第2 【事業の状況】

 

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「農家を過酷な労働から解放したい」という熱い想いから始まり、多くの方々に支えていただきながら、その想いを連綿と受け継ぎ、2025年に創立100周年を迎えることとなりました。コロナ禍・ウクライナ侵攻などから、食料安全保障や食への関心は高まっており、食を支える農業や、人々の暮らしを支える景観整備事業は、エッセンシャルビジネスとして重要度が再認識されています。

当社グループの基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」としております。また、長期ビジョンを「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」とし、これらに関連する課題を解決するとともに、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指しております。

 


 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE(自己資本利益率)8%以上・DOE(株主資本配当率)2%以上を達成し、PBR(株価純資産倍率)1倍以上とすることを目標としております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

①経営課題

当社グループは、2025年までに連結営業利益率5%を達成すべく取組を進めてまいりましたが、激変する環境への対応策と実行力の不足により計画からは大きく乖離し、目指していた「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。また、ROEについても当期純利益率と総資産回転率の低さにより目標とする8%を下回る水準で推移しております。

以上の状況より、当社グループの課題を収益性と資産効率と捉え、これらに対して、聖域なき事業構造改革を実行し強靭な経営基盤を構築すべく、2023年11月14日付で「プロジェクトZ」を設置しました。また、2024年2月にはプロジェクトZ施策の骨子を公表し、同7月には施策を確かなものとするための具体的な取組を公表しました。

 

②課題解決に向けた具体的施策

a.プロジェクトZ施策

プロジェクトZでは抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行してまいります。抜本的構造改革では、「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」の3テーマを軸に短期集中的に施策を実行します。また、成長戦略では、国内外の成長市場へ経営資源を集中し事業拡大を図ります。


 

■抜本的構造改革

・生産最適化

生産拠点と機種の再編や将来を見据えた設備投資を実行してまいります。2024年の㈱ISEKI M&Dの設立を皮切りに、コンバインや田植機の最終組立工程を㈱ISEKI M&D(松山)に移管するなど、季節性の高い当社製品の生産を集約することで生産の効率化や平準化を図ります。併せて間接業務の効率化や在庫の圧縮と効率運用に繋げてまいります。これにより、次の100年の礎となる強靭な製造所の体制を作ってまいります。

㈱ISEKI M&D(松山)では製品組立を集約するための建屋新設に着手し、㈱ISEKI M&D(熊本)からのコンバイン生産移管プロセスは計画通り進んでおります。また、生産拠点の再編に係る投資については、生産効率を改善しつつ投資抑制に努め、2024年7月に発表しておりました当初総投資計画460億円から380億円に圧縮しました。


 

・開発最適化

商品の成長性や収益性を分析したうえで、機種・型式を30%以上集約するとともに、成長分野へ開発リソースを集中してまいります。また、開発手法についても全地域共通の母体とするグローバル設計を進め、効率化を図ってまいります。開発の効率化とリソースの集中による組織のスリム化に加え、製品利益率改善を短期集中的に実施してまいります。

開発の効率化は機種・型式削減計画を確定次第、実行に移しており、計画通り進捗しております。また、製品利益率の改善は当初計画より一部遅延しているものの、リソースを追加投入し回復を図ってまいります。その改善効果は2025年下期より順次発現し、2027年に改善目標の達成を目指します。


 

・国内営業深化

国内販売会社7社の経営統合を行い、2025年1月に㈱ISEKI Japanを設立するとともに、営業組織体制も変更しました。中でも新設した「大規模企画室」では、地域毎の特性を勘案した大規模農家へのソリューションの提供を通じ、新規大規模顧客の獲得を目指します。そして、地域を越えた人材交流を積極的に行い、旧販売会社それぞれが持っている強み・ノウハウの水平展開により、更なるレベルアップを図ってまいります。

また、統合を機に、在庫拠点や運用、物流体制の見直し、重複する間接業務の集約により、経営効率の向上を図り、成長戦略への基盤を構築してまいります。


 

■成長戦略

・海外地域別戦略と商品戦略の展開 

地域別戦略と環境対応型商品の投入を含む商品の拡充など商品戦略の展開により海外事業の拡大を図ります。地域別戦略では特にプレゼンスがあり収益力の高い欧州での事業拡大を加速させてまいります。また、英国販売代理店「PREMIUM TURF-CARE LIMITED」を株式追加取得により2025年1月に連結子会社化いたしました。これにより販売テリトリーの拡大や取扱商材の拡充、欧州域内での在庫一元管理等による効率化を図るとともに、多様な人材交流によるイノベーションを創出してまいります。

・国内成長分野への経営資源集中

成長分野である「大型」「先端」「環境」「畑作」への集中・販売強化により、安定した利益を確保するとともに、全国規模でのノウハウ共有により収益性の高い事業を拡大してまいります。これらを「大規模企画室」が中心となって推進し、井関グループの強みを増幅させながら、「ヒト」「モノ」「ノウハウ」で価値ある農業ソリューションを提供します。


