本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社は、日一日と常に進化し続ける姿勢を表現した「日新(ひにあらた)」を社是とし、経営理念「モノを動かし、心を動かす。」のもと、マテリアルハンドリングを核とした「モノを動かす技術」で、心豊かに生きられる社会の創造を目指し、事業活動を展開しています。グループの役員・従業員が実践すべき行動のあり方を示した「グループ行動規範」を含めた理念体系は以下のとおりです。
<理念体系>

<長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」及び「2027年中期経営計画」の概要>
次なる成長と企業価値向上を目指すため、2030年のありたい姿として長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」(以下、2030長期ビジョン)を、その中間点となる2027年12月期を最終年度とする「2027年中期経営計画」(以下、2027中計)を策定し、達成に向けた取り組みを進めています。
なお、当社は2024年12月期より決算期(事業年度の末日)を毎年3月31日から毎年12月31日に変更しました。詳細は、「第6 提出会社の株式事務の概要」をご参照ください。
<「Driving Innovative Impact 2030」について>
『未来を見据えた新たな発想での取り組みを強化し、ステークホルダーへ革新的な影響を生み出すことにより、目指すべき経済・社会価値を実現する』との強い想いを込めています。
<策定のコンセプト>
1.短期志向から長期・バックキャスト志向へ
未来の社会像や課題を想起し、まず2030年のありたい姿を2030長期ビジョンとして設定した上で、その中間点として2027中計を策定しました。
2.経済価値と社会価値の両立へ
経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、その実現に向けた施策・ロードマップを策定しました。
<2030年のありたい姿・2027年経営目標>

<注力する領域・枠組み・マテリアリティ>
経済価値及び社会価値向上の実現に向け、前中期経営計画「Value Transformation 2023」(2022年3月期~2024年3月期)の課題や事業環境・社会の持続可能性を考慮し、事業領域と事業・経営基盤領域それぞれで注力する枠組み、マテリアリティを設定し、各種施策を実践しています。

2030長期ビジョン及び2027中計の詳細は、『長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」、および「2027年中期経営計画」策定のお知らせ』(2024年5月10日公表)をご覧ください。
https://www.daifuku.com/jp/ir/assets/20240510_3.pdf
マテリアリティへの取り組みの詳細は、2027年中期経営計画におけるマテリアリティ及びKPI又は当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/management/materiality/
<2024年12月期 経営目標に対する進捗状況>
豊富な受注残を背景とした売上の進捗により、連結売上高は期初予想を上回りました。また、前中期経営計画期間より進めてきた生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みが寄与したことや、中国におけるレガシー半導体向け売上の増加もあり、営業利益率は期初予想を大きく上回りました。ROEについても、国内9カ月の変則決算による影響があったものの、収益性の大幅な改善や、資本効率性向上のために実施した自己株式100億円の取得により、2027中計の最終年度目標を超過する水準になりました。
<2024年12月期 成果と課題>
<2027年中期経営計画におけるマテリアリティ及びKPI>
枠組み:既存事業の進化、新領域への挑戦、次世代事業の創出
先端技術を取り込んだ製品・ソリューションの開発や新たな市場・ニーズに向けた提案を強化しています。事業部門ごとに設定した目標に対し、順調に取り組みが進捗しています。
枠組み:成長を支える仕組みの構築
当社グループの更なる成長をけん引できる人材の育成や、将来を見据えた技術開発などの取り組みを進めています。また、日本・米国・インドにおける設備投資や、デジタル化や人的資本の拡充に向けた投資を継続しています。
枠組み:事業を支える財務戦略
詳細は「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) 資本の財源及び資金の流動性 ①財務戦略の基本的な考え方」をご参照ください。
枠組み:業務全体の刷新
当社グループの「サステナブル調達ガイドライン」を周知し、サプライチェーンにおけるリスクを把握・軽減するため、国内の取引先に対して本ガイドラインに基づく自己評価アンケート(SAQ)を開始しました。その回答結果に基づく監査や、海外子会社へのヒアリングなどを通じて、調達リスクの管理を強化しています。
枠組み:継続した安全活動
国内、海外ともに休業災害件数は前年同期比同水準で推移しています。類似災害の再発を防ぐため、過去の災害事例を周知するなど、国内外で安全教育を強化していきます。
枠組み:環境負荷ゼロに向けた活動
「ダイフク環境ビジョン2050」の達成に向け、サプライチェーン全体でのCO2削減や再生可能エネルギー由来の電力導入に取り組むほか、生物多様性保全に関する活動をグローバルへと拡げています。
枠組み:経営体制の強化、管理の高度化
取締役会の実効性向上を通じて経営体制の強化を図るとともに、グローバルでの経営管理の高度化に向けて、経営理念やグループ方針、経営戦略等の浸透活動や重要リスクへの対応強化に取り組んでいます。また、あらゆるステークホルダーとの対話を継続し、得られた示唆を施策へ反映しています。
枠組み:組織の強化
更なる成長を実現するために必要な人的資本の拡充や、一人ひとりが「働きがい」「働きやすさ」を実感できる環境づくりに取り組んでいます。また、人権尊重のための取り組みも強化しており、人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施しているほか、そのプロセスを支える苦情処理メカニズムの導入に向けて検討を開始しました。
※1 Transportation Security Administration(米国運輸保安庁)
※2 設備投資、研究開発費、人的資本への投資等
※3 当社グループの製品・システムの不具合を原因とした稼働中における死亡事故及び重傷病(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)事故
※4 工事における請負事業者を含めて算出
※5 自社の業務中における死亡災害や身体の一部に永久損傷を伴う災害
※6 スコープ3カテゴリ1及びカテゴリ11については、2030年12月期に2019年3月期比30%削減を目指し、定性目標に取り組む
※7 調達先におけるCO2排出量削減に向けた取り組み(目標の共有と削減対策支援など)に関する当社グループ独自の枠組み
※8 廃棄物排出量(t)/売上高(億円)
※9 水使用量(千m³)/売上高(億円)
※10 従業員数100人以上の拠点
※11 サステナビリティに関する啓発・教育のための当社グループ独自の社員参加型プログラム
(2) 経営環境
① 事業環境
日本においては人口減少と物流2024年問題に伴う労働力不足が深刻化する一方、北米を中心とする海外においては人件費が上昇し、生産・物流現場における自動化・無人化ニーズがグローバルで拡大しています。
