第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、限りある資源「水」「石油」の明日のため、技術の革新と開発で未来に貢献することを企業理念としています。この企業理念のもと、より環境負荷の小さい浄水装置や取水装置、石油精製装置を開発・改良し、製造することを通じて、社会やお客様からの期待に応え、信頼を高めることを経営の基本方針としています。

 この基本方針に基づき、「顧客満足の向上」、「働き甲斐のある社風」、「技術革新と開発力による社会貢献」、「コンプライアンス経営の徹底」を経営姿勢として掲げ、これらを実践することにより、ステークホルダーの皆様から評価される企業となることを目指します。

 

(2) 経営戦略等

 水関連事業においては、国内の上水道及び食品・農業に関連する水処理の分野にもマーケットを広げること、また、海外においては、過去の実績をベースにした自社の「取水」「水処理」技術をモデル化し、事業を拡大することで、エネルギー関連事業と並ぶもう1つの収益基盤として確立させることを目指します。

 エネルギー関連事業においては、グループ生産体制の最適化推進等によりコスト低減を図ることで、価格競争力を高め、受注機会を拡大すること、主力製品以外へマーケットを広げること、及び、定期メンテナンスサービスの強化など一定の収益が見込める体制を構築することで、利益の最大化を図ります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 中期経営計画の最終年度である2024年6月期において、売上高10,000百万円、営業利益1,488百万円を数値目標として掲げていましたが、2023年6月期の実績等を踏まえ、数値目標を売上高9,866百万円、営業利益1,412百万円とし、その達成に向け、全力で取り組んでまいります。

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2022年6月期から2024年6月期までの3ヵ年を計画期間とする中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」を策定し、2021年10月15日に公表いたしました。この計画に掲げた施策を実現させることにより、エネルギー関連事業に収益構造を依存した事業ポートフォリオ上の課題に対応し、持続可能な成長を目指してまいります。

 

① 事業基盤の強化

a.既存事業の深化・拡充

 多様化する顧客ニーズへ対応するため、研究開発やマーケット開発を積極的に行い、既存の製品やサービスの深化・拡充を図ることで商材のラインナップを広げ、市場シェア拡大を目指します。

 

b.戦略的パートナーとの連携

 当社グループの既存の事業領域や枠組みにとらわれることなく積極的に外部との関係構築を図り、双方にとってメリットを享受できる戦略的パートナーと提携、協業等を行っていくことで、多岐にわたる顧客ニーズへの対応の幅を広げ、業績拡大を目指します。

 

c.新規市場参入

 既存の事業領域におけるリノベーションや関連する市場の開拓に加え、現事業領域とは全く異なる新市場への参入検討など、既存の製品・サービスにとらわれない、新たな発想による新たな収益基盤を創出することで、業績拡大を目指します。

 

② 安定した収益の確保

 エネルギー関連事業では、世界経済の動向による石油由来の化学原料の需給バランスがプラントへの設備投資の判断材料となることから、外部要因による業績への影響が大きく、これらの影響を少しでも緩和させることが必要であると認識しています。プラントへの設備投資が旺盛な状況下では、当社グループが優位に立てる製品群に絞った受注活動を行っていますが、今後は、その他の製品群についても受注獲得できるよう、営業施策の見直しと、品質を維持しながら更なるコストダウンを図ることで価格競争力を強化し、受注機会を拡大することを目指します。

③ 水関連事業の拡大

 エネルギー関連事業に依存した収益構造を変革させるため、水関連事業の規模拡大を目指しています。当社グループの「取水」技術、「水処理」技術をそれぞれ活かすことはもちろんのこと、取水から水処理まで一貫して当社技術が採用されたプロジェクトもあり、同様の一気通貫型のプロジェクトを増やすことで、業績拡大を図ります。

 なお、2022年7月1日付で子会社化した矢澤フェロマイト株式会社は、関東圏で水処理に係る設備設計・工事を主力事業としており、グループ会社として水関連事業の規模拡大とシナジーの創出に寄与しています。

 今後も、国内外問わず、提携・協業できるパートナーと積極的に関係を深め、事業拡大を目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

