第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

売上収益

(百万円)

8,970

12,661

19,427

26,418

34,057

税引前利益(△損失)

(百万円)

1,557

1,170

111

1,063

2,062

親会社の所有者に帰属する当期利益(△損失)

(百万円)

1,454

1,179

21

1,002

2,927

親会社の所有者に帰属する当期包括利益

(百万円)

1,726

245

3,289

2,702

5,962

親会社の所有者に帰属する持分

(百万円)

7,668

22,836

26,201

29,091

34,315

総資産額

(百万円)

12,394

31,206

35,939

37,852

44,637

1株当たり親会社所有者帰属持分

(円)

84.49

225.73

258.11

285.54

337.62

基本的1株当たり当期利益(△損失)

(円)

16.02

11.97

0.21

9.85

 28.70

希薄化後1株当たり当期利益(△損失)

(円)

11.97

0.21

9.75

 28.47

親会社所有者帰属持分比率

(%)

61.9

73.2

72.9

76.9

76.9

親会社所有者帰属持分利益率

(%)

0.1

3.6

9.2

株価収益率

(倍)

6,467

188

51

営業活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

840

747

996

2,224

1,929

投資活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

2,706

9,075

3,772

1,971

2,241

財務活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

1,161

14,396

520

2,251

792

現金及び現金同等物の期末残高

(百万円)

1,635

6,561

3,804

6,134

5,496

従業員数

(人)

479

574

661

706

708

 

(注) 1.国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しております。

2.2021年1月29日付で、当社の唯一の株主であったAppier Holdings, Inc.に対し普通株式90,761,489株の株式無償割当を行いました。これに伴い、第3期の期首に当該株式無償割当が行われたと仮定して1株当たり親会社所有者帰属持分及び基本的1株当たり損失を算定しております。

3.第3期における希薄化後1株当たり損失については、同連結会計年度において潜在株式が存在しなかったため記載しておりません。

 

4.第4期末に存在する普通株式1,699,348株相当のストック・オプションは、1株当たり損失に対して逆希薄化効果を有するため、希薄化後1株当たり損失の算定に含まれておりません。

5.第3期及び第4期における親会社所有者帰属持分利益率については、当期損失が計上されているため記載しておりません。

6.第3期における株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。第4期における株価収益率については、基本的1株当たり損失であるため記載しておりません。

7.第3期から第7期のIFRSに基づく連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、PwC Japan有限責任監査法人の監査を受けております。

8.第3期及び第4期は、売上収益を上回る規模で将来的な事業拡大のために営業人員やエンジニアの人件費等に対する先行投資を行ったため、親会社の所有者に帰属する当期損失及び営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなりました。

 

(2) 提出会社の経営指標等

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

売上高

(百万円)

51

74

62

133

経常損失(△)

(百万円)

57

536

84

334

355

当期純損失(△)

(百万円)

58

537

62

325

341

資本金

(百万円)

0

7,526

7,535

7,555

7,628

発行済株式総数

(株)

1

101,164,657

101,511,035

101,882,216

102,289,998

純資産額

(百万円)

15,732

30,328

30,320

30,171

29,077

総資産額

(百万円)

16,388

31,127

30,982

30,799

30,614

1株当たり純資産額

(円)

173.33

299.79

298.68

296.14

286.09

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

2.00

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

0.64

5.46

0.61

3.20

3.35

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

96.0

97.2

97.5

97.1

93.8

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

従業員数

(人)

株主総利回り

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(%)

71.5

97.4

76.9

(―)

(―)

(97.6)

(125.2)

(150.8)

最高株価

(円)

2,300

1,709

2,054

1,926

最低株価

(円)

1,168

709

1,193

968

 

(注) 1.第3期は、当社は実質的な事業活動を行っていないため売上高を計上しておらず、当期純損失となりました。

2.2021年1月29日付で、当社の唯一の株主であったAppier Holdings,Inc.に対し普通株式90,761,489株の株式無償割当を行いました。これに伴い、第3期の期首に当該株式無償割当が行われたと仮定して1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

3.第3期における潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、同事業年度において潜在株式が存在しなかったため記載しておりません。

4.第4期末に存在する普通株式1,699,348株相当のストック・オプション、第5期末に存在する普通株式1,336,488株相当のストック・オプション、第6期末に存在する普通株式1,069,512株相当のストック・オプション及び第7期末に存在する普通株式718,975株相当のストック・オプションは、1株当たり当期純損失に対して逆希薄化効果を有するため、潜在株式調整後1株当たり当期純損失の算定に含まれておりません。当該ストック・オプションは、将来において1株当たり当期純利益を潜在的に希薄化させる可能性があります。

 

5.第3期における株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。第4期から第7期における株価収益率については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

6.第3期から第6期は配当を実施しておりませんので、1株当たり配当額及び配当性向を記載しておりません。第7期における配当性向については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

7.自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

8.従業員数については、純粋持株会社である当社の事業はAppier,Inc.及びAppier Japan株式会社に所属する従業員が遂行しているため、該当ありません。

9.第3期から第7期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、PwC Japan有限責任監査法人の監査を受けております。

10.当社株式は、2021年3月30日付で東京証券取引所マザーズ市場に上場したため、株主総利回り及び比較指標については第5期以降を記載しております。

11.最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所マザーズ市場、2022年4月4日以降2022年12月14日以前は東京証券取引所グロース市場、2022年12月15日以降は東京証券取引所プライム市場における株価を記載しておりますなお、2021年3月30日をもって同取引所に上場しましたので、それ以前の株価は記載しておりません。

