第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

当社は、「グローバル・メジャー・ブランド(以下「GMB」)」すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」となることを長期目標としております。

この実現を加速するため、2030年を見据えた長期ビジョン「GMB2030」の中で、当社のあるべき姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げております。食料の生産性・安全性を高めるソリューション、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション、都市環境・生活環境を向上させるソリューションを通じて持続可能な社会へ最大限の貢献をすることにより、長期にわたる持続的発展をめざすべく、次の内容に取組んでおります。

 

(1) ESGを経営の中核に据えた事業運営の推進

企業の社会的責任がますます重くなる中で今後もサステナブルな企業であり続けるため、当社はESGを意識した当社独自の取組み(K-ESG)を進めていきます。「食料・水・環境」分野を事業領域とし「環境負荷低減・社会課題解決」に事業として取組む企業として、ESGの一般的な施策に加え、クボタグローバルアイデンティティ(企業理念)に根差した事業活動を推進することによって企業としての存在価値を高めていくことをめざします。

 

(2) さらなる経営基盤、オペレーション力の強化

現在、当社が進めている中期経営計画2025は、2025年までの5年間をGMB2030実現のための土台作りを行う期間と位置付け、6つのテーマ(ESG経営の推進、次世代を支えるGMB2030実現への基礎づくり、既存事業売上高の向上、利益率の向上、持続的成長を支えるインフラ整備及びこれらの5つのテーマの推進を確実にするための共通テーマとしてのDXの推進)を中心に取組んでおります。

しかし、近年の大きく変化する事業環境に適応するためには絶え間ない改革が必要です。そこで、従来のテーマに加えて、経営体制改革プロジェクト、開発改革プロジェクト、オペレーション改革プロジェクト及び人財・グローバル人事改革プロジェクトを立上げて改革を推進します。

 

① 経営体制改革プロジェクト

海外事業のさらなる拡大に伴い、日本中心の経営体制をグローバル化させていく必要があります。

事業軸、機能軸、地域軸の責任と権限を明確にし、それに沿ってスピーディーに意思決定できる体制を構築します。グローバルなガバナンス体制を構築するとともに、マーケットインに基づく明確な戦略が策定され、新しい付加価値を生み出すことができる組織体制、強みや弱みを考慮した当社らしいグローバルで俊敏な体制を構築していきます。

 

② 開発改革プロジェクト

日本、北米、欧州、アセアン、中国及びインドの6極の開発体制を構築しつつありますが、明確なマーケット戦略に基づき、全世界の開発チームが繋がって刺激しあうことで創造力が発揮される仕組みによって、開発効率を高めなければグローバル競争を生き残れません。

共通化により開発効率・生産コストを改善させるプラットフォーム設計等の開発方法の改革や、KPS(クボタプロダクションシステム)の考え方を取入れた効率化を進めます。イノベーション力と開発生産性の向上をめざした改革に取組み、当社の強みである技術・製品開発力に磨きがかかる体制を構築していきます。

 

③ オペレーション改革プロジェクト

当年度において新しい基幹システムが日本の工場で稼働を開始しました。受注から納品までのプロセスを一気通貫で繋ぐことで、重複した業務の解消を図ります。また、地政学リスク等の様々なリスクを考慮した当社全体のオペレーションのあるべき姿の構築に向けて、生産拠点や調達のレイアウトの見直しも同時並行で進めていきます。

 

 

④ 人財・グローバル人事改革プロジェクト

企業が価値を創出する際にキーとなるのは無形資産です。無形資産には組織や知的財産、オペレーションの巧さ等がありますが、中心は人財です。事業の成長を牽引・後押しする、海外の人財も含めたグローバルな人財の開発・育成の仕組みの構築や、地域の特徴を生かしつつ、グローバルな人事制度の構築・拡充を図り、企業価値の向上を促進させます。

 

(3) 中期経営計画2025の推進

当年度における中期経営計画2025の各テーマの進捗状況は次のとおりです。

「次世代を支えるGMB2030の実現への基礎作り」については、営農支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」のオープン化により社外連携やデータ蓄積が引続き順調に進んでおります。

「既存事業売上高の向上」については、建設機械及びベーシックトラクタが好調であり、今後の成長の重要な柱となる可能性が見えてきました。

他テーマについても一定の進捗が見られ、収益源として貢献しております。

これらのテーマについては2024年も着実に推進していきます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

① 基本的な考え方、戦略

当社は企業理念「クボタグローバルアイデンティティ」(以下「KGI」)の中で、ブランドステートメントとして「For Earth, For Life」を掲げ、美しい地球環境を守りながら、人々の豊かな暮らしを支えていくことを約束しております。そして、KGIを実現するにあたって「グローバル・メジャー・ブランド クボタ」(以下「GMBクボタ」)をめざしており、GMBクボタ実現に向けた2030年のめざす姿として長期ビジョンGMB2030を掲げております。

GMB2030では豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”となること、すなわち地球環境と人間社会のサステナビリティ、当社のサステナビリティの両立に取組んでおります。具体的には、食料・水・環境領域での新たなソリューションの展開と既存事業の拡充及びさらなる社会への適合です。加えて、それら事業展開を支えるため、ESGを経営の中核に据えた事業転換等の経営基盤の強化を進めております。

0102010_001.png

 

② マテリアリティ及び機会とリスク、指標と目標

GMB2030を実現するためのクボタらしいESG経営(以下「K-ESG経営」)では、「事業を通じた環境・社会課題の解決」とそれらを牽引・後押しする事業基盤の強化に取組んでおります。「事業を通じた環境・社会課題の解決」はGMB2030実現に向けて「食料の生産性・安全性の向上」、「水資源・廃棄物の循環の促進」及び「都市環境・生活環境の向上」の3つの観点で新たなソリューションや既存事業の拡充に取組み、それらすべてで気候変動にも対応していきます。事業基盤の強化には「課題解決を実現するイノベーションの加速」、「ステークホルダーの共感・参画」及び「持続可能性を高めるガバナンスの構築」が必要です。事業、イノベーション、ステークホルダー及びガバナンスの4つの領域でブレイクダウンした12項目をマテリアリティとして特定しております。当社における特定されたマテリアリティ(リスク、機会としての認識)及びマテリアリティ推進にあたっての指標と目標はそれぞれ次頁のとおりです。

マテリアリティは世界全体の動き、めざす方向性のうち当社にとって重要な4つのメガトレンド(サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル、限界費用ゼロ社会及び新たな中小コミュニティ形成)、当社が果たすべき役割、その他ESG課題及びステークホルダーの動向等から抽出し、KESG経営戦略会議(「③ ガバナンス、リスク管理」で後述)やその他検討会での経営層による議論、投資家及び株主との対話でいただいた意見と評価をふまえて特定し、取締役会へ報告・決定されました。マテリアリティ及び指標は固定的なものではなく、常に社会情勢や当社の事業状況をふまえて見直しを行います。

<K-ESG経営のマテリアリティ、GMB2030との関係図>

0102010_002.png

 

<マテリアリティに対する認識(機会とリスク)>

マテリアリティ

マテリアリティに対する認識

事業を通じた環境・社会課題の解決

食料の生産性・安全性

の向上

当社はこれまで人々が生活する上で欠かすことのできない製品・サービスを提供することに努め、農業機械や水道管など地表から上下数メートルで展開される、食料・水・環境に関する課題解決では、130年を超える年月を通じて、多くの技術やノウハウを蓄積してきました。

一方、世界全体の動き、めざす方向性として、当社にとって重要な4つのメガトレンド「サーキュラーエコノミー」「カーボンニュートラル」「限界費用ゼロ社会」「新たな中小コミュニティ形成」があります。この動きが進む中で、KGI実現及びGMBクボタをめざす当社が果たすべき役割は次の3つで、これら役割を果たすことは、当社がさらに事業領域を拡げ、発展するとともに、社会へ貢献する機会と考えております。

