(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「農家を過酷な労働から解放したい」という熱い想いから始まり、多くの方々に支えていただきながら、その想いを連綿と受け継ぎ、2025年に創立100周年を迎えることとなりました。コロナ禍・ウクライナ侵攻などから、食料安全保障や食への関心は高まっており、食を支える農業や、人々の暮らしを支える景観整備事業は、エッセンシャルビジネスとして重要度が再認識されています。
当社グループの基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」としております。また、長期ビジョンを「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」とし、これらに関連する課題を解決するとともに、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指しております。

(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE(自己資本利益率)8%以上・DOE(株主資本配当率)2%以上を達成し、PBR(株価純資産倍率)1倍以上とすることを目標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
①経営課題
当社グループは、2025年までに連結営業利益率5%を達成すべく取組を進めてまいりましたが、激変する環境への対応策と実行力の不足により計画からは大きく乖離し、目指していた「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。また、ROEについても当期純利益率と総資産回転率の低さにより目標とする8%を下回る水準で推移しております。
以上の状況より、当社グループの課題を収益性と資産効率と捉え、これらに対して、聖域なき事業構造改革を実行し強靭な経営基盤を構築すべく、2023年11月14日付で「プロジェクトZ」を設置しました。また、2024年2月にはプロジェクトZ施策の骨子を公表し、同7月には施策を確かなものとするための具体的な取組を公表しました。
②課題解決に向けた具体的施策
a.プロジェクトZ施策
プロジェクトZでは抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行してまいります。抜本的構造改革では、「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」の3テーマを軸に短期集中的に施策を実行します。また、成長戦略では、国内外の成長市場へ経営資源を集中し事業拡大を図ります。

■抜本的構造改革
・生産最適化
生産拠点と機種の再編や将来を見据えた設備投資を実行してまいります。2024年の㈱ISEKI M&Dの設立を皮切りに、コンバインや田植機の最終組立工程を㈱ISEKI M&D(松山)に移管するなど、季節性の高い当社製品の生産を集約することで生産の効率化や平準化を図ります。併せて間接業務の効率化や在庫の圧縮と効率運用に繋げてまいります。これにより、次の100年の礎となる強靭な製造所の体制を作ってまいります。
㈱ISEKI M&D(松山)では製品組立を集約するための建屋新設に着手し、㈱ISEKI M&D(熊本)からのコンバイン生産移管プロセスは計画通り進んでおります。また、生産拠点の再編に係る投資については、生産効率を改善しつつ投資抑制に努め、2024年7月に発表しておりました当初総投資計画460億円から380億円に圧縮しました。

・開発最適化
商品の成長性や収益性を分析したうえで、機種・型式を30%以上集約するとともに、成長分野へ開発リソースを集中してまいります。また、開発手法についても全地域共通の母体とするグローバル設計を進め、効率化を図ってまいります。開発の効率化とリソースの集中による組織のスリム化に加え、製品利益率改善を短期集中的に実施してまいります。
開発の効率化は機種・型式削減計画を確定次第、実行に移しており、計画通り進捗しております。また、製品利益率の改善は当初計画より一部遅延しているものの、リソースを追加投入し回復を図ってまいります。その改善効果は2025年下期より順次発現し、2027年に改善目標の達成を目指します。

・国内営業深化
国内販売会社7社の経営統合を行い、2025年1月に㈱ISEKI Japanを設立するとともに、営業組織体制も変更しました。中でも新設した「大規模企画室」では、地域毎の特性を勘案した大規模農家へのソリューションの提供を通じ、新規大規模顧客の獲得を目指します。そして、地域を越えた人材交流を積極的に行い、旧販売会社それぞれが持っている強み・ノウハウの水平展開により、更なるレベルアップを図ってまいります。
また、統合を機に、在庫拠点や運用、物流体制の見直し、重複する間接業務の集約により、経営効率の向上を図り、成長戦略への基盤を構築してまいります。

