第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社グループは「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念のもと、情報共有の基盤となるソフトウェアを提供することを主な事業領域としております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

各製品のクラウドサービスの売上が堅調に増加している中、将来の収益力をより一層高めるため、クラウドサービスの成長及びエンタープライズ市場へのビジネス推進に向けた投資を続けてまいります。また、パートナー企業との連携を含めグローバル体制の強化にも努めてまいります。

 

○新規顧客の獲得及びパートナー連携の強化

今後も継続してクラウドサービスの安定運用を行い、信頼度をさらに高めてまいります。特に、エンタープライズ企業、また様々な規模の企業に全社的かつ大規模に「kintone」を導入していただくための施策に更なる注力を図り、成果の実現を目指してまいります。例えば、当期7月には「kintoneエンタープライズ認証」制度を発表しました。大規模企業のニーズに即したシステム開発・構築技術を有し豊富な実績を持つパートナー企業をサイボウズが認証することで、ユーザー企業の適切なパートナー企業選びをサポートする制度です。他にも、1,000ユーザー以上の大規模利用に特化した「ワイドコース」の販売を開始しました。このように、今後も大規模組織における幅広い業務課題に対応できるサービスや仕組みを整え、エンタープライズ市場での事業拡大を目指してまいります。マーケティング活動では、今後も認知度向上に留まらず製品理解促進や製品価値の訴求に取り組んでまいります。営業・販売活動では、引き続きオフィシャルパートナープログラム「Cybozu Partner Network」により、クラウド時代に合ったパートナー企業への情報発信や支援内容を強化し、お客様に向けたサイボウズ製品の提案・構築をさらに促進してまいります。今後も、お客様の多種多様なニーズに応えるための施策や、製品のアップデートを実行し、「kintone」の提供拡大に取り組んでまいります。

 

○グローバル展開

マレーシア法人に次いで東南アジアで2箇所目の営業拠点となるタイ法人をバンコクに設立しました。重点的に注力してきた米国市場に加えて、東南アジア市場においてもより一層力を入れてまいります。さらに、中華圏、オーストラリア、台湾など世界各地にエコシステムを広げるため、グローバルに横展開できるモデルを模索しながら、現地パートナー企業の開拓・連携強化や拠点開拓を進めてまいります。株式会社リコーとの協業については、当期1月には中南米、10月にはアジア向けに「RICOH Kintone plus」をリリースし、現地での導入を進めてまいりました。パートナー企業が強みとするグローバルでの直接販売を中心としたチャネル・サポート網を活かして提供拡大に取り組むと同時に、国内及び現地の組織体制や販売マーケティング施策を強化し、新規顧客リードの獲得にも注力してまいります。

 

○組織・体制の強化

我々自身も、チームワークがあふれ、長期的かつ持続的に生産性が向上するチームを目指しております。そのために、引き続き積極的な人材採用と育成、多様性を尊重する風土や制度を発展させてまいります。また、グローバル規模の事業拡大に伴い、国外拠点における事業ノウハウを効率よく吸収し、社内の連携を一層強化してまいります。

さらに、新しい組織運営の実現に向けて引き続き取り組んでまいります。当社では、「誰もが取締役的な意識をもって役割を担う」と考えており、徹底的に情報をオープンにし、一人ひとりが自立心を持って質問責任を果たし、意思決定者がオープンな場で説明責任を果たす文化を育んでおります。これにより、取締役のみによるガバナンスを超える組織運営の実現を目指しております。

当社では、経営に関する意思決定や議論の場として、取締役と各本部の責任者が部門の垣根を越えて共有、議論するための経営会議を開催しております。経営に関する重要な意思決定においては多角的かつ多面的な視点での議論が重要となりますが、当社では「公明正大」や「対話と議論」を尊重する考えに基づき、社外取締役及び社外監査役を含む全役職員が経営会議にいつでも参加し、議論することができる*こととしております。また、経営会議の議事録も全役職員に共有*され、議論内容について適宜質問や意見を発信することができます。さらに、経営に関する意思決定のみならず、日々の業務においても情報の公開と共有*を行っており、「質問責任」や「説明責任」、そして「対話と議論」を歓迎する等の、企業風土の醸成を進めております。このように、我々は極めて透明性の高い意思決定プロセスを実現し、更なる改善を続けてまいります。