 

 

2 【沿革】

当社は、2018年4月に当社グループの中間持株会社として設立されました。設立から現在に至るまでの沿革は、次のとおりであります。

なお、当社は、2021年2月に、当社の親会社であったAppier Holdings,Inc.(英領ケイマン諸島)が既存株主に対して当社の株式を分配したことに伴い、当社が当社グループの最終親会社としての持株会社となりました。

 

(1) 当社設立前(参考情報)

年月

概要

2012年6月

中華民国(以下「台湾」という。)法人であるAppier,Inc.(注)において、当社代表取締役CEOの游直翰らが人工知能(AI)を活用した企業のマーケティングにおけるソリューションの研究開発を開始

2014年3月

Appier Pte.Ltd.を設立

2014年5月

当社グループの最終持株会社として、英領ケイマン諸島にAppier Holdings,Inc.を設立

2014年6月

最も生涯価値の高いユーザーを予測し、高い投資対効果を実現することができるユーザー獲得のプラットフォーム「CrossX」を提供開始

2014年7月

Appier Japan株式会社を設立

2014年12月

ホーチミンオフィス設立

2015年4月

シドニーオフィス設立

2015年7月

マニラオフィス設立

2015年9月

ムンバイ、デリー、ジャカルタ、香港オフィス設立

2015年12月

ソウル、クアラルンプールオフィス設立

2017年5月

バンコクオフィス設立

2017年7月

AI予測モデルを自動的かつ簡単に構築し、容易にオーディエンスの行動予測を行うことを可能にするデータサイエンスプラットフォーム「AIXON」の提供を開始

 

大阪オフィス設立

 

 

 

(2) 当社設立以後

年月

概要

2018年4月

当社グループの中間持株会社として、東京にAppier Group合同会社を設立

2018年5月

マーケティングオートメーション事業を手がけるQuantumgraph Solutions Private Limited.を買収

2018年6月

Appier Beijing Co.,Ltd.を設立

2018年10月

Quantumgraph Solutions Private Limited.の買収で獲得した技術を活用し、再設計とAI機能の追加を行い、AIを活用して、ユーザーにパーソナライズされたメッセージを作成し、最も効率的にあらゆるチャネルを通じて、ユーザーとのエンゲージメントを実行するプラットフォーム「AIQUA」の提供を開始

2019年1月

Appier Group合同会社を組織変更し、Appier Group株式会社を設立

2019年8月

AI搭載のマーケティング・プラットフォームの強化を目指し、Emotion Intelligence株式会社を買収

2019年10月

Emotion Intelligence株式会社の買収で獲得した技術を活用し、購入をためらっているユーザーを特定し、売上の最大化と購入の動機付けをもたらすプラットフォームである「AiDeal」の提供を開始

2019年12月

Appier UK Co.,Ltd.を設立

2020年2月

Appier US LLCを設立

 

パリオフィス設立

2020年5月

Appier Japan株式会社がEmotion Intelligence株式会社を吸収合併

2021年2月

当社の親会社であったAppier Holdings,Inc.が既存株主に対して当社の株式を分配したことに伴い、当社が当社グループの最終親会社としての持株会社となる

2021年3月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2021年6月

邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)を買収し、会話型のエンゲージメント・マネジメント・プラットフォーム「BotBonnie」の提供を開始

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所グロース市場へ移行

2022年10月

カスタマージャーニー分析、マーケティングオートメーション、データマネジメントのためのSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)プラットフォームを提供するWoopra,Inc.を買収

2022年12月

ファーストパーティデータに対応するAI搭載次世代CDP「AIRIS」の提供を開始

2022年12月

東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更

2023年1月

Appier Netherlands B.V.を設立

 

(注)既存法人をAppier,Inc.と改称

 

3 【事業の内容】

(1)  当社グループの概要

「ソフトウェアをよりスマートに、AIでROIを向上させる」が当社グループのミッションです。

現在はあらゆるサービスやソリューションでAIの活用が進んでおり、急速に進展するAI革命の真只中にあります。AI時代におけるこの大きなチャンスを活かし、当社はビジネスドメインであるマーケティング分野において、AIモデル及びプロダクト開発のための研究開発投資とAI学習の経験の蓄積により、顧客企業のROI(投資リターン)向上を実現してきました。Appierのビジョンである”Making AI easy by making software intelligent”に沿ってAIを活用したソリューションを容易に統合し活用することで、顧客企業が競争力を維持するだけでなく、この変革期にあるAI時代における重要なプレーヤーとなることを支援しています。

当社グループは、AIマーケティングのソリューションをSaaS(注1)モデルで提供するパイオニアを自負しており、マーケティング及びセールス活動の全領域を支援するソリューションを提供しています。

 

現在、多くの組織は非常に価値があるデータを持っていながら、そのデータを有効に活用できていません。データの断片化、AI人材の不足という課題があることが背景です。当社グループのAIプラットフォーム(当社グループが提供するソリューションの総体をいいます。以下同じ。)は、まず、深層学習(ディープラーニング)技術(注2)により、様々なソースから得られたフォーマットが異なるデータを統合することで、データの断片化という第一の課題を解決します。続いて、この統合されたデータを活用して、最先端のAIモデルを自動的に構築するソフトウェアを提供することで、AI人材不足という第二の課題を解決します。さらに、当社のAIプラットフォームは、AIモデルを容易に利用することが可能であり、様々なアプリケーションと連携できるので、顧客企業のマーケティング活動をROIを向上させながら効率的に実行することができます。このような技術が、当社グループのAI SaaSソリューションに組み込まれています。