また、生成AIの普及に伴い半導体需要が飛躍的に増加すると同時に、経済安全保障の観点から各国政府が自国内での生産基盤の確保を促進しているため、各地域で半導体投資が活発化しています。
モビリティの変革期にある自動車産業では、より柔軟な生産体制を構築するためのxEV関連投資の継続が見込まれます。
これまで、限定的な自動化投資しか行われてこなかった空港においては、慢性的な労働力不足に伴う各種課題が顕在化しており、「スマート化」が求められています。
これらの事業環境を踏まえると、当社グループが提供するマテリアルハンドリングを核とする「モノを動かす」技術への期待がますます高まっていくことは確実であり、ビジネス機会を着実に捉え、更なる成長に繋げていきます。
② 競争環境
生成AIに代表される先端技術の革新が急速に進展し、特定の技術力・製品を持った新興企業が参入してきています。また、低価格を強みとする中国企業も台頭しています。
日本においては、国内競合企業が自社の製品と海外企業の先端製品を組み合わせることで提案力を強化するなど、競争は激化しています。
次世代技術に重点を置いた開発力を強化すると同時に、DX/AIリテラシーの向上に向けた人材育成に注力し、グローバルに最適・最良のシステムを提供するという当社グループの強みに磨きをかけ、厳しい競争に打ち勝っていきます。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2027中計の2年目を迎える2025年12月期においては、以下の事項を主な課題として取り組みます。
<海外プロジェクト管理の高度化等による収益性の更なる改善>
2030長期ビジョンで掲げる持続的な成長と高い収益性を両立させるためには、海外における更なる収益性の改善が必要です。前中期経営計画期間より、地域毎の特性を踏まえ、調達、生産といったあらゆるプロセスを見直し、各種コスト削減に取り組んできた結果、北米を中心に成果が現れていますが、一部の海外子会社は改善途上にあります。このため、各海外子会社でコスト削減計画を着実に実行していきます。また、受注案件の大型化、工期の長期化が進んでいるため、海外でのプロジェクト管理の重要性が増しています。進捗状況をリアルタイムで把握できる仕組みを構築し、プロジェクト管理の更なる高度化を図ります。
<M&Aを含めたグローバル成長戦略の着実な実行>
成長ドライバーと位置付ける海外での事業拡大に向け、一般製造業・流通業向けシステムの米国における生産拠点(Daifuku Intralogistics America Corporation)で、生産能力を倍増させるべく工場増設を進めるとともに、2025年4月竣工予定のインドの生産拠点(Daifuku Intralogistics India Private Limited)の早期立ち上げを進めていきます。また、M&Aも視野に入れ、成長戦略を加速させていきます。
<米国通商政策への対応>
関税引き上げを中心とした米国の通商政策が、お客さまの投資動向へ及ぼす影響を注視する必要があります。特に自動車・半導体産業では、各国における投資計画が見直される可能性があります。お客さまとのコミュニケーションを深め、計画の見直しに対しても、最適な提案活動を進めていきます。
また、当社は、お客さまにより近い場所で調達・生産を行う、いわゆる「地産地消」を基本戦略としています。今後も、米国をはじめとする各国で「地産地消」を推進し、通商政策の影響を受けない体制を構築していきます。
<新たに創出する事業領域の具体化>
2030長期ビジョンでありたい姿として掲げる「連結売上高1兆円」の達成には、既存事業での拡大にとどまらず、新たな事業領域の創出が必須です。その達成に向けた取り組みとして、オープンイノベーションによる新たなパートナーとの共創活動や、M&A等のインオーガニック戦略、新規事業に関する社内公募制度の活用等により、成長機会を追求していきます。2030長期ビジョンでは、新領域への挑戦として「食」「環境」といった分野を掲げ、社会課題解決に繋がる価値提供を目指していきます。
<先端技術を活用した開発の加速>
より生産性の高いマテリアルハンドリングシステムを提供し続けるためには、生成AIをはじめとする先端技術を活用した製品・サービスの開発が不可欠です。各事業部門での取り組みに加え、事業部門横断での技術開発や、新規ビジネスへの展開を担う「ビジネスイノベーション本部」が中心となり、取り組みを加速させていきます。また、マテリアルハンドリングの未来像として、2030年までに「物流の完全無人化」を実現することを目指していきます。
<DX/AI人材をはじめとする人的資本の拡充>
当社の強みは、マテリアルハンドリングにおいて、お客さまへのコンサルティングから、技術開発、製造、エンジニアリング、アフターサービスまでをトータルで提供できる点にあります。これらすべてのプロセスで高い付加価値を提供し続けるためには、専門性の高いスキルを持った人材の採用、育成が欠かせません。特にAI等の先端技術を活用した技術開発や、お客さまとの長期にわたる信頼関係を構築する役割を果たすアフターサービスの人材の拡充・強化は、当社の競争力を維持・強化するための重要な要素となります。人的資本の更なる拡充に向け、各種制度の再構築や、従業員エンゲージメントの向上など、包括的な取り組みも進めていきます。
<コンプライアンス、安全の徹底>
「コンプライアンス」及び「安全」は、当社グループにおけるすべての事業活動を支える根底にあるものとしてグループ全体で徹底を図っていきます。
(コンプライアンスの徹底)
当社では、コンプライアンスを「事業活動のあらゆる局面において、法令や会社規程など社内外のルールにとどまらず、社会規範を遵守し、誠実に行動すること」と定義付け、各種の教育・研修を通じてグループ全体で価値観の共有を図っています。一人ひとりが高い倫理観を持ち、責任ある行動を積み重ねていくことで、社会からの期待や信頼に応え続けていくことを目指していきます。
(「安全専一※」の徹底)
一人ひとりの社員が最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境づくりに努めていく上で、社員やその家族、お客さま、お取引先の生命・健康・安全を確保することがなによりも優先されます。「安全は、『第一』『第二』と相対的な順位を付けるものではなく、絶対的なもの、『専一』なものである」という意識をグローバルに浸透させ、引き続き、グループ一体となって災害や不安全行為の撲滅に取り組んでいきます。
※「安全専一」は、古河機械金属株式会社の登録商標です。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、本文中における将来に関する事項の記述については、2024年12月31日現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ全般に関する開示
サステナビリティ経営の実践に際しては、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則からなる「国連グローバル・コンパクト」に賛同・署名するとともに、「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて取り組んでいます。また、2030年のありたい姿である長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」(以下、2030長期ビジョン)と、その中間点となる「2027年中期経営計画」(以下、2027中計)において、経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。2024年4月には、すべての役員・従業員の理解及び共感を促進するために「ダイフクグループサステナビリティ基本方針」を策定し、この方針に基づきグループ一体でサステナビリティ推進に取り組んでいます。サステナビリティに関する様々な活動の詳細は、以下URLをご参照ください。
