第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サッポログループの経営理念

サッポログループは、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を経営理念に掲げ、「ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指す」ことを経営の基本方針として、企業活動を実践しています。

時代とともに変容する“豊かさ”の本質によりいっそう向き合い、明日につながる、自然、社会、心の“豊かさ”に貢献していきます。

 

(2)中期経営計画(2023~26)

1876年の創業以来、様々なイノベーションを発揮し、お客様に潤いと豊かさをもたらす商品やサービスをお届けしてきた当社グループは、2026年に創業150周年を迎えます。

150年を越えて独自の存在価値を発揮し続けるために、2023年~2026年までの4か年の経営計画を策定し、推進しております。本計画は「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」を基本方針とし、そのポイントは、事業ポートフォリオの見直しと、各事業のポジショニングに沿ったグループマネジメントを実現し、資本効率を高め企業価値を向上させていくことです。詳細は以下のとおりです。

 

(構造改革)

不確実性の高い環境に適応するべく、各事業を市場環境、独自の強み、サステナビリティ、収益性、シナジー、リソース配分の6つの視点から考察し、企業価値向上の実現に向け、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでおります。

事業整理に位置付けた事業は速やかに整理を進め、再編に位置づけた事業は抜本的な見直し等、構造改革を断行しております。

 

(強化・成長)

海外酒類は2022年に子会社化したSTONE BREWING CO.,LLCの拠点を活用した「SAPPORO PREMIUM BEER」の現地製造開始とあわせ、マーケティング投資によるブランド強化を行います。海外飲料はシンガポールを起点にマレーシア、中東等での売上拡大を目指します。国内酒類は黒ラベル・ヱビスへの集中投資によるビールカテゴリーの強化を行うとともに、RTD(※)は2023年に稼働を開始した自社製造拠点を活用した成長を目指します。不動産は恵比寿・札幌エリアでの保有物件の価値向上を行い、まちづくりを推進することにより、収益と効率を向上させます。

※RTD:Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイなどのアルコール飲料

 

(財務目標)

・ROE:8%

・EBITDA年平均成長率(CAGR):10%程度

・海外売上高年平均成長率(CAGR):10%程度

 

(主な非財務目標)

・温室効果ガス排出削減(いずれも2022年比)

 スコープ1,2 2030年 42%削減(2026年 21%削減)

 スコープ3 2030年 25%削減(2026年 12.5%削減)

  ※SBT認定済

・女性役員比率、女性管理職比率:12%以上

 

(3)財務戦略

「持続的成長と資本効率重視」をテーマに、構造改革・事業成長による収益力強化と、資産や事業ポートフォリオの見直しにより資本効率を高め企業価値向上を確かなものにします。

財務の健全性は、現状格付けを維持することを基本とします。投資については、営業キャッシュフローとのバランスを取りながら、海外への投資を優先することで成長促進を図ると共に、サステナビリティ関連の投資も推進します。なお、M&A等の成長投資の機会には、現状格付を確保できる範囲で機動的に対応します。

株主の皆様への利益還元は、経営上の重要政策と位置付けており、業績や財務状況を勘案して安定した配当を行うことを基本方針としています。今後の配当水準につきましては、連結配当性向30%以上を基本に、1株当たりの年間配当金の下限を42円(※)に設定し、企業価値向上を伴う配当水準の向上を図ります。なお、特殊要因にかかる一時的な損失や利益計上により、当期利益が大きく変動する場合は、その影響を考慮して配当金額を決定することがあります。

※現中期経営計画を発表した2022年12月期の1株当たり年間配当金

 

(4)対処すべき課題

①中期経営計画(2023~26)の推進とモニタリングについて

当社グループは、「中期経営計画(2023~26)」の達成に向けて、内部運用ならびに外部開示の2つの観点からモニタリング体制を構築し、運用しております。内部運用の観点では、各事業セグメントにおける構造改革および成長戦略に関する具体的なアクションプランの進捗について、取締役会等を通じて綿密なモニタリングを行い、計画達成の裏付けを強化しております。また、外部開示の観点では、当社グループの取り組みを、従来以上に具体的に分かりやすく、且つタイムリーにステークホルダーの皆様にお伝えすることで、計画達成の蓋然性に対する信頼性の向上に努めております。

 

②サステナビリティ経営の推進について

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。

 

③DXの推進について

大きな環境変化が続く中で、サッポログループでは新たな時代のニーズに即した価値を創出する手段として、DXを推進しております。

以下のとおり「サッポログループDX方針」を策定し、グループ内でのDX・IT人財の育成と活用を進めております。

 

「サッポログループDX方針」

方針① お客様接点を拡大:お客さまとつながり、理解を深め、寄り添うこと

方針② 既存・新規ビジネスを拡大:お客さま起点で考えぬかれた新たな価値の創造と、稼ぐ力を増強すること

方針③ 働き方の改革:サッポログループにかかわるあらゆるステークホルダーと共に成長し続けるため

自分たちの仕事をもっと楽に、もっと楽しく、働くことに誇りを持てるものにしていくこと

 

DX推進体制

グループのDX・ITに関する経営資源配分の支援・調整・確認を行い、方向性を決定するための機関として、DX・IT担当役員を委員長とする「グループDX・IT委員会」を2022年4月1日付で設置しております。

 

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DX推進戦略

2022年から2023年にかけて「DX・IT人財育成プログラム(DXP)」を通じて、200名のDX・IT推進基幹人財の育成を実施し、2024年は高度デジタル人財の育成強化、市民開発ツールの積極展開、生成AIの全社展開、新たなデータ基盤構築などの環境整備を進めており、引き続き育成人財の成果創出を推進してまいります。

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④グループ中長期成長戦略

当社は2024年2月14日に「グループ価値向上のための中長期経営方針」を公表し、その具体化に向けて「中長期戦略プロジェクト」で継続的に検討を進めてまいりました。今般、その検討結果の内容を「グループ中長期成長戦略」として、2025年2月14日の取締役会において決議いたしました。その概要は以下のとおりです。

 

1.中長期ビジョン及び戦略骨子

当社は、中長期ビジョンである「世界をフィールドに豊かなビール体験、顧客体験を創造する企業」を目指し、以下の5つの戦略を展開します。

 

戦略骨子

施策・ターゲット

① Bonds with Community

(わくわくする体験や新しい楽しみ方の提供)

基軸ブランドのマーケティング投資倍増、外食事業を中心に顧客接点を拡大する等により、国内ビールシェア25%、2030年国内酒類事業利益率10%以上を目指す

② Healthier Choice

(より健康的な選択肢の提供)

国内ではノンアルコール・RTD(※)開発体制強化、酒類と飲料の組織融合により健康機能価値を訴求。海外ではノンアルコール展開エリアを北米で拡大

③ Efficient Foundation

(成長戦略実行に向けた組織改革)

2026年に事業持株会社体制へ移行予定。国内・海外の2事業本部体制により経営効率向上、ガバナンス強化、人的資本投資を継続実施

④ Strategic Alliance

(戦略的パートナーシップの構築)

米国では構造改革に加え、サッポロブランドの成長基盤構築で他社と提携を検討

ベトナムでは製造販売両面で、カールスバーグ社と協業した市場拡大を検討

⑤ Inorganic Growth

(インオーガニック成長)

不動産事業への外部資本導入による資金を活用し大型のM&A等を検討。国内ではRTD(※)事業とSCM領域強化、海外の重要市場である米国ではビールビジネス基盤確立と飛躍的成長(含ノンアルコール)を目指す

※RTD:Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイなどのアルコール飲料

 

2.財務戦略

長期目標としてROE10%以上を設定し、ROICを指標とした財務管理により、資本効率の向上を目指します。また、持続的な成長を実現するための財務安全性(格付A格)を確保しながら、適切なキャッシュアロケーションを行います。

さらに、上記戦略により収益力を向上させ、2024年から2030年までの事業利益で年平均10%程度の成長を目指します。後述する不動産事業のオフバランスにより資本増加が見込まれ、ROEは一時的に低下する見込みですが、酒類事業への成長投資に資本投下することで利益成長を加速させ、長期視点でのさらなる資本効率性の向上を目指します。

なお、今後の中期的な期間は、当社が取り得る戦略により財務構造が大きく変わる変革期であるため、2030年の財務目標は次期中期経営計画の策定と合わせて検討を進める予定です。

 

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3.不動産事業への外部資本導入

不動産事業への外部資本導入は、グループの経営リソースを酒類事業に集中させ、酒類事業の成長投資原資を捻出し、サッポログループの企業価値向上を目指すものです。サッポロ不動産開発株式会社(以下、SRE)においては、戦略パートナーの資本導入等によりグループからオフバランスするとともに、企業価値を高めることを目指します。

現在十数社から具体的な提案を受けており、恵比寿ガーデンプレイスを保有するSRE株式の譲渡を含む様々な選択肢の中から、最適な方策と時間軸について、2025年内を目途に結論を出す予定です。今後は重要な局面に入るため、経過開示は予定していませんが、重要事象発生時は適時適切に開示いたします。

 

詳細はホームページをご参照ください。https://www.sapporoholdings.jp/news/items/20250214_sh_mlt_ja.pdf

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<サッポログループのサステナビリティに関する考え方>

サッポログループは、「中期経営計画(2023~26)」における、3つの戦略の柱の一つに「サステナビリティ」を掲げております。サステナビリティ経営の推進にあたっては「サッポログループ サステナビリティ方針」のもと、「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とする重点課題を特定し、それぞれ目標を設定しその達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進しております。

 

① ガバナンス

サッポログループは、サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループサステナビリティ委員会」「グループリスクマネジメント委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置しております。

「グループサステナビリティ委員会」では、グループ全体でサステナビリティ経営を推進するための全体方針を策定し、グループ内の調整を行い、担当取締役が半期ごとに気候変動や人財に関する課題を含めたサステナビリティ重点課題への対応の進捗状況について取締役会へ報告しております。

また、「グループリスクマネジメント委員会」では、委員会事務局が半期ごとにグループにおけるサステナビリティ関連リスクの発生状況や対応、再発防止について取締役会へ報告しております。詳しくは、「3 事業等のリスク」をご確認ください。

取締役会は、これら報告を受けた課題への取り組みや設定した目標をモニタリングし、監督しております。

 

組織体

グループサステナビリティ委員会

役割

・サステナビリティ経営推進のための全体方針策定及び統括

・事業継続に向けた中長期的な外部環境リスクと機会、及びそのガバナンスに対するモニタリング

構成

委員長  :サッポロホールディングス㈱代表取締役社長

委員長代行:サッポロホールディングス㈱経営企画部 担当役員

構成員  :サッポロホールディングス㈱経営企画部部長、経理部長、人事部長、総務部長

      サッポロビール㈱、ポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱、

      サッポロ不動産開発㈱、㈱サッポロライオン、各社経営戦略担当役員

      監査等委員

開催頻度

年2回

 

2024年の開催実績

開催月

主な議題

4月

・サステナビリティ経営推進体制に関する意見交換

・サステナビリティ重点課題に対するモニタリング

10月

・サステナビリティ重点課題に対するモニタリング

・サステナビリティ重点課題(指標・目標)更新に関する審議

・長期的なサステナビリティ課題認識の共有

・サステナビリティ推進体制整備に関する報告・討議

 

サステナビリティに関する取締役会での報告内容

開催月

主な議題

4月

・グループサステナビリティ委員会内容の報告

8月

・企業価値向上に資するサステナビリティに関する討議

11月

・グループサステナビリティ委員会内容の報告

 

当社は、取締役に対して特に「期待する」スキルを明確にしたスキルマトリクスを設定しており、「サステナビリティ」に関して、取締役として必要なスキルとして位置づけております。詳しくは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(2)役員の状況」をご参照ください。

また、取締役の報酬に関して、業績連動型株式報酬の項目に、「ESG指標」「従業員エンゲージメント」を組み入れ、サステナビリティに関する取り組みを役員報酬に反映させております。

 

取締役の業績連動型株式報酬(サステナビリティ関連項目)

指標

ESG指標

1.FTSE Russel ESG Rating(注1)

2.MSCI ESG Rating(注1)

3.温室効果ガス排出削減量(スコープ1,2)

 各指標におけるスコア及び格付け等の毎年の評価基準を設定

従業員エンゲージメント

「ワークエンゲージメント」(注2)

