文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループでは、以下を経営方針とし、基本理念である「心と技術をこめたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」の実現を目指しております。
・技術の先端に挑戦し、新しい価値を創り出す
・独自の領域を切り拓き、事業の広がりを追求する
・人を大切にし、人を磨き、人が活躍する場をつくる
・社会に対する公正さと、環境との調和を大切にする
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、2026年度までの中期経営計画において以下の財務目標の達成に向けて取り組んで参ります。
(3) 経営環境及び経営戦略・対処すべき課題
当社グループは、2024年から2026年までの3カ年計画として、中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーロク)の取り組みを2024年度より開始しております。
既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、次世代に負の遺産を残さないという強い意志を持って変革の「総仕上げ」を行います。こうした考えのもと、各事業で定めた成長戦略を断行し、「YX2026」中または2027年度に「Hockey Stick Growth」(「うなぎ昇り」の成長)を果たすことを目指します。
各分野での戦略と取り組み内容は、次の通りです。
■タイヤ消費財
タイヤ消費財では近年、低コスト・低価格な新興タイヤメーカーが生産能力を拡大し、市場シェアを伸ばしています。これに対し「YX2026」では高付加価値品比率の最大化を積極的に推進し、収益率の向上を目指します。これに加え「Hockey Stick Growth」を果たすため、新興タイヤメーカーのコスト競争力に対抗すべく低コスト・高効率化を目指し、1年で工場を立ち上げる「1年工場」に挑戦します。高付加価値品比率の最大化では、プレミアムカーへの新車装着の推進およびグローバルでのモータースポーツへの参戦を継続しブランド価値向上に取り組みます。また、各地域の市場動向に沿った開発・供給・販売体制などを強化する「商品・地域事業戦略」を引き続き推進します。
■タイヤ生産財
OHT事業
OHTの市場規模は約4兆円、市場成長率は年6%と予測されており、消費財タイヤ市場の年2%と比較し高い成長が期待できます。OHT市場の約40%を占めると予測される農業・林業用機械向けタイヤでは、当社グループがトップシェアを誇っており、Tier(ティア)1~Tier3までティアごとに持つ生・販・技の強みを活かした「マルチブランド戦略」でさらに市場地位を強化します。市場の25%と予測され、当社グループが市場2位のシェアを持つ産業・港湾用車両向けタイヤでは、専門スタッフによるタイヤメンテナンスサービス「Interfit」のさらなる展開地域の拡充を図ります。また、当社グループが僅かなシェアに留まっている建設・鉱山用車両向けタイヤでは、2025年2月に全世界で高いプレゼンスを持つGoodyear社のOTR事業の買収を行いました。この買収は、中期経営計画「YX2026」で掲げる「Hockey Stick Growth」に向けた、OHT事業全体での「Programmatic M&A」(プログラマティックM&A)戦略に沿って検討を進めてきたもので、建設・鉱山用車両向けタイヤにおける販路拡大・生産能力の増強のみならず、Goodyear社 OTR事業の持つ生産技術を含む高い技術力を、当社グループがトップシェアを持つ農業・林業用機械向けタイヤを含む既存カテゴリーで培った技術と融合することにより、OHT事業でのさらなる成長を目指します。また、2023年5月に買収したTrelleborg Wheel Systems Holding AB(現Yokohama-TWS=Y-TWS)とのシナジー創出を当社グループ全体で本格化します。
TBR事業
TBR(トラック・バス用)タイヤにおいても新興タイヤメーカーが生産量や市場への供給量を拡大しており、これに対し、欧米政府はアンチダンピングや相殺関税といった保護政策を実施しています。当社グループはこうした措置により適正な価格が維持された国や地域での販売強化を図り、収益を伴った成長を目指します。
■MB事業
MB(マルチプル・ビジネス)事業は、事業再編や収益改善策の実行により収益を生み出す事業基盤を整えました。「YX2026」ではホース配管事業を「成長ドライバー」と位置づけ、バリューチェーンの再構築や北米での生産構造の改革を行います。工業資材事業は、コンベヤベルトでは国内における確固たる市場地位の確立、マリンホースでは高収益体制の安定化に向けた内部改善を推進します。MB事業全体では2026年度に事業利益率10%を目指し、MB事業の存在感を高めていきます。
■技術・生産
「YX2026」では「よいものを、安く、スピーディーに」をモットーに当社グループ全体の基盤強化に取り組みます。「よいもの」では次世代プレミアムカーへの新車装着の強化を、「安く」では他社に負けない抜本的コストダウンを、そして「スピーディー」ではタイヤ消費財戦略で目指す「Hockey Stick Growth」の目玉である「1年工場」への挑戦とタイヤ開発のスピードアップを図ります。
■サステナビリティ
当社グループでは、サステナビリティの取り組みは、企業の成長と企業価値の向上に資するものであるべきと考えています。環境投資においても十分な検討を重ね、企業収益と両立していくことを目指します。重要課題の一つである温室効果ガス排出量の削減では、買収前のY-TWSの排出量を加算した2019年の排出量を2026年に30%、2030年に40%削減することを新たな目標とし、追加コストをかけることなく目標達成を目指す計画を策定しました。再生可能・リサイクル原料の利用拡大によるサーキュラーエコノミーへの貢献では、温室効果ガス排出量(Scope3)の削減の観点からも再生可能・リサイクル原料の使用比率の向上を加速させ、2026年に28%、2030年に40%とすることを新たな目標として設定しました。当初、2030年の目標は30%でしたが、さらなる使用比率の向上を目指し、40%に引き上げました。
■財務