 

当社グループのAIプラットフォーム上で提供されるソリューションは、最先端のAIモデルによって消費者の行動や興味関心を予測するという特徴を持ち、データが真の価値を発揮することを可能にします。そして、マーケティング及びセールスの領域におけるファネル(注4)の各段階での課題に対応したものになっています。

 

当社グループは、顧客企業に次の価値を提供しています。

(1) 最先端のAIを簡単に活用できるようにすることで、AIを業務プロセスに組み込むための開発時間とコストを大幅に圧縮することができます。

(2) 後記「(4) 当社グループのソリューション」で述べるとおり、当社のAIソリューションを用いることで、デジタルマーケティングとセールスの領域の課題を一気通貫で解決することが期待できます。当社のソリューションは、ファネルの各段階で顧客企業の課題に簡単に対応することができます。また、他のファネル段階への展開を容易にするために、データは相互にリンクされています。

(3) 将来予測を行う当社グループのAIソリューションを利用することによって、従来、過去データのみに基づいて実施されていたマーケティング上の意思決定を、ユーザーの行動を予測して先回りするものに変えることができ、顧客企業は、これにより投資を行う前にリターンを予測することが可能になるだけでなくマーケティング投資のROIを向上させることができます。

 

(注) 1.Software as a Serviceの略。インターネット等の通信ネットワークを通じて、利用者が必要なものを必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアまたはその提供形態。

2.ニューラルネットワーク(注3)により機械学習技術を実装するための手法の一種

3.生物の神経ネットワークの構造と機能を模倣するという観点から生まれた、脳機能に見られるいくつかの特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデル

4.「じょうご」の意。後記「(4) 当社グループのソリューション」で述べるとおり、当社グループでは、潜在的なユーザーの予測及び獲得からユーザーの維持及び関係構築、販売に至るマーケティングのすべてのプロセスを「フル・ファネル」と表現しています。

 

(2)  当社グループの歴史

当社グループは、2012年6月に、米国のハーバード大学やスタンフォード大学在籍時に四足自立歩行ロボットや自動運転自動車の開発など、AI、データ分析、分散処理システム等分野での研究経験を有するAIサイエンティストとコンピュータプログラムのエンジニアメンバーが、AIを活用した企業のマーケティングにおけるソリューションの研究開発を台湾で開始したことに始まります。マーケティングとセールスこそが企業とユーザーとの最初の接点であり、全てのビジネスの出発点であると考えたからです。

 

当社グループは、機械学習やAIの研究で実績を残したAIサイエンティストが技術面を牽引しています。エンジニアの多くがAI、ビッグデータ又はコンピューターサイエンスの領域における博士号又は修士号を有しています。また、当社グループの役員又は従業員が執筆した300以上の論文が、トップジャーナル、カンファレンス、ワークショップ(アルバータ大学の定義に拠ります。)において発表されています。国際的かつ著名なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、当社グループの従業員が参加したチームが7回優勝したという実績もあります。これらのことから、当社グループは、フォーチュン誌から中国本土を除くアジアを拠点とする企業で唯一の「AI革命を牽引する50社(2017年)」(注1)及びガートナーから「AIクールベンダー(2017年)」(注2)に選出される等、AI企業として高い評価を受けて参りました。

また、事業面でも経験豊富なメンバーが在籍しており、技術の強み、事業経験、顧客中心主義の文化が組み合わされたユニークな企業文化を有しています。

 

・2014年に、当社グループ初のソリューションである「CrossX」の提供を開始しました。

・2014年から2015年には、台湾だけでなく日本と韓国にも事業を拡大しました。また、東南アジア各国への進出を進めています。

・2018年には、インドのベンチャー企業であるQuantumgraph Solutions Private Limitedを買収し、そのソリューションを再設計しAI機能を追加することで、「AIQUA」を立ち上げました。

・2019年には、日本のベンチャー企業であるEmotion Intelligence株式会社を買収しました。同社のソリューションにさらに最先端の機械学習技術を追加することで、「AiDeal」を立ち上げました。

・2020年以降には、中国での事業活動を強化し、欧州、米国地域へと拡大しました。

・2021年には、台湾のベンチャー企業である邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)を買収し、会話型のエンゲージメント・マネジメント・プラットフォーム「BotBonnie」の提供を開始しました。

・2022年には、米国のベンチャー企業であるWoopra, Inc.を買収し、AIを搭載しした次世代CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)「AIRIS」の提供を開始しました。

 

現在、当社グループは、東京の他、大阪、ソウル、台北、香港、北京、米国カリフォルニア州、アムステルダム、パリ、シンガポール、クアラルンプール、ホーチミン、マニラ、ジャカルタ、バンコク等の15ヵ国・地域に17のオフィス(2024年12月末時点)を構え、1,872の企業グループ(注3)に直接もしくは代理店経由にてサービスを提供しております。当社の本社所在地は東京ですが、当社グループの開発拠点は主に台湾です。

 

 

主要な関係会社(AISaaS事業)

開発の拠点:Appier,Inc.

グループ会社の統括本社機能:Appier Pte. Ltd.

