文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
現在はあらゆるサービスやソリューションでAIの活用が進んでおり、急速に進展するAI革命の真只中にあります。AI時代におけるこの大きなチャンスを活かし、当社は研究開発投資とAI学習の経験の蓄積により、高いROIを実現してきました。Appierのビジョンは、”Making AI easy by making software intelligent”であり、この方向性に沿って進んでいます。AIを活用したソリューションを容易に統合し活用することで、顧客企業が競争力を維持するだけでなく、この変革期にあるAI時代における重要なプレーヤーとなることを支援します。
「ソフトウェアをよりスマートに、AIでROIを向上させる」が当社グループのミッションです。当社グループは、AIマーケティングのソリューションをSaaSモデルで提供するパイオニアを自負しており、AIによって自動的にユーザーの行動や興味関心消費者の行動を予測するという特徴をもった、マーケティング及びセールスの活動の全領域を支援するソリューションを提供しています。
(2) 経営環境
インターネット及びモバイルデバイスの普及によるデータの爆発的増加とAIへのニーズ
インターネット及びモバイルデバイスの急速な普及と、その結果生み出された検索や商取引等の膨大なトランザクション・データや画像・動画等の非構造化データ、そしてそれらのデータを保管・処理する技術の飛躍的な進化により、企業がデータに基づいた意思決定を行う必要性は益々高まっていると考えております。
そのような環境の中で登場したAIソフトウェアは、各種デバイス、センサー、アプリケーション等を通じて収集される膨大なデータを統合し、より複雑な分析や処理を行うことを可能にしました。とりわけ、マーケティング領域においては、PCに加えて、スマートフォン・タブレット等のモバイルデバイスを通じて収集されたユーザーに関する各種データを分析、活用することにより、ウェブサイト又はモバイルアプリケーションを通したより効果的なマーケティングが可能となりました。また、AIソフトウェアを用いて企業が保有するカスタマーデータからより有意義な知見を抽出して理解を深めることや、既存の又は潜在的なカスタマー等とのマーケティング・コミュニケーションにAIソフトウェアを活用して、よりパーソナライズされた提案を行い、エンゲージメントを高める取り組みも進んでおります。
AI利用の重要性に対する認識の高まり
近年は様々な事業部門におけるAI利用の重要性に対する認識が高まっており、多くの企業が事業でAIを活用しているあるいは活用する計画があるといわれています。しかし、既にAIを効果的に活用できている企業は少なく、専門技術を有するスタッフが不足していることが、AI導入における最も一般的な課題であると考えられています。
内製AI組織ではなく、AI SaaSソリューションの活用が拡大する可能性
AI人材が不足していることから、企業が自社内に内製のAIデータサイエンティストチームを立ち上げるのではなく、当社のような外部ベンダーの提供するAIソリューションの導入を選択することがさらに増えると予想されます。特に、他のソリューションと比較して導入が容易なSaaSのソリューションが増えると予想しています。
デジタル化の加速
一般消費者やビジネスがデジタルの世界にシフトしていることによって良質なデータが大量に発生しており、新型コロナウイルスの流行を経て、デジタル化が更に加速しました。そのため、AIを導入してデータを分析しようという動きが促進されていると考えております。
AIによる予測がマーケティングやセールスへの投資の中心に
マーケティングやセールスへの投資は投資対効果の予測が難しいですが、AIを活用することでその予測が可能となります。将来的にマーケティングやセールスへの投資はAIを活用したものが中心となると考えています。
デジタルマーケティングにおけるAIによる自動化と効率化
現在、デジタルマーケティングは、担当者が各種の設定を手作業で調整するという労働集約型のビジネスがまだ多く残っています。AIは過去のデータに基づき最適解を予測するので、AIの普及により、デジタルマーケティング組織の効率化とマーケティング成果の向上をもたらす可能性があると考えています。
顧客企業のニーズを満たすことができない既存のソリューション
当社グループのソリューションのような、AIを活用したソリューションは、既存のソリューションでは満足できない顧客企業の課題に対して、例えば以下の点において適切に対処することができると考えています。
既存の多くのソリューションでは、デジタルマーケティング担当者が結果を改善するために手作業でA/Bテストを行う必要があります。AIによる予測を活用することで、手作業の時間とコストを削減し、過去のデータから最適な結論を導き出すことができます。
既存のマーケティング・オートメーション・ソリューションの多くは、所定のルールに基づいて対応するという手法を用いており、ビジネスチャンスを逃すリスクがあります。AI予測を用いてユーザーの将来行動を予測し、ユーザーに対して先回りしてエンゲージメントすることで、そのようなリスクを軽減することができます。
多くの場合、購買をうながすためのインセンティブの付与は、ユーザー全員に一律に付与したり、マーケティング担当者の経験と直感に基づいて特定のユーザーに付与したりしています。この場合、効果的に売上を伸ばすことはできず、また、収益性に悪影響をもたらすことがあります。当社グループのAI予測を用いることによって、購買をためらっているユーザーにだけ限定的にインセンティブを付与することができます。
AI SaaSソリューションの場合、一定の質が担保されており、コストが明確ですが、コンサルティング会社やAIシステム会社によって開発された自社内製分析システムの場合、開発に関わるAI人材の質が一定ではないため、時間とコストがかかり、想定したシステムが構築できないリスクが高くなります。
ファーストパーティーデータ中心の世界におけるAIの重要性の高まり
当社グループの強力なAIソリューションは、リアルタイムに予測を行い、顧客企業がビジネス上の目標を達成するために必要な、ユーザーの獲得、維持、エンゲージメントを支援することができます。このような予測は、外部のサードパーティーデータを利用せず、顧客企業がウェブ、アプリ、CRMデータベースから提供するファーストパーティーデータのみに基づいて行われます。ファーストパーティーデータの品質、関連性、精度は常にサードパーティーデータを上回っていますが、当社グループのソリューションを利用しない場合、断片的でサイロ化した膨大な量のデータを統合して有効活用し、意味のある意思決定を進めることが技術的に困難でした。このため、ユーザーIDやユーザー行動を同期させてユーザーの嗜好を把握するためにサードパーティーデータに依拠するか、膨大なデータを時間のかかる手作業で整理し、過去のデータ分析や経験に基づき意思決定を行う必要がありました。しかしながら、当社グループのAI技術と顧客企業が保有するファーストパーティーデータを利用することで、大量のデータを自動的に統合し、より高い精度でリアルタイムに予測することを通して、ディープラーニング技術を活用しファーストパーティーデータの価値を最大限に引き出すことが可能になります。ファーストパーティーデータの活用はデジタルマーケティング分野において最も重要なトレンドの一つとなっており、当社グループがリーディングプレーヤーとなる高い可能性を持っていると確信しています。
大きなチャンスのある市場
AIの市場規模は今後も成長が予測され、そのうち大半がソフトウェアによるものと予想されております。AIソフトウェアの市場規模は、2027年には3,070億米国ドルに達すると見込まれています(注1)。当社グループは、IDCの定義による「カスタマーリレーションシップマネジメント」セグメントと「データ分析及びAIソフトウェア」セグメントにおける当社グループのTAM(注2)について、2025年に約935億米国ドルまで拡大すると見込んでいます。
(注) 1.IDC research; https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS51345023 (2023年10月31日)
2.Total Addressable Marketの略。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語。
当社グループは利益を伴う成長を重視しており、売上収益を中長期的に成長させるために、新規顧客企業及び既存顧客企業からの安定的な売上収益を拡大させるだけでなく、オペレーティング・レバレッジの改善に伴う営業利益及び当期利益を拡大させることが重要であると考えております。そこで、当社グループにおいては、当該目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上収益及び売上収益成長率、営業利益及び営業利益率を重視し、また、これらに関連する指標として、売上総利益成長率、NRR、月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率に着目しております。
(4) 当社グループの強み
当社グループは、AI分野において数々の表彰を受けています。フォーチュン誌から中国本土を除くアジアを拠点とする企業で唯一の「AI革命を牽引する50社(2017年)」に選定されました。2017年と2018年には、CBインサイツから「世界で最も有望なAIスタートアップ企業100社」に二度選定されました。また、国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、2008年から2020年の間に当社グループの従業員が参加したチームが7回優勝しています。
当社の革新的な機械学習を活用したAI技術は、当社グループのソリューションの基盤となっており、以下の強みがあります。
・深層表現学習技術(注1):当社グループが提供する機械学習を用いたAIテクノロジーのプラットフォームは、深層表現学習技術を有しています。この技術を活用することにより、新たな言語にも展開が容易となっています。