■成長戦略
・海外地域別戦略と商品戦略の展開
地域別戦略と環境対応型商品の投入を含む商品の拡充など商品戦略の展開により海外事業の拡大を図ります。地域別戦略では特にプレゼンスがあり収益力の高い欧州での事業拡大を加速させてまいります。また、英国販売代理店「PREMIUM TURF-CARE LIMITED」を株式追加取得により2025年1月に連結子会社化いたしました。これにより販売テリトリーの拡大や取扱商材の拡充、欧州域内での在庫一元管理等による効率化を図るとともに、多様な人材交流によるイノベーションを創出してまいります。
・国内成長分野への経営資源集中
成長分野である「大型」「先端」「環境」「畑作」への集中・販売強化により、安定した利益を確保するとともに、全国規模でのノウハウ共有により収益性の高い事業を拡大してまいります。これらを「大規模企画室」が中心となって推進し、井関グループの強みを増幅させながら、「ヒト」「モノ」「ノウハウ」で価値ある農業ソリューションを提供します。

b.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
■現状分析
当社のPBRは1倍を下回る水準が継続し、2024年12月末時点で0.30倍に留まっております。PBRを構成要素であるROEとPER(株価収益率)に分解し、それぞれの項目について「同業他社との経年比較」及び「当社と接点のある投資家からの意見収集」等を通じ、その要因を整理しました。
・ROE
目標数値である8%に届かず、その要因は、当期純利益率と総資産回転率の低さにあると認識しております。当期純利益率は製品利益率や販管費率、総資産回転率は在庫量や設備稼働率などが原因と考えております。なお、現状分析・評価に際し実施したヒアリングにより、日頃接点のある機関投資家が把握する当社株主資本コストの水準は概ね8%程度と認識しております。
・PER
10倍に満たない水準とみており、その要因は、成長率の低さや、成長戦略・強み・収益性などの情報開示不足、計画と実績の乖離などが原因と捉えております。
■PBR改善に向けて
現状分析による課題を踏まえ、「プロジェクトZ」の諸施策を着実に進めることに加え、IR活動・ESG取組強化により、2027年までにPBR1倍以上の実現を目指します。
■株主・投資家との対話状況
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営方針の丁寧な説明や、建設的な対話の実施などにより、株主・投資家の皆さまと信頼関係を構築することが重要であると考えております。
対話については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統轄し、決算説明会をはじめとしたさまざまな機会を通じた積極的な対応に努めてまいります。今後は特に個人投資家の皆さまに向けての情報発信や説明会などの取組を強化し、認知度の向上に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
井関グループは、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の想いのもと、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」を基本理念に掲げております。私たちは、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能な社会“食と農と大地”の実現を目指します。
サステナビリティを推進する体制として、当社グループのESGを巡る諸課題への対応について一元的な組織運営を行うことを目的に、取締役、執行役員で構成し、独立社外取締役を委員長とする「ESG委員会」を2022年8月に設置しました。委員会は、原則として毎月開催し、気候変動への対応や人権の尊重、コンプライアンスの徹底などグループ全体のESGに関する取組についてリスクと機会の観点から検討・審議を行っております。また、委員会にて審議した内容は取締役会に答申し、基本方針・マテリアリティその他重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで、経営陣の関与強化を図っております。加えて、ESG推進に係る9つのワーキンググループ(WG)を設置し活動を推進しております。

当社グループでは、「リスク管理規程」で物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を与えうる要因をリスクと定義し、リスクの顕在化防止及び損失の極小化を図り、業務の円滑な運営、資産保全、企業の信用維持に資することを目的としてリスクを管理しております。当社グループを取り巻くリスクの洗い出し・評価を実施のうえ、管理基準・規程や監視・対処体制の整備など適切な対策を講じております。リスクマネジメントWGにてリスクの洗い出し及び予見されるリスクに対する被害の大小・頻度の高低を評価し、その対応策について検討しております。
なお、当社グループにおけるリスクと対応の状況については、

マテリアリティは、当社グループが目指す姿や長期ビジョンの実現に向け、優先的に取り組む重要な課題です。基本理念や長期ビジョンで2030年に目指す姿と社会課題(社会からの要請・期待)の両面から検討し、外部専門機関からの示唆を踏まえ、経営層で議論のうえ、特定しております。