販売活動を行っている子会社:Appier Japan株式会社、Appier,Inc.等

 

(注) 1.2017年にCBインサイツが多様な健全性・成長性指標に基づき選出した「世界で最も有望なAIスタートアップ企業100社」(「AI100」)の中から、資金調達額の多かった上位50社。なお、当社グループは2018年にもAI100に選出されている。

2.東アジア地域で優れたAIソリューションを提供している企業として2017年にガートナーが選出したもの。

3.2024年12月末時点で当社グループと契約しており、当社グループのソリューションを1種類以上利用している企業グループの総数。有償・無償のトライアル、デモ使用、M&Aにより獲得した顧客は含まない。複数のブランドで当社グループの同一のソリューションを利用している企業は、1社としてカウント。複数のブランドで当社グループの複数のソリューションを利用している企業は、利用している当社グループのソリューションの数ごとに個別の顧客企業としてカウント。

 

(3) 当社グループのAIプラットフォームができること

近年の経済情勢を見ると、以下の3点を主な理由として、データを利活用したビジネスの需要が高まっており、ビッグデータ(注1)を収集・解析・活用し、経営判断に役立てることがますます重要になっています。

① デジタルデバイスの普及・浸透:スマートフォン、タブレット等を中心とした個人が所有するデジタルデバイスの普及

② 技術革新:クラウドコンピューティング(注2)、ビッグデータ解析技術、深層学習技術等におけるイノベーション

③ データの利用可能性の拡大:検索エンジンやeコマースを通じたトランザクション・データ(注3)及びソーシャルメディア等を通じて生成された画像・動画等の非構造化データ(注4)の増加

 

とりわけ、マーケティング領域においては、ユーザーに関するビッグデータを分析、活用することにより、ウェブサイト又はモバイルアプリケーションを通したより効果的なマーケティングが可能となりました。また、AIソフトウェアを用いて企業が保有するカスタマーデータからより有意義な知見を抽出して理解を深めることや、既存の又は潜在的なカスタマー等とのマーケティング・コミュニケーションにAIソフトウェアを活用して、個人に対して最適にパーソナライズされた提案を行い、エンゲージメントを高める取り組みも進んでおります。

 

このようにデータの利活用の重要性やAIに対するニーズが高まる一方、現実のビジネスにおいては以下のような課題があり、多くの組織ではデータを有効に活用できていません。

① データは複数のソースやデバイスに分断されており、大量の異なるデータを管理し、統合することは難しく調査対象の包括的な理解が得られない

② AIを十分に活用し、ビジネスの意思決定にAIを役立てるには、高度な訓練を受けた専門家が必要

③ AIやデータサイエンティストを組織に融合させることは容易ではなく、事業に良い影響をもたらすことは難しく、また、価値を生み出すAIアプリケーションを開発することには困難を伴う

 

 

この点において、当社グループの開発したAIプラットフォームは、これらの社会的課題に以下のように対応します。

① データ統合の自動化:ディープラーニング技術により、様々なソースやデバイスから得たフォーマットが異なるデータを統合してデータの価値を高め、広範に利用できるデータを自動的に生成します。

② 機械学習を用いたAI予測モデルの自動構築:高度な機械学習(注5)を用いたAI予測モデルを自動的に構築し、企業は社内でデータ・サイエンスチームを立ち上げることなく、自社の課題解決に集中することが可能になります。

③ 簡単に利用可能なSaaSプラットフォーム:システム環境に依らず利用可能なプラットフォームであるSaaSのプラットフォームとして提供することで、初期投資を抑えながらAIを用いてデータを直ちに利活用し、顧客企業のマーケティング担当者が自分で分析を行うことを可能にしております。

 

そして、当社グループでは、多数の顧客企業が最先端のAIモデルに容易にアクセスできるSaaSのAIソリューションこそが、AIの潜在能力を最大限に引き出すことができると考えています。

このように、様々なソースやデバイスから入手したデータを自動で統合することでユーザーのプロファイルを作成し、断片的な情報しかなかったデータから包括的なユーザーの情報を得ることを可能にしております。その際、ユーザーのウェブサイトの訪問履歴やアプリの使用履歴等を自然言語処理(注6)とディープラーニングにより解析することで、データがない領域があったとしても、周辺領域に対するユーザーの嗜好の理解を基に当該未開拓の領域に対する興味・関心の有無について予測することで、より広範なトピックに対するユーザーの行動を予測することを可能にしております。

 

当社グループのソリューションを使用して現実世界における企業の課題を解決した具体例な事例として以下が挙げられます。

① データ統合の自動化:例えば、顧客企業である化粧品ブランドのアプリ・Webサイト、CRM(注7)からのストリーミングデータ(注8)を統合しユーザーのプロファイルを生成します。当該ユーザーの行動パターンと興味・関心といったデータを統合、更には商品の閲覧や購入等のユーザーのWebサイトやアプリ上での行動データ等を統合することで、包括的なユーザーのプロファイルを作成します。

② 機械学習を用いたAI予測モデルの自動構築:包括的なユーザーのプロファイルに基づきユーザーがいつ、何を、どのように購入したいのかを予測する機械学習を用いたAI予測モデルを自動構築することで、例えばこの閲覧したユーザーは、例えば、日焼け止めUVカットのファンデーションを購入する可能性が高いと、高い精度で予測してマーケティングを実施することが可能になります。

③ パーソナライズされた提案:最もユーザーにマッチする商品を自動的にWebサイトやアプリに表示させることによって提案します。

 

