当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、経営理念「音から価値を創出し、革新的サービスを提供することにより社会に貢献する」を掲げ、キーボードレスの新しい社会を自ら創造することをビジョンとし、事業を展開しております。2014年8月、産総研による「産総研技術移転ベンチャー」の認定を受けたことを契機に、「音」に着目した専門的な研究・開発をスタートし、その成果を革新的なサービスとして社会に提供していくことを目指してまいりました。また、近年画像認識や自動運転などを中心に人工知能(AI)の活用が広がりを見せており、当社では、「音」への人工知能(AI)の活用も顧客の経営課題を解決するためには重要な技術であると考えており、当社プロダクトに活用するための音声のテキスト化、感情分析、異音検知の領域に関する研究・開発を続けております。
(2)経営環境
2024年の日本経済は緩やかな回復基調がつづいており、日本銀行では長らく続いたマイナス金利政策を解除するなど日本経済の正常化に向けた動きがみられます。一方で、物価上昇や、ウクライナやイスラエル情勢の緊迫化や世界経済との金利差からの円安等により、依然として先行きの不透明な経済状況が続いております。
このような中、当社の属する国内のAI市場環境は、株式会社富士キメラ総研の試算によると、2021年度は1兆1,609億円、2027年度は1兆9,787億円と予測されております。(出典:株式会社富士キメラ総研「2022年人工知能ビジネス総調査」)また、当社は主にコールセンター向けの製品として「Voice Contact」および「Terry」を提供しておりますが、コールセンターサービス市場とコンタクトセンターソリューション市場を合わせた市場規模(事業者売上高ベース)は2022年度に1兆6,406億円、2025年度には1兆6,505億円と予測されております。(出典:株式会社矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2023年)」)
また、内閣府が提唱する我が国が目指す未来社会の姿「Society 5.0」(※1)の実現に向け、多様な人・機械・技術が国境を越えてつながる社会の具体化が必要となり、そのためには各企業においてDXの推進が必要不可欠であると当社では考えております。DX推進の重要な技術として、画像情報を活用するAI技術が必要となることは言うまでもありませんが、画像だけではなく当社が強みを持つ「音」の情報をデータとして取得し有効活用することも重要になると考えており当社技術の活用ができると考えております。例えば、お客様との電話のやり取りなど、デジタルデータ化されていないデータ分析は人手による属人的な分析にとどまっており、当社技術を活用することにより、人手によらずデジタルデータ化、分析が可能となります。また、経済産業省が提唱する「Connected Industries」(※2)で掲げる重点5分野においてもその実現のため、今後官民で取組が進められております。当社の持つ音の技術は「Connected Industries」の取り組みとも親和性が高いと認識しており、過去の取組みとしてスマートライフ、プラント・インフラ保守、ものづくり・ロボティクス、自動走行・モビリティサービスの4分野において、実証実験や社会実装に向けた研究・開発についてNEDOによる研究開発プロジェクトの採択をうけ、複数の事業会社と連携して推進してきました。
このように、人間の代替となる、又は人間以上の能力を発揮しうる人工知能が期待されるなか、生成AIも登場しておりますが、“音声認識”や“異音検知”や”データ解析”、つまり人の「耳(認識、認知)」+「脳(予測、最適化)」の代替は、未だ技術的発展途上にあると当社では考えており、当社はこの分野で他社に追随を許さないポジションの確立を目指しております。
(3)経営戦略
当社では「AI×音」サイエンス事業として、「Society 5.0」に必要不可欠なDX推進の支援としてAIソリューション事業及び「Connected Industries」の実現に向けて必要な音をデータとして活用するためのAIプロダクト事業を実施しております。AIプロダクト事業は、広範な顧客層に対して汎用的に利用できる製品として、「Voice Contact」、「Terry」、「ZMEETING」、「FAST-D」を提供しております。AIソリューション事業は特定の顧客経営課題を分析し、生成AIを活用した課題解決やDX化推進支援をプロジェクトベースで提供しております。また、リモートワーク普及などによる働くスタイルの変化や生成AIの登場により、「AI×音」を使った経営課題解決の提案機会も増加しており、例えばリモート会議における議事録作成の課題をうけ当社ではZMEETINGの提供を開始するなどしております。さらに、コールセンターにおけるオペレータのリモートワーク実現の一助として、クレームとして発せられる強い語調や言葉を自動検知し、遠隔地から上席によるサポートを受ける仕組みの提供があげられます。また、生成AI等が登場し今後もAI市場拡大が進むと考えておりますが、その中でも当社が今後も継続的に成長を続けるためには、当社独自の研究開発型ビジネスプロセスを推進し社会課題の解決が可能な新たなAIプロダクトを継続的に市場提供していくことが重要であると認識しております。
AIプロダクトのうち、主にコールセンター向けプロダクトである「Voice Contact」および「Terry」についてはコールセンター事業者等に導入実績があり、今後も新規ユーザー獲得に向け、VOC分析機能によるデータ分析や生成AIを活用した要約の自動作成によるオペレータの業務負荷低減等の機能開発と、これら機能を活用した事例紹介も活用しつつ、コールセンターを持つ顧客企業さまへの直接販売に加え、コールセンターBPOサービスを展開する企業さまと協業し、サービス展開の強化を図ります。
異音検知プロダクトについては、「すべての機器に聴覚を与える(異音検知)」の実現を目指し、周波数や音量のかい離の程度などの音の特徴量分析結果から異常(外れ値、異常値)を発見することで、経験豊富な熟練者のスキルに依存せず、音を使った品質診断やサービス展開、ノウハウの伝承の可能性など、事業会社との実証実験をこれまで数多く取り組んでいます。当社では、音データの収集・分析、AIアルゴリズム開発、システム実装まで一気通貫のソリューション構築を目指し、AIモデルの作成や外れ値検知等の異音検知アルゴリズム、異音の原因を特定する分類アルゴリズム等が行える機能が使用できる異音検知プロダクト「FAST-D」の開発を行っております。また、FAST-Dほど多くの機能が必要なく、FAST-Dをベースに必要な機能のみを切りだし機械や設備の予防保守や予知保全に必要な機能に絞ったアプリケーションとして使用可能な「FAST-Dモニタリングエディション」の開発提供を行っております。当社では、今後も鉄道、製造業、電力、不動産管理等の企業と開発を進めその知見を蓄えつつ、業界横断的に活用できる異音検知プロダクトとしての機能開発を実施してまいります。
