当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
「大幸薬品は『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念を実現するに当たり、「健康社会の『ないと困る』を追求する。」をスローガンとして掲げすべての企業活動の指針としております。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは事業の持続的成長を図る観点より、売上高及び営業利益の成長性を重視しております。また、資本の効率化による株主利益の最大化を目指し、自己資本利益率(ROE)も重視しております。
(3) 経営環境、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 医薬品事業
国内市場においては、人口の高齢化等に伴う医療費の高騰が社会問題化する中で、セルフケアとしてのセルフメディケーションの推進により、一般用医薬品の市場はさらに拡大するものと予測されます。当社の主力製品「正露丸」が属する止瀉薬市場は、新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、堅調な推移となっております。高まる市場需要を背景に供給体制の強化に努めているものの、当該需要に応えることができず、市場への安定供給が課題となっております。
このような中、医薬品事業の生産体制については、段階的に既存の吹田工場から京都工場への集約を予定しておりましたが、中期的な需要見通しを踏まえ、BCPの観点や海外薬事への対応方針等を総合的に勘案し、より合理的で安定した生産体制を再検討した結果、吹田工場における老朽化対策の投資を行ったうえで、一定の生産を今後も継続し、2工場体制とする方針を2024年8月に当社の取締役会にて決議いたしました。この決議に基づき、生産体制の最適化を図ってまいります。
海外市場においては、特に当社グループの主要市場である中国本土、香港、台湾を含むアジア地域で高い評価を頂いており、需要拡大の期待が持たれます。引き続き、現地の販売代理店と連携を強化し、営業・マーケティング体制を整備し、国内で蓄積した経験・ノウハウ等を活かしながら、主力製品「正露丸」、「セイロガン糖衣A」の販売を強化してまいります。
② 感染管理事業
感染管理事業においては、「クレベリン」の主成分である二酸化塩素の有効性や安全性に関するエビデンス強化によって信頼回復に取り組んでまいりますが、「クレベリン」の属する除菌市場は売上予測が難しい状況が続いていることから、広告宣伝費等のコストコントロールを強化することにより、収益性の改善を目指してまいります。
③ 財務体質の改善
前連結会計年度に発行した行使価額修正条項付第10回新株予約権の行使完了や、保有資産の売却等によって財務体質の改善は進んでおります。医薬品事業及び感染管理事業における採算性の改善に加え、事業規模のスリム化等を通じて固定費の圧縮を図り、収益体質の強化を目指すとともに、更なる財務体質の改善に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する全体方針
当社グループでは、「『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念の下、企業活動を通じて、環境・エネルギー問題や社会課題に対応してまいります。
医薬品事業においては、人口の高齢化等に伴い医療費の高騰が社会問題化する中で、当社「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」の安全性と有効性を世界に広めていくことにより、セルフケアとしてのセルフメディケーション(自己管理治療)の推進に寄与してまいります。また、感染管理事業においては、低濃度二酸化塩素ガスの特許技術を用いて、衛生対策や換気を補うことによるCO2排出量の削減に貢献できるよう様々なエビデンス強化に取り組んでまいります。
①ガバナンス
サステナビリティ関連のリスク及び機会の監視及び管理については、リスクマネジメント委員会にて実施しております。代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会は、各部門長及び監査等委員で構成され、四半期に一度の定期開催に加えて必要に応じて臨時に開催しております。サステナビリティに関することを含めてリスク及び機会の識別・評価を行い、対応策の協議を行っております。なお、取締役会への報告体制については整備に向けて検討中でありますが、リスクマネジメント委員会には代表取締役社長及び社外取締役が参加しているため、必要な情報の連携は図られております。
②リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメント規程に基づき、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行うため、リスクマネジメント委員会を設置しております。各部門において発生しうるリスク及び機会を抽出し、サステナビリティを含むリスク及び機会を網羅的に識別するとともに、各リスク及び機会について、発生頻度や予測される影響度などに基づき、評価及び対応策の検討や対応状況の管理等を進めております。