サステナビリティ
① ガバナンス
1) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対する監督・執行体制
取締役会は、サステナビリティ関連のリスクや機会に対応するための経営戦略をはじめ、中長期的な企業価値の向上に向けた取り組みを監督します。取締役会においては、代表取締役社長(CEO)がサステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に対して責任を負っています。取締役会のメンバーは、研修や有識者との意見交換、お客さまとの対話等を通じて、サステナビリティ課題への見識を高めることで、当社グループの取り組みを監督するためのスキル及びコンピテンシーの向上を図っています。
当社は、2024年12月期よりサステナビリティに関する委員会の体制を見直し、「サステナビリティ経営委員会」を設置しました。サステナビリティ経営委員会は、サステナビリティ課題についての重要事項を取締役会へ報告、上程するほか、中長期的な企業価値の向上に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行います。その傘下にある「サステナビリティ推進委員会」及び「環境経営分科会」「人権・サプライチェーン分科会」「人的資本経営分科会」は、サステナビリティ経営委員会と連携し、経営戦略に基づいた実務レベルのより具体的な施策を検討・実行する役割を担っています。
サステナビリティに関する委員会の体制(2025年12月期)

各組織の役割
2) サステナビリティ関連目標のモニタリングとインセンティブ
サステナビリティ課題に対する計画・目標は、2027中計の枠組みの中でサステナビリティ経営委員会が進捗管理を行い、取締役会が監督しています。
また、2024年12月期より社内取締役を対象とした役員報酬制度を改定しており、業績連動報酬の支給基準において、サステナビリティ関連の評価指標も考慮して評点を算出することとしています。賞与については安全及びCO2排出量削減目標の進捗状況、株式給付信託(BBT)については外部のESG評価機関(MSCI、FTSE、CDP)における評価とCO2排出量削減目標の達成度が評点の算出基準に含まれています。詳細は、「
2024年12月期におけるサステナビリティ関連の取締役会等での議題
② 戦略
サステナビリティに対する取り組みは、2030長期ビジョン及び2027中計における枠組みに統合し、推進しています。2030長期ビジョン及び2027中計の策定にあたっては、未来の社会像からバックキャスティングを行い、当社グループがお客さまに対して提供する製品・サービス(アウトプット)と、それらを通じて社会に提供される価値(アウトカム)を整理しました。その上で、2030長期ビジョン及び2027中計の達成に向けてグループで対応する重要課題をマテリアリティと定義し、それらを軸に戦略・施策・行動計画を具体化しました。2027中計の詳細は、「
③ リスク管理
当社グループは、国内外のグループ会社を対象としたリスクアセスメントを定期的に行っており、企業活動に大きく影響を与える重要なリスクを特定・評価しています。重要なリスクに対して、リスクマネジメント委員会が全社的なリスクマネジメントを行い、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図っています。リスクアセスメントで認識されたリスク情報は、必要に応じて取締役会をはじめとする他の会議体へ報告・共有され、経営戦略に反映されます。詳細は、「
2027中計の策定では、マテリアリティの特定プロセスにおいて、2024年3月期に実施したリスクアセスメントの結果をインプット情報の一つとして活用しました。機会とリスクの検討結果、他社の動向、ESG評価機関からの要請事項などもインプット情報として合わせて考慮し、課題の候補を「ステークホルダーへの影響度」と「長期ビジョン達成への影響度」の2軸で評価し、マテリアリティを特定しました。
優先して対応すべきサステナビリティ関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会、リスクマネジメント委員会、グループ人材委員会が連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。
④ 指標と目標
2027中計では、重要課題ごとにKPIと目標を設定しています。1年目の2024年12月期の実績は、「
(2) 気候変動に関する開示
① ガバナンス
気候関連のリスク及び機会は、前述のサステナビリティ全般のガバナンスのプロセスにおいてモニタリング、管理、監督されています。
② 戦略
1) 気候関連のリスク及び機会の特定
<気候関連のリスク及び機会の洗い出し>
事業運営に影響を与える気候変動要因は、脱炭素社会に向けた規制強化や低炭素化に向けた技術の進展、気候変動対応による市場の変化、気候変動による災害等の頻発等が挙げられます。当社グループの事業内容を踏まえ、各要因によって引き起こされる気候関連の移行リスク・物理的リスク・機会を洗い出しました。移行リスクについては、全事業範囲を分析対象とし、物理リスクについては、主要拠点及び生産拠点を対象としました。
当社グループの事業に影響する主な要因

<気候関連のリスク及び機会の評価>
洗い出した移行リスク・物理的リスク・機会の項目に対して、当社グループの事業への影響度の大きさを定性・定量で評価し、これらの結果を、「リスク発現・機会実現までの期間」「リスク発現・機会実現の可能性」「財務影響度」を軸に、以下のとおり整理しました。それぞれのリスク及び機会について、適切な対応策を実行していきます。
下記表の「期間」「可能性」「影響度」の定義は以下のとおりです。
「リスク・機会への主な対応」の詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。
気候変動
当社グループにおける重大リスク・機会
※2024年3月期の有価証券報告書にて「小」としていましたが、近年の気候変動に伴う世界的な気象災害の発生頻度の増加や被害の激甚化を鑑み、影響度に関する評価を見直しました。
2) 重大リスクのシナリオ分析
気候関連のリスク及び機会を特定した項目のうち、今後顕在化する可能性が高く、重大な事業影響を与えるリスクについてシナリオ分析を実施しました。シナリオは、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)によって示されているものを参照しました。
移行リスク
移行リスク・機会は、炭素税(カーボンプライシング)導入による操業コストの影響について、関連するエネルギーコストと併せて、以下のシナリオを設定して分析を行いました。炭素税は、将来想定されるGHG排出量(スコープ1・スコープ2)を、当社グループ2030年売上予測、排出量削減目標を基に、排出量削減を進めた場合(脱炭素シナリオ)とそうでない場合(成り行きシナリオ)とで算出し、IEAにおいてシナリオ別に予測される炭素価格を掛け合わせて事業影響額を評価しました。エネルギーコストは、当社グループが削減目標どおりに取り組みを進めた場合(脱炭素シナリオ)と取り組みを進めずに事業規模が拡大した場合(成り行きシナリオ)とでエネルギー使用量を設定し、IEA等で示されるエネルギー価格の推移を参考に、今後のエネルギーコストについて評価しました。