AIソリューション事業については、現在は出資先等からの紹介や当社への問い合わせから個別の経営課題の解決に対する提案を行い、その課題解決プロジェクトを実施しておりますが、今後はこれまでの課題解決の事例の紹介や展示会出展等のプロモーションを行い見込み顧客の獲得を進めたいと考えております。また、課題解決の事例を用いて同一業界内の他の企業にも同様のプロジェクトを提案し、新たな共創プロジェクトを獲得も進めたいと考えております。また既存の顧客に関しては、個別の課題解決プロジェクトを推進する中で両社の業務理解度や、信頼関係が向上すれば、顧客の別の課題をいただく機会も増えると考えております。個別の課題が当社AIプロダクトの導入で解決できる場合にはAIプロダクトの提案を行うことでクロスセルの拡大にもつなげたいと考えております。
当社では当事業年度末現在で4つのプロダクトを提供しておりますが、今後もさらに多くのプロダクトを提供したいと考えております。そのためには当社の既存プロダクトを生み出した独自の研究開発型ビジネスプロセスの推進が必要だと考えております。まず、当社では、音に関する研究課題のうち数年以内に新規プロダクトにつながる課題を当社で選定し、研究開発を進めることを計画しております(R&D初期フェーズ)。また、AIソリューション事業における顧客の課題解決のためのプロジェクトを実施するとともに多くの顧客が解決したい課題を集めてまいります(R&Dプロジェクトフェーズ)。2024年度は既存取引先との共創により66件の新規プロジェクトを積上げ、その後はプロジェクト事例の業界横展開などにより、新規取引先とのプロジェクトの積上げ加速・拡大を行うことを計画しております。
R&Dプロジェクトフェーズで集めた課題を、コンサルティングメンバー、技術メンバー、マーケティングメンバーによる社内クロスファンクショナルチームにより分析し多くの顧客で必要となるプロダクトを検討し、R&Dプロジェクトフェーズで生み出された技術をパッケージ化して新規プロダクト開発を進めたいと考えております。当事業年度末現在は4プロダクトですが中期的には倍の8つのプロダクトを提供し、既存顧客内のクロスセル推進に加えて新規顧客の拡大も推進してまいります。この活動により当社は収益の安定成長基盤確立を目指すことを計画しております。
当社は、今後の持続的な成長を見据え、サステナビリティ経営として事業活動を通じた社会課題の解決に今後取り組んでいきたいと考えております。SDGs(※3)をはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認し、以下の通り整理しました。これらの課題に取り組むことにより、社会とともに持続的に成長し信頼される企業を目指してまいります。
1.事業活動を通じた社会貢献
当社の特徴である音声・音響の可視化を実現するソリューション技術等の提供による先端テクノロジー普及の支援を通した社会貢献により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。
(8.働きがいも経済成長も)
(9.産業と技術革新の基盤をつくろう)
2.上場企業としてのガバナンス体制の強化
コンプライアンスの徹底や、積極的な情報開示を通した企業統治により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。
(8.働きがいも経済成長も)
(16.平和と公正をすべての人に)
(17.パートナーシップで目標を達成しよう)
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、サービスの競争力を維持し、財務活動を含めた全事業の業績を向上させていくことが重要であると認識していることから、主な財務活動上の経営指標として、売上高成長率及び経常利益率、ROE、自己資本比率を重視しております。また、事業活動の状況をみる指標としてAIプロダクト事業においては、アカウント数(顧客者数)とAIプロダクトに占める生成AI売上高比率を、AIソリューション事業においては、プロジェクト数を、事業全体としては、エンジニアの人数をKPIとしております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① パートナー企業との協業推進
当社は、2016年以降、様々な業界の大手事業会社と資本業務提携をしており、相互に経営資源とノウハウを補完し合うことにより事業展開を推進してまいりました。中長期的なビジョンに基づき、今後も各社との取り組みを適時・適切に進めていくとともに、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって対処しながら、相互の企業価値の向上に努めてまいります。
② サービスの強化
当社は、「AI×音」に関するソリューションを研究開発型ビジネスプロセスにより研究開発、コンサルテーション・要件定義からプロダクト開発、運用保守までを当社で対応し、ユーザーの利用シーンに合わせた様々な機能を用意することにより、サービスの魅力が更に高まると考えております。新しいテクノロジーを取り入れつつ、対象領域をさらに広げ、競争優位なシステムの構築を図るため、社内開発体制強化や他社との業務提携などに積極的に取り組み、業務の標準化、社内システムの改善などを適宜進めてまいります。
③ テクノロジーの強化
当社の事業領域であるAI(人工知能)技術は、その利用可能性を期待され活発に研究開発が行なわれています。当社が事業を継続的に拡大していくには、様々な新技術に適時に対応していくことが必要であり、さらなる優秀な人材の確保及び研究開発への投資、ノウハウの共有や教育訓練などが不可欠であると考えております。優秀な人材を積極的に採用するとともに、研究開発への取り組みを継続的に実施し、開発体制の強化に努めてまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社は、顧客企業へのサービス提供において、様々な音声データや顧客企業のユーザーに関する情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を徹底することが信頼確保の観点から重要であると考えております。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001の認証、個人情報の保護措置に関するプライバシーマークなどの外部認証を取得し、情報システム開発管理規程に基づく運用の実施、役職員への定期的な教育、物理的・技術的対策への必要経費の確保により、情報管理体制を強化してまいります。
⑤ 利益及びキャッシュ・フローの創出
当社は、AIを活用した先進的なサービス開発を目指し、研究開発等への先行投資を積極的に進めてまいりました。これにより第10期まで継続して営業損失を計上しておりました。第11期以降は先行投資の効果もあり売上高が増加してきており、営業黒字に転換しております。今後も継続的に成長を続けるために、当社独自の研究開発型ビジネスプロセスを推進し複数のAIプロダクトを継続的に市場提供していくことにより継続的な売上高の増加に努める一方で、開発工程の効率化や収支管理への取り組みにより、収益性の改善に努めてまいります。
⑥ 内部管理体制の強化
当社事業は未だ成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であることを認識しております。引き続き、管理部門の整備を推進し、コーポレート・ガバナンスを充実していくことで、経営の公正性・透明性を確保し、リスク管理の徹底や業務の効率化を図ってまいります。
[用語解説]
※1.Society 5.0
