第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、金融サービスの提供を通じて持続的な成長の実現及び企業価値の向上に向け、当社グループの存在意義である、Our Purpose「金融をもっと近くに。一人ひとりに向き合い、まいにちのくらしを安心とよろこびで彩る。」を定めています。本パーパスのもとで、小売業発の金融グループの強みである「生活者視点」に立ち、すべてのお客さまのライフステージや生活環境の変化に対応した金融サービスの提供を目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指針

 持続的な成長に向けて、収益力の強化及び資本効率の向上を図ることで、経営指標としてROE10.0%の水準の達成、維持を目指してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

 当社グループを取り巻く環境として、世界情勢では米国新政権の政策についての不確実性、中国の経済成長率の低迷、紛争による政情不安等、先行きへの不透明感が継続しています。

 国内では企業の値上げや賃金の上昇が広がり、経済の好循環が期待される一方、個人消費は、エネルギー支援策の縮小や食料品価格の高騰による物価高騰が消費行動に影響を与えています。また、コロナ禍で進展したキャッシュレス決済については、競合各社によるさらにお得で便利なサービス提供に向けた競争が激化しており、当社の主要な事業領域である決済サービスにおける環境変化がより一層加速しています。加えて、デジタル技術の進展に伴い、キャッシュレス決済やオンライン取引の拡大とともに、金融犯罪の手口の高度化・複雑化・巧妙化が進んでおります。

 このような状況において、当社は、2030年のありたい姿を「『金融をもっと近くに』する地域密着のグローバル企業」と掲げております。イオングループの強みを再認識し、多様化するお客さま一人ひとりのライフスタイルやニーズの変化への対応に加え、家族を基点に世代を繋ぐ金融サービスを提供するビジネスモデルを確立するとともに、各国・地域では地域密着型の企業として、一人ひとりに寄り添い、お客さまの「不」を解決・解消することで、ありたい姿の実現に向けて取り組んでまいります。加えて、事業ポートフォリオの見直しによる選択と集中により、生産性の向上を進めてまいります。

 また、コーポレートガバナンスの高度化は当社グループにおける重要な経営課題と認識しております。イオン銀行は、2024年12月26日に金融庁よりマネー・ローンダリング及びテロ資金供与管理態勢に関し、業務改善命令を受けました。今回の処分を厳粛に受け止め、イオン銀行においては直ちに改善委員会を設置し、業務改善計画書の策定及び管理態勢強化に取り組んでおります。

 さらに、当連結会計年度においては当社グループが発行するクレジットカードにおけるオフライン取引の一部について、第三者の不法行為による不正利用と認められた取扱金額を貸倒関連費用として特別損失に計上しました。

 当社グループは最新の金融犯罪に関する情報収集、分析、対策に継続的に取り組んでまいります。近年巧妙化するサイバー犯罪等の不法行為に対しては、専門部門の設置等による異常検知モニタリング体制の強化や業界各社、関係団体との連携強化等による未然防止の強化を図り、お客さまへの安全なサービス提供に取り組んでまいります。

 変化の激しい事業環境において、当社グループは中期戦略と事業ポートフォリオとの連動を通じて、グループ全体の事業成長に資するガバナンス体制の構築を目指します。リスク管理の高度化とコンプライアンス意識の深化及び内部統制システムの実効性向上を取り組むと同時に、ステークホルダーからのフィードバックを迅速に経営へ反映させる仕組みを構築し、持続可能な成長と企業価値の向上を実現してまいります。

 当社グループのOur Purposeのもと、中期経営計画「第二の創業:バリューチェーンの革新とネットワークの創造」の基本方針を掲げ、アジア各国のお客さまに、より革新的な金融サービスの提供を目指し、下記の取組を進めてまいります。

<国内事業における重点施策>

①イオン生活圏の構築に向けたインフラづくり

 イオングループでは、グループ各社の総合力を組み合わせて、地域に根差した商品・サービス・生活基盤をシームレスに提供することでイオン生活圏を創造し、お客さまの生活を豊かにしていくことを成長戦略の一つとして掲げております。

 当社グループは、その「イオン生活圏」を金融サービスで繋ぐインフラづくりの役割を担っております。国内市場においては「規模の経済の発揮とイオンの金融らしさの追求」の実現を目指し、電子マネー「WAON」とコード決済「AEON Pay」の融合を通じた顧客基盤の拡大や顧客接点の強化により、クロスセルを促進してまいります。また、アジアを繋ぐ決済ネットワークを構築するため、他社提携を含め、先進的な取組を行ってまいります。

 

②地域・お客さまの生活インフラニーズの取り込み

 国内においては、イオンリテール株式会社より承継した電子マネー「WAON」と当社の提供するコード決済「AEON Pay」の融合に加え、ご当地設定機能の開発を進める等、地域性を活かした魅力あるサービスに進化させてまいります。また、当社グループ内での営業の一体運営に向けて、点在している営業タッチポイントの役割の再定義、最適化を進め地域に根差したエリア戦略を実行することで、イオングループ及び当社グループにおけるシナジーの最大化を図ってまいります。また、既存の商品の使いやすさを追求することに加えて、お客さまのライフスタイルに合わせた新たな商品・サービスを開発し、これまでご利用いただいていなかったお客さまのニーズを取り込んでまいります。

 

③リスク・コストコントロール能力の向上

 AIを活用したスコアリング等による与信・債権管理の高度化に継続的に取り組んでいます。また、クレジットカードの不正利用が増加している中で、当社としては専門組織を設置し、利用通知サービスやカード不正利用検知等の対策を強化することで、お客さまの日々の生活に安全と安心を提供できるように取り組んでまいります。

 

<国際事業における重点施策>

①各国でのデジタル金融包摂の実行

 マレーシアにおいて2022年4月にデジタルバンクのライセンスを取得し、2024年5月に営業を開始しました。デジタルバンク事業を営むAEON BANK (M) BERHADでは、AI分析など最新技術を導入し、お客さまの収入の変動やライフステージの進展による金融ニーズの変化を踏まえて、当社グループのサービスを継続してご利用いただけるよう、LTV最大化を推進するビジネスモデルを構築してまいります。マレーシアで構築したシステムアーキテクチャー、AI活用、金融包摂などにおける成功事例を当社グループ各社へ水平展開し、海外各社のビジネスモデル転換を加速させてまいります。

 

②事業・提供商品・展開エリアの拡大

 ベトナムにおいて、グループ一体となってイオン生活圏の拡大をさらに加速するため、イオングループ共通ポイントであるWAON POINTを開始するとともに、現地で個人向けローン事業を展開するPost and Telecommunication Finance Company Limitedの持分を取得し、完全子会社化しました。当社グループの海外事業における第4の柱とするべく、成長戦略を強化するとともに、提供する商品・サービスのラインナップを拡充することで、お客さまの暮らしをさらに豊かにできるよう取り組んでまいります。

 

③都市と地方のニーズの違いに応じたエリア戦略立案

 与信戦略については、各国において、フォワードルッキングな与信管理モデルの構築に取り組んでおります。地域ごとの顧客属性や商品ポートフォリオを細かく分析し、生涯予測収益、貸倒費用の把握をするとともに、営業施策や審査基準へ活用し、エリア戦略立案を進めます。これにより、収益の最大化及び貸倒費用の抑制を図り、利益の最大化を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 

 当社グループは、事業活動を通じて創出する経済価値と地域社会が享受する社会価値の双方が両立するサステナビリティ経営を推進するため、2021年に「AFSサステナビリティ基本方針」を策定しました。当社グループが、地域社会やお客さま、お取引先さまとともに能動的、積極的にサステナビリティ活動を推進するための原則を定め、事業運営のすべての意思決定にサステナビリティの視点を取り込むとともに、自然環境や社会システムと一体となった長期的な価値創造を実践することを基本方針として定めています。

