第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(Ⅰ)経営の基本方針

アシックスグループは、「ASICS SPIRIT」に掲げた創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし- "Anima Sana In Corpore Sano"」を基本に、ビジョン「Create Quality Lifestyle through Intelligent Sport Technology-スポーツでつちかった知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」の実現に向けて、「アシックスの理念」をもって事業運営を行っております。

 

(Ⅱ)長期ビジョン「VISION2030」策定

 当社は、「健全な身体に健全な精神があれかし」を創業哲学とし、主に「パフォーマンス・アスリート」のための「プロダクト」を中心にビジネスを展開してきました。しかし、世界の60歳以上の人口が今後非常に速いペースで伸びていくことが予測され、より長く健康でいることが注目されています。また「健康」の定義も、昨今は身体の健康だけでなく、心の健康まで含めるようになっています。このように急激に変化していく社会環境の中で創業哲学を実現するため、誰もが一生涯「ライフタイム・アスリート」として、スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造していくことを目指し、そのために当社が2030年にあるべき姿としてVISION2030を策定しております。

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(Ⅲ)経営環境

●市場環境

2024年は、各地で人の往来が活発化し、世界各国でスポーツイベントやマラソン大会なども増加しました。それによりスポーツ用品市場は好調に推移しています。

コロナ禍から続く先進国での健康意識の高まりや高成長地域でのスポーツ市場の拡大、ランニング大会の増加などもあり、引き続き市場の拡大が予想されます。

また、気軽に楽しめるスポーツの需要も高まり、パデルやピックルボールなど競技レベルに関係なく誰もが楽しめるスポーツの普及が一層期待されるほか、新しいスポーツを楽しむ若者も増加しています。

スポーツを取り巻く環境としては、あらゆる場面でデジタルとリアルを結び付けようとする様々な取り組みが社会全体で進んでおり、今後もその傾向はますます加速していくほか、脱炭素社会に向けた地球規模での取組みや企業活動における責任については今後より一層求められていくと考えています。

 

●競合他社の状況

スポーツ業界は好調を維持するなか、スポーツメーカー各社は成長傾向にあるものの、為替の変動や輸送費、原材料費の高騰、地政学的なリスクなどに対応を迫られており、粗利益率や営業利益率に影響が生じているケースもあります。

コロナ禍で急速に拡大し、成長するEコマース市場においては、各社ともオンラインとオフラインを連携させたオムニチャネル化を推進し、顧客体験価値の最大化をはかっており、引き続きデジタル分野や顧客体験の強化に注力していくことが予想されます。

サステナビリティという観点では、あらゆる企業活動において環境に配慮することが求められており、スポーツメーカー各社もCO2排出量やサステナブルな素材調達などに関する具体的な目標を設定し、様々な取り組みを通じてその達成を目指しています。

 

●顧客動向

生活者の購買動向は、Eコマース利用がさらに進みデジタルを活用したツールやサービスが普及、拡大していますが、リアルでの購買や体験に対するニーズも重視され、今後はデジタルとリアルを掛け合わせたサービス需要がますます高まることが予想されます。

また、自分に合った製品やサービスを求める傾向が高まる中で、より多くの情報が溢れている環境下においては、パーソナライズされた情報や顧客体験の提供は急務となっています。

人々のサステナビリティへの理解や意識も進み、持続的な社会を実現するための消費に対する価値観の変化やニーズはさらに大きくなることが予測されています。

 

(Ⅳ)中期経営計画2026

1.中期経営計画2026のアップデート

2023年11月28日に中期経営計画2026を策定しましたが、2024年の業績が好調に推移し、中期経営計画2026の財務指標を2年前倒しで達成したため、内容のアップデートを行いました。

財務指標を上方修正したほか、中長期的な方向性として「更なるイノベーションの強化」を追加し、パフォーマンス×フットウエアの長期的な研究へ注力するほか、デジタルを含めた全社で開かれたイノベーションを推進します。また、キャピタルアロケーションについても見直しを図り、オペレーショナルエクセレンスやランニングエコシステム拡充に関する投資など中期経営計画2026の重点戦略に沿った効果的な投資を検討していきます。

 

2.数値計画

上方修正後の数値計画は、営業利益1,300億円以上、営業利益率17.0%以上、ROA15%前後に設定しています。収益基盤であるパフォーマンスランニングフットウエア、2024年大きく成長したスポーツスタイルやオニツカタイガーなど、引き続き各カテゴリーの成長を維持するほか、地域別では、収益でグローバルをけん引する中華圏、高成長地域である東南アジア・インドの成長を加速させます。

また、低収益事業、商品群の見直しを引き続き行うとともに、対売上高販管費率の効果的、効率的な管理、低収益直営店舗の見直しによる固定費比率の削減などコストコントロールも強化することで、業界最高水準の収益性をさらに向上していきます。

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3.方針と重点戦略

中期経営計画2026の方針は、引き続き「Global Integrated Enterpriseへの変革」です。

Global Integrated Enterpriseとは、本社と地域事業会社の連携強化により、グループ一体でより有機的なカテゴリー経営体制を構築することです。具体的には、地域CEOを社長COO直下に配置するほか、主要地域のCEOが重要会議への参加やグローバル経営に関わることで本社と地域間の連携をさらに強化していきます。

また、地域販売会社を地域事業会社に変更し、商品販売および担当地域以外の収益拡大にも責任を負う体制にするほか、人財、ITプラットフォーム、データのグローバル化によりグローバルでダイナミックな経営を実現します。

重点戦略も「グローバル成長」「ブランド体験価値向上」「オペレーショナルエクセレンス」の3つを当初計画から継続して取り組みます。

1点目のグローバル成長では、各カテゴリー、地域が更なる連携を図り、それぞれの成長を加速させます。カテゴリーでは収益基盤であるパフォーマンスランニングフットウエアのさらなる成長に加え、次の収益の柱として、オニツカタイガー、スポーツスタイル、コアパフォーマンススポーツフットウエアの成長を拡大させます。

地域については、既存の収益基盤である地域は営業利益の持続的な成長、インドや東南アジアの各国など高成長を見込む地域では、売上と営業利益率の向上を見込み、成長を加速させます。

2点目のブランド体験価値向上については、当社独自の会員プログラムOneASICSを通じてお客様との直接的な接点を増やし、繋がりを深め付加価値の高いプロダクト、サービスを提供していきます。これらの取組みを「OneASICS経営」とし、全社的に推進することで、会員の増加、プログラムの価値向上、パーソナライズされたマーケティングコミュニケーションや製品サービスの向上に向けたデータの活用を実現します。

具体的には、OneASICS会員をリテール、ECだけではなく、施設、OneASICS債、その他サービスで拡大し、イベント参加、リワードなどを活用してプログラム全体の価値を向上させるほか、データ分析をしっかりと行い、お客様一人ひとりに応じたマーケティング、製品、サービスの向上に取り組みます。

3点目のオペレーショナルエクセレンスについては、既存のグローバルシステムを活用して、サプライチェーンの改革を行います。需要と供給、在庫の計画精度の向上やサプライチェーン全体の高度化、効率化を図ることで収益性向上につなげます。

 

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4.経営指標

見直し後の財務指標を含む経営指標は以下の通りです。Global Integrated Enterpriseへの変革を推進し、これらの指標を達成していくことで、更なる収益拡大を図ると共に持続的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(Ⅰ)サステナビリティ

創業より、アシックスの使命は人々の心と身体を健康にすることです。そのためには、 人々が快適に運動やスポーツができる地球環境が不可欠です。 健全な心身、健やかな環境が将来世代まで続くよう、アシックスのブランドスローガン「Sound Mind, Sound Body」のもと、「人と社会への貢献」と「環境への配慮」の2つの柱を軸に取り組んでいます。

 

<マテリアリティ>

アシックスは、ステークホルダーにとっての重要性と企業戦略にとっての重要性の視点からマテリアリティ(重要テーマ)を評価しています。お客様、取引先、サプライヤー、投資家、NGO、業界団体などの外部のステークホルダーと、経営陣や従業員などの内部のステークホルダー、合計約500名に対して、インタビューやアンケートを実施し、その結果について社外の専門家による第三者意見も取り入れながらアシックス内部で議論を重ねてきました。2023年には、中計2026策定に合わせ、また欧州のCSRD※1への準備として、ESRS※2やSASBスタンダードのテーマをもとに、マテリアリティ評価を行い、9の重要テーマとその優先度を決定しました。2024年度にも見直しを行い、変更はありませんでした。今後も、サステナビリティ委員会で審議し、毎年見直しを行います。

※1 CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive.企業サステナビリティ報告指令

※2 ESRS:European Sustainability Reporting Standards.欧州サステナビリティ報告基準

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<気候変動への対応>

スポーツは気候変動と密接に関係しています。健やかな心身の実現には、快適に運動・スポーツができる地球環境が不可欠です。その環境を守るためにも、アシックスでは気候変動への対応を最重要課題に位置付けています。

 

2019年6月、アシックスは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を、スポーツメーカーとして世界で初めて表明しました。 気候変動関連のリスクと機会に関する情報について、TCFD提言に沿って開示を行っています。

 