「YX2026」でも引き続き「Hockey Stick Growth」を目指す積極的な戦略投資によって企業価値を高めていきます。資産効率化では政策保有株式売却をさらに推進し、資本構成では事業構造に合った最適な資本バランスの実現(自己資本比率50%を目安)に取り組みます。また、PER(株価収益率)向上では、経営陣によるIRイベントを拡充し、情報発信と対話の強化を通じて資本コスト低減や期待成長率の向上に努めます。キャピタルアロケーションでは、3年間累計のキャッシュイン約4,500億円のうち、約3,200億円を戦略投資および経常投資に充てる予定です。株主還元については、こうした持続的な利益成長に向けた投資を積極的に実施する中においても、当社の「将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を図りつつ、安定した配当を継続する」といった基本方針に則り、安定的かつ継続的に増配していくことを目指します。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは「心と技術をこめたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」を基本理念とし、世界各地のステークホルダーと協調しながら事業活動を展開しています。またサステナビリティ・スローガンとして「未来への思いやり」を掲げ、事業活動を通じた社会課題への貢献を持続的な企業価値向上につなげるべく、マテリアリティ(重要課題)に基づいた取り組みを推進しています。
2024年度には、当社グループを取り巻く事業環境や社会課題の変化をふまえてマテリアリティの見直しを行い、事業活動が社会や環境に与える影響と社会や環境が事業活動にもたらす影響の双方を考慮して新たなマテリアリティを特定しました。これらのマテリアリティに基づいた取り組みを進めることにより、持続可能な社会の実現への貢献と事業の持続可能性の向上を目指しています。
①ガバナンス
代表取締役会長兼CEOが議長を務め、社内取締役(監査等委員を含む)全員が出席する「CSR会議」を年に2回(5月及び11月)開催し、横浜ゴムグループが取り組むべきサステナビリティ課題(環境、労働安全衛生、防災、品質、人的資本、人権、社会貢献等)について立案・検討する体制を整えています。
また、重要事項や早期の意思決定、報告・審議が必要な場合には経営会議で報告・審議を行い、その重要性に応じて取締役会に上程(報告・審議)しています。
個別のサステナビリティ課題について立案・検討する会議体としては、環境推進会議、中央安全衛生委員会、中央防災会議が設置され、より詳細な計画、施策を立案し、実行しています。
サステナビリティ課題の進捗に関しては、毎月、代表取締役会長兼CEO、代表取締役社長兼COO、CSR本部担当取締役、社内取締役監査等委員に報告を行っています。また、グループ全役員(海外を含む)により年2回開催される経営戦略の会議においても、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの取り組みを継続的なテーマとして議論しています。サステナビリティ課題のうち、重大かつ緊急性の高い事案については、「リスクマネジメント委員会」と連携して対処しています。
<サステナビリティに関するガバナンス体制>
②戦略
当社グループは、2008年、CSR・サステナビリティ経営を進捗させるために、「CSR経営ビジョン」及び「CSR行動指針」を定め、責任部門としてCSR本部を設置しました。さらに2014年には、国連グローバル・コンパクト分野10原則などの国際規範をもとに「横浜ゴムグループ行動指針」を制定、自社とステークホルダーの双方にとって影響が大きく、関心の高いテーマをマテリアリティとして特定し、その達成のためにPDCAサイクルを回して、継続的改善を図ってきました。創立100周年にあたる2017年にはCSRスローガン(現サステナビリティ・スローガン)を制定し、次の100年に向けてさらなる持続的な成長の実現を目指しています。
2024年には、当社グループを取り巻く事業環境や社会課題の変化をふまえてマテリアリティの見直しを行い、社会・環境と当社グループの持続的成長に必要なマテリアリティを新たに特定し、目指す姿の実現のために中長期的視点で達成すべき具体的な指標を非財務目標として設定しています。
<横浜ゴムグループのマテリアリティ>
<マテリアリティの特定プロセス>
マテリアリティの特定・見直しは、以下のプロセスで行っています。今後も環境の変化等を踏まえて定期的に見直しを実施する予定です。
③リスク管理
当社グループを取り巻くさまざまなリスクからの防衛体制を強固にするため、リスクマネジメント担当役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置、経営に重大な影響を及ぼすリスクを横断的に管理し、適切に評価対応しています。
また、環境、労働安全衛生、防災・BCP、品質管理、コンプライアンスなどの重要度の高いリスクに関しては、それぞれを専門に統括する部門と会議体を設置して重点的に管理する体制を取っており、事業活動におけるリスク管理体制の強化を図っています。
気候変動リスクをはじめとする環境関連リスクに関しては「環境推進会議」、労働災害リスクをはじめとする労働安全衛生関連リスクに関しては「中央労働安全衛生委員会」、自然災害・火災リスクに関しては「中央防災会議」が対応方針、計画及び施策を立案、「CSR会議」にて審議・決定し、リスクアセスメントによるリスク管理と発生の未然防止に取り組んでいます。従業員のコンプライアンス・リスクと人権リスクに関しては「従業員意識調査」の定期的な実施、サプライチェーンの人権リスクについては「横浜ゴムグループ人権方針」に基づく人権デューデリジェンスの継続的な実施を通じて管理を行い、その内容については「コンプライアンス委員会」や「CSR会議」に報告されています。
「リスクマネジメント委員会」「コンプライアンス委員会」等の活動状況は取締役会に定期的に報告され、その他の会議体の活動状況についても経営会議に適宜報告されます。必要と判断された事項は、取締役会に報告されます。
④指標及び目標
「YX2026」においては、それぞれのマテリアリティにおける目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(KPI)とリスクと機会の両面からサステナビリティ目標を設定し、企業価値向上と持続的な社会・環境への貢献を目指しています。指標及び目標、2024年度の実績は以下の通りです。
(注)1.農作物の根への影響を最小限に抑える低圧走行可能なタイヤの規格です。
2.第三者検証証意見書を取得した確定値による算出を予定しております。2025年7月発行予定の統合報告書における記載をご参照下さい。
3.65歳に到達した事務職、技術職及び技能職の社員のうち、当社又は子会社にて65歳以降も継続雇用された社員の割合を示しております。
4.DXリーダー育成教育は、2024年度の期中から開始しております。
5.提出会社(単体)の従業員を対象とした「従業員意識調査」の結果から算出しております。
(2) 気候変動
近年、世界中で気候変動の影響は深刻化しており、企業にも脱炭素など気候変動への積極的な対応が求められています。当社グループでは、「気候変動の緩和と適応」を持続可能な社会への貢献と企業の持続的な成長のための重要な経営課題の一つとして位置づけ、2022年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」の提言に賛同を表明しました。今後もTCFD提言に沿って気候変動への取り組みに関する情報開示を進め、ステークホルダーの皆様との信頼関係の構築を図ってまいります。
※Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略称。TCFDは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関が採るべき対応を検討するために2015年に設立されました。企業などに対して、気候変動によるリスク及び機会が経営に与える財務的な影響を評価し、開示することを推奨しています。
①ガバナンス
代表取締役会長兼CEOが議長を務める「CSR会議」を年に2回(5月・11月)開催し、当社グループが取り組むべきCSR課題について立案・検討する体制を整えています。「気候変動の緩和と適応」に関しては、「環境推進会議」が設置され、環境推進会議の下部組織として4つの委員会、2つの部会、2つの会議を設け、環境活動を推進しています。「環境推進会議」はCSR本部長が議長として各課題を審議・決定し、当社グループの環境活動を統括しています。
<気候変動に関するガバナンス体制>
②戦略
当社グループは、気候関連のリスクについて、低炭素経済への移行に関連するリスク(移行リスク)と気候変動の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)の二つに分類、影響を受ける財務影響の大きさを評価し、事業に及ぼすリスクと機会を整理しました。さらに、気温上昇につきIEA(国際エネルギー機関)及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオを用いてシナリオ分析を実施し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれのリスクと機会を踏まえた適応策・財務影響等について検証しました。今後も引き続き、リスクと機会の検討やシナリオ分析の精緻化を進めていきます。
<気候変動に関する主なリスクと機会>
<シナリオ分析の結果概要>
③リスク管理
気候変動にかかわるリスクについては、「環境推進会議」の下部組織である「カーボンニュートラル推進委員会」をはじめとする委員会、部会、会議が、それぞれリスクの特定・評価を実施し、その低減活動を行っています。委員会、部会、会議にて特定された重要なリスクについては、「環境推進会議」において対応方針、計画及び施策を立案、「CSR会議」にて審議・決定しています。
また、自然災害等の物理リスクについては、「中央防災会議」において防災、BCPの方針、計画及び施策を立案、「CSR会議」にて審議・決定し、リスクアセスメントによるリスク管理とリスク低減を推進しています。
重大かつ緊急性の高い事案については、「リスクマネジメント委員会」(委員長:リスクマネジメント担当役員)において審議され、適切に評価対応しています。「リスクマネジメント委員会」の活動状況は、取締役会に定期的に報告されています。
④指標及び目標
当社グループでは、環境関連のマテリアリティとして「脱炭素社会・循環型経済への貢献」「自然との共生」を掲げ、気候変動にかかわるリスクの最小化のため、以下の指標及び目標を設定しています。
■温室効果ガス排出量実績(Scope1、2)(連結)
(注)各年度の温室効果ガス排出量実績(Scope1、2)には、買収前のYokohama TWSの排出量実績を含みます。
■温室効果ガス排出量実績(Scope3)(連結)
(注)各年度の温室効果ガス排出量実績(Scope3)には、買収前のYokohama TWSの排出量実績を含みません。また、カテゴリ8、13、14に分類される排出量実績はありません。
■ 第三者検証について
2023年度の温室効果ガス排出量実績(Scope1、2、3)(連結)については、排出量データの信頼性向上を目的としてSGSジャパン株式会社に第三者検証※を依頼し、検証意見書を取得しています。
※当社が算定したデータ及び算定方法について、検証基準(ISO14064-3:2019及びSGSジャパン株式会社の検証手順)に基づいて実施された検証となります。
(3)人的資本(人材の多様性を含む)
人的資本に関するガバナンスは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
■ 求める人材像
経営戦略を実現し、企業価値を持続的に向上するため、当社グループでは、基本理念、経営方針、行動指針及び企業スローガンからなる企業理念の浸透と事業の方向性の共有をベースとし、求める人材像として「世代・性別・国籍に関わらず、厳しくとも結果にコミットし、自らの成長をもって会社の成長に貢献できる人材」を掲げ、その育成と社内環境整備に取り組んでいきます。
■ 人材育成方針
<プロ人材の育成と「適所」適材の人員配置>
グローバルに事業展開する当社グループでは、高い達成意欲と幅広い視野を持ち、周囲に影響を及ぼしながら力を発揮していく「プロの人材」の配置が必須であり、そのための育成・選抜や「『適所』適材」の人員配置等の施策を進めています。一人ひとりが育成の場を積極的に活用し成長していくことが、会社の発展をもたらすとの考えに基づき、それを全面的にバックアップしています。また、グローバルな競争に勝ち抜いていくために、会社を背負って立つ経営人材の確保と育成にも取り組んでいきます。
<人材育成プログラム>
グローバルな事業環境の変化に対応するため、人材育成プログラムを通じて人的資本の強化に取り組んでいます。的確に物事を判断・実行するのに必要なマインド、能力、スキルの開発や、階層別のリーダーシップ、職場に密着した問題の解決能力、プレゼンテーションや交渉といった個別スキルの開発を目指して、体感・体験から学ぶ三現教育を実施しています。また、将来の経営人材育成のための管理職層の国内MBA派遣や事務・技術系職員のDX人材化促進のためのDXリーダー育成教育などにより、求める人材像の育成に取り組んでいきます。
<コア人材の育成>
新中期経営計画「YX2026」の実現を人材面で支えるため、管理職層については、ポスト(ジョブ)と成果・報酬の連動性を高めるとともに、一般層については、階層ごとに求められる付加価値(期待成果や期待行動)を明示し、育成体系ともリンクさせることで、コア人材として必要となる能力を段階的に身につけられる人事制度としています。管理職層においては、2020年にポスト(ジョブ)と報酬の連動性をさらに高める改定を行いました。また一般層については、2021年に最速30歳から管理職への配置を可能とする早期登用制度を導入し、年齢にとらわれない適材適所の仕組みとしています。
■ 社内環境整備方針
<多様な働き方を認める組織風土の醸成>
環境変化の激しい中で持続的な成長を果たしていくためには、人的資本の価値向上が不可欠です。当社グループでは、多様な人材がそれぞれの分野で能力を最大限に発揮できるよう、これまでのルールや考え方にとらわれない働き方や、共に明るく生き生きと仕事ができる職場環境の整備などを通じて働き方改革を推進しています。ワークライフバランスを尊重し、多様な働き方を認め合うことで、すべての社員が成長を続け、仕事と生活を両立しながらキャリアの形成を実現できるよう支援しています。
<場所・時間にとらわれない働き方の推進>