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を指し、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されました。
※2.Connected Industries
2017年3月、経済産業省が「人・モノ・技術・組織などがつながることによる新たな価値創出が、日本の産業の目指すべき姿(コンセプト)である」として提唱した概念です。
※3.SDGs
世界(地球)には、紛争や貧困、不平等や環境など、様々な社会課題がありますが、その中でも2030年までに解決すべき重要な問題について、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」として17個の目標(テーマ)を国連が定めたもので、英語の頭文字をとって、SDGs(エスディージーズ)と呼んでいます。世界中の人々が協力して、目標の達成に取り組むことで、社会課題を解決し、世界中の人々が、誰一人取り残されることのない社会を目指すものです。「自分の幸福のためだけに頑張る」のではなく、「社会全体、世界全体の幸福に向かって協力する」ための目印となるものです。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当社はサステナビリティに対する取り組みの検討とその対応を関係部門間で連携して実施しており、経営課題について取締役会を中心としたコーポレート・ガバナンス体制を構築し、解決に向けた取り組みを行っております。コーポレート・ガバナンス体制については「
また、コーポレート・ガバナンス体制において、サステナビリティに関するリスクをはじめとする経営に影響を与える可能性のあるリスク情報を認識・評価を行うとともに、重要なリスクを認識した場合は対処を検討し、取締役会等に報告する体制でリスクマネジメントを行っております。
(2)戦略
サステナビリティに関する取組のうち、特に人材確保及び長期的な雇用の継続に関する取組を経営上重要な戦略であると考えております。従業員は企業の成長を支える重要な存在であるとの認識のもと、多様な人材がワークライフバランスを実現しつつ、最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。具体的には、どこにいても仕事ができるように完全リモートワーク制度の実施や、電子帳簿保存法などへの対応も含めたペーパーレス化の取組、男女問わず育児休業を取得しやすい雰囲気の醸成等、多様な従業員が働きやすい環境の構築を進めております。また、コンプライアンス研修やコンプライアンス管理体制の整備を通じてハラスメント防止策を講じる等、全ての従業員が最大の能力を発揮できるよう就業環境を整備しております。
(3)指標及び目標
人材の確保及び長期的な雇用の継続について、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示をしております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書の本項以外の記載内容も併せて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項につきましては、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
また、当社ではリスクの防止及び会社損失の最小化を図ることを目的としたリスク管理規程を設けており、コンプライアンス規程、内部通報規程と合わせてこれら規程の遵守のために、コンプライアンス・リスク管理委員会を設けております。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。
(1)当社を取り巻く環境に関する事項
① 音声認識市場の動向について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、今後成長が見込まれる音声認識市場をターゲットに事業創造および事業展開を行ってまいります。具体的には、コールセンター、スマートライフ、プラント・インフラ保守、ものづくり・ロボティクス、自動走行・モビリティサービスなどの分野を想定しています。
しかしながら、これらのビジネス分野への市場創造を計画通りに進めることができず、長い時間を要する可能性もあり、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできないため、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
音声認識市場の動向を注視し、上記に掲げる複数分野へのアプローチを継続します。コールセンター、プラント・インフラ保守など先行事例のある分野はシェア拡大を加速させ、それ以外の分野も導入企業の獲得を進めます。外部環境の変化は速いため、現在の受注状況及び将来予測を綿密に分析したうえで、注力分野の優先順位を柔軟に変えながら諸対策を検討してまいります。また、新たなターゲット分野にも横展開することにより、バランスを重視したポートフォリオを構築し、リスク分散をしながら収益の最大化を目指してまいります。
② 技術革新について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
インターネットをはじめとする当社が属するサービス分野において、新しい技術やデバイスを利用したシステムが登場し続けています。これら新しいシステムは、従来は不可能であった機能や、より高度な機能を実装したサービスとして提供することが可能とするものが多くあります。当社では、常に最新の技術動向へ目を向け、新機能の開発や新サービスの提供に新しい技術等を積極的に導入することにより、サービスの技術的優位性を維持する努力をしております。
しかしながら、インターネットの技術革新に追随しながら新機能や新サービスを提供し続けるためには、それを可能にする従業員の確保や育成など、開発体制の強化と維持を欠かすことができず、何らかの要因により当社がそれに耐えうる開発体制の強化と維持が困難になる場合は、当該リスクが顕在化する可能性があります。その程度や時期を正確に予測することはできませんが、技術的優位性を発揮できなくなり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社の組織は、技術力の高い専門チームを構成し、情報技術や生産・開発技術等の調査・研究を継続的に行ない、市場競争力の持続的向上を図っています。具体的には、生成AIをはじめとするコア技術の選定、基盤モデルの研究開発の推進及び自社プロダクトへの成果のフィードバック、ナレッジ共有化等に注力し、インターネットの技術革新への迅速な対応に努めています。
③ 競合との競争激化によるリスクについて(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社サービスの技術的な側面からみた参入障壁は、著しく高いものとは言えません。資金力、ブランド力を有する大手企業をはじめとする競合他社が参入し、将来的には類似サービスを提供する事業者の増加が予想されます。価格競争など市場競争が一層激化し、サービス価格の引き下げを強いられる、または市場シェアが低下するなどにより、業績に悪影響を与える可能性があります。あるいは、全く新しい発想や技術を活用した競合サービスが登場し、かつそれが市場に支持されることにより、当社サービスの相対的な優位性が低下した場合、当該リスクが顕在化する可能性があります。その程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