・食料・水・環境領域のソリューションの提供

・持続可能な社会の開発と自然の循環ループの実現

・種々のコミュニティにおける課題解決への貢献

水資源・廃棄物の循環

の促進

都市環境・生活環境

の向上

気候変動の緩和と適応

課題解決を実現するイノベーションの加速

多様な価値観に基づく

事業運営

多様な価値観を認めることは、強みを増幅させ、弱みを補いあうことになり、高い競争優位につながります。当社の多様な人財が多様な能力を十分に発揮することで、変化への対応やイノベーションを通じて新たな価値を創出し、事業を成長させます。

研究開発とパートナーシップの強化

近年は課題そのものが高度化、複雑化しております。課題解決を実現するためには当社の研究開発力をさらに高める必要があります。また、ビジネスパートナーとの協業で新たな知見を取入れることはそのスピードを加速させます。

ステークホルダーの

共感・参画

従業員の成長と働きがいの向上

当社が持続的成長を実現するには、事業環境の変化へ柔軟に対応できる活力に満ちた組織でなければなりません。それは働きがいを感じて意欲的に取組む従業員がいることで可能になり、働きがいは成長の実感、社会や仲間への貢献の実感等で実現します。

お客様の満足と安全

お客様の想いに寄り添い、お客様の視点で未来を想像することで課題をいち早く発見して期待を超える新たな価値を提供することができます。それを継続することがお客様満足になり、お客様からの信頼を得ることで、多くの社会貢献を成しえます。

透明性の向上と対話

高い透明性と対話は従業員やサプライヤー等ステークホルダーの共感・参画につながり、事業活動を支えます。また、当社を深く理解いただくことは企業価値の向上にもつながります。

持続可能性を高める

ガバナンスの構築

コーポレート・ガバナンスの強化

長期安定的に経済価値と社会価値のバランスをとりながら企業価値全体を向上させることは経営の最重要課題です。このためには透明・公正で迅速・果断な経営を支えるコーポレート・ガバナンスを実現することが必要です。

K-ESG経営の浸透と実践

グローバルで共通の価値観や行動規範を共有することがOne Kubotaを実現し、事業展開とそれによる環境・社会課題の解決を支えます。

リスクマネジメント

の強化

社会情勢・事業環境の変化は年々激しくなり、リスクも多様化しております。これまで以上にスピーディかつ能動的にリスクへ対応していくことが持続的な企業価値創出には不可欠です。

 

<マテリアリティの指標と目標>

マテリアリティ

指標

中長期目標

事業を通じた環境・社会課題の解決

食料の生産性・安全性の向上

新たなソリューションの進捗状況

今後開示

水資源・廃棄物の循環の促進

都市環境・生活環境の向上

気候変動の緩和と適応

スコープ1、2、3

排出量

2030年に

スコープ1、2:2014年比50%削減

スコープ3:今後開示

課題解決を実現するイノベーションの加速

多様な価値観に基づく事業運営

執行役員の多様性の状況

女性管理職比率(単体)

外国籍執行役員 10%(2025年)

女性管理職比率 7%(2030年)

研究開発とパートナーシップの強化

研究開発体制の状況

研究開発結果

今後開示

ステークホルダーの共感・参画

従業員の成長と働きがいの向上

従業員エンゲージメントスコア

DX人財

従業員エンゲージメントスコア 70(2030年)

DX人財 1,000人(2024年)

お客様の満足と安全

お客様満足度

今後開示

透明性の向上と対話

外部機関の評価

主要な外部評価機関から最上位の評価を獲得(2025年)

持続可能性を高めるガバナンスの構築

コーポレート・ガバナンスの強化

取締役会の実効性

今後開示

K-ESG経営の浸透と実践

企業理念やビジョンの

従業員への浸透度

浸透度スコア75(2025年)

リスクマネジメントの強化

リスクマネジメント体制の構築状況

グローバルでリスクマネジメント体制を構築し、デューデリジェンスを実施(2025年)

 

<マテリアリティの特定プロセス>

0102010_003.png

③ ガバナンス、リスク管理

マテリアリティの特定や見直し、指標と目標の設定及び管理等サステナビリティ全般の執行側機関としてKESG経営戦略会議(事務局は社長直轄のKESG推進部)を設置しております。KESG経営戦略会議は年3回開催され、社長をはじめ事業部門、財務、人事、研究開発、製造、環境等の担当役員がメンバーとなり、会議で決定された事項は事業部門やコーポレート部門に展開され推進されます。マテリアリティ推進の実績及び目標はKESG経営戦略会議での報告及び検討、報酬諮問委員会での審議を経て、取締役会へ報告・決議されております。

0102010_004.png

 

また、マテリアリティの推進(K-ESG経営の推進)と役員報酬を連動させる報酬体系をとっており、役員報酬における年次賞与の20%はK-ESG評価として、マテリアリティ目標の達成度に応じて標準額の0%~200%の範囲で変動させております。

0102010_005.png

各マテリアリティの推進は、KESG経営戦略会議のほか、取締役会及び取締役会メンバーによるディスカッションの場「Value Up Discussion Meeting」、クボタグループリスクマネジメント委員会等で行い、取締役会へ報告また決議されております。

 

④ マテリアリティと企業価値の関係性

当社ではマテリアリティと企業価値の関係性を下図のように考えております。環境経営、特に気候変動はすべての事業の前提・共通事項であり、人的資本はその他マテリアリティに影響を与える要素であるため、重要性は高くなります。それらに関する戦略、ガバナンス等については後述「(2) 人的資本」及び「(3) 気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)」のとおりです。

0102010_006.png

(2) 人的資本

① 基本的な考え方

当社がGMB2030を実現していくためには、既存事業の拡充を行っていくことが必要不可欠です。またそれと同時に、食料、水、環境という3つの分野が連携して、社会課題の解決策を提案していくソリューションの提供も行っていく必要があります。今後、既存事業の拡充、新たなソリューションを通じて環境・社会課題を解決していく原動力は、強くてしなやかな組織と多様で自律した人財であり、それらを強化していくことが重要であると考えております。

創業以来、当社は社会の発展に向けて挑戦できる人財を求めており、現場主義やOn Your Sideの精神を重要な価値観として事業運営を行っております。今後、既存事業の拡充と新たなソリューションビジネスへの取組みを行うためには、それらの価値観を大事にしつつ、加えて3つの概念『a.「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」/b.「Purpose」/c.「健康経営の推進」』を基本方針として当社に根付かせる必要があると考えております。

 

② 人的資本戦略

3つの基本方針は経営戦略とのつながり、人財戦略(獲得・育成・活用・確保)の観点等に基づいて策定しております。また、基本方針ごとの戦略に対して、施策のポリシーを定めることで、当社として取組むべき方向性(KPIや具体的施策)を明確にしております。

以下の基本方針と戦略に基づいた各種人事施策を実行することでGMB2030の実現をめざします。

1) 人的資本 基本方針

基本方針

概要

a

DEI

(組織の強化)

多様な人財が集い、つながることで新たな価値を創出し、それがイノベーションやサステナビリティの源泉となります。当社では『対話』を重視した企業文化を構築し、個々の能力を引き出すことが「DEI」を実現するための鍵であると考えております。その実現がマテリアリティである「多様な価値観に基づく事業運営」につながります。

b

Purpose

(個の強化)

個々人が未知の領域の課題解決にチャレンジをしていく必要があり、そのためにはメンバーそれぞれが強い想い「Purpose」を持ち、個々の力を発揮していくことが求められます。それはマテリアリティである「従業員の成長と働きがいの向上」につながります。

c

健康経営の推進

当社がこれからも社会に必要とされるソリューションを生み出すためには、活動の主体者である従業員の心身の健康が欠かせません。従業員の健康を大切にする風土を醸成し、一人ひとりの心身の健康を保つと共に、いきいきと働き続けることができる職場づくりを通して、当社の人的資本戦略を下支えします。

 

<GMB2030と人的資本の関係図>

0102010_007.png

2) 基本方針の戦略、施策ポリシー

a. DEI(組織の強化)、b. Purpose(個の強化)、c. 健康経営の推進の3つの基本方針について、戦略と施策ポリシーを定めて取組みを進めております。

 