マテリアリティ(重要課題)については、特定に向けてリスクマネジメント委員会及び関係部署にて協議を進めております。
(2)人的資本に関する戦略と指標及び目標
当社グループは、企業理念を実現できる人材育成のための機会と環境の提供を進めております。
具体的には、体系的な教育プログラムの構築、多様な人材の活躍推進、働きやすさの向上を目的とした社内環境整備を通して実現を目指しております。
企業理念を実現できる人材とは、理念に基づき、スローガンである「健康社会の『ないと困る』を追求する」を実践できる人材であり、具体的には、自分で考え、目標を達成するために他者と協力し、新しい価値を生み出していける人材と定義しております。これらの人材の育成及び定着のために、以下の戦略を設定しております。
①戦略
(ⅰ)人材育成
当社は、『自立』『共生』『創造』という基本理念の考え方に則り、従業員の能力開発と自立を促進するための体系的な教育プログラムの構築をしてまいります。教育体制は、従業員が自らのスキルを継続的に向上させ、変化するビジネス環境に効果的に対応できるよう支援することを目的としております。
(ⅱ)経営戦略の実現を目指した多様な人材の活躍推進
当社は、性別、国籍、職歴、年齢、育児中の社員など、多様な背景を持つ人材が存在することが組織の強みとなると認識しております。多様性を活かし、経営戦略の実現に向けた人材の活躍を推進し、会社全体の成長に繋げてまいります。
(ⅲ)働きやすさの向上を目的とした社内環境整備
従業員一人ひとりがライフスタイルに合わせて最適な働き方を選択できるよう、多様な勤務形態の提供をしております。在宅勤務やフレックス勤務制度等の利用を促進することで、繁忙期と平時で柔軟に勤務時間を選択でき総労働時間の削減に繋がると考えております。
②指標及び目標
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戦略 |
具体的施策 |
指標及び目標並びに実績 |
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人材育成 |
体系立てた教育体制(※)の確立による企業理念を実践できる人材の育成 ※全社員向け研修、マネジメント研修、階層別研修 |
(当期研修実績) ・マネジメント研修:2回 ・階層別研修(一般職向け):1回 ・全社員向け研修:10回 (注)2 |
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経営戦略の実現を目指した多様な人材の活躍推進 |
高校新卒、リファラル、アルムナイ採用等、採用手法の多様化等による、多様な背景を持つ人材の活躍の推進 |
(当期採用実績) 高校新卒:2名 リファラル、アルムナイ採用等:10名 エージェント経由:7名 (注)2 |
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60歳以降の就業希望者の働きがい向上を目指した制度改定の実施 |
(当期制度改定実績) 嘱託社員(定年再雇用)が、働きがいのあるセカンドキャリアを築けるよう評価制度を導入 (注)2 |
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育児中の社員の仕事と育児の両立支援制度の充実 |
・育児中の社員の仕事と育児の両立を支援し、育児休業からの復職率100%及び男性労働者の育児休業等及び育児目的休暇の取得率の100%維持を目指す (当期実績) 育児休業からの復職率: 100% (当期実績) 男性労働者の育児休業等及び育児目的休暇の取得率:100% |
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働きやすさの向上を目的とした社内環境整備 |
在宅勤務、フレックス勤務、育児時短勤務など多様な働き方を提供するための制度利用を推進 |
1人当たり総労働時間対前年比削減率 (有休取得率向上、残業時間の削減) (当期実績) ・有休取得率:82% ・残業時間(1人当たりの月平均) 11.0時間 |
(注)1.人材育成・社内環境整備は連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いがあるため、一律の設定が困難であることから、当連結会計年度については、当社単体について記載しております。
2.表中に記載の指標及び目標も含め、適切な指標及び目標の設定について現在検討中であります。具体的施策を実現する取り組みとして実施した実績を参考として記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループでは、これらリスク顕在化の未然防止及びリスク顕在化の最小化のための対策を講じるよう努めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定製品への依存について