 さらに当社は、当社グループの「志」であり「存在意義」である「Our Purpose」を2023年に公表しております。当社の親会社であるイオン株式会社の「イオンの基本理念」、「イオングループ未来ビジョン」と「Our Purpose」のもと、従業員の一人ひとりがお客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまの豊かな生活のため何ができるかを自立的に考え、自律的に行動して変化に挑み続けることで、社会課題を解決します。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティ経営により企業価値の最大化を図ることを目的に取締役会からの委嘱を受けてサステナビリティ委員会を設置しています。

0102010_001.png

 

●取締役会

 サステナビリティ基本方針の決定及び改定、並びに中長期及び年度活動計画の決定等、重要事項については、サステナビリティ委員会における審議を経た上で取締役会決議事項としています。取締役会は、サステナビリティに関する重要事項について、関係者に必要な指導・助言を与えています。

 

●サステナビリティ委員会

 サステナビリティ委員会は、社会的観点から当社グループの重要課題(マテリアリティ)に対してガバナンスを効かせ、企業としてのサステナビリティに関する戦略・方針を協議・検討します。また、具体的な目標や施策に係る実行計画について、検討・審議を行うとともに、実行計画に基づき、当社グループによる取組やその進捗状況に関する継続的なモニタリング、フォローアップ(指導・助言)を行います。さらに、全社横断で課題へ対応するため、当社各部門並びに当社グループ各社を指導し、施策の実行を統括・支援するとともに、サステナビリティに関する事項を総合的・専門的に協議・検討します。

 

 

●サステナビリティ部会

 実践に向けた具体的な目標や施策に係る実行計画について、グループ一体となって推進するため、サステナビリティ委員会下にサステナビリティ部会を設置しています。当社グループの提供する商品やサービスを通じ、お客さまや地域コミュニティと一体となったサステナビリティ活動を推進するとともに、当社グループ各社の役員及び従業員一人ひとりの意識を高め、主体性の発揮を促進してまいります。

 

(2)マテリアリティ・戦略

 当社グループは、誰もが心豊かで幸せに暮らせる持続可能な社会の実現、平和に貢献することを目指し、サステナビリティ経営を推進しています。その実現に向け、2021年11月、中長期的に当社事業に影響を及ぼす重要な社会課題(マテリアリティ)を特定しています。これらを「革新的な金融サービスを通じた幸せの追求」「人材の多様性と可能性の発揮」「レジリエントな経営基盤の確立」「気候変動等への対応」の4つの分野に体系的に分類することで課題を明確化するとともに、これらの解決に向けた取組事項を掲げ、それに対する具体的な指標を議論し、2030年に係る取組事項・主要指標を開示しました。各社・各部で実行し、進捗させていくフェーズに入り、今後の推進における実効性を高めてまいります。

0102010_002.png

 

①人的資本・多様性に関する事項

 当社はイオングループの一員として、イオンが掲げる「人間尊重の経営」を推進しております。グローバル市場に展開し、市場環境の激しい変化に対応していくため、イオンピープル一人ひとりの可能性を活かす経営を実現するために取組を進めております。さらにOur Purpose「金融をもっと近くに、一人ひとりに向き合い、日々のくらしを安心とよろこびで彩る。」の実現のために、一人ひとりの能力や意欲を引き出し戦略を実現することが重要と考え、「人材の多様性と可能性の発揮」をマテリアリティの一つに掲げております。

 

(人材の多様性に関する考え方)

 従業員一人ひとりが持つ多様な価値観の融合によって生み出されるイノベーション、そして働きがいをもち自律的に行動・変化する従業員の存在が当社の持続的な成長のために不可欠であると考えております。お客さまニーズの多様化、価値観の変化に対応するため、多様な価値観が戦略及び商品サービスへ反映されることが重要です。

0102010_003.png

 

 この考えのもと、人材の育成、ライフステージ・ライフスタイルが異なる全従業員が自分らしく働きがいを持ち働くことができる社内環境の整備、意思決定層の多様化を重点課題としております。

 

(人材の育成に関する考え方)

 国籍・年齢・性別等にかかわらず、すべての従業員の個性、尊厳、自律性を尊重し、仕事や学びを通じた成長機会の提供に努めています。

 当社は、これらの重要性を認識し、「教育は最大の福祉」というイオングループの考えに基づき、学習機会の提供など人材への投資を積極的に行っています。急速なテクノロジーの発展に対応し、新たな金融の価値をお客さまへ提供するためDX人材の育成や企業が健全かつ効率的に事業を運営するための内部統制研修も推進しています。また、当社グループのすべての役員・従業員が自らの自己実現のために必要なスキルを学ぶ機会の提供に努めています。講座を提供することに加え、公的資格の取得支援やリスキリングの機会も提供もしています。従業員の学びのニーズに応えるとともに、中長期的に経営戦略を実現するための人材育成も強化し、人的資本経営を推進していきます。

 加えて、従業員のキャリア支援に向けて、従業員が自由にキャリアを相談できる窓口の設置やグループ横断の積極的な社内公募の実施、従業員応募による新規プロジェクトへの参画等、能力発揮の場を提供するなど、挑戦の後押しを行っています。

 また、持続可能な社会の実現に向けた活動として、従前より高校生や大学生を対象とした金融リテラシー向上の取組に加え、外部団体向け講座の提供を拡大しております。今後さらにSDGsの推進によるサステナブルな社会実現に貢献するため、グループ一体となってより強力に推進します。

 

(社内環境整備に関する考え方)

 連続したキャリア形成が従業員一人ひとりの人的資本の蓄積につながると考え、ライフステージやライフスタイルの変化後もキャリアを重ねることができるよう、時間や場所にとらわれない多様で柔軟な働き方を可能とします。男女ともに育児や介護をすることを想定した柔軟な勤務体制やサポートする風土を醸成することは、全ての従業員においてワークライフバランスを重視した働き方の推進につながります。

 また、ウェルビーイングの実現のため健康経営に取り組んでおり、当社並びに国内グループ7社((株)イオン銀行、イオン保険サービス(株)、エー・シー・エス債権管理回収(株)、イオン住宅ローンサービス(株)、イオン少額短期保険(株)、ACSリース(株)、イオン・アリアンツ生命保険(株))が「健康経営優良法人2025」に認定されました。さらに、㈱イオン銀行は、大規模法人部門のうち上位500法人が認定される「ホワイト500(2025)」の認定を受けています。

 加えて、連続休日の制度化や、年間最大15日の年次有給休暇の計画的付与等をはじめとしたワークライフバランスの推進を行っています。

 

(意思決定層の多様化に関する考え方)

 当社グループは女性のお客さまも多いことから、意思決定層における女性比率の向上により、多様な意見に基づいた戦略策定や商品サービスの開発が可能となり、幅広いお客さまニーズへの対応力が高まることで、企業価値の向上につながると考えております。女性活躍推進を起点に、女性に限らず多様な個人が自分らしく力を発揮し活躍できる環境を構築し、意思決定層のさらなる多様化を図って参ります。

 

②気候変動に関する事項

 イオングループでは、地球環境及び人間社会に大きな影響をもたらす気候変動問題に早くから取り組み、2040年をめどに店舗で排出するCO等を総量でゼロにすることを目指す「イオン脱炭素ビジョン」を掲げています。当社も本ビジョンに基づいた取組を推進するとともに、2021年11月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)へ賛同を表明するとともに、マテリアリティで特定した「気候変動等への対応」の方針を明確化しています。

 「気候変動等への対応」については、お客さまの生活や健康、地域経済並びに社会の発展に多大な影響を及ぼすことを認識し、脱炭素社会の構築に向けたガバナンスや戦略、目標設定を通じた強靭性確保に努めています。