(1)ガバナンス

アシックスでは、サステナビリティは経営に不可欠と考え、コーポレートガバナンスに反映されています。

サステナビリティのガバナンス体制については、取締役会が気候変動に関するリスクと機会を監督し、リスクマネジメント委員会が気候変動に関するリスクを、サステナビリティ委員会がCO₂削減目標の進捗評価・管理を含む気候変動に関する機会を管理しています。両委員会のメンバーは、執行役員と統括部長等で構成されており、代表取締役会長CEOがサステナビリティ委員会の議長を、代表取締役社長COOがリスクマネジメント委員会の議長を務め、両委員会は取締役会に報告を行います。サステナビリティ委員会は、全社のサステナビリティ戦略・目標・ロードマップ・アクションプランとその進捗の評価に加え、マテリアリティ評価とサステナビリティのビジネス戦略への統合に関する責任を負っています。サステナビリティ部は、マテリアリティ評価に基づいた中長期のサステナビリティ戦略設定と管理を担っており、「気候変動への対応」は優先度が高い重要テーマの一つです。委員会のメンバーは議論に参加し、情報・意見の提供、目標に対する進捗と、ロードマップとアクションプランの報告に関する責任を負っています。サステナビリティ部管掌役員は直接代表取締役会長CEO・代表取締役社長COOに報告を行います。各統括部での「気候変動への対応」に関連した目標に対する年間実績は、関連する執行役員・統括部長の報酬を決定する要素の一つです。

また、欧州を中心とした、非財務情報開示をはじめとしたサステナビリティに関する法規制について、アシックスヨーロッパとも連携し、社内でタスクフォースを設立のうえ、法規制内容の把握・対応・開示への準備を行っています。

 

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(2)戦略

アシックスは2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指し、バリューチェーン全体で循環型ビジネスモデルへの転換を進めています。当社の事業は、生産委託先工場をはじめとするグローバルなサプライチェーンに支えられており、各パートナーとの協働が不可欠です。そのため、主要サプライヤーには「グリーン調達方針」を展開し、取引要件として気温上昇を1.5℃に抑制するための排出目標の設定や、再生可能エネルギーの導入を求めています。2023年末時点で、フットウエアの戦略的1次生産委託先工場の80%が目標を設定・開示し、90%が再生可能エネルギーの調達計画を策定し、順次導入を進めています。アシックスは継続的な対話を通じてサプライヤーの現状や課題を把握し、必要なサポートを行いながら、バリューチェーン全体での循環型ビジネスモデルへの移行に取り組んでいます。

 

■シナリオ分析

経営企画部・経理部・財務部・生産統括部・サステナビリティ部が連携し、シナリオ分析を実施し、原材料価格の変動・製品表示規制の導入といった移行リスク及び気温上昇によるスポーツ時間の減少、台風、洪水の激甚化によるサプライチェーンの操業停止といった物理的リスクを特定しました。また、低炭素製品・サービスの開発・拡大を通じたイノベーション創出や顧客基盤の拡大といった機会も特定しました。リスクと機会の分析に当たっては、2030年・2050年を時間軸として設定し、1.5℃・2℃・4℃シナリオにおけるインパクトを試算し、対応策を策定しました。

この分析結果は代表取締役会長CEO・代表取締役社長COO、執行役員を含む経営層に報告され、事業戦略に統合されます。

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2022年度のデータに基づき算出

 

■リサイクルできるランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」を発売

2024年は、リサイクルできるランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」を発売しました。 アシックスを代表する高機能モデルのひとつであるGEL-NIMBUSと同等の品質や性能を保ちながら、アッパーの単一素材化等の取り組みを通じ、各素材をリサイクルできるようにしたのが特徴です。ランナーとともに環境への意識を高めていけるよう、使ったシューズを回収する取り組みも同時に行っています。

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■製品のカーボンフットプリント表示

2023年に発売したGEL-KAYANO 30等の製品に、材料調達から廃棄における温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)を表示しています。第三者による認証を受けた計算手法により、何百ものデータを集計して数値を算出し、計算手法も開示しています。製品のカーボンフットプリントを表示することにより、透明性を高め、温室効果ガス排出量削減への知見を深めるとともに、お客様と一緒に気候変動へのアクションを取っていきます。

 

■パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会 TEAM JAPANへ提供するオフィシャルスポーツウェアでの取組み

パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会に出場するTEAM JAPANが着用するオフィシャルスポーツウェア、シューズ、バッグなどを「パフォーマンスとサステナビリティの両立」をコンセプトに作製・提供しました。「ポディウムジャケット」と「ポディウムパンツ」は、リサイクル材の採用や再生可能エネルギーの活用などさまざまな温室効果ガス排出量の削減施策を行い、前回大会と比較して約34%削減。製品のカーボンフットプリント表示も行い、今回算出したカーボンフットプリントの合計は、122トンCO₂eでした。パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会の「クライメート・ポジティブな大会」を目指す方針に賛同し、算出したカーボンフットプリントの合計を超える200トンのカーボンクレジットを購入しました。このカーボンクレジットは信頼性や品質が担保されたパキスタンのマングローブ再生プロジェクト「デルタ・ブルー・カーボン」の支援に充てました。

※算出対象:JOCとJPCの全アイテム、AOC(オーストラリアオリンピック委員会)のポディウムジャケット、ポディウムパンツ、シューズ

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アシックスはTEAM JAPANゴールドパートナー(スポーツ用品)、JPCオフィシャルスポンサー(スポーツ用品)です。

 

(3)リスク管理

危機発生の回避および危機発生時の損失を最小化するため、リスクマネジメント委員会を設置し、リスクの特定、分析、評価、リスク低減のためのオーナーの割当、アクション策定とモニタリング、報告を行っています。この内容は年に2回取締役会に報告され、気候関連のリスクもこのリスク管理プロセスに統合されています。

 

詳細は、当社ウェブサイトのリスクマネジメントをご覧ください。

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(4)指標及び目標

当社は、スコープ1,2,3における温室効果ガス排出量について、2050年までにネットゼロを実現することにコミットしており、2030年までに63%削減(2015年比)する目標を掲げScience Based Targets initiative (SBTi)によって承認されています。

 

<温室効果ガス排出量削減目標>

※対象範囲は「購入した製品・サービス」と「販売した製品の廃棄」

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*フットウエア工場の数値。2023年から再生可能エネルギーの導入を開始し、今後継続的に拡大予定

 

 

2050年ネットゼロに向けては、まずは2030年63%排出削減に向け、排出量の多いカテゴリでの削減を優先し、取り組んでいます。具体的には、主要サプライヤーへのグリーン調達方針の展開等を通じ、再生可能エネルギーの採用や再生ポリエステル材への切り替えを進めています。今後も、気候移行計画の精緻化と削減施策の実行に取り組んでまいります。

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2023年度

CO₂排出量

スコープ1+2 CO₂排出量(t-CO₂)

21,659

 

スコープ3 CO₂排出量(t-CO₂)

720,414

 

2023年度の実績は上記のとおりです。2024年度の実績は、2025年6月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。

 

<サプライチェーン上の人権尊重>

当社では2004年に生産委託先工場の監査を開始し、主要工場の約99%がアシックス基準を満たしています。2022年からは、責任ある調達の徹底とトレーサビリティと透明性の確保を目指し、新規工場と主力工場の監査に加え、これまで比較的監査の頻度が低かった低リスク工場についても、より詳細な実態把握を進めています。今後は、この水準を維持しながら、工場の自律的なCSR管理に役立つマネジメントシステムの導入を推進していきます。

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(1)ガバナンス

アシックスのガバナンス体制には、人権に関する方針が組み込まれています。2022年に、社内外のステークホルダーとの協働による調査を経て、新たに「アシックス人権方針」を策定しました。この方針は、人権デュー・ディリジェンスの要素や優先領域を定めたもので、株式会社アシックス及びそのグループ会社に適用されます。また、リスクマネジメント委員会の管轄下に人権委員会を設置し、当社のサプライチェーン、社員、お客様を含むバリューチェーン全体の人権課題への取り組みの監督と助言をしています。審議の内容は取締役会へ報告されます。2024年は、サプライチェーン上の優先リスクへの対応、国際的スポーツ大会に関連する人権リスクへのモニタリング状況等が同委員会で報告されました。

 

(2)戦略

中期経営計画の一環として、当社は、バリューチェーン全体での人権デュー・ディリジェンスの実効性を高めるための取り組みを継続的に行っています。2024年はサプライヤー評価システム・体制の最適化、サプライチェーンでの人権デュー・ディリジェンスの強化、データ分析・活用によるリスクマネジメントの強化に取り組みました。

 

(3)リスク管理

アシックスはサプライヤー候補との取引を検討する前に、事前スクリーニングとリスク評価を実施しています。社内で承認された国のみから調達を行うことで、リスクの低減に努めています。また、当社は、サプライヤーがアシックスの方針と基準、及び関連法規を守ることを求めています。 そのため、第三者監査も含む定期的な監査によってリスクの把握を行っています。監査で問題が見つかった場合に工場とともに改善を進めるほか、 救済へのアクセスの仕組みも順次対象を拡大しています。また、トレーサビリティを高めることで当社サプライチェーンの透明性の向上を目指しています。

