当中間会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
当中間会計期間における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
当社は、独自のペプチド模倣技術を駆使してタンパク質/タンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction, PPI)を阻害する低分子を用いて新薬を開発することを目指し、10年以上にわたる研究開発の結果、臨床開発化合物を見出し、数多くのシード化合物を生み出しています。この独自の創薬基盤をPepMetics®技術として発展させ、これまで創薬が困難とされてきた標的に対して有望な化合物を見出す技術を確立してきました。PepMetics技術によって、細胞内のシグナル伝達を制御することで、ガンなどの難病を根治するための治療薬の創出を目指しており、当社が創薬標的を選択して開発化合物を見出す自社開発事業と、製薬会社の持つ創薬標的に対してヒット化合物、リード化合物、又は臨床候補化合物を見出して導出する共同開発事業を行っています。
当中間会計期間におきましては、導出した2つのプログラムがそれぞれ第Ⅱ相臨床試験を実施しており、自社開発事業では3つのプログラムの開発を進めつつ、共同開発事業では引き続き7社の提携先との創薬プログラムを進めています。
現段階においては、早期の製品の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況、並びに研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。当社では、事業の進捗を測る指標として研究開発の各段階でのプログラムの数を管理しています。
研究開発では下記の4段階で進捗します。
これらのプログラムは全てが上位に進階する訳ではなく、一定の確率で目的の化合物が得られず中止となります。プログラムを進めるためには研究者及び資金等の多くの資源を必要とするため、一時期に並行して進められるプログラムの数には限界があります。当社では成功及び導出の可能性が高いプログラムに資源を優先的に配分することを重視しており、プログラムを始める際に明確な目標と期限を定め、進める中で想定外の状況が発生した場合にはプログラムを中止することがあります。その資源を新たなプログラムに配分することで、常時適切な数の有望なプログラムを揃える最適なパイプラインの状態を維持しています。
(a) CBP/β-カテニン相互作用阻害剤(E7386、PRI-724)
Wntシグナル伝達経路は、ガン、線維化などを制御するタンパク質のネットワークであり、創薬標的として広く研究されています。Wntシグナルは、細胞が「ガン化」「線維化」する際のみならず、細胞が「分化」して正常に機能する際にも重要な機能を果たすため、Wntシグナルを止めることは副作用にもつながります。従来の技術で開発されてきたWnt阻害剤は、Wntシグナルを上流から全て止めてしまうため、強い毒性を示して開発が中止されてきました。
E7386及びPRI-724は、そのような毒性を示すことなく、治療薬として必要な安全性を可能とするコンセプトのもとで創出された化合物です。Wntシグナルは、細胞核内でβ-カテニンがCBPという転写因子タンパク質に結合することでスイッチが入りますが、PepMetics化合物は、このCBPに結合し、CBPとβ-カテニンの結合を阻害します。一方で、PepMetics化合物はCBPと似た別のタンパク質であるP300とは結合しないため、β-カテニンとP300によるWntシグナル経路は機能します。その結果、PepMetics化合物はWntシグナル全体の機能を止めることなく、「ガン化」「線維化」を止めることが可能となります。
(ア) E7386
エーザイ株式会社(以下、「エーザイ」という。)と共同創出した経口投与可能なCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるE7386は、ガン細胞の悪性化に関与するCBP/β-カテニンシグナルをターゲットとし、2021年11月にはPOC(Proof of Concept)を達成しています。
エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰ相/第Ⅱ相臨床試験では、2024年9月にESMOで発表された後期第Ⅰ相パートの中間解析結果で子宮内膜ガンの患者で高い客観的奏効率と有望な予備的抗腫瘍活性を示しました。エーザイは本年5月に開かれる米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、本臨床試験における新しいデータを発表する予定です。
現在、子宮内膜ガンの患者を対象とした第Ⅱ相パートを進めており、エーザイは、「レンビマ®」との併用による子宮内膜ガンに係る適応に関して、2031年3月までの承認取得をめざすと発表しています。
Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰ相/第Ⅱ相臨床試験が進行中です。
(イ)PRI-724
当社が2008年に見出したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるPRI-724(ホスセンビビント)は、2018年5月に大原薬品工業株式会社(以下、「大原薬品」という。)に導出し、2022年2月に終了した前期第Ⅱ相臨床試験において効果が確認され、POCを達成しました。
HCV・HBV又はNASHに起因する非代償性肝硬変患者を対象として2023年4月に開始した第Ⅱ相臨床試験を国内で実施しており、NASHを対象とするコホートでは患者の登録を完了しています。