(注) 1.従来のデータベース管理システム等では記録や保管、解析が難しいような巨大なデータ群

2.インターネット等のコンピューターネットワークを経由して、コンピューター資源をサービスの形で提供する利用形態

3.業務に伴って発生した出来事の詳細を記録したデータ

4.文書データ、電子メール、写真、動画等、定型的に扱えないデータ

5.データから規則性や判断基準を学習し、それに基づき未知のものを予測、判断する技術

6.人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる一連の技術

7.顧客との良好な関係を構築し、顧客価値を高めるためのマネジメント

8.多数のデータソースによって継続的に生成されるデータ

 

 

(4) 当社グループのソリューション

当社グループは、企業と価値あるエンドユーザーを結びつけるためのAIベースのソリューションを提供し、当社の顧客の多くを占める消費者向けサービスを提供する企業に対して、潜在的なユーザーの予測及び獲得からユーザーの維持及び関係構築、販売に至るマーケティングのすべてのプロセスを一気通貫でサポートできるソリューションを揃えております。

当社グループでは、このコンセプトをマーケティングとセールスのプロセスの「フル・ファネル」と呼んでいます。このアプローチにより、マーケティングとセールスの各段階で、顧客企業の課題解決を支援することができると考えています。また、SaaSのプラットフォームとして提供することで、AIでこれらの課題を解決するために必要な開発時間とコストを大幅に削減することができます。

当社グループのソリューションは、顧客企業に以下のような価値を提供しています。

① 企業レベルでは、完全に自動化されたデータの統合とAIモデルの自動構築の技術により、AIの導入を容易にします。

② CMO(Chief Marketing Officer)やマーケティング責任者には、将来のユーザー行動を予測し、そこから得られる知見を提供します。これにより、従来、過去データのみに基づいて実施されてきたマーケティング上の意思決定を、ユーザーの行動を予測して先回りするものに変えることができます。また、投資額に対してどれだけのリターンがあるかを事前に予測することを可能にします。

③ マーケティング担当者には、日々の業務課題に合わせたフル・ファネルのソリューションを提供します。当社グループのAIソリューションは、デジタルマーケティングに伴う様々な手作業を自動化し、マーケティング担当者がより戦略的な意思決定に集中することを可能にします。

 

そして、顧客企業が当社のソリューションを利用すればするほど、AIが学習するデータ量が増加し、より正確な予測をすることができるようになります。これにより、顧客企業はマーケティング投資のROIが向上し、当社ソリューションをさらに多く利用することで、結果的に当社ソリューションへのロイヤルティが高まると考えられます。

また、CrossXは、当社グループの担当者が、顧客企業と共有したマーケティング戦略をもとに、AIの提案を受けながらユーザー獲得のためのマーケティングキャンペーンを実施し、顧客企業はその実施結果等をプラットフォーム上のレポートにより確認することができます。それに対して、AIXPERT、AIQUA、BotBonnie、AiDeal、AIXON及びAIRISは、顧客企業が自ら利用できるプラットフォームを提供するものです。

顧客企業は、そのニーズに応じて、当社グループのソリューションを1つだけ利用することも、複数利用することも可能ですが、各ソリューションが高度に連携・統合されていることから、組み合わせて使うことによって、時には、これまで想定していなかった知見や気づきを得ることができます。そして、当社ソリューションから得たデータや気づきを他の分野で活用することも可能です。


 

① CrossX(クロスエックス)、AIXPERT(アイエクスパート):ユーザーのライフタイムバリュー(LTV、生涯価値)を予測し、最も価値の高いユーザーを獲得することを可能にすることで、マーケティング投資を予測可能なリターンに転換

 

CrossXは、一般消費者を顧客とする企業がマーケティングの初期段階で直面する「マーケティング投資に見合う高いリターンが期待できるユーザーを獲得する」という課題を解決するためのソリューションです。これは、マーケティング・ファネル図でいうと、最上段の「潜在ユーザーの予測及び獲得」にあたります。

従来、企業のマーケティング担当者はコストと時間をかけてマニュアル作業によるA/Bテスト(注1)を繰り返してきました。CrossXは、AIが最も生涯価値(LTV)の高い潜在的ユーザーを高い精度で予測し、当該潜在的ユーザーのターゲティングに基づくマーケティングキャンペーンを行うことで、顧客企業は高い投資対効果(ROI)を実現することができます。

 

顧客企業がCrossXの利用を開始すると、最初にユーザーデータの取り込み及び機械学習を行います。ユーザーのプロファイル、サイトデータ、ユーザー行動などの1万以上のデータの組み合わせが、当社グループのマルチタスク型ディープラーニングモデルに入力され、質の高いユーザーを見つけるだけでなく、「サイト訪問」「ユーザー登録」「購入」などの複数の重要な目標を達成するユーザーや、生涯価値(LTV)などの将来の行動やパターンを予測し、顧客企業に高いROIをもたらすユーザーを予測することができます。予測はこれで終わりではなく、獲得したデータに対して、繰り返し機械学習を行い、予測モデルを改善し続けます。

当社グループのAIは様々な地域・業種のユーザーデータを10年超にわたり学習し続けており、精度の高い予測をすることができる点が参入障壁となっています。

 