サービスの充実・品質向上に取り組むことで、ユーザー目線に立って経営課題の解決のための貢献度を上げていくとともに、競合他社の動向、類似サービスなどの情報キャッチアップを継続的に行ない、競争優位性の向上に努めております。これらを当社の経営戦略に随時織り込んでいくとともに、当該動向に柔軟に対応できる体制構築に努めてまいります。
④ 新型コロナウイルス等の感染症の影響について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
新型コロナウイルス感染症は2023年5月に季節性インフルエンザと同じ「5類」に感染症法の位置づけが変更されたことにより、経済的な影響が大幅に緩和されることとなりました。また、対面によるコミュニケーションも増加傾向にあります。このような環境のなか、当社が属する音声認識ソリューション業界においては、対面でのコミュニケーション回帰の流れはあるものの、一方で感染症対応に伴うリモートワークの浸透、新しい働き方への潮流等の環境変化による活動も定着していることから、業績に影響を与えるような事象は現在のところ発生しておりません。音声認識のビジネスへの活用については継続的な需要が期待できるものと考えており、当社としましてはオンラインを中心とした顧客面談やセミナーの開催等によりマーケティング活動を進めてまいります。また顧客の要望によりオフラインでの対応も増加させてまいります。
しかしながら、今後コロナウイルスが再拡大し経済活動の停滞が再度発生した場合は、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の顧客の業績悪化や経営方針の変更などにより商談中の案件が失注となることにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
新型コロナウイルス等の感染症による当社の事業に影響を及ぼす可能性は、完全には払拭されていないと考えられるため、当該リスクの顕在化に備え、状況に応じた柔軟な対応に努めるなど、リスク管理を慎重に行い、引き続き影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。
(2)当社の事業及びサービスに関する事項
① 特定の販売先に関するリスク(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の販売先の上位5社による売上シェアは売上高の50.5%(2024年12月期実績)を占めています。パートナー企業における予期せぬ販売方針の変更や業績不振等により、円滑な取引継続が困難な事態となった場合、あるいは最近の新型コロナウイルス感染症等疾病の蔓延その他天災などにより販売パートナーによる顧客開拓の遅延または中止という事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。上位5社による売上高比率は全社売上高の伸長に伴い、その比率は逓減する見込みとなっております。なお、主要な販売先の1つであった株式会社FRACORA(旧株式会社協和、2023年12月期の売上高割合41.4%)について、同社の経営方針の変更により、2024年12月期以降、当社との取引が終了することとなりました。
[リスクへの対応策]
新機能の開発及び改善を進めサービスの市場価値を高め、販売先との取引関係を長期間継続することができるよう最善を尽くすとともに、販売パートナーとのリレーションを強化して、販売先数の増加及び分散化を図っております。
② 特定のサービスへの依存について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社にAIプロダクト事業のうち、主力サービスである「Voice Contact」に関する売上高の割合が高くなっています(当事業年度の「Voice contact」に係る売上高の割合は40.8%)。そのため、市場環境等の変化により「Voice Contact」に関連する売上高が著しく減少した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
主力サービスの安定供給を図るとともに、継続的に新たなシステム開発により新製品・新サービスを市場に提供し、ストック収益の拡大、ビジネスモデルへの変革に取組むことで、特定のサービスに依存せずリスクの分散することに注力してまいります。
③ 特定の外注先に関するリスク(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の外注先の上位5社による外注金額のシェアは74.9%(2024年12月期実績)を占めています。今後、外注先各社の経営方針や業績に著しい変化等が生じること等により取引の継続が難しくなり、かつ、代替先の確保に時間がかかった場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
既存の外注先からの紹介、専門エージェントを通した募集などを積極的に行うことにより、特定の外注先に依存しない対応策をとっております。外注先の選定にあたっては、技術力、評判、経営状況及び反社会的勢力との関係の有無などを調査します。取引が進行している外注先とはリアルタイムで情報共有し、各プロジェクトのオンスケジュール推進を念頭に、外注先に対する報告会等を開催することにより、安全・品質管理の徹底等に十分に留意しております。
④ 新製品開発に係る投資によるリスク(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社では、新機能の開発及び新サービスの提供を目的として、積極的に音声認識ソリューションに係る開発活動を実施しております。
しかしながら、予測不能な外部環境の変化により、開発した新機能や新サービスが期待どおりの成果をあげられない可能性があり、この場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社の成長戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営戦略」に記載のとおりであり、これまでに培った顧客基盤と技術領域を活かし、競争優位性を有する分野への事業投資を行ないます。市場環境やポジショニングに関する外部環境分析を行い、営業戦略や開発ロードマップの精度向上に努めております。投資前においては客観的視点での事業プランの評価を行ない、投資後においては事業進捗のモニタリング強化や正確な計数管理を実施することにより、適切にタイムリーな経営判断を行なってまいります。
(3)情報資産及び法規制等に関する事項
① システム障害・通信トラブルについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の事業では、サービスの安定的な提供を維持するため、外部の提供するクラウドサービスを通じて当社サービスを提供しております。当社は、外部のクラウドサービスを、地震、落雷、火災等の災害に対して十分な耐性を有すると判断される施設に限定し、慎重に検討した上で選定しております。