  外部機関調査による評価結果で毎年の評価基準を設定

(注)1 企業のESG関連情報の収集、分析、評価等を行っている国際的な外部評価機関によるスコア及び格付け。

2 従業員が仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している状態。

 

② 戦略

サッポログループは「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とした、サステナビリティ重点課題(マテリアリティ)を9項目設定しております。中でも、グループの事業関連性及びリスクと機会の影響度の大きさから、「脱炭素社会の実現」「自然共生社会の実現」「地域との共栄」「責任ある飲酒の推進」「多様な人財の活躍」を、経営上特に重視する最注力課題と位置づけて、「リスクの低減」とともに「企業成長に繋がる機会創出」の観点からも取り組みを進めております。

重点課題の特定プロセスはWEBサイトをご参照ください。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/policy/systems/

 

経営理念

潤いを創造し 豊かさに貢献する

提供価値

全ての事業が提供する時間と空間で、人々と地域社会のWell-beingに貢献

サステナビリティ方針

「大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。」

サステナビリティ

重点課題

(マテリアリティ)

環境との調和

①脱炭素社会の実現

②循環型社会の実現

③自然共生社会の実現

社会との共栄

④地域との共栄

⑤健康価値の提供

⑥責任ある飲酒の推進

人財の活躍

⑦多様な人財の活躍

 

 

⑧持続可能なサプライチェーン構築

⑨安全な製品施設の提供

 

サステナビリティ重点課題:具体的な取り組みと経済価値との繋がり

区分

重点課題

具体的な取り組み

経済価値の繋がり

環境

との

調和

脱炭素社会の実現

・自社拠点・サプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減

・省エネ等によるエネルギー使用量減

・将来的な炭素税導入時のコスト増の抑制

循環型社会の実現

・循環型社会に対応した容器包装の実現

・プラスチック資源のリデュース・リサイクル

・廃棄物・食品ロス削減

・水資源の有効な利用、水リスクへの対応

・資材の安定調達

・資源循環を起点にした新たなビジネスモデルの創出

・無駄のないサービス提供による利益創出

・廃棄コストの削除

・良質な水資源確保等のリスク低減

自然共生社会の実現

・気候変動に対応した原料育種

・自然と共生する拠点・まちづくり

・気候変動への適応策実行による、長期的な原料の安定調達

・原料生産者との協働による付加価値創出

 

 

区分

重点課題

具体的な取り組み

経済価値の繋がり

社会

との

共栄

地域との共栄

・地域の価値向上

・自社リソースを活用した地域課題解決

・不動産価値向上による利益創出

・地域創生を基軸にした新たな売上機会の創出

・付加価値の高い国産原料の安定調達

健康価値の提供

・事業を通じた健康価値の提供

・健康価値提供による利益創出

責任ある飲酒の推進

・適正飲酒の啓発

・不適切な飲酒の防止による事業機会の維持

・ノンアルコール、微アルコールの市場拡大

人財の

活躍

多様な人財の活躍

・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進

・成長と生産性向上に向けた人的資本投資

・ワークエンゲージメントを高めることによる、生産性向上

・個のスキルアップ及び多様な価値観の融合による新たな価値創出

持続可能なサプライチェーン構築

・サプライチェーンにおける人権尊重

・サプライチェーンにおける環境負荷低減

・安定調達

・サプライチェーン不安定化によるリスクの低減

安全な製品・施設の提供

・食品安全

・安全な施設づくり

・安定的な事業継続を支える基盤の構築

 

③ リスク管理

サッポログループは「事業と環境にかかわるリスクを包括的に把握し、重点的に対応すること」により事業の永続性を図っております。リスクを組織運営に影響を与える不確実性と定義し、グループを取巻く様々な経営リスクの発生を未然に防止するとともに、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した場合には、発生時のリスク対策を適宜実施することで損失を最小限に抑える等、事業の継続的な維持・発展、及び社会からの信頼の確保に努めております。

なお、「経営会議」、「グループサステナビリティ委員会」及び「グループリスクマネジメント委員会」は、相互の役割を認識し、それぞれの機能に応じたアクションプランを設定し対応しております。詳しくは、「3 事業等のリスク」をご確認ください。

 

④ 指標及び目標

サステナビリティ重点課題に対し、それぞれ目標を設定し、その達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進しております。「脱炭素社会の実現」「自然共生社会の実現」「責任ある飲酒の推進」の指標及び目標、実績は後述をご確認ください。その他の指標及び目標の一覧、最新の実績は当社WEBサイトを参照願います。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/policy/systems/

*2025年8月に実績及びサステナビリティ情報の更新を予定しております。

 

<気候変動・自然資本への取り組み (脱炭素社会の実現、自然共生社会の実現)(TCFD、TNFD)>

当社は、気候変動への対応が地球規模で取り組むべき最重要課題の一つであると認識し、「緩和」と「適応」の両面から課題解決に向け、将来発生する可能性のある事業環境をシナリオ分析により複数想定した上で、リスクと機会を洗い出し、その結果を戦略や取り組みに反映しております。また、農作物や水資源等を利用する当社にとって、気候変動に加えて、自然資本対応も重要な課題であると認識しております。

当社は、TCFD・TNFDの提言に賛同し、積極的な情報開示を進めております。本提言に関連した分析の詳細は当社WEBサイトをご確認ください。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/environment/nature/climate/

 

① ガバナンス

「<サッポログループのサステナビリティに関する考え方> ①ガバナンス」に記載のとおり、サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループサステナビリティ委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置し、環境保全活動を推進・統括するとともに、各事業会社の環境経営の取り組みをサポートし、取締役会への報告を行っております。

② 戦略

「サッポログループ環境ビジョン2050」に基づき、脱炭素を志向した事業構造改革、省エネ対策の徹底に加え、再生可能エネルギーの活用で脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めております。また、自然共生社会の実現を掲げ、そのなかで気候変動適応の対応と連動させた持続可能な原料調達と、持続的に自然と共生できる豊かな時間と空間を感じるまちづくりを進めております。緩和策としてグループ全体での徹底した脱炭素の取り組みと、適応策としてビール事業で培ってきた原料づくりの取り組みで、気候変動に関する課題解決に挑み、これらの取組を進めることで、ネイチャーポジティブ(自然の損失を止めて回復軌道に乗せる)な社会の実現に貢献していきます。

なお、気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象としたシナリオ分析を実施し、戦略に反映しております。

 

Ⅰ.自然への依存・影響

当グループの主要事業である「酒類」「食品飲料」「不動産」の全サプライチェーンを対象に、潜在的な自然への依存・影響を評価しました。その結果、自然への依存・影響が大きい農産物の生産プロセスで、調達量が大きい酒類原料の「大麦とホップの生産」を重要な項目と位置付けました。TNFDが推奨している「LEAPアプローチ」に沿った評価分析の結果は前述のWEBサイトをご確認ください。

 

Ⅱ.シナリオ分析結果(財務影響)

基軸のビール事業で気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象とした、シナリオ分析を実施しました。国際連合食糧農業機関(FAO)のシナリオ分析データ等を基に、異常気象等の要因を考慮して補正しており、気候変動要因、経済社会要因、生産量に関する要因がそれぞれ異なる、サステナビリティ進展、標準、停滞シナリオについて、2050年までの収量の変化を想定しております。

 

気温上昇

異常気象

農業関連動向

社会動向

進展シナリオ

1.5℃

ある程度増加(-)

化学肥料等の使用に関する規制強化(-)

人口増加、生活水準向上、食料需要増加、食料価格の一定程度上昇

標準シナリオ

BAU

頻発化や被害拡大(-)

品種改良や設備投資の増加(+)

人口増加、生活水準向上、食料需要増加、食料価格の上昇

停滞シナリオ

4℃

激甚化(-)

作物の病害が多発し農業被害が拡大(-)

食料価格高騰、貧困層の食へのアクセス困難化

+:収量にプラス影響 -:収量にマイナス影響

 

サステナビリティ進展シナリオでは、化学肥料使用に規制がかかる影響等によって、収量に対してマイナスの影響が出る事を想定しております。収量推計が増加基調の国では上表のマイナス要因を受けても増加や横ばいを保つ場合があります。

 

〇原料農作物調達への財務影響

上記のシナリオ分析の結果をもとに、原材料の調達コストに影響が大きいと予想される以下の項目について財務影響を分析しました。本分析は、2022年度における全調達をもとに、気候変動関連の影響による価格増加分のみを試算しております。

・環境規制の強化による有機栽培の拡大

・エネルギー価格高騰による調達価格の上昇

・原材料(大麦、ホップ、トウモロコシ)の収量減少による原材料価格の上昇

 

 

(単位:億円)

 

2030年

2050年

サステナビリティ進展シナリオ

2.0

5.5

サステナビリティ標準シナリオ

1.3

5.0

サステナビリティ停滞シナリオ

2.5

7.7

 

各シナリオで最も財務影響の大きかったものは、停滞シナリオでした。停滞シナリオでは、「エネルギー価格高騰による調達価格の上昇」による影響が最も大きく、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」による影響で、2030年時点で2.5億円、2050年時点で7.7億円という結果になりました。次に影響の大きかった進展シナリオでは、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で2.0億円、2050年時点で5.5億円という結果になりました。標準シナリオでは、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で1.3億円、2050年時点で5.0億円という結果になりました。

品目別にみると調達額の一番大きい大麦(麦芽含む)が、各シナリオで最も価格上昇のある品目となりました。

 

〇炭素税導入によるスコープ1,2への財務影響

炭素税導入による財務影響は、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)に基づき、当社拠点のエネルギー使用量から試算をしました。2030年、2050年時点において、当社も温室効果ガス削減目標が達成できた場合とできなかった場合の財務影響を分析しました。

温室効果ガス削減

目標が達成できた

場合の排出量(千t)

温室効果ガス削減

目標が達成できなかった場合の排出量(千t)

温室効果ガス削減

目標が達成できた場合の炭素税に関する

コスト(千円)

温室効果ガス削減

目標が達成できなかった場合の炭素税

に関するコスト(千円)

2030

110

189

1,813,440

3,130,869

2050

0

189

0

6,055,178

※1USD=133.36円

IEA:NZEシナリオ

炭素税2030年:先進国130USD、新興国90USD、発展途上国15USD

炭素税2050年:先進国250USD、新興国200USD、発展途上国55USD

 

計画通りに排出量を削減できた場合、2030年:110千t、2050年:0tをそれぞれ見込んでおります。一方で、削減目標を達成できなかった場合、2022年の排出量が継続することを想定し2030年、2050年それぞれの排出量を189千tと見込みました。削減目標を達成できなかった場合、できた場合をそれぞれ比較すると、2030年は約13.2億円、2050年は約60.6億円のインパクトがあるという結果となりました。

 

Ⅲ.リスクと機会の評価と対応

シナリオ分析の結果から、3つのシナリオが現実化した場合を想定しサッポログループが直面するリスクと機会について短期・中期(2030年)、長期(2050年)の視点から検討を行いました。

農作物の収量減少、規制強化、病虫害等による品質低下等のリスクを認識しております。一方で機会については、品種改良による品質の安定化、新品種の開発、商品開発等による競争力の強化を認識しております。緩和策、適応策を強化することで、リスクの影響が低減され、機会を獲得できる可能性が大きくなると捉えております。

 

■移行リスク

項目

関連

影響時期

財務影響

対応・施策の方向性

気候

自然

短期

中期

長期

カーボンプライシング導入による事業拠点エネルギーコスト増加

 

 

炭素税の課税

NZEシナリオ(進展シナリオ):2030年31.3億円,2050年60.6億円

・脱炭素化取り組みの推進(2030年・2050年目標達成)

温室効果ガス排出削減目標への対応による、FLAG関連排出の削減に必要なコストの増加

 

 

窒素肥料の投入量等の情報把握、その削減に必要なコスト

・FLAG関連排出算定方法を精緻化、活動量データの取得可否や課題を調査

30by30に向けた保護区の拡大や、IPLCsの管理地域の保護による調達先の減少・変更

 

 

 

原料農作物の調達額の増加等を想定

・多角的な調達先の確保

・サプライヤーを通じた最新情報の把握

 

 

項目

関連

影響時期

財務影響

対応・施策の方向性

気候

自然

短期

中期

長期

農薬(化学肥料含む)に関する環境規制強化による農産物収量減

 