当社グループにおける売上高の大半が「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」、「クレベリン 置き型」によって構成されております。品質等に問題が発生した場合には販売中止・回収を余儀なくされることも考えられ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、当該製品の製造につきましては、培ってきたノウハウをもとに万全の品質管理・品質保証体制をもって臨むとともに、当社グループの強みとなる商品を軸に、研究やマーケティングリソースの分散を避けながら、製品ラインナップを拡げていくことを考えております。
(2)特定取引先への依存について
当社グループの売上高のうち、国内においてはアルフレッサヘルスケア㈱、㈱PALTAC、海外においては香港の一徳貿易有限公司の上位3社への売上高が当連結会計年度において全体の約81%と大きな割合を占めております。これら取引先の経営施策や取引方針の変化、財政状態の悪化等により、販売機会の一時的な喪失等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、取引先の状況を早期に把握できるよう定期的に与信調査等の顧客管理を実施しており、また、新規取引先や新規販売チャネルの開拓も継続して検討してまいります。
(3)海外事業展開に伴うリスク
当社グループは、中国本土・香港・台湾を中心とする海外市場において、従来より「正露丸」、「セイロガン糖衣A」等の販売をしております。当該地域における政治、経済、法律、文化、ビジネス慣習、競合企業、為替、その他様々なカントリーリスク等による予想し得ない事象が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、海外市場の各地域におけるリスク情報を継続的に収集し対応策を検討するとともに、さらなる各地域への事業展開については慎重かつ迅速に行ってまいります。
(4)類似品の存在について
当社グループが製造・販売しております「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」は、他社においても同一又は類似した名称で製造・販売が行われております。このため、当社グループが製造・販売しております製品と類似した商品が市場には多数存在しており、特に類似したパッケージの場合には消費者が当社グループの製品と誤認して購入する可能性が否定できません。また、感染管理事業における主要製品である「クレベリン」についても他社から類似品の製造・販売が行われており、消費者が当社グループの製品と誤認して購入する可能性を否定できません。
さらには、これらの類似品において品質問題等が発生した場合には、当社グループの製品のイメージダウン及び予期せぬ風評被害が発生する可能性も否定できず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、さらなるブランド力の強化、継続的な新製品の市場投入、エビデンスの蓄積・公表等により、類似品との差別化を図り消費者の当社製品への理解が深まるような事業活動を継続してまいります。
(5)急激な需要の変化等に関するリスク
感染管理事業においては、衛生管理製品を市場に提供していくために二酸化塩素ガス特許技術を応用した製品等の企画・開発・販売を進めております。そのため、当該事業は感染対策を中心とした市場環境に影響を受け、新たな感染症の流行拡大及び予防意識の動向等によっては、製品の需要に急激な変化が生じます。想定以上の需要の変化が生じた場合には、一時的な製品供給不足や過剰生産能力、過剰在庫に陥る可能性があり、その結果として当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、急激な需要の変化に柔軟に応じられるサプライチェーンマネジメント体制の強化に取り組んでまいるとともに、長期的な需要を冷静に分析し、投資を意思決定する仕組みを強化してまいります。
(6)原材料価格及び調達に関するリスク
当社グループは、原材料等について急激に価格が高騰した場合、あるいは一部の原材料等について供給が滞り、代替の調達先が確保できない場合には、製品の利益率の悪化や機会損失の発生により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、複数の仕入先の確保、供給能力の高い仕入先との取引等により供給体制強化・安定化を図ってまいります。
(7)製造物責任に関するリスク
当社グループの製品については、品質管理体制を整備し、高い品質水準の確保に努めておりますが、予期せぬ事情により大規模なリコールや生産物賠償責任につながるような大きな品質問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、当社に起因する生産物責任における損害賠償に備えた適切な保険に加入しております。