しかしながら、自然災害、火災、コンピュータウイルス、通信トラブル、第三者による不正行為、サーバへの過剰負荷、人為的ミス等あらゆる原因によりサーバ及びシステムが正常に稼働できなくなった場合、あるいは当社が過去に蓄積してきた商品及び価格情報が消失した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社のサービスが停止する可能性があり、これらの理由により当社のサービスが停止した場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
セキュリティ対策の強化を行うとともに、脆弱性の管理を強化し、外部専門家による検証を行っております。また、システムに冗長性を持たせ安定的に稼働できるように、システムインフラへの投資や稼働環境の見直しを継続的に行っております。
② プログラム不良によるリスク(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
開発したプログラムの不具合を原因として、システムに動作不良等が発生し、当社の提供するサービスが中断または停止する可能性があります。当社では、システムの開発にあたり、綿密な開発計画の策定からテストの実施まで十分な管理を行っており、可能な限りこのような事態の発生を未然に防ぐための開発体制の構築に努めております。
しかしながら、このような事態が頻繁に発生した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当サービスに対する信頼性が失われ、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
徹底した品質管理を行うことで、開発プログラムの安定稼働の維持に努めており、サービス納品後に万一不具合等が発生した場合においても、迅速かつ適切な対応ができる体制を構築しております。また、エンドユーザーからのクレーム等に備え、クレーム管理規程に則った運用により信頼性向上に努めます。
③ 特定のサーバへの依存によるリスク(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社のサービスにおいては、AWS(Amazon Web Services)をデータセンターとして利用しており、第13期(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)におけるAWSに対するサーバ費用は50,265千円でありますが、今後も事業拡大に伴いサーバ費用が増加することが想定されます。障害が生じ代替手段の構築ができずに、サービスが長時間にわたり中断する等の事象が発生した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社が提供するサービスの一部は、AWS以外のクラウドサービスを活用することによりコスト削減を実現できる場合があり、ケースバイケースで最適なインフラ環境をバランスよく選定することが重要と考えています。AWS依存によるリスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識したうえで、AWSの市場動向、経営戦略等、他のクラウドサービスに関する情報収集を定期的に行ない、適切な経営判断ができるよう努めております。
④ 個人情報の取り扱いについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社サービス内に格納された顧客が保有する個人情報等のデータについては、その閲覧、編集、削除等の一切の管理を顧客が自ら行うものとし、当社は、これらの情報資産を安全にかつ効率的に管理するためのプロダクトを顧客に提供するのみで、当社が自ら顧客のデータの閲覧、編集、削除等の管理を行うことはありません。
しかしながら、当社は、あらかじめ顧客の同意を得て、その依頼に基づき、一時的に顧客保有の個人情報等を預かり、編集等を行うことがあります。当社は個人情報の取扱いに関する重要性、危険性を十分に認識し、個人情報の適切な管理を実現するために、「個人情報保護規程」を整備しております。さらに、当社のホームページに「個人情報保護方針」を公開し、これら規程及び方針に準拠した行動指針やガイドラインを制定するとともに、役職員への教育、研修を通じて、個人情報を適正に管理する体制の構築に注力しております。
なお、当社は、2019年8月にプライバシーマークの認証を取得しているものの、個人情報の収集や管理の過程等において、不測の事態により個人情報の漏洩等が発生した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社への多額の損害賠償請求や認証取消処分または罰金等が課されるなど、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
個人情報保護規程や個人情報保護安全管理細則など体系的に整備し、改正個人情報保護法への対応として関連規程やプライバシーポリシーの見直しを図っております。引き続き、慎重かつ適切な個人情報の管理に努めてまいります。
⑤ 情報セキュリティ対策の不備によるリスク(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、当サービスを提供することで、顧客が保有する多くの情報資産を安全かつ効率的に管理することができるプロダクトを提供しております。また当社も事業運営に必要なさまざまな情報資産を保有しており、情報資産を安全に管理することは、重要な経営課題として認識し、適切なセキュリティ対策を講じるよう努めております。当社では、情報セキュリティマネジメントシステムの整備を進めており、適切な情報セキュリティの実現を図っております。
なお、当社は、2020年1月にISMSの認証を取得しておりますが、当社の予測を超える当社サービスへの不正アクセス、データの盗難、紛失等により、または情報セキュリティ対策の不備により、情報資産の漏洩、紛失、改竄等があった場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社への多額の損害賠償請求や認証の取消処分または罰金等が課される可能性があり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
取引関係先や従業員等と秘密保持契約を締結し、情報資産の管理に対しては個人情報保護規程や情報セキュリティ基本規程を整備するとともに、プライバシーマーク、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の各認証を取得し、情報の適正な取扱いと厳格な管理を行なっています。また、コンプライアンス・リスク管理委員会を定期開催し、外部の脅威動向と全社活動状況、課題点を把握し、必要な施策を講じています。
⑥ 知的財産権について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、知的財産権の保護をコンプライアンスの観点から重要な課題であると認識しており、専門家と連携して可能な範囲で調査対応を行っております。当社が提供するプロダクトの一部について第三者が所有権を有するソフトウェアを使用しておりますが、当該第三者との間で使用許諾に係る覚書を締結しており、第三者の特許権、著作権等の知的財産権の侵害は無いと認識しております。