原料農産物の調達額増加

(進展)2030年2.0億,2050年5.5億円

(標準)2030年1.3億円,2050年5.0億円

(停滞)2030年2.5億円,2050年7.7億円

※ビール原料農産物を

対象とした2022年実績基準の試算

・農薬規制情報と農薬使用状況の把握

・化学農薬に代わる生物的防除や物理的除去法等の総合的病害虫管理の情報収集と生産者動向の把握

カーボンプライシング等による農産物生産エネルギーコスト増加

 

 

 

■物理リスク

項目

関連

影響時期

財務影響

対応・施策の方向性

気候

自然

短期

中期

長期

温暖化・異常気象による原料農産物の品質低下や収量減

 

原料農産物の調達額増加

(進展)2030年2.0億円,2050年5.5億円

(標準)2030年1.3億円,2050年5.0億円

(停滞)2030年2.5億円,2050年7.7億円

※ビール原料農産物を

対象とした2022年実績基準の試算

・多角的な調達先の確保

・異常気象による品質低下リスクの低い大麦・ホップ多収性品種の開発・普及

・病害抵抗性に優れた大麦・ホップ新品種の開発・普及

・サプライヤーとの連携による総合的病害虫管理の導入に向けた病害虫防除体系の確立

異常気象(熱波、干ばつ、台風や集中豪雨による風水害等)による事業拠点の渇水・洪水

生産停止による損失と復旧費用を想定

・既存拠点の水供給の安全性と渇水及び異常気象に対するリスク評価

新規感染症流行による原材料の調達停滞

 

生産停止による損失を想定

・グローバルの食品輸出入動向・規制に関する情報収集・把握

・国内生産安定化のための基盤強化

気温上昇による設備の空調コスト増加

 

 

 

電力スト増加を想定

・運転管理における省エネルギーの徹底

水質汚染や土壌の健全性の劣化による収量・品質の低下

 

 

 

原料農産物の調達額増加、水質浄化コストの増加を想定

・多角的な調達先の確保

・生産者とのコミュニケーションによる状況把握

 

■機会

項目

関連

影響時期

財務影響

対応・施策の方向性

気候

自然

短期

中期

長期

温室効果ガス削減による事業拠点エネルギーコスト(炭素税額)の削減

 

 

NZEシナリオ(進展シナリオ)2030年13.2億円,2050年60.6億円

・脱炭素化取り組みの推進(2030年・2050年目標達成)

気候変動に対応可能な品種開発による安定調達

 

業界での幅広い普及により調達額影響の低減

・干ばつや多雨等の気候変動の影響を回避・軽減する大麦・ホップ適応品種の開発・実用化(2035年実用化に向けて現在開発中の大麦新品種には、麦芽加工時の省エネ効果の特性を合わせ持つものがある)

原料農産物開発と商品開発による競争力の強化

 

大麦やホップ開発品種を用いた商品(2035年以降 上市規模 ~547億円)

ICT・ロボット等を活用した農業の効率化品種改良(育種)による品質の安定化

 

原料農産物価格への影響を想定

・国内外のパートナーとの協働による農業の新技術の活用

肥料や農薬等の投入量の最適化、エネルギー効率の高い機械の導入による、コスト及び環境負荷の削減

 

 

投入物コストの削減効果、原料農産物価格への影響を想定

・国内外のパートナーとのコミュニケーション、FLAG等当社脱炭素目標の共有

水利用効率の向上や水源地の確保・保全による、水関連リスク及びコストの削減

 

 

 

水関連対応コストの削減を想定

・生産拠点における水の効率的使用、定期的な水リスク調査によるクライシス発生の回避

サステナブルファイナンスによる資金調達

 

 

 

資金調達しやすくなることを想定

・ESGに関する外部評価の向上

 

〇移行計画

サッポログループは温室効果ガス削減目標についてSBT認定を取得しております。SBT1.5℃基準では、目標年に向かう毎年の削減水準が定められており、グループ全体で削減を目指しております。

このような削減計画を達成させるため、2022年から2030年の8年で約21億円の脱炭素投資を行います。生産拠点では設備の老朽化対策に合わせて高効率化への更新や工程の合理化等の省エネ活動、又は電力を中心に再エネの転換を進めます。脱炭素を目的とした投資判断の枠組みでは、ICP(Internal Carbon Pricing)を主要事業会社で導入しており、今回投資額の試算では6千円/t-CO2を採用しております。

 

〇適応策

基幹事業である酒類事業では、サッポロビール原料開発研究所を拠点に国内外の大学や研究機関、サプライヤーと連携しながら新品種の開発に取り組んでおります。気候変動により影響が大きくなると想定されるビール主原料について、病害抵抗性に優れ、異常気象でも収量や品質が安定している品種の実用化を目指し、開発を進めております。

 

③ リスク管理

サッポログループでは、気候変動は主要な原材料の調達や、水資源の確保が難しくなる等のリスクがある事を認識しております。

これらのリスクについては、「グループサステナビリティ委員会」「グループリスクマネジメント委員会」において、グループ重要リスクと位置づけ、リスクの評価、対応策の策定、実行、モニタリングを継続的に行っております。

 

④ 指標及び目標

気候変動・自然資本に関わる指標及び目標、実績以下のとおりです。

 

■脱炭素社会の実現

指標:温室効果ガス排出削減量

目標設定会社

目標(2030年)

最新実績 (2023年)

サッポロ

グループ

・スコープ1,2 温室効果ガス排出量を2022年比で42%削減

175.0千t ☆ (2022年比92.5%)

SB, SBL, PS

・スコープ3 温室効果ガス排出量を2022年比で25%削減

1,104.6千t ☆ (2022年比97%)

・FLAGスコープ1,3 温室効果ガス排出量を2022年比で31%削減

64.7千t (2022年比90%)

*SB:サッポロビール㈱、SBL:SLEEMAN BREWERIES LTD.、PS:ポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱

*「☆」マークがついている、温室効果ガス排出量は、当社により策定した算定ルール及び算定結果について国際基準に準拠した第三者検証を一般財団法人日本品質保証機構から受けております。算定範囲等の詳細は、当社WEBサイト(ESGデータ集)を参照願います。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/esg/

*温室効果ガス排出削減目標はSBT認定を取得しております。

*温室効果ガス排出量の最新実績及び過去実績は、下記に掲載しております。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/esg/

 

■自然共生社会の実現

指標:大麦/麦芽の単位量あたりの窒素肥料の投入量、施肥最適化コミュニケーション

目標設定会社

目標(2030年)

最新実績

SB

・大麦/麦芽の単位量あたりの窒素肥料の投入量把握及び施肥最適化コミュニケーション

※2030年までに実施割合を100%にする。

※当社のFLAG スコープ1,3目標の共有、窒素系化学肥料や有機肥料の活用について、現地訪問等による状況ヒアリング

※2025年からの新目標

 

指標:気候変動対応原料育種の進捗

目標設定会社

目標(2030年)

最新実績(2024年上期時点)

SB

・気候変動対応可能な特性を持つ大麦・ホップの国内品種登録出願

(大麦)

・赤かび抵抗性品種候補を公的評価機関に供試、播種を完了

・穂発芽体制に関する育種材料について、北海道、カナダにおける育種試験にそれぞれ供試、播種を完了

(ホップ)

・うどんこ病、べと病抵抗性のDNAによる判別技術確立へ向けて、試験実施中

・根系発達に関与する遺伝子に関して、予備調査実施中

 

<水資源の有効な利用、水リスクへの対応>

サッポログループでは、事業を通じて農作物や水資源等の自然の恵みを利用しております。世界中で自然の劣化が急速に進んでいる中で、当社にとって水は生産拠点での使用や、世界中で生産される農産物を原料に用いており必要不可欠であり、水リスクの把握と排除に努め、持続可能な水資源の利用を実現します。

 

① ガバナンス

<サッポログループのサステナビリティに関する考え方> ①ガバナンス」をご確認ください。

 

② 戦略

サッポログループは、「サッポログループ環境ビジョン2050」及び、サステナビリティ重点課題において「循環型社会の実現」を重点課題として設定し、具体的な取り組みとして水資源の保全を掲げております。

水リスクが事業継続に与える影響を把握するため、サッポログループは国内外の生産拠点を対象に、Aqueduct Water Risk Atlas(以下Aqueduct)と実態調査を組み合わせて調査を定期的に実施しております。2024年時点で「総合水リスク」、「水ストレス」ともに「Extremely High」に該当する生産拠点は存在しませんでした。しかしながら、「総合水リスク」においてベトナムのロンアン工場の地域1か所が「High」に分類されたため、水リスク低減を優先的に取り組む拠点とし、具体的な目標を設定して取り組みを進めていきます。

農産物の生産地についても水リスクの評価を行っております。今回は、基軸となるビール事業の主原料である大麦・ホップについて、主な調達先地域サプライヤー拠点を調査しました。その結果、総合水リスクで「Extremely High」に該当する拠点はありませんでした。

今後も、水リスクを定期的にAqueduct等のツールを活用してモニタリングします。新たに水リスクの高い生産拠点が判明した場合、その拠点の状況に応じて対策を強化し、持続可能な水管理を目指します。

 

③ リスク管理

サッポログループは、地球環境の変化、自然の劣化に伴い、水資源の確保が難しくなることは、事業継続上のリスクと捉えております。グループ重要リスクと捉え「グループサステナビリティ委員会」「グループリスクマネジメント委員会」において、リスクの評価、対応策の策定、実行、モニタリングを継続的に行っております。

 

④ 指標及び目標

水資源の保全に関わる指標及び目標、実績は以下のとおりです。2024年までは、サッポロビール、ポッカサッポロフード&ビバレッジは2030年までに2013年比で10%削減に取り組むという目標を設定していました。本目標に対して2020年時点で達成し、その後継続して達成をしている事から目標の見直しを行いました。2024年に行った水リスク調査を参考に、サッポロベトナムのロンアン工場における新たな「水資源の保全」に関する定量・定性の目標を新たに設定しております。

 

指標:用水原単位

目標設定会社

目標(2030年)

最新実績

SVL

ロンアン工場において、

・2030年まで用水原単位を2023年比10%削減

・洪水等の水リスクについて、適切に地域とコミュニケーションを図り、影響を最小化させるよう努める

※2025年からの新目標

 

指標:水リスク管理

目標設定会社

目標

最新実績(2023年)

SB, SBL, SAS, SVL, PS, PK, YSM, SSI,

・1回/3年以内による全生産拠点等の水リスクを調査

・水の効率的使用

CDP水セキュリティ Aリスト企業選定

*SVL:SAPPORO VIETNAM LTD.、SAS:STONE BREWING CO.,LLC、PK:POKKA PTE.LTD.、YSM:ヤスマ㈱、

SSI:神州一味噌㈱

 

<責任ある飲酒の推進>

サッポログループは、経営理念「潤いを創造し 豊かさに貢献する」の実現に向け、世界的な社会課題の解決につながる価値創造に取り組んでおります。お酒は適正飲酒が健康で明るい生活や豊かさに貢献する一方で、不適切な飲酒が心身の健康に害をもたらす社会課題であるのも事実です。サッポログループは、酒類事業を展開する企業グループの社会的な責任として、「責任ある飲酒の推進」をサステナビリティ重点課題の中で最注力課題と位置づけて取り組んでいきます。

 

① ガバナンス

「<サッポログループのサステナビリティに関する考え方> ①ガバナンス」に記載のとおり、サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループサステナビリティ委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置しており、「責任ある飲酒の推進」に関するサステナビリティ専門部会の具体的な目標達成に向けた取り組みをサポートするとともに取締役会への報告をしております。

 

② 戦略

サッポログループでは、2021年にアルコール関連問題対策のグローバルスローガンとして、「Promote Responsible Drinking」を定めております。「サッポログループの適正飲酒に関する基本方針」である「適正飲酒の啓発」と「不適切な飲酒の防止」に基づき、社員一人ひとりがその推進役として「サッポログループ行動指針」に記された取り組みを行っております。

また、酒類事業を展開する企業グループの社会的な責任としてアルコール関連問題の解決に向けて、「リスク低減」、「機会創出」の観点から取り組みを進めております。

 

サッポログループの責任ある飲酒の推進に関する取り組み(一部)

・ビール業界共通の小冊子作成に参画、配布

・小中学生向け小冊子の無料配布

・ホームページによる情報提供

・大学と企業向け適正飲酒啓発セミナーの開催

・不適切な飲酒による問題の予防

・世界酒類製造業団体のコミットメントへ向けての取り組み

・多様なニーズに応えるノンアルコール商品・微アルコール商品の開発・拡大

 

