第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、イノベーションを通じて、人々と社会に力を与えること(エンパワーメント)を経営の基本理念としています。ユーザー及び取引先企業へ満足度の高いサービスを提供するとともに、多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていくことに寄与していきます。グローバル イノベーション カンパニーであり続けるというビジョンのもと、当社グループの企業価値・株主価値の最大化を目指します。

 

(2) 目標とする経営指標

主な経営指標として、全社及び各事業の売上収益、Non-GAAP営業利益、流通総額(商品・サービスの取扱高)、会員数及びクロスユース率等のKPIs(Key Performance Indicators)を重視し、成長性や収益性を向上させることを目指します。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

① 経営環境

インターネットをはじめとする情報通信技術(ICT)の発展・普及がもたらした新しい経済、そして社会の姿は「デジタル経済」と呼ばれるようになってきており、政府は、その進化の先にある社会として「Society 5.0」を掲げています。「Society 5.0」においては、IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術があらゆる産業や社会生活に取り入れられ、経済発展と社会的課題の解決が両立されることが期待されています。当社においても、当社の持つ様々な先端技術を利活用し、社会に貢献したいと考えています。また、近年、AI技術が飛躍的に発展し、社会に大きな変革を生み出す兆しを見せている中、当社としても、AIがビジネスにもたらす影響やその重要性を認識しており、事業運営や価値創造にAIとデータの持つ力を最大限活用しながら、消費者やビジネスパートナーに対し、革新的なサービスを提供していくことを目指しています。

経済産業省の調査(注1)によれば、2023年における日本のBtoC-EC市場規模は24.8兆円に達しました。また、BtoC市場における物販系EC化率は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で市場規模が拡大した後、伸び率は鈍化しつつも増加した結果、9.38%となる等、商取引の電子化が進展し続けています。さらに、日本の同比率は諸外国のそれに比して未だ低いことから、当社グループが推進するEC事業の拡大余地は引き続き大きいと考えています。

キャッシュレス決済においては、2018年4月に経済産業省により策定された「キャッシュレス・ビジョン」で、2025年までに我が国におけるキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げることが目標とされています。さらに、将来的には同比率を世界最高水準の80%まで引き上げることを目指すとされており、クレジットカード決済、QRコード・バーコード決済等の様々な決済手段によるキャッシュレス決済規模の一層の拡大が見込まれます。当社グループのフィンテック事業各社は当該分野におけるリーディングカンパニーとして、引き続き同市場の拡大に貢献していきます。

移動通信においては、ネットワークの高度化の進展とともに、スマートフォンの普及、それと並行してSNS、ゲーム、動画・音楽配信、地図、検索等のエンドユーザー向けのコンテンツ・アプリケーション市場が拡大する中、モバイル端末の利用シーンが大きく広がっています。総務省の報告(注2)によれば、2024年9月末時点における日本の携帯電話の契約数は2億1,790万件に達する等、国内移動通信市場の拡大が継続しています。当社グループが展開するモバイル事業においても、グループ経済圏の強みを最大限に活かしながら、お客様へのクロスセル等を通じて、利便性の高い様々なサービスを提供していきます。

このように当社グループをとりまく経営環境はデジタル・トランスフォーメーションが加速する社会の中で、絶えず変化を続けており、当社グループにおいては恒常的な技術革新への対応や迅速・柔軟な経営判断等により、これらの変化に対応していく必要があります。

(注1) 出典:「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」(経済産業省)

(注2) 出典:「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表

       (令和6年度第2四半期(9月末))」(総務省)

 

 

② 経営戦略

当社グループは、楽天グループ会員を中心としたユーザーに対し、様々なサービスを提供するビジネスモデル楽天エコシステムを構築し、拡大することを基本的事業戦略としています。当社グループが保有するメンバーシップ、データ及びブランドを結集したビジネス展開による楽天エコシステムの拡大により、国内外の会員がEC、フィンテック、デジタルコンテンツ、携帯キャリア事業等の複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果を創出し、グループ収益の最大化を目指します。

加えて、ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて2021年に当社グループのサステナビリティ戦略(優先的に取り組むESG課題)を改訂し、「事業基盤」、「従業員と共に成長」、「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」、「グローバルな課題への取り組み」の4つの分野を特定しました。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

特に「事業基盤」である、倫理的な事業慣行、情報セキュリティとプライバシー、製品サービスの品質は、当社グループにとって従来より重要性が高く、強固な管理・取組体制がある課題と捉えています。重点分野である「従業員と共に成長」、「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」及び「グローバルな課題への取り組み」には様々なESG課題が含まれます。具体的には、従業員のダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンや持続可能な生産と消費、気候変動等の課題に取り組んでいます。こうした取組を通じ、国内及び進出先国・地域の活性化、日本及び世界経済の発展に貢献し、ステークホルダーの皆様から信頼され続ける企業を目指します。

 

(4) 優先的に対処すべき課題

「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」企業グループとして、事業環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長に向けた仕組みを構築することが、当社グループの対処すべき課題です。長期にわたる持続的な成長により、当社グループの企業価値・株主価値の最大化を図るとともに、社会全体に便益をもたらすグローバル イノベーション カンパニーであり続けることを目指します。

 

① 事業戦略

当社グループが保有するメンバーシップ、データ及びブランドを核とする楽天エコシステムにおいて、国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果の創出及びグループ全体の価値最大化を目指し、また、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI等の先進的技術を活用したサービスの開発及び展開を進めています。

EC及び旅行予約をはじめとしたインターネットサービスにおいては、新規顧客の獲得、クロスユースの促進、自治体や地域事業者との連携を深化させたサービス開発及び地域経済活性化等に取り組むとともに、データやAI等の活用を通じた新しい市場の創造により、流通総額及び売上収益の成長を目指します。

クレジットカード関連サービス、銀行サービス、証券サービス、保険サービス、ペイメントサービス等を提供するフィンテックにおいては、各サービスにおける顧客基盤及び取扱高の拡大を目指します。また、政府によるキャッシュレス普及が推進されている中、QRコード・バーコード決済、電子マネー、ポイント等を含む総合的なキャッシュレス決済の推進に向け、決済サービス導入箇所の拡大や、アクティブユーザーを増やすための施策等に取り組んでいます。加えて、最大の強みであるクレジットカードを中心とした決済サービスプラットフォーム構想の実現に向けて引き続き注力し、楽天エコシステム内における送客効果を更に高めていきます。

モバイルにおいては、自社ネットワーク回線エリア及びパートナー回線の拡充に伴う99.9%の人口カバー率達成及び通信品質向上を通した顧客体験改善に加え、楽天モバイルの強みである競争力の高い料金プラン、楽天エコシステムを活用した魅力的なマーケティング施策を打ち出していくとともに、当社グループと取引のある全国の法人企業や自治体等に対する提案を通じ更なる契約者獲得を進めます。加えて、2024年6月に商用サービスを開始した700MHz帯域(プラチナバンド)の展開を順次拡大させることで、より高品質なネットワーク環境を提供し、契約者獲得のペース加速に繋げるとともに、モバイル事業における早期の黒字化を目指します。また、通信事業者におけるネットワーク機器の構成を刷新する取組や基地局のオープン化がグローバルで進む中、革新的なモバイルネットワーク技術を用いた通信プラットフォーム等を提供している楽天シンフォニーにおいては、日本国内において最新のインフラを構築した実績に基づき、的確に商機を捉えながらグローバル展開を進めていきます。

こうした個々のビジネスの成長や事業間シナジーの最大限の追求に加え、当社グループが持つメンバーシップやAIの活用による革新的で効率的なマーケティング手法の確立、グループシナジーを生かした広告事業の活用、さらに国内外におけるブランド認知度、価値の向上等により、今後も楽天エコシステムを国内のみならずグローバルでも拡大していきたいと考えています。このためにはグローバル経営を一層強化する必要があり、経営資源配分の最適化を図るための事業ポートフォリオの見直し・強化を行うほか、AIを活用した生産性・事業効率の向上等にも力を入れていきます。

 

② 経営体制

当社グループは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことを経営の基本理念としています。ユーザー及び取引先企業へ満足度の高いサービスを提供するとともに、多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていきます。その実践のために、コーポレート・ガバナンスの徹底を最重要課題の一つと位置づけ、様々な施策を講じています。

当社は、経営の透明性を高め、適正性・効率性・公正性・健全性を実現するため、独立性の高い監査役が監査機能を担う監査役会設置会社の形態を採用しており、経営の監査を行う監査役会は、社外監査役が過半数を占める構成となっています。また、当社は、経営の監督と業務執行の分離を図るため執行役員制を導入しており、取締役会は経営の意思決定及び監督機能を担い、執行役員が業務執行機能を担うこととしています。

当社の取締役会においては、独立性が高く多様な分野の専門家である社外取締役を中心として客観的な視点から業務執行の監督を行うとともに、経営に関する多角的な議論を自由闊達に行っています。さらに取締役会とは別に、社外役員含む全ての役員が原則出席するグループ経営戦略等に関する会議を開催し、短期的な課題や取締役会審議事項に捉われない中長期的視野に立った議論も行うことで、コーポレート・ガバナンスの実効性を高めています。

加えて、業務執行における機動性の確保、アカウンタビリティ(説明責任)の明確化を実現するために社内カンパニー制を導入しています。

当社グループでは、今後もこうした取組を通じて、迅速な経営判断を可能にし、より実効性の高いガバナンス機能を有する経営体制を構築していきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

1. サステナビリティ全般

当社グループは「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションに基づき、これまで歩んできました。現在のエコシステムに表れているように事業は多角化しましたが、社会課題の解決のためにイノベーションの創出に挑むという姿勢は変わりません。サステナビリティ戦略の遂行は、展開する事業の持続的な発展を支えるだけでなく、当社グループのミッションを体現するものでもあります。

 

(1) ガバナンス

サステナビリティのガバナンスを強化し、各重点分野に関する取組の実施を統括することを目的に、国内外の経営陣で構成される「楽天グループサステナビリティ委員会」を2021年に設立し、年2回の頻度で開催しています。グループサステナビリティ委員会では当社グループにとっての重要課題に対し、ステークホルダーの期待やベストプラクティスの共有、戦略や目標設定、イニシアチブへの参画等について、経営レベルの意思決定を行います。また、環境、人権、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンは長期的かつ組織横断的な議論が必要な課題であることを踏まえ、それぞれに特化した分科会を設置し、グループサステナビリティ委員会へ活動状況を報告しています。

監督体制としては、取締役会が本社のサステナビリティ部やグループサステナビリティ委員会から重要事項に関する提案を受け、これを審議するほか、定期的な活動報告を受けることでサステナビリティの推進状況を確認しています。また、これらの内容は、社内の主要な経営層で構成されるコーポレート経営会議にも適宜報告されています。

 


 

全社的に明確なコミットメントやアクションが必要なESG課題については、グループ方針として、「グループサステナビリティインストラクション」を定めています。また、取組の進捗状況を、当社ウェブサイト、統合報告書、株主総会等の媒体を通じて定期的に報告しています。

 

 

(2) リスク管理

当社グループは急速に変わるリスク環境に適応するため、組織全体に影響するあらゆるリスクを統合的に把握し、管理する全社リスクマネジメント手法である統合的リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management、以下「ERM」)に取り組んでいます。サステナビリティに関するリスクもERMに則って、リスクの特定・評価、重要性に応じた対応策の策定と実行、その結果のモニタリングに取り組んでいます。

 

(3) 戦略

サステナビリティは今後の当社グループの発展を支える柱の一つです。ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて2021年に当社グループのサステナビリティ戦略(優先的に取り組むESG課題)を改訂し、サステナビリティを推進していく上で重要な「事業基盤」と、優先的に取り組む3つの重点分野「従業員と共に成長」、「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」、「グローバルな課題への取り組み」を特定しました。また、2024年には取締役会の承認のもと重点分野の各課題に長期的な目標を設定し、これに沿ってグループ一丸となって取組を進めています。

 


 

 

・各重点分野における目標

「従業員とともに成長」

ESG課題

ビジョン

指標と目標

 

2024

2025

2030

ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

競争力の源泉である多様な個人が、能力を最大限発揮できるよう後押し

女性管理職比率*

33%

33%

36%

人材の採用・育成・定着

多様なビジネスにおける様々な成長機会の付与を通じて、個人の成長・活躍を促進

エンゲージメント度

83pt

84pt

87pt

責任ある労働慣行

会社と個人が仕事・職場環境・キャリア等について率直に対話することで、より強い組織基盤を構築

コミュニケーション充実度

94pt

97pt

98pt

安全な労働環境と従業員の健康

個人が高い成果を出し続けるために、心身共に良好な状態、誰もがチームの中で最大限力を発揮できる職場環境を実現

ウェルビーイング度

52pt

53pt

58pt

 

*  対象は楽天グループ株式会社

 

「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」

ESG課題

ビジョン

指標と目標

 

2024

2025

2030

持続可能な生産と消費

サプライヤーとの良好な取引関係構築を通じた、環境や人権に悪影響を与えない持続可能なサプライチェーンの実現

説明会/勉強会に参加するサプライヤーの割合

53%

80%

90%

自己評価アンケートに回答するサプライヤーの割合

59%

80%

100%

高リスクサプライヤー*1の比率

10%

前年比で比率を削減

パートナーの持続可能な取り組みを支援(仮)

持続可能なパートナーの数(仮)

検討中

責任ある広告・マーケティング・機能表示

デジタルタッチポイントのアクセシビリティの向上

“WCAG AA”に適合するデジタルタッチポイントの割合

追跡システムを開発中

70%*2

100%

アクセシビリティに関するEラーニングの受講率および理解

96%

100%

100%

楽天の製品・サービスにおける公正で信頼性の高いコンテンツの提供

公正かつ信頼性の高いコンテンツ制作に関する社内ガイドラインを、関連する外部基準に沿って策定

達成済み

公正で信頼性の高いコンテンツ提供に関するEラーニングの受講率と理解度

97%

70%

100%

インターネット・ガバナンスと表現の自由

責任あるAIサービスとガバナンス確立によってAIによる社会変革を加速させる

AI倫理憲章の策定:2024年 達成

責任あるAIのガバナンス体制の構築:2025年 

 

*1 自己評価アンケートの回答結果や取引状況等から当社サプライチェーンにとって重大な影響を与える可能性が排除できないと分析されるサプライヤー

*2 優先度の高い点については、2025年内に100%達成を目指す

 

 

「グローバルな課題への取り組み」

ESG課題

ビジョン

指標と目標

 

2024

2025

2030

気候変動とエネルギー

ステークホルダーと環境課題に対する認識を共有し、環境に良い選択が自然にできる未来を実現する

Scope 1,2における温室効果ガス排出量

カーボンニュートラル*1達成

・2032年までに2022年から排出量を99.7%削減*2

Scope 3における温室効果ガス排出量

・2032年までに2022年から30.0%削減*2

・2032年までに販売電力量あたりの排出量を2022年から76.8%削減*2

再生可能エネルギー導入率

100%

100%

100%

対象:楽天グループ株式会社

リスク管理・危機管理

環境変化やインシデントの適時把握によるリスクの未然防止・再発防止の実施、及び緊急事態にも迅速に対応できる体制を整備し、経営目標の達成に寄与する

各組織(カンパニー/サービス/事業)における、インシデント管理体制担当者の設置

76%

(グローバル)

 

100%

(グローバル)

インシデント管理体制の構築

80%

(国内)

100%

(国内)

100%

(グローバル)

インシデント管理に関する従業員研修

100%

(国内)

100%

(国内)

100%

(グローバル)

イノベーションと実業家精神

投資、インキュベーション、M&A等を通じて社会課題の解決とステークホルダーの価値創造に貢献する

投資やM&A等の意思決定の判断軸として、サステナビリティに関する基準を導入する

2024年:段階的な導入とグループ全体の投資案件における導入を達成

2025年以降:-

サステナビリティに関する基準の定期的な見直し

必要に応じて実施

 

*1 GHGプロトコルに沿い算出、第三者保証取得のScope 1,2排出量が対象。各施策実施後も発生する排出量はオフセットを実施

*2 本目標は、国連グローバル・コンパクト、CDP(気候変動対策などに取り組む国際NGO)、WRI(世界資源研究所)およびWWF(世界自然保護基金)が共同で設立した国際的気候変動イニシアチブの「SBTi (Science Based Targets initiative)」によって、科学的根拠に基づいているとしてSBT認定を取得済み

 

2. 重要なサステナビリティ項目

マテリアリティの各重点分野と事業基盤より、課題への取組を紹介します。

 

(1) 従業員と共に成長(人的資本)

当社グループは従業員を大切にし、一人ひとりが自分らしく働ける制度や環境づくりを推進しています。「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションの実現に向けて、優秀な人材の採用、キャリアアップや成長の後押し、多様な従業員にとって働きやすい職場づくり等、全ての従業員がいきいきと活躍できるよう取り組んでいます。

 

① ガバナンス

従業員と共に成長する組織基盤作りのため、グループCOO (Group Chief Operating Officer)を委員長とする「人材開発委員会」を設置し、採用、育成、評価、報酬等の人事課題や具体的な施策について協議しています。また、多様性に関する課題や機会については、「グループサステナビリティ委員会」のもとにある「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン分科会」で議論・検討を重ねています。