当社グループで想定した気候変動シナリオ(移行リスク)
<炭素税>
成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合は、2030年で約6億円のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、2030年時点では、約3億円のコスト増が見込まれます。
<エネルギーコスト>
成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合、2023年3月期時点と比較して、2030年では約37%のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、 2023年3月期時点と比べて、2030年では、約12~16%のコスト増が見込まれます。
炭素税の負担、エネルギーコストの双方において、脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)に比べ、成り行きシナリオ(4℃シナリオ)での負担が大きく、当社グループとして脱炭素化、省エネ化の取り組みを積極的に進める理由・メリットがあることが再認識されました。
取り組みを進めるためには、大規模な投資が必要となるものの、取り組みを進めない場合には取り組みを進める場合に比べ、数億円規模で炭素税及びエネルギーコストの追加負担が想定されます。事業に影響を与えるリスクを軽減するため、2030年の削減目標の達成を目指して脱炭素化の取り組みを強化していきます。
物理的リスク
物理的リスクは、温暖化進行による気象災害の増加が重大なリスクとなります。そこで、当社グループ主要24拠点(国内1拠点、海外23拠点)について、気象災害がもたらす影響を定性的に評価しました。評価では、2℃シナリオ(SSP1‐2.6)、4℃シナリオ(SSP5‐8.5)下における洪水、高潮、干ばつ、熱波の各拠点のハザードを調査し、ハザードの多寡に応じてA(高リスク)~E(低リスク)の5段階のグレードを付与しました。本評価でA~Bの高リスクとなった拠点数の推移を以下に示します。
評価の結果、洪水、高潮、干ばつは、2℃シナリオ、4℃シナリオのいずれにおいても高リスク拠点数はほぼ増加せず、気候変動による影響は限定的であることがわかりました。熱波は、4℃シナリオの2050年、2090年にかけて高リスク拠点数が増加することがわかりました。熱波による影響は、空調コストや機器メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性低下等が挙げられます。当社グループでは、工事現場・工場での従業員の熱中症対策を進めるなど、リスクを軽減する取り組みを積極的に進めていきます。
当社グループで想定した気候変動シナリオ(物理的リスク)
気候変動による高リスク拠点数
③ リスク管理
気候関連のリスク及び機会の識別については、外部専門家のアドバイスのもと見直しを実施し、2024年12月期に開示しました。移行リスク・物理的リスク・機会の各項目に対し、発現時期、発生可能性、当社グループへの影響度を、定性・定量の両面から評価し、重大なリスクと機会を特定しています。加えて、移行リスクと物理的リスクについて、複数の気温上昇を想定したシナリオ分析も行いました。詳細は、「(2) 気候変動に関する開示 ②戦略」をご参照ください。優先して対応すべき気候関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会とも連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。
④ 指標と目標
当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」及び2027中計において「気候変動への対応」を重要課題と捉え、以下の目標を設定しています。2030年12月期目標は、2023年にSBT(Science Based Targets)イニシアティブの認定を受けており、スコープ1・スコープ2については、1.5℃水準の目標、スコープ3(カテゴリ1及び11)についてはWB(Well-below)2℃水準の目標となっています。2024年5月、2030年12月期のスコープ1・スコープ2の削減目標(2019年3月期比)を50.4%から60%へとさらに上方修正するとともに、再生可能エネルギー由来の電力比率の目標を新設しました。これらの目標についてはサステナビリティ推進委員会が進捗状況及び妥当性についてレビューし、目標を見直す場合は取締役会へ上申し、決議されます。
現在、国内及び海外での再生可能エネルギー由来の電力導入により、スコープ1・スコープ2の目標に対する実績は順調に進捗しています。スコープ3については、間接的な排出となるため外部環境を鑑み、現実的な取り組みから着実に取り組んでいます。
※ スコープ3のカテゴリ1及びカテゴリ11合わせての目標
参考:カーボンニュートラルへのロードマップ

(注)CO2排出量はGHGプロトコルに則り、年度ごとに算定。スコープ1・スコープ2の算定対象範囲については、支配力基準の経営支配力基準とし、すべての連結子会社の排出量を算入
(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
① 戦略
当社グループにとって、人材は価値創造の源泉であり、人的資本経営を実行する原動力は、自由闊達な企業風土のもと、長年培ってきた豊富な経験とノウハウ、そしてお客さまのニーズに真摯に応え、先端技術を追求し続けるDNAです。従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出し、活躍できる環境を整備し、仕事にやりがいを感じるとともに、ノウハウを持続的に継承していける取り組みを推進します。
また、2030長期ビジョンでのありたい姿を実現するために、「人材の確保・育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「エンゲージメントの向上」の3つを軸とした諸施策を通じて、人的資本の拡充・強化を図ります。
② 指標と目標
1) 人材の確保・育成:グループ人材マネジメント基盤の構築
当社グループはこれまで事業部門制のもと、それぞれの事業特性を考慮した部門最適の仕組みや人事の運用を行って成長を続けてきました。今後は、変化の速い事業環境を捉えイノベーションを創出していくために、部門間の人材の流動性を高め、社内にあるノウハウを効率的に共有・展開できる仕組みが必要です。より全社的な視点でグループ全体の人材を管理できる基盤の構築を目指しています。
まず、将来的に当社を支えていくキーポジション(主要幹部職)を特定し、そのポジションに求められる人材要件を明確化するとともに、適材後継者の計画的な登用を進めます。CEO等役員の計画的な後継者育成は重要ですが、役員の後継者だけではなく、部長などの幹部レベルからキーポジションをグループレベルで特定し、将来を見据えた後継者を計画的に育成していきます。2024年12月期には「グループ人材委員会」を発足させ、グループ及び事業部門の各人材委員会においてCEOや事業部門トップなどと議論を重ねつつ、キーポジションにあたる人材の把握と育成を行い、グループ全体で後継者候補を確保していきます。