「サステナビリティに関する考え方と取組」

 当社グループは、限りある資源「水」「石油」の明日のため、技術の革新と開発で未来に貢献することを経営理念とし、当社の事業領域におけるサステナビリティの基本方針の根幹として定めております。サステナビリティに対する具体的な取り組みとして、2015年9月の国連総会で193か国の合意・採択された持続可能な開発目標(以下「SDGs」という。)への参画が挙げられます。SDGsは、2030年までに達成する目標として、17のゴールと169のターゲットが設定されております。当社は、当社の事業領域である「水」と「エネルギー」の分野において、環境に配慮し、産業廃棄物の削減及び循環型社会の実現、エネルギー効率を高める近代化設備の実現に努めています。詳しい事業活動、SDGsへの取り組みについては、当社ウェブサイトをご参照下さい。(https://www.nagaokajapan.co.jp/)

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

 当社グループは、2022年6月期から2024年6月期までの3ヵ年を計画期間とする中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」を策定し、2021年10月15日に公表いたしました。当社は企業活動を通じた持続可能な成長を目指しており、その実行を通じてSDGs、サステナビリティへの対応を継続的に実現しております。中期経営計画は、取締役会において企業理念との整合性及び事業環境を元に決定されており、経営層が持続可能な企業活動を行う上での事業リスクの分析やモニタリングを実施しております。

 

(2)戦略について

人的資本への対応

 当社は、経済産業省から様々な規模・業種の企業における「ダイバーシティ経営」への積極的な取組を行う企業として、平成26年に表彰されており、採用において「国籍、性別、年齢不問」を掲げ、「経営方針を理解し活躍することができる人材」という視点で採用活動を行っています。多様性の確保のためには、従来の固定観念に縛られない多様な価値観を有する人材を集めることが必要であると考えており、性別や国籍に捉われない採用活動及び他業種等での経験を有する中途採用を積極的に行うとともに、働きやすい職場環境の整備や、これからの当社の担い手となる管理職層の育成に努めています。

 

 就労環境について、定量的な目標は設定しておりませんが、当社では様々なバックグラウンド・価値観を有する人々にとって働きやすい職場とすべく、育児介護休業制度において、フレキシブルな有給休暇取得を可能にしているほか、ライフワークバランス推進の観点から、就業時間管理の徹底、会議時間の効率化等にも努めております。併せて、業務上必要なスキルを従業員が習得しやすいよう従業員向け研修プログラムを整備する等人材育成に努めております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 海外事業のリスク

 当社グループでは、2023年6月期において海外売上高が全体の66.7%を占めています。従って、相手国の経済動向、社会情勢及び政治状況の変化、許認可、通関、出入国管理、為替制度及び通信制度等の相手国の貿易、通商及び金融に係る政策等の変更、相手国もしくは近隣諸国における戦争、内乱、クーデター、テロ、暴動及び治安悪化、地震、風水害及び酷暑・酷寒等の天変地異・異常気象、新型コロナウイルスなどの感染症発生等のリスクが存在します。また、当社グループでは、代金の早期回収を図る等の方策を講じているものの、相手国における商慣行の違い等から代金回収が思うように進まないリスクがあります。

 これらのリスクが顕在化し、当社グループの想定を超える事業環境の変化が発生した場合には、プロジェクトの遅延、中断及び中止並びに債務不履行等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 為替レートの変動

 当社グループは一部外貨建取引を行っており、取引に伴い為替の変動リスクが発生します。リスクを軽減するため為替予約等によるヘッジを行っていますが、完全にリスクを排除することは不可能であり、急激な為替相場の変動が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 製品の品質

 当社グループが生産している製品については、厳重な品質管理体制のもと出荷しています。また、ISO 9001の認証を取得し継続的な品質維持にも努めています。更に、万一の賠償金支払等に備え、製造物賠償責任(PL)保険にも加入しています。しかしながら、何らかの原因によって製造物責任による高額な賠償金支払や品質不良が原因で高額な間接的損害額が発生した場合、品質に係る重大な問題が発生してプロセス・オーナーとの関係が悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料の市況変動