 

② リスク管理

人的資本に関するリスクは、「3 事業等のリスク 3 事業運営全般リスク (7) 無形資産に関するリスク ③ 人的資源に関するリスク」をご参照ください。

 

 

③ 戦略

1) 人材マネジメント

当社グループは「採用」、「育成」、「定着」の3つを柱とした「Back to Basics Project」を2017年より実施し、「勝てる人材、勝てるチームを作る」という人事の基本目標に立ち返ることで、強い組織基盤作りに取り組んでいます。

 

・採用

求職者との相互理解の促進が優秀な人材の採用への鍵と捉え、オンラインとオフラインを融合したコミュニケーションの機会を大切にしています。当社グループの採用ウェブページでは勤務する日常をイメージできるよう事業活動や職場環境、キャリア開発に関する従業員のインタビューを掲載しています。また、当社グループの様々な仕事や企業文化を体感できる「インターンシッププログラム」や、求職中のポジションにマッチする知人や友人を従業員から紹介・推薦する「社員紹介プログラム」を実施しています。また、就活生向けの「Rakuten Career Conference」も毎年開催しており、2024年は約2,000人が参加しました。

 

・育成

当社グループは、一人ひとりの力が最大限発揮される「学び続ける組織(Learning Organization)」となることを目指しています。技術的なスキルはもちろん、自己啓発サポートや包括的なビジネススキルの習得を通じて、従業員のキャリア開発を後押しします。また、現場でのコミュニケーションを強化し、組織としての成果を最大化するため、チームメンバーとマネージャーが1対1で行う1on1ミーティングも定期的に実施しています。チームメンバーとマネージャー間の信頼関係の強化につながるだけでなく、相互のフィードバックを通じてお互いが学びを得られるため、例年アンケート結果が90%以上の満足度を維持する効果的な仕組みとなっています。

 

研修制度の一例

オンボーディング

新入社員(新卒・中途)、新任マネージャーを対象に、組織やチーム、その役割にいち早くなじめるよう必要な情報や知識を提供

ビジネス基礎

クリティカルシンキング、リーダーシップ、問題解決手法等、ビジネスパーソンに必要なスキルを学ぶ

グレード・階層別

楽天主義に基づく行動実践の方法や、効果的な1on1ミーティング研修等、組織でより大きな裁量を持ち活躍できるスキルを習得するための研修を提供

データ分析&AI

生成AIのプロンプトの書き方、データ分析の基礎を学ぶ

ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

「無意識のバイアス」に関する研修や、異なるバックグラウンドを持つ従業員同士が仕事を進める上で必要な考え方を学ぶ

文化&言語

TOEICサポートプログラムや異文化コミュニケーション、インクルーシブリーダーシップ等、グローバルビジネスに必要なスキルとマインドを学ぶ

自己啓発

オンライン学習講座や楽天デジタルライブラリーを通して自己学習を促進する機会を提供

 

 

・定着

近年、多様なキャリアの選択肢が増えたことや、働き方改革等の社会的変化に伴い、個人の労働観が大きく変化しています。このような中で、従業員が一つの組織で長くキャリアを築きたいと感じるかどうかには、様々な要因が影響しています。当社グループでは、従業員の満足度を高め、キャリアアップを奨励するために、公平で適切な報酬と福利厚生、柔軟なワークスタイル、快適かつ魅力的・健康的な職場を整備しています。また、新卒入社社員に対しては、入社後3年までのフォローアップ研修の内容や時期を見直すことで、楽天でのキャリア形成及び人材の定着を図っています。様々な取組の結果、当社の従業員のエンゲージメント度は83ptとなっています。

 

 

2) ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(Diversity, Equity and Inclusion、以下「DEI」)

人種・国籍・性別・婚姻歴・子女の有無・宗教や政治思想・年齢・障がいの有無・性的指向・性自認等にかかわらず、全ての人に機会を提供する文化を醸成しています。世界中の従業員一人ひとりの多様な個性と価値観を尊重し、誰もが能力を最大限に発揮できる環境づくりにも努めています。また、グローバル展開を進める中、社内公用語を英語にし、世界中の優秀な人材の採用・登用が更に加速したことで、世界を舞台にしたビジネス展開の原動力となっています。

従業員一人ひとりの違いに配慮し適切な職場環境を整えることも重要です。子育て世代に対しては、キャリアセッションや産休前後セミナー等を実施しています。また、復職後の支援として搾乳室や託児所を設置しています。文化や宗教等異なるニーズを持つ従業員には、ハラルメニューの提供及び祈禱室を設置し、障がいの有無にかかわらず快適に働けるようユニバーサルデザインを取り入れたオフィス環境を整備しています。また、女性管理職比率を高めるため、2024年度は社内外で活躍する女性リーダーたちを招いてリーダーシップ、キャリア、ライフステージに関するセミナーを行い、登壇者の経験から従業員がより高いパフォーマンスを発揮するためのマインドセットやスキルを学んでもらいました。

 


* データ範囲:従業員の国籍数は当社グループ。障がい者雇用率は、楽天コミュニケーションズ(株)、楽天モバイル(株)、楽天シンフォニー(株)、楽天カスタマーサービス(株)及び楽天ソシオビジネス(株)。その他は当社。
データ抽出時期:楽天におけるダイバーシティに関するデータは2024年12月31日時点のもの。障がい者雇用率のみ2025年1月1日時点のもの。

 

従業員の多様性を最大限に生かすためには、世界共通言語を持つだけではなく、全ての従業員が企業文化の根底にある価値観を理解し、共有することが必要不可欠です。当社ではグループの価値観・行動指針である「楽天主義」を理解し実践できるよう、全従業員を対象とする「楽天主義ワークショップ」を開催しています。このワークショップには全従業員の52.1%にあたる17,000名以上がこれまでに参加しています(2025年1月1日時点)。2023年から比較し、ワークショップへの参加率は0.8ポイント改善しました。

 

 

3) 健康・ウェルネス

安全で健やかな職場環境を醸成することは、従業員の身を守るだけでなく、仕事に対する満足度を高め、優秀な人材の獲得・定着につながるため、従業員の心身の健康の増進や、健康的に働き続けられる組織風土づくりを目指しています。「ウェルビーイングサーベイ(調査)」を定期的に実施しており、従業員の心身の健康状態や課題を把握した上で、ウェルネス推進活動の効果測定をしています。これまでの調査結果から、個人のウェルビーイングにおいて、メンタルウェルネスが大きな影響をもつことが確認されています。2024年度は、従業員のメンタルヘルスケア向上を目的に、従業員がメンタルヘルスの観点での不安等を相談できる専門窓口として公認心理師(メンタルサポーター)を配置しました。また、新卒入社社員向けのメンタルヘルス研修や職場内での円滑なコミュニケーション方法や自己認知の歪みについて学ぶセミナー、自己理解を深めるためのワークショップ等を開催し、従業員一人ひとりが心身ともに健やかで前向きに働ける環境の構築を図っています。

 

④ 指標及び目標

当社はサステナビリティ戦略における重点分野の一つに「従業員と共に成長」を設定し、人的資本に関して人材マネジメント、DEI、健康・ウェルネスの観点から長期的な目標を設けています。指標及び目標と2024年の実績は以下のとおりです。

 

ESG課題

指標

2024年実績

2025年目標

2030年目標

ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

女性管理職比率*1

33

33

36%

人材の採用・育成・定着

エンゲージメント度

83pt

84pt

87pt

責任ある労働慣行

コミュニケーション充実度

94pt

97pt

98pt

安全な労働環境と従業員の健康

ウェルビーイング度

52pt

53pt

58pt

 

*1 対象は楽天グループ株式会社

 

(2) 持続可能なプラットフォームとサービスの提供(持続可能な生産と消費)

当社グループは持続可能なプラットフォームとサービスを提供するため、サプライヤーとともにサプライチェーンにおけるネガティブなインパクトを低減させる仕組みが重要だと考えています。以下では、持続可能な社会の実現に向けた、当社グループのサステナブル調達活動についてご紹介します。

 

① ガバナンス

当社グループはサプライヤーとサステナビリティに関する共通の認識を深めるために、法令・社会規範の遵守、汚職・賄賂等の禁止、公平・公正な取引の推進、環境への配慮等について「楽天グループサステナブル調達インストラクション(以下、サステナブル調達インストラクション)」及び「楽天グループサステナブル調達行動規範(以下、サステナブル調達行動規範)」を規定しています。また、重要なサプライヤーとして特定したサプライヤーにはこれらの遵守をお願いしています。さらに、質問票を通じたサプライヤーへの実態調査とモニタリングによって実際の取組を確認しているほか、相談窓口として「サプライヤーホットライン」を設置し、サステナブル調達インストラクション及びサステナブル調達行動規範に対する違反又はその恐れがある行為を把握できる体制を構築しています。

また、国内外の経営陣で構成されるグループ横断的なサステナビリティ委員会下の「人権分科会」では、サステナブル調達活動について報告・議論し、サステナビリティ委員会へもこれらの取組を定期的に報告しています。

 

 

② リスク管理

当社グループは前述のとおり、サステナブル調達インストラクション及びサステナブル調達行動規範の遵守を重要サプライヤーにお願いしています。

しかしながら、サプライヤーと当社グループとの業務の中での故意又は過失による法令違反、不正行為、人権侵害等が発生する可能性を完全には排除できないため、万が一これらの事態が発生した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、サプライヤーは当社グループのサービス・商品を取り扱っていることから、上述のような事象により当該サプライヤーの信頼性や企業イメージに悪影響が出た場合に、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。

このため、自己評価アンケートを通じたサプライヤーへの実態調査とモニタリングによるサステナブル調達活動に取り組んでいます。

 

③ 戦略

当社グループのサービスや商品に携わるサプライヤーは多岐にわたります。当社グループは、以下を重要サプライヤーとして定め、段階的な働きかけをしています。

 

<重要な製品・事業のサプライヤー>

・楽天のロゴや公式キャラクターを使用した製品のサプライヤー

・楽天にとって戦略的に重要な事業のサプライヤー

 

<取引量の多いサプライヤー>

一定の金額以上の取引があるサプライヤー

 

<リスクの高い業種・業務に携わるサプライヤー>

環境、社会、倫理的リスクの高い産業*1に携わるサプライヤー

 

*1 紛争鉱物や社会的な保護及び対策が不十分な国に関わる産業及び事業

 

1) サステナブル調達の方針の浸透

サステナブル調達インストラクション及びサステナブル調達行動規範の周知と理解促進のため、重要サプライヤーを対象としたオンライン説明会を開催し、これらの方針の遵守並びに誓約書への署名をお願いしています。また、調達側である当社グループの従業員に対しても前述のサステナブル調達活動に関するEラーニング研修を実施しています。

 

2) サプライヤー調査とモニタリング

サプライチェーンにおける問題発生の未然防止及び課題の把握と解決を進めるため、定期的にサプライヤーへ自己評価アンケートを送り、必要に応じて監査を実施する等の調査やモニタリングを行っています。さらに、調査の結果を受け、当社グループがサプライヤーに期待する改善アクションの提示を含めたフィードバックを提供しています。

 

 

④ 指標及び目標

当社グループはサステナブル調達の方針の周知とサプライチェーンにおける課題把握を重要と考え、以下を指標としています。

 

指標

2024年度

実績

目標

2025年

2030年

サステナブル調達に関する説明会/勉強会に参加したサプライヤーの割合

53%

80%

90%

自己評価アンケートに回答するサプライヤーの割合

59%

80%

100%

高リスクサプライヤー*の割合

10%

前年比で比率を削減

 

* 自己評価アンケートの回答結果や取引状況等から当社サプライチェーンにとって重大な影響を与える可能性が排除できないと分析されるサプライヤー

 

(3) グローバルな課題への取り組み(気候変動)

当社グループは、脱炭素社会の実現に向けたグローバル社会からの要請の更なる高まりに対応し、2019年度より「TCFD(気候関連財務開示に関するタスクフォース)」や「RE100(「Renewable Electricity 100%」)」等の国際イニシアチブに賛同しています。事業活動における温室効果ガス排出量の削減はもちろん、テクノロジーとイノベーションを活かし環境に配慮したサービスの提供を通して、ステークホルダーと環境課題に対する認識を共有し、環境に良い選択が自然にできる未来の実現を目指します。

また、当社グループは気候変動対策を含む、環境保全の推進に向けた方針・体制整備等の基本指針となる「環境ポリシー」を定めています。当該ポリシーには気候変動対策のほか、資源管理に向けた取組や生物多様性に関する基本方針、組織体制について定めています。

(注) 環境ポリシーを含む当社グループの取組は当社ウェブサイトもご参照ください。

https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/library/

 

以降はTCFDフレームワークに準拠して記載しています。

 

① ガバナンス

2022年1月に、環境問題へ対応するための戦略を立案・実行する環境経営推進部を設立し、グループ横断での推進体制や報告ラインを整備しました。気候変動に関する課題はグループCOO(Group Chief Operating Officer)がマネジメントしており、グループサステナビリティ委員会のもとに、環境分科会を設置し、四半期毎に会議を開催しています。環境経営推進部及び環境分科会は、様々な関連チーム・組織・国際的イニシアチブと綿密に連携し、楽天の全事業部門に対して自組織が環境に与える影響に責任を持つよう働きかけています。

 

② リスク管理

気候変動に関するリスクの識別・評価は、環境経営推進部が行っています。リスク管理は、「1. サステナビリティ全般 (2) リスク管理」をご参照ください。

 

③ 戦略

当社グループは、気候変動に関連する移行リスク(脱炭素社会への移行に関連したリスク)、物理リスク(気候変動の物理的影響に関連したリスク)、機会を特定するため、楽天グループ全体を対象にシナリオ分析を実施しました。

 

 

設定したシナリオと参照資料

シナリオ

参照資料

急速に脱炭素社会が実現するシナリオ

(1.5℃シナリオ)

国際エネルギー機関(IEA)のNet Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)

物理的影響が顕在化するシナリオ

(4℃シナリオ)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書の

Representative Concentration Pathways (RCP8.5)

 

 

TCFD提言に基づくリスクと機会の分類

1.5シナリオ

区分

種別

主なリスク・機会

時間軸

影響度

対応策・取り組み

移行リスク

政策・

法規制

環境関連指標に関する報告義務強化

短~長

・環境データ収集に係る社内体制の見直し、強化

カーボンプライシング(炭素税等)導入

中~長

・エネルギー効率改善/再生可能エネルギー導入によるGHG排出量削減の取り組み強化

市場

脱炭素製品・サービスの開発・提供遅延による売上機会喪失

中~長

・環境配慮型サービスの取り組み強化

・環境意識向上に資するキャンペーンの実施促進

評判

気候変動対策が不十分とみなされた場合の売上減少、評価低下

中~長

・ESG関連情報開示の積極化

・GHG排出量削減の取り組み強化

機会

資源の

効率性

気候変動対応に向けた新技術導入の拡大

短~長

・人工知能(AI)技術を活用した資源配分の最適化に向けた取り組み強化

エネルギー源

炭素価格の上昇を受けた再生可能エネルギー利用増加

短~長

・RE100加盟を通じた再生可能エネルギーの利用促進

製品/

サービス

環境意識の高まりによる顧客の環境配慮行動増加

短~長

・GHG排出量削減の取り組み強化を通じたブランドイメージ向上

・社外への情報発信強化

市場

公共セクターのインセンティブ増加

短~長

・自治体等の公的プロジェクト参画によるレピュテーション向上

 

 

4℃シナリオ

区分

種別

主なリスク

時間軸

影響度

対応策・取り組み

物理リスク

急性

異常気象(干ばつ、洪水、台風、ハリケーン等)発生による事業被害増加

短~長

・BCP(事業継続計画)の見直し、強化

・防災対策強化

慢性

気温上昇によるデータセンター機器冷却用の電力コスト増加

中~長

・データセンターにおけるエネルギー効率向上の取り組み強化

・エネルギー効率向上に向けた研究開発促進

 

 

時間軸と影響度に関する定義

時間軸

短期

直近3年

中期

-2030年

長期

2030年以降

影響度
(リスク)

ほとんど影響しない

サービス・業務遅延

サービス・業務一時停止

影響度
(機会)

ほとんど影響しない

一部のサービス・業務に影響

グループ横断的に影響

 

 

 

④ 指標及び目標

当社グループは、脱炭素社会の実現に向け、2023年度の連結子会社を含めたグループ全体の事業活動における温室効果ガス排出量*1を実質ゼロにする、カーボンニュートラル*2を達成しました。

また、2024年以降の温室効果ガス排出量の削減目標は以下のとおり定めています。本目標は、国際的気候変動イニシアチブの「SBTi (Science Based Targets initiative)」によって、パリ協定の目標に合致する科学的根拠に基づいているとして、SBT認定を取得しています。

(注) 当社グループの気候変動に関する指標及び目標は当社ウェブサイトもご参照ください。

https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/climate/

 

スコープごとの目標(SBT目標)

対象項目

目標

Scope 1排出量

自らによる温室効果ガスの直接排出量

・2032年までに排出量を2022年から99.7%削減

Scope 2排出量

他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量

Scope 3排出量

Scope 1、Scope 2以外の間接排出量

・2032年までに排出量を2022年から30.0%削減
・2032年までに販売電力量あたりの排出量を2022年から76.8%削減

 