当社グループは、機能集約による業務効率化及び働き方改革を目的として、2023年3月に本社機能を東京都港区から神奈川県平塚市の平塚製造所に移転・統合しました。在宅勤務制度などの諸制度の適用を拡大して、さまざまな状況に対応できる勤務体制を整えるとともに、企画・生産・販売・技術・物流の一体運営ならびにスピーディな意思決定を実現していきます。
<ホームオフィス制度の導入>
2023年3月、本社・平塚製造所の統合後の遠距離通勤者及び配偶者の転勤に同行する社員を対象に、オフィスに固定デスクを持たず、会社負担で自宅をオフィス化して基本的な就業場所とする「ホームオフィス制度」を導入しました。配偶者の転勤に同行する社員も本制度を利用できるように整備し、家庭の事情でキャリアが中断することのないように配慮するなど、場所にとらわれない働き方を推進し、多様な人材が活躍できる基盤をつくっていきます。
<東京事務所、サテライトオフィスの設置>
本社・平塚製造所の統合に伴い、東京都・品川インターシティに東京事務所及びサテライトオフィスを設置しました。東京事務所には株式会社ヨコハマタイヤジャパン、横浜ゴムMBジャパン株式会社の本社及び横浜ゴムの販売部門の一部が移転しました。フリーアドレスのサテライトオフィスは、組織の壁を越えた社員間のコミュニケーション促進に役立っています。
<在宅/フレックス勤務の拡充>
仕事と育児・介護などの家庭の両立支援の推進、業務効率化の向上並びに長時間拘束防止(健康への配慮)を目的として2018年より在宅勤務制度を導入し、2023年からは通勤負担軽減目的でも利用できるよう要件を拡大しました。併せて利用上限を撤廃し、仕事(成果と効率)に合わせて各職場で最も適した在宅勤務の運用へ移行しました。また、事務・技術系職員については、原則としてすべてフレックスタイム制の適用対象とし、コアタイムを撤廃、短時間勤務フレックスタイム制度なども拡充し、場所や時間を問わず仕事の成果を出せる仕組みを整えています。
<労働安全衛生>
当社グループでは、事業の特性上、生産工場で大型機械を取り扱う必要があるため、設備仕様の不具合や誤操作が大きな事故につながる可能性があり、安全面での対策が必要です。そのため、すべての設備や作業に対しリスクアセスメントを計画的かつ継続的に実施し、設備面から未然防止の安全対策を実施しています。また、国内外35拠点が労働安全衛生マネジメントシステム(JISHA/OSHMS・ISO45001)認証を取得しており、グループで働くすべての人が安全・安心して働けるよう職場の安全衛生環境のさらなる向上を目指した取り組みを行っています。さらに、健康で長く働くことのできる職場づくりのため、健康保険組合と連携した「コラボヘルス※」による健康経営に取り組み、健康・体力向上を推進しています。
※ 保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者の予防・健康づくりを効率的・効果的に実行すること
<従業員エンゲージメント>
YX2026の戦略や方針が従業員に理解され、熱意をもって遂行される状況にあるか、自らの成長をもって会社の成長に貢献できる多様な人材が生き生きと働ける職場環境と企業風土であるかを把握するため、「従業員意識調査」を継続的に実施しています。
2024年度の調査の結果、以下の2点を課題として認識し、具体的な施策を講じています。
a.YX2026の浸透
管理職層と比較して、一般社員層のYX2026に対する戦略理解度が低いことが課題として認識されました。この課題解決に向け、YX2026の全社施策と一般社員層の個人課題のつながりが明確になるように、組織内の対話の密度を高めることに取り組み、一般社員層の戦略理解度向上を目指します。
b.従業員エンゲージメントスコアの向上
「従業員意識調査」における複数のエンゲージメント項目を指標化した「従業員エンゲージメントスコア」は、2026年度目標値を70としていますが、2024年度は68.8でした。今後、従業員への方針・戦略の浸透を図り、仕事の意義を明確化することで、「働きがい」など、エンゲージメントの熱量を高め、スコアの向上を目指します。
これらの取り組みを通じて、戦略の実現を加速させるとともに、従業員の成長と働きがいを高め、企業価値向上につなげていきます。
■ 人材の多様性の確保
<目指すべき姿>
当社グループでは、多様な人材が多様な働き方を認め合い、これまでのルールや考え方にとらわれない働き方や、共に明るく生き生きと仕事ができる職場環境の整備など、人材の多様性をさらに推進していくことが重要な課題と認識しています。そのため、国籍、性別やLGBTQ+といった属性や学歴、経験にとらわれない採用を行い、YX2026の事業戦略、技術戦略の実現に向けて最適な人材の配置がなされている状態を継続していきます。また、ワークライフバランスを尊重し、多様な人材、多様な働き方を認め合うことで、すべての社員が成長を続け、キャリアを形成できる職場を目指します。
<女性の活躍推進>
各種制度の拡充や施策の実施、ならびに管理職における女性比率向上などの取り組みを通じて、女性にとって働きやすい環境づくりに取り組んでいます。当社の2024年12月末現在の女性管理職(課長以上)比率(単体)は3.2%ですが、次期管理職候補である係長は15.7%、早期登用で管理職配置が可能な主任は45.2%の女性比率となっており、今後はさらに女性管理職が増加していく見込みです。女性活躍推進を目的としたキャリア開発支援セミナーの実施や仕事と生活の両立支援制度の整備を行うとともに早期登用制度も活用し、より一層の女性管理職比率の向上を目指します。
<障がい者の雇用>
障がい者の雇用の場を創出する目的の子会社として、ヨコハマピアサポート株式会社を2012年に設立し、知的障がい者を中心に30名(2024年12月末現在)を雇用しています。横浜ゴム、ヨコハマピアサポート、ヨコハマタイヤジャパン、横浜ゴムMBジャパンの4社で障がい者雇用率制度及び障がい者雇用納付金制度上の関係会社特例認定を受け、4社合算しての雇用率は、2024年申告(2023年4月~2024年3月実績)で2.5%となりました。今後も、障がい者雇用の幅を広げるにあたり、新たな業務の開発を進めていきます。
<シニア人材の活用>
60歳以降の労働意欲の高い人材に対して、豊富な知識や経験を活かした活躍の場を提供するため、定年退職した社員を再雇用(事務・技術系社員は、100%出資子会社ヨコハマビジネスアソシエーション株式会社が再雇用して当社に派遣)し、最長70歳まで活躍できる制度を導入しています。
<性的マイノリティに関する取り組み>
LGBTQ+と総称される性的マイノリティを含む多様な人材の活躍を支援するため、同性パートナー、事実婚のパートナーを配偶者と認め、パートナーの家族も配偶者の家族として認める「パートナー&ファミリーシップ制度」を2023年10月に導入しました。また、外部有識者を招いた「LGBTQ+セミナー」を開催して社員の理解を深めるとともに、社内外にLGBTQ+に関する相談窓口を設置し、制度や悩みごとの相談に対応できる体制を整備しています。