 

b.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

■現状分析

当社のPBRは1倍を下回る水準が継続し、2024年12月末時点で0.30倍に留まっております。PBRを構成要素であるROEとPER(株価収益率)に分解し、それぞれの項目について「同業他社との経年比較」及び「当社と接点のある投資家からの意見収集」等を通じ、その要因を整理しました。

・ROE

目標数値である8%に届かず、その要因は、当期純利益率と総資産回転率の低さにあると認識しております。当期純利益率は製品利益率や販管費率、総資産回転率は在庫量や設備稼働率などが原因と考えております。なお、現状分析・評価に際し実施したヒアリングにより、日頃接点のある機関投資家が把握する当社株主資本コストの水準は概ね8%程度と認識しております。

・PER

10倍に満たない水準とみており、その要因は、成長率の低さや、成長戦略・強み・収益性などの情報開示不足、計画と実績の乖離などが原因と捉えております。

■PBR改善に向けて

現状分析による課題を踏まえ、「プロジェクトZ」の諸施策を着実に進めることに加え、IR活動・ESG取組強化により、2027年までにPBR1倍以上の実現を目指します。

■株主・投資家との対話状況

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営方針の丁寧な説明や、建設的な対話の実施などにより、株主・投資家の皆さまと信頼関係を構築することが重要であると考えております。

対話については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統轄し、決算説明会をはじめとしたさまざまな機会を通じた積極的な対応に努めてまいります。今後は特に個人投資家の皆さまに向けての情報発信や説明会などの取組を強化し、認知度の向上に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

井関グループは、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の想いのもと、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」を基本理念に掲げております。私たちは、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能な社会“食と農と大地”の実現を目指します。

(1)ガバナンス

サステナビリティを推進する体制として、当社グループのESGを巡る諸課題への対応について一元的な組織運営を行うことを目的に、取締役、執行役員で構成し、独立社外取締役を委員長とする「ESG委員会」を2022年8月に設置しました。委員会は、原則として毎月開催し、気候変動への対応や人権の尊重、コンプライアンスの徹底などグループ全体のESGに関する取組についてリスクと機会の観点から検討・審議を行っております。また、委員会にて審議した内容は取締役会に答申し、基本方針・マテリアリティその他重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで、経営陣の関与強化を図っております。加えて、ESG推進に係る9つのワーキンググループ(WG)を設置し活動を推進しております。


(2)リスク管理

当社グループでは、「リスク管理規程」で物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を与えうる要因をリスクと定義し、リスクの顕在化防止及び損失の極小化を図り、業務の円滑な運営、資産保全、企業の信用維持に資することを目的としてリスクを管理しております。当社グループを取り巻くリスクの洗い出し・評価を実施のうえ、管理基準・規程や監視・対処体制の整備など適切な対策を講じております。リスクマネジメントWGにてリスクの洗い出し及び予見されるリスクに対する被害の大小・頻度の高低を評価し、その対応策について検討しております。

なお、当社グループにおけるリスクと対応の状況については、「3 事業等のリスク」に掲載しております。


 

(3)戦略

マテリアリティは、当社グループが目指す姿や長期ビジョンの実現に向け、優先的に取り組む重要な課題です。基本理念や長期ビジョンで2030年に目指す姿と社会課題(社会からの要請・期待)の両面から検討し、外部専門機関からの示唆を踏まえ、経営層で議論のうえ、特定しております。

 


 

これらのマテリアリティの中から、特に重要と判断するサステナビリティの取組について、以下に記載しました。なお、関連する情報については、当社の統合報告書(ISEKIレポート)や当社企業ウェブサイトでも公表しております。

 

1)  気候変動への対応

■環境経営に関する方針、戦略

当社グループでは、「脱炭素社会と循環型社会の実現」をマテリアリティとした環境経営を実践しています。2022年には、新たに環境ビジョンを策定し、環境基本方針・環境中長期目標を見直しました。具体的な取組として、環境保全型スマート農業や電動化商品の提案など環境負荷低減に寄与する商品やサービスの拡充を図っております。

<環境ビジョン>

  井関グループは、「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、

2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指します。

<環境基本方針>
「井関グループは、持続可能な社会の実現を目指すべく、
            自然・社会・企業の調和に貢献する環境活動を推進します」

①環境マネジメントシステムの整備と機能的運用

②カーボンニュートラルを実現する事業活動及び製品・サービスの普及推進

③環境関連法規制の順守

④環境教育と環境情報公開

 

2)  人的資本・多様性の確保に向けた対応

■人的資本経営に関する方針、戦略

当社グループでは、人材こそが最大の資産であり、人材の育成と活躍こそが、持続的な成長を牽引する力になると確信しております

2025年の創立100周年、そして次の100年を担う人材育成に注力し、従業員のモチベーション向上と生産性向上を両立させる人的資本経営によって、持続的な成長を遂げてまいります。


また、中核人材の確保と育成にあたっては「人材育成方針」、従業員エンゲージメント向上にあたっては「社内環境整備方針」を定め、それらの方針に沿って具体的な取組を行っております。

