低下につながる恐れがあります。この結果、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

製造物責任賠償については生産物賠償責任保険(PL保険)に加入しています。

また、サンプル商品の仕様詳細のチェックをはじめ、完成品出荷時には仕様の最終点検及び全般にわたる品質機能検査を義務付け、必要に応じて自ら立会検査を行なうことによって品質管理を行なっています。

 

 

(9) 顧客情報の管理について

当社は、自転車を販売した顧客に対し、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年11月25日法律第87号)」に基づく自転車防犯登録の勧奨や、サイクルメイト(任意で入会できる当社会員サービス制度)への入会による盗難補償、無料点検、各種割引等のサービスを提供しています。また、インターネットによる通信販売も行なっています。

顧客情報の管理には万全を期していますが、不正アクセス等により顧客情報が外部に流出した場合には、当社における直接的損害や当社に対する信用の低下等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

そのため、顧客情報を内規である「個人情報保護管理規程」に基づき厳重に管理し、インターネットによる通信販売においても、外部から不正アクセスができないようにファイアウォール等のセキュリティ手段を講じています。また、社内研修による人材の育成も行なっています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、インバウンド需要の増加や雇用・所得環境の改善により緩やかな回復傾向が見られましたが、地政学的リスクの高まりや円安の進行、国内の物価上昇など、景気の先行きは不透明な状態が続きました。

自転車業界では、高機能・高単価な電動アシスト自転車への乗り換え需要の増加や物価高に伴う節約意識の高まりを背景に買い替えサイクルが長期化し、新車販売が低調に推移しました。

このような経営環境の中、当社は自転車の新しい価値創造企業として「持続可能な社会の実現」と「当社の持続的な成長」を目指し、お客様のより良い自転車ライフの実現に向けて取組んでまいりました。

まず、OMO戦略の強化では「ネットで注文、お店で受取り」サービスの基盤強化を中心に、人気商材の確保や競争力のある販売価格の設定、並びに効果的なキャンペーン施策などを行ない、主に電動アシスト自転車の販売を伸ばすことができました。

店舗では、当社が創業75周年を迎えたことを記念し、特別価格での感謝還元キャンペーンを実施しました。また、修理・メンテナンスやリユース需要の増加に対応するため、最適なサービスを提供できる人員体制を整備しました。

リユース事業においてはシティサイクルの買取を開始し、スポーツサイクル、電動アシスト自転車、キッズサイクルに加えてすべての車種の買取が可能になりました。

これらの取組みにより、当社の強みである全国展開の店舗網やECでの販売体制、リユース車の買取・再販売体制、修理技能を有する専門人材などの収益基盤を更に強化したことで、小売業界を取り巻く厳しい経営環境下においても増収増益を達成することができました。

また、2026年2月期に最終年度を迎える中期経営計画「あさひVISION2025」において、収益性の向上や自転車業界全体の活性化を目指す重点戦略である「お客様との関係性強化(CRM強化)」「既存店の活性化」「新しい店舗スタイルの開発」「事業領域の拡大」を下支えする次の3つの成長基盤の強化を進めました。

①「デジタル・IT基盤の強化」

②「物流機能の強化と最適化」

③「ブランディング強化」

具体的な取組みとして、「デジタル・IT基盤の強化」では、販売・在庫管理に関わる業務プロセスを効率化するために新基幹システムを導入し、本格稼働を開始しました。

「物流機能の強化と最適化」では、主要物流拠点の1つである「西日本物流センター」の機能を三重県伊賀市から京都府京田辺市に移し、2024年10月から本格的に稼働しました。物流拠点をより店舗に近い立地に移し、配送効率を高めることで、「距離×台数」で算出する物流負荷係数の削減を目指すとともに、専用システムの導入によりドライバーの待機時間の削減と管理を行ない、物流2024年問題の解決に取組みました。

「ブランディング強化」では、主にあさひブランド商品の品質向上に取組むとともに、社内公募で結成された20歳代のメンバーを中心とするプロジェクトチームにより企画された商品「COOSA」を新たな商品ブランドとして誕生させるなど、ブランドコンセプトに沿った商品開発を積極的に行ないました。また、ブランド価値と認知度を向上し、当社の持続的な成長に繋げることを目的として、従業員へのインナーブランディング教育を実施しました。

出退店の状況につきましては、東北地域に1店舗、関東地域に8店舗、近畿地域に3店舗を新規出店しました。また、中国地域の1店舗がフランチャイズ契約を終了したことに伴い同地域に直営店を移転オープンしました。この結果、当事業年度末の店舗数は、直営店528店舗、FC店17店舗のあわせて545店舗となりました。

 
 このような活動の結果、当事業年度におきましては、以下のとおり増収増益となりました。
   売上高       81,593,454千円     (前年同期比   4.5%増)