(8)競合に関するリスク
医薬品事業における「正露丸」、「セイロガン糖衣A」を中心とする当社グループの製品について認知率と市場シェアをより高めるためのマーケティング施策を実施しており、その結果安定的な収益の獲得が出来ております。
また、感染管理事業における製品については、当社の有する特許技術や蓄積されたエビデンス等が他社にとって高い参入障壁となっており、競合の数が限定的となっております。しかし、他社の優れた製品の出現や競合品の価格引き下げが行われた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、ブランド力の一層の強化、継続的な新製品の市場投入、さらなるエビデンスの蓄積・公表等により、当社の競争力を高めてまいります。
(9)法的規制等に関するリスク
当社グループの属する医薬品事業は、国内市場においては、薬機法やGMP省令等の関連法規、また、中国本土・香港・台湾を中心とする海外市場においても同等の法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点におきましては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、予期しない法令違反等によりその許認可等が取り消された場合や何等かの事由により許認可等の更新が出来なかった場合には、当社グループの運営に支障をきたし事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報セキュリティに関するリスク
当社グループでは、事業や業務を効率的に進めるため、デジタル・ITの活用を進めており、これらのシステムにおいては機密性の高い情報や個人情報を取り扱っております。社内外からの不正アクセスやサイバー攻撃等により、データ漏洩やシステムダウン等によるビジネスオペレーションの停止等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、適切なセキュリティサービスを選択するとともに、定期的なセキュリティ研修を実施しております。
(11)継続企業の前提に関する重要事象等の解消について
当社グループでは、2021年12月期から2023年12月期において継続して営業損失及び経常損失を計上していたことから、2022年12月期より継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しておりました。このような状況を解消すべく、当社グループでは、医薬品事業の安定した収益の獲得、感染管理事業の収益性改善及びコスト削減に取り組んでまいりました。
その結果、当連結会計年度において、営業利益629百万円及び経常利益688百万円を計上したことから、当連結会計年度末において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況は解消したと判断しております。なお、事業運営に必要な資金については確保できていることから、追加の資金調達余力としていたシンジケーション方式コミットメントライン契約につきましては、2025年1月31日をもって契約は終了しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や訪日外国人旅行者数の増加等により、国内景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、継続的な物価の上昇による消費の減速懸念等、依然として景気の見通しは不透明な状況が続いております。
このような中、当社グループは医薬品事業において、市場への安定供給という課題に対し、供給体制を強化するため、製造人員の増強やシフト生産体制の構築、京都工場の医薬品ラインの立ち上げ等に取り組んでまいりました。また、感染管理事業では二酸化塩素のエビデンス強化に係る研究開発を通じた消費者の皆様への信頼醸成や、売上規模に応じたコスト管理等収益性の改善施策に取り組んでまいりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高につきましては、医薬品事業の増収により、対前期比2.8%増の6,292百万円となりました。売上総利益につきましては、医薬品事業の増収影響等により、対前期比42.3%増の3,666百万円となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、継続的なコスト削減施策の実行等により、対前期比15.2%減の3,036百万円となりました。