しかしながら、ソフトウェア開発事業において第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社の事業領域に関連する知的財産権について第三者の特許取得が認められた場合、あるいは将来特許取得が認められた場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の事業遂行の必要上これらの特許権者に対して使用料を負担する等の対応を余儀なくされる可能性があります。この場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社の事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害することのないよう、細心の注意を払い、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めております。また、当社が保有する知的財産権についても、重要な経営資源として認識のもと、その保護・活用に努めております。
⑦ 法的規制について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社がサービスを提供する場合、又はサービス提供の全部又は一部を他の事業者に委託する場合に、深く関与する法律の一例として、以下のような法律があります。
「個人情報の保護に関する法律」
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
「著作権法」
「下請代金支払遅延等防止法」
当社は、これらの法律を遵守するために必要な社内体制の整備、当社サービスの利用規約の整備等を行っておりますが、法律改正等により当社の整備状況に不足が生じ、または当社が受ける規制や責任の範囲が拡大した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、その後の当社事業及び業績に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
法令遵守を実践することにより、健全な企業として発展することを目的として、コンプライアンス規程を制定し、適法性、財務報告の適正性を確保するための内部統制システムを構築しています。また、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、役員・社員への教育啓発活動の実施、関連組織との連携による内部統制の運用徹底・改善の取り組みを通じて、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めております。
⑧ 自然災害、事故等について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社では、自然災害、事故等に備え、コンピュータシステム、データベース及びログの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかしながら、当社所在地又はインターネットデータセンター所在地近辺において大地震等の自然災害が発生した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできないものの、当社設備の環境や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
従業員等の安全の確保と事業の継続を目的として、被災時における事業継続については、一定の基準を超える災害発生時には代表取締役社長CEOを執行責任者とする対策本部を設置し、臨機応変な対応を行ないます。当社は、リモートワーク環境下においてもサービス提供できる体制・ノウハウをすでに構築しており、サービス提供への影響の最小化を図っています。
また、ビジネスへの影響に対しては、お客様の状況等を注視しながら事業運営を行ない、リスクに備えた資金手当等、必要に応じた取り組みを適宜実行してまいります。
(4)組織体制に関する事項
① 特定の人物への依存について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の創業者であり大株主でもある代表取締役社長CEO三本幸司は、当社の強みである事業の創出やノウハウを蓄積しており、事業の推進において重要な役割を果たしております。当社は、三本幸司に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、幹部人材の育成及び強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により三本幸司が当社の業務執行ができない事態となった場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社は、三本幸司に対して過度に依存しない経営体制の構築を目指し、経営チーム内での適切な役割分担、権限委譲等を図るとともに、次世代のマネジメント人材の育成・強化を推進しています。
② 人材の確保及び育成について(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社において優秀な人材の確保、育成及び定着は今後の業容拡大のための重要課題であります。新入社員及び中途入社社員に対する研修の実施をはじめ、リーダー層となる中堅社員への幹部教育を通じ、将来を担う優秀な人材の確保・育成に努め、社内研修等を通じて役職員間のコミュニケーションを図ることで、定着率の向上を図っております。
しかしながら、これらの施策が必ずしも効果的である保証はなく、必要な人材を採用できない場合、また採用し育成した役職員が当社の事業に寄与しなかった場合、あるいは育成した役職員が社外流出した場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、優秀な人材の確保に支障をきたし、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
事業成長見込みや各部門ニーズを勘案した採用目標数を定義し、即戦力となる経験者採用の強化を推進しています。ストック・オプション等のインセンティブの付与や、人材育成に係るプログラムの強化、人事評価の適正の確保、福利厚生制度の拡充、ワークライフバランスの実現等により、優秀な人材の確保・育成及び流出防止に努めています。
短期的にプロパー人材では充足しないことが見込まれる場合、複数の外注先との定期的な会合等を通じた状況の把握や深いパートナーシップ関係の構築を図ることにより、当社のニーズにマッチした対応が可能な優良パートナー・外注先の確保に努めています。
(5)その他の事項
① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権(ストック・オプション)を付与しております。これらの新株予約権が行使された場合、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。また、当社では今後も新株予約権の付与を行う可能性があり、この場合、さらに1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は342,000株(発行済株式総数4,093,400株の8.4%)であり、当社は今後もストック・オプション制度を活用していく方針であります。