従業員のコンプライアンス、人権に関するリスク管理のため、定期的に「従業員意識調査」を実施しています。
コンプライアンスの観点では、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識の状況を確認するとともに、当社のコンプライアンス体制が有効に機能していることを検証しています。また、人権の観点では、従業員一人ひとりの人権尊重の意識の状況、人権侵害の有無や潜在的な人権侵害のリスクを確認しています。
調査結果は取締役会に報告された後、各職場にフィードバックされ、結果を踏まえた改善施策が検討・推進されます。また、重大なリスクが認識された場合には、担当部門が早急に防止・軽減の取り組みを行います。
④指標及び目標
当社グループでは、人的資本関連のマテリアリティとして「持続的な企業価値向上を実現する人材力」を掲げ、主要な施策について、指標(KPI)及び目標を設定しています。人的資本関連の指標及び目標は、当社グループの連結子会社がそれぞれ独自に設定しているため、以下に当社グループにおける主要な事業を営む提出会社(単体)の指標、実績及び目標を記載します。
(注)1.「―」表示は実績なしを示しております。
2.65歳に到達した事務職、技術職及び技能職の社員のうち、当社又は子会社にて65歳以降も継続雇用された社員の割合を示しております。
3.DXリーダー育成教育は、2024年度の期中から開始しております。
4.提出会社(単体)の従業員を対象とした「従業員意識調査」の結果から算出しております。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは下記のようなものがあります。なお、文中における将来等に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経済状況
当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車用タイヤの需要は当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアなどの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の減少は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、競業他社との販売競争激化による市場シェアダウン及び価格競争の熾烈化による販売価格の下落も、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替レートの影響
当社グループは主として円建で一般商取引、投融資活動等を行っておりますが、米ドルその他の外国通貨建でもこれらの活動を行っております。今後一層の事業のグローバル化の進行に伴い、海外事業のウエイトが高まることが予想されます。したがって、従来以上に外国通貨建の一般商取引、投融資活動等が増加し、外国為替の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける度合いが大きくなります。為替予約の実施等、為替レートの変動によるリスクを最小限にとどめる努力を行っておりますが、当該リスクを完全に回避することはきわめて困難であります。
(3) 季節変動の影響
当社グループの業績は上半期と下半期を比較した場合、下半期の業績がよくなる傾向にあります。特に、寒冷地域で冬場の降雪時に使用する自動車用タイヤ(スタッドレスタイヤ)の販売が下半期に集中することが主な理由であります。従って、降雪時期の遅れや降雪量の減少等が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料価格の影響
当社グループの製品の主要な原材料は、天然ゴム及び石油化学製品であります。従って、天然ゴム相場の大幅な上昇及び国際的な原油価格の高騰があった場合、当社製品の製造コストが影響を受ける可能性があります。これらの影響を最小限にとどめるべく各種対策を実施しておりますが、吸収できる範囲を超えた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 資金調達力及びコストの影響
当社グループは資金調達の安定性及び流動性の保持を重視した財務運営を行っておりますが、日本を含めた世界の主要な金融市場で混乱が発生した場合、計画通りに資金調達を行うことができない可能性があります。また、格付会社より当社グループの信用格付けが大幅に下げられた場合、資金調達が制約されるとともに調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 有利子負債の影響
当社グループの資産合計に占める有利子負債の割合は、約25.2%(2024年12月31日現在)であります。グループファイナンスの実施によりグループ資金の効率化を行うことで財務体質の改善に取り組んでおりますが、今後の金利動向によっては当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの一部の借入契約には財務制限条項が付されております。
(7) 保有有価証券の影響
当社グループが保有する市場性のある有価証券のうち日本株式への投資が大きな割合を占めております。従って、日本の株式市場の変動及び低迷等による有価証券評価損の計上等で、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 投資等に係る影響
当社グループは世界的な自動車用タイヤの需要に対応すべく、北米、中国での新たな生産拠点の建設を進めております。また、日本、アジアを中心に生産能力の増強及び市場ニーズに対応するための設備投資を行っております。この投資により製品の品質向上を図るとともに需要増やニーズの多様化にも対応でき、当社グループの信頼を高め、シェアアップが期待できます。しかしながら、現地の法的規制や慣習等に起因する予測不能な事態が生じた場合、期待した成果を得ることができなくなるため、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9) M&A、資本・業務提携による影響
当社グループは、さらなる成長の実現に向けた競争力強化の為、他社の買収や他社との資本・業務提携を行うことがあります。2023年5月2日付にてグローバルに農業機械用や産業車両用タイヤなどを生産販売するTrelleborg Wheel Systems Holding ABの買収(連結子会社化)、また2025年2月4日付にて建設・鉱山用車両向けタイヤなどの生産販売をグローバルに展開するGoodyear社のOTR事業の買収(事業譲受)を行っております。万一対象会社の業績が買収時の想定を下回る場合、または事業環境の変化や競合状況等により期待する成果が得られないと判断された場合にはのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 退職給付債務