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(4)指標及び目標

 

目標

2023年度

アシックスサステナビリティ基準を満たす1次生産委託先工場の割合(%)

100

99以上

 

2023年度の実績は上記のとおりです。2024年度の実績は、2025年6月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。

 

 

(Ⅱ)人的資本

アシックスでは、働く従業員一人ひとりが、創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし」から導かれたブランド・スローガン「Sound Mind, Sound Body」を体現する存在であることを重視しています。また、グローバルな競争が激化する中、市場の多様なニーズに的確に対応し、新規ビジネスや付加価値創造を継続的に行っていくために「組織の多様性」も重視しています。中期経営計画2026ではGlobal Integrated Enterprise(GIE)への変革を目指し、「多様なバックグラウンドを持つ優秀な人財が思う存分力を発揮できる環境の整備」のため、3つの観点から取組みを実施し、経営基盤を強化していきます。またこの達成に向け、従来人事部が担っていた機能を2つに分け、ウェルビーイング推進部を新設しました。アシックスの人財戦略は、ブランド・スローガン「Sound Mind, Sound Body」を基盤とし、グローバルな競争力を強化するために、従業員の成長と多様性を重視したアプローチを採用しています。

 

(1)ガバナンス

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・人事委員会の役割

人財育成のための教育投資も積極的に行っています。喫緊の課題は、次世代後継者の育成です。2021年7月に設立した人事委員会では、人財育成の仕組みに加え、グローバルに選抜した後継者候補人財の配置なども議論しています。

 

・人財開発の基本方針

アシックスは従業員の意欲を高め、個人の成長とともに会社が成長できる企業文化の醸成を目指しています。このために、様々なプログラムを通して、多様性を受け入れ、従業員一人ひとりが互いを尊重し、個性と創造性が発揮できる環境を整えていきます。

 

 

(2)戦略

1.従業員によるSound Mind, Sound Bodyの体現

・従業員への還元の実現

・従業員のWell-being推進により、エンゲージメントの高い職場を実現

・デジタルを活用した多様な働き方と成長機会の提供

2.グローバルでダイナミックな人財活用

・全世界からグローバルで活躍できる人財

・オペレーショナルエクセレンスを踏まえた最適人員数の実現

・適材適所に人財を配置し、人件費率13%を実現

3.ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

・女性管理職比率の向上

・障がい者雇用の促進と環境の整備

・多国籍な役員構成の実現

 

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①従業員によるSound Mind, Sound Bodyの体現

近年、従業員の心身の健康やワークライフバランスの重要性が高まっています。企業にとって、従業員一人ひとりが幸せを感じながら働くことができる環境を整備することは、生産性の向上や優秀な人財の確保・定着化にもつながります。 そこで当社では、従業員のウェルビーイングを重視し、その向上を図るための専門部署「ウェルビーイング推進部」を新設しました。この部門では、従業員の心身の健康管理はもちろん、キャリア形成支援、DE&Iやエンゲージメントの向上などを通じて、従業員が幸せを実感できる様々な施策を企画・実行していきます。

 

a.業界最高水準の報酬体系

業界最高水準の報酬体系を実現すべく、報酬体系及び報酬水準の見直しを進めています。報酬体系については、2024年度からプロフィットシェア型賞与(グローバル)や持株会を通じた譲渡制限付株式インセンティブ制度(アシックスおよびアシックスジャパン)を導入し、会社として利益を従業員にしっかりと還元すると共に、従業員が株主・投資家の皆様との一層の価値共有を進めていくことで、更なる企業価値向上を目指していきます。また、新卒初任給の引き上げや継続的な賃上げを通して、優秀な人財の獲得・定着を進めていきます。

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b.エンゲージメント

・目的・方針

Sound Mind, Sound Bodyの実現に向け社員一人ひとりが仕事を通して働きがいを感じている状態が、イノベーションを促し、生産性を向上させ、お客様により良い製品やサービスを提供できると考えています。ASICSでは、Sound mind, Sound Bodyの実現には従業員のエンゲージメントは欠かせないものととらえ、以下のように重点的な活動をしています。

 

・重点的な活動内容

グローバル全体の従業員を対象に、年に2回のグローバルエンゲージメントサーベイを実施しています。このサーベイを通して、社員一人ひとりが働きがいを感じているか/組織改善の進捗などを確認するとともに、会社全体としてのアクションの検討をしております。

前回のエンゲージメントサーベイの結果を受けて、対面形式でグローバルミーティングを開催し、サーベイの設問内容を今の経営戦略に合った形でリニューアルしました。執行役員からのビデオメッセージ配信など率直な意見を促す環境整備にも注力した結果、グループ全体の92%の従業員から回答を得ることができました。

2024年のサーベイ結果に基づき、グローバルの強みである「Purpose(やりがい)」と「Empowerment(権限委譲)」の領域はさらに伸ばしていく方針を定めるとともに、課題である「Connection(繋がり)」と「Growth(成長)」の領域については、アクションプランを策定し、改善に向けた取り組みを開始しております。 また、上記の全社的な課題へ対応に加えて、各部門のリーダーが率先してアクションプランを設定・実行することで、エンゲージメントスコアの向上を目指しています。

 

・推進体制

グローバルエンゲージメントサーベイの結果を基に、人財開発や組織開発、事業の成長に向けた取組みを進めています。サーベイの実行・会社全体の組織状態の分析はエンゲージメント事務局が行い、各組織単位ではその組織長とメンバーがサーベイの結果を基にした対話を重ねることによりエンゲージメントの推進を図っています。

 

c.ウェルビーイング

・目的・方針

アシックスは、従業員によるSound Mind, Sound Bodyの実現のため、従業員とその家族のWell-being(身体的・精神的・社会的に良好である状態)を目指し、以下の5つの健康推進活動を中心に行っております。

()健康管理・増進体制の拡充

(ⅱ)ヘルスリテラシーの向上支援

(ⅲ)生活習慣の改善支援

(ⅳ)メンタルヘルス対応の強化

(ⅴ)多様な人財が活躍できる職場環境

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・重点的な活動内容

2024年度の取組みとして「従業員1人ひとりのヘルスリテラシーの向上と定着」という方針のもと、戦略マップに基づき上記5つを重点項目とした施策を実施、効果検証を行っております。

 

()健康管理・増進体制の拡充

・健康診断項目、人間ドック補助の検討

・健康管理システムの構築

 

(ⅱ)ヘルスリテラシーの向上支援

・調べやすい環境の整備(ポータルサイトの整理、興味・関心に合わせた情報発信、情報のアーカイブ化)

・専門スタッフによる健康情報の解説(産業保健スタッフによる情報発信、医師によるセミナー)

 

(ⅲ)生活習慣の改善支援

・アプリなどを利用した参加型運動イベントの開催

・VDT※症候群に関する情報発信 ※PC/スマートフォン/タブレット等を扱う作業

・卒煙モチベーションに合わせた卒煙サポートプログラムの実施

 

(ⅳ)メンタルヘルス対応の強化

・日常に取り入れやすいメンタルヘルスケアに関するセミナー

・EAPの周知と活用促進

 

(ⅴ)多様な人財が活躍できる職場環境

・女性の健康とスポーツ啓発セミナー

・性差や年代におけるヘルスリテラシーセミナー

 

 

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・推進体制

アシックスの健康推進活動は、Well-being committeeを中心に年度方針と計画に基づいて実行されており、進捗状況やその内容については社長COOが監督を行っています。

 

 

②グローバルでダイナミックな人財活用

・目的・方針

タレントマネジメントでは、グローバル経営幹部候補者の育成、及び社員一人ひとりの自律的な成長・キャリア形成を目指し、採用・育成・配置・評価・能力開発に関する仕組みをグローバル横断的に整えています。なお、ここにはサクセッションプラン(後継者育成計画)の推進も含まれます。

具体的には、2021年に立ち上げた人事委員会を中心に選抜された社員を対象としたASICS Academy(次世代リーダー育成選抜型プログラム)の実施や計画的なジョブローテーションによる潜在能力開発、働きやすい環境の整備(ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営の推進)、従業員へのグローバルエンゲージメントサーベイの実施・結果分析・施策実施等に取組みなどを実施しています。

今後更に人財育成を加速させるために、サクセッションプランに基づく育成計画を作成し、国内外のチャレンジポストへの登用を実施しています。また上司部間でのキャリア開発プランに関する対話とアクションを通じ、会社全体での「育成・成長カルチャー」の醸成につなげます。

 

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・重点的な活動内容

次世代リーダー育成

・ASICS Academy

グローバルでビジネスをリードできる人財を、戦略的かつ早期に育成することを目的とし、2016年に「ASICS Academy」を立ち上げました。次世代リーダーとして選抜された社員を対象に、経営知識やDX活用を含む戦略思考を学ぶプログラムを実施しています。管理職以上を対象としたプログラムはグローバル全社から選抜されたタレントが英語を共通言語として参加し、直近3年間で22名が受講しました。また、習得した知識を業務で活用できるようキャリア面談を通してキャリアパスの実現につなげています。

・海外派遣プログラム(EBT)