<人材育成方針>

井関グループは、課題解決を果たすのはすべて「人」であり、企業の持続的成長と価値向上に欠かせない存在と考えております。

先端技術やグローバル化の推進など、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保に注力するとともに、「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、DXをはじめとする教育プログラムの更なる充実により、一人ひとりの力を最大限に引き出し「変革」を起こすチャレンジ精神あふれる人材を育成してまいります。

〇具体的な取組

① 社員教育を目的とした社会人大学院(事業構想大学院大学)への企業派遣制度の実施

② 先端技術活用のためのDX研修導入

③ グローバル人材育成のためのTOEIC講座実施

④ 耳で聴く新しい学習スタイルの導入による教育プログラムの多様化

⑤ 階層別研修の充実

⑥ グループ人材公募制度の導入 

これらの人材育成を通じ、お客様から信頼されるモノづくり、画期的な商品・サービスの提供促進を図っております。

<社内環境整備方針>

井関グループは、「従業員には安定した職場を」という社是に基づき、従業員への安全・安心な職場の提供と働きがいのある職場づくりを目指しております。

人権の尊重とコンプライアンスの徹底を前提に、当社と従業員がともに発展して行くため、エンゲージメント向上に取り組むとともに、多様性に富んだ健全で透明性の高い社内環境を整備してまいります。

〇具体的な取組

  残業時間の削減、有給休暇の取得促進によるワークライフバランスの充実

  女性活躍推進分科会の設置、ハラスメント防止などの取組を通じたダイバーシティ推進

  多様な経験を持つ人材の積極的な採用

  健康アライアンスへの参画と健康経営推進

  エンゲージメント調査、360度評価制度による組織力の強化

 

(4)指標及び目標

マテリアリティの各項目に対しては、KPIの設定・取組計画を策定のうえ、ESG推進に係る各WGが活動を推進し、ESG委員会等で定期的に進捗管理を行っております。マテリアリティの中から、特に重要と判断する指標及び目標並びに実績については、以下のとおりです。

 

1) 気候変動への対応

■環境経営に関する指標及び目標

当社グループは、中期計画の中で環境面においては以下の定量目標を定めております。

GHG排出量においては、2030年にグループ全体のScope1&2の2014年比46%削減を目指しています。また、環境に配慮した商品やサービスの拡充を通じ、農業における環境負荷低減に繋げる取組指標として、2025年にエコ商品の国内売上高比率65%以上を目指しております。

水使用量、廃棄物最終処分量、総物質投入量の削減目標は、2023年実績において2030年目標を達成しており、2024年より引き上げ及び対象範囲の見直しを実施しました。引き続き2030年目標に向け社内推進をしてまいります。

指標

目標(2024年)

実績(2024年)

GHG排出量(Scope1&2)     ※1

34.0%削減(2014年比)

41.3%削減(同左)

水使用量(売上高当たり)    ※2

30.7%削減(2014年比)

17.8%削減(同左)

廃棄物最終処分量(売上高当たり)※3

67.2%削減(2013年比)

57.8%削減(同左)

総物質投入量(売上高当たり)  ※3

24.5%削減(2013年比)

25.9%削減(同左)

エコ商品の国内売上高比率

58.5%

53.2%

 

※1:対象範囲は提出会社及び連結子会社

算出に使用した電気事業者別排出係数は環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」に2025年2月末現在掲載されている係数を使用しております。

※2:対象範囲は㈱ISEKI M&D、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所、2024年からPT.ISEKI INDONESIAを追加

※3:対象範囲は㈱ISEKI M&D、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所

  

 

2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応

■人的資本経営に関する指標及び目標

人材育成及び社内環境整備に関しては、以下2つの項目について目標値を定め、随時進捗状況を確認のうえ対応しております。なお、当社グループ各社の業容や規模が様々であり、連結全体での記載が困難であることから、当社単体における目標と実績を記載しております。

 

指標

目標(2025年

実績(2024年)

管理職に占める女性労働者の割合

7.0

4.0

中途採用者管理職比率

7.0

9.6

 

(注) 女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。

なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

1)

経済情勢及び農業環境の変化

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、農業機械の開発・製造・販売を主な事業内容としております。主な事業基盤である国内農業においては、以下の構造的な課題等に起因して農機需要が減少した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・農業従事者の高齢化

・担い手不足による農家戸数の減少

・政府による農業政策転換等の影響

・農作物の価格変動による購買意欲の減退、景気の低迷等

当社グループでは、国内農業の抱える構造的な課題に対し、主に以下の対応を図っています。

○国内営業深化

・県別販売エリアをブロック単位に分割し拠点や人員を最適配置、ブロック内では大規模農家に対応するための設備を備えた中核拠点を中心に営業・サービスを展開

・2025年1月1日付で国内広域販売会社を統合し㈱ISEKI Japanを設立、間接業務の集約等による経営効率化、経営資源の集中、迅速な意思決定と強力な推進体制を構築