[リスクへの対応策]
当社役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気の高まりを通じ、株価変動に係る利害を株主と共有することで、企業価値向上への貢献につなげられるよう努めてまいります。
② 配当政策について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。今後の配当政策の基本方針としましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。また、内部留保資金につきましては、事業の効率化と事業拡大のための投資等に充当し、事業基盤の確立・強化を図っていく予定であります。将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。当事業年度につきましては、財務体質の強化と事業拡大のための内部留保の充実等を図るため、配当を実施しておりません。
[リスクへの対応策]
事業計画の達成に努め、企業価値を継続的に高めていくことにより、株主へ安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。
③ 資金使途について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
2024年度に実施した公募増資による調達資金の使途につきましては、人材関連費用、当社プロダクトの研究開発費用、広告宣伝費及び販売促進費に充当する予定であります。
しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画以外の使途にも充当される可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、計画以外の使途へ変更が発生した場合は、速やかに開示いたします。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性もあります。
[リスクへの対応策]
経営環境等の変化に対応するための突発的な資金需要が発生した場合に備え、内部留保の充実を図るとともに、金融機関等からの柔軟な資金調達を行える体制の整備を行うなど、計画どおりの投資効果を上げるための最善策を講じてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は1,835,881千円となり、前事業年度末に比べて346,771千円増加しました。これは主に売上高の増加により契約資産が219,599千円、売掛金が62,281千円増加、株式の発行により現金及び預金が68,373千円増加したことによるものです。また、固定資産合計は69,238千円となり、前事業年度末に比べて29,241千円増加しました。これは主に繰延税金資産が40,793千円増加、有形固定資産が減価償却により3,010千円減少、本社オフィスに係る賃借契約の一部を解約したことにより敷金が11,026千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は1,905,120千円となり、前事業年度末に比べ376,013千円増加しました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は178,149千円となり、前事業年度末に比べて55,611千円増加しました。これは主にサーバ仕入等により買掛金が36,140千円、資本金が1億円を超えたことにより外形標準課税の対象法人となる等未払法人税等が19,550千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は長期借入金38,000千円の一括返済により、残高なしとなりました。この結果、負債合計は178,149千円となり、前事業年度末に比べて17,611千円増加しました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,726,971千円となり、前事業年度末に比べて358,401千円増加しました。これは当期純利益の計上により利益剰余金が96,118千円、株式の発行により資本金が131,141千円、資本剰余金が131,141千円増加したことによるものです。この結果、自己資本比率は90.6%(前事業年度末は89.5%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は一部に足踏みが残るものの緩やかに景気回復が見られておりそれに合わせて物価上昇が続いております。また、デフレ脱却に向け、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に向けた取り組みが官民一体となり行われております。
当社を取り巻く環境としましては、生成AIを中心とした技術開発や投資、国や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた投資が継続しております。当社においても、これらの市場動向を踏まえ、事業活動を通じて社会及び企業のDX推進に貢献してまいります。
こうした経営環境のもとAIプロダクト事業では、「Voice Contact」及び「ZMEETING」においては、生成AIを用いた自動要約を実現し、業務効率化や工数削減といった企業が抱える諸課題に対応するためのプロダクトを提供いたしました。特に、「Voice Contact」については、要約された通話内容を自動で営業支援システムへ登録することが可能となり、オペレータによるデータ入力作業の軽減を実現いたしました。当事業年度におきましては、これらの機能強化を通じ、数百席規模の大規模コールセンターへの導入を推進いたしました。また、異音検知プロダクト「FAST-D」では、スマートメンテナンス及び設備保全業務のDX化を推進する企業を中心に営業活動を進めました。当事業年度におきましては、航空、発電設備、ビル設備のモニタリングに関する実証実験を受注し、プロジェクトを進めております。
AIソリューション事業では、顧客企業のDX推進に向けた課題解決を支援するAI開発・コンサルティングを提供しております。当事業年度におきましては、DX関連のコンサルティング案件の継続に加え、新規顧客の獲得が順調に進み、生成AIを活用したコンサルティング及びシステム開発案件の受注が増加いたしました。
これらの結果、当事業年度の売上高は946,358千円と前年同期と比べ145,161千円の増収(18.1%増)、営業利益は94,799千円と前年同期と比べ11,323千円の増益(13.6%増)、経常利益は72,005千円と前年同期と比べ15,093千円の減益(17.3%減)、当期純利益は96,118千円と前年同期と比べ26,380千円の増益(37.8%増)となりました。