<基本方針の戦略、施策ポリシー>

0102010_008.png

 

[戦略]

a. DEI(組織の強化)~多様な価値観に基づく事業運営~ (=社内環境整備方針)

・多様な人財を獲得し、その個性を尊重しながら、人財の価値を最大限引き出す『対話』を重視した企業文化の構築

当社は人的資本戦略の柱として、「DEI:ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)・インクルージョン(包括性)」を推進しております。異なる価値観や考え方があることを認識し、多様な個性を最大限に活かすことはイノベーションにつながります。加えて、組織がグローバルで持続的に成長していくためにも、多様性を活かすことは重要な観点です。また、当社では『対話』をキーワードにDEIの戦略を展開しております。多様な個性を持った人財が積極的に『対話』し、多様な意見を交わすことで新しいアイデアが生まれ、現存の課題に対する新しいアプローチが見つかります。そして人財の価値を最大限に引き出す『対話』を重視した組織文化は、個々の能力・経験・考え方が認められ個々の力をより発揮できる環境を構築します。

b. Purpose(個の強化)~従業員の成長と働きがいの向上~ (=人財育成方針)

・戦略的かつ計画的な育成投資によるチャレンジ意欲ある人財への成長機会の提供

・従業員のPurpose(想い)を大切にした自律的なキャリア形成支援

当社は人的資本戦略の柱として、「Purpose(想い)」を重視しております。GMB2030実現に向けて、当社全体の個人の成長は欠かすことができず、個人の成長の土台となるのは、一人ひとりのPurposeであると捉えております。想いを自律的に実現できる環境をさらに整え、一人ひとりのPurposeが原動力となって、個人も組織も成長していくような組織をめざしております。

これからも従業員一人ひとりが自分と向き合い、自律的にキャリアを考えていけるような支援を積極的に行い、従業員の視野を拡げ、自己成長に向け意欲的にチャレンジする方への育成投資を重点的に行っていきます。そして一人ひとりのエンゲージメントを高めつつ、個々人の持つ強みを最大限に引き出し、その強みを伸ばしながらチームで価値創造できる人財育成を行います。

c. 健康経営の推進~人的資本の下支え~ (=社内環境整備方針)

・健康経営戦略マップに基づくデータ分析により、人的資本への効果的な健康施策への投資サイクルを構築する

当社は人的資本戦略の土台として、健康経営を推進しております。戦略の核となるのは、「健康経営戦略マップ」に基づくデータ分析です。健診データや労働時間データ、各種サーベイで取得した「KPI指標」を多変量解析し、心身の健康やパフォーマンスを促進/阻害する要因を深掘りしながら、効果的な健康施策への投資サイクルを構築しております。健康な従業員は、組織の「創造性」と「生産性」を向上させ、全体のパフォーマンスに寄与します。このアプローチは、K-ESG経営にも密接に連動し、企業の持続的成長にもつながります。

 

<健康経営戦略マップ>

0102010_009.png

 

[施策ポリシー]

a. DEI(組織の強化)

・マネージャーがメンバー一人ひとりに向き合い、双方の想い・考え方を理解・共感しあう施策を実行する

・多様な人財の集まりと生産性の高いフレキシブルな働き方の中で共創・創発を促進する

『対話』を重視した文化を構築するためにはマネージャーの存在は必要不可欠です。1on1ミーティングや日々の対話を通じて、マネージャーがメンバー一人ひとりの想いに理解・共感し、その想いに対して最大限支援することが個々人のエンゲージメントを高め、多様な人財の価値を引き出すことができると考えております。また、性別、国籍、年齢、経験、価値観等、あらゆる属性や様々な個性をもつ従業員一人ひとりが、熱意をもって働けるよう、状況に合わせた働きやすい制度の整備等、多様な人財が活躍できる場を提供していきます。

 

b. Purpose(個の強化)

・将来の経営人財候補を戦略的・計画的に発掘・育成する

・チャレンジ意欲ある人財へ積極的な投資を行う

・事業・職務で実現したい従業員の想いを受け止め、従業員の自律的キャリアを最大限支援する

当社がこれから既存事業の拡充や新たなソリューションへの取組みを行うには経営人財の計画的な育成とチャレンジ意欲ある人財への積極的な投資を行い、より変化に柔軟で多様性のある人財を育成していく必要があります。また一人ひとりの想いを確実に受け止め、事業や職務で実現したキャリアについて、上司部下間で十分な対話を行い、従業員の想いを最大化し、行動につなげることが今後のめざす姿を実現する近道であると考えております。

 

c. 健康経営の推進

・ヘルスリテラシー向上を起点として、適正な受療行動と予防活動を促進する

健康になるためには、「行動」を変える必要があり、「行動」を変えるためには、まず「意識」を変える必要があります。「ヘルスリテラシー」は、健康意識・知識を推し量る指標の1つであり、この数値が高い従業員を増やしていくことが、健康な従業員を増やしていくことにつながります。健康を「自分ごと」として捉え、自律的な健康増進に取組む「ヘルスリテラシー」のある従業員を増やすべく、健康施策に継続的な投資をしております。

 

 

[具体的な取組み(一例)]

■従業員エンゲージメントの向上 <a. DEI(組織の強化)/b. Purpose(個の強化)>

K-ESG経営を推進するには、従業員が企業理念を実践し、社内外のステークホルダーの共感と参画を得ることが重要です。そこで、K-ESG経営推進の主体者である従業員が誇りや喜びを持ち、働きがいと働きやすさを感じられる組織づくりを国内外で進めるべく、2021年11月よりエンゲージメントサーベイを実施しております。2023年はサーベイ対象をさらに拡大し、国内・海外の子会社含め、2021年から3倍となる約21,500名が参加しました。対象範囲の拡大もある中、着実にスコアは向上しておりますが、現状の肯定的回答率スコア52%(単体・総合職)から2030年でスコア70%(2025年でスコア60%)をめざし、エンゲージメントを高める取組みを強力に推進していく必要があります。

サーベイ結果は組織によって異なるため、各組織に適したアクションを展開することが必要です。そのためには、組織全体でしっかり対話を行い、組織内のメンバー全員にも自分事化してもらう働きかけを行っております。2023年から組織内の対話を促進すべく、組織づくりワークショップ(部長向け)を実施し、組織の活性化・エンゲージメント向上を図っております。メンバーとの対話を通じて、組織のありたい姿を描き、組織内に伝えていく一連の流れを体験することで、エンゲージメント向上にむけた具体的なアクションを展開しております。実際、約7割の参加部門において、エンゲージメントスコアが向上する結果となっております。

 

■女性活躍促進 <a. DEI(組織の強化)>

女性の活躍は組織全体のイノベーション促進や持続的成長を実現させると考え、2020年より女性従業員の採用数を増やしております。今後は引続き事務系社員で50%近くを採用し、技術系社員も現状の12%~13%から20%程度まで引き上げるべく、取組みを進めております。それと同時に今まで以上に女性が働きやすく、活躍できる環境を整備していきます。

また、女性従業員間の交流と相互支援を目的とした、Kubota Women Employee Resource Groupを発足させました。組織を超えて女性リーダーが集い、自発的な活動を通じた新しい繋がりを築くことで、自身のキャリアに対する考えを深め、モチベーション向上を図ります。また自らのリーダーとしての経験を共有することで、次世代を担う若手従業員が多様なキャリアや価値観に触れる機会を創出し、次の女性リーダーの育成につなげていきます。

女性従業員のエンパワーメントを目的とした女性活躍推進フォーラムも開催しております。社長をはじめとする経営層が女性の活躍がクボタにとって不可欠であること、そして女性活躍推進に対する思いを直接女性従業員に向けて語りかけております。また、グローバルに活躍する社内ロールモデルの講話を通じて、女性従業員が前向きに自身のキャリアを考え、自分らしいリーダー像を見出す機会を創出しております。