    営業利益       5,485,972千円     (前年同期比   11.7%増)
   経常利益       5,626,076千円     (前年同期比   8.4%増)
   当期純利益      3,555,930千円     (前年同期比   14.2%増)

なお、当社は、自転車事業の単一セグメントであるため、セグメントの区分ごとの記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ62,989千円減少(前事業年度は4,205,219千円の増加)し、当事業年度末には9,438,076千円となりました。

      当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は4,293,272千円(前事業年度は8,581,614千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前純利益5,373,211千円、減価償却費1,696,755千円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額1,217,303千円、未払消費税等の減少額926,439千円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は2,998,066千円(前事業年度は3,053,355千円の使用)となりました。収入の主な内訳は、差入保証金の回収による収入48,436千円であり、支出の主な内訳は、新規出店に係る有形固定資産の取得による支出2,511,544千円、差入保証金の差入による支出280,616千円、無形固定資産の取得による支出190,981千円等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は1,358,195千円(前事業年度は1,323,039千円の使用)となりました。これは、配当金の支払額1,245,149千円、自己株式の取得による支出113,045千円であります。

 

③ 仕入及び販売の実績

当社は、自転車事業の単一セグメントであるため、仕入及び販売の実績は品目別により記載しております。

(a) 仕入実績

当事業年度の仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目別

当事業年度

(自  2024年2月21日

至  2025年2月20日)

前年同期比(%)

自転車

36,805,996

115.4

パーツ・アクセサリー

6,436,996

112.1

その他

612,385

82.8

合計

43,855,378

114.3

 

 

 

(b) 販売実績

当事業年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目別

当事業年度

(自  2024年2月21日

至  2025年2月20日)

前年同期比(%)

自転車

57,788,228

105.5

パーツ・アクセサリー

14,026,165

99.7

ロイヤリティ

140,315

91.7

その他

9,638,744

106.2

合計

81,593,454

104.5

 

(注) 総販売実績に対する販売割合で10%以上の相手先はありません。

 

(c) 地域別販売実績

当事業年度の地域別販売実績は、次のとおりであります。

地域別

売上高(千円)

構成比(%)

前年同期比(%)

店舗数(店)

北海道・東北・
関東・甲信越

39,749,068

48.7

105.8

252

中部

8,840,889

10.8

104.4

67

近畿

18,687,592

22.9

103.8

120

中国・四国・九州

11,861,885

14.5

101.9

89

ロイヤリティ・
その他

2,454,017

3.0

102.1

-

合計

81,593,454

100.0

104.5

528

 

(注) 1.上記店舗数は、当事業年度末現在の直営店舗を記載しております。

2.ロイヤリティ・その他には、フランチャイズ契約締結先からのロイヤリティ収入、FC(フランチャイズ店)並びにGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)・HC(ホームセンター)等への商品売上、及び本社部門における外商売上を記載しております。

 

  (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

     経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
    なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

    ① 財政状態の分析

   (a) 流動資産

 当事業年度末における流動資産の残高は、前事業年度末に比べ1,322,404千円(4.5%)増加し、30,561,340千円となりました。これは主に、商品の増加848,207千円、未着商品の増加351,563千円、現金及び預金の減少58,245千円等によるものであります。

 

   (b) 固定資産

当事業年度末における固定資産の残高は、前事業年度末に比べ576,054千円(2.5%)増加し、23,890,991千円となりました。これは主に、建設仮勘定の増加268,514千円、建物の増加217,980千円、建設協力金の減少96,233千円等によるものであります。

 

 (c) 流動負債

 当事業年度末における流動負債の残高は、前事業年度末に比べ296,678千円(2.1%)減少し、14,141,400千円となりました。これは主に、買掛金の増加482,195千円、未払法人税等の増加417,836千円、未払消費税等の減少926,439千円等によるものであります。

 

 (d) 固定負債

当事業年度末における固定負債の残高は、前事業年度末に比べ42,855千円(3.7%)増加し、1,194,621千円となりました。これは主に、資産除去債務の増加28,144千円、株式報酬引当金の増加15,000千円等によるものであります。

 

 (e) 純資産

 当事業年度末の純資産の残高は、前事業年度末に比べ2,152,281千円(5.8%)増加し、39,116,311千円となりました。これは主に、当期純利益による増加3,555,930千円、剰余金の配当による減少1,246,416千円、自己株式の取得による減少113,045千円等によるものであります。

 

    ② 経営成績の分析

   (a) 売上高の状況

 当社の当事業年度の売上高は前年同期比3,517,037千円増(同4.5%増)の81,593,454千円となりました。売上高の内訳の詳細については、「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)  経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」と「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)  経営成績等の状況の概要 ③仕入及び販売の実績  (b)販売実績」をご参照ください。売上高が増加した主な要因は、「ネットで注文、お店で受取り」サービスの基盤強化によるEC販売の拡大、全国の店舗に技能を有するスタッフを安定的に配置し修理・メンテナンスやリユース需要の増加に対応したこと並びに新規出店による店舗数の増加などが挙げられます。