 

○成長戦略

・「みどりの食料システム戦略」への対応

・成長分野である「大型」「先端」「畑作」「環境」へ経営資源を集中、販売強化

・㈱ISEKI Japanに「大規模企画室」を設置

・新組織体制によるノウハウ共有の迅速化により顧客拡大と提案力強化

・「担い手」へのマーケティングを強化

・高まる「大規模」農業ニーズに向けた商品、サービスを提供

・価値ある農業ソリューションの提供

・センシングデータによる可変施肥機能を搭載した農機ラインナップの拡充、農薬を使わず雑草抑制ができる有機農業の導入に資する商材の提供

同水準

2)

為替レートの変動

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、海外事業を展開し、当連結会計年度の連結売上高における海外売上高比率は32.9%です。為替レートの急激な変動が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

・当社グループが国内で生産し輸出する事業について円高に振れた場合の価格競争力の低下

・海外関連会社の財務諸表を円換算するにあたっての為替レートの変動による影響

当社グループでは、為替レート変動によるリスクを軽減するため、主に以下の対応を図っています。

 

・外貨と円貨の両建てでの輸出取引

・原材料および部品の海外調達

・為替予約の活用による短期的なリスクの軽減

同水準

 

3)

原材料の価格高騰、調達難、サプライチェーンの混乱

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、国内外の多数の取引先から原材料や部品を調達し生産品を供給しており、サプライチェーンにおける以下のリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・調達価格の急激な高騰に伴う製造コスト等の上昇による収益性の低下

・供給逼迫の長期化に起因する生産減少や出荷停滞

・供給品に起因する当社商品の信頼性や評判低下等

・輸送用コンテナやトラックの不足等に起因する出荷停滞

当社グループでは、調達価格の高騰や安定生産・供給体制の構築等のため、主に以下の対応を図っています。

 

・原材料価格高騰分の価格転嫁

・調達・出荷の両面で取引先を複数とすることや複数の輸送手段等の確保

・供給遅延が懸念される部品等の早期発注、安全在庫量の確保等

・取引先の信用調査や人権尊重を含むCSRアンケートの実施

・トラック・船・鉄道コンテナ等の輸送手段の最適化、荷待ち時間の短縮

・生産拠点の変更に伴う物流拠点と輸送方法の見直し

同水準

 

 

4)

特定の取引先、調達先への依存

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの連結売上高のうち、主要販売先上位3社の占める割合は、当連結会計年度において約18%となっております。また、当社製の製品に使用している原材料や購入部品には、調達先が特定されているものがあります。特定の販売先や調達先の方針変更や業績不振、倒産等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、OEM供給先も含む特定の販売先や調達先との取引に関し、主に以下の対応により、良好な関係の維持に努めています。
 

・取引先との定期的なコミュニケーション

・トップレベルの関係性強化

・販売先の満足する製品品質の確保、補修部品の迅速な供給等

同水準

5)

他社との競争

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループを取り巻く市場環境や競争に対して当社グループがアフターサービスを含めた商品競争力を強化できなかった場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

○国内:知的財産の獲得や競争力強化ができない

・スマート農業に対する高機能製品の開発

・農業資材費低減ニーズを受けた低価格化等
 

○海外:地域ごとの多様なニーズに対応できない

・環境意識の高まりを含む事業環境の変化

当社グループでは、国内外の競合他社との激しい競争に対し、多様なニーズに対応した製品の市場投入のほか、主に以下の対応を図っています。
 

○国内での付加価値の向上、知的財産の獲得

・商品の販売に併せたソリューションの提案等

・ICTや自動化等のスマート農業関連、カーボンニュートラルに寄与する将来型の開発テーマの増加
 

○海外市場におけるプレゼンスの向上

・欧州市場向けの電動商品の発売

・国内と市場が類似する東アジアでの大型・先端技術搭載商品の供給等

同水準

6)

商品やサービスの重大な瑕疵や欠陥の発生

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの開発・製造する商品やサービスに重大な瑕疵や欠陥が発生した場合、または当社グループ及び当社商品への信頼が失われた場合、多額の損害賠償請求等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、主に以下の対応により、事業や財政状態への影響の低減を図っています。
 

・お客さまに満足いただける商品を提供するための品質管理・品質保証体制の構築

・商品化にあたっての次のステージへの移行可否判断(デザインレビュー)等、定められたプロセスの厳格運用

・万一の品質問題の発生に備えた生産物賠償責任保険の加入等

同水準

7)

株式市場の動向

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、市場価格のある有価証券を保有しております。当連結会計年度末における市場価格のある有価証券は8,474百万円となっております。そのため、株価が大きく下落した場合には、評価損または売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、保有目的が純投資目的である投資有価証券は保有しておりません。当社が保有する政策保有株式については、主に以下の対応を図っています。
 

・毎年、取締役会において個別の銘柄ごとに保有に伴う便益やリスク等の保有意義の検証、保有意義が希薄となった政策保有株式について売却検討

同水準

 