 

なお、2021年より楽天グループ株式会社単体の事業活動に使用する電力においては、再生可能エネルギーの導入率100%*3を達成しており、今後も継続していきます。各指標の実績は、毎年6月頃にコーポレートページに掲載のESGデータブックにおいて更新する予定です。

 

*1 温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準である「GHGプロトコル」に沿って算出・第三者保証を取得した、Scope 1排出量(自らによる温室効果ガスの直接排出量)とScope 2排出量(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量)の合計

*2 温室効果ガス排出量削減に向け、グループ横断で省エネルギー化・再生可能エネルギー導入に取り組み、その上で削減しきれない温室効果ガス発生量については、削減活動に投資するカーボン・オフセットを実施し相殺しています。

*3 各社状況に応じ、電力の再エネ属性を証明する「FIT非化石証書」を利用し、実質100%再生可能エネルギー化達成。

 

(4) 事業基盤(情報セキュリティとプライバシー)

当社グループは、情報セキュリティの確保を、経営上の最重要課題の一つに位置づけています。お客様の個人情報をはじめとする各種情報と、ソフトウエア等の情報システムから成る情報資産を適切に保護・管理し、情報セキュリティの継続的な維持・向上に努めています。

また、プライバシーは、テクノロジーの利用、イノベーションの促進、ステークホルダーの信頼獲得等、持続可能な「楽天エコシステム」の構築に欠かせない重要な要素であり、単なるコンプライアンス上の問題に限りません。全てのお客様に安心してサービスをご利用いただけるよう、当社グループはプライバシー対策の実施、強化、徹底に努めます。

 

① ガバナンス

ファンクションCISOを委員長とする楽天グループ情報セキュリティ&プライバシー委員会を毎月開催し、情報セキュリティ及びプライバシーの要求事項等に準拠した体制を整えています。本委員会での主な協議事項は、経営会議や取締役会への報告及び、各グループ会社、事業部門へと展開されます

情報セキュリティに関しては、リージョナルCISO、カンパニーCISO、グループ各社のCISOで構成されるCISOコミュニティを設け、グループ横断での情報セキュリティに関する議論や情報共有を行っています。

また、当社グループ内のプライバシーの状況を監督、モニタリングする専門の職位として、グローバルプライバシーマネージャーを任命しています。グローバルプライバシーマネージャーは、リージョナルプライバシーオフィサーや各社で任命されたローカルプライバシーオフィサーと連携することにより、強固なプライバシーネットワークを構築し、当社グループに適用されるコンプライアンスの遵守状況とリスクの有無をモニタリングしています。

 

② リスク管理

当社グループは、大切なユーザーの個人情報をはじめとする各種情報と、ソフトウエア等の情報システムから成る情報資産を適切に保護、管理し、情報セキュリティの維持と継続的な向上に努めています。

 

1) 個人情報に関するリスク

当社グループは、『楽天市場』に代表される、当社グループが提供する一般ユーザー向けのサービスの利用にあたり、ユーザーに「楽天ID」を付与し、当社グループがそのデータを保有して、国内外において多岐にわたる事業展開をしています。当社グループは、「楽天ID」をユーザーの氏名及び住所と結びつけられた個人情報として取り扱っており、当社グループの各種ハードウエア、ソフトウエア等の情報システムからなる情報資産とともに、事業展開をする上で不可欠な資産であると認識しています。したがって、当社グループでは、全てのユーザーが安心して当社グループのサービスを利用できることを最優先とし、情報セキュリティ体制及び個人情報の保護の観点から、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を確立するとともに、各種国際基準や展開する該当国の個人情報に関する各種法令への準拠を徹底しています。

しかしながら、各国の個人情報管理に関する法令、グローバルなデータの移管に関する法令、情報セキュリティに関する法令等、プライバシー関連法令等はますます複雑化しています。これらに適時適切に対応できず、当該法令等に違反した場合には、行政機関による制裁金・課徴金、業務停止命令等を受ける場合があるほか、レピュテーションリスクの発生、訴訟等を含む紛争に発展する可能性があります。

上記リスクが顕在化した場合には、当社グループに対する社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反、補償費用の発生等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、プライバシー関連法令及び企業の自主的な規制強化への対応が円滑かつ適切に行えない場合には、当社グループのデータ活用ビジネス及び収益に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクの発生を回避するため、当社グループでは前述の取組に加え、社内規程の整備、プライバシー関連法令の周知及び社内教育を実施しています。また、連絡や相談のための体制を確立することで、違反リスクの早期発見等に努めるとともに、関係部署とプライバシー担当部門が緊密な連携を図ることで、法令等の内容を情報セキュリティシステム及び業務運営に迅速かつ的確に適用するように努めています。

 

2) サイバーセキュリティに関するリスク

当社グループのサービスの多くは、インターネットを通じて提供されています。サービス利用のために提供しているネットワーク若しくはコンピュータシステム上のハードウエア又はソフトウエアの不具合、欠陥、コンピュータウイルス、フィッシングメール、外部からの不正な手段による当社グループのコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為等により、情報システムの可用性又は情報の機密性及び完全性を確保できず、サービスの不正利用、重要なデータの消失及び不正取得等が発生する可能性があります。

これらのリスク発生の回避又は低減のため、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的にも各種対応策を講じていますが、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループに対する社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招くのみならず、損害賠償請求等がなされる可能性のほか、監督官庁から行政処分等を受ける可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3) 営業秘密等の情報漏洩に関するリスク

当社グループは、役職員や業務委託先等の業務遂行上の不備、アクセス権等の悪用等により、当社グループにおける営業秘密等の情報が漏洩するリスクがあります。それにより漏洩した営業秘密等が外部の第三者に悪用、又は競合他社に利用された場合には、当社グループの収益機会が喪失する可能性があります。リスクの発生の回避又は低減のため、役職員や業務委託先等への教育、啓発活動を行うほか、管理体制を定め、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的な各種対策を講じています。しかしながら、営業秘密等の情報漏洩リスクが顕在化した場合には、当社グループに対する社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招くのみならず、損害賠償請求等がなされる可能性のほか、監督官庁から行政処分等を受ける可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 戦略

1) 情報セキュリティ

情報セキュリティ確保のため、以下の5つの方針を設け取り組んでいます。

1. 情報セキュリティ体制の構築

2. 情報資産の適切な管理

3. 情報セキュリティ確保のための規定等の策定

4. 法令・規範の順守

5. 継続的な改善

 

・国際基準への準拠

情報セキュリティマネジメントの国際規格であるISO/IEC 27001に基づく社内規程を定め、当社及びグループ会社に適用し、情報セキュリティの維持に努めています。現在、ISO/IEC 27001認証の適用範囲は、当社グループ全体で35社、全従業員が対象となり、継続的な拡大を目指しています。また、クレジットカードを含むペイメントカードを取り扱うビジネスにおいては、カード会員データのセキュリティに関する国際標準であるPCI DSS (Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠を徹底しています。

 

・情報セキュリティ教育

当社グループでは、全従業員を対象に情報セキュリティ教育を毎年実施しています。実際に発生したインシデントの事例等を交えて情報セキュリティの重要性への理解を深めることに加えて、受講者は社内規程の遵守を宣誓します。

 

・サイバーセキュリティの強化

セキュリティオペレーションセンター(SOC:Security Operations Center)やセキュリティ対策専門のチーム(Rakuten-CERT)の体制を整えてインシデントに備えているほか、サービス開発者へのセキュリティ教育、ソフトウエア開発プロセスへのセキュリティレビュー及び脆弱性検査と、開発プロセスの段階ごとにセキュリティに関する確認を組み込むことで、脆弱性を排したサービス開発体制を構築しています。

 

 

2) プライバシー

国内外のプライバシー法の遵守に加え、独自の運用基準を設けることで、法令要件を上回るプライバシー保護対策に取り組んでいます。全てのお客様に安心して楽天のサービスをご利用いただけるよう、「教育」、「透明性」、「信頼」に重点を置いています。

 

・国内関連法への準拠

2024年度には令和4年改正電気通信事業法への対応を行いました。加えて、一部のグループ会社は、日本工業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」に適合し、個人情報について適切な保護措置を講じる体制を整備している事業者として、外部機関から認定され、プライバシーマークの付与を受けています。

 

・拘束的企業準則(BCR)の導入

当社グループはGDPR(General Data Protection Regulation)に準拠することを目的として、楽天グループは内部のプライバシー行動規範である拘束的企業準則(Binding Corporate Rules:BCR)を導入し、欧州のデータ保護当局から正式な承認を得ています。BCRに準じたデータの取り扱いをすることによって、当社グループ全体で個人のプライバシーとデータの保護に取り組んでいます。

 

・ユーザーへの透明性の向上

当社グループのプライバシーへの取組や、関連情報を紹介する「プライバシーセンター」ページでは、グループ各社の個人情報保護方針、プライバシー保護やテクノロジーの理解に役立つ情報をお届けすることで、お客様自身にプライバシーについて考えていただく機会を提供しています。

 

・プライバシー教育

プライバシーの重要性を全従業員の共通意識として浸透させるために、プライバシー教育・啓発の専門チームを設け、グループの全従業員を対象とした年次の研修や入社時の研修に加え、国際的なデータ・プライバシーの日に合わせた啓発イベントを開催しています。

 

④ 指標及び目標

情報セキュリティとプライバシーに関する戦略を踏まえ、お客様が安心してサービスを利用できるような認証取得とサービスを提供する従業員への教育を重要と捉え、以下の指標の維持・改善を図っていきます。

 

指標

実績

ISO/IEC 27001 認証を取得したグループ会社の数

PCI DSS に準拠しているサービス

35社

41サービス

JIS Q 15001 プライバシーマーク認証を取得したグループ会社の数

33社

BCR(拘束的企業準則)を締結したグループ会社の数

72社

情報セキュリティに関する研修時間(2024年度情報セキュリティ教育)

対象者25,619名、49社

プライバシーに関する研修時間(全社員に対する Privacy Basics 研修)

対象者13,986名、25社

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、国内外において多岐にわたる事業展開をしており、これらの企業活動の遂行には様々なリスクが伴います。本項では当社グループのリスク管理体制・プロセスとともに、当社グループ事業の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると認識している主な事項及び投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しています。ただし、当社グループで発生しうる全てのリスクを網羅しているものではありません。当社グループの経営陣は、これらリスクの発生可能性の程度及び時期を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。しかしながら、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に与える影響並びにその対応策を合理的に予見することが困難である事項もあります。したがって、当社の有価証券に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容も合わせて、総合的かつ慎重に検討した上で行う必要があると考えています。

なお、以下の記載事項のうち将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

1 当社グループのリスク管理体制と取組

当社グループは、リスクを「経営目標の達成に影響を及ぼしうる不確実性」と定義し、経営目標達成の確度を向上させるために統合的リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)を導入し、リスクを特定、評価し、的確な経営判断や事業運営につながるようリスク管理体制及びプロセスを整備しています。当社グループの各部門ではグループ規程に従い、リスクの適切な把握・特定、グループ共通の基準での評価、重要性に応じた対応計画の策定と実行、その状況のモニタリングというサイクルを確立しています。

また、当社グループ全体でリスクを管理するため、下図のようなグループのリスク管理体制を構築しています。当社グループの経営層が認識するリスクを「トップダウンリスク」、当社グループの各事業又はグループ会社が認識するリスクを「ボトムアップリスク」、当社グループ事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクを「グループトップリスク」等リスクの区分を設け、網羅的なリスクの洗い出し及び管理となるよう取組を進めています。中でもグループトップリスクは、その対策状況を年4回開催されるグループリスク・コンプライアンス委員会にて協議し、本委員会の主な協議事項は取締役会等重要会議体を通じて経営陣に報告し、協議しています。

 

<グループのリスク管理体制及びリスク管理プロセス>


 

 

<グループトップリスクの特定プロセス>


 

2 経営環境・戦略に関するリスク

 (1) マクロ経済環境に関するリスク

当社グループは、国内外において多岐にわたる事業展開をしており、当社グループの業績は国内の景気動向とともに、海外諸国の経済動向、社会情勢、地政学的リスク等に影響されます。マクロ経済環境について注視しながら、事業展開等を進めていく方針ですが、今後の内外経済環境の先行きについては引き続き不透明な状況にあり、世界経済の低迷、社会情勢の混乱、国際社会における国家間の対立、地域紛争や武力行使、国家間の経済制裁等による輸出入・外資規制、諸規制変更や規制動向の変化等により、当社グループの事業活動に支障が生じ、サービス・商品の安定的な供給や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2) 競合環境

当社グループが展開するいずれの事業においても多数の競合事業者が存在しており、激しい競争関係にあると考えています。また、他業種の事業者等を含む新規参入者が新たな競合事業者となった場合には、より一層競争が熾烈化する可能性があります。

当社グループは、競合事業者の動向を注視しつつ、引き続き顧客ニーズ等への対応を図り、サービス拡大に結び付けていく方針ですが、これらの取組が期待どおりの効果を上げられず、サービスの競争力を失った場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3) 業界における技術変化等

当社グループが展開するいずれの事業においても技術分野における進歩及び変化が著しく、新しいサービス及び商品が頻繁に導入されています。

当社グループは、常に最新の技術動向及び市場動向の調査、技術的優位性の高いサービスの導入に向けた実証実験並びに他社との提携等を通して競争力を維持するための施策を講じています。しかしながら、何らかの要因により、当社グループにおいて当該変化等への対応が遅れた場合には、サービスの陳腐化、競争力の低下等が生じる可能性があります。また、対応可能な場合であったとしても、既存システム等の改良、新たなシステム等の開発による費用の増加が発生する可能性があり、これらの動向及び対応の巧拙によっては当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの事業運営の脅威となりうる技術が開発される可能性もあり、このような技術が広く一般に普及した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 経営体制・事業戦略に関するリスク

  ① 経営体制(コーポレート・ガバナンス)に関するリスク

当社グループは、イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントすることを経営の基本理念としています。ユーザー及び取引先企業へ満足度の高いサービスを提供するとともに、多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていきます。その実践のために、コーポレート・ガバナンスの徹底を最重要課題の一つと位置づけ、様々な施策を講じています。

当社は、経営の透明性を高め、適正性・効率性・公正性・健全性を実現するため、独立性の高い監査役が監査機能を担う監査役会設置会社の形態を採用しており、経営の監査を行う監査役会は社外監査役が過半数を占める構成となっています。また、当社は、経営の監督と業務執行の分離を図るため執行役員制を導入しており、取締役会は経営の意思決定及び監督機能を担い、執行役員が業務執行機能を担うこととしています。

当社の取締役会においては、独立性が高く多様な分野の専門家である社外取締役を中心として客観的な視点から業務執行の監督を行うとともに、経営に関する多角的な議論を自由闊達に行っています。さらに、取締役会とは別にグループ経営戦略等に関する会議を開催し、短期的な課題や取締役会審議事項に捉われない中長期的視野に立った議論も行うことで、コーポレート・ガバナンスの実効性を高めています。

加えて、業務執行における機動性の確保及びアカウンタビリティ(説明責任)の明確化を実現するために社内カンパニー制を導入しています。しかしながら、これらの経営体制を含む各施策から期待どおりの効果を得られずに、適時適切な経営の意思決定が行われない、又はコンプライアンス違反が生じるような場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 上場子会社との関係に関わるリスク

当社グループは、上場子会社を有していますが、上場子会社と経営基本契約を締結し、当社グループの基本理念である「楽天主義」、ガバナンスの基本的事項である「コアポリシー」及び取締役・使用人が遵守すべき基本的事項である「楽天グループ企業倫理憲章」を定めつつも、関連法令上の公益の観点から求められる経営の独立性及び上場子会社として求められる独立性を尊重すること、上場子会社が当社グループ以外からの取締役の登用を積極的に行う等ガバナンスに対する適切なチェックが働く体制を構築してきたことを尊重すること、上場子会社の人事権を尊重することを規定しています。

かかる状況の下、上場子会社の独立的経営及び総株主の利益に資する単独企業としての価値の向上のためには、上場子会社における意思決定は、常に当社グループの意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものになるとは限りません。また、双方の関係性が変容した場合や上場子会社の業況が悪化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ 事業戦略に関するリスク

当社グループは、保有するメンバーシップ、サービス利用に係る各種データ、「Rakuten」ブランドを核とする「楽天エコシステム」において、国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員一人当たりの生涯価値の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果の創出、ひいては当社グループ利益の最大化を目指すという事業戦略を掲げています。この事業戦略のもと、個々のビジネスの成長及び事業間シナジーの最大限の追求に加え、当社グループが持つメンバーシップ、データ及び「楽天ポイント」を使用したリワードプログラム等の活用を行っています。具体的には、1億以上の会員IDに基づくオンラインとオフライン双方のデータを活用することにより、それぞれの事業におけるサービスの向上を図りつつ、これに加えオンラインとオフラインの垣根を超えるサービスの相互利用を促進しています。しかしながら、それら施策から期待どおりの効果を得られなかった場合、当社グループの展開するサービスの一部あるいは複数が停止し相互利用の促進に障壁が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、デジタルプラットフォーム・メンバーシップデータの利用方法・リワードプログラムに関する法令等が当社グループにとって不利益な内容に改正された場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ④ 事業の拡大・展開に関するリスク