・自動化された機械学習:分析するデータ量が増加すると自動的にシステムとAIアルゴリズムが拡張され、データサイエンティストの人手を介すること無く、AIモデルが自動的に構築されます。
・オンラインリアルタイム学習:従来の機械学習技術とは異なり、リアルタイムでの分析が可能な技術を有しています。これにより、ユーザーの嗜好の変化にも速やかに適応することができ、また、データの適切性や予測結果の正当性に関わる問題を直ちに処理することができます。
・転移学習(注2):新しい顧客、新しい業種、または新しい予測に対応するために、当社グループは先駆的にプラットフォームに転移学習を導入し、AIモデルが学習時間を短縮するために効果的な「コンセプト」の伝達を実現しています。
そして、SaaSの形式でソリューションを提供していることから、安定したパフォーマンスが出すことが可能な堅牢なシステム設計となっています。
(注) 1.データから特徴検出や分類に必要な表現を自動的に発見し、テキストだけでなく画像や動画のソースからも深い意味を抽出することができる技術
2.ある領域で学習したAIモデルを別の領域に活用し、効率的にAIモデルを学習させる技術
当社グループの共同創業者の1人であり代表取締役CEOである游直翰は、米国スタンフォード大学で修士号を、米国ハーバード大学で博士号をそれぞれ取得している世界レベルのAIサイエンティストです。大規模システムに深い経験を持つ共同創業者兼取締役CIOの蘇家永は、当社グループの技術と製品開発を牽引しています。さらに、当社の共同創業者兼取締役COOの李婉菱は、免疫学者や医学分野の研究者としての経歴を持ち「オペレーションへの科学的アプローチ」をもたらしています。
また、当社グループの技術部門には研究に強いバックグラウンドを持つシニアのAIおよびデータサイエンティストが多数在籍しています。当社グループの役員又は従業員によるトップジャーナル、カンファレンス、ワークショップ(注3)における発表論文数は300を超え、国際的なデータ・マイニング・コンテストにおいて実績を有する(注4)者を多数擁しているほか、エンジニアの多くがAI、ビッグデータ又はコンピューターサイエンスの領域における博士号又は修士号を有しています。これらの人員により、当社グループには、AI業界の課題に立ち向かうため、向上心、オープンマインド、ダイレクトコミュニケーションを大切にするカルチャーがあります。
また、ビジネスの執行面においても、ソフトウェア及びテクノロジー分野を含む大手企業で営業や財務の上級管理職を務めた経験のある多数のメンバーが在籍しているほか、他の取締役やアドバイザーの専門的な知見も活かせる強みを持っています。
(注) 3.アルバータ大学による定義
4.国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、当社の従業員が参加したチームが7回優勝しております。
③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果

当社グループでは、相互に補完的であり、かつ緊密にリンクした複数のソリューションをプラットフォームとして提供しており、強力なネットワーク効果を生み出しています。
すなわち、まず、顧客企業が当社のソリューションを採用すると、顧客企業の利用に応じて当社のAIが学習するデータ量が増加します。これにより、当社のAIアルゴリズムの精度が向上し、顧客企業のROIが高まることが期待されます。そのため、顧客企業は当該ソリューションをより一層利用するようになるとともに、別のソリューションを利用する意欲が強まることが期待されます。
そして、当該顧客企業に当社グループの提供する別のソリューションが導入され、その利用が増えることで、当社グループのAIが学習するデータの種類が増え、網羅性が高まることにより、AIアルゴリズムの予測精度が更に向上します。
このようなネットワーク効果は、多様な異なる業種の様々な利用方法に対応してきた当社グループのソリューションの経験の蓄積から生まれたものであり、他社では短期間には再現できないものであると考えています。
また、デジタルマーケティングやセールスの領域で実証してきたように、最先端の機械学習を活用したAIモデルを、既存のソフトウェアやソリューションに適用させることで、これまででは実現できなかったような新たなソリューションを提供してきました。このように、当社グループはソフトウェア業界を変革する能力を有していると考えています。
既存顧客からの利用拡大による好循環に加え、営業生産性の向上も継続しています。大規模なエンタープライズ顧客にフォーカスする戦略により、営業担当者当たりの売上収益を増加させてきました。それぞれの顧客が利用量を増やし、より多くのソリューションを利用することで、1顧客当たりの売上総利益を増加させます。そして、それは販売及びマーケティングへ投資のROIを高めることにつながり、さらに高い生産性を実現します。高い営業生産性と1顧客当たりの売上総利益の上昇は、更なる好循環をもたらします。
当社グループは、内製でのプロダクト開発に加えて、既存プロダクトと補完的な関係にあるプロダクトを持つ企業を戦略的に買収し、プロダクトのポートフォリオを拡大してきました。
2018年にQuantumgraph Solutions Private Limited.を、2019年にEmotion Intelligence株式会社を買収し、両社のソリューションを当社グループの最先端のAI技術で再設計・改良することによりAIQUAとAiDealを完成させ、顧客企業を増やしています。2021年には邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)を買収し、同社の提供するBotBonnieを複数の言語にローカライズして販売地域を拡大しました。BotBonnieはオムニチャネルの会話型マーケティング・プラットフォームであり、既存ソリューションとの間にシナジーがあり、顧客企業のマーケティング利便性を向上させています。
また、当社グループは2022年10月に米国のWoopra,Inc.を買収し、同社が保有していたソリューションとAIXONを組み合わせることにより、2022年12月にAIRISの提供を開始しました。AIRISは、AppierのAIによる予測アプローチと、Woopraの直感的なデータの可視化を組み合わせた、AI搭載の次世代カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)です。直感的なリアルタイムデータの可視化と予測により、インサイトを得るまでの時間を大幅に短縮することができます。
当社グループは、まず進出する領域を特定し、自社のソリューションや事業展開地域を補完する適切なターゲットを体系立てて探し出し、買収したソリューションを自社のシステムと融合させ、最先端のAI機能を活用して再設計・改良し、顧客企業を増やしてきたという実績があります。今後も同様の手法で、新製品の開拓や地域的な拡大を柔軟に実行できると考えております。
当社グループには、ソリューションを様々な業種に適応させ、異なる国・地域で事業を拡大していくことができるという強みがあります。創業以来、当社はグローバルに事業を拡大することに成功し、15ヵ国・17の都市にオフィスを構えています。北東アジア地域(日本及び韓国)、米国及びEMEA地域、グレーターチャイナ地域(中国、台湾及び香港)の各主要地域では、継続的な成長を示しています。中でも、米国及びEMEA地域では他の地域より高い成長を示しています。それぞれの国・地域に合わせて体系的に事業を拡大することができるよう、ノウハウ、インフラ、人材を整えており、今後のグローバル展開でも積極的に活用してまいります。
当社グループでは、主としてEコマース、デジタルコンテンツ、その他インターネットサービス、消費財ブランド&金融サービス等を中心とする幅広い業種の顧客企業を多数有しており、多様な業界の著名な企業に対して当社のプラットフォームを提供しています。2024年12月31日現在、当社の顧客企業は1,872の企業グループとなっており、2023年12月31日時点の1,625の企業グループから増加しています。
当社グループでは、国際的かつ経験豊富なセールスチームが、アジア太平洋、米国及び欧州の主要な市場に展開しています。強固な市場獲得戦略により、当社グループは事業を拡大し、プロダクト利用継続率の高い顧客企業基盤を構築することが可能となっています。さらに、当社グループのプロダクトを複数利用する顧客企業の数は大きく伸びています。顧客企業が当社グループのプロダクトを、長く利用し、その過程でAIがさらに多くのデータを学習し予測精度が向上することにより、必要不可欠なプラットフォームになると考えております。2024年12月期において、月次顧客解約率(注5)は0.389%、月次顧客収益解約率(注6)は0.292%となっています。また、既存顧客からの売上収益は拡大し、NRRは118.7%(米国ドルベース)という高い水準になっています。
(注) 5.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)の数に対する当月に離脱した顧客企業数の割合
6.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)からの米国ドル建ての売上収益に対する当月に離脱した顧客企業からの米国ドル建ての売上収益の割合
月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率
前記「③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果」に記載したように、当社グループのプロダクトには、顧客企業の使用量の増加や別のプロダクトの追加購入を促すネットワーク効果があります。「ランド・アンド・エクスパンド」手法(まずは顧客企業に1つのプロダクトを利用していただき、その後、別のプロダクトへの利用拡大を促すこと)が有効に機能しており、2024年12月期のNRRは118.7%(米国ドルベース)となっています。
また、当社グループでは、安定した収益源であるリカーリング売上収益が増加傾向にあり、2024年12月のARRは36,259百万円で、2023年12月の28,641百万円と比較した成長率は26.6%となっています。また、2024年のリカーリング売上収益比率は95%以上となっています。