そして、CrossXはAIによる高LTVユーザーのターゲティング結果に基づき、各種メディアプラットフォーム上でターゲットを絞った広告配信を自動で行うことで、効率的に高LTVユーザーを獲得します。広告配信に要するメディアコストは当社グループの売上原価となりますが、AIアルゴリズムの改善により予測精度が高まると、同じ成果を出すために要するメディアコストが少なくなるため、当社グループの売上総利益率の改善に貢献します。

 

CrossXは利用量に基づく価格体系であり、当社グループの売上収益は、顧客企業から割り当てられるマーケティング予算の金額に基づき決定します。CrossXのAIはキャンペーン実施前にユーザーの獲得単価、獲得するユーザーのLTV、獲得可能なユーザー件数等のKPIを予測することができるため、顧客企業はマーケティング投資の実行前にリターンを予測することができます。CrossXを利用した結果、顧客企業の期待を上回るROIを達成することができれば、次回以降のキャンペーンにおける利用量の増加が期待できます。

CrossXは2014年に提供を開始した当社初のプロダクトであり、当社の売上収益のうち、最も大きな割合を占めています。

 

AIXPERTは、CrossXと同様にAIを利用した高LTVユーザー獲得のソリューションですが、違いとしては顧客企業自身が複数のチャネルで展開するマーケティングキャンペーンの結果をモニタリングしながら、AIが予測結果に基づき広告予算の配分等のパラメーターの調整を提案し運用改善と管理を一括で行うことができるプラットフォームを利用する点にあります。また、顧客企業のマーケティング担当者によるすべての意思決定をAIが自動的に行う「マーケティングの自動運転」を行うことも可能です。

 

AIXPERTはサブスクリプション方式の価格体系であり、顧客企業がプラットフォーム経由で行うマーケティングキャンペーンのボリュームに基づき月額料金が決定します。

 

② AIQUA(アイコア)、BotBonnie(ボットボニー):AIがパーソナライズしたメッセージを最適なタイミングで全チャネルにプロアクティブに配信し、エンゲージメントの質を向上

 

一般消費者を顧客とする企業は、ユーザーを獲得した次の段階として、マーケティング・ファネル図の上から2番目にあたる「ユーザーの維持及び関係構築」という課題に直面します。(1)複雑な内容のメッセージを作成し、複数のチャネルを管理するための手作業の負担が掛かる、(2)ユーザー毎に最適にパーソナライズされたメッセージを適切なタイミングで送ることができない、(3)ユーザーとの関係性構築のためのチャネルが不適切でロイヤルティの高いユーザーに変えることが出来ない、などが一般消費者向けの事業を行う企業で良く見られるエンゲージメントの課題です。

 

従来のマーケティング・オートメーション・ソリューションは、例えば、ユーザーの行動を基に事前に定めたルールに合致した場合に、所定のメッセージを自動で送信するというものです。このため、ユーザーにメッセージを届ける理想的なタイミングを逃してしまったり、もはや関心がなくなってしまったメッセージを送信してしまうという課題が生じています。

 

AIQUAは、これらの課題を解決するためのAIソリューションです。2018年にインドのベンチャー企業であるQuantumgraph Solutions Private Limitedを買収し、そのソリューションを再設計しAI機能を追加することでAIQUAを立ち上げました。

 

従来のマーケティング・オートメーション・ソリューションと異なり、AIが組み込まれているAIQUAは、ユーザーの取りうる行動や興味関心を予測し、ユーザー毎に最適にパーソナライズされたメッセージを最適なタイミングで提供することで、ユーザーとのエンゲージメントを強化することが可能です。

AIQUAには以下の特徴があります。

(1) Webプッシュ通知、Eメール、SMS、メッセンジャーアプリといった多様なコミュニケーションチャネルを簡単に利用することが可能です。

(2) AIアルゴリズムが、当該ユーザーにとって最適にパーソナライズされたメッセージやお薦め情報を自動的に作成します。

(3) AIアルゴリズムが、読まれる可能性が高いと予測されるチャネルから、高い成果を達成すると予測される最適な送信タイミングで、メッセージを自動送信します。

 

当社グループは、AIQUAをサブスクリプション方式で提供しています。契約期間は一般的には1年又は複数年単位であり、アクティブユーザーの総数に応じて段階的に定めている定額の料金をお支払いいただいております。

 

 

更に、当社グループは、台湾の邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)の買収に伴い、2021年6月にBotBonnieの提供を開始しました。BotBonnieの提供開始により、カスタマーエンゲージメントに関する製品ラインアップをメッセンジャー領域まで拡大しました。また、これにより当社グループは会話型コマースとカスタマーサポート領域に進出することとなり、これは当社グループのフルファネルマーケティングとビジネスソリューションに対する顧客中心のアプローチに沿った動きです。

 

BotBonnieは、オムニチャネルの会話型マーケティング・プラットフォームであり、メッセンジャープラットフォームにおける複雑なカスタマージャーニーを賢くナビゲートできるよう設計され、当社グループのAIを活用したソリューション群を強化しています。通常、企業がメッセンジャープラットフォームを通じてパーソナライズされた顧客サービスを生成し、顧客との望ましい関係を構築するためには、多大な労力が必要です。BotBonnieは、ビジュアルビルダーを使用して、パーソナライズされた顧客サービスを簡単に作成することができます。さらに、BotBonnieはInstagram、Facebook Messenger、LINE等の主なソーシャルメディアプラットフォームと統合しており、顧客エンゲージメントのカバー範囲を拡大するだけでなく、AIが会話データから得たインサイトによりセールスプロモーションを含めたアクションを強化することができます。