 当社グループの原材料の主要なものは板材・ワイヤー材などのステンレス鋼材であり、鋼材価格は市況により変動します。当社グループは鋼材価格が高騰した場合には、生産ラインの合理化等のコスト削減策及び販売価格への転嫁、海外調達などを推進していきますが、これらの施策が計画どおりに進まなかった場合及び原材料価格の高騰が継続し長期化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 資材調達

 当社グループの一部の原材料、部品等については、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の切替が困難なものがあります。これらの原材料、部品等の品質上の問題、供給不足及び納入の遅延などが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 天候・自然災害、感染症の発生等

 当社グループの生産拠点において地震や風水害等の予期せぬ自然災害等、不測の事態や火災等の事故が発生した場合には、生産能力の著しい低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルスなどの感染症の発生により、当社グループの生産活動や営業活動に支障が生じた場合やサプライチェーンの停滞等が生じた場合、あるいは当社グループの受注動向に影響を及ぼした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 海外子会社による事業展開

 当社は、エネルギー関連事業におけるスクリーン・インターナルの製造・販売、水関連事業における取水用スクリーンの製造・販売及び水処理装置の販売を目的として、中国及びベトナムに子会社を設立しています。海外子会社は、現地の安価な人件費による製造原価の低減、現地企業の優位性を享受すること及び販路の拡大を目的として事業活動を行っていますが、当事業に不利な影響を及ぼす法令又は諸規制の制定及び改廃や予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生、人件費の高騰や人材確保に障害が発生した場合など、当社グループの想定している範囲を超えた事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(8) プロジェクトに係るリスク

 当社グループのエネルギー関連事業におけるスクリーン・インターナル製造等は長期かつ大規模なプロジェクトとなることもあるため、コスト管理をプロジェクトごとに、動態的に行い利益の最大化を目指しますが、資材価格の高騰などプロジェクト工程の間に不測の事態が生じる可能性があります。その場合、予定する利益率を達成できず、損失が発生する可能性があります。また、経済動向や原油価格などの市場環境変化等により、顧客がプラント建設の延期・中止・大幅な仕様変更を判断した場合、当社グループの利益計画及び生産計画に多大な影響を及ぼします。更に、当社の責任に起因するプロジェクトの遅延、瑕疵又は失敗が発生した場合は、当社グループに補修責任や損害賠償責任等をもたらす可能性があるほか、当社グループの将来の受注に悪影響を与える可能性があります。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 建設業法等

 水処理装置等及び取水スクリーンの製造・販売を行っている水関連事業の国内販売において、工事を含めた1案件ごとの受注範囲の拡大に取り組んでいます。また、新たに連結子会社となった矢澤フェロマイト株式会社では、浄水場等で使用される水処理設備の設計から製作、工事の施工まで、一連の水処理プラント工事を請け負っています。

 これら工事に際しては、建設業法に基づく都道府県知事による特定建設業の許可が必要になります。しかしながら、請負契約の締結やその履行に際して不正又は不誠実な行為や専任技術者が不在となった場合には許可を取り消される可能性があります。また、建設業法に違反した場合、営業の禁止処分が行われる可能性があります。当社では、現時点において、取消事由や処分事由に該当する事実は発生していないものと認識していますが、許可が取り消された場合もしくは営業禁止の行政処分が行われた場合又は処分に関連して取引先等からの指名停止があった場合、建設業法や関連法令の改正により許可の取り消し等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 法的規制等

 当社グループが事業活動を行う国、地域において、事業の投資に関する許認可、輸出認可、輸出制限、関税賦課をはじめとする様々な政令による規制の適用を受けています。適用の範囲も、貿易通商、独占禁止、特許侵害、法人税及び付加価値税、為替取引並びに環境等に及んでいます。このような規制を何らかの事情により遵守できなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)情報管理

 当社グループでは、事業経営に関わる様々な重要機密情報を有しています。その管理を徹底するため、情報管理規程を制定し、従業員に対する教育を徹底しています。しかしながら、外部からのハッキングなど不測の事態による情報漏洩により、当社グループの信用失墜による売上高の減少又は損害賠償による費用の発生等が起こることも考えられ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)知的財産権