管理職に於ける女性従業員の比率は、年々増加傾向にあります。これまでも人事制度の変更等、性別によらない登用を確実に進め、女性の活躍を支える両立支援の拡充等、エクイティ(公平性)を重視した施策を実施してきました。これからもより一層ダイバーシティ・マネジメントを強化し、公平な育成・登用を実現していき、すべての従業員が自分らしく活躍できる職場環境を整備し、意欲を持って働き続ける風土醸成を進めます。

 

■自律的キャリアを支援する研修体系 <b. Purpose(個の強化)>

従業員の自律的キャリアや挑戦意欲を刺激し、従業員の成長やリテンションに繋げるため、若手からシニアまでの各階層に対する世代別キャリアデザイン研修を実施しております。また、定年延長によって会社側がミドルシニア層に寄せる期待がさらに大きくなっていることや、ミドルシニア研修(40代、50代)の満足度が高く、受講者から継続的なフォローを望む声もあることから、60歳前後を対象としたキャリア開発研修も新設しております。

0102010_010.png

■健康意識の向上 <c. 健康経営の推進>

当社では、従業員一人ひとりの「ヘルスリテラシー」を向上させるために、2018年から2021年にかけて希望者全員(実績:12,309名)に対して「ウェアラブルデバイス」の無償貸与をしております。2022年からは「健康アプリ」を導入し、健診結果やバイタルデータを手元でいつでも確認できる環境を整えると共に、年間を通じた「健康イベント(クボタ健康チャレンジ)」と健康行動に対する「ポイントインセンティブ」を通じて、従業員の自律的な健康増進をサポートしております。

 

③ 指標と目標

人的資本関連KPIは、マテリアリティである「多様な価値観に基づく事業運営」「従業員の成長と働きがいの向上」に関わるものとして、『エンゲージメントサーベイ(以下、ES)によるエンゲージメントスコア(肯定的回答率)』『外国籍執行役員比率』『女性管理職比率』を設定しております。これら指標と目標は状況に合わせて見直しを行います。

 

KPI項目

対象範囲

2023年実績

2025年目標

ES エンゲージメントスコア

連結

52% (注)

60%

外国籍執行役員比率

連結

6%

10%

女性管理職比率

単体

4.3%

5%

(注) 単体・総合職のスコア(サーベイ実施対象拡大中)

 

④ ガバナンス

代表取締役社長をはじめ事業部門、財務、人事、研究開発、製造、環境等の担当役員がメンバーであるKESG経営戦略会議で人的資本に関する審議を行っております。そして、社長を含む事業本部及び機能別本部トップの役員がメンバーの人財会議で、将来の経営層候補人財について、最適な育成や人財配置等を検討しております。また、エンゲージメントスコアや多様性の状況は役員報酬制度に組み込まれております。

 

(3) 気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)

当社は、K-ESG経営のマテリアリティのひとつに「気候変動の緩和と適応」を選定し、2050年に向けた環境面から事業活動の方向性を示す「環境ビジョン」で、カーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現への貢献を掲げました。当社は2020年にTCFD提言へ賛同し、開示拡充につとめております。

最新のTCFD開示は https://www.kubota.co.jp/sustainability/environment/ghg/index.html をご覧ください。

 

① ガバナンス

代表取締役社長を委員長とするKESG経営戦略会議で、グループ全体のESG関連課題の審議を行い、国内外のグループ会社への環境関連情報の伝達や課題解決を議論するため「環境管理担当責任者会議」を開催しております。気候変動対応状況は、役員報酬制度に組み込まれ、評価されております。

 

② 戦略

2050年に向けた人口増加や経済発展をベースに、2030年に想定される事業への影響評価を1.5℃/2℃、4℃の気候変動シナリオを用いて行いました。

 

<機械事業における分析結果>

シナリオ

シナリオ分析結果概要

(市場・事業環境の変化)

評価結果

(2030年)

財務インパクト(2030年)(注)

1.5℃/2℃

リスク

「技術」

気候変動関連の規制強化等による製品設計・使用要件の変化

・内燃機関の燃費改善の規制が今後強化される

・農業機械や建設機械、ユーティリティビークル等、内燃機関を使用する製品に対する新たな規制が適用される等、CO2排出削減のニーズが高まり、電動化、燃料電池化、低・脱炭素燃料化(水素エンジン、合成燃料エンジン)等、動力源のニーズが多様化

・長時間の稼働やハイパワーが求められ電動化が難しい大型製品は内燃機関搭載製品が使用される。内燃燃料には低・脱炭素燃料の利用が増加

燃費改善、多様な動力源に対応する研究開発を積極的に進め、将来の事業機会獲得につなげる必要がある

機会

「製品」

2030年時点では一部の先進地域で規制が適用されるが、脱炭素化製品の売上高への影響は限定的

小-中

機会

「市場」

脱炭素化製品・サービスを望む市場ニーズの変化

・建設機械や芝刈機、ユーティリティビークルにおいて、騒音低減化、給油手間の忌避や室内利用等、内燃機関搭載製品にない新たな価値を求める市場ニーズが拡大

・地域の燃料供給インフラに応じ、低・脱炭素燃料を利用した水素エンジン、ガスエンジンやハイブリッドエンジンを搭載した製品の需要が拡大

一部の先行市場や既存市場で電動ユーティリティビークル、乗用モーア、建設機械等を求める顧客はあるが、2030年時点での売上高への影響は限定的

小-中

機会

「市場」

農業における脱炭素推進による農業形態の変化

・気候変動への適応策として、農業技術発展や農地の有効利用が促進され、農作物の生産量は増加

・先進国で農業の脱炭素化が進み持続可能な農法の普及が拡大

・新興国で農業の脱炭素化と近代化が同時に進みスマート農業や営農ソリューション、エネルギー効率の高い農業機械の需要が拡大

・土壌の炭素貯留を増加させる等、脱炭素型農業の需要が拡大

農業の低・脱炭素化に貢献する農業機械、スマート農業ソリューション等の売上高増加が期待できる

中-大

4℃

機会

「レジリエンス」

耕作適地の変化(農機・農法の需要変化)

・気候変動は耕作適地の移動や農作物生産に影響を与える

・スマート農機や精密農業等、新たな農機・農法への移行支援や農業ソリューションの需要が拡大

・特に北米、アジア、欧州の一部地域等、より湿潤な地域における農業ソリューションの需要に変化

気象変化に対応可能な農業機械、農業ソリューションの売上高増加が期待できる

中-大

(注) 損益への影響を 「小」≦25億円、25億円<「中」≦250億円、250億円<「大」 で示す。

上記分析結果に基づく機械事業における対応戦略

イノベーションを通じて製品使用段階でのCO2排出抑制に貢献していきます。

・今後も規制強化が予想されるエンジンの燃費改善、ハイブリッド化等の研究開発を継続強化

・市場のニーズに応じ、カーボンニュートラルに貢献する製品ラインアップの拡充

・地域のエネルギー供給状況に応じ、電動化、燃料電池化、低・脱炭素燃料化(水素エンジン、合成燃料エンジン)等、多様な動力源の実用化に向けた研究開発の加速

・農業からの温室効果ガス削減や持続可能な食料生産活動を支援していきます。

・バイオマス地域資源循環や炭素貯留等、低・脱炭素農業や気象変化に対応可能な製品・サービスの研究開発を推進、営農ソリューションを具現化

・農業の効率化・省力化に貢献するスマート農業(農機自動化、精密農業等)を可能とする農業機械やサービスの拡充と普及拡大

・フードバリューチェーンの課題解決に貢献する植物工場等次世代作物生産を通じた持続可能な農業の構築に貢献

・さらなる農業の効率化や農業を通じた脱炭素化に貢献する最先端技術とICTを融合させたクボタ営農支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」やクボタIoTソリューションシステム「KSIS(クボタスマートインフラストラクチャシステム)」、ほ場水管理システム「WATARAS」の利用用途の拡大

<水環境事業における分析結果>

シナリオ

シナリオ分析結果概要

(市場・事業環境の変化)

評価結果

(2030年)

財務インパクト

(2030年)(注)