 

当社グループは、BotBonnieをサブスクリプション方式で提供しています。契約期間は一般的には1年又は複数年単位であり、顧客企業のソーシャルメディアアカウントの登録者数に応じて段階的に定めている定額の料金をお支払いただいております。

 

 

③ AiDeal(アイディール):購入を躊躇するユーザーを予測し、そのユーザーに限定してインセンティブを提供することで収益性を維持しつつ売上の最大化を実現

 

既存ユーザーとのエンゲージメントが維持・強化されると、ユーザーに購入等の取引を行ってもらうことが次の課題となります。これは、マーケティング・ファネル図でいうと、上から3番目の「取引の実行」にあたります。

 

一般消費者を対象とする企業の大きな課題として、例えばeコマース企業の場合、カートに入れられた商品の多くが最終的に購入されずに終わるという問題があります。その理由は、ECサイト間の切り替えに手間とコストがかからないため、一般消費者が実店舗と比べて、購買を躊躇することが多いからです。そのため、多くのECサイトでは、購買を促すためにクーポン等のインセンティブを付与することが増えています。

しかし、インセンティブの付与には2つの課題があります。一つ目は、インセンティブを一律に付与したり、間違ったユーザーセグメントに対して付与したりすると、利益率が低下する一方で、売上や利益の総額が必ずしも増加するわけではないことです。また、インセンティブを必要以上に付与すると、ブランドイメージを損なう可能性もあります。二つ目の課題は、適切なツールの活用や分析ができていないため、どのセグメントをターゲットにしてインセンティブを付与すべきかを効果的に把握することができないことです。

 

AiDealは、これらの課題を解決するAIソリューションです。2019年に日本のEmotion Intelligence株式会社を買収し、同社のソリューションに最先端の機械学習技術を追加することで、購入を躊躇するユーザーを予測し、そのユーザーだけに最も適切なインセンティブを付与し、収益性を維持しつつ売上の最大化を実現するプラットフォームです。

 

AiDealは、AIによって、ユーザーのモバイル画面へのタッチやスワイプ方法、カーソルの位置、スクロールの量など、サイト全体でのユーザーのリアルタイムでの挙動に関するデータを分析し、ユーザーが製品やサービスの購入を決定するに至るトリガーを見つけ出し、購入をためらっているユーザーを予測します。その上で、当該ユーザーに対し、カスタマイズされた効果的なインセンティブ(期間限定のディスカウントなど)を付与し、購入に導くことで、収益性を維持しつつ売上の最大化を実現します。

 

このように、AiDealは、データに基づき適切なインセンティブを付与することで、ディスカウントやクーポンなどのコストを抑えながらも売上を増やすことを企図するものです。

AiDealは、eコマース企業のみならず、登録や申込みフォームを書きかけたままにしているユーザーに対して、それを完了させるように促すことも可能であり、活用事例が様々な業種に拡がっています。

 

当社グループは、AiDealをサブスクリプション方式で提供しています。契約期間は一般的には1年又は複数年単位であり、取引量に応じて段階的に定めている定額の料金をお支払いいただいております。

 

 

④ AIXON(アイソン)、AIRIS(アイリス):様々なソースから得られる消費者データをリアルタイムに統合し、直感的なデータの可視化を実現。自動機械学習によって、ユーザーの行動を総合的に予測

 

一般消費者を対象とする企業は、ユーザーデータの分析により得られる知見をビジネスに有効利用したいと考えた際に、(1)データが複数のソースや異なるフォーマットでバラバラに分断されている、(2)正確なAIモデルを構築するには時間とコストがかかる、(3)効果的なマーケティングアクションに繋がるような実用的な知見がデータサイエンティストから提示されない、という課題に直面します。これは、マーケティング・ファネル図でいうと、上から4番目の「ユーザーの予測」にあたります。

 

AIXONは、これらの課題を解決するために設計された、データサイエンス機能を持つAI搭載の予測分析プラットフォームです。これを用いることにより、顧客企業は、自社でデータサイエンティストを抱えることなく、膨大なユーザーデータを統合・強化して、機械学習モデルを用いたシナリオに基づいてターゲットとなるオーディエンス(注2)の行動予測を自動的に行うことが可能となります。また、AIXONは、AIが導き出した結論の論拠を、顧客企業に分かりやすく説明することができます。

 

AIXONには以下の強みがあります。

(1) データの統合と自動処理による導入の容易さ

分かりやすいビジュアル化されたインターフェースを使うことで、簡単にデータをつなぎこむことができます。当社のディープラーニング技術により、異なるソースの異なるフォーマットのデータをリアルタイムで統合し、AI予測モデルが必要とするデータを自動的に抽出し処理することが可能です。

 

(2) 自動でのAI予測モデルの構築

AIXONは、自動でシナリオベースのAI予測モデルを構築することができます。この予測を用いることで、データサイエンティストチームを介さずに、ユーザーの行動を予測することができ、実際のビジネスの問題解決に集中することができます。例えば解約予測などのシナリオを選択すると、AIXONが最適なAI予測モデルを自動的に選択し、更にモデルの強化のためのトレーニングを自動で行います。

AIXONの画面上で予測したい内容等を簡単に設定、調整することが可能であり、予測結果は顧客管理データベースやマーケティングオートメーションシステムなど、顧客が選択した先に即座に出力することができます。

 