これらのマテリアリティの中から、特に重要と判断するサステナビリティの取組について、以下に記載しました。なお、関連する情報については、当社の
1) 気候変動への対応
■環境経営に関する方針、戦略
当社グループでは、「脱炭素社会と循環型社会の実現」をマテリアリティとした環境経営を実践しています。2022年には、新たに環境ビジョンを策定し、環境基本方針・環境中長期目標を見直しました。具体的な取組として、環境保全型スマート農業や電動化商品の提案など環境負荷低減に寄与する商品やサービスの拡充を図っております。
<環境ビジョン>
井関グループは、「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、
2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指します。
<環境基本方針>
「井関グループは、持続可能な社会の実現を目指すべく、
自然・社会・企業の調和に貢献する環境活動を推進します」
①環境マネジメントシステムの整備と機能的運用
②カーボンニュートラルを実現する事業活動及び製品・サービスの普及推進
③環境関連法規制の順守
④環境教育と環境情報公開
2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応
■人的資本経営に関する方針、戦略
当社グループでは、人材こそが最大の資産であり、人材の育成と活躍こそが、持続的な成長を牽引する力になると確信しております。
2025年の創立100周年、そして次の100年を担う人材育成に注力し、従業員のモチベーション向上と生産性向上を両立させる人的資本経営によって、持続的な成長を遂げてまいります。