1.5℃/2℃

機会

「市場」

水と資源の確保・保全に向けた社会動向の変化

・人口増加や経済発展が進むことでさらに水需要が増加

・気候変動の影響による水資源の逼迫や水質悪化等への予防措置として、先進国やアジア諸国で生活・産業用水の取水・排水規制が強化される

・水不足・水質悪化を解消するためのソリューションの需要が拡大

上下水道のインフラ整備に関連する製品・ソリューションの売上高増加が期待できる

中-大

機会

「資源効率」

水と資源の確保・保全に向けた社会動向の変化

・ごみや農業残さの利活用、従来活用されていなかった小水力からのエネルギー回収等、エネルギーや資源の有効利用につながるソリューションの需要が増加

・脱炭素とサーキュラーエコノミーの両立が加速し、新規資源の採掘を回避し、資源の循環利用が増加

・都市化工事の増加や作業者の減少等により水インフラ工事の効率化につながるソリューションの需要が拡大

資源・エネルギーの再生・回収や利用効率化に関するソリューションの売上高増加が期待できる

中-大

4℃

機会

「レジリエンス」

気象災害に対する意識の変化

・気候変動が進むことで、台風・豪雨等自然災害増加や、渇水、水質悪化等、生活環境に悪影響

・自然災害激甚化への対策として、既存上下水道インフラのレジリエンス強化や老朽更新、水質改善等の需要が増加

・気候変動に伴い激甚化する自然災害に対して、日本では国土強靭化に向けた水関連製品の需要が拡大

水インフラ強靭化、災害対策、水質改善に関連する製品・ソリューションの需要は継続し、売上高増加が期待できる

小-中

(注) 損益への影響を 「小」≦25億円、25億円<「中」≦250億円、250億円<「大」 で示す。

上記分析結果に基づく水環境事業における対応戦略

様々な資源(水・エネルギー・鉱物等)の有効活用に貢献していきます。

・水需要の増加に応える上下水道インフラ整備への貢献

・水質改善に貢献する浄水・下水処理関連製品・ソリューションの提供拡大

・地域の資源循環の仕組み作りに貢献する農業系残さや生活ごみ、下水汚泥等からのバイオ燃料の製造及び利用促進

・廃家電等の都市鉱山から有用な金属を回収することで廃棄物の埋め立て処分を削減し、廃プラスチックをエネルギー源として利用する「ディープ・リサイクル技術」の開発推進

・下水汚泥から重金属やリンを回収する下水汚泥溶融システムの提供による資源の有効利用促進

・水道管路工事・施工管理における省エネルギー化に貢献する「スマート水道工事システム」の利用拡大を推進

気象災害に強い水インフラづくりに貢献していきます。

・災害に強いダクタイル鉄管や災害からの復旧に貢献する排水ポンプ車等、災害予防に貢献する排水機場の河川水位シミュレーション・運転管理システム等、防災・災害対応製品の提供拡大

・水環境プラント・機器の遠隔監視・診断・制御を支援するKSISの利用用途の拡大

 

<事業共通の分析結果>

シナリオ

シナリオ分析結果概要

(市場・事業環境の変化)

評価結果

(2030年)

財務インパクト(2030年)(注1)

1.5℃/2℃

リスク

「規制」

社会が企業に求める脱炭素化対応の変化

・炭素価格制度・炭素国境調整措置が導入される等、各国で製品ライフサイクルを通じた脱炭素要求が拡大

・脱炭素化に向けた規制や取組みが加速し、エネルギー価格が上昇

・化石燃料の使用、CO2排出に対する課税が強化

・各国で省エネルギー規制強化によりエネルギーコストや省エネ対策費が増加

脱炭素化や省エネに対応する設備投資の増加、エネルギー価格、原材料価格上昇により製造コストが増加する

省エネ・CO2排出抑制対応等による排出削減目標達成時に想定される炭素税の負担が発生する

(約25億円)

(注2)

4℃

リスク

「物理的」

異常気象増加による自社・サプライヤーへの影響

・豪雨や洪水等の気象災害が激甚化・高頻度化

・自社拠点やサプライヤーでの事業活動に悪影響

・原材料調達遅延により、生産・販売活動に影響

気象災害による災害損失が発生する可能性がある

(約30-60億円)

(注3)

気象災害による悪影響を回避するBCP対策費が増加する可能性がある

(注) 1 損益への影響を 「小」≦25億円、25億円<「中」≦250億円、250億円<「大」 で示す。

 2 2030年時点の予想される炭素税を乗じて試算

 3 過去発生した気象災害にともなう損失を参考に試算

 

上記分析結果に基づく対応戦略

事業活動から発生するCO2排出抑制につとめていきます。

・拠点における省エネ、高効率設備導入、電炉化・燃料転換、LED照明の導入、再エネの利用拡大に向けた取組みの推進

自拠点・サプライヤーにおける気候変動リスク対策を強化していきます。

・ハザードマップを活用した豪雨・浸水・暴風によるリスクが高い拠点の特定と建設物の補強や電気設備への浸水対策の計画的な推進

・調達ルートの多様化を図る等、部材調達の分散化

・事業継続計画(BCP)に基づく気象災害に強いモノづくり体制の構築

 

<低炭素経済への移行計画>

私たちは、2030年以降のカーボンニュートラルの時代の動力源は多くの選択肢があり、全方位で対策をしなければならないと考えております。以下は当社の気候変動対応を示した移行計画です。

 

0102010_011.jpg

上記は現時点の検討可能な情報等に基づくものです。今後の技術開発や市場動向等により大きく異なる可能性があります。

 

③ リスク管理

当社はバリューチェーン全体(直接操業、上流・下流含む)における気候変動の緩和と適応を含む環境保全活動に関わるマテリアリティの特定を行っております。発現するリスク・機会の対象期間は短期・中期・長期的な視点で行い、特定したリスク・機会は毎年見直しを行っております。また、情報収集・分析、課題抽出、重要度の検討、リスク・機会の特定と重点施策の策定を通じ環境保全活動に関わるマテリアリティを特定しております。評価プロセスとして、環境保全中長期目標を設定し、その進捗管理を行っております。中期(3-5年の期間)・長期(5-15年の期間)の目標はKESG経営戦略会議で審議しております。各生産拠点は計画を作成し、環境管理部は毎年進捗状況の管理を行っております。実績と目標との差異を分析した上で、重点施策や中長期的な取組みの方向性を検討しております。また、環境管理担当責任者会議を通じ各地域の状況に応じた気候変動への対応を推進しております。

 

 

④ 指標と目標

当社では、気候変動によるリスクの低減と機会の拡大をめざした環境保全中長期目標を設定し、目標達成に向けた取組みを推進しております。また、グローバル拠点(スコープ1、2)及び上流・下流(スコープ3)のCO2排出量を算定し、実績値を開示しております。主な開示データは第三者機関による保証を取得し、その精度向上につとめております。

取組項目

指標

基準年度

2023年度実績

(注3、4)

2025年度目標

(注4)

2030年度目標

(注4)

CO2排出削減

(スコープ1、2)

CO2排出量(注1)

2014

▲28.1%

▲50%

CO2排出原単位(注2)

2014

▲46.6%

▲45%

▲60%

再生可能エネルギー利用率(注1)

15.9%

20%以上

60%以上

(注) 1 グローバル拠点を対象としております。

 2 グローバル生産拠点を対象としております。

 3 2023年度実績は2024年3月8日時点の速報値です。

 4 ▲は「マイナス」を表します。

 

CO2排出量の推移

 

0102010_012.png

(注) 2023年度速報値は2024年3月8日時点のものです。

 

3 【事業等のリスク】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経済状況

当社製品には生産財・資本財が多いため、民間設備投資、建設投資、国内公共投資等の低迷により、当社製品の需要が減退し、売上が減少する可能性があります。また、農業政策が農業関連製品の売上に影響を与える可能性があります。海外、特に欧米においては、小型トラクタ等の売上が個人消費や住宅建設投資等の一般景気の低迷により減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料の価格高騰・調達難