2027中計におけるマテリアリティのKPIとして、キーポジションにおける後継候補充足率を2027年12月期までに100%を目標(2024年12月期は73%)としていますが、その先を見据えて計画を実施し、グループ内の人材の経験・スキルの見える化を図りながら、全社として適所適材な人員配置を推進します。
2) ダイバーシティ&インクルージョン
2027中計では引き続き、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。女性管理職数(比率)については、管理職候補者である係長職も含め、将来の女性管理職の育成を目的としたプログラムを充実させ、キャリア形成を支援するなどして、現在の40名(5.4%)から、2027中計最終年度までに60名(7.6%)を目指します。
多様な価値観や経験・発想を持つ人材が組織内にいることで、イノベーションの創出が期待でき、当社グループの持続的成長につながります。ダイバーシティの状況は国・地域によって異なりますが、例えば日本では、女性の活躍推進や国籍、障がいの有無にとらわれない人材の活躍が求められており、そういった人材が働きやすい環境の整備に取り組んでいます。中長期的には、より多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材を活用していきます。
また、外国籍人材を積極的に採用しています。海外の技術系大学の有力校から直接採用しており、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどから採用してきました。今後も性別・国籍にかかわらず優秀な技術職をさらに採用していけるよう、職場環境の整備を行っていきます。
3) 従業員エンゲージメントの向上
2030長期ビジョン及び2027中計より、「エンゲージメントの向上」を新たにマテリアリティと特定し、KPIとして国内グループ会社の肯定的回答率を60%超(2026年12月期)、海外グループ会社は国別平均スコア以上(2026年12月期)としました。2027中計期間ではさらに調査対象の会社を拡大し、より本格的にグローバルで展開していきます。
エンゲージメントサーベイの目的は、組織としての現状を見える化し、課題を抽出するとともに、その改善策を実施していくことです。国・地域による違いを理解し、今後の持続的成長につなげるための課題を見出すことが重要です。引き続き、事業部門と連携しながらグループ全体でエンゲージメントの向上に取り組んでいきます。
指標及び目標
本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) リスクの管理体制
当社グループは、代表取締役を最高責任者として、3線モデルを基本とするリスクマネジメント体制を構築しています(下図)。リスク対応の実行主体である事業部門(第1線)が行うリスク管理を、コーポレート部門をはじめとするリスク所管部署(第2線)が支援、指導、監督します。また、第1線及び第2線のリスク管理の取り組みを、監査部門(第3線)が監査します。
リスクマネジメント体制(2025年12月期)

当社グループは、これらの取り組みを全社的な観点でモニタリング、対応指示及び進捗管理を行うために、代表取締役を委員長、コーポレート部門長、事業部門長、グループチーフオフィサー等を委員とするリスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は以下の事項を所管しており、2024年12月期は3回開催しました。委員会の取り組み状況等については、必要に応じ取締役会へ報告を行います。
① リスクマネジメント委員会の所管事項
1) リスク管理体制の企画及び立案並びに関連規程の整備
2) リスクアセスメント結果を踏まえたシビアリスク(経営層が中心となって組織横断的に優先管理すべきリスク)の選定
3) シビアリスクの対応方針の決定、指示、進捗管理及びモニタリング
4) 年次レビューの実施及び結果のフィードバック
5) リスク意識の向上のための各種情報共有、その他リスクマネジメントの重要性、考え方及び手法等に関する教育・訓練・研修等の実施方針の決定、指示
6) 危機対応に関する教育訓練及び演習等の対応方針決定、指示
② 平常時及び非常時の体制
当社グループのリスクマネジメント体制は、平常時はリスクマネジメント委員会が上記①の活動を行い、リスクが顕在化する前に、その可能性や被害の極小化に努めています。
リスクが顕在化し、危機対応を行うべき事態が発生した際は速やかにBCP推進体制へ移行します。

(2) 主要なリスク(シビアリスク)の選定及び対応のフロー

(3) 主要なリスク(シビアリスク)の評価と対応
当社グループにおいて「シビアリスク」と呼称しており、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは次のとおりです。ただし、これらは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。
① 主要なリスク(シビアリスク)の一覧

② 主要なリスク(シビアリスク)の内容と対応策
当社の決算期(事業年度の末日)は、2024年6月21日に開催した第108回定時株主総会での決議をもって、毎年3月31日から12月31日に変更となりました。決算期変更の経過期間となる当連結会計年度(2024年12月期)は、株式会社ダイフク並びに国内を中心とした従来の3月末決算子会社は2024年4月1日から12月31日までの9カ月間を、海外を中心とした子会社は2024年1月1日から12月31日までの12カ月間を連結対象期間とした変則決算となっています。このため、参考値として、当連結会計年度と同一期間となるように組み替えた前年同期(以下「調整後前年同期」)による比較情報を記載しています。
当連結会計年度(2024年4月1日~12月31日)における世界の経済は、中国経済の低迷や米国経済の減速懸念に伴う下振れリスクはあったものの、総じて順調に推移しました。
事業環境としては、日本においては物流2024年問題を背景として、物流関連投資が回復基調にあります。半導体産業では、中国におけるレガシー半導体投資が高水準で継続すると同時に、生成AI向け半導体の需要が急増し、先端半導体投資が前倒しで回復してきました。また、半導体後工程における自動化投資も具現化してきました。自動車産業では、ガソリン車とxEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVなど電動車の総称)の混流生産を可能とするラインへの投資が高水準で継続しています。航空旅客数の回復に伴い空港における自動化投資も北米を中心に伸長しています。
このような経済・事業環境の下、当連結会計年度の受注は、アジアにおける半導体生産ライン向けシステムや、北米における空港向けシステムを中心に順調に推移しました。
売上は、豊富な前期末受注残高をベースに全体として計画に対し、順調に推移しました。
この結果、受注高は5,947億69百万円(調整後前年同期比5.8%増)、売上高は5,632億28百万円(同6.1%増)となりました。
利益面では、前中期経営計画期間より進めてきた生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みが寄与しました。また、中国におけるレガシー半導体向け売上の増加もあり、利益率が大きく改善しました。
この結果、営業利益は715億46百万円(同36.3%増)、経常利益は744億98百万円(同37.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は570億86百万円(同50.6%増)となりました。