 気候変動関連リスクのマネジメントの一環として、気候変動がもたらす当社グループ事業への影響評価を目的とした、「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオによる気候変動関連リスク・機会のシナリオ分析を行っています。具体的には、気候変動に由来する中長期的なリスク項目を移行リスクと物理的リスク及び機会に整理し、各項目の当社グループへの影響を評価し、影響が大きいと考えられるものを「重大リスク/機会項目」としています。その後、各項目をその影響が及ぶと考えられる時間軸別に短期・中期・長期の枠組みで整理しています。

 

シナリオ別に特定した当社グループの気候変動関連重大リスク/機会項目と影響レベル

0102010_004.png

 

●移行リスク

 移行リスクとは、気候変動政策及び規制や、技術開発、市場動向、市場における評価等の変化によってもたらされるリスクです。脱炭素社会への移行にあたっては、炭素税の導入、再生可能エネルギーや電気自動車に対する優遇措置など法や規制の変化により、税負担やエネルギー価格の高騰、与信関係費用の増加や資金調達コストの増加による財務的な影響が考えられます。また、そのような中で気候変動を含むサステナビリティへの取組に消極的であると、市場からの信頼を失い企業価値が低下する恐れが考えられます。

 

●物理的リスク

 物理的リスクとは、気候変動によってもたらされる災害等による急性あるいは慢性的な被害を指します。異常気象による洪水などによりお客さまや従業員、店舗等の資産に直接的被害が生じる可能性があります。また、クレジットカードや銀行システムが寸断されるなど金融インフラサービスの維持が困難となり、その復旧・対策のためのコストが増加するリスク等が考えられます。

 

●機会に対する認識

 脱炭素社会の実現にあたって、環境に対する意識の拡大や大規模な事業設備ニーズが生まれるものと考えられます。当社グループは、脱炭素関連設備や住宅への融資、リース等をはじめ、お客さまに対する環境負荷に配慮した新たな金融サービスの提供を通して事業機会が増大すると考えています。また、再生可能エネルギーの利用、低炭素素材への切り替え等により、当社にとってコスト削減や収益増といった財務上の効果が得られること等が挙げられます。

 

(3)リスク管理

 当社は、当社グループが直面する様々なリスクについて、リスクカテゴリーごとに評価したリスクを可能な限り一貫した考え方に基づいて相対的に捉え、より確実かつ継続的な企業価値の向上に貢献することを目的とするリスク管理を推進しています。

 当社は、TCFDに沿ったリスクの把握・評価や情報開示の拡充に努めており、当社グループのマテリアリティで特定しているとおり、「気候変動等への対応」を重要な位置づけとしています。

 気候変動を含む多様なリスクについてリスクカテゴリーごとに評価し、経営体力と比較対照しながら適切に管理することにより、経営の健全性を維持することを目的としてリスク管理の高度化を進めています。この中で「リスク特定・評価」「コントロールの評価」「リスク評価」からなる一連のリスクマネジメントプロセスを構築しています。気候変動リスク管理においては、「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」といった複数の将来予測シナリオを用いてそれぞれについて分析を行い、当社グループに影響を及ぼす気候変動関連リスクと機会を特定・評価しています。特定したリスク項目と機会項目を当社グループの事業計画に反映させるべく、サステナビリティ委員会の指示・監督のもと、サステナビリティ部会における議論を通じて事業部門への潜在的な影響の規模や範囲を評価することとしています。

 

(4)指標及び目標

①人的資本・多様性に関する事項

 イオングループは「国籍、年齢、性別、従業員区分を廃し、能力と成果に貫かれた人事」を人事の基本理念として共有しています。この考えのもと、絶えず革新し続ける企業集団として新たな価値を創造・提供し続けるために、当社グループにおいても多様な人材を受け入れ、様々な価値観を活かす誰もが活躍することを意識した「ダイバーシティ経営」を推進しています。当社グループにおける指標及び目標は次のとおりです。

 

●女性管理職比率

 当社グループは女性のお客さまも多いことから、意思決定層における女性比率の向上により、より多様な視点を反映した戦略策定や商品サービス開発が可能となり、多様なお客さまニーズに対応することが、企業価値のさらなる向上につながると捉えております。

 女性活躍推進の一環として、今後の管理職を担う係長職も含めた女性比率の向上を目標値として定め、2030年度には国内外グループで40%とすることを目標としています。そのため、2024年度は女性管理職研修等によるキャリア開発支援やフレキシブルな勤務形態の拡充、職場環境の整備に努め、活躍推進に取り組みました。

 

●男性の子育て支援

 男性の家庭参画を促すことは、男女の機会の均等、ジェンダーロールバイアスの排除にとどまらず、男性の多様なキャリアの推進や、風土や環境など多方面から女性の活躍を後押しすることにつながります。さらに育児の経験はイオングループ、当社グループのお客さまに多いファミリー層、女性のニーズを捉えるうえで価値ある経験であるという考えのもと、男性の育児休暇取得率の向上に努めてまいります。

 当社グループ(国内)における2024年度末の男性の育児休業取得率は96%です。2025年度には100%を目標としています。

 

②気候変動に関する事項

 当社グループでは、気候変動関連のリスク及び機会を評価・管理するために温室効果ガス(GHG)排出量の測定・把握を行っています。今後は、世界全体のGHG削減に貢献するべく、事業活動に伴う環境負荷の適切な削減目標と指標の設定を行ってまいります。

 

●当社グループにおける主な気候関連の指標

指標

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

前年差

グループ全体のGHG排出量(Scope1、2)

16,373トン

14,455トン

12,059トン

※2

△2,395トン

営業車に占めるハイブリッド自動車台数の割合

43.90%

53.11%

34.04%

△19.06%

クレジットカード利用明細書 Web明細書

国内

83.97%

85.12%

85.92%

0.81%

海外

64.69%

89.29%

24.60%

全体

83.97%

78.48%

87.03%

8.54%

 

●当社グループにおける温室効果ガス(GHG)排出量

(Scope1、2)

指標

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

前年差

Scope1(燃料消費による直接的排出)

3,332トン

2,783トン

2,548トン

△235トン

Scope2(電気使用による間接的排出)

13,041トン

11,672トン

10,389トン

△1,283トン

Scope1、2 合計

16,373トン

14,455トン

12,059トン

※2

△2,395トン

 

(Scope3)

指標

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

前年差

クレジットカード紙明細による排出

国内

12,037トン

11,421トン

11,182トン

△239トン

海外

-トン

13,043トン

4,129トン

△8,914トン

全体

12,037トン

24,464トン

15,311トン

△9,153トン

プリンター使用に係る排出(上流・下流)

287トン

370トン

239トン

△132トン

データセンターの運営・維持に係る排出 ※1

4,794トン

4,534トン

4,729トン

195トン

・当社グループでは、GHG排出量をGHGプロトコルのメソドロジーに則り計算しています。

※1の集計対象は下記グループ会社です。

イオンフィナンシャルサービス株式会社、株式会社イオン銀行

※1以外の集計対象は下記グループ会社です。

イオンフィナンシャルサービス株式会社、株式会社イオン銀行、イオン保険サービス株式会社、イオンプロダクトファイナンス株式会社(現 株式会社オリコプロダクトファイナンス)、エー・シー・エス債権管理回収株式会社、イオン住宅ローンサービス株式会社、ACSリース株式会社、イオン・アリアンツ生命保険株式会社、AEON CREDIT SERVICE (ASIA) CO., LTD. 、AEON THANA SINSAP (THAILAND) PCL. 、AEON CREDIT SERVICE (M) BERHAD

※2AEON CREDIT SERVICE(M)BERHADのオフセット878トンを差し引いています。

 

3【事業等のリスク】

 当社は、当社グループの事業等のリスクの評価について、リスク事象の発生可能性及びその経営への影響度を評価したうえで、総合的に重要なリスクの判定を行っています。各リスクの管理については、年度毎のリスク管理実行計画を立案し、内部統制推進委員会での審議を経て、取締役会にて審議、決定を行います。