なお、当社は「AI×音」サイエンス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前事業年度に比べて68,373千円増加し、1,375,076千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、139,713千円の資金支出(前事業年度は103,862千円の資金収入)となりました。その要因は、契約資産の増加額219,599千円および売上債権の増加額62,281千円による資金減少、税引前当期純利益67,689千円、仕入債務の増加額36,140千円、上場関連費用24,221千円、未払法人税等(外形標準課税)の増加額10,698千円、未払費用の増加額5,322千円、減価償却費3,108千円による資金増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、11,026千円の資金収入(前事業年度は2千円の資金支出)となりました。その要因は、敷金・保証金の返還による収入11,026千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、197,060千円の資金収入(前事業年度は36,000千円の資金支出)となりました。その要因は、株式の発行による収入262,282千円、上場関連費用の支出21,221千円、長期借入金の返済による支出44,000千円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社は、「AI×音」サイエンス事業の単一セグメントであるため、セグメント別に記載しておりませんので、サービス区分別に記載しております。
a 生産実績
当社は、生産活動を行なっておりませんので、該当事項はありません。
b 受注実績
当事業年度における受注実績は、次の通りであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
「AI×音」サイエンス事業 |
891,496 |
101.4 |
119,558 |
73.6 |
|
合計 |
891,496 |
101.4 |
119,558 |
73.6 |
c 販売実績
当事業年度における販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
|
サービスの名称 |
当事業年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
AIプロダクト(千円) |
569,554 |
102.2 |
|
AIソリューション(千円) |
376,804 |
154.4 |
|
合計(千円) |
946,358 |
118.1 |
(注) 最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当事業年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社ベネッセコーポレーション |
79,862 |
10.0 |
137,556 |
14.5 |
|
株式会社ゼンリンデータコム |
30,225 |
3.8 |
115,062 |
12.2 |
|
株式会社FRACORA(旧株式会社協和) |
332,046 |
41.4 |
- |
- |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、実際の結果と異なる可能性もありますのでご留意ください。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は946,358千円(前年同期比18.1%増)となり、前事業年度と比較して145,161千円の増収となりました。これはAIソリューションの売上が大幅に増加したことによるものです。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は512,232千円(前年同期比32.4%増)となりました。これは主に開発人員の外注費の増加によるものになります。この結果、売上総利益は434,125千円(前年同期比4.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は339,326千円(前年同期比2.5%増)となりました。これは主に2024年10月28日の株式上場に伴い資本金が増加したことで、外形標準課税が適用され租税公課が増加したことによるものになります。この結果、営業利益は94,799千円(前年同期比13.6%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度における営業外収益は主に助成金収入により2,008千円(前年同期比61.4%減)となりました。営業外費用は主に上場関連費用の計上により24,802千円(前年同期比1468.7%増)となりました。この結果、経常利益は72,005千円(前年同期比17.3%減)となりました。
(特別損失、税引前当期純利益)
当事業年度における特別損失は、本社ビルの一部フロア退去に伴う原状回復費等の発生により4,316千円(前年同期2,775千円)となりました。この結果、税引前当期純利益は67,689千円(前年同期比19.7%減)となりました。
(当期純利益)
法人税、住民税及び事業税及び法人税等調整額を含む法人税等合計△28,429千円を計上したことにより、当事業年度における当期純利益は96,118千円(前年同期比37.8%増)となりました。
(c)経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因としては、景気動向や市場環境の変化、法的規制、同業他社、人材等の様々なリスク要因があると認識しております。詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
(d)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりとなります。
資本政策につきましては、内部留保の充実を図るとともに、経営基盤の長期安定に向けた財務体制の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させることと、株主への利益還元を考慮し、実施していくこととしております。
当社の資金需要の主なものは、人材採用及び人件費、外注加工費、システム利用料等に係る運転資金であります。
当社は必要になった資金について、主に内部留保と営業活動によるキャッシュ・フローから支出し、必要に応じて借入金による資金調達を行っております。借入金の残高はありません。
以上により、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,375,076千円となっております。当社の事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社は、異音検知プロダクトの新機能開発をはじめ、AI活用に関する研究開発活動、音声認識プロダクトの維持・向上に継続的に取り組んでおり、音・音声AIアルゴリズム開発に従事する経験豊富なエンジニアにより研究開発を行う体制となっております。
AI活用に関する研究開発活動、音声認識プロダクトの維持・向上に継続的に取り組んでおり、新機能追加やサービス品質向上のためのシステム開発を行なっています。
当事業年度における研究開発費の総額は、
なお、当社は「「AI×音」サイエンス事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。