③ リスク管理

サッポログループはアルコール関連の諸問題をグループ重要リスクと捉え「グループサステナビリティ委員会」「グループリスクマネジメント委員会」において、リスクの評価、対応策の策定、実行、モニタリングを継続的に行っております。

 

④ 指標及び目標

2025年、社会環境や事業環境の変化に伴い指標と目標を増やし、一層取り組みを進めてまいります。責任ある飲酒の推進に関わる指標及び目標、実績は以下のとおりです。

 

指標:純アルコール量のラベル表示

目標設定会社

目標(2025年)

最新実績(2024年上期時点)

SB

・国産・国内販売の缶入りアルコール飲料、微アルコール飲料容器へ1本当たりの純アルコール量(g)を表示実施率100%

94%

 

指標:e-learning等による適正飲酒に関する啓発の社員受講率

目標設定会社

目標

最新実績(2023年)

SB, SLN

・国内従業員へのe-learning等による啓発

(1回/年以上)100%参加

・9月e-learning全従業員向け、責任ある飲酒の推進、実施

・社員受講率99.4%

 

指標:ノンアルコール、微アルコールや低アルコール製品に対する取組強化

目標設定会社

目標(2026年*SB)

最新実績

SB、SLN

・お客様の多様なニーズに応えるため、ノンアルコール、微アルコールや低アルコール製品において、選択肢を拡大していくことを目指す

※2025年からの新目標

 

指標:適正飲酒セミナーの満足度

目標設定会社

目標(2027年)

最新実績

SB

・お客様に適正な飲酒の情報を提供し、啓発活動を進めることで、アルコールの有害な摂取を防ぎ、社会に貢献する

※セミナー後の満足度アンケート(5段階評価)にて2027年までに4以上

※2025年からの新目標

 

指標:飲食店におけるアルコールの誤飲発生件数

目標設定会社

目標

最新実績(2024年上期時点)

SLN

・0件

・店舗におけるアルコール誤飲発生件数0件

 

指標:飲食店メニュー・POP類へ20歳未満飲酒防止メッセージの表示率

目標設定会社

目標

最新実績(2024年上期時点)

SLN

・100%

・飲食店メニュー・POP類へ20歳未満飲酒防止メッセージの表示率100%

*SLN:㈱サッポロライオン

 

<サッポログループ人財戦略(多様な人財の活躍)>

サッポログループは、中期経営計画(2023~26)の基本方針「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」を実現するため、すべての価値創出の源泉である「人財」を重要な経営基盤と位置づけ、人財戦略を策定、実行しております。

人財戦略では、北海道の「開拓使」をルーツとする創業以来の強みをベースとしながら、事業環境の変化に合わせた新たな価値創出に向け、多様な人財が「ちがいを活かして変化に挑む越境集団となる」ことを目指しております。なお、サステナビリティ重点課題において「多様な人財の活躍」を最注力課題に設定しています。

 

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※中期経営計画、事業戦略、財務目標に関しては「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営計画(2023~26)」をご確認ください。

 

① ガバナンス

サッポログループは、「多様な人財の活躍」をサステナビリティ重点課題として設定しております。サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループサステナビリティ委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置し、推進・統括するとともに、各事業会社の取り組みをサポートしております。また、サッポロホールディングス(株)人事担当役員を委員長とした「グループ人財戦略会議」において、人財に関する計画、アクションの策定・実行モニタリングを行う他、その内容は年2回の取締役会にて報告しております。

 

② 戦略

サッポログループ人財戦略においては、3つの具体的な戦略と5つの優先課題、KPIを定めて、人財育成と社内環境整備に取り組んでおります。

 

戦略①多様性×流動化=変化への挑戦

新たな領域の開拓や、コア領域の更なる成長を目指す当社グループでは、これまでの常識や同質性から脱却し、変化に挑むため、多様性と流動化の加速を重要課題としております。

「Ⅰ.多様性の促進」

優先課題に位置付ける女性活躍については、女性取締役、管理職比率の2026年KPI目標12%以上(サッポロホールディングス+4事業会社)に対し、各社にて年度目標を設定し、本人・マネジメント層向け研修、経営トップとの1on1や職場ぐるみの育成に取り組んでまいりました。結果、2024年女性取締役比率は15.2%と目標達成したものの、女性管理職比率は7.2%と目標8%に対し未達となりました。今後、更に社内人財の育成スピードの加速、社外人財の登用を通じ、確実な目標達成を強く会社全体で推進してまいります。

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そして、多様な人財の活躍の基盤となる環境を更に整備していくため、2024年は、これまでのD&I推進に“Equity”を新たに明示し、サッポログループDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)へと進化させました。社長をはじめとする経営層からのメッセージ発信、新デザインの展開により、社内外への理解・浸透に取り組みを進めた結果、従業員意識調査では、70%以上が多様なメンバーが働きやすい環境であると回答しております。一方で、「多様な考えを活かそうとしている」に関しては62%、KPIのDE&I・チーム力3.2(4点満点)に対しては3.0の実績であり、今後は多様な人財をインクルージョンし、チームとして力を発揮できる環境づくりを更に推進していくことが必要と考えております。

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「Ⅱ.社内外人財の流動的な活用」

事業ポートフォリオの見直しに合わせた柔軟な人財配置やDX・ITの活用等により、労働生産性は徐々に向上しております。効率化を継続して進める一方で、新たな価値の創出に向けた取り組みとして、多様な人財の流動化を強く推進しております。また、当社で20年以上前から大切にしてきた「自分のキャリアは自分で切り拓く」という基本の考えをベースに、キャリア実現の場を社外にまで拡大し、キャリア自律と挑戦を強く支援し、「誰もが越境し挑戦するのが当たり前」となる文化醸成に取り組んでおります。具体的な方策として、人財公募・社内外副業に関しては、新たに他企業との相互副業制度を開始し既存の社内外副業制度の経験者と合わせ2024年迄の累計で副業に261名がチャレンジし、2026年のKPIである社内副業経験者300名を目指します。社内外の新たな職場・業務へ自らの意思でチャレンジする経験を通じキャリア自律を推進していきます。更に当社は、グループ社員の約36%を50代以上のシニア層が占めており、シニア層の活躍も重要課題の一つです。希望者を対象としたキャリア面談は、2024年末現在50歳以上の約10%に実施し、新たなキャリア構築を支援する環境を整備しております。

多様な人財の活躍の一つとして国内グループ全社員に占めるキャリア採用者の割合は2024年末49%となっております。高度キャリア人財の採用についても、国際事業のグループ執行役員に社外人財を登用する等、事業戦略上重要なポジションへの登用を進めております。人財の流動化の加速を見据え、経営とキャリア採用者の座談会を実施し、誰もが働きやすい環境づくりに必要な課題の抽出、解決策の検討を進めております。

戦略②人的資本投資=個と組織の強化

サッポログループでは、中期経営計画で目指す「海外事業」「コア事業における収益力向上」を実現するため、優先し集中投資する人財として経営、グローバル、DX・ITの3つを掲げ、人財確保・育成を推進しております。

「Ⅲ.経営人財育成」

事業構造の転換に伴う環境変化へのスピード対応等、経営人財の高度化が求められる中、計画的な育成、登用を目的に、新たに策定された中長期経営方針を踏まえ、2024年に経営人財に求める要件を再定義しました。強化すべき点として「グローバル、ガバナンス知識の早期習得」を掲げ、育成施策を増強し2024年から展開しております。また、経営人財の充足率向上を目的に、経営人財育成を議論する会議体を整備、対象者の配置を含む個別育成管理、不足人財の明確化とその対応を進めております。

また、社長を含めた全役員を対象に、経営人財要件に照らした360度評価研修を実施しました。自身の行動を振り返り、強み・弱みを把握し、「経営層自らが変わる」を実践し、組織風土改革を推進するとともに、経営人財の更なる高度化へ取り組んでおります。

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「Ⅳ.スピードある成長への積極投資」

当社は事業戦略を担う重要な経営基盤である人財への積極的な投資を進めてきました。グローバル人財、DX・IT人財の育成、支援型マネジメントの進化やリスキリングに関わる取り組みを実施した結果、2024年の人財育成投資額は286百万円となりました。

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■グローバル人財育成

グローバル中核人財100名の確保を目標に、対象者を2段階(入学、配置レベル)に分け、きめ細やかに人事管理し、人財の高度化を進めております。専門人財の実践力強化に向け、語学、国際ビジネス力の強化研修等、グローバルビジネスの実践力強化への対応を加速しております。更に、将来の海外事業の拡大を見据え、人財の裾野を広げていくため、選抜者対象の若手グローバル人財(GPC)研修、グローバルリーダー人財(GLE)研修、全社向け語学力強化等、育成への投資を進めております。

■DX・IT人財育成

DX・IT基幹人財戦略に関しては「第2 事業の状況 1 経営方針・経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

■支援型マネジメントの進化

人の成長によって組織を成長させることを目的とした人事制度(育成評価制度)では、現場マネージャーが一堂に会し1,000時間以上の時間を年2回かけ、メンバーの育成を徹底的に議論し合う「人財育成会議」の実施等、人財育成に軸足を置いた運用を徹底しております。2023年から2024年にかけては、一人一人の社員の真の成長に向け「耳の痛いことが言える研修」を展開しました。

このような取り組みの結果、従業員意識調査において「職場では、各自の強みを活かしてチームとして高い成果をあげようとしている」と75%が回答しております。一方、KPI目標である「未来価値創造への挑戦」3.0以上(4.0満点)に対しては、2.7という結果となり、「職場には、ワクワクする目指したい姿を定めてみんなで失敗することを恐れずに挑戦しようとする雰囲気がある」という項目の改善を課題としております。サッポロビール社では将来の新規事業創出に繋げることを目指し、WONDER WORKSの活動を2023年スタートしており、2024年は、5年ぶりとなるビジネスコンテストを開催し、書類審査を通過した5組の中から、1組が事業化検討権を獲得しました。当日のコンテストの様子をLIVE配信する等、新しいことにチャレンジしたくなる気運を醸成しその実現を担える人財を数多く生み出す取り組みを進めております。

長く取り組んできた心理的安全性をベースにしたマネジメントの更なる進化と実現する力の強化に取り組んでまいります。

 

戦略③働き続けたい環境整備=100%の力発揮

「Ⅴ.エンゲージメント向上と健康促進」

多様な人財が100%の力を発揮しいきいきと活躍できる環境の整備に向けて2つの取り組みを通じて魅力ある会社への更なる変革を目指しております。

・働く場所・時間を自身で選択できる制度の拡大

サッポロビール社では、テレワーク、フレックスタイム、転勤の有無を自己選択できる制度等を早くから導入してまいりました。2024年は、リージョナル型社員のどこでも勤務制度(12月末3名が利用)、出張型営業職を対象とした「単身赴任又は自宅から通勤選択制度」を導入しました。サッポロライオン社でも、管理職時短制度を導入し、個々の働き方の価値観に合わせ、安心して働き続けられる環境整備を進めております。

・様々な事情を抱える社員の仕事との両立支援

サッポロビール社では、女性特有の健康問題への対応として、女性やその上司を対象とした女性健康セミナーの実施、生理休暇の更なる活用を目的に名称を「M休暇制度」とし、制度内容も一部変更しました。男性社員の育休取得率については、社内アンケートで収入や業務引継への不安が大きな課題と特定し、解消に向け収入計算ツールの提供やガイダンスの充実等の取り組みを行い、2023年100%を達成しました。2024年度は、育休の社員から業務を引き継ぐ職場メンバーの賞与を加算する仕組みを導入し、誰もが子育てに安心して参加できる環境づくりを進め、「NEXTなでしこ共働き・共育て支援企業」に選出されました。

病気と仕事の両立では、社内外へ越境した取り組みが評価され、「がんアライアワード2024」において、サッポロビール社は7年連続ゴールド賞、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社はシルバー賞を受賞。また、2024年は、今後増加が想定される介護での離職ゼロを目指し、介護に関する正しい知識の習得のための介護セミナーを全社で展開いたしました。従業員意識調査では、約75%が「育児や介護、ガン等の治療をしながらも働き続けられる環境が整っていると感じる」と回答。今後も、個々のメンバーが抱える課題と仕事の両立支援を進めてまいります。