さらに、当社グループのARPC(注7)は2023年の15.9百万円から2024年12月期の17.8百万円へと成長し、これは当社グループのプラットフォームを継続して利用する顧客企業によるプロダクトの利用が増加したことを反映しています。
また、CrossXについては、多くの顧客企業のデータを学習することでAIアルゴリズムが自動で予測の精度を高め、より少ないメディアコストで多くのユーザーを獲得できるようになることから、売上総利益率の改善が見込まれる仕組みとなっています。さらに、売上総利益率が比較的高いCrossX以外のプロダクトの顧客企業基盤を拡大することもまた、当社グループの売上総利益率の向上につながります。加えて、当社グループにおいては、収益基盤が拡大するにつれて、販売及びマーケティング費用並びに一般管理費の売上収益に対する割合は減少すると想定しており、売上収益の増加に伴い営業利益率を改善しうるコスト構造になっています。
(注) 7.Average Revenue Per Customerの略。1顧客当たりの平均売上収益を意味する。ある年度の売上収益を当該年度末の顧客企業数で除した、顧客企業1社当たりの平均年間売上収益(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業及び対応する売上収益を除く。)
8.上記に記載の2023年12月期及び2024年12月期に係る各数値は未監査のものです。
AI技術の革新への投資を継続することは、当社グループの重要な優先事項です。研究としてのAIには長い歴史がありますが、ビジネスとしてのAIはまだ黎明期にあります。当社グループは、AI研究のバックグラウンドを持つ経営陣が率いるAI企業のパイオニアとしての自負を持って、最先端の研究を現実の世界に応用するために、その強みを発揮し続けています。
また、近年は生成AIの技術を取り入れた新たなソリューションの開発にも注力しています。マーケティング領域において、これまでAIは、より精度の高い予測を行うことに重点を置いてきましたが、生成AIの出現により、新たな事業機会が生まれています。この傾向は、マーケティングのアイデアやコンテンツを生み出す生成AIの能力が受け入れられつつあることを反映しています。例えば、生成AIは、自動コンテンツ生成、マーケティング文章の生成、自動的なアイデアテストを可能にすることで、マーケティングに変革をもたらします。
当社グループの新規顧客獲得戦略は、緻密なセールスの分析と、トップダウンでの市場分析に基づいています。AIの受容度、各業界における成功事例の有無、販売効率の予測を踏まえた上で、地域参入・顧客獲得戦略を策定し、優先順位をつけています。
また、隣接する業界や同業界で似た課題を抱える企業に対して、当社グループのAI技術によりAI活用の成功事例を適用させることで、潜在的なターゲット顧客を拡大していきます。これにより、Eコマースやデジタルコンテンツなどの既存業種での活用事例を増やすとともに、消費財や金融業界などの新たな業種での活用事例を拡大し、さらに幅広い業種への参入を可能にしています。これらによって、顧客基盤の拡大が可能となります。
③ 既存顧客企業からの売上収益の増加
当社グループは、常に価値を提供して顧客のロイヤルティを高め、顧客基盤を拡大し強固にすることに注力しています。
顧客が、当社グループのソリューションを長く使うほど、ネットワーク効果が強まります。顧客の大量のデータを学習することで、時間の経過とともに当社グループのAIアルゴリズムとAIモデルの精度が向上し、当社グループのソリューションは一層効率的になります。その結果、顧客にとってより大きな価値が得られることから、当社グループのソリューションへの依存度が高まる傾向にあります。このようなネットワーク効果により、当社グループは、既存顧客に対して、時間の経過とともにより多くの価値を提供してきた実績を有しています。
当社グループは、当社のソリューションの利用拡大によるメリットを顧客に実感していただき、より多くの契約をいただくために、営業力をさらに強化していきたいと考えています。これまで、既存顧客からの収益成長の大部分はアップセルが占めてきましたが、ソリューションの拡大に伴い、クロスセルも増やしてまいります。
計画的な海外展開は当社グループの強みであり、市場の拡大には今後も注力していきます。アジア太平洋地域は引き続き当社の最重点地域であり、そこでの地位をさらに強化していきたいと考えています。特に、日本と韓国のような大規模でデジタル技術の浸透した市場では、シェアを高める余地があると考えています。これらの国では、既に取引のある業種でのシェアを継続的に拡大しながら、新たな業種への進出に注力しています。
2021年より本格進出を開始した米国・欧州における売上収益比率は拡大しており、成長モメンタムの加速に貢献しています。また、デジタル経済大国である中国では、顧客企業の海外展開が加速しており、当社グループの成長に貢献しつつあります。
当社の差別化されたAI技術と強力な業務遂行能力を活用して、アジア太平洋地域の国々及び米国・欧州での成功パターンを再現し、他の地域への更なる進出とグローバルな成長を継続してまいります。
当社グループは、AIを活用したエンタープライズ・ソフトウェアの革新を実現するための重要な施策として、自社のAI技術によって既存ソリューションの再設計・強化を行うというM&A戦略を考えています。新たな業種や地域をターゲットにした新たなソリューションを開発しようとするときには、まずは既存ビジネスとのシナジーが期待できる隣接領域から始めます。当社グループが追求している方向性と同様のビジョンを持った素晴らしいパートナーシップの機会があれば、技術とソリューションの強化の観点からM&A戦略の実行の可能性を検討します。今後も、これまでの買収実績に裏付けられた、当社のAI技術が重要なシナジー効果を発揮するような、戦略的な買収・投資の機会を体系的に選択してまいります。
当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
当社グループの事業領域であるAI関連の技術は、将来的な利用可能性の高さから世界的に研究開発が活発に行われております。このような事業環境の下で当社グループが事業を継続的に拡大していくには、様々な新技術に適時に対応していくことが必要であると認識しております。
そのためには、さらなる優秀な人材の確保及び研究開発への投資、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等が不可欠であると認識しております。優秀な人材を確保し積極的に採用するとともに、研究開発への投資を継続的に実施し、より強固な開発体制の構築に努めてまいります。
当社グループのプロダクトはエンタープライズ向けであり、その販売には顧客企業の経営課題の適切な理解と、それに基づき適切にAIプラットフォームを活用したソリューションの提案が必要となります。また、見込み顧客の獲得や、契約獲得後のオンボーディング、既存顧客向けの高品質なカスタマーサクセスの提供も重要です。このような認識に基づき、当社グループでは優秀なマーケティング・営業・カスタマーサクセス人材の採用と、適切なトレーニングの提供による生産性の向上に努めてまいります。
また、当社グループの最大の売上収益を占めるソリューションはCrossXですが、引き続き、他のソリューションの販売も強化し、ソリューション別にバランスの取れた売上収益構成を目指してまいります。
当社グループは、既存の拠点に加えて、アジア全域及び欧米への更なる展開を企図しております。そのため、多数国における事業展開に見合った経営管理体制の構築・強化を図るとともに、財務報告の適切性確保、リスク管理及び内部統制の強化等が重要な課題であると考えております。このため、子会社管理を統一的に実施するべく、人材の採用を含むバックオフィス業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
当社グループは、顧客企業へのサービス提供の遂行過程において、顧客企業の機密情報や顧客企業のユーザーに関する情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を徹底することが信頼確保の観点から重要であると考えております。現在、社内にて個人情報やデータの保護に関する各種の方針を設定し、当社グループ内に周知し情報管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施等を継続して行ってまいります。
当社グループは製品・サービスの開発、顧客企業基盤の拡大、事業領域や市場の拡大を重視しているため、今後も積極的に投資を行っていく方針です。直接金融、間接金融を活用し、資本市場とのコミュニケーションを深め、事業展開に見合った財務基盤の強化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループはサステナビリティに関する指針として「ESGコミュニケーション戦略」を作成し、当社ウェブサイトにて開示しています。また、気候変動への対応を強化するため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に則り、気候変動がもたらすリスクと機会を特定・分析し、対応する行動計画を定めています。これらは取締役会に報告され、取締役会はTCFDレポートのドラフトを確認し、当社グループの目的、戦略、ビジョン、文化に合致していることを確認しています。当社グループは、2024年7月にTCFD提言に基づく情報開示を行いました。
(1) 気候変動
当社グループは、リスクシナリオ分析の結果に基づき、気候変動が当社グループの事業に与えうる影響を認識し、事業に直接影響を与えるリスクと機会の管理に関して、透明性と主体性が重要であると考えています。
以下の表では、短期(0-3年)、中期(3-10年)、長期(10年以上)の各時点において、当社グループの事業に影響を与える可能性のある気候関連のリスクと機会およびこれらを管理し影響を軽減するための戦略を特定しています。
(2) 人的資本