 1) 投資及び買収

当社グループは、国外市場への進出、新規ユーザーの獲得、新規サービスの展開、既存サービスの拡充、関連技術の獲得等を目的として、国内外を問わず買収(M&A)や合弁事業及び業務提携、投資活動を行っており、これらを経営の重要戦略の一つとして位置づけています。

買収を行う際には、対象企業の財務内容、契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うことによって、極力リスクを回避するように努めていますが、案件の性質、時間的な制約等から十分なデューデリジェンスが実施できない場合もあり、買収後に偶発債務が発生する可能性及び未認識債務が判明する可能性があります。さらに、被買収企業と情報システムの統合、内部統制システム等の統一、被買収企業の役職員及び顧客の維持・承継等が計画どおりに進まない可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、新規サービスの展開に当たってはその性質上、当該新規サービスが当社グループの事業、経営成績及び財政状態へ与える影響を正確に予測することは困難であり、事業環境の変化等により計画どおりにサービスが進展せず、投下資本の回収に想定以上の期間を要する又はその回収ができない可能性やのれん等の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

合弁事業及び業務提携の展開においても、パートナーとなる事業者の経営成績及び財政状態について詳細な調査を行うとともに、将来の事業計画及びシナジー効果について事前に十分に議論することによって極力リスクを回避するように努めていますが、サービス開始後に双方の経営方針に相違が生じ、期待どおりのシナジー効果が得られない可能性もあります。かかる場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性や、投下資本の回収に計画以上の期間を要する又はその回収ができない可能性があります。

その他、ベンチャー企業への投資等、様々な企業に対する投資活動を行っていますが、このような投資活動においても、経営環境の変化、投資先の業績停滞等に伴い期待どおりの収益が上げられず、投下資本の回収可能性が低下する場合には、投資の一部又は全部が損失となり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2) 海外への事業展開

 当社グループは、収益機会の拡大に向けてグローバル展開を主要な経営戦略の一つとして掲げ、米州、欧州、アジア等の多くの地域でECを含む各種サービスを展開しています。また、国内外のユーザーが国境を越えて日本又は海外の商品及びサービスを購入するためのクロスボーダーサービス等も順次拡大しています。今後とも在外サービス拠点及び研究開発拠点を拡大していくとともに、各国サービス間の連携強化等に取り組みながら、海外でのサービスの充実を図っていく予定です。

 一方、グローバルにサービスを展開していく上では、言語、地理的要因、法令・税制を含む各種規制、自主規制機関を含む当局による監督、経済的・政治的不安定性、通信環境や商慣習の違い等の様々な要因によって種々のリスクが生じる可能性があります。グローバルに事業を展開する競合他社との競争熾烈化のリスク、外国政府及び国際機関により関係する諸規制が予告なく変更されるリスク、当社グループ方針の浸透不足等により各種コンプライアンスに違反するリスクも存在します。さらに、サービスの国際展開では、サービス立上げ時に、現地における法人設立、人材の採用、システム開発、現地事業の適切な管理のための体制構築等に係る経費が発生するほか、既存サービスにおいても、法令の改正に対応するための継続的な支出が見込まれ、戦略的にビジネスモデルを変更する場合には、追加的な支出が見込まれることから、これらの費用が一定期間当社グループの収益を圧迫する可能性があります。また、新たなサービスが安定的な収益を生み出すためには、一定の期間が必要なことも予想されます。

 これらのリスクに対応するため、当社グループは、各国情勢を注視し、現地法令等へ適正に対応するとともに、各現地グループ会社でコンプライアンス体制を適切に構築し、法令遵守に努めています。また、サービスの展開においては、KPIを用いた常時業績管理、「楽天エコシステム」を活用した収益構造の効率化等による迅速な事業の立ち上げ、柔軟なビジネスモデルの変更を行うとともに、適時適切なコストコントロールを行い、当社グループの収益を圧迫するリスクの低減に努めています。しかしながら、ビジネスモデルに影響を及ぼす法規制・制度の変更、市場競争環境の変化等によりかかるリスクが顕在化した場合には、対応に想定外の費用を要する可能性又は事業継続が困難となりサービス停止や事業撤退を余儀なくされる可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また世界的なインフレ、金利の急激な変動、為替レートの不安定性等の経済リスクが顕在化した場合、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 3) サービス領域の拡大

 当社グループは、技術及びビジネスモデルの移り変わりが速いインターネットを軸とした多岐にわたる事業をサービス領域としています。その中で、新規サービスの創出、時代の流れに即したビジネスモデルの構築等を目的とし、サービス領域を拡大しています。新規サービスを開始するに当たって、相応の先行投資を必要とする場合があるほか、当該サービス固有のリスク要因が加わることとなり、本項に記載されていないリスクでも、当社グループのリスク要因となる可能性があります。

 また、新規に参入した市場の拡大スピード及び成長規模によっては、当初想定していた成果を上げることができない可能性があります。加えて、サービスの停止、撤退等においては、当該事業用資産の処分及び償却を行うことにより損失が生じる可能性があります。当社グループは、サービス領域の拡大の場面において適時適切な対応を講じ、リスク低減に努めていますが、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 4) 成長目標の達成に係るリスク

 当社グループは、2023年5月12日付でVISION2030と題する経営ビジョンを公表しています。しかしながら、当該ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成は、本「事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因や不確実性による影響を受けます。また、当該ビジョンは、策定時点における経済・事業環境の認識等様々な前提に基づくものであり、前提が想定どおりとならない場合等には、当該ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成が困難となり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 事業運営全般リスク

 (1) 情報セキュリティに関するリスク

情報セキュリティに関するリスクは「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 2. 重要なサステナビリティ項目 (4) 事業基盤(情報セキュリティとプライバシー) ② リスク管理」をご参照ください。

 

 (2) 生成AIの利用に関するリスク

当社グループのサービス全般において、生成AIの利用を積極的に促進しています。これに伴い個人情報漏洩、知的財産権侵害、誤情報の流布、意図せぬバイアスの助長等のリスク・エクスポージャーが増大する傾向にあり、これらのリスクを回避又は軽減するために、生成AIの利用に関するガイドラインの作成、運用、常時見直し及び技術的な対策の導入を行っています。また同時に、生成AI利用のためのコンプライアンス体制も定めています。

2024年、当社グループは「AI倫理憲章」を公表しました。包括的な規則を定めることにより、個人の権利とプライバシーを尊重しつつ技術革新を推進し、公平・公正で透明なAI利用の促進に取り組んでいます。全社にわたる教育研修の実施及びリスク管理体制の構築を行い、急速な変化や進展を続けている技術及び社会情勢の中、柔軟な対応に努めています。

当社グループでは、同年新たにAI・データ委員会を立ち上げました。本委員会では、AIガバナンス、AI研究開発、AIセキュリティ&セーフティ、パブリックリレーション&パブリックポリシー、データ活用、従業員教育等、各分野で実施されるグループ横断の活動計画が承認されています。また、グループ全体のガバナンス、リスク管理戦略も同委員会で策定、承認されています。更なる重要な決定事項や課題は、コーポレート経営会議と取締役会に対して定期的に報告しています。

考えうる対応を迅速かつ継続的に講じることで、ユーザー及び取引先からの信頼並びに社会的信用が棄損されるリスクの排除又は軽減に努めています。しかしながら、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループに対する社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招くのみならず、損害賠償請求等がなされる可能性のほか、監督官庁から行政処分等を受ける可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3) 情報システムに関するリスク

当社グループのサービスの多くは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて提供されています。当社グループは、適用できうる限りの最新の技術と対応を行い通信ネットワークが正常に機能し、サービスの提供に支障がないよう努めています。しかしながら、かかる対応策によっても通信ネットワーク若しくはコンピュータシステム上のハードウエア又はソフトウエアの不具合、欠陥といった当社グループの情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、人的な業務過誤により正常なサービスの提供に支障が生じる可能性があるほか、当社サービスの不正な利用、重要なデータの消失、機密情報の不正取得、改ざん及び漏洩等が発生する可能性もあります。加えて、当社グループでは、高度で複雑なシステムを開発・運用しサービスを提供しており、何らかの要因によって、開発遅延や中止、設備の故障、不具合等が発生する可能性もあります。

これらのリスク発生の回避又は軽減のため、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的にも各種の対応策を講じていますが、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループのシステムが一時的に停止する等の事態が発生し、ユーザー及び取引先の信頼低下及び離反を招くのみならず、システム停止によってユーザー及び取引先が被った損失に対する損害賠償請求等がなされる可能性もあります。また、監督官庁からの行政処分等を受ける可能性もあり、かかる場合、当社グループに対する社会的信用が毀損され、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 法規制等に関するリスク

  ① 法令・コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、国内外において多岐にわたる事業展開をしています。各国、地域において、各種事業活動に関連する法令諸規制等があり、後述のフィンテックセグメント及びモバイルセグメントの各項目に記載した法令諸規制等のほか、電気通信事業、運送業、資金移動業を含む各種業法令はもちろん、個人情報・プライバシー保護、消費者保護、公正競争、汚職禁止、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与並びに拡散金融対策、経済制裁、自然環境、労働環境、犯罪防止、開示、納税の適正、人権、輸出入、投資、為替に関する国内外の各種法令諸規制等が広く適用されます。中でも、デジタルプラットフォーム事業者に対する法規制、各国の個人情報管理に関する法規制、グローバルなデータの移転に関する法規制及び情報セキュリティに関する法規制等は、特に当社グループの事業運営に影響を及ぼす最も重要な法令諸規制等と認識しています。

こうした関連法令諸規制等に違反した場合には、行政機関による制裁金・課徴金、業務改善命令、業務停止命令、許認可取り消し等を受ける場合があるほか、レピュテーションへの影響が生じたり、訴訟等を含む紛争に発展する可能性があります。また、新たな関連諸法令の制定又は改正、新たなガイドラインや自主的ルールの策定又は改定等により、当社グループの事業が新たな制約を受けた場合又は既存の規制が強化された場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは法令遵守を重要な企業の責務と位置づけ、グループ COO(Group Chief Operating Officer)、グループ CCO(Group Chief Compliance Officer)及び社内カンパニー制に基づくCompany Compliance Officerによりコンプライアンスに対するグループ横断的な取組を進め、グループリスク・コンプライアンス委員会及び取締役会へその取組状況を報告し、適正な職務執行を徹底するとともに、代表取締役社長直轄の独立組織である内部監査部及び子会社の内部監査部門による内部監査を実施しています。また、急激に事業拡大している分野においては、役職員又は業務委託先等による法令違反や、不正行為等のリスクも高まりますが、規程・マニュアル類の整備、内部通報制度の利用促進、教育、その遵守状況のモニタリング等によりコンプライアンス体制を強化し、コンプライアンス遵守を図っています。

しかしながら、コンプライアンスに関するリスク(監督官庁の見解と当社グループの見解が異なるリスクを含む)及びそれに付随して当社グループの社会的信用が毀損されるリスクは完全に排除できるものではなく、当社グループのみならず取引先に起因するものを含め、当社グループがこれらのリスクに対処できない場合には、行政機関からの行政処分や、金銭的な損失及び損害の発生により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 訴訟等に関するリスク

当社グループは、各種サービスの展開を図る上で、販売者、役務提供者、購入者、役務利用者・ユーザー、その他の関係者による違法行為及びトラブルに巻き込まれた場合、システム障害等によってこれらの関係者に対し損害を与えた場合又は、当局による諸規制等に違反した場合には、当社グループに対して訴訟を提起される可能性及びその他の請求や行政処分や高額な課徴金の支払命令を受ける可能性があります。楽天モバイル株式会社、Rakuten Kobo Inc.が販売する携帯端末、電子書籍端末等については、それらグループ会社がメーカーの立場及び第三者に製造を委託している立場として製造物の欠陥等に伴う製造物責任等を負う可能性があります。また、新たに発生した、若しくは今まで顕在化しなかったビジネスリスクによって、現時点では予測できない訴訟等が提起され、その結果、高額な損害賠償金の支払義務を負う可能性があります。一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害される又は第三者の行為により損害を被った場合には、当社グループの権利が保護されない可能性及び当社グループの権利保護のための訴訟等の遂行に多大な費用を要する可能性もあります。

当社グループでは、適宜、弁護士等をはじめとする外部専門家及び当局に事前相談すること等により、適切かつ適法なサービスの提供に努めていますが、全ての訴訟等の可能性を排除することは困難であり、かかるリスクが顕在化した場合には、その訴訟等の内容又は請求額によっては特別損害が発生し、また、当社グループの社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招く可能性があり、ひいては当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (5) サプライチェーンに関するリスク

当社グループでは、製品調達及び供給を適時に行うことが求められます。製品の調達・供給において、地政学的リスク、自然災害、疫病、戦争、内戦、暴動、テロ、サイバー攻撃、ストライキ、あるいは輸送事故等の理由により生産・物流が停滞する場合、供給不可や配送遅延による売上機会の損失、復旧対応のコスト増加により当社の収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは顧客の維持・獲得、ネットワークの構築及びメンテナンス等のほか、それらに付随する業務の一部又は全部について、他社に委託しています。そのため、サプライヤーに関しては選定時に「楽天グループにおける調達管理に関するインストラクション」及び「楽天グループサステナブル調達インストラクション」やそれに基づく各社調達規程に則ったサプライヤー審査・選定を行い、リスク指標に基づくリスクアセスメント、ガバナンスKPIによるモニタリング、サプライヤー調査及び課題の抽出等のPDCAサイクル構築によって、取引上のリスクの低減に努めています。

さらに、サプライヤーに向けては、法令・社会規範の遵守、汚職・賄賂等の禁止、公平・公正な取引の推進、環境への配慮等の行動指針を定め、取引先等との公平・公正かつ透明性の高い取引に基づく良好な関係の構築と関係強化に取り組んでいます。

しかしながら、これらの対策を講じたとしても、サプライヤーと当社グループとの業務の中での故意又は過失による法令違反、不正行為、人権侵害等が発生する可能性を完全には排除できないため、万が一これらの事態が発生した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、サプライヤーは当社グループのサービス・商品を取り扱っていることから、上述のような事象により当該サプライヤーの信頼性や企業イメージに悪影響が出た場合に、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。

 

 (6) 有形固定資産に関するリスク

当社グループは、モバイル事業の通信ネットワークの構築に必要な設備等をはじめとする有形固定資産を保有しています。これらの資産については、四半期ごとに減損の兆候の有無を判断し、減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額の見積りを行っています。回収可能価額の見積りは、将来キャッシュ・フロー予測等を使用しており、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識しています。将来の事業環境の変化等により、将来キャッシュ・フローの低下が見込まれる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (7) 無形資産に関するリスク

  ① 「Rakuten」ブランドの保全と推進に関するリスク

当社グループは、多様なサービス展開、広告宣伝活動等を通じて「Rakuten」ブランドの確立を図っており、そのユーザー等に対して一定の認知が得られているものと認識しています。事業規模の更なる拡大等に伴い、各サービスブランドの「Rakuten」ブランドへの統合推進、会員データベースの一元化、リワードプログラムの共通化を媒介とした会員IDの統合等を推進しています。ブランドの強化による認知度、又はロイヤリティ向上のための施策及び費用については事前に十分な計画を立てていますが、思うような成果が現れず計画比で費用が超過する可能性もあります。また、これらの施策の過程においてブランド名称やロゴ、会員IDの変更により既存会員のロイヤリティの低下及び会員組織からの離脱を招く可能性もあります。さらに、「Rakuten」ブランド傘下のブランド統合により、各サービスブランドの施策が当社グループ全体に影響を与えるため、一つのサービスブランドにおいて、当社グループのブランドの信頼性及びブランド価値を毀損するような事案等が発生した場合には、当社グループ全体に影響を及ぼし、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 知的財産権に関するリスク

当社グループが展開するいずれの事業においても技術分野における進歩及び変化が著しいため事業展開を行う各国において自社グループの技術、ブランド、コンテンツ等を保護することが継続的な事業運営に必要不可欠であると考えています。そのため、特許権、商標権、著作権、ドメインネーム及びその他の知的財産権を取得するよう努めるとともに、必要に応じて第三者から知的財産権のライセンスを受けています。

しかしながら、想定どおりに知的財産権を取得できないことで、当社グループが使用する技術、ブランド及びコンテンツ等を保護できない可能性があります。また、第三者から知的財産権等の侵害を主張されることで、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生する可能性、知的財産権のライセンスの取得等のために多額の費用が発生する可能性及び当社グループの事業が差し止められ、多額の損害賠償金が課せられる可能性等があります。

これらのリスクの発生を回避するため、当社グループにおいては、特許権、商標権、著作権、ドメインネームその他の知的財産権の積極的な取得及び第三者の権利侵害を回避するための対応策の実施を進めています。しかしながら、かかる対応策にもかかわらず、リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ 人的資源に関するリスク

当社グループでは、各サービス分野において人材の専門性及び多様性が必要であり、今後とも事業拡大及び国際展開に応じて、継続してグローバルに人材を確保、育成すること及びダイバーシティを実現することが必要です。さらに、日本においては少子高齢化や労働人口の減少が進行していることを踏まえ、市場ニーズの変化による採用、生産性の向上や採用した人材の定着(リテンション)及びマネジメント層の育成も継続した課題と認識しています。