海外派遣プログラムでは、語学、異文化体験、社会課題の理解、海外事業所メンバーとの交流等の自分の目で見る経験を通じて、視野の拡大とリーダーとしての成長を促す機会を提供しています。

・経営基礎研修

育成の機会を通じ、学習意欲や成長意欲を向上し、経営戦略・アカウンティング・データ活用/分析の基礎知識について理解します。

 

キャリア開発サポート

・キャリアデザイン

階層別プログラム内や、キャリアの節目にあたるタイミングで、自身のキャリアを改めて考える機会を提供しています。また国内社員に向けたグローバルメンバーとの社内交流の機会も提供しており、外国籍の経営メンバーを交えたキャリアセッションも実施いたしました。

・キャリア面談

アシックスでは社員一人ひとりが自身のキャリアを意識し、成長の速度を上げていく事を目指した「キャリア面談」を導入しています。自身のありたい姿(キャリアビジョン)を描き、上司と共にその実現に必要な知識やスキル・経験を話し合い、今後実施すべきアクションを計画する機会となっています。

・各種ビジネススキル

上司の勧めや本人の希望で受講できる、eラーニングの学習コンテンツを用意しています。自分自身のキャリアを考え、成長に向けてこれらプログラム受講、業務の中で活用していくことで、ありたい姿に一歩ずつ近づいていきます。

 

階層別

・新入社員研修

新入社員時には、社会人としての基本的なマナーやビジネススキル、アシックスの社員として働くための必要な知識を習得するためのプログラムを実施しています。また、アシックスがサポートしている各種スポーツイベントなどに派遣するスポーツマーケティング研修や自社工場、店舗での現場研修も実施しています。

・昇格時研修

昇格後の役職に必要なスキルのインプットと、新しく昇格した社員同士のネットワークづくりの場として、昇格時研修を実施しています。

 

・推進体制

月に1回開催の人事委員会では、副社長及び常務執行役員による組織・人財開発に関する活発な議論を行っています。また、グローバルサミットにおいてはグローバルでのタレントマネジメントについて議論を行います。

人事委員会で議論された人財開発方針や、グローバルで選抜した後継者候補人財の育成等については、取締役会/経営会議の決議を経た上で、人事部門(組織・人財開発機能)が推進・実行に移します。

 

 

③ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

・目的・方針

アシックスは、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」)」推進のビジョンに「One Team Stronger Together」を掲げています。DE&Iの推進は、ニーズの多様化するお客様に対してより良い製品・サービスを提供することにつながるだけでなく、従業員同士が相互の違いを認め、活かし合い、一人ひとりが自分の価値を実感できる環境を整えることにもつながります。最終的に組織内でのイノベーションが促進され、企業価値の向上に寄与すると考えています。 具体的な取り組みとしては役員構成における多国籍化の推進に加え、女性管理職比率グローバルで40%(アシックス単体では25%)以上という目標の達成および社内で障がい者雇用の促進と環境の整備に向けた施策を以下の通り推進しています。

 

・重点的な活動内容

()女性管理職比率の向上

数値向上に向けてアクションプランを地域ごとに作成し、国籍・性別・経験等多様な経営陣から構成されたグローバルDE&Iステアリングコミッティにて進捗をモニタリングしています。

 

()障がい者雇用の促進

障がい者雇用においてはグローバルで法定雇用率の有無など状況が異なるため、各地域に合う形で障がい者雇用を進めること、また特に日本においては変化する法定雇用率に対応するため、地域ごとにアクションプランを作成し、女性管理職比率同様にグローバルDE&Iステアリングコミッティにてモニタリングしています。 国内においては神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会に国内アシックスグループ全社員が参加し、パラスポーツの魅力を感じる機会を作りました。

 

・推進体制

様々な性別、地域、カテゴリー出身の経営陣より構成されたグローバルDE&Iステアリングコミッティを中心として戦略が着実に実行されているか管理しながら活動を進めると同時にグローバル目標と各地域課題にアプローチする体制を整備し、グループ全体でDE&Iに取り組んでいます。

 

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(4)人的資本の主な指標及び目標

 

 

2023

2024

エンゲージメント

サーベイ回答率

89%

92

エンゲージメントスコア

68

73

コメント比率

54%

58

DE&I

女性管理職比率

(グローバル:2026年目標 40以上)

38.1%

38.7

障がい者雇用率

(アシックス単体: 2026年目標 4%)

2.6%

3.1%

 

(Ⅲ)税務方針

当社グループでは、各地域での公正な事業活動によって獲得した利益を、適正な納税を行うことで地域社会に還元し、企業としての社会的責任を果たします。また、各国の税務当局に誠意を持って事実に基づく説明・対応を行い、当局と良好な関係を維持するよう努めています。適時適切な税務申告・納付、税務当局からの求めに応じた税務情報等の提出を通し、指摘事項について合意した事項については適切な是正及び改善措置を講じます。

 

(1)ガバナンス

税務に関するコーポレート・ガバナンスは、当社グループ全体のガバナンス体制に包含されており、税務リスク等に関しては必要に応じて取締役会に報告を実施する等の監督体制を構築しております。更に、国内外関わらず、グローバルシステムインフラ上で、税務に関する報告を入手する体制を通じて、グローバル税務ガバナンス規程の実行、税務リスク管理を行っており、グループ横断的な税務課題を俯瞰し、税務情報を連携します。

 

(2)戦略

「アシックスグローバル行動規範」において「あらゆる国で、すべての適用法を確実に遵守して実務を行う」ことを明示しています。納税及び情報開示についても同様に、国、地域ごとの税務関連法令、国際機関等が公表している基準に従い、税務コンプライアンスの維持・向上に努め、適切な納税を行い企業の社会的責任を果たします。

また、OECD(経済協力開発機構)によるBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)の趣旨を理解し、グループ間の移転価格取引は、原則として独立企業間価格で行い、国際的な所得の適正配分が実現するよう取り組んでいます。

 

(3)リスク管理

株主価値向上の観点から、税務リスクを極小化し、かつ、法令上、公正な範囲内で税負担の軽減措置等の適切かつ効果的な利用に努めます。さらに、税務ペナルティや二重課税による企業価値の毀損リスクの防止に努めています。

なお、法令等の趣旨を逸脱する解釈・適用による過度な節税行為である租税回避(タックスヘイブン)は行いません。

 

 

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(注)1.上記金額は国税庁提出の「国別報告事項」に基づいて作成しており、連結財務諸表との直接的な関連はございません(各社の所在国で地域区分を行っております)。

2.上記開示項目は、EU Public CbCR(Country by Country Report)開示方式を準用しており、開示の義務化に予め対応しております。

3.収入金額は、外部及び内部売上の他、営業外収益と特別利益を含み、グループ間の受取配当金を除きます。

4.発生税額は、2023年12月期の当期利益に係る法人税であり、納付税額とは一致しません。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。記載内容のうち将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 なお、当社は、リスクマネジメント委員会を設け、これらの中から定期的に経営戦略に伴うリスクの分析・評価を行い、リスク対応策を講じることで全社的なリスクを低減し、危機の発生を回避、もしくは危機発生時の損失を最小化しています。もし、危機を認知した場合は、クライシスマネジメント規程に定められた方針に則り、速やかに対応いたします。

(1)グローバルでの事業拡大に伴う、バリューチェーンにおけるリスク

当社グループは、グローバルな事業展開をしており、更なる市場拡大を目指しています。生産につきましても、OEM生産を手掛ける多くの海外工場と協力して、東南アジア及び中国など各地域での生産を進めています。

グローバルでの事業拡大には、バリューチェーンである調達、生産、販売において、以下に掲げるリスクが内在しており、経営戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

① サステナビリティ(人権・環境)に関するリスク

a.当社グループは、生産委託先工場に対し、各国及び国際的な労働基準を遵守し労働者に公正で安全な労働環境を提供するよう厳しく要求しています。しかし、当社の生産委託先工場が、人権NGOから労働基準の非遵守を指摘された場合、事実関係に関わらず、当社グループの企業イメージを損なうリスクがあります。

 

b.温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーへの転換などの気候変動への対応が遅れた場合や、廃棄物排出量の削減、資源循環の取り組みなどが適切に行われなかった場合、当社グループの企業イメージに対する社会的な信用低下を招く可能性があります。また、自然災害・気候変動により、スポーツ時間の減少に伴う市場規模の縮小や生産委託先工場の操業停止、原材料価格の変動など、当社事業・財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

c.当社グループは、製品及び製造工程の有害・制限化学物質管理を進めていますが、生産委託先工場や原材料サプライヤーで有害・制限化学物質の非遵守使用があった場合、業績や企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② サプライチェーンに関するリスク

当社グループは、東南アジアを中心とした委託工場での生産から各販売地域を結ぶサプライチェーンにおいて、自然災害や事故等があった場合の物損に備えて、物流保険に加入しております。一方で、サプライチェーンが寸断され、商品の到着遅延による売上減があった場合は、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ DTCビジネスに関するリスク

当社グループは、直営店舗に加えて、Eコマースを通じた製品販売を拡大することでDTCオムニチャネル戦略を推進していますが、これらの戦略が奏功しない場合には、当社グループの競争力や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 代理店・小売店に関するリスク