 

8)

土地及びその他の固定資産の価値下落

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

 

当社グループが保有する固定資産等については、経営環境の著しい悪化等に伴う収益性の低下や、市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、「プロジェクトZ」による構造改革を推進し、製造・販売の両面で主に以下の対応を図っています。また、これらの施策の進捗について、業績管理を担う部門にてトレースし、収益性の低下につながる事象を把握した場合には、適時に対応策を検討しています。
 

○抜本的構造改革 生産最適化

・生産拠点と機種の再編に伴う製造所の統合(松山・熊本)による間接業務の効率化とコスト削減

・季節性の高い当社製品の生産を集約することで生産の効率化や平準化、在庫の圧縮と効率運用
 

○抜本的構造改革 国内営業深化
国内販売会社の統合による以下の対応

・間接業務の効率化

・一元管理による在庫の効率運用

・在庫拠点最適化や物流体制見直しによる物流費圧縮

同水準

9)

環境問題等の公的規制や問題の発生

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループが事業活動を展開する中で、環境を巡る以下の問題等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・国内外の環境規制や市場の要求が厳格化した場合のコスト負担

・環境問題発生時の是正措置、訴訟等

当社グループでは、生産と生産以外の事業活動の両面から、主に以下の対応により環境負荷の低減に努めているほか、国内外の連結会社における廃棄物の取扱いについて法令に従い適切に対応しています。
 

○生産面

・規制物質等の環境負荷データのモニタリングと環境負荷低減に資する生産活動の推進
 

○生産以外

・国内外の環境規制に適合する製品の開発

・環境負荷軽減に資する国内での「エコ商品」の販売推進

同水準

10)

国際的な事業活動に伴うリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、アジアをはじめとして海外にも拠点を持ち、また国内の生産拠点においては海外の取引先から原材料や部品を調達して生産し、商品を内外の顧客に供給しています。こうした国際的な事業活動をする上で、以下の変化により、サプライチェーンや生産・営業活動が制限を受け、顧客への商品供給に支障をきたした場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・各国の税制・法令・貿易政策の予期せぬ変化 (米国大統領の交代による変化)

・台湾有事やウクライナ・中東地域等の紛争等
 

また、当社グループはアジア地域への事業展開に注力しておりますが、主に同地域における人材の流動性が高いため、未成熟な技術水準や不安定な労使関係などが、当社グループの事業展開を阻害する可能性があります。

当社グループでは、現地連結会社等からの情報収集と分析、関係会社との情報共有等を通じ、主に以下の対応により事業への影響の低減を図っています。
 

・各国の税制・法令・貿易政策の変更や雇用情勢等

・地政学リスクに関する報道や官公庁通達

・駐在員等による地政学リスク等の予兆を察知した場合の事業継続の可否や対応の検討

・上記を通じて得られた情報と分析結果から、必要に応じ操業形態やサプライチェーンの見直し等

拡大

 

 

11)

法令違反リスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループが事業活動を展開する中で、事業運営の不備等により、官公庁等から何らかの行政指導等が発せられた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの役職員が法令に違反する行為を行った場合、当社グループの信用失墜を招くほか、事業活動が制限され、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、主に以下の対応によりコンプライアンスの徹底、企業内部の問題の早期発見・解決に努めております。
 

・グループ子会社の統合再編に伴うグループ3線体制の強化

・グループ全員に、順守すべき「井関グループ倫理行動規範」の周知徹底

・コンプライアンス担当役員による統括管理

・各本部の統括部門長等で構成するコンプライアンスWGを開催し、社内教育やモニタリング等の施策の推進とフォロー

・「井関グループ内部通報制度(倫理ホットライン)」を設置し、社内窓口のほか経営陣から独立した社外の第三者窓口を設置

同水準

12)

自然災害や予期せぬ事故、感染症の拡大等に関するリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの国内外の主要拠点において発生し、事業活動に直接的または間接的に影響を及ぼす以下の事象が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・地震、台風、水害等の自然災害

・予期せぬ事故

・感染症の発生等

当社グループでは、自然災害や不測の事態発生時等に備え、主に以下の対応を図っています。
 

・火災や風水害の各種保険の付保

・耐震工事の実施、取引先との連携強化

・重要業務遂行のための支援・代替策確保等の事業継続計画の整備

・不測の事態の発生時は、社長等を本部長とした「対策本部」を設置し、情報収集と迅速な指示

・在宅勤務・分散勤務等の勤務形態の弾力化、Webを活用した会議や行事運営等

同水準

13)

他社との業務提携、合弁事業及び戦略的投資

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、必要に応じて他社との業務提携、合弁事業、戦略的投資を行います。これらの施策は双方の経営資源を有効に活用し、タイムリーに開発、生産、販売するうえで有効な手段であると当社グループは考えております。
しかしながら、以下の事象等に起因するこれらの施策の成否は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・業務提携、合弁事業等において当事者間で利害の不一致が生じ提携を維持できなくなるリスク