(3) 説明可能なAI

AIXONは、顧客が使用するためのプロファイルとAIの意思決定内容をテキストで表示し、AIモデルの中で最も重要な変数と、特定の選択と意思決定が行われる理由を示すことができます。AI分析の要因を説明できることは、AI技術への信頼を醸成し「ブラックボックス」とみなされることを避けるために重要です。

 

 

当社グループは2022年に米国のWoopra,Inc.を買収することにより、Appierの高度なAI予測機能と、Woopra社の直感的なデータ可視化の技術を統合した、AI搭載の次世代カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)であるAIRISの提供を開始しました。

 

AIRISは以下の特徴を持っています。

(1) リアルタイムのデータ取り込み

複数のソースからリアルタイムでデータを取り込み、不備を修正し、整理することで、AIを活用して統合された360度の顧客プロファイルを作成します。

 

(2) ノーコードで瞬時にビジュアル化分析

カスタマイズ可能なビジュアル化機能を備えたテンプレートからインサイトダッシュボードをすばやく構築し、組織全体のデータを可視化しマーケティング担当者がインサイトを得るまでの時間を大幅に短縮することができます。

 

(3) AIを活用した顧客行動の予測

マーケティング担当者は、顧客の行動予測に基づき、ユーザーの優先順位付けやターゲティングを行うことが可能です。正確なセグメンテーションにより、高度にパーソナライズされたエンゲージメントを実現することができます。

 

また、顧客企業がAIXON・AIRISと他のソリューションを同時に活用することでさらに大きなシナジーがもたらされます。例えば、AIXONが予測するユーザーの潜在的な解約リスクや潜在的な購買行動などに対して、AIQUAを活用してユーザーに対するエンゲージメントをただちに実施することで、将来の損失を回避し、売上を増加させることが可能となります。このようにプラットフォーム内の複数のソリューションを利用することにより、顧客企業により大きな価値をもたらし、当社グループの顧客の維持にも貢献します。

 

当社グループは、AIXON及びAIRISをサブスクリプション方式で提供しています。契約期間は一般的には1年又は複数年単位であり、このプラットフォームを使って顧客企業が行った予測の件数及びアクティブユーザーの総数に応じて段階的に定めている定額の料金をお支払いいただいております。

 

 

(注) 1.キャンペーンのバリエーションを複数用意し、それぞれにオーディエンスを振り分けて、結果が良くなるバリエーションを検証するマーケティング実験の手法

2.マーケティングメッセージの受け手

 

[事業系統図]


 

4 【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

主要な事業の内容

議決権の所有割合又は被所有割合

(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

Appier Pte. Ltd.

(注)3、5

シンガポール

379,230千

シンガポール

ドル

グループ会社の統括本社機能

100.0

役員の兼任

銀行借入に対する債務被保証

Appier, Inc.

(注)5

台湾
台北市

44,386千

台湾ドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

銀行借入に対する債務被保証

Appier Japan株式会社

(注)5

東京都港区

34百万円

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

資金の貸付

銀行借入に対する債務被保証

Appier PTY. Ltd.

オーストラリア

シドニー市

1,000

オーストラリアドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Quantumgraph Solutions Private Limited.

インド

バンガロール市

100千

インドルピー

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier India Private Limited.

インド

ムンバイ市

100千

インドルピー

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Hong Kong Ltd.

中華人民共和国

香港特別行政区

100香港ドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Korea Ltd.

大韓民国

ソウル市

80,000千

ウォン

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Beijing Co., Ltd.

中華人民共和国

北京市

1,000人民元

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

神測通金融科技股份有限公司

台湾
台北市

1,000千

台湾ドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Vietnam Co., Ltd.

ベトナム

ホーチミン市

695,100千

ベトナムドン

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Thailand Co., Ltd.

タイ

バンコク市

2,000千

バーツ

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier UK Co., Ltd.

英国

バーミンガム市

100千ポンド

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier US LLC

米国デラウェア州

10千米国ドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Woopra, Inc.

米国

カリフォルニア州

515

米国ドル

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

Appier Netherlands B.V.

オランダ

アムステルダム市

55,000

ユーロ

AISaaS事業

100.0

(100.0)

役員の兼任

 

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメント情報の名称を記載しております。

2.議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数であります。

3.特定子会社に該当しております。

4.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

5.Appier, Inc.、Appier Japan 株式会社、及びAppier Pte. Ltd.については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く。)の連結売上収益に占める割合が10%を超えております。なお、当該会社の当事業年度の主要な損益情報等は、以下のとおりであります。

主な損益情報等(単位:百万円)

 

Appier, Inc.

Appier Japan株式会社

Appier Pte. Ltd.

売上収益

8,242

5,281

28,053

税引前利益

786

133

2,259

親会社の所有者に帰属する当期利益

984

79

3,004

親会社の所有者に帰属する持分

1,476

805

34,831

総資産

4,027

2,709

40,242

 

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2024年12月31日現在

従業員数(人)

708

 

(注) 1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数は、従業員数の100分の10未満であるため、記載を省略しております。

2.当社グループは、単一セグメントであるため、セグメントに関連付けて記載しておりません。

 

 

(2) 提出会社の状況

2024年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

 

(注) 純粋持株会社である当社の事業はAppier, Inc.及びAppier Japan株式会社に所属する従業員が遂行しており、当社に従業員は存在しません。

 

(3) 労働組合の状況

当社グループの労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。