当社グループでは、月次の人員計画を確認し、その変動を注視しつつ採用チャネルの多様化、リクルーターの増員等を行い、採用活動を行っています。加えて、採用した人材に対する職階に応じた教育・研修の実施等を通じて、人材育成や当社グループへのエンゲージメントの強化に取り組んでいます。マネジメント層の育成では、当社グループ内で実施するリーダーシップサミット等で当社グループのマネジメント層同士が議論する機会を設け、グループ横断的な連携及びリーダーシップの強化を図っています。しかしながら、かかる施策にもかかわらず、競合他社との人材獲得競争の激化により採用が計画どおりに進まなかった場合、人材の育成及び多種多様な人材が活躍できる就労環境の整備が順調に進まず、在職する人材の社外流出が生じた場合等には、労働力が不足し、労働生産性が低下する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、当社グループの創業者であり、創業以来CEOとして当社グループの経営に携わり、重要な役割を果たしているため、同氏の離職又は業務執行が困難となる不測の事態が生じた場合には、当社グループに影響を与える可能性があります。当社グループは社内カンパニー制を敷き、職務権限表に基づき各カンパニーごとにカンパニープレジデントを設置し、また執行役員制度を採用して適切に業務遂行の権限委譲を行っています。さらに、グローバルで多岐に渡る当社グループの事業展開を担うことができる人材の育成も行い、同氏が離職又は業務執行が困難となった場合のリスクを低減しています。しかしながら、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8) マーケットに関するリスク

  ① 金利変動及び有価証券、金銭信託等の価格変動に関するリスク

当社、楽天カード株式会社、楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、楽天モバイル株式会社等では、必要な事業資金について銀行等からの借入等を行っていますが、当該事業資金の調達が金利変動の影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは有価証券、金銭信託等の金融商品を多く保有しており、これらの有価証券等は金融商品市場の動向等により価格が変動する可能性があります。一部の有価証券等は、価格変動のリスクを低減するためデリバティブ取引の活用、分散投資等により価格変動のリスクを低減するように努めていますが、完全にリスクを回避及び低減できる保証はなく、金融商品市場における価格変動により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 為替変動に関するリスク

当社グループが行う外貨建投資及び外貨建取引においては、経済動向を注視しつつ、為替変動リスクを極力回避する方針としています。しかしながら、当社グループの海外関係会社の業績、資産及び負債は、現地通貨で発生したものを円換算し、連結財務諸表を作成しているため、為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、外国為替相場の変動により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (9) 財務・資金に関するリスク

  ① 資金調達等に関するリスク

当社グループが、金融機関等と締結しているローン契約、社債等には、財務制限条項やその他の誓約事項が規定されている場合があります。当社グループの経営成績、財政状態又は信用力が悪化する等により、いずれかの財務制限条項等に違反した場合には、これらの条項に基づき金融機関等から既存借入金や社債の一括返済、金利及び手数料率の引上げ、担保権の設定等を迫られる可能性があるほか、それに伴い、その他の債務についても返済を求められる可能性があります。また、当社グループの信用力の悪化により格付機関による信用格付が引き下げられた場合及び金融市場の状況等に起因して金融機関等における調達環境が悪化し、当社グループに対する貸出条件、社債発行条件等に影響する場合、並びに保有株式の株価の下落、大幅な金利や為替相場の変動、保有資産の市場流動性の低下、必要な許認可取得の遅延、税制の変更、契約上の売却制限が保有資産の売却条件等に影響を与える場合には、当社グループにとって好ましい条件で適時に資金調達をできる保証はなく、当社グループのサービス展開の制約要因となる可能性があります。また、当社グループでは、楽天カード株式会社のクレジットカード債権、楽天モバイル株式会社の通信料債権等の金銭債権の証券化及び通信設備等を活用したセール・アンド・リースバックによる資金調達も行っていますが、何らかの要因により、それらの継続が困難となるか、又は取引条件が悪化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが発行している社債等には、当社グループの裁量で期限前償還可能な初回任意償還日が設定されている場合があります。当社グループは資本市場との良好な関係性維持のため、初回任意償還日での期限前償還を行う方針ですが、何らかの理由により、当社グループが初回任意償還日での期限前償還を見送る場合や、期限前償還がいずれかの財務制限条項等によって制限される場合は、将来の有価証券の発行条件に悪影響を及ぼす等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社が発行している社債の要項には、当社と比較可能な上場企業の配当水準を超える等の一定の条件を満たさない株式の配当及び自己株式の取得を制限する条項が規定されている場合があり、この場合には配当又は自己株式の取得に影響を与える可能性があります。加えて、当社が優先株式の発行を行った場合において、何らかの理由により優先株式の配当が制限された場合は、普通株式の配当に影響を与える可能性があります。

当社グループは金融機関、格付機関、資本市場等との良好な取引関係の維持、調達先の分散、調達手段の多様化等により、かかるリスクを極力低減するように努めますが、かかるリスクが顕在化した場合及び金融市場が不安定な場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 繰延税金資産に関するリスク

当社及び一部の連結子会社においては、IFRSに基づき、将来における税金負担額の軽減効果を繰延税金資産として計上しています。当社グループは、将来の課税所得と実行可能なタックス・プランニングをし、回収可能な繰延税金資産を計上していますが、将来課税所得の見積りが下方修正されたことに伴い当社及び連結子会社における繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合若しくは税制及び会計基準の変更が行われた場合には、当該繰延税金資産は減額され、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (10) 自然災害等の危機的な事象発生に関するリスク

地震、台風、津波等の自然災害、パンデミック、大規模事故、テロ・暴動その他予期せぬ危機的な事象が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらの災害及び危機的な事象が発生した場合には、社会全体の経済活動が停滞し、当社グループの提供するサービスへの需要が著しく減少する可能性があります。一方、災害等の態様によっては急激にその需要が増加することも想定され、それが当社グループの業務対応能力を超えた場合には、サービスの提供等が遅延又は一時停止する可能性があります。また、当社グループの営業及び物流拠点、データセンターをはじめとする主要な拠点が、これらの災害及び危機的な事象により直接的又は間接的に被害を受けた場合には、物理的、人的被害による影響により、通信ネットワークや情報システム等が正常に稼働せず、当社グループの事業活動に制約が生じ、やむを得ずサービスの一時停止を余儀なくされる可能性があります。加えて役職員の安全確保のため、役職員の出勤制限又は停止等、業務の運営形態を変更せざるを得ない状況に陥ることにより、業務生産性が低下し、情報セキュリティ及びプライバシー保護に関するリスクが、一時的に上昇する可能性があります。

当社グループにおいては、これらの災害及び危機的な事象が発生した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、訓練等を通じ役職員の安全性の確保や情報システムのバックアップシステムの立ち上げを想定する等、かかるリスクによる影響を最小限に留めるよう努めていますが、災害及び危機的な事象の発生規模がその想定を超える場合には、当該リスクが顕在化し、事業の継続自体が困難又は不可能となり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (11) 気候変動に関するリスク

気候変動に関するリスクは「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 2. 重要なサステナビリティ項目 (3) グローバルな課題への取り組み(気候変動)」をご参照ください。

 

 (12) 事務・オペレーショナルリスク

  ① 財務報告に関するリスク

当社グループは、信頼性の高い財務報告を作成するため、金融商品取引法が定める内部統制報告制度に基づき、財務報告に係る内部統制を整備し、その評価を実施しています。しかしながら、当社グループの内部統制が適切に機能しない又は内部不正を阻止できない等、重要な不備が生じた場合には、当社グループの社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招く可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 業務効率に関するリスク

当社グループは、業務の正確性、効率性を高めるために、様々な取組を実施しています。具体的には、全従業員参加型の改善活動の実施、業務遂行過程における各種情報システムの活用、担当者以外の第三者が業務内容を二重に確認する再鑑制度の実施、社内規程及び事務手続きの標準化並びに文書化等に取り組んでいます。しかしながら、一部において専用の情報システムが導入されておらず、人的な対応に委ねられている業務もあり、役職員の誤認識、誤操作等により事務手続きの不備が発生する可能性があります。また当社グループの急速な拡大に伴う事務量の増加、新サービスの展開等により、業務遂行に必要な知識の共有及び継承が不十分になる可能性があります。それらの結果、事務手続きの不備の増加や生産性の低下により安定的なサービスの供給の妨げ、経済的な損失及び個人情報等の流出等に繋がる可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (13) 風評に関するリスク

各種報道機関、SNS等を通じ、当社グループの事業及び役職員に関する様々な内容の報道及び情報の流布がされています。これらの報道及び情報の流布は、正確な情報に基づいていないもの及び憶測に基づいたものが含まれている場合があり、それらの内容の正確性や当社グループへの該当の有無に関わらず、当社サービスのユーザーや投資者等の認識又は行動に影響を及ぼす可能性があります。

当社の株価に重大な影響を与える可能性のある不明確な情報が発生した場合、東京証券取引所の注意喚起に応じ、これらの不明確な情報に対する当社グループの見解を直ちに開示する等、投資者が正しい情報に則って当社株式の評価ができるよう資本市場に適切な情報を開示します。また同時に、当社グループのコーポレートサイトを通じて適切な情報発信に努めています。しかしながら、かかる報道及び情報の流布により結果的に当社グループの社会的信用が毀損され、ユーザー及び取引先の離反を招く可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 ビジネスセグメント固有の事業運営に関するリスク

 (1) インターネットサービスセグメント

  ① マーケットプレイス型のサービス

『楽天市場』のようなオンライン・ショッピングモール・サービス、『楽天トラベル』のような宿泊予約サービス、『Rakuten Rebates』のようなオンライン・ポイントバック・サービス等においては、取引の場を提供することをその基本的形態としています。

当社グループは売買契約等の当事者とはならず、規約においても、販売者又は役務提供者と購入者又は役務利用者との間で生じたトラブルについて、当社グループはその責任を負わず、当事者間で解決すべきことを定めていますが、他方で、マーケットプレイス型サービスにおける取引の場の健全性確保のため、偽造品その他の権利侵害品の排除等に自主的に努めています。具体的には、出品商品に関するガイドラインによるルールの明文化や、事前の商材審査、定期モニタリングの実施、社外からの通報窓口設置等を行っています。しかしながら、マーケットプレイス型のサービスにおいて、第三者の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利等を侵害する行為、詐欺その他の法令違反行為等が行われた場合には、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社グループも取引の場を提供する者として責任を問われ、さらには、当社グループのブランドイメージが毀損される可能性もあります。

また、近時、マーケットプレイス型サービスを含むプラットフォームビジネスについては、ネットワーク効果や規模の利益が働きやすいことから、優越的地位の濫用を含む不公正な取引方法に該当する事例その他の独占禁止法上の問題が生じやすいことが指摘されています。当社グループは、前述のように販売者又は役務提供者と購入者又は役務利用者に健全で信頼される取引の場を提供するとともに、これらの者との健全な関係の維持に努めています。また、当社グループは「3 事業運営全般リスク (4)法規制等に関するリスク ①法令・コンプライアンスに関するリスク」にも記載しているように、法令遵守を重要な企業の責務と位置づけ、コンプライアンス体制を構築し、必要に応じて弁護士その他の専門家への相談、監督官庁との協議等を行い、法令遵守の徹底を図っています。しかしながら、当社グループのかかる施策にも関わらず、公正取引委員会の見解と当社グループの見解が異なること等により、独占禁止法への抵触の問題が発生する可能性は完全には否定できません。公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令等を受けた場合には、企図していた施策が実現できなくなることに加えて、当社グループの社会的信用が毀損され、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、利便性及び信頼性の高いシステムに加え、集客力に優れた取引の場を継続的に提供することに努めていますが、それらの取組が期待どおりの効果を上げられなかった場合には、販売者・役務提供者が減少し、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 直販型のサービス

当社グループが一般消費者に対して商品・役務を直接提供する『楽天24』、『楽天ブックス』、『Rakuten Fashion』等のサービスにおいては、当社グループは売買契約等の当事者となり、商品・役務の品質及び内容に責任を負っています。商品の販売及び役務の提供に際しては、関係法令を遵守し、品質管理に万全を期していますが、欠陥のある商品を販売又は欠陥のあるサービスを提供した場合には、監督官庁による処分を受ける可能性があるとともに、商品回収、損害賠償責任等の費用の発生、顧客からの信用低下による売上高の減少等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、商品については、一部でデータ活用を用いて予測した需要に従って、仕入及び在庫水準の管理等を行っていますが、想定した需要が得られない場合、又は技術革新及び他社商品との競争の結果、商品価格が大きく下落する場合には、棚卸資産として計上されている商品の評価損処理等を行う可能性があり、その結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ 物流事業

当社グループは、『楽天市場』等におけるユーザー、販売者又は役務提供者である出店企業の利用満足度を一層高めるべく、出店企業の物流業務の受託サービスの拡大等を通じた配送品質の向上に注力しています。

物流事業においては、何らかのシステム障害が発生して物流業務の遂行が不可能になること、物流拠点内の事故、自社物流網における新型コロナウイルスの感染再拡大や新たな感染症の発生及び自然災害による物流拠点の稼働停止等のリスクがあります。当社グループは、システム障害発生の未然防止、障害発生原因に対する恒久対応策の実施、庫内・配送における安全業務遂行のための安全衛生委員会の設置及び自然災害を想定したリスク管理体制の構築を行っています。しかしながら、これらの施策が不十分であった場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、物流拠点の拡大にあたり、設備として賃貸物件等を活用し、倉庫内設備投資等は将来見込まれる受注量を予測して実施していますが、当該設備の構築及び稼動開始までには一定の時間を要するため、かかる支出は先行的な投資負担になる場合があるほか、燃料費、資材、労働力等の調達コスト増加や、当初見込んだ受注量の未達により受託業務での収益が予測を下回る場合には先行費用を補えず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、設備の移転、廃止等が決定された場合には、当該資産の処分及び償却を行うことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ④ 広告事業

当社グループでは、デジタル広告等に関する広告事業の売上高がグループ全体の売上に対して一定の比率を占めていますが、広告市場は特に景気動向の影響を受けやすい傾向があり、景気が後退した場合には、広告主による予算減少の影響を受ける可能性があります。また、デジタル広告の分野においては技術の進展によって多様な広告手法が生み出されており、新規の参入者も多いことから、特に激しい競争にさらされています。

さらに、広告配信プラットフォーム等の技術的な手法に、各種法令やプライバシーに配慮した制約や変更が生じ、従来可能であった広告手法の変更や更なる技術開発が必要となる可能性があります。かかる事業環境において、当社グループはこれらの競争や環境変化に対応するため、独自プラットフォーム上での広告の拡大やデジタル広告の技術開発を含む様々な施策を講じていますが、これらの施策が十分でない場合には、サービスの競争力を失い、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑤ コンテンツ関連事業

 1) エンターテインメントコンテンツサービス

 当社グループでは、電子書籍サービス、ビデオストリーミングサービス、ミュージックストリーミングサービス、オンラインチケット販売等のエンターテインメントコンテンツの提供をインターネットサービスセグメントにおいて行っています。エンターテインメントコンテンツは多彩であるため、映像等の使用許諾やライセンサー等から最低保証料等の費用を求められることがあり、コンテンツ収入が当該費用を下回る場合や、海外コンテンツに関する使用権取得に際し、為替変動により使用権取得費用が上振れしてしまう場合には、当事業の収益に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、ライセンサー等と契約交渉するにあたり、ライセンサーへの費用の支払を最低保証金等ではなく可能な限り売上分配型の形態を採るよう交渉に努めています。また、エンターテインメントコンテンツ事業に関するイベントを従来のオフライン型に加えてオンライン型についても並行して実施することや、海外プロモーター等との連携による大型案件の獲得により、収益源の確保に引き続き努めるとともに、オンラインライブ視聴者数の増加に伴うトラヒックの増加やサーバーへの高負荷によるシステム障害に対する予防及び対策を行います。さらに、「楽天エコシステム」を生かし、楽天モバイル株式会社が販売する携帯端末から当社グループが提供するエンターテインメントコンテンツへのアクセスを容易にすることや、販売窓口におけるエンターテインメントコンテンツサービスの紹介及び各種割引サービスを実施することによりモバイル事業とのシナジーを生かした事業展開を行っています。しかしながら、かかる施策を講じても必ずしも期待どおりの効果が生じる保証はなく、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2) メッセージングサービス

 当社子会社のViber Media S.a.r.l.及びその子会社が提供するモバイルメッセージング及びVoIPサービス、それらに付随する広告サービス等は、日本及びヨーロッパをはじめとする海外で広く事業展開を行っています。当サービスにおける通信内容等の情報の取扱いは、日本及び各国の個人情報保護に関する法令に則り適切な取扱いを行っています。しかしながら、前述の「3 事業運営全般リスク (1) 情報セキュリティに関するリスク、(3) 情報システムに関するリスク」に記載のとおり、サービスを提供するシステムの不具合やマルウエア等の影響、外部からの不正な手段による侵入等の犯罪行為等により情報システムの可用性又は情報の機密性及び完全性を確保できない可能性があります。また、前述の「2 経営環境・戦略に関するリスク (1) マクロ経済環境に関するリスク」に記載のとおり、地域間の紛争や政治的な衝突等の地政学的リスクが顕在化した場合、特定地域での政策変更や規制等により、同社が提供するサービスの利用制限や広告規制等影響が生じ、収益が低下する可能性があります。当社グループではこれらのリスク発生の回避又は低減のため、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的にも各種対応策を講じ、政治情勢のフォローに加え、タスクフォースの設置により収益等への影響を引き続き注視します。しかしながら、これらの施策が不十分であった場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2) フィンテックセグメント