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行っております。実際の割引率、運用収益率等が前提条件と異なる場合、つまり、金利低下、年金資産の時価の下落、運用利回りの低下等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合、将来の退職給付債務の増加により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 災害等の影響
当社グループは地震等の自然災害、疾病、テロに直接又は間接的に影響を受ける可能性があります。特に、自然災害については災害に備え、各種対応策を検討し、計画的に実施しております。しかしながら、生産拠点及び原材料の主要な仕入先が所在する地域でこれら事象が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11-2) 感染症の大流行
当社グループは新型コロナウイルスなどの全世界的な感染症の流行に備え、従業員の安全と社内外への感染拡大抑止を第一に対策を講じておりますが、感染症の拡大や長期化の状況によっては、当社グループが事業を展開している国・地域における活動規制や企業活動の停滞等により、当社グループ全体の事業活動、業績、及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11-3) ウクライナ・中東情勢
現下のウクライナ情勢により、ロシアの乗用車用タイヤ生産会社の生産については、状況を注視しながら判断する方針ですが、進展状況や対応によっては今後当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、現下の中東情勢の今後の進展によっては、当社グループが事業を展開している国・地域における企業活動や物流の停滞等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11-4)気候変動
当社グループは温室効果ガス排出量の削減などを通じて気候変動への対策を講じておりますが、各国の温室効果ガス排出量削減目標や炭素税の導入による調達・製造コスト上昇などの「移行リスク」や気候変動による洪水や渇水による工場操業停止などの「物理的リスク」により、当社グループ全体の事業活動、業績、及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人権侵害
当社グループは「横浜ゴムグループ人権方針」に基づき、人権デューデリジェンスや苦情処理メカニズムの整備を進めておりますが、サプライチェーンにおける人権侵害や潜在的な負の影響の防止・軽減を適切に行うことができなかった場合、レピュテーションの毀損などにより、当社グループ全体の事業活動、業績、及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 知的財産権の影響
当社グループは技術ノウハウの蓄積と知的財産権の保護に努めておりますが、第三者の知的財産権の侵害を効果的に防止できないことがあります。また、当社グループの製品または技術が、第三者から知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、それが認められた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 製品の品質による影響
当社グループは、品質管理を経営の最重要課題とし、品質管理体制の万全を期しておりますが、製品の欠陥や不良を皆無にすることは困難であります。大規模なリコールや欠陥に起因する多額の損害賠償が起きた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 法律・規制・訴訟の影響
当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、輸出管理、独占禁止、個人情報保護、環境保護など、当社グループが、展開している様々な事業に関連する法律や規制の適用を受けております。
将来において、国内外における新たな法律や規制の施行又は予期せぬ法律や規則の変更などにより、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらの他、当社グループは国内外の事業活動に関連して、訴訟や各国当局による捜査・調査の対象となる可能性があります。重大な訴訟が提起された場合や、各国当局による捜査・調査が開始された場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
当期における当社グループをとり巻く環境は、国内では、自動車工業の生産悪化、サービス価格や食料品価格の上昇を受け、消費関連に弱さが残るものの、堅調な半導体需要を背景に生産用機械などが好調であるほか、資源価格の低下などを受けて石油石炭製品などの素材関連も好調であるなど、企業の景況感は総じて良好な傾向を持続しています。
一方、海外においては、米国は良好な雇用・所得環境や株高による資産効果から堅調な個人消費が持続しているものの、製造業を中心に既往の金融引き締めによる需要の低迷などを主因に調整局面が長期化しています。欧州は、ドイツの製造業がエネルギーなどのコスト高や中国の内需減速で長期にわたり低迷しており、また、中国は工業生産と輸出は堅調なものの、個人消費は新エネルギー車販売などを除き、総じて弱い動きとなっています。
こうした状況の中、当社グループは、既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、変革の「総仕上げ」を図ることを目指す中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」に取り組んでおり、その初年度にあたる当期の連結売上収益は、1兆947億46百万円(前期比11.1%増)、利益面では、連結事業利益は1,343億79百万円(前期比35.6%増)、連結営業利益は1,191億57百万円(前期比18.7%増)、また、親会社の所有者に帰属する当期利益は749億19百万円(前期比11.4%増)となりました。
タイヤセグメントの売上収益は9,808億96百万円(前期比12.1%増)で、当社グループの連結売上収益の89.6%を占めました。
新車用タイヤの売上収益は、国内での自動車メーカーの減産影響があったものの、当社納入車種の販売が好調だったほか、中国での日系自動車メーカーの販売不振の継続があった一方で、中国系自動車メーカーへの新規納入数増により前期を上回りました。
市販用タイヤの売上収益は、国内での積極的な販売活動の効果や、海外では欧州及びインドなどアジア地域で販売を伸ばしたこと、円安の寄与もあり前期を上回りました。
OHT(オフハイウェイタイヤの略)の売上収益は、YOHT(Yokohama Off-Highway Tires、旧ATG)が欧州、アジア、中東を中心に補修用市場向け販売を拡大したほか、2023年5月に買収したY-TWS(旧Trelleborg Wheel Systems Holding AB=TWS)の業績が通期で寄与し、前期を上回りました。