デジタルソリューションプロバイダーである当社グループにとって、従業員は最も大切な資産です。当社グループが提供するソリューションの開発には、AIに関する集約された専門知識が必要です。競争の激しいハイテク業界において、スキルの高い従業員を採用し維持することは、当社グループにとって最優先の課題です。当社グループは、各種の福利厚生や支援制度を通じて、従業員の福祉に配慮しています。また、当社グループの人的資本管理は従業員一人ひとりを尊重しており、性別、国籍、人種等の個人の能力とは関係のない属性にかかわらず、コミュニティの全員に均等な機会を提供する企業文化を有しています。さらに、AI研究の発展を積極的に後押しするために、教育機関と連携して若手人材への助成を行っています。
当社グループが重視するトピックおよび具体的な取り組みは以下のとおりです。
当社グループは、事業活動に関連する主要な気候関連リスクと機会を特定するために、ベンチマーク、評価、特定という3つのステップにより、包括的なリスク管理プロセスを実施しています。まず、「ベンチマーク」プロセスにおいては、国内外の同業・競合他社が開示するESG情報から、IT業界が直面する可能性のある気候関連リスクと機会に関する情報を収集します。「評価」の段階においては、当社グループの様々な部門の従業員が、「ベンチマーク」において収集したリスクと機会の発生可能性と影響の大きさを評価するためのフォームに入力します。「評価」プロセスの結果、当社グループにとって最も重要な気候関連のリスクと機会が「特定」されます。そして、リスクと機会のマトリックス表を作成し、それぞれのリスクと機会が当社グループにどのような影響を与えるかを可視化します。今後もこれらのリスク・機会のモニタリングと評価を行い、対応策や行動計画を充実させてまいります。
(1) 気候変動
当社グループは日本、台湾、韓国、シンガポールを含む世界各地の主要拠点のスコープ1、2、3をカバーする温室効果ガスに関する調査を行い、2024年12月期の総排出量は下表の通り1,847.9トンメトリックトンCO2eでした。温室効果ガスの主な排出源は、物品・サービスの購入で全体の60.0%を占め、次いで電力の購入が28.3%を占めました。現段階では、主にスコープ2の温室効果ガス削減に焦点を当てています。
(2) 人的資本
当社グループは15ヵ国に17のオフィスを構えており、性別、宗教、人種、年齢、配偶者の有無等の属性に関わらず、個人のパフォーマンスに基づき昇給や昇進等の機会を平等に提供しております。
また、当社の取締役会は2つの国籍(台湾及び日本)からなる多様なメンバーにより構成されており、業務執行取締役のうち1名は女性です。従業員も多様な国籍から構成されており、女性比率は40%を超えております。
このように、当社では既に社内の多様性が確保されていることから、コーポレートガバナンス・コードに規定されている「測定可能な目標」を設定しておりません。当社のCode of Conduct(行動規範)においては、採用や昇進等において国籍、性別、年齢等において差別を行ってはならない旨を定めており、社内での研修等を通して周知しております。数値目標は設定しておりませんが、今後も社内の多様性の確保を重視して参ります。
※有価証券報告書提出日現在の取締役会の女性比率は25.0%です。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきまして、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。
(1) 市場の成長性に関するリスク
当社グループの成長戦略の成否は、マーケティング領域におけるAI SaaSソリューションに対する需要が伸び続けることに大きく依存しています。企業によるAIを活用したマーケティングの市場は、北東アジア地域、米国及びEMEA地域、グレーターチャイナ地域をはじめとする当社グループが事業を展開している地域を含め世界的に新しいため、規制(特に個人情報保護に関する法規制)、景気動向、AIをマーケティングに使用すること並びに個人に関するデータを収集、分析及び利用することに対する企業の意識や需要、かかるソリューションに対する企業、ユーザー及び規制当局の評価等により、期待どおりに成長しない可能性があります。
また、当社グループの成功は、クラウド型のソフトウェア・ソリューションの普及、とりわけSaaS形式のソリューションの普及に依存していますが、当社グループが事業を展開するマーケティング領域において、企業によるかかるソリューションの需要が今後も増加し続けるかは不確実です。とりわけ、多くの企業は、既に多額の費用と人材を投入してオンプレミス型のソフトウェア・ソリューションを自社の事業に組み込んでおり、移行費用への懸念等により、クラウド型のソフトウェア・ソリューションを導入することに消極的となる可能性があります。
これらの要因により、当社グループがターゲットとする市場が拡大しない場合や、拡大の速度が当社グループの見込みよりも緩やかである場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループが属するAIマーケティング市場は未だ成熟しておらず急速に発展している段階にあり、また、顧客企業によるマーケティング活動の季節性その他の当社グループのコントロールの及ばない様々な要因に左右されるため、当社グループの売上収益は大きく変動する可能性があり、また、不測の追加費用や損失が発生する可能性があります。これらの要因により、当社グループの業績に重大な影響を与え、将来利益を計上できない可能性があります。
当社グループの売上収益の大部分は、北東アジア地域、米国及びEMEA地域、及びグレーターチャイナ地域から計上しており、当社グループの売上収益は過去増加しているものの、当社グループの業績はこれらの地域の経済情勢の影響を受けます。その見通しは不確実性が高く、様々な要因によって悪影響を受ける可能性があります。例えば、地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの要因等により、これらの地域の経済情勢が悪化した場合、当社グループのプロダクトに対する需要が減少し、新規顧客企業の獲得及び既存顧客企業の維持に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きく悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの将来の成長は、新規顧客企業の獲得及び既存顧客企業の維持の成否に左右されます。当社グループが新規顧客企業を獲得できるか否かは、当社グループのソリューションの品質・価格・評判、競業他社の戦略や、当社グループのブランドやマーケティングの有効性等の要因に依存しており、今後も顧客企業を獲得し続けることができるかは不確実です。特に、当社グループの顧客企業基盤は多様な業界に及ぶものの、現時点ではEコマース及びデジタルコンテンツの業界の占める割合が高く、これら以外の業界に顧客企業層を拡大するにあたって、当該業界における顧客にとって魅力的な形で当社グループのソリューションを開発又は展開できない可能性や、当該業界における既存の競合企業との実質的な差別化ができない可能性、当該業界における新たな規制に対応するための追加の費用が発生する可能性等があります。加えて、当社グループは新規顧客企業の獲得のために多額の販売及びマーケティング費用を支出しなければならない可能性があり、また、支出に見合った売上収益の増加を実現できる保証はありません。
また、当社グループの売上収益の大部分は既存顧客企業から継続的に発生するリカーリング型の売上であり、既存顧客企業の維持及び単価の上昇は当社グループの業績に重要な要素となりますが、これまでと同水準の月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率等を保つことができるとの保証はありません。
新規顧客企業の獲得及び既存顧客企業の維持が当社グループの見込みどおりにいかない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社は、TAMについて、一定の仮定及び前提の下、TAMについては顧客分析のためのAIソフトウェア市場の規模及び成長率についてのIDCによる推計を用いて推計しています(前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境」をご参照ください。)。当社は推計に当たり当社が信頼できると考えるデータを用いておりますが、推計値の正確性には限界があります。かかる将来予想に用いられたデータ、仮定又は前提が不正確又は不適切であった場合、実際の当該潜在的市場の規模は推計より大きく下回る可能性があります。
さらに、仮に潜在的市場の推計値が正確であった場合でも、当社グループのソリューションがすべての企業のニーズに応えることができるという保証はなく、また、当該潜在的市場の機会を捉えて当社グループが順調に事業を拡大できない可能性があります。
(6) 事業のグローバル展開に伴うリスク
当社グループは、収益機会の拡大に向けて、今後はアジア全域をカバーするとともに米国及び欧州においても事業の展開を拡大することを企図しています。
複数の国・地域における事業の継続及び拡大にあたっては、現地における人材採用等を行う必要がありますが、かかる採用等を計画通りに実施できる保証はありません。また、言語、地理的要因、法制・税制を含む各種規制(特に、個人情報その他のデータやAIの利用に関連する現地の法令)、経済的・政治的不安定、文化・ユーザーの嗜好・商慣習の違い、為替変動、データの使用可能性等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスク等が存在します。当社グループは既に世界各国の15の国・地域で事業を展開しておりますが、このようなリスクに適切に対処できない場合、当社グループの事業のグローバル展開に影響を及ぼし、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、既存のソリューションの強化と新たなソリューションの開発に重点を置いており、今後も研究開発人員の採用等に引き続き多額の投資を行うとともに、顧客企業基盤の拡大のために販売・マーケティングにもさらなる投資を行っていく予定です。投資の実施に際しては、投資から得られるリターンを重視しています。当社グループは、歴史的に多額の研究開発費を投下してきており、今後も収益性の向上に努めながらも、投資を継続する方針です。