  ① フィンテックセグメント共通リスク

 1) 法的規則

楽天カード株式会社、楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社、楽天ペイメント株式会社、楽天Edy株式会社等の金融サービスを提供するグループ会社(以下「当社金融グループ会社」)においては、各種業法、金融関連諸法令、監督官庁の指針(ガイドライン)、金融商品取引所及び業界団体等の自主規制機関による諸規則等の適用を受け、これらを遵守しています。しかしながら、当社金融グループ会社において、サービスを提供するために必要な許認可につき、将来、何らかの事由により免許等の取消等がなされ、又は業務停止が求められた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、関連法令諸規則の新設、改正等により、他社の新規参入が容易になる場合や提供するサービスに関する規制が強化された場合には、競争の激化、規制強化に対応するための想定外の追加コストの発生及びビジネスモデルの見直し等が必要になる可能性があります。一方、当該関連法令諸規則等の変更や緩和により当該サービスの提供にあたり有利に影響する場合には事業展開に追い風となり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、近年金融犯罪の手口が多様化かつ複雑化し、組織犯罪やテロ活動の脅威は世界的に高まっており、国際的な金融犯罪の防止態勢が強化されています。日本当局を含めた各国当局は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止(AML/CFT)に関連し、FATF(金融活動作業部会)等の要請に基づいた各種施策を進めており、当社グループにおいても、国内外で業務を行うにあたり各種規制の適用を受けています。当社グループは、関係法令諸規則等を遵守すべく、当社グループ全体の基本方針としてAML/CFTに関する関連規程を定め、同規程に基づいた運営及び管理を行っています。今後も、第5次対日相互審査を含め国際的な動向を注視し、継続的に取組を進めてまいります。しかしながら、当社グループにおいて、マネー・ローンダリングあるいはテロ資金供与を効果的に抑止できなかったこと等により、結果的に関連法令諸規則等を遵守できなかった場合や法規制への対応が不十分であるとされた場合には、行政処分や罰則を受けたり、業務に制限を付されたりするおそれがあり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社金融グループ会社は、監督官庁の指針(ガイドライン)に基づき、内部統制基本方針、リスク管理細則等の社内規程に加え、金融商品取引法の財務報告に係る内部統制等を参考にした内部統制の整備によるグループガバナンス体制を構築し、業務の健全性、適切性を確保しています。しかしながら、何らかの理由によりグループガバナンス体制に不備があり監督官庁から行政処分等を受けた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2) マーケット

当社金融グループ会社の各事業は、資産負債の時価変動についてリスクを負っています。当社金融グループ会社は、資産負債管理(ALM)を適切に対応していますが、市場動向等により金利が大幅に変動した場合には当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社金融グループ会社は、個人・法人向けの貸付債権を保有しているほか、国債・社債等の債券を保有しています。経済状況が悪化した場合及び債務者・債券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合には、当該貸付債権・保有債券の信用力が低下し、元利金の支払が不履行となる可能性があるとともに、当該貸付債権への引当金計上及び保有債券の市場価格の下落により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、市場リスクをヘッジするために行っている金利スワップ、通貨スワップ、為替予約、オプション等のデリバティブ取引についても、カウンターパーティーリスク(取引の相手方が破綻して約定どおりの支払が受けられないリスク)があります。当社金融グループ会社は、これらのリスクに対し、当該貸付債権、保有債券及びデリバティブ取引の相手方の信用状況について、適宜精査をしており、早期の対応を図っていますが、当該対応が間に合わず、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このほか、当社金融グループ会社を含む当社グループ全体に関わるマーケットリスクについては、「3 事業運営全般リスク (8) マーケットに関するリスク」をご参照ください。

 

  ② フィンテックセグメント個別リスク

当社金融グループ会社は、各事業において固有のリスクを有しています。特に投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については以下のとおりです。これらのリスクは互いに独立したものではなく、ある事象の発生により複数のリスクが同時に発生する可能性があります。

 

 1) 楽天カード株式会社

楽天カード株式会社は、クレジットカード決済等における加盟店契約業務を提供しており、加盟店からの手数料を収入源としています。加盟店手数料率の低下、競合他社との競争激化等による加盟店流出が生じる可能性がありますが、同社は引き続き、業務改善を通じたコスト削減及び、お客様のニーズに合わせたサービス展開に取り組みます。しかしながら、その取組が期待どおりの成果を発揮しなかった場合、加盟店数の減少や手数料ビジネスの利益率の悪化により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また経済環境の悪化に伴い、自己破産及び多重債務者の増加、消費の落ち込みによるサービス需要の低下並びに求償債権の増加による引受信用保証の収益性の悪化の可能性があります。これらのリスクに対して与信管理を適切に行っていますが、想定を超え経済環境が悪化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらにクレジットカードの不正利用等については、キャッシュレス決済手段の拡充による取扱高の増加に伴い、年々増加しています。同社においてはカード情報を裏面に記載した新デザインカードの発行、SMSを活用した本人認証サービスの実施及び、24時間体制でのモニタリング等にて不正利用の防止体制を強化していますが、想定を超える不正利用が発生した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2) 楽天銀行株式会社

楽天銀行株式会社は、銀行法及び金融商品取引法等に基づく監督を受けています。同社は、法令等により一定の自己資本比率の維持を求められており、財政状態を健全に保ち、最低自己資本比率を下回ることがないように留意していますが、財政状態の悪化により定められた自己資本比率が下回る場合には、金融庁から営業の全部又は一部の停止を含む行政上の措置が課される可能性があります。さらに同社は、登録金融機関として外国為替証拠金取引を取り扱っており、金融商品取引法その他の関係法令及び一般社団法人金融先物取引業協会の規則を遵守するとともに、各種禁止行為を行うことがないよう留意し事業を行っています。しかしながら、かかる取組や対応策が不十分であった場合には、同社は行政処分等を受ける可能性、顧客からの信頼を失う可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、同社では、インターネットを活用した銀行サービスを提供しており、ATMでの普通預金の引き出し、定期預金の解約、他の金融機関への送金又は振込等が24時間365日(システムメンテナンス時間を除く)行えます。そのため、経済環境の悪化や同社及び当社グループのレピュテーションに悪影響を及ぼす不測の事態が発生した場合には、他の金融機関と比較して速いペースで想定を超えた資金流出が著しく発生する可能性があります。かかるリスクに対して、インシデント発生の未然防止又は早期発見のための定期的なモニタリング及び内部監査を内部統制の取組として実施しています。しかしながら、それらの取組の結果が期待どおりの効果を得られなかった場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、同社においては、適切な収益確保とマーケティングコストの管理を行っていますが、競争環境の激化により、ローン金利の引き下げ、預金調達コストの増加及び多額のマーケティングコストが発生した場合や、日本銀行による想定外の政策金利の変更が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、同社は、独自のATMネットワークを有していないため、ATMの利用に関わる契約を締結している他の金融機関との関係が悪化した場合又はこれらの業務若しくは関連するシステムに障害が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 3) 楽天証券株式会社、楽天ウォレット株式会社

楽天証券株式会社は、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録等を行っており、金融商品取引法及び同法施行令等の関連法令諸規則等の適用を、楽天ウォレット株式会社は、資金決済法に基づく暗号資産交換業者の登録等及び金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録等を行っており、同法及び同法施行令等の関連法令諸規則等の適用を受けています。これに対し各社は、定期的なモニタリング、内部監査等の内部統制の取組を実施しており、法令等を遵守しています。また、法令等により一定の自己資本規制比率を保つよう義務付けられており、一定の財政状態を健全に保つように努めています。しかしながら、同社の取組が期待どおりの成果を発揮しなかった場合及び最低自己資本規制比率を下回る場合には、金融庁から営業の全部又は一部の停止を含む行政上の措置が課される可能性があります。

また、各社は、適切な収益確保のため、競合他社の動向調査を行い、収益の維持に努めています。しかしながら、更に競争環境が激化した場合には、新たな収益源となりうる商品やサービスの拡充が求められます。これらの取組が期待どおりの効果を得られなかった場合には、同社の収益性が悪化し、また、各国の金融政策の変更等がきっかけとなり、金融市場の混乱・低迷による投資家心理の悪化等が生じた場合には、同社の手数料収益が大幅に減少する可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

楽天ウォレット株式会社においては、サイバー攻撃のリスク対策として、二要素認証必須化等の対応を行っていますが、常にサイバー攻撃のリスクにはさらされており、暗号資産の流出が発生する可能性があります。かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 4) 楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社

楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社は、保険業法その他関連法令諸規則等に基づく金融庁の監督を受けています。主として契約者保護を目的とした保険業法その他関連法令により、業務範囲及び資産運用方法の制限を受け、また、準備金の積み立て、ソルベンシー・マージン比率の維持等に関する規定が定められています。また、両社は、財務の健全性をより正確に把握するための指標として、経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR: Economic value-based Solvency Ratio)を導入しています。両社は、社内規程等を整備し、ソルベンシー・マージン比率等及び経済価値ベースのソルベンシー比率についてのリスク許容度の設定やモニタリング管理を行っており、適宜対応できる体制を整備しています。しかしながら、何らかの要因により、業務運営、資産運用上の諸前提に大きな乖離が生じる等して、当該比率を適切に維持できず、金融庁からの行政処分等が行われた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

楽天生命保険株式会社は定期保険や医療保険等、楽天損害保険株式会社は自動車保険、火災保険等の保険商品を販売しており、保険契約者からの保険料収入及びそれを原資とした資産運用による収益を主な収入源としており、商品の拡販のための各種施策等の実施や保有契約の継続率向上に努めています。しかしながら経済環境の悪化等の原因により、新規契約の減少、想定を超えた中途解約の増加等により、保有契約の著しい減少が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、資産運用に関しては、リスク許容度に応じたリスクの限度額管理を行うことで適切なリスク管理に努めていますが、保有する国内外の有価証券等について予想を超える価格変動等が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、大規模な自然災害の発生やパンデミックに備え、再保険の活用や異常危険準備金の積み立て等を行っていますが、想定を上回る頻度及び規模の保険金支払が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 5) 楽天ペイメント株式会社、楽天Edy株式会社

楽天ペイメント株式会社は主にモバイル決済サービス等、楽天Edy株式会社はプリペイド型電子マネーサービス等を提供しています。また、楽天Edy株式会社は資金決済法に基づく前払式支払手段発行者及び資金移動業者の登録等を行っており、同法及び同法施行令等の関連法令諸規則等の適用を受けています。特に、前払式支払手段に対しては基準日未使用残高の2分の1の額以上の発行保証金を、資金移動業においては送金途中にあり滞留している資金の100%以上の履行保証金をそれぞれ保全することが義務付けられており、法令やガイドラインに定められた内容に沿って顧客資産の保全を実施しています。しかしながら、何らかの理由で関連業法等に違反した場合には、金融庁から営業の全部又は一部の停止を含む行政上の措置が課される可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

キャッシュレス決済サービスに関連するシステムに障害や不正アクセス等が発生した場合には、楽天ペイメント株式会社、楽天Edy株式会社ひいては当社グループのセキュリティに対する信頼性及びレピュテーションが低下し、ユーザー及び取引先の離反を招く可能性があります。また、日本国内における、キャッシュレス決済の認知、利用頻度の高まりにより、クレジットカード同様、社会インフラの一つとして認識されていることから、より一層高い信頼性が求められます。両社は、キャッシュレス決済関連システムの障害発生及び不正アクセスを防ぐため、システムの冗長構成(バックアップ体制の構築)、セキュリティの強化等に努めていますが、かかる取組が期待どおりの効果を得られなかった場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3) モバイルセグメント

  ① モバイル事業

 1) 法的規制等

楽天モバイル株式会社が提供する通信サービスは、日本及び今後事業展開を予定する各国において、通信事業に関する法令、安全保障に関する制約、事業・投資に係る許認可等、規制の改廃、政策決定等により、直接又は間接の影響を受ける可能性があります。また、同社は、電気通信役務の円滑な提供のために他の電気通信事業者の通信設備と同社の通信設備を相互接続するため相互接続協定を結んでいます。現在、電気通信設備を有する者は他事業者に対して原則として接続義務を有していますが、電気通信事業法等の改正等により、接続義務の撤廃や緩和等の措置が取られ、同社の負担すべき使用料、相互接続料等が増加する等、同社にとって不利な形で条件変更がなされる可能性があります。

同社は当社グループと協働し、日本及び今後事業展開を予定する各国の通信事業に関する法令諸規則等の改廃、政策決定等の動向を注視し、適宜、弁護士等をはじめとする外部専門家及び当局に事前相談すること等により、必要な情報を早期収集するとともに当該動向に適合するようすみやかに運用方法を変える等しかるべき対応策を講じ、またそれら対応策の実施状況をモニタリングしています。このように必要な対応策を講じ、リスクの軽減に努めていますが、これらのリスクが顕在化する時期を完全に予測することは困難であり、また完全に回避できる保証はなく、これらの法令等の改廃、政策決定等の動向により、同社のサービスの提供に制約等を受け又は不測の費用が発生する可能性があります。また、同社がこれらの法令等に違反する行為を行った場合には、行政機関から行政処分等を受ける可能性があります。かかる場合、当社グループの信頼性の低下、事業展開の制約等が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、同社及び当社グループでは内部管理体制の強化、社内規程等の整備と周知及びコンプライアンス教育を徹底し、グループ全体で重大な法令違反や不正行為等の防止に努めています。しかしながら、同社及び当社グループのみならず取引先に起因するものも含むコンプライアンスに関するリスクは完全に排除できるものではなく、同社及び当社グループがこれらのリスクに対処できない場合には、行政機関からの行政処分や金銭的な損失及び損害の発生により、同社及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2) 他事業者との競争、市場及び事業環境

本事業の市場は、強固な顧客基盤を有する他の移動体通信事業者(MNO)及び仮想移動体通信事業者(MVNO)との価格競争等が生じています。また、各社が提供するサービスの同質化が進み、通信事業者が新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大する等、事業環境は大きく変化しています。そのような事業環境の中、同社は独自の革新的な技術を用いた仮想無線ネットワークの実現により、安価で高速な通信環境を生かし通信サービスをユーザーに提供しています。また、当社グループの「楽天エコシステム」を生かし、当社グループのほかの魅力的なサービスへのアクセスを容易にすることにより、競合他社と差別化を図り、ユーザーの獲得を図っています。しかしながら、かかる施策を推進しても、当社グループが提供する優位性を生かせず、逆に競合他社が既存の優位性に加え、安価な通信サービス等を展開することにより、同社において新規ユーザーの獲得及び維持が困難になり、同社及び当社グループが、期待どおりにサービス及び関連商品を提供できない可能性があります。

かかる状況の下、前述の施策によっても他通信事業者との競争に対抗しきれない場合には、想定している契約者数や顧客単価が計画どおりの水準に達しないことにより収益貢献できず、同社及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 3) 設備・機器

同社による移動体通信事業者(MNO)サービスの拡大及び品質向上に向けて、基地局及び伝送・交換等を行う通信設備を設置するための地権者との協議、通信ネットワークを構築するための他通信事業者が保有する通信回線設備との連携、通信機器やネットワーク機器、携帯端末の調達等を行っていますが、これらの協議等が計画どおりに進まない場合には、同社及び当社グループにおいて当該サービスを計画どおりに拡大できず、追加費用が発生するほか、通信機器の売上が減少する等、同社及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 4) 安定的な通信サービスの提供

同社は、通信という社会インフラを提供する社会的使命を認識し、安定的な通信サービスの提供に努めています。また、危機管理基本方針を定め、それに基づき事業継続計画(BCP)を策定し、危機発生時の初動対応、重要業務の継続及び早期復旧に対応できるよう努めるとともに、地方自治体等と協定を締結し、大規模災害に備えた連携体制を構築しています。同時に、ネットワークの品質とセキュリティ向上に努め、外部からの攻撃への対応策を実施しています。しかしながら、同社の想定を大きく上回るサイバー攻撃等の外部からの攻撃、自然災害・事故等による通信障害等の不測の事態が発生する可能性を否定することはできず、万が一、これらが発生した場合には、サービス提供の制約又は一時的な停止を余儀なくされ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、同社は2023年10月23日、「プラチナバンド」と呼ばれる700MHz帯における移動通信システム普及のための特定基地局開設計画の認定を総務大臣から受けました。本認定に伴い同社では、700MHz帯を活用したモバイルネットワークの商用サービスを2024年6月27日に開始し、順次展開を行っています。

さらに同社は、低軌道衛星を活用したモバイル通信の実現に向け、通信試験・事前検証用の実験試験局予備免許を取得し、実験試験局免許の付与を受け次第、日本国内における低軌道衛星を活用したモバイル通信試験及び事前検証を実施します。今後も、楽天回線エリアの拡大や通信品質の向上に努め、顧客にどこでも快適で利便性の高い通信サービスをご利用いただけるよう取り組んでいますが、事前検証の結果次第では、当初の予定どおりのスケジュールでのサービス提供ができず、同社及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 5) 第三者との提携等