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■健康経営推進

サッポログループでは、心身の健康は、従業員・その家族・会社の幸せを創造することにつながるものと考え、2017年8月に「健幸創造宣言」、2023年からは、新たな健康経営中期計画を策定し、健康投資施策を展開しております。運動習慣の定着化に向け、7回目の実施となる生活習慣改善キャンペーンでは、グループ全体で4,000名の従業員が参加、「健康行動習慣化」と職場全体の「組織の健康風土づくり」につなげております。2024年度は大規模法人、中小規模法人健康経営優良法人で、グループ計8社が認定されました。

 

サッポログループ健康経営中期計画(2023-2026)戦略マップ

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このような取り組みの結果、ワークエンゲージメントは2020年から0.7Pアップし、2024年度は、昨年同様の偏差値54と2026年KPIである54以上を2年連続達成しました。高エンゲージメント者割合も20.8%と同調査会社内で、トップクラスの高さとなっております。

一方で、出勤時の労働遂行能力の低下による労働損失は、コロナ後の出勤の増加、景気回復に伴う業務の繁忙等により、前年より0.1%悪化しました。全般として女性が悪化、家庭と仕事の両立、昇格時の業務変更に伴う自己効力感の低下等も要因と考えられ、個別キャリアサポート面談等の対応を実施しております。

今後も、高いエンゲージメントを維持しながら、両立支援や時間外労働削減による安心して働き続けられる環境づくり、健康経営の推進等を進めてまいります。

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*ワークエンゲージメントは偏差値、国内12社

**サッポロホールディングス(株)+4事業会社(SB,PS,SRE,SLN)

 

③ リスク管理

サッポログループは、国内の少子高齢化に伴う需要の縮小や、それに伴う従業員の雇用に伴う競争激化、人財の流動化、又は職場環境の悪化による生産性の低下や退職者増加による人財不足等により、事業活動に必要な人財を確保できなくなる等のリスクを認識しております。「グループサステナビリティ委員会」「グループリスクマネジメント委員会」において、グループ重要リスクと捉え、リスクの評価、対応策の策定、実行、モニタリングを継続的に行っております。

 

④ 指標及び目標

サッポログループの人財戦略に関する、指標及び目標は以下のとおりです。

また、実績にはついては、サッポログループ健康経営中期計画(2023ー2026)戦略マップをご参照下さい。

なお、サステナビリティ重点課題である「多様な人財の活躍」の指標及び目標、最新実績は当社WEBサイトを参照願います。

https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/policy/systems/

*2025年8月に実績及びサステナビリティ情報の更新を予定しております。

 

「Ⅰ.多様性の促進」

・女性取締役・管理職比率12%

・DE&I・チーム力3.2以上

「Ⅱ.社内外人財の流動的な活用」

・人員計画の確実な実行による生産性向上

・社内外副業経験保有者300名以上(SB)、グループへの拡大

・人財公募案件35件、応募70名以上

「Ⅲ.経営人財育成」

・サッポロホールディングス(株)+4事業会社(SB,PS,SRE,SLN)の経営人財サクセッションプラン

・人的資本情報の見える化

「Ⅳ.スピードある成長に向けた積極投資」

・グローバル中核人財100名

・DX・IT基幹人財200名

・「未来価値創造への挑戦」3.0以上

「Ⅴ.エンゲージメント向上と健康促進」

・ワークエンゲージメント54以上

・プレゼンティーイズム損失33.4以下

 

3【事業等のリスク】

1.当社のリスクマネジメント体制

(1)リスクマネジメントに関する基本的な考え方

当社グループは、「リスク」を組織運営に影響を与える不確実性と定義し、グループを取巻く様々な経営リスクの発生を未然に防止するとともに、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した場合には、発生時のリスク対策を適宜実施することで損失を最小限に抑えるなど、事業の継続的な維持・発展、及び社会からの信頼の確保に努めています。

なお、企業活動に重大な影響を及ぼす脅威と機会の双方を考慮しながらリスクを適切に管理し、対処しています。

 

(2)グループリスクマネジメント体制

当社グループは、リスクマネジメントの実効性を高めるために、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。「グループ中長期成長戦略」の実現に向けて、グループ全体の経営リスクを把握し、戦略の遂行と経営目標の達成を阻害する可能性のある重要リスクを特定、影響度と発生可能性で評価し、対応計画を策定、対策の実行・モニタリングを実施することでリスクの低減化に取り組むなど、適切なリスク管理体制を構築し、運用しています。

当社は、代表取締役社長を委員長とし、当社のリスク担当役員をはじめ酒類や食品・飲料、不動産など事業会社のリスク担当役員等から構成される「グループリスクマネジメント委員会」を経営会議の諮問機関として設置し、グループの事業活動に重大な影響を与える重要リスクを一元的に管理しています。同委員会は、グループリスクマネジメント方針の立案やリスク情報の収集、リスク低減に向けた取組のほか、グループ会社への必要な指示や支援などリスクマネジメント活動の全般を統括しています。また、同委員会の下部組織であるサブコミッティーでは、各事業会社のリスク担当部署と連携しながらグループ及び各社の重要リスクの取組の推進と進捗状況のモニタリングを実施しています。これらの取組やグループにおける重要リスクについては、当社の経営会議において、確認の上、取締役会へ報告し、取締役会はこれらの報告を通じて、リスクマネジメントの有効性を監督しています。

なお、グループリスクマネジメント委員会は、サステナビリティに関連するリスクについては、「グループサステナビリティ委員会」と連携しながらリスクを管理しています。

 

◆グループリスクマネジメント体制図

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2.事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経営の状況等に関する事項のうち、経営者が重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。各リスクについては、社内で定めた指標に基づき、グループとして影響度が大きいリスクを定量・定性の両面から総合的に評価し、影響度と発生可能性を「大」「中」「小」の3段階で評価しており、双方が「中」以上のリスク項目を重要リスクとしています。但し、以下は全てのリスクを網羅したものではなく、記載された項目以外のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

<グループ重要リスクのヒートマップ>

0102010_018.png

 

<グループ重要リスクへの対応>

区分

項番

項目

リスク内容

実施中の主な取組(対策)

 

発生

可能性

戦略リスク(注)

 

事業ポ|トフォリオ

酒類事業を中核とした当社グループを取り巻く環境においては、国内及び海外の経済情勢やアルコールに対する社会の価値観、市場や事業環境の変化等に対して、事業やブランド、製品ポートフォリオの組み換えを柔軟に進めることができない場合、経営計画が未達となる可能性があります。また、事業ポートフォリオの強化を目指して買収・提携・協業した相手先の経営悪化や組織・事業について適切なガバナンス体制が構築できないことにより、当初予想していたシナジー効果を発揮できない場合、当社グループが当初想定していた成果を得られない可能性があります。加えて、買収・提携・協業した事業について、経営環境の悪化に伴う収益見通しの低下により減損損失が発生し、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた資本収益性の分析を踏まえた定期的な事業ポートフォリオの見直し

・「中期経営計画(2023~26)」における、事業ポートフォリオの見直しと、各事業のポジショニングに沿った(成長・収益力強化・再編・事業整理)グループマネジメントの推進

・ROICを社内管理指標とし、事業別のWACCに基づいた事業継続判断基準の厳密化と、ROICツリーを用いた事業モニタリングの徹底

・2025年2月に発表の「グループ中長期成長戦略」に基づく「世界をフィールドに豊かなビール体験、顧客体験を創造する企業」に向けた各戦略の実行(特に事業ポートフォリオの観点ではアルコール・ノンアルコール分野における戦略的提携やM&Aの検討推進及び、これを支える事業持株会社制に向けた国内・海外2事業本部体制でのガバナンス強化等)

 

原材料等の調達

当社グループは、原材料の調達に関し、市況の悪化や為替の変動等により価格が上昇することがあります。また、気候変動や自然災害、地政学リスク等により必要数を確保できない、あるいは納期の遅延が発生するなど製造計画に影響が出ることがあります。それらが長期化した場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・市況の最新情報収集強化、調達先の分散・多様化

・適正在庫の水準の維持、為替予約等

・各種調査機関等を活用した市場動向の把握

・原材料価格上昇の適切な価格転嫁

・サプライチェーン全体での効率的な生産活動の促進

 

多様な人財の確保と育成

当社グループは、多様な人財の活躍を目指し、多様な価値観、新しい働き方に合わせた制度・環境を整備しておりますが、労働市場における人財獲得の競争激化、育成不足により、事業戦略上必要と特定した人財(経営、グローバル、DX・IT等)が十分に確保できない可能性があります。また、プレゼンティーイズムやエンゲージメントの悪化による生産性の低下や退職者の増加により人財不足となる可能性があります。加えて、企業競争力の低下や労働生産性の悪化に伴う収益力の低下により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・人財ポートフォリオの明確化。育成だけに留まらず、外部からの登用も含め確保

・以下人財戦略における優先課題を実行

①多様性の促進

②社内外人財の流動的な活用

③経営人財育成

④スピードある成長に向けた積極投資

⑤エンゲージメント向上と健康促進

 

※具体的な対策としては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。

 

R

&

D

当社グループは、「おいしさ」と「健康」を基軸に、消費者ニーズや生活様式の変化に対応した価値を提供できる研究開発、商品提案を継続的に実施しておりますが、技術変革による事業環境の変化により、当社の製品や製造工程において強みを持つ技術が陳腐化し、競争優位性が失われる可能性があります。また、消費者嗜好の変化や技術革新、法改正、気候変動等によって予測できない事業環境の変化が起こり、市場における競争力が低下した場合は、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・「おいしさ」と「健康」を基軸に消費者の価値観やニーズ、生活様式の変化に対応した価値を提案する研究開発、商品提案

・市場動向の定期的な分析及び酒類・食品飲料事業におけるR&D戦略立案及び推進状況のモニタリング

・気候変動に対応した大麦やホップの育種

 

 

区分

項番

項目

リスク内容

実施中の主な取組(対策)

発生

可能性

戦略リスク(注)

 

情報技術

当社グループは、成長戦略を支える施策として、DX・IT戦略の推進を行い、専門性の高い人財の確保や育成に努めておりますが、製品の販促にデータやデジタル技術を十分活用できないことで、当社製品の魅力を適格・迅速に顧客に伝達できず、シェア拡大の機会を失う可能性があります。また、業務プロセスにデータやデジタル技術を適切に活用できないことにより、業務効率性を改善できず、競争優位性が低下する可能性があります。加えて、グループ内において価値のあるデータを適切に収集・管理し、企業活動に有効活用できない場合は、機会損失や非効率が発生する可能性があります。

・DX・IT戦略の推進体制の構築・運用

・組織・人財マネジメントの整備

・育成人財の活躍に向けた環境整備

・データ基盤の構築・活用推進

・生成AIの有用性検証及び全社展開・活用推進

・全社員向けeラーニング、アセスメントの実施

・各事業におけるデジタルマーケティングの強化

・データガバナンスの整備

 

アルコ|ル関連問題

アルコールは人びとの生活に豊かさと潤いを与える一方で、過度の摂取による様々な健康問題や社会的影響が指摘されています。WHO(世界保健機関)では、「有害なアルコール使用を低減するための世界戦略」が採択され、日本においても「アルコール健康障害対策基本法」が施行されているなど、世界的に規制が一層強化されることが予想されます。また、近年では健康志向の高まりやニーズの多様化により、アルコールに対する消費者需要が縮小傾向にあり、その結果、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・「未成年者飲酒()」「妊産婦飲酒」「多量飲酒」「飲酒運転」等の不適切な飲酒撲滅に向けた「責任ある飲酒の推進」の啓発活動実施

・アルコール関連問題に関係する自主ガイドラインに沿った事前審査の実施など、不適切な広告表現等の防止

・外食事業におけるアルコール飲料と清涼飲料水の誤飲防止策の実施

・ノンアルコール商品、微アルコール商品の開発及び取組強化

)日本では20歳未満(各国の法律による)

 

具体的な対策としては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。

オペレーショナルリスク

 

製品・サ|ビス品質

当社グループは、お客様への安全・安心な商品・サービスの提供を最優先課題とし、グループ各社の関係部門・部署に対して品質・食品安全管理、リスクマネジメント、リスクコミュニケーションに関する仕組みの維持及び啓発を実施する等、品質保証の取組を強化しております。しかしながら、製品・原料に係る品質及び表示の問題等が発生した場合は、製品回収、出荷停止、損害賠償等が発生する可能性があり、費用や時間を要するのみならず、ブランドイメージ下落、市場シェアの低下を招くことがあります。また、外食事業において、店舗等で食中毒が発生した場合は、一定期間の営業停止等を命ぜられるなど、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・「サッポログループの品質保証体系」及び「サッポログループ品質行動指針」を策定