なお、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益については、国内が9カ月間の変則決算にもかかわらず、3期連続で過去最高を更新しました。
なお、当連結会計年度の当社グループの平均為替レートは、米ドルで152.27円(前連結会計年度141.20円)、中国元で21.13円(同19.87円)、韓国ウォンで0.1113円(同0.1080円)等となりました。為替の変動により、前連結会計年度比で受注高は約284億円、売上高は約213億円、営業利益は約25億円、それぞれ増加しました。
現時点での2025年12月期の業績予想は、受注高7,000億円、売上高6,500億円、営業利益815億円、経常利益850億円、親会社株主に帰属する当期純利益650億円、営業利益率12.5%としています。
米国の通商政策が世界経済へ与える影響を注視する必要があるものの、製造業・流通業における労働力不足や人件費上昇を背景とした自動化投資及び生成AI向け先端半導体と後工程投資が拡大する見込みです。また、自動車産業におけるxEV関連投資や、空港における自動化投資も高水準が継続する見込みであり、受注に結び付けていきます。売上高は、豊富な前期末受注残高をベースに順調に推移する見込みです。
利益面については、半導体生産ライン向けシステムの地域別売上構成比の変化や、日本を中心とした人件費上昇と、これに付随するサプライチェーンにおけるコスト増加の影響を見込んでいますが、生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みにより更なる収益性の改善を進めていきます。
2025年12月期の為替レートは対米ドル148 円(2024年12月期実績レート152.27円)を前提としています。
上記の業績予想は、主に受注済の案件の進捗見込みや今後受注が見込まれる案件の確度や時期、期中の進捗度合いを想定し算出していますが、現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、国内外の顧客の動向・競合状況、「3 事業等のリスク」に記載している各種リスク要因などのさまざまな不確定要素により、実際の業績は記載の見通しと異なる可能性があります。
2024年12月期 連結業績
セグメントごとの業績は次のとおりです。受注・売上は外部顧客への受注高・売上高を、セグメント利益は親会社株主に帰属する当期純利益を記載しています。
当社グループのうち、海外子会社については、そのほとんどが12月末決算のため2024年1月1日から12月31日までの期間の状況を記載しています。
また、株式会社ダイフク並びに国内を中心とした従来の3月決算子会社を含むセグメントの対前年比較については、参考値として、調整後前年同期による比較情報を記載しています。
受注は、半導体生産ライン向けシステムを中心に順調に推移しました。
売上は、豊富な前期末受注残高をベースに全体としては順調に推移しました。
セグメント利益は、生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みが寄与しました。また、中国におけるレガシー半導体向け売上の増加もあり、利益率が大きく改善しました。
この結果、受注高は1,777億70百万円(調整後前年同期比10.7%増)、売上高は1,880億97百万円(同14.1%増)、セグメント利益は292億50百万円(同53.3%増)となりました。
日本市場・海外市場ともに顧客の在庫調整の影響を受け受注は減少しました。一方、為替変動の影響等により北米市場で増収となり売上は増加しました。
セグメント利益は、国内での売上減少が影響し減益となりました。
この結果、受注高は172億13百万円(調整後前年同期比5.2%減)、売上高は169億82百万円(同2.0%増)、セグメント利益は2億69百万円(同58.0%減)となりました。
受注は、空港向けシステムが好調に推移したものの、一般製造業・流通業、半導体生産ライン向けシステムにおいて、前年の実績には及びませんでした。
売上は、豊富な前期末受注残高をベースに計画に対し概ね順調に推移しました。
セグメント利益は、生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みが寄与し、一般製造業・流通業、自動車生産ライン向けシステムにおいて、増加しました。
この結果、受注高は1,833億5百万円(前年同期比9.3%減)、売上高は1,724億84百万円(同1.9%減)、セグメント利益は162億86百万円(同46.6%増)となりました。
④ Clean Factomation, Inc.(CFI)
受注は、低調だった前年からは回復基調にあるものの、売上・セグメント利益ともに低調に推移しました。
この結果、受注高は317億61百万円(前年同期比28.0%増)、売上高は258億86百万円(同15.5%減)、セグメント利益は14億14百万円(同25.1%減)となりました。
⑤ 大福自動搬送設備(蘇州)有限公司(DSA)
受注は、好調だった前年からの反動の影響はあるものの、レガシー半導体向け投資が高水準で継続しました。
売上・セグメント利益ともに、豊富な前期末受注残高をベースに好調に推移しました。
この結果、受注高は318億95百万円(前年同期比31.7%減)、売上高は533億79百万円(同77.4%増)、セグメント利益は122億43百万円(同122.9%増)となりました。
「その他」は、当社グループを構成する連結子会社66社のうち、上記②③④⑤以外の国内外の子会社です。これらの各社は、マテリアルハンドリングシステム・洗車機等の製造・販売・工事・サービスを行っています。主な子会社の状況は、次のとおりです。
国内子会社:
株式会社ダイフクプラスモアは、各種洗車機の販売等を行っています。
海外子会社:
中国、台湾、韓国、タイ、インドなどにマテリアルハンドリングシステム・洗車機の生産拠点があり、最適地生産・調達体制の一翼を担いつつ、販売・工事・サービスも行っています。
また、北中米、アジア、欧州、オセアニアには販売・工事・サービスを行う子会社を幅広く配置しています。
受注は、半導体生産ライン向けシステムを中心に好調に推移しました。売上は、前期末受注残高をベースに概ね計画通りに推移しました。セグメント利益は、オセアニアにおける一部案件で一過性コストを計上した前期から大きく増加しました。
この結果、受注高は1,528億23百万円(調整後前年同期比39.3%増)、売上高は1,021億52百万円(同11.0%減)、セグメント利益は40億51百万円(同274.4%増)となりました。
業種別や仕向地別の詳細については、「[表]業種別受注高・売上高及び[表]仕向地別受注高・売上高」をご参照ください。
[表]業種別受注高・売上高
[表]仕向地別受注高・売上高