これらの結果、当連結会計年度の営業利益は629百万円(前期は1,005百万円の営業損失)、経常利益は688百万円(前期は1,248百万円の経常損失)となりました。特別利益につきましては、医薬品事業の仕入取引に関連し、取引先より受領した受取補償金200百万円を計上しております。特別損失につきましては、医薬品事業における生産体制の再編に関連し、減損損失239百万円及び移設撤去費用等引当金繰入額88百万円を計上しております。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては898百万円(前期は3,611百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメント別の経営成績につきましては以下のとおりであります。
(医薬品事業)
医薬品事業につきましては、国内市場における市場規模が対前期比で109.5%となり、新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、コロナ前の水準を上回ってきております。堅調な需要に対し、前連結会計年度より引き続き、製造人員の増強やシフト生産体制の構築、京都工場の医薬品ラインの立ち上げ等の増産施策の取り組みを進めてまいりました。これらの取り組みにより、供給課題は徐々に解消に向かいつつあるものの、一部製品においては依然として、十分な供給ができておらず品薄の状況が継続しております。また、原材料費及び資材費や物流費等の価格高騰を背景に、国内において「正露丸」、「セイロガン糖衣A」の出荷価格の値上げを実施いたしました。
この結果、国内向けの医薬品売上高につきましては、対前期比6.6%増の3,556百万円となりました。また、海外向けにつきましては、前連結会計年度において国内向けとの出荷調整によって十分な供給量を確保することができませんでしたが、中国・香港市場へ一部の出荷を再開できたこと等から、対前期比20.2%増の2,222百万円となりました。
これらの結果、医薬品事業につきましては、対前期比11.4%増の5,778百万円の売上高となりました。また、セグメント利益につきましては、主に増収影響により、対前期比60.6%増の1,947百万円となりました。
(感染管理事業)
感染管理事業につきましては、売上規模に応じたマーケティング費用の投下等コストコントロールを強化し、収益性の改善に取り組んでまいりました。また、「クレベリン」の信頼回復に向けて、機能訴求だけではなく、商品価値が直感的に伝わるプロモーション動画の制作や各種タイアップ施策等の取り組みを行ったことで、感染症流行期における衛生対策商品としての認知は回復傾向にあると考えております。
これらの結果、売上高は対前期比で421百万円減少の508百万円となりました。また、セグメント損失につきましては、上記の取り組み等により対前期比で724百万円改善し467百万円となりました。
(その他事業)
その他事業につきましては、主に木酢液を配合した入浴液や園芸用木酢液等の製造販売を行っております。売上高は5百万円、セグメント損失は12百万円となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は12,914百万円(前連結会計年度末比305百万円減)となりました。また、負債合計は4,949百万円(同1,530百万円減)、純資産合計は7,964百万円(同1,224百万円増)となりました。前連結会計年度末からの主な変動要因は、現金及び預金の減少等による流動資産347百万円の減少、投資その他の資産の増加等による固定資産41百万円の増加、資産除去債務等の減少による流動負債191百万円の減少、長期借入金の返済等による固定負債1,338百万円の減少、また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による純資産1,224百万円の増加等であります。
なお、自己資本比率は前連結会計年度末から10.7ポイント増加し、61.7%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)が前連結会計年度より712百万円減少し、当連結会計年度末残高は4,532百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は362百万円(前期は307百万円の使用)となりました。主に売上債権の増加411百万円、棚卸資産の増加301百万円等の減少要因の一方で、税金等調整前当期純利益565百万円、減価償却費256百万円、減損損失239百万円等の増加要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は5百万円(前期は1,166百万円の獲得)となりました。主に有形固定資産の取得による支出157百万円、資産除去債務の履行による支出83百万円等の減少要因の一方、定期預金の払戻による収入304百万円等の増加要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,181百万円(前期は1,539百万円の獲得)となりました。主に長期借入金の返済による支出1,206百万円等の減少要因によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
医薬品事業 |