・グループ全体の品質保証を担当する組織として、サッポロビール社の品質保証部内にグループ品質保証グループを設置し、各社の品質保証活動のモニタリングを実施

・調達取引先や製造委託会社等への指導及び監査の実施

・事業内容や商品・サービスの特性に応じたグローバルな食品安全システム「GFSI(1)ベンチマーク規格」、「HACCP(2)」等に基づく管理体制を構築

 

(※1)GFSI(Global Food Safety Initiative)とは、世界の食品サプライチェーン全体における食品安全リスク低減を主な目的とした組織です。

(※2)HACCP(Hazard Analysis&Critical Control Point/危害要因分析・重要管理点)は、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表されています。

 

情報セキュリティ

当社グループは、事業活動において、様々なシステムを利用しており、多くの重要情報を取り扱っております。一方、企業を標的にしたサイバー攻撃は日々高度化・巧妙化しており、重要情報の改ざん、個人情報の流出、システム停止等が発生した場合は、当社の事業活動に支障を来し、グループの業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。また、近年ではプライバシー保護や経済安全保障上の観点から各国における個人情報保護法やデータ保護規制等の改定、運用強化も進んでおり、企業には益々高度な情報管理が求められています。

・外部からの攻撃に対する多層的な防御・監視体制の構築

・外部診断の実施など情報システムの適切な管理体制の構築

・ID・端末管理のルールの徹底、棚卸実施

・標的型攻撃メール訓練による従業員への啓発

・情報保護に関する従業員教育・啓発、法対応等、組織的な対応策の実施

 

大規模災害

近年は、国内外問わず世界各地において、地震などのリスクに加え、気候変動による豪雨や洪水等の自然災害リスクが高まっています。当社グループの事業拠点がある地域において、このような大規模な自然災害やパンデミック等が発生し、サプライチェーンの寸断やライフラインの遮断による事業活動の停止、事務所や工場など施設等の改修に係る多額の費用の発生など、当社グループの事業運営に重大な支障が生じた場合、また、事業活動の復旧に長期間を要した場合は、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・事業継続マネジメント(BCM)構築及び事業継続計画(BCP)の更新

・備蓄・非常用電源・通信等の整備強化

・システム障害対応、データバックアップ体制構築

・各種訓練・演習実施による災害対応意識向上のための啓発

区分

項番

項目

リスク内容

実施中の主な取組(対策)

発生

可能性

財務・税務リスク

 

10

財務・税務

当社グループは、資金調達コストの低減などキャッシュフロー最適化に取り組んでいますが、為替変動による円換算損益の悪化や為替予約の失敗、また、金利変動による受取利息や支払利息の増減、金融資産や金融負債の価値増減等により損失を発生させる可能性があります。また、事業環境や収益性に鑑み、慎重な投資を実施しておりますが、将来、グループが保有する固定資産及び企業結合により取得したのれん等について、収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生する可能性があります。加えて、税制改正や得意先、投資先の信用リスク等に備えておりますが、税務当局からの指摘を受けた場合や、与信管理不足により貸倒れ損失が増加した場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・リスク回避または軽減を目的とした為替予約やスワップなどのデリバティブ取引や円建て取引の検討・実施

・金利環境等の変化を踏まえた資金の調達手段の検討と分散

・金融市場動向の継続的なモニタリング

・グループの「投資基準」「事業撤退基準」に基づく投資判断の実施

・新規取引先の信用調査の実施、既存取引先のモニタリング

ESGリスク

 

11

環境

当社グループは、エネルギー使用量の削減や温室効果ガス排出量の削減などの気候変動の緩和策やプラスチック資源のリデュース・リサイクルのほか、廃棄物・食品ロス削減、水資源の保全など様々な環境に対する取組を実施していますが、さらなる気候変動の進行、法規制強化や新たな規制・政策等の導入により、法令遵守に係る追加コストや事業活動に影響が生じる可能性があります。また、気候変動に対応した原料育種などの取組も推進しておりますが、将来的な気候変動によって主要な原材料や必要な水資源が確保できない場合は、操業停止による機会損失が発生する可能性があります。加えて、当社が原因となる環境汚染や生態系破壊により、計画外の費用の発生や企業として社会の期待に十分に応えられず、企業価値の低下に繋がった場合は、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・「サッポログループ環境ビジョン2050」を策定し、「環境との調和」の実現に向けて、①脱炭素社会②循環型社会③自然共生社会を目指すべく取組を推進

・2019年5月の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言を踏まえた情報開示の実施

・温室効果ガスの排出削減(Sc3)

・森林破壊防止

・2024年「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」開示提言の採用者「TNFD Adopter」へ登録し情報開示を実施

・気候変動に適応した新品種(大麦・ホップ)開発、大麦の窒素肥料の施肥最適化等

・水リスクへの対応、モニタリングの実施

・プラスチック素材の削減

 

具体的な対策につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。

 

12

人権尊重

企業活動のグローバル化が進み、企業の人権に対する配慮や取組に対する社会からの関心が高まっています。当社グループは、「サッポログループ人権方針」に基づき、人種、民族、国籍、信条、性別、宗教、障がいの有無、性的指向、性自認などの理由によって不当に差別されることのない職場環境を確保しています。また、お取引企業様の協力のもと、人権への悪影響を防止し、人権尊重の取組を推進していますが、企業としての人権尊重に対する責任を果たせず、実際に人権侵害に対する問題等が顕在化した場合は、社会的信用が失われ、その結果、調達や生産、売上にも影響が出るなど事業の縮小や撤退などを余儀なくされる、また、法令違反に対する罰金や訴訟など経済的な制裁措置を受けるなど企業価値の低下に繋がり、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、実施

・「サッポログループ人権方針」を策定し、本方針に沿った持続可能なサプライチェーンの構築

・サステナビリティ重点課題の進捗モニタリングと適切な情報開示

・「サステナビリティ調達アンケート」やSedexを通じて、遵守状況の評価を実施

 

 

13

ガバナンス・コンプライアンス

当社は、「コーポレートガバナンスに関する基本方針」に基づき、持株会社体制のもとでグループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化し、経営における透明性の向上と経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めています。また、ガバナンス強化のため、「内部統制システム構築の基本方針」を定め、健全な企業経営を行うための体制、仕組みを構築・整備しています。しかしながら、将来的に事業環境や外部環境等の変化により、不測の事態が発生した場合は、通常の監視や統制が困難になる可能性があり、それによりガバナンスの実効性が低下するおそれがあります。ガバナンスの実効性の低下は、法令違反等のコンプライアンスのリスクに繋がる可能性があり、罰金や訴訟など経済的な制裁措置やレピュテーションリスクが生じるおそれがあります。その結果、企業価値が低下するなど当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・ガバナンスの実効性を確保するため、「コーポレートガバナンス・コード」を踏まえたモニタリング機能強化

・全役員、従業員を対象としたコンプライアンス研修等の実施によるコンプライアンス意識の浸透・向上

・グループ全体でのガバナンスリスク低減を図るため、予防に重点を置いた取組の推進・強化

・最新の法規制情報をグループ全体に発信する体制を整備し、グループ各社が正確かつ迅速に法改正等に対応できる仕組みを構築

(注)戦略リスクについては、それぞれ単独のリスクではなく、相互に連関したリスクであると認識しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①業績                                        (単位:百万円)

 

売上収益

事業利益(※)

営業利益

親会社の所有者に

帰属する当期利益

2024年12月期

530,783

22,038

10,416

7,714

2023年12月期

518,632

15,633

11,820

8,724

増減率(%)

2.3

41.0

△11.9

△11.6

※事業利益は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の利益指標です。

 

<売上収益>

売上収益は、食品飲料事業が減収となった一方で、酒類事業において国内市場における酒税改正の影響によるビールの好調な販売やアメリカ、アジアにおける「SAPPORO PREMIUM BEER」の好調な販売、円安効果等により、全体では前期比2.3%増、122億円増収の5,308億円となりました。

 

<事業利益>

事業利益は、酒類事業や不動産事業による増収効果や前年の海外飲料における滞留債権に対する貸倒引当金計上の反動等により、前期比41.0%増、64億円増益の220億円となりました。

 

<営業利益>

営業利益は、連結事業利益増加による影響があった一方で、「STONE BREWING CO., LLC(以下、Stone社)」の株式を取得した際に生じたのれんの減損損失を計上したこと等により、前期比11.9%減、14億円減益の104億円となりました。

 

<親会社の所有者に帰属する当期利益>

親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減益等により、前期比11.6%減、前期比10億円減益の77億円となりました。また、基本的1株当たり利益は99.00円(前期111.99円)となり、親会社所有者帰属持分比率は29.5%(前期27.5%)となりました。

 

以下、事業セグメント別の概況は記載のとおりです。

 

〔酒類事業〕

売上収益は、国内市場における酒税改正の影響によるビールの好調な販売、アメリカ、アジアにおける「SAPPORO PREMIUM BEER」の好調な販売、円安効果等で前期から増収となりました。

事業利益は、カナダの市況悪化やアメリカのクラフトビール市場の軟化はあるものの、国内酒類の増収効果により前期から増益となりました。

営業利益は、事業利益増加の一方、Stone社の株式を取得した際に生じたのれんの減損損失を計上したことにより前期から減益となりました。

 

 ■売上収益 3,882億円(前期比113億円、3.0%増)

 ■事業利益  188億円(前期比28億円、17.4%増)

 ■営業利益   47億円(前期比43億円、47.5%減)

 

酒類事業に属する国内酒類、海外酒類、外食の詳細は次のとおりです。

 

(国内酒類)

新型コロナウイルスの影響も一服し、業務用市場は前年並みに推移した一方で、家庭用市場は酒税改正に伴う発泡酒市場の縮小もあり、軟調に推移しました。日本国内のビール類(ビール・発泡酒(含む発泡酒②))の総需要は前年比97%と推定されます。また、ビールの総需要は前年比105%と推定されます。

当期は、2023年10月の酒税改正を踏まえ、ビール強化とRTD強化(※)により一層注力しました。

そのような中、発泡酒(含む発泡酒②)が前年の酒税改正における駆け込み需要の反動減の影響を受けた一方で、「サッポロ生ビール黒ラベル」の缶製品の売上数量は前期比117%と好調に推移したことにより、当社グループの国内におけるビール類合計の売上数量は、前年比100%になりました。また、RTD缶の売上数量は前年比107%となりました。

※ RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイなどのアルコール飲料。

 

(海外酒類)

カナダにおけるビール類総需要は引き続き軟調に推移しており、前期を下回る見込みです。また、アメリカにおける全体のビール類総需要も前期を下回る見込みです。特にクラフトビール市場は引き続き減速しており、前年を下回る状況が続いています。この結果、海外ブランドのビールの売上数量は前期を下回りました。

これに対し、北米でのサッポロブランドビールの売上数量は、主に米国内での販売シナジーの発揮による販売網の強化が進み前期比111%となりました。

 

(外食)

外食需要は、社会経済活動の正常化が進み、消費活動や旅行など人流の回復が見られたことで好調に推移しました。そのような中、価格改定や来店客の回復、インバウンド層やシニア層の獲得により、外食事業の既存店売上高は前期比で107%となりました。

 

〔食品飲料事業〕

売上収益は、国内市場における商品改廃や海外飲料の輸出売上減少等の影響により前期から減収となりました。

事業利益は、原材料高騰の影響を受けたものの、コスト構造改革による効果が寄与したことや前年の海外飲料における滞留債権に対する貸倒引当金計上の反動等により、食品飲料事業全体では前期から増益となりました。

営業利益は、国内食品飲料における固定資産の減損損失戻入益や土地売却益等の計上により、前期から増益となりました。

 

 ■売上収益 1,179億円(前期比20億円、1.6%減)

 ■事業利益   34億円(前期比18億円、109.9%増)

 ■営業利益   52億円(前期比35億円、207.7%増)

 

食品飲料事業に属する国内食品飲料、海外飲料の詳細は次のとおりです。

 

(国内食品飲料)