 当社グループは新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を展開しています。しかしながら、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社グループの知的財産権が不正使用されたり模倣される可能性があります。一方で、当社グループが第三者の知的財産権を侵害していると司法判断され、当社グループの生産・販売の制約や高額の損害賠償金の支払が発生する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 人材の確保

 当社グループの競争力は、設計、調達、製造等の各職種における優れた専門的知識や技能を持った従業員により支えられています。当社グループは、優秀な人材を確保するための採用活動に加え、退職者の再雇用を実施していますが、必ずしも十分に確保できる保証はありません。また、技術・技能伝承の強化等、人材の育成にも努めていますが、十分な効果が出るという保証はありません。人材の採用及び育成が想定通りに進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(14) 固定資産の減損

 当社グループは、工場、機械設備等多くの有形固定資産を保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、固定資産の減損を行う必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 研究開発について

 当社グループでは、既存製品の改良や新規製品の研究開発等により、研究開発費やそれに関連する設備投資が先行して発生します。そのため、研究開発費や設備投資費用を投入したにもかかわらず、製品開発等が軌道に乗らなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのようなリスクを防止あるいは分散するため、研究開発段階でマーケティングに注力するとともに、成果・効果の検証を随時行いながら進める体制を整備しています。

 

(16) 親会社との関係について

 株式会社ハマダグループは、当社の発行済株式(自己株式を除く。)の総数の59.2%(2023年6月30日現在)を直接所有しています。また、株式会社ハマダグループの完全親会社である株式会社ハマダ、株式会社ハマダの完全親会社である株式会社ハマダコムは、当社の発行済株式(自己株式を除く。)の総数の59.2%(2023年6月30日現在)を間接的に所有しています。

 当社は、株式会社ハマダとの間で製造の外注取引、株式会社ハマダコムとの間で不動産の賃貸借取引を行っていますが、両社及び株式会社ハマダグループが親会社であることによる事業上の制約はなく、当社の経営方針、事業展開及び個々の取引については当社独自の意思決定によっており、一定の独立性が確保されていると認識しております。しかしながら、当社の経営方針についての考え方や利害関係が株式会社ハマダグループ、株式会社ハマダ又は株式会社ハマダコムとの間で常に一致するとの保証はなく、株式会社ハマダグループによる当社の議決権行使及び保有株式の処分の状況等により、当社の事業運営及び当社普通株式の需給バランスに影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

(1) 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する規制が緩和され、経済活動が促進される一方、ウクライナ情勢の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、急激な為替の変動や物価の上昇などにより、景気下振れが懸念される状況となりました。

 このような状況の下、当社グループでは、2022年6月期から3ヵ年を計画期間とする中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」のもと、「既存事業の深化・拡充」「戦略的パートナーとの連携」「新規市場参入」に取り組み、持続可能な成長を目指しております。

 水関連事業においては、国内では上水道や食品・農業に関連する分野の水処理を幅広く行い、海外では積み重ねてきた実績を基盤に当社の「取水」技術と「水処理」技術を組み合わせモデル化することで事業拡大を図り、エネルギー関連事業に並ぶ収益基盤にすることを目指しております。また、2022年7月1日付で、関東圏で水処理に係る設備設計・工事を主力事業としている矢澤フェロマイト株式会社(以下「矢澤フェロマイト」という。)を子会社化し、収益基盤とすべく取り組んでおります。

 エネルギー関連事業では、中国経済の成長鈍化、ウクライナ情勢の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、物価上昇等、様々な要因により、各社とも新規プラント設備投資には慎重になっております。この状況下、新規プラント建設計画に関する継続的な情報収集、既存プラントの更新需要に対する積極的な営業活動、顧客やプロセス・オーナーとの関係構築・深化に努め、受注機会を逸することがないよう取り組んでおります。また、安定的に収益を確保できる体制の構築とグループ生産体制の最適化の推進等によりコスト低減を図り、価格競争力を高め、受注機会の拡大と主力製品以外のマーケットの拡大、定期メンテナンスサービスの強化等を行うことを目指しております。