当社は外部の供給業者から多くの原材料、部品を調達しております。また、事業のグローバル化に伴って海外生産拠点での調達も増加しており、世界規模での調達網の構築による最適地調達を推進しております。しかし、原材料、部品の価格が需給の逼迫や市況の変動等によって急激に高騰し、それが長期化した場合は利益を減少させる可能性があります。また、原材料、部品の調達に支障をきたした場合、製品の製造や販売が困難となり、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 国際的事業展開に伴うリスク

当社が大規模な海外展開を行っている事業は、海外事業に付随したリスクを抱えております。これらのリスクが顕在化した場合、安定的な製品の製造及び販売が困難になり、売上の減少や調達・輸送コストの増加等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼし、成長を阻害する可能性があります。重要なリスクとしては次のようなものがあります。

① 重要な市場における政府による許認可政策や補助金政策の変化に伴うリスク

② 国際貿易政策による予期せぬ関税や輸出入割当量の変化に伴うリスク

③ 各国法規制の予期せぬ変化に伴うリスク

④ 地政学リスク

⑤ 発展途上国における未成熟な技術水準や不安定な労使関係

⑥ 人的資源確保の困難性

⑦ サプライチェーンやロジスティクスの混乱に伴うリスク

⑧ 各国税制の予期せぬ変化に伴うリスク

⑨ 移転価格や事前確認申請の交渉における予期せぬ結果に伴うリスク

 

(4) 為替レートの変動

当社は海外に経営成績等に大きく貢献する複数の製造・販売・金融子会社を有しております。各海外子会社の現地通貨建ての財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。また、親会社が海外の子会社や外部顧客に輸出する場合、その取引の多くは現地通貨建てで行われ、獲得した外貨は円貨へと換算されます。従って、現地通貨と円貨との為替レートの変動が経営成績等に影響を与えます。通常は他の通貨に対して円高になれば当社の経営成績等にマイナスの影響を及ぼします。為替レートの変動によるマイナスの影響を軽減するため、地産地消を目的とした生産拠点の現地への移行を進めております。また、先物為替契約等のデリバティブを利用しております。しかし、これらの活動にもかかわらず、著しい為替レートの変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 金利変動リスク

当社は有利子負債を有しており、これらは固定金利または変動金利が課されております。金利が上昇した場合、支払利息が増加するほか、金融事業に関連して特に米国において、インセンティブコストが上昇します。金利の上昇による影響を軽減するため、金利スワップ契約等のデリバティブにより金利の変動に対応しております。しかし、こうしたリスクヘッジにもかかわらず、著しい金利水準の変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 株式相場の変動リスク

当社は有価証券を保有しており、その大半が株式であるため株式相場の動向次第で公正価値が大きく変動する可能性があります。また、株式相場の下落により退職給付制度に関する制度資産が減少する可能性があります。なお、制度資産については許容できるリスクのもとで可能な限りの運用成果を上げることを運用方針としており、リスクを分散するため、金利変動リスク、経済成長率、通貨の種類等の投資収益に影響する要因を考慮の上、投資先の産業、会社の種類、地域等を慎重に検討してポートフォリオのバランスをとっております。しかし、有価証券の公正価値変動、制度資産の減少が当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 第三者との戦略的提携、合併・買収等の成否

当社は今後も第三者との提携、合併・買収等に取組み、新たな成長を模索する可能性がありますが、このような活動の成否は事業を取巻く環境、取引相手の能力、あるいは当社と相手が共通の目標を共有しているか否か等に影響されると考えられます。このような活動が成功しない場合や投資に対するリターンが予想を下回る場合は、収益性の悪化により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 他社との競争

当社は各事業において競合他社との厳しい競争にさらされているため、取引条件、研究開発、品質等で競争優位性を維持できない場合には、売上の減少等により経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 製品やサービス

当社は品質教育の実施、品質問題の未然防止への取組み及び品質に関する社内監査等を実施し、品質の維持・向上に努めております。しかし、当社が提供する製品やサービスに重大な契約不適合や欠陥があった場合、賠償責任を負うことで多額の費用が発生する可能性があります。また、そのような事態が発生した場合には、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 環境汚染、公害等

当社は環境法令を確実に遵守して環境事故を未然に防止するため、環境マネジメントシステムを構築し、ルールに基づいた業務運営と環境保全活動の継続的な改善に努めております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社が有害物質の排出・漏洩、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等を引き起こした場合、その是正措置をとるために多額の費用や支出が発生したり、訴訟に発展したりする可能性があります。この結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) アスベスト関連

当社は過去、1954年から2001年にわたりアスベストを含む製品の製造に携わっておりました。アスベスト健康被害に関連して、健康被害にあった方々への支払や訴訟に関する費用が発生し、それらの費用が多額になるような場合には、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) コンプライアンスリスク

当社は法令遵守と倫理に基づいた企業活動を行う旨を宣言し、当社の取締役、執行役員及び従業員が事業遂行にあたって、各種法令や倫理基準並びに社内行動規範等から逸脱した行為を行うことがないよう、グループ全体への徹底を図っております。しかし、万一、それらの行為が発生し、当社がコンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等を招き、売上の減少や費用の増加等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) ITシステム及びネットワーク

当社はデータ及びITシステムの機密性、可用性及び完全性といった情報セキュリティを毀損するような一定のリスクを抱えております。これらのリスクを低減すべく、適切な情報管理を目的としたセキュリティシステム、方針・方策、過程、手法、専門チームや技術を構築しております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社のITシステム及びネットワーク上の問題が発生した場合、業務運営の中断によって事業機会を喪失するほか、社内情報流出に伴う損害賠償責任を負ったり、知的財産権を侵害されたりする可能性があり、多額の費用や支出が発生する可能性があります。また、そのような事態が発生した場合、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 環境規制への対応

当社は製造販売する製品や事業活動に関する様々な環境規制に対応する必要があります。今後さらなる規制の強化、例えば温室効果ガス排出規制や排ガス規制、主要材料の使用制限等が行われた場合、その対応のために相当のコスト負担をする可能性があり、それが当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 自然災害等予測困難な事象による被害

当社は日本、北米、欧州及びアジア等で事業活動を営んでおります。それらの国・地域において予測困難な事象が発生した場合、原材料の調達を含む製品の製造や物流、販売活動に被害を受けることにより、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。予測困難な事象には、地震や津波、洪水、台風、干ばつといった自然災害や感染症の流行、戦争やテロ、火災等の事故及び情報システムや通信ネットワークの停止、電力供給の停止または不足等が含まれます。昨今、地球温暖化や気候変動により、世界中で災害リスクが高まっております。また、日本は世界でも有数の地震多発国であり、強度の地震もしくは津波の被害を受ける可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社は、当年度よりIFRS第17号「保険契約」を適用しているほか、前年度に取得したエスコーツ Ltd.(現 エスコーツクボタ Ltd.、以下「EKL社」)に係る暫定的な会計処理が当年度において確定しております。当社はこれらの影響を遡及修正しており、前年度比及び前年度末比については遡及修正後の数値に基づいて算定しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当年度における、経営者の視点による当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

① 経営成績

当年度の売上高は前年度比3,437億円(12.8%)増加して3兆207億円となりました。

国内売上高は機械、水・環境ともに増収となり、前年度比408億円(6.8%)増の6,431億円となりました。

海外売上高は機械、水・環境ともに増収となり、前年度比3,030億円(14.6%)増の2兆3,776億円となりました。当年度の海外売上高比率は、前年度比1.2ポイント上昇して78.7%となりました。

営業利益は金利上昇によるインセンティブコストの増加や原材料価格の上昇、インフレによる諸経費の増加等の減益要因はありましたが、値上げ効果や為替の改善効果等により、前年度比1,144億円(53.4%)増の3,288億円となりました。税引前利益は営業利益の増加により前年度比1,111億円(48.1%)増加して3,423億円となりました。法人所得税は844億円の負担、持分法による投資損益は21億円の利益となり、当期利益は前年度比856億円(49.0%)増の2,600億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は前年度を820億円(52.4%)上回る2,385億円となりました。