・買収等戦略的投資において期待する成果や効果が得られない、時間や費用などが想定以上にかかるリスク

当社グループでは、トップマネジメントから担当者レベルの各階層において緊密な連携を図るほか、主に以下の対応を図っています。
 

・業務提携や投融資に際しての取締役会・経営会議での審議・検討

・業務提携によるオープンイノベーションの展開にあたり、アーリーステージにあるベンチャー企業等を中心とした出資先候補について、出資管理委員会による評価・選定及び出資後のモニタリング

・所期の効果を発揮できないと判断した場合の経済的影響を最小限とする手段の検討

同水準

 

 

14)

借入金のリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当連結会計年度末における当社グループの借入金の連結貸借対照表計上額は、68,110百万円と、総資産の33%を占めております。そのため、以下の事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・金融情勢の変化等に伴い借入金利が上昇した場合の借入コストの増加

・棚卸資産の増加、生産拠点・機種の再編や将来を見据えた生産最適化の設備投資に伴う借入金の増加

・取引金融機関とのシンジケートローン及びコミットメントライン契約に付されている財務制限条項に抵触した場合の借入金の繰上返済義務

当社グループでは、収益性改善や棚卸資産の削減等によるキャッシュフローの創出力向上等を通じて有利子負債を圧縮するため、ならびに急激な金利変動に備えるため、主に以下の対応を図っています。
 

・資金調達方法の多様化手段の一つとして債権の流動化

・国内広域販売会社の経営統合に伴う在庫の一元管理や効率運用による棚卸資産の削減

・設備投資に際し一定の基準(ハードルレート)を設け、生み出すリターンが基準を超える投資を実施

・固定金利等の種々の借入条件の組み合わせ

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15)

人材の確保、人材不足

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループが持続的成長と企業価値の向上を果たしていくためには、それを実現する多様な人材が必要です。そのため、事業に必要な人材の確保・育成が進まなかった場合には、長期的に当社グループの競争力が低下し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループの人材育成方針・社内環境整備方針を定め、事業に必要な人材の確保や育成、働きやすく健全な職場の整備のため、以下の対応を図っている他、「プロジェクトZ」施策に沿った人事制度の再整備、処遇改善等のエンゲージメント向上施策も検討してまいります。
 

・国籍や性別を問わず、多様な知識・能力・経験を有する人材の採用・育成

・キャリア採用強化、リファラル採用、ジョブリターン制度の導入

・事業戦略に沿ったグローバル人材、DX人材等の育成プログラムの強化

・階層別教育や技術・技能伝承のための社内教育や外部大学院への派遣等の育成プログラム

・グループ人材公募制度による従業員の意思を尊重したキャリア形成支援

・タレントマネジメントシステムの活用・調査によるエンゲージメントの把握と向上

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16)

情報セキュリティのリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、業務上必要となる個人情報を含む各種の情報をシステム上で管理しております。そのため、以下の事象の発生等による情報漏えいやシステムの停止等により、当社グループの業務の停滞に加え信用の低下を招くなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

・サイバー攻撃による不正アクセス

・コンピューターウィルス感染等

当社グループでは、電子情報のセキュリティや情報インフラの管理規程、個人情報取扱規程を整備しており、継続的な改善等、主に以下の対応を図っています。
 

・データセンターやクラウドサービスを活用したセキュリティ対策の強化

・外部からの不正アクセス監視サービスの導入

・不測の事態に備えたサイバー保険の付保

・個人情報の取扱いに関する定期的な研修

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17)

気候変動のリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの事業基盤である農業において、気候変動は、作物体系の変化や農地の減少などによる需給の変動、当社グループの商品構成や販売量をはじめ事業活動全般に大きな影響を及ぼし、適切な対応ができなかった場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

○気温上昇を+2℃未満に抑えるシナリオ

・脱炭素化に向けた政府等の規制強化による運営コストの増加

・脱炭素化の進展に伴う調達コストの増加

・脱炭素需要に対応できないことによる事業機会の損失等
 

○気温上昇が+4℃となるシナリオ

・風水害の甚大化によるサプライチェーンを含む生産・販売拠点などの被災影響

・米の品質低下や稲作可能地域の減少等を受けた稲作用の農機需要の減少

当社グループでは、気候変動による影響抑制や事業機会の創出のため、以下の対応を図っています。
 

○主に2℃シナリオにおける対応

≪影響抑制≫

・太陽光発電等の再生可能エネルギーの活用、液化天然ガス(LNG)への燃料転換

・自家発電設備の排熱のボイラー利用等

・社内炭素価格(ICP)の導入によりエネルギー効率や脱炭素の視点を反映した投資判断
 

≪事業機会の創出≫

・農機の電動化

・農作業効率化に資するスマート農機・ロボット農機の導入促進

・水田のメタン排出量削減に資する農法の普及

・化学肥料・農薬を使用しない環境保全型農業のソリューション提案

・J-クレジットの取組に関する他社との業務提携
 

○主に4℃シナリオにおける対応

≪影響抑制≫

・事業継続計画の継続的見直し

・商品構成や販売網の見直し
 

≪事業機会の創出≫

・ロボット農機による農作業の代替関連技術

・AIによる気象データ・生育データ分析の自律化等

同水準

18)