 これらの結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高8,148,016千円(前期比28.8%増)、営業利益1,310,963千円(前期比66.6%増)、経常利益1,352,393千円(前期比36.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益867,380千円(前期比9.1%増)となりました。

 

 セグメント別の状況は、以下のとおりです。

 

 ① 水関連事業

 取水分野では、各地で進められている取水設備の老朽化や耐震化に伴う改修工事等により、取水スクリーンの需要は底堅く、堅調に推移しました。水処理分野では、矢澤フェロマイトを連結子会社化したことにより、売上及びセグメント利益の増加に大きく寄与しました。また、関東圏で水処理に係る設備設計・工事に実績のある同社が子会社となったことで、当社グループとして対応可能な設備設計・工事範囲が広がり、栃木県内某浄水場の大口受注(契約納期:2029年9月末)に至りました。

 これらの結果、売上高2,616,055千円(前期比84.1%増)、セグメント利益347,704千円(前期比55.3%増)となりました。

 

 ② エネルギー関連事業

 エネルギー関連事業では、中国経済の成長鈍化、ウクライナ情勢の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、物価上昇等の様々な要因により顧客各社が新規の設備投資に慎重な姿勢を継続させる一方、既存プラントの設備更新需要は伸びました。当社グループでは、新規プラント建設計画に関して継続的に情報収集に努めるとともに、既存プラントの更新需要に対して積極的に営業活動を進め、中東や中国での大型案件の受注を始め、多数の更新需要を取り込むことができました。

 これらの結果、売上高5,531,960千円(前期比12.7%増)、セグメント利益1,527,029千円(前期比37.8%増)となりました。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

エネルギー関連事業

3,347,592

101.8

水関連事業

1,701,826

211.1

合計

5,049,419

123.4

 (注)1.金額は製造原価を基にしています。

2.当連結会計年度において、水関連事業の生産実績が増加しています。これは主に、矢澤フェロマイトが当連結会計年度より新たに連結子会社となったことによるものです。

 

② 受注実績

 受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

エネルギー関連事業

6,051,839

193.5

2,279,223

129.3

水関連事業

4,127,573

287.3

2,482,583

901.2

合計

10,179,412

223.0

4,761,806

233.6

 (注)当連結会計年度においてエネルギー関連事業の受注高が増加していますこれは主に石油精製石油化学プラントの設備更新需要の高まりを背景に当社グループの受注活動が奏功したことによるものですまた水関連事業の受注高及び受注残高が増加していますこれは主に栃木県内某浄水場の設備更新工事を受注したこと及び矢澤フェロマイトが当連結会計年度より新たに連結子会社となったことによるものです

 

③ 販売実績

 販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

エネルギー関連事業

5,531,960

112.7

水関連事業

2,616,055

184.1

合計

8,148,016

128.8

 (注)1.当連結会計年度において、水関連事業の販売実績が増加しています。これは主に、矢澤フェロマイトが当連結会計年度より新たに連結子会社となったことによるものです。

    2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Honeywell UOP

1,100,246

17.4

913,268

11.2

A社

711,629

11.2

    3.A社については、事業への影響等が懸念されることから、社名の公表は控えさせていただきます。

    4.当連結会計年度のA社に対する販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。

(3) 経営成績等の分析

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しており、特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

② 経営成績の分析

 当連結会計年度における経営成績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の状況」に記載のとおり、エネルギー関連事業では中国経済の成長鈍化、ウクライナ情勢等に起因する様々な影響を受け落ち込んでいましたが、既存プラントの設備更新需要については回復傾向にあり多数の更新需要を取り込めたこと、水関連事業では2022年7月1日付で子会社化した矢澤フェロマイトの業績を取り込んだことにより、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ28.8%増の8,148,016千円となりました。売上原価は前連結会計年度に比べ29.2%増の5,266,101千円、売上総利益は前連結会計年度に比べ27.9%増の2,881,915千円となりました。販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ7.2%増の1,570,951千円となった結果、営業利益は前連結会計年度に比べ66.6%増の1,310,963千円となりました。