*インサイダー情報、プライバシー情報、その他共有範囲を限定すべき情報を除きます。

 

○クラウドサービス事業者として信頼される内部統制体制の整備

クラウドサービス事業を推進するに当たり、情報セキュリティを含む内部統制体制への信頼性確保の重要性が高まっております。

そのような中で、当社グループは、海外拠点を含め、「公明正大」の考え方のもと、統制の仕組み化(ルール化、見える化、効率化)をより一層強化し、引き続き株主、ユーザー、パートナー企業、その他ステークホルダーの皆様からの信頼を確保すべく、内部統制体制の整備に注力してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念のもとで、事業活動を通して世界中にチームワークを普及させることが社会に対する責任を果たすことになると考えております。

また、人的資本への投資や気候変動・環境への対応が経営上の重要課題と認識しており、事業活動を通じて社会課題解決に取り組むことで、事業成長とサステナブルな社会への貢献を実現してまいります。

 

(1) ガバナンス

サステナビリティに関する諸課題については、プロジェクトチーム等が各事業部門と連携し、各部門の分掌に沿って、サステナビリティ関連リスクと機会、業務執行への影響について協議し、経営会議での協議・承認の後、取締役会に報告します。

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任を有しております。経営会議で協議・決定された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティのリスク及び機会への対応方針や実行計画等についての審議・監督を行っております。

 

(2) 戦略

当社グループでは、人的資本への投資や気候変動・環境への対応について、以下のような取組を推進しております。

 

○人材育成に関する取組

「チームワークあふれる社会を創る」という共通の想いを持って当社に集まったメンバーは、一人ひとり多様であり、それぞれの個性、価値観を持っています。当社では、それぞれが多様であることを前提に、一人ひとりと対話し、チームの生産性とメンバーの幸福が両立するマッチングを目指しています。

 

・入社後のオンボーディング

入社から約半年間(新卒採用の場合は1年間)をオンボーディング期間と定め、スムーズに組織に馴染み、早期に活躍できるように、新卒入社、キャリア入社それぞれで研修プログラムを提供しています。企業文化の理解や社内メンバーとのコミュニケーションの促進を図りつつ、定期的にマネジャーと期待値を調整し、振り返りを行う仕組みを整えています(オンボーディングプラン/サーベイ)。ここ数年、リモートワークで入社するメンバーが増えてきた中でも、働く場所によらずメンバーが定着、活躍できるような土台づくりを進めています。

 

・キャリア支援

「チームの生産性とメンバーの幸福の両立」のために、メンバー一人ひとりが自分自身の価値観と向き合い、自律的主体的に選択すること、またその選択に責任を持ち、貢献や成長を実感して働くことを支援する制度や仕組みづくりを進めています。社内の募集ポジションを見える化する「ジョブボード」、期間限定で他部署の業務を体験できる「大人の体験入部」、メンバーの自主的な学びに対し、年間12万円まで支援するSelf-learning Program制度など、さまざまな施策を実行しています。

 

 

○働く場所・環境整備に関する取組

当社では2007年から短時間勤務制度を、2010年からテレワークを導入しました。現在、社員の出社率は約2割となっております。

メンバー一人ひとりが、チームの生産性を最大化する場所を主体的に考え、どこで働いても最大限の成果を発揮できるよう、オフィス環境、リモートワークの環境整備を行っております。

東京日本橋オフィスをチームワークの中心拠点であるBig Hubと据え、グループウェアも活用しながら、国内外複数の拠点や自宅、さらには多くのパートナー企業と協働できる環境づくりを行っています。