当社グループは、外部の代理店や小売店に対して当社製品の販売を委託しています。現在、これらの代理店や小売店との取引関係は良好であると認識していますが、同様の良好な取引関係を今後も継続できる保証はありません。また、当社グループはグローバルで販売チャネルの管理を強化していますが、代理店や小売店の経営破たんや債務不履行があった場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2)中期経営計画に関するリスク

当社グループは、2020年10月に、2030年までの10年間にわたる長期ビジョン「VISION 2030」を策定し、さらに2023年11月には、VISION 2030の実現の達成に向けた更なる成長を加速させるべく、「中期経営計画2026」を策定しております。

当社グループは、中期経営計画2026で掲げた「Global Integrated Enterpriseへの変革」を実現し、そこで設定した経営指標に関する目標を達成していくことで、さらなる収益拡大を図るとともにVISION 2030の実現に向け取り組んでいるところです。しかしながら、当社グループ内のグローバルでの連携が効果的に実施できない場合、各国におけるランニングシューズ市場における顧客基盤・市場シェアの拡大が想定通りに実現しない場合、各国におけるランニングシューズ市場の市場規模が期待通りに拡大しない場合、その他本「事業等のリスク」に記載した事項を含む様々なリスク要因が顕在化した場合には、それらの取り組みが計画どおりに進捗せず、VISION 2030や中期経営計画2026で掲げた目標について、当初計画した期間内に又は当該期間後においても達成できない可能性があります。

 

(3)季節的変動に係るリスク

当社グループが取扱う製品には、季節性の高いものが含まれており、季節により業績に偏りが生じる場合があります。そのような製品については、需要見通しの上で仕入・販売計画を策定しておりますが、気候条件による季節的な影響を正確に予測することは困難であり、実際の気候が予測と異なることにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)外部への生産委託に関するリスク

 当社グループは、製品の生産の一部を外部の協力工場に委託しております。これらの外注先の選定にあたっては、技術力や供給能力、労務環境などについて、あらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる取引先を選定しておりますが、納入の遅延や製品の不具合、労務関連問題の発生をはじめとした、生産面でのリスクが生じる可能性を否定できず、外注先の生産能力不足や自然災害による外注先の操業停止などにより、当社グループが十分な製品供給を行えない可能性があります。

 

(5)原材料の仕入価格の変動に関するリスク

当社グループが生産委託先工場に生産を委託しているフットウエア製品の原材料の仕入値は国際的な原油価格と関係があるため、原油価格の大幅な価格変動が数ヶ月後の原材料価格動向に影響を及ぼす傾向があります。フットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際原油価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製品の物流価格の変動に関するリスク

当社グループが生産委託先工場から販売子会社の市場に製品を輸送する場合の費用は、国際的な物流価格と関係があるため、物流価格の大幅な価格変動が製品仕入価格動向に影響を及ぼす傾向があります。

主に東南アジアに生産委託工場を有するフットウエア製品は、売上高の大部分を占めており、国際物流価格に著しい変動が発生した場合には、仕入価格も変動し当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、リスクマネジメント委員会の下部組織として、情報セキュリティ委員会を設け、セキュリティ専任チームが情報セキュリティの強化を進め、個人情報や営業秘密等の情報管理に努めています。しかし、高度化したサイバー攻撃により、これらの情報が万一漏洩・流出した場合、又は、販売オペレーションが停止した場合には、お客様などからの損害賠償請求、売上の機会損失、及び信用の失墜等により、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)システム障害に関するリスク

当社グループのサービスの多くは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて提供されています。当社グループは、適用できうる限りの最新の技術と対応を行い通信ネットワークが正常に機能し、サービスの提供に支障がないよう努めています。しかしながら、かかる対応策によっても通信ネットワーク若しくはコンピュータシステム上のハードウエア又はソフトウエアの不具合、欠陥といった当社グループの情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、当社サービスの不正な利用、重要なデータの消失、機密情報の不正取得などが発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)個人情報の取扱いに関するリスク

当社グループは、グローバルレベルで顧客や従業員の個人情報を保有しています。欧州及び各国における個人情報保護法の施行に対応するため、社内体制とプロセスを整え、当該部署への教育を強化するなどしてリスクを低減しています。特に欧州に関しては、EU一般データ保護規則違反により万一制裁金が課された場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある為、当社グループ共通ルールを定めた拘束的企業準則(Binding Corporate Rules)をEU当局に申請しています。

 

(10)知的財産権に関するリスク

当社は、国内外において、多くの特許権・商標権等の知的財産権を所有しております。知的財産権に関する侵害事件の発生など、商品開発への悪影響やブランドイメージの低下等を招く可能性があります。

知的財産権に関する侵害訴訟は解決までに相当な時間と費用を要し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は、第三者の知的財産権を侵害しないよう、社内規程を定め、従業員に対して定期的な教育を行うとともに、必要なライセンスを取得するよう努めております。しかしながら、それらの取り組みにもかかわらず、第三者から知的財産権侵害の主張がなされる可能性はあり、万が一、当社が第三者の知的財産権を侵害したと判断された場合、特定の重要な技術の使用ができなくなり、また、第三者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

 

(11)マーケティング活動に関するリスク

当社グループはブランド価値向上のため、積極的なマーケティング活動を実施しております。

しかしながら、このような活動が当社グループのブランド価値の維持・向上にとって効果的又は十分であるという保証はなく、また、当社グループの発信内容や、当社グループの役職員や当社グループが起用した方々の言動等に対する社会的批判がその真偽に関わらず拡散するなどして、当社グループのブランド価値や企業の信用が低下し、財務的、又は非財務的な損失を被る可能性があります。

 

 

(12)人財育成及び確保に関するリスク

当社グループにとって人財は経営の基盤であり、特にグローバルな事業活動を一層進める中で、それらの環境で活躍できる人財の育成・確保が急務であり、国内外での積極的な採用活動、研修・教育の充実、コア人財の流出の防止などの施策を講じています。これらの施策にも拘わらず、当社グループの人財育成・確保、適材適所の配置が計画通り進まなかった場合、長期的視点から当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)競合と技術革新に関するリスク

当社グループの事業に関連する製品は、国内外の市場で競合他社との激しい競争にさらされております。当社グループの競合先には、研究開発や製造、販売面で有力な企業が存在しております。現在、当社グループのブランド力及び製品は、こうした競合先との競争力を十分に有しておりますが、このことが、将来においても競合他社に対し有利に競争し続け得ることを保証するものではなく、競合先における技術革新等によって、当社製品の売上減少や販路の縮小が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループにおける研究開発には多額の先行投資が必要となりますが、研究開発を実施した結果として、これらの先行投資に係る費用が回収できるという保証はありません。

 

(14)新規事業に係るリスク

当社グループが新規事業に取り組む場合には、事前に十分な検討を行った上で事業計画が策定され、取締役会における承認の上で行われます。新規事業の展開には先行投資が必要となるケースが多く、当該事業が安定して収益を計上するまでには一定の時間を要することが予想されるため、一時的に当社グループの利益率が低下する可能性があります。

 

 

(15)M&Aに関するリスク

当社グループは新規市場への展開を行う中で、M&Aをその有効な手段のひとつとして位置付けており、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針でありますが、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明する場合や、M&A実施後の事業展開が計画通りに進まない可能性があり、その場合は当社グループが当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることも考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)経済環境・消費動向の変化のリスク

当社グループが事業活動を展開している各国における経済環境や消費動向の変化、人口減少や高齢化といった人口動態の変動に伴う市場規模の縮小により、売上の減少や過剰在庫が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)海外拠点での事業活動に係るリスク

当社グループ又は当社グループが生産や販売等を委託している先の事業活動は、その相当部分が米国、欧州及び中国を含むその他地域で行なわれており、また、今後もこれらの事業活動が展開される国・地域は拡大していく可能性があります。こうした海外市場で事業を行うにあたって、以下のような要因を含む特有のリスクがあり、これによって、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・ゼネスト等の労働紛争

・アジア等における労働力不足と賃金水準の上昇

・政治不安

・貿易規制や関税の変更

・一般的に長期の債権回収期間

・法律や規制の予想し得ない制定又は改正

・文化、商慣習の相違

・関税、輸送費用、その他の価格競争力を低下させる負担費用

・投資効果の実現までに要する長い期間と多額の資金

 

(18)資金調達に係るリスク

当社グループは、金融機関からの借入金のほか社債発行により資本市場から相当額の資金を調達しています。そのため、金融市場の悪化に伴い有利な条件で資金調達ができない場合、資金調達コストが上昇し、あるいはキャッシュ・フローの悪化等により機動的な資金調達が困難となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)減損に係るリスク

当社は、今後買収を通じてさらにのれん等を保有する可能性があり、これらの資産につき収益性の低下が発生した場合、当社は減損を認識しなければならず、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)見積り前提条件の変動リスク

当社グループは連結財務諸表を作成するに際して、売上債権の回収可能性、棚卸資産の評価、投資有価証券の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度などに関して見積りを行っております。これらの見積りは将来に関する一定の前提に基づいており、その前提が実際の結果と相違する場合には、予期せぬ追加的な費用計上が必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)為替レートの変動に伴うリスク