しかし、サービスの開発・改良サイクルの性質上、投資を行う時点と、当該投資により開発・改良したサービスを顧客企業に提供することができるようになる時点との間には時間差が生じる可能性があり、開発・改良したサービスに対する顧客企業の需要は、当初の見込みを大幅に下回る可能性があります。その場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(8) 当社プロダクト及び技術革新等に関するリスク
マーケティング領域におけるAI SaaSソリューションは急速に進化しており、当社グループが成功するためには、これまでと同様に、既存のプロダクトの品質をあげること及び高性能な新しいプロダクトを開発し続けることが必要です。新たなプロダクトの開発や既存のプロダクトの改良において、AI等の技術の進歩に追いつくことができないこと等により当社のプロダクトが消極的な評価を受けた場合や他社に対する競争優位性を失った場合、当社グループの顧客企業基盤の維持・拡大及び利用プロダクトの拡張に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、当社グループのプロダクトには問題がない場合であっても、他社のAI関連プロダクトに問題が生じた場合、AI関連プロダクト全体への信頼性やAI関連プロダクト市場の成長性に悪影響を与える可能性があります。
当社グループが事業を成長し続けるためには、顧客企業の需要を正確に把握し、適時適切に対応して新たなプロダクトの開発や既存のプロダクトの改良を行う必要があります。変化する顧客企業の需要に迅速に対応できず、当社グループのプロダクトを継続的に開発・改良することができない場合、特定の販売地域の顧客企業の需要等に合ったプロダクトを導入できない場合、又は当社グループの新たなプロダクトを顧客企業が導入するのに過度に時間や手間を要する(若しくはそのように認識される)場合、顧客企業基盤の維持・拡大及び利用プロダクトの拡張並びに新たなプロダクトの導入に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(10)競合に関するリスク
当社グループが事業を営むマーケティング領域におけるAI SaaSソリューションの市場は比較的新しく、既存又は新規の競合他社との間での競争は今後ますます激化することが予想されます。現在又は将来の競合他社は、当社グループよりも長い事業歴、より豊富な財源や技術力、より効率的な事業モデル、より高い知名度等を有している可能性があります。さらに、それらの競合他社が、当社グループの顧客企業(潜在的顧客企業を含む。)との間に強固な関係を有していたり、市場に関する広範な知見を有していたりする可能性もあります。
また、当社グループのプロダクトの競争力は、高度なAIを提供する能力、顧客企業の目標達成に対する有効性、導入における迅速さ及び使用における容易さ、カスタマーサポートの質と信頼性、使用にかかる総コスト、迅速な経営判断、ブランド認知度等、多くの要素に依拠していますが、当社グループがこれらの要素における競争力を維持できるかは不確実性が伴います。
さらに、競争の激化により、当社グループは、受注の減少や市場シェアの低下が生じる可能性に加え、価格を引き下げ、価格体系を変更することが必要となる可能性があります。
当社グループがこれらの競争に打ち勝つことができない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、2014年6月にCrossXの提供を開始し、その後もサービスを拡大してきましたが、事業の歴史は浅く、またマーケティング領域におけるAI SaaSソリューションの市場も急拡大してきた新しい市場であることから、当社グループの事業が今後もこれまでと同じ速度で成長する保証はありません。また、今後、事業の拡大に合わせて必要な研究開発人員や営業人員等の人材を確保できる保証はありません。
一方、当社グループの事業が急速な成長を続ける場合、経営管理、内部管理、従業員の管理等を含む事業運営に大きな負担が生じる可能性があり、当社グループがかかる負担の増大に適切に対処できなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主力プロダクトであるCrossXは、利用量ベースの価格体系で顧客企業に提供される仕組みとなっています。これらの仕組みの下では、当社グループの売上収益は、顧客企業から割り当てられるマーケティング予算の金額に基づき決まりますが、どれほどの予算を獲得できるかは当社のAIアルゴリズムの正確性にも依存しています。当社のAIアルゴリズムが顧客企業に対して十分なROI向上の成果を出せなかった場合には、当社グループの売上収益は減少し、その結果、利益率に悪影響を与えることになります。
また、当社グループの他のプロダクトについては、一定程度使用量が増えるごとに段階的に価格が引き上げられる方式を含む月額又は年額課金型のサブスクリプション方式を採用しています。この方式の下では、期間中に高頻度で利用する顧客企業が当社の想定よりも多い場合には、サーバー費用の増加により利益率が悪化する可能性等があります。
さらに、将来的に価格体系や単価の変更や引き上げを行う際、それが顧客企業に受け入れられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの売上収益の一部は、代理店を通じての販売によるものです。代理店と協力して顧客企業の獲得を行い、最終顧客と直接のビジネスを行っておりますが、当社グループとこれら代理店との関係が悪化した場合や、代理店が当社グループのソリューションを販売するための販売手数料を値上げした場合等には、当社グループの収益性が低下する等、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループが今後新たな地域へ販売を拡大する際にも代理店の販路に依拠する可能性がありますが、かかる代理店が当社と競合する他社の製品やサービスを優先的に販売する可能性があります。さらに、代理店が当社グループのソリューションについて顧客企業に誤った説明をしたことや、法令等に違反したことにより、訴訟を提起され又は当社グループの評判が損なわれる等の可能性があります。これらの要因により、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループのプロダクトは、外部クラウドサーバー(Amazonが提供するAmazon Web ServicesやGoogleが提供するGoogle Cloud Platform等)を使用して顧客企業に提供しており、かかるソリューションの提供には、外部クラウドサーバーの安定的な稼働が不可欠となっています。しかし、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等や当社グループの想定していない事象の発生により外部クラウドサーバーが停止した場合や、コンピューター・ウイルスやハッカーの侵入その他の不具合等によりシステム障害が生じた場合、又は契約が解除される等により外部クラウドサーバーの利用が継続できなくなった場合には、顧客企業への損害の発生、当社グループの評判の毀損や当社グループによる追加費用負担の発生等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループが提供するソリューションの利用は、当社グループの顧客企業によるインターネットの通信環境に影響を受けます。当社グループが依拠するインフラとしてのインターネットに障害等が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
また、ネットワーク事業者によるインターネット接続サービスの内容や価格の変更、法規制等の動向によって、当社グループが提供するソリューションの質が低下し、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループのプロダクトでは、現時点においては、日本の個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」といいます。)上の「個人情報」をユーザーの同意なしには取得しておりません。しかしながら、当社グループによるかかる情報の利用が違法又は不適切であると主張された場合、顧客企業の信用を喪失する等当社グループの評判が悪化し、又は当社グループが業務停止を含む規制上の措置・制裁や訴訟の対象となる可能性があり、顧客企業の喪失に繋がるおそれがあります。
世界的に個人情報の保護に関する規制は厳しくなっており、今後規制が大きく変更される可能性があります。また、2020年6月に成立した改正個人情報保護法は、主にデータ主体の権利の強化や事業者の義務の厳格化、データの利用に関する新たな規制の導入を意図しております。現時点ではかかる改正法が当社の事業に著しい影響を及ぼすことは想定しておりませんが、これらの規制の変更が行われた場合やかかる改正法の施行により、対応に多額の費用を要し、当社プロダクトのクオリティが低下し、又はAIプラットフォーム若しくはマーケティング領域におけるAI SaaSソリューションに対する意識・需要等が変化することになれば、当社の事業成長力が損なわれ、結果として、当社の事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループのAIプラットフォームでは、ユーザーに関する個人情報又は個人識別情報並びにそのオンサイト及びその他のオンラインにおける活動に関する情報を含む、ユーザーのデータの保管、転送及び処理が行われます。当社グループは、セキュリティ侵害等の脅威からこのようなデータを保護するために、外部サービスを利用する場合はセキュリティレベルの高い大手のサービスを利用することに加え、ウイルスソフトを搭載する等の対策を行っているものの、当社グループがそのリスクを完全に除去できる保証はありません。当社グループのAIプラットフォームに不正アクセスやセキュリティ侵害等があった場合、個人情報の漏えいやデータの喪失、当社グループの評判の毀損及び事業機会の喪失、当局による調査や訴訟への対応、損害賠償や罰金等による多額の費用の負担等につながる可能性があります。