 

○オーナーシップの醸成(持株会)に関する取組

サイボウズの理想に共感し、その実現に向けて集まったメンバーが、オーナーシップを持って主体的に業務に取り組めることを目的に、無期雇用だけでなく有期雇用のメンバーに対しても、奨励金100% (拠出金額と同額) で運用しています。2024年12月末時点の国内従業員持株会加入率は86.1%となっています。

また、2023年からはグローバル拠点でも持株制度を開始し、2024年12月末時点で対象者の57.9%が加入しています。

 

○気候変動・環境に関する取組

当社は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき気候関連情報の開示を推進しております。これまでの取り組みに加えて、自社のCO2排出量をより正確に把握するため、Scope3の情報開示にも新たに取り組んでおります。Scope3は、サプライチェーン全体における間接的な排出量を含むものであり、現時点では開示義務の対象外ですが、当社はこれを重要な課題と捉え、積極的に情報を収集し開示する方針です。今後も、TCFD提言に基づいて特定したリスク及び機会を継続的に検証し、事業活動を通じて持続可能な社会の発展実現に貢献してまいります。

 

(3) リスク管理

全社的なリスク管理プロセスに基づき、サステナビリティ関連リスクへのリスク管理を実施しています。リスクは、プロジェクトチーム等が識別し、影響度を評価します。対応が必要と判断されたリスクは、プロジェクトチーム等が伴走しながら、各事業部門によってリスク対応が行われます。また、リスクへの対応状況は経営会議で協議・承認された後、取締役会へ報告されます。取締役会は、経営会議よりリスク管理の状況と対応について報告を受け、監督します。

 

(4) 指標及び目標

年々、女性管理職比率は増加しており、2024年12月末時点では30%となっています。

当社では、女性社員比率と女性管理職比率は近い割合が自然と考え、今後も30%以上の維持・向上を目指していきます。

 

 

2020年

2021年

2022年

2023年

2024年

全社員数

647人

737人

870人

1,003人

1,030

女性社員数

289人

341人

398人

451人

463

女性社員比率

44.7%

46.3%

45.7%

45.0%

45.0

女性管理職数

13人

17人

24人

25人

33

女性管理職比率

20.3%

24.3%

27.3%

24.8%

30.0

 

(注) 1.社員数は正社員(無期雇用)の人数、管理職数は副部長以上の役職者の人数として算出しております。

2.「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」を参照ください。

 

 

3 【事業等のリスク】

以下、当社グループの事業等において、リスクの要因となる主な事項及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に対する投資判断は本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、以下の事項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

1.    事業環境に関するリスク

 市場環境の変化について

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:大 ]

当社グループが製品、サービスの開発において利用している技術(Web、インターネット、クラウドコンピューティング、AI・機械学習等)は技術革新の進歩が速く、それに応じて業界標準及び利用者のニーズも急速に変化しています。このような変化に対応するため、新製品、サービスも相次いで登場しています。これらの新たな技術革新や利用者ニーズへの対応が遅れた場合、当社グループの提供する製品、サービス及びクラウドサービス環境等が陳腐化し、競合他社に対する競争力の低下を招く可能性があり、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

2.    事業の拡大・海外展開に関するリスク

① 事業拡大及び投資について

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:中~大 ]

(a) 人材の採用・育成

今後の業容の拡大を図る中で、各事業において、専門性を有する人材の採用・育成は不可欠であると認識しております。現時点では人材の採用・育成に重大な支障が生じることは無いものと認識しておりますが、今後各事業において人材獲得競争が今以上に激化し、優秀な人材の採用がさらに困難となる場合や在職している人材の社外流出が大きく生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(b) 関係会社等への投資に関わるリスク

当社グループが投資を行っている関係会社等について、経営環境の変化等を要因として回収可能性が低下する可能性があり、また、投資の流動性の低さ等を要因として当社グループが望む時期や方法で事業再編が行えない可能性があります。そのため、投資の全部又は一部が損失となる、あるいは、追加資金拠出が必要となる等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 海外事業展開について