また、血友病合併HIVとHCVの重複感染に起因する肝硬変患者を対象に東京都立駒込病院を中心に実施されている第Ⅱ相臨床試験において、2024年12月に症例の登録が終了し2025年12月に臨床試験終了を予定しています。
ガンで活性化されているシグナル経路が強く依存する“CAP依存的翻訳”に働くeIF4E/eIF4GのPPI阻害を目的とした4EBP1模倣化合物のプログラムで、「リード最適化」ステージにて創薬研究が実施されております。eIF4E/eIF4GのPPIは、現在の治療では予後の悪いトリプルネガティブ乳ガンなどのガン細胞において、関連遺伝子の変異や過剰発現により活性化されていることが知られています。本プログラムから創出される新薬は、有効な治療薬が存在しない患者に貢献できると考えています。
当社では、上記のFEP以外に2つの自社開発プログラムを、それぞれ「ヒット化合物探索」及び「リード化合物探索」のステージにて実施しております。「リード化合物探索」のプログラムにおいて化合物の最適化にAIを活用するため、4月にElix社との共同研究契約を締結しました。この提携により、研究開発の時間短縮と開発成功確率の向上を目指しています。
また、新たな2つの創薬標的についてプログラムの開始を決定し、準備を進めております。
AIの活用に加えて、自社内でライブラリー化合物の評価を行う、ハイスループットスクリーニング(HTS)の設備投資と体制整備を完了し、化合物とタンパク質の結合様式の測定の体制を整えるなど、創薬開発の効率と成功確率を高めるための整備を進めています。
前事業年度に新たに締結したEli Lilly and Company社(以下、Lillyという。)及び小野薬品工業株式会社(以下、小野薬品という。)との契約を含め、現在国内外製薬企業7社と契約を締結しています。その中で4つのプログラムでは、当社とパートナー企業が一体となってプロジェクトチームを編成して創薬研究を進めており、1つは「リード化合物探索」ステージ、残りの3つは「ヒット化合物探索」ステージにて研究が実施されております。これら共同研究を拡大するため、引き続き他の国内外製薬企業との共同研究契約等の交渉を進めております。
以上の結果、当中間会計期間における売上高は218,676千円(前年同期比89.4%増)となりました。
費用につきましては、販売費及び一般管理費については512,071千円(前年同期比26.5%増)となりました。その内訳は、研究開発費が294,717千円(前年同期比31.1%増)、その他販売費及び一般管理費が217,353千円(前年同期比20.8%増)であります。
この結果、営業損失は460,605千円(前中間会計期間は334,331千円の営業損失)、経常損失は432,376千円(前中間会計期間は322,855千円の経常損失)、中間純損失は474,387千円(前中間会計期間は336,052千円の中間純損失)となりました。
なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載を省略しております。
当中間会計期間末における資産合計は3,911,630千円となり、前事業年度末と比較して616,936千円減少しました。これは主として、売掛金が29,904千円増加した一方、現金及び預金が655,303千円減少したこと等によるものであります。
当中間会計期間末における負債合計は853,922千円となり、前事業年度末と比較して171,742千円減少しました。これは主として、賞与引当金が5,335千円増加した一方、Lilly及び小野薬品とのライセンス契約等に基づく契約負債が183,999千円減少したこと等によるものであります。
当中間会計期間末における純資産合計は3,057,707千円となり、前事業年度末に比べ445,193千円減少しました。これは主として、ストックオプションの権利行使に伴い資本金及び資本準備金がそれぞれ14,596千円増加した一方、中間純損失の計上により利益剰余金が474,387千円減少したこと等によるものであります。
当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末より655,303千円減少し、3,736,718千円となりました。当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当中間会計期間において営業活動により支出した資金は、696,518千円(前中間会計期間は340,140千円の収入)となりました。これは主に、税引前中間純損失473,177千円の計上及び、契約負債が183,999千円減少したこと並びに、売上債権を29,904千円計上したこと等によるものです。
当中間会計期間において投資活動により支出した資金は、18,343千円(前中間会計期間は24,536千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出16,034千円及び、無形固定資産の取得による支出2,300千円があったこと等によるものです。
当中間会計期間において財務活動により獲得した資金は、29,079千円(前中間会計期間は1,494,750千円の収入)となりました。これは、ストックオプションの行使による収入があったことによるものであります。
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
当中間会計期間における研究開発活動の金額は、294,717千円であります。
なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結はありません。