 また、前連結会計年度は急激な円安進行により多額の為替差益を計上したのに対し、当連結会計年度は為替変動の影響が限定的であったことから、経常利益は前連結会計年度に比べ36.4%増の1,352,393千円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、NAGAOKA VIETNAM CO., LTD. において減損損失105,405千円を計上したことにより、前連結会計年度に比べ9.1%増の867,380千円となりました。

 なお、セグメント別の経営成績につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の状況」をご覧ください。

 

③ 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は7,201,755千円となり、前連結会計年度末に比べ1,489,525千円の増加となりました。これは主に、原材料及び貯蔵品が102,961千円減少した一方で、契約資産が1,139,466千円、売掛金が369,095千円増加したことによるものです。

 また、固定資産は1,685,161千円となり、前連結会計年度末に比べ24,331千円の減少となりました。これは主に、土地が149,095千円増加した一方で、機械装置及び運搬具(純額)が172,243千円減少したことによるものです。

 これらの結果、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,465,193千円増加し、8,886,916千円となりました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は2,966,200千円となり、前連結会計年度末に比べ764,476千円の増加となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が150,476千円減少した一方で、支払手形及び買掛金が513,483千円、契約負債が159,395千円増加したことによるものです。

 また、固定負債は290,136千円となり、前連結会計年度末に比べ40,299千円の増加となりました。これは主に、長期借入金が36,860千円増加したことによるものです。

 これらの結果、当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ804,775千円増加し、3,256,337千円となりました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は5,630,579千円となり、前連結会計年度末に比べ660,418千円の増加となりました。これは主に、為替換算調整勘定が57,451千円減少した一方で、配当金の支払140,984千円及び親会社株主に帰属する当期純利益867,380千円の計上により利益剰余金が726,396千円増加したことによるものです。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,021,456千円となり、前連結会計年度末に比べ5,837千円の減少となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は365,468千円(前連結会計年度は152,267千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,246,876千円、仕入債務の増加額380,305千円、減価償却費220,255千円、棚卸資産の減少額151,746千円、契約負債の増加額140,651千円の増加要因に対し、売上債権の増加額1,488,658千円、法人税等の支払額421,615千円の減少要因によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は49,840千円(前連結会計年度は87,282千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出31,565千円及び差入保証金の差入による支出21,884千円の減少要因によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は309,260千円(前連結会計年度は206,190千円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入77,000千円の増加要因に対し、長期借入金の返済による支出270,624千円及び配当金の支払額140,828千円の減少要因によるものです。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

 当社グループの資金需要は、主に運転資金、研究開発及び設備投資に対するものです。運転資金は、主に製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、研究開発費は、主に研究開発に携わる従業員の人件費です。設備投資は、主に製造に必要となる機械装置及び治具が中心です。

 短期運転資金及び研究開発費につきましては、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、資金繰りの状況及び見通しを把握し、かつ、多数の金融機関との間で当座借越契約を締結することで、十分な流動性を確保しています。また、設備投資や長期運転資金につきましては、手許流動性資金を勘案の上、不足が生じる場合には、金融機関からの長期借入による調達を行う方針です。

 なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,194,351千円となっており、現金及び現金同等物の残高は2,021,456千円となっています。

 

(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の最終年度である2024年6月期において、売上高10,000百万円、営業利益1,488百万円を数値目標として掲げています。

 中期経営計画の初年度である2022年6月期については、売上高7,200百万円、営業利益933百万円の計画に対し、実績は、エネルギー関連事業が落ち込んだことが影響し、売上高6,328百万円、営業利益787百万円となりました。

 中期経営計画の2年目である2023年6月期については、売上高7,800百万円、営業利益1,140百万円の計画に対し、実績は、エネルギー関連事業の業績が回復したことや子会社化した矢澤フェロマイトの業績が寄与し、売上高8,148百万円、営業利益1,310百万円となりました。