当社グループは、グローバルで製品の製造販売を行っております。各地域における現地通貨建の財務諸表を円換算して連結財務諸表を作成しており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値に影響が出る可能性があります。製品仕入につきましては大部分を米ドル建で行っており、米ドルに対する他通貨の為替レートの変動などに伴う製造原価の上昇などにより、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、実需の範囲内で短期及び長期の為替予約取引により、為替変動リスクを低減していますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではありません。

 

 

(22)税務に関するリスク

当社グループを構成する事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。なお、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

(23)株価下落のリスク

当社の発行済株式は、東京証券取引所にて売買可能であり、大株主による当社株式大量の市場売却や、そのような売却の可能性は、当社株式の市価を低下させる可能性があります。また、当社は当社株式に転換可能な有価証券を発行する可能性もあり、これらの事態が発生した場合、株式価値が希薄化し、株価に悪影響を与える可能性があります。

 

(24)製造物責任に関するリスク

当社グループは、厳密な品質基準を設けて生産及び仕入れを行っております。製造物責任賠償保険に加入しておりますが、すべての賠償額を保険でカバーできるという保証はありません。製造物責任問題発生による社会的評価、企業イメージの低下は、当社製品に対する消費者の購買意欲を減少させる可能性があります。これらの事象は財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(25)法令違反リスク

当社グループは、「アシックスグローバル行動規範」を定め、内部統制の体制を整え、グループ一丸となって法令順守及び倫理行動規範の徹底に努めております。それにもかかわらず、当社グループの役員又は従業員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、財政状態及び経営成績が悪化する可能性があります。

 

(26)紛争・訴訟リスク

当社グループと、取引先、顧客等との間に紛争や訴訟が発生した場合、当該紛争解決に多額の費用がかかり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(27)大規模自然災害等に関するリスク

想定外の自然災害、政治経済状況の変化、感染症・伝染病等の流行、テロ・戦争・その他社会情勢の混乱などが、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

特に、グループ全体の経営管理機能を集約している本社が所在する兵庫県神戸市で大規模自然災害が発生した場合、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、大規模自然災害が本社地域及び主要オフィスに発生した場合に適用する「事業継続計画(BCP)」を策定しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 財政状態及び経営成績等の状況

 

「駆け抜けろ、可能性。」

アシックスは、挑戦するすべての人の可能性を信じ背中を押すとともに、私たちも決して止まることなく、走り続ける存在でありたいと考えています。そして、自らの可能性を信じて走り続けることで、道が開かれていくと信じています。2025年、アシックスはこの言葉をスローガンとし、駆け抜けてまいります!

 

2024年度の振り返り

 

まず初めに、2024年について皆様と一緒に振り返りたいと思います。

昨年は、神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会やパリオリンピック・パラリンピックなど、国際的なスポーツイベントが大いに盛り上がりました。多数のアスリートの活躍を通じてアシックスブランドを世界的に発信する絶好の機会となり、多くの方にアシックスをより知っていただくきっかけとなりました。

 

さて、業績の観点から2024年を振り返ると、営業利益は1,001億円となり、初めて大台に乗りました。また、営業利益率は業界でもトップ水準の14.8%となり、アシックスのステージが完全に変わったと考えています。

カテゴリーとしては、これまでアシックスの柱であったパフォーマンスランニングに次ぐ第2の柱として、スポーツスタイルやオニツカタイガーの躍進が顕著であった1年でした。スポーツスタイル、オニツカタイガーのどちらも、売上高では約1,000億円にまで到達しました。スポーツスタイルの売上高は前期比+66.1%、カテゴリー利益率は27.3%(前期比+7.0ppt)となり、収益性を向上させながら成長を続けています。スポーツスタイルの商品はGQ、ELLE、HYPEBEASTをはじめとする複数のメディアにおいて取り上げられ「スポーツスタイル」ブランドをグローバルで拡大しました。

オニツカタイガーの売上高は前期比+58.3%、カテゴリー利益率は34.0%(前期比+8.5ppt)で、カテゴリーの中で最も高い利益率となっております。オニツカタイガーは2024年に75周年を迎え、パリ シャンゼリゼ通りにおける「ホテル オニツカタイガー」のオープンや、ミラノファッションウィークへの参加、他ブランドとのコラボレーションにより、これまで以上にグローバル規模でブランド発信を行いました。

地域別でみると、アシックスジャパンの収益性が大きく改善し、営業利益率は23.5%(前期比+12.7ppt)となりました。インバウンド売上高が好調であることに加えて、これまで取り組んできた「選択と集中」の成果が表れています。その他主要地域においても売上高は前期比+20%前後で拡大しており、営業利益率も向上、特に北米の営業利益率は前期比+7.0pptの8.3%となりました。成長著しいタイ、マレーシア、インドネシアでは売上高が前期比30%超、ベトナムでは前期比+70%超と大きな伸びを見せており、引き続き今後の成長が非常に楽しみな地域です。

また、11月には中期経営計画2026(以下、中計2026)の財務目標を上方修正し、2026年には、営業利益1,300億円以上(従来目標800億円以上)、営業利益率17%以上(同12%前後)、ROAは15%前後(同10%前後)を目指します。

 

2024年11月の中期経営計画2026アップデートにおいては、更なるイノベーション強化に向けた取組みとして、ASICS Innovation Campus(仮称)の設置を発表しました。パフォーマンス×フットウェアの長期戦略に注力し、グローバルで、社内外のコラボレーションハブとしての活用を目指し、準備を進めてまいります。

 

アシックスの会員プログラムであるOneASICSの会員数は、2024年12月時点で約1,760万人となりました。12月にはアシックス公式アプリを日本で先行してリリースし、人気商品に関するお知らせや、直営店舗での会員バーコード表示によるポイント獲得など、利便性が大きく向上しています。今後は、OneASICSでの一貫したデータ連携により、パーソナライズされた情報やおすすめ商品の通知機能を強化し、アプリ会員限定イベントの開催などを通じて、更なるブランド体験価値向上を図ります。

 

従前より取り組んでいる人的資本への投資強化については、2024年にプロフィットシェア型賞与を導入しました。2025年3月に第1回目の分配を行う予定で、非管理職の従業員には1人当たり約50万円を支給する見通しです。これは、アシックスの資本コストを上回る利益の一部をグローバルの全従業員に分配する仕組みであり、利益を従業員にしっかりと還元するとともに、資本コストを自分ごととして捉えてもらえる経営を推進します。

 

2024年の資本政策です。アシックスブランドをグローバルで広く認知いただき、そのポジションを確固たるものにしていく中、資本・財務面においてもステージを上げていく必要性を認識し、アシックスグループが保有する政策保有株式の全売却に取り組みました。また、並行してアシックスの株式を政策保有株式として保有頂いていた金融機関などの株主に対しても売却を打診し、7月に2,000億円規模の株式売出しを実施しました。

 

「アシックスはグローバル資本市場の中にいる」という認識を、経営陣の間で改めて明確に共有し、真正面から向き合う覚悟を決めました。株主構造を変革し、常に資本市場からのプレッシャーにさらされる経営を行っていくことを、自ら選択しました。これまで以上に透明性と緊張感を備えた経営が求められ、時には資本市場から厳しいご意見をいただくこともあるかもしれません。しかし、そのような期待や声を、アシックスがさらに成長していくための原動力・推進力としていきたいと考えています。

 

上記の資本政策に取り組んだこともあり、IR面談でお会いした投資家数は2023年の906社から1,860社に大幅に増加し(※年間の延べ回数、スモールミーティングなどへの参加投資家数も含む)、多くの投資家やアナリストの皆様とのコミュニケーションの機会をいただきました。また、総額350億円となる2度の自己株式取得や株式分割、それに伴う株主優待拡充も実施しております。株主還元については、期末配当は10円となり、2024年の年間配当は過去最高(分割後換算)の20円となる見通しです。

 

これらの多岐にわたる取組みが評価され、日本IR協議会の「IR優良企業賞」「“共感”IR賞」を2年連続ダブル受賞し、また、株式売出し案件を日経ヴェリタスの「ディール・オブ・ザ・イヤー2024(エクイティ部門)」にも選出いただきました。「MSCI JapanStandard指標」、「JPX日経400」、「JPXプライム150」といった株価指数にも相次いで採用されましたが、資本市場の期待に応え続けていくために、次のステージに上がったアシックスは更に成長していく必要があります。

 

2024年は他にも、デジタル経営がビジネスモデルの強化につながっている点などを評価いただき「DXグランプリ2024」を受賞しました。ESG投資指標「Dow Jones Sustainability Asia/Pacific Index」の対象銘柄にも10年連続で選出され、環境情報開示システムを運営する国際的な非営利団体CDPが実施する調査において「気候変動Aリスト(最高評価)」企業にも初めて認定されました。製品においては、シューズの各素材をリサイクルできるようにしたNIMBUS MIRAIについて「グッドデザイン・ベスト100」や日経優秀製品・サービス賞2024における最優秀賞を獲得するなど、幅広い分野において評価をいただいた1年となりました。

 

2025年の主要な取組み

 