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:中 ]

当社グループはグローバルな事業展開を進めておりますが、海外市場への事業進出には、各国政府の予期しない法律又は規制の変更、社会・政治及び経済情勢の変化又は治安の悪化、戦争、為替制限や為替変動、輸送・電力・通信等のインフラ障害、各種税制の不利な変更、移転価格税制による課税、保護貿易諸規制の発動、異なる商習慣による取引先の信用リスク、労働環境の変化及び人材の採用と確保の困難度、疾病の発生等、海外事業展開に共通で不可避のリスクがあります。そのほか、投下資本の回収が当初の事業計画どおり進まない可能性や、撤退等の可能性があります。

 

3.    サービスに関するリスク

① システム障害について

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:大 ]

当社グループはインターネットへの接続環境を有するユーザーを対象に製品・サービス開発を行っており、営業活動・クラウドサービスその他のサービス提供においてもインターネットに依存しています。そのため、自然災害、戦争、テロ、事故、その他通信インフラの破壊や故障、コンピュータウイルスやハッカーの犯罪行為等により、当社グループのシステムあるいはインターネット全般のシステムが正常に稼動しない状態、いわゆるシステム障害が発生した場合に、当社グループのクラウド事業に極めて重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループ製品・サービスの提供等においてインターネット環境に依存する部分は大きく、システム障害が発生した場合に、代替的な営業・サービス提供のルートを完全に確保することは困難な場合もあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産の保護及び侵害

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:低~中 ]

当社グループは、商標及び特許出願等、営業活動等に必要な範囲において可能な限り知的財産権等の防衛を図る所存でありますが、当社グループ、とりわけビジネスソフトウェア製品のコンセプト、ユーザーインターフェース及び操作性については、第三者による模倣を防止する手段は限定されていると考えられます。当該模倣が発生すると、当社の営業活動等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、いずれの製品、サービスも単一の特許又は関連する技術に依存しているとは考えておりませんが、このような知的財産が広範囲にわたって保護できないこと、あるいは広範囲にわたり当社グループの知的財産権が侵害されることによって、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが海外展開を進めるにあたり、中国その他のアジア地域を中心として横行している違法コピーや模倣品の流通といった知的財産権侵害や、諸外国での当社ブランド等に関する他社の商標登録が発生した場合、当社グループの販売活動、業績及び財務活動に多大な影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社のプログラム製品の一部には、当社以外の第三者がその著作権等を有するオープンソースソフトウェア(以下、「OSS」という。)を組み込んでおります。当社は、製品・サービスにOSSを組み込む場合、各OSSライセンスに則って組み込んでおりますが、当該ライセンス内容が大幅に変更された場合及びかかるOSSが第三者の権利を侵害するものであることが発見された場合等は、当該プログラム製品の交換・修正・かかる第三者との対応等により、提供・販売・流通等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4.    コンプライアンスに関するリスク

① 法的規制等について

[発生可能性:中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:中 ]

現在日本国内や海外においては、クラウドサービスに関するセキュリティ、個人情報保護、知的財産保護のあり方等について、法制度の整備がなされています。これらの法制度の中には、当社グループが提供するインターネットを利用する製品及びサービスにも適用される可能性のある法律等が制定されているものの、その解釈についてはまだ確立されているとはいえません。

また、ソフトウェアの知的財産保護や、インターネット上の知的財産権保護の他、ソフトウェアの使用許諾又はクラウドサービス提供における約款の取扱いに関して、引き続き議論がされるとともに、法改正も進んでいるところです。これらの法制度の整備をきっかけに、事業者の責任範囲の拡大や事業規制がなされることによって、事業が制約される可能性があります。

 

② 情報セキュリティについて

[発生可能性:低~中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:中~大 ]