また、中核人材の確保と育成にあたっては「人材育成方針」、従業員エンゲージメント向上にあたっては「社内環境整備方針」を定め、それらの方針に沿って具体的な取組を行っております。
<人材育成方針>
井関グループは、課題解決を果たすのはすべて「人」であり、企業の持続的成長と価値向上に欠かせない存在と考えております。
先端技術やグローバル化の推進など、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保に注力するとともに、「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、DXをはじめとする教育プログラムの更なる充実により、一人ひとりの力を最大限に引き出し「変革」を起こすチャレンジ精神あふれる人材を育成してまいります。
〇具体的な取組
① 社員教育を目的とした社会人大学院(事業構想大学院大学)への企業派遣制度の実施
② 先端技術活用のためのDX研修導入
③ グローバル人材育成のためのTOEIC講座実施
④ 耳で聴く新しい学習スタイルの導入による教育プログラムの多様化
⑤ 階層別研修の充実
⑥ グループ人材公募制度の導入
これらの人材育成を通じ、お客様から信頼されるモノづくり、画期的な商品・サービスの提供促進を図っております。
<社内環境整備方針>
井関グループは、「従業員には安定した職場を」という社是に基づき、従業員への安全・安心な職場の提供と働きがいのある職場づくりを目指しております。
人権の尊重とコンプライアンスの徹底を前提に、当社と従業員がともに発展して行くため、エンゲージメント向上に取り組むとともに、多様性に富んだ健全で透明性の高い社内環境を整備してまいります。
〇具体的な取組
① 残業時間の削減、有給休暇の取得促進によるワークライフバランスの充実
② 女性活躍推進分科会の設置、ハラスメント防止などの取組を通じたダイバーシティ推進
③ 多様な経験を持つ人材の積極的な採用
④ 健康アライアンスへの参画と健康経営推進
⑤ エンゲージメント調査、360度評価制度による組織力の強化
マテリアリティの各項目に対しては、KPIの設定・取組計画を策定のうえ、ESG推進に係る各WGが活動を推進し、ESG委員会等で定期的に進捗管理を行っております。マテリアリティの中から、特に重要と判断する指標及び目標並びに実績については、以下のとおりです。
1) 気候変動への対応
■環境経営に関する指標及び目標
当社グループは、中期計画の中で環境面においては以下の定量目標を定めております。
GHG排出量においては、2030年にグループ全体のScope1&2の2014年比46%削減を目指しています。また、環境に配慮した商品やサービスの拡充を通じ、農業における環境負荷低減に繋げる取組指標として、2025年にエコ商品の国内売上高比率65%以上を目指しております。
水使用量、廃棄物最終処分量、総物質投入量の削減目標は、2023年実績において2030年目標を達成しており、2024年より引き上げ及び対象範囲の見直しを実施しました。引き続き2030年目標に向け社内推進をしてまいります。
※1:対象範囲は提出会社及び連結子会社
算出に使用した電気事業者別排出係数は環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」に2025年2月末現在掲載されている係数を使用しております。
※2:対象範囲は㈱ISEKI M&D、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所、2024年からPT.ISEKI INDONESIAを追加
※3:対象範囲は㈱ISEKI M&D、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所
2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応
■人的資本経営に関する指標及び目標
人材育成及び社内環境整備に関しては、以下2つの項目について目標値を定め、随時進捗状況を確認のうえ対応しております。なお、当社グループ各社の業容や規模が様々であり、連結全体での記載が困難であることから、当社単体における目標と実績を記載しております。
(注) 女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。
経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。
なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当期における我が国経済は、各種政策の効果もあり景気は緩やかに回復しました。一方で、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、先行き不透明な状況が続きました。
このような状況の中、当社グループは、国内では変化する農業構造への対応強化、海外では主力市場である北米、欧州、アジアの需要を精緻に捉え、収益性向上と事業拡大に努めましたが、連結経営成績は以下のとおりとなりました。
〔当期連結業績〕
当期の売上高は、前期比1,490百万円減少し、168,425百万円(前期比0.9%減少)となりました。
国内売上高は前期比29百万円減少の113,031百万円(前期比0.0%減少)となりました。農機製品は、第1四半期は需要低迷を受け減少となりましたが、年央以降の米価上昇による需要回復を捉え一部カバーし、通期では微減となりました。一方、収支構造改革の柱である補修用部品や修理整備等のメンテナンス収入は伸長し、国内売上高全体では前年並みとなりました。
海外売上高は前期比1,460百万円減少の55,394百万円(前期比2.6%減少)となりました。北米はコンパクトトラクタ市場が弱含みに推移、アジアは韓国での在庫調整実施とアセアンで需要軟調となりました。一方、欧州は景観整備向け製品と仕入商品の売上が堅調に推移しました。
営業利益は前期比333百万円減少の1,920百万円(前期比14.8%減少)となりました。国内外価格改定効果などにより売上総利益は増加しましたが、為替換算影響もあり販管費が増加しました。
経常利益は前期比515百万円減少の1,577百万円(前期比24.6%減少)となりました。主に為替差益の減少と持分法による投資損失の拡大によるものです。
税金等調整前当期純損失は1,531百万円(前期は税金等調整前当期純利益1,900百万円)となりました。主にプロジェクトZの構造改革に伴う減損損失及び事業構造改革費用の計上によるものです。
親会社株主に帰属する当期純損失は3,022百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益29百万円)となりました。
〔当期個別業績〕
当期の売上高は86,272百万円(前期比11.1%減少)、営業損失は1,664百万円(前期は営業損失823百万円)、経常利益は8,762百万円(前期比646.1%増加)、当期純利益は4,333百万円(前期比362.1%増加)となりました。
商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。
〔国内〕
整地用機械(トラクタ、耕うん機など)は21,264百万円(前期比3.7%減少)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は6,574百万円(前期比9.1%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は16,346百万円(前期比3.8%増加)、作業機・補修用部品・修理収入は44,275百万円(前期比4.2%増加)、その他農業関連(施設工事など)は24,570百万円(前期比3.6%減少)となりました。
〔海外〕