年末年始の日本における駅伝大会等においてもアシックスのシューズ着用率は着実に上昇しており、これまでアスリートとともに取り組んできた商品開発・ブランド発信の成果が出てきたと感じています。2025年もアシックスらしい取組みを続け、既にランニングシェアNo.1を獲得している欧州、日本に加え、北米でもシェアNo.1を目指します。東京2025世界陸上においては、オフィシャルパートナーとしてアスリートへのサポートのみならず、アシックスブランドを広くご認識・ご理解いただけるような取組みを予定しています。

また、2024年5月に立ち上げた社長直轄のTプロジェクトの取組みとして、2025年1月にオーストラリアでASICS Tennis Summitを開催しました。ASICS Tennis Summitはアシックスブランドやテニスの事業戦略について発信するイベントであり、その中でテニスシューズの最新作「GEL-RESOLUTION X」を発表しました。アスリートとのトークセッションでは、アスリートからのフィードバックを含めた商品開発プロセスについても発信しました。今後もアスリートの声を反映させた商品開発を軸に、テニスカテゴリーを成長させてまいります。

 

2024年7月に開示をしておりますように、2025年4月に一般財団法人「ASICS Foundation」の設立を予定しています。昨年来これまで多くの株主様とも議論をさせていただき、ご理解を得ながら準備を進めております。株主総会でのご承認を経ての設立ですが、運動・スポーツに関わる社会課題に取り組み、より多くの人々の心身の健康に貢献することを目的に、グローバルで、社会的または経営的困難な状況にある方に向けて、運動・スポーツを通した支援を提供する団体への助成を行うことで、スポーツへのアクセシビリティ向上を目指します。

2024年8月より実施した昨年2度目の自己株式取得により、財団設立に伴う潜在的な株式希薄化への対応はすでに実施済みです。これに加えて今回の決算発表と同時に最大200億円・700万株を上限とする自己株式取得の発表をいたしました。また、2024年に取得した自己株式に加え、2025年に取得予定の自己株式を合わせた株式総数を上回る2,500万株の自己株式消却を2月に行いました。

 

2025年は、中計2026の2年目となります。Global Integrated Enterpriseへの変革を加速させ、更なる成長を目指してまいります。挑戦するすべての人の可能性を信じ背中を押すとともに、私たちも走り続けます。今後のアシックスの可能性に、ぜひご期待ください。

以上

 

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

① 財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ54,877百万円増加し、518,994百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前期末に比べ26,738百万円増加し、284,054百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前期末に比べ28,139百万円増加し、234,940百万円となりました。

 

② 経営成績

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

(△は減)

増減率

(%)

為替影響除く

増減率(%)

売上高

570,463

678,526

108,063

18.9

13.0

売上総利益

296,896

378,878

81,982

27.6

21.2

営業利益

54,215

100,111

45,896

84.7

76.9

経常利益

50,670

92,601

41,931

82.8

親会社株主に帰属する当期純利益

35,272

63,806

28,533

80.9

 

 当連結会計年度における売上高は678,526百万円と前期比18.9%の増収、営業利益は100,111百万円と前期比84.7%の増益、経常利益は92,601百万円と前期比82.8%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は63,806百万円と前期比80.9%の大幅増益となりました。

 

 報告セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

セグメント名称

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

(△は減)

増減率

(%)

為替影響除く

増減率(%)

日本地域

売上高

135,849

166,432

30,582

22.5

セグメント利益

12,796

27,673

14,876

116.3

北米地域

売上高

114,617

135,040

20,422

17.8

9.6

セグメント利益

1,440

11,274

9,833

682.5

646.1

欧州地域

売上高

147,982

179,388

31,406

21.2

12.8

セグメント利益

14,189

25,290

11,100

78.2

66.3

中華圏地域

売上高

77,615

100,497

22,882

29.5

22.1

セグメント利益

13,107

19,335

6,228

47.5

39.7

オセアニア地域

売上高

38,460

42,986

4,526

11.8

4.5

セグメント利益

6,241

7,634

1,393

22.3

14.3

東南・南アジア地域

売上高

27,122

37,321

10,198

37.6

29.1

セグメント利益

4,971

7,414

2,443

49.2

39.4

その他地域

売上高

49,843

44,840

△5,002

△10.0

△11.3

セグメント利益

4,400

6,541

2,140

48.6

46.2

 

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは104,614百万円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは7,558百万円の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは84,322百万円の支出となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて13,671百万円増加し、126,973百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

 当社グループは、生産実績の割合が僅少であるため記載を省略しております。また、受注状況につきましても、受注生産を行っている割合が僅少であるため記載を省略しております。なお、報告セグメント別の売上高につきましては、「第2 「事業の状況」 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、記載内容のうち将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態

 当連結会計年度末の財政状態といたしましては、総資産518,994百万円(前連結会計年度末比11.8%増)、負債合計284,054百万円(前連結会計年度末比10.4%増)、純資産合計234,940百万円(前連結会計年度末比13.6%増)でした。運転資本については、翌シーズンに向けた棚卸資産の積上げと為替影響により増加したものの、運転資本の増額は抑制されました。また、現金及び預金については、好調な業績や政策保有株式の全売却により前連結会計年度と比べ増加したものの、一部を自己株式の取得や社債の償還に充当し、総資産の増加を抑制いたしました。また、自己資本比率については、総額350億円の自己株式取得を実行したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の順調な積上げもあり、44.9%と前連結会計年度末比0.8pptの上昇となりました。

a. 流動資産

 現金及び預金や商品及び製品の増加などにより、369,143百万円(前連結会計年度末比14.1%増)となりました。

b. 固定資産

 投資有価証券の減少があるものの、ソフトウエアや使用権資産の増加などにより、149,851百万円(前連結会計年度末比6.6%増)となりました。

c. 流動負債

 支払手形及び買掛金の増加などにより、194,739百万円(前連結会計年度末比35.6%増)となりました。

d. 固定負債

 償還予定が1年以内となった社債や返済期限が1年以内となった長期借入金の固定負債から流動負債への振り替えによる減少などにより、89,314百万円(前連結会計年度末比21.4%減)となりました。

e. 純資産

 自己株式の取得による減少があったものの、利益剰余金の増加などにより、234,940百万円(前連結会計年度末比13.6%増)となりました。

 

② 経営成績

 当連結会計年度における売上高は678,526百万円と前期比18.9%の増収、営業利益は100,111百万円と前期比84.7%の増益、経常利益は92,601百万円と前期比82.8%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は63,806百万円と前期比80.9%の大幅増益となりました。この結果、売上高をはじめ各段階利益も過去最高を記録し、「中期経営計画2023」で掲げた目標を大幅達成いたしました。

a. 売上高

 為替影響に加え、全てのカテゴリーで好調に推移したこともあり、678,526百万円と前期比18.9%の増収となりました。

b. 売上総利益

 上記増収の影響により、378,878百万円と前期比27.6%の増益となりました。

 

c. 営業利益

 全てのカテゴリー及び地域で、売上高並びに粗利益率が好調に推移したことにより、100,111百万円と前期比84.7%の増益となりました。

d. 経常利益

 上記増収増益の影響により、92,601百万円と前期比82.8%の増益となりました。

e. 親会社株主に帰属する当期純利益

 上記増収増益の影響に加え、政策保有株式売却に伴う投資有価証券売却益の計上などにより、63,806百万円と前期比80.9%の増益となりました。

 

 カテゴリー別の経営成績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

カテゴリー名称

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

(△は減)

増減率

(%)

為替影響除く

増減率(%)

パフォーマンス

ランニング

売上高

285,929

326,936

41,007

14.3

7.6

カテゴリー

利益

50,018

70,726

20,708

41.4

34.6

コアパフォーマンス

スポーツ

売上高

72,154

78,620

6,466

9.0

4.3

カテゴリー

利益

12,810

14,104

1,293

10.1

5.9

アパレル・

エクィップメント

売上高

36,185

38,065

1,880

5.2

0.2

カテゴリー

利益

1,001

4,340

3,338

333.2

308.7

スポーツスタイル

売上高

59,257

98,425

39,168

66.1

56.2

カテゴリー

利益

12,047

26,876

14,829

123.1

111.2

オニツカタイガー

売上高

60,304

95,439

35,135

58.3

53.1

カテゴリー

利益

15,360

32,435

17,075

111.2

106.5

 

a. パフォーマンスランニング

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、326,936百万円と前期比14.3%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、70,726百万円と前期比41.4%の増益となりました。

革新的な商品開発に加え、ランニングエコシステムを活用し、ランナーとの接点をさらに拡大してプレミアムなランニング体験を提供いたします。

また、ASICS CREATION CENTERやスポーツ工学研究所における新素材や新構造を含めた中長期的なイノベーションに向けた取り組みも強化し、マーケットシェアNo.1に向けた攻勢を継続してまいります。

b. コアパフォーマンススポーツ

 売上高は、欧州地域や東南・南アジア地域で好調に推移し、78,620百万円と前期比9.0%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、14,104百万円と前期比10.1%の増益となりました。

テニスをランニングに次ぐ収益の柱とするため、トップアスリートとの共創による製品開発やサービス提供を通じ、更なる売上拡大を図ります。

また、テニスに続く注力サブカテゴリーとして、インドア、ワーキングのグローバル展開を強化することで、CPS事業の成長を加速させてまいります。

c. アパレル・エクィップメント

 売上高は、主に欧州地域が好調に推移したことから、38,065百万円と前期比5.2%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、粗利益率の改善などにより、4,340百万円と前期比333.2%の大幅増益となりました。