繰延税金資産の回収可能性

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、将来減算一時差異等に対して繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積り可能期間における市場環境や需要などの予測に基づいた事業計画による課税所得の見積り額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリング結果に基づき判断しておりますが、事業計画の基礎となる主要な仮定の変更や税制改正等により繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、主に以下の対応を図っております。

・基準とした事業計画の実現可能性について慎重に検討を行い、課税所得を合理的に見積もり

・経営会議等で業績悪化の兆候を把握し、回収可能性を適時に見直し

・税制改正に係る情報収集、専門家による助言

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4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(1) 経営成績の状況

当期における我が国経済は、各種政策の効果もあり景気は緩やかに回復しました。一方で、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、先行き不透明な状況が続きました。

このような状況の中、当社グループは、国内では変化する農業構造への対応強化、海外では主力市場である北米、欧州、アジアの需要を精緻に捉え、収益性向上と事業拡大に努めましたが、連結経営成績は以下のとおりとなりました。

〔当期連結業績〕

当期の売上高は、前期比1,490百万円減少し、168,425百万円(前期比0.9%減少)となりました。

国内売上高は前期比29百万円減少113,031百万円(前期比0.0%減少)となりました。農機製品は、第1四半期は需要低迷を受け減少となりましたが、年央以降の米価上昇による需要回復を捉え一部カバーし、通期では微減となりました。一方、収支構造改革の柱である補修用部品や修理整備等のメンテナンス収入は伸長し、国内売上高全体では前年並みとなりました。

海外売上高は前期比1,460百万円減少55,394百万円(前期比2.6%減少)となりました。北米はコンパクトトラクタ市場が弱含みに推移、アジアは韓国での在庫調整実施とアセアンで需要軟調となりました。一方、欧州は景観整備向け製品と仕入商品の売上が堅調に推移しました。

営業利益は前期比333百万円減少1,920百万円(前期比14.8%減少)となりました。国内外価格改定効果などにより売上総利益は増加しましたが、為替換算影響もあり販管費が増加しました。

経常利益は前期比515百万円減少1,577百万円(前期比24.6%減少)となりました。主に為替差益の減少と持分法による投資損失の拡大によるものです。

税金等調整前当期純損失は1,531百万円(前期は税金等調整前当期純利益1,900百万円)となりました。主にプロジェクトZの構造改革に伴う減損損失及び事業構造改革費用の計上によるものです。

親会社株主に帰属する当期純損失は3,022百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益29百万円)となりました。

 

〔当期個別業績〕

当期の売上高は86,272百万円(前期比11.1%減少)、営業損失は1,664百万円(前期は営業損失823百万円)、経常利益は8,762百万円(前期比646.1%増加)、当期純利益は4,333百万円(前期比362.1%増加)となりました。

 

商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。

〔国内〕

整地用機械(トラクタ、耕うん機など)は21,264百万円(前期比3.7%減少)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は6,574百万円(前期比9.1%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は16,346百万円(前期比3.8%増加)、作業機・補修用部品・修理収入は44,275百万円(前期比4.2%増加)、その他農業関連(施設工事など)は24,570百万円(前期比3.6%減少)となりました。

〔海外〕

整地用機械(トラクタなど)は36,030百万円(前期比8.6%減少)、栽培用機械(田植機など)は1,019百万円(前期比44.2%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は587百万円(前期比56.7%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は6,927百万円(前期比8.3%増加)、その他農業関連は10,828百万円(前期比37.6%増加)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,969百万円減少206,132百万円となりました。主に在庫調整による棚卸資産の減少及びプロジェクトZの構造改革に伴う減損損失の計上による有形固定資産の減少によるものであります。

負債の部は、前連結会計年度末に比べ8,592百万円減少134,294百万円となりました。主に支払いが進んだことによる仕入債務の減少によるものであります。

純資産の部は、前連結会計年度末に比べ2,377百万円減少71,837百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ1,700百万円減少8,150百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務は減少したものの、棚卸資産の減少や未払金の増加などにより8,825百万円の収入(前期は2,459百万円の支出)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資による支出により5,843百万円の支出(前期比427百万円の支出増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に有利子負債の減少により5,099百万円の支出(前期は6,722百万円の収入)となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性を確保するため、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。

当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は75,484百万円、現金及び預金の残高は8,200百万円となっております。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行する「プロジェクトZ」において、基本戦略及び数値目標(2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上)を定めました。重視する経営指標の状況は以下のとおりであります。

 

2022年12月期

(実績)

2023年12月期

(実績)

2024年12月期

(実績)

連結営業利益率

2.1%

1.3%

1.1%

自己資本利益率(ROE)

6.2%

0.0%

△4.4%

株主資本配当率(DOE)

1.0%

1.0%

1.0%

 