 

事業別セグメントの外部顧客への売上高及びセグメント利益の状況は次のとおりです。

(機械)

当事業セグメントでは主として農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械の製造・販売等を行っております。

当事業セグメントの売上高は前年度比13.3%増加して2兆6,367億円となり、売上高全体の87.3%を占めました。

国内売上高は前年度比4.4%増の3,158億円となりました。主に建設機械及びエンジンの増加により増収となりました。

海外売上高は前年度比14.7%増の2兆3,210億円となりました。北米では、トラクタはレジデンシャル市場の低迷により苦戦しましたが、建設機械の販売が住宅建設や政府のインフラ開発需要により増加したことで増収となりました。欧州では、建設機械が公共工事需要に支えられ堅調に推移したほか、トラクタも当社の在庫充足が進み販売が増加したことで、増収となりました。アジアは、タイでは干ばつをはじめとした天候不順による農業機械の買い控えが続きました。インドは畑作市場が堅調に推移したことに加え、前年度よりEKL社を連結子会社化したことにより増収となりました。

当事業セグメントのセグメント利益は、金利上昇によるインセンティブコストの増加や原材料価格の上昇、インフレによる諸経費の増加等の減益要因はありましたが、値上げ効果や為替の改善効果等により前年度比53.0%増加して3,558億円となりました。

 

(水・環境)

当事業セグメントでは主としてパイプシステム(ダクタイル鉄管、合成管等)、産業機材(反応管、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境(各種環境プラント、ポンプ等)に係る製品の製造・販売等を行っております。

当事業セグメントの売上高は前年度比11.3%増加して3,645億円となり、売上高全体の12.1%を占めました。

国内売上高は前年度比11.3%増の3,079億円となりました。環境の売上が伸びたほか、パイプシステムも堅調に推移し、増収となりました。

海外売上高は11.0%増の566億円となりました。主に産業機材で反応管が海外プラント新設需要に支えられ堅調に推移したほか、環境で膜システムの売上も伸び、増収となりました。

当事業セグメントのセグメント利益は、原材料価格の上昇を値上げ効果で補い、前年度比77.1%増加して305億円となりました。

 

(その他)

当事業セグメントでは主として各種サービスの提供等を行っております。

当事業セグメントの売上高は前年度比15.8%減の195億円となり、売上高全体の0.6%を占めました。

当事業セグメントのセグメント利益は前年度比51.1%減少して15億円となりました。

 

当年度は、2020年から続いたサプライチェーンの供給制約、物流費の高騰や各国の財政措置による急激な需要増が落着き、平常に戻りつつある年でした。当年度の経営成績は製品値上げや円安効果等により売上高、営業利益とも過去最高の数値を達成したものの、今後さらなる事業体質の強化が必要であると認識しております。中期経営計画2025の目標達成にむけて、引続き成長ドライバーの推進及び製品・事業ポートフォリオの見直しを進めることで、事業体質の強化をめざします。また、近年の大きく変化する事業環境に適応するためには絶え間ない改革が必要であると認識しており、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) さらなる経営基盤、オペレーション力の強化」に記載のとおり、さらなる経営基盤、オペレーション力の強化も進めてまいります。

 

② 財政状態

当年度末の資産合計は前年度末比5,942億円増加して5兆3,592億円となりました。

資産の部では、主に北米での増収により営業債権や金融債権が増加しました。

負債の部では、取引先への支払条件の変更等に伴い運転資本が増加したことにより、社債及び借入金が増加しました。

親会社の所有者に帰属する持分は、利益の積み上がりや為替の変動等に伴うその他の資本の構成要素の改善により増加しました。親会社所有者帰属持分比率は前年度末比1.3ポイント増加して40.6%となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは173億円の支出となりました。当期利益は増加しましたが、主に取引先への支払条件の変更等に伴う営業債務の減少により、前年度比96億円の支出増となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは1,734億円の支出となりました。主に子会社の取得に係る支出の減少により、前年度比では1,451億円の支出減となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは1,784億円の収入となりました。短期借入金の返済の増加等により、前年度比1,042億円の収入減となりました。

これらのキャッシュ・フローに為替レート変動の影響を加えた結果、当年度末の現金及び現金同等物残高は期首残高から37億円減少して2,221億円となりました。

なお、当社は中期経営計画2025において、営業活動によるキャッシュ・フロー及びフリー・キャッシュ・フローを重要指標としており、これらの拡大に取組んでいきます。

 

(2) 資金の源泉及び流動性

当社の財務の基本方針は、操業に必要となる資金源を十分に確保すること及びバランスシートの健全性を強化することです。

当社は運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金を親会社や海外の金融子会社に集中させることにより、グループ内の資金管理の効率改善に努めております。

当社は営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の源泉と考えており、資金需要に応じて金融機関からの借入、社債の発行、債権の証券化による資金調達、コマーシャル・ペーパーの発行等を行っております。運転資金及び設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金等を充当しております。当年度の社債及び借入金の使途は、主として販売金融、設備投資及び運転資金への充当となっております。なお、資金調達に係る債務の残高については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※15 社債及び借入金」をご参照ください。

現在のところ、当社は健全な財務基盤及び安定したキャッシュ・フロー創出力により、事業運営や投資活動のための資金調達に困難が生じることはないと考えております。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当年度における事業別セグメントの生産実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

2,541,587

8.2

水・環境

384,624

13.1

その他

19,052

△16.1

合計

2,945,263

8.6

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 金額は販売額をもって計上しております。

 

② 受注実績

当年度における事業別セグメントの受注実績は次のとおりです。

なお、機械では一部を除き受注生産を行っておらず、水・環境及びその他においても一部受注生産を行っていない事業があります。

 

事業別セグメントの名称

受注高(百万円)

前年度比(%)

受注残高(百万円)

前年度末比(%)

機械

6,942

116.7

4,551

△15.0

水・環境

295,614

0.5

320,585

6.5

その他

1,813

△63.0

1,602

△46.9

合計

304,369

0.7

326,738

5.6

(注) セグメント間取引については相殺消去しております。

 

③ 販売実績

当年度における事業別セグメントの販売実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

2,636,727

13.3

水・環境

364,469

11.3

その他

19,515

△15.8

合計

3,020,711

12.8

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 販売額が総販売額の10%以上に及ぶ販売先は前年度、当年度ともにありません。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社はIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しており、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を使用しております。実際の業績はこれらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。見積り及び仮定は継続して見直され、当該見直しによる影響は会計上の見積りの変更として、見積りを変更した報告期間及び将来の報告期間において認識されます。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※2 作成の基礎 (3) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※3 重要性がある会計方針」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社は食料・水・環境を一体のものとして捉え、技術とソリューションを通じてこの3つを正しく循環させることで持続可能な社会の実現をめざしております。近い将来起こり得る社会課題を予見し、それを見越した製品開発と新たなサービス・事業の創出を通じて、より一層社会に貢献していきます。これに向けて、事業に直結した製品・技術の開発と会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。

また、当社は、中期経営計画2025のメインテーマの1つとして「次世代の成長ドライバー候補の確保に向けた取組み」を掲げ、GMB2030実現へ向けた基礎づくりを進めており、グローバル規模での競争を勝ち抜いて持続的な成長を実現するために、研究開発に積極的に資源を投入しております。

当年度に発生した研究開発支出は1,007億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。なお、「その他」事業の研究開発支出及び特定の事業セグメントに関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。

 

(1) 機械

農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械に係る製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

① 営農支援システム「KSAS」の追加機能の開発

ほ場水管理システム「WATARAS(注1)」による水管理状況を営農支援システム「KSAS」で確認できる機能を備えた「KSAS水管理マップ(パソコン版)」、リモートセンシング用ドローンで空撮したほ場の画像を「KSAS」に取込み「KSAS」上で生育マップを閲覧できる機能、可変施肥仕様(PF仕様)田植機のユーザー向けに現在どのほ場の施肥データを田植機が受信しているかを確認できる「可変施肥ダウンロード確認機能」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