当社グループの営業秘密、顧客情報等の管理につきましては、十分留意していく所存でありますが、当該情報の漏洩等が発生した場合には、当社グループの信用が損なわれることとなり、その後の事業展開、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、個人情報保護法への対応強化及び消費者保護のための情報提供義務への対応が世界的に強く求められていることにより、このような対応に不備が出てしまった場合当社グループの事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。

特に、クラウドサービスにつきましては、データの安全性確保のための当社セキュリティレベル向上とその情報開示の他、クラウドサービス業務の委託先に対する必要かつ適切な監督や委託先の内部統制の有効性評価等に努めておりますが、クラウドサービス上のデータの破壊、紛失、漏洩などが不測の事情により発生してしまうことにより、当社グループの事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 訴訟ないし法的権利行使の可能性について

[発生可能性:低~中 発生する可能性のある時期:特定時期なし 影響度:中 ]

当社グループの製品、技術又はサービスに対する知的財産権を含む各種権利等の侵害を理由とする販売差し止めや損害賠償の訴訟が提起される可能性があり、当社グループの販売活動や業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、システム障害や情報漏洩等が発生した場合、当社グループの製品及びサービスの利用者に一定の損害を与えることがあり、特に、クラウドサービスに関しては、サービス停止、クラウド上の情報漏洩、インシデントの原因追究(契約上の責任追及)とその影響範囲内での損害賠償請求訴訟等が提起される可能性があります。

当社グループが海外展開を進めていく中で、特に米国等においては訴訟が提起される可能性が比較的高く、また、訴訟コストや損害賠償額等が高額となる国において訴訟が提起された場合には、当社グループの財政状態及び業務に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

2024年12月31日)

対前年同期比

(増減額)

対前年同期比

(増減率)

連結売上高

25,432百万円

29,675百万円

4,242百万円

16.7%

営業利益

3,394百万円

4,892百万円

1,498百万円

44.1%

経常利益

3,579百万円

5,335百万円

1,755百万円

49.0%

親会社株主に帰属する当期純利益

2,488百万円

3,555百万円

1,066百万円

42.8%

 

 

2011年11月に提供を開始したクラウドサービスは、ご利用いただいている契約社数が67,000社、契約ユーザーライセンス数が330万人を突破し堅調に推移しております。

このような状況下において、当連結会計年度の連結業績につきましては、クラウド上で提供するサービスの売上が引き続き積み上がり、価格体系改定等による影響もあり、連結売上高は29,675百万円(前期比16.7%増)となりました。このうち、クラウド関連事業の売上高は26,791百万円(前期比20.2%増)となっております。利益項目につきましては、従業員数増加等により人件費が増加、広告宣伝投資について前期は認知度維持のための投資に抑えた一方で当期は積極的な投資を実施していることにより広告宣伝費が増加、グローバルを見据えた新規事業の創出を目的として長期的な研究開発活動を活性化していることにより研究開発費が増加した影響等から、営業利益は4,892百万円(前期比44.1%増)となり、為替予約に係る為替差益が増加した影響等から、経常利益は5,335百万円(前期比49.0%増)となりました。また、特別損失に事業構造改善費用を計上した影響等から、法人税等計上後の親会社株主に帰属する当期純利益は3,555百万円(前期比42.8%増)となりました。

なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、セグメントごとの記載を省略しております。

 

①主な製品・サービスの経過及び成果

過去数年にわたり、継続的にクラウドサービスの成長や認知獲得のための投資、エコシステムの拡大・強化に努めてまいりました。特にエコシステムについては、2024年12月末時点でパートナー社数は約500社、パートナー企業が提供する連携サービスは400サービス以上とエコシステムによるビジネスが堅調に拡大しており、クラウド関連事業の国内売上高の64.7%にあたる16,587百万円がパートナー経由の売上となり、パートナー販売割合が年々増加しております。クラウドサービスの需要が拡大する中で、当期11月より、「kintone(キントーン)」、クラウドサービス版「サイボウズ Office」、「Garoon(ガルーン)」及び「メールワイズ」の各サービスの価格体系並びに「kintone」及び「メールワイズ」の最小契約ユーザー数を改定しました。開発や運用をはじめとした運営全体への投資を拡大し、より良いサービス提供を目指した取り組みです。