国内の飲料総需要は、前期比99%と推定されます。そのような中、当社グループの国内飲料の売上金額は、レモン事業の主力ブランド商品「キレートレモン」が前期比114%、コーン茶を中心に「TOCHIとCRAFT」シリーズ茶系飲料が前期比109%と好調に推移しましたが、飲料全体では商品改廃等により、前期比97%となりました。また、主力ブランド商品「ポッカレモン100」瓶3品を「高めの血圧(収縮期血圧)を下げる」機能性表示食品としてリニューアル発売して以降、多くのお客様にご好評いただき、前期比108%と好調に推移しています。

 

(海外飲料)

シンガポールでは、インフレの継続により市場全体の需要がやや低下しており、売上金額は前期比95%(現地通貨ベース)となりました。

また、注力エリアであるマレーシアでは、製品カテゴリーやエリアを絞った販売活動と継続的な販売体制の改善を並行して行ったことにより、売上金額は前期比118%(現地通貨ベース)となりました。

上記を除く輸出事業においては、中東への輸出事業で前年に財務状況の悪化が生じた取引先に対しての販売停止等がありましたが、回復に向けて新たな取引先との契約を完了し、2024年8月より輸出を再開しています。

 

 

〔不動産事業〕

首都圏のオフィス賃貸市場では、稼働率および平均賃料水準は回復傾向にあり、特に都心5区の中でも渋谷区のオフィス空室率は他区と比較して低く、それに伴い賃料も上昇傾向にあります。

そのような中、売上収益は、「恵比寿ガーデンプレイス」のオフィス稼働率の向上、インバウンド需要の継続による「サッポロファクトリー」のアウトドアブランド商品の需要増、および催事イベントの好調、また、私募ファンドへのエクイティ投資による配当収入等により、前期から増収となりました。

事業利益は、人件費高騰等による管理費用増加や、2024年1月にオープンした「ホテル創成札幌 Mギャラリーコレクション」の開業コストの計上がある一方、売上収益の増収効果により前期から増益となりました。

営業利益は、2023年の不動産売却益の反動等により、前期から減益となりました。

 

 ■売上収益 246億円(前期比29億円、13.4%増)

 ■事業利益  78億円(前期比21億円、35.7%増)

 ■営業利益  73億円(前期比15億円、17.2%減)

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末における資産、負債、資本の状況とそれらの増減の要因は次のとおりです。

 

 

 

(単位:百万円)

区分

2023年12月期

2024年12月期

増減額

流動資産

176,353

193,918

17,565

非流動資産

487,220

471,045

△16,175

資産合計

663,573

664,963

1,390

流動負債

191,204

207,007

15,803

非流動負債

289,121

260,799

△28,323

負債合計

480,325

467,805

△12,520

資本合計

183,248

197,157

13,909

負債及び資本合計

663,573

664,963

1,390

(資産)

資産合計は、減損損失によるのれん及び投資有価証券の売却によるその他の金融資産(非流動)の減少等があった一方、有形固定資産の増加等によって、前連結会計年度末と比較して14億円増加し、6,650億円となりました。

(負債)

負債合計は、社債及び借入金(流動)及びリース負債(非流動)の増加等があった一方、社債及び借入金(非流動)の減少等によって、前連結会計年度末と比較して125億円減少し、4,678億円となりました。

(資本)

資本合計は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加等によって、前連結会計年度末と比較して139億円増加し、1,972億円となりました。

(各種財務指標)

流動比率は、流動資産が176億円増加し、流動負債が158億円増加したことにより、前連結会計年度の92.2%から93.7%に1.4ポイント増加しております。

親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度の27.5%から29.5%に増加しております。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により親会社の所有者に帰属する持分合計が増加したこと等によるものです。

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、前連結会計年度の5.0%から4.1%に減少しております。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益が減少したこと等によるものです。

ネットD/Eレシオは、前連結会計年度の1.1倍から0.9倍に減少しております。これは、社債及び借入金(固定)の減少等によりネット有利子負債が減少し、親会社の所有者に帰属する持分合計が増加したことによるものです。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ69億円、40%増加し、当連結会計年度末には241億円となりました。

当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

 

 

(単位:百万円)

区分

2023年12月期

2024年12月期

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

45,446

36,109

△9,337

投資活動によるキャッシュ・フロー

△16,439

△5,836

10,602

フリー・キャッシュ・フロー

29,007

30,273

1,266

財務活動によるキャッシュ・フロー

△27,140

△25,372

1,769

現金及び現金同等物に係る換算差額

△43

2,035

2,078

現金及び現金同等物の増減額(△減少)

1,824

6,936

5,113

現金及び現金同等物の期首残高

15,380

17,204

1,824

現金及び現金同等物の期末残高

17,204

24,140

6,936

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、361億円(前期は454億円の収入)となりました。これは主に、法人所得税等の支払額又は還付額62億円、利息の支払額32億円の減少要因があった一方、減価償却費及び償却費226億円、減損損失及び減損損失戻入益134億円、税引前利益116億円の増加要因があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、58億円(前期は164億円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入が206億円、有形固定資産の売却による収入が56億円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の売却による収入が30億円あった一方、有形固定資産の取得による支出177億円、投資不動産の取得による支出175億円があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、254億円(前期は271億円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の増加額が71億円あった一方、長期借入金の返済による支出が174億円、コマーシャル・ペーパーの減少額が80億円、リース負債の返済による支出が40億円、配当金の支払額が37億円あったことによるものです。

 

なお、当連結会計年度末のセグメント別の設備投資額等の内訳は、以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

酒類

食品飲料

不動産

その他

全社又は消去

連結合計

EBITDA(注)

 2024年12月期

30,419

6,344

13,999

19

△6,733

44,047

 2023年12月期

26,624

4,420

11,261

15

△6,291

36,029

 増減

3,795

1,924

2,738

3

△442

8,018

設備投資

(支払ベース)

 2024年12月期

14,050

2,266

19,201

1,440

36,957

 2023年12月期

12,210

3,426

11,852

1,435

28,923

 増減

1,841

△1,160

7,349

5

8,034

減価償却費及び

償却費

 2024年12月期

12,246

2,914

6,150

1,312

22,622

 2023年12月期

11,195

2,786

5,477

1,514

20,971

 増減

1,051

128

673

△202

1,651

(注) EBITDA(事業利益+減価償却費)算出の際の減価償却費につきまして、飲食店舗の家賃にかかる使用権資産の減価償却費を除いております。

 

(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来に関する事項には不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 

①重要性がある会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。

連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示、並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや前提が必要となります。当社グループは、過去の実績又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しています。

重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

②当連結会計年度の経営成績の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 業績」に記載のとおりです。

 

③経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼすと思われる事項については、概ね「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

中でも、当社グループでは海外での事業展開を進めており、日本国内の景気動向のみではなく、事業活動を行っている国・地域の経済動向及びその他の要因により影響を受ける可能性があり、リスク管理体制を一層強化する取り組みを進めます。

経営環境が依然として不透明な状況が続く中、環境変化への対応力を一層高める取り組みを進めます。

 

④事業戦略と見通し

〔2025年見通し〕

「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」をテーマに、「中期経営計画(2023~26)」の3年目として、構造改革は継続しつつ、2025年以降の成長戦略の実行を確かなものにしていきます。

次期は、2024年度に引き続き原材料価格上昇に加え、物流費の高騰が見込まれます。

このような中、当社グループは構造改革の断行と成長の加速により更なる収益力の強化を図ります。

国内の酒類事業や食品飲料事業は、更なる原材料や運搬費の高騰が見込まれますが、国内酒類事業では、価格改定に加えてコスト削減等の対応を図りその影響を吸収するとともに、食品飲料事業では、主力事業であるレモンの着実な成長と収益改善策により、収益力強化を図ります。

不動産事業では、保有・関与物件に係る有形・無形の資産価値向上および投資運用事業の推進により資産効率を高め、恵比寿・札幌のまちづくりを通じた企業価値の向上に努めます。

海外事業は、主にサッポロブランドの成長を図るとともに、コスト構造改革を断行してまいります。

以上により、当社グループ全体の売上収益、事業利益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、当期と比較して増収増益となる見通しです。

 

〔酒類事業〕

(国内酒類)

次期は、2026年10月の酒税改定を見据えてビールへの取り組みをさらに強化すると共にRTDを中心に事業の成長を目指してまいります。特にビール事業においては当社独自の「個性」・「物語」・「資産」をさらに強みに変えるブランド投資により、改めてビールの魅力の追求と向上を図ってまいります。2024年に引き続き、原材料等の高騰や市場でのインフレ等により、国内酒類の業績に強く影響を与えるものの、価格改定や品種ミックス改善に加えて、コストコントロールに努めること等により、その影響を吸収する見通しです。

 

(海外酒類)

アメリカにおいては、収益性の改善を喫緊の課題と認識しており、生産拠点のオペレーションコストを抜本的に見直す構造改革を断行します。また、サッポロブランドの成長に向けた取り組みは継続し、その魅力を一層広めてまいります。カナダにおいては、プレミアムブランドのビール及びRTDやノンアルコールビールの強化に引き続き注力するとともに、コスト構造改革を進めることで事業の効率性を高めて更なる収益性の向上に努めます。

 

(外食)

需要回復に転じた2023年~2024年の基調を維持し、更に強固な経営基盤の構築を図るべく、既存店の強化を柱としながら、YEBISU BAR、銀座ライオンLEOなど注力業態の展開を進めます。引き続き原材料や諸コストの上昇が見込まれますが、適時・適切な価格改定、顧客体験価値向上の取組を通じ、収益性とブランド訴求力を高めていきます。

 

(国内食品飲料)

2024年に引き続き、原材料やエネルギーコスト、物流費等の高騰が見込まれますが、主力であるレモン事業の着実な成長とR&Dを中心にリソース集中に向けた取り組みを加速させます。また、変動販売費の削減等、収益改善策の実行により収益力の強化を図ります。

 

(海外飲料)

海外飲料は、2024年に引き続き原材料等の高騰の影響を受けるものの、価格改定、原材料の調達改善等によりその対策を講じます。シンガポールでは現在の市場シェアを維持しつつ、効率性向上による利益最大化を図ります。また、マレーシア、中東等の成長余地のある国や地域で販売及びマーケティングの体制を強化することで、グループの成長ドライバーとしていきます。

 

〔不動産事業〕

次期は、保有・関与物件に係る有形・無形の資産価値向上および投資運用事業の推進により資産効率を高め、恵比寿・札幌のまちづくりを通じた企業価値の向上に努めます。

 

⑤当連結会計年度末の連結財政状態の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりです。

 

⑥資本の財源及び資金の流動性についての分析

ⅰ)キャッシュ・フローの分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりです。

 

2023年12月期

2024年12月期

親会社所有者帰属持分比率(%)

27.5

29.5

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)

73.0

97.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

6.1

7.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

21.3

11.3

親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分÷資産合計

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額÷資産合計

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷利払い

(注)1 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

   2 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

   3 有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象

としております。

 

ⅱ)資金の流動性及び資金の調達について

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動のための製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資として酒類事業及び食品飲料事業における工場整備への投資、不動産事業による投資不動産への投資、また海外事業や新規事業等の成長分野に対するM&Aへの投資等によるものであります。

当社グループは、主要な連結子会社にキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、日本国内のグループ内資金を当社が一元管理しています。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っています。

現在そして将来の営業活動及び債務の返済等の資金需要に備え十分な資金を確保するために、資金調達及び流動性の確保に努めています。必要な資金は、主に営業活動によって得られるキャッシュ・フロー、金融機関等からの借入れによって調達しています。

 

⑦経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

今後の方針につきましては、「中期経営計画(2023~26)」の基本方針である「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」をテーマに、経営課題への取り組みを推進します。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(kl)

 

前期比(%)

酒類事業(ビール・発泡酒・新ジャンル等)

807,829

0.3

酒類事業(ワイン・焼酎・RTD等)

126,940

24.4

食品飲料事業(飲料水等)

301,235

△9.5

 

②受注実績

当社グループでは、ほとんど受注生産を行っておりません。

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

 

前期比(%)

酒類事業

388,162

3.0

食品飲料事業

117,950

△1.6

不動産事業

24,602

13.4

報告セグメント計

530,714

2.4

その他

69

△52.6

合計

530,783

2.3

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

国分グループ本社㈱

73,854

14.2

77,812

14.7

 