 当社及び当社グループの事業等のリスクについて、投資者の投資判断上重要であると考えられるリスク事項を「特に重要なリスク」「重要なリスク」として以下に記載しています。

 これらリスクについては、定期的に内部統制推進委員会、及び取締役会に報告し、リスクが顕在したり新しいリスク事象が発生した場合に適切に対応できるよう努めています。また、役職員のリスクカルチャーの醸成のため、継続的に教育を行い、3つのディフェンスラインを中心とした内部統制強化にも努めています。当社のリスク管理態勢については「4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 ・リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。なお、本項における将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものです。また、当社グループの事業に関するすべてのリスクを網羅的に記述するものではありません。

 

■特に重要なリスク

リスクの概要

対応策

・重要なITプロジェクトに関するリスク

 当社グループは、中期経営計画に掲げるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組や、基幹システムの更改等により、新商品やサービスの提供等、競争優位の確立や他社との差別化に努めています。これら重要なITプロジェクトにおけるリリースの延期、実現機能の不足や品質の低下等が発生した場合、投資コストの超過など、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、開発計画、開発プロセス、品質への重層的なモニタリングの実施や、設計品質、テストの網羅性を高めるためベンダーと相互牽制をしつつ、一体となって開発を行う態勢を整え、プロジェクトを推進しています。重要なITプロジェクトの進捗状況は月次で当社の内部統制推進委員会に報告されます。また、リリースに際しては、あらゆるケースを想定して事前の検証を徹底し、万が一障害が発生した場合の体制を準備します。

・システムサービスの中断や誤作動

 当社グループが提供する各種サービスにおいて、ITシステムの安定稼働は重要であり、必要不可欠です。このことは自社のシステム環境だけでなく協業先であるサードパーティについても同様です。システム上の不具合、自然災害等による影響、人為的なミスなどさまざまな要因によりITシステムが停止、中断、誤作動した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループではこうした障害による被害の最小化と早期復旧のために物理的、技術的、組織的な施策を講じています。具体的には、不具合等の発生を迅速に察知する監視体制の構築と強化、システムやデータの分散及び冗長化、業務オペレーションの標準化と定期的な教育、インシデント発生時に備えたリカバリープランの策定及び訓練の実施などがあります。実際に発生したインシデントに関しては、その原因究明を行い、再発防止策を策定しています。委託先に関しては取引開始前審査を実施するほか、その他のサードパーティについても平時から連絡連携を密にし、障害発生時に円滑な対応が取れるよう関係強化に努めています。

・サイバー攻撃に関するリスク

 近年のデジタル技術の著しい進展に伴い、サイバー攻撃も高度かつ巧妙になっています。AI技術を利用した攻撃パターンの学習、メールや電話を通じた悪意あるサイトへの誘導による人的な脆弱性を突いた手法、サードパーティを攻撃経路として狙う手法などが用いられ、金融機関を取り巻くサイバー攻撃の脅威は一層深刻化しています。当社グループのシステムやサードパーティがサイバー攻撃を受け、サービスの停止、データの棄損や情報の漏えいなどが発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、サイバー攻撃に対する技術的な対策を講じるとともに、様々な事故・障害を想定し、グループ各社及び業界団体と一体となった訓練への参加や外部専門家との連携を強化しています。また、主要会社にCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を設置しています。これにより、日進月歩で進化するサイバー脅威に対して迅速に対策を講じる体制の整備を進め、潜在的なリスクの軽減に取り組んでいます。また、フィッシングメールやビジネスメール詐欺などのサイバー攻撃に対するお客さまや役職員への啓蒙を実施しています。

 

 

リスクの概要

対応策

・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するリスク

 当社グループは、金融機関としてマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)に関する法規制を遵守する義務があります。当社グループは、態勢を整備し各種の対応策を実施していますが、これらの法規制に違反し、法的制裁等を受けた場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、AML/CFTに関する不備が発生した場合、当社グループのブランドイメージやお客さまからの信頼にも悪影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するリスクを重要な経営課題と位置づけ、お客さまとの取引開始時及びその後の継続的な確認を通じて、お客さまの身元及び取引の目的を確認する手続、不審な取引を検出するためのシステムによる日常的な取引の監視、内部監査およびコンプライアンスチェックによる内部統制の有効性確認を実施しています。また、当連結会計年度において、当社グループ会社の銀行事業におけるAML/CFTについて金融庁より業務改善命令が発出されたことを踏まえ、業務フローの見直しによる疑わしい取引の届け出迅速化、外部専門家による全般検証を実施するほか、役職員に対する教育を実施することにより法規制の遵守意識の向上に努めています。

・法規制違反

 当社グループが提供するサービスには、法令に基づく許認可によるものが多くあります。これら法令及び規制の変更や新設に適切な対応ができず、あるいは違反による行政処分等を受けた場合、事業活動への制限を受ける等当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループ各社は、その展開する国や地域における関係法令及び諸規制の改正動向をモニタリングし、事業活動や業績等への影響を評価・分析し、コンプライアンスリスクの把握を行っています。また、法令等に基づく各種報告や届出事項に遺漏がないよう、厳格な期日管理を実施しています。さらに、当社グループの役職員に対して定期的に研修を実施し、法令遵守に努めています。

・信用リスク

 当社グループの与信業務は、クレジットカード、割賦販売、住宅ローンなどの個人向けが大きな割合を占めており、信用リスクの分散が図られています。しかしながら、経済状況の著しい悪化や金融市場等の混乱の発生などにより、お客さまの信用状況が変化し、想定を超える与信関連費用が発生するなどした場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、信用リスク管理態勢の強化を図っています。外部経済環境や商品・地域別の信用状況の変化を把握し、タイムリーに審査基準に反映することにより、収益と健全性のバランスのとれた運営に努めています。また、お取引開始後にも個々のお客さまの返済状況等のモニタリングを行い、必要な場合には与信枠の見直しを行う等、適切な債権管理を実施しています。

・外部不正(フィッシングサイト等を通じた不正アクセス等被害)

 近年、フィッシング詐欺による被害が多く発生しており、こうした金融犯罪の増加は金融機関にとって喫緊の課題となっています。特にネットサービスにおける犯罪手法は、高度化、巧妙化が進んでいます。こうした犯罪に適切に対応できない場合、当社グループの信頼が損なわれ又は評判が低下する可能性があります。また、これらの事象に対応するための追加費用、被害にあったお客さまに対する補償費用などが発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当連結会計年度は、不正利用が増加しました。このような外部不正動向の変化やリスクに迅速に対応するため、当社グループでは、技術的及び組織的な安全措置の拡充に努めています。具体的には、お客さまのお取引に関して絵文字を利用したセキュアなワンタイムパスワードの導入、不正手口を早期に検知・防止するためのセキュリティ強化専門チームの組成、フィッシングサイトや不正アクセスの監視強化、業界全体でのフィッシングサイトの能動的な閉鎖などを行っています。また、お客さまに対して被害に遭わないための注意喚起にも努めています。

・情報セキュリティ

 当社グループは、お客さまや取引先の個人情報や重要な情報を必要な範囲で取得し、適切に管理しています。しかしながら、これらの情報がサイバー攻撃を受けたり、役職員、サードパーティ及び業務委託先の杜撰な管理などにより情報の漏えい、改ざん、棄損、紛失などが発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは個人情報をはじめとする情報資産管理について、技術的、物理的及び組織的な安全管理措置を講じています。近年脅威が増大しているサイバー攻撃については「サイバー攻撃に関するリスク」に記載のとおりです。当社グループ役職員は定期的な教育や研修を通じて、情報管理の重要性及びその保護についての理解を深めています。また、個人情報等の取扱いを外部に委託する場合においては、委託の基準を定めるほか、定期的なモニタリングを実施する等の管理措置を講じています。