当社グループのシステム及び外部サービスプロバイダのシステムは、コンピューター・ウイルスやサイバー攻撃のリスクにさらされており、当社グループの認知度や市場シェアが高まった場合、それらの標的となるリスクも増大する可能性があります。不正アクセスやサイバー攻撃の手法は日々変化し、高度化しており、当社グループ又は外部サービスプロバイダは全ての不正アクセスやサイバー攻撃を予測又は防止することができない可能性があります。
また、セキュリティ侵害は、当社グループの従業員又は外部サービスプロバイダその他の当社グループのシステムやデータにアクセスすることのできる外部企業の従業員の故意又は不注意による違反等、技術以外に起因する問題によっても発生する可能性があります。当社グループは個人情報等の取扱いについて、個人情報の保護に関する社内規則や取扱いの方針及び手続き等の社内ルールを整備し、適切な運用を義務づけておりますが、このような対策にも関わらず、当社グループの人為的なミスその他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社グループが損害賠償責任等を負う可能性や顧客企業からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、その結果、当社グループの事業及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループは、ソリューションの提供やデータの保管につき第三者やクラウドの基盤に依存していることから、不正アクセス、サイバー攻撃、顧客企業データの悪用の防止につき、第三者のセキュリティ対策に依存している部分があります。当社グループは、一定の情報セキュリティに関連する損害賠償責任に対応する保険に加入しておりますが、当該保険は、当社グループが被る可能性のある全ての責任を補償するには十分ではなく、セキュリティ侵害その他個人情報に関する事故が発生した場合、当社グループの評判、事業、業績、財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループの継続的な成長は、当社グループが設計・構築するAIプラットフォームのパフォーマンスに依存しており、継続的にAIアルゴリズムの改善を行っておりますが、当社グループのプロダクトの基礎となる技術基盤は複雑であるため、重大な誤謬を含んでいる可能性があります。当社グループのプロダクトに重大な誤謬が見つかった場合、当社グループの評判、事業及び業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループが提供するプロダクトは、インフラの変更、新機能の導入、人為的な若しくはソフトウェア上の誤謬又はその他のセキュリティ関連の事象を含む様々な要因によって、パフォーマンスの遅延、中断、停止その他の問題を引き起こす可能性があります。顧客企業が満足できる水準のサービスを受けられない場合、顧客企業は当社グループのプロダクトの利用を中止する可能性があり、その結果、当社グループの事業及びプロダクトは、評判の低下、市場からの敬遠、競争力の喪失、顧客企業からの損害賠償請求等の結果を招く可能性があります。
さらに、当社グループのプロダクトは、外部のクラウドサーバーを使用しております。その結果、当社グループの事業活動は、これらの外部クラウドサーバーのプロバイダが自然災害、電力やネットワークの障害、サイバー攻撃等から当該プロバイダ自身のサービスを守ることができるかどうかによっても左右されます。当社グループがプロバイダと結ぶ契約が終了した場合やサービスが失効したりシステムその他のリソースが損傷したりした場合、当社グループのプラットフォームが使用できなくなる可能性があり、また、新たなプロバイダを探すのに時間がかかる場合や追加費用が必要となる場合には長期にわたって当社グループのプラットフォームを使用できなくなる可能性があります。これらの要因により、当社グループの売上収益が減少し、当社グループに対して顧客企業から損害賠償請求等が提起され、当社グループの評判が損なわれ、又は顧客企業が不満を感じて当社グループとの契約を終了する可能性があり、その結果、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に重大な悪影響が生じる可能性があります。
当社グループのプロダクトは、継続利用することでより高い効果が期待されるため、契約後も顧客企業に対して適切なフォローアップを行うことで利用の継続を促すことが重要であると考え、当社グループは、顧客企業との契約後も技術及び運用上の問題について継続的にカスタマーサービスを提供しています。しかし、顧客企業のカスタマーサポートに対する需要の増加に迅速に対応することができない場合や顧客企業のニーズに合った効率的かつ迅速で質の高いサポートを提供できない場合又は市場からそのように認識される場合、顧客企業が当社グループとの取引をやめ、又は潜在的な顧客企業に当社グループのプロダクトを推薦しない可能性があり、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社は、既存顧客企業の維持や新規顧客企業の獲得にとってブランド力は極めて重要であると考えています。マーケティング領域におけるAI SaaSソリューション市場は日々競争が激化しており、また当社グループは今後さらなるグローバル展開を企図していることから、当社グループがブランド力を構築、維持、向上させるために多額の費用を要する可能性があります。また、当社グループのプロダクトやマーケティング領域におけるAI SaaSソリューション全般に対する否定的な評判が広がった場合や、当社グループの役職員による違法・不正行為や不適切な行動により当社グループのブランドや評判が損なわれた場合、既存顧客企業の維持や新規顧客企業の獲得に悪影響が生じる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。
当社グループのプロダクトはAIアルゴリズムを用いているため、営業人員にもAI等に関する一定程度の知識が求められます。そのため、当社グループはかかる知識や経験のある人材の採用に努めていますが、そのような人材は数が限られており、十分な人数を採用できない可能性があります。また、当社グループでは、採用後もプロダクトに関する教育を行っていますが、社員が十分な成果を上げることができるようになるには相当の時間と労力が必要である上に、最終的に当社グループのソリューションを販売するのに十分な知識を習得できない可能性もあります。当社グループがプロダクトを販売する人材の採用又は教育に失敗した場合、当社グループの事業及び業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループは、AIアルゴリズムの開発に必要なAIサイエンティストやソフトウェアエンジニアの採用に関して、厳しい競争に直面しております。さらに、当社グループは創業以来、経営陣が強い関係を有する台湾のAIサイエンティストを中心に採用してきましたが、同地域においてもこれまでと同様にAIサイエンティストを採用できる保証はありません。加えて、優秀な人材を確保しつづけるのが容易ではないという業界共通の課題があります。当社グループが必要とする人材の獲得若しくはつなぎ止めができなかった場合、又は人材の獲得若しくはつなぎ止めのために多額の費用を要した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、製品の開発や事業戦略の立案等について経営陣に大きく依存しております。特に、当社グループの共同創業者であり代表取締役CEOである游直翰は、当社グループの事業戦略や企業文化の構築、AIサイエンティスト及びエンジニアの獲得にとって極めて重要であり、AIアルゴリズムの開発においても中心的な存在です。当社グループでは取締役会、経営会議等を通して役員及び従業員への情報共有や権限移譲を進める等組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、特定人物への依存に関するリスクを最小限にしておりますが、同氏を含む経営陣に不測の事態が生じた場合や経営陣に人材の流出が生じた場合、当社グループの事業及び業績に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、事業戦略の一環として、当社グループの事業と補完的な事業、プロダクト又は技術への投資又は買収を行っており、今後も潜在的な投資及び買収の検討を継続していくことを考えております。
しかし、投資や買収が見込み通りの成果を上げることができない場合、当社グループが投資又は買収の対象の企業価値を過大に見積もっていた場合、又は既存事業への新規事業の統合や統合後の内部管理体制の構築が奏功しない場合等には、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。当社は過去に複数の買収を行い、これらの会社が提供する既存プロダクトを当社のAI技術で強化することによって、新たなプロダクトとして提供を開始し顧客企業数を増やしておりますが、取得した技術を強化するための研究開発費や販売・マーケティングチームが新たなプロダクトを導入するための研修費等統合のための費用を支出しており、また、当社グループはこれらの買収から想定している利益を得ることができない可能性があり、その場合、当社グループの評判や業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループは他社との業務提携や合弁会社の設立を行う可能性がありますが、パートナー企業との関係が悪化したり、パートナー企業の事業や財政状態が悪化した結果、業務提携等に悪影響が生じ、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループのプロダクトはAIアルゴリズムを用いていますが、AIアルゴリズムは当社グループが現在事業を行う地域では特許権による保護を受けることができないため、その不正使用を防止するための措置は不十分である可能性があり、AIアルゴリズムが不正に使用された場合、当社グループの事業及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社が今後進出する地域においても、同様にAIアルゴリズムが法令上の保護を受けられない可能性があります。