他方では、当期2月に名古屋オフィス、5月には札幌営業所を移転開設し、6月には沖縄・那覇におけるコンタクトセンターの開設を通じて地域での営業活動とサポート体制を強化しました。これにより、地域企業や自治体への業務改善支援をさらに推進し、クラウドサービスの需要拡大に対応しています。

クラウド時代のニーズの変化に対応できるパートナー戦略を実施すべく、サイボウズのパートナープログラム「Cybozu Partner Network」などを通じて、引き続きパートナー施策やプロダクト強化を推進し、パートナーとの強固なエコシステムの構築、そして顧客価値の最大化に取り組みました。

 

 

○業務アプリ構築クラウドサービス「kintone」

主力製品である「kintone」は、2024年12月末時点の国内契約社数が37,000社と順調に推移し、売上高については連結ベースで16,192百万円(前期比24.4%増)となりました。TVコマーシャルでは、「業務改善に役立つクラウドサービス」としての認知獲得を目的とした広告展開に加え、前期から継続して「業務改善のためのアプリが自分で作れる」という「kintone」の製品価値の訴求を強化しました。

また、1,000ユーザー以上の大規模利用に特化した「ワイドコース」を当期7月より販売開始しました。他にも、大規模利用ユーザーの適切なパートナー企業選びをサポートする制度「kintoneエンタープライズパートナー認証」取得企業を初めて公開するなど、大規模組織における幅広い業務課題に対し、対応できる製品・サービスを充実させてまいりました。エンタープライズ領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)手段としてノーコード・ローコードツールの採用が進む中、「kintone」はプログラミングの専門知識がなくても容易にシステムを構築できるという特性から「現場の人が主体の業務改善」を支援するツールとして利用が拡大しています。

また、「kintone」がより多様な業務や情報共有に対応できるよう、当期10月には新オプション機能「メール共有オプション」の販売を開始しました。さらに、生成AIを組み合わせることで、チームのデータ活用を支援するAI新機能「kintone AIアシスタント(仮称)」β版利用ユーザーの募集を開始するなど、AI技術を活用した製品開発も進めてまいりました。

このように「kintone」の利用が拡大する中、引き続き自治体への導入が拡大し、2024年12月末時点の自治体導入数は約380となりました。2023年に開始した小規模市町村を主な対象として提供される「kintone」を基盤とした自治体DXプログラム「自治体まるごとDXボックス」の参画パートナー企業は40社を超えました。今後も自治体での本格導入や全庁展開をさらに促進してまいります。

そのほか、販売パートナーチャネルの拡大として、引き続き地方銀行との連携を強化しています。当期は新たに山梨中央銀行や岩手銀行などと連携協定を締結しました。銀行内にICTコンサルティング専門部隊を設置していただき、当社は当該ICTコンサルティング部門へ向けて製品研修等を実施し、顧客へのコンサル提案をサポートしています。2024年12月末時点で全国20行以上の地方銀行と協業しており、実働約7年間で地方銀行によるコンサルティングにより約700社にサイボウズ製品を導入いただいております。引き続き、IT活用提案を通じて、地方中小企業の生産性向上や働きやすい企業創生実現に向け活動してまいります。

 

○その他の製品・サービス

各製品ともにクラウドサービスの販売が堅調に増加しました。中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」では2024年12月末時点の国内累計導入社数が81,000社、売上高については連結ベースで5,755百万円(前期比8.3%増)となり、売上高の88.6%がクラウドサービスとなりました。中堅・大規模組織向けグループウェア「Garoon」では2024年12月末時点の国内累計導入社数が8,000社、売上高については連結ベースで5,536百万円(前期比10.6%増)、売上高の70.0%がクラウドサービスとなり中堅・大規模な組織でもクラウドサービスの需要が増加していることがうかがえます。また、メール共有サービス「メールワイズ」では2024年12月末時点の国内累計導入社数が15,000社、売上高については連結ベースで883百万円(前期比12.2%増)、売上高の96.0%がクラウドサービスとなりました。