 

■重要なリスク

リスクの概要

対応策

・税務リスク

 当社グループが展開する国や地域の税務処理に関して税務当局と税法の解釈や認識に相違がある場合、想定外の追加の税金、利息や罰金が発生する等、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、日本を含む展開各国ごとの税務専門家によるレビューやアドバイスを活用し、できる限り当局との認識相違が生じないよう、適切な納税額を算定する体制を構築しています。当局との認識相違が発生した場合には、これら専門家の支援を得ながら当社の解釈について理解を得られるよう対応することとしています。

・内部不正、事務事故等のリスク

 当社グループは、業務の遂行に際して様々な種類の事務処理を行っています。役職員等が定められたとおりの事務処理を怠る、あるいは事故、不正等を起こした場合、予期せぬ損失の発生や行政処分の対象になる可能性があります。その結果、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、事務処理に関して社内規程や手続等を定め、業務品質の維持向上に努めています。事務処理上の過失が発生した場合は、原因分析を徹底し、再発防止策を講じることとしています。また、内部不正の防止については、ジョブローテーションの実施による業務関連不正の抑止やイオングループ共通の基本理念に基づくコンプライアンス意識教育を行っています。

・為替リスク、金利リスク、価格変動リスク

 当社グループの国内事業では、住宅ローンなど運用期間が長い金融商品を取り扱っているため、運用と調達の金利更改ギャップが発生します。市場動向等により金利が大幅に変動した場合、当社グループの業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

 また、国内の銀行事業、保険事業においては、外国証券及び債券・株式等の有価証券による資産運用を行っています。市場動向等により、為替・金利・株価等が大幅に変動した場合、当社グループの業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、当社グループはアジア各国で事業を展開していることから、日本からの投融資や現地子会社における外貨建て調達、又は現地子会社からの配当金送金、連結業績等に関して、為替相場が大幅に変動した場合、当社グループの業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの国内事業では、調達について社債等の長期資金を活用し、運用と調達の金利更改ギャップの低減に取り組んでいます。

 また国内の銀行事業、保険事業における有価証券の価格変動リスクについては、リスク量として主にバリュー・アット・リスク(過去のデータ等に基づき、今後の一定期間において、特定の確率で、保有する金融商品に生じる損失額の推計値)を計測し、各社の取締役会等で決議したリスク限度額を超過しないようリスクをコントロールしています。

 為替変動リスクについては、国内の銀行・保険事業においては上述のリスクコントロールを行っています。また、事業を展開するアジア各国での為替相場変動リスクについては、当社グループの業績や財務内容への影響を考慮し、定期的に影響度をモニタリングしています。

・流動性リスク

 当社グループは、営業活動に必要な資金の調達を預金及び金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化等により行っています。金融市況及び景気動向の急激な変動、その他の要因により当社グループの信用力低下が生じた場合、又は、格付が低下する等した場合、資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、継続的なキャッシュ・フローのモニタリングを通して、適時に資金管理を行うほか、資金調達手段の多様化や市場環境を考慮した短期調達・長期調達のバランスの調整等により、流動性リスクを管理しています。

 また、当社グループの銀行事業では、流動性リスク管理として支払準備資産保有比率及び資金ギャップ枠を設定し、その枠を超過しないようリスクをコントロールしています。

・人材管理リスク

 当社グループは、幅広い分野で高い専門性を必要とする業務を行っていますが、こうした人材層の市場ニーズはますます高まっています。新規人材の獲得競争に劣後し、あるいは既存役職員の流出等により高い専門性を有する人材を充分に育成、確保できない場合、事業が計画通りに進行しないなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、事業の成長やお客さまの変化に対応するイノベーションを実現するため、専門性を持った優秀な人材の育成、確保を重要な課題と認識しています。そのため、成果・能力主義を重視した人事制度の運用、従業員の業務遂行能力向上を目指した教育制度の充実に努めています。

 また、「次世代経営者育成プログラム」等を通じ、グループ経営を推進する人材の育成に向けて、トップ及びミドルマネジメント層の人材開発にも取り組んでいます。

 

 

リスクの概要

対応策

・人事・労務リスク

 当社グループは国内外で事業活動を行っており、各社には多様な人種や国籍、文化を有する役職員が働いています。グループ各社において人権や多様性への理解と対応が不十分である場合、役職員の離職や社会的批判の対象となる可能性があります。このことは、当社グループのレピュテーションに影響を与えるほか、サービス利用の敬遠などによる業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、事業を展開する各国において、当該国の法令の遵守のみならず、すべての役職員が「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」というイオンの基本理念に基づいた行動を体得すべく、定期的な教育を通じた啓蒙活動を行い、ハラスメントなどの人権侵害や職場環境を害する役職員の言動の予防措置に努めています。また、差別等の不適切な行為があった場合、その当事者や発見者は内部通報制度によりこうした不適切な行為を通報することができます。当該制度を通じた個別の事案に対しては、通報者の適切な保護のもと調査に基づく是正対応を行っています。

・自然災害、その他災害

 当社グループは、国内及びアジア各国・各地域において事業を行っています。これらの地域で、地震・津波・台風・大雨・システムトラブル・感染症の拡大・暴動・テロ活動等の発生により、当社グループの店舗・その他施設及び資金決済に関するインフラ・ATM等への物理的な損害や役職員への人的被害、又は当社グループのお客さまへの被害が生じる可能性があります。その結果、相当期間にわたる業務停止、多大な復旧コストの発生や事業廃止に至るなど、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社と子会社であるイオン銀行は、こうした自然災害等に対して、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格(ISO22301)の認証を受け、事業継続計画の策定、訓練や演習等を行っています。グループ各社においても、有事の際の被害の最小化と早期事業復旧のため、重要業務の選定、BCP(事業継続計画)の策定、訓練や演習、役職員への教育などのプロセスを推進しています。

・風評・風説の発生によるリスク

 当社グループや金融業界等に対して事実と異なる理解・認識をされる可能性がある風説・風評が、マスコミ報道・口コミ・インターネット上の掲示板、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)への書き込み等により発生・拡散した場合、当社グループへの信頼が損なわれお客さまの離反に伴う収益の低下や事態収拾のためのコスト発生など、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、常時キーワード検知による掲載記事確認及びSNSモニタリングを実施し、こうした風説・風評の早期発見に努めるとともに、その影響度・拡散度等の観点から適時かつ適切に対応することで、影響の極小化に努めています。

・地政学的リスク

 当社グループはアジア圏を主に海外展開しています。これら展開地域やその周辺地域で戦争や外交的緊張等での貿易や投資の混乱により金融危機、政情不安や社会不安が顕在化した場合、当該国地域のお客さまの環境や当社グループの事業運営や経済環境が著しく変化し、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、展開の前後でマクロ及びミクロレベルでのマーケットの調査と分析を実施するほか、経済情勢や政治社会情勢等について、イオングループ各社や現地日本企業との連携を深め情報収集に努めています。各種情勢変化の兆候を認めたときは、内部統制推進委員会等で対応について検討することとしています。

・気候変動リスク

 当社グループでは「イオン脱炭素ビジョン2050」に基づき、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)指標及び目標 ②気候変動に関する事項」に記載の指標を目指し、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの推進、再生可能エネルギーへの転換などに取り組んでいます。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示を進めています。しかし、環境規制の強化や社会的要請の高まりなどにより、想定以上の対策コストが発生したり、取組や開示内容が不十分と見なされた場合、社会的信用が低下し、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では店頭における商品説明、サービスのお申込み、イオンカードのご利用明細などのペーパーレス化、デジタル化を推進する等、脱炭素への取組を行っています。また、各種規制の新設や変更等のモニタリングを行い、十分な開示を行うことで、当社グループの説明責任を適切に果たせるよう努めています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況