5【経営上の重要な契約等】

(業務提携)

バカルディ ジャパン株式会社との業務提携

当社の子会社であるサッポロビール㈱は、2011年5月19日付で、ラムブランド「バカルディ」等多くの有力ブランドを所有するバカルディ ジャパン㈱と同社が日本国内で販売権を有するスピリッツをはじめとする各ブランドの、日本国内における独占販売に関する業務提携契約を締結しました。

 

6【研究開発活動】

当グループの研究開発は、さまざまな分野で培ってきたコア技術と強みとする素材とをかけ合わせ、さらにはオープンイノベーションも推進しながら、基盤研究から応用研究、商品技術開発までを行い、お客様が求める価値を継続的に提供するとともに、新たなカテゴリや市場を開拓することを目指しています。

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は25億円です。

 

セグメント別の状況は次のとおりです。

 

[酒類事業]

1.研究開発について

サッポロビール社は「価値創造フロンティア研究所」「原料開発研究所」「技術開発部」「商品・技術イノベーション部」及び「R&D戦略部」の体制で研究開発を進めております。これら5部門で総勢約92名(うち22名が女性)が研究開発に取り組んでいます(研究補助者は含みません)。

3月24日~27日に開催された(公社)日本農芸化学会の2024年度大会(※1)において、サッポロビール社は「酵母の醸造特性・物質変換に着目したビールテイスト飲料の品質向上と商品開発」の研究テーマで「2024年度農芸化学技術賞」(※2)を受賞しました。この受賞は、ビール工場における酵母活用技術において、遺伝子解析や成分分析を駆使した研究や消費者の嗜好の多様化への対応とより良いビール品質を追求してきた当社の総合的な実績が評価されたことによるものです。

2024年5月に開催された第39回ヨーロッパ醸造学会大会(※3)では、サーバーで注いだ生ビールの泡が飲むたびに再生する現象や、旨さ長持ち麦芽の低アルコールビールへの応用、大規模工場でのドライホッピング技術の実装に関する学会発表を合計3件、また、8月に開催された世界醸造大会 (※4)でも、ホップ球果の大きさの違いがホップやビールの香気成分・香味に及ぼす影響(選りすぐりホップ)、また、ホップを麦汁と別に煮沸することで苦味の収率を向上させる技術の計2件の発表を行いました。その発表の件数、テーマの広範さで、ビール研究分野では、引き続き世界をリードし国際的にも高評価を得ています。

2024年2月に限定発売された「サッポロ クラシック 春の薫り」には昨年に続き、サッポロビール社が独自開発した熟成ホップの技術(※5)が活用されました。これは、ホップを熟成(常温、長期間の保存)させた時に苦味成分が酸化で分解されて増える「分岐鎖脂肪酸」と言われる成分を隠し味として使うことで、香り付けに用いている自社育成ホップ「フラノマジカル」の香りを強めることができるという技術です。その成果はビール醸造分野で権威ある学術誌のひとつBrewingScience誌に査読付き論文としても発表されました(※6)。また、(公社)日本化学会の主催するCSJ化学フェスタ(※7)での招待講演では、ホワイトベルグなどの当社商品に活用しているコリアンダーシードの香りの産地間差に関する研究を講演し、その研究内容は、食品化学分野で権威あるアメリカの学会誌に査読付き論文としても掲載され、「オクトーバーフェストにタイムリーな論文」としてアメリカ化学会のニュースリリースに取り上げられました(※8)。

また、サッポロビール社が開発したLOXレス大麦品種(※9)「CDC Goldstar」「きたのほし(商標名)」はカナダ及び北海道で協働契約栽培により生産されており、「旨さ長持ち麦芽」として「サッポロ生ビール黒ラベル」等の同社商品で採用しています。

サステナビリティ視点の研究では、「短日製麦を可能にする大麦のパーリング(精麦)加工技術」について2024年3月に開催された日本農芸化学会の2024年度大会(※1)で発表し、発表者はその継続的な取り組みが評価され、同学会より2024年度の企業研究者活動表彰を受けました(※10)。気候変動への対応策として、2024年には大麦の穂発芽耐性や赤カビ病に関して国内外の学会で発表しており(※11)、これらの研究成果も活用し、「気候変動に適応するための大麦・ホップの新品種を開発し、2035年までに国内で実用化する」ことで、持続可能な原料調達に貢献することを目指しています。

これらの研究成果を商品技術開発に応用し、これからもビールテイスト飲料のさらなる魅力を引き出すことで、多様なビールの楽しみ方を提案していきます。また、品質保証研究では、これまで以上にお客様の安全・安心志向や健康意識に応えるため、原料・製品の安全性分析及びそれを支える分析新技術の研究に継続して取り組んでいきます。

「R&D戦略部」では、経営・マーケティング・研究開発が三位一体の関係を形成できるような仕組みづくりや研究員のキャリアステージに合わせたきめ細かな研修の立案、実施など人財育成活動等を行っています。また、サッポロビール社のR&D活動の全体像が一目でわかるコア技術マップを作成し、ホームページに掲載しました(※12)。これは研究方針策定や、ステークホルダーへの情報発信、採用活動等に寄与できるものと考えています。

 

※1 (公社)日本農芸化学会は、1924年に設立されたバイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、国内の大学・研究所・企業などに所属する多くの研究者によって構成・運営されています。日本農芸化学会2024年度大会の会期は3月24日~27日(会場:世田谷区・東京農業大学)。日本農芸化学会2024年度大会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/2024/

※2 農芸化学技術賞は1968年から設置された歴史ある賞で、農芸化学分野において注目すべき技術的業績をあげた会員に授与される極めて権威ある賞です。授賞式は2024年3月24日に行われました。

※3 European Brewery Conventionの主催で欧州にて2年に一度開かれる学会で、ビール醸造の分野で世界的権威のある国際学会のひとつとされています。第39回大会(会場:フランス、リール)は2024年5月26日~30日に開催されました。

https://europeanbreweryconvention.eu/call-for-abstracts-39th-ebc-congress-brewers-forum-lille-2024/

※4 World Brewing Congress(WBC)は、2000年の開始から4年に一度開催されているASBC(The American Society of Brewing Chemists)とMBAA(Master Brewrers Association of the Americas)の共催で、EBC(European Brewing convention)、IBD(Institute of Brewing and Distilling)および日本の国際技術委員会(Brewery Convention of Japan)が協賛する合同大会で世界的な権威のある国際学会のひとつとされています。2024年の大会(会場:ミネソタ州ミネアポリス)は8月17日~20日に開催されました。

http://worldbrewingcongress.org/Pages/default.aspx

※5 サッポロビールが独自開発した熟成ホップの技術を「サッポロ クラシック 夏の爽快」に活用。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002302.000012361.html

※6 掲載誌のBrewingScienceはドイツで創刊から77年目となるビール醸造分野の学会誌(熟成ホップ研究の掲載論文:https://doi.org/10.23763/BrSc24-09tanigawa)。

※7 (公社)日本化学会は1878年に結成された化学会を前身として、1921年に日本化学会と改称した歴史と権威のある学会で、会員に多くのノーベル化学賞受賞者を擁します。CSJ化学フェスタはその秋季事業で「産学官の交流深耕」と「化学の社会への発信」を目的とする大会です。(フェスタホームページ:https://festa.csj.jp/2024/

※8 掲載誌のACS Food Science and Technologyはアメリカ化学会(American Chemical Society)の発行する食品化学分野の学会誌(コリアンダーシードに関する研究を取り上げたアメリカ化学会からのニュースリリース:https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2024/october/three-beer-related-discoveries-to-celebrate-oktoberfest.html)。

※9 ビールの風味を劣化させる成分(LOX-1<ロックスワン>:脂質酸化酵素)を持たない大麦。

※10 日本農芸化学会企業研究者活動表彰。https://www.jsbba.or.jp/about/awards/about_awards_coresearchers.html

※11 (一社)日本育種学会第146回講演会(会場:広島大学。会期:2024年9月19-20日。https://jsbreeding.jp/activity/symposium/)および6th International Symposium on Fusarium Head Blight(会場:カナダ、オンタリオ州。会期:2024年10月21-24日。https://www.isfhb.com/)。

※12 サッポロビールのコア技術マップ。https://www.sapporoholdings.jp/research/topics/sb_core_technology/

 

2.商品開発について

酒類の商品開発については、2020年に策定されたサッポロビール社の経営ビジョンのもと「お酒と人との未来を創る」商品をお届けすべく活動を行ってきました。

生ビールのおいしさを追求する「サッポロ生ビール黒ラベル」は、ブランドの世界観を拡張させるべく「サッポロ生ビール エクストラブリュー」「サッポロ生ビール エクストラモルト」を限定発売しました。

ヱビスブランドでは、YEBISU BREWERY TOKYOでの経験から開発され、これまでの概念にとらわれない新たなビールのおいしさや楽しさに挑戦していくためYEBISU CREATIVE BREW」から「ヱビス シトラスブラン」「ヱビス ジューシーエール」「ヱビス クリエイティブブリュー 燻」「ヱビス クリエイティブブリュー 焦香」といった限定商品を展開しました。歴史を持つヱビスだからこそできる、独創的で個性ある新しい味わいのビールを提案しました。

また、お客様との共創によるビールづくりを展開する「HOPPIN' GARAGE」は、定期的に新作ビールが届く会員制サービスを2021年4月に開始して以来、多くの魅力的な方々と当社の醸造技術を掛け合わせた共創を行い、個性豊かなビールを皆さまにお届けしてきました。本年はクラフトブルワリーとの共創を一層進め、これまで以上に多種多様なビールをお届けしました。

RTD(※1)では、主力ブランドである「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」のお客様支持が拡大しました。また、24年新商品として発売した「濃い搾り ノンアルコールブランド」が好調に推移し、RTD事業としては、4年連続最高売上の1,080万ケース(※2)を販売しました。

酒類事業の研究開発費の金額は17億円です。

 

※1 RTD:Ready to Drink の略。栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料

※2 350ml×24本換算

[食品飲料事業]

1.研究開発について

国産レモンの産地である広島県の大崎上島町での5年間に渡るレモン摂取の健康調査研究の知見を生かして、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の創業の地である北名古屋市との連携において、市民の皆様にレモンの健康効果を体感していただく取り組みを開始しました。血圧の低減効果の他、新たに睡眠の質の向上に係るデータが得られています。

日本調理科学会2024年度大会にて「レモン果汁への浸漬処理による鶏肉の軟らかさや保水性及び嗜好性に及ぼす影響」および第78回日本栄養食糧学会にて「日常的なレモン摂取による成人の生活習慣病関連指標に及ぼす影響〜広島県大崎上島町における長期介入研究〜」を発表いたしました。

 

2.商品開発について

ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の経営ビジョンにある「おいしい以上の価値」のもと開発活動を行いました。

レモンでは、長年研究を重ねてきたレモン果汁摂取と血圧の関係の研究成果を活かし、基幹商品である「ポッカレモン100」瓶3品をおいしさや中身はそのままに『高めの血圧(収縮期血圧)を下げる』機能性表示食品としてリニューアルいたしました。また「キレートレモン」ブランドでは、ご好評いただいている「キレートレモンMUKUMI」のラインナップとして、スパウト付きパウチ入りゼリータイプの「キレートレモンMUKUMIゼリー」を開発、発売いたしました。そのほかキレートレモンに使用する瓶の軽量化を行い、環境への対応を強化いたしました。

スープでは、カップ入りスープユーザーが求める「食事としての食べ応え」、「満足感」を追求し、当社独自のパン具材が従来の2倍量入った、食べ応え抜群でほどよくおなかを満たせる「じっくりコトコトこんがりパン 超盛」シリーズを開発、発売いたしました。

飲料では、サッポログループの誇る資産であるホップを活かした他にはないほろにがな無糖炭酸水である「北海道富良野ホップ炭酸水」のリニューアルや、カフェインゼロの無糖茶でありながら素材由来の自然な甘香ばしさでご好評いただいている「北海道コーン茶」のデザインリニューアルと小型PET商品の開発、発売を行いました。また「ポッカコーヒー」ブランドは、ほどよい甘さや香りを活かした「ココロ癒されるコーヒー」としてシリーズ全体をリニューアルし、新たに「ポッカコーヒー ひとやすみプレッソ」「ポッカコーヒーアイス」を開発、発売いたしました。

食品飲料事業の研究開発費の金額は9億円です。