MB(マルチプル・ビジネス)セグメントの売上収益は1,052億49百万円(前期比3.3%増)で、当社グループの連結売上収益の9.6%を占めました。
ホース配管事業の売上収益は、建設機械向けなどの油圧ホース及び自動車向けホースで需要が低迷し販売が振るわず前期を下回りました。
一方、工業資材事業の売上収益は、コンベヤベルト、海洋商品、航空部品の販売が好調に推移したことから前年を上回りました。
全社の事業利益は、販売量の増加、販売価格の適正化やタイヤ消費財での18インチ以上のタイヤ販売数量増に加えて、Y-TWSの通期寄与、円安も寄与し、前期に対して大幅な増益となりました。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,350億86百万円増加し、1兆7,355億44百万円となりました。
流動資産は営業債権の増加等により、7,497億14百万円(前期比21.3%増)となりました。非流動資産は有形固定資産の増加等により、9,858億30百万円(前期比0.4%増)となりました。
流動負債は仕入債務の増加等により、3,748億47百万円(前期比7.7%増)となりました。非流動負債は長期借入金の返済等により、4,566億84百万円(前期比9.3%減)となりました。
資本合計は親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により9,040億13百万円(前期比20.7%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて386億1百万円増加し、1,362億15百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、944億96百万円(前連結会計年度比652億45百万円の収入減少)となりました。
これは主として、税引前利益1,153億59百万円、減価償却費661億57百万円、法人税等の支払額600億21百万円の計上等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、13億92百万円(前連結会計年度比3,426億23百万円の支出減少)となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出769億65百万円、投資有価証券の売却による収入736億13百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、632億13百万円(前連結会計年度は2,057億60百万円の収入)となりました。
これは主として、長期借入金の返済による支出480億58百万円、配当金の支払額154億29百万円等であります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
(4)生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は、販売価格を基礎として算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社は、ごく一部を除いてすべて見込生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(5)重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の判断、見積り及び仮定は、「第5.経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 (38.重要な後発事象)」に記載しております。
当社グループの研究開発は、会社の基盤技術に関する研究開発活動を研究先行開発本部が、直接商品に係る研究開発活動をタイヤ、MB及びその他の技術部門が担当となり、世界的な技術の先端に挑戦し、世界初の商品を市場に提供することで、お客様に満足いただくべく努力を重ねています。
当連結会計年度における研究開発費の総額は、
当社研究先行開発本部においては、環境貢献企業における研究部門として、精緻でかつ高度な分析・解析技術をベースに物質構造や反応機構等の解明による新素材開発やシミュレーション技術の開発を行い、環境にやさしいタイヤ材料の開発や電子材料用素材・省エネルギー関連への適用技術の開発などを中心に技術の先端に挑戦しています。また、機械学習(AI)を活用した開発の高度化や効率化にも積極的に取り組んでいます。
研究先行開発本部の研究開発費の金額は、878百万円であります。
・ゴム材料の電子顕微鏡画像を明瞭化する新たな画像処理手法を開発
ゴム材料の内部におけるナノスケール構造を鮮明に可視化する、新たな画像処理手法を開発しました。本手法により、網目状の分子ネットワーク構造を明瞭に捉え、さらに内部構造に関わる因子を数値化することに成功しました。
本研究では、ゴムの内部構造を撮影した電子顕微鏡画像に対して、ゴム分子がネットワーク状に凝集する領域のみを強調する画像処理手法を開発しました。ゴム材料に関する知見と数理的手法を組み合わせた新たな画像処理技術により、ノイズが多く輪郭が不明瞭な電子顕微鏡画像からでも、ゴム内部のネットワーク構造をナノスケールで明瞭に捉えることができます。従来、電子顕微鏡画像からゴムの内部構造を解析するには、解析対象のネットワーク領域を手動で設定する必要がありましたが、本手法では自動で算出できるため、恣意性を排除しつつ、多数のサンプルを同時に解析することが可能となりました。本手法を用いて各サンプルにデータ処理を施し、ゴムの物性に関わる因子となるネットワークの長さを算出したところ、実験値と高い相関を示し、本手法の妥当性が確認できました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST 課題名「反応リマスターによるエコ材料開発のフロンティア共創(JPMJCR2235)」の一環として実施されました。また本研究は、筑波大学と横浜ゴム株式会社との共同研究契約に基づいて行われました。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1)タイヤ
既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し、「YX2026」の次世代の成長に向けた「変革」を図ることを目標とし以下のような活動をしました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
1)人とAIとの協奏“によるデータ活用「HAICoLab」の研究開発で日本ゴム協会賞を受賞
人とAIとの協奏“によるデータ活用「HAICoLab※(ハイコラボ)」の研究開発において一般社団法人日本ゴム協会の「第36回日本ゴム協会賞」を受賞しました。
「日本ゴム協会賞」はゴムおよびその周辺領域における科学・技術またはその産業分野の発展に寄与し、その業績が極めて顕著なゴム協会会員に授与されるものです。授与数は毎年2件以内で、基準を満たす技術者がいない場合は授与されません。今回は横浜ゴムの小石正隆による研究開発1件が受賞しました。