同社では、自社の基地局及び伝送・交換等を行う通信設備の拡充を行っていますが、他の電気通信事業者(ローミング事業者)の回線を使用したサービス(ローミングサービス)の提供も行っており、安定的なサービス提供に努めています。しかしながら、何らかの理由により、提携するローミング事業者が回線の利用料を引き上げた場合、同提携が終了するに至った場合又は当該ローミング事業者の通信設備が自然災害等により利用が困難になった場合には、同社が提供するサービスの変更を余儀なくされる又はサービス提供に支障をきたす可能性が否定できません。かかる場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 6) グローバル事業

当社グループは、楽天シンフォニー株式会社を通じ、4G及び5G用のインフラ並びにプラットフォームソリューションを世界市場に提供しています。1&1 AG(本社:ドイツ)と締結した長期的なパートナーシップのもと、各社は、革新的なOpen RAN技術に基づく、欧州初となる完全仮想化モバイルネットワークを構築します。しかしながら、同社のビジネスモデルは収益化まで時間を要し、また複数国間の企業を結合した組織となるため、カントリーリスクの発現等予期しえない事象により、同社のサービス展開等が遅延することで、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

楽天シンフォニー株式会社は、政府機関、通信事業者や企業向けにグローバル展開することを目指し、コスト管理を行いつつ期待される製品の性能を満たすよう開発に努めています。しかしながら、技術上又は顧客のニーズの変化等の理由により、同社が開発計画を変更する必要が生じ、開発工数が増加した結果、開発遅延を引き起こす可能性があります。また、顧客に保証したサービス品質を達成できないことで損害賠償請求がなされたり、知的財産等に関する訴訟等の法的紛争が発生する可能性があります。加えて、第三者から知的財産権のライセンス等を取得する必要が生じる可能性もあります。これらの事情により、当初計画より多額の費用が発生した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、同社においては戦略的パートナーとのビジネス上のパートナーシップに加え、資本等の受け入れの検討も進めていますが、事業環境等の変化によりそれらが予定どおり進捗しない場合には、同社及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② エネルギー関連事業

電力小売事業は、卸電力取引市場で電力を調達しているため、電力調達価格の価格変動リスクを負っています。

同事業は、卸電力取引市場での電力調達価格の変動に備えるため、電力調達の一部を固定価格で契約するとともに、卸電力取引価格に連動した小売料金を導入しています。しかしながら、電力調達価格の価格変動リスクを完全に回避できる保証はなく、卸電力取引市場における電力取引価格の変動により同事業の電力仕入価格が高騰する等の事態が発生した場合には、同事業及び当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況

当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。

Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産償却費等を指します。

(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。

 

①  当期の経営成績(Non-GAAPベース)

当連結会計年度における世界経済は、一部の地域において足踏みがみられるものの持ち直しており、その先行きについては、欧米における高い金利水準継続等の影響による景気の下振れリスクの高まりや、米国の今後の政策動向等による影響に留意する必要があります。日本経済については、個人消費の持ち直しに一部足踏みが残るものの、景気の緩やかな回復が続くことが期待されています。

「情報通信白書」(注)によると、情報通信分野の技術政策は、あらゆる産業や社会活動の基盤となり、国境を越えて活用されていくことが見込まれるBeyond 5Gに向けた取組を中心に推進されています。また、AI等のデジタルを利用した新テクノロジーは、この先更に私たちの社会・経済活動を変革していくと期待されています。

このような環境下、当社グループは、メンバーシップ及び共通ポイントプログラムを基盤にしたオンライン・オフライン双方のデータ、AI等の先進的技術を活用したサービスの開発及び展開、モバイルサービスにおけるネットワーク品質の向上及びユーザー獲得等を積極的に進めています。楽天エコシステムを更に進化・拡大させることで、当社グループの競争力を高めていくとともに、インターネットサービス、フィンテック、モバイル等、多岐にわたるサービスを通じて蓄積したユニークなデータ資産を保有している当社グループだからこそ可能であるソリューションサービスを開発していくことで、「AIエンパワーメントカンパニー」としても進化し、人々の生活をより便利で豊かにすることを目指しています。また、足元において物価上昇等の景気の先行きへの不透明感が伴う中、多種多様な事業ポートフォリオを有する当社グループが強みとして発揮できる相乗効果を最大限生かすことで、消費者動向やニーズを的確に捉え、更なる成長機会を捉えていきます。

インターネットサービスにおいては、流通総額及び売上収益の更なる成長のために、新規顧客の獲得、クロスユースの促進、自治体や地域事業者との連携を深化させたサービスの開発、地域経済活性化等に注力するとともに、マーケティング施策変更により、収益性の向上を目指した結果、大幅な増益を達成しました。フィンテックにおいては、各サービスにおける顧客基盤及び取扱高の拡大に努めた結果、更なる売上高の伸長とセグメント利益の向上につながりました。また、モバイルにおいては、自社エリア及びパートナー回線の活用による効率的なネットワーク品質の改善が進み、マーケティング活動の強化を行った結果、契約回線数が増加し売上収益が拡大したことに加え、コスト最適化努力を継続したことで、セグメント損失は着実に縮小傾向にあります。

この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は2,279,233百万円(前連結会計年度比10.0%増)、Non-GAAP営業利益は7,048百万円(前連結会計年度は153,041百万円の損失)となりました。また、当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益は2019年連結会計年度以来5年ぶりに黒字化を達成しました。

(注) 出典:「令和6年版情報通信白書」(総務省)

 

 

(Non-GAAPベース)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

売上収益

2,071,315

2,279,233

207,918

10.0

Non-GAAP営業利益又は損失(△)

△153,041

7,048

160,089

 

 

②  Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整

当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産償却費は6,821百万円、株式報酬費用は15,910百万円となりました。なお、前連結会計年度に計上された非経常的な項目には、ネットスーパー事業の運営方法の変更に伴う固定資産の減損損失15,922百万円、モバイル事業におけるローミング契約の見直しに基づき設備投資計画を変更したことに伴い一時的に発生した基地局工事等のキャンセルに係る費用等13,598百万円、株式会社西友ホールディングスの全株式を譲渡したことに伴い発生した売却損益、2022年連結会計年度に発覚した子会社の元従業員及び取引先の共謀による不正行為に係る弁護士費用等、外部の専門家に対する報酬等が含まれています。また、当連結会計年度に計上された非経常的な項目には、保険事業の生損保一体型基幹システム及びその他のシステムの一部に係る除却損5,863百万円、損害保険事業における基幹システムの開発計画の見直しに伴う固定資産の減損9,662百万円、令和6年能登半島地震における基地局の保守修繕費等の発生費用1,154百万円、モバイル事業における一部代理店との契約の見直し及び取引の再評価による契約獲得のためのコストから認識した資産等の取崩し損失5,411百万円、楽天シンフォニー事業における先進的なネットワークソフトウエア開発により注力する形のビジネスモデル転換に伴う除却損1,891百万円及び資金生成単位の変更に伴う固定資産の一部減損2,155百万円、楽天農業事業及び海外広告事業の将来の収益見通しを再評価したことによる固定資産の減損1,667百万円、楽天チケット事業のリストラクチャリングに伴う固定資産の減損等1,305百万円、Viber Media S.a.r.l.の株式のグループ内譲渡及び楽天カード株式会社の株式の一部譲渡に伴う租税公課4,151百万円、海外子会社の売却未収金の回収不能リスクに伴い計上した貸倒引当金繰入額4,386百万円、International Business Machines Corporationとの間の訴訟の解決に係る費用、AST SpaceMobile, Inc.株式の会計上の取り扱いの変更による再測定益106,906百万円並びにみん就株式会社の譲渡益1,613百万円等が含まれています。なお、連結損益計算書において、モバイル事業における契約獲得のためのコストから認識した資産等の取崩し損失並びにViber Media S.a.r.l.の株式のグループ内譲渡及び楽天カード株式会社の株式の一部譲渡に伴う租税公課は営業費用に、それ以外の収益及び費用は主にその他の収益及びその他の費用に計上されています。

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

Non-GAAP営業利益又は損失(△)

△153,041

7,048

160,089

無形資産償却費

△13,564

△6,821

6,743

株式報酬費用

△14,318

△15,910

△1,592

非経常的な項目

△31,934

68,658

100,592

IFRS営業利益又は損失(△)

△212,857

52,975

265,832

 

 

 

③  当期の経営成績(IFRSベース)

当連結会計年度における売上収益は2,279,233百万円(前連結会計年度比10.0%増)、IFRS営業利益はAST SpaceMobile, Inc.株式の会計上の取り扱いの変更による再測定益の影響等により52,975百万円(前連結会計年度は212,857百万円の損失)、当期損失(親会社の所有者帰属)は繰延税金資産の一部取崩し等の影響により162,442百万円(前連結会計年度は339,473百万円の損失)となりました。なお、当連結会計年度において、IFRS営業利益は2019年連結会計年度以来5年ぶりに黒字化を達成しました。

 

(IFRSベース)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

売上収益

2,071,315

2,279,233

207,918

10.0

IFRS営業利益又は損失(△)

△212,857

52,975

265,832

当期損失(△)
(親会社の所有者帰属)

△339,473

△162,442

177,031

 

 

 

④  セグメントの概況

各セグメントにおける業績は次のとおりです。IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業利益ベースで表示しています。

 

1) モバイルセグメント関連投資

第3四半期連結会計期間より、モバイルセグメントに関連する投資の今後増加想定に基づき、当該投資を管轄する組織を設立しました。これによりモバイルセグメント関連投資の管理方法が変更となり、前連結会計年度のインターネットサービスセグメントに係るセグメント利益は1,700百万円減少し、モバイルセグメントに係るセグメント損失は同額減少しています。

 

2) モバイルエコシステム貢献

第3四半期連結会計期間より、楽天エコシステム内におけるセグメント間の相互貢献効果が拡大している状況を踏まえ、相互貢献効果及び相互送客効果(以下「モバイルエコシステム貢献」)も含めて精緻に業績評価を行えるよう、これらのモバイルエコシステム貢献をセグメント損益に反映しています。

モバイルエコシステム貢献は、特に楽天モバイルMNO契約者が非契約者と比較して当社グループの各種サービスを利用する傾向が高くなることに基づき算出された貢献効果から、各セグメントから享受する送客効果を控除した指標であり、セグメント間の相互貢献効果及び相互送客効果を数値化すべく以下のとおり計算し、当連結会計年度のセグメント情報に反映しています。

これに伴い、各セグメント損益は後述の表のとおり、前連結会計年度のセグメント情報を修正再表示しています。

なお、連結上の売上収益、Non-GAAP営業損益、営業損益に与える影響はありません。

 

モバイルエコシステム貢献=ⅰ)楽天モバイルMNO契約者の粗利益ベースのアップリフト効果-ⅱ)グループ会社からモバイル事業への送客効果

 

セグメント間のアップリフト効果及び送客効果の計算方法

ⅰ) 楽天モバイルMNO契約者の粗利益ベースのアップリフト効果

当社グループの各事業の特性に応じて、下記いずれかの方法により月額を計算しています。

 

(a) 楽天モバイルMNO個人契約者と非契約者を比較した場合の当社グループ各事業における各月の直近1年間のユーザー1人当たり月次平均売上の差×各月の各事業の粗利率×各月末の楽天モバイルMNO個人契約数

 

(b) 楽天モバイルMNO個人契約者と非契約者を比較した場合の当社グループ各事業における年間利用率の差×各事業の直近1年間のユーザー1人当たり月次平均売上×各月の各事業の粗利率×各月末の楽天モバイルMNO個人契約数

 

ⅱ) グループ会社からモバイル事業への送客効果

グループ会社のサイトからモバイル事業の契約に至った各月の楽天モバイルMNO個人契約数×送客コスト

 

※ アップリフト効果の計算対象事業

18事業(楽天市場、楽天ブックス、楽天24、楽天ビック、楽天Kobo、楽天ファッション、楽天トラベル、楽天マート、楽天ビューティー、楽天ペイアプリ決済、楽天ペイオンライン決済、楽天Edy、楽天ポイントカード、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天生命、楽天損保)を対象としています。

 

 

(インターネットサービス)

主力サービスである国内ECにおいては、収益性の向上を企図したマーケティング施策変更の影響を受け、前連結会計年度と比べ流通総額の成長率は一時的に鈍化したものの、国内ECの成長が増収増益を牽引しました。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』においては、新規顧客獲得やクロスユースの促進等に注力しました。インターネット旅行予約サービス『楽天トラベル』においては、顧客の利便性や満足度の向上を追求した各種施策に加え、引き続き好調なインバウンド需要の取り込みにより、流通総額が拡大しました。

海外インターネットサービスを運営するインターナショナル部門においては、米国のオンライン・キャッシュバック・サービス『Rakuten Rewards』が堅調な売上成長を継続しました。海外コンテンツ事業においては、電子書籍サービスの『Kobo』の新カラー対応端末の売上が引き続き好調だったほか、ビデオストリーミングサービスの『Viki』において利用者が増加する等、各事業が着実に成長を継続し、インターナショナル部門での年間黒字化を達成、セグメント利益の拡大に寄与しました。

この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は1,282,087百万円(前連結会計年度比5.8%増)、セグメント利益は85,137百万円(前連結会計年度比29.8%増)となりました。

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

セグメントに係る売上収益

1,212,314

1,282,087

69,773

5.8

セグメント損益

 

 

 

 

 

考慮前

75,131

96,940

21,809

29.0

モバイルエコシステム貢献額

△9,564

△11,803

△2,239

考慮後

65,567

85,137

19,570

29.8

 

 

(フィンテック)

フィンテックにおいては、クレジットカード関連サービス、銀行サービス、証券サービス、ペイメントサービス等において、前連結会計年度比での増収増益を達成しました。クレジットカード関連サービスにおいては、2024年6月に『楽天カード』の累計発行枚数が3,100万枚を突破した後も顧客基盤の拡大が継続し、ショッピング取扱高が伸長しました。これらに加え、マーケティング最適化等も奏功し、大幅な増益が継続しました。銀行サービスにおいては、顧客基盤の拡大に伴う運用資産の増加及び日銀の政策金利の引き上げに伴う運用利回りの向上により、資産運用収益が拡大し、大幅な増収増益となりました。証券サービスにおいては、顧客基盤の継続的な拡大に加え、収益源の多様化等により、国内株式取引を手数料無料化しつつも増益を達成しました。また、ペイメントサービスにおいても効率的なマーケティング施策等により事業成長が継続しています。

この結果、フィンテックセグメントにおける売上収益は820,419百万円(前連結会計年度比13.1%増)、セグメント利益は153,377百万円(前連結会計年度比37.9%増)となりました。

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

セグメントに係る売上収益

725,165

820,419

95,254

13.1

セグメント損益

 

 

 

 

 

考慮前

122,915

167,994

45,079

36.7

モバイルエコシステム貢献額

△11,691

△14,617

△2,926

考慮後

111,224

153,377

42,153

37.9

 

 

 

(モバイル)

モバイルにおいては、ネットワーク品質の向上及びその認知拡大努力に取り組むとともに、「最強家族プログラム」や「最強青春プログラム」等の各種プログラムの展開、『楽天市場』や『楽天カード』をはじめ楽天エコシステムの各種サービスを活用したマーケティング施策展開等の結果、2024年12月に、契約回線数(法人向けのBCPプラン含むMNO、MVNE、MVNOの合算)が830万回線超となりました。ARPUについても、データ利用量の増加に加え、一部オプションの有料化、Rakuten Linkにおける広告売上の増加に伴うその他ARPUの向上等を背景に、B2C及びB2BのARPUが前第4四半期連結会計期間と比較してそれぞれ上昇しました。また、楽天モバイルMNO契約者のロイヤルユーザー化も進展し、モバイルエコシステム貢献額の増加につながりました。引き続き、様々なユーザーニーズに対応して、分かりやすく、コストパフォーマンスの高いサービスを提供することで、顧客満足度の最大化を図ってまいります。

この結果、モバイルセグメントにおける売上収益は440,698百万円(前連結会計年度比20.9%増)、セグメント損失は208,933百万円(前連結会計年度は314,569百万円の損失)となりました。特に、モバイル事業においては、2024年12月に単月でのEBITDA黒字化を達成しました。

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

 

(自2023年1月1日

2023年12月31日)

(自2024年1月1日

2024年12月31日)

セグメントに係る売上収益

364,556

440,698

76,142

20.9

セグメント損益

 

 

 

 

 

考慮前

△335,824

△235,353

100,471

モバイルエコシステム貢献額

21,255

26,420

5,165

24.3

考慮後

△314,569

△208,933

105,636

 

 

⑤  生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当社グループは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしていません。

(受注実績)

モバイルセグメントにおいて、Open RANベースの通信インフラプラットフォーム及びサービスの提供等を行っており、受注実績は次のとおりです。その他のセグメントは、インターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、受注生産を行っていませんので、受注実績に関する記載はしていません。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

モバイル

41,134

1,132.3

77,891

△31.8

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

(販売実績)

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

インターネットサービス

1,282,087

5.8

フィンテック

820,419

13.1

モバイル

440,698

20.9

内部取引等

△263,971

合 計

2,279,233

10.0

 

 

 

(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 経営成績の分析

(売上収益)