 中期経営計画の3年目である2024年6月期については、2023年6月期の実績及び2024年6月期の業績予想を踏まえ、売上高9,866百万円、営業利益1,412百万円を数値目標として掲げています。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動の主な内容は、これまで当社グループが培ってきた「スクリーン製造・加工技術」、「スクリーンを使った固体/液体分離技術」、「サンド・コントロール等の取水技術」、「水処理に関する技術」等のコア技術を用いて、既存製品の改良や地下水・海水の取水及び水処理分野で、オンリーワンの技術と新製品の開発を行うことです。

 これらの研究開発活動は、各事業部の技術部門がそれぞれ担当しており、市場ニーズの収集・分析情報を持つ営業部門と連携しながら、新製品・新技術の開発及び既存製品の改良・改善・応用を行い、技術確立、製品化、事業化にスピード感をもって対応できる体制を取っています。

 当連結会計年度のセグメントごとの研究開発活動は次のとおりであり、研究開発費は、水関連事業で31,256千円、エネルギー関連事業で3,543千円、総額で34,799千円となりました。

 

(1) 水関連事業

① ケミレスの改良・改善・開発

 浄水場や民間工場における水処理に活用いただいているケミレスに関し、下記3点の改良・改善・開発に取組んでいます。

a.ケミレス洗浄排水処理技術の開発:ケミレスの洗浄排水は原水から除去した鉄・マンガンを高濃度に含有します。最適な処理方法を開発し、取水~水処理~排水処理までトータルで対応できるシステムを構築しています。

b.ケミレス馴養技術の改善:ケミレスは接触材の被膜形成(馴養)により安定した性能を発揮します。馴養技術の改善により被膜形成を早期に促進させ、馴養期間短縮と原水水質変動に強いシステムの確立へ向けて取り組んでいます。

c.可搬式装置の開発:被災地等においても緊急対応可能な、自助電源搭載型の可搬式ケミレス浄水装置の開発を行っています。

 

② エアシスの改良・改善

 東京都水道局と共同で開発したエアシスの改良・改善に取組んでいます。エアシスは、地下水や河川水に含まれるVOC(有機性化合物質)や遊離炭酸などの汚染物質を除去します。VOCにも様々な種類があり、従前の除去対象物質であったTCE(トリクロロエチレン)以外のVOC除去についても、既存技術に対し優位性を持てるよう研究を行いながら装置改良を行っています。

 

③ 吸引式粉末活性炭注入装置の開発

 浄水場の原水臭気対策、水質改善目的で大量に使用される粉末活性炭の多くは、原水に馴染みやすいように水分を多く含んだウェット状態で納入されますが、その分高額の輸送コストと長期保管/品質保全に問題を抱えています。当社グループが開発した注入装置は、ドライ炭という水分量の低い状態の活性炭を独自の技術により即時に原水と混合、いかんなく処理性能を発揮し、浄水場運営コストの低減と安全・安心な水道水供給に寄与しています。

 

④ 取水スクリーン及び取水関連製品の改良・改善・開発

 当社のコア技術であるスクリーンの製造・加工技術及び取水関連製品に関し、改良・改善・開発に取り組んでいます。

a.取水スクリーンの改良・改善:放射状集水井に用いられるラジアルスクリーン製作方法の見直しを行い、製品の品質向上並びにコストダウンに取り組んでいます。

b.取水関連製品の改良・改善・開発:集水埋渠の関連製品である特殊護床かごは、洪水時における河床の洗堀を防止し、集水埋渠の流出を防ぐためのものです。この特殊護床かごは、従来、箱型でしたが、運搬費用の低減及び現場での施工性向上を目指し、組立式の護床かご製作に取り組んでいます。

 また、井戸からの地下水をくみ上げる揚水管は、ポンプメーカーごとにフランジの切欠き仕様が異なるため、各ポンプメーカーに対応した揚水管を手配する必要がありました。メーカーを選ばずどのポンプメーカーのフランジにも対応できるマルチフランジ式揚水管の開発に取り組んでいます。

 

(2) エネルギー関連事業

 連結子会社である那賀設備(大連)有限公司において製作可能なスクリーン・インターナルの種類を増やすため、新たなインターナルプロセスの製作認証の取得に向けて取り組んでいます。また、認証取得済みのスクリーン・インターナルの製作方法について、改良・改善に取り組んでいます。