整地用機械(トラクタなど)は36,030百万円(前期比8.6%減少)、栽培用機械(田植機など)は1,019百万円(前期比44.2%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は587百万円(前期比56.7%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は6,927百万円(前期比8.3%増加)、その他農業関連は10,828百万円(前期比37.6%増加)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,969百万円減少し206,132百万円となりました。主に在庫調整による棚卸資産の減少及びプロジェクトZの構造改革に伴う減損損失の計上による有形固定資産の減少によるものであります。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ8,592百万円減少し134,294百万円となりました。主に支払いが進んだことによる仕入債務の減少によるものであります。
純資産の部は、前連結会計年度末に比べ2,377百万円減少し71,837百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ1,700百万円減少し8,150百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務は減少したものの、棚卸資産の減少や未払金の増加などにより8,825百万円の収入(前期は2,459百万円の支出)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資による支出により5,843百万円の支出(前期比427百万円の支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に有利子負債の減少により5,099百万円の支出(前期は6,722百万円の収入)となりました。
当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性を確保するため、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は75,484百万円、現金及び預金の残高は8,200百万円となっております。
当社グループは、抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行する「プロジェクトZ」において、基本戦略及び数値目標(2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上)を定めました。重視する経営指標の状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。
(注) 金額は、販売価格によっております。
主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、創業以来「需要家に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。
国内においては、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、欧州景観整備市場への対応や、日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。
また、脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた商品開発にも積極的に取り組んでおり、開発製造本部内のグリーンイノベーション室は、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略及び中長期的に取り組む研究や開発テーマの立案、商品化を進めています。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
農業関連事業
(トラクタ)
農業機械全般で軽労化や熟練作業者の不足を補うため、ロボットトラクタへの期待が高まっています。この度、大型トラクタTJWシリーズに、120馬力クラスで国内初の『有人監視型ロボットトラクタ』を追加しました。
GPS(GNSS)の位置情報に対し、無線基地局RTK(リアル・タイム・キネマティック)による補正と、携帯電話を通じて受信するVRS(バーチャル・リファレンス・ステイション)、本機アンテナ内IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)の機体のローリング・ピッチング・ヨーに対する補正により高度な位置補正を行い、2周波による高精度な自動運転を実現しています。変形ほ場への対応やオペレータが搭乗しての自動操舵作業、ロボット作業終了後にリモコン操作により設定したHome位置までの自動走行など、大規模化の加速に伴うオペレータの疲労軽減、および不慣れなオペレータの習熟にかける時間コストの低減等が期待できます。
(コンバイン)
低コスト農業応援機として機能を厳選し、シンプルで使いやすく、低価格にしたコンバインHFR4042とHFR4050を新たに市場投入しました。近年、生産資材の価格が高騰する中、農業機械の低価格化が求められています。基本装備(車体水平制御、IQアクセル、カラーモニタ、ズームオーガ)、高精度脱穀(ツインエイトスレッシャー、IQ脱穀制御)、安全性(手こぎ緊急停止、手こぎモード)はそのままに、機能を絞り込むことで低価格化を実現し、低コスト農業を応援します。
(野菜作商品)
歩行型半自動野菜移植機じゃがいも仕様は鹿児島を中心に全国で販売され好評を頂いています。さらに、作付面積の多いお客さまからは乗用タイプで少しでも楽に作業を行いたい、マルチを張ったうねにも対応した機械が欲しいという要望を頂き、国内初となるマルチにも対応した乗用じゃがいも植付機「PVH103-90JLLXQ」を市場投入しました。マルチうねでも乗って座って楽に作業が行える乗り降り簡単フロア「イージーライダーⓇ」、植付速度の向上、四輪駆動によるぬかるんだほ場でも高い走破性を実現しました。
(その他商品)
畑作管理作業など、多様な農業体系に適用させた商品の投入で、儲かる農業を応援します。
野菜の管理作業体系ではうねをまたいだ作業が多く、うね幅に対応した狭い幅のトレッド(左右のタイヤ接地面の中心間の距離)のトラクタが必要です。また、離れたほ場間の移動時間の短縮を望む声もあり、BF25(25馬力)に高車速狭幅仕様を追加しました。
昨今のサトウキビ栽培では、茎径が大きく倒伏しにくい多収量品種が栽培されており、土あげ作業を行うために作物の条間に入ることができるトレッド、および作業機の付け替えを容易に行うための、トラクタ及び作業機の特殊3P仕様化が求められていました。この度、小型トラクタに小径タイヤ狭幅仕様「TM197-K03PS」、特殊3P装着対応センタードライブロータリ「RBM73P」を追加しました。
当社は、「ISEKIレポート」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)及び全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2023年度は分野別登録数で第2位となりました。
(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)
※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)
取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数
2023年度は、特許登録件数が公表基準に満たないため、当社の特許査定率は公表されていません。
また、自動化、電動化等の先端技術の研究開発に伴い、これらの発明提案が増加し発明提案全体の約60%になっており、先端技術能力の底上げが図られています。そして、市場を独占するレベルの技術を「スーパー・アイ」と位置づけ、この「スーパー・アイ」の技術を創出することにより競争優位性や収益の向上を目指します。