 

  (b) 売上総利益の状況

当社の当事業年度の売上総利益は、前年同期比1,434,302千円増(同3.8%増)の38,739,567千円となりました。売上総利益が増加した主な要因は、上述したとおり、売上高が増加したことが挙げられます。

 

  (c) 営業利益の状況

当社の当事業年度の販売費及び一般管理費は、前年同期比860,408千円増(同2.7%増)の33,253,594千円となりました。これは主に、当期の新規出店に伴う出店費用及び地代家賃、支払手数料、水道光熱費等の増加によるものであります。これらの結果、営業利益は前年同期比573,894千円増(同11.7%増)の5,485,972千円となりました。 
 

 

  (d) 経常利益の状況

当社の当事業年度の営業外収益は、前年同期比53,485千円減(同14.0%減)の328,099千円となりました。これは主に、受取補償金等の減少等によるものであります。営業外費用は、前年同期比86,542千円増(同85.3%増)の187,995千円となりました。これは主に、為替差損等の増加によるものであります。これらの結果、経常利益は前年同期比433,866千円増(同8.4%増)の5,626,076千円となりました。

 

  (e) 当期純利益の状況

当社の当事業年度の特別利益は計上しておりません。特別損失は、前年同期比162,859千円減(同39.2%減)の252,864千円となりました。これは主に、減損損失239,107千円等であります。法人税等(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)は前年同期比153,926千円増(同9.3%増)の1,817,280千円となりました。これらの結果、当期純利益は前年同期比442,799千円増(同14.2%増)の3,555,930千円となりました。

 

 

  ③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報 

 当社の運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

   当社は、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入を基本としています。

なお、当事業年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。

 

 ④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たって、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、合理的に判断して行なっておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりですが、特に以下の事項に関する会計上の見積りが当社の財務諸表の作成に大きな影響を及ぼすと考えております。

当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。割引前将来キャッシュ・フローは事業計画を基礎とし、将来の不確実性を考慮して見積っておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等により見積りの見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。

なお、当事業年度においては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (損益計算書関係) ※5 減損損失」に記載のとおり、減損損失(239,107千円)を計上しております。

 

  ⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

売上高については、高機能・高単価な電動アシスト自転車への乗り換え需要の増加や生活費をはじめとした物価上昇の影響で節約意識が強まり、自転車の買い替えサイクルが長期化するなど、当社を取り巻く経営環境に大きな変化があり、計画比906,545千円減(同1.1%減)となりました。

営業利益については、上述したように売上高が減少したため、計画比14,027千円減(同0.3%減)となりました。

また、経常利益は計画比173,923千円減(同3.0%減)、当期純利益は計画比124,069千円減(同3.4%減)となりました。

なお、ROEは当期純利益の計画未達により、計画比0.4ポイント減の9.3%となりました。

 

2025年2月期(計画)

2025年2月期(実績)

2025年2月期(計画比)

売上高

82,500,000千円

81,593,454千円

906,545千円減(1.1%減)

営業利益

5,500,000千円

5,485,972千円

14,027千円減(0.3%減)

経常利益

5,800,000千円

5,626,076千円

173,923千円減(3.0%減)

当期純利益

3,680,000千円

3,555,930千円

124,069千円減(3.4%減)

ROE(自己資本利益率)

9.7%

9.3%

0.4ポイント減

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、店舗運営希望者に対して「サイクルベースあさひフランチャイズチェーン契約」を締結することでフランチャイズ権の付与を行なっております。なお、契約の要旨は次のとおりであります。

契約内容

加盟店に対し、当社の所有する商標、サービスマーク及び経営ノウハウを用いて、全加盟店が同一と見られるイメージのもとに自転車及びその関連商品の販売と修理の営業を行なう権利を付与するとともに、店舗運営に関する指導及び経営指導の一環として加盟店の経営分析を行ない必要に応じて助言指導を行なっております。

契約期間

契約締結の日から満5年間であり、契約期間満了6ケ月前までに書面による異議の申し出がないときは、同一条件の下に自動的に3年間延長されるものとし、以後の更新も同様であります。

加盟金

加盟金は、当該契約時に一定額を受領することとなっております。

ロイヤリ
ティ

ロイヤリティは、総売上高に対する一定率を毎月受領することとなっております。

契約先

大阪市都島区の株式会社ダイツー等5社で、FC店舗は17店舗であります(当事業年度末現在)。

 

 

6 【研究開発活動】

特に記載すべき事項はありません。