(百万円) |
5,881 |
113.1 |
|
感染管理事業 |
(百万円) |
507 |
72.6 |
|
その他事業 |
(百万円) |
4 |
74.7 |
|
合計 |
(百万円) |
6,393 |
108.3 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
医薬品事業 |
(百万円) |
67 |
137.3 |
|
感染管理事業 |
(百万円) |
- |
- |
|
その他事業 |
(百万円) |
- |
- |
|
合計 |
(百万円) |
67 |
137.3 |
c.受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
医薬品事業 |
(百万円) |
5,778 |
111.4 |
|
感染管理事業 |
(百万円) |
508 |
54.7 |
|
その他事業 |
(百万円) |
5 |
100.7 |
|
合計 |
(百万円) |
6,292 |
102.8 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
アルフレッサヘルスケア㈱ |
1,874 |
30.6 |
1,826 |
29.0 |
|
一徳貿易有限公司 |
1,501 |
24.5 |
1,819 |
28.9 |
|
㈱PALTAC |
1,464 |
23.9 |
1,471 |
23.4 |
⑤ 経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払い等によるものです。投資を目的とした資金需要は、企業価値の向上を図るための設備投資や研究開発等の投資等によるものです。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出や売上債権の増加による支出等があり、前連結会計年度から712百万円減少し、現金及び現金同等物の期末残高は4,532百万円となりました。
なお、事業運営に必要な資金については確保できていることから、追加の資金調達余力としていたシンジケーション方式コミットメントライン契約につきましては、2025年1月31日をもって契約は終了しております。
⑦ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(コミットメントライン契約における財務制限条項の追加)
当社は、2022年8月10日締結のコミットメントライン契約について、2024年1月26日開催の取締役会の決議に基づき、2024年1月31日付で財務制限条項の追加等について取引金融機関と合意し、契約の一部を変更いたしました。
変更後の契約において、下記の財務制限条項に抵触した場合には、本契約上の全ての債務について期限の利益を喪失及び貸付義務の消滅の可能性があります。
財務制限条項
(1)取引金融機関に提出する各年度の決算期に係る業績計画(連結)に記載された、当該決算期を通じた経常損益の計画値及び当期純損益の計画値(いずれも12ヵ月分の合計金額)を、いずれも0円以上にそれぞれ維持すること。
(2)決算期の末日以外の各四半期の末日に関して、それぞれ次に掲げる金額をいずれも0円以上に維持すること。
・当該四半期末日(決算期末日以外)の属する決算期の初日から当該四半期末日(決算期末日以外)までの期間の経常損益の実績金額と、取引金融機関に提出する当該四半期末日(決算期末日以外)の翌日から当該決算期の末日までの期間の経常損益の計画値の合計金額。
・当該四半期末日(決算期末日以外)の属する決算期の初日から当該四半期末日(決算期末日以外)までの期間の当期純損益の実績金額と、取引金融機関に提出する当該四半期末日(決算期末日以外)の翌日から当該決算期の末日までの期間の当期純損益の計画値の合計金額。
但し、シンジケーション方式コミットメントライン契約につきましては、2025年1月31日をもって契約は終了しております。
当社グループは「自立」、「共生」、「創造」の基本理念を実践し、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供することを使命と考え、生活者が健康で快適な生活を送るために必要とされる製品を提供すべく研究開発活動を行っております。
現在の研究開発は主に当社の京都工場・研究開発センターにおいて、医薬品事業及び感染管理事業を中心に推進されております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
(1)医薬品事業