水管理マップ(パソコン版)

[特長1] 「WATARAS」設置済ほ場に加え、未設置ほ場を含めた水管理状況(入水・出水・入出・止水)を一括表示できます。

[特長2] 水位・水温に応じたグラデーション表示や給水状況による色分け表示ができます。

リモートセンシング(生育マップ機能)

[特長3] 専用アプリを「KSAS」からダウンロードすることで、生育マップを作成できるようになります。これまで目視で行ってきたほ場の見回り等の生育状況等の確認に要する時間を削減できます。

[特長4] 生育マップを通してほ場内の生育差の「見える化」が可能となり、可変施肥や栽培管理の改善に活用することができます。

可変施肥ダウンロード確認機能

[特長5] 生育ムラの改善及び効率的な施肥技術として可変施肥に取組むことが可能となります。可変施肥を通して、経営安定化と「みどりの食料システム戦略(注2)」に貢献できます。

(注) 1 当社が提供する、水田の給水・排水をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら遠隔操作または自動で制御するシステム。

2 農林水産省が2021年に策定した、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するための政策方針。

 

② 自脱型7条刈コンバイン「DR7130」の開発

収穫作業の効率化に貢献する自脱型7条刈コンバイン「DR7130」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

[特長1] 新開発の刈取部は刈幅が広く、ほ場での旋回回数が減少します。作業能率の向上に寄与するとともに、枕地を荒らしにくい「ほ場にやさしい」収穫作業が可能となります。また、同馬力の6条刈と比べて主に機体右側に刈幅を広げたことにより、周囲刈時に畦を踏みにくく、中割時に未刈株への泥寄せも軽減できるため、ストレスが少ない収穫作業が可能となります。

[特長2] 刈取部の最適設計により、部品を取外すことなく大型トラック(荷台幅内寸2,340mm以上)に積載できるため、倉庫からほ場への移動及びほ場間移動をスムーズに行うことが可能です。

[特長3] 刈取部の引起し上部空間を6条刈に対して50mm拡大したことにより、長稈品種や高ボリューム作物において、引起し部での穂先の引掛りが低減します。引起し部でのヘッドロスの減少及びこぎ胴へのスムーズな搬送による脱こく負荷の軽減に効果があります。

[特長4] 長さ1,300mmのロングこぎ胴と選別面積800mm×1,930mmの大きな揺動板により、7条分の作物でもゆとりをもった脱こく・選別が可能です。

[特長5] 当社のコンバインで好評の「電動フルアップこぎ胴」や「刈取部・引起し部オープン」のほか、ディオニスシリーズで搭載した「グレンタンク側板オープン」や「排わらチェーンオープン」のほか、「カッタ後部カバーオープン」等、毎日の清掃作業の効率化だけでなく、万が一のつまり時のダウンタイムを短縮する高いメンテナンス性能を有しております。

[特長6] 標準装備の「直接通信ユニット」はコンバインをキーオンするだけで機械の位置情報・作業情報・稼働情報が自動的に「KSAS」クラウドにアップされます。これらの情報に基づいて、「KSAS」が自動で作業日誌を作成するため、オペレータの日誌作成労力が大幅に軽減されます。また、機械の位置情報や稼働情報等をお客様のパソコンやスマートフォンで簡単に確認できる「MY農機」のサービスに対応しており、機械情報の「見える化」が可能です。「PF(食味収量センサ)仕様」では、ほ場毎のタンパク含有率、水分率、収量が確認可能です。さらに別途オプション採用の「食味収量メッシュマップキット」により、ほ場を3段階(10m、15m、20m区画)に区切り、タンパク含有レベル及び収量レベルをそれぞれの色の濃淡で表示するため、「ほ場の見える化」が可能となります。特に大区画ほ場で、ほ場内のばらつきを把握し、翌年のほ場改善や土作り、施肥設計に役立てることができます。

 

③ コンパクト電動トラクタ「LXe-261」の開発

カーボンニュートラル実現に向けた取組みの1つとして、欧州向けにコンパクト電動トラクタ「LXe-261」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

[特長1] 1時間の急速充電で3~4時間の連続稼働が可能な大容量バッテリーを搭載しており、午前中の作業で消費したバッテリーを昼休みに急速充電することで午後も作業ができる仕様です。

[特長2] 同出力帯のディーゼルエンジンを搭載したトラクタとほぼ同じコンパクトサイズで実現しております。

[特長3] 自治体や公共団体への有償長期レンタルを通じて、お客様の声や実際の使用に際しての課題等の知見を得ながら、環境に配慮した製品の開発やさらなるラインアップ拡充を進めます。

 

当セグメントに係る研究開発支出は654億円です。

 

 

(2) 水・環境

パイプシステム(ダクタイル鉄管、合成管等)、産業機材(反応管、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境(各種環境プラント、ポンプ等)に係る製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

① 水道管路のAI老朽度評価方法の開発

これまでダクタイル鉄管についてAI技術を活用した腐食予測式により高精度な老朽度評価を行ってきましたが、スパイラル鋼管・合成管についても、事故履歴データや地図情報等をもとに高精度に漏水事故率を予測するAIモデルを構築しました。主な特長は以下のとおりです。

[特長1] 全管種について、現地調査なしで管路の更新優先度を高精度に定量的に表示できるようになりました。

[特長2] 併せて、管路を一定の集合体に自動でグルーピングする技術を開発しました。管路の更新工事は、予算に応じて管路延長や工事費等の様々な制約のもと、効率性が求められます。管路単位ではなく工事区間相当の管路グループ単位で優先順位を決定することで、より効率的な更新計画の立案が可能となりました。

[特長3] この老朽度評価方法とグルーピング技術によって、管路更新の効果を長期的かつ定量的に評価できるようになり、水道事業体職員の作業負荷を軽減でき、効率的な更新計画の策定に活用できます。

 

② 産業排水処理向け凝集センサの開発

画像診断技術を利用した産業排水処理向け「凝集センサ」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

[特長1] 排水と接触しない観測窓の構造及び水面反射の影響を受けない独自の装置構造により、カメラ画像による診断が可能となり、同時に容易なメンテナンス性を実現しました。

[特長2] フロック径や濁質度を画像解析によって数値化することにより、人の感覚に近いセンシング装置を実現し、排水処理異常を検知でき、安全運転を実現するとともに運転管理コストの削減と省人化を図ることができます。

 

当セグメントに係る研究開発支出は57億円です。

 

(3) その他・全社

当社はK-ESG経営を推進しており、研究開発においても環境・社会課題の解決に資するイノベ-ションの創出に向けた取組みを加速しております。カーボンニュートラルでは、農業機械及び建設機械について、BEV(注3)トラクタを当年度に上市し、さらにBEVミニバックホー、BEVゼロターンモア(乗用芝刈機)等の製品化に向けた取組みや、燃料電池や水素等の新動力源の実現に向けた取組みを行っております。

また、これまで進めてきた燃焼効率向上等の低燃費化やバイオディーゼル含有率向上等の研究開発にも引続き注力して取組んでおります。加えて、自動運転技術による作業ロス低減や最適省エネ運転、バイオマス(農業残渣や食料残渣)の活用等、多面的な取組みを結集することで、カーボンニュートラルを実現していきます。

スマート農業については、他社に先駆けてトラクタ・コンバイン・田植機の自動運転技術を確立しておりますが、より一層使いやすい機械とすべく、AIや先進センサの活用研究といったさらに高度な取組みを進めております。天候情報、生育モデル、リモートセンシングの活用等、データ農業の取組みも現地実証を計画的に進めております。

また、田んぼダムに関する研究等、営農支援システム「KSAS」、ほ場水管理システム「WATARAS」及び水環境プラットフォーム「KSIS(注4)」の連携に関する研究開発も引続き計画的に進めております。

(注) 3 バッテリー式電気自動車(Battery Electric Vehicle)の略称。

4 クボタスマートインフラストラクチャシステム。水環境インフラ施設・機器向けのIoTソリューションシステム。

 

当セグメントに係る研究開発支出は296億円です。