①連結経営成績の状況

 当連結会計年度の連結営業収益は5,332億62百万円(前期比109.8%)、連結営業利益は614億85百万円(前期比122.8%)、連結経常利益は625億54百万円(前期比122.2%)と増収増益となりました。他方、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社グループが発行するクレジットカードにおけるオフライン取引の一部について、第三者の不法行為による不正利用と認められた取扱金額を貸倒関連費用として特別損失に99億45百万円計上したこと等により、195億27百万円(前期比93.4%)と前期を下回る結果となりました。

 

 当連結会計年度に発生した、オフライン取引の一部で第三者の不法行為による不正利用と認められる取引については、各種対策に取り組んだことにより新たな被害発生の抑止が図れております。

 また、当社はこれまで国内市場で増加するフィッシング詐欺等によるクレジットカード不正利用を防ぐため、本人認証サービス(3Dセキュア)の導入や24時間365日、不正利用を察知する異常検知モニタリング等のセキュリティ体制を構築してきました。近年巧妙化するサイバー犯罪等の不法行為に対し、専門部門の設置等による異常検知モニタリング体制の強化や業界各社、関係団体との連携強化等による未然防止の強化を図り、お客さまへの安全なサービス提供に取り組んでまいります。

 

 当社は、金融サービスの提供を通じた持続的な成長を実現するため、当社グループの存在意義をOur Purpose「金融をもっと近くに。一人ひとりに向き合い、まいにちのくらしを安心とよろこびで彩る。」と定めています。Our Purposeのもと、小売業発の金融グループの強みである「生活者視点」に立ち、展開するアジア各国において、全てのお客さまのライフステージや生活環境の変化に対応した金融サービスの提供を目指しております。

 また、2030年のありたい姿を「『金融をもっと近くに』する地域密着のグローバル企業」と設定し、中期経営計画(2021年度~2025年度)を、ありたい姿の実現に向けた「変革フェーズ」と位置づけ、事業環境の変化を踏まえた最適な事業ポートフォリオへの見直しや、デジタルを活用した新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

 

 当連結会計年度は、世界的な政情不安の継続や中国経済の成長鈍化に加え、米国の通商政策による各国経済への影響が懸念される等、先行きへの不透明感が継続しました。国内では、雇用・所得環境の改善や日本銀行のマイナス金利政策解除による「金利ある世界」への動き等により、景気は緩やかな回復傾向となりました。他方、原材料価格の高騰やエネルギー価格の高止まりによる物価上昇を背景に実質賃金の減少が継続しており、個人消費は力強さに欠ける状況となりました。

 

 このような状況のもと当社は、国内外においてお客さまの決済及び資金ニーズの変化に対応した商品・サービスの提供を通じ、利回りの高い債権を中心とする営業債権残高の拡大による資産収益性の向上を図りました。また、さらなる生産性の向上に向け、費用効率を重視した会員獲得の実施などの経費コントロールを徹底するとともに、お客さまにとってわかりやすく、気軽に金融サービスへアクセスいただける環境を目指し、店舗やコンタクトセンター、スマホアプリ等のチャネルで各商品・サービスを横断的に提供できるタッチポイントの改善に取り組みました。

 

 事業ポートフォリオの見直しでは、お客さまへ革新的な金融サービスを提供し続けるため、事業環境の変化を踏まえた経営資源の再配分を進めております。

 国内では、イオン生活圏におけるお客さまへの提供価値の最大化を図るため、2025年2月28日、GMS事業を営むイオンリテール株式会社のWAONバリュイシュア事業の譲受を完了しました。電子マネー「WAON」とコード決済「AEON Pay」を融合し、両決済チャネルの持つ加盟店網及び顧客基盤を合わせることで、より利便性の高い決済サービスの提供に繋げてまいります。

 国際では、成長著しいアジア各国でデジタルを活用した新規ビジネスの構築や、展開エリアにおける事業拡大を図っております。マレーシアでは、新たな銀行の業態であるデジタルバンク事業を営むAEON BANK (M) BERHADが2024年5月26日に開業し、顧客基盤の拡充に取り組みました。ベトナムでは、2024年10月7日より現地法人ACS TRADING VIETNAM CO.,LTD.において、イオン生活圏の構築に向けたインフラの役割を担う共通ポイント事業を開始しました。加えて、2025 年2月3日には、ベトナムのファイナンス会社であるPost and Telecommunication Finance Company Limited(以下、PTF)の持分取得を完了し、当社連結子会社としております。今後、PTFの持つ顧客基盤やノウハウの活用と、共通ポイントを通じたイオングループ共通の顧客基盤の拡充により、イオングループの共通戦略におけるアジアシフトの最重要国の一つと位置付けているベトナムでの、イオン生活圏拡大に取り組んでまいります。

 

 なお、生命保険事業に関しては他社との提携を含めた戦略の見直しが必要であるとの判断により、2025年3月21日に生命保険事業を営む当社連結子会社イオン・アリアンツ生命保険株式会社の発行済株式の85.1%を、明治安田生命保険相互会社(以下、明治安田)に譲渡することを決議し、本株式譲渡に係る株式譲渡契約書を締結いたしました。あわせて当社は、明治安田及び当社親会社であるイオン株式会社と包括的パートナーシップ契約を締結し、3社のそれぞれが有する経営基盤やノウハウ等の強みを活かし、健康増進や地域活性化に資する提供価値を共創し、価値ある商品・サービスの提供を行ってまいります。

 

 

②セグメントの状況

<国内・リテール>

 国内・リテール事業の営業収益は1,933億79百万円(前期比111.8%)、営業利益は105億3百万円(前期比223.5%)となりました。

 

 当連結会計年度では、ショッピングリボ・分割を中心とした収益の拡大に加え、有価証券の運用による収益が堅調に推移した結果、増収増益となりました。

 

 リテール事業では、Web及びスマホアプリ「イオンウォレット」のUI、UX向上に加え、AIを活用したスコアリングをもとにした個別アプローチの強化により、ショッピングリボ・分割払いやカードキャッシングの利用が拡大し、営業債権残高が増加しました。

 ショッピングリボ・分割払いにおいては、昨年度導入した、Web及びスマホアプリで支払額の確認が可能となるシミュレーション機能に加え、ご利用明細別やご利用日単位でリボ払いに変更できる機能等による利便性の向上や、アプリの視認性及び操作性の改善に継続して取り組んだことで、ショッピングリボ・分割払い利用者の増加に繋がりました。カードキャッシングにおいては、新規又は過去利用経験のある会員を対象とした利用促進施策の実施に加え、AIを活用したスコアリングをもとに個別アプローチを強化しました。これらの結果、債権流動化前のショッピングリボ・分割債権残高は3,615億66百万円(期首差507億96百万円増)、キャッシング債権残高は4,279億3百万円(期首差155億81百万円増)と、営業債権残高が順調に増加しました。

 

 株式会社イオン銀行(以下、イオン銀行)では、日本銀行による金融政策の見直しや金利情勢の変化を踏まえ、2024年5月及び2024年10月に円預金及びローン金利の改定を実施しました。また、金融環境のさらなる変化に合わせ、2025年3月1日にも円預金及びローン店頭表示金利の改定を実施しております。

 円預金においては、高まるお客さまの預金ニーズに応えるため、定期預金キャンペーンの実施、退職金定期預金の開始や、給与振り込み口座設定のお客さまに対してお得な金利を適用する等の施策に取り組んだ結果、イオン銀行の預金残高は5兆2,016億33百万円 (期首差6,622億60百万円増)と増加しました。