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。

製品区分

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

 

整地用機械

38,912

△27.0

 

栽培用機械

8,081

△16.7

 

収穫調製用機械

13,151

△20.2

 

作業機・補修用部品

1,903

65.5

 

その他農業関連

5,174

△17.8

 

合計

67,223

△22.6

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

(2) 受注実績

主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。

製品区分

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

 

整地用機械

57,295

△6.8

 

栽培用機械

7,593

△16.2

 

収穫調製用機械

16,934

△1.0

 

作業機・補修用部品・修理収入

51,202

4.7

 

その他農業関連

35,399

6.1

 

合計

168,425

△0.9

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、創業以来「需要家に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。

国内においては、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、欧州景観整備市場への対応や、日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。

また、脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた商品開発にも積極的に取り組んでおり、開発製造本部内のグリーンイノベーション室は、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略及び中長期的に取り組む研究や開発テーマの立案、商品化を進めています。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は1,464百万円であり、主たる研究成果は次のとおりであります。

 

農業関連事業

(トラクタ)

農業機械全般で軽労化や熟練作業者の不足を補うため、ロボットトラクタへの期待が高まっています。この度、大型トラクタTJWシリーズに、120馬力クラスで国内初の『有人監視型ロボットトラクタ』を追加しました。

GPS(GNSS)の位置情報に対し、無線基地局RTK(リアル・タイム・キネマティック)による補正と、携帯電話を通じて受信するVRS(バーチャル・リファレンス・ステイション)、本機アンテナ内IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)の機体のローリング・ピッチング・ヨーに対する補正により高度な位置補正を行い、2周波による高精度な自動運転を実現しています。変形ほ場への対応やオペレータが搭乗しての自動操舵作業、ロボット作業終了後にリモコン操作により設定したHome位置までの自動走行など、大規模化の加速に伴うオペレータの疲労軽減、および不慣れなオペレータの習熟にかける時間コストの低減等が期待できます。

(コンバイン)

低コスト農業応援機として機能を厳選し、シンプルで使いやすく、低価格にしたコンバインHFR4042とHFR4050を新たに市場投入しました。近年、生産資材の価格が高騰する中、農業機械の低価格化が求められています。基本装備(車体水平制御、IQアクセル、カラーモニタ、ズームオーガ)、高精度脱穀(ツインエイトスレッシャー、IQ脱穀制御)、安全性(手こぎ緊急停止、手こぎモード)はそのままに、機能を絞り込むことで低価格化を実現し、低コスト農業を応援します。

(野菜作商品)

歩行型半自動野菜移植機じゃがいも仕様は鹿児島を中心に全国で販売され好評を頂いています。さらに、作付面積の多いお客さまからは乗用タイプで少しでも楽に作業を行いたい、マルチを張ったうねにも対応した機械が欲しいという要望を頂き、国内初となるマルチにも対応した乗用じゃがいも植付機「PVH103-90JLLXQ」を市場投入しました。マルチうねでも乗って座って楽に作業が行える乗り降り簡単フロア「イージーライダーⓇ」、植付速度の向上、四輪駆動によるぬかるんだほ場でも高い走破性を実現しました。

(その他商品)

畑作管理作業など、多様な農業体系に適用させた商品の投入で、儲かる農業を応援します。

野菜の管理作業体系ではうねをまたいだ作業が多く、うね幅に対応した狭い幅のトレッド(左右のタイヤ接地面の中心間の距離)のトラクタが必要です。また、離れたほ場間の移動時間の短縮を望む声もあり、BF25(25馬力)に高車速狭幅仕様を追加しました。

昨今のサトウキビ栽培では、茎径が大きく倒伏しにくい多収量品種が栽培されており、土あげ作業を行うために作物の条間に入ることができるトレッド、および作業機の付け替えを容易に行うための、トラクタ及び作業機の特殊3P仕様化が求められていました。この度、小型トラクタに小径タイヤ狭幅仕様「TM197-K03PS」、特殊3P装着対応センタードライブロータリ「RBM73P」を追加しました。

 

当社は、「ISEKIレポート」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)及び全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2023年度は分野別登録数で第2位となりました。

 

(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)

2000~2006

2007~2014

2016~2017

2018

2019

2020~2023

統計数

分野別公開数

分野別登録数

分 野

農水産

その他の特殊機械

順 位

1位

2位

1位

2位

 

 

2004~2010

2011

2012~2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

特許査定率

91.8%

96.4%

97.7%

98.7%

97.2%

94.6%

順 位

1位

2位

1位

2位

1位

3位

 

※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)

  取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数

2023年度は、特許登録件数が公表基準に満たないため、当社の特許査定率は公表されていません。

 

また、自動化、電動化等の先端技術の研究開発に伴い、これらの発明提案が増加し発明提案全体の約60%になっており、先端技術能力の底上げが図られています。そして、市場を独占するレベルの技術を「スーパー・アイ」と位置づけ、この「スーパー・アイ」の技術を創出することにより競争優位性や収益の向上を目指します。