そのため、当社グループは、AIアルゴリズム等の知的財産を保護するために、訴訟の提起等に多大な費用と時間を要する可能性があり、かつ結果として知的財産を守ることができないおそれがあるため、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を遂行するための体制を整えておりますが、投資や買収等を通じたサービスの拡大等に伴い、第三者の特許権、著作権、商標権等の知的財産権の侵害に係る訴訟を提起される可能性が高まっています。当社グループが知的財産権の侵害を理由に第三者から訴訟の提起等を受けた場合、その対応に多大の費用と時間を要する可能性があります。加えて、そのような第三者の知的財産権侵害を回避するため、当社グループのプロダクトの販売若しくは使用の中止や特定の機能の変更、第三者からの不利な条件でのライセンスの取得、又は機能の再設計等が必要となる可能性があります。これらの対応により、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、個人情報保護法のほか、AI及び機械学習に関する法律、デジタルサービスの提供に関する法律、プライバシー、データ保護及び情報セキュリティに関する法律並びに贈収賄禁止法を含む様々な法令等の適用を受ける可能性があります。また、業界の自主規制やサードパーティープラットフォーマー(Eコマース、アプリストア、ゲームポータル等)の規程の適用を受ける可能性があります。
これらの法令等の変更が行われた場合、対応に多額の費用を要し、また、当社のプロダクトのクオリティが低下することになれば、当社グループの事業成長力が損なわれる可能性があります。
当社グループは、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規程類を策定し、適宜研修を実施して周知徹底を図っておりますが、コンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、当社グループが法令等を遵守しない若しくは遵守していないと指摘される場合、又は代理店等が法令等を遵守しない場合、当局より行政処分を受けること等により、当社グループの評判、事業、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、2024年12月期末において19,480百万円の税務上の繰越欠損金を保有しており、そのうちの一部に対して繰延税金資産を計上しています。当社グループの業績等の著しい変化により、当該繰越欠損金の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合や、税率変更を含む税制改正、会計基準の改正等が行われた場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業の歴史は浅く、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用していますが、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、今後も、新規のソリューションの開発、既存のソリューションの改良及び販売機能の強化等の、成長を支えるための投資を継続していく予定であり、当社の事業を継続するための運転資金の確保を必要とする可能性があります。しかし、金融・証券市場の環境、金利等の動向、資金需給の状況等の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループが必要とする資金の調達を適時かつ好条件で行うことができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業の遂行は、インターネットや第三者が提供するクラウドサーバー等に依存しています。当社では、定期的なデータのバックアップ、システムの稼働状況の常時監視等により、自然災害等による事業への障害発生を事前に防止し又は回避するよう努めておりますが、地震、火山、台風、大雨、大雪、火災、洪水等の自然災害、事故、人為的なミス等が発生した場合には、インフラが使用不能になり又はソリューションの開発及び改良の遅延や中断が生じること等により、事業を継続することができない等の支障が生じ、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は株主の皆様への利益還元について、重要な経営課題であると認識しております。当社は、企業価値向上のための持続的な利益を伴う成長を重視しており、そのための成長投資としてAI技術開発を含めた研究開発及び戦略的なM&Aを実行して参りました。配当や自社株買い等の株主還元の実施にあたっては、将来の成長に向けた研究開発等の事業成長のための投資及びM&Aを含めた資金需要、内部留保充実の必要性等を総合的に勘案しております。
しかし、利益及びキャッシュ・フロー計画が当社グループの想定通りに進捗せず、安定的に利益及びキャッシュ・フローを計上できない状態が続いた場合には、配当による株主還元が困難となる可能性があります。
(注)コア・フリー・キャッシュ・フロー = 営業活動によるキャッシュ・フロー+無形資産の取得による支出
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
「ソフトウェアをよりスマートに、AIでROIを向上させる」が当社グループのミッションです。
当連結会計年度の売上収益は34,057百万円(前連結会計年度比28.9%増)となりました。これは、アップセル・クロスセルによる既存顧客からの売上収益の拡大、地域及び顧客業種の拡大による新規顧客からの売上収益の拡大によるものであります。また、2024年12月におけるARR(注1)は36,259百万円となり、2023年12月の28,641百万円から26.6%拡大しました。
当連結会計年度の売上総利益は17,802百万円(前連結会計年度比29.9%増)となり、売上総利益率は52.3%(前連結会計年度比0.4%ポイント上昇)となりました。売上総利益率の改善は、継続的な技術革新への取り組みによるものであります。
事業規模の拡大及び為替影響により、営業費用(販売及びマーケティング費用、研究開発費、一般管理費)の金額は増加していますが、対売上収益比率は前年同期の50.1%から47.5%へと、2.6%ポイント低下しました。研究開発費はプロダクト差別化のための研究開発活動の強化及び為替影響により、対売上収益比率が前年同期比で1.8%ポイント上昇しました。一方、販売及びマーケティング費用と一般管理費の対売上収益比率は、生産性改善及び効率性向上により、それぞれ2.8%ポイント及び1.5%ポイント低下しました。その結果、EBITDA(注3)は4,916百万円(前連結会計年度比2,082百万円増)、営業利益は1,981百万円(前連結会計年度比1,180百万円増)となりました。また、税引前当期利益は2,062百万円(前連結会計年度比999百万円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,927百万円(前連結会計年度比1,925百万円増)となりました。
(注) 1.Annual Recurring Revenueの略。年間経常収益。利用量ベースの価格体系で提供するソリューションについては、関連する期間における1か月平均のリカーリング売上収益(注2)を12倍し、サブスクリプション方式で提供するソリューションについては、関連する期間の最終月のリカーリング売上収益を12倍することで年換算して得られた金額です。2024年12月のARRは、利用量ベースの価格体系で提供するソリューションについては2024年7月から2023年12月のリカーリング売上収益の1か月平均を12倍し、サブスクリプション方式で提供するソリューションについては2024年12月のリカーリング売上収益を12倍して算出しております。
2.リカーリング顧客(利用量ベースの価格体系で提供するソリューションについては、①当社グループのソリューションを4四半期以上連続で使用している顧客企業及び②直近1年以内の新規顧客企業で当社グループのソリューションを3カ月以上連続で使用している顧客企業を、サブスクリプション方式で提供するソリューションについては、当社グループと1年以上の契約を締結している顧客企業をいいます。)からの売上収益
3.EBITDA=営業利益+減価償却費及び無形資産償却費+営業費用に含まれる税金費用