今回受賞した「HAICoLab」は横浜ゴムが2020年10月に策定した、「人間特有のひらめき」や「発想力」と「AIが得意とする膨大なデータ処理能力」との協奏によって新たな発見を促しデジタル革新を目指すAI利活用フレームワークです。
※Humans and AI collaborate for digital innovationをもとにした造語
2)XAIを活用したタイヤ設計支援システムを独自開発
2024年7月、XAI(eXplainable AI=説明可能なAI)※を活用したタイヤの設計支援システムを独自に開発しました。これにより、技術者の知識や経験を補う情報(求めるタイヤ特性に役立つ特徴量)が得られるため、経験の浅い技術者でもタイヤ設計が容易になり、開発のスピードアップやコスト削減が可能となります。さらに、特徴量を俯瞰することで新たな気づきやひらめきが得られ、より高性能な商品の開発が期待できます。
本システムは、技術者が設定したタイヤの基準仕様と目標特性値から改善すべき特性(目的特性)と定量値を定め、その目的特性の改善に役立つ特徴量をXAIで提示します。技術者はXAIで得られた情報(求めるタイヤ特性に役立つ特徴量)を多角的な視点で解釈して仕様を修正し、横浜ゴムが2021年に開発した特性値予測AIを使って各特性値が目標を達成しているかを確認します。このプロセスを繰り返すことで最終仕様を決定し、さらにXAIによって最終仕様の根拠(各特性値の改善や維持に役立った設計因子(特徴量)とその寄与率)も確認できます。このように“人とAIとの協奏”によって新たな発見やひらめきを得ることができ、より高性能な商品開発に繋げることが期待できます。
※ブラックボックスとなっているAIの判断基準やルールをユーザーが推測するための技術
3)㈱T2が実施するレベル4自動運転トラック幹線輸送の公道実証実験に参画
2024年11月から2026年3月までを実証実験期間として、自動運転トラックの開発などを行う㈱T2が実施するレベル4自動運転※トラックによる幹線輸送の公道実証実験に参画し、タイヤ検証を行います。車両には来春発売予定のトラック・バス用タイヤの新商品を装着し、自動運転トラック向けタイヤに求められる性能などを検証します。また、今後は自動運転トラック向けのタイヤソリューションサービスについても実用化を進めます。実証実験は関東~関西間の高速道路上の一部で実施します。
レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスは限定領域においてドライバーがいない状態での運行が可能となるため、物流の2024年問題の解決に貢献するだけでなく、人間以上に安全な運転、高回転・高頻度物流による物流効率の向上、安定走行による燃費の改善など社会・環境に優しく、持続可能な物流の実現が期待できます。㈱T2では2027年にレベル4自動運転トラックによる幹線輸送事業の実現を目指しています。
※特定の走行環境条件を満たす限定された領域において自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態
<YOHT>
革新、技術、低コスト生産により、商品のライフサイクルを通じて最も安いコストで最高の価値をお客様に提供するべく活動をしております。
1)各種展示会への出展
世界最大級の屋外農業機械展示イベントであるWorld Ag Expo(ワールド アグ エクスポ)やOff-The-Road Tire Conference(オフ・ザー・ロード タイヤ コンファレンス)、米国北東部最大級の林業製品産業見本市であるThe Loggers’ Expo(ザー ロガーズ エクスポ)、イタリアで行われる国際農機展EIMA International 2024(イーアイエムエー インターナショナル)等への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。
2)新商品の発売
多くの商品を市場に投入し販売拡大に努めており、ALLIANCEブランドやGalaxyブランドの新商品発売・サイズラインナップ拡充を行いました。
(2)MB
「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」をテーマに掲げ、安定収益の確保を目指した技術開発を積極的に行いました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
1)セル型およびコーン型ソリッド防舷材を新発売、総合的な製品ポートフォリオ構築へ
2024年4月より、港湾の係留施設に設置されるソリッド防舷材として、セル型防舷材とコーン型防舷材を製品のラインアップに加えました。2023年7月に発売したベーシックモデルであるV型ソリッド防舷材に続いて、より高性能な2商品を発売することで幅広いユーザーニーズに応えるラインアップが完成しました。今後は現在販売しているトップエンドモデルの空気式防舷材「ABF-P」と合わせてオンショア(岸壁)市場全体をカバーする総合的な製品ポートフォリオを活かし、シェアをさらに拡大していきます。
防舷材は船体と岸壁を接岸や接舷の衝撃から保護する緩衝材で、港湾の係留施設では岸壁と船、洋上の荷役では船体の間に設置されます。空気式は内包した空気弾性、ソリッド式はゴム弾性により衝撃を吸収します。今回販売するミドルモデルのセル型防舷材は耐久性に優れる円柱形状の防舷材で、ハイエンドモデルのコーン型防舷材は衝撃のエネルギー吸収効率をより高めた円錐台形状の防舷材です。いずれも船体の荷重を受け止める受衝板を備えており、小型船から大型の客船や貨物船、タンカーまで幅広く使用されます。販売にあたり、一般財団法人港湾空港総合技術センター(SCOPE)の認証を取得しています。
2)コンベヤベルト向けのセンシング技術を確立
2027年中のサービス提供を目指して、稼働中のコンベヤベルトをリアルタイムで遠隔監視し、異常を検知するセンシング技術を確立しました。今後はセンシング技術で検知したデータに基づいてコンベヤベルトの最適な運用管理を提案する総合ソリューションサービスの構築を進めます。
センシング技術を活用した総合ソリューションサービスをご利用いただくことで、潜在的なリスクを検知して事故を未然に防ぐなど安全性を向上させるほか、保全コストの削減といった経済性にも貢献します。また、点検作業の負担軽減やメンテナンスの省力化により作業現場の課題となっている人手不足にも対応します。さらに、当社の専門スタッフによる運用管理により、適切な点検頻度や交換サイクル、製品仕様の最適化などユーザーごとに異なる使用環境や要望に合った最適な提案を実現します。当社の総合ソリューションサービスをご利用いただき最適な運用管理を実現することは製品の長寿命化にも寄与し、製造時のCO2排出量や原材料の削減など環境課題への貢献も期待できます。
上記のほか、ゴルフクラブ等のスポーツ用品に係る研究開発費が 198百万円あります。