 各種ローン商品においては、市場環境に合わせ、住宅ローンの変動金利の引き上げを行うとともに、新規契約の拡大に向け、住宅ローン契約者さま限定でイオングループでのお買い物が毎日5%割引となる「イオンセレクトクラブ」のメディアや店頭等での告知強化に取り組み、継続して当社グループ独自のメリット訴求による取扱高の拡大に努めました。これらの取組の結果、住宅ローン取扱高は5,579億13百万円(前期比99.9%)、債権流動化前の居住用住宅ローンの貸出金残高は2兆9,071億35百万円(期首差928億10百万円増)となりました。無担保ローンにおいても、教育ローン等の金利改定を実施するとともに、イオンカード会員さまへの目的別ローンの訴求や、イオングループ店頭における告知強化による利用促進を図りました。

 

 資産形成サービスでは、NISAをはじめとした資産運用応援キャンペーンの他、お買い物ついでに立ち寄れるショッピングセンター内にあるリアル店舗の強みを活かしたセミナー開催や保険等の対面相談ニーズにお応えすることで、資産形成関連の販売額は順調に推移しました。

 

 2024年12月2日には、全国のイオングループ店舗に出店するイオン銀行店舗と保険代理店サービスを展開する「イオンのほけん相談」店舗の一体運営を開始しました。さまざまな金融サービスをワンストップで提供することで、お客さま利便性のさらなる向上を図ってまいります。

 

 イオン銀行では、2024年12月26日に金融庁より、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(以下、マネロン・テロ資金供与)管理態勢に関し、銀行法第26条第1項の規定に基づく業務改善命令を受けました。当社及びイオン銀行は今回の処分を厳粛に受け止め、真摯に反省するとともに、同管理態勢の改善に一体となり取り組んでおります。

 イオン銀行は、2025年1月31日に本命令の趣旨を踏まえた業務改善計画書を金融庁に提出するとともに、同年3月14日に業務改善計画の進捗状況(2025年2月末基準)を金融庁へ報告いたしました。引き続き全社をあげて業務改善計画を着実に実行することで、マネロン・テロ資金供与対策に係る態勢強化を図り、お客さまに安心してご利用いただけるよう、信頼の回復に努めてまいります。

 

<国内・ソリューション>

 国内・ソリューション事業の営業収益は1,925億円(前期比100.9%)、営業利益は98億8百万円(前期比117.3%)となり、増収増益となりました。

 当連結会計年度は、クレジットカード及びコード決済「AEON Pay」の顧客基盤及び加盟店ネットワークの規模拡大に取り組んだことで、個品割賦事業を営むイオンプロダクトファイナンス株式会社(現株式会社オリコプロダクトファイナンス)を譲渡したことによる影響を上回り、営業収益は増収となりました。営業利益は、国内で増加するフィッシング詐欺等によるクレジットカードの不正利用被害への補償費用の計上により貸倒関連費用が増加した一方、子会社譲渡による営業費用の減少に加え、新規会員獲得等に係る販促施策の見直しにより販売促進費が前期比で減少したことで、増益となりました。

 

 ソリューション事業では、顧客基盤の拡充に向け提携先企業との連携強化を図るとともに、インターネット上での会員獲得におけるアフィリエイト等の出稿チャネル及び運用方法の見直しによる獲得効率の向上に継続して取り組みました。また、中国・四国・兵庫エリアにおける顧客基盤の拡充に向けた株式会社フジとの新たな提携カードの発行や、新規入会者限定で入会から1か月間、イオンモールや対象のイオングループ店舗にて、まいにち5%割引でお買い物いただける企画の実施等、イオングループとの連携を強化しました。コード決済「AEON Pay」においては、従来のクレジットカード払いや銀行口座からのチャージに加え、ATMでの現金チャージが可能となる機能を拡充し新規利用促進に取り組んだ結果、クレジットカード会員及びAEON Pay会員は順調に拡大し、国内有効ID数は3,615万人(期首差209万人増)、内カード有効会員数は2,616万人(期首差32万人増)となりました。なお、当期より国内におけるカード有効会員数の基準を見直し記載しております。また、期首増減数値は変更後の基準に基づき記載しております。

 カードショッピングにおいては、物価上昇を背景とした日常消費での節約志向が根強く、利用単価の伸び悩みが見られる中、イオングループや提携先企業、加盟店における共同販促施策の実施や、2024年4月より開始した全国のイオンモール専門店においてゴールド会員限定で毎月20日・30日のお買い物が5%割引となる「お客さま感謝デー」特典の認知向上に取り組みました。また、「AEON Pay」においては、イオングループ店舗でのAEON Pay決済限定企画の実施や、あらゆる生活シーンで気軽に利用可能な決済手段を目指し、日常生活に密着した業態を中心にAEON Pay加盟店の拡大に取り組みました。AEON Payの利用可能箇所数は少額決済需要の高いカフェ等の飲食店やコンビニに加え、ドラッグストア等の小売店及びカラオケ等のサービス業種等を中心に拡大を図った結果、期首より108万箇所増となる303万箇所となりました。これらの結果、カードショッピング取扱高は7兆4,925億11百万円(前期比105.8%)となりました。

<国際・中華圏>

 中華圏の営業収益は355億96百万円(前期比116.2%)、営業利益は93億19百万円(前期比105.9%)となりました。

 

 中華圏の主要エリアである香港では、中国経済の停滞による景気回復の遅れや物価高の影響による生活者負担の増加が継続しております。そのような状況の中、拡大する香港居住者による中国本土での消費ニーズに対応した決済利便性の向上及び利用促進施策の実施等に継続して取り組んだ結果、営業収益は拡大しました。また、外部信用情報を活用したスコアリングモデルの精緻化による与信精度の向上やお客さまの状況に合わせた返済方法の提案等の与信及び回収体制の強化に継続して取り組んだ結果、営業利益は前期を上回りました。

 

 香港の現地法人AEON CREDIT SERVICE(ASIA)CO.,LTD.(以下、ACSA)は、お客さまのスマホでの決済ニーズの高まりに合わせたNFC(Near Field Communication)決済等のモバイルペイメントの推進に取り組みました。また、拡大する中国本土での消費ニーズに合わせた中国・深圳を中心としたイオングループ店舗における共同施策の実施や、増加する訪日観光客を対象に、イオンリテール株式会社の実施するインバウンド企画をACSAのWeb及びスマホアプリ等の各種媒体で訴求する等、イオングループ各社との協業強化による利用促進に取り組んだ結果、カードショッピング取扱高は2,181億31百万円(前期比121.6%)と順調に拡大しました。

 カードキャッシングや個人向けローンでは、データ分析をもとにしたテレマーケティングやアプリ通知機能を活用した個別アプローチを強化するとともに、ACSAのスマホアプリ上でペーパーレスにて即時借入可能な個人向けローンの提供や、融資における審査時間の短縮に継続して取り組みました。これらの資金ニーズに応えた取組の強化により、 カードキャッシング取扱高は478億14百万円(前期比113.3%)、ローン取扱高は301億94百万円(前期比90.1%)となりました。

 

<国際・メコン圏>

 メコン圏の営業収益は957億79百万円(前期比106.5%)、営業利益は160億7百万円(前期比100.8%)となりました。

 

 メコン圏の主要エリアであるタイでは、観光業の堅調な回復や公共事業の拡大等が牽引し、経済環境は回復傾向にあるものの、依然としてエネルギー価格の高騰やインフレによる家計の圧迫が継続しました。そのような中、タイの現地法人AEON THANA SINSAP (THAILAND)PCL.(以下、ATS)はバイク・中古車ローン等の取扱高が順調に推移し、営業収益は拡大しました。他方、審査並びに途上与信の精緻化や回収体制の強化による貸倒関連費用の抑制に取り組んだものの、回収体制の強化に係る人件費等の増加により、営業利益は前期と概ね同水準となりました。

 