資産は、前連結会計年度末に比べ425億52百万円増加し、6,887億7百万円となりました。これは主に受取手形・完成工事未収入金等及び契約資産が467億85百万円、投資有価証券が100億32百万円減少したものの、現金及び預金が794億77百万円、有形固定資産が83億24百万円、繰延税金資産が86億1百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ28億82百万円増加し、2,902億82百万円となりました。これは主に短期借入金が70億90百万円、未払費用等の流動負債その他が32億91百万円、未払法人税等が39億84百万円減少したものの、賞与引当金が107億88百万円、契約負債が54億33百万円それぞれ増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ396億69百万円増加し、3,984億24百万円となりました。これは主に自己株式の取得に伴う98億37百万円の減少があったものの、利益剰余金が388億98百万円、為替換算調整勘定が134億45百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ839億49百万円増加し、2,203億95百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、1,161億29百万円となりました(前連結会計年度は371億17百万円の増加)。これは主に、仕入債務の減少が34億82百万円、法人税等の支払額が257億33百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が744億88百万円、売上債権及び契約資産の減少額が556億39百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、23億93百万円となりました(前連結会計年度は295億82百万円の減少)。これは主に、定期預金の払戻による収入が58億56百万円、投資有価証券の売却による収入が33億6百万円あったものの、固定資産の取得による支出が118億82百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、368億20百万円となりました(前連結会計年度は227億32百万円の増加)。これは主に、短期借入金の減少額が64億21百万円、自己株式の取得による支出が100億3百万円、配当金の支払額が174億77百万円あったことによるものです。
連結キャッシュ・フローの指標は次のとおりです。
自己資本比率 :(純資産-非支配株主持分-新株予約権)/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち短期借入金、長期借入金、転換社債型新株予約権付社債を対象としています。
5 利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に調達・配分することを財務戦略の基本方針としています。
強固な財務体質の維持に関しては、自己資本比率の水準を50%以上に保ち、「A(シングルAフラット)」以上の発行体格付(株式会社格付投資情報センター(R&I)による格付)の維持向上を目指し、リスク耐性の強化を図ります。
同時に、営業キャッシュ・フローによる十分な債務償還能力を前提に、厳格な財務規律のもとで金融機関からの借入や社債の発行などの活用も進めることにより、資本コストの低減及び資本効率の向上にも努めます。2027年中期経営計画(以下、2027中計)では、資本効率のさらなる向上を目指し、ROICを活用した事業評価・分析を進めています。とりわけ、受注・売上の拡大に伴って運転資金が大きく増加する傾向にある事業特性に鑑み、新たにキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を指標と定め、2024年3月期実績の100日から、最終年度の2027年12月期には75日に短縮する目標を設定し、各種施策を進めています。2024年12月期におけるCCCの実績は、99日となりました。
② 経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、適正な手元現預金の水準について、売上高の約1.5~2.0カ月分を安定的な経営に必要な手元現預金水準とし、それを超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。また、株主の皆さまに対する利益還元を最重要事項と位置づけ、剰余金の配当については、株主の皆さまへのさらなる利益還元を視野に入れて、連結当期純利益をベースとする業績連動による配当政策を取り入れるとともに、残余の剰余金については内部留保金として、今後の成長に向けた投資資金に充てる方針です。
設備投資・研究開発に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進します。2027中計では総額1,600億円を予定してます。
③ 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要のうち主なものは、製品を製造するための、原材料・部品の仕入、加工、組立等の変動費、ならびに製造間接費・販売費及び一般管理費等の固定費です。
固定費の主なものは人件費、構内外注費、設計外注費、研究開発費、賃借料等です。
④ 資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しています。グループ内では資金効率を高めるため、余資は当社に集中し、不足するグループ会社に配分する制度を国内グループ会社で運用しています。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上のため信用格付を取得しており、有価証券報告書提出日現在において、株式会社格付投資情報センターによる発行体格付は「シングルA+(安定的)」となっています。一方、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金は問題なく調達可能であると認識しています。なお、国内金融機関において300億円のコミットメントラインを設定しており、緊急時の資金調達手段を確保しています。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(6) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社です。
3 決算期変更により、2024年12月期は9カ月間の変則決算となるため、前期比については記載していません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社及び連結上の調整額です。
3 決算期変更により、2024年12月期は9カ月間の変則決算となるため、前期比については記載していません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社及び連結上の調整額です。
3 決算期変更により、2024年12月期は9カ月間の変則決算となるため、前期比については記載していません。
当連結会計年度の受注高は、アジアにおける半導体生産ライン向けや、北米における空港向けシステムが牽引し、期初計画の5,750億円を上回る5,947億円となりました。売上高についても、豊富な前期末受注残高を背景に順調に推移したことにより、期初計画5,500億円を上回る5,632億円となりました。また、利益面では、前中期経営計画期間より進めてきた生産の効率化をはじめとする各種コスト削減への取り組みが寄与したことや、中国レガシー半導体向け売上の増加もあり、期初予想の営業利益520億円、営業利益率9.5%を大きく上回る、営業利益715億円、営業利益率12.7%となりました。国内が9カ月間という変則決算にもかかわらず営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益とも3期連続で過去最高を更新すると同時に、当期純利益率が初めて10%台となるなど、2027中計1年目の結果としては、順調なスタートが切れたと評価しています。一方で、長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」(以下、2030長期ビジョン)や2027中計で掲げる成長戦略を実現するためには、一部地域で収益性改善の途上にある海外での事業拡大が必須となります。グローバルでの労働力不足、人件費上昇を背景とした自動化投資や、生成AI向け半導体投資といった成長機会を受注・売上に着実に結び付けるとともに、海外子会社を中心に収益性の更なる改善を進め、成長と収益性向上の両立を図っていきます。