消化器官関連医薬品のスペシャリティ・ファーマとして、下痢のメカニズムの解明や、100有余年にわたり利用されてきた「正露丸」の主成分である日局木クレオソート(以下、木クレオソート)について、薬理薬効の研究を続けてまいりました。木クレオソートの有効性や安全性等の研究成果については、国内外の専門学術雑誌を中心に成果の発表を行うとともに、新規効能に対する研究を各大学と提携し進めてきました。さらに、健康サポート薬局に対応するエビデンスとして、木クレオソートの薬物相互作用の研究を行い、他の薬物と相互作用が起こらないことを論文発表いたしました。また、糖尿病の治療薬であるメトホルミンが下痢を誘導することが知られており、糖尿病モデルマウスを用いて木クレオソートがメトホルミン誘導性下痢の症状を改善し、さらにメトホルミンの血糖値低下作用に影響しないことを解明しました。なお、この結果については既に論文発表いたしました。現在は医師主導型臨床研究を進めております。
また、木クレオソートが腸内細菌に対して影響を及ぼさないことを臨床研究で検証して、その薬理作用は腸内の殺菌ではなく腸の蠕動運動や水分調節であることを示しました。木クレオソートを使用した薬剤の開発も行っており、その効果有効性を周知させるための薬剤の開発も行っております。
さらに、木クレオソートの止瀉以外の有用性研究として、アニサキスに対する運動抑制作用も既に論文発表しており、現在は動物実験モデルを用いた研究を行い、論文投稿しております。
(2)感染管理事業
「クレベリン」を主として感染管理製品は消費者庁より景品表示法に基づく措置命令を受けたことに伴い、二酸化塩素の研究だけでなく、製品としてのエビデンス強化を図ってまいります。
二酸化塩素の基礎応用研究としましては、微生物に対する作用メカニズムの研究、各種ウイルス、細菌、真菌等に対する有効性の研究(二酸化塩素関連製品を用いた研究を含む。)、各種応用研究、安全性の研究を自社及び各研究機関と連携をとりながら進めております。これまで実施してきた多くの基礎研究をより高めるため、低濃度二酸化塩素ガス及び二酸化塩素ガス溶存液の付着菌や付着ウイルス、浮遊菌や浮遊ウイルスへの効果試験も継続して行っており、製品の信頼性を一層高めるよう努めております。新型コロナウイルス及びその変異株に対する二酸化塩素の有効性の研究も進めており、作用機序の解明を行い、論文発表しました。今後、二酸化塩素の免疫学的研究も進めてまいります。
また、大阪大学大学院医学研究科の空間感染制御学共同研究講座におきまして、二酸化塩素ガスの細胞レベルの安全性と細胞培養における有効性の検証として、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞及びiPS細胞を用いた研究を行い、論文発表いたしました。
また、(一社)日本二酸化塩素工業会が(一財)日本規格協会のJSA規格制度を利用し、透明性・公平性及び客観性の確保を目的として作成を進めている空間除菌試験規格の開発に当社も参画しております。
一方、製品開発は、二酸化塩素製品の市場拡大を推進させるべく、新しい発生機構を持つ新製品の開発に加え、無人空間でのくん蒸施工を想定した新しいジャンルの製品開発を進めております。
また、濃度長期保持型二酸化塩素ガス溶存液は、衛生製品として製造販売しておりますが、日本国内では動物用を視野に入れた研究開発活動を推進しております。
その他、現在着手している研究開発活動は以下のとおりであります。
・安定した二酸化塩素ガスを発生させる装置の開発を行うことで、標準ガスを作り出すことが可能となり、多方面での活用用途が広がります。
・低濃度の二酸化塩素ガスを検知できる二酸化塩素濃度センサーについて基礎研究を行うことで、低濃度二酸化塩素ガス濃度を検出する機器の開発につなげ、信頼性と安全性が向上することでお客様に最適な空間除菌を提供することが可能となり、感染管理事業の拡大が図れます。
・二酸化塩素ガス発生装置から発生させた二酸化塩素ガスの実空間での分布や拡散についてシミュレーションで予測する研究も行っており、実空間でのより高度な二酸化塩素ガス濃度制御を目指しております。
(3)その他事業
「正露丸」の主成分である木クレオソートの製造副産物として得られる木酢液の有効活用研究を行っております。
大学等との研究機関との共同研究により、当社木酢液の植物生育や土壌に対する作用について研究を進めており、農家現場での活用に向けた実証試験も実施しております。また、前連結会計年度に新規農薬登録された、当社蒸留木酢液を使用した植物由来のイネ種子消毒剤「タイコーゼⓇ」(農薬の種類:くん液蒸留酢酸液剤)の研究も進めております。これらの研究を推進するとともに、当社木酢液の用途開拓を行っております。
なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
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医薬品事業 |
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感染管理事業 |
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その他事業 |
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合計 |
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