 当連結会計年度のメコン圏のカードショッピング取扱高は2,085億54百万円(前期比108.0%)となりました。ATSでは、EC需要やスマホ決済ニーズの高まりに合わせ、2024年1月にタイで初めてとなる完全カードレスのデジタルクレジットカード「AEON NextGen」、2024年11月には若年層をターゲットとした「AEON PRiMO」を発行し、商品・サービスのデジタル化に取り組みました。また、SNS等のソーシャルメディアを活用した訴求を強化し、ブランド認知度の向上及び新規会員獲得の強化に取り組みました。

 個人向けローンでは、休眠会員や未稼働会員を対象に、金利優遇施策のプロモーション強化に取り組み、取扱高は1,141億96百万円(前期比104.4%)となりました。

 貸倒関連費用の抑制に向けては、AIスコアリングを活用した与信精緻化や外部委託先を活用した債権回収の強化に継続して取り組みました。

 

 平均年齢が若く今後も経済成長が見込まれているベトナムでは、イオングループにおいても海外戦略の最重要国の一つと位置付け、小売店舗網も拡大しております。当社は、ベトナム現地法人ACS TRADING VIETNAM CO.,LTD.(以下、ACSTV)が2008年に現地で家電や二輪車等の自社割賦販売を中心に事業展開を開始し、現地のお客さまの生活に密着したサービスの提供に取り組んでまいりました。

 2024年10月7日には、ACSTVがベトナムにおけるイオングループ共通ポイント「WAON POINT」サービスを開始しました。また、2025年2月3日には、当社は現地で個人向けローン等を提供するファイナンス会社Post and Telecommunication Finance Company Limited(以下、PTF)の持分を取得し、完全子会社化しました。今後は個人向けローンを中心とした新たな商品の提供によるベトナムのお客さまの金融ニーズに応えるとともに、共通ポイント及び金融サービスを通じイオングループ一体となってベトナムにおけるイオン生活圏の拡大に取り組んでまいります。

<国際・マレー圏>

 マレー圏の営業収益は911億39百万円(前期比124.9%)、営業利益は134億21百万円(前期比99.1%)となりました。

 

 マレーシアでは、雇用環境の改善及び個人所得の増加を背景とした個人消費の拡大や安定した内需拡大により、経済成長が進んでおります。そのような中、主力であるバイクをはじめとする個品割賦事業や個人向けローン等の取扱高が順調に推移し、営業債権残高が増加したことにより、営業収益は前期を上回り増収となりました。営業収益の拡大により、営業債権残高拡大に伴う貸倒関連費用や2024年5月に開業したデジタルバンク事業を営むAEON BANK(M)BERHAD(以下、ABKM)の告知強化等に係る費用の増加を吸収し、営業利益は前期と概ね同水準となりました。

 

 マレー圏では、マレーシア現地法人AEON CREDIT SERVICE(M)BERHAD(以下、ACSM)において、イオングループで小売事業を営むAEON CO.(M)BHD.及びAEON BIG (M) SDN.BHD.との共同利用促進施策「お客さま感謝デー」での特典拡充及び店頭やSNS等のチャネルを通じた訴求強化による認知度の向上に取り組みました。またACSMのスマホアプリをリニューアルし、即時発行可能なデジタルクレジットカード機能の搭載やカード申込に係る導線改善等の利便性向上を図ったことで、クレジットカード発行枚数は過去最高となり、マレー圏のカードショッピング取扱高は740億51百万円(前期比130.2%)となりました。

 バイクローンにおいては、外部信用情報を活用した即時仮与信機能やAIクレジットスコアリングを導入した与信のさらなる精緻化に取り組みました。また、加盟店との共同販促企画や顧客スコアに応じた金利優遇施策を実施した結果、マレー圏の個品割賦の取扱高は1,397億85百万円(前期比116.9%)と順調に拡大しました。

 個人向けローンにおいては、スマホアプリのUI/UX向上によりアプリを通じた新規申込が増加しました。また、過去利用状況に加え、外部信用情報を活用することによる自動承認機能の強化による審査効率の向上を図った結果、個人向けローンの取扱高は779億69百万円(前期比122.3%)と伸長しました。

 

 2024年5月に開業したABKMは、マレーシアで広く普及するイスラム金融方式の商品・サービスを採用し、預金及びデビットカードの提供による若年層を中心とした顧客基盤の拡大に取り組みました。2025年3月5日には、新たに個人向けローン「Personal Financing-i」の提供を開始し、お客さまのニーズに即した金融商品・サービスの拡大を図っております。

 

(2)財政状態の状況

 資産の部、負債の部、純資産の部における主な増減内容は次のとおりであります。

(資産の部)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より8,148億3百万円増加し、7兆7,603億75百万円となりました。これはカードキャッシングや個人向けローンの残高拡大及び居住用住宅ローン貸出金残高の増加等により貸出金が4,014億7百万円、銀行業における有価証券が1,960億48百万円、WAONバリュイシュア事業承継等により流動資産その他が1,557億6百万円増加したこと等によるものです。

 

(負債の部)

 負債合計額は、前連結会計年度末より7,994億71百万円増加し、7兆1,707億26百万円となりました。これは資金決済口座としての利用拡大や定期預金キャンペーンの効果などにより預金が6,678億78百万円、及びWAONバリュイシュア事業承継等により流動負債その他が881億90百万円増加したこと等によるものです。

 

(純資産の部)

 純資産合計額は、前連結会計年度末より153億32百万円増加し、5,896億49百万円となりました。これは利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上により195億27百万円、為替換算調整勘定が66億99百万円、非支配株主持分が87億9百万円増加した一方、利益剰余金が期末及び中間配当金の支払いにより114億41百万円、及びその他有価証券評価差額金が83億47百万円減少したこと等によるものです。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

①キャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローについては、銀行業における預金残高の増加等により、3,473億37百万円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローについては、有価証券の取得による支出が有価証券の売却・償還による収入を上回ったこと等により、1,584億79百万円の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローについては、配当金の支払等により、199億19百万円の支出となりました。

 以上の結果により現金及び現金同等物は1,695億86百万円増加し、7,950億68百万円となりました。

②資金需要

 当社グループの主な資金需要は、個人向けの金融サービスの提供に係る、貸出金及び割賦売掛金、並びにお客さま利便性向上のためのIT、デジタル投資等であります。

③資金調達

 当社グループは円滑な事業運営のための流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を調達の基本方針としており、調達期間の長期化、調達手法の多様化等により、手元流動性と財務安定性を確保することに注力しています。

 国内は銀行業における預金に加え、メガバンクを中心とした金融機関から間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び債権流動化による直接金融により資金調達を実施しております。海外は主に邦銀、現地銀行からの間接調達等により資金調達を実施しております。

 また当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また主要な金融機関とは良好な関係を維持していることから、引き続き、事業拡大や投資、運転資金の調達に対して安定的な外部資金調達が可能であると認識しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(株式会社オリエントコーポレーションとの業務提携に係る基本合意書の締結)

 当社は、2024年3月22日開催の取締役会において、株式会社オリエントコーポレーションと業務提携に係る基本合意書の締結を決議いたしました。

 なお、詳細につきましては、2024年3月25日付で適時開示しております「株式会社オリエントコーポレーションとの業務提携に係る基本合意書の締結及び連結子会社の株式譲渡完了に関するお知らせ」に記載のとおりであります。

 

(WAONバリュイシュア事業の吸収分割による当社への承継)

 当社は、2024年10月28日開催の取締役会において、イオンリテール株式会社(以下、イオンリテール)が営むWAONバリュイシュア事業(以下、ARバリュイシュア事業)を簡易吸収分割の方法により、当社へ承継する組織再編(以下、本吸収分割)について、イオンリテールとの間で吸収分割契約を締結することを決議し、契約を締結いたしました。

 なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。