アシックスの独自性と差別化を強調したフラッグシップ商品の開発を行うこと、また競技カテゴリーおよび商品の戦略的な絞り込みによる開発生産の効率化を図ってまいります。

d. スポーツスタイル

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、98,425百万円と前期比66.1%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、26,876百万円と前期比123.1%の大幅増益となりました。

スポーツスタイルの提供価値や独自性をより良く訴求するためのグローバルでのマーケティング活動により、ブランド認知強化及び価値向上に努めます。また、ファッション感度の高いお客様に強い販売アカウントとの連携を強化や、DTC強化により、高付加価値製品への販売訴求を実施することで、売上成長と営業利益率向上を図ってまいります。

e. オニツカタイガー

 売上高は、全ての地域で好調に推移し、95,439百万円と前期比58.3%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収や粗利益率の改善などにより、32,435百万円と前期比111.2%の大幅増益となりました。

ミラノ・ファッションショーでの発表や、各地のブランドイベントを通じたメディア露出を強化し、ブランド認知度と価値の向上に努めます。また、主要都市の一等地への直営店舗出店やグローバルEコマースの拡大を推進し、DTCビジネスをさらに強化することで、グローバルでの成長加速を目指します。

 

報告セグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

a. 日本地域

 売上高は、スポーツスタイルやオニツカタイガーが好調だったことにより、166,432百万円と前期比22.5%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、27,673百万円と前期比116.3%の大幅増益となりました。

パフォーマンスランニングやテニス、ワーキングシューズ市場などの注力した製品カテゴリーでマーケットシェアNo.1に向けた取組みを実施することで、ブランド力向上を目指します。また、DTC比率の更なる拡大やデジタルを活用した業務改革や効率化により収益性を高めることで、健全な利益を持続的に創出するできるよう取り組んでまいります。

b. 北米地域

 売上高は、パフォーマンスランニングやスポーツスタイルが好調だったことにより、135,040百万円と前期比17.8%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、11,274百万円と前期比682.5%の大幅増益となりました。

当社の強みであるパフォーマンスランニングやテニスでのビジネス拡充に注力し、専門店でのシェアNo.1を目指します。また、直営店舗の適性化を進めることで、更なる成長とブランドの強化を進めてまいります。

c. 欧州地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、179,388百万円と前期比21.2%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、25,290百万円と前期比78.2%の増益となりました。

スポーツイベントや国際大会などを活用したOneASICSメンバーシッププログラム強化施策により、ブランドエンゲージメントの向上を図ってまいります。また、欧州地域で高い人気があるスポーツスタイルの成長戦略を実行することで、更なる収益性向上を目指します。

d. 中華圏地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、100,497百万円と前期比29.5%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、19,335百万円と前期比47.5%の増益となりました。

今後はパフォーマンスランニングを軸に、スポーツを推進する政府方針を受け、コアパフォーマンススポーツを更に強化していくとともに、中国版OneASICSの展開やオムニチャネル戦略の推進などのデジタルの活用による新規顧客獲得と更なる収益性向上を目指します。また、中国本部の機能を活用した、現地ニーズに適合した製品の企画や開発を継続的に強化してまいります。

e. オセアニア地域

 売上高は、全てのカテゴリーが堅調に推移したことにより、42,986百万円と前期比11.8%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収などの影響により、7,634百万円と前期比22.3%の増益となりました。

オセアニア地域におけるパフォーマンスランニング市場No.1の地位を圧倒的なものとするため、OneASICSを通じたブランドエンゲージメントの向上を図ります。また、スポーツスタイルビジネスを拡大させることで、更なる成長を目指します。

f. 東南・南アジア地域

 売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、37,321百万円と前期比37.6%の増収となりました。

 セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、7,414百万円と前期比49.2%の増益となりました。

シンガポール、タイ、マレーシア、インドでパフォーマンスランニングのシェアNo.1を獲得するため、OneASICSの活用や直営店の拡大を推進し、更なる収益性向上を目指します。また、インドにおいては現地生産の推進やスタートアップとの協業などにより、DTC比率を上昇させることで、成長を加速させます。

g. その他地域

 売上高は、2023年12月にHaglöfs ABの株式譲渡を実施し、同社を連結範囲から除外した影響により、44,840百万円と前期比10.0%の減収となりました。

 セグメント利益につきましては、南米などの好調により、6,541百万円と前期比48.6%の増益となりました。

南米ではブラジルでの継続的な成長に加え、他の南米諸国の成長を加速させ、事業規模を拡大してまいります。また、ECチャネルの拡大や現地生産を活用し、現地ニーズへの迅速な対応を実施することで売上成長と営業利益率の向上を目指します。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローにおきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、126,973百万円と前期比13,671百万円増加しました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は104,614百万円となり、前期比14,518百万円の収入増加となりました。

 収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益93,244百万円、支出の主な内訳は、法人税等の支払額18,834百万円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は7,558百万円となり、前期比2,918百万円の支出増加となりました。

 収入の主な内訳は、投資有価証券の売却及び償還による収入11,668百万円、支出の主な内訳は、無形固定資産の取得による支出12,664百万円、有形固定資産の取得による支出11,375百万円です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は84,322百万円となり、前期比44,069百万円の支出増加となりました。

 支出の主な内訳は、自己株式の取得による支出35,014百万円、社債の償還による支出20,000百万円、配当金の支払額14,542百万円、リース債務の返済による支出14,468百万円です。

 

キャッシュ・フロー指標のトレンド

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

自己資本比率(%)

37.9

42.2

40.1

44.1

44.9

時価ベースの自己資本比率(%)

108.8

135.0

125.6

174.4

428.9

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

6.4

2.2

△6.5

1.5

1.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

11.6

28.7

△8.6

18.9

19.0

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金運営は、営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。また、当社グループは、事業活動を行うための資金の調達に際し、低コストで安定的な資金の確保を重視しております。当連結会計年度末の有利子負債は117,276百万円であります。

資金効率の向上と金融費用の削減、並びに財務面のグループガバナンス強化を目的として、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(グローバルCMS)を2016年3月より金融機関と構築しており、グローバルCMS参加グループ会社を一体とみなして資金の預入及び借入を行っております。これに伴い、従来当社から行っておりました一部子会社への貸付けを解消いたしました。当該グローバルCMSにおいて、預入金及び借入金の相殺表示を行うためのすべての要件を満たしているため、相殺表示を行っております。なお、当連結会計年度末の相殺金額は48,970百万円であります。

 

(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

当連結会計年度の通期見通しが2023年11月に設定した2026年の目標を超過するなど、業界No.1の収益性実現に向け成長が加速していることから、財務目標を中心に「中期経営計画2026」の上方修正を2024年11月に実施いたしました。見直し後の2026年12月期の数値目標は、「連結営業利益1,300億円以上」「連結営業利益率17.0%以上」「ROA15.0%前後」を設定しております。当社グループは見直し後の計画に基づき、「グローバル×デジタル」の推進、更なるブランド力、イノベーション強化を図り、持続的な成長を目指します。

当連結会計年度は、高付加価値商品にフォーカスしたことにより、パフォーマンスランニングの売上高が増収したことや、スポーツスタイル、オニツカタイガーの売上高が全地域で増収となったことで、全てのカテゴリーで増収増益となりました。また、販売価格適正化やDTC比率の良化などによる粗利益率改善により、売上高、各段階利益は過去最高額を記録しました。その結果、営業利益は100,111百万円(前期比84.7%増)、営業利益率は14.8%(前期比5.3ppt改善)、ROAは13.0%(前期比5.1ppt改善)となりました。業界No.1の収益性実現に向けて成長を加速させ、営業利益額の更なる成長を図ります。

「中期経営計画2026」ではグローバルでの収益を伴った売上成長を実現するために、収益基盤であるパフォーマンスランニングの更なる成長に加え、次なる収益の柱として、他カテゴリーの成長を加速させます。当連結会計年度はスポーツスタイルやオニツカタイガーが躍進し、収益拡大に貢献しました。また、地域成長戦略としては、欧州地域や中華圏地域などの既存の収益基盤である地域の持続的な成長とインドや東南・南アジア地域の高成長地域の売上成長の加速と営業利益率向上の双方を目指します。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発は、経営の基本方針である機能性豊かで質の高いスポーツ用品を提供していくことを基礎とし、蓄積されたスポーツテクノロジーに基づき、パフォーマンスランニング、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイル、アパレル・エクイップメント及びオニツカタイガーの各分野において、各統括部門及び各関係会社が新製品の開発を担当し、スポーツ工学研究所が材料開発、機能設計、製品の機能評価などを通じて、各統括部門及び各関係会社の新製品開発の支援業務を行っております。さらには、研究所では、製品設計で得られた多くのデータ、知見をもとに、パフォーマンスの向上やウェルネスケアの分野において、価値あるサービスの提供を目指した研究開発も行っております。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は6,901百万円(前期比4.5%増)となっております。なお、当社グループの行っている研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連づけて記載しておりません。