 

 

○信頼性強化への取り組み

多種多様なユーザーの皆様により長く安心してご利用いただくため、製品・サービス及び当社グループ自体への信頼を高める取り組みに注力しております。クラウド関連事業を開始した2011年より、自社でクラウド基盤の開発と運用を継続しています。新技術で信頼性を高めた自社開発の新クラウド基盤「NECO」へ移行を進めるなど、特にクラウドサービスの信頼性強化に重点を置いて取り組みを進め、セキュリティ向上に対して継続的な投資を行っております。

2021年には当社が提供しているクラウドサービスが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(以下:ISMAP、読み:イスマップ)」において、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているサービスであると認定され、2024年度も継続してISMAPクラウドサービスリストに登録されています。これを継続することで、行政機関に安心してサイボウズのクラウドサービスをご検討、導入いただけるものと考えております。

2023年には当社が海外向けに提供する「kintone」の内部統制を評価する「SOC2 Type1保証報告書」を受領し、当期においても「SOC2 Type2保証報告書」を受領しました。当報告書は、米国公認会計士協会(AICPA)が定めたTrustサービス規準のうち「セキュリティ」などに関わる内部統制を外部監査人が第三者の立場として評価したものです。

今後も政府情報システムの要件への対応をはじめ、国際基準を満たす内部統制やセキュリティ脅威への対応に継続して取り組み、信頼できる安心で安全なクラウドサービスを提供することで、チームワークあふれる社会づくりに貢献してまいります。

 

○市場からの評価

当社は、「日経コンピュータ」誌が2024年9月5日号で発表した顧客満足度調査 2024-2025「グループウエア/ビジネスチャット部門」及び「業務効率化・内製支援ソフト/サービス部門」において第1位を獲得しました。「グループウエア/ビジネスチャット部門」では、通算12回目(2000年、2002~2009年、2014~2015年、2024年)、「業務効率化・内製支援ソフト/サービス部門」では、初の1位獲得となります。

また、当社のカスタマーセンターは、「HDI-Japan」が主催する、2024年「HDI格付けベンチマーク」クオリティ格付け(センター評価:電話)において、2018年、2019年、2022年、2023年に続き通算5回目、3年連続で最高ランクである三つ星を獲得いたしました。

 

②グローバル展開における体制強化

グローバル市場での2024年12月末時点における導入社数は、米国市場では880社(前期比2.3%増)、中華圏市場では1,400社(前期比1.4%増)、東南アジア市場では1,290社(前期比9.3%増)となり、各市場への展開を進めております。米国市場においては、株式会社リコーとの協業を継続しているほか、当期1月には中南米向けに「RICOH Kintone plus」を展開するなど、更なる販売活動に取り組んでまいりました。東南アジア市場においては、マレーシア法人に次いで2箇所目の営業拠点となるタイ法人「Kintone (Thailand) Co., Ltd.」をバンコクに設立し、当期3月より営業を開始しました。当期10月には、マレーシア法人「Kintone Southeast Asia Sdn. Bhd.」が、サラワク州政府の公営企業と販売パートナー契約を締結しました。今後もパートナーとの連携を強化しつつ、グローバル展開を加速してまいります。

 