当連結会計年度における売上収益は2,279,233百万円となり、前連結会計年度の2,071,315百万円から207,918百万円(10.0%)増加しました。これは、インターネットサービスにおける、『楽天市場』に代表される国内既存事業の成長に加え、『Rakuten Rewards』や『Rakuten Kobo』等海外事業の成長が売上収益に貢献したこと、フィンテックにおける、『楽天カード』の会員基盤拡大に伴う手数料収入等の増加及びリボルビング払いやキャッシングニーズの回復傾向が見られたことに伴う各手数料収入の伸長、銀行サービスの運用資産の順調な積み上げ及び政策金利の引き上げによる金利収益の伸長、証券サービスの預り資産の順調な積み上げ及び収益源の多様化による手数料及び金利収益の伸長、『楽天ペイ』の会員基盤拡大に伴う手数料収入等の増加、モバイルにおける通信料金収入の増加や、楽天シンフォニー事業における製品販売収益の増加等が売上収益に貢献したこと等によるものです

 

(営業費用)

当連結会計年度における営業費用は2,303,806百万円となり、前連結会計年度の2,234,959百万円から68,847百万円(3.1%)増加しました。これは、モバイルにおいて基地局設備投資等の見直しやローミング費用を含む各種コスト削減を実施した一方、フィンテックにおける銀行サービスの預金が増加したことに伴う支払利息の増加や、モバイルにおける楽天シンフォニー事業の製品原価の増加等によるものです。

 

(その他の収益)

当連結会計年度におけるその他の収益は125,784百万円となり、前連結会計年度の10,272百万円から115,512百万円(1,124.5%)増加しました。これは、AST SpaceMobile, Inc.株式の会計上の取り扱いの変更による再測定益を106,906百万円計上したこと等によるものです

 

(その他の費用)

当連結会計年度におけるその他の費用は48,236百万円となり、前連結会計年度の59,485百万円から11,249百万円(18.9%)減少しました。これは、前連結会計年度にネットスーパー事業の運営方法の変更に伴う固定資産の減損損失を15,922百万円計上したこと等によるものです。

 

(営業利益)

当連結会計年度における営業利益は52,975百万円となりました(前連結会計年度は、212,857百万円の損失)。これは、インターネットサービス、フィンテック及びモバイルにおいて、事業が堅調に推移し、売上収益が増加したことに加え、全社において、コスト削減施策等が奏功したこと及びAST SpaceMobile, Inc.株式の会計上の取り扱いの変更による再測定益を計上した結果、前連結会計年度と比較して業績が大幅に改善したことによるものです

 

(持分法による投資損益)

当連結会計年度における持分法による投資損失は9,032百万円となりました(前連結会計年度は、13,731百万円の損失)。これは、AST SpaceMobile, Inc.に対する投資損失が減少したこと等によるものです

 

(税引前当期利益)

当連結会計年度は16,277百万円の税引前当期利益となりました(前連結会計年度は、217,741百万円の損失)。これは、営業利益で説明した要因等により業績が大幅に改善したことによるものです。

 

(法人所得税費用)

当連結会計年度における法人所得税費用は145,762百万円となりました(前連結会計年度は111,794百万円)。これは、当連結会計年度において、楽天カード株式会社がグループ通算制度から離脱したことに加え、その他通算グループにおける予算未達の状況に起因する将来所得の不確実性を考慮し、繰延税金資産を取崩したこと等によるものです

 

(当期損失)

以上の結果、当期損失は129,485百万円となりました(前連結会計年度は、329,535百万円の損失)。

 

(親会社の所有者に帰属する当期損失)

以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は162,442百万円となりました(前連結会計年度は、339,473百万円の損失)。

 

② 財政状態の分析
(資産)

当連結会計年度末の資産合計は26,514,728百万円となり、前連結会計年度末の資産合計22,625,576百万円と比べ、3,889,152百万円増加しました。これは主に、証券事業の金融資産1,083,744百万円増加現金及び現金同等物1,043,214百万円増加銀行事業の貸付金743,902百万円増加銀行事業の有価証券721,923百万円増加したことによるものです。

 

(負債)

当連結会計年度末の負債合計は25,276,214百万円となり、前連結会計年度末の負債合計21,537,853百万円と比べ、3,738,361百万円増加しました。これは主に、銀行事業の預金1,579,145百万円増加証券事業の金融負債1,275,775百万円増加社債及び借入金414,829百万円増加したことによるものです。

 

(資本)

当連結会計年度末の資本合計は1,238,514百万円となり、前連結会計年度末の資本合計1,087,723百万円と比べ、150,791百万円増加しました。これは主に、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期損失を162,442百万円計上したこと等により利益剰余金180,709百万円減少した一方で、楽天カード株式会社の株式の一部譲渡等により資本剰余金107,869百万円増加非支配持分59,495百万円増加、米ドル建永久劣後特約付社債の発行によりその他の資本性金融商品81,401百万円増加、円安の影響による為替換算調整勘定の変動等によりその他の資本の構成要素76,861百万円増加したことによるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ1,043,214百万円増加し、6,170,888百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,190,882百万円の資金流入(前連結会計年度は724,192百万円の資金流入)となりました。これは主に、証券事業の金融資産の増加による資金流出が1,083,478百万円、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が742,063百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,574,499百万円、証券事業の金融負債の増加による資金流入が1,275,335百万円となったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、921,724百万円の資金流出(前連結会計年度は597,416百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が715,151百万円(取得による資金流出が1,742,002百万円、売却及び償還による資金流入が1,026,851百万円)、無形資産の取得による資金流出が159,285百万円となったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、757,469百万円の資金流入(前連結会計年度は291,956百万円の資金流入)となりました。これは主に、社債の償還による資金流出が323,397百万円となった一方で、社債の発行による資金流入が601,313百万円、長期借入れによる資金流入が195,279百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による資金流入が164,997百万円となったことによるものです。

 

 

④ 収益の認識及び表示方法

収益の認識及び表示方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記2. 重要性がある会計方針 (15) 収益」をご参照ください。

 

⑤ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は、それらが利用される将来の課税所得を稼得する可能性が高い範囲内で、全ての将来減算一時差異及び全ての未使用の繰越欠損金及び税額控除について認識しています。当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りは当社グループとしても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループが繰延税金資産を減額する可能性もあります。

 

⑥ 公正価値で測定する金融資産

公正価値で測定する金融資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 48. 金融商品の公正価値」をご参照ください。

 

(3) 資産の財源及び資金の流動性

 

① 財務運営の基本方針

当社は、グループの持続的成長の実現を可能とするための資金ニーズに対し、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行うこと、また、金融事業に従事する子会社の財務健全性を堅持するため、十分な流動性の確保を図ることを財務運営の基本方針としています。

経営の独立性が求められるフィンテックセグメントに属する子会社及び外部金融機関からのリース調達をしている楽天モバイル株式会社を除く子会社においては、原則として銀行等の外部金融機関からの資金調達を行わず、グループ内のキャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、当社が資金調達、グループ資金効率の向上、流動性の確保等を行っています。

また、成長が続くインターネットサービスセグメントにおける運転資金の増加等については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金や、コマーシャル・ペーパー等の短期借入金を充当することを基本方針としています。また、投資フェーズにあるモバイルセグメントでの設備投資資金への資金充当については、下記「③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し」をご参照ください。

なお、投資等の新規に資金投下を要する案件等については、外部有識者を含むメンバーで構成される投融資委員会において、案件の取り進めの可否を事前審議しており、その審議結果については、取締役会に報告することに加え、一定額以上の案件につき当社の取締役会の承認決議を要件とすることとしています。さらに、投資後のモニタリングを継続的に実施し、必要に応じて機動的にポートフォリオの見直しを実施しています。これらを通じて、グループ全体でのリスク管理及び最適な経営資源の配分を実現することを目標としています。

以上を踏まえ、具体的な資金調達手法及び資金調達のタイミングに関しては、グループ全体の事業計画に基づくキャッシュ・フロー、手元流動性の状況等を踏まえて判断しています。資金調達に関するリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 3 事業運営全般リスク (9) 財務・資金に関するリスク ① 資金調達等に関するリスク」をご参照ください。

 

② 現状

当社グループは、当連結会計年度末時点において、総額5,461,713百万円の社債及び借入金を有しており、前連結会計年度比666,540百万円増となりました。このうち、短期の社債及び借入金は前連結会計年度比207,299百万円増の458,978百万円で、内訳は、短期借入金271,878百万円、コマーシャル・ペーパー187,100百万円となっています。

なお、当連結会計年度末時点の当社の長期及び短期の信用格付けは、日本格付研究所(JCR)でA-/J-1、格付投資情報センター(R&I)でBBB+/a-2、S&Pグローバル・レーティングでBB(長期)となっています。
 

 

③ 今後の資金調達のニーズ及び資金調達の見通し

連結子会社の楽天モバイル株式会社は、2018年4月に「第4世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設計画」、2019年4月に「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画」の認定をそれぞれ受け、2020年4月に4Gサービスを本格的に開始し、同年9月には5Gサービスを開始しました。当該認定された計画における設備投資額は2026年3月末までに最大800,000百万円程度となる見通しです。また、2021年4月には「第5世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設計画」の認定を受け、当該認定された計画における設備投資額は2029年3月末までに約118,600百万円程度となる見通しです。その後、4Gに係る設備投資額については、基地局の高密度化による通信品質の向上、今後見込まれる利用者の増加やデータ利用量の増加等に対応するため、基地局数を当初計画より増やして設置を進めており、それに伴い基地局向け設備投資額も増加しています。加えて、2023年10月に「700MHz帯における移動通信システムの普及のための特定基地局の開設計画」の認定を受け、2033年度末までに累計約54,400百万円の設備投資を行う予定です。

モバイル事業における今後の必要資金については、当社から楽天モバイル株式会社への投融資、楽天モバイル株式会社におけるリース、流動化ファイナンス等を活用して調達する予定です。これまでの当該投融資については、当社が2018年12月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した182,000百万円(そのうち、75,000百万円については2021年7月に買入消却を実施)、2020年11月に発行した利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)により調達した120,000百万円、2021年3月に実行した第三者割当による新株の発行及び自己株式の処分により調達した242,347百万円、同年4月に発行した米ドル及びユーロ建永久劣後特約付社債により調達したそれぞれ1,750百万米ドル、1,000百万ユーロ、同年12月に発行した無担保社債により調達した300,000百万円(そのうち、55,800百万円については2024年4月に買入消却を実施)、2022年6月に発行した無担保社債により調達した150,000百万円、同年11月に発行したドル建無担保社債により調達した500百万米ドル(そのうち、150百万米ドルについては2024年2月に買入消却を実施)、2023年1月に発行したドル建無担保社債により調達した450百万米ドル(その全額について2024年2月に買入消却を実施)、同年2月に発行した無担保社債により調達した250,000百万円、2023年5月に実行した公募及び第三者割当による新株の発行での調達資金等の全部又は一部を充当しています。なお、2025年12月期の楽天モバイル株式会社における設備投資額は、約150,000百万円を予定しています。

また、今後、5Gサービス等における設備投資の前倒し等により、当社から楽天モバイル株式会社への更なる出資等が求められる可能性もあります。その場合においては、上記の「① 財務運営の基本方針」も踏まえ、最適な資金調達手段を検討していきます。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度における、経営上の重要な契約等は以下のとおりです。

 

(1) 社債の発行

当社は、2024年2月6日に、2027年2月満期ドル建無担保社債を発行しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.社債及び借入金」をご参照ください。

 

(2) 社債の買付

当社は、2024年1月25日~2024年2月23日午後5時(アメリカ東部時間)を応募期間とする、2024年11月満期ドル建無担保社債の現金対価による公開買付けを実施しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.社債及び借入金」をご参照ください。

 

(3) 社債の発行

当社は、2024年4月10日に、2029年4月満期ドル建無担保社債を発行しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.社債及び借入金」をご参照ください。

 

(4) 多額の資金調達

当社グループは、2024年7月25日に、当社グループが保有する通信設備等をオーケストラ合同会社に売却し、同時に当社グループが継続して当該資産を管理運営するための賃貸借契約をオーケストラ合同会社と締結しました。

取引の概要は以下のとおりです。

借入先

オーケストラ合同会社

借入金額

1,700億円

利率

6.5%

借入日

2024年8月29日

借入期間

10年間

返済条件

毎月元本と利息を支払

資金使途

モバイル事業における運転資本及び設備投資資金等

 

 

当該取引は実質的に金融取引に該当するため、当社グループでは金融取引として会計処理しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.社債及び借入金」をご参照ください。

なお、オーケストラ合同会社は当社グループ外の投資家から資金調達を行う目的で設立された合同会社であり、当該通信設備等の購入資金をマッコーリー・アセット・マネージメント率いる世界有数のグローバルインフラ投資家から調達します。

 

 

(5) 楽天カード株式会社の株式譲渡

当社は、2024年11月13日の取締役会において、当社の連結子会社である楽天カード株式会社の普通株式14.99%を株式会社みずほフィナンシャルグループに譲渡(以下「本株式譲渡」)することを決議し、同日、株主間契約及び株式譲渡契約を締結しました。

本株式譲渡の概要は、次のとおりです。

 

① 本株式譲渡の背景と目的

本株式譲渡により、フィンテック事業のコアビジネスである『楽天カード』の更なる成長に向けて、株式会社みずほフィナンシャルグループとの連携をより加速させていくことで、盤石な個人向けのビジネスに加え、今後拡大が見込める法人領域での成長機会を追求していきたいと考えています。幅広い顧客基盤を有する株式会社みずほフィナンシャルグループとの提携を深化、拡大することで、『楽天カード』の事業領域の拡大及び持続的な成長に加え、楽天カード株式会社を中核とした楽天フィンテックエコシステム全体の更なる拡大、発展を目指すことは、当社グループの企業価値の向上により資するものと判断し、戦略的な提携に合意しました。

 

② 株式を譲渡する子会社の概要

1) 名称 楽天カード株式会社

2) 本店所在地 東京都港区南青山二丁目6番21号

3) 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 中村 晃一

4) 事業内容 クレジットカード、カードローン、信用保証業務等

5) 資本金 19,323百万円

6) 設立年月日 2001年12月6日

7) 大株主及び持株比率 楽天グループ株式会社 100%保有

 

③ 株式を譲渡する相手先の概要

1) 名称 株式会社みずほフィナンシャルグループ

2) 本店所在地 東京都千代田区大手町一丁目5番5号

3) 代表者の役職・氏名 執行役社長 木原 正裕

4) 事業内容 銀行持株会社、銀行、証券専門会社、その他銀行業におり子会社とすることができる会社の経営管理及びこれに附帯する業務、その他銀行法により銀行持株会社が営むことのできる業務

 

④ 株式の譲渡価額及び株式譲渡前後の議決権保有割合の状況

1) 譲渡価額 1,649億円

2) 株式譲渡実行日 2024年12月1日

3) 譲渡前の議決権保有割合 100%

4) 譲渡後の議決権保有割合 85.01%(注)

(注) 本株式譲渡後も楽天カード株式会社は当社の連結子会社となります。

 

本株式譲渡に伴う非支配持分との取引の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 52. 主要な子会社」をご参照ください。

 

(6) 楽天エナジー株式会社の吸収合併

当社の連結子会社である楽天モバイル株式会社は、2024年12月18日開催の取締役会において、2025年2月1日を効力発生日として、同じく当社の連結子会社である楽天エナジー株式会社を吸収合併することを決議し、同日付で合併契約を締結しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 55.後発事象」をご参照ください。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、当社及び当社グループの開発業務への貢献を目的とし、個々の事業とは別に研究を行っています。日本の拠点に加え、2014年2月にはフランスのパリ市に、2015年7月にはシンガポールと米国ボストン市に、2018年4月には米国サンマテオ市に、2018年12月にはインドのベンガルール市に研究拠点を設け研究体制の拡大を図っています。研究のテーマとしては、今後のインターネット拡大の方向性についてのビジョンに基づき、AI関連技術、ユーザーインタラクション・AR/VR/MR、移動通信システム関連技術及びIoT技術の三つの研究領域を設定しており、その具体的な内容は下記のとおりです。なお、当社グループの研究開発は、主にインターネット関連の基礎技術及び移動通信システム関連技術に関するものであり、特定のセグメントに区分することが困難なため、セグメント別には記載していません。当連結会計年度の研究開発に要した費用の総額は17,136百万円です。

 

(1) AI関連技術

AI関連技術では、当社グループが所有する豊富なテキストデータ及びマルチメディアデータを高度に自動解析する技術や、顧客データ、商品データを基にしたレコメンデーション、広告、検索の最適化技術に取り組み、コマース、金融、モバイル、医療等の各事業に横展開可能なプラットフォーム開発につなげています。

 

(2) ユーザーインタラクション・AR/VR/MR

ユーザーの技術環境の変化に伴う様々なデバイスやセンサーに対応した、リッチなコンテンツ体験として実現するためのユーザーインタラクションを開発し、当社及び当社グループのサービスレベルを全体的に向上させています。本研究分野はAR/VR/MR等の最新インタラクションも含みます。

 

(3) 移動通信システム関連技術及びIoT技術

5G関連技術、次世代の仮想化された無線アクセスネットワークの高度化・ネットワーク運用の自動化に関する技術及びIoT技術基盤の研究開発を行っています。