当社グループの経営成績の分析の詳細については、「(1) 経営成績等の状況の概要」、課題分析や今後の施策などの詳細は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
2027年中計では、成長性、収益性、資本効率性の3つの観点から、最終年度となる2027年12月期に向けた経営目標として、連結売上高8,000億円、営業利益率11.5%、ROE13.0%を設定しています。これに対し、2024年12月期における実績は、連結売上高5,632億円、営業利益率12.7%、ROE15.1%となり、収益性及び資本効率性の目標を大きく上回る結果となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための分析の詳細については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
社是・経営理念の下、更なる成長に向け、ありたい姿を描いた2030長期ビジョンとその中間点となる2027年中計の達成に向け、各種施策を実践していきます。
今後の経営方針の詳細については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
該当事項はありません。
当社グループでは、「保管」「搬送」「仕分け・ピッキング」の機能を持つ機械設備とそれを支える電子機器の新システム・新製品の開発に取り組んでいます。昨今は、企業に求められる社会的責任が、経済活動のみならず環境・社会活動を含む概念へと広がっており、環境・安全等にも配慮したシステムや製品の開発にも努めています。
加えて、近年ではAIを取り込んだ新システムや製品開発にも注力しています。これらの活動によって生み出された知的財産をより戦略的に活用するためにDXを推進し、知的財産の早期の権利化や保護の強化を図っています。また、IPL(Intellectual Property Landscape)にも取り組み、各事業部と伴走し当社グループの競争優位性の強化に努めていきます。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、
なお、当連結会計年度は決算期変更により2024年4月1日から2024年12月31日までの9カ月間となっています。
報告セグメントごとの内訳は次のとおりです。
(単位:百万円)
報告セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
なお、大福自動搬送設備(蘇州)有限公司(DSA)の研究開発活動は小規模であり記載を省略しています。
(1) 株式会社ダイフク
① 一般製造業・流通業向け製品
主に個配・通販の配送センターにおけるピースピッキングを自動化する「XY-ピッキングロボット」の販売を開始しました。定点ピッキング(GTP:Goods-to-Person)のクイックピックステーションと組み合わせることによって高能力化・省スペース化が図れます。
自律走行搬送ロボットを活用したケース搬送システム「ソーティングトランスファーロボット-M」の販売を開始しました。従来コンベヤで構成していた定点ピッキング・搬送・仕分け機能をケース搬送ロボットに置き換えることで、レイアウトの柔軟性、拡張性のあるシステムを実現しています。
② 半導体生産ライン向け製品
半導体生産ライン向けでは、後工程と呼ばれる積層パッケージ分野で自動化が進んでおり、多種多様な搬送物に備えて、新たな搬送・保管システムの開発を進めています。また、最先端の回路線幅である2~3ナノ向けの搬送・保管システムについては、24時間365日システム稼働を止めない高い信頼性や機器の消費電力削減を追求するとともに、コントロールシステムにはAIを導入し、高効率・高能力を生み出せるシステムの開発を進めています。
③ 自動車生産ライン向け製品
100年に一度の変革期と呼ばれる自動車産業では、変化により柔軟に対応できる組立工場が求められています。このようなニーズに応えるための製品として開発した台車けん引式AGVを組立工場だけでなく、電池工場やエンジン工場などにも対応できるよう製品力を強化しました。また、搬送システムと自動化設備をトータルで提供できる当社の強みをお客さまに訴求するため、滋賀事業所内にデモラインを設置しました。さらに、トラック入荷場からラインサイドまでの部品供給を自動化する商品群の開発にも取り組んでいます。
④ 空港向け製品
国内の空港に向けて受託手荷物追跡システムを高機能にしたハンディタイプのバーコード読み取り機(BRS)を投入しました。乗り継ぎで目的地が変わる手荷物を、人の経験に頼らず効率よく行先ごとに仕分けすることが可能となります。
簡易型セルフバックドロップ(TAG-UX)を国内市場に投入し、好評を得ています。お客さま自身で手荷物タグを読み取って手荷物を預け入れていただくことで、混雑の緩和に貢献しています。
コンベヤSCADAシステム(Sym3)の機能を見直し、より精度の高いシミュレーションが実行できるように再開発しました。
⑤ 洗車機
洗車機で培った洗浄・節水技術を活かし、日本初のごみ収集車用内部洗浄装置「シャワーホッパー」を開発し、販売を開始しました。従来、手作業で行っていた洗浄作業を自動化することで、洗浄時間の約30%※短縮、水使用量も約20%※削減が可能となります。また、人による作業を無くすことで労働環境の大幅な改善にも繋がります。今後も“洗う技術”で人と環境に優しい新製品を開発していきます。※数字は当社調べ
以上に記載の①~⑤を中心に、当社が支出した研究開発費の総額は
(2) コンテックグループ
産業用コンピュータ製品では、NVIDIA Jetson AGX Orin™ を搭載した組み込み用ファンレス・コンピュータを開発し、「DX-M2300シリーズ」として2024年9月より受注を開始しました。データセンター向けGPUボードに匹敵するAI性能を持ち、独自の放熱技術により小型筐体でファンレス動作を実現しました。AI性能を持つ小型の組み込み用コンピュータとして、AMR (自律制御走行搬送ロボット) などのロボティクスアプリケーションに適しています。
IoT機器製品では、積層セラミックコンデンサの量産品検査向け計測器モジュールCメータボード「ZM-C2H-PE」を開発し、2024年12月より受注を開始しました。本製品1枚でWindows パソコンにベンチトップ計測器2台分の機能を組み込むことが可能となり、電子部品検査システムの小型化とコストダウンに貢献します。
当グループが支出した研究開発費の金額は
(3) Daifuku North America, Inc.(DNA)グループ
一般製造業・流通業向けシステムでは、ピッキングやソーティングシステムの開発に力を入れています。
自動車生産ライン向けシステムでは、PRB(パワーローラーベッド)システムのデモ、テスト、完成に取り組んでおり、コストと製造工程等を考慮した設計による標準製品ラインの改良を継続します。
当グループが支出した研究開発費の総額は
(4) Clean Factomation, Inc.(CFI)
韓国の半導体メーカーのお客さまに密着して、より効率の高い窒素パージ保管システムや、後工程のパッケージング分野向けの搬送・保管機器の開発などを実施しています。
また、過去に納めたシステムのリニューアル開発なども行っています。
当子会社が支出した研究開発費の総額は