当連結会計年度の財政状態は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末の総資産は44,637百万円であり、前連結会計年度末に比べて6,785百万円増加しております。流動資産は前連結会計年度末に比べて3,070百万円増加しており、主な増加要因は増収に伴う営業債権及び契約資産の増加(前連結会計年度末比4,006百万円増)、為替の変動によるその他の金融資産の増加(同854百万円増)であり、主な減少要因は定期預金の払戻による減少(同1,277百万円減)、無形資産の取得等による現金及び現金同等物の減少(同638百万円減)であります。非流動資産は前連結会計年度末に比べて3,715百万円増加しており、主な増加要因は資産化の要件を満たす開発費用の資産計上によるのれん及び無形資産の増加(同3,181百万円増)、回収可能な繰延税金資産の計上による増加(同927百万円増)であり、主な減少要因は使用権資産の償却による減少(同489百万円減)であります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は10,322百万円であり、前連結会計年度末に比べて1,561百万円増加しております。流動負債は前連結会計年度末に比べて2,122百万円増加しており、主な増加要因は金融機関からの追加借入による借入金の増加(前連結会計年度末比900百万円増)、売上原価の増加に伴う営業債務の増加(同924百万円増)であります。非流動負債は前連結会計年度末に比べて561百万円減少しており、主な減少要因はリース負債の返済による減少(同555百万円減)であります。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は34,315百万円であり、前連結会計年度末に比べて5,224百万円増加しております。主な増加要因は為替の変動によるその他の資本の構成要素の増加(前連結会計年度末比3,035百万円増)、当期利益の獲得による利益剰余金の増加(同2,927百万円増)であり、主な減少要因は自己株式の取得による増加(同1,000百万円増)であります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、5,496百万円(前連結会計年度末比638百万円減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,929百万円となり、前連結会計年度と比べ収入が295百万円減少しました。主な収入の増加要因は、非資金損益調整後の税引前利益の増加(前連結会計年度比1,974百万円増)であり、主な収入の減少要因は運転資本の増加(同2,006百万円増)であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,241百万円となり、前連結会計年度と比べ4,212百万円支出が増加しました。主な収入の減少要因は定期預金の純減による収入の減少(前連結会計年度比4,498百万円減)、主な支出の増加要因は無形資産の取得による支出の増加(同962百万円増)であり、主な支出の減少要因は純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の取得による支出の減少(同811百万円減)であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は792百万円となり、前連結会計年度と比べ支出が1,459百万円減少しました。主な支出の減少要因は短期借入による収入の増加(前連結会計年度比2,400百万円増)であり、主な支出の増加要因は自己株式の取得による支出の増加(同1,000百万円増)であります。
当社グループは、AIテクノロジー企業として、AIプラットフォームを活用した各種ソリューションを提供しており、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。
当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.AISaaS事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
3.株式会社サイバーエージェント及びその子会社向けの販売金額には、当社グループのデジタルマーケティングソリューションのエンドユーザーの販売代理店としての売上収益を含んでおります。当連結会計年度においては、一部のエンドユーザーの売上収益が別の販売代理店経由となったこと等により、同社グループに対する売上収益が減少しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような会計上の見積り及び判断を必要としております。当グループは、過去の実績や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りの不確実性により、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって行っている重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 5.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、(3) 目標とする客観的な指標等」に記載の指標等に着目しております。そこで、当社グループにおいては、当該目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上収益成長率、ARR及びARR成長率を重視し、また、これらに関連する指標として、売上総利益成長率、NRR、月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率に着目しております。
これらの指標のうち、ARR、NRR、月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率の近時の推移は以下のとおりです。2024年12月におけるARRは36,259百万円となり、2023年12月の28,641百万円からの成長率は26.6%となっています。2024年12月期のNRR(米国ドルベース)は118.7%であることから、継続利用する顧客による当社グループのソリューションの利用の拡大が示されています。月次顧客解約率は2024年12月は0.389%と2023年12月の0.604%から改善しており、顧客の継続性が強まっていることを示しています。
ARR
NRR、月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率
なお、当社グループが経営上の目標達成状況を判断するために用いている客観的な指標(ARR、NRR、解約率等)の中には、第三者の監査等を受けていない社内データを基礎とするものや、一定期間の実績を通年に換算したものなどが含まれており、当社グループの事業及び業績の実態を正確に表していない可能性があります。
③ 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は34,057百万円(前連結会計年度比28.9%増)となりました。これは、アップセル・クロスセルによる既存顧客からの売上収益の拡大、地域及び顧客業種の拡大による新規顧客からの売上収益の拡大によるものであります。また、2024年12月におけるARRは36,259百万円となり、2023年12月の28,641百万円から26.6%拡大しました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は16,255百万円(前連結会計年度比27.9%増)、売上総利益は17,802百万円(前連結会計年度比29.9%増)となり、売上総利益率は52.3%(前連結会計年度比0.4%ポイント上昇)となりました。売上総利益率の改善は、継続的な技術革新への取り組みによるものであります。
(販売及びマーケティング費用、研究開発費、一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)
事業規模の拡大及び為替影響により、営業費用(販売及びマーケティング費用、研究開発費、一般管理費)の金額は増加していますが、対売上収益比率は前年同期の50.1%から47.5%へと、2.6%ポイント低下しました。研究開発費はプロダクト差別化のための研究開発活動の強化及び為替影響により、対売上収益比率が前年同期比で1.8%ポイント上昇しました。一方、販売及びマーケティング費用と一般管理費の対売上収益比率は、生産性改善及び効率性向上により、それぞれ2.8%ポイント及び1.5%ポイント低下しました。
その他の収益は390百万円(前期比56百万円増)、その他の費用は29百万円(同21百万円増)となりました。
上記の通り営業費用(販売及びマーケティング費用、研究開発費、一般管理費)の金額は増加したものの、売上収益に対する比率は低下しており、コスト構造は改善しております。この結果、営業利益は1,981百万円(前期比1,180百万円増)となりました。
(金融収益、金融費用、税引前利益)
当連結会計年度における金融収益は448百万円(前期比99百万円減)、金融費用は367百万円(同82百万円増)となりました。金融収益の減少は主に定期預金等の利息収入の減少によるものであり、金融費用の増加は主に為替差損の増加によるものであります。この結果、税引前利益は2,062百万円(同999百万円増)となりました。
(法人所得税費用、当期利益)
当連結会計年度における法人所得税費用は865百万円のマイナス(利益方向)となりました。税引前利益は増加しましたが、2024年12月期に回収可能性が高まった繰延税金資産の計上をしたため、法人所得税費用がマイナスとなりました。この結果、当期利益は2,927百万円(同1,925百万円増)となりました。
財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの主な資金需要は、当社グループの業容拡大のための研究開発活動や営業活動に係る人件費です。これらの資金需要に対しては、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フローの支出超過、並びに営業活動によるキャッシュ・フローが収入超過の状況を踏まえ、自己資金を基本としております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社の子会社であるAppier Pte. Ltd.は、2025年2月12日開催の取締役会決議に基づき、ADYOUNEED SASを完全子会社化するため、同日付けでADYOUNEED SASの株主との間で株式譲渡契約を締結し、2025年3月5日に株式を取得しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項」の「30.後発事象」をご参照ください。
当社グループは、機械学習技術、深層学習技術、自然言語処理技術、生成AI技術を利用したソリューションの提供に向けた研究開発に取り組んでおります。
社内体制としては、ハーバード大学やスタンフォード大学等の博士号や修士を取得した経営陣を筆頭に、AIやビッグデータ分野における優れた実績を誇る博士陣が当社の技術部門を牽引しています。これら、AIやビッグデータを中心とする情報技術に関連した高い専門性を有するメンバーを中心に研究開発を行っております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は、