③チームワークあふれる社会を創るための取り組み

サイボウズでは、チームワークをサポートする活動として、非営利団体向け支援や地方創生支援、学校における働き方改革を実現するための学校BPR(Business Process Re-engineering)支援、サイボウズの企業理念に共感するスタートアップ企業に対して出資や事業化支援、協業の推進を行う「kintone Teamwork Fund」など多岐にわたり取り組んでいます。当期は、新たに日本ラクロス協会とのパートナーシップ契約を締結しました。当社が提供するクラウドサービスを活用した情報共有支援を通じて、スポーツに欠かせないチームワーク形成に貢献してまいります。このほかに、「kintone」で災害対策のIT化を支援する取り組み「災害支援プログラム」の一環として、近年増加する大規模地震に備え、災害ICT支援ツール活用術をまとめた研修テキストを当期2月に発行しました。今後もサイボウズ流のチームワーク向上のノウハウを活かし、社会のチームワーク向上や災害支援・防災のために活動してまいります

 

 

④生産、受注及び販売実績

 a.生産実績

当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

ソフトウェア事業

12

23.9

 

(注) 金額は、製造原価とソフトウェアのうち自社開発分(資産計上分)の合計により算出しております。

 

 b. 受注状況

当社グループ(当社及び連結子会社)は受注開発を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

 c. 販売実績

当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、ソフトウェア事業に含めて記載しております。

 

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

ソフトウェア事業

29,675

116.7

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績の10%以上を占める相手先がないため、記載はありません。

 

 

(2) 財政状態

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

2024年12月31日)

対前年同期比

(増減額)

資産合計

19,248百万円

21,087百万円

1,838百万円

負債合計

7,995百万円

9,454百万円

1,458百万円

純資産合計

11,253百万円

11,633百万円

380百万円

 

 

資産合計につきましては、現金及び預金が減少した一方、売掛金が増加、クラウドサービス用のサーバー増設等により工具、器具及び備品が増加、上場株式の株価上昇により投資有価証券が増加した影響等から、前連結会計年度末に比べ1,838百万円増加し、21,087百万円となりました。

負債合計につきましては、契約負債が増加した影響等から、前連結会計年度末に比べ1,458百万円増加し、9,454百万円となりました。

純資産合計につきましては、剰余金配当666百万円を実施した一方、親会社株主に帰属する当期純利益3,555百万円の計上により利益剰余金が増加、取締役会決議に基づく自己株式取得等により自己株式が2,929百万円増加した影響等から、前連結会計年度末に比べ380百万円増加し、11,633百万円となり、自己資本比率は55.2%となりました。

なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より902百万円減少し、5,589百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

2024年12月31日)

対前年同期比

(増減額)

営業活動による

キャッシュ・フロー

4,548百万円

5,601百万円

1,052百万円

投資活動による
キャッシュ・フロー

△2,532百万円

△3,089百万円

△556百万円

財務活動による

キャッシュ・フロー

△777百万円

△3,599百万円

△2,821百万円

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金収支は、5,601百万円の収入となりました。これは法人税等の支払いがあった一方、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金収支は、3,089百万円の支出となりました。これはクラウドサービス投資の一環としてサーバー等を取得したことに伴う固定資産取得による支出があったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金収支は、3,599百万円の支出となりました。これは取締役会決議に基づく自己株式取得や配当金支払いによる支出があったこと等によるものです。

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの運転資金及び設備投資等資金は、主として営業活動キャッシュ・フローである自己資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入を実施することを基本方針としております。今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、国内外でのクラウドサービス認知度を向上させるための広告宣伝及び国内のクラウドサービス用サーバー機材増設等の設備投資であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、自己資金により充当しつつ、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要な資金を調達してまいります。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは、「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは、開示の重要性が乏しいため、セグメントごとの記載を省略しております。

インターネット関連技術は技術革新の進歩が速く、また、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化するため、新技術・新製品も相次いで登場しております。そこで、当社グループの研究開発活動は、顧客満足度の向上に資するため、これらの新技術等への対応を、開発部門を中心に随時進行しております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は、1,228百万円となっております。

新規事業の創出を目的として2022年10月1日付で「New Business Division」を新設しており、新本部として、国内外のメンバー増員など組織基盤を強化するとともに、グローバルを見据えた長期的な研究開発活動を活性化しております。